JP7103817B2 - 半導体発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、半導体発光素子に関する。
本願発明者らは、下記特許文献1に記載の半導体発光素子を開発してきた(特許文献1参照)。この半導体発光素子は、活性層と、活性層を挟む一対のクラッド層と、活性層に光学的に結合した位相変調層とを備えた半導体発光素子において、位相変調層は、基本層と、複数の異屈折率領域とを備え、仮想的な正方格子のそれぞれの格子点の近傍において、それぞれ異屈折率領域が位置している。その他の関連技術は、特許文献2から特許文献9に記載されている。
米国特許974873号明細書 特開2007-208127号公報 特開2012-119635号公報 特開2010-056446号公報 特開2007-180120号公報 特開2004-296538号公報 特開2003-298183号公報 特開2009-076900号公報 特開2003-023193号公報
位相変調層を有する半導体発光素子においては、光出射面の垂直方向延長線上に0次光が観察される。本願発明者らは、この0次光を低減する方法について、鋭意検討を行った。本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、0次光を低減可能な半導体レーザ素子を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、第1の半導体発光素子は、レーザ光の入射される位相変調層を備えたレーザ素子において、前記位相変調層は、第1屈折率媒質からなる基本層と、前記第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり前記基本層内に存在する複数の異屈折率領域と、を備え、前記位相変調層の厚み方向をZ軸方向とし、Z軸に垂直な軸をX軸、Z軸及びX軸の双方に垂直な軸をY軸とするXYZ三次元直交座標系を設定し、前記異屈折率領域のXY平面内における平面形状は、概略円形、概略正方形又は90°の回転対称性を有する概略多角形、であり、前記主異屈折率領域は、Z軸方向に垂直な第1面積を有し、前記副異屈折率領域は、Z軸方向に垂直な第2面積を有し、前記主異屈折率領域の重心位置は、正方格子の格子点に位置し、前記第2面積は、前記第1面積よりも大きく、単位構成領域が、1つの前記主異屈折率領域と、この周囲の最も近くに設けられた1つの前記副異屈折率領域とからなることとし、これら一対の異屈折率領域のみが各単位構成領域内に存在し、最も近くで隣接する前記主異屈折率領域の重心位置間を接続した線分を規定し、この線分の垂直二等分線で囲まれた最小の領域が、それぞれの前記単位構成領域であり、この単位構成領域内において、前記一対の異屈折率領域の全てが、位置しており、前記単位構成領域内における、前記主異屈折率領域に対する前記副異屈折率領域の回転角度をφとし、X軸及びY軸を含むXY平面内において、複数の前記単位構成領域が二次元的に配置されており、それぞれの前記単位構成領域のXY座標をそれぞれの前記主異屈折率領域の重心位置で与えられることとし、前記副異屈折率領域の重心位置は、前記主異屈折率領域の重心位置から距離rだけ離隔しており、前記正方格子の格子定数をaとすると、0.38≦(r/a)≦0.5、を満たし、前記主異屈折率領域は、XY平面内において周期構造を有しており、前記副異屈折率領域は、XY平面内において、一軸方向に沿って整列しない非周期構造を有しており、光出射面に垂直でない方向に0次光以外のビームパターンを出射することを特徴とする。
すなわち、上述の格子条件を満たしつつ、格子定数aに換算した離隔距離(r/a)が、0.38以上となる場合、光出射面に垂直でない方向に0次光以外のビームパターンを出射しつつも、出射光に含まれる0次光の強度が0以下になる現象が観察され、0.5以下まで、0次光の低い強度が観測された。
それぞれの副異屈折率領域の第2面積(副面積S)が大きいほど回折強度は大きくなる。また、面積が同一であれば、副異屈折率領域による0次光強度は、主異屈折率領域による0次光強度を超えることはないため、副面積S(第2面積)>主面積S(第1面積)の場合に効果的に0次光を抑制することができる。
第2の半導体発光素子においては、前記ビームパターンは、前記位相変調層におけるXY平面に平行な光出射面上に形成される実空間上の二次元電界強度分布を、二次元フーリエ変換した遠視野像であり、前記遠視野像を二次元逆フーリエ変換して得られる複素振幅f(x,y)は、虚数単位をj、振幅項をA(x,y)、位相項をP(x,y)として、f(x,y)=A(x,y)×exp[jP(x,y)]、で与えられ、前記単位構成領域内において前記副異屈折率領域の重心と、この副異屈折率領域が含まれる単位構成領域の格子点(重心)とを結ぶ線分が、X軸との成す角度φは、比例定数をC、定数をBとして、φ(x,y)=C×P(x,y)+Bで与えられることを特徴とする。
第3の半導体発光素子においては、前記遠視野像は、実空間上の二次元電界強度分布を二次元フーリエ変換した波数空間における座標(k、k)において、複数の画像領域FR(k、k)から構成され、前記画像領域FR(k,k)は、それぞれが正方形で、波数空間における規格化した波数kを与えるKx軸方向にM2個(M2は、1以上の整数)、規格化した波数kを与えるKy軸方向にN2個(N2は、1以上の整数)、配列するように、二次元配置されており、複素振幅f(x,y)を与える前記二次元逆フーリエ変換は、以下の式で与えられる。
Figure 0007103817000001
第4の半導体発光素子は、前記XYZ直交座標系における座標(x,y,z)を示す球面座標(r,θ tilt ,θ rot )は、動径の長さrと、前記Z軸からの前記動径の傾き角θ tilt と、前記動径が前記XY平面上に投影された線分の前記X軸からの回転角θ rot とを用いて、以下の関係を満たしている。
x=r・sinθtilt・cosθrot
y=r・sinθtilt・sinθrot
z=r・cosθtilt
