JP5926642B2 - 発光素子および発光素子アレイ - Google Patents

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Description

本発明は、発光素子に係り、特に、立体映像表示装置に用いることができる発光素子および発光素子アレイに関する。
従来、像再生型立体表示の代表的な方式として、ホログラフィ、パララクスステレオグラム、レンチキュラシート、インテグラルフォトグラフィ(以下IPと称す)などが知られている。ホログラフィを除く、これらの方式の実用化に関しては、コヒーレント光を必要としない簡易な方式で早期に実現可能と考えられている。また、IPは水平方向に加え、垂直方向の視差情報も表現することができるため、自然な立体表示が可能な装置の早期実現に有望であると考えられている(例えば非特許文献1参照)。
IPの表示システムは、光線を再生する多数の微小なレンズ(要素レンズ)を配列したレンズアレイと、各レンズに対応した画像(要素画像)を多数並べて表示するディスプレイとによって構成される。観察者は、1つの要素レンズに対応する1つの要素画像から、観察者の位置に応じた部分的な情報を得、要素画像を要素レンズの数だけ並べた立体像を観察する。IPの表示システムにおいて、立体像の解像度は、要素レンズの解像度と、要素画像の解像度と、観視距離とで決まる。また、IPの表示システムの視域角については、要素レンズの性能が支配的な要因になる。このような事情から、実用的な立体像をIP方式で生成するには、発光素子と光学素子の高精細化・高機能化が不可欠である(例えば非特許文献2参照)。
しかし、発光素子と光学素子の高精細化が進んでも、レンズを使用する光学系には、レンズの回折限界や焦点距離のように原理的に取り除くことができない性能限界も存在する。例えばディスプレイの画素サイズが、要素レンズの最小スポットサイズより小さくなると、映像ボケが発生するため、同時にスポットサイズも小さくする必要があるが、スポットサイズをAbbeの回折限界より小さくすることは原理的に不可能である。
また、レンズを用いたシステムでの視域角は、要素レンズの焦点距離に反比例するが、視域角を大きくするために要素レンズの焦点距離を無限に小さくすることはできない。さらに、視域角は、要素レンズのピッチに比例もするため、要素レンズのピッチを大きくすれば視域角の拡大が可能であるが解像度が劣化するので、レンズを用いた光学系における解像度と視域角には、トレードオフの関係がある。
IPの表示システムとは直接関係ないものの、発光素子の分野においては、自発光素子であるLED(Light Emitting Diode)は、近年、その発光特性が飛躍的に進歩したことから、各種用途で注目を集めている。LEDは、放射される光の直進性が良いため、照明器具などへの応用においては拡散させる仕組みが必要となる。LEDの放射光を拡散させる技術がさらに進み、光の放射される方位の制御が可能となれば、ディスプレイなどへの応用も可能となる。
ディスプレイの関連技術として、例えば特許文献1には、液晶ディスプレイからなる画像表示手段の手前に、液晶デバイスを用いた空間光変調素子等のビーム偏向手段を設けることで、画素からの光を偏向させて、視点位置の異なる複数の2次元画像から立体像を表示する立体表示装置が記載されている。ただし、この装置は、LEDのような発光素子を用いたディスプレイではない。
また、LEDから取り出す光の方向を制御する技術として、LED光の出射角度を調整可能な発光装置が特許文献2に記載されている。
特開平6−110374号公報 特開2008−147182号公報
「超高精細映像技術・立体映像技術」、電子情報通信学会誌、2010年5月、Vol.93, No.5, p.372-381 財団法人機械システム振興協会・財団法人光産業技術振興協会、「自然な立体視を可能とする空間像の形成に関する調査研究報告書−要旨−」、システム技術開発調査研究19-R-5、2008年3月、p.14-16
しかしながら、特許文献2に記載の発光装置は、LEDから取り出す光の方向を制御するために多種の部品が必要とされる。また、ディスプレイに応用して発光素子ごとの方位制御を行おうとする場合、多数の微細な発光素子を形成する必要がある。また、これら微細な発光素子の放射光を正面以外の方向へ射出することはきわめて難しい。
さらに、微細な構造を備えたLEDから取り出す光の方向を制御できる技術は知られていないのが現状である。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、発光素子単体で光線の成形と方向制御とを可能とする簡易な素子構造を有した発光素子および発光素子アレイを提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明に係る発光素子は、半導体からなる一側の素子表面に、光出射端として段状に先端に向かって形成された構造物を備えた発光素子であって、前記構造物は、先端の先端段部と、この先端段部よりも広く形成された少なくとも1段からなる基端段部とを備え、前記構造物の前記先端段部は、先端側に延びる中心軸に直交する断面の外径の最大値が、発光波長以上、放射光の可干渉長の2倍以下であり、前記基端段部は、前記先端段部の中心軸を含む面で2つに分けたときに対称になる対称面を有し、前記対称面とは異なる前記中心軸を含む面で2つに分けたときの各体積が異なることを特徴とする。
かかる構成によれば、発光素子において、光は、素子表面に段状に形成された構造物から出射し、外部の空気中へと出射する。また、発光素子では、構造物の先端段部の外径を発光波長以上とすることで、構造物を光導波路として効率よく機能させることができる。また、発光素子では、構造物の先端段部の外径を、放射光の可干渉長の2倍以下とすることで、光出射端の先端段部の外径の半値が放射光の可干渉長以下となる。したがって、構造物の先端段部の中心軸を挟んで径方向の両側において、素子内部の光源から基端段部だけを介して外部へ至る経路を通る光と、基端段部および先端段部を介して外部へ至る経路を通る光とを効率よく干渉させることができる。ここで、素子内部の光源から、基端段部だけを介して外部へ至る光路長は、基端段部および先端段部を介して外部へ至る光路長よりも短い。したがって、外部との界面までの光路長が長い出射端の中央部と、光路長が短い出射端の周辺部と、の間に位相差が生じる。これにより、光路長の異なる出射端から出射した光が干渉することで、所定の広がりを有した光線が成形される。また、構造物の基端段部は、先端段部の中心軸を含む対称面を備えるので、対称面を挟む2つの領域において、光線の出射方向への影響に偏りはない。一方、構造物の基端段部を、先端段部の中心軸を含む対称面とは別の面において2つに分けたときの各体積が異なっているので、この2つの領域において、光線の出射方向への影響に偏りが生じる。すなわち、2つの領域のうち体積が小さい領域の方が、出射端の中央部と周辺部との間の干渉が相対的に弱くなる。2つの領域の干渉の度合いの差が最大となるのは、対称面と直交する面で分けたときであり、このとき、光が素子表面の法線方向から体積が大きい領域の方に傾いた線上に出射することになる。
