JPWO2019244531A1 - 表面処理窒化アルミニウムの製造方法、表面処理窒化アルミニウム、樹脂組成物、及び硬化物 - Google Patents
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Abstract
放熱性、耐湿性、及び耐熱性に優れた放熱性絶縁硬化物を製造することが可能な表面処理窒化アルミニウムの製造方法を提供する。a)窒化アルミニウムと、下記一般式(1)(R1、R2、R3及びR4は水素原子等;R5は直鎖状又は分岐状のアルキル基等を表す)で表される化合物等のシラン化合物とを反応させて反応物を得る第一の工程;及びb)得られた前記反応物を300〜1,500℃で加熱する第二の工程;を含む表面処理窒化アルミニウムの製造方法である。
Description
本発明は、表面処理窒化アルミニウムの製造方法、表面処理窒化アルミニウム、樹脂組成物、及び硬化物に関する。
LED照明等に代表される照明部材、COBチップ及びSMDチップ等に代表される電子部材、並びに車載用等に用いられるパワーモジュール部材には、部材内部で生じた熱を外部へ放出するためのシート状の放熱体が用いられている。このような放熱体としては、放熱性が高く、コストが低く、加工が容易である等の理由から、放熱性絶縁硬化物である樹脂シートを用いることが検討されている。
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂、硬化促進剤、及びシランカップリング剤で処理されたアルミナを含有する熱伝導材料が開示されている。また、特許文献2には、酸化ケイ素膜で被覆された窒化アルミニウム、硬化促進剤、ビフェニルエポキシ樹脂、及びブロム化エポキシ樹脂を含有する半導体封止用の樹脂組成物が開示されている。
放熱性絶縁硬化物に対しては、放熱性が高い、耐湿性が高い、及び耐熱性が高い等の性質を有することが要求されている。しかしながら、放熱性絶縁硬化物の放熱性と、耐湿性及び耐熱性とは、一般的にトレードオフの関係にある。そして、特許文献1に記載の熱伝導材料や特許文献2に記載の樹脂組成物を用いても、所望とする放熱性、耐湿性、及び耐熱性を有する硬化物を得ることは困難であった。
したがって、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、放熱性、耐湿性、及び耐熱性に優れた放熱性絶縁硬化物を製造することが可能な表面処理窒化アルミニウムの製造方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記製造方法によって製造される表面処理窒化アルミニウム、この表面処理窒化アルミニウムを用いた樹脂組成物、及びこの樹脂組成物の硬化物を提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するシラン化合物を用いて窒化アルミニウムを所定の工程で表面処理することによって、前記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、a)窒化アルミニウムと、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物とを反応させて反応物を得る第一の工程;及びb)得られた前記反応物を300〜1,500℃で加熱する第二の工程;を含む表面処理窒化アルミニウムの製造方法が提供される。
(前記一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、m及びnは各々独立に2〜5の整数を表し、αは1〜3の整数を表し、βは0〜2の整数を表し、αとβとの和は1〜3の整数を表す)
(前記一般式(2)中、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R8及びR9は各々独立に炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、p及びqは各々独立に2〜8の整数を表し、γは1〜3の整数を表す)
また、本発明によれば、上記の製造方法によって製造された表面処理窒化アルミニウムが提供される。
さらに、本発明によれば、熱硬化性樹脂及び上記の表面処理窒化アルミニウムを含有する樹脂組成物が提供される。
また、本発明によれば、上記の樹脂組成物を硬化してなる硬化物が提供される。
本発明によれば、放熱性、耐湿性、及び耐熱性に優れた放熱性絶縁硬化物を製造することが可能な表面処理窒化アルミニウムの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、上記製造方法によって製造される表面処理窒化アルミニウム、この表面処理窒化アルミニウムを用いた樹脂組成物、及びこの樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の表面処理窒化アルミニウムの製造方法は、a)窒化アルミニウムと、一般式(1)で表される化合物及び一般式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物とを反応させて反応物を得る第一の工程;及びb)得られた反応物を300〜1,500℃で加熱する第二の工程;を含む。
