JPWO2019208826A1 - 強化繊維複合樹脂、コンポジットプリプレグおよび積層体 - Google Patents

強化繊維複合樹脂、コンポジットプリプレグおよび積層体 Download PDF

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泰典 樽谷
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Abstract

高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した強化繊維複合樹脂、コンポジットプリプレグおよび積層体を提供すること。強化繊維と、樹脂からなるマトリックス部と、を含む強化繊維複合樹脂において、マトリックス部が、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり、かつ、互いに非相溶の2相からなり、第1の樹脂は、熱可塑性樹脂であり、第2の樹脂のtanδが、0.10〜2.00であり、強化繊維が連続繊維及び/又は不連続繊維であり、強化繊維が不連続繊維を含む場合は、強化繊維複合樹脂の総体積に対する、強化繊維の体積の割合が、10%以上である、強化繊維複合樹脂。当該強化繊維複合樹脂を用いた、コンポジットプリプレグ。当該コンポジットプリプレグが複数積層されている、積層体。

Description

関連出願の相互参照
本願は、2018年4月27日に出願の日本国特許出願第2018−087367号の優先権の利益を主張するものであり、その内容は、参照により本願に組み込まれる。
本発明は、強化繊維複合樹脂、コンポジットプリプレグおよび積層体に関する。
近年、軽量性と剛性とを兼ね備えた材料として、繊維強化プラスチック(FRP)をはじめとする繊維強化複合材料が広く普及している。この繊維強化複合材料は、ポリプロピレン又はナイロン等からなるマトリックス樹脂を、ガラス繊維、炭素繊維又はアラミド繊維等の強化繊維で強化させてなる材料であり、また、市場に出回る繊維強化複合材料の多くは、コンポジットプリプレグを複数積層させて製造されたものであるか、或いは、コンポジットプリプレグそのものである。
なお、「コンポジットプリプレグ」とは、強化繊維に樹脂が含浸されたシート状の材料を指す。
ここで、繊維強化複合材料の品質を向上させる技術として、例えば、特許文献1は、繊維の形態の適正化を図るとともに、複合材料の表面をしぼ加工することで、耐引っ掻き性を向上させることができることを開示している(特許文献1)。
実公平5−34919号公報
ところで、特に防振部品、吸音・遮音材などの用途を考慮すると、コンポジットプリプレグには、剛性に加え、高いエネルギー吸収性(衝撃吸収性、振動吸収性を含む)が要求される。かかる要求への対処として、例えば、マトリックスを、ポリプロピレン等の樹脂材料とともに、一般にエネルギー吸収性が高いとされているゴムで構成する方法が考えられる。
しかしながら、ゴムは、エネルギー吸収性の向上には一定程度寄与し得るものの、一方では軟らかさに起因して剛性を悪化させ得るため、トレードオフの問題を生じさせる。更に、ゴムをマトリックスに単に配合して繊維強化複合材料を作製した場合には、特に屈曲時の剛性を維持することができなかった。
そこで、本発明は、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した強化繊維複合樹脂を提供することを目的とする。本発明は、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立したコンポジットプリプレグを提供することを目的とする。また、本発明は、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した積層体を提供することを目的とする。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、
強化繊維と、
樹脂からなるマトリックス部と、を含む強化繊維複合樹脂において、
前記マトリックス部が、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり、かつ、互いに非相溶の2相からなり、
前記第1の樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
前記第2の樹脂のtanδが、0.10〜2.00であり、
前記強化繊維が連続繊維及び/又は不連続繊維であり、前記強化繊維が不連続繊維を含む場合は、前記強化繊維複合樹脂の総体積に対する、前記強化繊維の体積の割合が、10%以上である、強化繊維複合樹脂である。
これにより、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立することができる。
本発明によれば、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した強化繊維複合樹脂を提供することができる。本発明によれば、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立したコンポジットプリプレグを提供することができる。本発明によれば、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した積層体を提供することができる。
