[第1実施形態]
図1乃至図5に示す音響装置1は、耳100に装着して使用する音響装置である。この音響装置(以下、イヤホンと記す)1は、右耳用としても左耳用としても使用可能である。
イヤホン1は、電気音響変換器としてのドライバユニット2と、皮膚接触部材としてのキャップ3と、芯部材4と、拾音器5と、を有する。
ドライバユニット2は、放音部2aを有する。イヤホン1を耳100に装着することにより、ドライバユニット2は、放音部2aを外耳道101内に向けて配置される。
キャップ3は、ドライバユニット2の放音部2aを覆う部材である。キャップ3は、略球形の部材である。キャップ3は、外耳道101に嵌まり、且つ、ドライバユニット2の放音部2aから発せられた音を等方的に透過させる部材である。
本明細書において、「球形」とは、自然状態において球形であることを意味する。「球形」とは、略球形を含む意味である。略球形には、表面の大部分が球面であり、残りの一部分が非球面又は当該大部分の球面とは曲率が異なる球面である形状が含まれる。「球面」は、材質に起因する微少な孔や凹凸を有する球状面を含む意味である。「自然状態」とは、外圧が加わっていない状態(例えば、未使用状態、非装着状態、等)或いは外圧が解かれて十分な時間が経過した状態を意味する。
キャップ3は、ドライバユニット2を外耳道101の内壁103から離して支持すると共に、ドライバユニット2の放音部2aを外耳道101内の入口102付近に配置する。
キャップ3は、スポンジ材で形成されている。キャップ3に使用されるスポンジ材は、通気性の高い連続気泡構造を有している。その代表例は、高発泡・高通気ウレタンフォームである。キャップ3は、耳障りな高域成分の音を取り除くアナログフィルターとして機能しうる。
芯部材4は、円筒状の部材である。芯部材4の一端部には、ドライバユニット2が収容されるとともにキャップ3が取り付けられている。
芯部材4の他端部には、拾音器5が収容されるとともにカバー6が取り付けられている。
芯部材4は、金属製又は合成樹脂製である。金属の例として、アルミニウム合金を挙げることができる。カバー6は、メッシュ状の部材である。
芯部材4の内部には、ドライバユニット2を駆動する駆動制御回路(図示省略)と、拾音素子5からの音声信号を処理する信号処理回路(図示省略)とが設けられている。
上記のように構成された第1実施形態のイヤホン1によれば、図5に示すように、音声透過部材3が外耳道101に嵌まることにより、ドライバユニット2の放音部2aが外耳道101内の入口102付近に配置される。そして、ドライバユニット2から発せられた音がキャップ3を等方的に透過して外耳道101内に放音される。音導管123及びイヤピース124(図35参照)が存在しないため、外耳道101内の入口102又はその付近にてドライバユニット2から発せられた再生音が、キャップ3を透過して外耳道101の皮膚やその周辺の骨に伝達される。
よって、第1実施形態のイヤホン1によれば、ドライバユニット2から発せられた音を、外耳道101周辺の音を感じる部分の能力を最大限に活用して、自然な音響として認知することができる。
また、第1実施形態のイヤホン1によれば、ドライバユニット2の放音部2aが外耳道101内の入口102付近に配置されるので、ドライバユニット2から発せられる音を効率良く外耳道101に導くことができる。よって、小寸(小出力)の電気音響変換器2を使用しているにもかかわらず、その再生音を自然な音響として認知できる。
また、第1実施形態のイヤホン1は、音導管123(図35参照)を使用しないため、ドライバユニット2から聴覚器官に伝達される音域が制限されない。よって、ドライバユニット2の性能を十分に発揮させることができる。
また、第1実施形態のイヤホン1は、耳100に接触する部分がキャップ3だけであり且つキャップ3がスポンジ材からなるので、耳100への装着感が良好で、長時間着けていても耳100に痛みが生じにくい。
また、第1実施形態のイヤホン1は、外耳道101に嵌まるキャップ3が通気性を有するスポンジ材からなるので、外耳道101を気密に密閉しない。このためタッチノイズが発生しにくい。
また、第1実施形態のイヤホン1は、拾音器5を備えているので、ノイズキャンセリング機能や補聴器の機能を実現することができる。また、拾音器5をバイノーラルマイクとして使用することもできる。
また、第1実施形態のイヤホン1では、ドライバユニット2及び拾音器5が芯部材4に収容されているので、ドライバユニット2及び拾音器5を保護することができる。また、芯部材4は、イヤホン1を耳100に付け外しする際に指で摘まむ部分として機能し得る。
[第2実施形態]
以下の説明において、既に説明した実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を付して説明を省略する。
図6乃至図9に示すイヤホン1は、第1実施形態の構成に加えて、バッフル部材7を備えている。バッフル部材7は、傘状のフランジ部材である。バッフル部材7は、薄く柔軟な板材である。バッフル部材7は、エラストマで形成されている。エラストマの代表例として、シリコンを挙げることができる。
第2実施形態のイヤホン1によれば、図9に示すように、イヤホン1を耳100に装着することにより、外耳道101の入口102とその周辺部がバッフル部材7で覆われる。バッフル部材7が設けられている状態においても、外耳道101への空気の流通は許容される。すなわち、バッフル部材7は外耳道101を気密に密閉しない。バッフル部材7と耳の皮膚との間に隙間が形成されうる。
よって、第2実施形態のイヤホン1は、第1実施形態の効果に加え、ドライバユニット2から外耳道101内に発せられた音の外耳道101外への音漏れを抑制できる。そして、低音成分を効率良く内耳部へ伝えることができる。
また、バッフル部材7が外耳道101の入口102の周辺部に接触することにより、外耳道101に対するドライバユニット2の位置を安定させることができる。
また、耳100に接触する部分がキャップ3及びバッフル部材7であり且つどちらも柔らかい部材であるので、耳100への装着感が良好で、長時間装着しても耳100に痛みが生じにくい。
[第3実施形態]
図10及び図11に示すイヤホン1は、第2実施形態の構成に加えて、サブバッフル部材8を備えている。