また、本発明に係る発光素子は、前記構造物の材料の屈折率が、前記素子表面を形成する半導体の屈折率よりも小さいこととしてもよい。
かかる構成によれば、発光素子では、素子内部の発光層で発光した光は、素子表面から構造物への入射角に応じて屈折し、光出射端の中央部の光軸方向から外部へ出射し易くなる。したがって、出射光の干渉により成形される光線の広がりを抑制することができる。
また、本発明に係る発光素子は、発光層と、前記発光層の上側に形成された光源マスク層と、前記光源マスク層の上側に形成された前記構造物と、を備え、前記光源マスク層が、前記構造物に対応した位置に前記構造物の前記基端段部よりも広く形成された貫通孔を備え、前記貫通孔以外の領域が前記発光層からの光を遮蔽することとしてもよい。
かかる構成によれば、発光素子では、光源マスク層に所望サイズの貫通孔を所望位置に設けることで、発光層で発光した光を、構造物に容易に入射させることができる。これにより、構造物が配置された領域以外の素子表面から出る光が、構造物から出射する光の妨げになることを防止することができる。
また、本発明に係る発光素子アレイは、前記発光素子を並べた発光素子アレイであって、それぞれの前記発光素子が、前記発光素子アレイにおける配設位置に応じた光の出射方位が予め定められており、前記構造物の前記基端段部を前記先端段部の中心軸を含み前記対称面と直交する面で2つの部分に分けたときの体積が大きい方の部分が、当該発光素子の前記配設位置に応じた光の出射方位に向けて配置されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、発光素子アレイは、それぞれの発光素子が、素子表面に設けられた構造物から出射する光の方位を所望の方向に制御できるので、立体ディスプレイの画素などへ応用することができる。また、立体ディスプレイの画素に応用する場合、画素に対応した発光素子上の構造物として、所定の傾斜角で出射する形状の構造物を一度に同様に製造することができる。また、傾斜角度として必要な全種類の角度について同様に構造物を予め作製しておくことができる。これら所定の同じ傾斜角で出射する形状の構造物を、各画素位置に対応した向きに回転させてから、発光素子上にそれぞれ設ければ、立体ディスプレイを容易に製造することができる。
請求項1に記載の発明によれば、発光素子は、素子表面に設けられた構造物において、先端段部の中心軸を含む基端段部の対称面とは異なる面を境界に基端段部の体積のバランスを崩すことで、光の干渉により素子単体で光線の成形と方向制御とを可能とすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、発光素子は、構造物の屈折率が素子表面の屈折率よりも小さいので、構造物からの出射光の干渉により成形される光線が広がらないようにすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、構造物が配置された領域以外の素子表面から出る光が、構造物から出射する光の妨げになることを防止することができる。
請求項4に記載の発明によれば、製造し易い発光素子アレイを提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る発光素子を模式的に示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の平面図である。 図2のA−A線矢視における断面図である。 参考例の発光素子を模式的に示す斜視図である。 参考例の発光素子の平面図である。 図5のB−B線矢視における断面図である。 発光素子の発光の説明図であって、(a−1)は参考例の上面図、(a−2)は参考例の断面図、(b−1)は本発明の第1実施形態の上面図、(b−2)は本発明の第1実施形態の断面図を示している。 本発明の第1実施形態に係る発光素子のシミュレーションに用いた解析条件の説明図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の放射角度を示すグラフである。 算出したZX平面のビームパターンであって、(a)は本発明の第1実施形態に係る発光素子、(b)は参考例の発光素子を示している。 本発明の第1実施形態に係る発光素子を用いたIP立体ディスプレイの概念図であって、(a)は正面図、(b)は斜視図を示す。 本発明の第2実施形態に係る発光素子の構成図であって、(a)は斜視図、(b)は(a)のZX平面における断面図である。
以下、本発明の発光素子を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面に示される部材等のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
(第1の実施形態)
[発光素子の構造の概要]
本発明の第1実施形態に係る発光素子について図1を参照(適宜図2および図3参照)して説明する。図1に示す発光素子1は、図1において上側の素子表面63から光を放射する発光素子であり、この上側の素子表面63に光出射端として構造物2を備えている。この発光素子1において、構造物2の下側にそれぞれ位置する半導体層30、発光層40およびバッファ層60等の積層構造体は、一般的な発光素子の構成と同様であるが、光源マスク層50の説明と共に後記する。なお、図1において、XYZ軸の原点をOとし、発光素子1の素子表面63(バッファ層60の表面)はXY平面であるものとした。
構造物2は、光出射端の先端に向かって段状に形成されている(図1および図3参照))。構造物2は、先端の先端段部3と、この先端段部3よりも広く形成された基端段部4とを備える。
先端段部3は、一例として円柱を基にした形状となっている。この円柱の中心軸は、図1の原点Oを通り、Z軸に一致している。つまり、図1に示す発光素子1の構造物2において、光出射端の先端側に延びる軸は、Z軸に一致している。
