JP5993202B2 - 発光素子および発光素子アレイ - Google Patents

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Description

本発明は、発光素子に係り、特に、立体映像表示装置に用いることができる発光素子および発光素子アレイに関する。
従来、像再生型立体表示の代表的な方式として、ホログラフィ、パララクスステレオグラム、レンチキュラシート、インテグラルフォトグラフィ(以下IPと称す)などが知られている。ホログラフィを除く、これらの方式の実用化に関しては、コヒーレント光を必要としない簡易な方式で早期に実現可能と考えられている。また、IPは水平方向に加え、垂直方向の視差情報も表現することができるため、自然な立体表示が可能な装置の早期実現に有望であると考えられている(例えば非特許文献1参照)。
IPの表示システムは、光線を再生する多数の微小なレンズ(要素レンズ)を配列したレンズアレイと、各レンズに対応した画像(要素画像)を多数並べて表示するディスプレイとによって構成される。観察者は、1つの要素レンズに対応する1つの要素画像から、観察者の位置に応じた部分的な情報を得、要素画像を要素レンズの数だけ並べた立体像を観察する。IPの表示システムにおいて、立体像の解像度は、要素レンズの解像度と、要素画像の解像度と、観視距離とで決まる。また、IPの表示システムの視域角については、要素レンズの性能が支配的な要因になる。このような事情から、実用的な立体像をIP方式で生成するには、発光素子と光学素子の高精細化・高機能化が不可欠である(例えば非特許文献2参照)。
しかし、発光素子と光学素子の高精細化が進んでも、レンズを使用する光学系には、レンズの回折限界や焦点距離のように原理的に取り除くことができない性能限界も存在する。例えばディスプレイの画素サイズが、要素レンズの最小スポットサイズより小さくなると、映像ボケが発生するため、同時にスポットサイズも小さくする必要があるが、スポットサイズをAbbeの回折限界より小さくすることは原理的に不可能である。
また、レンズを用いたシステムでの視域角は、要素レンズの焦点距離に反比例するが、視域角を大きくするために要素レンズの焦点距離を無限に小さくすることはできない。さらに、視域角は、要素レンズのピッチに比例もするため、要素レンズのピッチを大きくすれば視域角の拡大が可能であるが解像度が劣化するので、レンズを用いた光学系における解像度と視域角には、トレードオフの関係がある。
IPの表示システムとは直接関係ないものの、発光素子の分野においては、自発光素子であるLED(Light Emitting Diode)は、近年、その発光特性が飛躍的に進歩したことから、各種用途で注目を集めている。LEDは、放射される光の直進性が良いため、照明器具などへの応用においては拡散させる仕組みが必要となる。LEDの放射光を拡散させる技術がさらに進み、光の放射される方位の制御が可能となれば、ディスプレイなどへの応用も可能となる。
ディスプレイの関連技術として、例えば特許文献1には、液晶ディスプレイからなる画像表示手段の手前に、液晶デバイスを用いた空間光変調素子等のビーム偏向手段を設けることで、画素からの光を偏向させて、視点位置の異なる複数の2次元画像から立体像を表示する立体表示装置が記載されている。ただし、この装置は、LEDのような発光素子を用いたディスプレイではない。
また、LEDから取り出す光の方向を制御する技術として、LED光の出射角度を調整可能な発光装置が特許文献2に記載されている。
特開平6−110374号公報 特開2008−147182号公報
「超高精細映像技術・立体映像技術」、電子情報通信学会誌、2010年5月、Vol.93, No.5, p.372-381 財団法人機械システム振興協会・財団法人光産業技術振興協会、「自然な立体視を可能とする空間像の形成に関する調査研究報告書−要旨−」、システム技術開発調査研究19-R-5、2008年3月、p.14-16
しかしながら、特許文献2に記載の発光装置は、LEDから取り出す光の方向を制御するために多種の部品が必要とされる。また、ディスプレイに応用して発光素子ごとの方位制御を行おうとする場合、多数の微細な発光素子を形成する必要がある。また、これら微細な発光素子の放射光を正面以外の方向へ射出することはきわめて難しい。