前記半導体発光素子から、傾き角θ tilt 及び回転角θ rot で出射されるビーム群が形成する輝点の集合を遠視野像とすると、Kx-Ky平面における前記遠視野像は、Kx軸における規格化した波数k及びKy軸における規格化した波数kは、前記半導体発光素子の発振波長をλとして、以下の関係を満たしている。
=(a/λ)・sinθtilt・cosθrot
=(a/λ)・sinθtilt・sinθrot
第5の半導体発光素子は、前記位相変調層に光学的に結合した活性層を挟む第1クラッド層及び第2クラッド層を有することを特徴とする。クラッド層があるため活性層内に光を集めることができ、レーザ光強度を向上させることができる。
本発明の半導体発光素子によれば、0次光を低減することができる。
図1は、半導体レーザ素子の縦断面構成を示す図である。 図2は、実施形態に係る位相変調層の斜視図である。 図3は、実施形態に係る位相変調層の平面図である。 図4は、実施形態に係る位相変調層の平面図である。 図5は、(A)実施形態における異屈折率領域の位置と、(B)比較例Aにおける異屈折率領域の位置を示すグラフである。 図6は、副異屈折率領域の格子点位置からのシフト量(r/a)と、出力ビーム強度(任意単位)との関係を示すグラフである。 図7は、第1比較例に係る位相変調層の平面図である。 図8は、第2比較例に係る位相変調層の平面図である。 図9は、第3比較例に係る位相変調層の平面図である。 図10は、第4比較例に係る位相変調層の平面図である。 図11は、半導体レーザ素子の縦断面構成を示す図である。 図12は球面座標(r,θtilt,θrot)からXYZ直交座標(x,y,z)への座標変換を説明するための図である。
以下、実施の形態に係る半導体レーザ素子(半導体発光素子)及びレーザ装置について説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
図1は、半導体レーザ素子の縦断面構成を示す図である。
半導体レーザ素子LDは、活性層4からのレーザ光を選択して外部に出力している。なお、半導体レーザ素子LDの構造として、活性層を有する他の半導体レーザ素子から、光ファイバを介して、或いは、直接的に、位相変調層6内にレーザ光が入射して結合する構成としてもよい。位相変調層6内に入射したレーザ光は、位相変調層6内において位相変調層の格子に応じた所定のモードを形成し、位相変調層6の表面から垂直方向に所望のパターンを有するレーザビームとして、外部に出射される。
位相変調層6は、活性層4に光学的に結合している。ここで、位相変調層6の厚み方向をZ軸方向とし、Z軸に垂直な軸をX軸、これらの二軸の双方に垂直な軸をY軸とするXYZ三次元直交座標系を設定する。位相変調層6は、第1屈折率媒質からなる基本層6Aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり基本層6A内に存在する複数の異屈折率領域6Bとを備えている。
半導体レーザ素子LDは、XY面内方向において定在波を形成し、Z軸方向に位相制御された平面波を出力するレーザ光源であり、レーザ光を発生する活性層4と、活性層4を挟む上部クラッド層7及び下部クラッド層2と、これらの間に設けられ、活性層4を挟む上部光ガイド層5及び下部光ガイド層3を備えており、上部クラッド層7と活性層4との間には、位相変調層6が設けられている。なお、図1に示す構造では、第2電極E2は、コンタクト層8の中央領域に設けられている。
この構造においては、半導体基板1上には、下部クラッド層2、下部光ガイド層3、活性層4、上部光ガイド層5、位相変調層6、上部クラッド層7、コンタクト層8が順次積層されており、半導体基板1の下面には第1電極E1が設けられ、コンタクト層8の上面には第2電極E2が設けられている。第1電極E1と第2電極E2との間に駆動電流が供給された場合、活性層4内において電子と正孔の再結合が生じ、活性層4が発光する。これらの発光に寄与するキャリア及び発生した光は、上部光ガイド層5及び下部光ガイド層3と、上部クラッド層7及び下部クラッド層2とによって、これらの間に効率的に閉じ込められる。上部クラッド層7(第2クラッド層)及び下部クラッド層2(第1クラッド層)の屈折率は、いずれも活性層4の屈折率よりも低く、これらの層は活性層4を挟んでいる。
活性層4から出射されたレーザ光は、位相変調層6の内部に入射し、所定のモードを形成する。位相変調層6内に入射したレーザ光は、上部クラッド層7、コンタクト層8、第2電極E2を介して、レーザビームとして、基板表面に垂直に外部に出射される。位相変調層6の実効屈折率をnとした場合、位相変調層6が選択する波長λ(=a×n)は、活性層4の発光波長範囲内に含まれている。位相変調層(回折格子層)は、活性層の発光波長のうちの波長λを選択して、外部に出力することができる。
このときの発振状態は、全ての異屈折率領域6Bが揺らぎなく周期構造を維持して配置されている場合、すなわち、第1比較例(図7)のように、異屈折率領域6Bが、正方格子の格子点位置に配置された主異屈折率領域6BMのみからなる場合、正方格子のΓ点発振に対応したものとなり、基本波の波数ベクトルが、位相変調層6の面内において、横方向(Γ-X方向)と縦方向(Γ―Y方向)を向き、正方格子の格子線に沿った4方向に主要光波が進む定在波が形成される(Γ点発振)。第1比較例(図7)のような周期構造を有する位相変調層6を用いた場合、出力されるレーザ光の遠視野像は、光束の中心位置において、0次光が観察される。一方、実施形態に係る位相変調層においては、0次光の強度が抑制される。
図2は、実施形態に係る位相変調層の斜視図であり、図3は、実施形態に係る位相変調層6の平面図である。
位相変調層6は、第1屈折率媒質からなる基本層6Aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり、基本層6A内に存在する複数の異屈折率領域6Bとを備えている。複数の異屈折率領域6Bは、複数の主異屈折率領域6BMと、複数の副異屈折率領域6BSとからなる。複数の主異屈折率領域6BMは、正方格子の格子点位置に配置され、周期構造を構成している。一方、副異屈折率領域6BSに関しては、それぞれの主異屈折率領域6BMを中心として、その周囲の円軌道上に配置されている。1つの主異屈折率領域6BMに着目すると、1つの副異屈折率領域6BSが、その惑星のように位置しており、XY平面内において、主異屈折率領域6BMは周期構造を有している一方で、副異屈折率領域6BSは非周期構造を有しており、一軸上には整列して配置されていない。
