JPWO2019107516A1 - 3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸を生産するための遺伝子改変微生物および当該化学品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

要約 3−オキソアジピル−CoAを3−ヒドロキシアジピル−CoAへと還元する反応を触媒する酵素をコードする核酸を導入した遺伝子改変微生物が開示されている。遺伝子改変微生物は、以下(a)〜(c)に記載のポリペプチドをコードする核酸を導入、又は当該ポリペプチドの発現を増強したものである。(a)配列番号1〜6、213のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b)これらのいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド(c)これらのいずれかのアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する活性を有するポリペプチド。

Description

本発明は、目的物質の生産に関与するポリペプチドをコードする核酸を導入、または当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物及び当該微生物を用いた物質製造方法に関する。
3−ヒドロキシアジピン酸(IUPAC名:3−hydroxyhexanedioic acid)、α−ヒドロムコン酸(IUPAC名:(E)−hex−2−enedioic acid)およびアジピン酸(IUPAC名:hexanedioic acid)は炭素数6のジカルボン酸である。これらは多価アルコールと重合することでポリエステルとして、また多価アミンと重合することでポリアミドの原料として用いることができる。また、これらの末端にアンモニアを付加してラクタム化することで、単独でもポリアミドの原料になり得る。
微生物を利用した3−ヒドロキシアジピン酸の生合成に関連する文献の例としては、非天然の微生物を用いた1,3−ブタジエンの製造に関する特許文献1の中で、スクシニル−CoAから1,3−ブタジエンを生合成する経路において微生物内で生成する代謝中間体として3−ヒドロキシアジピン酸(3−ヒドロキシアジペート)が記載されている。
微生物を利用したα−ヒドロムコン酸の生合成に関連する文献の例としては、非天然の微生物を用いたムコン酸の製造に関する特許文献2の中で、スクシニル−CoAからtrans,trans−ムコン酸を生合成する経路において微生物内で生成する代謝中間体としてα−ヒドロムコン酸(2,3−デヒドロアジペート)が記載されている。
微生物を利用したアジピン酸の生合成に関連する文献の例としては、非天然の微生物を用いたアジピン酸の製造に関する特許文献3の中で、スクシニル−CoAからアジピン酸を生合成する逆アジペート分解経路が記載されている。
特許文献1から3に記載された生合成経路では、いずれも3−オキソアジピル−CoAを3−ヒドロキシアジピル−CoAへと還元する酵素反応を経由するとの記載がある。
特表2013−535203号公報 米国特許出願公開第2011/0124911A1号明細書 特表2011−515111号公報
特許文献1または2には、微生物内で3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸が生成しうる代謝経路の記載はあるが、代謝を3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸で止め、培養液中に分泌させるという記載はない。また、特許文献1から3に記載された3−オキソアジピル−CoAを3−ヒドロキシアジピル−CoAへと還元する反応を触媒する酵素をコードする核酸を導入した非天然の微生物を用いて、実際に3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸またはアジピン酸が製造できるかどうかの検証はなされていない。従って特許文献1から3に記載された3−オキソアジピル−CoAを3−ヒドロキシアジピル−CoAへと還元する反応を触媒する酵素についても、3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸の製造において優れた活性を示す当該酵素の存在は未だ知られていなかった。
そこで本発明では、3−オキソアジピル−CoAを基質とした還元反応において優れた活性を示す酵素をコードする核酸を導入、または当該酵素の発現を増強した遺伝子改変微生物及び当該改変微生物を用いた物質製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アミノ酸配列が類似する一群のポリペプチドが、3−オキソアジピル−CoAを3−ヒドロキシアジピル−CoAへと還元する反応を触媒する優れた活性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
(1) 以下(a)〜(c)のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸を導入、または当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物:
(a)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド。
(2) 前記(b)及び(c)のいずれかに記載のポリペプチドが、配列番号212のアミノ酸配列からなる領域を含む、(1)記載の遺伝子改変微生物。
(3) 前記配列番号212のアミノ酸配列において、N末端側から13番目のアミノ酸残基がフェニルアラニンまたはロイシンであり、N末端側から15番目のアミの酸残基がロイシンまたはグルタミンであり、N末端側から16番目のアミノ酸残基がリシンまたはアスパラギンであり、N末端側から17番目のアミノ酸残基がグリシンまたはセリンであり、N末端側から19番目のアミノ酸残基がプロリンまたはアルギニンであり、N末端側から21番目のアミノ酸残基が好ましくはロイシン、メチオニンまたはバリンである、(2)記載の遺伝子改変微生物。
(4) Escherichia属、Serratia属、Hafnia属及びPseudomonas属からなる群から選ばれる微生物の遺伝子改変体である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
(5) アセチル−CoA及びスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoA及び補酵素Aを生成する能力及び3−ヒドロキシアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピン酸を生成する能力を有する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
(6) アセチル−CoA及びスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoA及び補酵素Aを生成する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAから2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する能力及び2,3−デヒドロアジピル−CoAからα−ヒドロムコン酸を生成する能力を有する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
(7) アセチル−CoA及びスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoA及び補酵素Aを生成する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAから2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する能力、2,3−デヒドロアジピル−CoAからアジピル−CoAを生成する能力及びアジピル−CoAからアジピン酸を生成する能力を有する、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
(8) (1)〜(5)のいずれかに記載の遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、3−ヒドロキシアジピン酸の製造方法。
(9) (1)〜(4)及び(6)のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、α−ヒドロムコン酸の製造方法。
(10) (1)〜(4)及び(7)のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、アジピン酸の製造方法。
(11) Serratia属微生物において5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子と遺伝子クラスターを構成する3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子にコードされるポリペプチドをコードする核酸を導入または当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸及びアジピン酸からなる群から選ばれる1つ以上の物質の製造方法。
本発明に係る遺伝子改変微生物は、3−オキソアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピル−CoAへの還元反応において優れた活性を示す酵素を発現することから、3−ヒドロキシアジピル−CoAを経由して生成する3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸の生産性に優れる。
本発明に係る物質製造方法は、3−ヒドロキシアジピル−CoAを経由して生成する3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸の生産性に優れる遺伝子改変微生物を用いるため、これらの物質の生産性を大幅に向上させることができる。
3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子と、5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子とが構成する遺伝子クラスターを示す図である。
本発明の微生物は、以下(a)〜(c)に記載のポリペプチドをコードする核酸を導入、または当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物である。
(a)配列番号1〜6および213のいずれかに記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号1〜6および213のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド
(c)配列番号1〜6および213のいずれかに記載のアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する活性を有するポリペプチド
以下、本明細書中では3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素を「3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ」と記載する。また、本明細書では3−ヒドロキシアジピン酸を3HA、α−ヒドロムコン酸をHMA、アジピン酸をADAと略すことがある。
本発明で核酸を導入するとは、微生物の菌体外から菌体内へと核酸を導入し、該微生物に該核酸がコードするポリペプチドの生産能を付与することを指す。導入する方法は特に限定されず、微生物内で自律複製可能な発現ベクターに当該核酸を組み込み宿主微生物に導入する方法や、微生物のゲノムに当該核酸を組み込む方法などを用いることができる。
本発明でポリペプチドの発現を増強するとは、微生物が元来有しているポリペプチドの発現を増強することを指す。発現を増強する方法は特に限定されないが、当該ポリペプチドをコードする核酸のコピー数を増加させる方法、当該ポリペプチドのコーディング領域上流のプロモーター領域やリボソーム結合配列を改変する方法などが挙げられる。これらの方法は単独で行ってもよいし、組み合わせてもよい。
また、導入する核酸は1種類でも複数種類でもよい。また核酸の導入とポリペプチドの発現の増強を組み合わせてもよい。
本発明で用いる、配列番号1〜6および213のいずれかに記載のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの酵素活性を有するポリペプチドついて、「1もしくは数個」の範囲は、10個以内が好ましく、さらに好ましくは5個以内、特に好ましくは4個以内、最も好ましくは1個又は2個以内である。ここで、アミノ酸が置換される場合、性質が類似したアミノ酸に置換された場合(いわゆる保存的置換)にポリペプチドの活性が維持される可能性が高くなる。すなわち、アミノ酸が置換する場合、類似した性質のアミノ酸に置換しても生理活性が維持される場合が多いので、置換の場合は、類似した性質のアミノ酸に置換したものが好ましい。すなわち、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr, Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればポリペプチドの性質が変化しないことが多い。
本発明で用いる、配列番号1〜6および213のいずれかのアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの酵素活性を有するポリペプチドについて、配列同一性の好ましい範囲は、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上である。
本発明で「配列同一性」とは、2つのアミノ酸配列または塩基配列にギャップを導入して、またはギャップを導入しないで整列させた場合の、最適なアライメントにおいて、オーバーラップする全アミノ酸配列(翻訳開始点となるアミノ酸を含む)または塩基配列(開始コドンを含む)に対する同一アミノ酸または塩基の割合(パーセンテージ)を意味し、式(1)によって算出する。式(1)において、比較する短い方の配列長は400アミノ酸以上であり、400アミノ酸未満の場合には配列同一性は定義されない。配列同一性は、この分野で汎用されているアルゴリズムであるBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)を用いて容易に調べることができる。例えばBLASTは、NCBI(National Center for Biotechnology Information)やKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)などのウェブサイトから誰でも利用可能であり、デフォルトのパラメーターを用いて容易に配列同一性を調べることができる。また、配列同一性はGenetyxなどのソフトウェアに搭載されている同様の機能を用いても調べることができる。
配列同一性(%)=一致数(ギャップ同士はカウントしない)/短い方の配列長(両端のギャップを含まない長さ)×100・・・式(1)
式(1)に従い、Genetyxの機能(%Identity Matrix)を用いて配列番号1〜6および213に記載のアミノ酸配列間の配列同一性を算出すると、最も配列同一性の値が低い配列番号2と4との値は71.51%となり、配列番号1〜6および213に記載のアミノ酸配列は、お互いに少なくとも70%以上の配列同一性を有している。Genetyxを用いた配列同一性の算出結果を表1に示す。なお、下記表1〜表5において、一番左側の数字は配列番号を示す。
Figure 2019107516
配列番号1〜6および213に記載の各アミノ酸配列をQueryとして、NCBIのアミノ酸データベース(Non−redundant protein sequences)に登録されている全アミノ酸配列との配列同一性を、BLASTPを用いて調べた結果、配列同一性が70%以上の配列は全てSerratia属細菌由来であった。
前記(a)の配列番号1〜6および213に記載のポリペプチドは、いずれもN末端側からのアミノ酸残基15〜38番目(以下、便宜的に、N末端側から何番目のアミノ酸残基かを、「a.a.」で表すことがある。したがって、例えば、N末端側からのアミノ酸残基15〜38番目は、単に「15〜38a.a.」と表すことがある)において配列番号212に示す24アミノ酸残基からなる共通配列1を有している。共通配列1において、Xaaは任意のアミノ酸残基であるが、13a.a.は好ましくはフェニルアラニンまたはロイシンであり、15a.a.は好ましくはロイシンまたはグルタミンであり、16a.a.は好ましくはリシンまたはアスパラギンであり、17a.a.はグリシンまたはセリン、より好ましくはグリシンであり、19a.a.は好ましくはプロリンまたはアルギニンであり、21a.a.は好ましくはロイシン、メチオニンまたはバリンである。共通配列1は、NAD結合残基およびその周辺のアミノ酸残基にあたる。NAD結合残基は、Biochimie. 2012 Feb;94(2):471−8.で示されているように、共通配列1の24番目のアミノ酸残基がアスパラギン酸であるが、共通配列1ではアスパラギンである点が特徴である。共通配列1を有することによって、配列番号1〜6および213に記載のポリペプチドは、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼとしての優れた酵素活性を示すと考える。