窒化アルミニウムの種類は特に制限されるものではなく、周知一般の窒化アルミニウムを用いることができる。窒化アルミニウムの結晶構造としては、六方晶、立方晶などを挙げることができる。エネルギー的に安定であるため、その結晶構造が六方晶である窒化アルミニウムを用いることが好ましい。窒化アルミニウムとしては、例えば、粒子状の窒化アルミニウム(窒化アルミニウム粒子)を用いることができる。なお、粒子には、板状粒子、球状粒子、繊維状粒子、鱗片状粒子などが含まれる。粒子状の窒化アルミニウムの平均粒子径は、0.5〜100μmであることが好ましく、1〜50μmであることがさらに好ましい。粒子の状態は、一次粒子又は一次粒子の凝集体である二次粒子が好ましい。本明細書における「平均粒子径」は、体積基準の粒子径分布の50%累積値(D50)を意味する。なお、粒子の粒子径分布は、レーザー回析式の粒度分布測定装置を使用して測定することができる。
第一の工程では、窒化アルミニウムと、シラン化合物とを反応させて反応物を得る。シラン化合物のうちの1つは、下記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、m及びnは各々独立に2〜5の整数を表し、αは1〜3の整数を表し、βは0〜2の整数を表し、αとβとの和は1〜3の整数を表す。
炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などを挙げることができる。窒化アルミニウムとの反応性が良好であるため、R1〜R4は各々独立に水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R5はメチル基又はエチル基であることが好ましい。m及びnは、各々独立に2又は3であることが好ましく、3であることがさらに好ましい。また、βは0であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記式No.1〜48で表される化合物(化合物No.1〜48)を挙げることができる。なお、下記式No.1〜48中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表す。
第一の工程で用いる、窒化アルミニウムと反応させるシラン化合物のうちのもう1つは、下記一般式(2)で表される化合物である。
一般式(2)中、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R8及びR9は各々独立に炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、p及びqは各々独立に2〜8の整数を表し、γは1〜3の整数を表す。
炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などを挙げることができる。窒化アルミニウムとの反応性が良好であるため、R6及びR7は各々独立に水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。また、R8及びR9は各々独立にメチル基又はエチル基であることが好ましい。p及びqは、各々独立に2又は3であることが好ましい。また、γは3であることが好ましい。
一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記式No.49〜68で表される化合物(化合物No.49〜68)を挙げることができる。なお、下記式No.49〜68中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表す。
一般式(1)で表される化合物は、周知の反応を応用して製造することができる。例えば、オルトケイ酸テトラアルキルとアルコールとアンモニアとを反応させる方法;(ハロゲン化アルキル)アルコキシシランとアルキルアミンとを反応させる方法;等により製造することができる。より具体的には、オルトケイ酸テトラエチル、2−プロパノール、及びアンモニアを原料として使用し、下記式(3)に示す反応によって、下記式No.19で表される化合物(化合物No.19)を製造することができる。
また、(3−ブロモプロピル)トリエトキシシランとメチルアミンを原料として使用し、下記式(4)に示す反応によって、下記式No.20で表される化合物(化合物No.20)を製造することができる。
