JPWO2018186382A1 - 表面修飾ナノダイヤモンド、表面修飾ナノダイヤモンド分散液、及び樹脂分散体 - Google Patents

表面修飾ナノダイヤモンド、表面修飾ナノダイヤモンド分散液、及び樹脂分散体 Download PDF

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Abstract

他の化合物との反応性に優れるN−置換又は無置換アミノ基を有し、分散媒や樹脂中などでの分散性に優れる表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、ナノダイヤモンド粒子の表面に表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドであって、前記表面修飾基が、下記式(1)で表される基を含む[下記式(1)中の符号は、本明細書に記載のとおりである]。【化1】

Description

本発明は、表面修飾ナノダイヤモンド、前記表面修飾ナノダイヤモンドと分散媒を含む表面修飾ナノダイヤモンド分散液、及び前記表面修飾ナノダイヤモンドと樹脂を含む樹脂分散体に関する。本願は、2017年4月7日に日本に出願した特願2017−077134号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ナノダイヤモンドは、比表面積が非常に大きい超微粒子であり、高い機械的強度と電気絶縁性、及び優れた熱伝導性を有する。また、ナノダイヤモンドは、消臭効果、抗菌効果、耐薬品性も有する。そのため、ナノダイヤモンドは、研磨材、導電性付与材、絶縁材料、消臭剤、抗菌剤等に使用されている。
このような特徴を有するナノダイヤモンド粒子は、一般的に、爆轟法により合成される。爆轟法で得られるナノダイヤモンド粒子は、凝着体を形成している場合が多く、この凝着体を、ビーズミル等の粉砕機を用いた解砕処理に付することで粒子径D50(メディアン径)が10nm未満のいわゆる一桁ナノダイヤモンド粒子が得られる(下記特許文献1、2)。
一方、上記ナノダイヤモンドの特徴を活かしながら、放熱材料、光学材料(例えば、高機能フィルム材料)、素材強化材料、熱交換流動媒体、コーティング材(例えば、抗菌コーティング材、消臭コーティング材)、研磨剤、潤滑剤、医療材料等の種々のアプリケーションへ展開するために、ナノダイヤモンド粒子に目的の表面修飾基を導入することが行われている。
ナノダイヤモンド粒子に表面修飾基を付与する方法としては、ナノダイヤモンド粒子にシランカップリング剤を反応させてケイ素化処理(シリル化処理)し、表面修飾基にシラノール基を有するナノダイヤモンド粒子を得ることが知られている(下記特許文献2)。
特開2005−001983号公報 特開2012−17225号公報
上記特許文献2では、ナノダイヤモンド粒子とトリメチルクロロシランを反応させて、ケイ素化処理(シリル化処理)しているため、ナノダイヤモンド粒子の凝集体(平均粒子径数百nm以上)が得られており、粒子径が50nm以下のナノダイヤモンド粒子を得ることについての言及はなく、表面修飾基としてアミノ基を導入することについての言及はない。
従って、本発明の目的は、他の化合物との反応性に優れるN−置換又は無置換アミノ基を有し、分散媒や樹脂中などでの分散性に優れる表面修飾ナノダイヤモンドを提供することにある。
本発明の他の目的は、前記表面修飾ナノダイヤモンドが有機溶媒などの分散媒に高分散してなるナノダイヤモンド分散液を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記表面修飾ナノダイヤモンドが樹脂中に高分散してなる樹脂分散体を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ナノダイヤモンド粒子とN−置換又は無置換アミノ基を有するシランカップリング剤の反応を、粉砕及び解離処理をしつつ行うことにより、分散媒や樹脂中などで高い分散性を有し、表面修飾基のナノダイヤモンド粒子と結合していない末端に他の化合物との反応性に優れるN−置換又は無置換アミノ基を有する表面修飾ナノダイヤモンドが得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、ナノダイヤモンド粒子の表面に表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドであって、前記表面修飾基が、下記式(1)で表される基を含む、表面修飾ナノダイヤモンドを提供する。
Figure 2018186382
[式(1)中のRaは炭素数1〜12のアルキレン基、Rb及びRcはそれぞれ水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Rdは同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。式(1)中の波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アシル基、又は他の式(1)で表される基におけるシリコン原子と結合する。nは0、1、又は2、mは1、2、又は3を示し、m+n≦3である。式(1)中の左端の酸素原子から出る結合手がナノダイヤモンド粒子と結合する。]
本発明は、前記ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子であることが好ましい。
また、本発明は、前記表面修飾ナノダイヤモンドと分散媒を含む、表面修飾ナノダイヤモンド分散液を提供する。
本発明は、前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径が50nm以下であることが好ましい。
本発明は、前記表面修飾ナノダイヤモンド分散液はジルコニウムを含み、前記ジルコニウム(Zr元素換算)の割合が、前記表面修飾ナノダイヤモンド分散液に含まれる表面修飾ナノダイヤモンドと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上であることが好ましい。
また、本発明は、前記表面修飾ナノダイヤモンドと樹脂を含む、樹脂分散体を提供する。