サブバッフル部材8は、バッフル部材7とキャップ3との間に設けられている。サブバッフル部材8は、芯部材4の周囲に設けられている。サブバッフル部材8は、薄く柔軟な板材である。サブバッフル部材8は、エラストマで形成されている。
第3実施形態のイヤホン1によれば、図11に示すように、イヤホン1を耳100に装着することにより、外耳道101の入口102とその周辺部がバッフル部材7で覆われるとともに、バッフル部材7とキャップ3との間の空間がサブバッフル部材8によって仕切られる。サブバッフル部材8が設けられている状態においても、外耳道101への空気の流通は許容される。すなわち、サブバッフル部材8は外耳道101を気密に密閉しない。バッフル部材8と耳の皮膚との間に隙間が形成されうる。
よって、第3実施形態のイヤホン1は、第2の実施形態よりも更に音漏れを抑制できる。そして、低音成分を更に効率良く内耳部へ伝えることができる。
また、サブバッフル部材8が外耳道101の内壁103に接触することにより、外耳道101に対するドライバユニット2の位置をより安定させることができる。
また、耳100に接触する部分がキャップ3、バッフル部材7及びサブバッフル部材8であり且つこれらは何れも柔らかい部材であるので、耳への装着感が良好で、長時間着けていても耳100に痛みが生じにくい。
[第4実施形態]
図12乃至図19に示すイヤホン1は、第2実施形態の構成に加えて、嵌合部材9を備えている。
嵌合部材9は、芯部材4の周囲に設けられている。嵌合部材9は、耳甲介腔106に嵌まる柔軟性及び弾力性を有する部材である。嵌合部材9が耳甲介腔106に嵌まった状態においても、外耳道101への空気の流通は許容される。嵌合部材9と耳の皮膚との間に部分的に隙間が形成される。嵌合部材9が通気性を有しているならば、耳の皮膚との間の隙間は不要である。
嵌合部材9は、スポンジ材、不織布材、又は繊維が互いに交絡している繊維材で形成されている。嵌合部材9に用いられるスポンジ材にはシリコンスポンジが含まれる。シリコンスポンジには、透明感があり表面が滑らかなものが含まれる。この種のシリコンスポンジを使用することにより、透明感があり且つ表面が滑らかな斬新な嵌合部材9を実現できる。シリコンスポンジには、独立気泡を有し、水分及び空気を透過させないものがある。この種のシリコンスポンジを使用することにより、耳100に装着したときにとても柔らかくて暖かみを感じられる嵌合部材9を実現できる。
嵌合部材9は、正面から視ると円形を呈し(図15参照)、上面から視ると右側が若干潰れた略楕円形を呈する(図17参照)。嵌合部材9に対する芯部材4の位置は、正面から視ると右側に偏心している(図15参照)。
バッフル部材7は、嵌合部材9とキャップ3との間に設けられている。
第4実施形態のイヤホン1は、図11に示すように、キャップ3が外耳道101に嵌まるとともに、嵌合部材9が耳甲介腔106に嵌まることにより、耳100に安定に装着される。
このイヤホン1は、柔軟性及び弾力性な嵌合部材9が耳甲介腔106に嵌まるため、硬いハウジングが耳100に接触する構造のイヤホンと比較して耳100への装着感が良好で、長時間着けていても耳が痛くならない。
このイヤホン1は、嵌合部材9と芯部材4とを相対的に180°回転させることにより、右耳用としても左耳用としても使用可能である。
[第5実施形態]
図20乃至図24に示すイヤホン10は、音響ユニット11と耳装着体19とを有する。
音響ユニット11は、電気音響変換器としてのドライバユニット12と無線モジュール13とハウジング18とを有する。
ドライバユニット12は、放音部12aを有する。ドライバユニット12は、放音部12aを外耳道101内に向けて配置される。
無線モジュール13は、受信部14と電池15と操作部16と制御部17とを有する。
受信部14は、図示しない送信器(オーディオプレイヤ、スマートフォン、等、オーディオコンテンツ提供装置)から無線送信された信号を受信する。受信部14と図示しない送信器との間の通信プロトコルとして、Wi−Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、または他のプロトコルを使用することができる。
受信部14の出力端子には、ドライバユニット12の端子から延びる信号線12bが接続されている。受信部14は、受信した信号を電気信号(電気音響変換器駆動信号)に変換する。受信部14は、変換した電気信号を信号線12bを通じてドライバユニット12に入力する。ドライバユニット12は、入力された電気信号を音響に変換し、放音部12aから放音する。
電池15は、ドライバユニット12及び制御部17に電力を供給する。電池15は、一次電池または二次電池である。
操作部16は、オン/オフボタン16aと増大ボタン16bと減少ボタン16cとを有する。オン/オフボタン16aは、電池15からの電力の供給をオンオフするための操作子である。増大ボタン16bは、受信部14による電気信号の出力を増大させるための操作子である。減少ボタン16cは、受信部14による電気信号の出力を減少させるための操作子である。
制御部17は、操作部16に対してなされる操作に応じて、電池15からの電力の供給をオン/オフさせたり、受信部14による電気信号の出力を増減させたりする。
ハウジング18は、樹脂製の硬質の部材である。ハウジング18は、筒状の部材である。ハウジング18の一端18a側(イヤホン10が外耳道101に装着されたときに外耳道101に向く側)には、ドライバユニット12の放音部12aとは反対側の部分が嵌め込んで固定されている。ハウジング18の他端18b側には、制御部17が収容して固定されている。ハウジング18の当該他端18b側の一部には周壁を貫通させて貫通孔18cが形成されている。オン/オフボタン16Aと増大ボタン16b及び減少ボタン16cが、貫通孔18cを貫通してハウジング18の外に突出している。
耳装着体19は、音響ユニット11の全体を包み込む部材である。耳装着体19は、伸縮性、柔軟性及び通気性を有する部材である。耳装着体19は、皮膚接触部材19Aと音響ユニット収容部材19Bとで構成される。皮膚接触部材19Aと音響ユニット収容部材19Bは、どちらもスポンジ材からなる。スポンジ材として、化粧用パフに用いられるスポンジ材に類似した材質のスポンジ材が用いられる。スポンジ材として、化粧用パフに用いられるスポンジ材とまったく同じものを用いてもよい。皮膚接触部材19Aの比重は音響ユニット収容部材19Bの比重よりも小さい。皮膚接触部材19Aは、音響ユニット収容部材19Bよりも柔らかい。皮膚接触部材19Aは、音響ユニット収容部材19Bよりも良好に音声を透過する性質を有する。
