以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付している。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を模式的に示している。また、本明細書では、図1、2の矢印で示す方向を便宜的に上、下、前、後として説明を進める。
図1は、本実施の形態に係る貨幣処理装置100の斜視図である。貨幣処理装置100は、例えば、紙幣処理装置である。また、貨幣処理装置100は、紙幣処理装置に限られるものではなく、硬貨処理装置などであってもよい。
貨幣処理装置100は、入金部10と、リジェクト部20と、操作表示部30とを有する。
入金部10は、貨幣処理装置100の上部前方に設けられている。入金部10は、貨幣処理装置100の内部に貨幣を繰り出す。入金部10は、紙幣検知センサおよび紙幣繰出機構を備えており、紙幣検知センサが紙幣を検知すると、紙幣繰出機構は、紙幣を一枚ずつ内部に向けて繰り出す。
リジェクト部20は、貨幣処理装置100の前面に設けられている。リジェクト部20は、後に説明する識別部によってリジェクト紙幣であると識別された紙幣を集積する。リジェクト部20は、紙幣検知センサを備えており、紙幣検知センサは、リジェクト部20における紙幣の有無を検知する。
操作表示部30は、貨幣処理装置100に対する指示操作が入力されるとともに、貨幣処理装置100において実行された処理の処理結果などを表示する操作表示装置である。操作表示部30は、例えば、タッチパネルで構成される。
操作表示部30は、例えば、リジェクト部20に設けられた紙幣検知センサが紙幣を検知した場合、リジェクト部20に紙幣が存在する旨の表示を行う。
また、貨幣処理装置100は、後に説明する収納部へのアクセスを遮断するシャッタ40を備える。図1には、シャッタ40によって収納部70が覆われている状態が示されている。
図2は、本実施の形態に係る貨幣処理装置100の縦断面図である。貨幣処理装置100は、内部に、搬送部50、識別部60、収納部70を有する。
搬送部50は、入金部10から繰り出された紙幣を収納部70またはリジェクト部20に搬送する搬送装置である。搬送部50は、ローラ、ベルトおよびこれらの駆動機構の組み合わせによって構成される。
搬送部50には分岐爪51が設けられており、分岐爪51は、搬送されてきた紙幣を収納部70またはリジェクト部20に振り分ける。
識別部60は、搬送部50上に設けられており、入金部10から繰り出された紙幣を識別する識別装置である。識別部60は、フォトセンサ61、光学ラインセンサ62、厚み検知センサ63および磁気ラインセンサ64を有する。
フォトセンサ61は、搬送部50を挟んで互いに対向するように設置された発光部と、受光部とを備える。搬送部50を搬送されてきた紙幣がフォトセンサ61に到達すると、発光部から照射された光は、紙幣によって遮られる。これにより、フォトセンサ61は、紙幣が識別部60に到達したことを検知する。
光学ラインセンサ62は、紙幣の画像を読み取る画像センサである。光学ラインセンサ62は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)である。光学ラインセンサ62は、紙幣の表裏の反射画像および透過画像などの画像情報を取得する。
厚み検知センサ63は、紙幣の厚みを検知するセンサである。
磁気ラインセンサ64は、紙幣に塗布されている磁気インクの磁気量を検知するセンサである。
識別部60は、光学ラインセンサ62が取得した画像情報に基づいて、紙幣の金種を識別する。また、識別部60は、光学ラインセンサ62が取得した画像情報に基づいて、紙幣の表裏が何れの方向を向いた状態で搬送されているかを識別する。
また、識別部60は、光学ラインセンサ62が取得した画像情報、および、磁気ラインセンサ64が取得した磁気情報に基づいて、紙幣の真偽を識別する。
また、識別部60は、光学ラインセンサ62が取得した画像情報、および、厚み検知センサ63が検知した紙幣の厚みに基づいて、紙幣の正損を識別する。
識別部60において、処理対象の金種以外の紙幣、偽券、損券であると識別された紙幣は、リジェクト紙幣と識別され、搬送部50によってリジェクト部20に搬送される。
収納部70は、識別部60によってリジェクト紙幣であると識別された紙幣以外の紙幣を収納する収納装置である。収納部70は、紙幣を収納する収納領域71、および、搬送部50によって搬送されてきた紙幣を収納領域71に向けて1枚ずつ繰り出す羽根車72を有している。収納部70に搬送された紙幣は、羽根車72によって収納領域71に集積され、収納される。
なお、貨幣処理装置100は、複数の収納部70を有し、識別部60で識別された金種ごとに分別して紙幣を各収納部70に収納するようにしてもよい。