前記(b)および(c)に記載のポリペプチドについても、1〜200a.a.以内に配列番号212に示す24アミノ酸残基からなる共通配列1を有していることが好ましい。より好ましい共通配列の位置は、1〜150a.a.以内であり、さらに好ましくは、1〜100a.a.以内である。その具体例としては、配列番号7〜16および70〜138のアミノ酸配列が挙げられる。配列番号7〜16および70〜138のアミノ酸配列は、15〜38a.a.において配列番号212に示す24アミノ酸残基からなる共通配列1を有している。なお、配列番号7〜16および70〜138のアミノ酸配列は、配列番号1〜6および213のいずれかのアミノ酸配列と配列同一性が90%以上である。Genetyxを用いた配列同一性の算出結果を表2−1から表2−3および表3−1から表3−3に示す。
Figure 2019107516
Figure 2019107516
Figure 2019107516
Figure 2019107516
Figure 2019107516
Figure 2019107516
本発明の(a)〜(c)に記載のポリペプチドをコードする核酸は、当該ポリペプチドのN末端及び/又はC末端にさらなるペプチド又はタンパク質が付加されるような配列を含んでいてもよい。このようなペプチド又はタンパク質としては、例えば、分泌シグナル配列、輸送タンパク質、結合タンパク質、精製用のタグペプチド、蛍光タンパク質等を含むものが例示できる。こうしたペプチド又はタンパク質に関しては、当業者が目的に応じて、付加する機能を有するペプチド又はタンパク質を選択して、本発明のポリペプチドに付加することができる。なお、アミノ酸配列の配列同一性には、このようなペプチド又はタンパク質は含まれない。
配列番号1〜16、70〜138または213に記載のポリペプチドをコードする核酸は、配列番号1〜16または70〜138に記載のアミノ酸配列に翻訳されうるような塩基配列であれば特に限定されず、各アミノ酸に対応するコドン(標準遺伝暗号)を参考に決定することができる。その際、本発明に使用する宿主微生物にとってよく使用されているコドンで塩基配列を再設計してもよい。
配列番号1〜16、70〜138および213に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸の塩基配列の具体例としては、それぞれ、配列番号54〜69、139〜207および214に記載の塩基配列が挙げられる。
本発明において、ある核酸がコードするポリペプチドが、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性を有しているかどうかは、以下の形質転換株Aと形質転換株Bを作製し、培養試験の結果、培養液中に3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸を確認することができれば、当該核酸が3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性を有するポリペプチドをコードしていると判断する。判断方法を下記スキーム1に示す生合成経路を用いて説明する。
Figure 2019107516
上記スキーム1は、3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸、および/またはアジピン酸を生産するために必要な反応経路の例を示している。ここで、反応Aは、アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成する反応を示す。反応Bは、3−オキソアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を示す。反応Cは、3−ヒドロキシアジピル−CoAから2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する反応を示す。反応Dは、2,3−デヒドロアジピル−CoAからアジピル−CoAを生成する反応を示す。反応Eは3−ヒドロキシアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピン酸を生成する反応を示す。反応Fは、2,3−デヒドロアジピル−CoAからα−ヒドロムコン酸を生成する反応を示す。反応Gは、アジピル−CoAからアジピン酸を生成する反応を示す。
形質転換株Aは、反応A,反応Eおよび反応Fを触媒する酵素を有する。形質転換株Bは、反応A、反応C、反応Eおよび反応Fを触媒する酵素を有する。
まず、形質転換株Aを作製する。反応A、反応Eおよび反応Fをそれぞれ触媒する酵素を発現するプラスミドを作製する。なお、反応EとFは同一の酵素で反応を触媒することが可能である。当該プラスミドを、3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸、及びアジピン酸のいずれも生産する能力のない微生物株であるEscherichia coli BL21(DE3)株に導入する。得られた形質転換株に対し、酵素活性の有無を調べる対象となるポリペプチドをコードする核酸を適当なプロモーターの下流に組み込んだ発現プラスミドを導入し、形質転換株Aを得る。形質転換株Aを培養し、培養後の培養液に3−ヒドロキシアジピン酸が含まれているかどうかを確認する。3−ヒドロキシアジピン酸が培養液中に確認できた場合、次に形質転換株Bを作製する。形質転換株Bは、形質転換株Aに対し、反応Cを触媒する酵素を発現するプラスミドを作製して導入することで得る。形質転換株Bを培養し、培養後の培養液にα−ヒドロムコン酸が含まれているかどうかを確認する。培養後の培養液にα−ヒドロムコン酸が含まれることを確認することができれば、形質転換株Aが生産した3−ヒドロキシアジピン酸および形質転換株Bが生産したα−ヒドロムコン酸は、3−ヒドロキシアジピル−CoAを経由して生成されたことがわかるため、対象となるポリペプチドが3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性を有していると判断する。
反応Aを触媒する酵素をコードする遺伝子として、Pseudomonas putida KT2440株由来のpcaF(NCBI Gene ID: 1041755、配列番号20)を用いる。
反応EおよびFを触媒する酵素をコードする遺伝子として、Pseudomonas putida KT2440株由来のpcaIおよびpcaJ(NCBI Gene ID: 1046613、1046612、配列番号23、24)の全長を含む連続した配列を用いる。pcaIおよびpcaJがコードするポリペプチドは、複合体を形成することによって反応Eと反応Fを触媒する。
反応Cを触媒する酵素をコードする核酸として、Pseudomonas putida KT2440株遺伝子paaF(NCBI Gene ID: 1046932、配列番号47)を用いる。
形質転換株A、形質転換株Bの培養方法は、以下のとおりである。なお培養の際には、プラスミドを安定に保持するための抗生物質や、組み込んだ核酸がコードするポリペプチドの発現を誘導する物質を適宜加えることができる。pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L)5mLに、形質転換株AまたはBを一白金耳植菌し、30℃、120min−1で18時間振とう培養し、前培養液とする。続いて当該前培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L)5mLに添加し、30℃、120min−1で24時間振とう培養する。得られた培養液中に3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸が含まれているかを確認する。
培養液中に3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸が含まれることは、培養液を遠心し、上清をLC−MS/MSで分析することにより確認できる。分析の条件は以下のとおりである。
・HPLC:1290Infinity(Agilent Technologies社製)
カラム:Synergi hydro−RP(Phenomenex社製)、長さ100mm、内径3mm、粒径2.5μm
移動相:0.1%ギ酸水溶液/メタノール=70/30
流速:0.3mL/分
カラム温度:40℃
LC検出器:DAD(210nm)
・MS/MS:Triple−Quad LC/MS(Agilent Technologies社製)
イオン化法:ESI ネガティブモード。
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの活性の値は、3−オキソアジピン酸から酵素反応で調製した3−オキソアジピル−CoAを基質として、精製3−オキソアジピル−CoAレダクターゼを用いて生成する3−ヒドロキシアジピル−CoAを測定することで算出できる。具体的な方法は、以下の通りである。
3−オキソアジピン酸は公知の方法(例えば、WO2017/099209の参考例1に記載された方法)により調製することができる。
3−オキソアジピル−CoA溶液の調製:常法に従いPseudomonas putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、CoAトランスフェラーゼをコードする核酸(pcaIおよびpcaJ、NCBI−GeneID:1046613および1046612)の全長を増幅する。なお、このPCRで用いるプライマーの塩基配列は、例えば配列番号25および26である。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターであるpRSF−1b(Novagen社製)のKpnIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、CoAトランスフェラーゼ溶液を得る。当該溶液を用いて以下組成の3−オキソアジピル−CoA調製用酵素反応溶液を調製し、25℃で3分分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、得られた透過液を3−オキソアジピル−CoA溶液とする。
3−オキソアジピル−CoA調製用酵素反応溶液:
100mM Tris−HCl(pH8.2)
10mM MgCl
0.5mM succiniy−CoA
5mM 3−oxoadipic acid sodium salt
2μM CoA transferase。
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸全長を増幅する。なお、このPCRで用いるプライマーの塩基配列は、例えば配列番号31および32である。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターpACYCDuet−1(Novagen社製)のBamHIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ溶液を得る。3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性は、本酵素溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、25℃における3−ヒドロキシアジピル−CoAの生成量を測定することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.2)
10mM MgCl
150μL/mL 3−oxoadipyl−CoA solution
0.5mM NADH
1mM dithiothreitol
10μM 3−oxoadipyl−CoA reductase。
本発明で、(a)〜(c)に記載のポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物は、(a)〜(c)に記載のポリペプチドをコードする核酸を元来有している微生物を宿主として、当該宿主微生物が有する(a)〜(c)に記載のポリペプチドの発現を、遺伝子改変により増強した微生物である。
(a)〜(c)に記載のポリペプチドをコードする核酸を元来有している微生物の具体例は、以下のSerratia属微生物が挙げられる。Serratia marcescens(配列番号1、70〜80、82〜85、87〜118を有する微生物)、Serratia nematodiphila(配列番号2、81、119を有する微生物)、Serratia plymuthica(配列番号3、131〜136、138を有する微生物)、Serratia proteamaculans(配列番号4、137を有する微生物)、Serratia ureilytica(配列番号5を有する微生物)、Serratia sp. BW106(配列番号6を有する微生物)、Serratia sp. S119(配列番号7を有する微生物)、Serratia sp. YD25(配列番号8を有する微生物)、Serratia sp. FS14(配列番号9を有する微生物)、Serratia sp. HMSC15F11(配列番号10を有する微生物)、Serratia sp. JKS000199(配列番号11を有する微生物)、Serratia sp. TEL(配列番号12を有する微生物)、Serratia sp. ISTD04(配列番号13を有する微生物)、Serratia sp. SCBI(配列番号14を有する微生物)、Serratia sp. S4(配列番号15を有する微生物)、Serratia sp. C−1(配列番号16を有する微生物)、Serratia sp. OMLW3(配列番号86を有する微生物)、Serratia sp. OLEL1(配列番号120を有する微生物)、Serratia sp. OLEL2(配列番号123を有する微生物)、Serratia liquefaciens(配列番号213を有する微生物)などが挙げられる。
上記した(a)、(b)、(c)に記載したポリペプチドは、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ活性をも兼備しており、この3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、Serratia属微生物において5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子と遺伝子クラスターを構成する3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子によりコードされるものである。
ここで、Serratia属微生物において5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子と遺伝子クラスターを構成する3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子において、「遺伝子クラスター」とは、関連する機能を有する一連の核酸群が近接して存在する領域を意味する。遺伝子クラスターの具体的な構成要素としては、例えば単一の転写制御因子により転写調節される核酸群、単一の転写プロモーター制御下で転写されるオペロンなどが挙げられる。ある核酸が遺伝子クラスターを構成する核酸であるかどうかは、オンラインでantiSMASHなどの遺伝子クラスター検索プログラムを用いて調べることもできる。また、あるポリペプチドが3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼあるいは5−アミノレブリン酸シンターゼに分類されるかどうかは、NCBI(National Center for Biotechnology Information)やKEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)などのウェブサイトでBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)検索を行い、当該ポリペプチドのアミノ酸配列との相同性が高い酵素を調べることでわかる。例えば配列番号4のアミノ酸配列は、NCBIのデータベース上で、Protein ID:ABV40935.1として登録されており、アミノ酸配列から、3−ヒドロキシブチリルCoAデヒドロゲナーゼの活性を有するタンパク質であると推定されることが記載されている。また、配列番号4のアミノ酸配列をコードする遺伝子は、NCBIのデータベース上で、Gene ID:CP000826.1として登録されており、Serratia proteamaculans 568のゲノム上に保存されていること、またGene ID:CP000826.1の位置2015313から2016842に保存されていることが検索できる。さらに、この遺伝子の位置情報から、その前後の遺伝子配列を確認することができ、5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子(Protein ID:ABV40933.1)と図1に示す遺伝子クラスターを構成することも確認できる。同様に、配列番号1〜3、6〜16、70〜72、74〜82、84〜87、89、90、92、94〜100、103〜108、111〜115、117、118、120〜125、127〜133、135〜137、213のアミノ酸配列については、表13に示すプロテインIDとGene IDによって、NCBI上でその情報を確認することが可能である。
Figure 2019107516
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以下、本明細書中では、Serratia属微生物において5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子と遺伝子クラスターを構成する3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子にコードされるポリペプチドをコードする核酸を、「本発明で用いる3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子」と記載し、当該3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子がコードするポリペプチドを、「本発明で用いる3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ」と記載する。