構造物2の先端段部3は、中心軸(Z軸)に直交する断面の外径の最大値(直径r:図8(b)参照)が、発光波長以上、放射光の可干渉長の2倍以下となっていることが好ましい。先端段部3の直径rを発光波長以上とすることで、構造物2を光導波路として効率よく機能させることができる。先端段部3の直径rを放射光の可干渉長の2倍以下とすると、先端段部3の半径を放射光の可干渉長以下にすることができる。このようにすることで、後記する光の干渉原理によって光を効率よく干渉させることができる。なお、光の可干渉長は、光源の発光スペクトルの半値幅と、中心波長とに依存する。光源がLEDの場合、例えば10〜数十μm程度の長さとなる。
基端段部4は、先端段部3の中心軸を含む面で2つに分けたときに対称になる対称面を有する。図1の座標系では、基端段部4は、Z軸を含む面のうちZX平面で2つに分けたときに、それぞれの部分が対称となる。すなわち、平面視では、X軸で2つに分けた図形が対称になる(図2参照)。
また、基端段部4は、先端段部3の中心軸を含む面であって前記対称面とは異なる面で2つに分けたときの各体積が異なっている。特に、各体積の差が最大になるのは、対称面(ZX平面)に直交する面(YZ平面)で分けたときである。図1の座標系において、基端段部4をYZ平面で分けたとき、図1に示すように、基端段部4の体積が小さい方の部分を第1領域10、大きい方の部分を第2領域20と呼ぶ。つまり、第1領域10と第2領域20とを合わせたものが基端段部4となる。第2領域20は、図1の例では、半円柱の形状となっている。なお、構造物2の詳細については後記する。
[発光素子の構造]
発光素子1は、例えばLEDのように、平坦な素子表面63(バッファ層60の表面)から光を放射するものである。発光素子1は、図1に示すように、半導体層30と、発光層40と、光源マスク層50と、バッファ層60と、構造物2と、を備えている。
半導体層30は、発光層40と図示しない基板との間に設けられており、例えばn型半導体を材料としたn型半導体層である。半導体層30は、図示しない基板側から順に、例えば、n型GaN層と、n型GaN/InGaN障壁層とが積層された構造とすることができる。発光素子1が青色発光素子である場合、発光層40は、例えば、InGaNの量子井戸層として形成される。発光層40は、活性層であり、半導体層30とバッファ層60とに挟まれている。
バッファ層60は、例えばp型半導体を材料としたp型半導体層を含む。バッファ層60は、発光層40側から順に、例えばp型GaN/InGaN障壁層と、p型GaN層と、が積層される構造を有する。バッファ層60の上には構造物2が積層されている。
本実施形態では、バッファ層60の中に、光源マスク層50が積層されている。バッファ層60の中において光源マスク層50の積層位置は特に限定されない。以下では、発光層40と光源マスク層50との間に積層されているバッファ層をバッファ層61と表記し、構造物2と光源マスク層50との間に積層されているバッファ層をバッファ層62と表記する。つまり、光源マスク層50は、バッファ層61とバッファ層62とに挟まれている。
光源マスク層50は、貫通孔51を備え、貫通孔51以外の領域が発光層40からの光を遮蔽する。光源マスク層50の上側には、バッファ層60を介して構造物2が形成されている。貫通孔51は、構造物2に対応した位置に形成されている。つまり、貫通孔51の中心は、表面の構造物2の中心の位置に一致している。また、貫通孔51は、構造物2の基端段部4よりも広く形成されている。貫通孔51の内部には、発光層40からの光が透過可能な部材が充填されている。このような部材は、バッファ層60の材料や透明な樹脂等を挙げることができる。以下では、貫通孔51にバッファ層60の材料が充填されていることとして説明する。貫通孔51の形状は図示する円形に限らず、四角形や多角形であってもよい。光源マスク層50の材料は、光を遮蔽できる材料であれば特に限定されない。一例として、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)等の金属や、所定厚(例えば50nm)のカーボン等を挙げることができる。
図示を省略したが、一般的なLED素子と同様に、半導体層30とバッファ層60との間に段差を設けて、当該段差から引き出された部分にオーミックコンタクトを形成する形で電極を形成できれば、電極の構造は特に限定されるものではない。例えばp電極を、素子表面63に設け、n電極を半導体層30の基板側の面に設けてもよい。また、電極材料としては一般的な金属電極が使用できる。
[構造物の詳細]
<構造物2の材料>
本実施形態では、一例として、構造物2の先端段部3および基端段部4は一体成形されてなり、構造物2の材料の屈折率は、素子表面63を形成するバッファ層60の半導体の屈折率よりも小さくなっているものとする。このような構造物2の材料として、透明な材料を用いることが好ましい。例えば、SiO2は加工し易いので好ましい。また、SiO2は、バッファ層60の半導体がGaNの場合には、密着性の観点からも好ましい。
また、発光素子1のビーム性能を考慮すると、構造物2の材料の誘電率が大きければ大きいほど、構造物2のZ軸方向の大きさ(高さ)を小さくする必要がある。それは、構造物2のZ軸方向の大きさが大き過ぎると出射光がビームにならずに拡散してしまうからである。一方で、ビームの性能を上げようとして、構造物2のZ軸方向の大きさを小さくすると、基端段部4の第1領域10と第2領域20との体積差をつけることが困難になる。そのため、構造物2の材料としてSiO2やSiO2よりも屈折率が低い材料(例えばフッ化マグネシウム(MgF2)等)を使うことが好ましい。
<構造物2の形状の概要>
図1の発光素子1の上面図を図2に示し、図2のA−A線矢視における断面図を図3に示す。以下、図1ないし図3に示す構造物2の形状についての説明の都合上、中心軸(Z軸)に対して全体が回転対称な形状となっている参考例(図4参照)と対比させながら説明する。このために、参考例の発光素子100(図4参照)についても同様に平面図および断面図を示す。すなわち、図5に発光素子100の上面図を示し、図5のB−B線矢視における断面図を図6に示す。なお、参考例の発光素子100において、本発明の発光素子1と同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。
<発光素子100の構造物102の概要>