一般式(2)で表される化合物は、周知の反応を応用して製造することができる。例えば、(ハロゲン化アルキル)アルコキシシランとアルキレンジアミンとを反応させる方法等により製造することができる。より具体的には、3−クロロプロピルトリメトキシシランとエチレンジアミンを原料として使用し、下記式(5)に示す反応によって、下記式No.49で表される化合物(化合物No.49)を製造することができる。
窒化アルミニウムと反応させるシラン化合物の量は、窒化アルミニウム1gに対して、0.0001〜0.1gであることが好ましく、0.0005〜0.05gであることがさらに好ましく、0.001〜0.1gであることが特に好ましい。シラン化合物の量が少なすぎると、得られる表面処理窒化アルミニウムの耐湿性及び耐熱性がやや低くなることがある。一方、シラン化合物の量が多すぎると、得られる表面処理窒化アルミニウムの放熱性がやや低くなることがある。
窒化アルミニウムとシラン化合物を溶媒に浸漬する方法(以下、「浸漬法」とも記す);シラン化合物と溶媒の混合物を窒化アルミニウムに噴霧する方法(以下、「噴霧法」とも記す)等により、窒化アルミニウムとシラン化合物とを反応させることができる。反応温度は10〜100℃とすることが好ましく、20〜90℃とすることがさらに好ましい。
溶媒としては、周知一般の有機溶媒や水を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;ピリジン;ルチジン等を挙げることができる。窒化アルミニウムの分散性や、反応温度と沸点又は引火点との関係等を考慮し、上記の有機溶媒を一種単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
浸漬法により窒化アルミニウムとシラン化合物とを反応させる場合、窒化アルミニウムに対する溶媒の量は、窒化アルミニウム1gに対して、0.1〜1gであることが好ましく、0.2〜0.5gであることがさらに好ましい。また、噴霧法により窒化アルミニウムとシラン化合物とを反応させる場合、窒化アルミニウムに対する溶媒の量は、窒化アルミニウム1gに対して、0.001〜0.2gであることが好ましく、0.005〜0.1gであることがさらに好ましい。
第二の工程では、第一の工程で得た反応物を300〜1,500℃、好ましくは400〜700℃で加熱する。これにより、目的とする本発明の表面処理窒化アルミニウムを得ることができる。加熱温度が300℃未満であると、耐湿性及び耐熱性に優れた表面処理窒化アルミニウムを得ることができない。一方、加熱温度が1,500℃超であると、エネルギーコストの面で不利である。
加熱時間は0.1〜20時間とすることが好ましく、0.5〜5時間とすることがさらに好ましい。加熱時間が0.1時間未満であると、得られる表面処理窒化アルミニウムの耐湿性及び耐熱性がやや低くなることがある。一方、加熱時間が20時間超であると、エネルギーコストの面でやや不利になることがある。
酸化性の雰囲気で反応物を加熱することが好ましい。酸化性の雰囲気としては、例えば空気、酸素、空気と酸素の混合ガス等の雰囲気を挙げることができる。また、加熱する際の圧力は、0.01〜0.5MPa程度とすればよい。
反応物を加熱する方法は特に限定されず、窒化アルミニウムの形状や生産効率等を考慮し、例えば、マッフル炉、トンネルキルン、ロール炉等を使用する方法を適宜選択すればよい。
本発明の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂、及び上述の製造方法により製造された表面処理窒化アルミニウムを含有する。熱硬化性樹脂としては、周知一般の熱硬化性樹脂を用いることができる。熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、シアネート樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルテレフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂などを挙げることができる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の樹脂組成物を熱伝導性材料形成用の原料として用いる場合、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いることが好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、オキサゾリドン環型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
樹脂組成物中の熱硬化性樹脂の含有量は、表面処理窒化アルミニウムに対して5〜50質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が5質量%未満であると、熱硬化性樹脂の配合効果を得ることが困難になることがある。一方、熱硬化性樹脂の含有量が50質量%超であると、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の放熱性がやや低下することがある。
