JPWO2018181925A1 - ゲルろ過用分離材及び水溶性高分子物質の精製方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層と、を備え、湿潤状態における5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である、ゲルろ過用分離材に関する。
Description
本発明は、ゲルろ過用分離材及び水溶性高分子物質の精製方法に関する。
水溶性高分子物質、特にタンパク質の分離、精製は各種生化学的研究などの分野で広く行われている。分離、精製されたタンパク質を得ることは、該タンパク質の性質を研究するために重要であり、かつ分離、精製されたタンパク質を各種の生化学反応に応用することもまた重要なこととなっている。近年、機能性高分子としてのタンパク質、酵素の工業的需要が食品、製薬、化学等の諸分野においてますます高まりつつある。
従来、タンパク質の分離、精製法としてクロマトグラフィー法の果す役割は非常に大きなものであり、中でも、ゲルろ過(ゲルクロマトグラフィー)法は最も繁用されている手法の一つである。該方法は、一般的に、球状タンパク質の分子量差のみに基づく分子篩効果による分離モードであり、イオン的性質、疎水的性質等による影響を排除した条件下で行われる。したがって、多くのタンパク質及び酵素に同時に適応できる点で非常に汎用性が高くかつ鋭敏な分離手法である。
上記方法に使用されるゲルろ過用分離材(ゲルクロマト用担体)としては、主に、合成ポリマ系分離材及び天然多糖系分離材がある。
合成ポリマ系分離材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の水溶性ポリマを架橋により不溶化したゲルが挙げられる。合成ポリマ系分離材は、一般的に、天然多糖系分離材よりも高い強度を有すると考えられる。一方で、合成ポリマ系分離材は、タンパク質との親和性が低く、かつ、疎水的吸着等の非特異的吸着に起因した変性、失活等による収率低下が起こり易いという問題がある。
天然多糖系分離材としては、例えば、デキストランゲル等の微生物多糖、アガロースゲル等の海藻類、セルロース類、及びこれらを架橋処理したものが挙げられる。天然多糖系分離材は、天然物からの抽出、精製、ゲルの調製等の製造コストが高くなり易いことから、通常、合成ポリマ系分離材よりも高価である。また、天然多糖系分離材は、一般的に、膨潤率が高く柔弱であることから、例えば、ゲルろ過カラムにおいて溶離液を高速で流した場合にカラム圧が上昇し易く、かつ、粒子強度が低いためにカラム長を長くし難いという問題がある。
天然多糖系分離材が持つ欠点を克服するため、親水性天然高分子を「骨格」となる剛直な物質と組み合わせる試みがこれまでになされている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
しかしながら、従来のゲルろ過用分離材は、タンパク質の非特異吸着が少ないこと、高分子量タンパク質の分画性に優れること及びカラムとして用いたときの耐久性に優れることを充分なレベルで満足するものではない。
そこで、本発明は、タンパク質の非特異吸着が少なく、高分子量タンパク質の分画性に優れ、かつ、カラムとして用いたときの耐久性に優れるゲルろ過用分離材を提供することを目的とする。本発明はまた、上記ゲルろ過用分離材を用いた水溶性高分子物質の精製方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記[1]〜[6]に記載のゲルろ過用分離材及び下記[7]に記載の水溶性高分子物質の精製方法を提供する。
[1]多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層と、を備え、湿潤状態における5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である、ゲルろ過用分離材。
[2]多孔質ポリマ粒子が、スチレン系モノマをモノマ単位として含有するポリマを含む、[1]に記載のゲルろ過用分離材。
[3]水酸基を有する高分子が、多糖類又はその変性体である、[1]又は[2]に記載のゲルろ過用分離材。
[4]水酸基を有する高分子が架橋されている、[1]〜[3]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材。
[5]平均粒径が1〜300μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材。
[6]粒径の変動係数が1〜50%である、[1]〜[5]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行う、水溶性高分子物質の精製方法。
[1]多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層と、を備え、湿潤状態における5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である、ゲルろ過用分離材。
[2]多孔質ポリマ粒子が、スチレン系モノマをモノマ単位として含有するポリマを含む、[1]に記載のゲルろ過用分離材。
[3]水酸基を有する高分子が、多糖類又はその変性体である、[1]又は[2]に記載のゲルろ過用分離材。
[4]水酸基を有する高分子が架橋されている、[1]〜[3]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材。
[5]平均粒径が1〜300μmである、[1]〜[4]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材。
[6]粒径の変動係数が1〜50%である、[1]〜[5]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載のゲルろ過用分離材を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行う、水溶性高分子物質の精製方法。
本発明によれば、タンパク質の非特異吸着が少なく、高分子量タンパク質の分画性に優れ、かつ、カラムとして用いたときの耐久性に優れるゲルろ過用分離材を提供できる。本発明によればまた、上記ゲルろ過用分離材を用いた水溶性高分子物質の精製方法を提供できる。
以下、本発明の好適な実施形態について説明をするが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
