以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する部分を省略する。
[第1実施形態]
図1〜図3を参照して、第1実施形態に係る半導体発光装置が備える支持基板と半導体発光素子からなる部分(以下、「半導体発光モジュール1」という。)の構成を説明する。図1は、半導体発光モジュール1を半導体発光素子の第1面側から見た図、図2は、半導体発光モジュール1を支持基板の第4面側から見た図、図3は、図1、図2のIII−III線に沿っての断面図である。
図1〜図3に示されるように、半導体発光モジュール1は、1対の半導体発光素子100−1,100−2と、支持基板11と、を備える。各半導体発光素子100−1,100−2は、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子100−1,100−2のそれぞれは、第1面100−1a,100−2aと第2面100−1b,100−2bとを有し、第1面100−1a,100−2aから光を出力する。支持基板11は、第3面11aと第4面11bとを有するとともに第3面上に配置された1対の駆動電極11−1,11−2を有し、1対の半導体発光素子100−1,100−2を載置可能である。半導体発光素子100−1,100−2のそれぞれは、活性層103−1,103−2と、活性層103−1,103−2と光学的に結合される位相変調層104−1,104−2と、第1のクラッド層102−1,102−2と、第2のクラッド層106−1,106−2と、第2面側電極108−1,108−2と、第1面側電極110−1,110−2と、を有する。半導体発光素子100−1,100−2のそれぞれの第2面側電極108−1,108−2は、対応する駆動電極11−1,11−2に接続される。位相変調層104−1,104−2のそれぞれは、第1屈折率を有する基本領域104−1a,104−2aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域104−1b,104−2bとを含み、複数の異屈折率領域104−1b,104−2bは、それぞれの重心が基本領域104−1a,104−2a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域104−1a,104−2a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極11−1,11−2から駆動電流が供給されたときに第1面100−1a,100−2aから出力される光のビーム投射領域とビーム投射パターンが目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンとなるように定められている。
なお、本明細書でいう「ビーム投射領域」は1つの駆動電極から駆動電流が供給されたときに半導体発光モジュールから出力される光の投射範囲を指し、「ビーム投射パターン」は、上記投射範囲内における光の投射パターン(光の強弱のパターン)を指す。
半導体発光素子100−1における目標とするビーム投射領域及び目標とするビーム投射パターンは、半導体発光素子100−2における目標とするビーム投射パターン領域及び目標とするビーム投射パターンと同じであってもよいし異なっていてもよい。
半導体発光素子100−1の発光波長と半導体発光素子100−2の発光波長は同じであってもよいし、異なっていてもよい。半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料及び位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極110−1,110−2は、図1、3に示されるように、中央部に光を出射するための開口部110−1a,110−2aを有している。第1面側電極110−1,110−2は開口部を有する電極とする代わりに、透明電極としてもよい。
活性層103−1,103−2と位相変調層104−1,104−2の上下関係は、図3に示される上下関係と逆であってもよい。また、図3には、基板層101−1,101−2、上部光ガイド層105b−1,105b−2、下部光ガイド層105a―1,105a―2、コンタクト層107−1,107−2、絶縁層109−1,109−2、反射防止層111−1,111−2も記載されているが、半導体発光素子100−1,100−2は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図3に示される各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層101−1,101−2はGaAs、第1のクラッド層102−1,102−2はAlGaAs、活性層103−1,103−2は多重量子井戸構造MQW(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)、位相変調層104−1,104−2は基本領域104−1a,104−2aがGaAs、基本領域104−1a,104−2a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域104−1b,104−2bがAlGaAs、上部光ガイド層105b−1,105b−2及び下部光ガイド層105a―1,105a―2はAlGaAs、第2のクラッド層106−1,106−2はAlGaAs、コンタクト層107−1,107−2はGaAs、絶縁層109−1,109−2はSiO2又はシリコン窒化物、反射防止層111−1,111−2は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜。複数の異屈折率領域104−1b,104−2bは、アルゴン、窒素又は空気等が封入された空孔であってもよい。
一例では、基板層101−1,101−2、第1のクラッド層102−1,102−2にはN型の不純物が添加されており、第2のクラッド層106−1,106−2、コンタクト層107−1,107−2にはP型の不純物が添加されている。また、第1のクラッド層102−1,102−2と第2のクラッド層106−1,106−2のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層105b−1,105b−2と下部光ガイド層105a―1,105a―2のエネルギーバンドギャップよりも大きく、上部光ガイド層105b−1,105b−2と下部光ガイド層105a―1,105a―2のエネルギーバンドギャップは活性層103−1,103−2の井戸層のエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
次に、図4、図5を参照して、位相変調層における複数の異屈折率領域の配置パターンについて説明する。図4は、位相変調層における異屈折率領域の配置パターンを説明するための模式図であり、図5は、異屈折率領域の重心と仮想的な正方格子における格子点との位置関係を説明するための図である。図4には、異屈折率領域は12個しか示されていないが、実際には、多数の異屈折率領域が設けられる。一例では704×704の異屈折率領域が設けられる。なお、ここで説明する配置パターンは、第1実施形態に特有の配置パターンではなく、後述する第2〜第4実施形態の配置パターンでもある。そのため、図4では、位相変調層、基本領域、複数の異屈折率領域、のそれぞれを表す符号を一般化し、位相変調層をn04−m、基本領域をn04−ma、複数の異屈折率領域をn04−mbで表している。
