JPWO2019230838A1 - 歯ブラシ - Google Patents

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Abstract

ヘッド部が薄肉で口腔内操作性に優れ、かつマッサージ実感向上等の効果がある大径の毛束を有していても、ヘッド部に割れや白化が生じることを抑制しつつ、平線による毛束の固定力を充分に確保できる歯ブラシを提供する。ヘッド部(10)を含む樹脂製のハンドル体(1a)を備える平線式植毛を採用した歯ブラシ(1)であって、ヘッド部(10)の厚みが2mm以上、4mm以下であり、直径1.8mm以上の第1植毛穴(11a)の割合が10%以上であり、2つ以上の第1植毛穴(11a)がハンドル体(1a)の長軸方向に並び、長軸方向に隣り合う第1植毛穴(11a)の少なくとも一組が、長軸応力緩和パラメータP2に対する応力発生パラメータP1の割合が20〜30%であるという条件を満たす、歯ブラシ(1)。

Description

本発明は、歯ブラシに関する。
本願は、2018年5月31日に、日本に出願された特願2018−105172号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
歯ブラシの口腔内操作性を高め、口腔内の奥歯等の狭い部位の清掃実感を高める歯ブラシとしては、厚み2〜3mm程度の薄肉のヘッド部を備える歯ブラシが知られている(特許文献1)。歯茎を優しくマッサージできる歯ブラシとしては、ブラッシング圧が分散しやすい直径1.8mm以上の大径の毛束を平線の打ち込みにより植毛穴に植設した歯ブラシが知られている(特許文献2)。
特開2011−4852号公報 特開2012−34844号公報
しかし、薄肉のヘッド部に大径の植毛穴を形成する場合、植毛穴の深さが浅くなるために、平線による毛束の固定力が低くなる。そのため、植毛強度(毛束の抜け強度)や毛抜け強度(毛一本の抜け強度)が低下する。
毛束の固定力を高める方法としては、平線を長くする方法が考えられるが、薄肉のヘッド部に打ち込む平線を長くすると、ヘッド部における隣り合う植毛穴に打ち込まれた平線間に亀裂が入りやすく、ヘッド部に割れや白化が生じやすくなる。植毛穴の直径が大きいほど、植毛時にヘッド部に加わる衝撃が大きくなるため、割れや白化が生じやすい。
本発明は、ヘッド部が薄肉で口腔内操作性に優れ、かつマッサージ実感向上等の効果がある大径の毛束を有していても、ヘッド部に割れや白化が生じることを抑制しつつ、平線による毛束の固定力を充分に確保できる歯ブラシを提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]植毛面に複数の植毛穴が設けられたヘッド部を含む樹脂製のハンドル体を備え、前記植毛穴のそれぞれに平線の打ち込みにより毛束が植設された植毛部が設けられている歯ブラシであって、
前記ヘッド部の厚みが2mm以上、4mm以下であり、
前記植毛面に設けられた植毛穴の総数に対する、直径が1.8mm以上の大径の植毛穴の合計数の割合が10%以上であり、
2つ以上の前記大径の植毛穴が前記ハンドル体の長軸方向に並び、
長軸方向に隣り合う前記大径の植毛穴の少なくとも一組が、下記式1で表される応力発生パラメータPの下記式2で表される長軸応力緩和パラメータPに対する割合が20〜30%であるという条件を満たす、歯ブラシ。
=(S−S)×h ・・・式1
=S×D ・・・式2
(ただし、前記式1及び式2中、Sは、正面視で、前記大径の植毛穴に打ち込まれる前記平線の外接円の面積(mm)である。Sは、前記大径の植毛穴の開口面積(mm)である。hは、側面視で、前記植毛面から前記大径の植毛穴に打ち込まれる前記平線の下端までの距離(mm)である。Sは、長軸方向に隣り合う前記大径の植毛穴のそれぞれの開口縁と、隣り合う前記大径の植毛穴のいずれにも接し、かつ交差しない2本の接線とで囲まれる植毛面の面積(mm)である。Dは、前記ヘッド部の厚み(mm)である。)
[2]前記応力発生パラメータPが2.3〜4.0である、[1]に記載の歯ブラシ。
[3]前記大径の植毛穴の少なくとも一つが、下記式3で表される短軸応力緩和パラメータPが2.0〜5.5であるという条件を満たす、[1]又は[2]に記載の歯ブラシ。
=(S×D)/d ・・・式3
(ただし、前記式3中、Sは、前記大径の植毛穴に短軸方向と平行に引いた2本の接線と、前記ヘッド部の短軸方向の両側の縁とで囲まれる植毛面の面積(mm)であって、前記2本の接線と前記両側の縁で囲まれる領域iの面積SD1から、前記領域i内のすべての植毛穴の前記領域iと重なる部分の開口面積の合計SD2を差し引いた値である。Dは、前記ヘッド部の厚み(mm)である。dは、前記ヘッド部の幅(mm)である。)
[4]前記植毛面に、前記大径の植毛穴と、直径が1.8mm未満の小径の植毛穴とが形成され、
すべての前記大径の植毛穴について、正面視で、前記大径の植毛穴の中心を通る短軸方向に平行な直線を引いたとき、それらの直線の総本数に対して50%以上の直線が、前記小径の植毛穴の中心を通らない直線である、[1]〜[3]のいずれかに記載の歯ブラシ。