さらに、微細な構造を備えたLEDから取り出す光の方向を制御できる技術は知られていないのが現状である。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、発光素子単体で光線の成形と方向制御とを可能とする簡易な素子構造を有した発光素子および発光素子アレイを提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の発光素子は、一側の表面から光を放射する発光素子であって、前記発光素子内部の発光部分領域からの光を遮光するための遮光膜を前記表面に備え、前記遮光膜には、環状の穴が設けられており、前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部における中心と、前記発光素子内部の発光部分領域の中心とをずらして、前記遮光膜を配置し、発光層と、前記発光層の一側に積層された第1バッファ層と、前記第1バッファ層の上に積層された光源マスク層と、前記光源マスク層の上に積層された第2バッファ層と、前記第2バッファ層の上に積層された前記遮光膜と、を備え、前記光源マスク層は、前記発光素子内部の前記発光部分領域に対応した位置に貫通孔を備え、前記貫通孔以外の領域が前記発光層からの光を遮蔽することを特徴とする。
かかる構成によれば、発光素子において、発光部分領域からの光は、遮光膜に設けられた環状の穴から出射し、外部の空気中へと出射する。外部へ光が出射するとき、素子内部の媒質の方が外部の媒質よりも屈折率が高いので、出射光は、遮光膜に設けられた環状の穴への入射角に応じた方向に屈折して出射し、一部は全反射する。発光素子は、中心遮光部における中心と発光部分領域の中心とがずれているので、発光部分領域から環状の穴までの光路長は、穴の周方向の位置に応じて異なり、不均一となる。したがって、発光部分領域から環状の穴までの光路長が短い出射端と、発光部分領域から環状の穴までの光路長が長い出射端との間に位相差が生じる。これにより、光路長の異なる出射端から出射した光が干渉するので、干渉により成形された所定の広がりを有した光線が、素子表面の法線方向から傾いた線上に出射することになる。
また、かかる構成によれば、発光素子では、光源マスク層に所望サイズの貫通孔を所望位置に設けることで、所望位置に所望サイズの発光部分領域を容易に設けることができる。また、光源マスク層の貫通孔を先に形成しておくことで、素子表面の遮光膜において所望位置に所望サイズの環状の穴を容易に設けることができる。したがって、設計どおりの発光素子を製造し易くすることができる。
また、請求項2に記載の発光素子は、請求項1に記載の発光素子において、前記遮光膜に設けた環状の穴の外径の最大値が、放射光の可干渉長以下であることとした。
かかる構成によれば、発光素子では、環状の穴から出射した光が、中心遮光部の周囲で干渉し易くなる。また、環状の穴の周方向の位置にかかわらず、環状の穴から出射した光がすべて干渉するため、出射光が、発光素子で成形される光線が広がらないように寄与する。
また、請求項3に記載の発光素子は、請求項2に記載の発光素子であって、前記発光素子内部の発光部分領域は、前記一側の表面に平行な面における最大幅が、前記遮光膜に設けた環状の穴の外径の最大値よりも小さいこととした。
かかる構成によれば、発光素子では、発光部分領域が環状の穴より小さいので、中心遮光部における中心と、発光部分領域の中心とをずらす距離も小さくすることができる。そのため、発光素子を微細化することができる。
また、請求項4に記載の発光素子は、請求項3に記載の発光素子であって、前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部における中心と、前記発光素子内部の発光部分領域の中心とのずれ幅が、前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部の径の最小値と前記発光部分領域において前記一側の表面に平行な面における最大幅との差の半分の値以下であることとした。
かかる構成によれば、発光素子では、平面視で発光部分領域が中心遮光部より小さく、中心遮光部の陰に隠れることになるので、環状の穴から出射した光の干渉効果を高めることができる。
また、請求項に記載の発光素子アレイは、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発光素子を並べた発光素子アレイであって、それぞれの前記発光素子が、前記発光素子アレイにおける配設位置に応じた光の出射方位として、前記一側の表面における所定の方位が予め定められており、前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部における中心を、前記発光素子内部の前記発光部分領域の中心から、当該発光素子において前記所定の方位とは同じ向きにずらして前記遮光膜が配置されていることを特徴とする。