樹脂組成物には、必要に応じて、周知一般の窒化アルミニウムを含有させることができる。窒化アルミニウムとしては、その平均粒子径が5μm未満の窒化アルミニウム粒子が好ましい。窒化アルミニウムの含有量は、表面処理窒化アルミニウムに対して100質量%未満とすることが好ましい。窒化アルミニウムの平均粒子径が5μm以上、又は窒化アルミニウム含有量が100質量%以上であると、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐湿性及び耐熱性がやや低下することがある。含有させることができる窒化アルミニウムの市販品としては、例えば、商品名「ANF−A−01−F」(Maruwa社製)等を挙げることができる。
樹脂組成物には、必要に応じて硬化剤を含有させることができる。硬化剤としては、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤などを挙げることができる。樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、表面処理窒化アルミニウムに対して5質量%未満とすることが好ましい。
樹脂組成物には、必要に応じて各種の添加物を含有させることができる。添加物としては、天然ワックス類、合成ワックス類、及び長鎖脂肪族酸の金属塩類等の可塑剤;酸アミド類、エステル類、及びパラフィン類等の離型剤;ニトリルゴム、及びブタジエンゴム等の応力緩和剤;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化錫、水酸化錫、酸化モリブデン、硼酸亜鉛、メタ硼酸バリウム、赤燐、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びアルミン酸カルシウム等の無機難燃剤;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモ無水フタル酸、ヘキサブロモベンゼン、及びブロム化フェノールノボラック等の臭素系難燃剤;リン系難燃剤;シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤;染料及び顔料等の着色剤を挙げることができる。さらに、添加剤としては、酸化安定剤、光安定剤、耐湿性向上剤、チキソトロピー付与剤、希釈剤、消泡剤、その他の各種樹脂、粘着付与剤、帯電防止剤、滑剤、及び紫外線吸収剤等を挙げることができる。
樹脂組成物には、さらに、アルコール類、エーテル類、アセタール類、ケトン類、エステル類、アルコールエステル類、ケトンアルコール類、エーテルアルコール類、ケトンエーテル類、ケトンエステル類、エステルエーテル類、及び芳香族系溶剤等の有機溶媒等を含有させることもできる。
本発明の樹脂組成物は、放熱性絶縁硬化物を製造するための材料として好適である。また、本発明の樹脂組成物は、プリント配線基板、半導体封止絶縁材、パワー半導体、LED照明、LEDバックライト、パワーLED、及び太陽電池等の電気・電子分野の種々の部材を構成する樹脂材料として広く利用することができる。具体的には、プリプレグ、封止剤、積層基板、塗布性の接着剤、接着シート等の硬化性成分や、各種塗料の硬化性成分として有用である。
上述の樹脂組成物を硬化させることで、硬化物を形成することができる。すなわち、本発明の硬化物は、上述の樹脂組成物を硬化させてなる硬化物である。例えば、上述の樹脂組成物を加熱等して硬化させることで、硬化物を得ることができる。硬化物の形状は特に限定されないが、例えば、シート、フィルム、及び板等の形状(以下、これらの形状を纏めて「シート状」とも記す)を挙げることができる。有機溶媒を含有する樹脂組成物を硬化させると、有機溶媒を含有する硬化物が得られる場合と、有機溶媒が揮発して実質的に残留していない(有機溶媒を実質的に含有しない)硬化物が得られる場合とがある。本発明の硬化物には、有機溶媒を含有する硬化物と、有機溶媒を実質的に含有しない硬化物の両方が含まれる。
硬化物は、周知の方法により製造することができる。例えば、キャリアフィルムや金属箔等の支持体上に樹脂組成物を塗布して形成した塗布層を硬化させることで、シート状の硬化物を製造することができる。また、樹脂組成物を塗布して形成した塗布層を支持体から基体に転写した後に硬化させることでも、シート状の硬化物を製造することができる。基体としては、シリコンウェハーやアルミウェハー等を挙げることができる。基体の形状としては、シート、フィルム、及び板等を挙げることができる。