本発明は、前記樹脂分散体はジルコニウムを含み、前記ジルコニウム(Zr元素換算)の割合が、前記樹脂分散体に含まれる表面修飾ナノダイヤモンドと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上であることが好ましい。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、表面修飾基に反応の足場となるN−置換又は無置換アミノ基を有するため、酸、エステル、エポキシ、ケトン、ハロゲン化合物等の他の化合物との反応性に優れる。また、本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、有機溶媒などの分散媒や樹脂中などでの分散性に優れる。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド分散液は、特にナノダイヤモンド粒子の分散性に優れ、表面修飾ナノダイヤモンドの供給材料として好適に使用することができる。
本発明の樹脂分散体は、樹脂と表面修飾ナノダイヤモンドの分散性や親和性が良く、樹脂が透明である場合はその透明性を保持しつつ、ナノダイヤモンドが有する高い機械的強度や、高い屈折率、高い熱伝導度を付与することができる。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの一例を示す拡大模式図である。 本発明の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法の工程図の一例である。
[表面修飾ナノダイヤモンド]
本発明の表面修飾ナノダイヤモンド(以後、ナノダイヤモンドを「ND」と称する場合がある)は、ナノダイヤモンド粒子の表面に表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドであって、前記表面修飾基が、下記式(1)で表される基を含むことを特徴とする。尚、本発明の表面修飾NDは、表面修飾基として、下記式(1)で表される基以外の基を有していてもよい。
Figure 2018186382
[式(1)中のRaは炭素数1〜12のアルキレン基、Rb及びRcはそれぞれ水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Rdは同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。式(1)中の波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アシル基、又は他の式(1)で表される基におけるシリコン原子と結合する。nは0、1、又は2、mは1、2、又は3を示し、m+n≦3である。式(1)中のNDはナノダイヤモンド粒子を示す。]
図1は、本発明の表面修飾NDの一例を示す拡大模式図であり、表面修飾ND[1]は、ND粒子[2]の表面に、表面修飾基[3]を備える。図1は、表面修飾基[3]における式(1)で表される基におけるnが0であり、mが1である場合を示す。尚、図1中のRa、Rb及びRcは、式(1)中のRa、Rb及びRcと同じである。図1における波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合も式(1)と同様である。
式(1)中のRb、Rc及びRdにおける炭素数1〜3のアルキル基は、好ましくはエチル基、メチル基であり、より好ましくはメチル基である。式(1)中のRb及びRcにおけるアリール基は、好ましくはフェニル基、トリル基であり、より好ましくはフェニル基である。式(1)中のRb及びRcにおけるアラルキル基は、好ましくはベンジル基である。
式(1)中の波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合における炭素数1〜3のアルキル基は、好ましくはエチル基、メチル基であり、より好ましくはメチル基である。式(1)中の波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合におけるアシル基は、好ましくはアセチル基である。尚、式(1)中のmが2である場合は、式(1)で表される基が2箇所でナノダイヤモンド粒子と結合していることを意味する。式(1)中のmが3である場合は、式(1)で表される基が3箇所でナノダイヤモンド粒子と結合していることを意味し、このときのnは0である。
本発明の表面修飾NDは、ND粒子と前記N−置換又は無置換アミノ基を含む炭化水素基を有するシランカップリング剤とを反応(縮合反応)させることにより得られる。前記シランカップリング剤は、少なくとも1つ(好ましくは3つ)の加水分解性基を有する。加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。本発明の表面修飾NDは、ND粒子と前記シランカップリング剤との反応物(縮合反応物)である。式(1)で表される基は、上記の反応で用いたシランカップリング剤に由来する表面修飾基である。
上記のND粒子とシランカップリング剤との反応以外に、ND粒子との反応前又は反応後において、シランカップリング剤の有する加水分解性基の加水分解反応や、複数のシランカップリング剤の加水分解性基どうしの加水分解・縮合反応を生じ得る。式(1)中の波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合における水素原子は、シランカップリング剤におけるシリコン原子に結合した加水分解性基が加水分解されて水酸基となった状態を示す。また、式(1)中の波線で示す酸素原子の結合における他の式(1)で表される基におけるシリコン原子は、上記のようにシランカップリング剤におけるシリコン原子に結合した加水分解性基が加水分解されて水酸基となった、複数の式(1)で表される基の水酸基の間で縮合反応が起き、複数の式(1)で表される基において−Si−O−Si−結合が生じた状態を表す。
前記シランカップリング剤としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、5−アミノペンチルトリメトキシシラン、6−アミノヘキシルトリメトキシシラン、8−アミノオクチルトリメトキシシラン、および10−アミノデシルトリメトキシシランが挙げられる。ND粒子とシランカップリング剤の反応の詳細については、後述の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法の修飾工程S4で述べる。
表面修飾NDを構成するND粒子は、少なくともナノダイヤモンドの一次粒子を含み、その他、前記一次粒子が数個〜数十個程度凝集した二次粒子が含まれていても良い。