かかる構成によれば、発光素子アレイは、それぞれの発光素子が、素子表面の環状の穴から放射する光の方位を所望の方向に制御できるので、立体ディスプレイの画素などへ応用することができる。また、立体ディスプレイの画素に応用する場合、各画素に対応したそれぞれの発光部分領域を一度に製造し、素子表面の遮光膜において各画素位置に対応したずれ幅およびずれ方向で環状の穴をそれぞれ設ければ、各画素を画素位置に応じた光の放射方向となるように容易に加工することができる。
請求項1に記載の発明によれば、発光素子は、遮光膜で妨害光を遮蔽し、素子単体で光線の成形と方向制御を可能とすることができる。また、発光素子において、遮光膜を金属で形成すれば、遮光膜に電極機能を兼用することができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、製造し易い発光素子を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、発光素子は、環状の穴から出射した光の干渉により、発光素子で成形される光線が広がらないようにすることができる。
請求項3に記載の発明によれば、発光素子を微細化することができる。
請求項4に記載の発明によれば、発光素子の環状の穴から出射した光の干渉効果を高めることができる。
求項に記載の発明によれば、製造し易い発光素子アレイを提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る発光素子の一部を透過して模式的に示す斜視図である。 図2(a)は本発明の第1実施形態に係る発光素子の平面図、図2(b)は参考例の発光素子の平面図である。 図3(a)は図2(a)のA−A線矢視における断面図、図3(b)は図2(b)のC−C線矢視における断面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の平面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の方位角を示す平面図であり、(a)はθ=0°、(b)はθ=60°、(c)はθ=120°、(d)はθ=180°を示している。 図5(a)と図5(b)とを重ねて示す平面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子および参考例のビームパターンの計算例であり、(a)はZX平面のビームパターン、(b)はYZ平面のビームパターンを示している。 本発明の第1実施形態に係る発光素子および参考例における光強度の遠方界パターンであって、(a)は参考例、(b)は第1実施形態に係る発光素子を示している。 本発明の第1実施形態に係る発光素子を用いたIP立体ディスプレイの概念図であって、(a)は正面図、(b)は斜視図を示す。 本発明の第2実施形態に係る発光素子の一部を透過して模式的に示す斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る発光素子の構成図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線矢視における断面図である。
以下、本発明の発光素子を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面に示される部材等のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
(第1の実施形態)
[発光素子の構造の概要]
本発明の第1実施形態に係る発光素子について図1を参照して説明する。図1に示す発光素子1は、図1において上側の表面から光を放射する発光素子であり、この上側の表面に遮光膜2を備える。図1において、発光素子1の光を射出する面(以下、射出面という)はXY平面と平行な面であるものとした。遮光膜2には、環状の穴3が設けられている。遮光膜2は、環状の穴3の内側に、中心遮光部4を有する。中心遮光部4は、発光素子1内部の発光部分領域5からの光を遮光する。発光部分領域5は、発光層20とは異なる層に配置されている。本実施形態では、発光部分領域5は、光源マスク層40に設けられた貫通孔の配置された領域であるものとした。発光層20は、環状の穴3の下方において光源となる領域(光源領域21)を備える。遮光膜2は、環状の穴3の内側にある部分(中心遮光部4)および外側にある部分によって、発光部分領域5からの光を遮光する。発光素子1は、中心遮光部4における中心O1と、発光部分領域5の中心O2とをずらして、遮光膜2が配置されている。