紙幣処理装置100は、収納部70の前面に前述のシャッタ40と、シャッタ40を移動させるシャッタ駆動部(不図示)とを有する。シャッタ40は、収納部70を開放状態と閉止状態とに切り替える開閉部材である。シャッタ40は、縦断面が円弧状に形成されており、シャッタ駆動部が駆動することによって当該円弧の中心を回動中心として開放位置と閉止位置との間を移動する。シャッタ40が開放位置に移動すると、外部から収納部70へのアクセスが可能となり、収納部70に収納された紙幣が取り出される。なお、図2では、シャッタ40の閉止位置が実線で示され、シャッタ40の開放位置が点線で示されている。
次に、本実施の形態に係る貨幣処理装置100の制御系の構成について説明する。図3は、本実施の形態に係る貨幣処理装置100の制御系の構成を示すブロック図である。
貨幣処理装置100は、制御部80を有している。制御部80は、入金部10の紙幣検知センサおよび紙幣繰出機構、リジェクト部20の紙幣検知センサ、操作表示部30、シャッタ駆動部41、搬送部50、識別部60、ならびに、収納部70の羽根車72に接続されており、これら各部を制御する。
制御部80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メモリなどで構成される。
識別部60は、上述した各センサに加え、識別記憶部65および識別制御部66を備える。
識別記憶部65は、紙幣の金種、真偽、正損などを識別する際の基準となる画像情報、磁気情報および紙幣の厚みの情報などのテンプレートを記憶する。また、識別記憶部65は、光学ラインセンサ62が取得した紙幣の画像情報、厚み検知センサ63が取得した紙幣の厚みの情報、および、磁気ラインセンサ64が取得した紙幣の磁気情報を一時的に記憶する。
識別制御部66は、光学ラインセンサ62、厚み検知センサ63および磁気ラインセンサ64が取得した情報と識別記憶部65に記憶された識別の基準となる各テンプレートとを照合することにより、紙幣の識別を行う。
識別制御部66は、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653を備えている。すなわち、識別制御部66は、マルチコアCPUを含んで構成される。ここで、マルチコアCPUとは、一つのCPUパッケージ内に複数のプロセッサコアを搭載した処理装置である。識別制御部66は、各コアにおいて並列に識別処理を実行することができる。
識別制御部66は、第1のコア651に接続される第1のキャッシュ651a、第2のコア652に接続される第2のキャッシュ652a、および、第3のコア653に接続される第3のキャッシュ653aを備える。
第1のキャッシュ651a、第2のキャッシュ652aおよび第3のキャッシュ653aは、それぞれ、識別記憶部65から読み出された情報などが一時的に格納される記憶装置である。
第1のコア651は第1のキャッシュ651aに一時的に格納された情報を利用して紙幣の識別を行う。また、第2のコア652は第2のキャッシュ652aに一時的に格納された情報を利用して紙幣の識別を行う。また、第3のコア653は第3のキャッシュ653aに一時的に格納された情報を利用して紙幣の識別を行う。
また、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653は、それぞれ互いにバス(不図示)で接続されており、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653は、当該バスを介して互いに通信する。
識別処理では、第1のコア651が、識別部60の各センサで取得された一の紙幣の情報に基づいて当該一の紙幣の識別を行う。また、第2のコア652が、各センサで取得された別の紙幣の情報に基づいて当該別の紙幣の識別を行う。また、第3のコア653が、各センサで取得されたさらに別の紙幣の情報に基づいて、当該さらに別の紙幣の識別を行う。すなわち、識別制御部66では、紙幣の識別処理を実行する各コアが紙幣ごとに割り当てられる。なお、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653は繰り返し、搬送部50によって搬送されている紙幣を識別する。また、第2のコア652によって識別される別の紙幣は、第1のコア651によって識別される一の紙幣の後に搬送される紙幣であり、第3のコア653によって識別されるさらに別の紙幣は、第2のコア652によって識別される別の紙幣の後に搬送される貨幣である。
ここで、仮に識別制御部66が一のコアを備えるシングルコアCPUで構成された場合、識別制御部66において紙幣の識別処理がどのように行われるかについて説明する。
図4は、識別制御部66がシングルコアCPUで構成された場合に実行される識別処理のタイミングチャートである。図4において、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)は、搬送部50上における紙幣の搬送状態を時系列で示している。なお、図4では、説明の簡略化のため、識別部60の厚み検知センサ63および磁気ラインセンサ64の図示を省略している。搬送部50は、各紙幣を一定の速度で搬送する。よって、紙幣の移動距離と移動に要する時間は比例する。したがって、図4において、横方向の長さは、時間の長さを表している。すなわち、図4において、横軸は、紙幣搬送方向の位置を示す軸であり、かつ、時間軸である。