本発明で用いる3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子が含まれる遺伝子クラスターは、少なくとも3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子および5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子を含んでいれば、他の核酸がクラスターに含まれていてもよい。図1に本発明で用いる3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子が含まれる遺伝子クラスターの具体例を示す。
当該遺伝子クラスターを有するSerratia属微生物の具体例は、S. marcescens、S. nematodiphila、S. plymuthica、S. proteamaculans、S. ureilytica、S. liquefaciens、Serratia sp. BW106、Serratia sp. S119、Serratia sp. YD25、Serratia sp. FS14、Serratia sp. HMSC15F11、Serratia sp. JKS000199、Serratia sp. TEL、Serratia sp. ISTD04、Serratia sp. SCBI、Serratia sp. S4、Serratia sp. C−1、Serratia sp. OMLW3、Serratia sp. OLEL1、Serratia sp. OLEL2、S. liquefaciensなどが挙げられる。
本発明で用いる、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、優れた3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性を有している。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼをコードする核酸が、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性を有しているかどうかは、上記と同様の方法で確認することができる。
本発明で用いる3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子がコードするポリペプチドは、共通配列1を有していることを特徴とする。このようなポリペプチドのアミノ酸配列の具体例としては、配列番号1〜16、70〜138または213のアミノ酸配列が挙げられる。
本発明では、前記共通配列1を有していれば、配列番号7〜16または70〜138のいずれのポリペプチドのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸も好ましく用いることができる。ここで、「1もしくは数個」の範囲は、10個以内が好ましく、さらに好ましくは5個以内、特に好ましくは4個以内、最も好ましくは1個又は2個以内である。ここで、アミノ酸が置換される場合、性質が類似したアミノ酸に置換された場合(すなわち、上記した保存的置換)にポリペプチドの活性が維持される可能性が高くなる。また、配列番号7〜16または70〜138のいずれのポリペプチドのアミノ酸配列と、配列同一性が70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは99%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチドをコードする核酸も好ましく用いることができる。
一方で、本発明で用いる3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼには該当しないが、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの活性を有しているポリペプチドとして、例えば、Pseudomonas putida KT2440株由来のPaaH(配列番号208)、Escherichia coli str. K−12 substr. MG1655株由来のPaaH(配列番号209)、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のDcaH(配列番号210)、Serratia plymuthica NBRC102599株由来のPaaH(配列番号211)などが挙げられるが、これらのポリペプチドには、表4および表5に示すように共通配列1が含まれていないことがわかる。なお、これらのポリペプチドは、(b)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド、または(c)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチドには該当しない。
Figure 2019107516
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本発明で遺伝子改変微生物を得るための宿主として用いることができる微生物は、Escherichia属、Serratia属、Hafnia属、Psuedomonas属、Corynebacterium属、Bacillus属、Streptomyces属、Cupriavidus属、Acinetobacter属、Alcaligenes属、Brevibacterium属、Delftia属、Shimwellia属、Aerobacter属、Rhizobium属、Thermobifida属、Clostridium属、Schizosaccharomyces属、Kluyveromyces属、Pichia属およびCandida属に属する微生物が挙げられる。これらの中でも、Escherichia属、Serratia属、Hafnia属、Pseudomonas属に属する微生物が好ましい。
本発明の遺伝子改変微生物を用いて3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸を製造する方法を説明する。
本発明の遺伝子改変微生物が、アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、および3−ヒドロキシアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピン酸を生成(反応E)する能力を有していれば、3−ヒドロキシアジピン酸を製造することができる。これらの生成能力を有する微生物を宿主微生物とすれば、3−ヒドロキシアジピン酸を高生産することができる遺伝子改変微生物を取得することができる。これらの生成能力を元来有すると推定される微生物としては、以下の微生物が挙げられる。Escherichia fergusonii、Escherichia coliなどのEscherichia属、Pseudomonas chlororaphis、Pseudomonas putida、Pseudomonas azotoformans、Pseudomonas chlororaphis subsp. aureofaciensなどのPsuedomonas属、Hafnia alveiなどのHafnia属、Corynebacteriumacetoacidophilum、Corynebacterium acetoglutamicum、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicumなどのCorynebacterium属、Bacillus badius、Bacillus magaterium、Bacillus roseusなどのBacillus属、Streptomyces vinaceus、Streptomyces karnatakensis、Streptomyces olivaceusなどのStreptomyces属、Cupriavidus metallidurans、Cupriavidus necator、Cupriavidus oxalaticusなどのCupriavidus属、Acinetobacter baylyi、Acinetobacter radioresistensなどのAcinetobacter属、Alcaligenes faecalisなどのAlcaligenes属、Nocardioides albusなどのNocardioides属、Brevibacterium iodinumなどのBrevibacterium属、Delftia acidovoransなどのDelftia属、Shimwellia blattaeなどのShimwellia属、Aerobacter cloacaeなどのAerobacter属、Rhizobium radiobacterなどのRhizobium属、Serratia grimesii、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia odorifera、Serratia plymuthica、Serratia entomophilaまたはSerratia nematodiphilaなどのSerratia属。これらの微生物を宿主微生物として本発明の遺伝子改変微生物を取得することで、3−ヒドロキシアジピン酸を高生産する遺伝子改変微生物を取得することができる。
本発明の遺伝子改変微生物が、アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、および/または3−ヒドロキシアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピン酸を生成(反応E)する能力を元来有していない場合には、反応A、Eを触媒する酵素をコードする核酸を適当に組み合わせて微生物に導入することで、これらの生成能を付与することができる。
本発明の遺伝子改変微生物が、アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAを脱水して2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成(反応C)する能力、および2,3−デヒドロアジピル−CoAからα−ヒドロムコン酸を生成(反応F)する能力を有していれば、α−ヒドロムコン酸を製造することができる。これらの生成能力を有する微生物を宿主微生物とすれば、α−ヒドロムコン酸を高生産することができる遺伝子改変微生物を取得することができる。これらの生成能力を元来有すると推定される微生物としては、以下の微生物が挙げられる。Escherichia fergusonii、Escherichia coliなどのEscherichia属、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas putida、Pseudomonas azotoformans、Pseudomonas chlororaphis subsp. aureofaciensなどのPsuedomonas属、Hafnia alveiなどのHafnia属、Bacillus badiusなどのBacillus属、Cupriavidus metallidurans、Cupriavidus numazuensis、Cupriavidus oxalaticusなどのCupriavidus属、Acinetobacter baylyi、Acinetobacter radioresistensなどのAcinetobacter属、Alcaligenes faecalisなどのAlcaligenes属、Delftia acidovoransなどのDelftia属、Shimwellia blattaeなどのShimwellia属、Serratia grimesii、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia odorifera、Serratia plymuthica、Serratia entomophilaまたはSerratia nematodiphilaなどのSerratia属。
本発明の遺伝子改変微生物が、アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAを脱水して2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成(反応C)する能力、および2,3−デヒドロアジピル−CoAからα−ヒドロムコン酸を生成(反応F)する能力を元来有していない場合には、反応A、C、Fを触媒する酵素をコードする核酸を適当に組み合わせて微生物に導入することで、これらの生成能を付与することができる。
本発明の遺伝子改変微生物が、スクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAを脱水して2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成(反応C)する能力、2,3−デヒドロアジピル−CoAを還元してアジピル−CoAを生成(反応D)する能力、およびアジピル−CoAからアジピン酸を生成(反応G)する能力を有していれば、アジピン酸を製造することができる。これらの生成能力を有する微生物を宿主微生物とすれば、アジピン産を高生産することができる遺伝子改変微生物を取得することができる。これらの生成能力を元来有すると推定される微生物としては、Thermobifida fuscaなどのThermobifida属が挙げられる。
本発明の遺伝子改変微生物が、スクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAを脱水して2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成(反応C)する能力、2,3−デヒドロアジピル−CoAを還元してアジピル−CoAを生成(反応D)する能力、およびアジピル−CoAからアジピン酸を生成(反応G)する能力を元来有していない場合には、反応A、C、D、Gを触媒する酵素をコードする核酸を適当に組み合わせて微生物に導入することで、これらの生成能を付与することができる。
以下に反応A、C〜Gを触媒する酵素の具体例を示す。
3−オキソアジピル−CoAを生成する反応Aを触媒する酵素は、例えば、アシルトランスフェラーゼ(β−ケトチオラーゼ)などを用いることができる。アシルトランスフェラーゼとしてはEC番号による分類上の限定は特にないが、EC2.3.1.−に分類されるアシルトランスフェラーゼが好ましく、具体的には3−オキソアジピル−CoAチオラーゼとしてEC2.3.1.174に分類される酵素、アセチル−CoA C−アセチルトランスフェラーゼとしてEC2.3.1.9に分類される酵素、アセチル−CoA C−アシルトランスフェラーゼとしてEC2.3.1.16に分類される酵素が挙げられる。これらの中でもEscherichia coli MG1655株由来のPaaJ(NCBI−ProteinID:NP_415915)、Pseudomonas putida KT2440株由来のPcaF(NCBI−ProteinID:NP_743536)などを好ましく用いることができる。
上記のアシルトランスフェラーゼが、スクシニル−CoAおよびアセチル−CoAを基質として、3−オキソアジピル−CoAを生成できるかどうかは、精製アシルトランスフェラーゼによる3−オキソアジピル−CoA生成反応と、3−オキソアジピル−CoAを基質とした精製3−オキソアジピル−CoAレダクターゼによる還元反応を組み合わせ、3−オキソアジピル−CoAの還元に伴うNADHの減少量を測定することで確認できる。具体的な測定方法は、例えば以下の通りである。
アシルトランスフェラーゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、アシルトランスフェラーゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターpACYCDuet−1(Novagen社製)のSacIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、アシルトランスフェラーゼ溶液を得る。アシルトランスフェラーゼ活性は、当該酵素溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30℃におけるNADHの酸化に伴う340nm吸収の減少を測定することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
0.1mM succinyl−CoA
0.2mM acetyl−CoA
0.2mM NADH
1mM dithiothreitol
10μg/mL 3−oxoadipyl−CoA reductase
5μg/mL acyltransferase。
本発明で用いる宿主微生物において元来発現する酵素がアシルトランスフェラーゼ活性を有しているかどうかは、精製アシルトランスフェラーゼの代わりに細胞破砕液(cell free extract: CFE)を用いて上述の測定を行うことで確認できる。大腸菌を対象とした具体的な測定方法は、例えば以下の通りである。
