JPWO2019235128A1 - リチウムイオン電池用電極、リチウムイオン電池用電極スラリー、リチウムイオン電池用電極の製造方法およびリチウムイオン電池 - Google Patents
リチウムイオン電池用電極、リチウムイオン電池用電極スラリー、リチウムイオン電池用電極の製造方法およびリチウムイオン電池 Download PDFInfo
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Abstract
Description
リチウムイオン電池用電極の剥離強度が低い場合、電極や電池の生産性が低下したり、電池を組み立てる工程において電極活物質層の粉落ちが起こり、その結果、電池の品質劣化や電池のサイクル特性等に不具合が起きたりする懸念がある。
集電体層と、
上記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、電極活物質、バインダー樹脂および増粘剤を含む電極活物質層と、
を備えるリチウムイオン電池用電極であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、上記電極活物質層から抽出された上記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上であるリチウムイオン電池用電極が提供される。
電極活物質、バインダー樹脂、増粘剤および水系媒体を含むリチウムイオン電池用電極スラリーであって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、上記リチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された上記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上であるリチウムイオン電池用電極スラリーが提供される。
集電体層と、
上記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、上記リチウムイオン電池用電極スラリーの固形分により構成された電極活物質層と、を含むリチウムイオン電池用電極が提供される。
上記リチウムイオン電池用電極を製造するための製造方法であって、
上記リチウムイオン電池用電極スラリーを調製する工程を含み、
上記リチウムイオン電池用電極スラリーを調製する工程は、
GPC法を用いてプルラン換算で算出される、上記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上になるような条件で、電極活物質、バインダー樹脂および増粘剤を含む混合物を混練する工程を含むリチウムイオン電池用電極の製造方法が提供される。
上記リチウムイオン電池用電極を備える、リチウムイオン電池が提供される。
なお、本実施形態では特に断りがなければ、電極活物質を含む層を電極活物質層と呼び、集電体層上に電極活物質層を形成させたものを電極と呼ぶ。また、本実施形態では数値範囲の「A〜B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。
はじめに、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極およびリチウムイオン電池用電極スラリーについて説明する。図1は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池用電極100の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極100は、集電体層101と、集電体層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、電極活物質、バインダー樹脂および増粘剤を含む電極活物質層103と、を備え、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、電極活物質層103から抽出された上記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上である。
また、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極スラリーは、電極活物質、バインダー樹脂、増粘剤および水系媒体を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、上記リチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された上記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上である。
また、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極100は、集電体層101と、集電体層101の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極スラリーの固形分により構成された電極活物質層103と、を備え、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、電極活物質層103から抽出された上記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上であってもよい。
ここで、本実施形態に係る電極スラリーにおいて、増粘剤は電極スラリー中に溶解しており、粉末状態ではない。
また、本実施形態に係るリチウムイオン電池はリチウムイオン一次電池またはリチウムイオン二次電池であり、好ましくはリチウムイオン二次電池である。
(1)電極スラリー約12.5gをメスフラスコに量りとり、蒸留水を加えて50mLとする。
(2)軽く振り混ぜて均一な溶液にした後(例えば目視により確認)、超遠心分離機(日立工機株式会社製、製品名:日立分離用超遠心機、型式:CP80WX、ロータ:アングルロータP70AT)を用いて、超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行う。
(3)(2)で得られた分離後の上澄み液を回収して、再度超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行う。さらに、上澄み液を回収して、再度超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行う。これらの超遠心分離操作によって、スラリー中の電極活物質、バインダー樹脂、導電助剤等を除去する。