皮膚接触部材19Aは、ドライバユニット12の放音部12aを覆う部材である。音声透過部材19Aは、ドライバユニット12の放音部12aから発せられた音を等方的に透過させる部材である。
音響ユニット収容部材19Bは、音響ユニット11の大部分を収容する部材である。音響ユニット収容部材19Bには、音響ユニット11を収容するための空洞19cが形成されている。音響ユニット11の大部分は空洞19c内に収容される。ドライバユニット12の放音部12a側の一部は音響ユニット収容部材19Bの一端19Baから突出する(図22C参照)。音響ユニット収容部材19Bの一端19Ba側の端部外側には環状の凹部19Bbが形成されている。
空洞19cの一部は、オン/オフボタン16a、増大ボタン16b及び減少ボタン16cを収容するための操作部収容領域19dになっている。操作部収容領域19dが存在することにより、音響ユニット収容部材19Bの特定部分19Bcの肉厚は他の部分よりも薄くなっている(図22C参照)。特定部分19Bcの肉厚は他の部分よりも薄いので、特定部分19Bcは他の部分よりも柔らかく、指で押すと容易に変形する。特定部分19Bcが他の部分よりも容易に変形することにより、オン/オフボタン16a、増大ボタン16b及び減少ボタン16cを操作しやすくしている。
皮膚接触部材19Aには、音響ユニット収容部材19Bの一端19Ba側の端部及びドライバユニット12の一部を収容するための空洞19Acが形成されている。空洞19Acは、イヤホン10が外耳道101に装着されたときに外耳道101に向く側の面19Aaとは反対側に開口している。皮膚接触部材19Aの内側には、音響ユニット収容部材19Bの凹部19Bbと互いに嵌合する環状の凸部19Abが形成されている。
イヤホン10は、オン/オフボタン16A、増大ボタン16b及び減少ボタン16cが操作部収容領域19dに配置されるように、音響ユニット11を音響ユニット収容部材19Bの空洞19cに嵌め込んだ後、皮膚接触部材19Aを音響ユニット収容部材19Bの一端19Ba側に被せ付けることにより、組み立てられる。皮膚接触部材19Aの凸部19Abと音響ユニット収容部材19Bの凹部19Bbが互いに嵌合することにより、音声透過部材19Aと音響ユニット収容部材19Bとが互いに簡易連結される。皮膚接触部材19Aと音響ユニット収容部材19Bとの間に接着層を設ければ、両者は互いに固定される。
上記のように構成されたイヤホン10は、耳装着体19が耳甲介腔106に嵌まることにより、耳100に安定に装着される。そして、耳装着体19の皮膚接触部材19Aが耳甲介腔106に嵌まることにより、ドライバユニット12が外耳道101に臨ませて支持される。ドライバユニット12から発せられた音は、皮膚接触部材19Aを透過して外耳道101内に放音される。音導管123(図35参照)が存在しないため、ドライバユニット12から聴覚器官に伝達される音域が制限されない。よって、ドライバユニット12の性能を十分に発揮させることができる。
また、イヤホン10は、耳装着体19が通気性を有する部材であるため、外耳道101を気密に塞がない。よって、イヤホン10は、タッチノイズが発生しにくい。
また、イヤホン10は、音響ユニット11の全体が耳装着体19で包み込まれているため、耳100に接触する部分が耳装着体19だけである。そして、耳装着体19は伸縮性及び柔軟性を有する部材である。このため、イヤホン10は、硬いハウジングが耳100に接触する構造のイヤホンと比較して耳100への装着感が良好であり、長時間着けていても耳100に痛みが生じにくい。
また、イヤホン10は、右耳用としても左耳用としても使用可能である。
また、イヤホン10は、耳装着体19を音響ユニット11から取り出し、別の耳装着体19に交換することができる。したがって、使用した結果汚れてしまった耳装着体19を新品の耳装着体19と交換することにより、イヤホン10を新品同様の清潔な状態にすることができる。また、デザインの異なる複数種類の耳装着体19を用意しておくことにより、服装などに応じて複数種類のデザインの耳装着体19を使い分けることができる。また、性能・機能の異なる複数種類の耳装着体19を用意しておくことにより、用途に応じて複数種類の性能・機能の耳装着体19を使い分けることができる。性能・機能の例として、日常生活での装着に適した装着性能(標準的な柔軟性)、就寝時の装着に適した装着性能(より高度な柔軟性)、運動時における装着に適した装着性能(落下防止機能付き)、等を挙げることができる。落下防止機能の例として、左右の耳100に装着される両耳装着体19を互いに連結する紐、チェーン、等を挙げることができる。
また、イヤホン10は、耳装着体19の材質が化粧用パフと類似しているので、化粧用パフとして代用することができる。
[第6実施形態]
図25に示すイヤホン10は、外耳道嵌合部19eを有している。その他の構成は第5実施形態のイヤホン10と同じである。外耳道嵌合部19eは、皮膚接触部材19Aの一部をなす。外耳道嵌合部19eは、イヤホン10の着時に外耳道101に嵌合する部分である。
第6実施形態のイヤホン10は、皮膚接触部材19Aの外耳道嵌合部19eが外耳道101に嵌まるとともに、皮膚接触部材19Aの外耳道嵌合部19e以外の部分が耳甲介腔106に嵌まる。したがって、第6実施形態のイヤホン10は、第5実施形態のイヤホン10よりも安定に耳100に装着される。
[第7実施形態]
図26乃至図28に示すイヤホン10は、第1ケーブル40Aを有している。第1ケーブル40Aは、図示しないオーディオコンテンツ提供装置と音響ユニット11とを電気的に互いに接続するケーブル40の一部である。このイヤホン10の音響ユニット11は、ドライバユニット12のみからなる。空洞19cは、図21のものよりも小さく形成されている。空洞19cには、操作部収容領域19d(図21参照)は存在しない。その他の構成は第5実施形態のイヤホン10と同じである。ドライバユニット12には、図示しないオーディオコンテンツ提供装置からの電気信号がケーブル40を介して入力される。ドライバユニット12は、入力された電気信号を音響に変換し、放音部12aから放音する。