図4において、x1〜x4、y1〜y3の符号で示される各破線で構成される格子は、基本領域中の仮想的な正方格子を表している。この仮想的な正方格子は、位相変調層の厚み方向をZ軸方向として設定されたXYZ直交座標系におけるXY平面内の格子であり、その格子定数はaである。R11〜R34は、その仮想的な正方格子の各格子点を取り囲む単位構成領域を表している。図4に示されるように、位相変調層n04−mは、第1屈折率媒質からなる基本領域n04−maと、第1屈折率媒質とは異なる第2屈折率媒質からなる複数の異屈折率領域n04−mbとを有している。複数の異屈折率領域n04−mbのそれぞれは、各単位構成領域R11〜R34内に1つずつある。各単位構成領域R11〜R34内における、各異屈折率領域n04−mbの重心Gは、これに最も近い仮想的な正方格子の格子点O(図5参照)から、所定の距離だけシフトした位置にある。
上記異屈折率領域n04−mbの配置パターンは、目標とするビーム投射領域とビーム投射パターンに応じて、特許文献1に説明されている方法によって定められる。すなわち各異屈折率領域n04−mbの重心を基本領域n04−ma中の仮想的な正方格子における各格子点からずらす方向を、目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた位相に応じて決定することで、上記配置パターンが決定される。各格子点からずらす距離r(図5参照)は、特許文献1に記載されるように、正方格子の格子定数をaとしたときに0<r≦0.3aの範囲とすることが望ましい。各格子点からずらす距離rは、全ての位相変調層、全ての異屈折率領域に渡って同一とされるのが通常であるが、一部の位相変調層における距離rを他の位相変調層における距離rと異なる値としてもよいし、一部の異屈折率領域の距離rを他の異屈折率領域の距離rと異なる値としてもよい。
図5において、Oは仮想的な正方格子における格子点、Gは異屈折率領域の重心、xはX軸におけるx番目の格子点、yはY軸におけるy番目の格子点、をそれぞれ表している。また、rは格子点Oと重心Gの間の距離、Dは異屈折率領域が円形の場合の直径、φは格子点Oから重心Gに向かう方向とX軸とのなす角度、Cはすべての位置(x,y)に対して同じ値を持つ定数、P(X,Y)は目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンに対応する元パターン(目標とするビーム投射領域の内の特定の領域における目標とするビーム投射パターンを無限遠方に射影したパターン)をフーリエ変換(より厳密には2次元逆フーリエ変換)して得られる複素振幅分布のうちの位相分布、をそれぞれ表している。上記元パターンを2次元逆フーリエ変換したXY平面内における複素振幅F(X,Y)は、jを虚数単位として、XY平面内の強度分布I(X,Y)と、XY平面内の位相分布P(X,Y)を用いて、F(X,Y)=I(X,Y)×exp{P(X,Y)j}で与えられる。図5に示される式φ(x,y)=C×P(X,Y)により各異屈折率領域n04−mbの配置パターンを定めれば、半導体発光素子の第1面から目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンを有する光の出力が得られる。目標とするビーム投射パターンは、設計者が任意に定めることが可能で、スポット、3点以上からなるスポット群、直線、線画、十字架、図形、写真、CG(コンピュータグラフィックス)、文字、等であり得る。各位相変調層のXY平面内において、全ての異屈折率領域は、同一の図形、同一の面積、及び/又は、同一の距離r、を有しており、複数の異屈折率領域は、並進操作又は並進操作及び回転操作により、重ね合わせることができるように形成されていてもよい。これによれば、ビーム投射領域内におけるノイズ光及びノイズとなる0次光の発生を抑制することができる。ここで0次光とは、Z方向に平行に出力する光であり、位相変調層において位相変調されない光のことである。
ここで、図6に、目標とするビーム投射パターンと、それに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布の一例を示す。図6(a)は駆動電極11−1から駆動電流が供給されたときに得られる目標とするビーム投射パターンの一例、図6(b)は駆動電極11−2から駆動電流が供給されたときに得られる目標とするビーム投射パターンの一例を示している。図6(c)、図6(d)は、それぞれ、図6(a)、図6(b)の各ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布を示している。図6(c)、図6(d)は、いずれも704×704の要素で構成されており、色の濃淡によって0〜2πの角度の分布を表している。色が黒い部分が角度0を表している。
次に図7を参照して、第1実施形態に係る半導体発光装置について説明する。図7は第1実施形態に係る半導体発光装置140の構成を示すブロック図である。図7に示されるように、半導体発光装置140は、半導体発光モジュール1と、電源回路141と、制御信号入力回路142と、駆動回路143と、を備える。電源回路141は、駆動回路143と半導体発光モジュール1に電源を供給する。制御信号入力回路142は、半導体発光装置140の外部から供給される制御信号あるいは半導体発光装置140内部で生成される制御信号を駆動回路143へ伝達する。駆動回路143は、制御信号に応じて半導体発光モジュール1に駆動電流を供給する。制御信号は、半導体発光素子100−1,100−2それぞれの発光タイミングを指定する信号である。駆動回路143と半導体発光モジュール1とは、駆動電流を供給する2本の駆動ライン144−1,144−2と2本の共通電位ライン145−1,145−2により接続されている。駆動ライン144−1,144−2のそれぞれは駆動電極11−1,11−2のそれぞれに接続され、共通電位ライン145−1,145−2のそれぞれは第1面側電極110−1,110−2のそれぞれに接続されている。なお、図7において、駆動回路143の上に示される半導体発光モジュール1と駆動回路143の下に示される半導体発光モジュール1は、それぞれ、1つの半導体発光モジュール1の半導体発光素子100−1,100−2側(第1面側)と支持基板11側(第4面側)を表している。図7においては、2本の共通電位ライン145−1,145−2のそれぞれが第1面側電極110−1,110−2のそれぞれに接続されているが、2本の共通電位ラインを設ける代わりに1本の共通電位ラインを設け、その1本の共通電位ラインを第1面側電極110−1,110−2のいずれか一方に接続すると共に、第1面側電極110−1,110−2を別の接続ラインで相互に接続するようにしてもよい。
駆動回路143は、制御信号により指定された任意のタイミングで、駆動ライン144−1,144−2を経由して半導体発光素子100−1,100−2のそれぞれに駆動電流を供給する。駆動ライン144−1,144−2は、用途に応じて、択一的に駆動されてもよいし、同時に駆動されてもよい。また、駆動回路143は、半導体発光モジュール1とは別体で構成されてもよいし、半導体発光モジュール1の支持基板11上に一体的に形成されてもよい。