<分離材>
本実施形態の分離材は、ゲルろ過用分離材である。本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層と、を備え、湿潤状態における5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である。このような分離材は、タンパク質の非特異吸着が少なく、高分子量タンパク質の分画性(分離性)及びカラムとして用いたときの耐久性に優れる。本実施形態の分離材はまた、カラムとして用いた時の通液性、耐圧性及び取り扱い性にも優れる。本実施形態の分離材は、強度にも優れると共に、真球に近い形状とすることもできる。真球状の分離材は、クロマトグラフィーで使用した場合、流体力学的に有利であると考えられる。また、本実施形態の分離材は、近い分子量のタンパク質同士の分画性にも優れる共に、長期にわたり安定的に対象物質を分離できる。
本実施形態の分離材は、ゲルろ過用分離材である。本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子と、該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層と、を備え、湿潤状態における5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である。このような分離材は、タンパク質の非特異吸着が少なく、高分子量タンパク質の分画性(分離性)及びカラムとして用いたときの耐久性に優れる。本実施形態の分離材はまた、カラムとして用いた時の通液性、耐圧性及び取り扱い性にも優れる。本実施形態の分離材は、強度にも優れると共に、真球に近い形状とすることもできる。真球状の分離材は、クロマトグラフィーで使用した場合、流体力学的に有利であると考えられる。また、本実施形態の分離材は、近い分子量のタンパク質同士の分画性にも優れる共に、長期にわたり安定的に対象物質を分離できる。
なお、本明細書中、「多孔質ポリマ粒子の表面」とは、多孔質ポリマ粒子の外側の表面のみでなく、多孔質ポリマ粒子の内部における細孔の表面を含むものとする。
[多孔質ポリマ粒子]
本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、例えば、多孔質化剤の存在下でモノマを重合させて得られる粒子である。多孔質ポリマ粒子は、例えば、従来の懸濁重合及び乳化重合により合成できる。モノマとしては、特に限定されないが、耐久性が更に向上する観点及び耐アルカリ性が向上する観点から、例えば、スチレン系モノマを使用することができる。すなわち、多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマを含むモノマを重合することにより得られるものであってもよい。ここで、スチレン系モノマとは、スチレン骨格を有するモノマをいう。本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマをモノマ単位として含有するポリマを含んでいてもよい。また、本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマに由来する構造単位を有するポリマを含んでいてもよい。
本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、例えば、多孔質化剤の存在下でモノマを重合させて得られる粒子である。多孔質ポリマ粒子は、例えば、従来の懸濁重合及び乳化重合により合成できる。モノマとしては、特に限定されないが、耐久性が更に向上する観点及び耐アルカリ性が向上する観点から、例えば、スチレン系モノマを使用することができる。すなわち、多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマを含むモノマを重合することにより得られるものであってもよい。ここで、スチレン系モノマとは、スチレン骨格を有するモノマをいう。本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマをモノマ単位として含有するポリマを含んでいてもよい。また、本実施形態に係る多孔質ポリマ粒子は、スチレン系モノマに由来する構造単位を有するポリマを含んでいてもよい。
スチレン系モノマとしては、以下のような多官能性モノマ、単官能性モノマ等が挙げられる。
スチレン系の多官能性モノマとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフェナントレン等のスチレン骨格を有するジビニル化合物が挙げられる。これらの多官能性モノマは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、耐久性、耐酸性及び耐アルカリ性が更に向上する観点から、ジビニルベンゼンを使用することが好ましい。すなわち、多孔質ポリマ粒子は、ジビニルベンゼンをモノマ単位として含有するポリマを含んでいてもよい。
スチレン系の単官能性モノマとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン及びその誘導体が挙げられる。カルボキシ基、アミノ基、水酸基、アルデヒド基等の官能基を有するスチレン誘導体も使用することができる。これらの単官能性モノマは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも、耐酸性及び耐アルカリ性が更に向上する観点から、スチレンを使用することが好ましい。
多孔質化剤としては、重合時に相分離を促し、粒子の多孔質化を促進する有機溶媒である脂肪族又は芳香族の炭化水素類、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類等が挙げられる。具体的には、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、シクロヘキサン、オクタン、酢酸ブチル、フタル酸ジブチル、メチルエチルケトン、ジブチルエーテル、1−ヘキサノール、2−オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。これらの多孔質化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記多孔質化剤は、モノマ全質量に対して、例えば、0〜200質量%使用できる。多孔質化剤の量によって、多孔質ポリマ粒子の空隙率をコントロールできる。さらに、多孔質化剤の種類によって、多孔質ポリマ粒子の細孔の大きさ及び形状をコントロールすることができる。