図4に示す参考例の発光素子100の素子表面63には、中心軸(Z軸)に対して全体が回転対称な形状となっている構造物102が設けられている。構造物102は、段状に形成されており、先端の先端段部103と、先端段部103よりも広く形成された基端段部104とを備える。先端段部103は、円柱形状となっており、光線が成形し易くなっている。また、基端段部104は円柱の形状となっており、その中心軸はZ軸に一致している。
<発光素子100の構造物102の平面形状>
構造物102の先端段部103および基端段部104をXY平面に投影したときに生じる図形は、図5に示すようにそれぞれ円形である。構造物102は平面視では方位依存性がなく、原点Oの周りで回転対称となっている。
<発光素子1の構造物2の平面形状>
図1に示す構造物2の先端段部3をXY平面に投影したときに生じる図形は、図2に示すように円形である。つまり、先端段部3は平面視では方位依存性がなく、原点Oの周りで回転対称となっている。一方、構造物2の基端段部4をXY平面に投影したときに生じる図形は、図2に示すように円が歪んだ形状となっている。図2において、11は基端段部4の第1領域10の投影形状を示し、21は基端段部4の第2領域20の投影形状を示す。図示するように、投影形状21は半円である。投影形状11は楕円を半分にした形状に近似している。投影形状11が楕円を半分にした形状であるとすると、長軸の2倍の長さが投影形状21の直径に一致している。詳細は後記するが、短軸の長さは、投影形状21の半径の長さRを基準に所定縮小率aで縮小した長さ(1−a)Rに定められている(図8(a)参照)。
<発光素子100の構造物102の断面形状>
図6に示すように、参考例の発光素子100のZX平面における断面(図5のB−B線矢視における断面)において、構造物102の先端段部103および基端段部104は、Z軸を中心として対称になっている。よって、図6の断面図において、例えば基端段部104の左の領域の図形104Lと、右の領域の図形104Rとは合同(相似においてスケーリングファクタ=1の場合)である。この合同の関係は、図6に示す断面(ZX平面)だけではなく、Z軸を含む任意の平面で成り立っている。なお、構造物102の先端段部103および基端段部104は一体なので図6では同じハッチングを付し、各部を形式的に区別するために、水平方向の境界線を破線で示した。
<発光素子1の構造物2の断面形状>
図3において、構造物2の先端段部3および基端段部4は一体なので同じハッチングを付し、各部を形式的に区別するために境界線を破線で示した。
図3に示すように、発光素子1のZX平面における断面(図2のA−A線矢視における断面)において、構造物2の先端段部3は、Z軸を境界線とした2つの矩形の幅(横の長さ)が等しくなっている。これは、先端段部3が平面視では方位依存性がないことを反映している。一方、先端段部3の断面において、図3に示すように、2つの矩形のZ軸方向の一端(先端)の短辺の位置は揃っているが、Z軸方向の他端の短辺の位置は揃っていない。このように2つの矩形の高さ(縦の長さ)が異なる点についての説明は、基端段部4の断面形状の説明の後に詳述する。
構造物2の基端段部4は、図3に示すように、Z軸を境界線とした2つの矩形の幅も高さも異なる。つまり、ZX平面において、基端段部4はZ軸を中心として非対称になっている。図3において、12は基端段部4の第1領域10のZX平面における断面形状を示し、22は基端段部4の第2領域20のZX平面における断面形状を示す。図示するように、各断面形状12,22は矩形である。
また、本実施形態では、基端段部4の断面形状12と、断面形状22とは、相似の関係になっている(スケーリングファクタ≠1の場合)。理想的には、この相似の関係は、図3に示す断面(ZX平面)だけではなく、Z軸を含む任意の平面で成り立っている。なお、ZY平面については、例外的にスケーリングファクタ=1となるが、本明細書において、相似には合同を含むこととしている。
図2に示す投影形状11が楕円を半分にした形状であるとしたときに、短軸の長さ(1−a)Rを定めることは、図3において、基端段部4の断面形状12の矩形の幅(横の長さ)を定めることと等価である。このときの関係について図8を参照(図2および図3を参照)して説明する。図8(a)および図8(b)は、図2および図3と同様の図面であって、寸法を示す記号を付したものである。これらの図面に示すR等の記号から、次の関係が導かれる。すなわち、図3に示す基端段部4の断面形状22の矩形の幅(横の長さ)はRであり、高さ(縦の長さ)はh1である。また、基端段部4の断面形状12と、断面形状22とは、相似の関係になっていることから、図3に示す基端段部4の断面形状12の矩形の高さ(縦の長さ)は(1−a)h1である。
基端段部4の設計として、まず、図2の投影形状21の半径の長さR(=断面形状22の幅)を基準にした所定縮小率aを0〜1の間の範囲で定める。図示する例ではaをおよそ0.3としている。そして、aを定めたときに、図3に示す断面(ZX平面)における基端段部4の断面形状12を最小の面積の矩形とする(スケーリングファクタ=aとする)。これにより、図2の平面視においてX軸上に、この最小の面積の矩形が配置されることとなる。次いで、図2に示す原点Oの周りに、Y軸の正方向および負方向のそれぞれに向かって微小角度だけ回転させつつ、スケーリングファクタを徐々に大きくした矩形を微小角度毎に想定する。そして、この徐々に大きくなる矩形がY軸に重なったときには、図3に示す断面(ZX平面)における基端段部4の断面形状22と同じ面積となる(スケーリングファクタ=1とする)。このようにして図1の第1領域10を形成することで、基端段部4において、図3の断面視における基端段部4の断面形状12と断面形状22との相似の関係は、Z軸を含む任意の平面で成り立つこととなる。
図3に示す基端段部4の断面形状22の高さがh1であり、断面形状12の矩形の高さが(1−a)h1であることから、先端段部3は、断面視において、第1領域10側(断面形状12)の方が高さ方向に長くなっている。これは、発光素子1の構造物2の先端段部3の形状が、円柱を基にした形状であることを反映している。
一方、参考例の発光素子100の構造物102の先端段部103は円柱の形状であり、このことは図6に反映されている。