以上のように構成された半導体発光モジュール1を備える半導体発光装置140は、次のように動作する。すなわち、駆動回路143から駆動ライン144−1,144−2のいずれかと共通電位ライン145−1,145−2の間に駆動電流が供給されると、駆動電流が供給された駆動ラインに駆動電極を介して第2面側電極が接続された半導体発光素子における活性層において電子と正孔の再結合が生じ、その半導体発光素子における活性層が発光する。その発光により得られた光は、第1のクラッド層102−1,102−2と第2のクラッド層106−1,106−2によって効率的に閉じ込められる。活性層103−1,103−2から出射された光は、対応する位相変調層の内部に入射し、位相変調層による2次元的なフィードバックによる閉じ込め効果によって所定のモードを形成する。活性層に十分な電子と正孔を注入することによって、位相変調層に入射した光は所定のモードで発振する。所定の発振モードを形成した光は、異屈折率領域の配置パターンに応じた位相変調を受け、位相変調を受けた光が、配置パターンに応じたビーム投射領域とビーム投射パターンを有する光として第1面側電極側から外部に出射される。
本実施の形態では、半導体発光素子を発光させるための駆動電流を2つの駆動電極のそれぞれに対して任意のタイミングで供給可能な駆動回路を備えているので、特許文献1に記載された半導体発光素子の、特許文献1に記載された応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、次のような応用が可能になる。
ア.スクリーンの同じ領域に2つのパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用
このタイプの応用の例としては、図6(a)に示されるようなOFFという文字パターンと図6(b)に示されるようなONという文字パターンを、ユーザの指示または適宜のタイミングでスクリーンの同じ位置に切替表示するような応用がある。この際、半導体発光素子100−1,100−2の発光色は相互に異なる色にすることも可能であるから、例えばOFFは赤色で表示し、ONは青色で表示するようにすることも可能である。
イ.STED(StimulatedEmission Depletion)顕微鏡用の光源への応用
例えば、半導体発光素子100−1の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の励起光に適した発光波長と投射パターンとし、半導体発光素子100−2の発光波長とビーム投射パターンをSTED顕微鏡用の誘導放出光に適した発光波長と投射パターンとすることで、半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いることができる。半導体発光モジュール1をSTED顕微鏡用の光源として用いる場合には、検出点の走査をガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により行うことも可能である。
ウ.一箇所又は二箇所に同じパターンの光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用
このタイプの応用の例としては、半導体発光素子100−1における異屈折率領域104−1bの配置パターンと半導体発光素子100−2における異屈折率領域104−2bの配置パターンの両方を、同じビーム投射領域、同じビーム投射パターン(ビーム投射パターンは例えばビーム投射領域の全体あるいは一部にわたって均一な明るさを有するようなビーム投射パターンとする)が得られるように定め、明るい照明が必要な場合には駆動電極11−1,11−2の両方から駆動電流を供給し、暗い照明で足りる場合には駆動電極11−1,11−2のいずれか一方のみから駆動電流を供給する、といった応用がある。また、半導体発光素子100−1における異屈折率領域104−1bの配置パターンと半導体発光素子100−2における異屈折率領域104−2bの配置パターンを、相互に異なるビーム投射領域が得られるように定め、各ビーム投射領域に対応する二箇所のそれぞれを任意のタイミングで照らす、といった照明への応用もある。
エ.一箇所に同じパターンのパルス光を連続的に照射することで対象物に目標とするパターンの穴を穿設するタイプのレーザ加工への応用
このタイプの応用の例としては、半導体発光素子100−1における異屈折率領域104−1bの配置パターンと半導体発光素子100−2における異屈折率領域104−2bの配置パターンの両方を、同じビーム投射領域同じビーム投射パターン(ビーム投射領域は被加工物の穴を穿設したい位置に合わせ、ビーム投射パターンは穿設したい穴の形状のパターンとする)が得られるように定め、駆動電極11−1,11−2の双方から交互にパルス電流を供給する、といった応用がある。この場合、それぞれの素子のパルス間隔を長く出来るため、それぞれの素子からより高いピーク出力を得ることが可能となり、より大出力を得ることが可能となる。
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態において2つ(1対)とされていた半導体発光素子と駆動電極の数を3つ以上とし、それらを1次元に配置した実施形態であり、そのように変更した点以外は第1実施形態と同様である。
図8〜図10を参照して、第2実施形態に係る半導体発光装置が備える支持基板と半導体発光素子からなる部分(以下、「半導体発光モジュール2」という)の構成を説明する。図8は、半導体発光モジュール2を半導体発光素子の第1面側から見た図、図9は、半導体発光モジュール2を支持基板の第4面側から見た図、図10は、図8、図9のX−X線に沿っての断面図である。図8〜図10には5つの半導体発光素子と5つの駆動電極が直線上に並んでいる例が示されているが、半導体発光素子と駆動電極の数は5つ以外であってもよく、また、一次元の配置は曲線上であってもよい。
図8〜図10に示されるように、半導体発光モジュール2は、複数の半導体発光素子200−1〜200−5と、支持基板21と、を備える。各半導体発光素子200−1〜200−5は、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子200−1〜200−5のそれぞれは、第1面200−1a〜200−5aと第2面200−1b〜200−5bとを有し、第1面200−1a〜200−5aから光を出力する。支持基板21は、第3面21aと第4面21bとを有するとともに第3面上に配置された複数の駆動電極21−1〜21−5を有し、複数の半導体発光素子200−1〜200−5を載置可能である。半導体発光素子200−1〜200−5のそれぞれは、活性層203−1〜203−5と、活性層203−1〜203−5と光学的に結合される位相変調層204−1〜204−5と、第1のクラッド層202−1〜202−5と、第2のクラッド層206−1〜206−5と、第2面側電極208−1〜208−5と、第1面側電極210−1〜210−5と、を有する。半導体発光素子200−1〜200−5のそれぞれの第2面側電極208−1〜208−5は、対応する駆動電極21−1〜21−5に接続される。位相変調層204−1〜204−5のそれぞれは、第1屈折率を有する基本領域204−1a〜204−5aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bとを含み、複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bは、それぞれの重心が基本領域204−1a〜204−5a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域204−1a〜204−5a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極21−1〜21−5から駆動電流が供給されたときに第1面200−1a〜200−5aから出力される光のビーム投射領域とビーム投射パターンが目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンとなるように定められている。