<発光素子の構造>
発光素子1は、例えばLEDのように、平坦な表面から光を放射するものである。
発光素子1は、図1に示すように、半導体層10と、発光層20と、バッファ層(第1バッファ層)30と、光源マスク層40と、バッファ層(第2バッファ層)50と、遮光膜2と、を備えている。
半導体層10は、発光層20と図示しない基板との間に設けられており、例えばn型半導体を材料としたn型半導体層である。半導体層10は、図示しない基板側から順に、例えば、n型GaN層と、n型GaN/InGaN障壁層とが積層された構造とすることができる。発光素子1が青色発光素子である場合、発光層20は、例えば、InGaNの量子井戸層として形成される。
バッファ層(第1バッファ層)30は、図1において発光層20の上側に積層されており、例えばp型半導体を材料としたp型半導体層である。バッファ層(第2バッファ層)50は、光源マスク層40の上に積層されており、例えばp型半導体を材料としたp型半導体層である。バッファ層50の上には遮光膜2が積層されている。バッファ層30とバッファ層50とは、例えば、1つのバッファ層を光源マスク層40により2つに分離することで形成できる。ここで、分離前の1つのバッファ層は、発光層20側から順に、例えばp型GaN/InGaN障壁層と、p型GaN層と、が積層される構造を有する。
光源マスク層40は、バッファ層30の上に積層されている。光源マスク層40は、貫通孔を備え、貫通孔以外の領域が発光層20からの光を遮蔽する。貫通孔の内部は中空であってもよいし、貫通孔にバッファ層50の材料が充填されていてもよい。この貫通孔の配置された領域が発光部分領域5である。貫通孔の形状は図示する円形に限らず、四角形や多角形であってもよい。光源マスク層40の材料は、光を遮蔽できる材料であれば特に限定されない。一例として、Al(アルミニウム)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)等の金属や、所定厚(例えば50nm)のカーボン等を挙げることができる。
図示を省略したが、一般的なLED素子と同様に、半導体層10とバッファ層50との間に段差を設けて、当該段差から引き出された部分にオーミックコンタクトを形成する形で電極を形成できれば、電極の構造は特に限定されるものではない。例えばp電極を、遮光膜2の部分に設け、n電極を半導体層10の基板側の面に設けてもよい。また、電極材料としては一般的な金属電極が使用できる。
<環状の穴>
以下、発光素子1の遮光膜2に設けられた環状の穴3について、説明の都合上、ずれの無い参考例と対比させながら図1ないし図4を参照して説明する。図2(a)に発光素子1の上面図を示し、図2(a)のA−A線矢視における断面図を図3(a)に示す。また、発光素子1の遮光膜2上の環状の穴3の位置を説明するために、参考例の発光素子1Aについても同様に図示する。すなわち、図2(b)に発光素子1Aの上面図を示し、図2(b)のC−C線矢視における断面図を図3(b)に示す。また、図4は発光素子1の上面図であって、発光制御のための構成要素の長さの関係をまとめて示す図である。
遮光膜2に設けた環状の穴3の輪郭は、図2(a)に示すような完全な円でなくてもよい。穴が環状に形成されていれば、その穴の輪郭は、例えば四角形や円に近似した多角形でもよい。環状の穴3の外径の最大値D(図4参照)は、環状の穴3からの光が干渉できる程度の長さに予め設定されている。つまり、環状の穴3の外径の最大値D(図4参照)は、放射光の可干渉長以下であることが好ましい。なお、光の可干渉長は、光源の発光スペクトルの半値幅と、中心波長とに依存する。光源がLEDの場合、例えば10〜数十μm程度の長さとなる。この場合、発光素子1内部の発光部分領域5は、素子表面に平行な面における最大幅w(図4参照)が、遮光膜2に設けた環状の穴3の外径の最大値Dよりも小さいことが好ましい。
