JPWO2019043759A1 - 多極子レンズ及びそれを用いた収差補正器、荷電粒子線装置 - Google Patents

多極子レンズ及びそれを用いた収差補正器、荷電粒子線装置 Download PDF

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Abstract

巻線型の収差補正器において、収差補正器の動作に必要な電源の安定度が下げられる。これにより従来よりも安価な電源が使用可能となり装置コストが低減できる。収差補正器を構成する多極子レンズは、光軸100に対して同一平面上に軸対称に配置される1対の電流線101〜112を複数有し、電流線は、光軸に対して平行に配置される主線部103と、主線部に対向して配置される戻り線部116とを有し、戻り線部に流れる電流の向きは、光軸に平行な成分では主線部に流れる電流の向きと逆方向であり、光軸と戻り線部との距離R2は、光軸と主線部との距離R1よりも大きく設定され、励起する多極子場において電流線に電流を供給する電源の電源安定性起因ノイズが所定レベル以下となるように設定される。

Description

本発明は、荷電粒子線応用技術に係り、特に、収差補正器を搭載した走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡等の荷電粒子線装置に関する。
走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)や走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)などに代表される荷電粒子線装置では、分解能を向上するために収差補正器が導入されている。収差補正器のタイプの一つに、多段に設置された多極子レンズから構成され、電場ないし磁場を発生することにより複数の多極子場を合わせた多極子レンズとして、内部を通過する荷電粒子線に含まれる収差を除去するものがある。特許文献1に、金属でできたくさび型の複数の極子を、中心軸向きに放射状に配置して、各々に電場ないし磁場を印加することで、多極子場を発生させる収差補正器が開示されている。複数の電流線からの磁場を用いて多極子場を発生させる巻線型の収差補正器として特許文献2および特許文献3が開示されている。くさび型、巻線型いずれの収差補正器においても、共に高い機械的な位置精度と高い電源安定性が要求される。
特開2004−241190号公報 特開2009−54581号公報 特開2009−81138号公報
特許文献1記載の収差補正器は、極子先端に高い位置精度が必要で、かつ、磁気的な連結や遮断を考慮した構造にする必要もあるため、複数の部品を組み合わせた複雑な構成をしている。したがって、大量生産が難しく、製作時間とコストがかかる。さらに、補正器を動作させるための電源として高安定な電源が必要であり、電源のコストも大きな課題である。
特許文献2には巻線型収差補正器が提案されている。ここでは比較的安価な収差補正器として電流線を用いて多極子場を形成するが、多極子場を用いた収差補正の原理そのものは特許文献1と同等である。このため、収差補正器自体のコストは低減できるものの、電源に必要な安定度は特許文献1と同等であり、電源コストについての課題が残る。
特許文献3では中心軸から一定距離にある四角状の配線を1極として多極子場を形成している。電流線で構成されていることから、収差補正器自体のコストは特許文献2と同程度になると考えられるが、電源安定度については特に考慮されておらず、電源コストには特許文献1および特許文献2と大きな違いがないと考えられる。
一実施の形態である多極子レンズは、光軸に対して同一平面上に軸対称に配置される1対の電流線を複数有し、電流線は、光軸に対して平行に配置される主線部と、主線部に対向して配置される戻り線部とを有し、戻り線部に流れる電流の向きは、光軸に平行な成分では主線部に流れる電流の向きと逆方向であり、光軸と戻り線部との距離は、光軸と主線部との距離よりも大きく設定され、励起する多極子場において電流線に電流を供給する電源の電源安定性起因ノイズが所定レベル以下となるように設定される。また、かかる多極子レンズを用いて収差補正器、荷電粒子線装置を構成する。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
巻線型の収差補正器において、収差補正器の動作に必要な電源の安定度が下げられる。これにより従来よりも安価な電源が使用可能となり装置コストが低減できる。