図5と図2とを対比して分かるように、参考例の発光素子100の構造物102の先端段部103と、発光素子1の構造物2の先端段部3とは、平面視で同形状である。また、図4と図1とを対比し、かつ、図6と図3とを対比して分かるように、参考例の発光素子100の構造物102の一部を削り取る加工をすれば、発光素子1の構造物2の先端段部3と同形状になる。つまり、先端段部3は、円柱形状の先端段部103と類似した円柱形状なので、光線が成形し易くなっている。要するに、発光素子1の構造物2の先端段部3の形状は、図2に示す平面視の形状において方位依存性がなく、原点Oの周りで回転対称となっていればよい。先端段部3は、立体の条件として、上端面の形状(円形)が中心軸(Z軸)に沿って底部まで保たれるという条件に拘束される。この拘束条件は、構造物2の下段(基端段部4)の形状に関する条件より優先される。
[光の干渉原理]
ここでは、発光素子1の構造物2から出射される光の干渉の原理について、参考例(図4参照)と対比させながら図7を参照して説明する。図7(a−1)は、参考例の発光素子100の平面図を示し、図5と同様の図である。図7(a−2)は、参考例の発光素子100の一部断面図を示し、図6の一部を示す。図7(b−1)は、発光素子1の平面図を示し、図2と同様の図である。図7(b−2)は、発光素子1の一部断面図を示し、図3の一部を示す。なお、図示を省略したが、図7(a−1)および図7(b−1)に示す原点Oには、紙面に垂直な方向にZ軸が重なっている。
<参考例の発光素子100の出射光>
図7(a−1)に示す参考例の発光素子100において、光は、素子表面63に段状に形成された構造物102から出射し、外部の空気中へと出射する。このとき、構造物102は、先端段部103が光出射端の中央部となり、基端段部104が、光出射端の中央部に対する周辺部となる。つまり、素子内部の発光層40(図6参照)からの光は、構造物102において光出射端の周辺部から出射する光路(以下、第1光路と呼ぶ)、または、構造物102において光出射端の中央部から出射する光路(以下、第2光路と呼ぶ)から出射する。
ここで、構造物102の先端段部103および基端段部104は、屈折率がnαである材料で一体成形されている。屈折率nαはバッファ層60の半導体の屈折率nβより小さい。一般に、自由空間において波長λで伝搬する光は、屈折率nの媒質中において波長λ/nで伝搬するので、発光素子100の発光波長がλのとき、構造物102中では光の波長はλ/nαとなる。
また、図7(a−2)に示すように、素子表面63の位置を基準の高度H0とする。また、基端段部104の高さをaとし、基端段部104の上面位置を高度Hとする。また、先端段部103の高さをbとし、先端段部103の位置を高度Hbとする。構造物102は中心線(Z軸)に対して対称になっているので、図7(a−2)において例えば左側の領域だけを想定する。このとき、第1光路は、構造物102の基端段部104だけを介して外部へ至る光路である。第2光路は、基端段部104および先端段部103を介して外部へ至る光路である。外部の空気中へ出射するまでの光路長は、第1光路の方が短い。
基準の高度H0から高度Hまで、基端段部104の中を波長λ/nαで伝播した光は、第1光路において、外部へ出射し、空気中を波長λで伝播し、例えば高度Hbに至る。また、基準の高度H0から高度Hまで、基端段部104の中を波長λ/nαで伝播した光は、第2光路において、先端段部103中を波長λ/nαで伝播し、高度Hbに至り、そこから外部へ出射する。ここで、第1光路を通る光と第2光路を通る光とは、高度Hまでは同じ媒質(基端段部104)を同じ距離だけ進むので同位相のままである。これら第1光路を通る光と第2光路を通る光とは、高度Hから高度Hbまで異なる媒質を進む。このとき、第2光路では媒質は先端段部103(SiO2)であり、第1光路では媒質は空気である。SiO2の誘電率は真空中(空気中)より高いため、先端段部103中を伝搬する際の光の速度は、空気中を伝搬する速度に比べて遅くなる。したがって、第1光路と第2光路との間に位相差が生じる。高度Hbにおいて、位相差Ψは式(1)で表される。
Ψ=2πb(nα−1)/λ … 式(1)
ここで、2つの光路からの光の干渉について数式を用いて説明する。3次元空間の位置rにある波源と、位置rにある波源とからそれぞれ射出された光によって、3次元空間の位置rに時刻tにおいて合成される光の強度I(r)は、次の式(2)で与えられる。
式(2)において、光の干渉を表す第3項が存在するために、発光層40からの光が、2つの波源からそれぞれ射出された後に重畳されて、波面を変えて波の進行方向を変えることが可能となる。式(2)では、式(3)のγの実部を利用する。式(3)のEは、Eの複素共役であることを示す。γは、式(3)で示すように、0から1までの値をとり、2つの波源から射出された光が時間的・空間的にどのくらい相関を持っているのかを示している。よって、γは、次の式(4)〜式(6)のように場合分けすることができる。
式(4)の場合を完全コヒーレント、式(5)の場合をインコヒーレント、式(6)の場合を部分的なコヒーレントと呼ぶ。ここでは、発光素子として、LEDの光源を使用しているため、部分的なコヒーレントになっている。したがって、図7の発光素子においては、光の強度において、前記式(2)の第3項の寄与が大きい。
上記説明では、図7(a−2)において構造物102の例えば左側の領域だけを想定したが、構造物102は中心線(Z軸)に対して対称になっているので、光路長の異なる出射端から出射した光が干渉することで、構造物102においてZ軸方向に集光されて、所定の広がりを有した光線701が成形される。
<発光素子1の出射光>
図7(b−1)に示す発光素子1において、光は、素子表面63に段状に形成された構造物2から出射し、外部の空気中へと出射する。このとき、参考例の発光素子100と同様に、構造物2は、先端段部3が光出射端の中央部となり、基端段部4が、光出射端の中央部に対する周辺部となる。つまり、素子内部の発光層40(図3参照)からの光は、構造物2において光出射端の周辺部から出射する光路(第1光路)、または、構造物2において光出射端の中央部から出射する光路(第2光路)を経由する。
発光素子1は、図7(b−1)に示すように平面視において、X軸で2つに分けた図形が対称になり、かつ、基端段部4の投影形状11と投影形状21との形状および面積が異なる。また、発光素子1は、図7(b−2)に示すように、ZX平面での断面視において、基端段部4の断面形状12と断面形状22との面積が異なるので、基端段部4がZX平面で分けたときに体積が異なり、非対称である。さらに、構造物2(先端段部3および基端段部4)の屈折率nαはバッファ層60の半導体の屈折率nβより小さい。