(4)(3)で得られた上澄み液を0.45μmフィルターでろ過し、得られた濾液をさらに0.20μmフィルターでろ過する。これにより、(3)で得られた上澄み液に残っている、電極活物質、バインダー樹脂および導電助剤等を除去する。得られた濾液を測定溶媒(0.1M塩化ナトリウム水溶液)で5倍に希釈し、以下の測定条件で増粘剤の分子量分布の測定をおこない、得られた結果からプルラン換算の重量平均分子量を算出する。ここで、プルラン換算の重量平均分子量とは、標準物質として単分散プルランを用いて作成した検量線を用いて算出した値である。
(測定条件)
装置:ゲル浸透クロマトグラフ GPC(東ソー株式会社製、ポンプ型式:DP−8020)
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー株式会社製、RI−8020型、感度16)
カラム:TSKgel guardcolumn PWXL(1本)、TSKgel PWXL(2本)(φ6mm×4cm、φ7.8mm×30cm、東ソー株式会社製)
溶媒:0.1M塩化ナトリウム水溶液
流速:0.5mL/min
カラム温度:45℃
注入量:0.2mL
標準物質:単分散プルラン(昭和電工製)
(1)リチウムイオン電池用電極から電極活物質層約1.0gを容器に削り取り、蒸留水を加えて撹拌し、スラリー状にする。
(2)得られた電極スラリー約12.5gをメスフラスコに量りとり、蒸留水を加えて50mLとする。
(3)軽く振り混ぜて均一な溶液にした後(例えば目視により確認)、超遠心分離機(日立工機株式会社製、製品名:日立分離用超遠心機、型式:CP80WX、ロータ:アングルロータP70AT)を用いて、超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行う。
(4)(3)で得られた分離後の上澄み液を回収して、再度超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行う。さらに、上澄み液を回収して、再度超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行う。これらの超遠心分離操作によって、スラリー中の電極活物質、バインダー樹脂、導電助剤等を除去する。
(5)(4)で得られた上澄み液を0.45μmフィルターでろ過し、得られた濾液をさらに0.20μmフィルターでろ過する。これにより、(4)で得られた上澄み液に残っている、電極活物質、バインダー樹脂および導電助剤等を除去する。得られた濾液を測定溶媒(0.1M塩化ナトリウム水溶液)で5倍に希釈し、以下の測定条件で増粘剤の分子量分布の測定をおこない、得られた結果からプルラン換算の重量平均分子量を算出する。ここで、プルラン換算の重量平均分子量とは、標準物質として単分散プルランを用いて作成した検量線を用いて算出した値である。
リチウムイオン電池用電極の剥離強度が低い場合、電極や電池の生産性が低下したり、電池を組み立てる工程において電極活物質層の粉落ちが起こり、その結果、電池の品質劣化や電池のサイクル特性等に不具合が起きたりする懸念がある。
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた。その結果、剥離強度が低いリチウムイオン電池用電極では、電極に含まれる増粘剤の重量平均分子量が、原料として用いた、スラリーに添加する前の原料増粘剤の重量平均分子量に比べて大きく低下していることを知見した。すなわち、リチウムイオン電池用電極を作製する工程、より具体的にはリチウムイオン電池用電極スラリーを調製する工程において、増粘剤の分子鎖が分解して重量平均分子量が大きく低下した場合に、集電体層と電極活物質層との接着性が低下し、剥離強度が低いリチウムイオン電池用電極が得られることが明らかになった。
本発明者らは上記知見を基にさらに鋭意検討した。その結果、増粘剤の分解が抑制されるような条件すなわちリチウムイオン電池用電極スラリーに含まれる増粘剤の重量平均分子量が上記下限値以上になるよう条件で増粘剤を含む混合物を混練して電極スラリーを調製することによって、得られる電極スラリーやリチウムイオン電池用電極中の増粘剤の重量平均分子量を高い値に維持することができ、その結果、集電体層と電極活物質層との接着性に優れたリチウムイオン電池用電極が得られることを見出した。
すなわち、本実施形態によれば、電極活物質層あるいはリチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された増粘剤の重量平均分子量を上記下限値以上とすることによって、集電体層と電極活物質層との接着性に優れたリチウムイオン電池用電極を得ることが可能となる。
まず、増粘剤の重量平均分子量が高いリチウムイオン電池用電極スラリーほど弾性が粘性よりも相対的に高く、リチウムイオン電池用電極スラリーを構成する各材料間の相互作用による3次元的なネットワークが発達していると考えられる。リチウムイオン電池用電極スラリー中の3次元的なネットワークが発達すると、集電体層に塗布したリチウムイオン電池用電極スラリーを乾燥する際のバインダー樹脂の電極活物質層表面への移動が抑えられ、その結果、バインダー樹脂が電極活物質層の表面に偏在してしまうことを抑制できると考えられる。
そして、バインダー樹脂の電極活物質層への表面偏在が抑制された結果、集電体層と電極活物質層との界面におけるバインダー樹脂の量を増やすことができ、集電体層と電極活物質層との接着性を向上させることができると考えられる。
すなわち、本実施形態によれば、電極活物質層あるいはリチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された増粘剤の重量平均分子量を上記下限値以上とすることによって、集電体層と電極活物質層との接着性に優れたリチウムイオン電池用電極を得ることが可能である。
すなわち、本実施形態によれば、電極活物質層あるいはリチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された増粘剤の重量平均分子量を上記下限値以上とすることによって、バインダー樹脂の電極活物質層表面への偏在を抑制でき、集電体層と電極活物質層との接着性を向上させることができる。
以上から、本実施形態によれば、集電体層と電極活物質層との接着性に優れたリチウムイオン電池用電極を提供することができる。