なお、図3のXY平面内において、それぞれの主異屈折率領域6BMの面積を主面積Sとし、それぞれの副異屈折率領域6BSの面積を副面積Sとする。
なお、副面積Sは、主面積Sよりも大きい。
位相変調層6は、異屈折率領域の配置位置を決定するための正方格子を有している。この正方格子の格子点位置に、主異屈折率領域6BMが配置される。さらに詳細には、正方格子の格子点位置に、主異屈折率領域6BMの重心位置が配置される。
それぞれの主異屈折率領域6BMは、自身が属する単位構成領域内に位置している。1つの単位構成領域内には、1つの主異屈折率領域6BMが位置しており、単位構成領域の形状は正方形である。
これらの単位構成領域は、最も近くで隣接する前記主異屈折率領域6BMの重心位置間を接続した線分を規定し、この線分の垂直二等分線で定義される単位構成領域境界によって区画されている。
単位構成領域境界(一点鎖線)において区画された個々の単位構成領域内においては、以下のような条件が全て満たされている。
・単位構成領域(一点鎖線)の重心位置に正方格子(点線)の格子点が一致する。
・単位構成領域(一点鎖線)の重心位置に主異屈折率領域6BMの重心位置が配置されている。
・1つの単位構成領域(一点鎖線)内に含まれる主異屈折率領域6BMの数は1つである。
・1つの単位構成領域内に含まれる副異屈折率領域6BSの重心の数は1つである。
・副異屈折率領域6BSの重心位置は、主異屈折率領域6BMの重心位置から距離rだけ離隔している。
・第1仮想的正方格子(点線)の格子定数をaとすると、0.38≦(r/a)≦0.5を満たす
・副異屈折率領域6BSは、一軸方向に沿って整列しない非周期構造を有している。
この半導体レーザ素子は、光出射面に垂直でない方向に0次光以外のビームパターンを出射する。なお、副異屈折率領域6BSの重心位置は、単位構成領域の外には位置しておらず、隣接する副異屈折率領域6BSが合体しないように構成されている。
副異屈折率領域6BSの配置は、以下のように設定する。
まず、フーリエ変換をFで示し、逆フーリエ変換をF-1で示すとすると、目的となるレーザ光の遠視野像の二次元電界強度FR(x,y)を二次元逆フーリエ変換し(=F-1{FR(x,y)})、近視野像を求める。この近視野像を、位相変調層6から出力するには、XY平面内の各単位構成領域内において、主異屈折率領域6BMの重心位置から、副異屈折率領域6BSの重心位置までの距離rと、これらの重心位置を結ぶ線分とX軸のなす角度φとが、以下の条件を満たせばよい。但し、Imagは複素数のうち虚部のみを取り出す関数を意味している。また、logは自然対数を底とする対数関数を意味している。なお、P(x,y)は、後述の位相項である。
P(x,y)=Imag[log(F-1{FR(x,y)})],
(r/a)≦0.5
但し、P(x、y)はradian表記とする。
これらの格子条件を満たしつつ、格子定数aに換算した離隔距離(r/a)が、0.38以上となる場合、レーザ光の出射光に含まれる0次光の強度が0以下になる現象が観察され、0.5以下まで、0次光の低い強度が観測される。
図4は、図3に示した位相変調層に円形の補助線を追加した平面図である。
主異屈折率領域6BMの周囲を囲む円形の補助線上に、副異屈折率領域6BSが、配置されている。副異屈折率領域6BSは、一軸上に整列したり、周期性を有して配置されているわけではないが、全ての副異屈折率領域6BSの主異屈折率領域6BMからの距離r(重心間距離)は同一である。
半導体発光素子から出射されるレーザ光のビームパターン(遠視野像)は、少なくとも1つのスポット、直線、十字架、図形、写真、CG(コンピュータグラフィックス)、又は、文字を含むことができる。例えば、文字「A」を表示しようとする場合、ビームパターン(遠視野像)を二次元逆フーリエ変換して、その複素振幅の位相に応じた角度φの方向に、異屈折率領域の重心位置Gを、仮想的な正方格子の格子点位置Oからずらせばよい。角度φを調整することにより、任意のビームパターンや一対の斜め方向単峰ビームを得ることもできる。レーザビームのフーリエ変換後の遠視野像は、単一若しくは複数のスポット形状、円環形状、直線形状、文字形状、二重円環形状、又は、ラゲールガウスビーム形状などの各種の形状をとることができる。
また、ビーム方向についても、制御することができるため、レーザ素子を1次元又は2次元にアレイ化することにより、高速走査を電気的に行うレーザ加工機などにも利用することができる。
また、フーリエ変換又は逆フーリエ変換で得られた複素振幅分布から、強度分布と位相分布を得る方法として、例えば強度分布I(x,y)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布P(x,y)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
XY平面内におけるビームパターン(遠視野像)の特定の領域を二次元逆フーリエ変換した複素振幅F(X,Y)は、jを虚数単位として、XY平面内の強度分布I(X,Y)と、XY平面内の位相分布P(X,Y)を用いて、F(X,Y)=I(X,Y)×exp{P(X,Y)j}で与えられ、位相変調層6において、第1仮想的正方格子のそれぞれの格子点から、対応するそれぞれの副異屈折率領域6BSの重心へ向かう方向と、X軸との成す角度をφとし、定数をCとし、X軸方向におけるx番目、Y軸方向におけるy番目の仮想的な正方格子点の位置を(x、y)とし、位置(x,y)における角度をφ(x,y)とすると、φ(x、y)=C×P(X,Y)を満たしている。
図5は、(A)実施形態における異屈折率領域の位置と、(B)比較例Aにおける異屈折率領域の位置を示す概略図である。
実施形態においては、任意の主異屈折率領域6BMの重心位置がXY平面上で原点Oの位置に存在すると仮定し、この仮の原点OからのX軸方向の距離をx、Y軸方向の距離をyとすると、副異屈折率領域6BSの重心位置Gは、主異屈折率領域6BMの重心位置から、距離r(x,y)の位置にある(r=(x+y1/2)。原点Oと重心位置Gとを結ぶ線分がX軸となす角度をφ(x,y)とする。なお、副異屈折率領域6BSの直径はDとする。