ND粒子としては、例えば爆轟法ND(すなわち、爆轟法によって生成したND)や、高温高圧法ND(すなわち、高温高圧法によって生成したND)を使用することができる。本発明の表面修飾NDにおいては、なかでも、より分散性に優れる点で、すなわち一次粒子の粒子径が一桁ナノメートルである点で、爆轟法NDを使用することが好ましい。
前記爆轟法には、空冷式爆轟法と水冷式爆轟法が含まれる。本発明においては、なかでも、空冷式爆轟法が水冷式爆轟法よりも一次粒子が小さいNDを得ることができるうえで好ましい。また、爆轟は大気雰囲気下で行っても良く、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、二酸化炭素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行っても良い。従って、上記修飾工程S4に付すNDとしては、爆轟法NDが好ましく、より好ましくは空冷式爆轟法ND(すなわち、空冷式爆轟法によって生成したND)である。また、ND粒子は、平均粒子径が小さく且つ一次粒子表面の官能基量の多いND粒子を効率よく生じさせる点においてより好ましくは、空冷式であって不活性ガス雰囲気下での爆轟法によって生成したND粒子である。尚、ND粒子の表面官能基としては、例えば、アミノ基、水酸基、およびカルボキシル基が挙げられる。爆轟法NDの生成及び精製等の詳細については、後述の表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法で述べる。
前記表面修飾NDは、表面修飾基を有するため、表面修飾基を有しないND粒子よりも、表面修飾基の立体障害によりND粒子同士の凝集が抑制され、優れた分散性を発揮することができる。また、表面修飾基に含まれる炭化水素基は疎水性であるため樹脂等に対して親和性を示すため、良好な濡れ性を示し、樹脂等に対してなじみ易さを発揮することができる。
[表面修飾ナノダイヤモンドの製造方法]
本発明の表面修飾NDは、例えば爆轟法(より好ましくは空冷式爆轟法、特に好ましくは、空冷式であって不活性ガス雰囲気下での爆轟法)によってND粒子を生成し、得られたND粒子に前記シランカップリング剤を反応させて表面修飾することにより製造することができる。
以下に、本発明の表面修飾NDの製造方法の一例を、図2(生成工程S1、精製工程S2、乾燥工程S3、修飾工程S4)に従って説明するが、本発明の表面修飾NDは、上記以外の工程(例えば、酸素酸化工程や水素化工程)を有していてもよく、以下の製造方法に限定されない。
(生成工程S1)
生成工程S1では、空冷式であって不活性ガス雰囲気下での爆轟法によりNDを生成する。まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉する。容器は例えば鉄製で、容器の容積は例えば0.5〜40m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物を使用することができる。TNTとRDXの重量比(TNT/RDX)は、例えば40/60〜60/40の範囲である。
生成工程S1では、次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させる。爆轟とは、化学反応に伴う爆発のうち反応の生じる火炎面が音速を超えた高速で移動するものをいう。爆轟の際、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素を原料として、爆発で生じた衝撃波の圧力とエネルギーの作用によってNDが生成する。生成したNDは、隣接する一次粒子ないし結晶子の間がファンデルワールス力の作用に加えて結晶面間クーロン相互作用が寄与して非常に強固に集成し、凝着体を成す。
生成工程S1では、次に、室温において24時間程度放置することにより放冷し、容器およびその内部を降温させる。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粗生成物(上述のようにして生成したNDの凝着体および煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ND粗生成物を回収する。以上のような方法によって、ND粒子の粗生成物を得ることができる。空冷式であって不活性ガス雰囲気下での爆轟法は、平均粒子径が小さく且つ一次粒子表面の官能基量の多いNDを生じさせるうえで好適である。これは、ダイヤモンド結晶子が形成される過程において、原料炭素からのダイヤモンド核の成長が抑制されて、原料炭素の一部が(あるものは酸素等を伴って)表面官能基を形成するためであると考えられる。また、以上のような生成工程S1を必要回数行うことによって、所望量のND粗生成物を取得することが可能である。
(精製工程S2)
精製工程S2は、原料であるND粗生成物に例えば水溶媒中で強酸を作用させる酸処理を含む。爆轟法で得られるND粗生成物には金属酸化物が含まれやすい。この金属酸化物は、爆轟法に使用される容器等に由来するFe、Co、Ni等の酸化物であり、例えば水溶媒中で所定の強酸を作用させることにより、ND粗生成物から金属酸化物を溶解・除去することができる(酸処理)。この酸処理に用いられる強酸としては鉱酸が好ましく、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、およびこれらの混合物(=混酸)が挙げられる。酸処理では、一種類の強酸を用いてもよいし、二種類以上の強酸を用いてもよい。酸処理で使用される強酸の濃度は、例えば1〜50重量%である。酸処理温度は、例えば70〜150℃である。酸処理時間は、例えば0.1〜24時間である。また、酸処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。このような酸処理の後、例えばデカンテーションにより、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行う。沈殿液のpHが例えば2〜3に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。爆轟法で得られるND粗生成物における金属酸化物の含有量が少ない場合には、以上のような酸処理は省略してもよい。