発光素子1は、図2(a)および図3(a)に示すように、中心遮光部4における中心O1と、発光素子1内部の発光部分領域5の中心O2とが一致していない。一方、参考例の発光素子1Aは、図2(b)および図3(b)に示すように、中心遮光部4における中心O1と、発光素子1内部の発光部分領域5の中心O2とが一致している。参考例の発光素子1Aを基準とすると、発光素子1は、環状の穴3がY軸の負の方向に距離δだけずれている。
以下では、発光素子1の中心遮光部4における中心O1と、発光部分領域5の中心O2と距離δをずれ幅δと表記する。ずれ幅δ(図4参照)は、次の式(1)の関係を満たすことが好ましい。式(1)において、dは中心遮光部4の径の最小値を示し、wは発光部分領域5の最大幅を示す。
δ≦(d−w)/2 … 式(1)
<仰角>
発光素子1の射出面からの仰角を例えば角度αで表す。仰角αの基準は発光素子1の射出面(XY平面と平行な面:図1参照)である。すなわち発光素子1の射出面はα=0°で表される。また、発光素子1の射出面に対する法線方向(Z軸の正の方向)はα=90°で表される。このとき、説明のために、発光素子1の射出面に対する法線方向を基準にした制御角Ψ(=90°−α)を導入する。この発光素子1の射出面に対する法線方向はΨ=0°で表される。Ψ=0°のとき、発光素子1からの光は直進する。制御角Ψが0°より大きくなると、発光素子1からの光は傾く。なお、発光素子1の射出面はΨ=90°で表される。発光素子1は、ずれ幅δ(図2〜図4参照)を変えることにより、仰角α(または制御角Ψ)を所定の角度範囲で制御することができる。
<方位角>
発光素子1の射出面の面内における方向を例えば角度θ(0≦θ<180°)で表す。このとき、説明のために、発光素子1を発光面(上面)から見たときの光の出射向きを示す方位角β(=θ+180°)を導入する。発光素子1は、発光素子1内部の発光部分領域5の中心O2に対して、中心遮光部4における中心O1をずらす方向を変えることにより、角度θ(または方位角β)を制御することができる。このように、ずれ幅δの基準を発光部分領域5の中心O2としているので、発光素子1の上面図(図2、図4、図5)において、発光素子1の内部の光源マスク層40を基準にしていることを破線で示している。
以下では、3次元空間上で仰角α(または制御角Ψ)と方位角βとの組みで特定される向きを光の出射方位と呼ぶ。
以下、方位角について図5を参照(適宜図4参照)して説明する。図5(a)は発光素子1の一部を示す上面図である。ここでは、図5(a)に示す破線で示す光源マスク層40の上面に対応させて、発光部分領域5の中心O2を原点とした2次元XY座標空間を想定している。この2次元XY座標空間では、例えばY軸の正の方向から時計回りの回転角で角度の大きさを規定する。また、座標原点(O2)からずれ幅δだけ離間した位置に、中心遮光部4における中心O1が配置されるように環状の穴3を設けた。
図5(a)に示すように、2次元XY座標空間において、座標原点(O2)と中心遮光部4における中心O1とを結ぶ直線は、Y軸に一致している。このとき、中心遮光部4における中心O1はY軸の負の方向に位置する。図示する位置に環状の穴3が設けられた場合を、一例として角度θ=0°として特定する。この場合、光の出射向きは、方位角β=180°の向きで特定される。
図5(b)は、図5(a)と同様の上面図である。ただし、環状の穴3を設けた位置が異なる。具体的には、ずれ幅δの値は同じであるが、座標原点(O2)と中心遮光部4における中心O1とを結ぶ直線は、Y軸を原点周りに角度θ=60°だけ回転させた仮想線に一致している。図示する位置に環状の穴3が設けられた場合を、一例として角度θ=60°として特定する。この場合、光の出射向きは、方位角β=240°の向きで特定される。
図5(c)は、図5(a)と同様の上面図である。ただし、環状の穴3を設けた位置が異なる。具体的には、ずれ幅δの値は同じであるが、座標原点(O2)と中心遮光部4における中心O1とを結ぶ直線は、Y軸を原点周りに角度θ=120°だけ回転させた仮想線に一致している。図示する位置に環状の穴3が設けられた場合を、一例として角度θ=120°として特定する。この場合、光の出射向きは、方位角β=300°の向きで特定される。
図5(d)は、図5(a)と同様の上面図である。ただし、環状の穴3を設けた位置が異なる。具体的には、ずれ幅δの値は同じであるが、座標原点(O2)と中心遮光部4における中心O1とを結ぶ直線は、Y軸に一致している。このとき、中心遮光部4における中心O1はY軸の正の方向に位置する。図示する位置に環状の穴3が設けられた場合を、一例として角度θ=180°として特定する。この場合、光の出射向きは、方位角β=360°の向きで特定される。
