[本願発明の実施形態の説明]
最初に本願発明の実施形態の内容をそれぞれ個別に列挙して説明する。
(1) 本実施形態に係る半導体発光モジュールは、その一態様として、複数の半導体発光素子と、これら複数の半導体発光素子を保持するための支持基板と、を備える。複数の半導体発光素子それぞれは、光が出力される第1面と、該第1面に対向する第2面とを有する。支持基板は、第3面と、該第3面に対向する第4面と、複数の半導体発光素子にそれぞれ対応する、該第3面上に配置された複数の駆動電極とを有する。複数の半導体発光素子は、これら複数の半導体発光素子の第2面と第3面とが複数の駆動電極を介して向かい合った状態で、該第3面上に載置される。
複数の半導体発光素子それぞれは、活性層と、位相変調層と、第1クラッド層と、第2クラッド層と、第1面側電極と、第2面側電極と、を有する。活性層は、第1面と第2面との間に位置する。位相変調層は、第1面と第2面との間に位置し、活性層と光学的に結合される層である。また、位相変調層は、第1屈折率を有する基本領域と、それぞれが基本領域内に設けられるとともに第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域とを含む。第1クラッド層は、少なくとも活性層および位相変調層を含む積層構造体に対して第1面が位置する側に配置される。第2クラッド層は、積層構造体に対して第2面が位置する側に配置される。第1面側電極は、第1クラッド層に対して第1面が位置する側に配置される。第2面側電極は、第2クラッド層に対して第2面が位置する側に配置される。また、第2面側電極は、複数の駆動電極のうち対応する駆動電極に電気的に接続されている。
更に、複数の異屈折率領域それぞれは、対応する駆動電極から駆動電流が供給されたときに第1面から出力される光により表現されるビーム投射パターンおよび該ビーム投射パターンの投射範囲であるビーム投射領域を、目標ビーム投射パターンおよび目標ビーム投射領域にそれぞれ一致させるための配置パターンに従って、基本領域中における所定位置に配置されている。
なお、第1前提条件として、第1面の法線方向に一致するZ軸と、複数の異屈折率領域を含む位相変調層の一方の面に一致した、互いに直交するX軸およびY軸を含むX−Y平面と、により規定されるXYZ直交座標系において、該X−Y平面上に、それぞれが正方形状を有するM1(1以上の整数)×N1(1以上の整数)個の単位構成領域Rにより構成される仮想的な正方格子が設定される。このとき、配置パターンは、X軸方向の座標成分x(1以上M1以下の整数)とY軸方向の座標成分y(1以上N1以下の整数)とで特定されるX−Y平面上の単位構成領域R(x,y)において、単位構成領域R(x,y)内に位置する異屈折率領域の重心G1が単位構成領域R(x,y)の中心となる格子点O(x,y)から距離rだけ離れ、かつ、格子点O(x,y)から重心G1へのベクトルが特定方向に向くよう、規定される。
特に、複数の半導体発光素子のうち少なくとも第1半導体発光素子と第2半導体発光素子は、以下の第1〜第3構成のうち少なくとも何れかの構成において異なっている。なお、第1構成は、第1および第2半導体発光素子間において、目標ビーム投射領域に向かう光の進行方向により規定されるビーム投射方向が異なる。この場合、一例として、第1半導体発光素子の目標ビーム投射領域と、第2半導体発光素子の目標ビーム投射領域と、を実質的に一致させることが可能になる。第2構成は、第1半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと、第2半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと、が異なることにより規定される。第3構成は、第1半導体発光素子の発光波長と、第2半導体発光素子の発光波長と、が異なることにより規定される。
(2)本実施形態に係る半導体発光モジュールの制御方法は、その一態様として、上述のような構造を備えた半導体発光モジュールの複数の半導体発光素子それぞれを、駆動回路を介して個別に制御する。具体的な駆動制御では、例えば、複数の半導体発光素子のうち1またはそれ以上の半導体発光素子が選択され、該選択された半導体素子それぞれの動作が、駆動回路により個別に制御される。なお、駆動回路による個別の制御には、選択された半導体発光素子それぞれを同時に駆動させる制御も含まれる。また、駆動回路による制御は、選択された半導体発光素子それぞれに対して個別に設定された制御パターンに従って行われる。制御パターンは、選択された半導体発光素子それぞれの、少なくとも駆動タイミングおよび駆動時間が時間軸に沿って規定された情報を含む。
上述のように、本実施形態に係る半導体発光モジュールおよびその制御方法において、複数の半導体発光素子のうち少なくとも2つの半導体発光素子は、上記第1構成(目標ビーム投射領域の実質的な一致)、上記第2構成(目標ビーム投射パターンの不一致)、および上記第3構成(発光波長の不一致)のうち少なくとも何れかの構成を備えている。この構成により、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能になる。例えば、スクリーンの同じ領域に複数のパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用、一箇所に同じパターンの光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用、一箇所に同じパターンのパルス光を連続的に照射することで対象物に目標とするパターンの孔を穿設するタイプのレーザ加工への応用等が可能になる。
上述のような構造を有する半導体発光素子においては、活性層に光学的に結合した位相変調層が、基本層と、それぞれが基本層内に埋め込まれるとともに、該基本層の屈折率とは異なる屈折率をそれぞれが有する複数の異屈折率領域とを有する。また、仮想的な正方格子を構成する単位構成領域R(x,y)において、対応する異屈折率領域の重心G1が格子点O(x,y)から離れて配置される。更に、格子点Oから重心G1へのベクトルの向きが単位構成領域Rごとに個別に設定されている。このような構成において、格子点Oから対応する異屈折率領域の重心G1へのベクトルの向き、すなわち該異屈折率領域の重心G1の格子点周りの角度位置に応じて、ビームの位相が変化する。このように、本実施形態によれば、異屈折率領域の重心位置を変更するのみで、異屈折率領域それぞれから出力されるビームの位相を制御することができ、全体として形成されるビーム投射パターン(光像を形成するビーム群)を所望の形状に制御することができる。このとき、仮想的な正方格子における格子点は異屈折率領域の外部に位置していてもよく、また、該格子点が異屈折率領域の内部に位置していてもよい。
(3)本実施形態の一態様として、仮想的な正方格子の格子定数(実質的に格子間隔に相当)をaとするとき、単位構成領域R(x,y)内に位置する異屈折率領域の重心G1と、格子点O(x,y)との距離rは、0≦r≦0.3aを満たすのが好ましい。また、上記の半導体発光素子から出射されるビーム投射パターンとなる元の画像(二次元逆フーリエ変換前の光像)としては、例えば、スポット、3点以上からなるスポット群、直線、十字架、線画、格子パターン、縞状パターン、図形、写真、コンピュータグラフィクス、および文字のうち少なくとも1つを含むのが好ましい。
(4) 本実施形態の一態様では、第1前提条件の他、第2前提条件として、XYZ直交座標系における座標(x,y,z)は、図41に示されたように、動径の長さd1と、Z軸からの傾き角θtiltと、X−Y平面上で特定されるX軸からの回転角θrotと、で規定される球面座標(d1,θtilt,θrot)に対して、以下の式(1)〜式(3)で示された関係を満たしているものとする。なお、図41は、球面座標(d1,θtilt,θrot)からXYZ直交座標系における座標(x,y,z)への座標変換を説明するための図であり、座標(x,y,z)により、実空間であるXYZ直交座標系において設定される所定平面(目標ビーム投射領域)上の設計上の光像が表現される。半導体発光素子から出力される光像に相当する目標ビーム投射パターンを角度θtiltおよびθrotで規定される方向に向かう輝点の集合とするとき、角度θtiltおよびθrotは、以下の式(4)で規定される規格化波数であってX軸に対応したKx軸上の座標値kxと、以下の式(5)で規定される規格化波数であってY軸に対応するとともにKx軸に直交するKy軸上の座標値kyに換算されるものとする。規格化波数は、仮想的な正方格子の格子間隔に相当する波数を1.0として規格化された波数を意味する。このとき、Kx軸およびKy軸により規定される波数空間において、目標ビーム投射パターンを含む特定の波数範囲が、それぞれが正方形状のM2(1以上の整数)×N2(1以上の整数)個の画像領域FRで構成される。なお、整数M2は、整数M1と一致する必要はない。同様に、整数N2は、整数N1と一致する必要もない。また、式(4)および式(5)は、例えば、上記非特許文献1に開示されている。
第3前提条件として、波数空間において、Kx軸方向の座標成分kx(1以上M2以下の整数)とKy軸方向の座標成分ky(1以上N2以下の整数)とで特定される画像領域FR(kx,ky)それぞれを、X軸方向の座標成分x(1以上M1以下の整数)とY軸方向の座標成分y(1以上N1以下の整数)とで特定されるX−Y平面上の単位構成領域R(x,y)に二次元逆フーリエ変換することで得られる複素振幅F(x,y)が、jを虚数単位として、以下の式(6)で与えられる。また、この複素振幅F(x,y)は、振幅項をA(x,y)とするとともに位相項をP(x,y)とするとき、以下の式(7)により規定される。更に、第4前提条件として、単位構成領域R(x,y)が、X軸およびY軸にそれぞれ平行であって単位構成領域R(x,y)の中心となる格子点O(x,y)において直交するs軸およびt軸で規定される。
上記第1〜第4前提条件の下、位相変調層における異屈折率領域の配置パターンは、回転方式または軸上シフト方式により決定される。具体的に、回転方式による配置パターンの決定では、単位構成領域R(x,y)内において、格子点O(x,y)と対応する異屈折率領域の重心G1とを結ぶ線分と、s軸と、の成す角度φ(x,y)が、
φ(x,y)=C×P(x,y)+B
C:比例定数であって例えば180°/π
B:任意の定数であって例えば0
なる関係を満たすように、該対応する異屈折率領域が配置される。
上述のような構造を有する半導体発光素子では、位相変調層において、仮想的な正方格子を構成する各単位構成領域の中心(格子点)と、対応する異屈折率領域の重心G1との距離rは、位相変調層全体に亘って一定値であることが好ましい(なお、部分的に距離rが異なっていることは排除されない)。これにより、位相変調層全体における位相分布(単位構成領域R(x,y)に割り当てられた複素振幅F(x,y)における位相項P(x,y)の分布)が0〜2π(rad)まで等しく分布している場合、平均すると、異屈折率領域の重心は正方格子における単位構成領域Rの格子点に一致することとなる。したがって、上記の位相変調層における二次元分布ブラッグ回折効果は、正方格子の各格子点上に異屈折率領域が配置された場合の二次元分布ブラッグ回折効果に近づくこととなるので、定在波の形成が容易となり、発振のための閾値電流低減を期待できる。
(5)一方、軸上シフト方式による配置パターンの決定では、上記第1〜第4前提条件の下、単位構成領域R(x,y)において、格子点O(x,y)を通る、s軸から傾斜した直線上に対応する異屈折率領域の重心G1が配置される。その際、格子点O(x,y)と該対応する異屈折率領域の重心G1までの線分長r(x,y)が、
r(x,y)=C×(P(x,y)−P0)
C:比例定数
P0:任意定数であって例えば0
なる関係を満たすように、該対応する異屈折率領域が単位構成領域R(x,y)内に配置される。なお、位相変調層における異屈折率領域の配置パターンが軸上シフト方式により決定された場合でも、上述の回転方式と同様の効果を奏する。
(6)本実施形態の一態様として、第1および第2半導体発光素子を含む複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子において、位相変調層における複数の異屈折率領域の全ては、X−Y平面上で規定される形状、X−Y平面上で規定される面積、およびX−Y平面上で規定される距離rのうち少なくとも何れかが一致しているのが好ましい。ここで、上述の「X−Y平面上で規定される形状」には、1つの異屈折率領域を構成する複数要素の組合せ形状も含む(図25(h)〜図25(k)参照)。これによれば、ビーム投射領域内におけるノイズ光およびノイズとなる0次光の発生を抑制することができる。なお、0次光とは、Z軸方向に平行に出力される光であり、位相変調層において位相変調されない光を意味する。
(7)本実施形態の一態様として、複数の異屈折率領域の、X−Y平面上における形状は、真円、正方形、正六角形、正八角形、正16角形、正三角形、直角二等辺三角形、長方形、楕円、2つの円または楕円の一部分が重なる形状、卵型形状、涙型形状、二等辺三角形、矢印型形状、台形、5角形、および、2つの矩形の一部分が重なる形状のうち何れかであるのが好ましい。なお、卵型形状は、図22(h)および図38(d)に示されたように、その長軸に沿った一方の端部近傍の短軸方向の寸法が、他方の端部近傍の該短軸方向の寸法よりも小さくなるように楕円を変形することにより得られる形状である。涙型形状は、図22(d)および図38(e)に示されたように、その長軸に沿った楕円の一方の端部を、長軸方向に沿って突き出る尖った端部に変形することにより得られる形状である。矢印型形状は、図22(e)および図38(g)に示されたように、矩形の一辺が三角形の切欠き部を構成する一方、該一辺に対向する辺が三角形の突起部を構成したな形状である。
複数の異屈折率領域の、X−Y平面上における形状が、真円、正方形、正六角形、正八角形、正16角形、長方形、および楕円の何れかの場合、すなわち、各異屈折率領域の形状が鏡像対称(線対称)となる場合、位相変調層において、仮想的な正方格子を構成する複数の単位構成領域Rそれぞれの格子点Oから、対応するそれぞれの異屈折率領域の重心G1へ向かう方向と、X軸に平行なs軸との成す角度φを高精度に設定することが可能になる。また、複数の異屈折率領域の、X−Y平面上における形状が、正三角形、直角二等辺三角形、二等辺三角形、2つの円または楕円の一部分が重なる形状、卵型形状、涙型形状、矢印型形状、台形、5角形、2つの矩形の一部分が重なる形状の何れかの場合、すなわち、180°の回転対称性を備えない場合、より高い光出力を得ることが可能になる。
(8)本実施形態の一態様として、複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子において、位相変調層は、M1×N1個の単位構成領域Rで構成された内側領域と、該内側領域の外周を取り囲むように設けられた外側領域と、を有してもよい。なお、外側領域は、仮想的な正方格子と同一の格子構造を該仮想的な正方格子の外周に設定することにより規定される拡張正方格子における格子点とそれぞれが重なるよう配置された複数の周辺格子点異屈折率領域を含む。この場合、X−Y平面に沿った光漏れが抑制され、発振閾値電流を低減することが可能になる。
(9)本実施形態の一態様として、複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子において、位相変調層は、複数の異屈折率領域とは異なる複数の別の異屈折率領域、すなわち、複数の格子点異屈折率領域を備えてもよい。複数の異屈折率領域は、M1×N1個の単位構成領域Rにそれぞれ配置されており、それぞれの重心G2が対応する単位構成領域Rの格子点Oに一致するよう配置されている。この場合、異屈折率領域と格子点異屈折率領域とで構成される組み合わせ形状が全体として180°の回転対称性を備えなくなる。そのため、より高い光出力が得られる。
以上、この[本願発明の実施形態の説明]の欄に列挙された各態様は、残りの全ての態様のそれぞれに対して、または、これら残りの態様の全ての組み合わせに対して適用可能である。
[本願発明の実施形態の詳細]
以下、本実施形態に係る半導体発光モジュールおよびその制御方法の具体的な構造を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、図面の説明において同一の要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
図1〜図3を参照して、第1実施形態に係る半導体発光モジュール1の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る半導体発光モジュール1を半導体発光素子の第1面側から見た図である。図2は、半導体発光モジュール1を支持基板の第4面側から見た図である。図3は、図1および図2中に示されたIII−III線に沿った、半導体発光モジュール1の断面図である。
図1〜図3に示されたように、半導体発光モジュール1は、一対の半導体発光素子100−1、100−2と、支持基板11と、を備える。半導体発光素子100−1、100−2それぞれは、特許文献1の図2と同じ層構造を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子100−1、100−2は、第1面100−1a、100−2aと第2面100−1b、100−2bをそれぞれ有し、第1面100−1a、100−2aから光を出力する。支持基板11は、第3面11aと第4面11bとを有するとともに第3面上に配置された一対の駆動電極11−1、11−2を有し、一対の駆動電極11−1、11−2を介して一対の半導体発光素子100−1、100−2を載置可能である。半導体発光素子100−1、100−2は、活性層103−1、103−2と、活性層103−1、103−2と光学的に結合される位相変調層104−1、104−2と、第1クラッド層102−1、102−2と、第2クラッド層106−1、106−2と、第2面側電極108−1、108−2と、第1面側電極110−1、110−2と、をそれぞれ有する。なお、半導体発光素子100−1において、積層構造体は、少なくとも活性層103−1と位相変調層104−1を含む。一方、半導体発光素子100−2において、積層構造体は、少なくとも活性層103−2と位相変調層104−2を含む。後述の実施形態においても積層構造体の構成は同様である。