精製工程S2は、酸化剤を用いてND粗生成物(精製終了前のND凝着体)からグラファイトを除去するための酸化処理を含む。爆轟法で得られるND粗生成物にはグラファイト(黒鉛)が含まれるが、このグラファイトは、使用爆薬が部分的に不完全燃焼を起こして遊離した炭素のうちND結晶を形成しなかった炭素に由来する。例えば上記の酸処理を経た後に、水溶媒中で所定の酸化剤を作用させることにより、ND粗生成物からグラファイトを除去することができる(酸化処理)。この酸化処理に用いられる酸化剤としては、例えばクロム酸、無水クロム酸、二クロム酸、過マンガン酸、過塩素酸、及びこれらの塩が挙げられる。酸化処理では、一種類の酸化剤を用いてもよいし、二種類以上の酸化剤を用いてもよい。酸化処理で使用される酸化剤の濃度は、例えば3〜50重量%である。酸化処理における酸化剤の使用量は、酸化処理に付されるND粗生成物100重量部に対して、例えば300〜500重量部である。酸化処理温度は、例えば100〜200℃である。酸化処理時間は、例えば1〜24時間である。酸化処理は、減圧下、常圧下、または加圧下で行うことが可能である。また、酸化処理は、グラファイトの除去効率向上の観点から、鉱酸の共存下で行うのが好ましい。鉱酸としては、例えば塩酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、および王水が挙げられる。酸化処理に鉱酸を用いる場合、鉱酸の濃度は、例えば5〜80重量%である。このような酸化処理の後、例えばデカンテーションまたは遠心沈降法により、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行う。水洗当初の上清液は着色しているが、この上清液が目視で透明になるまで、当該固形分の水洗を反復して行うのが好ましい。水洗を繰り返すことにより、不純物である電解質(NaCl等)が低減ないし除去される。電解質濃度が低いことは、本方法によって得られるND粒子について高い分散性および高い分散安定性を実現するうえで好適である。
このような酸化処理の後、NDをアルカリ溶液で処理してもよい。当該アルカリ処理により、ND表面の酸性官能基(例えばカルボキシル基)を塩(例えばカルボン酸塩)に変換することが可能である。使用されるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液が挙げられる。当該アルカリ処理において、アルカリ溶液濃度は、例えば1〜50重量%であり、処理温度は、例えば70〜150℃であり、処理時間は、例えば0.1〜24時間である。また、このようなアルカリ処理の後、NDを酸溶液で処理してもよい。当該酸処理を経ることにより、ND表面の酸性官能基の塩を再び遊離の酸性官能基に戻すことが可能である。使用される酸溶液としては、塩酸等が挙げられる。当該酸処理は、室温で行ってもよく、加熱下で行ってもよい。酸化処理後のアルカリ処理や、その後の酸処理を経たNDについては、例えばデカンテーションまたは遠心沈降法により、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行う。
本方法では、次に、酸素酸化工程を設けることも可能である。酸素酸化工程は、精製工程を経て得られたNDの表面を酸化して酸素含有基を形成する工程である。酸素酸化は、酸素雰囲気下、又は窒素で希釈された酸素雰囲気下で加熱処理(例えば、300〜400℃の温度で1〜5時間程度加熱する処理)を行うことが好ましい。
本方法では、次に、水素化工程を設けることも可能である。水素化工程は、酸素酸化工程を経て得られた酸素含有基を有するNDを水素雰囲気下、又は窒素で希釈された水素雰囲気下で加熱処理(例えば、500〜700℃の温度で1〜10時間程度加熱する処理)を施すことにより、表面官能基として水酸基を有するNDを生成する工程である。
(乾燥工程S3)
本方法では、次に、乾燥工程S3が行われる。本工程では、例えば、精製工程S2を経て得られる溶液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じる残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって乾燥させる。加熱乾燥温度は、例えば40〜150℃である。このような乾燥工程S3を経ることにより、粉体としてND凝着体(ND粒子の凝集体)が得られる。
(修飾工程S4)
本方法では、次に、修飾工程S4が行われる。修飾工程S4は、前記シランカップリング剤を、乾燥工程S3を経たND凝着体(ND粒子の凝集体)に作用させることによってND粒子を表面修飾するための工程である。修飾工程S4では、解砕メディアを使用して解砕及び解離しつつ、ND粒子とシランカップリング剤の反応(シリル化反応)を行う。
修飾工程S4では、まず、反応容器内に乾燥工程S3を経たND凝着体の粉体、前記シランカップリング剤、及び溶媒を加えて混合溶液を作製し、当該混合溶液を撹拌する。次に、反応容器内の混合溶液に、解砕メディアとしてジルコニアビーズ等を添加し、超音波発生装置などを使用して混合溶液を撹拌して溶液を均一化しつつ、ND粒子とシランカップリング剤の反応(シリル化反応)を進行させる。この反応は、発生する熱を抑えるため氷水などを用いて冷却しながら行うことが好ましい。ジルコニアビーズ等を添加して超音波を発生させながら反応させることにより、ND凝着体を効率的に解砕及び解離しつつ、シランカップリング剤を作用させることができる。詳細には、超音波照射を受ける溶液内に音響効果に基づきキャビテーションが発生し、そのキャビテーション(微小気泡)の崩壊時に生じるジェット噴流によって溶液内のジルコニアビーズが極めて大きな運動エネルギーを得ることができ、当該ジルコニアビーズが溶液内のND凝着体に衝撃エネルギーを与えることにより、ND凝着体が解砕及び解離し、ND凝着体から解離したND粒子にシランカップリング剤が作用して結合する。
この結合は、シランカップリング剤側のアルコキシシリル基の少なくとも一部が加水分解することによって生じたシラノール基とND粒子側の表面水酸基との間での脱水縮合反応を経て生ずる結合(共有結合)である。この共有結合は、シランカップリング剤側の1つのシラノール基とND粒子側の1つの表面水酸基との間で生じてもよく、シランカップリング剤側の2つのシラノール基とND粒子側の2つの表面水酸基との間で生じてもよい。つまり、シランカップリング剤側とND粒子側の共有結合は、1つでもよいし、2つでもよい。前記シランカップリング剤は、加水分解性基としてアルコキシシリル基を有するため、当該工程の反応系に含まれるわずかな水分によってもアルコキシシリル基からシラノール基が生じ得る。本発明の表面修飾NDは、表面修飾基として、少なくとも一部に前記式(1)で表される、1つの共有結合でND粒子と結合した基を含めばよい。