要するに、図5(a)〜図5(d)に示すように、ずれ幅δを一定にしたまま、発光素子1内部の発光部分領域5の中心O2(座標原点)の軸周りに、環状の穴3を角度θだけ回転させることにより、方位角βを制御することができる。ここで、環状の穴3を角度θだけ回転させることについて図6を参照(適宜、図4および図5参照)して説明する。
図6は、図5(a)の上面図と、図5(b)の上面図とを重ねて示した図である。図6において実線で示す環状の穴が角度θ=0°(図5(a)参照)に対応している。図6において二点鎖線で示す環状の穴が角度θ=60°(図5(b)参照)に対応している。なお、環状の穴は素子表面に存在し、発光部分領域は素子内部に存在している。図6において発光部分領域の中心O2(原点)の軸周りに、実線で示す環状の穴を角度θ=60°だけ回転させると、二点鎖線で示す環状の穴に一致する様子が分かる。
[光の干渉原理]
ここでは、発光素子1の環状の穴3から出射される光の干渉の原理について数式を用いつつ図2および図3を参照して説明する。一般に、半導体の誘電率は真空中(空気中)より高いため、半導体中を伝搬する際の光の速度は、空気中を伝搬する速度に比べて遅くなる。具体的には、大気中または真空中の光の速度をc、半導体の屈折率をnとすると、半導体中の速度は、c/nで与えられる(例えばGaNであれば例えばn=2.6)。
そして、図3(a)の断面図において、発光部分領域5からの光は、バッファ層50に入射し、バッファ層50から外部の空気中(自由空間)へと出射する。ここで、発光層20の光源領域21からの光が、バッファ層30に入射し、光源マスク層40に設けられた貫通孔(発光部分領域)5に入射し、発光部分領域5からの光となる。外部へ出射するとき、バッファ層50の媒質の方が外部の媒質(空気)よりも屈折率が高いので、バッファ層50を通過する光は、遮光膜2に設けられた環状の穴3への入射角に応じた方向に屈折して出射し、一部は全反射する。
図2(a)に示す発光素子1について、例えば、中心遮光部4の中心O1を軸とする中心軸を含む平面で発光素子1を切断すると、この切断面において、遮光膜2に設けられた環状の穴3は、素子表面において見かけ上、2つの穴となる。切断面の1つとしてA−A線矢視における断面図は図3(a)に示す通りである。
図2(b)に示す発光素子1Aについても同様の切断面を想定すると、C−C線矢視における断面図は図3(b)に示す通りとなる。この発光素子1Aの場合、D−D線矢視における断面図も図3(b)に示す通りとなる。
図3(b)に示す発光素子1Aの断面の場合、発光部分領域5から素子表面の一方の穴までの光路長と他方の穴までの光路長とは、同じである。よって、2つの穴の出射端で位相差は生じない。これら見かけ上の2つの穴から出射した光は、干渉して所定の広がりを有した光線として成形され、素子表面の法線方向を向いた線上に出射する。
一方、図3(a)に示す発光素子1の断面の場合、発光部分領域5から素子表面の一方の穴までの光路長と他方の穴までの光路長とは、異なる。よって、2つの穴の出射端で位相差が生じる。これら見かけ上の2つの穴から出射した光は、干渉して所定の広がりを有した光線として成形され、素子表面の法線方向から傾いた線上に出射する。ここで、発光素子1は、発光部分領域5の中心O2を基準にすると、中心遮光部4における中心O1がずれ幅δだけずれている。また、図3(a)に示す発光素子1の断面の場合、発光部分領域5の中心O2を基準にすると、中心遮光部4の中心O1がずれる方向は、Y軸の負の方向である。なお、図2(a)の発光素子1であっても、例えば、B−B線のように、発光部分領域5の中心O2を軸とする中心軸を含む平面を切断面として想定すると、2つの光路長は同じとなる。よって、環状の穴3から出射される光は、環状の穴3の中心軸周りのすべての影響を受けて、素子表面の法線方向から傾いた所定の方向に出射される。具体的なシミュレーション結果については後記する。
以下、発光素子1において、発光部分領域5から素子表面の見かけ上の2つの穴に至る2つの光路長が異なる断面を想定した場合の光の干渉について下記の数式を適宜用いて説明する。
ここで、3次元空間の位置rにある波源と、位置rにある波源とからそれぞれ射出された光によって、3次元空間の位置rに時刻tにおいて合成される光の強度I(r)は、次の式(2)で与えられる。