図1は、参考例1のシートのAFM画像である。 図2は、図1のAFM画像の模式図である。 図3は、実施例1の積層体の模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
本発明において、「マトリックス部が、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり」とは、マトリックス部が第1の樹脂と第2の樹脂とから形成されていることを意味し、マトリックス部が第1の樹脂と第2の樹脂のみから形成されていることを意味するものではない。同様に、「マトリックス部が、互いに非相溶の2相からなり」とは、マトリックス部が互いに非相溶の2相から形成されていることを意味し、マトリックス部が互いに非相溶の2相のみから形成されていることを意味するものではない。
(強化繊維複合樹脂)
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、
強化繊維と、
樹脂からなるマトリックス部と、を含む強化繊維複合樹脂において、
前記マトリックス部が、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり、かつ、互いに非相溶の2相からなり、
前記第1の樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
前記第2の樹脂のtanδが、0.10〜2.00であり、
前記強化繊維が連続繊維及び/又は不連続繊維であり、前記強化繊維が不連続繊維を含む場合は、前記強化繊維複合樹脂の総体積に対する、前記強化繊維の体積の割合が、10%以上である、強化繊維複合樹脂である。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、強化繊維と、樹脂からなるマトリックス部とを含む。以下、強化繊維と、マトリックス部と、任意成分である相容化剤などを例示説明する。
<強化繊維>
強化繊維は、本発明に係る強化繊維複合樹脂に剛性を付与する働きを有する。強化繊維としては、公知のFRPに用いられている連続繊維及び/又は不連続繊維である強化繊維を用いることができる。強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、炭素繊維、チタン酸カリウムウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、硼酸アルミニウムウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられる。これらは中空であってもよい。また、強化繊維をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物、エポキシ化合物などのカップリング剤などで予備処理したものであってもよい。強化繊維は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
強化繊維は、軽量ながらも高い剛性を得る観点から、ガラス繊維及び/又は炭素繊維であることが好ましく、炭素繊維であることがより好ましい。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、前記強化繊維が、炭素繊維であることが好ましい。これにより、軽量ながら高い剛性が得られる。
本明細書において、連続繊維とは、長さが5cm以上の繊維を指し、シート状に縫合された繊維を含むものとする。また、本明細書において、不連続繊維とは、連続繊維以外の強化繊維を指す。
繊維長が0.5mm以上5cm未満の繊維については、スタンピング成形法等により、半球形状やリブ等の立体的な形状を成型する際により好ましい。繊維長が0.5mm未満の繊維については、特に射出成形による成形の際に好適に用いられる。
耐衝撃強度の観点では連続繊維が最も好ましく、繊維長が短くなるほど耐衝撃強度の効果は小さくなるが、幅広い成形法に対応できる利点がある。
また、前述のように立体的な形状を作成する際には不連続繊維も好適に用いられ、複雑な形状を作成する際には連続繊維で作製する部位と不連続繊維で作製する部位を有してもよい。不連続繊維を用いる場合は射出成形も好適に選択される。
強化繊維は、例えば、単繊維の平均直径が、0.1〜20μmであり、好ましくは、5〜10μm、より好ましくは6〜8μmである。
強化繊維が不連続繊維を含む場合は、強化繊維複合樹脂の総体積に対する、強化繊維の体積の割合(Volume of fiber、以下、「Vf」ということがある)が、10%以上である。Vfは、強化繊維複合樹脂の剛性を高める観点から、30%以上であることが好ましく、70%以下であることが好ましい。
強化繊維が連続繊維を含む場合は、Vfが、30%以上であることが好ましく、強化繊維複合樹脂の剛性を高める観点から、30%以上であることがより好ましく、70%以下が好ましく、63%以下がより好ましく、58%以下がより好ましく、53%以下がさらに好ましく、50%以下がさらに好ましい。
本発明において、Vfは、以下の方法により求めることができる。まず、面積S、厚みtの強化繊維複合樹脂を準備する。次に、準備した強化繊維複合樹脂を、必要に応じて金属製メッシュで挟み、強化繊維以外の成分であるマトリックス部を焼失させるか、あるいは、当該マトリックス部を溶媒に浸漬して溶解させて除去し、その残渣(強化繊維)を得る。次いで、得られた残渣(強化繊維)の重量Wを測定する。そして、強化繊維の密度ρを用い、下記式により、強化繊維複合樹脂の総体積に対する強化繊維の体積の割合Vf(%)を算出することができる。