修飾工程S4で用いるジルコニアビーズの直径は、例えば15〜500μm、好ましくは15〜300μmである。修飾工程S4で用いる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシプロパノール、およびメチルイソブチルケトンが挙げられる。溶液中のND凝着体とシランカップリング剤との比率(重量比)は、例えば2:1〜1:10である。修飾工程S4の混合溶液におけるND凝着体の含有割合は、例えば0.5〜5重量%であり、シランカップリング剤の濃度は、例えば5〜40重量%である。修飾工程S4での反応時間は、例えば4〜20時間である。必要に応じて、本工程で得られた表面修飾NDを上記乾燥工程S3と同様にして乾燥させることにより、粉体として表面修飾NDを得ることができる。尚、修飾工程S4を経た溶液中に未反応ND凝着体が存在する場合には、当該溶液を静置した後にその上清液を採取することにより、未反応ND凝着体の含有量の低減された表面修飾NDを得ることができる。
以上のような修飾工程S4により、ND粒子とこれに結合した表面修飾基を含む表面修飾NDを製造することができる。本方法で製造した表面修飾NDを有機溶媒等の分散媒に分散させることにより、表面修飾ND分散液が得られる。尚、表面修飾ND分散液については、修飾工程S4で用いた溶媒を他の溶媒に変えるための溶媒置換操作を行ってもよい。
[表面修飾ナノダイヤモンド分散液]
本発明の表面修飾ND分散液は、前記表面修飾NDと分散媒とを含み、表面修飾NDが、有機溶媒等の分散媒に分散している状態となる。前記表面修飾ND分散液は、分散媒中にて表面修飾NDが互いに離隔してコロイド粒子として分散していることが好ましい。前記表面修飾ND分散液は、特に分散性に優れた前記表面修飾NDを含有するため、表面修飾NDの供給材料として好適に使用することができる。
前記有機溶媒は、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、1−メトキシプロパノール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ヘキサン、ヘプタン、パラフィン、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、および鉱物油が挙げられる。これらの有機溶媒は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
表面修飾ND分散液中の表面修飾NDの含有量(固形分濃度)は、例えば0.001〜10重量%である。従って、表面修飾ND分散液中の分散媒の含有量は、例えば90〜99.999重量%であり、前記分散媒における前記有機溶媒の含有量は、例えば50重量%以上(50〜100重量%)、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。
本発明の表面修飾ND分散液における表面修飾NDの平均粒子径(メディアン径)は、例えば50nm以下(3〜50nm)であり、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは20nm以下である。樹脂などに分散させたときに高い透明性が得られる点で表面修飾NDの平均粒子径は小さいことが好ましい。尚、表面修飾ND分散液における表面修飾NDの平均粒子径は、動的光散乱法によって測定することができる。
本発明の表面修飾ND分散液は、表面修飾NDの製造工程の修飾工程S4で用いたジルコニアビーズに由来するジルコニウムを含んでいてもよい。分散液中における前記ジルコニウム(Zr元素換算)の含有量(割合)は、前記表面修飾NDと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上(例えば0.01〜20重量%)、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは2重量%以上、最も好ましくは3重量%以上である。ジルコニウムの割合が上記範囲であるため、表面修飾NDを分散媒に分散させたときの分散安定化が図りやすくなる。これは、ジルコニウムがND粒子同士の凝集を抑制するためと考えられる。尚、前記ジルコニウムは、酸化ジルコニウム等の化合物であってもよい。
また、本発明の表面修飾ND分散液は、上述の表面修飾NDと分散媒以外にも添加剤等の他の成分を含有していても良い。他の成分の含有量は、表面修飾ND分散液全量の例えば30重量%以下(0〜30重量%)、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。従って、上述の表面修飾NDと分散媒の合計含有量は、表面修飾ND分散液全量の例えば70重量%以上(70〜100重量%)、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上である。
[樹脂分散体]
本発明の樹脂分散体は、表面修飾NDと樹脂を含む。前記樹脂分散体は、表面修飾ND若しくは表面修飾ND由来のものが、樹脂に分散している状態のものであり、例えば樹脂と上述の表面修飾NDとを、前記樹脂のガラス転移温度又は融点以上の温度で加熱して混合することにより調製することができる。前記樹脂は、表面修飾NDにおける表面修飾基のN−置換又は無置換アミノ基と反応して結合していてもよい。尚、前記の表面修飾ND由来のものは、例えば、N−置換又は無置換アミノ基を有する表面修飾NDと他の化合物との反応物を意味する。
前記樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂などが挙げられるが、なかでも熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、およびメラミン樹脂が挙げられるが、なかでもエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびポリイミド(PI)、が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂のモノマー(単量体)を用いてもよい。
樹脂と表面修飾NDとを溶融混合する温度は、樹脂のガラス転移温度又は融点以上であればよいが、例えば150〜400℃、好ましくは180〜300℃である。
本発明の樹脂分散体における表面修飾NDの含有量は、用途に応じて適宜調整することができ、樹脂分散体に対して、例えば0.0001〜10重量%程度、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.005〜3重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%である。