また、GPC法を用いてプルラン換算で算出される、電極活物質層あるいは電極スラリーから抽出された増粘剤の重量平均分子量(Mw)の上限は特に限定されないが、5000000以下であることが好ましく、4000000以下であることがより好ましく、3000000以下であることがさらに好ましく、2800000以下であることが特に好ましい。重量平均分子量が上記上限値以下であると、増粘剤の水系媒体への溶解性が向上し、電極スラリーの固形分濃度を高めることができ、その結果、本実施形態に係る電極スラリーの貯蔵弾性率を効果的に高めることができる。これにより、バインダー樹脂の電極活物質層表面への偏在をより一層抑制できるため、集電体層と電極活物質層との接着性をより一層向上させることができる。
本実施形態に係る電極スラリーの粘度は、例えば、電極スラリーの固形分濃度、電極スラリーを構成する各材料の配合比率、電極スラリーを構成する各材料の種類、電極スラリーを作製する際の固練り工程における固形分濃度や混合速度、混合時間等の製造条件を制御することにより調整することが可能である。
本実施形態に係る電極スラリーのpHの調整方法はとくに限定はされないが、例えば、電極スラリーを構成する各材料の配合比率や、電極スラリーを構成する各材料の種類等を調整することによって調整することができる。
次に、本実施形態に係る電極活物質層およびリチウムイオン電池用電極スラリーを構成する各材料について説明する。
本実施形態に係る電極活物質層は、正極活物質および負極活物質から選択される電極活物質と、バインダー樹脂と、増粘剤と、を含み、さらに必要に応じて導電助剤を含む。
本実施形態に係る電極スラリーは、正極活物質および負極活物質から選択される電極活物質と、バインダー樹脂と、増粘剤と、水系媒体と、を含み、さらに必要に応じて導電助剤を含む。
本実施形態に係る電極活物質は用途に応じて適宜選択される。正極を作製するときは正極活物質を使用し、負極を作製するときは負極活物質を使用する。
本実施形態において、電極活物質としては負極活物質を使用したときに、本実施形態の剥離強度向上効果を特に効果的に得ることができる。
オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
負極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ここで、天然黒鉛とは、鉱石として天然に産出する黒鉛のことをいう。本実施形態の核材として用いる天然黒鉛は、産地や性状、種類は特に限定されない。
また、人造黒鉛とは、人工的な手法で作られた黒鉛および黒鉛の完全結晶に近い黒鉛をいう。このような人造黒鉛は、例えば、石炭の乾留、原油の蒸留による残渣等から得られるタールやコークスを原料にして、焼成工程、黒鉛化工程を経ることにより得られる。
また、表面被覆黒鉛を用いると、黒鉛単独のときよりもバインダー樹脂との結着性を向上させることができるため、バインダー樹脂の量を減らすことができる。その結果、得られるリチウムイオン電池の電池特性を向上させることができる。
ここで、上記黒鉛粉末よりも結晶性の低い炭素材料とは、例えば、ソフトカーボン、ハードカーボン等のアモルファスカーボンである。
本実施形態においては、これらの有機化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの有機化合物は、必要に応じて、溶媒により溶解または分散させて用いてもよい。
上記有機化合物の中でも、価格の点からタールおよびピッチが好ましい。
炭素材料の被覆量を上記上限値以下とすることにより、リチウムイオンを吸蔵・放出する面積が大きくなり、得られるリチウムイオン電池のレート特性を向上させることができる。
炭素材料の被覆量を上記下限値以上とすることにより、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。また、炭素材料の被覆量を上記下限値以上とすることにより、得られる電極スラリーの安定性を向上させることができる。
ここで、上記被覆量は、熱重量分析により算出することができる。より具体的には、熱重量分析計(例えば、パーキンエルマ社製TGA7アナライザ)を用いて、酸素雰囲気下、昇温速度5℃/minにて負極活物質を900℃まで昇温したとき、質量減少が始まった温度から、質量減少割合が緩やかになり、その後質量減少が加速する温度までの減少質量を被覆量とすることができる。
比表面積を上記上限値以下とすることにより、不可逆容量の増大による初期の充放電効率の低下を抑制することができる。また、比表面積を上記上限値以下とすることにより、得られる電極スラリーの安定性を向上させることができる。
比表面積を上記下限値以上とすることにより、リチウムイオンを吸蔵・放出する面積が大きくなり、得られるリチウムイオン電池のレート特性を向上させることができる。
また、比表面積を上記範囲内とすることにより、バインダー樹脂の結着性を向上させることができる。
バインダー樹脂は、電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ゴム系バインダー樹脂やアクリル系バインダー樹脂等を用いることができる。
本実施形態に係るバインダー樹脂はラテックス粒子により形成され、水に分散させてエマルジョン水溶液として用いることが好ましい。すなわち、本実施形態に係るバインダー樹脂は、バインダー樹脂のラテックス粒子により形成され、かつ、水に分散してエマルジョン水溶液を形成できる、いわゆる水系バインダー樹脂が好ましい。これにより、電極活物質間や導電助剤間、電極活物質と導電助剤との間との接触を阻害せず、バインダー樹脂を電極活物質層中に含有させることができる。
なお、バインダー樹脂を分散させる水にはアルコール等の水と親水性の高い溶媒を混合させてもよい。
アクリル系バインダー樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸塩、またはメタクリル酸塩の単位(以下「アクリル単位」という)を含む重合体(単独重合体又は共重合体)等が挙げられる。この共重合体としては、アクリル単位とスチレン単位を含む共重合体、アクリル単位とシリコン単位を含む共重合体等が挙げられる。
これらのバインダー樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、結着性、電解液との親和性、価格および電気化学安定性等に優れる点から、スチレン・ブタジエン共重合体ゴムが特に好ましい。