本発明の歯ブラシは、ヘッド部が薄肉で口腔内操作性に優れ、かつマッサージ実感向上等の効果がある大径の毛束を有していても、ヘッド部に割れや白化が生じることが抑制されつつ、平線による毛束の固定力が充分に確保されている。
本発明の歯ブラシの一例を示した正面図である。 図1の歯ブラシのヘッド部を拡大した正面図である。なお、毛束と平線は省略している。 図2の歯ブラシのA−A断面図である。なお、毛束と平線は省略している。 応力発生パラメータP及び長軸応力緩和パラメータPを説明する正面図である。なお、毛束は省略している。 応力発生パラメータP及び長軸応力緩和パラメータPを説明する断面図であり、図4におけるB−B断面図である。なお、毛束は省略している。 応力発生パラメータP及び長軸応力緩和パラメータPを説明する正面図である。なお、毛束は省略している。 短軸応力緩和パラメータPを説明する正面図である。なお、毛束と平線は省略している。 植毛面に形成された植毛穴に毛束が植設されている様子を示した断面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。 本発明の歯ブラシの他の例を示した正面図である。
以下、本発明の歯ブラシの一例を示して詳細に説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
本実施形態の歯ブラシ1は、図1〜3に示すように、樹脂製のハンドル体1aを備える。ハンドル体1aは、ヘッド部10と、ネック部12と、ハンドル部14とで形成されている。
ネック部12は、ヘッド部10の長軸方向の後端側に延接されている。ネック部12は、ハンドル部14とヘッド部10との間を連結する部分である。
ハンドル部14は、ネック部12の長軸方向の後端側に延接されている。ハンドル部14は、使用者が把持する部分である。
ハンドル体1aは、ヘッド部10、ネック部12及びハンドル部14が一体に成形されたものでもよく、それらのうちのいずれかを別に成形して接合させたものでもよい。
本発明において、最も先端側に配置された植毛穴の外縁の先端とヘッド部の先端との長軸方向における距離をL1(図2)とすると、ヘッド部の後端は、最も後端側の植毛穴の外縁の後端から長軸方向の後端側に距離L1の位置である。
ヘッド部10は、厚み方向の一方の側に植毛面10aを有している。
ヘッド部10の植毛面10aには、複数の円形の第1植毛穴11a及び第2植毛穴11bが形成されている。歯ブラシ1のヘッド部10には、植毛部18が設けられている。植毛部18では、複数の第1植毛穴11aのそれぞれに第1毛束16aが植設され、複数の第2植毛穴11bのそれぞれに第2毛束16bが植設されている。
歯ブラシ1では、図4〜6及び図8に示すように、第1植毛穴11a及び第2植毛穴11bのそれぞれに、複数本の用毛15を束ねて二つ折りにした第1毛束16a及び第2毛束16bが平線20の打ち込みにより植設されている。このように、本発明の歯ブラシは、平線式植毛の歯ブラシである。
ヘッド部10の厚みD(図3)は、2mm以上、4mm以下であり、2.5mm以上、3.5mm以下が好ましい。ヘッド部10の厚みが前記範囲の上限値以下であれば、歯ブラシ1の口腔内操作性に優れ、奥歯等の口腔内の狭い場所の清掃実感が高い。ヘッド部10の厚みが前記範囲の下限値以上であれば、ヘッド部の割れや白化を抑制し、毛束抜け強度を確保することができる。
なお、前記のヘッド部の厚みDの範囲は、ヘッド部のどの位置で測定しても厚みが前記範囲内になっていることを意味する。
ヘッド部10の幅d(図2)は、6〜16mmが好ましく、8〜15mmがより好ましく、10〜12mmが更に好ましい。ヘッド部10の幅が前記範囲の下限値以上であれば、大径の植毛穴を短軸方向に複数配置しても、植毛穴のピッチを十分に確保しやすいため、ヘッド部の割れや白化を抑制しやすい。また、大径の毛束を活かした口腔内全体の清掃に適した毛束の配列が可能である。ヘッド部10の幅が前記範囲の上限値以下であれば、薄肉のヘッド部の利点である口腔内操作性を損ないにくい。
なお、前記のヘッド部の幅dの範囲は、ヘッド部における最大の幅が前記範囲内になっていることを意味する。また、本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、〜の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
ヘッド部10の長さは、10〜33mmが好ましく、12〜28mmがより好ましい。ヘッド部10の長さが前記範囲の下限値以上であれば、大径の植毛穴を長軸方向に複数配置しても、穴間の距離を確保しやすく、ヘッド部の割れや白化を抑制しやすい。また、大径の毛束を活かした口腔内全体の清掃に適した毛束の配列が可能である。ヘッド部10の長さが前記範囲の上限値以下であれば、薄肉のヘッド部の利点である口腔内操作性を損ないにくい。