本発明の樹脂分散体は、表面修飾NDの製造工程の修飾工程S4で用いたジルコニアビーズに由来するジルコニウムを含んでいてもよい。樹脂分散体中における前記ジルコニウム(Zr元素換算)の含有量(割合)は、前記表面修飾NDと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上(例えば0.01〜20重量%)、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、さらに好ましくは1重量%以上、特に好ましくは2重量%以上、最も好ましくは3重量%以上である。ジルコニウムの割合が上記範囲であるため、表面修飾NDを樹脂に分散させたときの分散安定化が図りやすくなる。これは、ジルコニウムがND粒子同士の凝集を抑制するためと考えられる。
本発明の樹脂分散体は、樹脂と表面修飾ND以外にも、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて種々の添加剤を含有することができる。前記添加剤としては、例えば難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、充填剤、分散剤、離型剤、発泡剤、着色剤、各種無機物(シリカ、金属微粒子など)、およびフィラー(ナノ炭素材料など)を挙げることができる。添加剤の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、樹脂分散体に対して、例えば30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
本発明の樹脂分散体は、ナノダイヤモンドが有する高い機械的強度や、高い屈折率、高い熱伝導度、耐熱性付与が求められる用途、例えば、機能性ハイブリッド材料、熱的機能材料(耐熱・蓄熱・熱電導・断熱材など)、フォトニクス材料(EL、LED、液晶、光ディスクなど)、バイオ・生体適合性材料、触媒、コーティング材料、塗料、インキ、めっき材料、研磨材、フィルム(例えば、タッチパネル、各種ディスプレイ等のハードコートフィルム、遮熱フィルム)、シート、スクリーン(例えば、透過型透明スクリーン)、フィラー(例えば、放熱用・機械特性向上用フィラー)、熱安定剤、耐熱性プラスチック基板材料(フレキシブルディスプレイ向け)等に好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、実施例及び比較例における各値は以下の方法で測定した。
〈メディアン径〉
表面修飾ND水分散液に含まれるND粒子に関する上記のメディアン径(粒径D50)は、スペクトリス社製の装置(商品名「ゼータサイザー ナノZS」)を使用して、動的光散乱法(非接触後方散乱法)によって測定した値である。測定に供された表面修飾ND水分散液は、ND濃度が0.2〜2.0重量%となるように超純水で希釈した後に、超音波洗浄機による超音波照射を経たものである。
〈ICP発光分光分析法〉
表面修飾ND分散液から加熱によって溶媒を蒸発させた後に残留する乾燥物(粉体)100mgについて、磁性るつぼに入れた状態で電気炉内にて乾式分解を行った。この乾式分解は、450℃で1時間の条件、これに続く550℃で1時間の条件、及びこれに続く650℃で1時間の条件にて、3段階で行った。このような乾式分解の後、磁性るつぼ内の残留物について、磁性るつぼに濃硫酸0.5mlを加えて蒸発乾固させた。そして、得られた乾固物を最終的に20mlの超純水に溶解させた。このようにして分析サンプルを調製した。この分析サンプルを、ICP発光分光分析装置(商品名「CIROS120」,リガク社製)により分析した。本分析の検出下限値が50重量ppmとなるように前記分析サンプルを調製した。また、本分析では、検量線用標準溶液として、SPEX社製の混合標準溶液XSTC−22、および、関東化学社製の原子吸光用標準溶液Zr1000を、分析サンプルの硫酸濃度と同濃度の硫酸水溶液にて適宜希釈調製して用いた。そして、本分析では、空のるつぼで同様に操作および分析して得られた測定値を、測定対象であるND分散液試料についての測定値から差し引き、試料中のジルコニア濃度(Zr元素換算)を求めた。
実施例1
以下のような生成工程、精製工程、乾燥工程、および修飾工程を経て、表面修飾ND分散液ないし表面修飾NDを製造した。
(生成工程)
生成工程では、まず、成形された爆薬に電気雷管が装着されたものを爆轟用の耐圧性容器の内部に設置し、容器内において大気組成の常圧の気体と使用爆薬とが共存する状態で、容器を密閉した。容器は鉄製で、容器の容積は15m3である。爆薬としては、トリニトロトルエン(TNT)とシクロトリメチレントリニトロアミンすなわちヘキソーゲン(RDX)との混合物0.50kgを使用した。当該爆薬におけるTNTとRDXの重量比(TNT/RDX)は、50/50である。次に、電気雷管を起爆させ、容器内で爆薬を爆轟させた。次に、室温での24時間の放置により、容器およびその内部を降温させた。この放冷の後、容器の内壁に付着しているND粗生成物(上記爆轟法で生成したND粒子の凝着体と煤を含む)をヘラで掻き取る作業を行い、ND粗生成物を回収した。ND粗生成物の回収量は0.025kgであった。
上述のような生成工程を複数回行うことによって取得されたND粗生成物に対し、次に、精製工程の酸処理を行った。具体的には、当該ND粗生成物200gに6Lの10重量%塩酸を加えて得られたスラリーに対し、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この酸処理における加熱温度は85〜100℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体と煤を含む)の水洗を行った。沈殿液のpHが低pH側から2に至るまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。
(精製工程)