バインダー樹脂を分散させる水系媒体については、バインダー樹脂を分散できるものであれば特に限定されないが、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水等を使用できる。これらの中でも、蒸留水やイオン交換水が好ましい。また、水には、アルコール等の水と親水性の高い溶媒を混合させてもよい。
スチレン由来の構成単位(以下、Stとも呼ぶ。)と1,3−ブタジエン由来の構成単位(以下、BDとも呼ぶ。)との質量比(St/BD)は、例えば、10/90〜90/10である。
共役ジエン系モノマーとしては、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、ピペリレン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
乳化重合としては従来既知の方法を用いることができる。例えば、スチレンと、1,3−ブタジエンと、さらには上記の各種共重合可能なモノマー成分とを、好ましくは乳化剤の存在下、重合開始剤を添加し、水中で乳化重合することにより製造することができる。
増粘剤としては、例えば、セルロース系水溶性高分子;ポリカルボン酸;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩;ポリビニルアルコール;等の水溶性ポリマーが挙げられる。これらの増粘剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でもセルロース系水溶性高分子が好ましい。
これらの中でもカルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロース塩から選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩およびカルボキシメチルセルロースのカリウム塩から選択される一種または二種以上を含むことがより好ましい。
ここで、エーテル化度とは、セルロース系水溶性高分子中の無水グルコース単位1個当たりの水酸基のカルボキシメチル基等への置換体への置換度のことをいう。
本実施形態に係る電極活物質層および電極スラリーは、得られる電極の電子伝導性を向上させる観点から、導電助剤をさらに含むことが好ましい。
導電助剤は、電子伝導性を有しており、電極の導電性を向上させるものであれば特に限定されない。本実施形態に係る導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、活物質として使用される黒鉛よりも粒子径の小さい黒鉛等の炭素材料が挙げられる。これらの導電助剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
導電助剤の含有量が上記範囲内であると、電極スラリーの塗工性およびバインダー樹脂の結着性のバランスがより一層優れる。
本実施形態に係る水系媒体については特に限定されず、例えば、蒸留水、イオン交換水、市水、工業用水等を使用できる。これらの中でも、蒸留水やイオン交換水が好ましい。また、水には、アルコール等の水と親水性の高い溶媒を混合させてもよい。
電極活物質層を構成する各成分の含有量が上記範囲内であると、リチウムイオン電池用電極の取扱い性と、得られるリチウムイオン電池の電池特性のバランスが特に優れる。
電極スラリーを構成する各成分の含有量が上記範囲内であると、電極スラリーの品質安定性と、得られるリチウムイオン電池の電池特性のバランスが特に優れる。
次に、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極スラリーおよびリチウムイオン電池用電極の製造方法について説明する。
電極スラリーまたは電極活物質層から抽出された増粘剤の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であるリチウムイオン電池用電極スラリーまたはリチウムイオン電池用電極を得るためには、(1)原料増粘剤の重量平均分子量、(2)電極スラリーの調製方法等の製造条件を高度に制御することが重要である。すなわち、以下の(1)および(2)の2つの条件に係る各種因子を高度に制御する製造方法によって初めて本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極スラリーおよびリチウムイオン電池用電極を得ることができる。
(1)原料増粘剤の重量平均分子量
(2)電極スラリーの調製方法(特に、電極スラリーを作製する際の固練り工程における固形分濃度や混合速度、混練時間等の製造条件)
以下、上記2つの条件に係る各種因子を高度に制御していることを前提に、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極スラリーおよびリチウムイオン電池用電極の製造方法の一例について説明する。
(1)電極活物質と、バインダー樹脂と、増粘剤と、水系媒体と、必要に応じて導電助剤と、を混合することにより電極スラリーを調製する工程
(2)得られた電極スラリーを集電体層101上に塗布して乾燥し、水系媒体を除去することによって、集電体層101上に電極活物質層103を形成する工程
以下、各工程について説明する。
電極スラリーを調製する工程では、GPC法を用いてプルラン換算で算出される、増粘剤の重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上になるような条件すなわち増粘剤の重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上を維持できるような緩やかな条件で、電極活物質、バインダー樹脂および増粘剤を含む混合物を混練することが重要である。
例えば、固形分濃度が高いほどスラリー前駆体に対して大きなせん断がかかるため増粘剤の分子鎖が切断されやすくなる。したがって、スラリー前駆体の固形分濃度が相対的に高くなるほど、スラリー前駆体を混練する際の混合速度を遅くしたり、混練時間を短くしたりすることによって、増粘剤の分解を抑制でき、その結果、重量平均分子量(Mw)を高い値に維持することができる。
スラリー前駆体調製工程(B):混合物あるいは電極活物質中に、水系媒体、バインダー樹脂を含むエマルジョン水溶液および増粘剤溶液から選択される一種または二種以上の液体成分を添加して湿式混合することにより、スラリー前駆体を調製する工程
電極スラリー調製工程(C):上記スラリー前駆体中に、水系媒体、バインダー樹脂を含むエマルジョン水溶液および増粘剤溶液から選択される一種または二種以上の液体成分をさらに添加して湿式混合することにより電極スラリーを調製する工程