本発明では、ヘッド部の植毛面に形成される複数の植毛穴は、直径が単一の植毛穴でもよく、直径の異なる植毛穴の組み合わせでもよい。直径の異なる植毛穴を組み合わせる場合は、歯ブラシを長軸方向に刷掃する際に、毛束の当たり心地を一定に保つ点から、長軸方向に並ぶ植毛穴の直径を揃えることが好ましい。また、歯茎に対するマッサージ実感を得やすい点から、ブラッシング圧が分散しやすい、より直径が大きい植毛穴を短軸方向の外側に配置することが好ましい。また、薄肉のヘッド部を活かした奥歯の清掃実感を更に高め、かつ前記マッサージ実感と両立させるためには、清掃効果を担う直径が小さい毛束を短軸方向において内側に配置することが好ましい。なお、短軸方向とは、植毛面と平行で、長軸方向と直交する方向である。
植毛穴の配列パターンは、特に限定されず、千鳥状、格子状を例示できる。
本発明の歯ブラシのヘッド部には、直径1.8mm以上の大径の植毛穴がハンドル体の長軸方向に2つ以上並ぶように、各植毛穴が形成される。
なお、「植毛穴が長軸方向に並ぶ」とは、ヘッド部の正面視において、任意の植毛穴の短軸方向の両側に接するように、長軸方向に平行な接線を2本引いたときに、その2本の接線で挟まれた領域に少なくとも一部が重なるように別の植毛穴が形成されている状態を意味する。植毛穴が長軸方向に並ぶ態様には、任意の植毛穴の中心を通る長軸方向に平行な直線上に別の植毛穴の中心が位置するように直線的に並んでいる態様だけでなく、任意の植毛穴の中心を通る長軸方向に平行な直線からずれた位置に中心が位置し、かつ一部が前記領域に重なるように別の植毛穴が並んで形成されている態様も含まれる。
同様に、「植毛穴が短軸方向に並ぶ」は、ヘッド部の正面視において、任意の植毛穴の長軸方向の両側に接するように、短軸方向に平行な接線を2本引いたときに、その2本の接線で挟まれた領域に少なくとも一部が重なるように別の植毛穴が形成されている状態を意味する。
この例では、図2に示すように、ヘッド部10の植毛面10aの短軸方向の両側のそれぞれに、長軸方向に並ぶ直径1.8mm以上の大径の第1植毛穴11aが5個ずつ形成されている。植毛面10aの短軸方向の第1植毛穴11aよりも内側の中央部には、長軸方向に3列に並ぶ直径1.8mm未満の小径の第2植毛穴11bが合計17個形成されている。小径の第2植毛穴11bは千鳥状に形成されている。
本発明では、ヘッド部の植毛面の短軸方向の外側に、直径1.8mm以上の大径の植毛穴をヘッド部の側縁に沿って長軸方向に配置し、それら大径の植毛穴で中央部の植毛穴を挟むように配列することが好ましい。歯ブラシ1では、ヘッド部10の側縁に沿って長軸方向に形成された2列の大径の第1植毛穴11aにより、中央部の小径の第2植毛穴11bが挟まれている。これにより、刷掃時の歯茎のマッサージ実感をより高くできる。
本発明では、中央部の小径の植毛穴を1列の対の大径の植毛穴で挟んでもよく、2列の対の大径の植毛穴で挟んでもよい。
なお、本発明では、ヘッド部の植毛面の短軸方向の中央部に複数の大径の植毛穴を形成し、それらの大径の植毛穴の短軸方向の両側に小径の植毛穴を形成してもよい。
歯ブラシ1では、ヘッド部10の短軸方向に並んでいる大径の第1植毛穴11aと小径の第2植毛穴11bとが、第1植毛穴11aの中心と第2植毛穴11bの中心が短軸方向に平行な同一の直線上に存在しないように形成されている。
本発明では、ヘッド部の植毛面に大径の植毛穴と小径の植毛穴を形成する場合、この例のように大径の植毛穴の中心と小径の植毛穴の中心が、短軸方向に平行な同一の直線上に存在しないようにすることが好ましい。すなわち、大径の植毛穴と小径の植毛穴を短軸方向に並べる場合でも、それらの大径の植毛穴の中心と小径の植毛穴の中心が短軸方向においてずれるように形成することが好ましい。これにより、短軸方向に複数の大径の植毛穴及び小径の植毛穴を形成しても、植毛穴のピッチを十分に確保しやすいため、ヘッド部に割れが生じにくくなる。
ヘッド部の短軸方向に2つ以上の大径の植毛穴を形成する場合、それら大径の植毛穴同士も、それぞれの植毛穴の中心が短軸方向に平行な同一の直線上に存在しないようにすることが好ましい。ヘッド部の短軸方向に2つ以上の小径の植毛穴を形成する場合、それら小径の植毛穴同士も、それぞれの植毛穴の中心が短軸方向に平行な同一の直線上に存在しないようにすることが好ましい。
本発明では、ヘッド部の短軸方向に並ぶすべて植毛穴が、任意の植毛穴の中心を通る直線上に別の植毛穴の中心が存在しないように、互いにずれて形成されていることが特に好ましい。
直径1.8mm以上の大径の第1植毛穴11aの直径は、1.8〜3.2mmが好ましく、2.0〜2.5mmがより好ましい。第1植毛穴11aの直径が前記範囲の下限値以上であれば、歯茎のマッサージ実感が向上する。第1植毛穴11aの直径が前記範囲の上限値以下であれば、毛束を植設したときに平線下の毛束折り返し部分が太くなることを抑制でき、平線を植毛穴深さの方向に深く打ち込むことが可能となるために毛束抜け強度や1本毛抜け強度を確保しやすく、また、ヘッド部の割れや白化を抑制しやすい。