半導体発光素子200−1〜200−5における目標とするビーム投射パターンと目標とするビーム投射領域は、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。
半導体発光素子200−1〜200−5の発光波長は、全てが同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料及び位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極210−1〜210−5は、図8、10に示されるように、中央部に光を出射するための開口部210−1a〜210−5aを有している。第1面側電極210−1〜210−5は開口部を有する電極とする代わりに、透明電極としてもよい。
活性層203−1〜203−5と位相変調層204−1〜204−5の上下関係は、図10に示される上下関係と逆であってもよい。また、図10には、基板層201−1〜201−5、上部光ガイド層205b−1〜205b−5、下部光ガイド層205a―1〜205a―5、コンタクト層207−1〜207−5、絶縁層209−1〜209−5、反射防止層211−1〜211−5も記載されているが、半導体発光素子200−1〜200−5は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図10に示される各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層201−1〜201−5はGaAs、第1のクラッド層202−1〜202−5はAlGaAs、活性層203−1〜203−5は多重量子井戸構造MQW(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)、位相変調層204−1〜204−5は基本領域204−1a〜204−5aがGaAs、基本領域204−1a〜204−5a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bがAlGaAs、上部光ガイド層205b−1〜205b−5、下部光ガイド層205a―1〜205a―5はAlGaAs、第2のクラッド層206−1〜206−5はAlGaAs、コンタクト層207−1〜207−5はGaAs、絶縁層209−1〜209−5はSiO2又はシリコン窒化物、反射防止層211−1〜211−5は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜。複数の異屈折率領域204−1b〜204−5bは、アルゴン、窒素又は空気等が封入された空孔であってもよい。
一例では、基板層201−1〜201−5、第1のクラッド層202−1〜202−5にはN型の不純物が添加されており、第2のクラッド層206−1〜206−5、コンタクト層207−1〜207−5にはP型の不純物が添加されている。また、第1のクラッド層202−1〜202−5と第2のクラッド層206−1〜206−5のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層205b−1〜205b−5、下部光ガイド層205a―1〜205a―5のエネルギーバンドギャップよりも大きく、上部光ガイド層205b−1〜205b−5、下部光ガイド層205a―1〜205a―5のエネルギーバンドギャップは活性層203−1〜203−5の井戸層のエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
ここで、図11、図12に、本実施形態及び後述する第3実施形態において目標とするビーム投射パターンと、それに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布の例を示す。図11(a)〜図11(c)は、それぞれ、駆動電極21−1,21−3,21−5から駆動電流が供給されたときに得られる目標とするビーム投射パターンの一例を示しており、図11(d)〜図11(f)は、それぞれ、図11(a)〜図11(c)の各ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布を示している。図12(a)〜図12(c)は、それぞれ、駆動電極21−1,21−3,21−5から駆動電流が供給されたときに得られる目標とするビーム投射パターンの別の一例を示しており、図12(d)〜図12(f)は、それぞれ、図12(a)〜図12(c)の各ビーム投射パターンに対応する元パターンを逆フーリエ変換して得られた複素振幅分布のうちの位相分布を示している。図11(d)〜図11(f),図12(d)〜図12(f)は、いずれも704×704の要素で構成されており、色の濃淡によって0〜2πの角度の分布を表している。色が黒い部分が角度0を表している。
次に図13を参照して、第2実施形態に係る半導体発光装置について説明する。図13は第2実施形態に係る半導体発光装置240の構成を示すブロック図である。図13に示されるように、半導体発光装置240は、半導体発光モジュール2と、電源回路241と、制御信号入力回路242と、駆動回路243と、を備える。電源回路241は、駆動回路243と半導体発光モジュール2に電源を供給する。制御信号入力回路242は、半導体発光装置240の外部から供給される制御信号あるいは半導体発光装置240内部で生成される制御信号を駆動回路243へ伝達する。駆動回路243は、制御信号に応じて半導体発光モジュール2に駆動電流を供給する。制御信号は、半導体発光素子200−1〜200−5それぞれの発光タイミングを指定する信号である。駆動回路243と半導体発光モジュール2とは、駆動電流を供給する複数の駆動ライン244−1〜244−5と複数の共通電位ライン245−1〜245−5により接続されている。駆動ライン244−1〜244−5のそれぞれは、駆動電極21−1〜21−5のそれぞれに接続され、共通電位ライン245−1〜245−5のそれぞれは、第1面側電極210−1〜210−5のそれぞれに接続されている。なお、図13において、駆動回路243の上に示される半導体発光モジュール2と駆動回路243の下に示される半導体発光モジュール2は、それぞれ、1つの半導体発光モジュール2の半導体発光素子200−1〜200−5側(第1面側)と支持基板21側(第4面側)を表している。図13においては、複数の共通電位ライン245−1〜245−5のそれぞれが第1面側電極210−1〜210−5のそれぞれに接続されているが、複数の共通電位ラインを設ける代わりに1本の共通電位ラインを設け、その1本の共通電位ラインを第1面側電極210−1〜210−5のいずれか一つに接続すると共に、第1面側電極210−1〜210−5を別の接続ラインで相互に接続するようにしてもよい。
駆動回路243は、制御信号により指定された任意のタイミングで、駆動ライン244−1〜244−5を経由して半導体発光素子200−1〜200−5のそれぞれに駆動電流を供給する。駆動ライン244−1〜244−5は、用途に応じて、択一的に駆動されてもよいし、複数が同時に駆動されてもよい。また、駆動回路243は、半導体発光モジュール2とは別体で構成されてもよいし、半導体発光モジュール2の支持基板21上に一体的に形成されてもよい。
