JPWO2019049922A1 - フラットケーブル用基材フィルムおよびそれを用いたフラットケーブル用絶縁フィルム - Google Patents
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Abstract
Description
従来、絶縁フィルムによる誘電損失は、例えば、特許文献1のように、導体を包み込む接着層の比誘電率および誘電正接を下げることにより対応してきた。そして、絶縁フィルムの基材フィルムとしては、一般的に、加工性が優れていることからポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられていた。
しかし、さらなる大容量化が求められる中、誘電損失をさらに抑制するべく、より比誘電率および誘電正接を低くした基材フィルムが求められている。
また特許文献3には、比誘電率が2.4〜3.0である発泡ポリエステル系樹脂絶縁層と、比誘電率が2.1〜2.7であるポリオレフィン系接着剤層とを備え、接着剤層の比誘電率が絶縁層の比誘電率より小さいフラットケーブルが開示されている。
なお、本明細書において、基材フィルムの比誘電率および誘電正接は、ASTMD2520に基づいた空洞共振器摂動法によって求める。また温度23℃、相対湿度50%、周波数10GHzにおける基材フィルムの比誘電率、誘電正接は、基材フィルム(試験片)を温度23℃、相対湿度50%の環境に48時間放置した後、温度23(±2)℃、相対湿度50(±5)%の試験環境下で測定した値である。
特に、温度60℃、相対湿度90%、周波数10GHzにおける前記基材フィルムの比誘電率の、温度23℃、相対湿度50%、周波数10GHzにおける前記基材フィルムの比誘電率に対する変化率が3.0%以下である場合、好ましい。
なお、本明細書中において、フィルムの引張破壊呼びひずみは、JISK7127(1999)に基づいて試験片タイプ2(10mm×100mmの短冊)を200mm/分の速度で引っ張ったときにおける降伏後の破断時の伸び率をいう。
なお、本明細書中において、ガラス転移点は、JISK7197(1991)に基づいて得られる熱機械分析(TMA)測定結果から求める。
なお、本明細書中において、熱膨張率は、試験片(2mm×25mm)を長手方向が鉛直方向になるように吊り下げて、該試験片の下端に5gf/2mm幅の引張荷重を印加し、雰囲気温度を昇温速度10℃/分で50℃から100℃まで昇温したときの熱膨張率である。
本発明のフラットケーブル用絶縁フィルムは、基材フィルムの比誘電率および誘電正接が低いため、誘電損失の小さいフラットケーブルを構築することができる。
二軸配向とは、面方向において、高分子が互いに異なる2方向で配向していることを意味する。異なる2方向としては、略直角をなす2方向(フィルムの押出方向(MD)および押出方向に対して垂直な方向(TD))で配向しているのが好ましい。二軸配向することによりフィルムに、靭性(伸びおよび引張強さ)を付与することができる。
二軸配向は、未延伸の前躯体フィルムを二軸延伸することにより達成される。例えば、同時二軸延伸方式、逐次二軸延伸方式等が挙げられ、同時二軸延伸方式が好ましい。未延伸の前駆体フィルムは、樹脂材料を溶融してフィルム状に成形することにより得られる。例えば、押出成形法、カレンダー成形法、キャスティング法等が挙げられ、押出成形法が好ましい。
基材フィルム10の厚みは、5〜300μm、好ましくは5μm〜100μm、特に好ましくは10μm〜75μmである。
なお基材フィルムを温度60℃、相対湿度90%の環境下に放置することにより基材フィルムは微小ながら水分を吸収するため、温度60℃、相対湿度90%、周波数10GHzにおける基材フィルムの比誘電率は、温度23℃、相対湿度50%、周波数10GHzにおける基材フィルムの比誘電率より若干高くなる。その変化率は3.0%以下である。好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。そして、変化率が0.1%を下回ることはない。
このように温度60℃、相対湿度90%の環境下における周波数10GHzの基材フィルム10の比誘電率の変化率が、温度23℃、相対湿度50%の環境下における周波数10GHzの基材フィルム10の比誘電率に対して3.0%以下であるため、環境変化によってもフラットケーブルの電気特性の変化が小さい。
なお基材フィルムを温度60℃、相対湿度90%の環境下に放置することにより基材フィルムは微小ながら水分を吸収するため、温度60℃、相対湿度90%、周波数10GHzにおける基材フィルムの誘電正接は、温度23℃、相対湿度50%、周波数10GHzにおける基材フィルムの誘電正接より若干高くなる。その変化率は30%以下である。好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。なお、変化率が5%を下回ることはない。
また基材フィルム10は、本発明の効果が発揮できる範囲内で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、帯電防止剤、無機フィラー、着色剤、結晶核剤、難燃剤等の添加剤を含有してもよい。
SPS系樹脂の吸水率は、0.005%〜0.20%、好ましくは0.01%〜0.20%、特に好ましくは0.05%〜0.15%である。吸水率は、JISK7209(2000)の6.2A法に基づいて、100mm×100mm平方の試験片を用いて測定した値である。
初めに、SPS樹脂ペレットを、溶融・混練し、押出成形して未延伸の前躯体フィルムを成形する。この前躯体フィルムを同時二軸延伸または逐次二軸延伸してフラットケーブル用基材フィルムを製造する。なお、二軸延伸後、二軸延伸処理時の張力を弛緩させて熱処理を行う弛緩式熱処理を行うのが好ましい。二軸延伸の延伸倍率、延伸温度、延伸速度は、所望の熱膨張率、引張破壊呼びひずみに応じて適当な条件を選択することができる。弛緩式熱処理の温度および弛緩倍率は、熱収縮率に応じて適当な条件を選択することができる。