CFEの調製:pH7に調整した培地(培地組成:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L)5mLに活性測定の対象となる大腸菌MG1655株を一白金耳植菌し、30℃で18時間振とう培養する。得られた培養液をpH7に調整した培地(培地組成:トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L、フェルラ酸2.5mM、p−クマル酸2.5mM、安息香酸2.5mM、cis,cis−ムコン酸2.5mM、プロトカテク酸2.5mM、カテコール2.5mM、3OA2.5mM、3−ヒドロキシアジピン酸2.5mM、α−ヒドロムコン酸2.5mM、アジピン酸2.5mM、フェニルエチルアミン2.5mM)5mLに添加し、30℃で3時間振とう培養する。
得られた培養液に10mLの0.9%塩化ナトリウムを加え、菌体を遠心分離して上清を取り除く操作を3回行い、菌体を洗浄する。洗浄後の菌体をTris−HCl(pH8.0)100mM、dithiothreitol1mMからなるTris−HClバッファー1mLに懸濁し、得られた懸濁液にガラスビーズ(φ0.1mm)を加え、超音波破砕機を用い4℃で菌体を破砕する。菌体破砕液を遠心して得られる上清のうち0.5mLをUF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)に通し、透過液を除去したのちTris−HClバッファー0.4mLを添加することを3回繰り返すことで低分子量の夾雑物を除去した後、Tris−HClバッファーで再懸濁して液量を0.1mLとしたものをCFEとする。精製酵素の代わりに当該CFEを全量0.1mLの酵素反応溶液に対して0.05mL添加し、酵素活性の確認を行う。
2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する反応Cを触媒する酵素は、例えば、エノイル−CoAヒドラターゼなどを用いることができる。エノイル−CoAヒドラターゼとしては、EC番号による分類上の限定は特にないが、EC番号4.2.1.−に分類されるエノイル−CoAヒドラターゼが好ましく、具体的にはエノイル−CoAヒドラターゼまたは2,3−デヒドロアジピル−CoAヒドラターゼとしてEC4.2.1.17に分類される酵素が挙げられる。これらの中でもEscherichia coli MG1655株由来のPaaF(NCBI−ProteinID:NP_415911)、Pseudomonas putida KT2440株由来のPaaF(NCBI−ProteinID:NP_745427)などを好ましく用いることができる。
エノイル−CoAヒドラターゼが触媒する反応は一般的に可逆反応であることから、エノイル−CoAヒドラターゼが、3−ヒドロキシアジピル−CoAを基質として2,3−デヒドロアジピル−CoAが生成する反応を触媒する活性を有することは、α−ヒドロムコン酸から酵素反応で調製した2,3−デヒドロアジピル−CoAを基質として、精製エノイル−CoAヒドラターゼを用いて生成する3−ヒドロキシアジピル−CoAを検出することで確認することができる。具体的な測定方法は、例えば以下の通りである。
ここで用いるα−ヒドロムコン酸は、公知の方法(例えば、WO2016/199858A1の参考例1に記載された方法)により調製することができる。
2,3−デヒドロアジピル−CoA溶液の調製:常法に従いPseudomonas putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、CoAトランスフェラーゼをコードする核酸(pcaIおよびpcaJ、NCBI−GeneID:1046613および1046612)の全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターであるpRSF−1b(Novagen社製)のKpnIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、CoAトランスフェラーゼ溶液を得る。当該溶液を用いて以下組成の2,3−デヒドロアジピル−CoA調製用酵素反応溶液を調製し、30℃で10分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、得られた透過液を2,3−デヒドロアジピル−CoA溶液とする。
2,3−デヒドロアジピル−CoA調製用酵素反応溶液
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
0.4mM succiniy−CoA
2mM α−hydromuconic acid sodium salt
20μg/mL CoA transferase。
エノイル−CoAヒドラターゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、エノイル−CoAヒドラターゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターpET−16b(Novagen社製)のNdeIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、エノイル−CoAヒドラターゼ溶液を得る。エノイル−CoA ヒドラターゼ活性は、当該溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30℃で10分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、得られた透過液中の3−ヒドロキシアジピル−CoAを高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC−MS/MS)(Agilent社)で検出することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
300μL/mL 2,3−dehydroadipyl−CoA solution
1mM dithiothreitol
20μg/mL enoyl−CoA hydratase。
本発明で用いる宿主微生物において元来発現する酵素がエノイル−CoAヒドラターゼ活性を有しているかどうかは、精製エノイル−CoAヒドラターゼの代わりにCFEを全量0.1mLの酵素反応溶液に対して0.05mL添加して上述の測定を行うことで確認できる。大腸菌を対象としたCFEの調製方法の具体例はアシルトランスフェラーゼ活性の確認方法に記載した通りである。
アジピル−CoAを生成する反応Dを触媒する酵素は、例えば、エノイル−CoAレダクターゼなどを用いることができる。エノイル−CoAレダクターゼとしては、EC番号による分類上の限定は特にないが、EC番号1.3.−.−に分類されるエノイル−CoAレダクターゼが好ましく、具体的にはtrans−2−エノイル−CoAレダクターゼとしてEC1.3.1.44に分類される酵素、アシル−CoAデヒドロゲナーゼとしてEC1.3.8.7に分類される酵素が挙げられる。これらの具体例は、例えば特表2011−515111、J Appl Microbiol. 2015 Oct;119(4):1057−63.などに開示されているが、中でもEuglena gracilis Z株由来のTER(UniProtKB:Q5EU90)、Thermobifida fusca YX株由来のTfu_1647(NCBI−ProteinID:AAZ55682)、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のDcaA(NCBI−ProteinID:AAL09094.1)などを好ましく用いることができる。
エノイル−CoAレダクターゼが、2,3−デヒドロアジピル−CoAを基質とした場合、アジピル−CoAが生成する活性を有することは、α−ヒドロムコン酸から酵素反応で調製した2,3−デヒドロアジピル−CoAを基質として、精製エノイル−CoAレダクターゼを用いて2,3−デヒドロアジピル−CoAの還元に伴うNADHの減少量を測定することで確認できる。
α−ヒドロムコン酸の調製と、2,3−デヒドロアジピル−CoA溶液の調製は、上記と同様に行うことができる。
エノイル−CoAレダクターゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、エノイル−CoAレダクターゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターpET−16b(Novagen社製)のNdeIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、エノイル−CoAレダクターゼ溶液を得る。エノイル−CoAレダクターゼ活性は、本酵素溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30℃におけるNADHの酸化に伴う340nm吸収の減少を測定することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
300μL/mL 2,3−dehydroadipyl−CoA solution0.2mM NADH
1mM dithiothreitol
20μg/mL enoyl−CoA reductase。
本発明で用いる宿主微生物において元来発現する酵素がエノイル−CoAレダクターゼ活性を有しているかどうかは、精製エノイル−CoAレダクターゼの代わりにCFEを全量0.1mLの酵素反応溶液に対して0.05mL添加して上述の測定を行うことで確認できる。大腸菌を対象としたCFEの調製方法の具体例はアシルトランスフェラーゼ活性の確認方法に記載した通りである。
3−ヒドロキシアジピン酸を生成する反応E、α−ヒドロムコン酸を生成する反応F、アジピン酸を生成する反応Gを触媒する酵素は、例えば、CoAトランスフェラーゼあるいはアシル−CoAヒドロラーゼなどを用いることができるが、CoAトランスフェラーゼが好ましい。
CoAトランスフェラーゼとしては、EC番号による分類上の限定は特にないが、EC番号2.8.3.−に分類されるCoAトランスフェラーゼが好ましく、具体的にはCoAトランスフェラーゼまたはアシル−CoAトランスフェラーゼとしてEC2.8.3.6に分類される酵素などが挙げられる。
本発明において、「CoAトランスフェラーゼ」とは、アシル−CoAおよびコハク酸を基質としてカルボン酸およびスクシニル−CoAを生成する反応の触媒活性(CoAトランスフェラーゼ活性)を有する酵素を意味する。
3−ヒドロキシアジピン酸を生成する反応E、α−ヒドロムコン酸を生成する反応Fを触媒する酵素には、中でもPseudomonas putida KT2440株由来のPcaIおよびPcaJ(NCBI−ProteinID:NP_746081およびNP_746082)等を好ましく用いることができる。
また、アジピン酸を生成する反応Gを触媒する酵素には、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のDcaIおよびDcaJ(NCBI−ProteinID:CAG68538およびCAG68539)などを好ましく用いることができる。
3−ヒドロキシアジピル−CoA、2,3−デヒドロアジピル−CoAまたはアジピル−CoAを基質とするCoAトランスフェラーゼ活性は、本酵素反応が可逆反応であることから、3−ヒドロキシアジピン酸およびスクシニル−CoA、α−ヒドロムコン酸およびスクシニル−CoA、またはアジピン酸およびスクシニル−CoAを基質として、精製CoAトランスフェラーゼを用いて生成する3−ヒドロキシアジピル−CoA、2,3−デヒドロアジピル−CoAまたはアジピル−CoAを検出することで確認することができる。具体的な測定方法は、例えば以下の通りである。
3−ヒドロキシアジピン酸の調製:3−ヒドロキシアジピン酸はWO2016/199856A1の参考例1に記載された方法により調製する。
3−ヒドロキシアジピン酸を基質としたCoAトランスフェラーゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、CoAトランスフェラーゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターであるpRSF−1b(Novagen社製)のKpnIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、CoAトランスフェラーゼ溶液を得る。当該溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30℃で10分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、透過液中の3−ヒドロキシアジピル−CoAを高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC−MS/MS)(Agilent社)で検出することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
0.4mM succiniy−CoA
2mM 3−hydroxyadipic acid sodium salt
20μg/mL CoA transferase。
α−ヒドロムコン酸の調製:α−ヒドロムコン酸はWO2016/199858A1の参考例1に記載された方法により調製する。
α−ヒドロムコン酸を基質としたCoAトランスフェラーゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、CoAトランスフェラーゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターであるpRSF−1b(Novagen社製)のKpnIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、CoAトランスフェラーゼ溶液を得る。当該溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30℃で10分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、透過液中の2,3−デヒドロアジピル−CoAを高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC−MS/MS)(Agilent社)で検出することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
0.4mM succiniy−CoA
2mM α−hydromuconic acid sodium salt
20μg/mL CoA transferase。
アジピン酸を基質としたCoAトランスフェラーゼ活性の確認:常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、CoAトランスフェラーゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターであるpRSF−1b(Novagen社製)のKpnIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、CoAトランスフェラーゼ溶液を得る。当該溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30℃で10分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、透過液中のアジピル−CoAを高速液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計(LC−MS/MS)(Agilent社)で検出することで確認できる。
100mM Tris−HCl(pH8.0)
10mM MgCl
0.4mM succiniy−CoA
2mM adipic acid sodium salt
20μg/mL CoA−transferase。
本発明で用いる宿主微生物において元来発現する酵素がCoAトランスフェラーゼ活性を有しているかどうかは、精製CoAトランスフェラーゼの代わりにCFEを全量0.1mLの酵素反応溶液に対して0.05mL添加して上述の測定を行うことで確認できる。大腸菌を対象としたCFEの調製方法の具体例はアシルトランスフェラーゼ活性の確認方法に記載した通りである。
本発明で(a)〜(c)に記載のポリペプチド、または3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、従来技術で用いられている3−オキソアジピル−CoAレダクターゼよりも優れた活性を有することを特徴とする。ここで、「優れた活性」とは、同一の宿主微生物、発現条件下で当該ポリペプチドまたは従来の3−オキソアジピル−CoAレダクターゼを発現した遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地で培養した場合、従来の3−オキソアジピル−CoAレダクターゼを発現した遺伝子改変微生物に比べて高い収率で3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸、またはアジピン酸を生産することを意味する。ここで、3−ヒドロキシアジピン酸収率は式(3)に従って算出する。α−ヒドロムコン酸収率またはアジピン酸収率は、式(3)の3−ヒドロキシアジピン酸をそれぞれα−ヒドロムコン酸またはアジピン酸に置き換えることで算出する。
収率(%)=3−ヒドロキシアジピン酸生成量(mol)/炭素源の消費量(mol)×100・・・式(3)。