以上のように構成された半導体発光モジュール2を備える半導体発光装置240は、次のように動作する。すなわち、駆動回路243から駆動ライン244−1〜244−5のいずれかと共通電位ライン245−1〜245−5の間に駆動電流が供給されると、駆動電流が供給された駆動ラインに駆動電極を介して第2面側電極が接続された半導体発光素子における活性層において電子と正孔の再結合が生じ、その半導体発光素子における活性層が発光する。その発光により得られた光は、第1のクラッド層202−1〜202−5と第2のクラッド層206−1〜206−5によって効率的に閉じ込められる。活性層203−1〜203−5から出射された光は、対応する位相変調層の内部に入射し、位相変調層による2次元的なフィードバックによる閉じ込め効果によって所定のモードを形成する。活性層に十分な電子と正孔を注入することによって、位相変調層に入射した光は所定のモードで発振する。所定の発振モードを形成した光は、異屈折率領域の配置パターンに応じた位相変調を受け、位相変調を受けた光が、配置パターンに応じたビーム投射領域とビーム投射パターンを有する光として第1面側電極側から外部に出射される。
本実施の形態では、半導体発光素子を発光させるための駆動電流を複数の駆動電極のそれぞれに対して任意のタイミングで供給可能な駆動回路を備えているので、特許文献1に記載された半導体発光素子の、特許文献1に記載された応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。例えば、次のような応用が可能になる。
ア.スクリーンの同じ領域に3つ以上の複数のパターンを切替表示するタイプの各種表示装置への応用
このタイプの応用の例としては、図11(a)〜図11(c)に示されるような段階的に変化するインジケータ用の記号の切替表示、図12(a)〜図12(c)に示されるような複数種類の情報の切替表示、少しずつ異なるパターンを連続的に切替表示することで1つの領域にアニメーションを表示するような応用等がある。これらの表示は、通常のスクリーンへの表示としてもよいし、ヘッドアップディスプレイの透過型スクリーンへの表示としてもよい。各半導体発光素子200−1〜200−5の発光色を相互に異なる色とすることも可能である。
イ.STED(StimulatedEmission Depletion)顕微鏡用の光源への応用
半導体発光モジュール2における半導体発光素子の数を複数対(偶数)とし、各対の半導体発光素子を、検出点が相互に少しずつ異なるSTED顕微鏡用の光源としてもよい。これによれば、複数の検出点を同時に観測することができるので、STED顕微鏡による対象物全体の走査を高速化することができる。
ウ.一箇所又は複数箇所に同じパターンの光を継続的あるいは断続的に照射するタイプの各種照明への応用
このタイプの応用の例としては、第1実施形態の説明においてウ.の応用例として示した照明を、多段階に切替可能に変更したような応用がある。
エ.一箇所に同じパターンのパルス光を連続的に照射することで対象物に目標とするパターンの穴を穿設するタイプのレーザ加工への応用
このタイプの応用の例としては、第1実施形態の説明においてエ.の応用例として示したレーザ加工を、複数の駆動電極を順次パルス駆動するように変更したような応用がある。この場合、それぞれの素子のパルス間隔を長く出来るため、それぞれの素子からより高いピーク出力を得ることが可能となり、より大出力を得ることが可能となる。
[第3実施形態]
第3実施形態は、第2実施形態において1次元とされていた半導体発光素子と駆動電極の配置を2次元とした実施形態であり、そのように変更した点以外は第2実施形態と同様である。
図14〜図16を参照して、第3実施形態に係る半導体発光装置が備える支持基板と半導体発光素子からなる部分(以下、「半導体発光モジュール3」という)の構成を説明する。図14は、半導体発光モジュール3を半導体発光素子の第1面側から見た図、図15は、半導体発光モジュール3を支持基板の第4面側から見た図、図16は、図14、図15のXVI−XVI線に沿っての断面図である。図14〜図16には15の半導体発光素子と駆動電極が3行5列に並んでいる例が示されているが、半導体発光素子と駆動電極の数は15以外であってもよく、また、二次元の配置は任意でよい。
図14〜図16に示されるように、半導体発光モジュール3は、複数の半導体発光素子300−1〜300−15と、支持基板31と、を備える。各半導体発光素子300−1〜300−15は、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子300−1〜300−15のそれぞれは、第1面300−1a〜300−15aと第2面300−1b〜300−15bとを有し、第1面300−1a〜300−15aから光を出力する。支持基板31は、第3面31aと第4面31bとを有するとともに第3面上に配置された複数の駆動電極31−1〜31−15を有し、複数の半導体発光素子300−1〜300−15を載置可能である。半導体発光素子300−1〜300−15のそれぞれは、活性層303−1〜303−15と、活性層303−1〜303−15と光学的に結合される位相変調層304−1〜304−15と、第1のクラッド層302−1〜302−15と、第2のクラッド層306−1〜306−15と、第2面側電極308−1〜308−15と、第1面側電極310−1〜310−15と、を有する。半導体発光素子300−1〜300−15のそれぞれの第2面側電極308−1〜308−15は、対応する駆動電極31−1〜31−15に接続される。位相変調層304−1〜304−15のそれぞれは、第1屈折率を有する基本領域304−1a〜304−15aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bとを含み、複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bは、それぞれの重心が基本領域304−1a〜304−15a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域304−1a〜304−15a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極31−1〜31−15から駆動電流が供給されたときに第1面300−1a〜300−15aから出力される光のビーム投射領域とビーム投射パターンが目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンとなるように定められている。
半導体発光素子300−1〜300−15における目標とするビーム投射パターンと目標とするビーム投射領域は、全て同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。
半導体発光素子300−1〜300−15の発光波長は、全てが同じであってもよいし、一部が他と異なっていてもよい。半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料及び位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極310−1〜310−15は、図14、16に示されるように、中央部に光を出射するための開口部310−1a〜310−15aを有している。第1面側電極310−1〜310−15は開口部を有する電極とする代わりに、透明電極としてもよい。