シート状の硬化物を製造する際には、塗工装置を使用して樹脂組成物を支持体上に塗工してもよく、スプレー装置を使用して樹脂組成物を支持体に噴霧して塗工してもよい。塗工装置としては、ロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター、及びスクリーン印刷装置等を挙げることができる。また、刷毛塗りによって樹脂組成物を支持体上に塗工してもよい。支持体上に樹脂組成物を塗工した後、常圧〜10MPaの圧力下、10〜300℃で0.5〜10時間硬化させることで、シート状の硬化物を製造することができる。
支持体としては、シート状の硬化物を形成するため、取扱いが容易であるものを選択して用いることが好ましい。シート状の硬化物を使用する際には、シート状の硬化物を支持体から剥離する。このため、シート状の硬化物の剥離が容易である支持体を用いることが好ましい。支持体としては、キャリアフィルムを用いることができる。キャリアフィルムの材質としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;フッ素系樹脂;ポリイミド樹脂等の耐熱性を有する熱可塑性樹脂が好ましい。
支持体にとして、金属箔を用いることもできる。金属箔を支持体として用いる場合には、硬化物を形成した後に金属箔を剥離してもよく、金属箔をエッチングしてもよい。金属箔としては、銅、銅系合金、アルミニウム、アルミニウム系合金、鉄、鉄系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金等の金属箔が好ましい。また、キャリア箔付き極薄金属箔を支持体として用いてもよい。
硬化物の形状がシート状である場合、シート状の硬化物の厚さは、用途により適宜設定すればよい。シート状の硬化物の厚さは、例えば、20〜150μmの範囲とすることができる。
本発明の硬化物は良好な熱伝導性を有するため、例えば、プリント配線基板、半導体封止絶縁材、パワー半導体、LED照明、LEDバックライト、パワーLED、太陽電池等の電気・電子分野の種々の部材の樹脂基材として広く適用することができる。より具体的には、プリプレグ、封止剤、積層基板、塗布性の接着剤、接着シート等に用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
<(A)成分>
(A)成分として、以下に示すA−1を用意した。
A−1:窒化アルミニウムフィラー(商品名「ANF−S30」、MARUWA社製、平均粒子径:約30μm)
(A)成分として、以下に示すA−1を用意した。
A−1:窒化アルミニウムフィラー(商品名「ANF−S30」、MARUWA社製、平均粒子径:約30μm)
<(B)成分>
(B)成分として、以下に示すB−1〜B−5を用意した。
B−1:化合物No.19
B−2:化合物No.20
B−3:化合物No.49
B−4:比較例化合物1
B−5:比較例化合物2
(B)成分として、以下に示すB−1〜B−5を用意した。
B−1:化合物No.19
B−2:化合物No.20
B−3:化合物No.49
B−4:比較例化合物1
B−5:比較例化合物2
比較例化合物1(B−4)及び比較化合物2(B−5)の構造を以下に示す。
<(C)成分>
(C)成分(溶媒)として、以下に示すC−1及びC−2を用意した。
C−1:純水
C−2:エタノール
(C)成分(溶媒)として、以下に示すC−1及びC−2を用意した。
C−1:純水
C−2:エタノール
<表面処理窒化アルミニウムの製造>
(実施例1〜5、比較例1〜5)
表1に示す配合で(A)成分及び(C)成分−2を混合し、3本ロールミルを使用して分散させて分散液を調製した。調製した分散液に、(B)成分及び(C)成分−1を混合して得た混合液を滴下した。70℃で3時間撹拌した後、微減圧条件下で乾燥した。次いで、大気圧条件下及び大気雰囲気下、マッフル炉を使用して表1に示す温度及び時間で加熱して、実施例表面処理窒化アルミニウム1〜5及び比較例表面処理窒化アルミニウム1〜5を得た。
(実施例1〜5、比較例1〜5)
表1に示す配合で(A)成分及び(C)成分−2を混合し、3本ロールミルを使用して分散させて分散液を調製した。調製した分散液に、(B)成分及び(C)成分−1を混合して得た混合液を滴下した。70℃で3時間撹拌した後、微減圧条件下で乾燥した。次いで、大気圧条件下及び大気雰囲気下、マッフル炉を使用して表1に示す温度及び時間で加熱して、実施例表面処理窒化アルミニウム1〜5及び比較例表面処理窒化アルミニウム1〜5を得た。
<表面処理窒化アルミニウムの耐湿性及び耐熱性の評価>
(評価例1〜5、比較評価例1〜5)
製造した表面処理窒化アルミニウム1gを85℃の温水10gに1時間浸漬した後、水質計(商品名「MM−60R」、東亜ディーケーケー社製)を使用して温水の電気伝導率を測定した。測定結果を表2に示す。実施例窒化アルミニウム2〜5及び比較例窒化アルミニウム1〜5についても同様に測定した。なお、用いた温水の電気伝導率は2mS/mである。
(評価例1〜5、比較評価例1〜5)