半導体発光素子100−1、100−2における第2面側電極108−1、108−2は、対応する駆動電極11−1、11−2にそれぞれ接続されている。位相変調層104−1、104−2は、第1屈折率を有する基本領域104−1a、104−2aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域104−1b、104−2bとをそれぞれ含む。複数の異屈折率領域104−1b,104−2bは、それぞれの重心が基本領域104−1a、104−2a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離rだけずれた場所に位置するような配置パターンに従って、基本領域104−1a、104−2a中にそれぞれ配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極11−1、11−2から駆動電流が供給されたときに第1面100−1a、100−2aから出力される光で表現されるビーム投射パターンおよび該ビーム投射パターンの投射範囲であるビーム投射領域が、目標ビーム投射パターンおよび目標ビーム投射領域にそれぞれ一致するように設定されている。
なお、第1〜第4実施形態に係る半導体発光モジュールの何れにおいても、以下の第1〜第3構成のうち少なくとも何れかの構成を備える。すなわち、第1構成では、当該半導体発光モジュールに含まれる複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子(第1半導体発光素子)と、該第1半導体発光素子とは異なる少なくとも1つの別の半導体発光素子(第2半導体発光素子)との間において、それぞれの目標ビーム投射領域が実質的に一致している。すなわち、第1および第2半導体発光素子間において、ビーム投射方向が異なっている。第2構成では、第1半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと、第2半導体発光素子の目標ビーム投射パターンとが互いに異なっている。第3構成では、第1半導体発光素子の発光波長と、第2半導体発光素子の発光波長とが互いに異なっている。
なお、本明細書でいう「ビーム投射領域」は1つの駆動電極から駆動電流が供給されたときに半導体発光モジュールから出力される光の投射範囲を指し、「ビーム投射パターン」は、上記投射範囲内における光の投射パターン(光の強弱のパターン)を指す。
本実施形態において、第1構成の場合、半導体発光素子(第1半導体発光素子)100−1の目標ビーム投射領域と半導体発光素子(第2半導体発光素子)100−2の目標ビーム投射領域が同じである。この構成では、半導体発光素子100−1の目標ビーム投射パターンと半導体発光素子100−2の目標ビーム投射パターンとは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、半導体発光素子100−1の発光波長と半導体発光素子100−2の発光波長も同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2構成の場合、半導体発光素子100−1の目標ビーム投射パターンと半導体発光素子100−2の目標ビーム投射パターンが異なる。この構成では、半導体発光素子100−1の目標ビーム投射領域と半導体発光素子100−2の目標ビーム投射領域とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、半導体発光素子100−1の発光波長と半導体発光素子100−2の発光波長も同じであってもよいし、異なっていてもよい。第3構成の場合、半導体発光素子100−1の目標ビーム投射パターンおよび目標ビーム投射領域は、半導体発光素子100−2の目標ビーム投射パターンおよび目標ビーム投射領域と同じであってもよいし、異なっていてもよい。何れの構成においても、半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料および位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極110−1、110−2は、図1および図3に示されたように、中央部に光を出射するための開口部110−1a、110−2aをそれぞれ有している。第1面側電極110−1、110−2それぞれは、開口部を有する電極の代わりに、透明電極であってもよい。
活性層103−1、103−2と位相変調層104−1、104−2の上下関係は、図3に示された上下関係と逆であってもよい。また、図3には、半導体発光素子100−1、100−2それぞれは、基板層101−1、101−2、上部光ガイド層105b−1、105b−2、下部光ガイド層105a―1、105a―2、コンタクト層107−1、107−2、絶縁層109−1、109−2、反射防止層111−1、111−2も記載されている。しかしながら、半導体発光素子100−1、100−2は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容等に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図3に示された各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層101−1、101−2はGaAsからなり、第1クラッド層102−1、102−2はAlGaAsからなる。活性層103−1、103−2は多重量子井戸構造MQWを有する。位相変調層104−1、104−2において、基本領域104−1a、104−2aはGaAsからなり、基本領域104−1a、104−2a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域104−1b、104−2bはAlGaAsからなる。上部光ガイド層105b−1、105b−2および下部光ガイド層105a―1、105a―2はAlGaAsからなる。第2クラッド層106−1、106−2はAlGaAsからなる。コンタクト層107−1、107−2はGaAsからなる。絶縁層109−1、109−2はSiO2またはシリコン窒化物からなる。反射防止層111−1、111−2は窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜、あるいは誘電体多層膜からなる。複数の異屈折率領域104−1b、104−2bそれぞれは、アルゴン、窒素、または空気等が封入された空孔であってもよい。
なお、当該半導体発光モジュール1が第1および第2構成の何れかを有する場合、活性層103−1、103−2の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAsの構造を含むのが好ましい。また、当該半導体発光モジュール1が第3構成を有する場合、活性層103−1、103−2の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs、障壁層:GaInAsP/井戸層:GaInAsP、障壁層:InGaN/井戸層:InGaN、障壁層:AlGaInP/井戸層:GaInP等の構造含むのが好ましい。
一例として、基板層101−1、101−2と第1クラッド層102−1、102−2には、N型の不純物が添加されている。第2クラッド層106−1、106−2とコンタクト層107−1、107−2には、P型の不純物が添加されている。また、第1クラッド層102−1、102−2と第2クラッド層106−1、106−2のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層105b−1、105b−2と下部光ガイド層105a―1、105a―2のエネルギーバンドギャップよりも大きく。また、上部光ガイド層105b−1、105b−2と下部光ガイド層105a―1、105a―2のエネルギーバンドギャップは、活性層103−1、103−2における多重量子井戸構造MQWのエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
次に、図4および図5を参照して、各位相変調層における複数の異屈折率領域の配置パターンについて説明する。図4は、位相変調層における異屈折率領域の配置パターンを説明するための模式図であり、図5は、異屈折率領域の重心と仮想的な正方格子における格子点との位置関係を説明するための図である。図4には、異屈折率領域は12個しか示されていないが、実際には、多数の異屈折率領域が設けられる。一例では704×704の異屈折率領域が設けられる。なお、ここで説明する配置パターンは、第1実施形態に特有の配置パターンではなく、後述の第2〜第4実施形態の配置パターンも同様である。そのため、図4では、位相変調層、基本領域、および複数の異屈折率領域それぞれを表す符号を一般化し、位相変調層をn04−m、基本領域をn04−ma、複数の異屈折率領域をn04−mbで表している。なお、「n」は実施形態を区別するための番号(第1実施形態は「1」、第2実施形態は「2」、…)、mは1つの半導体発光モジュールを構成する半導体発光素子を区別するための番号であり、「n」および「m」とも、1以上の整数で表される。
図4に示されたように、位相変調層n04−mは、第1屈折率の基本領域n04−maと、第1屈折率とは異なる第2屈折率の異屈折率領域n04−mbとを含み、位相変調層n04−mに、X―Y平面上で規定される仮想的な正方格子が設定される。なお、図4は、位相変調層における異屈折率領域の配置パターン(回転方式)を説明するための模式図である。正方格子の一辺はX軸と平行であり、他辺はY軸と平行である。このとき、正方格子の格子点Oを中心とする正方形状の単位構成領域Rが、X軸に沿った複数列およびY軸に沿った複数行にわたって二次元的に設定され得る。複数の異屈折率領域n04−mbは、各単位構成領域R内に1つずつ設けられる。異屈折率領域n04−mbの平面形状は、例えば円形状である。各単位構成領域R内において、異屈折率領域n04−mbの重心G1は、これに最も近い格子点Oから離れて配置される。具体的には、X−Y平面は、図3に示された半導体発光素子100−1、100−2それぞれの厚さ方向(Z軸)に直交する平面であって、異屈折率領域n04−mbを含む位相変調層n04−mの一方の面に一致している。正方格子を構成する単位構成領域Rそれぞれは、X軸方向の座標成分x(1以上の整数)とY軸方向の座標成分y(1以上の整数)とで特定され、単位構成領域R(x,y)として表される。このとき、単位構成領域R(x,y)の中心、すなわち格子点はO(x,y)で表される。なお、格子点Oは、異屈折率領域n04−mbの外部に位置しても良いし、異屈折率領域n04−mbの内部に含まれていても良い。なお、1つの単位構成領域R内に占める異屈折率領域n04−mbの面積Sの比率は、フィリングファクタ(FF)と称される。正方格子の格子間隔をaとすると、異屈折率領域n04−mbのフィリングファクタFFはS/a2として与えられる。SはX-Y平面における異屈折率領域n04−mbの面積であり、異屈折率領域n04−mbの形状が例えば真円の場合、真円の直径Dを用いてS=π(D/2)2として与えられる。また、異屈折率領域n04−mbの形状が正方形の場合、正方形の一辺の長さLAを用いてS=LA2として与えられる。
図4において、x1〜x4で示された破線は単位構成領域RにおけるX軸方向の中心位置を示し、y1〜y3で示された破線は、単位構成領域RにおけるY軸方向の中心位置を示す。したがって、破線x1〜x4と破線y1〜y3の各交点は、単位構成領域R(1,1)〜R(3,4)それぞれの中心O(1,1)〜O(3,4)、すなわち、格子点を示す。この仮想的な正方格子の格子定数はaである。なお、格子定数aは、発光波長に応じて調整される。
上記異屈折率領域n04−mbの配置パターンは、目標ビーム投射領域とビーム投射パターンに応じて、特許文献1に説明されている方法によって定められる。すなわち、各異屈折率領域n04−mbの重心G1を基本領域n04−ma中の仮想的な正方格子における各格子点(破線x1〜x4と破線y1〜y3の交点)からずらす方向を、目標ビーム投射領域と目標ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた位相に応じて決定することで、上記配置パターンが決定される。各格子点からずらす距離r(図5参照)は、特許文献1に記載されるように、正方格子の格子定数をaとしたときに0<r≦0.3aの範囲とすることが望ましい。各格子点Oからずらす距離rは、全ての位相変調層、全ての異屈折率領域に渡って同一とされるのが通常であるが、一部の位相変調層における距離rを他の位相変調層における距離rと異なる値としてもよいし、一部の異屈折率領域の距離rを他の異屈折率領域の距離rと異なる値としてもよい。なお、図5は、回転方式により決定される配置パターン(回転方式)の一例を説明するための図であり、図5中には、単位構成領域R(x,y)の構成が示されており、格子点から異屈折率領域n04−mbまでの距離rは、r(x,y)で示されている。
図5に示されたように、正方格子を構成する単位構成領域R(x,y)は、格子点O(x,y)において互いに直交するs軸およびt軸によって規定される。なお、s軸はX軸に平行な軸であり、図4中に示された破線x1〜x4に対応する。t軸はY軸に平行な軸であり、図4中に示された破線y1〜y3に対応している。このように単位構成領域R(x,y)を規定するs−t平面において、格子点O(x,y)から重心G1に向かう方向とs軸との成す角度がφ(x,y)で与えられる。回転角度φ(x,y)が0°である場合、格子点O(x,y)と重心G1とを結ぶベクトルの方向はs軸の正方向と一致する。また、格子点O(x,y)と重心G1とを結ぶベクトルの長さ(距離rに相当)がr(x,y)で与えられる。
図4に示されたように、位相変調層n04−mにおいては、異屈折率領域n04−mbの重心G1の格子点O(x,y)周りの回転角度φ(x,y)が、目標ビーム投射パターン(光像)に応じて単位構成領域Rごとに独立して設定される。回転角度φ(x,y)は、単位構成領域R(x,y)において特定の値を有するが、必ずしも特定の関数で表わされるとは限らない。すなわち、回転角度φ(x,y)は、目標ビーム投射パターンを波数空間上に変換し、この波数空間の一定の波数範囲を二次元逆フーリエ変換して得られる複素振幅の位相項から決定される。なお、目標ビーム投射パターンから複素振幅分布(単位構成領域Rそれぞれの複素振幅)を求める際には、ホログラム生成の計算時に一般的に用いられるGerchberg-Saxton(GS)法のような繰り返しアルゴリズムを適用することによって、目標ビーム投射パターンの再現性が向上する。
図6は、半導体発光素子100−1、100−2それぞれから出力される目標ビーム投射パターン(光像)と、位相変調層n04−mにおける回転角度φ(x,y)の分布との関係を説明するための図である。具体的には、目標ビーム投射パターンの投射範囲である目標ビーム投射領域(XYZ直交座標系における座標(x,y,z)で表現される設計上の光像の設置面)を波数空間上に変換して得られるKx−Ky平面について考える。このKx−Ky平面を規定するKx軸およびKy軸は、互いに直交するとともに、それぞれが、目標ビーム投射パターンの投射方向を第1面100−1a、100−2aの法線方向(Z軸方向)から該第1面100−1a、100−2aまで振った時の該法線方向に対する角度に、上記式(1)〜式(5)によって対応付けられている。このKx−Ky平面上において、目標ビーム投射パターンを含む特定領域が、それぞれが正方形状のM2(1以上の整数)×N2(1以上の整数)個の画像領域FRで構成されるものとする。また、位相変調層n04−m上のX−Y平面上において設定された仮想的な正方格子が、M1(1以上の整数)×N1(1以上の整数)個の単位構成領域Rにより構成されるものとする。なお、整数M2は、整数M1と一致する必要はない。同様に、整数N2は、整数N1と一致する必要もない。このとき、Kx軸方向の座標成分kx(1以上M2以下の整数)とKy軸方向の座標成分ky(1以上N2以下の整数)とで特定される、Kx−Ky平面における画像領域FR(kx,ky)それぞれを、X軸方向の座標成分x(1以上M1以下の整数)とY軸方向の座標成分y(1以上N1以下の整数)とで特定される単位構成領域R(x,y)に二次元逆フーリエ変換した、単位構成領域R(x,y)における複素振幅F(x,y)が、jを虚数単位として、以下の式(8)で与えられる。
また、単位構成領域R(x,y)において、振幅項をA(x,y)および位相項をP(x,y)とするとき、該複素振幅F(x,y)が、以下の式(9)により規定される。
図6に示されたように、座標成分x=1〜M1およびy=1〜N1の範囲において、単位構成領域R(x,y)の複素振幅F(x,y)における振幅項をA(x,y)の分布が、X−Y平面上における強度分布に相当する。また、x=1〜M1,y=1〜N1の範囲において、単位構成領域R(x,y)の複素振幅F(x,y)における位相項をP(x,y)の分布が、X−Y平面上における位相分布に相当する。単位構成領域R(x,y)における回転角度φ(x,y)は、後述するように、P(x,y)から得られ、座標成分x=1〜M1およびy=1〜N1の範囲において、単位構成領域R(x,y)の回転角度φ(x,y)の分布が、X−Y平面上における回転角度分布に相当する。
なお、Kx−Ky平面上におけるビーム投射パターンの中心Qは第1面100−1a、100−2aに対して垂直な軸線上に位置しており、図6には、中心Qを原点とする4つの象限が示されている。図6では、一例として第1象限および第3象限に光像が得られる場合が示されたが、第2象限および第4象限、あるいは、全ての象限で像を得ることも可能である。本実施形態では、図6に示されたように、原点に関して点対称なパターンが得られる。図6は、一例として、第3象限に文字「A」が、第1象限に文字「A」を180°回転したパターンが、それぞれ得られる場合について示されている。なお、回転対称な光像(例えば、十字、丸、二重丸など)である場合には、重なって一つの光像として観察される。