したがって、図7(b−1)において、原点Oの左側の領域、すなわち、基端段部4の投影形状11を含む破線で示す領域702からの光と、原点Oの右側の領域、すなわち、基端段部4の投影形状21を含む破線で示す領域703からの光とを比較すると、領域702からの光の出力の方が低くなる。そのため、原点Oを含む対称面を挟む左右2つの領域において、光線の出射方向への影響に偏りが生じる。これにより、領域703からの光と先端段部3からの光との干渉効果が相対的に強まり、構造物2においてZ軸方向に集光されるべき光が、素子表面63の法線方向から体積が大きい領域の方に傾く。すなわち、図7(b−2)において右方向へ傾いた光線704が射出される。
[発光素子の性能]
第1実施形態の発光素子1の性能を確かめるために、FDTD(Finite-Difference Time-Domain)法によるシミュレーションを行った。シミュレーションの条件としては、発光素子1の素子表面63上に、縦6000nm×横6000nm×高さ3000nmの直方体の領域をベースとして想定した。また、評価に用いた強度分布の観測地点は、素子表面63から上方2400nmとした。
FDTD法における電界の自乗をとった電力密度を光の強度として、XY平面に平行な上方の平面(素子表面の上方2400nm)に到達した光の強度の積算値を求め、上方で観測されるビームのスポット形状で光線形成を確認した。ここでは、FDTD法における電界の自乗をとった電力密度を光の強度とした。また、ZX平面における光の強度の積算値(ZX平面のビームパターン)を求めた。
発光素子1のシミュレーションに用いた解析条件について図8を参照(図2および図3を参照)して説明する。発光素子1の材料は、GaNであるものとした。具体的には、バッファ層60の半導体の材料は、屈折率nβ=3.1、発光スペクトルの中心波長(自由空間における波長)λ=405nmのGaNとした。
構造物2の材料はSiO2(屈折率nα=1.5)であるものとした。
構造物2の基端段部4の半径Rを800nmとした。基端段部4の高さh1を65nmとした。
構造物2の先端段部3の直径rを、発光スペクトルの中心波長に相当する長さ(405nm)とした。先端段部3の高さh2を基端段部4の高さh1と同様に65nmとした。
以下、基端段部4の半径Rを基準にした所定縮小率aのことを方位制御パラメータと呼ぶ。方位制御パラメータaを0としたときには、参考例の発光素子100と同様になる。
発光素子1の構造物2から出射される光線について素子表面63の法線方向から測った傾き角度を方位角と呼び、方位角の最大値を最大方位角と呼ぶ。
方位制御パラメータaを0としたときに、XY平面に平行な上方の平面で観測されるビームの中心を求め、ZX平面におけるビームの方向として最大方位角を求めた。このときの方位角(最大方位角)θをθ=0degとした。そして、方位制御パラメータa=0を基準として、方位制御パラメータaを0.1〜0.9の範囲において0.1ステップで変化させたときの最大方位角θを計算により求めた。その結果を図9に示す。図9のグラフの横軸は、方位制御パラメータaを示し、縦軸は、最大方位角θを示す。
図9に示すように、方位制御パラメータaの値を大きくするにつれて最大方位角θも大きくなった。なお、上記解析条件によれば、a=0.8の場合およびa=0.9の場合、基端段部4の半径Rは、先端段部3の半径(r/2)を下回ることになる。この場合であっても、構造物2において、先端段部3の上端面を素子表面63まで掃引した柱状の立体(本実施形態では円柱)が存在する。この円柱の上底面は先端段部3の上端面であり、円柱の下底面が素子表面63に接触している。このシミュレーションにおいて、上記円柱と、基端段部4に相当する立体との論理和を取った物体が構造物2の設計条件となっている。
方位制御パラメータaを変化させたときに、ビーム中心方向が変化した。このビーム中心方向の変化により最大方位角を求めた。最大方位角はZX平面にて検出された。本発明の実施形態に係る発光素子1におけるビームパターンの計算結果の一例として、方位制御パラメータaが0.8の場合のZX平面におけるビームパターンのシミュレーション結果を図10(a)に示す。図示するように、素子表面に対する法線方向から傾斜した線上に光線(メインローブ)を成形できることが分かる。方位制御パラメータaが0.8の場合、最大方位角θは4.1[deg]であった。比較のため、方位制御パラメータaが0.0の場合のZX平面のビームパターンを図10(b)に示す。図10(b)は、参考例の発光素子100によるビームパターンに相当する。素子表面に対する法線方向に向かう線上に光線が成形されてしまうことを、この参考例で確かめた。
[発光素子の製造方法]
発光素子1を製造する方法としては、公知の種々の微細加工技術を用いることができる。発光素子1は、例えばLEDのように平坦な放射面を有する発光素子を用意し、その表面を微細加工して作成することが可能である。
図1の発光素子1の製造工程の一例を挙げると、まず、例えばGaAsやSi等の半導体基板に、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法などの成膜方法により、半導体層30と発光層40とバッファ層61とを積層する。次いで、バッファ層61の上に金属材料を蒸着法、EB法(Electron Beam:電子ビーム蒸着法)、スパッタリング法等により積層した後、フォトリソグラフィ法等によって金属層が作製される。
そして、金属層上において貫通孔を形成する領域以外をフォトレジスト等でマスクして、エッチングにより貫通孔51を形成する。これにより、光源マスク層50が作製される。エッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)等のドライエッチングや薬液を用いたウェットエッチングを用いることができる。そして、光源マスク層50上に例えば前記した所定の成膜方法により、バッファ層62を積層する。これにより、光源マスク層50の貫通孔51の内部には、バッファ層60の材料が充填されることとなる。
具体的には、光源マスク層50およびバッファ層60を、次のように製造することが好ましい。すなわち、例えばバッファ層60の半導体を結晶成長させていくときに、バッファ層61上において光源マスク層50を形成すべき位置に、まず、例えばSiO2等の絶縁膜を例えばスパッタリング法等により積層しておく。次に、例えばAl(アルミニウム)やNi(ニッケル)等の金属膜を例えばスパッタリング法等により積層する。次に、この金属膜をエッチングして貫通孔51を形成する。次いで、光源マスク層50の上面および貫通孔51の内周面の部分を絶縁膜で被覆するために、例えばSiO2等の絶縁膜を例えばスパッタリング法等により積層する。そして、この上から、再度、バッファ層60の半導体を結晶成長させていく。このようにすることで、格子歪みの少ない良好な半導体結晶を作ることができる。