溶媒として使用する水を多孔質化剤とすることもできる。水を多孔質化剤とする場合は、例えば、モノマに油溶性界面活性剤を溶解させ、水を吸収することによって、粒子を多孔質化し得る。
多孔質化に使用される油溶性界面活性剤としては、分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のソルビタンモノエステル、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノミリステート又はヤシ脂肪酸から誘導されるソルビタンモノエステル;分岐C16〜C24脂肪酸、鎖状不飽和C16〜C22脂肪酸又は鎖状飽和C12〜C14脂肪酸のジグリセロールモノエステル、例えば、ジグリセロールモノオレエート(例えば、C18:1(炭素数18個、二重結合数1個)脂肪酸のジグリセロールモノエステル)、ジグリセロールモノミリステート、ジグリセロールモノイソステアレート又はヤシ脂肪酸のジグリセロールモノエステル;分岐C16〜C24アルコール(例えば、ゲルベアルコール)、鎖状不飽和C16〜C22アルコール又は鎖状飽和C12〜C14アルコール(例えば、ヤシ脂肪アルコール)のジグリセロールモノ脂肪族エーテル;及びこれらの混合物が挙げられる。
これらのうち、ソルビタンモノラウレート(例えば、SPAN(スパン、登録商標)20、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノラウレート);ソルビタンモノオレエート(例えば、SPAN(スパン、登録商標)80、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノオレエート);ジグリセロールモノオレエート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノオレエート);ジグリセロールモノイソステアレート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるジグリセロールモノイソステアレート);ジグリセロールモノミリステート(例えば、純度が好ましくは約40%を超える、より好ましくは約50%を超える、更に好ましくは約70%を超えるソルビタンモノミリステート);ジグリセロールのココイル(例えば、ラウリル基及びミリストイル基)エーテル;又はこれらの混合物が好ましい。
これらの油溶性界面活性剤は、モノマ全質量に対して、5〜80質量%の範囲で用いることが好ましい。油溶性界面活性剤の含有量が5質量%以上であると、水滴の安定性が向上し易いことから、大きな単一孔を形成し易い。油溶性界面活性剤の含有量が80質量%以下であると、重合後に多孔質ポリマ粒子が形状をより保持し易くなる。
重合反応に用いられる水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体等が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性イオン系の界面活性剤のうち、いずれも用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩、アルケルニルコハク酸塩(ジカリウム塩)、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、及びポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩が挙げられる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、及びラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミン又はアミド類等の炭化水素系ノニオン界面活性剤、シリコンのポリエチレンオキサイド付加物類、ポリプロピレンオキサイド付加物類等のポリエーテル変性シリコン系ノニオン界面活性剤、及びパーフルオロアルキルグリコール類等のフッ素系ノニオン界面活性剤が挙げられる。
両性イオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の炭化水素界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤及び亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記界面活性剤の中でも、モノマ重合時の分散安定性の観点から、アニオン系界面活性剤が好ましい。
必要に応じて添加される重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。重合開始剤は、モノマ100質量部に対して、例えば、0.1〜7.0質量部の範囲で使用することができる。
重合温度は、モノマ及び重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができる。重合温度は、例えば、25〜110℃であってもよく、50〜100℃であってもよい。
多孔質ポリマ粒子の合成において、粒子の分散安定性を向上させるために、高分子分散安定剤を添加してもよい。
高分子分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等)、及びポリビニルピロリドンが挙げられ、トリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用することができる。これらのうち、ポリビニルアルコール又はポリビニルピロリドンが好ましい。高分子分散安定剤の添加量は、モノマ100質量部に対して、例えば、1〜10質量部であってもよい。
モノマが単独で重合することを抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤を用いてもよい。
多孔質ポリマ粒子の平均粒径は、分離能が更に向上し易い観点から、例えば、300μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。多孔質ポリマ粒子の平均粒径は、通液性の向上の観点から、例えば、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。これらの観点から、多孔質ポリマ粒子の平均粒径は、例えば、1〜300μmであってもよく、10〜150μmであってもよく、30〜100μmであってもよく、50〜100μmであってもよい。