また、t1は、識別制御部66が制御部80から紙幣の識別結果を要求する識別結果要求信号を受信するタイミングを示す。識別制御部66は、識別結果要求信号を受信すると、制御部80に紙幣の識別結果を送信する。また、t1は、識別制御部66において、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングを示す。紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1は、紙幣が分岐爪51に到達するタイミングに基づいて決定される。すなわち、制御部80が紙幣をリジェクト部20または収納部70に振り分けるためには、紙幣が搬送部50上に設けられた分岐爪51に到達する前に、識別制御部66から紙幣の識別結果を受信する必要がある。そのため、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1は、紙幣が分岐爪51に到達するタイミングよりも前に設定される。
また、矢印A1は、識別制御部66が光学ラインセンサ62を最初に通過した第1の紙幣S1の識別処理を実行していることを示し、矢印A2は、識別制御部66が、光学ラインセンサ62を2番目に通過した第2の紙幣S2の識別処理を実行していることを示している。
(1)は、第1の紙幣S1が、フォトセンサ61を通過した後、光学ラインセンサ62に到達したタイミングの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。
(2)は、第1の紙幣S1が光学ラインセンサ62を通過し、識別制御部66が第1の紙幣S1の識別処理を開始するタイミングにおける搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。ここで、T1は、識別制御部66が第1の紙幣S1の識別処理を実行するために使用する時間である。なお、S2は、第1の紙幣S1の次に識別される第2の紙幣である。
(3)は、第2の紙幣S2が光学ラインセンサ62に到達したタイミングの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。
(4)は、第2の紙幣S2が光学ラインセンサ62を通過したタイミングの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。このとき、第1の紙幣S1の識別処理が開始されてからT1時間が経過しておらず、識別制御部66において第1の紙幣S1の識別処理は未だ完了していない。このため、識別制御部66は第2の紙幣S2の識別処理を開始することができない。なお、S3は、第2の紙幣S2の次に識別される第3の紙幣である。
(5)は、第1の紙幣S1が光学ラインセンサ62を通過してからT1時間が経過したときの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。このタイミングで、第1の紙幣S1の識別処理が完了し、第2の紙幣S2の識別処理が開始される。
第2の紙幣S2は、(5)に示される状態から、時間T2経過後、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1を迎える。しかしながら、時間T2は、時間T1よりも短い。すなわち、識別制御部66は、第2の紙幣S2が、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1を迎えるまでに、第2の紙幣S2の識別処理を完了させることができない。
(6)は、第2の紙幣S2が、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1を迎えたときの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。時間T3は、時間T1と時間T2との差である。(6)に示される状態からT3時間経過後、第2の紙幣S2の識別処理が完了する。この場合、分岐爪51による第2の紙幣S2の適切な振り分けができない恐れがある。なお、S4は、第3の紙幣S3の次に識別される第4の紙幣S4である。
図4の矢印A1およびA2に示すように、識別制御部66がシングルコアCPUであった場合、識別制御部66は、第1の紙幣S1の識別処理を実行している間は、第2の紙幣S2の識別処理を開始できない。すなわち、第1の紙幣S1の識別処理が実行されている間は、識別部60の各センサにおいて第2の紙幣S2の情報が取得されているにもかかわらず、識別制御部66において第2の紙幣S2の識別処理を開始できない。
したがって、図4に示すように、第2の紙幣S2の識別処理の開始タイミングが遅れ、識別処理を完了させるべきタイミングt1までに第2の紙幣S2の識別処理を完了させることができない場合がある。