式(2)において、光の干渉を表す第3項が存在するために、発光部分領域5からの光が、2つの波源からそれぞれ射出された後に重畳されて、波面を変えて波の進行方向を変えることが可能となる。式(2)では、式(3)のγの実部を利用する。式(3)のEは、Eの複素共役であることを示す。γは、式(3)で示すように、0から1までの値をとり、2つの波源から射出された光が時間的・空間的にどのくらい相関を持っているのかを示している。よって、γは、次の式(4)〜式(6)のように場合分けすることができる。
式(4)の場合を完全コヒーレント、式(5)の場合をインコヒーレント、式(6)の場合を部分的なコヒーレントと呼ぶ。ここでは、発光素子として、LEDの光源を使用しているため、部分的なコヒーレントになっている。したがって、図1の発光素子においては、光の強度において、前記式(2)の第3項の寄与が大きい。
以下では、第1実施形態の発光素子1についての光線の成形と、光線の方向制御とに関して行ったシミュレーションについて順次説明する。
[発光素子の設計の具体例]
発光素子1は、例えばGaNにInを添加したLEDであるものとし、発光スペクトルの中心波長(波長λ)は470nmであるものとした。遮光膜2をMoの金属薄膜で形成し、遮光膜2の厚さh(図3(a)参照)を200nmとした。バッファ層50の厚さb(図3(a)参照)を250nmとした。バッファ層30および光源マスク層40の合計の厚さc(図3(a)参照)を250nmとした。
遮光膜2には、光を射出させるための環状の穴3が開けられている。環状の穴3の内径の最小値d(図4参照)、すなわち中心遮光部4の直径を、発光スペクトルの中心波長に相当する長さ(470nm)とした。環状の穴3の外径の最大値D(図4参照)を、発光スペクトルの中心波長の3倍に相当する長さ(1410nm)とした。環状の穴3の幅(放射方向の長さ)を、発光スペクトルの中心波長に相当する長さ(470nm)とした。
光源領域21は、図1および図3(a)に示すように、平面視で直径(最大幅)W=400nmの円形とした。発光部分領域5は、図1および図4に示すように、直径(最大幅)w=200nmの円形とした。図3(a)および図4に示すように、発光部分領域5の中心線と中心遮光部4の中心線との距離をδとした。
[発光素子の性能]
第1実施形態の発光素子1の性能を確かめるために、FDTD(Finite-Difference Time-Domain)法によるシミュレーションを行った。シミュレーションの条件としては、発光素子1の表面(上面)と平行な面の正方形領域(大きさ3000nm×3000nm)をベースとして想定した。また、発光領域から素子表面の上方3500nmまでの領域を計算対象としてシミュレーションを行った。
<ビームパターンの具体例>
本発明の実施形態に係る発光素子1におけるビームパターンの計算結果の一例として、ZX平面におけるビームパターンのシミュレーション結果を図7(a)に示し、YZ平面におけるビームパターンのシミュレーション結果を図7(b)に示す。ここでは、発光素子1のバッファ層50(図3(a)参照)の上面をZ=0(XY平面)として、遮光膜2に設けた環状の穴3の内側にある中心遮光部4における中心O1の直下を原点(0,0,0)とした。また、発光素子1において、図2(a)に示すように、発光部分領域5の中心O2を基準にしたときに中心遮光部4の中心O1をずらす方向は、Y軸の負の方向であるものとした。この方向は、図3(a)の断面図では、右方向を示す。なお、比較のため、参考例の発光素子1Aについてもビームパターンを同様に算出した。
参考例の発光素子1A(δ=0nm)について、ZX平面における光の強度の積算値を、ZX平面のビームパターンとして図7(a)の(a−1)に示す。本発明に係る発光素子1について、δ=50nmとした場合のZX平面における光の強度の積算値を、ZX平面のビームパターンとして図7(a)の(a−2)に示す。図7(a)において、矩形の画像の幅方向がX方向に対応し、矩形の画像の高さ方向がZ方向に対応している。また、図7(a)において、矩形の画像の中心がZ軸に対応している。
図7(a)の(a−1)に示すように、参考例の発光素子1A(δ=0nm)では、矩形の画像の中央に、直立した柱状の光線が成形されることが分かる。同様に、図7(a)の(a−2)に示すように、本発明に係る発光素子1(δ=50nm)では、矩形の画像の中央に、直立した柱状の光線が成形されることが分かる。柱状の光線の領域は、素子表面の上方3500nmに到達した光の多い領域を示し、柱状の光線の周囲の領域は、素子表面の上方3500nmに光の到達しない領域を示す。柱状の光線の強度は、画像の右に示すスケールにて示す色でおよそ1W/m2である。なお、ここでは、FDTD法における電界の自乗をとった電力密度を光の強度とした。