また、原料増粘剤として増粘剤粉末ではなく、増粘剤溶液を使用してもよい。この場合、工程(A)はおこなわずに、スラリー前駆体調製工程(B)または電極スラリー調製工程(C)の段階で、増粘剤溶液を添加することができる。
本実施形態において、乾式混合工程(A)をおこなうことにより、電極活物質および増粘剤の分散性を高めることができ、その後の工程において、増粘剤由来のゲル成分の生成をより一層抑制できる。これにより、得られる電極スラリー中の増粘剤由来のゲル成分の発生を抑制できたり、電極スラリーの貯蔵弾性率を向上できたりする。
乾式混合工程(A)における上記乾式混合の自転速度が、上記範囲内であると、電極活物質および増粘剤粉末の飛散を抑制しながら、電極活物質および増粘剤粉末を十分に混合することができる。
乾式混合工程(A)における上記乾式混合の公転速度が、上記範囲内であると、電極活物質および増粘剤粉末の飛散を抑制しながら、電極活物質および増粘剤粉末を十分に混合することができる。
なじませ工程(B1)における上記湿式混合の自転速度が上記範囲内であると、紛体物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることや、紛体物の濡れが偏ってしまうこと、紛体物が混練時に飛び散ること等をより効果的に抑制しながら、紛体物に液体成分を十分になじませることができる。
なじませ工程(B1)における上記湿式混合の公転速度が上記範囲内であると、紛体物が湿式混合時に混合機のふちにせり上がってくることや、紛体物の濡れが偏ってしまうこと、紛体物が混練時に飛び散ること等をより効果的に抑制しながら、紛体物に液体成分を十分になじませることができる。
また、得られる電極スラリーは分散性がより一層優れるため、このような電極スラリーを用いると、より一層均一な電極活物質層を得ることができる。その結果、より一層電池特性に優れた電池を得ることができる。
また、本実施形態において、電極スラリー調製工程(C)における湿式混合の公転速度(遊星運動型ミキサーのブレードの線速度)は特に限定されないが、例えば、0.02m/sec以上3.0m/sec以下の範囲内である。
真空脱泡は混合機の容器や軸部にシール処理を施して気泡を除去してもよいし、別の容器に移してから行ってもよい。
負極集電体としては銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができ、これらの中でも銅が特に好ましい。
正極集電体としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができ、これらの中でもアルミニウムが特に好ましい。
集電体の形状については特に限定されないが、例えば、厚さが0.001〜0.5mmの範囲で箔状のものを用いることができる。
つづいて、本実施形態に係るリチウムイオン電池150について説明する。図2は、本発明に係る実施形態のリチウムイオン電池150の構造の一例を示す断面図である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池150は、本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極を備える。より具体的には、本実施形態に係るリチウムイオン電池150は、例えば、正極120と、電解質層110と、負極130とを少なくとも備え、正極120および負極130の少なくとも一方が本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極を含む。また、本実施形態に係るリチウムイオン電池150は、必要に応じてセパレーターを含んでもよい。
本実施形態に係るリチウムイオン電池150は、正極120および負極130の少なくとも一方が本実施形態に係るリチウムイオン電池用電極を含むため、電池を組み立てる際の電極活物質層の粉落ちが抑制されており、電池の品質や電池のサイクル特性等が良好である。
本実施形態に係るリチウムイオン電池150は公知の方法に準じて作製することができる。
電極の形態としては、例えば、積層体や捲回体等が挙げられる。外装体としては、例えば、金属外装体やアルミラミネート外装体等が挙げられる。電池の形状としては、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角型、扁平型等の形状が挙げられる。
多孔性セパレーターとしては、例えば、ポリプロピレン系、ポリエチレン系等のポリオレフィン系多孔性セパレーター;ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体等により形成された多孔性セパレーターが挙げられる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
<電極スラリーの作製>
(A)乾式混合工程
遊星運動型プラネタリーミキサー(釜の大きさ:1600L)に、電極活物質として炭素材料1(平均粒子径d50:16μm、窒素吸着BET法による比表面積:3.4m2/g)620kgと、原料増粘剤としてカルボキシメチルセルロース粉末(日本製紙株式会社製、MAC350HC(登録商標)、エーテル化度:0.8、重量平均分子量Mw:3230000、Mw/Mn=7.56)7kgと、導電助剤として約30nmの1次粒子が連鎖状に凝集したカーボンブラック(窒素吸着BET法による比表面積:60m2/g)3kgを投入した。次いで、自転速度:0.26m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:20℃の条件下で20分間乾式混合をおこない、粉体混合物を得た。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
以下、平均粒子径d50はMicrotrac社製、MT3000装置により測定し、比表面積は、Quantachrome Corporation社製、Quanta Sorbを用いて、窒素吸着BET法にて求めた。
また、電極スラリーの作製に用いる前の原料増粘剤の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、以下の手順により測定した。
濃度が1.2質量%の増粘剤水溶液を測定溶媒(0.1M塩化ナトリウム水溶液)で5倍に希釈し、以下の測定条件で増粘剤の分子量分布の測定をおこない、得られた結果からプルラン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ算出した。ここで、プルラン換算の重量平均分子量とは、標準物質として単分散プルランを用いて作成した検量線を用いて算出した値である。