図27に示すように、第1ケーブル40Aの一端40aは、ドライバユニット12の端子に接続されている。第1ケーブル40Aの他端側は、音響ユニット収容部材19Bの内部を通って耳装着体19の外側に延びている。図26に示すように、ケーブル40は、第1ケーブル40Aと第2ケーブル40Bとを有する。第2ケーブル40Bの一端は図示しない受信装置に接続されている。図示しない受信装置は、図示しない送信装置(オーディオコンテンツ提供装置)から無線送信された信号を受信する。受信された信号が信号処理され、ケーブル40を介してドライバユニット12に入力される。図示しない受信装置と図示しない送信器との間の通信プロトコルとして、Wi−Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、または他のプロトコルを使用することができる。
第1ケーブル40Aと第2ケーブル40Bは、接続端子対41を介して互いに電気的に接続される。接続端子対41は、第1端子41Aと第2端子41Bとからなる。第1端子41Aは雄端子であり、第2端子41Bは雌端子である。第1端子41Aは第1ケーブル40Aの他端部40Aaに取り付けられている。第2端子41Bは、第2ケーブル40Bの他端部40Baに取り付けられている。第1端子41Aと第2端子41Bは、互いに接続及び離脱可能である。第1ケーブル40Aの長さは任意である。第1ケーブル40Aの長さ(音響ユニット11から第1端子41Aまでの長さ)は、20cm以下であることが好ましい。第1ケーブル40Aと第2ケーブル40Bとが互いに接続して使用されることを考慮すると、第1ケーブル40Aの長さは高々20cmあれば十分だからである。
第7実施形態のイヤホン10は、図28に示すように、第1端子41Aと第2端子41Bとの互いの結合が解かれている状態の製品である。すなわち、このイヤホン10は、第2ケーブル40Bと図示しない送信装置とを備えていない製品として提供される。ただし、第2ケーブル40B及び図示しない送信装置と、このイヤホン10をセットにして販売することは可能である。
第7実施形態によれば、イヤホン10が故障した場合などに、そのイヤホン10だけを新品と交換することが可能である。また、音響特性の異なる複数種類のイヤホン10を用意しておくことにより、用途に応じた音響特性のイヤホン10を第2ケーブル40Bに接続して使用することができる。
[第8実施形態]
図30乃至図33に示すイヤホン12は、第2エンクロージャとしてのイヤホンケーシング50と、電気音響変換器としてのドライバユニット60と、皮膚接触部材としてのキャップ70と、介在部材としてのバッフルチューブ80と、を有する。
イヤホンケーシング50は、アルミ板を絞り加工してなる一体成形品である。イヤホンケーシング50は、ヘッド部51と、ボディ部52と、を有する。
ヘッド部51は、半球殻構造になっている。ボディ部52は、直管の両端を半球殻で塞いだ構造になっている。ヘッド部51とボディ部52とは、ネック部(括れ部)53を介して同軸状に接続されている。ヘッド部51の外径は、ボディ部52の外径よりも大きい。
ヘッド部51の先端部(図示左端部)は開口している。ヘッド部51の先端51aには、プロテクタ54が取り付けられている。プロテクタ54は、ヘッド部51と略対称の半球殻状の部材である。プロテクタ54とヘッド部51とが組み合わされて球殻を成している。プロテクタ54は、メッシュ状の金属製の部材である。プロテクタ54は、音声を良好に透過させる。ヘッド部41の先端部の内側には、ドライバユニット60が嵌合する環状突起51bが設けられている。
ドライバユニット60は、電気音響変換素子61と、第1エンクロージャとしてのドライバケーシング62と、を有する。電気音響変換素子61の先端(図示左端)には、放音部としての振動板61aが設けられている。振動板61aの背後(図示右側)には、入力電気信号を振動板61aの振動に変換する電気機械結合系63が設けられている。電気機械結合系63は、ボイスコイル、マグネット、等(何れも不図示)で構成される。振動板61aの振動が空気振動すなわち音として放出される。電気音響変換素子61の基端(図示右端)には、一対の端子61bが設けられている。電気音響変換素子61は、ドライバケーシング62に収容されている。ドライバケーシング62は、電気音響変換素子61との間に第1共鳴室91を形成する。
ドライバケーシング62は、円筒部62aと、端板部62b、とからなる。円筒部62aは、電気音響変換素子61を包囲している。電気音響変換素子61の振動板61aは、円筒部62aの前端から露出している。電気機械結合系(不図示)の駆動軸は円筒部62aの中心軸と同軸上に配置されている。円筒部62aの後端は、端板部62bで塞がれている。端板部62bの内面(図示左面)には、一対の端子62cが設けられている。端板部62bの外面(図示右面)には、一対の端子62dが設けられている。端板部62bの内面の端子62cと外面の端子62dとは、スルーホール(不図示)で電気的に接続されている。端板部62bの内面の端子62cには、電気音響変換素子61の端子61bが電気的に接続されている。端板部62bには、ポート(通気孔)62eが設けられている。
ポート62eは、端板部62bの内面及び外面に開口している。
ドライバケーシング62は、円筒部62aがヘッド部51の環状突起51bに嵌合することにより、ヘッド部51内に安定に保持されている。この例では、ドライバケーシング62の後端(図示右端)が、ヘッド部51の内壁に全周に亘って接している。これにより、ヘッド部51と端板部62bとの間に第2共鳴室92が形成されている。第2共鳴室92は、ポート62eを介して第1共鳴室91と連通している。
また、この例では、ボディ部52の内部空間が第3共鳴室93をなす。第3共鳴室93は、ネック部53の内部空間94を介して第2共鳴室92と連通している。すなわち、第2共鳴室92と第3共鳴室93との連通部(内部空間94)は、くびれている。