多孔質ポリマ粒子の粒径の変動係数(C.V.)は、通液性が向上し易い観点から、例えば、1〜50%であってもよく、3〜15%であってもよく、5〜15%であってもよく、5〜10%であってもよい。C.V.を低減する方法としては、マイクロプロセスサーバー(株式会社日立製作所)等の乳化装置により単分散化することが挙げられる。
多孔質ポリマ粒子又は分離材の平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)は、以下の測定法により求めることができる。
1)粒子(多孔質ポリマ粒子又は分離材)を、超音波分散装置を使用して水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)を測定する。
1)粒子(多孔質ポリマ粒子又は分離材)を、超音波分散装置を使用して水(界面活性剤等の分散剤を含む)に分散させ、1質量%の粒子を含む分散液を調製する。
2)粒度分布計(シスメックスフロー、シスメックス株式会社製)を用いて、上記分散液中の粒子約1万個の画像により平均粒径及び粒径のC.V.(変動係数)を測定する。
[被覆層]
本実施形態に係る被覆層は、水酸基を有する高分子を含む。水酸基を有する高分子で多孔質ポリマ粒子を被覆することにより、カラム圧の上昇及びタンパク質の非特異吸着を抑制し易い。水酸基を有する高分子は、カラム圧の上昇を更に抑制し易い観点及び多孔質ポリマ粒子と被覆層とが剥離し難い観点から、例えば、架橋されていてもよい。
本実施形態に係る被覆層は、水酸基を有する高分子を含む。水酸基を有する高分子で多孔質ポリマ粒子を被覆することにより、カラム圧の上昇及びタンパク質の非特異吸着を抑制し易い。水酸基を有する高分子は、カラム圧の上昇を更に抑制し易い観点及び多孔質ポリマ粒子と被覆層とが剥離し難い観点から、例えば、架橋されていてもよい。
(水酸基を有する高分子)
水酸基を有する高分子は、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましく、親水性高分子であることがより好ましい。水酸基を有する高分子としては、例えば、多糖類及びポリビニルアルコールが挙げられる。多糖類としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロース及びキトサンが挙げられる。水酸基を有する高分子の重量平均分子量は、例えば、10000以上であってもよい。水酸基を有する高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水酸基を有する高分子は、1分子中に2個以上の水酸基を有することが好ましく、親水性高分子であることがより好ましい。水酸基を有する高分子としては、例えば、多糖類及びポリビニルアルコールが挙げられる。多糖類としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロース及びキトサンが挙げられる。水酸基を有する高分子の重量平均分子量は、例えば、10000以上であってもよい。水酸基を有する高分子は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水酸基を有する高分子は、粒子との界面吸着能を向上させる観点から、疎水基により変性された変性体(疎水基変性体)であってもよい。疎水基としては、例えば、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基及びプロピル基が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。疎水基は、水酸基と反応する官能基(例えば、エポキシ基)及び疎水基を有する化合物(例えば、グリシジルフェニルエーテル)を、水酸基を有する高分子と従来公知の方法で反応させることにより、導入することができる。
水酸基を有する高分子が疎水基変性体である場合、疎水基変性体を構成する全構成単位の総モル量(疎水基を含有する構成単位及び疎水基を含有しない構成単位のモル量の総和)に対する、疎水基を含有する構成単位の含有割合(以下、「疎水基含有量」ともいう)は、粒子表面に吸着するための疎水的相互作用力の保持と、タンパク質の非特異吸着の抑制のバランスの観点から、例えば、5〜30%であってもよく、10〜20%であってもよく、12〜17%であってもよい。
水酸基を有する高分子は、分離材表面の親水性が向上し易い観点から、例えば、多糖類又はその変性体であってもよい。多糖類の変性体としては、例えば、疎水基変性体が挙げられる。
(水酸基を有する高分子を含む被覆層の形成方法)
本実施形態に係る被覆層は、例えば、以下に示す方法により形成することができる。
本実施形態に係る被覆層は、例えば、以下に示す方法により形成することができる。
まず、水酸基を有する高分子の溶液を多孔質ポリマ粒子表面に吸着させる。上記溶液の溶媒としては、水酸基を有する高分子を溶解することのできるものであれば、特に限定されないが、水が最も一般的である。溶媒に溶解させる高分子の濃度は、5〜20(mg/mL)が好ましい。
具体的には、例えば、上記溶液を、多孔質ポリマ粒子に含浸させる。含浸方法は、水酸基を有する高分子の溶液に多孔質ポリマ粒子を加えて一定時間放置する。含浸時間は多孔質ポリマ粒子の表面状態によっても変わるが、通常一昼夜含浸すれば高分子濃度が多孔質ポリマ粒子の内部で外部濃度と平衡状態となる。その後、水、アルコール等の溶媒で洗浄し、未吸着分の水酸基を有する高分子を除去する。
(架橋処理)
次いで、架橋剤を加えて多孔質ポリマ粒子表面に吸着された水酸基を有する高分子を架橋反応させて、架橋体を形成する。このとき、架橋体は、水酸基を有する3次元架橋網目構造を有する。
次いで、架橋剤を加えて多孔質ポリマ粒子表面に吸着された水酸基を有する高分子を架橋反応させて、架橋体を形成する。このとき、架橋体は、水酸基を有する3次元架橋網目構造を有する。
架橋剤としては、例えば、エピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、メチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジル化合物などのような水酸基に活性な官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。また、水酸基を有する高分子としてキトサンのようなアミノ基を有する化合物を使用する場合には、ジクロロオクタンのようなジハライド化合物も架橋剤として使用できる。