上述したような、識別制御部66がシングルコアCPUで構成された場合に生じうる不具合の発生を抑えるため、本実施の形態に係る貨幣処理装置100では、識別制御部66がマルチコアCPUで構成されている。さらに、本実施の形態に係る貨幣処理装置100では、識別制御部66がマルチコアCPUで構成されているのみならず、識別制御部66の各コアがそれぞれ互いに異なる紙幣の識別処理を実行する。
ここで、マルチコアCPUで構成される識別制御部66の各コアそれぞれに、紙幣の金種、真偽および正損を識別する処理を割り当てた場合に、識別制御部66で実行される紙幣の識別処理について説明する。
図5Aは、マルチコアCPUで構成された識別制御部66の各コアそれぞれが紙幣の金種、真偽および正損の何れか一つを識別する場合に識別制御部66で実行される識別処理の一例を説明する図である。
識別部60に最初に搬送された第1の紙幣S1の情報が各センサにおいて取得されると、第1のコア651は、識別記憶部65から第1の紙幣S1の画像情報および第1の紙幣S1の金種を識別するための基準となる画像のテンプレートを読み出す。これによって、第1の紙幣S1の画像のおよび第1の紙幣S1の金種を識別するための基準となる画像のテンプレートは第1のキャッシュ651aにも格納される。第1のコア651は、第1のキャッシュ651aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて第1の紙幣S1の金種を識別する。ここで、必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報とは、例えば、第1のキャッシュ651aの記憶容量などの関係で、第1のキャッシュ651aに格納されなかった情報である。
第1のコア651は、第1の紙幣S1の金種の識別が完了すると、第1の紙幣S1の金種の識別結果を識別記憶部65に格納する。また、第1のコア651は、第2のコア652に対して、第1の紙幣S1の金種の識別結果を送信する。
また、第1のコア651は、識別記憶部65から識別部60に2番目に搬送された第2の紙幣S2の画像情報および第2の紙幣S2の金種を識別するための基準となる画像のテンプレートを読み出す。これによって、識別部60に2番目に搬送された第2の紙幣S2の画像情報および第2の紙幣S2の金種を識別するための基準となる画像のテンプレートは第1のキャッシュ651aにも格納される。第1のコア651は、第1のキャッシュ651aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて第2の紙幣S2の金種の識別を行う。
第1のコア651は、第2の紙幣S2の金種の識別が完了すると、第2の紙幣S2の金種の識別結果を識別記憶部65に格納する。また、第1のコア651は、第2のコア652に対して、第2の紙幣S2の金種の識別結果を送信する。
第1のコア651は、これ以降、識別部60に搬送された紙幣に対して同様の処理を実行する。
第2のコア652は、第1のコア651から第1の紙幣S1の金種の識別結果を受信すると、識別記憶部65から第1の紙幣S1の画像情報および磁気情報を読み出す。これによって、第1の紙幣S1の画像情報および磁気情報は第2のキャッシュ652aにも格納される。また、第2のコア652は、識別記憶部65から第1の紙幣S1の真偽を識別するための基準となる画像および磁気のテンプレートを読み出す。これによって、第1の紙幣S1の真偽を識別するための基準となる画像および磁気のテンプレートは第2のキャッシュ652aにも格納される。第2のコア652は、第2のキャッシュ652aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて、第1の紙幣S1の真偽を識別する。ここで、必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報とは、例えば、第2のキャッシュ652aの記憶容量などの関係で、第2のキャッシュ652aに格納されなかった情報である。
第2のコア652は、第1の紙幣S1の真偽の識別が完了すると、第1の紙幣S1の真偽の識別結果を識別記憶部65に格納する。また、第2のコア652は、第3のコア653に対して、第1の紙幣S1の真偽の識別結果を送信する。
第2のコア652は、第1のコア651から第2の紙幣S2の金種の識別結果を受信すると、識別記憶部65から第2の紙幣S2の画像情報および磁気情報を読み出す。これによって、第2の紙幣S2の画像情報および磁気情報は第2のキャッシュ652aにも格納される。また、第2のコア652は、識別記憶部65から第2の紙幣S2の真偽を識別するための基準となる画像および磁気のテンプレートを読み出す。これによって、第2の紙幣S2の真偽を識別するための基準となる画像および磁気のテンプレートは第2のキャッシュ652aにも格納される。第2のコア652は、第2のキャッシュ652aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて、第2の紙幣S2の真偽の識別を行う。