ボディ部52の軸方向(図示左右方向)の中央の下部には、ケーブル挿入孔(不図示)が設けられている。ボディ部52には、ケーブル挿入孔(不図示)と同軸にブッシング55が取り付けられている。ボディ部52内すなわち第3共鳴室93には、ブッシング55を介してケーブル56の一端側が挿入されている。第3共鳴室93内で、ケーブル56の一端部がボディ部52に固定され、その一端部から2本のリード線57が引き出されている。リード線57はそれぞれ端子63に電気的に接続されている。ケーブル56の他端部は、プラグ(不図示)が備えられて音楽再生装置などに接続される。
ボディ部52は、イヤホン12を耳100に付け外しする際に指で摘まむ部分として機能し得る。
キャップ70は、略球形の部材である。キャップ70は、スポンジ材で形成されている。キャップ70に使用されるスポンジ材は、通気性の高い連続気泡構造を有している。その代表例は、高発泡・高通気ウレタンフォームである。キャップ70は、柔軟性、弾力性及び通気性を有する。キャップ70は、音を透過させる部材である。キャップ70は、耳障りな高域成分の音を取り除くアナログフィルターとして機能しうる。
キャップ70は、バッフルチューブ80及びプロテクタ54が取り付けられている状態のヘッド部51を覆う。キャップ70とバッフルチューブ80とを組み合わせることにより、ボディ部52側(図示右側)の端部を除き、略球体をなす。電気音響変換素子61の振動板61a及び側部61cは、キャップ70で覆われる。キャップ70は、電気音響変換素子61を外耳道101の内壁103(図33)から離して支持する。この例では、電気音響変換素子61とキャップ70との間に、ドライバケーシング62、プロテクタ54、ヘッド部51及びバッフルチューブ80が介在している。
バッフルチューブ80は、イヤホンケーシング50に環装されている。すなわち、この例では、バッフルチューブ80は、ドライバユニット60に間接的に環装されている。バッフルチューブ80は、ドライバユニット60とキャップ70との間に存在する。
バッフルチューブ80は、ボディ部52のヘッド部51側の端部からプロテクタ54の中間部に延びている。バッフルチューブ80のボディ部52側の端部80aは、キャップ70で覆われない。端部80aの表面は、自然状態におけるキャップ70の表面と同じ曲率の部分球面である。
バッフルチューブ80の先端部(図示左端部)80bは開口している。バッフルチューブ80の先端部80bとプロテクタ54との間には、環状の狭い隙間が形成されている。バッフルチューブ80のボディ部52側の端部80aは、全周に亘ってボディ部52に気密に接している。端部80aには、内側に向けて環状の返し部81が設けられている。返し部81が、ボディ部52の半球殻に倣って面接触することにより、バッフルチューブ80とボディ部52との間の気密性が保たれている。返し部81は、ネック部53に達している。
バッフルチューブ80は、イヤホンケーシング50との間に環状の空気室95を形成する。この例では、ヘッド部51とバッフルチューブ80との間に空気室95が形成されている。すなわち、空気室95は、ドライバユニット60を包囲している。
バッフルチューブ80は、イヤホンケーシング50及びドライバケーシング62よりも遙かに軟らかい。バッフルチューブ80は、キャップ70と同等の柔軟性を有する。バッフルチューブ80は、外力が加わると容易に変形する。バッフルチューブ80は、外力が加わらなくなると、自然状態の形状に復元する。図31に示されているバッフルチューブ80の形状は、自然状態の形状である。
バッフルチューブ80は、弾力性を有する。バッフルチューブ80は、エラストマでできている。エラストマの例として、シリコーンゴムを挙げることができる。エラストマでできたバッフルチューブ80とスポンジ材(発泡ウレタンフォーム、発泡シリコーン、等)でできたキャップ70との間には、比較的大きい摩擦力が働く。その摩擦力がドライバユニット60とキャップ70との相対移動を難くしている。これにより、ドライバユニット60に対するキャップ70の位置ずれ、及びイヤホンケーシング50からのキャップ70の不用意な離脱或いは望まない離脱が防止される。
上記のように構成された第8実施形態のイヤホン12は、図33に示すように、キャップ70が外耳道101に嵌まることにより、バッフルチューブ80と外耳道101の内壁103との間に、キャップ70が介在する。図33には表現されていないが、バッフルチューブ80は、耳100に装着したときに、キャップ70と共に外側から圧縮される。ドライバユニット60は、外耳道101の内壁103から離して支持される。電気音響変換素子61は、振動板61aを外耳道101内に向けて配置される。電気音響変換素子61の振動板61aは、外耳道101内の入口102付近に配置される。そして、電気音響変換素子61から発せられた音がキャップ70を放射状に透過して外耳道101内に放音される。音導管953及びイヤピース124(図35参照)が存在しないため、外耳道101内の入口102付近にて電気音響変換素子61から発せられた再生音が、キャップ70を透過して外耳道101の皮膚やその周辺の骨に伝達される。
よって、第8実施形態のイヤホン12によれば、ドライバユニット60から発せられた音を、外耳道101周辺の音を感じる部分の能力を最大限に活用して、自然な音響として認知することができる。
また、第8実施形態のイヤホン12によれば、電気音響変換素子61の放音部としての振動板61aが外耳道101内の入口102付近に配置されるので、電気音響変換素子61から発せられる音を効率良く外耳道101に導くことができる。よって、小寸(小出力)のドライバユニット60を使用しているにもかかわらず、その再生音を自然な音響として認知できる。
また、第8実施形態のイヤホン12は、音導管123(図35参照)を使用しないため、ドライバユニット60から聴覚器官に伝達される音域が制限されない。よって、ドライバユニット60の性能を十分に発揮させることができる。
また、第8実施形態のイヤホン12は、キャップ70の外形が球形であるので、多くの人の外耳道101にフィットし易い。また、キャップ70の外形が球形であることにより、ドライバユニット60から発せられる音が偏りなく放射状に外耳道101内に放音される。また、耳に対する装着角度が多少変化しても、バッフルチューブ80と外耳道101の内壁103との間に、キャップ70が介在し、ドライバユニット60が外耳道101の内壁103から離して支持される。