この架橋反応には通常触媒が用いられる。該触媒は架橋剤の種類に合わせて適宜従来公知のものを用いることができるが、例えば、架橋剤がエピクロルヒドリン等の場合には水酸化ナトリウム等のアルカリが有効であり、架橋剤がジアルデヒド化合物の場合には塩酸等の鉱酸が有効である。
架橋剤による架橋反応は、通常、水酸基を有する高分子を吸着させた多孔質ポリマ粒子を、適当な媒体中に分散、懸濁させた系に架橋剤を添加することによって行われる。架橋剤の添加量は、水酸基を有する高分子として多糖類又はその変性体を使用した場合、単糖類の1単位を1モルとすると、それに対して0.1〜100モル倍の範囲内で、目的とする分離材の性能に応じて選定することができる。架橋剤の濃度が高いと、高分子が有する三次元網目構造の網目が小さくなり易く、架橋剤の濃度が低いと、高分子が有する三次元網目構造の網目が大きくなり易いと考えられる。したがって、架橋剤の添加量は、例えば、分離材による精製対象物の分子量の観点から、適宜調整してもよい。架橋剤の添加量が0.1モル倍以上であると、被覆層が多孔質ポリマ粒子から剥離し難い傾向にある。架橋剤の添加量が100モル倍以下であると、水酸基を有する高分子との反応率が低い場合であっても、架橋体が有する三次元網目構造の網目サイズが小さくなり易いことから、ゲルろ過分離材として使用した際に、低い分子量の物質の分画性が更に向上すると考えられる。
また、架橋反応時の触媒の使用量としては、架橋剤の種類にもよるが、水酸基を有する高分子として多糖類を使用する場合、通常、多糖類を形成する単糖類の1単位を1モルとすると、これに対して好ましくは0.01〜10モル倍の範囲、より好ましくは0.1〜5モル倍で使用される。
例えば、該架橋反応条件を温度条件とした場合、反応系の温度を上げ、その温度が反応温度に達すれば架橋反応が生起する。
水酸基を有する高分子の溶液等を含浸させた多孔質ポリマ粒子を分散、懸濁させる媒体としては含浸させた高分子溶液から高分子、架橋剤等を抽出してしまうことなく、かつ、架橋反応に不活性なものである必要がある。その具体例としては、水、トルエン、ジクロルベンゼン、ニトロメタン等が挙げられる。
架橋反応は、通常、5〜90℃の範囲の温度で、1〜10時間かけて行うことができる。架橋反応の温度は、好ましくは、30〜90℃である。
架橋反応終了後、生成した粒子をろ別し、次いで、メタノール、エタノール等の親水性有機溶媒で洗浄し、未反応の高分子、懸濁用媒体等を除去する。これにより、多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部が、水酸基を有する高分子を含む被覆層により被覆され、かつ、水酸基を有する高分子が架橋されている分離材が得られる。必要に応じ、上記架橋処理の工程を省略してもよい。
本実施形態において、湿潤状態における分離材の5%圧縮変形弾性率は、100MPa以上である。湿潤状態における分離材の5%圧縮変形弾性率が100MPa未満である場合、分離材の柔軟性が高まることにより分離材が変形し易いために、カラム内において圧密化してカラム圧が高くなると考えられる。一方で、湿潤状態における分離材の5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である場合、このようなカラム圧の上昇が抑制され易いと共に、タンパク質の非特異吸着が低減され易いと考えられる。
ここで、「湿潤状態」とは、水分により飽和した状態を指す。湿潤状態を維持するには、測定する直前に水中から分離材を取り出して使用することが好ましい。「湿潤状態」においては、通常、粒子表面及び粒子内の細孔が水(純水等)を含んでいる。
本実施形態の分離材の5%圧縮変形弾性率(例えば、分離材を50mNで圧縮したときの5%圧縮変形弾性率)は、以下のようにして算出することができる。
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温(25℃)にて荷重負荷速度1mN/秒で四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により分離材を0mNから50mNまで圧縮したときの荷重及び圧縮変位を測定する。得られた測定値から、分離材が5%圧縮変形したときの圧縮変形弾性率(5%K値)を下記式により求めることができる。
5%K値(MPa)=(3/21/2)×F×S−3/2×R−1/2
F:分離材が5%圧縮変形したときの荷重(mN)
S:分離材が5%圧縮変形したときの圧縮変位(μm)
R:分離材の半径(μm)
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温(25℃)にて荷重負荷速度1mN/秒で四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により分離材を0mNから50mNまで圧縮したときの荷重及び圧縮変位を測定する。得られた測定値から、分離材が5%圧縮変形したときの圧縮変形弾性率(5%K値)を下記式により求めることができる。
5%K値(MPa)=(3/21/2)×F×S−3/2×R−1/2
F:分離材が5%圧縮変形したときの荷重(mN)
S:分離材が5%圧縮変形したときの圧縮変位(μm)
R:分離材の半径(μm)
湿潤状態における分離材の5%圧縮変形弾性率は、タンパク質の非特異吸着を更に低減し易い観点及びカラム長さを長くしても粒子が変形し難い観点から、例えば、110MPa以上であってもよく、120MPa以上であってもよく、130MPa以上であってもよい。湿潤状態における分離材の5%圧縮変形弾性率は、例えば、1000MPa以下であってもよく、950MPa以下であってもよく、900MPa以下であってもよく、500MPa以下であってもよい。
分離材の5%圧縮変形弾性率は、架橋剤の種類及び使用量、被覆層の量等により調整することができる。例えば、架橋剤の使用量又は被覆層の量が多いほど、5%圧縮変形弾性率が大きくなる傾向がある。
本実施形態の分離材の平均粒径は、分離能が更に向上し易い観点から、例えば、300μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。分離材の平均粒径は、通液性の向上の観点から、例えば、1μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、30μm以上であってもよく、50μm以上であってもよい。これらの観点から、分離材の平均粒径は、例えば、1〜300μmであってもよく、10〜150μmであってもよく、30〜100μmであってもよく、50〜100μmであってもよい。