半導体発光素子100−1、100−2から出力されたビーム投射パターン(光像)は、スポット、3点以上からなるスポット群、直線、十字架、線画、格子パターン、写真、縞状パターン、CG(コンピュータグラフィクス)、および文字のうち少なくとも1つで表現される設計上の光像(元画像)に対応した光像となる。ここで、目標ビーム投射パターンを得るためには、以下の手順によって単位構成領域R(x,y)における異屈折率領域n04−mbの回転角度φ(x、y)を決定する。
単位構成領域R(x,y)内では、上述のように、異屈折率領域n04−mbの重心G1が格子点O(x,y)から距離r(r(x,y)の値)だけ離れた状態で配置されている。このとき、単位構成領域R(x,y)内には、回転角度φ(x,y)が、以下の関係を満たすように異屈折率領域n04−mbは配置される。
φ(x,y)=C×P(x,y)+B
C:比例定数であって例えば180°/π
B:任意の定数であって例えば0
なお、比例定数Cおよび任意の定数Bは、全ての単位構成領域Rに対して同一の値である。
すなわち、目標ビーム投射パターンを得たい場合、波数空間上に射影されたKx−Ky平面上に形成されるパターンを位相変調層n04−m上のX−Y平面上の単位構成領域R(x,y)に二次元逆フーリエ変換し、その複素振幅F(x,y)の位相項P(x,y)に対応した回転角度φ(x,y)を、該単位構成領域R(x,y)内に配置される異屈折率領域n04−mbに与えればよい。なお、レーザビームの二次元逆フーリエ変換後の遠視野像は、単一若しくは複数のスポット形状、円環形状、直線形状、文字形状、二重円環形状、または、ラゲールガウスビーム形状などの各種の形状をとることができる。なお、目標ビーム投射パターンは波数空間上における波数情報で表わされるものであるので(Kx−Ky平面上)、該目標ビーム投射パターンが二次元的な位置情報で表わされているビットマップ画像などの場合には、一旦波数情報に変換した後に二次元逆フーリエ変換を行うとよい。
二次元逆フーリエ変換で得られた、X−Y平面上における複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法としては、例えば強度分布(X−Y平面上における振幅項A(x,y)の分布)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布(X−Y平面上における位相項P(x,y)の分布)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
上述のように、異屈折率領域n04−mbの配置パターンを定めれば、半導体発光素子100−1、100−2の第1面100−1a、100−2aそれぞれから目標ビーム投射パターンの光が目標ビーム投射領域へと出力され得る。目標ビーム投射パターンは、設計者が任意に定めることが可能で、スポット、3点以上からなるスポット群、直線、線画、十字架、図形、写真、CG(コンピュータグラフィックス)、文字、等であり得る。各位相変調層のX−Y平面内において、全ての異屈折率領域n04−mbは、同一の図形、同一の面積、および/または、同一の距離r、を有する。また、複数の異屈折率領域n04−mbは、並進操作、または、並進操作と回転操作の組み合わせにより、重ね合わせることができるように形成されていてもよい。この場合、ビーム投射領域内におけるノイズ光およびノイズとなる0次光の発生を抑制することができる。ここで0次光とは、Z軸方向に平行に出力する光であり、位相変調層n04−mにおいて位相変調されない光のことである。
ここで、図7に、目標ビーム投射パターンと、それに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布の一例を示す。図7(a)は駆動電極11−1から駆動電流が供給されたときに得られる目標ビーム投射パターンの一例、図7(b)は駆動電極11−2から駆動電流が供給されたときに得られる目標ビーム投射パターンの一例を示している。図7(c)および図7(d)は、それぞれ、図7(a)および図7(b)の各ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布を示している。図7(c)および図7(d)は、何れも704×704の要素で構成されており、色の濃淡によって0〜2πの角度の分布を表している。色が黒い部分が角度0を表している。
次に図8を参照して、半導体発光モジュール1を備える発光装置について説明する。図8は半導体発光モジュール1を備える発光装置の構成を示すブロック図である。図8に示されたように、発光装置140は、半導体発光モジュール1と、電源回路141と、制御信号入力回路142と、駆動回路143と、を備える。電源回路141は、駆動回路143と半導体発光モジュール1に電源を供給する。制御信号入力回路142は、発光装置140の外部から供給される制御信号を駆動回路143へ伝達する。駆動回路143は、半導体発光モジュール1に駆動電流を供給する。駆動回路143と半導体発光モジュール1とは、駆動電流を供給する2本の駆動ライン144−1、144−2と2本の共通電位ライン145−1、145−2により接続されている。駆動ライン144−1、144−2は、駆動電極11−1、11−2にそれぞれ接続されている。共通電位ライン145−1、145−2は、第1面側電極110−1、110−2にそれぞれ接続されている。なお、図8において、駆動回路143の上に示された半導体発光モジュール1と駆動回路143の下に示された半導体発光モジュール1は、それぞれ、1つの半導体発光モジュール1の半導体発光素子100−1、100−2側(第1面側)と支持基板11側(第4面側)を表している。図8においては、2本の共通電位ライン145−1、145−2が、第1面側電極110−1、110−2にそれぞれ接続されている。ただし、2本の共通電位ラインを設ける代わりに、1本の共通電位ラインを設け、その1本の共通電位ラインが第1面側電極110−1、110−2の何れか一方に接続されるとともに、第1面側電極110−1、110−2が別の接続ラインで相互に接続されてもよい。
駆動ライン144−1,144−2は、用途に応じて、択一的に駆動されてもよいし、同時に駆動されてもよい。また、駆動回路143は、半導体発光モジュール1とは別体で構成されてもよいし、半導体発光モジュール1の支持基板11上に一体的に形成されてもよい。
以上のように構成された半導体発光モジュール1を備える発光装置140は、次のように制御される(本実施形態に係る制御方法)。すなわち、当該制御方法では、駆動対象として1またはそれ以上の半導体発光素子が選択されると、該選択された半導体発光素子それぞれに対して個別に設定された制御パターンに従って、駆動回路143により、選択された半導体発光素子それぞれの動作が個別に制御される。なお、制御パターンは、選択された半導体発光素子それぞれの、少なくとも駆動タイミングおよび駆動時間が時間軸に沿って規定された情報を含む。
具体的には、駆動回路143から駆動ライン144−1、144−2の何れかと共通電位ライン145−1、145−2の間に駆動電流が供給される。駆動電流が供給された駆動ラインに駆動電極を介して第2面側電極が接続された半導体発光素子では、活性層において電子と正孔の再結合が生じ、その半導体発光素子における活性層が発光する。その発光により得られた光は、第1クラッド層102−1、102−2と第2クラッド層106−1、106−2によって効率的に閉じ込められる。活性層103−1、103−2から出射された光は、対応する位相変調層の内部に入射し、位相変調層による二次元的なフィードバックによる閉じ込め効果によって所定のモードが形成される。活性層に十分な電子と正孔を注入することによって、位相変調層に入射した光は所定のモードで発振する。所定の発振モードを形成した光は、異屈折率領域の配置パターンに応じた位相変調を受け、位相変調を受けた光が、配置パターンに応じたビーム投射パターンを表現する光として第1面側電極側から外部(ビーム投射領域)に出射される。
(第1実施形態の第1構成)
本実施形態において、第1構成が採用された場合、目標ビーム投射領域が、何れの半導体発光素子100−1、100−2においても同じに設定される(半導体発光素子100−1、100−2それぞれにおけるビーム投射方向は異なる)。このような第1構成では、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、本実施形態によれば、(ア)スクリーンの同じ領域に2つのパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、(イ)STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用、(ウ)一箇所に同じパターンの光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用、(エ)一箇所に同じパターンのパルス光を連続的に照射することで対象物に目標パターンの穴を穿設するタイプのレーザ加工への応用が可能である。
第1構成における応用(ア)の例としては、図7(a)に示されたようなOFFという文字パターンと図7(b)に示されたようなONという文字パターンを、ユーザの指示または適宜のタイミングでスクリーンの同じ位置に切替表示するような応用がある。この際、半導体発光素子100−1、100−2の発光色は相互に異なる色にすることも可能である。そのため、例えばOFFは赤色で表示し、ONは青色で表示するようにすることも可能である。
第1構成における応用(イ)の例としては、例えば、半導体発光素子100−1の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の励起光に適した発光波長と投射パターンとし、半導体発光素子100−2の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の誘導放出光に適した発光波長と投射パターンとすることで、半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いることができる。半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いる場合には、検出点の走査をガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により行うことも可能である。
第1構成における応用(ウ)の例としては、半導体発光素子100−1における異屈折率領域104−1bの配置パターンと半導体発光素子100−2における異屈折率領域104−2bの配置パターンの両方を、同じビーム投射領域、同じビーム投射パターン(ビーム投射パターンは例えばビーム投射領域の全体あるいは一部にわたって均一な明るさを有するようなビーム投射パターンとする)が得られるように、予め設定しておく、そして、明るい照明が必要な場合には駆動電極11−1、11−2の両方から駆動電流を供給し、暗い照明で足りる場合には駆動電極11−1、11−2の何れか一方のみから駆動電流を供給する、といった応用がある。
第1構成における応用(エ)の例としては、半導体発光素子100−1における異屈折率領域104−1bの配置パターンと半導体発光素子100−2における異屈折率領域104−2bの配置パターンの両方を、同じビーム投射領域同じビーム投射パターン(ビーム投射領域は被加工物の穴を穿設したい位置に合わせ、ビーム投射パターンは穿設したい穴の形状のパターンとする)が得られるように予め設定しておく。そして、駆動電極11−1、11−2の双方から交互にパルス電流を供給する、といった応用がある。この場合、それぞれの素子のパルス間隔を長く出来るため、それぞれの素子からより高いピーク出力を得ることが可能となり、より大出力を得ることが可能となる。
(第1実施形態の第2構成)
本実施形態において、第2構成が採用された場合、半導体発光素子100−1の目標ビーム投射パターンが、半導体発光素子100−2の目標ビーム投射パターンとは異なるビーム投射パターンに設定される。このような第2構成では、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、次のような応用が可能になる。すなわち、本実施形態によれば、(ア)スクリーンの同じ領域または相互に異なる2つの領域に2つのパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、(イ)STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用が可能である。
第2構成における応用(ア)の例としては、図7(a)に示されたようなOFFという文字パターンと図7(b)に示されたようなONという文字パターンを、ユーザの指示または適宜のタイミングでスクリーンの同じ位置または相互に異なる2つの位置に切替表示するような応用がある。この際、半導体発光素子100−1、100−2の発光色は相互に異なる色にすることも可能である。そのため、例えばOFFは赤色で表示し、ONは青色で表示するようにすることも可能である。
第2構成における応用(イ)の例としては、例えば、半導体発光素子100−1の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の励起光に適した発光波長と投射パターンとし、半導体発光素子100−2の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の誘導放出光に適した発光波長と投射パターンとすることで、半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いることができる。半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いる場合には、検出点の走査をガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により行うことも可能である。
(第1実施形態の第3構成)
本実施形態において、第3構成が採用された場合、半導体発光素子100−1の発光波長と、半導体発光素子100−2の発光波長とが相互に異なる。このような第3構成では、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、次のような応用が可能になる。すなわち、本実施形態によれば、(ア)スクリーンの同じ領域または相互に異なる2つの領域に色の異なる2つのパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、(イ)STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用、(ウ)一箇所に同じパターンで色が異なる複数の光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用が可能になる。
第3構成における応用(a)の例としては、図7(a)に示されたようなOFFという文字パターンと図7(b)に示されたようなONという文字パターンを、ユーザの指示または適宜のタイミングでスクリーンの同じ位置または相互に異なる2つの位置に切替表示するような応用がある。この際、半導体発光素子100−1,100−2の発光色は相互に異なるので、例えばOFFは赤色で表示し、ONは青色で表示するようにすることが可能である。
第3構成における応用(イ)の例としては、例えば、半導体発光素子100−1の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の励起光に適した発光波長と投射パターンとし、半導体発光素子100−2の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の誘導放出光に適した発光波長と投射パターンとすることで、半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いることができる。半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いる場合には、検出点の走査をガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により行うことも可能である。
第3構成における応用(ウ)の例としては、半導体発光素子100−1における異屈折率領域104−1bの配置パターンと半導体発光素子100−2における異屈折率領域104−2bの配置パターンの両方を、同じビーム投射領域、同じビーム投射パターン(ビーム投射パターンは例えばビーム投射領域の全体あるいは一部にわたって均一な明るさを有するようなビーム投射パターンとする)が得られるように予め設定される。そして、半導体発光素子100−1の発光色と半導体発光素子100−2の発光色を相互に異なる色とし、駆動電極11−1、11−2の駆動の組合せにより、照明の色と照度を3段階に切替可能とする、といった応用がある。
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態において2つ(一対)とされていた半導体発光素子と駆動電極の数を3つ以上とし、それらを1次元に配置した実施形態であり、そのように変更した点以外は第1実施形態と同様である。
図9〜図11を参照して、第2実施形態に係る半導体発光モジュール2の構成を説明する。図9は、第2実施形態に係る半導体発光モジュール2を半導体発光素子の第1面側から見た図である。図10は、半導体発光モジュール2を支持基板の第4面側から見た図である。図11は、図9および図10のX−X線に沿っての断面図である。図9〜図11には5つの半導体発光素子と5つの駆動電極が直線上に並んでいる例が示されているが、半導体発光素子と駆動電極の数は5つ以外であってもよく、また、一次元の配置は曲線上であってもよい。