次に、精製工程の酸化処理を行った。具体的には、まず、デカンテーション後の沈殿液に、5Lの60重量%硫酸水溶液と2Lの60重量%クロム酸水溶液とを加えてスラリーとした後、このスラリーに対し、常圧条件での還流下で5時間の加熱処理を行った。この酸化処理における加熱温度は120〜140℃である。次に、冷却後、デカンテーションにより、固形分(ND凝着体を含む)の水洗を行った。水洗当初の上清液は着色しているところ、上清液が目視で透明になるまで、デカンテーションによる当該固形分の水洗を反復して行った。次に、当該反復過程における最後のデカンテーションによって得られた沈殿液に対し、10重量%水酸化ナトリウム水溶液を1L加えた後、常圧条件での還流下で1時間の加熱処理を行った。この処理における加熱温度は、70〜150℃である。次に、冷却後、デカンテーションによって沈殿液を得て、当該沈殿液について20重量%塩酸を加えることによってpHを2.5に調整した。この後、当該沈殿液中の固形分について、遠心沈降法により水洗を行った。
(乾燥工程)
次に、乾燥工程を行った。具体的には、精製工程で得られたND水分散液からエバポレーターを使用して液分を蒸発させた後、これによって生じた残留固形分を乾燥用オーブン内での加熱乾燥によって1時間乾燥させた。加熱乾燥温度は150℃とした。
(修飾工程)
上記乾燥工程で得られたND凝着体0.15gを反応容器に量り取り、エタノール15cc、シランカップリング剤として3-アミノプロピルトリメトキシシラン1g(東京化成工業株式会社製)を添加し10分間攪拌した。攪拌後、ジルコニアボール(東ソー株式会社製、登録商標「YTZ」、直径30μm)10ccを添加した。添加後、氷水中で冷やしながら超音波分散機(株式会社エスエムテー社製、型式「UH−600S」)を用い、超音波分散機の振動子の先端を反応容器内の溶液に浸けた状態で12時間超音波処理して、ND粒子とシランカップリング剤を反応させた。最初は灰色であったが、徐々に小粒子径化し分散状態もよくなり最後は均一で黒い液体となった。これは、ND凝着体から順次にND粒子が解かれ(解砕)、解離状態にあるND粒子にシランカップリング剤が作用して結合し、表面修飾されたND粒子がエタノール溶媒中で分散安定化しているためであると考えられる。このようにして表面修飾ND分散液が得られた。得られた表面修飾ND分散液の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、18nmであった。
さらに得られた表面修飾ND分散液を一昼夜静置し上澄み液を採取後、トルエン(16ml)及びヘキサン(4ml)混合溶媒中に上記上澄み液15mlを滴下した。滴下した上澄み液は黒色から灰色に変化し、その液を遠心分離機によって20000G、10分間処理して沈殿した表面修飾NDを回収した。回収後、60℃温風乾燥機で一昼夜乾燥した。乾燥後の表面修飾ND粒子を上記のICP発光分光分析法によってZrを定量したところZrが7.3%存在することが分かった。
上記で回収した遠心分離後の沈殿した表面修飾ND粒子を乾燥させずに湿潤状態のまま、固形分が2重量%となるようにエタノールで再分散させた。再分散後の表面修飾ND分散液の外観は、黒色であり、表面修飾ND粒子がエタノール溶媒中で分散安定化していた。また、この表面修飾ND分散液の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、18nmであった。
実施例2
実施例1の修飾工程で用いた3-アミノプロピルトリメトキシシランの代わりにシランカップリング剤として、[3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル]トリメトキシシランを用い、超音波処理時間を10時間としたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
10時間超音波処理後の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、15nmであった。また、上記のICP発光分光分析法によってZrを定量したところ5.2%存在することが分かった。
エタノールで再分散後の表面修飾ND分散液の外観は、黒色であり、表面修飾NDがエタノール溶媒中で分散安定化していた。また、この表面修飾ND分散液の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、16nmであった。
実施例3
実施例1の修飾工程で用いた3-アミノプロピルトリメトキシシランの代わりにシランカップリング剤として、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシランを用い、修飾工程で用いた溶媒をエタノールからトルエンとした以外は実施例1と同様の操作を行った。
12時間超音波処理後の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、20nmであった。また、上記のICP発光分光分析法によってZrを定量したところ6.8%存在することが分かった。
トルエンで再分散後の表面修飾ND分散液の外観は、黒色であり、表面修飾NDがトルエン溶媒中で分散安定化していた。また、この表面修飾ND分散液の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、20nmであった。
比較例1
修飾工程でジルコニアビーズを添加しなかったこと、及び超音波処理時間を8時間としたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
8時間超音波処理後のND溶液の外観は、仕込み時と変わらず灰白色のままであり、ND粒子が凝集し、沈降していた。沈降したND粒子を上記のICP発光分光分析法によって定量したところZrの存在比率は0.01%未満であった。このND粒子を超音波処理してもナノメートルオーダーでの分散はしなかった。
比較例2
修飾工程でジルコニアビーズを添加しなかったこと、及び超音波処理時間を48時間としたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
48時間超音波処理後のND溶液の外観は、仕込み時と変わらず灰白色のままであり、ND粒子が凝集し、沈降していた。沈降したND粒子を2重量%となるようエタノールに添加し、超音波処理を行ったが、ND溶液の外観は、灰白色のままで静置するとND粒子が沈殿した(分散しなかった)。この表面修飾ND分散液の上記方法で測定した表面修飾ND粒子のメディアン径(粒径D50)は、580nmであった。
1 表面修飾ナノダイヤモンド
2 ナノダイヤモンド粒子
3 表面修飾基
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記する。