(測定条件)
装置:ゲル浸透クロマトグラフ GPC(東ソー株式会社製、ポンプ型式:DP−8020)
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製、RI−8020型、感度16)
カラム:TSKgel guardcolumn PWXL(1本)、TSKgel PWXL(2本)(φ6mm×4cm、φ7.8mm×30cm、東ソー株式会社製)
溶媒:0.1M塩化ナトリウム水溶液
流速:0.5mL/min
カラム温度:45℃
注入量:0.2mL
標準物質:単分散プルラン(昭和電工製)
平均粒子径d50が16μm、比表面積が3.4m2/gの天然黒鉛を核材として使用した。
この天然黒鉛粉末99.0質量部と、石炭系ピッチ粉末1.0質量部とを、Vブレンダーを用いた単純混合により固相で混合した。得られた混合粉末を黒鉛るつぼに入れ、窒素気流下1300℃で1時間熱処理して、表面が非晶質の炭素で被覆された黒鉛を得た。
次いで、上記乾式混合工程(A)が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに、得られるスラリー前駆体の固形分濃度が71質量%になるように水を添加した。その後、自転速度:0.45m/sec、公転速度:0.14m/sec、温度:20℃、大気圧の条件下で15分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
次いで、上記第1の固練り工程(B2)が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに、得られるスラリー前駆体の固形分濃度が63質量%になるように水を添加し、自転速度、公転速度、温度は上記第1の固練り工程(B2)と同じ条件にしたまま、大気圧の条件下で30分間湿式混合をおこない、電極スラリー前駆体を得た。
次いで、バインダー樹脂としてスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を水に分散した固形分濃度40質量%のSBRエマルジョン水溶液を調製した。得られたSBRエマルジョン水溶液24kgを、固練り工程が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに添加した。
その後、自転速度:0.52m/sec、公転速度:0.15m/sec、温度:20℃の条件下で40分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
次いで、真空脱泡を行い、電極スラリーを得た。
なお、電極スラリーの最終的な固形分濃度は、電極スラリーを調製する工程(C)において水を添加することによって51質量%に調整した。
得られた電極スラリーを集電体層である銅箔の両面にダイコータを用いて塗布し、乾燥した。次いで、得られた電極をプレスして、電極(負極)を得た。
(1)電極スラリーの粘度測定
B型粘度計(ブルックフィールド社製、回転粘度計)を用いて、25℃、せん断速度3.4s−1の条件で電極スラリーの粘度を測定した。
以下の手順により、得られた電極の剥離強度を測定した。電極を幅20mm、長さ10cmにわたって切り取り、電極の片面を両面テープが張られた板に貼り付けた。次いで、板を固定し、電極を100mm/minの速度で90°方向に剥離した。そのときの剥離強度(mN/mm)を3回測定し、その平均値を剥離強度とした。
電極スラリーから抽出された増粘剤の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、以下の手順により測定した。
(3−1)電極スラリー約12.5gをメスフラスコに量りとり、蒸留水を加えて50mLとした。
(3−2)軽く振り混ぜて均一な溶液にした後(例えば目視により確認)、超遠心分離機(日立工機株式会社製、製品名:日立分離用超遠心機、型式:CP80WX、ロータ:アングルロータP70AT)を用いて、超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行った。
(3−3)(3−2)で得られた分離後の上澄み液を回収して、再度超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行った。さらに、上澄み液を回収して、再度超遠心分離(30000rpm(66000G)×30分)を行った。これらの超遠心分離操作によって、スラリー中の電極活物質、バインダー樹脂および導電助剤を除去した。
(3−4)(3−3)で得られた上澄み液を0.45μmフィルターでろ過し、得られた濾液をさらに0.20μmフィルターでろ過した。これにより、(3−3)で得られた上澄み液に残っている、電極活物質、バインダー樹脂および導電助剤を除去した。得られた濾液を測定溶媒(0.1M塩化ナトリウム水溶液)で5倍に希釈し、以下の測定条件で増粘剤の分子量分布の測定をおこない、得られた結果からプルラン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ算出した。ここで、プルラン換算の重量平均分子量とは、標準物質として単分散プルランを用いて作成した検量線を用いて算出した値である。
(測定条件)
装置:ゲル浸透クロマトグラフ GPC(東ソー株式会社製、ポンプ型式:DP−8020)
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製、RI−8020型、感度16)
カラム:TSKgel guardcolumn PWXL(1本)、TSKgel PWXL(2本)(φ6mm×4cm、φ7.8mm×30cm、東ソー株式会社製)
溶媒:0.1M塩化ナトリウム水溶液
流速:0.5mL/min
カラム温度:45℃
注入量:0.2mL
標準物質:単分散プルラン(昭和電工製)
第1の固練り工程(B2)の固形分濃度および混合時間を表1に示す値にそれぞれ変化させ、電極活物質として、炭素材料1の代わりに炭素材料2(天然黒鉛、平均粒子径d50:13μm、窒素吸着BET法による比表面積:3.6m2/g)を使用し、さらに第2の固練り工程(B3)を実施しない以外は実施例1と同様に電極スラリーおよび電極を作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
<電極スラリーの作製>
(A)乾式混合工程