多極子レンズの断面図(模式図)である。 多極子レンズの鳥瞰図(模式図)である。 2とノイズ量との関係を説明する図である。 収差補正器を組み込んだ走査電子顕微鏡全体の構成例を示す概略図である。 多極子レンズの実装例を示す概略図である。 多極子レンズの別の構成形態を示す概略図である。 ΔGpと多極子強度の関係を説明する図である。 2とノイズ量との関係を説明する図である。 多極子レンズの別の構成形態を示す概略図である。 2とノイズ量との関係を説明する図である。 多極子レンズの別の構成形態を示す概略図である。 多極子レンズの別の構成形態を示す概略図である。 多極子レンズの別の構成形態を示す概略図である。
収差補正器は多段の多極子レンズを有して構成される。図1は巻線収差補正器の1段分の多極子レンズの断面図(模式図)であり、図2は1段分の多極子レンズの鳥瞰図(模式図)である。図2に示されるように、多極子レンズは荷電粒子線の光軸100を中心に、電流線101〜電流線112からなる12の電流線が軸対称に配置されている。図1は図2に示した平面200における多極子レンズの断面図である。荷電粒子線の光軸100を中心として同一平面上に軸対称となるように電流線101および電流線107が配置される。電流線101および電流線107はボビン118に巻かれて位置決めされており、ボビン118は樹脂などの非磁性材料を用いる。同様に、電流線102および電流線108、電流線103および電流線109、電流線104および電流線110、電流線105および電流線111、電流線106および電流線112がそれぞれ光軸100を中心として同一平面上に軸対称となるように配置されている。
電流線101を例に電流線の構造を説明する。電流線101は四角形の回路形状をしており、電源117から電流が供給される。図1に示す通り、電流線101をその四角形の辺にそれぞれ対応する4つの区間に分け、それぞれを主線部113、接続部114、接続部115、戻り線部116と称する。光軸100と平行に距離R1離れた位置に主線部113が配置され、光軸100と平行に距離R2離れた位置に戻り線部116が配置され、主線部113と戻り線部116とは逆方向の電流が流れる。図1では電流線101についてのみ詳細に記載しているが、電流線107は光軸100に対して電流線101と対称な構成をしている。
図2に示した巻線レンズ(多極子レンズ)には電源を省略しているが、多極子場の励起には特定の配分で電流を流す必要がある。例えば2N極子場(Nは1以上の整数)を励起するための一つの組合せとして、電流線101〜電流線112のそれぞれに印加する電流をI1〜I12とすると、基準電流ANに対して(数1)で求まる電流値の組合せをとる。
Figure 2019043759
(数1)は単一の多極子場を励起する電流配分を示すものである。これに対して、異なる複数の多極子場を重畳することもでき、その場合、電流線101〜電流線112はそれぞれ異なる電源に接続される。
多極子場は主線部からの磁場で形成するため、収差補正には主線部以外の配線は原理的には不要である。むしろ、戻り線部は主線部と逆方向の電流が流れるため、戻り線部による多極子場は主線部による多極子場と逆向きとなり、主線部の多極子場強度を弱める作用をもつ。このため従来は、戻り線部からの多極子場の影響を避けるよう、戻り線部を主線部と比べて光軸100からできるだけ離した位置におく、もしくは、主線部と戻り線部との間で磁気遮蔽するといった対策が必要であると考えられてきた。これに対して、本実施例においては、戻り線部からの多極子を積極的に活用することで、電源安定性起因のノイズ低減を図る。以降は特に断りがない限り、電源安定性起因のノイズを単にノイズと記し、浮遊磁場など装置の外部起因のノイズは別途断りを入れて区別する。以下、本実施例において想定されるノイズと対策の原理を説明する。
電源安定性起因のノイズとしては、図1の電源117におけるリップルノイズなどの出力電流値の揺れによって生じる磁場変動が想定される。また、ノイズ対策としては変動する磁場の2極子場成分の対策を行う。これは荷電粒子線装置の分解能の低下をもたらす要因として2極子場成分による荷電粒子線ビームの揺れが支配的であるためである。通常の対策としては、収差補正器用の電源に安定性が高いものを用いる。