長軸方向に並ぶ大径の植毛穴の直径は、同一であることが好ましい。
直径1.8mm未満の小径の第2植毛穴11bの直径は、1.0〜1.7mmが好ましく、1.2〜1.5mmがより好ましい。第2植毛穴11bの直径が前記範囲の下限値以上であれば、歯垢清掃に必要な毛束の剛性を確保することができる。第2植毛穴11bの直径が前記範囲の上限値以下であれば、歯垢清掃に必要な、適度な毛束の撓みを確保することができる。
長軸方向に並ぶ小径の植毛穴の直径は、同一であることが好ましい。
なお、植毛穴の直径は、正面視での植毛穴の形状が円形である場合はその直径であり、正面視での植毛穴の形状が円形以外の場合は正面視における当該植毛穴の外接円の直径である。
本発明では、植毛面に設けられた植毛穴の総数に対する直径1.8mm以上の大径の植毛穴の合計数の割合(以下、「割合Q」とも記す。)を10%以上とする。本実施形態の歯ブラシ1では、割合Qは34%である。割合Qを10%以上とすることで、歯茎のマッサージ実感が高くなる。割合Qの上限は100%である。
割合Qの下限値は10%以上であり、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。割合Qの上限値は100%であり、80%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、40%以下が更に好ましい。割合Qは10〜80%が好ましく、20〜50%がより好ましく、30〜40%が更に好ましい。これにより、歯茎のマッサージ実感と歯垢清掃を両立することができる。
本発明では、植毛面に設けられた植毛穴の総数に対して、直径2.0mm以上の植毛穴の合計数の割合が10%以上であることが好ましく、直径2.0mm以上の植毛穴の合計数の割合が20%以上であることがより好ましく、直径2.0mm以上の植毛穴の合計数の割合が30%以上であることが更に好ましい。これにより、歯茎のマッサージ実感が得られやすい。
本発明の歯ブラシにおいては、長軸方向に隣り合う大径の植毛穴の少なくとも一組が、下記式1で表される応力発生パラメータPの下記式2で表される長軸応力緩和パラメータPに対する割合(以下、「割合Q」とも記す。)が20〜30%であるという条件(以下、「条件I」とも記す。)を満たしている。
=(S−S)×h ・・・式1
=S×D ・・・式2
ただし、式1及び式2中、Sは、正面視で、大径の植毛穴に打ち込まれる平線の外接円の面積(mm)である。Sは、大径の植毛穴の開口面積(mm)である。hは、側面視で、植毛面から大径の植毛穴に打ち込まれる平線の下端までの距離(mm)である。Sは、長軸方向に隣り合う大径の植毛穴のそれぞれの開口縁と、隣り合う大径の植毛穴のいずれにも接し、かつ交差しない2本の接線とで囲まれる植毛面の面積(mm)である。Dは、ヘッド部の厚み(mm)である。
長軸方向に並んで隣り合う大径の植毛穴の直径が異なる場合、応力発生パラメータPの計算に用いるS、S及びhには、それぞれ直径が大きい方の植毛穴及び平線についての値を採用する。
ヘッド部の厚みが長軸方向において変化する場合、長軸応力緩和パラメータPの計算に用いる厚みDには、長軸方向に並んで隣り合う大径の植毛穴の中心同士の中間点でのヘッド部の厚みを採用する。
この例の歯ブラシ1において、ヘッド部10で互いの中心が長軸方向に平行な直線上に並ぶように隣り合う2つの大径の第1植毛穴11aでは、例えば、図4に示すように、ヘッド部10の正面視で、大径の第1植毛穴11aに打ち込まれる平線20の外接円の面積(mm)をSとする。大径の第1植毛穴11aの開口面積をSとする。長軸方向に隣り合う大径の第1植毛穴11aのそれぞれの開口縁と、隣り合う大径の第1植毛穴11aのいずれにも接し、かつ交差しない2本の接線k1,k2とで囲まれる植毛面10aの面積(mm)をSとする。図5に示すように、ヘッド部10の側面視で、植毛面10aから大径の第1植毛穴11aに打ち込まれる平線20の下端までの距離(mm)をhとする。
ヘッド部10の先端または後端寄りの部分において、互いの中心は長軸方向に平行な直線上に並んでいない状態で、長軸方向に並んで隣り合う2つの大径の第1植毛穴11aでは、S、S、hは上記の場合と同じである。また、図6に示すように、長軸方向に隣り合う大径の第1植毛穴11aのそれぞれの開口縁と、隣り合う大径の第1植毛穴11aのいずれにも接し、かつ交差しない2本の接線k3,k4とで囲まれる植毛面10aの面積(mm)をSとする。
本発明では、長軸方向に隣り合う大径の植毛穴のすべての組み合わせのうち、少なくとも一組が条件Iを満たす。長軸方向に並んで隣り合う大径の植毛穴のすべての組み合わせが条件Iを満たしてもよく、条件Iを満たす組み合わせと条件Iを満たさない組み合わせが混在してもよい。