比較例Aにおいては、実施形態において、原点Oの位置に存在する主異屈折率領域6BMを取り除いた構造とする。実施形態においては、0次光の強度は低くなるが、比較例Aの場合のパターンを有する場合、0次光を相殺させることが出来ず、原理的に0次光を抑制することが出来ない。言い換えると、比較例Aの配置では本発明の効果を奏さない。
図6は、実施形態に係る上記の半導体レーザにおいて、副異屈折率領域が第1仮想的正方格子の格子点位置(上記原点O)からのシフトした場合のシフト量(r/a)と、出力光の強度I(任意単位)との関係を示すグラフである。
同図に示すように、出力光の強度Iは、シフト量(r/a)の増加に伴って変化する。すなわち、0次光は、シフト量(r/a)が0の場合には最大値1.0であり、シフト量(r/a)が増加するに伴って減少し、0.38において0となる。これは主副の関係にある異屈折率領域に起因した平面波が、消失性干渉を生じているためであり、0次光強度が低減している。したがって、0次光の強度を小さくするには、上述の範囲が好ましい。なお、シフト量(r/a)の増加に伴って、1次光の強度は増加し、-1次光の強度も増加し、それぞれ、シフト量(r/a)が0.3において極大値と極小値をとり、これ以上のシフト量(r/a)では、強度は減少する。
なお、副異屈折率領域6BSの直径はDであるので、副面積Sはπ(D/2)となる。なお、主異屈折率領域6BMの直径をMとすれば、主面積Sはπ(M/2)となる。ここで、1.0≦副面積S/主面積Sを満たすことが更に好ましい。副面積Sの方が主面積Sよりも大きい場合に、0次光抑制の効果が十分期待できるが、特に、下限よりも小さいと副異屈折率領域によって生じる逆位相0次光の強度が主異屈折率領域によって生じる0次光の強度よりも小さくなり、十分な0次光抑制効果が期待出来ないからである。
次に、図1に示した各層の材料について、説明する。
上部に位置するコンタクト層8は、GaAsからなり、導電型はP型であり、厚みは50nm~500nm(好ましくは200nm)である。上部クラッド層7は、AlGaAsからなり、導電型はP型、厚みは1×10nm~3×10nm(好ましくは2×10nm)である。位相変調層6(回折格子層)は、基本層6Aと異屈折率領域6Bとからなる。基本層6AはGaAsからなり、導電型はI型であり、厚みは50nm~20nm(好ましくは100nm)であり、異屈折率領域6BはAlGaAsからなり、導電型はI型であり、厚みは50nm~20nm(好ましくは100nm)である。上部光ガイド層5は、2層構造を有しており、上層はGaAsからなり、導電型はI型であり、厚みは10nm~200nm(好ましくは50nm)であり、下層はAlGaAsからなり、導電型はP型又はI型であり、厚みは10nm~100nm(好ましくは50nm)である。
活性層4は、一層当たりの厚みが5nm~20nm程度の障壁層と井戸層を交互に積層した多重量子井戸構造MQW(障壁層:I型のAlGaAs/井戸層:I型のInGaAs)を有しており、厚みは10nm~100nm(好ましくは30nm)である。下部光ガイド層3は、AlGaAsからなり、導電型はI型、厚みは0~300nm(好ましくは150nm)である。下部クラッド層2は、AlGaAsからなり、導電型はN型、厚みは1×10nm~3×10nm(好ましくは2×10nm)である。半導体基板1は、GaAsからなり、導電型はN型、厚みは80μm~350μm(好ましくは150μm)である。このように、各層には、第1導電型(N型)の不純物又は、第2導電型(P型)の不純物が添加されており(不純物濃度は1×1017~1×1021/cm)、意図的にはいずれの不純物も添加されていない領域は真性(I型)となっている。I型の不純物濃度は1×1015/cm以下である。
以下、各種比較例に対する実施形態の構造の優位性について説明する。
図7は、第1比較例に係る位相変調層の平面図である。
この構造は、図3に示した構造から、副異屈折率領域6BSを除いた構造である。この構造を有する位相変調層を図1の半導体レーザ素子に採用した場合、高強度の0次光が観察される。
図8は、第2比較例に係る位相変調層の平面図である。
この構造は、第1比較例に示した構造において、シフト量(r/a)=0.5の位置に、周期的であって規則的に副異屈折率領域6BSを配置した構造である。小さな方の副異屈折率領域6BSは、Y=X+b+Nb(bは定数、bは変数、Nは整数)の直線上において、各直線に沿って、等間隔に配置されている。この構造を有する位相変調層を図1の半導体レーザ素子に採用した場合、見た目の出力は第1比較例と同一である。すなわち光出射面に垂直な方向への点状ビームのみが得られ、任意形状の2次元ビームパターンを出力するという本発明の効果を得ることが出来ない。
図9は、第3比較例に係る位相変調層の平面図である。
この構造は、第1比較例に示した構造において、各主異屈折率領域の隣に、周期的であって規則的に副異屈折率領域6BSを配置した構造である。この構造を有する位相変調層を図1の半導体レーザ素子に採用した場合、見た目の出力は第1比較例と同一である。すなわち光出射面に垂直な方向への点状ビームのみが得られ、任意形状の2次元ビームパターンを出力するという本発明の効果を得ることが出来ない。
図10は、第4比較例に係る位相変調層の平面図である。
この構造は、第1比較例に示した構造において、X方向およびY方向のシフト量がそれぞれ(r/a)=0.5の位置に、周期的であって規則的に副異屈折率領域6BSを配置した構造である。小さな方の副異屈折率領域6BSは、Y=X+b+Nb(bは定数、bは変数、Nは整数)の直線上において、各直線に沿って、等間隔に配置され、主異屈折率領域6BMの位置と副異屈折率領域6BSの位置は、相互に置換しても同一の構造となる関係を有している。この構造を有する位相変調層を図1の半導体レーザ素子に採用した場合、光出射面に垂直な方向への点状ビームだけが得られるが、その出力が第1比較例と比べて弱いという現象が観察される。