活性層303−1〜303−15と位相変調層304−1〜304−15の上下関係は、図16に示される上下関係と逆であってもよい。また、図16には、基板層301−1〜301−15、上部光ガイド層305b−1〜305b−15、下部光ガイド層305a―1〜305a―15、コンタクト層307−1〜307−15、絶縁層309−1〜309−15、反射防止層311−1〜311−15も記載されているが、半導体発光素子300−1〜300−15は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図16に示される各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層301−1〜301−15はGaAs、第1のクラッド層302−1〜302−15はAlGaAs、活性層303−1〜303−15は多重量子井戸構造MQW(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)、位相変調層304−1〜304−15は基本領域304−1a〜304−15aがGaAs、基本領域304−1a〜304−15a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bがAlGaAs、上部光ガイド層305b−1〜305b−15、下部光ガイド層305a―1〜305a―15はAlGaAs、第2のクラッド層306−1〜306−15はAlGaAs、コンタクト層307−1〜307−15はGaAs、絶縁層309−1〜309−15はSiO2又はシリコン窒化物、反射防止層311−1〜311−15は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜。複数の異屈折率領域304−1b〜304−15bは、アルゴン、窒素又は空気等が封入された空孔であってもよい。
一例では、基板層301−1〜301−15、第1のクラッド層302−1〜302−15にはN型の不純物が添加されており、第2のクラッド層306−1〜306−15、コンタクト層307−1〜307−15にはP型の不純物が添加されている。また、第1のクラッド層302−1〜302−15と第2のクラッド層306−1〜306−15のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層305b−1〜305b−15、下部光ガイド層305a―1〜305a―15のエネルギーバンドギャップよりも大きく、上部光ガイド層305b−1〜305b−15、下部光ガイド層305a―1〜305a―15のエネルギーバンドギャップは活性層303−1〜303−15の井戸層のエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
次に図17を参照して、第3実施形態に係る半導体発光装置について説明する。図17は第3実施形態に係る半導体発光装置340の構成を示すブロック図である。図17に示されるように、半導体発光装置340は、半導体発光モジュール3と、電源回路341と、制御信号入力回路342と、駆動回路343と、を備える。電源回路341は、駆動回路343と半導体発光モジュール3に電源を供給する。制御信号入力回路342は、半導体発光装置340の外部から供給される制御信号あるいは半導体発光装置340内部で生成される制御信号を駆動回路343へ伝達する。駆動回路343は、制御信号に応じて半導体発光モジュール3に駆動電流を供給する。制御信号は、半導体発光素子300−1〜300−15それぞれの発光タイミングを指定する信号である。駆動回路343と半導体発光モジュール3とは、駆動電流を供給する複数の駆動ライン344−1〜344−15と1本の共通電位ライン345により接続されている。第1面側電極310−1〜310−15は接続ライン346で相互に接続されている。駆動ライン344−1〜344−15のそれぞれは、駆動電極31−1〜31−15のそれぞれに接続され、共通電位ライン345は、第1面側電極310−1〜310−15のいずれか一つ(図17では310−15)に接続されている。なお、図17において、駆動回路343の上に示される半導体発光モジュール3と駆動回路343の下に示される半導体発光モジュール3は、それぞれ、1つの半導体発光モジュール3の半導体発光装置300−1〜300−15側(第1面側)と支持基板31側(第4面側)を表している。図17においては、第1面側電極310−1〜310−15が接続ライン346で相互に接続され、1本の共通電位ライン345が1つの第1面側電極310−15に接続されているが、そのように接続する代わりに、共通電位ラインを第1面側電極の数分設け、駆動回路343と各第1面側電極310−1〜310−15とを別々の共通電位ラインで接続するようにしてもよい。
駆動回路343は、制御信号により指定された任意のタイミングで、駆動ライン344−1〜344−15を経由して半導体発光素子300−1〜300−15のそれぞれに駆動電流を供給する。駆動ライン344−1〜344−15は、用途に応じて、択一的に駆動されてもよいし、複数が同時に駆動されてもよい。また、駆動回路343は、半導体発光モジュール3とは別体で構成されてもよいし、半導体発光モジュール3の支持基板31上に一体的に形成されてもよい。
以上のように構成された半導体発光モジュール3を備える半導体発光装置340は、次のように動作する。すなわち、駆動回路343から駆動ライン344−1〜344−15のいずれかと共通電位ライン345の間に駆動電流が供給されると、駆動電流が供給された駆動ラインに駆動電極を介して第2面側電極が接続された半導体発光素子における活性層において電子と正孔の再結合が生じ、その半導体発光素子における活性層が発光する。その発光により得られた光は、第1のクラッド層302−1〜302−15と第2のクラッド層306−1〜306−15によって効率的に閉じ込められる。活性層303−1〜303−15から出射された光は、対応する位相変調層の内部に入射し、位相変調層による2次元的なフィードバックによる閉じ込め効果によって所定のモードを形成する。活性層に十分な電子と正孔を注入することによって、位相変調層に入射した光は所定のモードで発振する。所定の発振モードを形成した光は、異屈折率領域の配置パターンに応じた位相変調を受け、位相変調を受けた光が、配置パターンに応じたビーム投射領域とビーム投射パターンを有する光として第1面側電極側から外部に出射される。
本実施の形態においても、半導体発光素子を発光させるための駆動電流を複数の駆動電極のそれぞれに対して任意のタイミングで供給可能な駆動回路を備えているので、特許文献1に記載された半導体発光素子の、特許文献1に記載された応用例(レーザビームを対象物に対して走査するようにした応用例)以外への各種の応用が可能となる。可能な応用は、第2実施形態と同様である。
[第4実施形態]
第4実施形態は、第1実施形態では基板層101−1,101−2側から取り出していた光出力を基板層101−1,101−2とは反対側から取り出すように変更したものである。これによれば、光出力が基板層を通過しないため基板層による出力光の吸収をなくすことが出来、出力光の減衰や基板層の発熱を防止することが出来る。そのように変更した点以外は第1実施形態と同様である。