長軸方向に並んで隣り合う大径の植毛穴のすべての組み合わせの総数に対する、条件Iを満たすように隣り合う大径の植毛穴の組み合わせの数の比率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。前記比率が前記下限値以上であれば、大径の植毛穴を用いた薄肉ヘッドの条件であっても、植毛強度及び毛抜け強度を保ちつつ、ヘッド部の割れを抑制できる効果が得られやすい。
割合Q(=(P/P)×100)は、20〜30%であり、22〜30%が好ましく、25〜30%がより好ましく、25〜27%が更に好ましい。割合Qが前記範囲の範囲内であれば、大径の植毛穴を用いた薄肉ヘッドの条件であっても、植毛強度及び毛抜け強度を保ちつつ、ヘッド部の割れを抑制できる。一般に歯ブラシにおいては植毛時に長軸方向に割れが生じやすい傾向があるが、割合Qが前記範囲の範囲内であれば、大径の植毛穴を用いた薄肉ヘッドの条件であっても、長軸方向の割れを十分に抑制できる。
応力発生パラメータPは、2.3〜4.0が好ましく、2.4〜3.7がより好ましい。応力発生パラメータPが前記範囲の下限値以上であれば、平線の掛代が十分に大きくなり、十分な植毛強度及び毛抜け強度が確保されやすい。応力発生パラメータPが前記範囲の上限値以下であれば、平線の掛代が長くなりすぎたり、打ち込みの衝撃が大きくなりすぎたりすることを抑制でき、薄肉でもヘッド部の長軸方向に割れが生じることを抑制しやすい。
長軸応力緩和パラメータPは、6〜17が好ましく、6〜14がより好ましく、7〜11が更に好ましい。長軸応力緩和パラメータPが前記範囲の下限値以上であれば、平線の打ち込み時の衝撃が十分に緩和されやすく、薄肉でもヘッド部に割れや白化が生じることが抑制される。長軸応力緩和パラメータPが前記範囲の上限値以下であれば、植毛穴の間隔が広くなりすぎず、疎毛感が生じにくく、十分な清掃力及びマッサージ感が得られやすい。
hは、1.1〜1.8mmが好ましく、1.3〜1.7mmがより好ましい。hは、植毛穴の深さから当該植毛穴の半径を差し引いた値に等しいことが好ましい。
本発明の歯ブラシにおいては、大径の植毛穴の少なくとも一つが、下記式3で表される短軸応力緩和パラメータPが2.0〜5.5であるという条件(以下、「条件II」とも記す。)を満たしていることが好ましい。
=(S×D)/d ・・・式3
ただし、式3中、Sは、大径の植毛穴に短軸方向と平行に引いた2本の接線と、ヘッド部の短軸方向の両側の縁とで囲まれる植毛面の面積(mm)であって、前記2本の接線と前記両側の縁で囲まれる領域iの面積SD1から、前記領域i内のすべての植毛穴の前記領域iと重なる部分の開口面積の合計SD2を差し引いた値である。Dは、ヘッド部の厚みである。dは、ヘッド部の幅である。
ヘッド部の幅が長軸方向において変化する場合、dは、正面視でPを算出しようとする植毛穴の中心を通る短軸方向の直線上でのヘッド部の短軸方向の縁同士の距離とする。
この例では、図7に示すように、大径の第1植毛穴11aに短軸方向と平行に引いた2本の接線m1,m2と、ヘッド部10の短軸方向の両側の縁10b,10cとで囲まれる植毛面10aの面積(mm)をSとする。
は、以下のように算出できる。ヘッド部10の正面視において、大径の第1植毛穴11aの長軸方向の両側に接するように、短軸方向と平行に引いた2本の接線m1,m2と、ヘッド部10の短軸方向の両側の縁10b,10cとで囲まれる領域iの面積(mm)をSD1とする。領域i内のすべての第1植毛穴11a及び第2植毛穴11bの開口面積の合計(mm)をSD2とする。第1植毛穴11a及び第2植毛穴11bにおいて一部のみが領域i内にある植毛穴については、当該植毛穴の開口端の開口面積のうちの領域iに重なっている部分の面積だけをSD2の算出に用いる。SD1からSD2を差し引いてSを算出する。
本発明では、大径の植毛穴の少なくとも一つが条件IIを満たす。大径の植毛穴のすべてが条件IIを満たしてもよく、条件IIを満たす大径の植毛穴と条件IIを満たさない大径の植毛穴が混在してもよい。
取り得るSのパターン総数に対する、条件IIを満たすSのパターンの合計数の比率は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。前記比率が前記下限値以上であれば、短軸方向の割れを抑制しつつ、十分な清掃力及びマッサージ感を得ることが容易になる。
なお、正面視で、植毛穴の中心が短軸方向に平行な同一の直線上にあり、Sを算出する際の領域iが同一となる2つ以上の大径の植毛穴が存在する場合は、「取り得るSのパターン総数」を数える際、それら大径の植毛穴については纏めて1つのSのパターンであるとして数える。
短軸応力緩和パラメータPは、2.0〜5.5が好ましく、3.0〜5.0がより好ましく、3.5〜4.5が更に好ましい。一般に歯ブラシによるブラッシング時にはヘッド部が長軸方向に撓むため、短軸方向に割れが発生しやすい傾向があるが、短軸応力緩和パラメータPが前記範囲の下限値以上であれば、短軸方向の割れを十分に抑制しやすい。短軸応力緩和パラメータPが前記範囲の上限値以下であれば、植毛穴の間隔が広くなりすぎず、疎毛感が生じにくく、十分な清掃力及びマッサージ感が得られやすい。