また、第8実施形態のイヤホン12は、耳100に接触する部分がキャップ70だけであり且つキャップ70が柔軟なスポンジ材からなるので、耳100への装着感が良好で、長時間着けていても耳100に痛みを生じさせにくい。
また、第8実施形態のイヤホン12は、外耳道101に嵌まるキャップ70が通気性を有するスポンジ材からなるので、外耳道101を気密に密閉しない。このためタッチノイズが発生しにくい。
また、第8実施形態のイヤホン12は、ヘッド部51とキャップ70との間にバッフルチューブ80が存在するので、外耳道101を気密に密閉しないにもかかわらず、中低音再現性が良い。外耳道101外への音漏れが抑制されるからである。また、バッフルチューブ80の内部空間が空気室95をなすので、中低音再現性が更に良好である。バッフルチューブ80は、空気室95内の空気をドライバユニット60から放たれる音に共振させることで、中低音域の音響増幅器として機能し得る。
また、第8実施形態のイヤホン12は、空気室95内の空気の振動に伴い、柔軟なバッフルチューブ80が振動するため、空気室95内の空気の振動がキャップ70を介して外耳道101の内壁111に僅かながらも伝達される。このため、ドライバユニット60から発せられた音の振動を、外耳道101の皮膚を通して知覚することが可能となる。
また、第8実施形態のイヤホン12は、バッフルチューブ80の先端部80bとプロテクタ54との間に環状の狭い隙間が形成されていることで、電気音響変換素子61の振動板61aから発せられ後方(外耳道101の外側)に回り込む音が空気室95内に伝達し易くなる。そして、バッフルチューブ80のボディ部52側の端部80aが全周に亘ってボディ部52に気密に接していることで、空気室95内に伝達した音が空気室95の後方(外耳道101の外側)に伝達し難くなる。これにより、外耳道101外への音漏れがより効果的に抑制され、中低音再現性がより良好となる。
また、第8実施形態のイヤホン12は、イヤホンケーシング50とキャップ70との間に存在する柔軟なバッフルチューブ80がクッションとしての役割も果たすので、キャップ70とバッフルチューブ80との相乗作用により、従来のイヤホンでは体感し得ない極めて良好な装着感を実現し得る。
また、第8実施形態のイヤホン12は、第1共鳴室91と第2共鳴室92と第3共鳴室93とを備え、第1共鳴室91と第2共鳴室92とが細い通路(ポート62e)で結ばれているので、低音が増幅される。そして、第2共鳴室92と第3共鳴室93とが細い通路(内部空間94)で結ばれているので、低音が更に増幅される。
また、第8実施形態のイヤホン12は、バッフルチューブ80の端部80aの外面が露出しているので、空気室95の存在を外部から認識させうる。バッフルチューブ80の材質に、例えば半透明のシリコーンゴムを使用することにより、空気室95の存在を外部からより認識し易くできる。このように、第8実施形態によれば、空気室95を備えた斬新な構造のイヤホン12が実現される。また、バッフルチューブ80を外部から視認しうる構造を採用することで、高い音響性能と機能美とを兼ね備えた斬新なイヤホン12を実現し得る。
なお、本発明の実施形態は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。
例えば、第1乃至第4実施形態のイヤホン1は、いずれも芯部材4を備えているが、芯部材4は必須の構成要素ではない。
また、第1乃至第4実施形態のイヤホン1は、いずれも拾音器5を備えているが、拾音素子5は必須の構成要素ではない。
また、第4実施形態の構成に加えて、サブバッフル部材8を備えることが望ましい。また、第4実施形態では、嵌合部材9に対する芯部材4の位置が偏心しているが、必ずしも偏心させることを要しない。
また、第4実施形態では、キャップ3と嵌合部材9とがバッフル部材7を挟んで配置されているが、バッフル部材7を省略した場合、キャップ3と嵌合部材9とを直接接合又は一体形成してもよい。
また、第1乃至第4実施形態のイヤホン1においても、第5実施形態と同様にワイヤレス方式を採用可能である。
また、第5の実施形態では、皮膚接触部材19Aの材質(比重、柔軟性、音透過性)と音響ユニット収容部材19Bの材質(比重、柔軟性、音透過性)が相違しているが、両者の材質は同じであってもよい。
また、第5乃至第7実施形態においては、耳装着体19が皮膚接触部材19Aと音響ユニット収容部材19Bとで構成されているが、耳装着体19全体を当初から一体品として製造してもよい。この場合、耳装着体19に切り込み部を形成しておき、その切り込み部を通して空洞19c、19Ac内に音響ユニット11を装着可能とすることが好ましい。
また、第5乃至第7実施形態においては、耳装着体19が通気性を有する部材で構成されているが、耳装着体19を通気性を有さない部材で構成してもよい。耳装着体19が通気性を有さない部材である場合、耳装着体19と耳100の皮膚との間に部分的に隙間が形成される必要がある。
また、第5乃至第7実施形態において、耳装着体19を柔軟なシリコンスポンジで実現することもできる。音響ユニット11の全体が光透過性を有するシリコンスポンジで包まれた構造を採用することで、透明感があり且つお菓子のグミ(ゼリー体)のような弾力性を有する斬新なイヤホン10を実現することが可能である。また、耳装着体19に撥水性を有するシリコンスポンジを採用することにより、完全防水型のイヤホン10を実現できる。
また、第7実施形態において、第1ケーブル40A側に設けられる第1端子41Aを雌端子とし、第2ケーブル40B側に設けられる第2端子41Bを雄端子としてもよい。
また、第7実施形態においては、第1ケーブル40Aに取り付けられた第1端子41Aが第2ケーブル40Bに取り付けられた第2端子41Bと互いに接続されるようにしたが、図29に例示するように、第1端子41Aが受信装置49に接続されるようにしてもよい。この場合、第2端子41Bは受信装置49に設けられている。また、この場合、第2ケーブル40Bは省略される。