なお、半導体レーザ素子は、従来から知られる複数の構造をとることができる。例えば、図11は、半導体レーザ素子の縦断面構成を示す図であり、図1に示したものとの相違点は、レーザ光を半導体基板1の裏面から出射する点である。
半導体基板1の下面において、第2電極E2に対向する領域において、第1電極E1が開口している場合、レーザビームは下面から外部に出射する。この場合、半導体基板1の下面に設けられた第1電極E1は、中央部に開口を有する開口電極であり、第1電極E1の開口内及び周辺には、反射防止膜(第1絶縁膜IN1)を設けることとしてもよい。この場合、反射防止膜は、窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)などの誘電体単層膜或いは誘電体多層膜からなる。誘電体多層膜としては、例えば、酸化チタン(TiO)、二酸化シリコン(SiO)、一酸化シリコン(SiO)、酸化ニオブ(Nb)、五酸化タンタル(Ta)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化セリウム(CeO)、酸化インジウム(In)、酸化ジルコニウム(ZrO)などの誘電体層群から選択される2種類以上の誘電体層を適当に積層した膜を用いることができる。例えば、波長λの光に対する光学膜厚で、λ/4の厚さの膜を積層する。なお、反射膜や反射防止膜は、スパッタ法を用いて形成することができる。
また、コンタクト層8の上面には、第2電極E2が設けられているが、第2電極E2の形成領域以外の領域は、必要に応じて、SiO又はシリコン窒化物などの絶縁膜(第1絶縁膜IN2)で被覆し、表面を保護することができる。
次に、上述の半導体レーザ素子の製造方法について、若干の説明をしておく。
上述のレーザ素子の製造においては、各化合物半導体層は、有機金属気相成長(MOCVD)法を用いる。半導体基板1の(001)面上に結晶成長を行うが、これに限られるものではない。また、上述のAlGaNを用いたレーザ素子の製造においては、AlGaAsの成長温度は500℃~850℃であって、実験では550~700℃を採用し、成長時におけるAl原料としてTMA(トリメチルアルミニム)、ガリウム原料としてTMG(トリメチルガリウム)およびTEG(トリエチルガリウム)、As原料としてはAsH3(アルシン)、N型不純物用の原料としてSi26(ジシラン)、P型不純物用の原料としてDEZn(ジエチル亜鉛)を用いる。GaAsの成長においては、TMGとアルシンを用いるが、TMAを用いない。InGaAsは、TMGとTMI(トリメチルインジウム)とアルシンを用いて製造する。絶縁膜の形成は、その構成物質を原料としてターゲットをスパッタして形成すればよい。
すなわち、上述のレーザ素子は、まず、N型の半導体基板(GaAs)1上に、N型のクラッド層(AlGaAs)2、ガイド層(AlGaAs)3、多重量子井戸構造(InGaAs/AlGaAs)の活性層4、光ガイド層(GaAs/AaGaAs)5、位相変調層となる基本層(GaAs)6Aを、MOCVD(有機金属気相成長)法を用いて順次、エピタキシャル成長させる。次に、エピタキシャル成長後のアライメントをとるため、PCVD(プラズマCVD)法により、SiN層を基本層6A上に形成し、次に、レジストを、SiN層上に形成する。更に、レジストを露光・現像し、レジストをマスクとしてSiN層をエッチングし、SiN層を一部残留させて、アライメントマークを形成する。残ったレジストは除去する。
次に、基本層6Aに別のレジストを塗布し、アライメントマークを基準とし、レジスト上に電子ビーム描画装置で2次元微細パターンを描画し、現像することでレジスト上に2次元微細パターンを形成する。その後、レジストをマスクとして、ドライエッチングにより100nm程度の深さを持つ2次元微細パターンを基本層6A上に転写し、孔(穴)を形成する、レジストを除去する。孔の深さは、100nmである。この孔の中に、異屈折率領域6B(AlGaAs)となる化合物半導体を孔の深さ以上に再成長させる。次に、上部クラッド層(AlGaAs)7、コンタクト層(GaAs)8を順次MOCVDで形成し、適当な電極材料を蒸着法又はスパッタ法で基板の上下面に形成して第1及び第2電極を形成する。また、必要に応じて、基板の上下面に絶縁膜をスパッタ法等で形成することができる。
位相変調層を活性層の下部に備える場合には、活性層及び下部光ガイド層の形成前に、下部クラッド層上に位相変調層を形成すればよい。
また、柱状の異屈折率領域を空隙とし、空気、窒素又はアルゴン等の気体が封入されてもよい。また、上述の仮想的な正方格子における縦及び横の格子線の間隔は、波長を等価屈折率で除算した程度或いは波長を等価屈折率および√2で除算した程度であり、具体的には300nm程度或いは210nm程度に設定されることが好ましい。なお、格子間隔aの正方格子の場合、直交座標の単位ベクトルをx、yとすると、基本並進ベクトルa=ax、a=ayであり、並進ベクトルa、aに対する基本逆格子ベクトルb=(2π/a)y、b=(2π/a)xである。格子の中に存在する波の波数ベクトルがk=Nb+Mb(N、Mは任意の整数)の場合に、波数kはΓ点に存在するが、なかでも波数ベクトルの大きさが基本逆格子ベクトルの大きさに等しい場合には、格子間隔aが波長λに等しい共振モード(XY平面内における定在波)が得られる。正方格子と平行な面内に電界が存在するようなTEモードを考えると、このように格子間隔と波長が等しい定在波状態は正方格子の対称性から4つのモードが存在するが、4つの定在波状態のいずれのモードで発振した場合においても同様に所望のビームパターンが得られる。
なお、上述の位相変調層内の定在波が孔形状によって散乱され、面垂直方向に得られる波面が位相変調されていることによって所望のビームパターンが得られる。このため偏光板がなくとも所望のビームパターンが得られる。このビームパターンは、一対の単峰ビーム(スポット)であるばかりでなく、前述したように、文字形状、2以上の同一形状スポット群、或いは、位相、強度分布が空間的に不均一であるベクトルビームなどとすることも可能である。
なお、基本層6Aの屈折率は3.0~3.5、異屈折率領域6Bの屈折率は1.0~3.4であることが好ましい。また、上述のように、主異屈折率領域6BMに起因するレーザ光の位相と、副異屈折率領域6BSのレーザ光の位相は、0次光位置において、反転して相殺する傾向がある。