遊星運動型プラネタリーミキサー(釜の大きさ:1600L)に、電極活物質として炭素材料1(平均粒子径d50:16μm、窒素吸着BET法による比表面積:3.4m2/g)620kgと、導電助剤として約30nmの1次粒子が連鎖状に凝集したカーボンブラック(窒素吸着BET法による比表面積:60m2/g)3kgを投入した。次いで、自転速度:0.26m/sec、公転速度:0.08m/sec、温度:20℃の条件下で20分間乾式混合をおこない、粉体混合物を得た。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
以下、平均粒子径d50はMicrotrac社製、MT3000装置により測定し、比表面積は、Quantachrome Corporation社製、Quanta Sorbを用いて、窒素吸着BET法にて求めた。
次いで、上記乾式混合工程(A)が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに、得られるペースト前駆体の固形分濃度が86質量%になるように、濃度が1.2質量%の増粘剤水溶液(カルボキシメチルセルロース(日本製紙株式会社製 MAC350HC(登録商標)、エーテル化度:0.8、重量平均分子量Mw:3230000、Mw/Mn=7.56)を水に溶解させたもの)101kgを添加した。その後、自転速度:1.36m/sec、公転速度:0.43m/sec、温度:20℃、大気圧の条件下で35分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
次いで、得られるスラリー前駆体の固形分濃度が63質量%になるように濃度が1.2質量%の増粘剤水溶液(カルボキシメチルセルロース(日本製紙株式会社製 MAC350HC(登録商標)、エーテル化度:0.8、重量平均分子量Mw:3230000、Mw/Mn=7.56)を水に溶解させたもの)280kgを添加した。その後、自転速度:2.04m/sec、公転速度:0.65m/sec、温度:20℃、大気圧の条件下で50分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
次いで、上記第1の固練り工程(B2)が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに、得られるスラリー前駆体の固形分濃度が61質量%になるように濃度が1.2質量%の増粘剤水溶液(カルボキシメチルセルロース(日本製紙株式会社製 MAC350HC(登録商標)、エーテル化度:0.8、重量平均分子量Mw:3230000、Mw/Mn=7.56)を水に溶解させたもの)21kgを添加した。その後、自転速度:2.04m/sec、公転速度:0.65m/sec、温度:20℃、大気圧の条件下で11分間湿式混合をおこない、電極スラリー前駆体を得た。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
次いで、バインダー樹脂としてスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を水に分散した固形分濃度40質量%のSBRエマルジョン水溶液を調製した。得られたSBRエマルジョン水溶液24kgと、濃度が1.2質量%の増粘剤水溶液(カルボキシメチルセルロース(日本製紙株式会社製 MAC350HC(登録商標)、エーテル化度:0.8、重量平均分子量Mw:3230000、Mw/Mn=7.56)を水に溶解させたもの)131kgとを、固練り工程が終了した遊星運動型プラネタリーミキサーに添加した。
その後、自転速度:0.52m/sec、公転速度:0.15m/sec、温度:20℃の条件下で40分間湿式混合をおこなった。ここで、自転速度および公転速度は、遊星運動型プラネタリーミキサーのブレードの線速度である。
次いで、真空脱泡を行い、電極スラリーを得た。
なお、電極スラリーの最終的な固形分濃度は、電極スラリーを調製する工程(C)において水を添加することによって51質量%に調整した。
得られた電極スラリーを集電体層である銅箔の両面にダイコータを用いて塗布し、乾燥した。次いで、得られた電極をプレスして、電極(負極)を得た。
実施例1と同様の評価をおこなった。得られた結果を表1に示す。
電極活物質として、炭素材料1の代わりに炭素材料2(天然黒鉛、平均粒子径d50:13μm、窒素吸着BET法による比表面積:3.6m2/g)を用いた以外は実施例3と同様に電極スラリーおよび電極を作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
第1の固練り工程(B2)の固形分濃度および混合時間を表1に示す値にそれぞれ設定し、さらに第2の固練り工程(B3)を実施しない以外は実施例1と同様に電極スラリーおよび電極を作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
第1の固練り工程(B2)の自転速度および公転速度を表1に示す値にそれぞれ変化させた以外は実施例2と同様に電極スラリーおよび電極を作製し、各評価をそれぞれおこなった。得られた結果を表1に示す。
Claims (21)
- 集電体層と、
前記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、電極活物質、バインダー樹脂および増粘剤を含む電極活物質層と、
を備えるリチウムイオン電池用電極であって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、前記電極活物質層から抽出された前記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上であるリチウムイオン電池用電極。 - 請求項1に記載のリチウムイオン電池用電極において、