図9〜図11に示されたように、半導体発光モジュール2は、複数の半導体発光素子200−1〜200−5と、支持基板21と、を備える。半導体発光素子200−1〜200−5は、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子200−1〜200−5は、それぞれ、第1面200−1a〜200−5aと第2面200−1b〜200−5bとを有し、第1面200−1a〜200−5aから光を出力する。支持基板21は、第3面21aと第4面21bとを有するとともに第3面上に配置された複数の駆動電極21−1〜21−5を有する。また、支持基板21は、複数の半導体発光素子200−1〜200−5を載置可能である。半導体発光素子200−1〜200−5は、それぞれ、活性層203−1〜203−5と、活性層203−1〜203−5と光学的に結合される位相変調層204−1〜204−5と、第1クラッド層202−1〜202−5と、第2クラッド層206−1〜206−5と、第2面側電極208−1〜208−5と、第1面側電極210−1〜210−5と、をそれぞれ有する。なお、半導体発光素子200−1〜200−5における積層構造体は、少なくとも、活性層203−1〜203−5と位相変調層204−1〜204−5をそれぞれ含む。また、第2実施形態においても、半導体発光素子200−1〜200−5それぞれにおけるX−Y平面は、第1実施形態と同様に、第2クラッド層206−1〜206−5と相変調層204−1〜204−5の界面にそれぞれ設定される。また、X−Y平面と直交するZ軸は、半導体発光素子200−1〜200−5それぞれにおける積層方向に一致する。
半導体発光素子200−1〜200−5それぞれの第2面側電極208−1〜208−5は、対応する駆動電極21−1〜21−5に少なくとも何れかに接続される。位相変調層204−1〜204−5は、それぞれ、第1屈折率を有する基本領域204−1a〜204−5aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bとを含む。複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bは、それぞれの重心が基本領域204−1a〜204−5a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離rだけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域204−1a〜204−5a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極21−1〜21−5から駆動電流が供給されたときに第1面200−1a〜200−5aから出力される光で表現されるビーム投射パターンおよび該ビーム投射パターンの投射範囲であるビーム投射領域が、目標ビーム投射パターンおよび目標ビーム投射領域に一致するように設定されている。
この第2実施形態においても、半導体発光モジュール2は、第1〜第3構成のうち少なくとも何れかの構成を備える。すなわち、第1構成では、当該半導体発光モジュールに含まれる複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子(第1半導体発光素子)と、該第1半導体発光素子とは異なる少なくとも1つの別の半導体発光素子(第2半導体発光素子)との間において、それぞれの目標ビーム投射領域が実質的に一致している。すなわち、第1および第2半導体発光素子間において、ビーム投射方向が異なっている。第2構成では、第1半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと、第2半導体発光素子の目標ビーム投射パターンとが互いに異なるっている。第3構成では、第1半導体発光素子の発光波長と、第2半導体発光素子の発光波長とが互いに異なっている。
本実施形態において、第1構成の場合、目標ビーム投射領域は、何れの半導体発光素子200−1〜200−5においても同じである。この構成では、半導体発光素子200−1〜200−5の目標ビーム投射パターンは、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。また、半導体発光素子200−1〜200−5の発光波長は、全てが同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。第2構成の場合、半導体発光素子200−1〜200−5の目標ビーム投射パターンのうちの少なくとも1つは、他の少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンとは異なっている。この構成では、半導体発光素子200−1〜200−5の目標ビーム投射領域は、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。また、半導体発光素子200−1〜200−5の発光波長は、全てが同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。第3構成の場合、半導体発光素子200−1〜200−5のうち少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長は、他の少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長と異なる。この構成では、半導体発光素子200−1〜200−5の目標ビーム投射パターンと目標ビーム投射領域は、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。何れの構成においても、半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料および位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極210−1〜210−5は、図9および図11に示されたように、中央部に光を出射するための開口部210−1a〜210−5aを有している。第1面側電極210−1〜210−5は開口部を有する電極の代わりに、透明電極としてもよい。
活性層203−1〜203−5と位相変調層204−1〜204−5の上下関係は、図11に示された上下関係と逆であってもよい。また、図11には、基板層201−1〜201−5、上部光ガイド層205b−1〜205b−5、下部光ガイド層205a―1〜205a―5、コンタクト層207−1〜207−5、絶縁層209−1〜209−5、反射防止層211−1〜211−5も記載されているが、半導体発光素子200−1〜200−5は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容等に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図11に示された各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層201−1〜201−5はGaAsからなる。第1クラッド層202−1〜202−5はAlGaAsからなる。活性層203−1〜203−5は多重量子井戸構造MQWを有する。位相変調層204−1〜204−5は、基本領域204−1a〜204−5aと、基本領域204−1a〜204−5a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bから構成される。基本領域204−1a〜204−5aはがGaAsからなり、複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bはAlGaAsからなる。上部光ガイド層205b−1〜205b−5および下部光ガイド層205a―1〜205a―5は、AlGaAsからなる。第2クラッド層206−1〜206−5はAlGaAsからなる。コンタクト層207−1〜207−5はGaAsからなる。絶縁層209−1〜209−5はSiO2またはシリコン窒化物からなる。反射防止層211−1〜211−5は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜からなる。複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bは、アルゴン、窒素または空気等が封入された空孔であってもよい。
なお、当該半導体発光モジュール2が第1および第2構成の何れかを有する場合、活性層203−1〜203−5の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAsの構造を含むのが好ましい。また、当該半導体発光モジュール2が第3構成を有する場合、活性層203−1〜203−5の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs、障壁層:GaInAsP/井戸層:GaInAsP、障壁層:InGaN/井戸層:InGaN、障壁層:AlGaInP/井戸層:GaInP等の構造を含むのが好ましい。
一例では、基板層201−1〜201−5と第1クラッド層202−1〜202−5には、N型の不純物が添加されている。第2クラッド層206−1〜206−5とコンタクト層207−1〜207−5には、P型の不純物が添加されている。また、第1クラッド層202−1〜202−5と第2クラッド層206−1〜206−5のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層205b−1〜205b−5と下部光ガイド層205a―1〜205a―5のエネルギーバンドギャップよりも大きい。上部光ガイド層205b−1〜205b−5と下部光ガイド層205a―1〜205a―5のエネルギーバンドギャップは、活性層203−1〜203−5における多重量子井戸構造MQWのエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
ここで、図12および図13に、本実施形態および後述の第3実施形態において目標ビーム投射パターンと、それに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布の例を示す。図12(a)〜図12(c)は、それぞれ、駆動電極21−1、21−3、21−5から駆動電流が供給されたときに得られる目標ビーム投射パターンの一例を示している。図12(d)〜図12(f)は、それぞれ、図12(a)〜図12(c)の各ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布を示している。図13(a)〜図13(c)は、それぞれ、駆動電極21−1、21−3、21−5から駆動電流が供給されたときに得られる目標ビーム投射パターンの別の一例を示している。図13(d)〜図13(f)は、それぞれ、図13(a)〜図13(c)の各ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布を示している。図12(d)〜図12(f)および図13(d)〜図13(f)は、何れも704×704の要素で構成されており、色の濃淡によって0〜2πの角度の分布を表している。色が黒い部分が角度0を表している。
次に、図14を参照して、半導体発光モジュール2を備える発光装置について説明する。図14は半導体発光モジュール2を備える発光装置の構成を示すブロック図である。図14に示されたように、発光装置240は、半導体発光モジュール2と、電源回路241と、制御信号入力回路242と、駆動回路243と、を備える。電源回路241は、駆動回路243と半導体発光モジュール2に電源を供給する。制御信号入力回路242は、発光装置240の外部から供給される制御信号を駆動回路243へ伝達する。駆動回路243は、半導体発光モジュール2に駆動電流を供給する。駆動回路243と半導体発光モジュール2とは、駆動電流を供給する複数の駆動ライン244−1〜244−5と複数の共通電位ライン245−1〜245−5により接続されている。駆動ライン244−1〜244−5は、駆動電極21−1〜21−5にそれぞれ接続されている。共通電位ライン245−1〜245−5は、第1面側電極210−1〜210−5にそれぞれ接続されている。なお、図14において、駆動回路243の上に示された半導体発光モジュール2と駆動回路243の下に示された半導体発光モジュール2は、それぞれ、1つの半導体発光モジュール2の半導体発光素子200−1〜200−5側(第1面側)と支持基板21側(第4面側)を表している。図14においては、複数の共通電位ライン245−1〜245−5が、第1面側電極210−1〜210−5にそれぞれ接続されているが、複数の共通電位ラインを設ける代わりに1本の共通電位ラインを設けてもよい。その場合、その1本の共通電位ラインが第1面側電極210−1〜210−5の何れか一つに接続されるとともに、第1面側電極210−1〜210−5が別の接続ラインで相互に接続されるようにしてもよい。
駆動ライン244−1〜244−5は、用途に応じて、択一的に駆動されてもよいし、複数が同時に駆動されてもよい。また、駆動回路243は、半導体発光モジュール2とは別体で構成されてもよいし、半導体発光モジュール2の支持基板21上に一体的に形成されてもよい。
以上のように構成された半導体発光モジュール2を備える発光装置240は、次のように制御される(本実施形態に係る制御方法)。すなわち、当該制御方法では、駆動対象として1またはそれ以上の半導体発光素子が選択されると、該選択された半導体発光素子それぞれに対して個別に設定された制御パターンに従って、駆動回路243により、選択された半導体発光素子それぞれの動作が個別に制御される。なお、制御パターンは、選択された半導体発光素子それぞれの、少なくとも駆動タイミングおよび駆動時間が時間軸に沿って規定された情報を含む。
具体的には、駆動回路243から駆動ライン244−1〜244−5の何れかと共通電位ライン245−1〜245−5の間に駆動電流が供給される。駆動電流が供給された駆動ラインに駆動電極を介して第2面側電極が接続された半導体発光素子では、活性層において電子と正孔の再結合が生じ、その半導体発光素子における活性層が発光する。その発光により得られた光は、第1クラッド層202−1〜202−5と第2クラッド層206−1〜206−5によって効率的に閉じ込められる。活性層203−1〜203−5から出射された光は、対応する位相変調層の内部に入射し、位相変調層による二次元的なフィードバックによる閉じ込め効果によって所定のモードを形成する。活性層に十分な電子と正孔が注入されることによって、位相変調層に入射した光は所定のモードで発振する。所定の発振モードを形成した光は、異屈折率領域の配置パターンに応じた位相変調を受け、位相変調を受けた光が、配置パターンに応じたビーム投射パターンの光として第1面側電極側から外部(ビーム投射領域)に出射される。
(第2実施形態の第1構成)
本実施形態において、第1構成が採用された場合、目標ビーム投射領域が、何れの半導体発光素子200−1〜200−5においても同じに設定される。この場合、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、本実施形態によれば、(ア)スクリーンの同じ領域に3つ以上の複数のパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、(イ)STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用、(ウ)一箇所に同じパターンの光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用、(エ)一箇所に同じパターンのパルス光を連続的に照射することで対象物に目標パターンの穴を穿設するタイプのレーザ加工への応用が可能である。
第1構成における応用(ア)の例としては、図12(a)〜図12(c)に示されたような段階的に変化するインジケータ用の記号の切替表示、図13(a)〜図13(c)に示されたような複数種類の情報の切替表示、少しずつ異なるパターンを連続的に切替表示することで1つの領域にアニメーションを表示するような応用等がある。これらの表示は、通常のスクリーンへの表示としてもよいし、ヘッドアップディスプレイの透過型スクリーンへの表示としてもよい。各半導体発光素子200−1〜200−5の発光色を相互に異なる色とすることも可能である。
第1構成における応用(イ)の例としては、例えば、半導体発光モジュール2における半導体発光素子の数を複数対(偶数)とし、各対の半導体発光素子を、検出点が相互に少しずつ異なるSTED顕微鏡用の光源としてもよい。この場合、複数の検出点を同時に観測することができるので、STED顕微鏡による対象物全体の走査を高速化することができる。
第1構成における応用(ウ)の例としては、第1実施形態の第1構成における応用例(ウ)の例として説明された照明を、多段階に切替可能に変更したような応用がある。
第1構成における応用(エ)の例としては、第1実施形態の第1構成における応用(エ)の例として説明されたレーザ加工を、複数の駆動電極を順次パルス駆動するように変更したような応用がある。この場合、それぞれの素子のパルス間隔を長く出来るため、それぞれの素子からより高いピーク出力を得ることが可能となり、より大出力を得ることが可能となる。
(第2実施形態の第2構成)
本実施形態において、第2構成が採用された場合、少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンは、他の少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと異なるよう設定されている。そのため、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、本実施形態によれは、(ア)スクリーンの同じ領域または相互に異なる複数の領域に3つ以上の複数のパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、(イ)STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用が可能である。
第2構成における応用(ア)の例としては、図12(a)〜図12(c)に示されたような段階的に変化するインジケータ用の記号の切替表示、図13(a)〜図13(c)に示されたような複数種類の情報の切替表示、少しずつ異なるパターンを連続的に切替表示することで1つの領域にアニメーションを表示するような応用等がある。これらの表示は、通常のスクリーンへの表示としてもよいし、ヘッドアップディスプレイの透過型スクリーンへの表示としてもよい。各半導体発光素子200−1〜200−5の発光色を相互に異なる色とすることも可能である。