なお、上述の構造では、基本層6Aの複数箇所において、エッチングにより、周期的に空孔を形成し、形成した空孔内に異屈折率領域6Bを、有機金属気相成長法、スパッタ法又はエピタキシャル法を用いて、埋め込んでいるが、基本層6Aの孔内に異屈折率領域6Bを埋め込んだ後、更に、その上に異屈折率領域6Bと同一の材料した異屈折率被覆層を堆積してもよい。
なお、上述の構造において、活性層4および位相変調層6を含む構成であれば、材料系、膜厚、層の構成には自由度を持つ。ここで、仮想的な正方格子からの摂動が0の場合のいわゆる正方格子フォトニック結晶レーザに関してはスケーリング則が成り立つ。すなわち、波長が定数α倍となった場合には、正方格子構造全体をα倍することによって同様の定在波状態を得ることが出来る。同様に、本発明においても、実施形態で開示した以外の波長においてもスケーリング則によって位相変調層の構造を決定することが可能である。従って、青色、緑色、赤色などの光を発光する活性層を用い、波長に応じたスケーリング則を適用することで、可視光を出力する半導体発光素子を実現することも可能である。
また、上記の半導体レーザ素子の発振は、Γ点発振であり、位相変調層6の実効屈折率をnとした場合、位相変調層6が選択する波長λ(=格子定数a×実効屈折率n)は、活性層4の発光波長範囲内に含まれている。位相変調層6は、活性層4の発光波長のうちの波長λを選択して、外部に出力することができる。
以上、説明したように、上述の実施形態に係る半導体発光素子は、活性層4に光学的に結合した位相変調層6を備えた半導体発光素子において、位相変調層6の厚み方向をZ軸方向とするXYZ三次元直交座標系を設定し、位相変調層6は、第1屈折率媒質からなる基本層6Aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり基本層内に存在する複数の異屈折率領域6Bとを備え、複数の異屈折率領域6Bは、副面積Sは、主面積Sよりも大きいこととして、XY平面内において、それぞれが主面積Sを有する主異屈折率領域6BMからなる第1グループと、XY平面内において、それぞれが副面積Sを有する副異屈折率領域6BSからなる第2グループとを含み、基本層6Aを含むXY平面内において、X軸方向及びY軸方向に延びた格子線群からなる第1仮想的正方格子を設定し、基本層6Aを含むXY平面内において、第1仮想的正方格子においてX軸方向に沿って隣接する格子点間を結ぶ線分の中点を通り当該線分に垂直な垂直二等分線群と、Y軸方向に沿って隣接する格子点間を結ぶ線分の中点を通り当該線分に垂直な垂直二等分線群からなる格子線群(図3のVL2)からなる第2仮想的正方格子を設定し、第2仮想的正方格子において区画された個々の単位構成領域内においては、単位構成領域の重心位置に第1仮想的正方格子の格子点が一致し、且つ、単位構成領域の重心位置に主異屈折率領域6BMの重心位置が配置され、且つ、1つの単位構成領域内に含まれる主異屈折率領域の数は1つであり、且つ、1つの単位構成領域内に含まれる副異屈折率領域6BSの重心の数は1つであり、且つ、副異屈折率領域6BSの重心位置は、主異屈折率領域6BMの重心位置から距離rだけ離隔しており、第1仮想的正方格子の格子定数をaとすると、0.38≦(r/a)≦0.5を満たし、副異屈折率領域6BSは、一軸方向に沿って整列しない非周期構造を有しており、光出射面に垂直でない方向に0次光以外のビームパターンを出射する。このとき、任意形状の2次元ビームパターンを出力しても良い。
上述の半導体発光素子は、レーザ光の入射される位相変調層を備えたレーザ素子において、位相変調層は、第1屈折率媒質からなる基本層と、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり前記基本層内に存在する複数の異屈折率領域と、を備え、位相変調層の厚み方向をZ軸方向とし、Z軸に垂直な軸をX軸、Z軸及びX軸の双方に垂直な軸をY軸とするXYZ三次元直交座標系を設定し、異屈折率領域のXY平面内における平面形状は、概略円形、概略正方形、又は、90°の回転対称性を有する概略多角形、であり、主異屈折率領域は、Z軸方向に垂直な第1面積を有し、副異屈折率領域は、Z軸方向に垂直な第2面積を有し、主異屈折率領域の重心位置は、正方格子の格子点に位置し、第2面積は、第1面積よりも大きい。
任意のビームパターンを生じさせようとした場合、副異屈折率領域は、一軸方向に沿って整列しない非周期構造を有する。図8の場合には副異屈折率領域が空間周期2aで配列しており、逆格子空間上ではブリルアン境界上に副異屈折率領域に由来する点状の回折が存在することになる。ブリルアン境界上は常にライトラインの外、すなわち全反射してデバイス上面には光が出てこない部分に対応しているので、図8の場合には主異屈折率領域に由来する0次光のみが出力され、0次光以外のビームパターンは出力されることがなく、任意のビームパターンを出力可能な半導体発光素子には成り得ない。また、図9の場合には全ての単位格子が同一形状をしており、位相分布が一定の場合に対応する。この場合も、0次光のみが出力され、0次光以外のビームパターンは出力されず、任意のビームパターンを出力可能な半導体発光素子にはならない。さらに補足すると、空間的な位相分布が一様である場合にはその逆フーリエ変換は点に対応することとなり、二次元的な任意のビームパターンを得ることは出来ない。
上述の格子条件を満たしつつ、格子定数aに換算した離隔距離であるシフト量(r/a)が、0.38以上となる場合、出射光に含まれる0次光の強度が0以下になる現象が観察され、0.5以下まで、0次光の低い強度が観測された。
図12は、球面座標(r,θtilt,θrot)からXYZ直交座標系における座標(x,y,z)への座標変換を説明するための図である。なお、ここでのrは、座標変換を説明するために用いる適当な長さのパラメータである。
前記XYZ直交座標系における座標(x,y,z)を示す球面座標(r,θ tilt ,θ rot )は、動径の長さrと、前記Z軸からの前記動径の傾き角θ tilt と、前記動径が前記XY平面上に投影された線分の前記X軸からの回転角θ rot とを用いて、以下の関係を満たしている。