図18〜図20を参照して、第4実施形態に係る半導体発光装置が備える支持基板と半導体発光素子からなる部分(以下、「半導体発光モジュール1B」という。)の構成を説明する。図18は、半導体発光モジュール1Bを半導体発光素子の第1面側から見た図、図19は、半導体発光モジュール1Bを支持基板の第4面側から見た図、図20は、図18、図19のXX−XX線に沿っての断面図である。
図18〜図20に示されるように、半導体発光モジュール1Bは、1対の半導体発光素子100B−1,100B−2と、支持基板11Bと、を備える。各半導体発光素子100B−1,100B−2は、特許文献1の図2と同じ層構成を有していてもよいが、必ずしも、それと同じ層構成である必要はない。半導体発光素子100B−1,100B−2のそれぞれは、第1面100B−1a,100B−2aと第2面100B−1b,100B−2bとを有し、第1面100B−1a,100B−2aから光を出力する。支持基板11Bは、第3面11Baと第4面11Bbとを有するとともに第3面上に配置された1対の駆動電極11B−1,11B−2を有し、1対の半導体発光素子100B−1,100B−2を載置可能である。半導体発光素子100B−1,100B−2のそれぞれは、活性層103B−1,103B−2と、活性層103B−1,103B−2と光学的に結合される位相変調層104B−1,104B−2と、第1のクラッド層102B−1,102B−2と、第2のクラッド層106B−1,106B−2と、第2面側電極108B−1,108B−2と、第1面側電極110B−1,110B−2と、を有する。半導体発光素子100B−1,100B−2のそれぞれの第2面側電極108B−1,108B−2は、対応する駆動電極11B−1,11B−2に接続される。位相変調層104B−1,104B−2のそれぞれは、第1屈折率を有する基本領域104B−1a,104B−2aと第1屈折率とは異なる第2屈折率を有する複数の異屈折率領域104B−1b,104B−2bとを含み、複数の異屈折率領域104B−1b,104B−2bは、それぞれの重心が基本領域104B−1a,104B−2a中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するような配置パターンに従って基本領域104B−1a,104B−2a中に配置されている。配置パターンは、対応する駆動電極11B−1,11B−2から駆動電流が供給されたときに第1面100B−1a,100B−2aから出力される光のビーム投射領域とビーム投射パターンが目標とするビーム投射領域と目標とするビーム投射パターンとなるように定められている。
半導体発光素子100B−1における目標とするビーム投射領域及び目標とするビーム投射パターンは、半導体発光素子100B−2における目標とするビーム投射パターン領域及び目標とするビーム投射パターンと同じであってもよいし異なっていてもよい。
半導体発光素子100B−1の発光波長と半導体発光素子100B−2の発光波長は同じであってもよいし、異なっていてもよい。半導体発光素子の発光波長は、活性層の材料及び位相変調層の基本領域中の仮想的な正方格子の格子定数等により調整することが可能である。
第1面側電極110B−1,110B−2は、図18、20に示されるように、中央部に光を出射するための開口部110B−1a,110B−2aを有している。第1面側電極110B−1,110B−2は開口部を有する電極とする代わりに、透明電極としてもよい。
活性層103B−1,103B−2と位相変調層104B−1,104B−2の上下関係は、図20に示される上下関係と逆であってもよい。また、基板層101B−1,101B−2での光の吸収を低減する目的で基板層101B−1,101B−2と第1のクラッド層102B−1,102B−2の間にDBR層120B−1,120B−2があっても良い。DBR層120B−1,120B−2は位相変調層104B−1,140B−2と基板層101B−1,101B−2の間であればこれ以外の場所にあっても良い。また、図20には、基板層101B−1,101B−2、上部光ガイド層105Ba−1,105Ba−2、下部光ガイド層105Bb―1,105Bb―2、コンタクト層107B−1,107B−2、絶縁層109B−1,109B−2、反射防止層111B−1,111B−2も記載されているが、半導体発光素子100B−1,100B−2は、必ずしもこれらを備えている必要はない。
これまでに説明した各層、各領域の構成材料、形状、寸法、製造方法等は、特許文献1の記載内容に基づいて当業者が適宜選択可能であるが、以下にその一部の例を示す。すなわち、図20に示される各層の材料ないし構造の一例は、次のとおりである。基板層101B−1,101B−2はGaAs、第1のクラッド層102B−1,102B−2はAlGaAs、活性層103B−1,103B−2は多重量子井戸構造MQW(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)、位相変調層104B−1,104B−2は基本領域104B−1a,104B−2aがGaAs、基本領域104B−1a,104B−2a内に埋め込まれた複数の異屈折率領域104B−1b,104B−2bがAlGaAs、上部光ガイド層105Ba−1,105Ba−2及び下部光ガイド層105Bb―1,105Bb―2はAlGaAs、第2のクラッド層106B−1,106B−2はAlGaAs、コンタクト層107B−1,107B−2はGaAs、絶縁層109B−1,109B−2はSiO2又はシリコン窒化物、反射防止層111B−1,111B−2は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO2)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜。複数の異屈折率領域104B−1b,104B−2bは、アルゴン、窒素又は空気等が封入された空孔であってもよい。
一例では、基板層101B−1,101B−2、第1のクラッド層102B−1,102B−2にはN型の不純物が添加されており、第2のクラッド層106B−1,106B−2、コンタクト層107B−1,107B−2にはP型の不純物が添加されている。また、第1のクラッド層102B−1,102B−2と第2のクラッド層106B−1,106B−2のエネルギーバンドギャップは、上部光ガイド層105Ba−1,105Ba−2と下部光ガイド層105Bb―1,105Bb―2のエネルギーバンドギャップよりも大きく、上部光ガイド層105Ba−1,105Ba−2と下部光ガイド層105Bb―1,105Bb―2のエネルギーバンドギャップは活性層103B−1,103B−2の井戸層のエネルギーバンドギャップよりも大きく設定されている。
以上、本発明の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明は、上述した第1〜第4実施形態に限定されるものではない。
例えば、図4、図5には異屈折率領域が円形の例が示されていたが、異屈折率領域は円形以外の形状であってもよい。例えば、正方形、正六角形、正八角形、正16角形、長方形、楕円、であっても良い。これらの形状のように異屈折率領域のXY平面内の形状を鏡像対称(線対称)とすれば、位相変調領域において、仮想的な正方格子のそれぞれの格子点から、対応するそれぞれの異屈折率領域の重心へ向かう方向と、X軸との成す角度φを高精度に定めることができる。また、異屈折率領域は、正三角形、直角二等辺三角形、2つの円又は楕円の一部分が重なる形状、楕円の長軸に沿った一方の端部近傍の短軸方向の寸法が他方の端部近傍の短軸方向の寸法よりも小さくなるように変形した形状(卵形)、楕円の長軸に沿った一方の端部を長軸方向に沿って突き出る尖った端部に変形した形状(涙形)、二等辺三角形、矩形の一方が三角形でくり抜かれ、その対向する方向が三角形を付加したような形状(矢印形)、台形、5角形、又は、2つの矩形の一部分が重なる形状等であってもよい。これらの図形のように異屈折率領域のXY平面内の形状を180°の回転対称性を備えない形状とすれば、より高い光出力を得ることが出来る。これらの図形の例を図21に示す。