次いで、このフラットケーブル用基材フィルム10の一方の面にプライマ層11、接着層12を積層して、図1(a)のフラットケーブル用絶縁フィルム1を製造する。なお、基材フィルム10の他方の面に、電磁波シールド層等を設けてもよい。また図1(b)の絶縁フィルム1のように、接着層12を基材フィルム10に直接設けてもよい。
絶縁フィルム1を2枚準備し、互いに接着層12を向け合い、導体を挟み、加熱しながら張り合わせて熱融着することにより、フラットケーブルを製造する。
SPS系樹脂(出光興産株式会社製、ザレック、ガラス転移点93℃、融点272℃)を、T−ダイを先端に取り付けた押出機を用いて、320℃にて溶融押出し、冷却して前駆体フィルム(約250μm)を得た。この前躯体フィルムを110℃で延伸速度500%/分、延伸倍率3.3×3.4(MD×TD)にてMD方向およびTD方向に同時二軸延伸し、その後、230℃および弛緩倍率94%×96%(MD×TD)にて弛緩式熱処理を行い、厚さ25μmの基材フィルム(実施例1)を得た。
[実施例2]
SPS系樹脂(出光興産株式会社製、ザレック、ガラス転移点95℃、融点247℃)を、T−ダイを先端に取り付けた押出機を用いて、320℃にて溶融押出し、冷却して前駆体フィルム(約500μm)を得た。この前躯体フィルムを110℃で延伸速度500%/分、延伸倍率3.3×3.4(MD×TD)にてMD方向およびTD方向に同時二軸延伸し、その後、230℃および弛緩倍率94%×96%(MD×TD)にて弛緩式熱処理を行い、厚さ50μmの基材フィルム(実施例2)を得た。
厚さ25μmの熱硬化性ポリイミド樹脂製の基材フィルム(東レ・デュポン株式会社製、カプトン)を準備した。
[比較例2]
厚さ25μmの二軸配向されたポリエチレンテレフタレート(以下、PET)樹脂製の基材フィルム(東レ株式会社製、ルミラー)を準備した。
[比較例3]
SPS系樹脂(出光興産株式会社製、ザレック、ガラス転移点95℃、融点247℃)を、T−ダイを先端に取り付けた押出機を用いて、320℃にて溶融押出し、冷却して未延伸の基材フィルム(約50μm)を得た。
実施例1、2、比較例1、2の基材フィルムを幅1.5mm×長さ60mmに切り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で48時間放置した。その後、温度23(±2)℃、相対湿度50(±5)%の試験環境下で、周波数を1GHzとして、それぞれの比誘電率および誘電正接を2回ずつ測定し、その平均値を求めた。測定装置としては、アジレント・テクノロジー株式会社製のPNA−LネットワークアナライザN5230Aと、株式会社関東電子応用開発製の空洞共振器1GHz用CP431とを用いた。その結果を表1に示す。
実施例1、2、比較例1、2の基材フィルムを幅1.5mm×長さ60mmに切り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で48時間放置した。その後、温度23(±2)℃、相対湿度50(±5)%の試験環境下で、周波数を10GHzとして、それぞれの比誘電率および誘電正接を2回ずつ測定し、その平均値を求めた。測定装置としては、アジレント・テクノロジー株式会社製のPNA−LネットワークアナライザN5230Aと、株式会社関東電子応用開発製の空洞共振器10GHz用CP531とを用いた。
同様に、実施例1、2、比較例1、2、3の基材フィルムを幅1.5mm×長さ60mmに切り出し、温度60℃、相対湿度90%の環境下で48時間放置した。それぞれの基材フィルムを上記環境下から取出した後、10分〜15分の間に、温度23(±2)℃、相対湿度50(±5)%の試験環境下で、周波数を10GHzとして、それぞれの比誘電率および誘電正接を2回ずつ測定し、その平均値を求めた。比誘電率の結果を表2に、誘電正接の結果を表3に示す。
実施例1および比較例2の基材フィルムを、幅100mm×長さ150mmに切り出した。実施例1および比較例2の基材フィルムの試験片を、温度120℃、相対湿度100%の環境下で、宙吊り状態で、それぞれ50時間、100時間、150時間、200時間放置した。各条件におけるそれぞれの基材フィルムの状態を確認した。その結果を表5に示す。
10 基材フィルム
11 プライマ層
12 接着層
Claims (7)
- 温度23℃、相対湿度50%、周波数10GHzにおいて、比誘電率が2.5以下であり、誘電正接が0.005以下であり、
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂を含有し、二軸配向された、
フラットケーブル用基材フィルム。 - 温度60℃、相対湿度90%、周波数10GHzにおいて、比誘電率が2.5以下であり、誘電正接が0.005以下である、
請求項1記載のフラットケーブル用基材フィルム。 - 温度60℃、相対湿度90%、周波数10GHzにおける前記基材フィルムの比誘電率の、温度23℃、相対湿度50%、周波数10GHzにおける前記基材フィルムの比誘電率に対する変化率が3.0%以下である、
請求項2記載のフラットケーブル用基材フィルム。 - 引張破壊呼びひずみが、室温において、15%以上である、
請求項1から3いずれか記載のフラットケーブル用基材フィルム。 - ガラス転移点が、140℃以上である、
請求項1から4いずれか記載のフラットケーブル用基材フィルム。 - 熱膨張率が、80ppm/℃以下である、
請求項1から5いずれか記載のフラットケーブル用基材フィルム。 - 請求項1〜6のいずれか記載のフラットケーブル用基材フィルムと、その基材フィルムに設けられた接着層とを有する、フラットケーブル用絶縁フィルム。
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