また、第8実施形態においては、バッフルチューブ80の先端部80bとプロテクタ54との間に、環状の狭い隙間が形成されているが、当該隙間は必須の構成要素ではない。当該隙間が存在しなくても或いは当該隙間が存在しない方が、中低音再現性を高める上で有利である可能性もある。また、バッフルチューブ80とイヤホンケーシング50のヘッド部51とにより密閉構造の空気室95を形成してもよい。ドライバユニット60から発せられた音に密閉構造の空気室95内の空気が共振する構造により、バッフルチューブ80がより高性能な音響増幅器として機能し得る可能性がある。
また、第8実施形態のイヤホン12は、第1共鳴室91を備えているが、第1共鳴室91は必須の構成要素ではない。
また、第8実施形態のイヤホン12は、第2共鳴室92を備えているが、第2共鳴室92は必須の構成要素ではない。
また、第8実施形態のイヤホン12は、第3共鳴室93及び内部空間94を備えているが、第3共鳴室93及び内部空間94は必須の構成要素ではない。
また、第8実施形態のイヤホン12は、第1エンクロージャとしてのドライバケーシング62を備えているが、ドライバケーシング62は必須の構成要素ではない。すなわち、イヤホンケーシング50のヘッド部51がドライバユニット60を構成してもよい。
また、第8実施形態のイヤホン12において、空気室95のボディ部52側の空間(図示右側の空間)に音響振動吸収層を設けてもよい。空気室95に音響振動吸収層を設けることで、バッフルチューブ80による外耳道101外への音漏れ防止性能を高めることができる。音響振動吸収層の素材の例として、株式会社タイカにより開発されたαGEL(登録商標)を挙げることができる。αGEL(登録商標)は、シリコーンを主成分とする軟らかいゲル状の素材である。
また、第8実施形態では、ドライバユニット60の放音部として振動板61aを例示したが、放音部は振動板61aに限らない。ドライバユニット60の放音部は、音声発生源となる振動体から発せられた音の出口(窓)であってもよい。すなわち、ドライバユニット60は、ダイナミック型に限らず、バランスド・アーマチュア型でもよい。また、ドライバユニット60は、低域用、中域用、高域用、等、音響特性の異なる複数の電気音響変換素子61を備えてもよい。
また、第8実施形態では、介在部材としてチューブ状の部材(バッフルチューブ70)を用いているが、これに代えて、イヤホンケーシング50を包囲するトーラス状の柔軟な中空部材(バッフルトーラス)を用いてもよい。バッフルトーラスは、イヤホンケーシング50のヘッド部51とボディ部52との間の括れた部分(ネック部53)に取り付けることで、イヤホンケーシング50に安定に保持される。
また、第8実施形態では、介在部材を「バッフルチューブ」と称したが、空気室95を有するものという意味で「エアチューブ」と称してもよい。同じ趣旨で、「バッフルトーラス」を「エアトーラス」と称してもよい。また、介在部材を、クッションとして働くものという意味で「エアクッション」或いは「クッションチューブ」と称してもよい。
また、上記実施形態では、キャップ3、70及び皮膚接触部材19Aとしてスポンジ材からなる部材を用いているが、柔軟性、弾力性及び通気性を有する部材であれば、スポンジ材からなる部材に限らない。
また、上記実施形態では、嵌合部材9及び音響ユニット収容部材19Bとしてスポンジ材からなる部材を用いているが、柔軟性及び弾力性を有する部材であれば、スポンジ材からなる部材に限らない。
また、上記実施形態では、音響装置の実施形態の例として、イヤホンの形態例を示したが、本発明に係る音響装置には、イヤホン以外の音響装置も含まれる。イヤホン以外の音響装置の例として、補聴器、インカム、等、マイクを備えた機器を挙げることができる。
[総括]
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
(1−1):耳(耳100)に装着して使用する音響装置(イヤホン1、イヤホン10、イヤホン12)であって、電気音響変換器(ドライバユニット1、12、60)と、皮膚接触部材(キャップ3、キャップ70、皮膚接触部材19A)と、を有し、前記電気音響変換器は、放音部(放音部2a、放音部12a、振動板61a)を有し、前記電気音響変換器は、前記放音部を外耳道(外耳道101)内に向けて配置され、前記皮膚接触部材は、前記電気音響変換器の放音部を覆う部材であり、前記皮膚接触部材は、前記電気音響変換器の前記放音部から発せられた音を透過させる部材であり、前記皮膚接触部材は、柔軟性、弾力性及び通気性を有する部材であり、前記皮膚接触部材は、前記外耳道に嵌まることにより、前記電気音響変換器を前記外耳道の内壁(内壁103)から離して支持する、音響装置。
(1−1)の音響装置は、外耳道に嵌まる皮膚接触部材が柔軟性及び弾力性を有する部材であるので、耳への装着の感触が良好で、長時間着けていても耳に痛みが生じにくい。
(1−1)の音響装置は、耳を気密に塞がないので、タッチノイズが発生しにくい。
(1ー2):耳に装着して使用する音響装置であって、前記音響装置は、電気音響変換器と、当該電気音響変換器の放音部を覆う皮膚接触部材と、を有し、前記電気音響変換器は、前記放音部を外耳道の内部に向けて配置され、前記皮膚接触部材は、外耳道に嵌まり、且つ、前記電気音響変換器から発せられた音を透過させる部材であり、前記皮膚接触部材が前記外耳道に嵌まることにより、前記電気音響変換器が前記外耳道の周壁から離して支持されるとともに、前記電気音響変換器の前記放音部が前記外耳道の内部の入口(入口102)付近に配置される、音響装置。
(1−2)の音響装置によれば、皮膚接触部材が外耳道に嵌まることにより、電気音響変換器が外耳道の周壁から離して支持されると共に、電気音響変換器の放音部が外耳道内の入口付近に配置されるので、電気音響変換器から発せられた音を、外耳周りの音を感じる部分の能力を最大限に活用して認知することができる。
(2):(1−1)又は(1−2)の音響装置において、嵌合部材(嵌合部材9)を更に有し、前記嵌合部材は、柔軟性及び弾力性を有する部材であり、前記嵌合部材が耳甲介腔(耳甲介腔106)に嵌まることにより、耳に安定に装着される、音響装置。
(2)の音響装置は、柔軟性及び弾力性を有する嵌合部材が耳甲介腔に嵌まることにより、耳に安定に装着されるので、耳への装着の感触が良好で、長時間着けていても耳に痛みを生じさせにくい。