第2構成における応用(イ)の例としては、例えば、半導体発光モジュール2における半導体発光素子の数を複数対(偶数)とし、各対の半導体発光素子を、検出点が相互に少しずつ異なるSTED顕微鏡用の光源としてもよい。この場合、複数の検出点を同時に観測することができるので、STED顕微鏡による対象物全体の走査を高速化することができる。
(第2実施形態の第3構成)
本実施形態において、第3構成が採用された場合、少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長は、他の少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長と異なる。そのため、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、本実施形態によれば、(ア)スクリーンの同じ領域または相互に異なる複数の領域に色が相互に異なる3つ以上の複数のパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用、(イ)STED(Stimulated Emission Depletion)顕微鏡用の光源への応用、(ウ)一箇所に同じパターンで色が異なる複数の光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用が可能である。
第3構成における応用(ア)の例としては、図12(a)〜図12(c)に示されたような段階的に変化するインジケータ用の記号の切替表示、図13(a)〜図13(c)に示されたような複数種類の情報の切替表示、少しずつ異なるパターンを連続的に切替表示することで1つの領域にアニメーションを表示するような応用等がある。これらの表示は、通常のスクリーンへの表示としてもよいし、ヘッドアップディスプレイの透過型スクリーンへの表示としてもよい。各半導体発光素子200−1〜200−5の発光色は、複数の発光可能色の中から任意に選択可能である。
第3構成における応用(イ)の例としては、例えば、半導体発光モジュール2における半導体発光素子の数を複数対(偶数)とし、各対の半導体発光素子を、検出点が相互に少しずつ異なるSTED顕微鏡用の光源としてもよい。この場合、複数の検出点を同時に観測することができるので、STED顕微鏡による対象物全体の走査を高速化することができる。
第3構成における応用(ウ)の例としては、第1実施形態の第3構成における応用(ウ)として説明された照明を、多段階に切替可能に変更したような応用がある。
(第3実施形態)
第3実施形態は、第2実施形態における半導体発光素子の一次元配置が二次元配置に変更された実施形態であり、そのように変更した点以外は第2実施形態と同様である。
図15〜図17を参照して、第3実施形態に係る半導体発光モジュール3の構成を説明する。図15は、第3実施形態に係る半導体発光モジュール3を半導体発光素子の第1面側から見た図である。図16は、半導体発光モジュール3を支持基板の第4面側から見た図である。図17は、図15および図16のXVI−XVI線に沿っての断面図である。図15〜図17には15の半導体発光素子と駆動電極が3行5列に並んでいる例が示されているが、半導体発光素子と駆動電極の数は15以外であってもよく、また、二次元の配置は任意でよい。
図15〜図17に示されたように、半導体発光モジュール3は、複数の半導体発光素子300−1〜300−15と、支持基板31と、を備える。半導体発光素子300−1〜300−15それぞれは、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子300−1〜300−15は、それぞれ、第1面300−1a〜300−15aと第2面300−1b〜300−15bとを有し、第1面300−1a〜300−15aから光を出力する。支持基板31は、第3面31aと第4面31bとを有するとともに第3面上に配置された複数の駆動電極31−1〜31−15を有する。また、支持基板31は、複数の半導体発光素子300−1〜300−15を載置可能である。半導体発光素子300−1〜300−15は、それぞれ、活性層303−1〜303−15と、活性層303−1〜303−15と光学的に結合される位相変調層304−1〜304−15と、第1クラッド層302−1〜302−15と、第2クラッド層306−1〜306−15と、第2面側電極308−1〜308−15と、第1面側電極310−1〜310−15と、を有する。なお、半導体発光素子300−1〜300−5における積層構造体は、少なくとも、活性層303−1〜303−5と位相変調層304−1〜304−5をそれぞれ含む。また、この第3実施形態において、半導体発光素子300−1〜300−5それぞれにおけるX−Y平面は、第1実施形態と同様に、第2クラッド層306−1〜306−5と相変調層304−1〜304−5の界面にそれぞれ設定される。また、X−Y平面と直交するZ軸は、半導体発光素子300−1〜300−5それぞれにおける積層方向に一致する。
半導体発光素子300−1〜300−15それぞれの第2面側電極308−1〜308−15は、対応する駆動電極31−1〜31−15に接続される。位相変調層304−1〜304−15は、それぞれ、第1屈折率を有する基本領域304−1a〜304−15aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bとを含む。複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bは、それぞれの重心が基本領域304−1a〜304−15a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域304−1a〜304−15a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極31−1〜31−15から駆動電流が供給されたときに第1面300−1a〜300−15aから出力される光のビーム投射領域とビーム投射パターンが目標ビーム投射領域と目標ビーム投射パターンとなるように定められている。
この第3実施形態においても、半導体発光モジュール2は、第1〜第3構成のうち少なくとも何れかの構成を備える。すなわち、第1構成では、当該半導体発光モジュールに含まれる複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子(第1半導体発光素子)と、該第1半導体発光素子とは異なる少なくとも1つの別の半導体発光素子(第2半導体発光素子)との間において、それぞれの目標ビーム投射領域が実質的に一致している。すなわち、第1および第2半導体発光素子間において、ビーム投射方向が異なっている。第2構成では、第1半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと、第2半導体発光素子の目標ビーム投射パターンとが互いに異なっている。第3構成では、第1半導体発光素子の発光波長と、第2半導体発光素子の発光波長とが互いに異なっている。
本実施形態において、第1構成の場合、目標ビーム投射領域は、何れの半導体発光素子300−1〜300−15においても同じに設定される。この場合、半導体発光素子300−1〜300−15の目標ビーム投射パターンは、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。また、半導体発光素子300−1〜300−15の発光波長は、全てが同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。第2構成の場合、少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンは、他の少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと異なっている。この場合、半導体発光素子300−1〜300−15の目標ビーム投射パターンは、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。また、半導体発光素子300−1〜300−15の発光波長は、全てが同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。第3構成の場合、少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長は、他の少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長と異なっている。この場合、半導体発光素子300−1〜300−15の目標ビーム投射パターンと目標ビーム投射領域は、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。何れの構成においても、半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料および位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極310−1〜310−15は、図15および図17に示されたように、中央部に光を出射するための開口部310−1a〜310−15aを有している。第1面側電極310−1〜310−15は開口部を有する電極とする代わりに、透明電極としてもよい。
活性層303−1〜303−15と位相変調層304−1〜304−15の上下関係は、図17に示された上下関係と逆であってもよい。また、図17には、基板層301−1〜301−15、上部光ガイド層305b−1〜305b−15、下部光ガイド層305a―1〜305a―15、コンタクト層307−1〜307−15、絶縁層309−1〜309−15、反射防止層311−1〜311−15も記載されているが、半導体発光素子300−1〜300−15は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容等に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図17に示された各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層301−1〜301−15はGaAsからなる。第1クラッド層302−1〜302−15はAlGaAsからなる。活性層303−1〜303−15は多重量子井戸構造MQWを有する。位相変調層304−1〜304−15は、基本領域304−1a〜304−15aと、基本領域304−1a〜304−15a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bを含む。基本領域304−1a〜304−15aはGaAsからなり、複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bがAlGaAsからなる。上部光ガイド層305b−1〜305b−15と下部光ガイド層305a―1〜305a―15はAlGaAsからなる。第2クラッド層306−1〜306−15はAlGaAsからなる。コンタクト層307−1〜307−15はGaAsからなる。絶縁層309−1〜309−15はSiO2またはシリコン窒化物からなる。反射防止層311−1〜311−15は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜からなる。複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bは、アルゴン、窒素または空気等が封入された空孔であってもよい。
なお、当該半導体発光モジュール3が第1および第2構成の何れかを有する場合、活性層303−1〜303−15の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAsの構造を含むのが好ましい。また、当該半導体発光モジュール3が第3構成を有する場合、活性層303−1〜303−15の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs、障壁層:GaInAsP/井戸層:GaInAsP、障壁層:InGaN/井戸層:InGaN、障壁層:AlGaInP/井戸層:GaInP等の構造を含むのが好ましい。
一例では、基板層301−1〜301−15と第1クラッド層302−1〜302−15には、N型の不純物が添加されている。第2クラッド層306−1〜306−15とコンタクト層307−1〜307−15には、P型の不純物が添加されている。また、第1クラッド層302−1〜302−15と第2クラッド層306−1〜306−15のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層305b−1〜305b−15と下部光ガイド層305a―1〜305a―15のエネルギーバンドギャップよりも大きい・上部光ガイド層305b−1〜305b−15と下部光ガイド層305a―1〜305a―15のエネルギーバンドギャップは、活性層303−1〜303−15の多重量子井戸構造MQWのエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
次に、図18を参照して、半導体発光モジュール3を備える発光装置について説明する。図18は半導体発光モジュール3を備える発光装置の構成を示すブロック図である。図18に示されたように、発光装置340は、半導体発光モジュール3と、電源回路341と、制御信号入力回路342と、駆動回路343と、を備える。電源回路341は、駆動回路343と半導体発光モジュール3に電源を供給する。制御信号入力回路342は、発光装置340の外部から供給される制御信号を駆動回路343へ伝達する。駆動回路343は、半導体発光モジュール3に駆動電流を供給する。駆動回路343と半導体発光モジュール3とは、駆動電流を供給する複数の駆動ライン344−1〜344−15と1本の共通電位ライン345により接続されている。第1面側電極310−1〜310−15は接続ライン346で相互に接続されている。駆動ライン344−1〜344−15は、駆動電極31−1〜31−15にそれぞれ接続され、共通電位ライン345は、第1面側電極310−1〜310−15の何れか一つ(図18では310−15)に接続されている。なお、図18において、駆動回路343の上に示された半導体発光モジュール3と駆動回路343の下に示された半導体発光モジュール3は、それぞれ、1つの半導体発光モジュール3の半導体発光装置300−1〜300−15側(第1面側)と支持基板31側(第4面側)を表している。図18においては、第1面側電極310−1〜310−15が接続ライン346で相互に接続され、1本の共通電位ライン345が1つの第1面側電極310−15に接続されている。ただし、このように接続する代わりに、共通電位ラインを第1面側電極の数分設け、駆動回路343と各第1面側電極310−1〜310−15とを別々の共通電位ラインで接続するようにしてもよい。
駆動ライン344−1〜344−15は、用途に応じて、択一的に駆動されてもよいし、複数が同時に駆動されてもよい。また、駆動回路343は、半導体発光モジュール3とは別体で構成されてもよいし、半導体発光モジュール3の支持基板31上に一体的に形成されてもよい。
以上のように構成された半導体発光モジュール3を備える発光装置340は、次のように制御される(本実施形態の制御方法)。すなわち、当該制御方法では、駆動対象として1またはそれ以上の半導体発光素子が選択されると、該選択された半導体発光素子それぞれに対して個別に設定された制御パターンに従って、駆動回路343により、選択された半導体発光素子それぞれの動作が個別に制御される。なお、制御パターンは、選択された半導体発光素子それぞれの、少なくとも駆動タイミングおよび駆動時間が時間軸に沿って規定された情報を含む。
具体的に、駆動回路343から駆動ライン344−1〜344−15の何れかと共通電位ライン345の間に駆動電流が供給されると、駆動電流が供給された駆動ラインに駆動電極を介して第2面側電極が接続された半導体発光素子における活性層において電子と正孔の再結合が生じ、その半導体発光素子における活性層が発光する。その発光により得られた光は、第1クラッド層302−1〜302−15と第2クラッド層306−1〜306−15によって効率的に閉じ込められる。活性層303−1〜303−15から出射された光は、対応する位相変調層の内部に入射し、位相変調層による二次元的なフィードバックによる閉じ込め効果によって所定のモードを形成する。活性層に十分な電子と正孔を注入することによって、位相変調層に入射した光は所定のモードで発振する。所定の発振モードを形成した光は、異屈折率領域の配置パターンに応じた位相変調を受け、位相変調を受けた光が、配置パターンに応じたビーム投射領域とビーム投射パターンを有する光として第1面側電極側から外部に出射される。
(第3実施形態の第1構成)
本実施形態において、第1構成が採用された場合、目標ビーム投射領域が、何れの半導体発光素子300−1〜300−15においても同じに設定される。そのため、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。可能な応用は、第2実施形態の第1構成における応用(ア)〜(エ)と同様である。
(第3実施形態の第2構成)
本実施形態において、第2構成が採用された場合、少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンは、他の少なくとも1つの半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと異なっている。そのため、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。可能な応用は、第2実施形態の第2構成における応用(ア)および(イ)と同様である。
(第3実施形態の第3構成)
本実施形態において、第3構成が採用された場合、少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長は、他の少なくとも1つの半導体発光素子の発光波長と異なっている。そのため、特許文献1に記載された半導体発光素子の応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。可能な応用は、第2実施形態の第3構成における応用(ア)〜(ウ)と同様である。