電源線の主線部または戻り線部のそれぞれが発生させる磁場の強度は、理論上1/RNに比例することが分かっている(ここで、光軸と電源線の主線部または戻り線部との距離をRとする)。また、主線部に流れる電流と戻り線部に流れる電流とは逆向きであることから、それぞれが発生させる磁場の強度も逆向きとなるため、主線部と戻り線部から合成される2N極子場の強度は、基準電流ANに対して(数2)で与えられる。ここでは、主線部と戻り線部がそれぞれ無限長の長さを持つと仮定し、図1の接続部114および接続部115の電流線からの磁場の影響はないものとする。また、μは透磁率であり、巻線係数kNは巻線レンズが構成される電流線数と電流配分とで決まる定数である。例えば、図2に示す巻線レンズにおいて、(数1)での電流配分とした場合にはkNは6となる。
Figure 2019043759
(数2)より、多極子場の種類によって軸からの距離の影響が指数的に異なることが分かる。主線部の光軸からの距離R1を固定とし、戻り線部の光軸からの距離R2を変数として考えると、距離R2を大きくすると低次場(Nが小さい)に比べて、高次場(Nが大きい)の方が先に減衰する(打ち消し成分(1/R2 N)が比較して早く小さくなる)。言い換えると、距離R2を適切な距離にすることで、ノイズとなる2極子場成分の打ち消し量は大きく、かつ、補正場となる6極子場成分における打ち消し量は小さい条件が設定できることになる。
上記効果の説明として、多極子場強度を一定にした場合の戻り線によるノイズ量の比を図3に示す。図3の縦軸は戻り線なしのノイズ量で規格化した戻り線ありのノイズ量を示し、横軸は距離R1で規格化した距離R2を示している。ここでは多極子場強度を一定に保つため、基準電流ANは距離R2に応じて変えている。すなわち、距離R2を小さくすると打ち消し量が大きくなるため、電流量を増やすことで補っている。図3に示されるように、6極子場の場合は、規格化された距離R2が1.5〜2の間にノイズ量が約65%になる最小点が存在し、R2=5で約81%のノイズ量となる。距離R2が1.5以下の条件では、基準電流ANが大きくなること、距離R2の位置ロバスト性が低下する(ズレが生じた場合の強度変化量が大きい)ことから実用性は低く、一方、距離R2を大きくするとノイズの打ち消し効果が低くなる。そのため、距離R2をノイズ量の最小点を与える距離よりも大きくかつノイズ量が所定レベル以下となる範囲、あるいは最小点を与える距離近傍からノイズ量が所定レベル以下となる範囲、例えば6極子場を用いる収差補正器においては、距離R2を距離R1の1.5倍〜5倍の範囲におくことが望ましい。
以上、ノイズを打ち消すための巻線型多極子レンズの構成条件について説明した。収差補正器として動作させるには、多極子レンズを複数用いる必要がある。図4に電子線装置全体の構成例として、本実施例の収差補正器を組み込んだ全体構成要素の模式図を示す。本装置では、電子銃141から1次電子線が放出され、コンデンサレンズ142で平行ビームに形成され、多極子レンズ143を通過する。多極子レンズ143を通過した1次電子線は、コンデンサレンズ144とコンデンサレンズ145によって多極子レンズ146へ転写される。その後、1次電子線はコンデンサレンズ147および対物レンズ148で収束作用を受けて試料149上に照射される。真空容器140内は真空にされており、電子線は電子銃141から試料149到達まで真空状態が維持された中を進む。多極子レンズ143および多極子レンズ146はそれぞれ、図1〜図2に示した巻線の多極子レンズで構成され、球面収差補正を行うために6極子場が励起される。本球面収差光学系は、STEMなどで用いられる一般的な収差補正器と同一の光学系である。違いは、多極子レンズ143および145がくさび型の磁性体でできた多極子でなく、前述の通り巻線による多極子レンズを用いることである。なお、巻線型の多極子レンズは6極子場を用いた収差補正器以外にも、4極子場と8極子場を用いた4段の収差補正器にも適用可能である。
なお、本実施例の「同一平面上にある」という表現について、例えば、図1の主線部113および戻り線部116は同一平面上にあるものとしているが、実際の製作では精度の限界から厳密な同一平面上とはならない。そのため、本実施例の「同一平面」とは、理論上は同一平面とするものの、実物は回転方向のズレを考慮した誤差を含んだ平面とする。この誤差には理論値よりも電源ノイズ打ち消し効果が弱まる効果があるため、あらかじめ、回転方向のズレだけでなく軸方向のズレも含めてズレの許容値を設定しておく。許容値は目標スペックとコストに依存する値であるが、目安としては、主線部では回転方向で1度、軸方向で2%が許容値となり、戻り線では主線部の許容値の2〜4倍が許容値となる。主線部および戻り線部などの電流線の位置決めについては図5に示すように、ボビン118上に軸対称となるよう溝119を設け、溝119をガイドとして電流線を巻きつける方法がある。溝以外にも貫通孔を設けてもよい。