また、別工程で、例えば、ナノインプリント(nanoimprint)技術により、モールドを作っておき、構造物2の材料を充填しておく。そして、構造物2の材料をバッファ層62の上にモールドから転写することで構造物2を取り付ける。
なお、この後に、構造物2の表面にSiO2等の絶縁性の保護膜を形成してもよい。また、発光素子1の素子表面63に電極を形成する場合には、構造物2を取り付ける前に、例えば金属材料を蒸着法、スパッタリング法等により積層した後、フォトリソグラフィ法等によって電極層が作製される。
[発光素子の応用例]
図1に示す発光素子1は、構造物2の基端段部4が対称面(ZX平面)を備え、対称面に直交する面(YZ平面)の第1領域10と第2領域20との体積を変えたことにより、当該発光素子1から出射する光線の方向を制御できる。よって、発光素子1を基板上に多数並べることにより、IP方式のディスプレイであるIP立体ディスプレイを提供することが可能である。この場合、画素に対応して所定の最大方位角で出射する同一サイズかつ同一形状の構造物2を一度に同様に製造し、同じ最大方位角で出射する構造物2を各画素位置に対応した向きに回転させてそれぞれ設ければ、簡単構造で、IP方式の立体ディスプレイを提供することが可能である。このような応用例について図11を参照(適宜、図1〜図3参照)して説明する。
図11(a)に示すIP立体ディスプレイ80は、画素アレイとして発光素子アレイ70を備えている。発光素子アレイ70は、発光素子1を並べたものである。それぞれの発光素子1は、発光素子アレイ70における配設位置(画素の位置)に応じた光の出射方位が予め定められている。図11(a)において、発光素子1の輪郭は、発光素子の区画を分かり易くするために便宜的に示したものである。発光素子アレイ70において、それぞれの発光素子1は、構造物2の基端段部4の第2領域20(図1参照)が、当該発光素子1の配設位置に応じて予め定められている光の出射方位に向けて配置されている。
ここで、図示は省略するが、IP立体ディスプレイ80に対応したIP立体撮影装置がレンズ板を介して被写体(例えば図11(b)に示すような円柱や立方体等)を予め撮影した要素画像群を取得しておくことが、立体を表示(再生)するための前提となる。撮影に用いるレンズ板は、要素レンズを所定のレンズピッチで並置して構成された要素レンズアレイになっている。従来のIP方式のディスプレイでは、例えば液晶パネルに要素画像群を表示して、撮影時と同様の要素レンズアレイの各要素レンズを介して各要素画像を投影し、それらを集積した像を、被写体に対応した立体再生像として観察する。一方、IP立体ディスプレイ80の場合、密集して配置された複数の発光素子1が要素画像(1単位の要素画素群)を形成し、通常のIP立体ディスプレイの個々の要素レンズに相当する領域に、1単位の要素画素群(複数の発光素子1からなる1つの単位構造)が並置される構造となる。これにより、図11(b)に示すように、IP立体ディスプレイ80の単位構造それぞれが要素画像を空間上にそれぞれ投影し、それらが集積されて、被写体の再生像(立体像)として、例えば円柱や立方体が表示される。
このようにIP立体ディスプレイ80は、各画素を構成する発光素子1が、個別に、射出される方向(方位)が決定されていることによって、光学レンズを介することなく、各発光素子1から特定の方向(方位)への指向性をもった光を射出することができる。このような微細構造を有する発光素子1を多数個並べた表示素子(FPD)は、従来技術においてレンズ板と発光面とを接合させた装置と同じ働きを有するようになる。このようにして作成したIP立体ディスプレイ80においては、立体表示の解像度は、発光素子1の精細度にのみ依存し、光学系の解像度不足による映像ボケが生じない。また、発光素子1を用いたIP表示における視域角は、素子表面と垂直な方向に対する放射光の成す角(方位角)の最大値にのみ依存し、解像度と視域角とを独立に改善することが可能である。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る発光素子について図12を参照して説明する。図12(a)は、図1に対応した図であって第2実施形態に係る発光素子1Bの斜視図である。図12(b)は、図3に対応した図であって発光素子1Bの断面図を示す。なお、発光素子1Bの上面図は、図2と同様なので省略する。
発光素子1Bは、図12に示すように、半導体層30と、発光層40と、バッファ層60と、光源マスク層50と、構造物2と、を備えているが、光源マスク層50の上面が素子表面53となっている点が第1実施形態に係る発光素子1と異なっている。発光素子1Bにおいて、第1実施形態に係る発光素子1と同様な構成には同様の符号を付し、説明を適宜省略する。
発光素子1Bの光源マスク層50において、貫通孔51には、例えば透明樹脂からなる封止部材52が充填されている。この封止部材52の上に構造物2が設けられている。
光源マスク層50は、遮光のほか、電極としても機能させることができる。
発光素子1Bの構造物2から出射される光の干渉の原理は図7を参照して説明したものと同様である。なお、一般的な樹脂は、屈折率が約1.5〜1.6であり、構造物2の材料をSiO2とした場合の屈折率(nα=1.5)と同程度であって、半導体の屈折率(GaNの場合、屈折率nβ=3.1)より小さい。
発光素子1Bを製造する方法としては、基板上に、半導体層30と発光層40とバッファ層60とを積層し、光源マスク層50を作製した後、貫通孔51に、例えば透明樹脂からなる封止部材52を充填する。そして、別工程で、例えば、ナノインプリント技術により、モールドを作っておき、構造物2の材料を充填しておく。そして、封止部材52の上にモールドから転写することで構造物2を取り付ける。
発光素子1Bによれば、発光層40からの光を透明樹脂からなる封止部材52を介して効率よく構造物2に伝達できるので、非透明な層を用いる場合に比べて発光強度を高めることができる。