製造した表面処理窒化アルミニウム1gを85℃の温水10gに1時間浸漬した後、水質計(商品名「MM−60R」、東亜ディーケーケー社製)を使用して温水の電気伝導率を測定した。測定結果を表2に示す。実施例窒化アルミニウム2〜5及び比較例窒化アルミニウム1〜5についても同様に測定した。なお、用いた温水の電気伝導率は2mS/mである。
表面処理窒化アルミニウムの耐湿性及び耐熱性が低い場合、温水中に窒化アルミニウムの分解物であるアンモニアが溶出しやすいため、温水の電気伝導率が高くなる。すなわち、測定した電気伝導率が低い場合、表面処理窒化アルミニウムの耐湿性及び耐熱性が優れていることを意味する。表2に示すように、評価例1〜5では温水の電気伝導率が低いことがわかる。また、化合物No.19及び化合物No.20を(B)成分として用いた評価例1〜4では、温水の電気伝導率がより低いことがわかる。さらに、加熱温度を400〜700℃とした評価例1〜3では、温水の電気伝導率が特に低いことがわかる。一方、比較評価例1〜5では、温水の電気伝導率が高いことが明らかである。以上の結果から、比較例表面処理窒化アルミニウム1〜5と比較して、実施例表面処理窒化アルミニウム1〜5の耐湿性及び耐熱性が優れていることが明らかである。
<(D)成分>
(D)成分として、実施例表面処理窒化アルミニウム1〜5及び比較例表面処理窒化アルミニウム1〜5を用意した。
(D)成分として、実施例表面処理窒化アルミニウム1〜5及び比較例表面処理窒化アルミニウム1〜5を用意した。
<(E)成分>
(E)成分として、以下に示すE−1を用意した。
E−1:窒化アルミニウムフィラー(商品名「ANF−A−01−F」、MARUWA社製、平均粒子径:約1μm)
(E)成分として、以下に示すE−1を用意した。
E−1:窒化アルミニウムフィラー(商品名「ANF−A−01−F」、MARUWA社製、平均粒子径:約1μm)
<(F)成分>
(F)成分として、以下に示すF−1及びF−2を用意した。
F−1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(商品名「NC−3000H」、日本化薬社製)
F−2:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(商品名「MEH−7851H」、明和化成工業社製)
(F)成分として、以下に示すF−1及びF−2を用意した。
F−1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(商品名「NC−3000H」、日本化薬社製)
F−2:ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(商品名「MEH−7851H」、明和化成工業社製)
<(G)成分>
(G)成分として、以下に示すG−1及びG−2を用意した。
G−1:湿潤分散剤(商品名「BYK−W903」、ビックケミー・ジャパン社製)
G−2:シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業社製)
(G)成分として、以下に示すG−1及びG−2を用意した。
G−1:湿潤分散剤(商品名「BYK−W903」、ビックケミー・ジャパン社製)
G−2:シランカップリング剤(商品名「KBM−403」、信越化学工業社製)
<樹脂組成物の製造>
(実施例6〜10、比較例6〜10)
表3に示す配合で(D)〜(G)成分を混合し、ビーズミルを使用して分散させることで、実施例樹脂組成物1〜5及び比較例樹脂組成物1〜5を製造した。表3中、(E)〜(G)成分の量(質量部)は、(D)成分の量を100質量部として算出した量である。
(実施例6〜10、比較例6〜10)
表3に示す配合で(D)〜(G)成分を混合し、ビーズミルを使用して分散させることで、実施例樹脂組成物1〜5及び比較例樹脂組成物1〜5を製造した。表3中、(E)〜(G)成分の量(質量部)は、(D)成分の量を100質量部として算出した量である。
<熱伝導性シートの製造>
[実施例11〜15、比較例11〜15]
実施例6〜10及び比較例6〜10で得た実施例樹脂組成物1〜5及び比較例樹脂組成物1〜5を、バーコーター法によりPETフィルム上に100μmの厚さとなるようにそれぞれ塗布した後、100℃で10分間加熱して乾燥させた。190℃で90分間加熱して硬化させた後、PETフィルムを剥離して、シート状の熱伝導性硬化物である実施例硬化物1〜5及び比較例硬化物1〜5を製造した。製造した硬化物と使用した樹脂組成物との対応関係を表4に示す。
[実施例11〜15、比較例11〜15]
実施例6〜10及び比較例6〜10で得た実施例樹脂組成物1〜5及び比較例樹脂組成物1〜5を、バーコーター法によりPETフィルム上に100μmの厚さとなるようにそれぞれ塗布した後、100℃で10分間加熱して乾燥させた。190℃で90分間加熱して硬化させた後、PETフィルムを剥離して、シート状の熱伝導性硬化物である実施例硬化物1〜5及び比較例硬化物1〜5を製造した。製造した硬化物と使用した樹脂組成物との対応関係を表4に示す。