x=r・sinθtilt・cosθrot
y=r・sinθtilt・sinθrot
z=r・cosθtilt。
半導体発光素子から、傾き角θ tilt 及び回転角θ rot で出射されるビーム群が形成する輝点の集合を遠視野像とすると、Kx-Ky平面における前記遠視野像は、Kx軸における規格化した波数k及びKy軸における規格化した波数kは、前記半導体発光素子の発振波長をλとして、以下の関係を満たしている。なお、aは第1仮想的正方格子の格子定数である。
=(a/λ)・sinθtilt・cosθrot
=(a/λ)・sinθtilt・sinθrot。
なお、座標(x,y,z)により、実空間であるXYZ直交座標系において設定される所定平面上の設計上の光像が表現される。なお、kは、規格化波数であってX軸に対応したKx軸上の座標であり、kは規格化波数であってY軸に対応するとともに、Kx軸に直交するKy軸上の座標である。
規格化波数は、仮想的な正方格子の格子間隔に相当する波数を1.0として規格化された波数を意味する。このとき、Kx軸およびKy軸により規定される波数空間において、光像に相当するビームパターンを含む特定の波数範囲が、それぞれが正方形状のM2(1以上の整数)×N2(1以上の整数)個の画像領域FRで構成される。なお、整数M2は、整数M1と一致する必要はない。同様に、整数N2は、整数N1と一致する必要もない。また、式(4)および式(5)は、例えば、「Y. Kurosaka et al.," Effects of non-lasing band intwo-dimensional photonic-crystal lasers clarified using omnidirectional bandstructure," Opt. Express 20, 21773-21783 (2012)」に開示されている。
実空間のパターンをフーリエ変換すると、その波数(又は周波数)の成分が得られ、得られた波数空間(k空間)は、実空間のパターンが、どのような周波数成分で形成されているかが示される。実空間における物理的なパターン、及び、電磁界分布パターンは、いずれもフーリエ変換することができるが、半導体レーザでは、遠視野像のビームパターンは、光出射面(XY平面)における電磁界分布(近視野像)の二次元フーリエ変換となる。
波数空間において、Kx軸方向の座標成分k(1以上M2以下の整数)とKy軸方向の座標成分k(1以上N2以下の整数)とで特定される画像領域FR(kx,)それぞれを、X軸方向の座標成分x(1以上M1以下の整数)と、Y軸方向の座標成分y(1以上N1以下の整数)とで特定されるX-Y平面上の単位構成領域R(x,y)に、二次元逆フーリエ変換(F-1)を行うと、実空間での複素振幅f(x,y)が得られる。すなわち、遠視野像は、実空間上の二次元電界強度分布を二次元フーリエ変換した波数空間における座標(k、k)において、複数の画像領域FR(k、k)から構成され、画像領域FR(k,k)は、それぞれが正方形で、波数空間における規格化した波数kを与えるKx軸方向にM2個(M2は、1以上の整数)、規格化した波数kを与えるKy軸方向にN2個(N2は、1以上の整数)、配列するように、二次元配置されており、複素振幅f(x,y)を与える二次元逆フーリエ変換は、jを虚数単位として、以下の式で与えられる。
Figure 0007103817000002
また、遠視野像のビームパターンは、位相変調層におけるXY平面に平行な光出射面上に形成される実空間上の二次元電界強度分布を、二次元フーリエ変換したものであり、遠視野像を二次元逆フーリエ変換して得られる複素振幅f(x,y)は、虚数単位をj、振幅項をA(x,y)、位相項をP(x,y)として、以下の式で与えられる。
f(x,y)=A(x,y)×exp[jP(x,y)]。
また、単位構成領域内において副異屈折率領域の重心と、この副異屈折率領域が含まれる単位構成領域の格子点(重心)とを結ぶ線分(図5のr)が、X軸との成す角度φは、比例定数をC、定数をBとして、以下の式で与えられる。
φ(x,y)=C×P(x,y)+B。
但し、φ(x、y)はdegree表記とする。
なお、位相変調層は、以下の第1条件および第2条件を満たすように構成される。すなわち、第1条件は、単位構成領域R(x,y)内において、副異屈折率領域6BSの重心Gが、主異屈折率領域6BMの重心である格子点O(x,y)から離れた状態で配置されていることである。また、第2条件は、主異屈折率領域6BMの重心である格子点O(x,y)から、この格子点Oが所属する単位構成領域内における副異屈折率領域6BSの重心Gまでの線分長r(x,y)(図5のr)が、M1個×N1個の単位構成領域Rそれぞれにおいて共通の値に設定された状態で、上記線分長r(x,y)を与える線分とX軸との成す角度φ(x,y)が、上記φ(x,y)の式の関係を満たすように、対応する副異屈折率領域6BSが単位構成領域R(x,y)内に配置される。
なお、Cは比例定数であって例えば180°/πであり、Bは任意の定数であって例えば0である。なお、P(x,y)は、複素振幅f(x,y)の位相項である。
すなわち、所望の光像を得たい場合、波数空間上に射影されたKx-Ky平面上に形成される光像を位相変調層上のX-Y平面上の単位構成領域R(x,y)に二次元逆フーリエ変換し、その複素振幅f(x,y)の位相項P(x,y)に対応した回転角度φ(x,y)を、該単位構成領域R(x,y)内に配置される副異屈折率領域6BSに与えればよい。なお、レーザビームの二次元フーリエ変換後の遠視野像は、単一若しくは複数のスポット形状、円環形状、直線形状、文字形状、二重円環形状、または、ラゲールガウスビーム形状などの各種の形状をとることができる。なお、ビームパターンは波数空間上における波数情報で表わされるものであるので(Kx-Ky平面上)、目標とするビームパターンが2次元的な位置情報で表わされているビットマップ画像などの場合には、一旦波数情報に変換した後に二次元逆フーリエ変換を行うとよい。