この例の歯ブラシ1では、すべての大径の第1植毛穴11aについて、正面視で、大径の第1植毛穴11aの中心を通る短軸方向に平行な直線を引いたとき、それらの直線の総本数に対して50%以上の直線が、小径の第2植毛穴11bの中心を通らない直線である。本発明では、ヘッド部の植毛面に大径の植毛穴と小径の植毛穴を形成する場合、この例のようにすべての前記大径の植毛穴について、正面視で、前記大径の植毛穴の中心を通る短軸方向に平行な直線を引いたとき、それらの直線の総本数に対して50%以上の直線が、前記小径の植毛穴の中心を通らない直線であることが好ましい。
なお、前記「小径の植毛穴の中心を通らない」とは、前記大径の植毛穴の中心を通る短軸方向に平行な直線を中心として、歯ブラシの長軸方向に前記大径の植毛穴の直径の20%の幅で均等に平行移動した際に形成される領域内に、前記小径の植毛穴の中心が存在しないことを意味する。
また、正面視で、2つ以上の大径の植毛穴の中心が短軸方向に平行な同一の直線上にある場合、それらの大径の植毛穴の中心を通る短軸方向に平行な直線は一致するため、前記直線の総本数を数える際には1本として数える。
また、前記の取り得るSのパターン総数の計測及び前記直線の総本数の計測において「同一の直線上にある」とは、前記大径の植毛穴の中心を通る短軸方向に平行な直線を中心として、歯ブラシの長軸方向に前記大径の植毛穴の直径の20%の幅で均等に平行移動した際に形成される領域内に、他の大径の植毛穴の中心が存在することを意味する。
大径の植毛穴を設けると小径の植毛穴を設ける場合に比べてヘッド部が短軸方向に割れやすくなる。また、大径の植毛穴と小径の植毛穴を組み合わせる場合、大径の植毛穴のみの場合に比べて穴数が多くなる傾向があり、また、大径の植毛穴にかかる応力と短軸方向に隣接する小径の植毛穴にかかる応力には差があるため、歪みが生じやすくなる。そのため、大径の植毛穴と小径の植毛穴を組み合わせると、ヘッド部がさらに割れやすくなる傾向がある。これに対し、前記直線の総本数に対して50%以上の直線が小径の植毛穴の中心を通らない直線となるように、大径の植毛穴と小径の植毛穴を短軸方向においてずらして形成することで、ヘッド部の短軸方向の割れが抑制されやすくなる。前記割合は、70%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
ハンドル体1aの全長は、操作性等を勘案して適宜決定でき、例えば、100〜200mm程度である。
ハンドル体1aの材質としては、曲げ弾性率(JIS K7171)が1500MPa以上の樹脂が好ましい。ハンドル体1aの材質として用いる樹脂の曲げ弾性率は、1500MPa以上、3000MPa以下がより好ましく、2000MPa以上、2700MPa以下がさらに好ましい。樹脂の曲げ弾性率が前記下限値以上であれば、ヘッド部10の反りが抑制されやすい。樹脂の曲げ弾性率が前記上限値以下であれば、刷掃時のネック部12が適度にたわむことにより、歯茎のマッサージ実感が向上する。また、毛先の歯列への追従性を高めることができ、効率良く歯みがきできるようになる。
ハンドル体1aの材質として用いる好ましい樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)を例示でき、樹脂強度の点でPOMが特に好ましい。
ハンドル体1aの材質として用いる樹脂は、1種でもよく、2種以上でもよい。
ハンドル体は、把持性を向上させるため、例えばエラストマー等の柔軟な樹脂が部分的又は全体に被覆されていてもよい。前記の柔軟な樹脂としては、接着性が向上する点から、ハンドル体の材質がPPであればオレフィン系のエラストマーが好ましく、POMであればスチレン系のエラストマーが好ましい。
用毛の材質としては、特に限定されず、ポリアミド(6−12ナイロン、6−10ナイロン、12−ナイロン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン(ポリプロピレン等)、エラストマー(オレフィン系、スチレン系等)等の合成樹脂材料や天然材質を例示できる。用毛15の材質は、1種でもよく、2種以上でもよい。
用毛の横断面形状は、円形であることが多いが、円形には限定されず、三角形、四角形、六角形、花びら状等でもよく、これらを組み合わせた形状でもよい。用毛全体の外観形状も特に限定されず、ウエーブ状、ツイスト状、ギザギザ状等に加工されたものを用いることもできる。
用毛の直径は、3〜12mil(0.076〜0.305mm)が好ましく、5〜10mil(0.127〜0.254mm)がより好ましい。大径の植毛穴には用毛径の小さな用毛を植設することが好ましい。これにより、太い毛束であっても刷掃時に毛束を撓ませることが可能となり、歯茎のマッサージ実感が高い歯ブラシを提供できる。
なお、用毛の直径は、用毛の横断面形状が円形である場合はその直径であり、用毛の横断面形状が円形以外の場合は用毛の横断面の外接円の直径である。