第2のコア652は、第2の紙幣S2の真偽の識別が完了すると、第2の紙幣S2の真偽の識別結果を識別記憶部65に格納する。また、第2のコア652は、第3のコア653に対して、第2の紙幣S2の真偽の識別結果を送信する。
第2のコア652は、これ以降、識別部60に搬送された紙幣に対して同様の処理を実行する。
第3のコア653は、第2のコア652から第1の紙幣S1の真偽の識別結果を受信すると、識別記憶部65から第1の紙幣S1の画像情報および厚みの情報を読み出す。これによって、第1の紙幣S1の画像情報および厚みの情報は第3のキャッシュ653aにも格納される。また、第3のコア653は、識別記憶部65から第1の紙幣S1の正損を識別するための基準となる画像および紙幣の厚みのテンプレートを読み出す。これによって、第1の紙幣S1の正損を識別するための基準となる画像および紙幣の厚みのテンプレートは第3のキャッシュ653aにも格納される。第3のコア653は、第3のキャッシュ653aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて、第1の紙幣S1の正損の識別を行う。ここで、必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報とは、例えば、第3のキャッシュ653aの記憶容量などの関係で、第3のキャッシュ653aに格納されなかった情報である。
第3のコア653は、第1の紙幣S1の正損の識別が完了すると、第1の紙幣S1の正損の識別結果を識別記憶部65に格納する。
第3のコア653は、第2のコア652から第2の紙幣S2の真偽の識別結果を受信すると、識別記憶部65から第2の紙幣S2の画像情報および厚みの情報を読み出す。これによって、第2の紙幣S2の画像情報および厚みの情報は第3のキャッシュ653aにも格納される。また、第3のコア653は、識別記憶部65から第2の紙幣S2の正損を識別するための基準となる画像および紙幣の厚みのテンプレートを読み出す。これによって、第2の紙幣S2の正損を識別するための基準となる画像および紙幣の厚みのテンプレートは第3のキャッシュ653aにも格納される。第3のコア653は、第3のキャッシュ653aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて、第2の紙幣S2の正損の識別を行う。
第3のコア653は、第2の紙幣S2の正損の識別が完了すると、第2の紙幣S2の正損の識別結果を識別制御部66に格納する。
第3のコア653は、これ以降、識別部60に搬送された紙幣に対して同様の処理を実行する。
識別制御部66は、所定のタイミングにおいて制御部80から第1の紙幣S1の識別結果を要求する識別結果要求信号を受信すると、識別記憶部65に格納された第1の紙幣S1の識別結果を制御部80に送信する。
また、識別制御部66は、所定のタイミングにおいて制御部80から第2の紙幣S2の識別結果を要求する識別結果要求信号を受信すると、識別記憶部65に格納された第2の紙幣S2の識別結果を制御部80に送信する。
識別制御部66は、以上説明した処理を実行することにより、紙幣の金種、真偽および正損を識別する。
しかし、上述したように第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653がそれぞれ紙幣の金種、真偽および正損の何れかを識別する場合、各コア間で紙幣の識別結果の送受信を行うなど、各コア間での通信が必要になる。そのため、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653における通信処理のための処理負荷および処理時間が増大する。結果として、識別制御部66における紙幣の識別処理の処理時間が増大する。
さらに、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653は、一の紙幣の金種、真偽または正損の何れかの識別処理を完了させた後、次の識別処理の対象となる紙幣の情報を識別記憶部65から読み出す。このため、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653において、識別記憶部65からの情報の読み出しに係る処理負荷が増大する。結果として、識別制御部66における紙幣の識別処理の処理時間が増大する。
また、第1のコア651、第2のコア652、または、第3のコア653の何れかのコアで、エラーが発生した場合、識別部60に搬送される全ての紙幣の金種、真偽、または、正損の何れかの識別ができなくなる。結果として、識別制御部66は、紙幣の識別処理を継続することができなくなる。そのため、何れかのコアでエラーが発生した後に識別部60に搬送された紙幣は、全てリジェクト部20に搬送されることになる。
以上説明した問題を生じさせないようにするために、本実施の形態に係る貨幣処理装置100では、マルチコアCPUで構成された識別制御部66の各コアが一の紙幣の金種、真偽および正損の全ての識別を行う。
以下、本実施の形態に係る紙幣の識別処理について説明する。図5Bは、識別制御部66で実行される識別処理を説明する図である。