これまで本実施例の効果として電源ノイズ低減について説明したが、別の効果として、主線部の位置ズレの影響を低減する効果がある。具体的には、主線部で位置ズレがある場合は2極子場成分が生じるが、戻り線を加えることにより、図3のノイズと同等の比率で位置ズレ起因の2極子場成分の影響を低減できる。これ以外にも6極子場や8極子場励起時の非点(4極子場)成分を低減できる。つまり、同一の機械精度で多極子レンズを作っても戻り線の作用により、高精度な多極子レンズが製作できるようになる。最終的に低次場成分の重畳が不要になると、主線部を直列接続して単一電源で作動できるようになり、さらなるノイズとコストの低減が見込まれる。
実施例1の構成に対して、電源安定性起因のノイズ低減効果をより高める構成を図6に示す。図6に示す多極子レンズにおいては、荷電粒子線の光軸100を中心として同一平面上に軸対称となるように電流線101および電流線107が配置され、これらの電流線の戻り線部の外周に純鉄やパーマロイなど磁性材料でできた円環状の磁路120を配置している。なお、図6ではボビン118等は省略しているが、基本構成は実施例1に準じるものとする。磁路120の効果は電流線の磁場強度を高めることであるが、その磁場強度の高まり方は多極子場の種類によって異なる。また、磁場強度は電流線と磁路120の内径との距離ΔGpによっても変わる。以上の関係の具体例を図7に示す。ここでは、主線部とその外周にΔGp離れた位置に磁路120の円環の内径があるものとし、図7の縦軸に磁路がない状態の強度で規格化した多極子場強度をとり、横軸にΔGpをとっている(R1=3mm)。前述の通り、磁路があることで多極子場強度は強くなり、また、同一ΔGpであっても多極子場の種類により強度の変化率が異なることが見て取れる。実施例2では本特性を利用してノイズ低減効果を高め、電源に要求される安定度の緩和を図る。
磁路を用いたノイズ低減強化の原理について単純化した式を用いて説明する。ここでは実施例1の(数2)同様、主線部113と戻り線部116とが無限長の長さを持つと仮定し、接続部114および接続部115の電源線からの影響はないものとする。磁路120がある場合は(数2)の2つの項にそれぞれ異なる係数aN、bNをつけることで表すことができる。
Figure 2019043759
簡単のため、主線部と磁路が十分離れているとするとaNは定数とみなせ、戻り線と磁路との間隔を一定とするとbNも定数となる。実施例1の(数2)では、ノイズによる2極子場成分がゼロとなる条件(B2=0)はR1=R2の場合であり、この条件では他の多極子場成分もゼロとなってしまう。これに対して(数3)によると、ノイズによる2極子場成分がゼロとなる条件はR2=R1×(b1/a1)となり、かつ磁路は戻り線の近傍にあるためb1>a1の関係を持つ。この時、他の高次多極子場がゼロとなる条件は、それぞれの係数aN、bNが(数4)の関係を満たす場合に限られ、それ以外であれば有限値を持つことができる。つまり、磁路120を追加することで、計算上は補正に必要な多極子場強度を有限値で確保しながら、ノイズの2極子成分のみを完全に消すことができるようになる。
Figure 2019043759
磁路追加の効果を実際の系に当てはめた例を図8に示す(R1=3mm、磁路の内径と戻り線との間隔ΔGp=0.5mm固定)。図8は実施例1の図3に相当するグラフで、縦軸は戻り線および磁路なしのノイズ量で規格化した戻り線ありのノイズ量を示し、横軸は距離R1で規格化した距離R2を示している。図3と同様に多極子場強度を一定に保つため、基準電流ANは距離R2に応じて変えている。図8の条件では、主線部と磁路との距離が比較的近いため(数3)の係数aNの変化が無視できず、完全にはノイズゼロ条件を作ることができないものの図3の場合よりもノイズ量が小さくなるR2条件が含まれており、磁路追加の効果が見られる。しかしながら、R2が大きい場合(本例では、例えばR2>5)には、磁路なしの場合よりもノイズ量が大きくなることがあり、単純に磁路を追加すればノイズが減るわけではない。
なお磁路120の内径と戻り線との間隔ΔGpについて、2極子場より高次の多極子場強度はΔGpに比べてR2の影響の方が強く、ΔGp起因の打ち消しの影響は小さいことから、ノイズ打ち消しにはΔGpを小さくする方が良く、ΔGpはR2以下であることが望ましい。