GPC法を用いてプルラン換算で算出される、前記電極活物質層から抽出された前記増粘剤の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6.0未満であるリチウムイオン電池用電極。 - 請求項1または2に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記電極活物質が炭素材料を含むリチウムイオン電池用電極。 - 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記増粘剤がセルロース系水溶性高分子を含むリチウムイオン電池用電極。 - 請求項4に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記セルロース系水溶性高分子のエーテル化度が0.50以上1.0以下であるリチウムイオン電池用電極。 - 請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記バインダー樹脂がゴム系バインダー樹脂およびアクリル系バインダー樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含むリチウムイオン電池用電極。 - 請求項6に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記バインダー樹脂がスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むリチウムイオン電池用電極。 - 請求項1乃至7のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記電極活物質層の全体を100質量部としたとき、
前記電極活物質の含有量が70質量部以上99.97質量部以下であり、
前記増粘剤の含有量が0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
前記バインダー樹脂の含有量が0.01質量部以上10.0質量部以下であるリチウムイオン電池用電極。 - 請求項1乃至8のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極において、
前記電極活物質層が導電助剤をさらに含むリチウムイオン電池用電極。 - 電極活物質、バインダー樹脂、増粘剤および水系媒体を含むリチウムイオン電池用電極スラリーであって、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いてプルラン換算で算出される、前記リチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された前記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上であるリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項10に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
GPC法を用いてプルラン換算で算出される、前記リチウムイオン電池用電極スラリーから抽出された前記増粘剤の重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が6.0未満であるリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項10または11に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
前記電極活物質が炭素材料を含むリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項10乃至12のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
前記増粘剤がセルロース系水溶性高分子を含むリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項13に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
前記セルロース系水溶性高分子のエーテル化度が0.50以上1.0以下であるリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項10乃至14のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
前記バインダー樹脂がゴム系バインダー樹脂およびアクリル系バインダー樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含むリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項15に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
前記バインダー樹脂がスチレン・ブタジエン共重合体ゴムを含むリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項10乃至16のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
前記リチウムイオン電池用電極スラリーの固形分の全量を100質量部としたとき、
前記電極活物質の含有量が70質量部以上99.97質量部以下であり、
前記増粘剤の含有量が0.01質量部以上10.0質量部以下であり、
前記バインダー樹脂の含有量が0.01質量部以上10.0質量部以下であるリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 請求項10乃至17のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーにおいて、
導電助剤をさらに含むリチウムイオン電池用電極スラリー。 - 集電体層と、
前記集電体層の少なくとも一方の面に設けられ、かつ、請求項10乃至18のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーの固形分により構成された電極活物質層と、を含むリチウムイオン電池用電極。 - 請求項19に記載のリチウムイオン電池用電極を製造するための製造方法であって、
請求項10乃至18のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極スラリーを調製する工程を含み、
前記リチウムイオン電池用電極スラリーを調製する工程は、
GPC法を用いてプルラン換算で算出される、前記増粘剤の重量平均分子量(Mw)が2000000以上になるような条件で、電極活物質、バインダー樹脂および増粘剤を含む混合物を混練する工程を含むリチウムイオン電池用電極の製造方法。 - 請求項1乃至9および19のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用電極を備える、リチウムイオン電池。
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