Vf(%)=(W/ρ)/(S×t)×100
強化繊維複合樹脂における強化繊維の配置は特に限定されず、任意の配置(UD、クロス、疑似等方など)とすることができ、任意に選択することができる。
<マトリックス部>
マトリックス部は、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり、かつ、互いに非相溶の2相からなる。
本発明において、マトリックス部の非相溶性は、二軸押し出し機を用いて混練後、得られたペレットから15cm×15cm×2mmのモールドにてシートを作製し、このシートをミクロトームにより超薄切片として、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察することによって評価され、相分離構造が確認された場合、マトリックス部は互いに非相溶である。
マトリックス部の互いに非相溶の2相は、海島構造、すなわち、比較的連続的に見える一方の相(海相)の中に、不連続的に他方の相(島相)が混在している構造でもよいし、共連続構造、すなわち、比較的連続的に見える一方の相と、比較的連続的に見える他方の相とが混在している構造でもよい。
一実施形態では、マトリックス部の互いに非相溶の2相が、海島構造である場合、海相は第1の樹脂であり、島相が第2の樹脂である。別の実施形態では、マトリックス部の互いに非相溶の2相が、共連続構造である場合、一方の相は第1の樹脂であり、他方の相が第2の樹脂である。
一実施形態では、マトリックス部は、互いに非相溶の2相のみからなる。別の実施形態では、マトリックス部は、互いに非相溶の2相以上(例えば、3相)の相からなる。
[第1の樹脂]
第1の樹脂は熱可塑性樹脂である。第1の樹脂は、主に本発明に係る強化繊維複合樹脂のマトリックスとしての働きを有する。第1の樹脂の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアセタール、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイドなどが挙げられる。第1の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミドとしては、例えば、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ナイロン510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5T)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)などが挙げられる。
ポリエステルとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ポリフェニレンオキシドとしては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンオキシド)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンオキシド)などが挙げられる。また、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノール)との共重合体などの共重合体も用いることができる。
ポリプロピレンとしては、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体などが挙げられる。
第1の樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、ポリアミドの市販品としては、宇部興産社のポリアミド6 UBE ナイロン(登録商標)グレード1013B、1022Bなどが挙げられる。また、例えば、ポリプロピレンの市販品としては、プライムポリマー社のプロピレン単独重合体であるプライムポリプロ(登録商標)J−700GPなどが挙げられる。
マトリックス部における第1の樹脂の割合としては、適宜調節すればよいが、例えば、マトリックス部の樹脂(後述する相容化剤が樹脂の場合は相容化剤を含む)の総質量に対して、50〜95質量%である。第1の樹脂の割合は、マトリックス部の樹脂の総質量に対して、例えば、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上または90質量%以上である。第1の樹脂の割合は、マトリックス部の樹脂の総質量に対して、例えば、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下または55質量%以下である。
[第2の樹脂]
第2の樹脂はそのtanδが、0.10〜2.00である。第2の樹脂は、主に本発明に係るプリプレグにエネルギー吸収性を付与する働きを有する。第2の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、第2の樹脂のtanδは、粘弾性評価装置(ARES)で歪0.05%、周波数10Hz、昇温速度4℃/minの条件で計測されるtanδピークの値を用いる。
第2の樹脂としては、例えばオレフィン系(TPO);アミド系(TPA);エステル系(TPC);スチレン系(TPS);ウレタン系(TPU);熱可塑性ゴム架橋体(TPV)などの熱可塑性エラストマーが挙げられる。