(3):(1−1)乃至(2)のいずれか1の音響装置において、芯部材(芯部材4)を更に有し、前記芯部材の一端部に、前記電気音響変換器が収容されるとともに前記皮膚接触部材が取り付けられている、音響装置。
(3)の音響装置は、電気音響変換器を芯部材により保護することができる。また、芯部材は、音響装置を耳に付け外しする際に指で摘まむ部分としても機能し得る。
(4):(3)の音響装置において、前記芯部材の周囲に前記嵌合部材が設けられている音響装置。
(4)の音響装置は、嵌合部材の取付部を確保し、電気音響変換器及び皮膚接触部材と嵌合部材との相対的な位置関係を安定に保つことができる。
(5):耳に装着して使用する音響装置であって、前記音響装置は、電気音響変換器と、皮膚接触部材と、を有し、前記電気音響変換器は、放音部を有し、前記電気音響変換器は、前記放音部を外耳道内に向けて配置され、前記皮膚接触部材は、前記電気音響変換器の放音部を覆う部材であり、前記皮膚接触部材は、音を透過させる部材であり、前記皮膚接触部材は、柔軟性及び弾力性を有する部材であり、前記皮膚接触部材は、前記外耳道への空気の流通を許容しつつ耳甲介腔に嵌まることにより、前記電気音響変換器を前記外耳道に臨ませて支持する、音響装置。
(5)の音響装置は、耳甲介腔に嵌まる皮膚接触部材が柔軟性及び弾力性を有する部材であるで、耳への装着の感触が良好で、長時間着けていても耳に痛みを生じさせにくい。
(5)の音響装置は、耳を気密に塞がないので、タッチノイズが発生しにくい。
(6):(5)の音響装置において、前記電気音響変換器を少なくとも有する音響ユニットと、前記音響ユニットの全体を包み込む耳装着体と、を備え、前記耳装着体は、柔軟性及び弾力性を有する部材であり、前記皮膚接触部材が前記耳装着体の一部を成しており、前記音響装置の使用時に、前記耳装着体だけが耳と接触する、音響装置。
(6)の音響装置は、音響装置の使用時に耳と接触する耳装着体が柔軟性及び弾力性を有する部材であるので、耳への装着の感触が良好で、長時間着けていても耳に痛みが生じにくい。
(7):耳に装着して使用する音響装置であって、前記音響装置は、電気音響変換器(ドライバユニット60)と、皮膚接触部材(キャップ70)と、介在部材(バッフルチューブ80)と、を有し、前記電気音響変換器は、その放音部(振動板61a)及び側部(側部61c)が前記皮膚接触部材で覆われ、前記皮膚接触部材は、柔軟性、弾力性及び通気性を有し、且つ、音を透過させる部材であり、前記介在部材は、前記電気音響変換器に直接又は間接的に固定されて前記皮膚接触部材と前記電気音響変換器との間に存在するとともに、前記皮膚接触部材との間の摩擦力により前記電気音響変換器と前記皮膚接触部材との相対移動を難くし、前記皮膚接触部材が外耳道に嵌まることにより、前記電気音響変換器が当該外耳道の内壁から離して支持される、音響装置。
(7)の音響装置は、皮膚接触部材が柔軟性、弾力性及び通気性を有する部材であるので、耳への装着感が良好で、長時間着けていても耳に痛みを生じさせにくい。
(7)の音響装置は、皮膚接触部材が通気性を有するので、耳への装着時に外耳道を気密に密閉しない。このため所謂タッチノイズが発生しにくい。
(7)の音響装置は、介在部材と皮膚接触部材との間の摩擦力により電気音響変換器と皮膚接触部材との相対移動を難くしているので、電気音響変換器に対する皮膚接触部材の位置ずれや、皮膚接触部材の不用意な離脱が防止される。
(8):(7)の音響装置において、前記介在部材は、前記皮膚接触部材と前記電気音響変換器との間に空気室(空気室95)を形成する、音響装置。
(8)の音響装置は、前記皮膚接触部材と前記電気音響変換器との間に空気室が存在するので、中低音再現性が良い。
(9):(8)の音響装置において、前記介在部材は、前記電気音響変換器を包囲する前記空気室を形成し、前記空気室内の空気振動に伴い振動する、音響装置。
(9)の音響装置によれば、空気室内の空気の振動が皮膚接触部材を介して外耳道の内壁に伝達されるため、電気音響変換器から発せられた音の振動を、外耳道の皮膚を通して知覚することが可能となる。
(10):(1−1)乃至(9)の音響装置において、前記電気音響変換器を収容する第1エンクロージャ(ドライバケーシング62)と、前記第1エンクロージャを収容する第2エンクロージャ(イヤホンケーシング50)と、を更に有し、前記第1エンクロージャは、前記電気音響変換器との間に第1共鳴室(第1共鳴室91)を形成し、前記第2エンクロージャは、前記第1エンクロージャとの間に第2共鳴室(第2共鳴室92)を形成し、前記第1エンクロージャには、前記第1共鳴室と前記第2共鳴室とを互いに連通させるポート(ポート62e)が設けられている、音響装置。
(10)の音響装置は、第1共鳴室及び第2共鳴室により低音が増幅されるので、中低音再現性がより良い。
(11):(10)の音響装置において、前記第2エンクロージャの内部には、前記第2共鳴室と連通する第3共鳴室(第3共鳴室93)が形成されている、音響装置。
(12)の音響装置は、第2共鳴室および第3共鳴室により低音が更に増幅されるので、中低音再現性が更に良い。
(13):(12)の音響装置において、前記第2エンクロージャにおける前記第2共鳴室と前記第3共鳴室との連通部(内部空間94)は、くびれている、音響装置。
(13)の音響装置は、第2共鳴室と第3共鳴室との連通部における空気の粘性の変化により低音が更に増幅されるので、中低音再現性が更に良い。
(14):(1−1)乃至(13)のいずれか1の音響装置において、前記皮膚接触部材は、スポンジ材からなる部材である、音響装置。
(14)の音響装置は、音響装置の使用時に耳と接触する皮膚接触部材がスポンジ材からなるので、タッチノイズが発生しにくく、耳への装着の感触が良好で、長時間着けていても耳に痛みを生じさせにくい。
(15):(1−1)乃至(14)のいずれか1の音響装置において、前記皮膚接触部材の外形は、球形である、音響装置。
(15)の音響装置は、前記皮膚接触部材の外形が球形であることで、多くの人の外耳道にフィットし易い。また、前記電気音響変換器から発せられる音が偏りなく放射状に外耳道内に放音される。また、耳に対する装着角度が多少変化しても、前記介在部材と外耳道の内壁との間に、前記皮膚接触部材が介在し、前記電気音響変換器が当該外耳道の内壁から離して支持される。