本実施形態の分離材の粒径の変動係数(C.V.)は、例えば、1%以上であってもよく、3%以上であってもよく、5%以上であってもよい。上記変動係数は、例えば、50%以下であってもよく、15%以下であってもよく、10%以下であってもよい。本実施形態の分離材の粒径の変動係数(C.V.)は、通液性が向上し易い観点から、例えば、1〜50%であってもよく、3〜15%であってもよく、5〜15%であってもよく、5〜10%であってもよい。
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子1g当たり30〜500mgの被覆層を備えることが好ましい。被覆層の量は熱分解の重量減少等で測定することができる。
本実施形態の分離材は、カラムに充填した場合、カラム圧0.3MPaのときに通液速度が800cm/h以上であることが好ましい。カラムクロマトグラフィーでタンパク質の分離を行う場合、タンパク質溶液等の通液速度としては、一般に400cm/h以下の範囲であるが、本実施形態の分離材を使用した場合は、通常のタンパク質分離用の分離材よりも速い通液速度800cm/h以上で使用することができる。
なお、本明細書における通液速度とは、φ7.8×300mmのステンレスカラムに本実施形態の分離材を充填し、液を通した際の通液速度を表す。
本実施形態の分離材は、多孔質ポリマ粒子上に水酸基を有する高分子を含む被覆層を備えることにより、タンパク質等の生体高分子の分離において、天然高分子からなる粒子又は合成ポリマからなる粒子のそれぞれの利点を有する。また、本実施形態の分離材は、タンパク質の非特異吸着が少ないことから、タンパク質の不可逆吸着が起こりにくい傾向にある。さらに、本実施形態の分離材は、同一流速下でのカラム圧が低い傾向にある。
本実施形態の分離材は、生体高分子をサイズ排除精製による分離に用いるのに好適であり、本実施形態の分離材は、カラムクロマトグラフィーにおいて、使用することが可能である。本実施形態の分離材は、例えば、液体クロマトグラフィー用のものである。本実施形態の分離材を用いて分離できる生体高分子としては、水溶性物質が好ましい。
[水溶性高分子物質の精製方法]
本実施形態の水溶性高分子物質の精製方法は、本実施形態のゲルろ過用分離材を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行うものである。精製対象である水溶性高分子物質としては、例えば、水溶性の生体高分子が挙げられる。水溶性の生体高分子としては、例えば、血清アルブミン、免疫グロブリン等の血液タンパク質などのタンパク質、生体中に存在する酵素、バイオテクノロジーにより生産されるタンパク質生理活性物質、DNA、及び、生理活性をするペプチドが挙げられる。精製される水溶性高分子物質の重量平均分子量は、例えば、200万以下であってもよく、50万以下であってもよい。また、公知の方法に従い、タンパク質の等電点、イオン化状態等によって、分離材の性質、条件等を選んでもよい。公知の方法としては、例えば、特開昭60−169427号公報等に記載の方法が挙げられる。
本実施形態の水溶性高分子物質の精製方法は、本実施形態のゲルろ過用分離材を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行うものである。精製対象である水溶性高分子物質としては、例えば、水溶性の生体高分子が挙げられる。水溶性の生体高分子としては、例えば、血清アルブミン、免疫グロブリン等の血液タンパク質などのタンパク質、生体中に存在する酵素、バイオテクノロジーにより生産されるタンパク質生理活性物質、DNA、及び、生理活性をするペプチドが挙げられる。精製される水溶性高分子物質の重量平均分子量は、例えば、200万以下であってもよく、50万以下であってもよい。また、公知の方法に従い、タンパク質の等電点、イオン化状態等によって、分離材の性質、条件等を選んでもよい。公知の方法としては、例えば、特開昭60−169427号公報等に記載の方法が挙げられる。
精製対象となる水溶性高分子物質の具体例は、サイログロブリン、ガンマグロブリン、牛血清アルブミン、ミオグロビン及びウラシルを含む。水溶性高分子物質の質量(kDa)は、例えば、0.01〜10000kDaであってもよく、0.05〜5000kDaであってもよく、0.1〜1000kDaであってもよい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(多孔質ポリマ粒子の合成)
500mLの三口フラスコに、モノマとして純度96%のジビニルベンゼン(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:DVB960)を16g、多孔質化剤としてヘキサノールを16g、及びジエチルベンゼンを16g、開始剤として過酸化ベンゾイルを0.64g加え、分散相とした。また、0.5質量%のポリビニルアルコール水溶液を連続相として使用した。この連続相と分散相とをマイクロプロセスサーバーを使用して乳化した後、得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間撹拌した。得られた粒子をろ別した後、アセトンで洗浄し、多孔質ポリマ粒子を得た(以下、本実施例で得られた多孔質ポリマ粒子を「多孔質ポリマ粒子1」という)。多孔質ポリマ粒子1の粒径をフロー型粒径測定装置で測定し、平均粒径及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。結果を表1に示す。
(多孔質ポリマ粒子の合成)
500mLの三口フラスコに、モノマとして純度96%のジビニルベンゼン(新日鉄住金化学株式会社製、商品名:DVB960)を16g、多孔質化剤としてヘキサノールを16g、及びジエチルベンゼンを16g、開始剤として過酸化ベンゾイルを0.64g加え、分散相とした。また、0.5質量%のポリビニルアルコール水溶液を連続相として使用した。この連続相と分散相とをマイクロプロセスサーバーを使用して乳化した後、得られた乳化液をフラスコに移し、80℃のウォーターバスで加熱しながら、攪拌機を用いて約8時間撹拌した。得られた粒子をろ別した後、アセトンで洗浄し、多孔質ポリマ粒子を得た(以下、本実施例で得られた多孔質ポリマ粒子を「多孔質ポリマ粒子1」という)。多孔質ポリマ粒子1の粒径をフロー型粒径測定装置で測定し、平均粒径及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。結果を表1に示す。