以上説明したように、本発明の各実施形態に係る発光素子1,1Bは、素子表面に設けた構造物2から出射する光の干渉効果により光線を成形できる。また、発光素子1,1Bは、構造物2の基端段部4の対称面に直交する面の第1領域10と第2領域20との体積を変えたことにより、素子表面の法線方向から傾斜した方向へ放射する光線を成形することが可能となる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、LED素子の材料は、GaNであるもとして説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、AlN、GaAlN、ZnO、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAlAsP等であってもよい。
また、発光素子は、LED素子のような注入型のEL素子に限定されず、有機EL素子や無機EL素子のような真性EL素子であってもよい。
また、発光素子1の半導体層30はn型半導体層からなり、バッファ層60はp型半導体層を含むものとして説明したが、半導体層30はp型半導体層からなり、バッファ層60はn型半導体層を含むものとしてもよい。この場合、p型半導体層からなる半導体層30の下方において構造物2の直下に対応した位置に針状のp電極を設けておき、また、n電極を、n型半導体層からなるバッファ層60の素子表面63に設けておく。そして、これら図示しない針状のp電極とn電極との間に外部電源を接続して所定電流を流すことで、発光層40において構造物2の直下に対応した位置を選択的に発光させることができる。したがって、この場合には光源マスク層50を設ける必要はない。
また、例えば第1実施形態に係る発光素子1の素子表面63に電極層を形成する際には、遮光機能を有した金属電極としてもよいし、透明電極層と遮光機能としての金属薄膜とで構成してもよい。
また、発光素子1の素子表面に設けた構造物2のベストモードとして、基端段部4の断面形状12と、断面形状22とは、Z軸を含む任意の平面で相似の関係になっていることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。また、構造物2の先端段部3は、平面視において、円でなくてもよく、円に近似した6角形や8角形等の多角形であってもよい。また、基端段部4の第2領域20は、平面視において、半円でなくてもよく、半円に近似した多角形であってもよい。
また、図3のZX平面における断面図において、基端段部4は、Z軸を境界に左右に2段の階段が形成された形状であるが、基端段部4の第2領域20(右側の断面形状22)と先端段部3とによって2段構成になっていれば、断面視において左側については、必ずしも2段構成になっていなくてもよい。この場合、上から見たときに、Z軸周りに180°以上の角度範囲で基端段部4の輪郭が見えていて、残りの角度範囲において先端段部3の円柱形状の外形が基端段部4の外形を越えて存在し、素子表面61まで連続している部分がある。つまり、この場合、残りの角度範囲において先端段部3の円柱形状が、上側から、あたかも基端段部4を突き抜けたかのようにして素子表面61まで連続している部分があってもよい。
また、図1には、1段の基端段部4を例示したが、基端段部4は複数段で形成されていてもよい。図3の断面図において、仮に基端段部4が2段で形成されていると想定した場合、Z軸を境界に左右に3段の階段が形成されることになる。この場合、基端段部4については、Z軸を境界に左側の2段の断面形状と、右側の2段の断面形状とが相似の関係になっていることが好ましい。段数が多いほど不要な位相成分が除去されて光線は明瞭化し、段数が少ないほど製造し易いので、基端段部4は複数段で形成する場合、基端段部4は2〜3段とすることが好ましい。
また、発光素子1の素子表面に設けた構造物2の材料をSiO2としたが、本発明はこれに限定されるものではない。構造物2の材料としてSiO2よりも屈折率が低い材料(例えばフッ化マグネシウム(MgF2)等)を使えば、最大方位角を向上させることができると考えられる。
発光素子は、光線の成形と方向制御を必要とするデバイス一般に応用することが可能である。例えば、プロジェクター用光源、空間光インターコネクションに用いる接続器、拡散板を必要としない照明用光源などに好適である。
1,1B 発光素子
2 構造物
3 先端段部
4 基端段部
10 第1領域(基端段部の体積が小さい方の部分)
11 第1領域の投影形状
12 第1領域の断面形状
20 第2領域(基端段部の体積が大きい方の部分)
21 第2領域の投影形状
22 第2領域の断面形状
30 半導体層
40 発光層
50 光源マスク層
51 貫通孔
52 封止部材
53 素子表面
60,61,62 バッファ層
63 素子表面
70 発光素子アレイ
80 IP立体ディスプレイ
81 基板

Claims (4)

  1. 半導体からなる一側の素子表面に、光出射端として段状に先端に向かって形成された構造物を備えた発光素子であって、
    前記構造物は、先端の先端段部と、この先端段部よりも広く形成された少なくとも1段からなる基端段部とを備え、
    前記構造物の前記先端段部は、先端側に延びる中心軸に直交する断面の外径の最大値が、発光波長以上、放射光の可干渉長の2倍以下であり、
    前記基端段部は、前記先端段部の中心軸を含む面で2つに分けたときに対称になる対称面を有し、前記対称面とは異なる前記中心軸を含む面で2つに分けたときの各体積が異なることを特徴とする発光素子。
  2. 前記構造物の材料の屈折率は、前記素子表面を形成する半導体の屈折率よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
  3. 発光層と、
    前記発光層の上側に形成された光源マスク層と、
    前記光源マスク層の上側に形成された前記構造物と、を備え、
    前記光源マスク層は、
    前記構造物に対応した位置に前記構造物の前記基端段部よりも広く形成された貫通孔を備え、前記貫通孔以外の領域が前記発光層からの光を遮蔽することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発光素子を並べた発光素子アレイであって、
    それぞれの前記発光素子は、
    前記発光素子アレイにおける配設位置に応じた光の出射方位が予め定められており、
    前記構造物の前記基端段部を前記先端段部の中心軸を含み前記対称面と直交する面で2つの部分に分けたときの体積が大きい方の部分が、当該発光素子の前記配設位置に応じた光の出射方位に向けて配置されていることを特徴とする発光素子アレイ。
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