オレフィン系(TPO)熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体とポリプロピレンとのブレンド(TPO−(EPDM+PP))、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体とポリエチレンとのブレンド(TPO−(EPDM+PE))などが挙げられる。
アミド系(TPA)熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントがナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などであり、ソフトセグメントがポリエーテルおよび/またはポリエステルである熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
エステル系(TPC)熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートなどであり、ソフトセグメントがポリエーテルおよび/またはポリエステルである熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
スチレン系(TPS)熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)−ポリスチレン(SEEPS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)などが挙げられる。
ウレタン系(TPU)熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ハードセグメントが芳香族または脂肪族などであり、ソフトセグメントがポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルおよびポリエステル、ポリカーボネート、ポリカプロラクトンなどである熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
熱可塑性ゴム架橋体(TPV)としては、例えば、相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、EPDMとPPとの複合体;アクリロニトリル−ブタジエンゴム相を高度に架橋してPPの連続相に細かく分散した、NBRとPPとの複合体などが挙げられる。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、前記第2の樹脂が、オレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。これにより、衝撃吸収性が高まる。
第2の樹脂としては、市販品を用いてもよく、このような市販品としては、例えば、三井化学社のエチレン系共重合体であるタフマー(登録商標)DF640、DF610、DF605などのDFシリーズ、タフマー(登録商標)XM7070、XM7080、XM7090などのXMシリーズ、住友化学社の特殊プロピレン系エラストマーであるタフセレン(登録商標)T1712、H3002などのタフセレン(登録商標)シリーズ、プライムポリマー社のプロピレンホモポリマーであるプライムポリプロ(登録商標)J−700GP、クラレ社のポリスチレンのハードセグメントと、ビニル−ポリジエンのソフトセグメントからなる共重合体であるハイブラー(登録商標)5125、5127などの未水添グレード5000シリーズ、ハイブラー(登録商標)7125、7311などの水添グレード7000シリーズ、ポリスチレンのハードセグメントと、ポリオレフィン構造のソフトセグメントからなる共重合体であるセプトン(登録商標)4033などの4000シリーズなどが挙げられる。
マトリックス部における第2の樹脂の割合としては、適宜調節すればよいが、例えば、マトリックス部の樹脂(後述する相容化剤が樹脂の場合は相容化剤を含む)の総質量に対して、5〜50質量%である。第2の樹脂の割合は、マトリックス部の樹脂の総質量に対して、例えば、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上または45質量%以上である。第2の樹脂の割合は、マトリックス部の樹脂の総質量に対して、例えば、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下または10質量%以下である。
マトリックス部の総体積に対する第2の樹脂の体積の割合は、例えば、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上または50%以上である。マトリックス部の総体積に対する第2の樹脂の体積の割合は、例えば、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下または10%以下である。
第1の樹脂は、前記第2の樹脂よりも、引張弾性率が高い。マトリックス部を形成する樹脂は、第1の樹脂の成分と第2の樹脂の成分とを分子内に有するコポリマーであってもよく、第1の樹脂と第2の樹脂は別々の樹脂であってもよい。
[第3の樹脂]