実施例2の構成に対して、実施例2のノイズ低減効果をより高める構成を図9に示す。ここでは、実施例2の構成から電流線107の延長線部121を磁路120に巻きつけて戻り線部116を2重化している。このとき、戻り線部116で2重化された電流線は、光軸100からの距離を同一にして電流線107がなす平面に対称に、接触した状態で配置されることが望ましい。延長線部121上で磁路120より外周にある最外周部122から発生する磁場については、間に磁性体である磁路120が磁気シールドの役割を果たすため、磁路120より光軸側への影響がない。また、図9では戻り線を2重とした例を示したが、戻り線の多重化に制限はない。ただし戻り線部で同一方向の電流を流すことが求められる。
戻り線部多重化の効果としては、巻き数を増分に比例してノイズ打ち消し効果が増えることである。実施例2と同様に無限長近似し、主線部と磁路とが十分離れているとすると、式としては(数3)の戻り線の係数に巻数M(Mは自然数)を掛けることで(数5)のように表される。
Figure 2019043759
ノイズによる2極子場成分がゼロとなる条件はR2=MR1×(b1/a1)となり、多重化しない場合よりも戻り線部を光軸100から離れた位置に置くことができる。これは製作や設計での自由度が増えること、スペースを広げられることでメリットとなる。
多重化した場合のノイズ量について、例として戻り線を2重の場合の効果を図10に示す(R1=3mm、磁路の内径と戻り線との間隔ΔGp=0.5mm固定)。図10の縦軸は戻り線および磁路なしのノイズ量で規格化した戻り線2重化時のノイズ量を示し、横軸は距離R1で規格化した距離R2を示している。実施例1、実施例2と同様に多極子場強度を一定に保つため、基準電流ANは距離R2に応じて変えている。実施例2の図8と比較しても分かるように、戻り線の2重化によりノイズ低減率が増加し、ノイズが一定以下となるR2範囲(例えば、規格化ノイズ量が0.6以下となるR2範囲)が大きくなり、ノイズ最小となるR2の位置も大きい方向にシフトしている。また、同じノイズ低減率が得られる場合に必要となる電流量についても、R2が実用的な範囲においては、実施例2と比較して小さくなる。
実施例3では電流線を磁路120に巻きつけて戻り線部を多重化したが、図11に示すように磁路120を持たない構成も可能である。このとき最外周部122は戻り線部116よりも遠方に配置する(最外周部122と光軸との距離R3を距離R2に比べて大きくとる)。ここで、実施例3同様に無限長近似すると、多極子場強度は(数6)のように表される。(数6)は(数2)の戻り線の効果(第2項)を多重化し、最外周部122からの効果として第3項を追加することで導かれる。
Figure 2019043759
ここで、R3≫R2として追加した第3項をゼロとみなせば、ノイズによる2極子場成分がゼロとなる条件はR2=MR1となり、(数7)のように変形できる。
Figure 2019043759
多重化の場合、巻数Mは2以上の整数であることから、(数7)はノイズゼロ条件でも常に正となり、2極子場より高次の多極子場強度B2Nはゼロとならない。
なお、電流線の配線形状について、実施例1〜4では四角形状であり、主線部と戻り線部を光軸に平行とした構成例を示したが、光軸と同一平面上に軸対称に配置され、かつ電流が光軸と平行な成分を持てば、別の形状をとることができる。例えば、図12のように、戻り線のうち一部が副電流線部123を形成して、一部の領域だけノイズを打ち消す構成も可能である。
他に図13のように戻り線部116が傾斜した形状とすることも可能である。戻り線部が傾斜した場合の特徴としては、Z位置によりノイズの打ち消し量が変わることである。しかしながら、ノイズの影響は最終的に積分されるため、戻り線部116が傾斜していてもトータルでノイズの影響が抑えられれば問題ない。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
100…光軸、101〜112…電流線、113…主線部、114,115…接続部、116…戻り線部、117…電源、118…ボビン、119…溝、120…環状磁路、121…延長線部、122…最外周部、123…副電流線部、140…真空容器、141…電子銃、142,144,145,147…コンデンサレンズ、143,146…多極子レンズ、148…対物レンズ、149…試料。

Claims (14)

  1. 光軸に対して同一平面上に軸対称に配置される1対の電流線を複数有する多極子レンズであって、
    前記電流線は、前記光軸に対して平行に配置される主線部と、前記主線部に対向して配置される戻り線部とを有し、
    前記戻り線部に流れる電流の向きは、前記光軸に平行な成分では前記主線部に流れる電流の向きと逆方向であり、