第1のコア651は、識別部60の各センサにおいて第1の紙幣S1の情報が取得されると、識別記憶部65から第1の紙幣S1の画像情報、磁気情報および厚みの情報を読み出す。これによって、第1の紙幣S1の画像情報、磁気情報および厚みの情報は第1のキャッシュ651aにも格納される。また、第1のコア651は、識別記憶部65から第1の紙幣S1の金種、真偽および正損を識別するための基準となる画像、磁気および紙幣の厚みのテンプレートを読み出す。これによって、第1の紙幣S1の金種、真偽および正損を識別するための基準となる画像、磁気および紙幣の厚みのテンプレートは第1のキャッシュ651aにも格納される。第1のコア651は、第1のキャッシュ651aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて第1の紙幣S1の金種、真偽および正損の識別を行う。
第1のコア651は、第1の紙幣S1の金種、真偽および正損の識別処理が完了すると、第1の紙幣S1の識別結果を識別記憶部65に格納する。
識別部60は、制御部80から第1の紙幣S1に関する識別結果要求信号を受信すると、識別記憶部65に格納されている第1の紙幣S1の識別結果を制御部80に送信する。
第2のコア652は、識別部60の各センサにおいて第2の紙幣S2の情報が取得されると、識別記憶部65から第2の紙幣S2の画像情報、磁気情報および厚みの情報を読み出す。これによって、第2の紙幣S2の画像情報、磁気情報および厚みの情報は第2のキャッシュ652aにも格納される。また、第2のコア652は、識別記憶部65から第2の紙幣S2の金種、真偽および正損を識別するための基準となる画像、磁気および紙幣の厚みのテンプレートを読み出す。これによって、第2の紙幣S2の金種、真偽および正損を識別するための基準となる画像、磁気および紙幣の厚みのテンプレートは第2のキャッシュ652aにも格納される。
第2のコア652は、第2のキャッシュ652aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて第2の紙幣S2の金種、真偽および正損の識別を行う。第2のコア652は、第1のコア651で第1の紙幣S1の識別処理が実行されているか否かにかかわらず、これら処理を実行する。
第2のコア652は、第2の紙幣S2の金種、真偽および正損の識別処理が完了すると、第2の紙幣S2の識別結果を識別記憶部65に格納する。
識別部60は、制御部80から第2の紙幣S2に関する識別結果要求信号を受信すると、識別記憶部65に格納されている第2の紙幣S2の識別結果を制御部80に送信する。
第3のコア653は、識別部60の各センサにおいて第3の紙幣S3の情報が取得されると、識別記憶部65から第3の紙幣S3の画像情報、磁気情報および厚みの情報を読み出す。これによって、第3の紙幣S3の画像情報、磁気情報および厚みの情報は第3のキャッシュ653aにも格納される。
また、第3のコア653は、第3の紙幣S3の金種、真偽および正損を識別するための基準となる画像、磁気および紙幣の厚みのテンプレートを読み出す。これによって、第3の紙幣S3の金種、真偽および正損を識別するための基準となる画像、磁気および紙幣の厚みのテンプレートは第3のキャッシュ653aにも格納される。第3のコア653は、第3のキャッシュ653aに格納されたこれらの情報および必要に応じて識別記憶部65から読み出す情報に基づいて第3の紙幣S3の金種、真偽および正損の識別を行う。
第3のコア653は、第1のコア651または第2のコア652で第1の紙幣S1または第2の紙幣S2の識別処理が実行されているか否かにかかわらず、これらの処理を実行する。
第3のコア653は、第3の紙幣S3の金種、真偽および正損の識別が完了すると、第3の紙幣S3の識別結果を識別記憶部65に格納する。
識別部60は、制御部80から第3の紙幣S3に関する識別結果要求信号を受信すると、識別記憶部65に格納されている第3の紙幣S3の識別結果を制御部80に送信する。
以上説明したように、本実施の形態に係る貨幣処理装置100では、マルチコアCPUで構成された識別記憶部65の各コアがそれぞれ、一の紙幣の金種、真偽および正損の全てを識別する。したがって、識別制御部66は、各コア間において紙幣の識別結果の送受信を行う必要がない。そのため、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653における通信処理のための処理負荷および処理時間を抑えることができる。結果として、識別制御部66における紙幣の識別処理の処理時間を短くすることができる。
また、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653において、金種、真偽、正損の識別が行われるごとに各コアに接続されたキャッシュに格納された情報は書き換えられる必要がない。このため、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653は、識別記憶部65から情報を読み出す処理の実行回数を減らすことができる。結果として、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653の処理負荷を低減し、紙幣の識別処理の処理時間を短くすることができる。