用毛は、毛先丸め部を除いて1本の用毛内ではほぼ同一径の通常毛でもよい。なお、ヘッド部10の植毛面10a付近では上記太さであって、毛先へ向かうに従って徐々に径が細くなるように先鋭化されたテーパー毛であっても構わない。この場合、歯の隙間への毛先の侵入性が良く、ソフトなあたり心地が実現できるため、歯頸部の清掃や歯茎のマッサージには好適となる。また、通常毛とテーパー毛とを植毛穴毎に適宜選択したり、同一毛束内で混毛したり、自由に組み合わせることができる。
用毛の植毛面10aからの長さ(毛丈)は、適宜設定でき、例えば、6〜15mm程度である。用毛の毛丈は、大人用では9mm〜15mm、子供用では6mm〜9mmの範囲内が好ましい。
第1毛束16a及び第2毛束16bの直径は、植設する第1植毛穴11a及び第2植毛穴11bの直径に応じて設定すればよい。
以上説明したように、本発明の歯ブラシにおいては、ヘッド部の厚みが2mm以上、4mm以下の薄肉であるため、口腔内操作性に優れ、奥歯等の清掃実感が高い。また、直径1.8mm以上の植毛穴の割合Qが10%以上であるため、歯茎のマッサージ実感が高まる等、大径の毛束が植毛されることによる様々な効果が得られる。
また、薄肉のヘッド部に対し、植毛時にヘッド部に与える衝撃が大きい大径の植毛穴を長軸方向に並べて形成する場合、特に割れや白化が生じやすい傾向がある。これに対して、本発明の歯ブラシでは、長軸応力緩和パラメータPに対する応力発生パラメータPの割合Qを特定の範囲に制御しつつ2つ以上の大径の植毛穴を長軸方向に並べる。そのため、ヘッド部の割れや白化の発生を抑制しつつ、平線による毛束の十分な固定力を確保でき、高い植毛強度及び毛抜け強度を得ることができる。
なお、本発明の歯ブラシは、前記した歯ブラシ1には限定されない。
例えば、本発明の歯ブラシにおいてヘッド部の植毛面に植設される毛束の数や、植毛穴の配列パターンは、歯ブラシ1のものには限定されない。具体的には、本発明の歯ブラシにおける毛束の数や、植毛穴の配列パターンは、図9〜15に例示した歯ブラシ1A〜1Gのような態様であってもよい。
本発明の歯ブラシは、図16に示すように、小径の第2植毛穴11bが短軸方向の外側に配置され、大径の第1植毛穴11aが短軸方向の内側に配置された歯ブラシ1Hであってもよい。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[奥歯の清掃しやすさの評価]
専門家パネル10人による官能試験を行い、奥歯(第二大臼歯)の清掃しやすさを以下の基準で評価した。専門家パネル10名の平均点が4.0点以上、5.0点以下を「◎」、3.0点以上、4.0点未満を「○」、2.0点以上、3.0点未満を「△」、2.0点未満を「×」とした。○又は◎であるものを奥歯の清掃しやすさが高い歯ブラシであると判断した。
(評価基準)
5点:非常に磨きやすい。
4点:やや磨きやすい。
3点:どちらでもない。
2点:やや磨きにくい。
1点:非常に磨きにくい。
[歯垢を落とす実感]
専門家パネル10人による官能試験を行い、歯垢を落とす実感を以下の基準で評価した。専門家パネル10名の平均点が4.0点以上、5.0点以下を「◎」、3.0点以上、4.0点未満を「○」、2.0点以上、3.0点未満を「△」、2.0点未満を「×」とした。○又は◎であるものを歯垢を落とす実感が高い歯ブラシであると判断した。
(評価基準)
5点:非常に感じる。
4点:やや感じる。
3点:どちらでもない。
2点:あまり感じない。
1点:全く感じない。
[歯茎のマッサージ実感の評価]
専門家パネル10人による官能試験を行い、歯茎のマッサージ実感を以下の基準で評価した。専門家パネル10名の平均点が4.0点以上、5.0点以下を「◎」、3.0点以上、4.0点未満を「○」、2.0点以上、3.0点未満を「△」、2.0点未満を「×」とした。○又は◎であるものを歯茎のマッサージ実感が高い歯ブラシであると判断した。
(評価基準)
5点:非常に感じる。
4点:やや感じる。
3点:どちらでもない。
2点:あまり感じない。
1点:全く感じない。
[ヘッド部の割れ、白化の評価]
ザホランスキー社製植毛機を用いて、ヘッド部に植毛した歯ブラシを100本作製し、ヘッド部に発生する割れ、白化の数を専門検査員が目視で検出し、その数を歯ブラシ100本分の植毛穴数で除した値(百分率)を割れ、白化の評価基準とした。ヘッド部の割れ、白化を以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:0%。
○:0%より大きく0.1%未満。
△:0.1%以上0.5%未満。
×:0.5%以上。
[毛束の抜けにくさ]
1つの大径の植毛穴に植設された毛束を専用器具によってつかみ、引張試験機を用いて植毛穴から毛束が抜けるまでの最大引張応力(N)を測定(引張速度20mm/分)(n=10)し、その値に応じて毛束の抜けにくさを以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:最大引張応力の平均値が25N以上。
○:最大引張応力の平均値が20N以上25N未満。