また、第1〜第3実施形態は、いずれも各半導体発光素子の基板層側から光出力を取り出すように構成されていたが、第4実施形態のように基板層とは反対側から光出力を取り出すようにしてもよい。第4実施形態においては、半導体発光素子の数が2つ(1対)であったが、第2、第3実施形態と同様に、それを3つ以上、一次元又は2次元に配置するようにしてもよい。基板層とは反対側から光出力を取り出すようにした場合には、光出力が基板層を通過しないため基板層による出力光の吸収をなくすことが出来、出力光の減衰や基板層の発熱を防止することが出来る。
また、位相変調層には、図22に示す第1の変形例のように、ビーム投射領域とビーム投射パターンを生成するための複数の異屈折率領域を含む領域Aの外周部に、当該複数の異屈折率領域を含む領域Aを取り囲むように、仮想的な正方格子における格子点位置に重心を有する複数の周辺格子点異屈折率領域を含む領域Bが設けられてもよい。図22は、位相変調領域の変形例を層厚方向から見た形態を示している。図22において、外側の輪郭は、位相変調領域を表している。位相変調領域内の中心部の領域Aは、第1〜第4実施形態に関して説明したような、ビーム投射領域とビーム投射パターンを生成するための複数の異屈折率領域を含む領域である。位相変調領域内の外周部の領域Bは、仮想的な正方格子における格子点位置に重心を有する複数の周辺格子点異屈折率領域を含む領域である。一例では、領域Bにおける仮想的な正方格子の格子定数は領域Aにおける仮想的な正方格子の格子定数と等しく、領域Bにおける各周辺格子点異屈折率領域の形状および大きさは、領域Aにおける異屈折率領域の形状及び大きさと等しい。この変形例によれば、面内方向への光漏れが抑制され、発振閾値電流を低減することができる。
また、図4、5には、基本領域中の仮想的な正方格子における各格子点から所定の距離だけずれた場所に重心を有する異屈折率領域(以下、「変位異屈折率領域」という。)が、各格子点に1つずつ設けられる例が示されていたが、変位異屈折率領域は、全体の重心が上記各格子点から所定の距離だけずれた場所に位置するように、複数個に分割して設けられてもよい。また、変位異屈折率領域に加えて、各格子点上に格子点異屈折率領域が設けられてもよい。格子点異屈折率領域は、変位異屈折率領域と同様に基本領域の屈折率(第1屈折率)とは異なる屈折率を有する領域であるが、変位異屈折率領域と同じ材料(同じ屈折率の材料)で構成されてもよいし、その一部が変位異屈折率領域の一部と重なっていてもよい。
ここで、図23〜図25を参照して、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域を設ける場合の例について説明する。図23は、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域を設ける場合の、変位異屈折率領域の重心と格子点異屈折率領域との位置関係を説明するための図であり、図24は、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域が設けられる場合の、変位異屈折率領域と格子点屈折率領域の組合せの例を示す図であり、図25は、変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域を設ける場合の、変形例を示す図である。これらの図において、Oは格子点、Gは変位屈折率領域の重心をそれぞれ表している。図23に示されるように、変位異屈折率領域n04−mbの重心Gと格子点Oとの位置関係は図5と同じであるが、図23では、それに加えて格子点異屈折率領域n04−mcが設けられている。図23では、格子点異屈折率領域n04−mcの重心は格子点Oにあるが、図25に示すように、その重心は必ずしも格子点Oの上になくても良い。図23では、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcはいずれも円形で両者は相互に重なっていないが、両者の組合せはこれに限られない。図24に示されるように、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcの組合せとしては種々の組合せが考えられる。図24(a)は図23の組合せである。図24(b)は変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に正方形の組合せである。図24(c)は、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に円形であるが、両者の一部どうしが重なっている組合せである。図24(d)は、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に正方形で、両者の一部どうしが重なっている組合せである。図24(e)は、図24(d)の変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcをそれぞれ重心G、格子点Oを中心に任意に回転させ、両者が相互に重ならないようにした組合せである。図24(f)は、変位異屈折率領域n04−mbが三角形で、格子点異屈折率領域n04−mcが正方形の組合せである。図24(g)は、図24(f)の変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcをそれぞれ重心G、格子点Oを中心に任意に回転させ、両者が相互に重ならないようにした組合せである。図24(h)は、図24(a)の変位異屈折率領域n04−mbが二つの円形の領域に分割された組合せである。図24(i)は、変位異屈折率領域n04−mbが正方形と三角形に分割され、格子点異屈折率領域n04−mcが三角形とされた組合せである。図24(j)は、図24(i)の変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcをそれぞれ重心G、格子点Oを中心に任意に回転させた組合せである。24(k)は、変位異屈折率領域n04−mbと格子点異屈折率領域n04−mcが共に正方形で、変位異屈折率領域n04−mbは2つの正方形に分割されており、各正方形の辺の方向が同一方向を向いている組み合せである。変位異屈折率領域に加えて格子点異屈折率領域が設けられる場合には、その両者を合わせた異屈折率領域全体が180°の回転対称性を備えなくなるので、より高い光出力を得ることができる。
異屈折率領域(周辺格子点異屈折率領域、格子点異屈折率領域を含む。)の形状が直線状の辺を有する形状とされる場合には、その辺の方向を、基板層を構成する結晶の特定の面方位に揃える事が望ましい。そうすれば、異屈折率領域をアルゴン、窒素又は空気等が封入された空孔とする場合に、空孔の形状の制御が容易になり、空孔の上に成長させる結晶層の欠陥を抑制することができる。
なお、各格子点に対応して設けられる異屈折率領域(周辺格子点異屈折率領域、格子点異屈折率領域を含む)の形状や数は、1つの位相変調領域内で必ずしも同一である必要はない。図26に示すように、格子点毎に異屈折率領域の形状や数が異なっていてもよい。