本発明で(a)〜(c)に記載のポリペプチド、または3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼが、従来技術で用いられている3−オキソアジピル−CoAレダクターゼよりも優れた活性を有することを確認する具体的な方法は以下の通りである。大腸菌内で自立複製可能なベクターpBBR1MCS−2(ME Kovach, (1995), Gene 166: 175−176)をXhoIで切断し、pBBR1MCS−2/XhoIを得る。当該ベクターに構成的な発現プロモーターを組み込むために、Escherichia coli K−12 MG1655のゲノムDNAを鋳型としてgapA(NCBI Gene ID: NC_000913.3)の上流域200bを常法に従ってPCR増幅し(用いるプライマーは、例えば配列番号18および19である)、得られた断片およびpBBR1MCS−2/XhoI を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、プラスミドpBBR1MCS−2::Pgapを得る。pBBR1MCS−2::PgapをScaIで切断し、pBBR1MCS−2::Pgap/ScaIを得る。アシルトランスフェラーゼをコードする核酸全長を常法に従ってPCR増幅し(用いるプライマーは、例えば配列番号21および22である)、得られた断片およびpBBR1MCS−2::Pgap/ScaIを、In−Fusion HD Cloning Kitを用いて連結しプラスミドpBBR1MCS−2::ATを得る。pBBR1MCS−2::ATをHpaIで切断し、pBBR1MCS−2::AT/HpaIを得る。CoAトランスフェラーゼをコードする核酸全長を常法に従ってPCR増幅し(用いるプライマーは、例えば配列番号25および26である)、得られた断片およびpBBR1MCS−2::AT/HpaIを、In−Fusion HD Cloning Kitを用いて連結しプラスミドをpBBR1MCS−2::ATCTを得る。
一方、大腸菌内で自立複製可能な発現ベクターpACYCDuet−1(Novagen社製)をBamHIで切断し、pACYCDuet−1/BamHIを得る。配列番号1〜16または70〜138のポリペプチドあるいは従来技術で用いられている3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸を常法に従ってPCR増幅し(用いるプライマーは、例えば配列番号31および32である)、得られた断片およびpACYCDuet−1/BamHI を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、配列番号1〜16または70〜138のポリペプチドあるいは従来技術で用いられている3−オキソアジピル−CoAレダクターゼを発現するプラスミドを得る。
得られたプラスミドおよびpBBR1MCS−2::ATCTを、大腸菌株BL21(DE3)にエレクトロポレーション(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170 (1988), pp. 2796-2801)で導入する。導入後の当該株をpH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L、カナマイシン25μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mL)5mLに一白金耳植菌し、30℃、120min−1で18時間振とう培養する。当該培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L、カナマイシン25μg/mL、クロラムフェニコール15μg/mLおよびIPTG0.01mM)5mLに添加し、30℃、120min−1で24時間振とう培養する。当該培養液より菌体を遠心分離した上清をMillex−GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を分析することで培養上清中の3−ヒドロキシアジピン酸および炭素源の濃度を定量する。LC−MS/MSによる3−ヒドロキシアジピン酸の定量分析は以下の条件で行う。
・HPLC:1290Infinity(Agilent Technologies社製)
カラム:Synergi hydro−RP(Phenomenex社製)、長さ100mm、内径3mm、粒径2.5μm
移動相:0.1%ギ酸水溶液/メタノール=70/30
流速:0.3mL/分
カラム温度:40℃
LC検出器:DAD(210nm)
・MS/MS:Triple−Quad LC/MS(Agilent Technoogies社製)
イオン化法:ESI ネガティブモード。
HPLCによる糖、コハク酸などの炭素源の定量分析は以下の条件で行う。
・HPLC:Shimazu Prominence(島津製作所製)
カラム:Shodex Sugar SH1011(昭和電工株式会社製)、長さ300 mm、内径8 mm、粒径6μm
移動相:0.05M 硫酸水溶液
流速:0.6mL/min
カラム温度:65℃
検出器:RI。
本発明においてアシルトランスフェラーゼ、CoAトランスフェラーゼ、エノイル−CoAヒドラターゼ、エノイル−CoAレダクターゼのいずれかをコードする核酸を宿主微生物に導入する場合、当該核酸はデータベース上に存在する当該酵素のアミノ酸配列を元に人工的に合成してもよいし、天然から分離してもよい。人工的に合成する場合、導入する宿主微生物に合わせて各アミノ酸に対応するコドンの使用頻度を変更してもよい。
本発明で、アシルトランスフェラーゼ、CoAトランスフェラーゼ、エノイル−CoAヒドラターゼ、エノイル−CoAレダクターゼのいずれかをコードする核酸を宿主微生物に導入する方法は特に限定されず、宿主微生物内で自律複製可能な発現ベクターに当該核酸を組み込み宿主微生物に導入する方法や、宿主微生物のゲノムに当該核酸を組み込む方法などを用いることができる。
当該酵素をコードする核酸を天然から分離する場合、遺伝子源となる生物は特に限定されないが、例えば、Acinetobacter baylyi、Acinetobacter radioresistensなどのAcinetobacter属、Aerobacter cloacaeなどのAerobacter属、Alcaligenes faecalisなどのAlcaligenes属、Bacillus badius、Bacillus magaterium、Bacillus roseusなどのBacillus属、Brevibacterium iodinumなどのBrevibacterium属、Corynebacterium acetoacidophilum、Corynebacterium acetoglutamicum、Corynebacterium ammoniagenes、Corynebacterium glutamicumなどのCorynebacterium属、Cupriavidus metallidurans、Cupriavidus necator、Cupriavidus numazuensis、Cupriavidus oxalaticusなどのCupriavidus属、Delftia acidovoransなどのDelftia属、Escherichia coli、Escherichia fergusoniiなどのEscherichia属、Hafnia alveiなどのHafnia属、Microbacterium ammoniaphilumなどのMicrobacterium属、Nocardioides albusなどのNocardioides属、Planomicrobium okeanokoitesなどのPlanomicrobium属、Pseudomonas azotoformans、Pseudomonas chlororaphis、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas fragi、Pseudomonas putida、Pseudomonas reptilivoraなどのPseudomonas属、Rhizobium radiobacterなどのRhizobium属、Rhodosporidium toruloidesなどのRhodosporidium属、Saccharomyces cerevisiaeなどのSaccharomyces属、Serratia entomophila、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia grimesii、Serratia nematodiphila、Serratia odorifera、Serratia plymuthicaなどのSerratia属、Shimwellia blattaeなどのShimwellia属、Sterptomyces vinaceus、Streptomyces karnatakensis、Streptomyces olivaceus、Streptomyces vinaceusなどのSterptomyces属、Yarrowia lipolyticaなどのYarrowia属、Yersinia ruckeriなどのYersinia属、Euglena gracilis などのEuglena 属、Thermobifida fuscaなどのThermobifida属が挙げられ、好ましくはAcinetobacter属、Corynebacterium属、Escherichia属、Pseudomonas属、Serratia属、Euglena 属、Thermobifida属である。
本発明で発現させるポリペプチドをコードする核酸を発現ベクターまたは宿主微生物ゲノムに組み込む場合、当該発現ベクターまたはゲノム組み込み用核酸はプロモーター、リボソーム結合配列、発現させるポリペプチドをコードする核酸、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーター活性を制御する遺伝子が含まれていてもよい。
本発明で用いるプロモーターは、宿主微生物内で酵素を発現させられるものであれば特に限定されないが、例えばgapプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーターなどが挙げられる。
本発明で発現ベクターを用いて核酸の導入や、ポリペプチドの発現の増強を行う場合は、当該微生物中で自律複製可能であれば特に限定されないが、例えばpBBR1MCSベクター、pBR322ベクター、pMWベクター、pETベクター、pRSFベクター、pCDFベクター、pACYCベクター、および上述のベクターの派生型などが挙げられる。
本発明でゲノム組み込み用核酸を用いて核酸の導入や、ポリペプチドの発現の増強を行う場合は、部位特異的相同組換えを用いて導入する。部位相同組換えの方法は特に限定されないが、例えばλ Red レコンビナーゼおよびFLPレコンビナーゼを用いる方法(Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Jun 6; 97(12): 6640-6645.)、λ Red レコンビナーゼおよびsacB遺伝子を用いる方法(Biosci Biotechnol Biochem. 2007 Dec;71(12):2905−11.)が挙げられる。
発現ベクターまたはゲノム組み込み用核酸の導入方法は、微生物に核酸を導入する方法であれば特に限定されないが、例えばカルシウムイオン法(Journal of Molecular Biology, 53, 159 (1970))、エレクトロポレーション法(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170 (1988), pp. 2796-2801)などが挙げられる。
本発明では、3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸を導入、もしくは当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物を、通常の微生物が利用し得る炭素源を発酵原料として含有する培地、好ましくは液体培地中において培養する。当該遺伝子改変微生物が利用し得る炭素源の他には、窒素源、無機塩および必要に応じてアミノ酸やビタミンなどの有機微量栄養素を程よく含有した培地を用いる。上記栄養源を含有していれば天然培地、合成培地のいずれでも利用できる。
発酵原料とは、当該遺伝子改変微生物が代謝し得る原料である。「代謝」とは、微生物が細胞外から取り入れた、あるいは細胞内で別の化学物質より生じたある化学物質が、酵素反応により別の化学物質へと変換されることを指す。炭素源としては、糖類を好ましく用いることができる。糖類の具体例としては、グルコース、シュクロース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース等の単糖類、これら単糖類が結合した二糖類、多糖類、およびこれらを含有する澱粉糖化液、糖蜜、セルロース含有バイオマス糖化液などが挙げられる。
また、上記に挙げた糖以外にも、CoAトランスフェラーゼの基質であるコハク酸を添加することで3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸を効率よく生産することができる。
上記に挙げた炭素源は、一種類のみ用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。炭素源の添加において、培地中の炭素源の濃度は、特に限定されず、炭素源の種類などに応じて適宜設定することができ、好ましくは、糖類は5g/L〜300g/L、コハク酸は0.1g/L〜100g/Lである。
当該遺伝子改変微生物の培養に用いる窒素源としては、例えば、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば、油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用できる。培地中の窒素源の濃度は、特に限定されないが、好ましくは、0.1g/L〜50g/Lである。
当該遺伝子改変微生物の培養に用いる無機塩類としては、例えば、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等を適宜添加使用することができる。
3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸を生産するための遺伝子改変微生物の培養条件は、前記成分組成の培地、培養温度、撹拌速度、pH、通気量、植菌量などを、当該遺伝子改変微生物の種類および外部条件などに応じて、適宜調節あるいは選択して設定する。液体培養において発泡がある場合には、鉱油、シリコーン油および界面活性剤などの消泡剤を適宜培地に配合することができる。
前記微生物の培養物中に、3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸が回収可能な量まで生産された後、生産された当該生産物を回収することができる。生産された当該生産物の回収、例えば単離は、蓄積量が適度に高まった時点で培養を停止し、その培養物から、発酵生産物を採取する一般的な方法に準じて行うことができる。具体的には、遠心分離、ろ過などにより菌体を分離したのち、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、活性炭処理、結晶化、膜分離、蒸留などにより、当該生産物を培養物から単離することができる。より具体的には、当該生産物の塩に酸成分を添加して析出物を回収する方法、培養物を逆浸透膜やエバポレーターなどを用いた濃縮操作により水を除去して当該生産物の濃度を高めた後、冷却結晶化や断熱結晶化により当該生産物および/または当該生産物の塩の結晶を析出させ、遠心分離やろ過などにより当該生産物および/または当該生産物の塩の結晶を得る方法、培養物にアルコールを添加して当該生産物をエステルとした後、蒸留操作により当該生産物のエステルを回収後、加水分解により当該生産物を得る方法等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。また、これらの回収方法は生成物の物性などにより適当に選択して最適化することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
参考例1
アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成する反応(反応A)を触媒する酵素、及び3−ヒドロキシアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピン酸を生成する反応(反応E)かつ2,3−デヒドロアジピル−CoAからα−ヒドロムコン酸を生成する反応(反応F)を触媒する酵素を発現するプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能なベクターpBBR1MCS−2(ME Kovach, (1995), Gene 166: 175−176)をXhoIで切断し、pBBR1MCS−2/XhoIを得た。当該ベクターに構成的な発現プロモーターを組み込むために、Escherichia coli K−12 MG1655のゲノムDNAを鋳型としてgapA(NCBI Gene ID: NC_000913.3)の上流域200b(配列番号17)をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号18、19)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS−2/XhoI を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え大腸菌株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS−2::Pgapとした。続いてpBBR1MCS−2::PgapをScaIで切断し、pBBR1MCS−2::Pgap/ScaI を得た。 反応Aを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonas putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としてアシルトランスフェラーゼ遺伝子pcaF(NCBI Gene ID: 1041755、配列番号20)の全長をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号21、22)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS−2::Pgap/ScaIを、In−Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS−2::ATとした。続いてpBBR1MCS−2::ATをHpaIで切断し、pBBR1MCS−2::AT/HpaIを得た。反応Eおよび反応Fを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonas putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としてCoAトランスフェラーゼ遺伝子PcaIおよびPcaJ(NCBI Gene ID: 1046613、1046612、配列番号23、24)の全長を含む連続した配列をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号25、26)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS−2::AT/HpaIを、In−Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS−2::ATCTとした。