△:最大引張応力の平均値が15N以上20N未満。
×:最大引張応力の平均値が15N未満。
[実施例1]
ハンドル体を形成する樹脂としてPOM(曲げ弾性率:2500MPa)を用い、表1及び表2に示す仕様に従って、射出成形により図1〜8に例示したハンドル体1aを作製した。東レモノフィラメント社製の用毛(直径:大穴5.0mil、小穴6.0mil)を束ねた毛束を二つ折りにし、その間に挟み込まれた平線を表2に示す仕様に従ってヘッド部の植毛穴に打ち込み、毛束を植設して歯ブラシを製作した。
[実施例2〜4、比較例1〜4]
植毛穴及び平線の仕様を表1及び表2に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして歯ブラシを作製した。
各例の歯ブラシの仕様を表1及び表2、評価結果を表3に示す。なお、表2の実施例1、2、4及び比較例1、2における植毛穴及び平線の仕様は、大径の植毛穴についてのみ示した。また、表2の比較例3、4のP、P及びQ欄には、大径の植毛穴の代わりに小径の植毛穴に対して算出した値を示した。
Figure 2019230838
Figure 2019230838
Figure 2019230838
表1〜3に示すように、ヘッド部の厚み、割合Q及び割合Qを本発明で規定する範囲に制御した実施例1〜4の歯ブラシは、ヘッド部の割れや白化が抑制されているうえ、十分な植毛強度が確保された。また奥歯を清掃しやすく、歯垢を落とす実感が高く、また歯茎のマッサージ実感が高かった。
割合Qが高く、応力発生パラメータPが低い比較例3、4では、ヘッド部の割れや白化のリスクが高まり、毛束抜け強度が低くなる傾向があった。また、直径1.8mm以上の大径の植毛穴がない比較例3、4の歯ブラシでは、実施例に比べて歯茎へのマッサージ実感が不足していた。ヘッド部の厚みが厚すぎる比較例1、2では、実施例に比べて奥歯が清掃しにくかった。
1…歯ブラシ、1a…ハンドル体、10…ヘッド部、10a…植毛面、10b,10c…縁、11a…第1植毛穴、11b…第2植毛穴、12…ネック部、14…ハンドル部、16a…第1毛束、16b…第2毛束、18…植毛部、20…平線。

Claims (4)

  1. 植毛面に複数の植毛穴が設けられたヘッド部を含む樹脂製のハンドル体を備え、前記植毛穴のそれぞれに平線の打ち込みにより毛束が植設された植毛部が設けられている歯ブラシであって、
    前記ヘッド部の厚みが2mm以上、4mm以下であり、
    前記植毛面に設けられた植毛穴の総数に対する、直径が1.8mm以上の大径の植毛穴の合計数の割合が10%以上であり、
    2つ以上の前記大径の植毛穴が前記ハンドル体の長軸方向に並び、
    長軸方向に隣り合う前記大径の植毛穴の少なくとも一組が、下記式1で表される応力発生パラメータPの下記式2で表される長軸応力緩和パラメータPに対する割合が20〜30%であるという条件を満たす、歯ブラシ。
    =(S−S)×h ・・・式1
    =S×D ・・・式2
    (ただし、前記式1及び式2中、Sは、正面視で、前記大径の植毛穴に打ち込まれる前記平線の外接円の面積(mm)である。Sは、前記大径の植毛穴の開口面積(mm)である。hは、側面視で、前記植毛面から前記大径の植毛穴に打ち込まれる前記平線の下端までの距離(mm)である。Sは、長軸方向に隣り合う前記大径の植毛穴のそれぞれの開口縁と、隣り合う前記大径の植毛穴のいずれにも接し、かつ交差しない2本の接線とで囲まれる植毛面の面積(mm)である。Dは、前記ヘッド部の厚み(mm)である。)
  2. 前記応力発生パラメータPが2.3〜4.0である、請求項1に記載の歯ブラシ。
  3. 前記大径の植毛穴の少なくとも一つが、下記式3で表される短軸応力緩和パラメータPが2.0〜5.5であるという条件を満たす、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
    =(S×D)/d ・・・式3
    (ただし、前記式3中、Sは、前記大径の植毛穴に短軸方向と平行に引いた2本の接線と、前記ヘッド部の短軸方向の両側の縁とで囲まれる植毛面の面積(mm)であって、前記2本の接線と前記両側の縁で囲まれる領域iの面積SD1から、前記領域i内のすべての植毛穴の前記領域iと重なる部分の開口面積の合計SD2を差し引いた値である。Dは、前記ヘッド部の厚み(mm)である。dは、前記ヘッド部の幅(mm)である。)
  4. 前記植毛面に、前記大径の植毛穴と、直径が1.8mm未満の小径の植毛穴とが形成され、
    すべての前記大径の植毛穴について、正面視で、前記大径の植毛穴の中心を通る短軸方向に平行な直線を引いたとき、それらの直線の総本数に対して50%以上の直線が、前記小径の植毛穴の中心を通らない直線である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
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