[1]ナノダイヤモンド粒子の表面に表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドであって、前記表面修飾基が、式(1)で表される基を含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
[2]ナノダイヤモンド粒子と、N−置換又は無置換アミノ基を含む炭化水素基を有するシランカップリング剤とを縮合反応させることにより得られる、表面修飾ナノダイヤモンド。
[3]前記ナノダイヤモンド粒子は、爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、[1]又は[2]に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
[4][1]〜[3]のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンドと分散媒を含む、表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
[5]前記分散媒は、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、1−メトキシプロパノール、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、シクロヘプタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ヘキサン、ヘプタン、パラフィン、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、鉱物油)である、[4]に記載の表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
[6]表面修飾ナノダイヤモンドの含有量(固形分濃度)は、0.001〜10重量%である、[4]又は[5]に記載の表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
[7]前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径(D50)は、50nm以下である、[4]〜[6]のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
[8]前記表面修飾ナノダイヤモンド分散液は、ジルコニウムを含み、前記ジルコニウム(Zr元素換算)の割合が、前記表面修飾ナノダイヤモンド分散液に含まれる表面修飾ナノダイヤモンドと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上である、[4]〜[7]のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
[9][1]〜[3]のいずれか1つに記載の表面修飾ナノダイヤモンドと樹脂を含む、樹脂分散体。
[10]前記樹脂は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂)又は熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド)である、[9]に記載の樹脂分散体。
[11]前記表面修飾ナノダイヤモンドの含有量は、0.0001〜10重量%である、[9]又は[10]に記載の樹脂分散体。
[12]前記樹脂分散体は、ジルコニウムを含み、前記ジルコニウム(Zr元素換算)の割合が、前記樹脂分散体に含まれる表面修飾ナノダイヤモンドと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上である、[9]〜[11]のいずれか1つに記載の樹脂分散体。
本発明の表面修飾ナノダイヤモンドは、酸、エステル、エポキシ、ケトン、ハロゲン化合物等の他の化合物との反応性や、有機溶媒などの分散媒や樹脂中などでの分散性に優れるため、表面修飾ナノダイヤモンドの供給材料として好適である。

Claims (7)

  1. ナノダイヤモンド粒子の表面に表面修飾基を有する表面修飾ナノダイヤモンドであって、前記表面修飾基が、下記式(1)で表される基を含む、表面修飾ナノダイヤモンド。
    Figure 2018186382
    [式(1)中のRaは炭素数1〜12のアルキレン基、Rb及びRcはそれぞれ水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Rdは同一又は異なって、炭素数1〜3のアルキル基を示す。式(1)中の波線を施した結合手と結合している酸素原子の結合は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、アシル基、又は他の式(1)で表される基におけるシリコン原子と結合する。nは0、1、又は2、mは1、2、又は3を示し、m+n≦3である。式(1)中のNDはナノダイヤモンド粒子を示す。]
  2. 前記ナノダイヤモンド粒子が爆轟法ナノダイヤモンド粒子である、請求項1に記載の表面修飾ナノダイヤモンド。
  3. 請求項1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンドと分散媒を含む、表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
  4. 前記表面修飾ナノダイヤモンドのメディアン径が50nm以下である、請求項3に記載の表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
  5. 前記表面修飾ナノダイヤモンド分散液はジルコニウムを含み、前記ジルコニウム(Zr元素換算)の割合が、前記表面修飾ナノダイヤモンド分散液に含まれる表面修飾ナノダイヤモンドと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上である、請求項4に記載の表面修飾ナノダイヤモンド分散液。
  6. 請求項1又は2に記載の表面修飾ナノダイヤモンドと樹脂を含む、樹脂分散体。
  7. 前記樹脂分散体はジルコニウムを含み、前記ジルコニウム(Zr元素換算)の割合が、前記樹脂分散体に含まれる表面修飾ナノダイヤモンドと前記ジルコニウム(Zr元素換算)の合計含有量に対して、0.01重量%以上である、請求項6に記載の樹脂分散体。
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