参考例2
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpACYCDuet−1(Novagen社製)をBamHIで切断し、pACYCDuet−1/BamHIを得た。配列番号1のポリペプチドをコードする核酸を増幅するために、Serratia marcescens ATCC13880株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号54に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号31、32)、常法に従ってPCR反応を行った。配列番号2のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia nematodiphila DSM21420株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号55に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号33,34)、常法に従ってPCR反応を行った。配列番号3のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia plymuthica NBRC102599株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号56に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号35,36)、常法に従ってPCR反応を行った。配列番号4のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia proteamaculans 568株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号57に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号37,38)、常法に従ってPCR反応を行った。配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia ureilytica Lr5/4株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号58に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号215,216)、常法に従ってPCR反応を行った。配列番号6のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia sp. BW106株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号59に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号217,218)、常法に従ってPCR反応を行った。配列番号213のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia liquefaciens FK01株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号214に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号219,220)、常法に従ってPCR反応を行った。得られたそれぞれの断片およびpACYCDuet−1/BamHI を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認した。なお当該プラスミドに組み込まれた3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの発現はIPTGで誘導され、N末端にヒスチジンタグを含む14個のアミノ酸が付加されている。
配列番号1に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Smr1」、配列番号2に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Snm1」、配列番号3に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Spl1」、配列番号4に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Spe1」、配列番号5に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Sur1」、配列番号6に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Ssp1」、配列番号213に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Slq1」とし、これらのプラスミドについて表6に示す。
参考例3
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼを発現するためプラスミドの作製
本発明の(a)〜(c)に記載のポリペプチド以外で、3−オキソアシル−CoAを基質として3−ヒドロキシアシル−CoAを生成する還元反応を触媒する4種類の酵素を発現するためのプラスミドを作製した。Pseudomonas putida KT2440株由来のpaaH(配列番号27)、Escherichia coli str. K−12 substr. MG1655株由来のpaaH(配列番号28)、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaH(配列番号29)、Serratia plymuthica NBRC102599株由来のpaaH(配列番号30)の4種類を用いた。配列番号27に記載の核酸を増幅するためのプライマーとして(配列番号39,40)、配列番号28に記載の核酸を増幅するためのプライマーとして(配列番号41,42)、
配列番号29に記載の核酸を増幅するためのプライマーとして(配列番号43,44)、配列番号30に記載の核酸を増幅するためのプライマーとして(配列番号45,46)を用いた以外は、参考例2と同様の方法でプラスミドを作製した。
配列番号27に記載の核酸がコードするポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Ppu1」、配列番号28に記載の核酸がコードするポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Eco1」、配列番号29に記載の核酸がコードするポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Aci1」、配列番号30に記載の核酸がコードするポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet−1::Spl2」とし、これらのプラスミドについて表6に示す。
Figure 2019107516
実施例1
配列番号1,2,3,4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入された3−ヒドロキシアジピン酸生産能を有する大腸菌の作製
参考例1で作製したプラスミドpBBR1MCS−2::ATCTを、大腸菌株BL21(DE3)にエレクトロポレーション(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170 (1988), pp. 2796-2801)で導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCTとした。
続いて、参考例2で作製した7種類のプラスミドをそれぞれBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCTにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37℃で培養した。「pACYCDuet−1::Smr1」を導入した組換え株を「Ec/Smr1_3HA」、「pACYCDuet−1::Snm1」を導入した組換え株を「Ec/Snm1_3HA」、「pACYCDuet−1::Spl1」を導入した組換え株を「Ec/Spl1_3HA」、「pACYCDuet−1::Spe1」を導入した組換え株を「Ec/Spe1_3HA」、「pACYCDuet−1::Sur1」を導入した組換え株を「Ec/Sur1_3HA」、「pACYCDuet−1::Ssp1」を導入した組換え株を「Ec/Ssp1_3HA」、「pACYCDuet−1::Slq1」を導入した組換え株を「Ec/Slq1_3HA」とし、本実施例で得られた組換え株を表7に示す。
比較例1
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸が導入された3−ヒドロキシアジピン酸生産能を有する大腸菌の作製
参考例1で作製したプラスミドpBBR1MCS−2::ATCTを、大腸菌株BL21(DE3)にエレクトロポレーション(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170 (1988), pp. 2796-2801)で導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCTとした。
続いて、参考例3で作製した4種類のプラスミドをそれぞれBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCTにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37℃で培養した。
「pACYCDuet−1::Ppu1」を導入した組換え株を「Ec/Ppu1_3HA」、「pACYCDuet−1::Eco1」を導入した組換え株を「Ec/Eco1_3HA」、「pACYCDuet−1::Aci1」を導入した組換え株を「Ec/Aci1_3HA」、「pACYCDuet−1::Spl2」を導入した組換え株を「Ec/Spl2_3HA」とし、本比較例で得られた組換え株を表7に示す。
実施例2
配列番号1,2,3,4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入された3−ヒドロキシアジピン酸生産能を有する大腸菌を用いた3−ヒドロキシアジピン酸の生産試験
実施例1で作製した組換え大腸菌株を用いて、3−ヒドロキシアジピン酸の生産試験を行った。
pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L、カナマイシン25μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mL)5mLに、実施例1で作製した組換え株を一白金耳植菌し、30℃、120min−1で18時間振とう培養した。当該培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L、カナマイシン25μg/mL、クロラムフェニコール15μg/mLおよびIPTG0.01mM)5mLに添加し、30℃、120min−1で24時間振とう培養した。
3−ヒドロキシアジピン酸および炭素源の定量分析
当該培養液より菌体を遠心分離した上清をMillex−GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を以下の方法で分析することで培養上清中に蓄積した3−ヒドロキシアジピン酸および炭素源の濃度を定量した。その結果を表7に示す。また式(3)用いて算出した3−ヒドロキシアジピン酸の収率を表7に示す。
LC−MS/MSによる3−ヒドロキシアジピン酸の定量分析
・HPLC:1290Infinity(Agilent Technologies社製)
カラム:Synergi hydro−RP(Phenomenex社製)、長さ100mm、内径3mm、粒径2.5μm
移動相:0.1%ギ酸水溶液/メタノール=70/30
流速:0.3mL/分
カラム温度:40℃
LC検出器:DAD(210nm)
・MS/MS:Triple−Quad LC/MS(Agilent Technologies社製)
イオン化法:ESI ネガティブモード。
HPLCによる糖およびコハク酸の定量分析
・HPLC:Shimazu Prominence(島津製作所製)
カラム:Shodex Sugar SH1011(昭和電工株式会社製)、長さ300 mm、内径8 mm、粒径6μm
移動相:0.05M 硫酸水溶液
流速:0.6mL/min
カラム温度:65℃
検出器:RI
・HPLC:1290Infinity(Agilent Technologies社製)
カラム:Synergi hydro−RP(Phenomenex社製)、長さ100mm、内径3mm、粒径2.5μm
移動相:0.1%ギ酸水溶液/メタノール=70/30
流速:0.3mL/分
カラム温度:40℃
LC検出器:DAD(210nm)
・MS/MS:Triple−Quad LC/MS(Agilent Technologies社製)
イオン化法:ESI ネガティブモード。
比較例2
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸が導入された3−ヒドロキシアジピン酸生産能を有する大腸菌を用いた3−ヒドロキシアジピン酸の生産試験
実施例2と同様の方法にて、比較例1で作製した大腸菌を用いて3−ヒドロキシアジピン酸の生産試験を行った結果を表7に示す。
表7の結果から、実施例2で用いた組換え株は、本比較例2で用いた組換え株よりも3−ヒドロキシアジピン酸収率が向上することが明らかとなった。すなわち、配列番号1、2,3,4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸を微生物に導入することによって、3−ヒドロキシアジピン酸の生産性が著しく向上することがわかった。
Figure 2019107516
参考例4
3−ヒドロキシアジピル−CoAから2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する反応(反応C)を触媒する酵素を発現するためのプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpCDF−1b(Novagen社製)をKpnIで切断し、pCDF−1b/KpnIを得た。反応Cを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonas putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としてエノイル−CoAヒドラターゼ遺伝子paaF(NCBI Gene ID: 1046932、配列番号47)の全長をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号48、49)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpCDF−1b/KpnI を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認した。なお当該プラスミドに組み込まれたエノイル−CoAヒドラターゼの発現はIPTGで誘導され、N末端にヒスチジンタグを含む11個のアミノ酸が付加されている。得られたプラスミドを「pCDF−1b::EHa」とした。
実施例3
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入されたα−ヒドロムコン酸生産能を有する大腸菌の作製
参考例4で作製したプラスミドpCDF−1b::EHaを、実施例1で作製した大腸菌株BL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCTにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLおよびストレプトマイシン50μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT/ pCDF−1b::EHaとした。