(第4実施形態)
第4実施形態は、第1実施形態では基板層101−1、101−2側から取り出していた光出力を基板層101−1、101−2とは反対側から取り出すように変更した実施形態である。これによれば、光出力が基板層を通過しないため基板層による出力光の吸収をなくすことが出来、出力光の減衰や基板層の発熱を防止することが出来る。そのように変更した点以外は第1実施形態と同様である。
図19〜図21を参照して、第4実施形態に係る半導体発光モジュール1Bの構成を説明する。図19は、第4実施形態に係る半導体発光モジュール1Bを半導体発光素子の第1面側から見た図、図20は、半導体発光モジュール1Bを支持基板の第4面側から見た図である。図21は、図19および図20のXX−XX線に沿っての断面図である。
図19〜図21に示されたように、半導体発光モジュール1Bは、一対の半導体発光素子100B−1、100B−2と、支持基板11Bと、を備える。半導体発光素子100B−1,100B−2それぞれは、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子100B−1,100B−2は、それぞれ、第1面100B−1a、100B−2aと第2面100B−1b、100B−2bとを有し、第1面100B−1a、100B−2aから光を出力する。支持基板11Bは、第3面11Baと第4面11Bbとを有するとともに第3面上に配置された一対の駆動電極11B−1、11B−2を有する。また、支持基板11Bは、一対の半導体発光素子100B−1、100B−2を載置可能である。半導体発光素子100B−1、100B−2は、それぞれ、活性層103B−1、103B−2と、活性層103B−1、103B−2と光学的に結合される位相変調層104B−1、104B−2と、第1クラッド層102B−1、102B−2と、第2クラッド層106B−1、106B−2と、第2面側電極108B−1、108B−2と、第1面側電極110B−1、110B−2と、を有する。なお、半導体発光素子100B−1、100B−2における積層構造体は、少なくとも、活性層103B−1、103B−2と位相変調層104B−1、104B−2をそれぞれ含む。
半導体発光素子100B−1、100B−2それぞれの第2面側電極108B−1、108B−2は、対応する駆動電極11B−1、11B−2に接続される。位相変調層104B−1、104B−2は、それぞれ、第1屈折率を有する基本領域104B−1a、104B−2aと、第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域104B−1b、104B−2bとを含む。また、複数の異屈折率領域104B−1b、104B−2bは、それぞれの重心が基本領域104B−1a、104B−2a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域104B−1a、104B−2a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極11B−1、11B−2から駆動電流が供給されたときに第1面100B−1a、100B−2aから出力される光で表現されるビーム投射パターンと該ビーム投射パターンの投射範囲であるビーム投射領域が、目標ビーム投射パターンと目標ビーム投射領域に一致するよう設定されている。
この第4実施形態においても、半導体発光モジュール1Bは、第1〜第3構成のうち少なくとも何れかの構成を備える。すなわち、第1構成では、当該半導体発光モジュールに含まれる複数の半導体発光素子のうち少なくとも1つの半導体発光素子(第1半導体発光素子)と、該第1半導体発光素子とは異なる少なくとも1つの別の半導体発光素子(第2半導体発光素子)との間において、それぞれの目標ビーム投射領域が実質的に一致している。すなわち、第1および第2半導体発光素子間において、ビーム投射方向が異なっている。第2構成では、第1半導体発光素子の目標ビーム投射パターンと、第2半導体発光素子の目標ビーム投射パターンとが互いに異なるっている。第3構成では、第1半導体発光素子の発光波長と、第2半導体発光素子の発光波長とが互いに異なっている。
第1面側電極110B−1、110B−2は、図19および図21に示されたように、中央部に光を出射するための開口部110B−1a、110B−2aを有している。第1面側電極110B−1、110B−2は開口部を有する電極とする代わりに、透明電極としてもよい。
活性層103B−1、103B−2と位相変調層104B−1、104B−2の上下関係は、図21に示された上下関係と逆であってもよい。また、基板層101B−1、101B−2での光の吸収を低減する目的で基板層101B−1、101B−2と第1クラッド層102B−1、102B−2の間にDBR層120B−1、120B−2があっても良い。DBR層120B−1、120B−2は、位相変調層104B−1、140B−2と基板層101B−1、101B−2の間であればこれ以外の場所にあっても良い。また、図21には、基板層101B−1、101B−2、上部光ガイド層105Ba−1、105Ba−2、下部光ガイド層105Bb―1、105Bb―2、コンタクト層107B−1、107B−2、絶縁層109B−1、109B−2、反射防止層111B−1、111B−2も記載されているが、半導体発光素子100B−1、100B−2は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容等に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図21に示された各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層101B−1、101B−2はGaAsからなる。第1クラッド層102B−1、102B−2はAlGaAsからなる。活性層103B−1、103B−2は多重量子井戸構造MQWを有する。位相変調層104B−1、104B−2は、それぞれ、基本領域104B−1a、104B−2aと、基本領域104B−1a、104B−2a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域104B−1b、104B−2bを含む。基本領域104B−1a、104B−2aはGaAsからなる。複数の異屈折率領域104B−1b、104B−2bがAlGaAsからなる。上部光ガイド層105Ba−1、105Ba−2と下部光ガイド層105Bb―1、105Bb―2はAlGaAsからなる。第2クラッド層106B−1、106B−2はAlGaAsからなる。コンタクト層107B−1、107B−2はGaAsからなる。絶縁層109B−1、109B−2はSiO2またはシリコン窒化物からなる。反射防止層111B−1、111B−2は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜からなる。複数の異屈折率領域104B−1b、104B−2bは、アルゴン、窒素または空気等が封入された空孔であってもよい。
なお、当該半導体発光モジュール1Bが第1および第2構成の何れかを有する場合、活性層103B−1、103B−2の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAsの構造を含むのが好ましい。また、当該半導体発光モジュール3が第3構成を有する場合、活性層103B−1、103B−2の多重量子井戸構造MQWは、障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs、障壁層:GaInAsP/井戸層:GaInAsP、障壁層:InGaN/井戸層:InGaN、障壁層:AlGaInP/井戸層:GaInP等の構造を含むのが好ましい。
一例では、基板層101B−1、101B−2と第1クラッド層102B−1、102B−2には、N型の不純物が添加されている。第2クラッド層106B−1、106B−2とコンタクト層107B−1、107B−2には、P型の不純物が添加されている。また、第1クラッド層102B−1、102B−2と第2クラッド層106B−1、106B−2のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層105Ba−1、105Ba−2と下部光ガイド層105Bb―1、105Bb―2のエネルギーバンドギャップよりも大きい。上部光ガイド層105Ba−1、105Ba−2と下部光ガイド層105Bb―1、105Bb―2のエネルギーバンドギャップは、活性層103B−1、103B−2の多重量子井戸構造MQWのエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
(第4実施形態の第1構成)
第1構成の場合、目標ビーム投射領域は、何れの半導体発光素子100B−1、100B−2においても同じに設定されている。この構成では、半導体発光素子100B−1の目標ビーム投射パターンと半導体発光素子100B−2の目標ビーム投射パターンとは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、半導体発光素子100B−1の発光波長と半導体発光素子100B−2の発光波長は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1構成の場合、第1実施形態の場合と同様の応用が可能である。
(第4実施形態の第2構成)
第2構成の場合、半導体発光素子100B−1の目標ビーム投射パターンは、半導体発光素子100B−2の目標ビーム投射パターンと異なっている。この構成では、半導体発光素子100B−1の目標ビーム投射領域と半導体発光素子100B−2の目標ビーム投射領域とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。また、半導体発光素子100B−1の発光波長と半導体発光素子100B−2の発光波長は同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2構成の場合、第1実施形態の第2構成と同様の応用が可能である。
(第4実施形態の第3構成)
第3構成の場合、半導体発光素子100B−1の発光波長と、半導体発光素子100B−2の発光波長とは相互に異なっている。この構成では、半導体発光素子100B−1の目標ビーム投射領域および目標ビーム投射パターンは、半導体発光素子100B−2の目標ビーム投射領域および目標ビーム投射パターンと同じであってもよいし異なっていてもよい。何れの構成でも、半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料および位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。また、第3構成の場合、第1実施形態の第3構成と同様の応用が可能である。
以上、本発明の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明は、上述した第1〜第4実施形態に限定されるものではない。
例えば、図4、図5には異屈折率領域が円形(真円)の例が示されていたが、異屈折率領域は円形以外の形状であってもよい。例えば、複数の異屈折率領域の、X−Y平面上における形状が、真円、正方形、正六角形、正八角形、正16角形、長方形、および楕円の何れかの場合、すなわち、各異屈折率領域の形状が鏡像対称(線対称)となる場合、位相変調層において、仮想的な正方格子を構成する複数の単位構成領域Rそれぞれの格子点Oから、対応するそれぞれの異屈折率領域の重心G1へ向かう方向と、X軸に平行なs軸との成す角度φを高精度に設定することが可能になる。また、複数の異屈折率領域の、X−Y平面上における形状は、図22(a)〜図22(j)に示されたように、180°の回転対称性を備えない形状であってもよい。180°の回転対称性を備えない形状には、例えば、図22(b)に示された正三角形、図22(a)に示された直角二等辺三角形、図22(c)に示された二等辺三角形、2つの円または楕円の一部分が重なる、図22(i)に示された形状、図22(h)に示された卵型形状、図22(d)に示された涙型形状、図22(e)に示された矢印型形状、図22(f)に示された台形、図22(g)に示された5角形、2つの矩形の一部分が重なる、図22(j)に示された形状が含まれる。この場合、より高い光出力を得ることが可能になる。なお、卵型形状は、図22(h)に示されたように、その長軸に沿った一方の端部近傍の短軸方向の寸法が、他方の端部近傍の該短軸方向の寸法よりも小さくなるように楕円を変形することにより得られる形状である。涙型形状は、図22(d)に示されたように、その長軸に沿った楕円の一方の端部を、長軸方向に沿って突き出る尖った端部に変形することにより得られる形状である。矢印型形状は、図22(e)に示されたように、矩形の一辺が三角形の切欠き部を構成する一方、該一辺に対向する辺が三角形の突起部を構成した形状である。
第1〜第3実施形態は、何れも半導体発光素子それぞれの基板層側から光を出力するよう構成されていたが、第4実施形態のように基板層とは反対側から光を出力するよう構成されてもよい。第4実施形態においては、半導体発光素子の数が2つ(一対)であったが、第2および第3実施形態と同様に、それを3つ以上の半導体発光素子が、一次元または二次元に配置されてもよい。基板層とは反対側から光を出力させる構成では、出力光が基板層を通過しないため基板層による光吸収を回避することができ、出力光の減衰や基板層の発熱が防止され得る。
位相変調層には、図23に示された第1変形例(図4に示された位相変調層の変形例n04−m)のように、ビーム投射領域とビーム投射パターンを生成するための複数の異屈折率領域を含む内側領域Aと、該内側領域Aの外周を取り囲む外側領域Bが設けられてもよい。内側領域Aは、実質的には、それぞれ対応する異屈折率領域が配置された単位構成領域Rで構成された領域である。外側領域Bは、複数の周辺格子点異屈折率領域が設けられており、これら複数の周辺格子点異屈折率領域の重心は、一例として、仮想的な正方格子の外周に該仮想的な正方格子と同一の格子構造を設定することにより規定される拡張正方格子における格子点に一致していればよい。なお、図23は、位相変調層の変形例を層厚方向(Z軸方向)に沿って見た形態を示している。図23において、外側の輪郭(外側領域B)は、位相変調領域の一部を表している。外側領域Bで取り囲まれた内側領域Aは、第1〜第4実施形態と同様の、ビーム投射領域とビーム投射パターンを生成するための複数の異屈折率領域を含む位相変調領域(実質的に複数の単位構成領域Rで構成された領域)である。したがって、図23の例において、位相変調層の位相変調領域は、内側領域Aと外側領域Bにより構成されている。上述のように、外側領域Bは、仮想的な正方格子における格子点位置に重心を有する複数の周辺格子点異屈折率領域を含む領域であるが、以下にその一例を示す。すなわち、外側領域Bにおける仮想的な正方格子の格子定数は内側領域Aにおける仮想的な正方格子の格子定数と等しく、外側領域Bにおける各周辺格子点異屈折率領域の形状および大きさは、内側領域Aにおける異屈折率領域の形状および大きさと等しくてもよい。この変形例によれば、面内方向への光漏れが抑制され、発振閾値電流の低減が可能になる。
また、図4および図5には、基本領域中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に重心G1を有する異屈折率領域(以下、「変位異屈折率領域」という。)が、各単位構成領域内に1つずつ設けられる例が示されていた。しかしながら、変位異屈折率領域は、全体の重心が上記各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するように、複数個に分割して設けられてもよい。また、変位異屈折率領域に加えて、各格子点上に格子点異屈折率領域が設けられてもよい。格子点異屈折率領域は、変位異屈折率領域と同様に基本領域の屈折率(第1屈折率)とは異なる屈折率を有する領域であるが、変位異屈折率領域と同じ材料(同じ屈折率の材料)で構成されてもよいし、その一部が変位異屈折率領域の一部と重なっていてもよい。
ここで、図24〜図26を参照して、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域を設ける場合の例について説明する。図24は、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域を設ける場合の、変位異屈折率領域の重心と格子点異屈折率領域との位置関係を説明するための図である。図25は、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域が設けられる場合の、変位異屈折率領域と格子点異屈折率領域の組合せの例(回転方式)を示す図である。図26は、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域を設ける場合の変形例(回転方式)を示す図である。
これらの図において、Oは格子点、G1は変位屈折率領域の重心、G2は格子点異屈折率領域の重心をそれぞれ表している。図24に示されたように、変位異屈折率領域n04−mbの重心G1と格子点Oとの位置関係は図5と同じであるが、図24では、それに加えて格子点異屈折率領域n04−mcが設けられている。図24では、格子点異屈折率領域n04−mcの重心G2は格子点Oと重なっているが、図26に示されたように、その重心G2は必ずしも格子点Oの上になくても良い。図24では、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcは何れも円形で両者は相互に重なっていないが、両者の組合せはこれに限られない。