また、第1のコア651、第2のコア652および第3のコア653を含むコア群の何れかのコアでエラーが発生した場合、識別制御部66は、コア群に含まれる他のコアを用いて識別処理を継続することができる。そのため、識別制御部66の何れかのコアでエラーが発生しても、紙幣の識別処理が停止されることを回避することができる。換言すれば、エラーが発生したコアは紙幣の識別処理を完了できないため、当該エラーが発生したコアで識別されていた紙幣は、リジェクト部20に搬送される。しかし、エラーが発生したコア以外の残りのコアは、紙幣の識別処理を完了させ、また、搬送部50によって搬送されている後続の紙幣の識別処理も継続して実行できるため、識別制御部66の何れかのコアでエラーが発生した場合でも、リジェクト部20に搬送される紙幣を1枚に抑えることができる。このとき、コア群に含まれる残りのコアのうち一のコアは一の紙幣を識別し、別のコアは、一の紙幣の後に搬送される別の紙幣を識別し、さらに、一のコアは、別の紙幣の後に搬送されるさらに別の紙幣を識別する。
次に、本実施の形態に係る貨幣処理装置100で実行される識別処理の流れについて図6を用いて説明する。図6は、貨幣処理装置100で実行される識別処理を示すタイミングチャートである。なお、図6における横軸は、図4と同様、紙幣搬送方向の位置を示す軸であり、かつ、時間軸である。
(1)は、第1の紙幣S1がフォトセンサ61を通過後、光学ラインセンサ62に到達したタイミングの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。
(2)は、第1の紙幣S1が光学ラインセンサ62を通過し、第1のコア651が第1の紙幣S1の識別処理を開始するタイミングにおける搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。ここで、T1は、第1のコア651が第1の紙幣S1の識別処理を実行するために使用する時間である。
(3)は、第2の紙幣S2が光学ラインセンサ62に到達したタイミングにおける搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。
(4)は、第2の紙幣S2が光学ラインセンサ62を通過し、第2のコア652が第2の紙幣S2の識別処理を開始するタイミングにおける搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。ここで、T1は、第2のコア652が第2の紙幣S2の識別処理を実行するために使用する時間である。このとき、第1のコア651での第1の紙幣S1の識別処理は未だ完了していない。しかし、第2のコア652は、第2の紙幣S2の識別処理を開始する。
(5)は、第1の紙幣S1が光学ラインセンサ62を通過してからT1時間が経過したときの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。このタイミングにおいて第1のコア651での第1の紙幣S1の識別処理が完了する。
(6)は、第2の紙幣S2が光学ラインセンサ62を通過してからT1時間が経過したときの搬送部50上の紙幣の搬送状態を示している。このタイミングにおいて第2のコア652での第2の紙幣S2の識別処理が完了する。
すなわち、本実施の形態に係る貨幣処理装置100では、図6の矢印A1およびA2で示すように、第1のコア651において第1の紙幣S1の識別処理が実行されている状態であっても、第2のコア652は、第2の紙幣S2の識別処理を開始する。その結果、第2のコア652が第2の紙幣S2の識別処理を開始してから、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1を迎えるまでに、T1時間が経過する。すなわち、第2のコア652は、紙幣の識別処理を完了させるべきタイミングt1を迎えるまでに、第2の紙幣S2の識別処理を完了させることができる。その結果、分岐爪51による第2の紙幣S2の適切な振り分けが確実に行なわれる。
なお、上述した実施の形態では、識別制御部66が3つコアを有し、これらを用いて紙幣の識別処理を実行する例について説明した。しかし、識別制御部66が有するコアの数は、3つに限られず、2つであっても、4つ以上であってもよい。
また、上述した実施の形態では、識別制御部66をマルチコアCPUによって構成した。しかし、識別制御部66の構成はこれに限られず、シングルコアで構成されるCPUを複数備えるものであってもよい。この場合も上述した実施の形態と同様に、各CPUのそれぞれが、一の紙幣の金種、真偽および正損の全ての識別処理を実行する。これにより、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。