マトリックス部は、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり、かつ、互いに非相溶の2相からなればよく、第1の樹脂と第2の樹脂に加えて、任意に第3の樹脂を含んでいてもよい。第3の樹脂としては、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を用いることができる。第3の樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第3の樹脂の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリアセタール、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやABSなどのスチレン系樹脂、ゴム質重合体、ポリアルキレンオキサイド樹脂などが挙げられる。
第3の樹脂の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などが挙げられる。
一実施形態では、マトリックス部は、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂のみからなる。別の実施形態では、マトリックス部は、第1の樹脂と第2の樹脂と第3の樹脂の3種の樹脂からなる。
<相容化剤>
相容化剤は、マトリックス部の樹脂と強化繊維との親和性を高める働きを有する。相容化剤としては、例えば、酸変性、エポキシ変性またはウレタン変性した第2の樹脂などが挙げられる。相容化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、さらに、相容化剤を含むことが好ましい。これにより、衝撃吸収性が高まる。
変性に用いる酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸などの不飽和カルボン酸が挙げられる。また、これら不飽和カルボン酸の誘導体も使用できる。その誘導体としては、例えば、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩などが挙げられ、具体例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、マレイン酸エチル、アクリルアミド、マレイン酸アミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。一実施形態では、変性に用いる酸は、マレイン酸および無水マレイン酸からなる群より選択される1種以上である。
酸変性した第2の樹脂としては、例えば、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、無水マレイン酸変性ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、無水マレイン酸変性ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)、無水マレイン酸変性スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)などの無水マレイン酸変性熱可塑性エラストマーが挙げられる。
エポキシ変性した第2の樹脂としては、例えば、エポキシ変性スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、エポキシ変性ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン(SEBS)、エポキシ変性ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)、エポキシ変性スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)などのエポキシ変性熱可塑性エラストマーが挙げられる。
相容化剤が変性されている樹脂の場合の変性量としては、例えば、第2の樹脂に対する変性剤の量が0.01〜8質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.02〜5質量%である。
相容化剤としては、市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、旭化成社の無水マレイン酸変性水添スチレン系熱可塑性エラストマーであるタフテック(登録商標)M1913、三井化学社の酸変性オレフィンエラストマーであるタフマー(登録商標)MH7010などのMシリーズなどが挙げられる。
相容化剤の含有量は、適宜調節すればよいが、例えば、第2の樹脂と相溶化剤の総質量に対して、10〜90質量%、より好ましくは10〜70質量%、より好ましくは10〜55質量%、より好ましくは10〜43質量%、より好ましくは10〜33質量%、より好ましくは10〜23質量%、より好ましくは10〜20質量%である。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、前記相容化剤の質量が、前記第2の樹脂と相容化剤の総質量に対して、10〜90質量%であることが好ましい。これにより、優れた衝撃吸収性が得られる。