<熱伝導性シートの耐湿性及び耐熱性の評価>
(評価例6〜10、比較評価例6〜10)
製造した各硬化物を85℃、湿度85%雰囲気下に静置し、静置後の硬化物の質量増加率を測定及び算出した。静置時間は200、400、600、800、及び1,000時間とした。結果を表5に示す。
(評価例6〜10、比較評価例6〜10)
製造した各硬化物を85℃、湿度85%雰囲気下に静置し、静置後の硬化物の質量増加率を測定及び算出した。静置時間は200、400、600、800、及び1,000時間とした。結果を表5に示す。
質量増加率が低い場合や、静置時間600時間以降で質量増加率が変化しない場合は、硬化物の耐湿性及び耐熱性が優れていることを意味する。表5に示すように、評価例6〜10では質量増加率が低いとともに、静置時間600時間以降で質量増加率が変化しないことがわかる。一方、比較評価例6〜10では質量増加率が高いとともに、静置時間600時間以降も質量増加率が増加し続けたことがわかる。以上の結果から、比較例硬化物1〜5と比較して、実施例硬化物1〜5の耐湿性及び耐熱性が優れていることが明らかである。
<熱伝導性シートの熱伝導性の評価>
(評価例11〜15、比較評価例11)
熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名「ai−Phase Mobile」、アイフェイズ社製)を使用し、周期加熱法によって、実施例硬化物1〜5及び比較例硬化物5の熱拡散率を測定した。結果を表6に示す。
(評価例11〜15、比較評価例11)
熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名「ai−Phase Mobile」、アイフェイズ社製)を使用し、周期加熱法によって、実施例硬化物1〜5及び比較例硬化物5の熱拡散率を測定した。結果を表6に示す。
表6に示すように、実施例硬化物1〜5の熱拡散率は、比較例硬化物5の熱拡散率よりも高いことがわかる。また、化合物No.19及び化合物No.20を(B)成分として用いた実施例硬化物1〜4は、熱拡散率がより高いことがわかる。さらに、加熱温度を400〜700℃とした実施例硬化物1〜3は、熱拡散率が特に高いことがわかる。
前述の通り、放熱性絶縁硬化物の放熱性と、耐湿性及び耐熱性とは、一般的にトレードオフの関係にある。このため、耐湿性や耐熱性に優れた放熱性絶縁硬化物は、一般的に放熱性が低い。これに対して、本発明の表面処理窒化アルミニウムを含有する樹脂組成物を用いて製造した硬化物は、熱伝導性(放熱性)、耐湿性、及び耐熱性のいずれについても優れた硬化物であることがわかる。
Claims (9)
- a)窒化アルミニウムと、下記一般式(1)で表される化合物及び下記一般式(2)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物とを反応させて反応物を得る第一の工程;及び
b)得られた前記反応物を300〜1,500℃で加熱する第二の工程;
を含む表面処理窒化アルミニウムの製造方法。
(前記一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R5は炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、m及びnは各々独立に2〜5の整数を表し、αは1〜3の整数を表し、βは0〜2の整数を表し、αとβとの和は1〜3の整数を表す)
(前記一般式(2)中、R6及びR7は各々独立に水素原子又は炭素原子数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R8及びR9は各々独立に炭素原子数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、p及びqは各々独立に2〜8の整数を表し、γは1〜3の整数を表す) - 前記一般式(1)中、βが0である請求項1に記載の製造方法。
- 前記一般式(1)中、n及びmが3である請求項1又は2に記載の製造方法。
- 前記一般式(2)中、γが3である請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
- 前記反応物を400〜700℃で加熱する請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された表面処理窒化アルミニウム。
- 熱硬化性樹脂及び請求項6に記載の表面処理窒化アルミニウムを含有する樹脂組成物。
- 熱伝導性材料形成用原料である請求項7に記載の樹脂組成物。
- 請求項7又は8に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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