(水酸基を有する高分子(疎水基変性アガロース)の合成)
アガロース水溶液(2質量%)480mLに、水酸化ナトリウム0.98g及びグリシジルフェニルエーテル4.90gを投入して60℃で6時間反応させ、アガロースにフェニル基を導入した。得られた変性アガロースをイソプロピルアルコールで再沈殿させ、洗浄した。変性アガロースの疎水基含有量を下記方法により算出したところ、14.2%であった。
アガロース水溶液(2質量%)480mLに、水酸化ナトリウム0.98g及びグリシジルフェニルエーテル4.90gを投入して60℃で6時間反応させ、アガロースにフェニル基を導入した。得られた変性アガロースをイソプロピルアルコールで再沈殿させ、洗浄した。変性アガロースの疎水基含有量を下記方法により算出したところ、14.2%であった。
(変性アガロースの疎水基含有量の評価)
乾燥状態の粉末アガロース(変性されていないアガロース)と、揮発分0.1質量%未満まで乾燥させた変性アガロースをそれぞれ70℃の純水に溶解させ、0.05質量%の水溶液サンプルを調製した。
乾燥状態の粉末アガロース(変性されていないアガロース)と、揮発分0.1質量%未満まで乾燥させた変性アガロースをそれぞれ70℃の純水に溶解させ、0.05質量%の水溶液サンプルを調製した。
分光光度計により各水溶液の269nmの吸光度を測定して濃度を求め、下記式より疎水基含有量を算出した。
・疎水基含有量(%)=(CAG/(CHAG+CAG))×100
・CAG:変性されているアガロース構成単位の濃度(mmol/L)
=A/εGPE×1000
・CHAG:変性されていないアガロース構成単位の濃度(mmol/L)
=(変性されてないアガロース構成単位の濃度(g/L)/アガロース構成単位(306g/mol))×1000
・A:疎水基導入アガロースの真の吸光度
=疎水基を導入したアガロースの吸光度−変性されていないアガロースの吸収
・εGPE:グリシジルフェニルエーテルの吸光係数
=1372(L/(mol・cm))
・変性されていないアガロースの吸収=変性されてないアガロースの吸光度×(変性アガロースのサンプル濃度(mmol/L)/変性されてないアガロースのサンプル濃度(mmol/L))
・変性されてないアガロース構成単位の濃度(g/L)=変性アガロースのサンプル濃度(質量%)×10−変性されているアガロース構成単位の濃度(g/L)
・変性されているアガロース成単位の濃度(g/L)=(CAG×変性されているアガロース構成単位(456g/mol))/1000
・疎水基含有量(%)=(CAG/(CHAG+CAG))×100
・CAG:変性されているアガロース構成単位の濃度(mmol/L)
=A/εGPE×1000
・CHAG:変性されていないアガロース構成単位の濃度(mmol/L)
=(変性されてないアガロース構成単位の濃度(g/L)/アガロース構成単位(306g/mol))×1000
・A:疎水基導入アガロースの真の吸光度
=疎水基を導入したアガロースの吸光度−変性されていないアガロースの吸収
・εGPE:グリシジルフェニルエーテルの吸光係数
=1372(L/(mol・cm))
・変性されていないアガロースの吸収=変性されてないアガロースの吸光度×(変性アガロースのサンプル濃度(mmol/L)/変性されてないアガロースのサンプル濃度(mmol/L))
・変性されてないアガロース構成単位の濃度(g/L)=変性アガロースのサンプル濃度(質量%)×10−変性されているアガロース構成単位の濃度(g/L)
・変性されているアガロース成単位の濃度(g/L)=(CAG×変性されているアガロース構成単位(456g/mol))/1000
また、粒子に吸着した変性アガロースの疎水基含有量は、粒子0.2gを1M硫酸10mL中にて、70℃、5時間処理し、処理液を分光光度計にて269nmの吸光度を測定して処理液濃度を求めることで、同様に算出できる。
(変性アガロースの吸着及び架橋)
20mg/mLの変性アガロース水溶液に多孔質ポリマ粒子1を70mL/粒子gの濃度で投入し、55℃で24時間攪拌して、多孔質ポリマ粒子1に変性アガロースを吸着させた。変性アガロースが吸着した粒子をろ別して、更に熱水で洗浄した。
20mg/mLの変性アガロース水溶液に多孔質ポリマ粒子1を70mL/粒子gの濃度で投入し、55℃で24時間攪拌して、多孔質ポリマ粒子1に変性アガロースを吸着させた。変性アガロースが吸着した粒子をろ別して、更に熱水で洗浄した。
変性アガロースは次のようにして架橋した。変性アガロースが吸着した粒子10gを、0.4M水酸化ナトリウム水溶液に分散させ、架橋剤(エピクロロヒドリン)濃度が0.04Mとなるように架橋剤を添加し、8時間室温にて攪拌した。その後、2質量%の熱ドデシル硫酸ナトリウム水溶液で洗浄後、純水で洗浄した。得られた粒子を乾燥して、分離材を得た。得られた分離材を熱重量分析することにより、多孔質ポリマ粒子1g当たりの被覆層の質量(mg/粒子g)を算出した。また、得られた分離材の粒径をフロー型粒径測定装置で測定し、平均粒径及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。これらの結果を表2に示す。
(タンパク質の非特異吸着量評価)
得られた分離材0.2gをBSA(Bovine Serum Albumin)濃度24mg/mLのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)20mLに投入し、24時間室温で攪拌した。その後、遠心分離を行って上澄み液をとった。分光光度計で上澄み液の280nmの吸光度を測定することによって求めた上澄み液中のBSA濃度から、粒子に吸着したBSA量を算出した。粒子1mLあたりのBSA吸着量を、非特異吸着量として評価した。結果を表2に示す。
得られた分離材0.2gをBSA(Bovine Serum Albumin)濃度24mg/mLのTris−塩酸緩衝液(pH8.0)20mLに投入し、24時間室温で攪拌した。その後、遠心分離を行って上澄み液をとった。分光光度計で上澄み液の280nmの吸光度を測定することによって求めた上澄み液中のBSA濃度から、粒子に吸着したBSA量を算出した。粒子1mLあたりのBSA吸着量を、非特異吸着量として評価した。結果を表2に示す。
(湿潤状態における5%圧縮変形弾性率)