本発明に係る強化繊維複合樹脂またはマトリックス部には、上述した成分のほかに、結晶核剤・離型剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤、耐光剤、耐候剤などが含まれていてもよい。これらのその他の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る強化繊維複合樹脂の厚みは、適宜調節すればよいが、例えば、0.5〜10mmであり、より好ましくは、1〜5mmである。
本発明に係る強化繊維複合樹脂の用途は、特に限定されず、特に剛性とエネルギー吸収性の要求される用途に好適に用いることができる。用途としては、例えば、コンポジットプリプレグ、自動車(例えば、ボディ)、電車などの車両用部品;航空機用部品;防振部品;吸音・遮音材;建築材料;風力発電などの発電における発電装置部品;家電部品、OA機器部品;圧力容器;水素タンクなどが挙げられる。
(強化繊維複合樹脂の製造方法)
本発明に係る強化繊維複合樹脂の製造方法は、上述した強化繊維、少なくとも第1および第2の樹脂を含む樹脂などを用いればよく、フィルムスタック法、押出成形法などの公知の強化繊維複合樹脂の製造方法により製造することができる。
本発明に係る強化繊維複合樹脂は、例えば、少なくとも第1および第2の樹脂を含み、任意に相容化剤などを含む樹脂組成物を調製し、当該樹脂組成物をTダイ等によりシート状に押出して、そのシート状の樹脂組成物に強化繊維を含浸し、温度および/または圧力をかける冷熱プレスを行うことにより、製造することができる。温度をかける場合の温度は、例えば、100〜350℃である。圧力をかける場合の圧力は、例えば、0.5〜50MPaである。
(コンポジットプリプレグ)
本発明に係るコンポジットプリプレグ(以下、単に「プリプレグ」ということがある)は、上記強化繊維複合樹脂を用いた、コンポジットプリプレグである。これにより、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立することができる。
(コンポジットプリプレグの製造方法)
本発明に係るプリプレグの製造方法は、上述した強化繊維複合樹脂を用いればよく、フィルムスタック法、押出成形法などの公知のプリプレグの製造方法により製造することができる。
(積層体)
本発明に係る積層体は、上記いずれかに記載のコンポジットプリプレグが複数積層されている、積層体である。これにより、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立することができる。
本発明に係る積層体は、本発明に係るプリプレグのみが2〜100層または16〜40層など複数積層されていてもよい。この場合、隣接するプリプレグの層では、強化繊維の配向方向は、同じでもよいし、異なっていてもよい。隣接するプリプレグの層間で強化繊維の配向方向が同方向である場合、応力集中を回避することができるため好ましい。また、積層体を形成する各プリプレグは、同じでもよいし、異なっていてもよい。本発明に係るプリプレグのみが複数積層されている積層体は、後述するサンドイッチ構造の積層体に比べて、一定の体積の積層体中の強化繊維の占める体積割合が高く、高い剛性が得られる。
隣接するプリプレグ層間で強化繊維の配向方向が異なる場合、例えば、プリプレグの平面をXY平面とすると、隣接するプリプレグ層間の強化繊維の配置は、XY平面内で0〜90°の範囲で異なっていてもよく、隣接するプリプレグ層間の強化繊維の配置が交互に0°と90°になっていてもよいし、0〜90°の範囲でランダムまたは任意に配置されていてもよい。
本発明に係る積層体は、本発明に係るプリプレグの間に第2の樹脂などの樹脂からなる樹脂層を介して積層してサンドイッチ構造としてもよい。このようなサンドイッチ構造の場合、樹脂層を挟む一方の面側のプリプレグの層数は、1層でもよいし、2層以上でもよい。樹脂層を挟むプリプレグの層数は、樹脂層の一方の面側と他方の面側で、同じでもよいし、異なっていてもよい。樹脂層の数は、1層でもよいし、2層以上でもよい。
サンドイッチ構造において、樹脂層を挟む一方の面側のプリプレグの層数が2層以上の場合、当該層数は、奇数でもよいし、偶数でもよい。プリプレグの層数が2層以上の場合、上述したように隣接するプリプレグ層間の強化繊維の配置は、同じでもよいし、XY平面内で0〜90°の範囲で異なっていてもよく、XY平面内で交互に0°と90°になっていてもよい。
本発明に係る積層体の用途は、特に限定されず、特に剛性とエネルギー吸収性の要求される用途に好適に用いることができる。用途としては、例えば、自動車(例えば、ボディ)、電車などの車両用部品;航空機用部品;防振部品;吸音・遮音材;建築材料;風力発電などの発電における発電装置部品;家電部品、OA機器部品;圧力容器;水素タンクなどが挙げられる。
(積層体の製造方法)
本発明に係る積層体の製造方法は、本発明に係るプリプレグを用いて積層すればよく、例えば、本発明に係るプリプレグのみを積層したもの、あるいは、樹脂層を介してプリプレグを積層したものに対して、温度および/または圧力をかける冷熱プレスを行うことにより、製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。表中、別段の記載のない限り、配合量の単位は、質量部である。
実施例で使用した材料の詳細は以下のとおりである。
炭素繊維(連続繊維):東レ社の商品名T700SC
ポリアミド樹脂:宇部興産社製の商品名UBE ナイロン(登録商標)グレード1013B(表1中、PA6 1013Bと表記)