    前記光軸と前記戻り線部との距離は、前記光軸と前記主線部との距離よりも大きく設定され、励起する多極子場において前記電流線に電流を供給する電源の電源安定性起因ノイズが所定レベル以下となるように設定される多極子レンズ。
  2. 請求項1において、
    前記多極子場の強度一定の条件において、前記戻り線がない場合の電源安定性起因ノイズ量に対する前記戻り線を有する場合の電源安定性起因ノイズ量は、前記光軸と前記主線部との距離に対する前記光軸と前記戻り線部との距離に依存して変化するとともに、所定の距離において最小値をとり、
    前記光軸と前記戻り線部との距離を、前記最小値を与える前記所定の距離よりも大きくとる多極子レンズ。
  3. 請求項1において、
    前記光軸と前記戻り線部との距離を、前記光軸と前記主線部との距離に対して1.5倍から5倍の間の距離とする多極子レンズ。
  4. 請求項1において、
    前記電流線の前記主線部と前記戻り線との間に磁性体を有しない多極子レンズ。
  5. 請求項1において、
    前記電流線の前記戻り線部の外周に円環状の磁路を有し、
    前記磁路の内径と前記戻り線部との距離は、前記光軸と前記戻り線部との距離以下とされる多極子レンズ。
  6. 光軸に対して同一平面上に軸対称に配置される1対の電流線を複数有する多極子レンズであって、
    前記電流線は、前記光軸に対して平行に配置される主線部と、前記主線部に対向して多重化されて配置される戻り線部と、前記戻り線部に対向して配置される最外周部とを有し、
    前記戻り線部に流れる電流の向きは、前記光軸に平行な成分では前記主線部及び前記最外周部に流れる電流の向きと逆方向であり、
    前記光軸と前記戻り線部との距離は、前記光軸と前記主線部との距離よりも大きく設定され、前記光軸と前記最外周部との距離よりも小さく設定される多極子レンズ。
  7. 請求項6において、
    前記光軸と前記戻り線部との距離は、励起する多極子場において前記電流線に電流を供給する電源の電源安定性起因ノイズが所定レベル以下となるように設定される多極子レンズ。
  8. 請求項6において、
    前記電流線の前記主線部と前記戻り線との間に磁性体を有しない多極子レンズ。
  9. 請求項6において、
    前記電流線の前記戻り線部と前記最外周部との間に円環状の磁路を有する多極子レンズ。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の多極子レンズを多段に有する収差補正器。
  11. 1次電子線を放出する電子銃と、
    前記1次電子線が入射され、多段の多極子レンズを有する収差補正器と、
    前記収差補正器を通過した1次電子線が入射される対物レンズとを有し、
    前記多極子レンズは、光軸に対して同一平面上に軸対称に配置される1対の電流線を複数有し、前記電流線は、前記光軸に対して平行に配置される主線部と、前記主線部に対向して配置される戻り線部とを有し、前記戻り線部に流れる電流の向きは、前記光軸に平行な成分では前記主線部に流れる電流の向きと逆方向であり、前記光軸と前記戻り線部との距離は、前記光軸と前記主線部との距離よりも大きく設定され、励起する多極子場において前記電流線に電流を供給する電源の電源安定性起因ノイズが所定レベル以下となるように設定される荷電粒子線装置。
  12. 請求項11において、
    前記収差補正器は6極子場を用いた収差補正器である荷電粒子線装置。
  13. 1次電子線を放出する電子銃と、
    前記1次電子線が入射され、多段の多極子レンズを有する収差補正器と、
    前記収差補正器を通過した1次電子線が入射される対物レンズとを有し、
    前記多極子レンズは、光軸に対して同一平面上に軸対称に配置される1対の電流線を複数有し、前記電流線は、前記光軸に対して平行に配置される主線部と、前記主線部に対向して多重化されて配置される戻り線部と、前記戻り線部に対向して配置される最外周部とを有し、前記戻り線部に流れる電流の向きは、前記光軸に平行な成分では前記主線部及び前記最外周部に流れる電流の向きと逆方向であり、前記光軸と前記戻り線部との距離は、前記光軸と前記主線部との距離よりも大きく設定され、前記光軸と前記最外周部との距離よりも小さく設定される荷電粒子線装置。
  14. 請求項13において、
    前記収差補正器は6極子場を用いた収差補正器である荷電粒子線装置。
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