続いて、参考例2で作製したプラスミド「pACYCDuet−1::Smr1」、「pACYCDuet−1::Snm1」、「pACYCDuet−1::Spl1」、「pACYCDuet−1::Spe1」、「pACYCDuet−1::Sur1」、「pACYCDuet−1::Ssp1」、「pACYCDuet−1::Slq1」それぞれを、BL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCT/ pCDF−1b::EHaにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37℃で培養した。「pACYCDuet−1::Smr1」を導入した組換え株を「Ec/Smr1_HMA」、「pACYCDuet−1::Snm1」を導入した組換え株を「Ec/Snm1_HMA」、「pACYCDuet−1::Spl1」を導入した組換え株を「Ec/Spl1_HMA」、「pACYCDuet−1::Spe1」を導入した組換え株を「Ec/Spe1_HMA」、「pACYCDuet−1::Sur1」を導入した組換え株を「Ec/Sur1_HMA」、「pACYCDuet−1::Ssp1」を導入した組換え株を「Ec/Ssp1_HMA」、「pACYCDuet−1::Slq1」を導入した組換え株を「Ec/Slq1_HMA」とし、本実施例で得られた組換え株を表8に示す。
比較例3
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸が導入されたα−ヒドロムコン酸生産能を有する大腸菌の作成
参考例4で作製したプラスミドpCDF−1b::EHaを、参考例2で作製した大腸菌株BL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCTにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLおよびストレプトマイシン50μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCT/ pCDF−1b::EHaとした。
続いて、参考例3で作製したプラスミド「pACYCDuet−1::Ppu1」、「pACYCDuet−1::Eco1」、「pACYCDuet−1::Aci1」、「pACYCDuet−1::Spl2」それぞれを、BL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCT/ pCDF−1b::EHaにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37℃で培養した。
「pACYCDuet−1::Ppu1」を導入した組換え株を「Ec/Ppu1_HMA」、「pACYCDuet−1::Eco1」を導入した組換え株を「Ec/Eco1_HMA」、「pACYCDuet−1::Aci1」を導入した組換え株を「Ec/Aci1_HMA」、「pACYCDuet−1::Spl2」を導入した組換え株を「Ec/Spl2_HMA」とし、本比較例で得られた組換え株を表8に示す。
実施例4
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入されたα−ヒドロムコン酸生産能を有する大腸菌を用いたα−ヒドロムコン酸の生産試験
実施例3で作製した大腸菌を用いてα−ヒドロムコン酸の生産試験を行った。pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L、カナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mL)5mLに、実施例3で作製した組換え大腸菌株を一白金耳植菌し、30℃、120min−1で18時間振とう培養した。当該培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L、カナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、クロラムフェニコール15μg/mLおよびIPTG0.01mM)5mLに添加し、30℃、120min−1で24時間振とう培養した。
α−ヒドロムコン酸および炭素源の定量分析
当該培養液より菌体を遠心分離した上清をMillex−GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を実施例2と同様の条件でLC−MS/MSにて分析した。培養上清中に蓄積したα−ヒドロムコン酸の定量分析を行った結果、および式(3)を用いて算出したα−ヒドロムコン酸の収率を表8に示す。
比較例4
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸が導入されたα−ヒドロムコン酸生産能を有する大腸菌を用いたα−ヒドロムコン酸の生産試験
実施例4と同様の方法にて、比較例3で作製した大腸菌を用いてα−ヒドロムコン酸の生産試験を行った結果を表8に示す。
表8の結果から、実施例4で用いた組換え株は、本比較例4で用いた組換え株よりもα−ヒドロムコン酸収率が向上することが明らかとなった。すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸を微生物に導入することによって、α−ヒドロムコン酸の生産性が著しく向上することがわかった。
Figure 2019107516
参考例5
配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増強するためのプラスミドの作製
配列番号2、3に記載のポリペプチドを構成的に発現するための様々なプラスミドを作製した。
配列番号2のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia nematodiphila DSM21420株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号55に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号50,51)、常法に従ってPCR反応を行った。また、配列番号3のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia plymuthica NBRC102599株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号56に記載の核酸を増幅するためのプライマーを設計し(配列番号52,53)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片および参考例1で作製したpBBR1MCS−2::Pgap/ScaIを、In−Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをそれぞれ「pBBR1MCS−2::Snm1」および「pBBR1MCS−2::Spl1」とした。
実施例5
配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増強するように改変したSerratia属微生物の作製
宿主微生物として、元来配列番号2のポリペプチドをコードする核酸を有する微生物であるSerratia nematodiphila DSM21420株、および元来配列番号3のポリペプチドをコードする核酸を有する微生物であるSerratia plymuthica NBRC102599株を用いて、それぞれが有するポリペプチドの発現を増大させた組換え株を作製した。参考例5で作製したpBBR1MCS−2::Snm1あるいはpBBR1MCS−2::Spl1を、上述のSerratia属微生物株それぞれにエレクトロポレーション(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170 (1988), pp. 2796-2801)で導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLを含有するLB寒天培地にて、30℃で培養した。本実施例で得られた組換え株をSn/Snm1、Sp/Spl1とした。
実施例6
配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増強するように改変したSerratia属微生物を用いた3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸生産試験
配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増強した効果を評価するために、実施例5で作製した組換えSerratia属微生物株を用いて、3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸の生産試験を行った。
pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L、カナマイシン25μg/mL)5mLに、実施例5で作製した組換え株を一白金耳植菌し、30℃、120min−1で18時間振とう培養した。当該培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L、カナマイシン25μg/mL)5mLに添加し、30℃、120min−1で24時間振とう培養した。
3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸、および炭素源の定量分析
当該培養液より菌体を遠心分離した上清をMillex−GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を実施例2と同様の条件でLC−MS/MSにて分析した。培養上清中に蓄積した3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸の定量分析を行った結果およびそれぞれの収率を表9に示す。
比較例5
配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増強していないSerratia属微生物の作製
実施例5と同様の方法にて、pBBR1MCS−2::gapをSerratia nematodiphila DSM21420株およびSerratia plymuthica NBRC102599株それぞれに導入した。得られた組換え株をSn/NC、およびSp/NCとした。
比較例6
配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増強していないSerratia属微生物を用いた3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸の生産試験
比較例5で作製したSerratia属微生物を用いて実施例6と同様の方法にて3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸の生産試験を行った。結果を表9に示す。
表9の結果から、実施例6で用いた配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増大させた組換え株は、本比較例6で用いた、配列番号2、3に記載のポリペプチドの発現を増大させていない組換え株よりも3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸収率が向上することが明らかとなった。すなわち、配列番号2,3に記載のポリペプチドの発現を増強することによって、3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸の生産性が著しく向上することがわかった。
Figure 2019107516
比較例7
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドが、3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する活性を有していることを確認するためのコントロール試験
反応Aと反応E、反応Fを触媒する酵素を発現させた組換え大腸菌を作製した。実施例1と同様の方法にて、pACYCDuet−1をBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCTに導入した。得られた組換え株をEc/NC_3HAとした。
反応A、反応E、反応F、反応Cを触媒する酵素を発現させた組換え大腸菌を作製した。実施例3と同様の方法にて、pACYCDuet−1をBL21(DE3)/ pBBR1MCS−2::ATCT/ pCDF−1b::EHaに導入した。得られた組換え株をEc/NC_HMAとした。
Ec/NC_3HA、Ec/NC_HMA、実施例1で作製した、組換え大腸菌7株(Ec/Smr1_3HA、Ec/Snm1_3HA、Ec/Spl1_3HA、Ec/Spe1_3HA、Ec/Sur1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、Ec/Slq1_3HA)、および実施例3で作製した組換え大腸菌7株(Ec/Smr1_HMA、Ec/Snm1_HMA、Ec/Spl1_HMA、Ec/Spe1_HMA、Ec/Sur1_HMA、Ec/Ssp1_HMA、Ec/Slq1_HMA)を用いて、実施例2および実施例4と同様の条件で培養を行い、培養液中の3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸を測定した。結果を表10に示す。
表10の結果から、Ec/NC_3HAおよびEc/NC_HMAでは、3−ヒドロキシアジピン酸またはα−ヒドロムコン酸が検出されず、実施例2および4で生産された3−ヒドロキシアジピン酸およびα−ヒドロムコン酸は、配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドを発現させたことにより生産可能になったことが確認できた。また、Ec/Smr1_3HA、Ec/Snm1_3HA、Ec/Spl1_3HA、Ec/Spe1_3HA、Ec/Sur1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、およびEc/Slq1_3HAではα−ヒドロムコン酸が検出されず、反応Cを触媒する酵素を発現させたEc/Smr1_HMA、Ec/Snm1_HMA、Ec/Spl1_HMA、Ec/Spe1_HMA、Ec/Sur1_HMA、Ec/Ssp1_HMA、およびEc/Slq1_HMAではα―ヒドロムコン酸の生産が確認された。このことから、Ec/Smr1_3HA、Ec/Snm1_3HA、Ec/Spl1_3HA、Ec/Spe1_3HA、Ec/Sur1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、およびEc/Slq1_3HAが生産した3−ヒドロキシアジピン酸、およびEc/Smr1_HMA、Ec/Snm1_HMA、Ec/Spl1_HMA、Ec/Spe1_HMA、Ec/Sur1_HMA、Ec/Ssp1_HMA、およびEc/Slq1_HMAが生産したα−ヒドロムコン酸は、共に3−ヒドロキシアジピル−CoAを経由して生成されたことがわかった。従って、配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドは3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する活性を有していることがわかった。
Figure 2019107516
参考例6
アセチル−CoAおよびスクシニル−CoAから3−オキソアジピル−CoAおよび補酵素Aを生成する反応(反応A)を触媒する酵素、及びアジピル−CoAからアジピン酸を生成する反応(反応G)を触媒する酵素を発現するプラスミドの作製
参考例1で作製したpBBR1MCS−2::ATをHpaIで切断して得られる6.6kbの断片をpBBR1MCS−2::AT/HpaIとした。反応Gを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Acinetobacter baylyi ADP1株のゲノムDNAを鋳型としてCoAトランスフェラーゼ遺伝子dcaIおよびdcaJ(NCBI Gene ID:CR543861.1、配列番号221、222)の全長を含む連続した配列をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号223、224)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS−2::AT/HpaIを、In−Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS−2::ATCT2とした。
参考例7
2,3−デヒドロアジピル−CoAからアジピル−CoAを生成する反応(反応D)を触媒する酵素を発現するためのプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpMW119(ニッポンジーン社製)をSacIで切断し、pMW119/SacIを得た。当該ベクターに構成的な発現プロモーターを組み込むために、Escherichia coli K−12 MG1655のゲノムDNAを鋳型としてgapA(NCBI Gene ID: NC_000913.3)の上流域200b(配列番号17)をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号225、226)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpMW119/SacIを、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え大腸菌株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpMW119::Pgapとした。続いてpMW119::PgapをSphIで切断し、pMW119::Pgap/SphIを得た。反応Dを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaA(NCBI−ProteinID:AAL09094.1、配列番号227)の全長をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号228、229)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpMW119::Pgap/SphIを、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpMW119::ERとした。