ポリアミド樹脂:宇部興産社製の商品名UBE ナイロン(登録商標)グレード1022B(表1中、PA6 1022Bと表記)
エチレン系エラストマー:三井化学社製の商品名タフマー(登録商標)DF640(表1中、DF640と表記)、tanδ=0.49
特殊プロピレン系エラストマー:住友化学社製の商品名タフセレン(登録商標)H3002(表1中、H3002と表記)、tanδ=1.70
特殊プロピレン系エラストマー:住友化学社製の商品名タフセレン(登録商標)T1712(表1中、T1712と表記)、tanδ=1.40
プロピレン系エラストマー:三井化学社製の商品名タフマー(登録商標)XM7070(表1中、XM7070と表記)、tanδ=0.25
プロピレン単独重合体:プライムポリマー社の商品名プライムポリプロ(登録商標)J−700GP(表1中、J−700GPと表記)、tanδ=0.12
ビニルSEPS:クラレ社の商品名ハイブラー(登録商標)7125(水添グレード、表1中、7125と表記)、tanδ=1.70
高密度ポリエチレン:東ソー社の商品名ニポロンハード(登録商標)2500(表1中、2500と表記)、tanδ=0.05
無水マレイン酸変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー:旭化成社の商品名タフテック(登録商標)M1913
酸変性オレフィンエラストマー:三井化学社の商品名タフマー(登録商標)MH7010
<参考例1:マトリックス部の非相溶の確認>
表1の実施例3に示す配合で樹脂組成物を調製した。上述したマトリックス部の非相溶性の確認のための条件でシートを作製し、得られたシートをミクロトームにより超薄切片として、AFMを用いて観察した。そのAFM画像を図1に示す。図1から分かるように、第1の樹脂と第2の樹脂は、非相溶の2相の海島構造を形成していた。また、図1中の海相は、第1の樹脂PA6 1022Bであり、島相は、第2の樹脂7125であった。
図2は、図1のAFM画像の模式図である。島相の長軸方向をMD方向とし、その直角方向をTD方向とする。
<実施例1>
表1に示す配合で樹脂組成物を調製した。その樹脂組成物をTダイによりシート状に押出して、16枚のシート状の樹脂組成物を得た。炭素繊維T700SC開繊UDシート(50g/m)に各々のシート状の樹脂組成物を接触させ、含浸させた。このとき、図3に示すように、積層体としたときに下から奇数番目に位置する樹脂組成物には、炭素繊維の繊維方向と、マトリックス部のMD方向とを直交させて配置した。一方、積層体としたときに下から偶数番目に位置する樹脂組成物には、炭素繊維の繊維方向と、マトリックス部のMD方向とを平行に配置した。そして、この積層したシート状の樹脂組成物に温度250℃、圧力1MPaをかけて熱プレスを行うことにより、面積900cm、厚み1.8mmの積層体を製造した。
図3は、実施例1の積層体の模式図である。ただし、説明の簡略化のために、図3中、積層数は、16層ではなく、6層としている。図3に示すように、実施例1の積層体では、積層体を構成する各プリプレグのMD方向が同一である。
<実施例2〜8>
実施例1において、樹脂組成物の配合を表1に示す配合に代えたこと以外は、実施例1と同様に積層体(面積900cm、厚み1.8mm)を得た。実施例7については、樹脂組成物の配合を表1に示す配合に代え、実施例と同様に積層体(面積900cm、厚み1.8mm)を得る。
<比較例1>
実施例1において、樹脂組成物の配合を表1に示す配合に代えたこと以外は、実施例1と同様に積層体(面積900cm、厚み1.8mm)を得た。このとき、炭素繊維をシート状の樹脂組成物の1辺と平行に配置し、隣接するプリプレグの層間で炭素繊維の繊維方向が交互に直交するように16層のプリプレグを積層した。
<比較例2>
まず、樹脂7125のみの樹脂層を形成した。そして、比較例1と同様にして得たプリプレグを1層とし、そのプリプレグ8層を積層したもので、樹脂層を挟み、熱プレスを行い、プリプレグ8層/樹脂層1層/プリプレグ8層のサンドイッチ構造の積層体(面積900cm、厚み2.4mm)を得た。比較例2の積層体全体として、PA6 1022Bを65質量部、7125を35質量部含む。
<比較例3>
実施例1において、樹脂組成物の配合を表1に示す配合に代えたこと以外は、実施例1と同様に積層体(面積900cm、厚み1.8mm)を得た。
<実施例9>
実施例8の樹脂組成物を用いて、炭素繊維の配向方向とマトリックス部の島相のMD方向とを揃えたプリプレグを作成し、多数の長方形の小片に裁断した。チョップのサイズは炭素繊維と平行方向では30mm、炭素繊維と直交方向では10mmとした。この小片を炭素繊維がランダムな方向に配向するように、平均16層の厚みとなるように金型に充填して、プレス温度280℃、圧力1MPaをかけて熱プレスを行って、積層体を製造した。
<比較例4>
比較例1の樹脂組成物を用いてプリプレグを作成し、多数の長方形の小片に裁断した。チョップのサイズは炭素繊維と平行方向では30mm、炭素繊維と直交方向では10mmとした。この小片を炭素繊維がランダムな方向に配向するように、平均16層の厚みとなるように金型に充填して、プレス温度280℃、圧力1MPaをかけて熱プレスを行って、積層体を製造した。
<物性評価>
各実施例および比較例で得た積層体について、以下のように、剛性とエネルギー吸収性を評価した。各評価結果を表1に合わせて示す。実施例7については評価する。
<剛性評価:MD方向曲げ剛性>