図25に示されたように、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcの組合せとしては種々の組合せが考えられる。図25(a)は図24の組合せである。図25(b)は変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に正方形の組合せである。図25(c)は、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に円形であるが、両者の一部どうしが重なっている組合せである。図25(d)は、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に正方形で、両者の一部同士が重なっている組合せである。図25(e)は、図25(d)の変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcを、それぞれの重心G1、G2(格子点O)を中心に任意に回転させ、両者が相互に重ならないようにした組合せである。図25(f)は、変位異屈折率領域n04−mbが三角形で、格子点異屈折率領域n04−mcが正方形の組合せである。図25(g)は、図25(f)の変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcを、それぞれの重心G1、G2(格子点O)を中心に任意に回転させ、両者が相互に重ならないようにした組合せである。図25(h)は、図25(a)の変位異屈折率領域n04−mbが二つの円形の領域に分割された組合せである。図25(i)は、変位異屈折率領域n04−mbが正方形と三角形に分割され、格子点異屈折率領域n04−mcが三角形とされた組合せである。図25(j)は、図25(i)の変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcを、それぞれの重心G1、G2(格子点O)を中心に任意に回転させた組合せである。図25(k)は、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に正方形で、変位異屈折率領域n04−mbは2つの正方形に分割されており、各正方形の辺の方向が同一方向を向いている組み合せである。変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域が設けられる場合には、その両者を合わせた異屈折率領域全体が180°の回転対称性を備えなくなるので、より高い光出力を得ることができる。
異屈折率領域(周辺格子点異屈折率領域、格子点異屈折率領域を含む)の形状が直線状の辺を有する形状とされる場合には、その辺の方向を、基板層を構成する結晶の特定の面方位に揃える事が望ましい。そうすれば、異屈折率領域をアルゴン、窒素または空気等が封入された空孔とする場合に、空孔の形状の制御が容易になり、空孔の上に成長させる結晶層の欠陥を抑制することができる。
なお、各格子点に対応して設けられる異屈折率領域(周辺格子点異屈折率領域、格子点異屈折率領域を含む)の形状や数は、1つの位相変調領域内で必ずしも同一である必要はない。図27(図4に示された位相変調層n04−mの第2変形例)に示されたように、格子点ごとに異屈折率領域の形状や数が異なっていてもよい。
次に、位相変調層n04−mにおける異屈折率領域n04−mbの配置パターンを軸上シフト方式により決定する場合について説明する。なお、位相変調層n04−mにおける異屈折率領域n04−mbの配置パターン決定方法として、上述の回転方式に替えて軸上シフト方式が適用された場合でも、得られた位相変調層は上述の種々の実施形態に係る当該半導体発光モジュールに適用される。
図28は、位相変調層n04−mにおける異屈折率領域n04−mbの配置パターン(軸上シフト方式)を説明するための模式図である。位相変調層n04−mは、第1屈折率の基本領域n04−maと、第1屈折率とは異なる第2屈折率からなる異屈折率領域n04−mbとを含む。ここで、位相変調層n04−mには、図4の例と同様に、X−Y平面上で規定される仮想的な正方格子が設定される。正方格子の一辺はX軸と平行であり、他辺はY軸と平行である。このとき、正方格子の格子点Oを中心とする正方形状の単位構成領域Rが、X軸に沿った複数列(x1〜x4)およびY軸に沿った複数行(y1〜y3)に亘って二次元状に設定される。それぞれの単位構成領域Rの座標をぞれぞれの単位構成領域Rの重心位置で与えられることとすると、この重心位置は仮想的な正方格子の格子点Oに一致する。複数の異屈折率領域n04−mbは、各単位構成領域R内に1つずつ設けられる。異屈折率領域n04−mbの平面形状は、例えば円形状である。格子点Oは、異屈折率領域n04−mbの外部に位置しても良いし、異屈折率領域n04−mbの内部に含まれていてもよい。
なお、1つの単位構成領域R内に占める異屈折率領域n04−mbの面積Sの比率は、フィリングファクタ(FF)と称される。正方格子の格子間隔をaとすると、異屈折率領域n04−mbのフィリングファクタFFはS/a2として与えられる。SはX−Y平面における異屈折率領域n04−mbの面積であり、異屈折率領域n04−mbの形状が例えば真円の場合、真円の直径Dを用いてS=π(D/2)2として与えられる。また、異屈折率領域n04−mbの形状が正方形の場合、正方形の一辺の長さLAを用いてS=LA2として与えられる。
図29は、軸シフト方式により決定される配置パターンの一例として、異屈折率領域n04−mbの重心G1と仮想的な正方格子における格子点O(x,y)との位置関係を説明するための図である。図29に示されたように、各異屈折率領域n04−mbの重心G1は、直線L上に配置されている。直線Lは、単位構成領域R(x,y)の対応する格子点O(x,y)を通り、正方格子の各辺に対して傾斜する直線である。言い換えると、直線Lは、各単位構成領域R(x,y)を規定するs軸およびt軸の双方に対して傾斜する直線である。s軸に対する直線Lの傾斜角はθである。傾斜角θは、位相変調層n04−m内において一定である。傾斜角θは、0°<θ<90°を満たし、一例ではθ=45°である。または、傾斜角θは、180°<θ<270°を満たし、一例ではθ=225°である。傾斜角θが0°<θ<90°または180°<θ<270°を満たす場合、直線Lは、s軸およびt軸によって規定される座標平面の第1象限から第3象限に亘って延びる。或いは、傾斜角θは、90°<θ<180°を満たし、一例ではθ=135°である。あるいは、傾斜角θは、270°<θ<360°を満たし、一例ではθ=315°である。傾斜角θが90°<θ<180°または270°<θ<360°を満たす場合、直線Lは、s軸およびt軸によって規定される座標平面の第2象限から第4象限にわたって延びる。このように、傾斜角θは、0°、90°、180°および270°を除く角度である。ここで、格子点O(x,y)と重心G1との距離をr(x,y)とする。xはX軸におけるx番目の格子点の位置、yはY軸におけるy番目の格子点の位置を示す。距離r(x,y)が正の値である場合、重心G1は第1象限(または第2象限)に位置する。距離r(x,y)が負の値である場合、重心G1は第3象限(または第4象限)に位置する。距離r(x,y)が0である場合、格子点Oと重心G1とは互いに一致する。
図28に示された、各異屈折率領域n04−mbの重心G1と、単位構成領域R(x,y)の対応する格子点O(x,y)との距離r(x,y)は、目標ビーム投射パターン(光像)に応じて各異屈折率領域n04−mbごとに個別に設定される。距離r(x,y)の分布は、x(図28の例ではx1〜x4)とy(図28の例ではy1〜y3)の値で決まる位置ごとに特定の値を有するが、必ずしも特定の関数で表わされるとは限らない。距離r(x,y)の分布は、目標ビーム投射パターンを逆フーリエ変換して得られる複素振幅分布のうち位相分布を抽出したものから決定される。すなわち、図29に示された、単位構成領域R(x,y)における位相P(x,y)がP0である場合には距離r(x,y)が0に設定され、位相P(x,y)がπ+P0である場合には距離r(x,y)が最大値R0に設定され、位相P(x,y)が−π+P0である場合には距離r(x,y)が最小値−R0に設定される。そして、その中間の位相P(x,y)に対しては、r(x,y)={P(x,y)−P0}×R0/πとなるように距離r(x,y)が設定される。ここで、初期位相P0は任意に設定することができる。正方格子の格子間隔をaとすると、r(x,y)の最大値R0は、例えば、以下の式(10)の範囲である。
なお、目標ビーム投射パターンから複素振幅分布を求める際には、ホログラム生成の計算時に一般的に用いられるGerchberg-Saxton(GS)法のような繰り返しアルゴリズムを適用することによって、ビーム投射パターンの再現性が向上する。
図30は、図28の位相変調層の第1変形例として、位相変調層の特定領域内にのみ屈折率略周期構造を適用した例を示す平面図である。図30に示された例では、図23に示された例と同様に、正方形の内側領域RINの内部に、目的となるビーム投射パターンを出射するための略周期構造(例:図28の構造)が形成されている。一方、内側領域RINを囲む外側領域ROUTには、正方格子の格子点位置に、重心位置が一致する真円形の異屈折率領域が配置されている。内側領域RINおよび外側領域ROUTにおいて、仮想的に設定される正方格子の格子間隔は互いに同一(=a)である。この構造の場合、外側領域ROUT内にも光が分布することにより、内側領域RINの周辺部において光強度が急激に変化することで生じる高周波ノイズ(いわゆる窓関数ノイズ)の発生を抑制することができる。また、面内方向への光漏れを抑制することができ、閾値電流の低減が期待できる。
なお、上述の種々の実施形態に係る半導体発光モジュールにおける複数の半導体発光素子それぞれから出力されるビーム投射パターンとして得られる光像と、位相変調層n04−mにおける位相分布P(x,y)との関係は、上述の回転方式の場合(図5)と同様である。したがって、正方格子を規定する上記第1の前提条件、上記式(1)〜式(3)で規定される上記第2の前提条件、上記式(4)および(5)で規定される上記第3の前提条件、および上記式(6)および式(7)で既定される上記第4の前提条件の下、位相変調層n04−mは、以下の条件を満たすよう構成される。すなわち、格子点O(x,y)から対応する異屈折率領域n04−mbの重心Gまでの距離r(x,y)が、
r(x,y)=C×(P(x,y)−P0)
C:比例定数で例えばR0/π
P0:任意の定数であって例えば0
なる関係を満たすように、該対応する異屈折率領域n04−mbが単位構成領域R(x,y)内に配置される。すなわち、距離r(x,y)は、単位構成領域R(x,y)における位相P(x,y)がP0である場合には0に設定され、位相P(x,y)がπ+P0である場合には最大値R0に設定され、位相P(x,y)が−π+P0である場合には最小値−R0に設定される。目標ビーム投射パターンを得たい場合、該目標ビーム投射パターンを逆フーリエ変換して、その複素振幅の位相P(x,y)に応じた距離r(x,y)の分布を、複数の異屈折率領域n04−mbに与えるとよい。位相P(x,y)と距離r(x,y)とは、互いに比例してもよい。
なお、レーザビームのフーリエ変換後の遠視野像は、単一若しくは複数のスポット形状、円環形状、直線形状、文字形状、二重円環形状、または、ラゲールガウスビーム形状などの各種の形状をとることができる。ビーム方向を制御することもできるので、上述の種々の実施形態に係る半導体発光モジュールにおける複数の半導体発光素子それぞれを一次元または二次元にアレイ化することによって、例えば高速走査を電気的に行うレーザ加工機を実現できる。なお、ビーム投射パターンは遠方界における角度情報で表わされるものであるので、目標ビーム投射パターンが二次元的な位置情報で表わされているビットマップ画像などの場合には、一旦角度情報に変換し、その後波数空間に変換した後に逆フーリエ変換を行うとよい。
逆フーリエ変換で得られた複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法として、例えば強度分布I(x,y)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布P(x,y)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
ここで、目標ビーム投射パターンの逆フーリエ変換結果から位相分布P(x,y)を求め、各異屈折率領域n04−mbの距離r(x,y)を決める際に、一般的な離散フーリエ変換(或いは高速フーリエ変換)を用いて計算する場合の留意点を述べる。なお、図31は、目標ビーム投射パターンの逆フーリエ変換結果から位相角分布(回転方式における回転角度分布に相当)を求め、異屈折率領域の配置を決める際の留意点を説明する図である。目標ビーム投射パターンである図31(a)の逆フーリエ変換で得られた複素振幅分布より計算されるビーム投射パターンは、図31(b)に示された状態になる。図31(a)と図31(b)のように、それぞれA1,A2,A3,およびA4といった4つの象限に分割すると、図31(b)のビーム投射パターンの第1象限には、図31(a)の第1象限の、180度回転したパターンと図31(a)の第3象限のパターンとが重畳した重畳パターンが現れる。図31(b)の第2象限には、図31(a)の第2象限の、180度回転したパターンと図31(a)の第4象限のパターンが重畳した重畳パターンが現れる。図31(b)の第3象限には、図31(a)の第3象限の、180度回転したパターンと図31(a)の第1象限のパターンが重畳した重畳パターンが現れる。図31(b)の第4象限には、図31(a)の第4象限の、180度回転したパターンと図31(a)の第2象限のパターンが重畳した重畳パターンが現れる。このとき、180度回転したパターンは−1次光成分によるパターンである。
したがって、逆フーリエ変換前の光像(元の光像)として第1象限のみに値を有するパターンを用いた場合には、得られるビーム投射パターンの第3象限に元の光像の第1象限が現れ、得られるビーム投射パターンの第1象限に元の光像の第1象限を180度回転したパターンが現れる。
なお、上述の構造において、活性層および位相変調層を含む構成であれば、材料系、膜厚、層の構成は様々に変更され得る。ここで、仮想的な正方格子からの摂動が0の場合のいわゆる正方格子フォトニック結晶レーザに関してはスケーリング則が成り立つ。すなわち、波長が定数α倍となった場合には、正方格子構造全体をα倍することによって同様の定在波状態を得ることが出来る。同様に、本実施形態においても、波長に応じたスケーリング則によって位相変調層n04−mの構造を決定することが可能である。したがって、青色、緑色、赤色などの光を発光する活性層12を用い、波長に応じたスケーリング則を適用することで、可視光を出力する半導体発光素子を実現することも可能である。
なお、格子間隔aの正方格子の場合、直交座標の単位ベクトルをx、yとすると、基本並進ベクトルa1=ax、a2=ayであり、並進ベクトルa1、a2に対する基本逆格子ベクトルb1=(2π/a)x、b2=(2π/a)yである。格子の中に存在する波の波数ベクトルがk=nb1+mb2(n、mは任意の整数)の場合に、波数kはΓ点に存在するが、なかでも波数ベクトルの大きさが基本逆格子ベクトルの大きさに等しい場合には、格子間隔aが波長λに等しい共振モード(X−Y平面内における定在波)が得られる。上述の種々の実施形態では、このような共振モード(定在波状態)における発振が得られる。このとき、正方格子と平行な面内に電界が存在するようなTEモードを考えると、このように格子間隔と波長が等しい定在波状態は正方格子の対称性から4つのモードが存在する。上述の種々の実施形態では、この4つの定在波状態のいずれのモードで発振した場合においても同様に所望のビーム投射パターンが得られる。
なお、上述の位相変調層n04−m内の定在波が孔形状によって散乱され、面垂直方向に得られる波面が位相変調されていることによって所望のビーム投射パターンが得られる。このため偏光板がなくとも所望のビーム投射パターンが得られる。このビーム投射パターンは、一対の単峰ビーム(スポット)であるばかりでなく、前述したように、文字形状、2以上の同一形状スポット群、或いは、位相、強度分布が空間的に不均一であるベクトルビームなどとすることも可能である。
なお、一例として、基本領域n04−maの屈折率は3.0〜3.5、異屈折率領域n04−mbの屈折率は1.0〜3.4であることが好ましい。また、基本領域n04−maの孔内の各異屈折率領域n04−mbの平均半径は、940nm帯の場合、例えば20nm〜120nmである。各異屈折率領域n04−mbの大きさが変化することによってZ軸方向への回折強度が変化する。この回折効率は、異屈折率領域n04−mbの形状をフーリエ変換した際の一次の係数で表される光結合係数κ1に比例する。光結合係数については、例えば、上記非特許文献2に記載されている。
以上のように軸上シフト方式に異屈折率領域n04−mbの配置パターンが決定された位相変調層n04−mを備えた半導体発光素子によって得られる効果について説明する。従来、半導体発光素子としては、各異屈折率領域n04−mbの重心G1が、仮想的な正方格子の対応する格子点Oから離れて配置されるとともに、各格子点O周りに光像に応じた回転角度を有するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。しかしながら、各異屈折率領域n04−mbの重心G1と各格子点Oとの位置関係が従来とは異なる新しい発光装置を実現できれば、位相変調層n04−mの設計の幅が拡がり、極めて有用である。
活性層に光学的に結合した位相変調層n04−mが、基本領域n04−maと、基本領域n04−maとは屈折率が異なる複数の異屈折率領域n04−mbとを有し、それぞれs軸およびt軸の直交座標系で規定される単位構成領域Rにおいて、仮想的な正方格子の格子点Oを通り該s軸および該t軸の双方に対して傾斜する直線L上に、各異屈折率領域n04−mbの重心G1が配置されている。そして、各異屈折率領域n04−mbの重心G1と、対応する格子点Oとの距離r(x,y)は、目標ビーム投射パターンに応じて個別に設定されている。このような場合、格子点Oと重心G1との距離に応じて、ビームの位相が変化する。すなわち、重心G1の位置を変更するのみで、各異屈折率領域n04−mbから出射されるビームの位相を制御することができ、全体として形成されるビーム投射パターンを所望の形状(目標ビーム投射パターン)とすることができる。すなわち、上述の半導体発光素子それぞれはS−iPMレーザであり、このような構造によれば、各異屈折率領域n04−mbの重心G1が各格子点O周りに目標ビーム投射パターンに応じた回転角度を有する従来の構造と同様に、怒りが出力される第1面に垂直な方向に対して傾斜した方向に任意形状のビーム投射パターンを出力することができる。このように、軸上シフト方式では、各異屈折率領域n04−mbの重心G1と各格子点Oとの位置関係が従来とは全く異なる半導体発光素子および半導体発光モジュールを提供することができる。