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温(25℃)にて荷重負荷速度1mN/秒で四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により、湿潤状態の分離材を0mNから50mNまで圧縮し、分離材の5%圧縮変形弾性率を測定した。結果を表2に示す。
微小圧縮試験機(Fisher製)を用いて、室温(25℃)にて荷重負荷速度1mN/秒で四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により、湿潤状態の分離材を0mNから50mNまで圧縮し、分離材の5%圧縮変形弾性率を測定した。結果を表2に示す。
(カラムの充填)
分離材を濃度30質量%のスラリー(溶媒:メタノール)として、15分かけて、φ7.8×300mmのステンレスカラムに充填した。
分離材を濃度30質量%のスラリー(溶媒:メタノール)として、15分かけて、φ7.8×300mmのステンレスカラムに充填した。
(耐久性評価)
分離材を充填したカラムに、800cm/hの流速で水を流し、カラム圧を測定後、3000cm/hに流速を上昇させ、1時間通液させた。再度800cm/hに流速を下げてカラム圧を測定した。流速を下げた後のカラム圧が初期値(3000cm/hに流速を上げる前のカラム圧)より10%以上上昇した場合を「B」、カラム圧の上昇量が10%未満である場合を「A」として評価した。結果を表2に示す。
分離材を充填したカラムに、800cm/hの流速で水を流し、カラム圧を測定後、3000cm/hに流速を上昇させ、1時間通液させた。再度800cm/hに流速を下げてカラム圧を測定した。流速を下げた後のカラム圧が初期値(3000cm/hに流速を上げる前のカラム圧)より10%以上上昇した場合を「B」、カラム圧の上昇量が10%未満である場合を「A」として評価した。結果を表2に示す。
(タンパク質分離評価)
上記の分離材を充填したカラムに、36mg/mLに調整した5種類の標準タンパク質溶液を100μLインジェクトし、カラム通液後の溶液をUV(280nm)でモニタリングしてそれぞれの溶出時間を比較した。標準タンパク質は、サイログロブリン(660kDa)、ガンマグロブリン(150kDa)、牛血清アルブミン(66kDa)、ミオグロビン(17kDa)及びウラシル(112Da)を使用した。溶離液は、50mMリン酸緩衝液(pH7.4)を使用し、流速は0.5mL/minとした。表3に、各タンパク質溶液の溶出時間を示す。
上記の分離材を充填したカラムに、36mg/mLに調整した5種類の標準タンパク質溶液を100μLインジェクトし、カラム通液後の溶液をUV(280nm)でモニタリングしてそれぞれの溶出時間を比較した。標準タンパク質は、サイログロブリン(660kDa)、ガンマグロブリン(150kDa)、牛血清アルブミン(66kDa)、ミオグロビン(17kDa)及びウラシル(112Da)を使用した。溶離液は、50mMリン酸緩衝液(pH7.4)を使用し、流速は0.5mL/minとした。表3に、各タンパク質溶液の溶出時間を示す。
[実施例2]
実施例1と同様にして、多孔質ポリマ粒子を合成し、得られた多孔質ポリマ粒子を評価した(以下、本実施例で得られた多孔質ポリマ粒子を「多孔質ポリマ粒子2」という)。結果を表1に示す。
実施例1と同様にして、多孔質ポリマ粒子を合成し、得られた多孔質ポリマ粒子を評価した(以下、本実施例で得られた多孔質ポリマ粒子を「多孔質ポリマ粒子2」という)。結果を表1に示す。
架橋剤の添加量を、架橋剤(エピクロロヒドリン)濃度が0.4Mとなるような量としたこと以外は、実施例1と同様にして、分離材を作製し、これを評価した。評価結果を表2及び表3に示す。
[比較例1]
市販のアガロース粒子(Sepharose 6 FF、GEヘルスケア)を準備した(以下、「アガロース粒子1」という)。多孔質ポリマ粒子1及び2と同様の方法で、アガロース粒子1の平均粒径及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。結果を表1に示す。アガロース粒子1をそのまま分離材として用い、実施例1と同様に評価した。結果を表2及び表3に示す。
市販のアガロース粒子(Sepharose 6 FF、GEヘルスケア)を準備した(以下、「アガロース粒子1」という)。多孔質ポリマ粒子1及び2と同様の方法で、アガロース粒子1の平均粒径及び粒径のC.V.値(変動係数)を算出した。結果を表1に示す。アガロース粒子1をそのまま分離材として用い、実施例1と同様に評価した。結果を表2及び表3に示す。
表2及び表3に示すとおり、実施例1、2の分離材は、タンパク質の非特異吸着が少なく、高分子量タンパク質の分画性にも優れ、かつ、カラムとして用いたときの耐久性に優れることがわかる。また、実施例1、2の分離材を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行うことにより、水溶性高分子物質を精製できることがわかる。
Claims (7)
- 多孔質ポリマ粒子と、
該多孔質ポリマ粒子の表面の少なくとも一部を被覆する、水酸基を有する高分子を含む被覆層と、を備え、
湿潤状態における5%圧縮変形弾性率が100MPa以上である、ゲルろ過用分離材。 - 前記多孔質ポリマ粒子が、スチレン系モノマをモノマ単位として含有するポリマを含む、請求項1に記載のゲルろ過用分離材。
- 前記水酸基を有する高分子が、多糖類又はその変性体である、請求項1又は2に記載のゲルろ過用分離材。
- 前記水酸基を有する高分子が架橋されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲルろ過用分離材。
- 平均粒径が1〜300μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲルろ過用分離材。
- 粒径の変動係数が1〜50%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゲルろ過用分離材。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のゲルろ過用分離材を用いてゲルろ過クロマトグラフィーを行う、水溶性高分子物質の精製方法。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017068078 | 2017-03-30 | ||
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