剛性として、積層体のMD方向の曲げ剛性を評価した。具体的には、得られた積層体から、砥石カッターを用い、10mm×100mm×2mmのサイズに切り出し、曲げ剛性試験用の試験片を得た。この試験片をテンシロン(A&D社製)により、支点間距離64mm、速度2mm/minの条件にて曲げ剛性試験を行い、以下の基準で評価した。Aが最もよい評価である。
A:曲げ弾性率が40GPa以上
B:曲げ弾性率が30GPa以上40GPa未満
C:曲げ弾性率が10GPa以上30GPa未満
D:曲げ弾性率が10GPa未満
<エネルギー吸収性:落錘耐衝撃性>
エネルギー吸収性として、落錘耐衝撃性を評価した。具体的には、得られた積層体から、砥石カッターを用い、80mm×80mm×2mmのサイズに切り出し、落錘耐衝撃試験用の試験片を得た。この試験片を計装化衝撃試験器(IMATEK社製)により、落錘質量19.67kg、衝撃速度4.4m/sの条件にて落錘耐衝撃性試験を行い、以下の基準で評価した。Aが最もよい評価である。
A:吸収エネルギーが150J以上
B:吸収エネルギーが100J以上150J未満
C:吸収エネルギーが65J以上100J未満
D:吸収エネルギーが65J未満
<エネルギー吸収性:振動吸収性>
エネルギー吸収性として、中央加振法による振動吸収性を評価した。具体的には、得られた積層体から、砥石カッターを用い、10mm×250mm×2mmのサイズに切り出し、中央加振法試験用の試験片を得た。この試験片を加振器(計測システムズ社製)により、JIS K 7391「非拘束型制振複合はり振動減衰特性試験方法」の「中央加振法」により測定した。サンプルに定常波を加振したのち、共振周波数での周波数応答関数を半値幅法にて解析し損失係数を算出し、以下の基準で評価した。Aが最もよい評価である。
A:二次の損失係数が0.012以上
B:二次の損失係数が0.009以上0.012未満
C:二次の損失係数が0.006以上0.009未満
D:二次の損失係数が0.006未満
<総合評価>
上記剛性とエネルギー吸収性について総合評価した。評価A〜Cのみの場合は合格とし、評価Dがある場合は、不合格とした。
Figure 2019208826
*1:マトリックス部の総体積に対する第2の樹脂の体積の割合
*2:比較例2は、比較例1のプリプレグを1層とし、そのプリプレグ8層を積層したもので、7125のみの樹脂層1層を挟んで積層体とした。比較例2の積層体全体として、PA6 1022Bを65質量部、7125を35質量部含む。
*3:実施例9は、実施例8のプリプレグを長方形の小片に裁断し、その小片をランダムな方向に配向させて積層した16層を熱プレスした積層体である。
*4:比較例4は、比較例1のプリプレグを長方形の小片に裁断し、その小片をランダムな方向に配向させて積層した16層を熱プレスした積層体である。
表1に示すように、本発明に係る強化繊維複合樹脂、プリプレグおよび積層体によって、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立することができた。
また、実施例9の結果は、強化繊維がある一定の単位で揃っている場合、各層の強化繊維の配向がランダムであっても所定の効果が得られること、および実質的に長繊維としてふるまう強化繊維でも所定の効果が得られることを示している。
本発明によれば、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した強化繊維複合樹脂を提供することができる。本発明によれば、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立したコンポジットプリプレグを提供することができる。本発明によれば、高い剛性と、高いエネルギー吸収性とを両立した積層体を提供することができる。

Claims (7)

  1. 強化繊維と、
    樹脂からなるマトリックス部と、を含む強化繊維複合樹脂において、
    前記マトリックス部が、第1の樹脂と第2の樹脂の2種の樹脂からなり、かつ、互いに非相溶の2相からなり、
    前記第1の樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
    前記第2の樹脂のtanδが、0.10〜2.00であり、
    前記強化繊維が連続繊維及び/又は不連続繊維であり、前記強化繊維が不連続繊維を含む場合は、前記強化繊維複合樹脂の総体積に対する、前記強化繊維の体積の割合が、10%以上である、強化繊維複合樹脂。
  2. 前記第2の樹脂が、オレフィン系熱可塑性エラストマーである、請求項1に記載の強化繊維複合樹脂。
  3. さらに、相容化剤を含む、請求項1または2に記載の強化繊維複合樹脂。
  4. 前記相容化剤の質量が、前記第2の樹脂と相容化剤の総質量に対して、10〜90質量%である、請求項3に記載の強化繊維複合樹脂。
  5. 前記強化繊維が、炭素繊維である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の強化繊維複合樹脂。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の強化繊維複合樹脂を用いた、コンポジットプリプレグ。
  7. 請求項6に記載のコンポジットプリプレグが複数積層されている、積層体。
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