ここで、図32(a)は、半導体発光素子から出力されるビーム投射パターン(光像)の例を示す図である。図32(a)の中心は、半導体発光素子の発光面と交差し発光面に垂直な軸線に対応する。また、図32(b)は、半導体発光素子の発光面と交差し発光面に垂直な軸線を含む断面における光強度分布を示すグラフである。図32(b)は、FFP光学系(浜松ホトニクス製A3267−12)、カメラ(浜松ホトニクス製ORCA−05G)、ビームプロファイラ(浜松ホトニクス製Lepas−12)を用いて取得した遠視野像で、1344ドット×1024ドットの画像データの縦方向のカウントを積算し、プロットしたものである。なお、図32(a)の最大カウント数を255で規格化しており、また、±1次光の強度比を明示するために、中央の0次光B0を飽和させている。図32(b)から、1次光および−1次光の強度差が容易に理解される。また、図33(a)は、図32(a)に示されたビーム投射パターンに対応する位相分布を示す図である。図33(b)は、図33(a)の部分拡大図である。図33(a)および図33(b)においては、位相変調層n04−m内の各箇所における位相が濃淡によって示されており、暗部ほど位相角0°に、明部ほど位相角360°に近づく。ただし、位相角の中心値は任意に設定することができるので、必ずしも位相角を0°〜360°の範囲内に設定しなくてもよい。図32(a)および図32(b)に示されたように、半導体発光素子は、該軸線に対して傾斜した第1方向に出力される第1光像部分B1を含む1次光と、該軸線に関して第1方向と対称である第2方向に出力され、該軸線に関して第1光像部分B1と回転対称である第2光像部分B2を含む−1次光とを出力する。典型的には、第1光像部分B1はX−Y平面内の第1象限に現れ、第2光像部分B2はX−Y平面内の第3象限に現れる。しかしながら、用途によっては、1次光のみを用い、−1次光を用いない場合がある。そのような場合、−1次光の光量が1次光と比較して小さく抑えられることが望ましい。
図34は、各方向の進行波のビーム投射パターンの例を概念的に示す図である。この例では、単位構成領域Rにおいて、s軸およびt軸に対する直線Lの傾斜角を45°としている。正方格子型のS−iPMレーザの位相変調層では、X−Y平面に沿った基本的な進行波AU,AD,AR,およびALが生じる。進行波AUおよびADは、正方格子の各辺のうちY軸方向に延びる辺に沿って進む光である。進行波AUはY軸正方向に進み、進行波ADはY軸負方向に進む。また、進行波ARおよびALは、正方格子の各辺のうちX軸方向に延びる辺に沿って進む光である。進行波ARはX軸正方向に進み、進行波ALはX軸負方向に進む。この場合、互いに逆向きに進む進行波からは、それぞれ逆向きのビーム投射パターンが得られる。例えば、進行波AUからは第2光像部分B2のみを含むビーム投射パターンBUが得られ、進行波ADからは第1光像部分B1のみを含むビーム投射パターンBDが得られる。同様に、進行波ARからは第2光像部分B2のみを含むビーム投射パターンBRが得られ、進行波ALからは第1光像部分B1のみを含むビーム投射パターンBLが得られる。言い換えると、互いに逆向きに進む進行波同士では、一方が1次光となり他方が−1次光となる。半導体発光素子から出力されるビーム投射パターンは、これらのビーム投射パターンBU,BD,BR,およびBLが重なり合ったものである。
本発明者らの検討によれば、異屈折率領域を格子点の周りで回転させる従来の半導体発光素子においては、異屈折率領域の配置の性質上、互いに逆向きに進む進行波の双方が必ず含まれる。すなわち、従来の方式では、定在波を形成する4つの進行波AU,AD,AR,およびALのいずれにおいても、1次光と−1次光とが同量現れ、更に回転円の半径(異屈折率領域の重心と格子点との距離)によっては0次光が生じてしまう。そのため、1次光および−1次光の各光量に差を与えることは原理的に困難で、これらのうち一方を選択的に低減することは難しい。従って、1次光の光量に対して−1次光の光量を相対的に低下させることは困難である。
ここで、図35は、上述の異屈折率領域n04−mbの配置パターンの決定方法として、異屈折率領域を格子点の周りで回転させる回転方式と、進行波AU,AD,AR,ALを示す図である。異屈折率領域n04−mbを格子点Oの周りで回転させる回転方式において、1次光および−1次光のいずれかを選択的に低減することが難しい理由を説明する。或る位置における設計位相φ(x,y)(回転方式における図5の回転角に相当)に対して、4つの進行波の1例として図35(b)に示されるt軸の正の向きの進行波AUを考える。このとき、幾何学的な関係から、進行波AUに対しては、格子点Oからのずれがr・sinφ(x,y)となるので、位相差は(2π/a)r・sinφ(x,y)なる関係となる。この結果、進行波AUに関する位相分布Φ(x,y)(上述の位相分布P(x,y)に相当)は、異屈折率領域n04−mbの大きさの影響が小さいためその影響を無視できる場合には、Φ(x,y)=exp{j(2π/a)r・sinφ(x,y)}で与えられる。この位相分布Φ(x,y)の0次光および±1次光への寄与は、exp{jnΦ(x,y)}(n:整数)で展開した場合の、n=0およびn=±1の成分で与えられる。ところで、次数nの第1種ベッセル関数Jn(z)に関する以下の式(11)で規定される数学公式を用いると、位相分布Φ(x,y)を級数展開することができ、0次光および±1次光の各光量を説明することができる。
このとき、位相分布Φ(x,y)の0次光成分はJ0(2πr/a)、1次光成分はJ1(2πr/a)、−1次光成分はJ-1(2πr/a)と表される。ところで、±1次のベッセル関数に関しては、J1(x)=−J-1(x)の関係があるため、±1次光成分の大きさは等しくなる。ここでは、4つの進行波の1例としてY軸正方向の進行波AUについて考えたが、他の3波(進行波AD,AR,AL)についても同様の関係が成立し、±1次光成分の大きさが等しくなる。以上の議論から、異屈折率領域n04−mbを格子点Oの周りで回転させる従来の方式では、±1次光成分の光量に差を与えることが原理的に困難となる。
これに対し、軸上シフト方式により異屈折率領域n04−mbの配置パターンが決定された位相変調層n04−mによれば、単一の進行波に対しては、1次光および−1次光の各光量に差が生じ、例えば傾斜角θが45°、135°、225°または315°である場合には、シフト量R0が上述した数式(9)の上限値に近づくほど、理想的な位相分布が得られる。この結果、0次光が低減され、進行波AU,AD,AR,およびALのそれぞれにおいては、1次光および−1次光の一方が選択的に低減される。そのため、互いに逆向きに進む進行波のいずれか一方を選択的に低減することで、1次光および−1次光の光量に差を与えることが原理的に可能である。
図36は、異屈折率領域n04−mbの配置パターンの決定方法として、格子点を通り正方格子に対して傾斜した軸線上で異屈折率領域を移動させる軸上シフト方式と、進行波AU,AD,AR,ALを示す図である。格子点Oを通る、単位構成領域Rを規定するs軸およびt軸の双方に対して傾斜した直線L上を異屈折率領域n04−mbの重心G1が移動する、図36(a)に示された、軸上シフト方式において、1次光および−1次光のいずれかを選択的に低減することが可能である理由を説明する。単位構成領域R(x,y)における設計位相φ(x,y)に対して、4つの進行波の1例として図36(b)に示されるy軸の正の向きの進行波AUを考える。このとき、幾何学的な関係から、進行波AUに対しては、格子点Oからのずれがr・sinθ・{φ(x,y)−φ0}/πとなるため、位相差は(2π/a)r・sinθ・{φ(x,y)−φ0}/πなる関係となる。ここでは簡単のため傾斜角θ=45°、位相角φ0=0°とする。このとき、進行波AUに関する位相分布Φ(x,y)は、異屈折率領域n04−mbの大きさの影響が小さいためその影響を無視できる場合には、以下の式(12)で与えられる。
この位相分布Φ(x,y)の0次光および±1次光への寄与は、exp{nΦ(x,y)}(n:整数)で展開した場合の、n=0およびn=±1の成分で与えられる。ところで、下記の式(13)によって表される関数f(z)をLaurent級数展開すると、以下の式(14)で規定される数学公式が成り立つ。
ここで、sinc(x)=x/sin(x)である。上記式(14)で規定される数学公式を用いると、位相分布Φ(x,y)を級数展開することができ、0次光および±1次光の各光量を説明することができる。このとき、上記式(14)の指数項exp{jπ(c−n)}の絶対値が1である点に注意すると、位相分布Φ(x,y)の0次光成分の大きさは、以下の式(15)で表される。
また、位相分布Φ(x,y)の1次光成分の大きさは、以下の式(16)で表される。
位相分布Φ(x,y)の−1次光成分の大きさは、以下の式(17)で表される。
そして、上記式(15)〜(17)においては、以下の式(18)で規定される条件を満たす場合を除いて、1次光成分以外に0次光および−1次光成分が現れる。しかしながら、±1次光成分の大きさは互いに等しくならない。
以上の説明では、4つの進行波の1例としてY軸正方向の進行波AUについて考えたが、他の3波(進行波AD,AR,AL)についても同様の関係が成立し、±1次光成分の大きさに差が生じる。以上の議論から、格子点Oを通り正方格子から傾斜した直線L上を異屈折率領域n04−mbが移動する軸上シフト方式によれば、±1次光成分の光量に差を与えることが原理的に可能となる。したがって、−1次光または1次光を低減して所望の光像(第1光像部分B1または第2光像部分B2)のみを選択的に取り出すことが原理的に可能になる。上述の図32(b)においても、1次光と−1次光との間に強度の差が生じていることが解る。
また、軸上シフト方式では、単位構成領域Rにおける直線Lの傾斜角θ(s軸と直線Lとのなす角度)は位相変調層n04−m内において一定であってもよい。これにより、異屈折率領域n04−mbの重心G1の配置の設計を容易に行うことができる。また、この場合、傾斜角は45°、135°、225°または315°であってもよい。これにより、正方格子に沿って進む4つの基本波(正方格子に沿ったX軸およびY軸を設定した場合、X軸正方向に進む光、X軸負方向に進む光、Y軸正方向に進む光、およびY軸負方向に進む光)が、光像に均等に寄与することができる。さらに、傾斜角θが45°、135°、225°または315°である場合、適切なバンド端モードを選択することによって、直線L上における電磁界の方向が一方向に揃うため、直線偏光を得ることができる。このようなモードの一例として上記非特許文献3のFig.3に示されているモードA、Bがある。なお、傾斜角θが0°、90°、180°または270°である場合には、4つの進行波AU,AD,AR,およびALのうち、Y軸方向またはX軸方向に進む一対の進行波が1次光(信号光)に寄与しなくなるので、信号光を高効率化することは難しい。
なお、活性層と位相変調層n04−mとの位置関係は、上述の回転方式と同様に、Z軸方向に沿って逆になっても、容易に光結合させることができる。
図37および図38は、異屈折率領域の平面形状の種々の例(軸上シフト方式)を示す図である。上述の例では、X−Y平面上における異屈折率領域n04−mbの形状が円形である。しかしながら、異屈折率領域n04−mbは円形以外の形状を有してもよい。例えば、異屈折率領域n04−mbの形状は、鏡像対称性(線対称性)を有してもよい。ここで、鏡像対称性(線対称性)とは、X−Y平面に沿った或る直線を挟んで、該直線の一方側に位置する異屈折率領域n04−mbの平面形状と、該直線の他方側に位置する異屈折率領域n04−mbの平面形状とが、互いに鏡像対称(線対称)となり得ることをいう。鏡像対称性(線対称性)を有する形状としては、例えば図37(a)に示された真円、図37(b)に示された正方形、図37(c)に示された正六角形、図37(d)に示された正八角形、図37(e)に示された正16角形、図37(f)に示された長方形、および図37(g)に示された楕円、などが挙げられる。このように、X−Y平面上における異屈折率領域n04−mbの形状が鏡像対称性(線対称性)を有する場合、位相変調層n04−mの仮想的な正方格子の単位構成領域Rそれぞれにおいて、シンプルな形状であるため、格子点Oから対応する異屈折率領域n04−mbの重心G1の方向と位置を高精度に定めることができる。すなわち、高い精度でのパターニングが可能となる。
また、X―Y平面上における異屈折率領域n04−mbの形状は、180°の回転対称性を有さない形状であってもよい。このような形状としては、例えば図38(a)に示された正三角形、図38(b)に示された直角二等辺三角形、図38(c)に示された2つの円または楕円の一部分が重なる形状、図38(d)に示された卵型形状、図38(e)に示された涙型形状、図38(f)に示された二等辺三角形、図38(g)に示された矢印型形状、図38(h)に示された台形、図38(i)に示された5角形、図38(j)に示された2つの矩形の一部分同士が重なる形状、および図38(k)に示された2つの矩形の一部分同士が重なり且つ鏡像対称性を有さない形状、等が挙げられる。なお、卵型形状は、楕円の長軸に沿った一方の端部近傍の短軸方向の寸法が他方の端部近傍の短軸方向の寸法よりも小さくなるように変形した形状である。涙型形状は、楕円の長軸に沿った一方の端部を長軸方向に沿って突き出る尖った端部に変形した形状である。矢印型形状は、矩形の一辺が三角形状に凹みその対向する一辺が三角形状に尖った形状である。このように、X―Y平面上における異屈折率領域n04−mbの形状が180°の回転対称性を有さないことにより、より高い光出力を得ることができる。なお、異屈折率領域n04−mbは、図38(j)および図38(k)に示されたように、複数要素で構成されてもよく、この場合、異屈折率領域n04−mの重心G1は、複数の構成要素の合成重心である。
図39は、異屈折率領域の平面形状の更に他の例(軸上シフト方式)を示す図である。また、図40は、図28の位相変調層の第2変形例を示す図である。
これら図39および図40に示された例では、各異屈折率領域n04−mbが複数の構成要素15b、15cで構成される。重心G1は全ての構成要素の合成重心であり、直線L上に位置する。構成要素15b、15cの双方は、基本領域n04−maの第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する。構成要素15b、15cの双方は、空孔であってもよく、空孔に化合物半導体が埋め込まれて構成されてもよい。単位構成領域Rそれぞれにおいて、構成要素15cは、構成要素15bにそれぞれ一対一で対応して設けられる。そして、構成要素15b、15cを合わせた重心G1は、仮想的な正方格子を構成する単位構成領域Rの格子点Oを横切る直線L上に位置している。なお、何れの構成要素15b、15cも仮想的な正方格子を構成する単位構成領域Rの範囲内に含まれる。単位構成領域Rは、仮想的な正方格子の格子点間を2等分する直線で囲まれる領域となる。
構成要素15cの平面形状は例えば円形であるが、図37および図38に示された種々の例のように、様々な形状を有し得る。図39(a)〜図39(k)には、X−Y平面上における構成要素15b、15cの形状および相対関係の例が示されている。図39(a)および図39(b)は、構成要素15b、15cの双方が同じ形状の図形を有する形態を示す。図39(c)および図39(d)は、構成要素15b、15cの双方が同じ形状の図形を有し、互いの一部分同士が重なる形態を示す。図39(e)は、構成要素15b、15cの双方が同じ形状の図形を有し、格子点ごとに構成要素15b、15cの重心間の距離が任意に設定された形態を示す。図39(f)は、構成要素15b、15cが互いに異なる形状の図形を有する形態を示す。図39(g)は、構成要素15b、15cが互いに異なる形状の図形を有し、格子点ごとに構成要素15b、15cの重心間の距離が任意に設定された形態を示す。
また、図39(h)〜図39(k)に示されたように、異屈折率用域n04−mbの一部を構成する構成要素15bは、互いに離間した2つの領域15b1、15b2により構成されてもよい。そして、領域15b1、15b2を合わせた重心(単一の構成要素15bの重心に相当)と、構成要素15cの重心との距離が格子点ごとに任意に設定されてもよい。また、この場合、図39(h)に示されたように、領域15b1、15b2および構成要素15cは、互いに同じ形状の図形を有してもよい。または、図39(i)に示されたように、領域15b1、15b2および構成要素15cのうち2つの図形が他と異なっていてもよい。また、図39(j)に示されたように、領域15b1、15b2を結ぶ直線のs軸に対する角度に加えて、構成要素15cのs軸に対する角度が各格子点ごとに任意に設定されてもよい。また、図39(k)に示されたように、領域15b1、15b2および構成要素15cが互いに同じ相対角度を維持したまま、領域15b1、15b2を結ぶ直線のs軸に対する角度が格子点ごとに任意に設定されてもよい。
なお、異屈折率領域n04−mbの平面形状は、単位構成領域R間で互いに同一であってもよい。すなわち、異屈折率領域n04−mbが全ての単位構成領域Rにおいて同一図形を有しており、並進操作、または並進操作および回転操作により、格子点間で互いに重ね合わせることが可能であってもよい。その場合、ビーム投射パターン内におけるノイズ光およびノイズとなる0次光の発生を抑制できる。または、異屈折率領域n04−mbの平面形状は、単位構成領域R間で必ずしも同一でなくともよく、例えば図40に示されたように、隣り合う単位構成領域R間で形状が互いに異なっていてもよい。なお、図36(a)および図36(b)の例に示されたように、図37〜図40の何れの場合も各格子点Oを通る直線Lの中心は格子点Oに一致するように設定されるのが好ましい。
上述のように、軸上シフト方式により異屈折率領域の配置パターンが決定された位相変調層の構成であっても、回転方式により異屈折率領域の配置パターンが決定された位相変調層が適用された実施形態と同様の効果を好適に奏することができる。