二次元逆フーリエ変換で得られた、X-Y平面上における複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法としては、例えば強度分布(X-Y平面上における振幅項A(x,y)の分布)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布(X-Y平面上における位相項P(x,y)の分布)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
1…半導体基板、2…下部クラッド層、3…下部光ガイド層、4…活性層、5…上部光ガイド層、6…位相変調層、6A…基本層、6B…異屈折率領域、6BM…主異屈折率領域、6BS…副異屈折率領域、7…上部クラッド層、8…コンタクト層、E1…第1電極、E2…第2電極、LD…半導体レーザ素子。

Claims (5)

  1. レーザ光の入射される位相変調層を備えたレーザ素子において、
    前記位相変調層は、
    第1屈折率媒質からなる基本層と、
    前記第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり前記基本層内に存在する複数の異屈折率領域と、
    を備え、
    前記位相変調層の厚み方向をZ軸方向とし、Z軸に垂直な軸をX軸、Z軸及びX軸の双方に垂直な軸をY軸とするXYZ三次元直交座標系を設定し、
    前記異屈折率領域のXY平面内における平面形状は、
    概略円形、
    概略正方形又は
    90°の回転対称性を有する概略多角形、
    であり、
    前記異屈折率領域は、主異屈折率領域及び副異屈折率領域を備え、
    前記主異屈折率領域は、Z軸方向に垂直な第1面積を有し、
    前記副異屈折率領域は、Z軸方向に垂直な第2面積を有し、
    前記主異屈折率領域の重心位置は、正方格子の格子点に位置し、
    前記第2面積は、前記第1面積よりも大きく、
    単位構成領域が、1つの前記主異屈折率領域と、この周囲の最も近くに設けられた1つの前記副異屈折率領域とからなることとし、これら一対の異屈折率領域のみが各単位構成領域内に存在し、
    最も近くで隣接する前記主異屈折率領域の重心位置間を接続した線分を規定し、この線分の垂直二等分線で囲まれた最小の領域が、それぞれの前記単位構成領域であり、この単位構成領域内において、前記一対の異屈折率領域の全てが、位置しており、
    前記単位構成領域内における、前記主異屈折率領域に対する前記副異屈折率領域の回転角度をφとし、
    X軸及びY軸を含むXY平面内において、複数の前記単位構成領域が二次元的に配置されており、
    それぞれの前記単位構成領域のXY座標をそれぞれの前記主異屈折率領域の重心位置で与えられることとし、
    前記副異屈折率領域の重心位置は、前記主異屈折率領域の重心位置から距離rだけ離隔しており、前記正方格子の格子定数をaとすると、
    0.38≦(r/a)≦0.5、
    を満たし、
    前記主異屈折率領域は、XY平面内において周期構造を有しており、
    前記副異屈折率領域は、XY平面内において、一軸方向に沿って整列しない非周期構造を有しており、光出射面に垂直でない方向に0次光以外のビームパターンを出射する、
    ことを特徴とする半導体発光素子。
  2. 前記ビームパターンは、
    前記位相変調層におけるXY平面に平行な光出射面上に形成される実空間上の二次元電界強度分布を、二次元フーリエ変換した遠視野像であり、
    前記遠視野像を二次元逆フーリエ変換して得られる複素振幅f(x,y)は、虚数単位をj、振幅項をA(x,y)、位相項をP(x,y)として、
    f(x,y)=A(x,y)×exp[jP(x,y)]、
    で与えられ、
    前記単位構成領域内において前記副異屈折率領域の重心と、この副異屈折率領域が含まれる単位構成領域の格子点(重心)とを結ぶ線分が、X軸との成す角度φは、比例定数をC、定数をBとして、
    φ(x,y)=C×P(x,y)+B、
    で与えられることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
  3. 前記遠視野像は、実空間上の二次元電界強度分布を二次元フーリエ変換した波数空間における座標(k、k)において、複数の画像領域FR(k、k)から構成され、前記画像領域FR(k,k)は、それぞれが正方形で、波数空間における規格化した波数kを与えるKx軸方向にM2個(M2は、1以上の整数)、規格化した波数kを与えるKy軸方向にN2個(N2は、1以上の整数)、配列するように、二次元配置されており、
    複素振幅f(x,y)を与える前記二次元逆フーリエ変換は、以下の式:
    Figure 0007103817000003

    で与えられることを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
  4. XYZ直交座標系における座標(x,y,z)を示す球面座標(r,θtilt,θrot)は、動径の長さrと、Z軸からの前記動径の傾き角θtiltと、前記動径が前記XY平面上に投影された線分の前記X軸からの回転角θrotとを用いて、以下の関係を満たしており、
    x=r・sinθtilt・cosθrot
    y=r・sinθtilt・sinθrot
    z=r・cosθtilt
    前記半導体発光素子から、傾き角θtilt及び回転角θrotで出射されるビーム群が形成する輝点の集合を遠視野像とすると、
    Kx-Ky平面における前記遠視野像は、Kx軸における規格化した波数k及びKy軸における規格化した波数kは、前記半導体発光素子の発振波長をλとして、以下の関係を満たしている、
    =(a/λ)・sinθtilt・cosθrot
    =(a/λ)・sinθtilt・sinθrot
    ことを特徴とする請求項3に記載の半導体発光素子。
  5. 前記位相変調層に光学的に結合した活性層を挟む第1クラッド層及び第2クラッド層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
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