実施例7
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入されたアジピン酸生産能を有する大腸菌の作製
参考例6で作製したプラスミドpBBR1MCS−2::ATCT2を、大腸菌株BL21(DE3)にエレクトロポレーション(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170 (1988), pp. 2796-2801)で導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2とした。
参考例4で作製したプラスミドpCDF−1b::EHaをBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2にエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLおよびストレプトマイシン50g/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2/pCDF−1b::EHaとした。
参考例7で作製したプラスミドpMW119::ERをBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2/pCDF−1b::EHaにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびアンピシリン100μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2/pCDF−1b::EHa/pMW119::ERとした。
参考例2で作製した7種類のプラスミドをそれぞれBL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2/pCDF−1b::EHa/pMW119::ERにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37℃で培養した。「pACYCDuet−1::Smr1」を導入した組換え株を「Ec/Smr1_ADA」、「pACYCDuet−1::Snm1」を導入した組換え株を「Ec/Snm1_ADA」、「pACYCDuet−1::Spl1」を導入した組換え株を「Ec/Spl1_ADA」、「pACYCDuet−1::Spe1」を導入した組換え株を「Ec/Spe1_ADA」、「pACYCDuet−1::Sur1」を導入した組換え株を「Ec/Sur1_ADA」、「pACYCDuet−1::Ssp1」を導入した組換え株を「Ec/Ssp1_ADA」、「pACYCDuet−1::Slq1」を導入した組換え株を「Ec/Slq1_ADA」とし、本実施例で得られた組換え株を表11に示す。
比較例8
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸が導入されたアジピン酸生産能を有する大腸菌の作成
参考例3で作製したプラスミド「pACYCDuet−1::Ppu1」、「pACYCDuet−1::Eco1」、「pACYCDuet−1::Aci1」、「pACYCDuet−1::Spl2」それぞれを、BL21(DE3)/pBBR1MCS−2::ATCT2/pCDF−1b::EHa/pMW119::ERにエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37℃で培養した。
「pACYCDuet−1::Ppu1」を導入した組換え株を「Ec/Ppu1_ADA」、「pACYCDuet−1::Eco1」を導入した組換え株を「Ec/Eco1_ADA」、「pACYCDuet−1::Aci1」を導入した組換え株を「Ec/Aci1_ADA」、「pACYCDuet−1::Spl2」を導入した組換え株を「Ec/Spl2_ADA」とし、本比較例で得られた組換え株を表11に示す。
実施例8
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入されたアジピン酸生産能を有する大腸菌を用いたアジピン酸の生産試験
実施例7で作製した大腸菌を用いてアジピン酸の生産試験を行った。pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L、カナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mL)5mLに、実施例3で作製した組換え大腸菌株を一白金耳植菌し、30℃、120min−1で18時間振とう培養した。当該培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L、カナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLおよびIPTG0.01mM)5mLに添加し、30℃、120min−1で24時間振とう培養した。
アジピン酸および炭素源の定量分析
当該培養液より菌体を遠心分離した上清をMillex−GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を実施例2と同様の条件でLC−MS/MSにて分析した。培養上清中に蓄積したアジピン酸の定量分析を行った結果、および式(3)を用いて算出したアジピン酸の収率を表11に示す。
比較例9
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼをコードする核酸が導入されたアジピン酸生産能を有する大腸菌を用いたアジピン酸の生産試験
実施例8と同様の方法にて、比較例8で作製した大腸菌を用いてアジピン酸の生産試験を行った結果を表11に示す。
表11の結果から、実施例8で用いた組換え株は、本比較例9で用いた組換え株よりもアジピン酸収率が向上することが明らかとなった。すなわち、配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸を微生物に導入することによって、アジピン酸の生産性が著しく向上することがわかった。
Figure 2019107516
実施例9
配列番号2および4に記載のポリペプチドが3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの活性を有していることの確認
参考例2で作製したプラスミドpACYCDuet−1::Snm1およびpACYCDuet−1::Spe1を、大腸菌株BL21(DE3)にエレクトロポレーションで導入した。導入後の当該株をクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて37℃で培養した。得られた組み換え株をBL21(DE3)/pACYCDuet−1::Snm1およびBL21(DE3)/pACYCDuet−1::Spe1とした。
pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/Lおよびクロラムフェニコール15μg/mL)20mLに、BL21(DE3)/pACYCDuet−1::Snm1およびBL21(DE3)/pACYCDuet−1::Spe1を一白金耳植菌し、37℃、120rpmで17時間回旋培養した。当該培養液10mLを2Lの培地Iに添加し、37℃、100min−1で2時間振とう培養した。当該培養液にIPTGを500μMとなるように添加し、16℃、100min−1で18時間振とう培養した。培養液を6000rpm、4℃で15分遠心し上清を除去後の細胞ペレットをHis−Bind Buffer Kit(Merck社製)のBinding Bufferで懸濁した。得られた細胞懸濁液を氷冷しながらDigital Sonifier(BRANSON社製)にて細胞を超音波破砕した。破砕後の溶液を13000rpm、4℃で30分遠心し、得られた上清を細胞破砕液とした。
細胞破砕液30mLに適量のHis−Bind Resin溶液を加え、4℃で1時間インキュベーションした。当該溶液を4000rpm、4℃で5分遠心し、上清を20mL除去後のHis−Bind Resin溶液をカラムにロードした。10mLのBinding Bufferで2回洗浄した後、10mLのWash Buffer1(イミダゾール25mM)で2回、10mLのWash Buffer2(イミダゾール60mM)で2回洗浄した。最後に2mLのElution Buffer(イミダゾール1mM)で4回溶出し、フラクションを回収した。
目的酵素の分子量である55kDa付近にバンドが確認できたフラクションを8000rpm、4℃で15分遠心し、上清を除去後5mLのStrage Bufferを添加し、洗浄した。さらに8000rpm、4℃で15分遠心し、上清を除去後3mLのStrage Bufferを添加することを2回繰り返した。得られた溶液を酵素溶液Snm1およびSpe1とした。
3−オキソアジピン酸の調製:3−オキソアジピン酸はWO2017/099209の参考例1に記載された方法により調製した。
3−オキソアジピル−CoA溶液の調製:大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpRSF−1b(Novagen社製)をKpnIで切断し、pRSF−1b/KpnIを得た。反応Eを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonas putida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としてCoAトランスフェラーゼpcaIおよびpcaJ(NCBI−GeneID:1046613および1046612、配列番号23および24)の全長をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号230、231)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpRSF−1b/KpnI を、In−Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認した。得られたプラスミドを「pRSF−1b::CT」とした。
pRSF−1b::CTを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、CoAトランスフェラーゼ溶液を得た。当該溶液を用いて以下組成の3−オキソアジピル−CoA調製用酵素反応溶液を調製し、25℃で3分反応させた後、UF膜(Amicon Ultra−0.5mL 10K、Merck Millipore社製)で処理することで酵素を除去し、得られた透過液を3−オキソアジピル−CoA溶液とした。
3−オキソアジピル−CoA調製用酵素反応溶液:
100mM Tris−HCl(pH8.2)
10mM MgCl
0.5mM succiniy−CoA
5mM 3−oxoadipic acid sodium salt
2μM CoA transferase。
3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性の確認:3−オキソアジピル−CoAレダクターゼ活性は、3−ヒドロキシアジピル−CoAの生成量を測定することで確認した。酵素溶液Snm1およびSpe1を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、25℃で1時間反応後の酵素反応溶液をMillex−GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を実施例2と同様の条件でLC−MS/MSにて分析した。なお3−オキソアジピル−CoA濃度はKaschabekらの方法(J Bacteriol. 2002 Jan; 184(1): 207-215)を用いて定量し、酵素反応溶液中の濃度が15μMとなるよう調整した。コントロールとして酵素溶液の代わりにTris−HClを添加して同様に反応させた結果も併せて表12に示す。
100mM Tris−HCl(pH8.2)
10mM MgCl
150μL/mL 3−oxoadipyl−CoA solution
0.5mM NADH
1mM dithiothreitol
10μM 3−oxoadipyl−CoA reductase。
表12の結果から、酵素溶液Snm1およびSpe1を用いた反応では3−ヒドロキシアジピル−CoAの生成が確認できた。一方コントロールでは3−ヒドロキシアジピル−CoAは検出されなかった。従って、酵素溶液Snm1およびSpe1は3−オキソアジピル−CoAレダクターゼの活性を有していることが明らかとなった。
Figure 2019107516

Claims (11)

  1. 以下(a)〜(c)のいずれかに記載のポリペプチドをコードする核酸を導入、または当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物:
    (a)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチド、
    (b)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド、
    (c)配列番号1〜6及び213のいずれかのアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を有し、かつ3−オキソアジピル−CoAを還元して3−ヒドロキシアジピル−CoAを生成する反応を触媒する酵素活性を有するポリペプチド。
  2. 前記(b)及び(c)のいずれかに記載のポリペプチドが、配列番号212のアミノ酸配列からなる領域を含む、請求項1記載の遺伝子改変微生物。
  3. 前記配列番号212のアミノ酸配列において、N末端側から13番目のアミノ酸残基がフェニルアラニンまたはロイシンであり、N末端側から15番目のアミの酸残基がロイシンまたはグルタミンであり、N末端側から16番目のアミノ酸残基がリシンまたはアスパラギンであり、N末端側から17番目のアミノ酸残基がグリシンまたはセリンであり、N末端側から19番目のアミノ酸残基がプロリンまたはアルギニンであり、N末端側から21番目のアミノ酸残基が好ましくはロイシン、メチオニンまたはバリンである、請求項2記載の遺伝子改変微生物。
  4. Escherichia属、Serratia属、Hafnia属及びPseudomonas属からなる群から選ばれる微生物の遺伝子改変体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
  5. アセチル−CoA及びスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoA及び補酵素Aを生成する能力及び3−ヒドロキシアジピル−CoAから3−ヒドロキシアジピン酸を生成する能力を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
  6. アセチル−CoA及びスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoA及び補酵素Aを生成する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAから2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する能力及び2,3−デヒドロアジピル−CoAからα−ヒドロムコン酸を生成する能力を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
  7. アセチル−CoA及びスクシニル−CoAから3−オキソアジピルCoA及び補酵素Aを生成する能力、3−ヒドロキシアジピル−CoAから2,3−デヒドロアジピル−CoAを生成する能力、2,3−デヒドロアジピル−CoAからアジピル−CoAを生成する能力及びアジピル−CoAからアジピン酸を生成する能力を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、3−ヒドロキシアジピン酸の製造方法。
  9. 請求項1〜4及び6のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、α−ヒドロムコン酸の製造方法。
  10. 請求項1〜4及び7のいずれか1項に記載の遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、アジピン酸の製造方法。
  11. Serratia属微生物において5−アミノレブリン酸シンターゼ遺伝子と遺伝子クラスターを構成する3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ遺伝子にコードされるポリペプチドをコードする核酸を導入または当該ポリペプチドの発現を増強した遺伝子改変微生物を、炭素源を発酵原料として含む培地にて培養することを含む、3−ヒドロキシアジピン酸、α−ヒドロムコン酸及びアジピン酸からなる群から選ばれる1つ以上の物質の製造方法。
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