参考例の発光素子1A(δ=0nm)について、YZ平面における光の強度の積算値を、YZ平面のビームパターンとして図7(b)の(b−1)に示す。本発明に係る発光素子1について、δ=50nmとした場合のYZ平面における光の強度の積算値を、YZ平面のビームパターンとして図7(b)の(b−2)に示す。図7(b)において、矩形の画像の幅方向がY方向に対応し、矩形の画像の高さ方向がZ方向に対応している。また、図7(b)において、矩形の画像の中心がZ軸に対応している。なお、画像の右側に光の強度スケールを同様に示す。
図7(b)の(b−1)に示すように、参考例の発光素子1A(δ=0nm)では、矩形の画像の中央に、直立した柱状の光線(メインローブ)が成形されることが分かる。光の強度分布の中心点を光線が通るものとすると、原点上に光の強度分布の中心点が現れることから、素子表面と垂直な方向に向かう線上に光線が成形されてしまうことを、この参考例で確かめた。なお、メインローブの左右に均等にサイドローブが生じた。
一方、図7(b)の(b−2)に示すように、本発明に係る発光素子1(δ=50nm)では、Y軸の負の方向に傾斜した線上に光線(メインローブ)を成形できることが分かる。メインローブが傾斜した方向は、発光部分領域5の中心O2を基準にしたときに中心遮光部4の中心O1をずらした方向と一致した。つまり、環状の穴3が、発光部分領域5に対してY軸の負の方向にシフトしていると、光線は、Y軸の負の方向に放射された。
ところで、図7(b−2)に示す断面視による見かけ上の2つの穴のうち、Y軸の正の方向の穴(右の穴)は光が真上に出易く、負の方向の穴(左の穴)は光が全反射し易い。なお、図7(b−2)に示す断面図の左右と、図3(a)に示す断面図の左右とは反対向きである。そして、図7(b−2)に示す断面視では、左の穴よりも右の穴の方からより多くの光が放射される。このことは、図7(b−2)に示す左右の2つのサイドローブの大きさと矛盾しない。そこで、より多くの光が放射される右の穴の方(Y軸の正の方向)に向けてメインローブが傾くようにも考えられる。ところが、実際の光線は、反対側に傾いた。これは、光線が、主に中心遮光部4(図1参照)の周辺から放射され、真上に多く出る側(図7(b−2)の右側)の放射光に対して、中心遮光部4を介した反対側(図7(b−2)の左側)の放射光が干渉するためであると推察される。なお、ずれ幅δ、環状の穴3の内径の最小値d(図4参照)、バッファ層50の厚さb(図3(a)参照)等の設定値を変えれば、光線が右の穴の方(Y軸の正の方向)に傾く場合もあると考えられる。
<遠方界パターン>
FDTD法による計算結果を用い、遠方界パターンを計算し、これを光の方向制御の評価に用いた。遠方界パターンは、距離が変わっても角度に対して光の強度が一定となるパターンを示す。前記ビームパターンは、素子表面の上方3500nm(3.5ミクロン)の距離を想定していたが、遠方界パターンは、素子表面の上方のおよそ1mmの距離を想定している。
YZ平面のように発光素子1を上から下に向かって切断するような断面は無数にあるが、光線方向の制御角Ψが最も大きくなるのはYZ平面であった。よって、このYZ平面について、発光素子1においてδの値を変化させたときに、光強度の遠方界パターンの具体例をそれぞれ求めた。図8(a)は、比較のために求めたものであって、参考例の発光素子1A(δ=0nm)の光強度の遠方界パターンを示す。図8(b)は、試した中で最もよい結果であって、本発明に係る発光素子1において、δ=50nmである場合の光強度の遠方界パターンを示す。
ここで、原点(放射状のグラフの中心)は、発光素子1のバッファ層50の上面をZ=0(XY平面)としたときの原点(0,0,0)に相当し、遮光膜2に設けた環状の穴3の内側にある中心遮光部4における中心O1の直下に対応している。図8において、制御角Ψは、発光素子1の表面の法線と遠方界における光線のメインローブとが成す角を示す。
参考例の発光素子1A(δ=0nm)の場合、図8(a)に示すように、制御角Ψは0°(直進)であって、素子表面と垂直な方向に向かう線上に光線が成形されてしまうことが分かる。なお、メインローブの左右には均等なサイドローブが現れた。
一方、本発明に係る発光素子1において、ずれ幅δ(図2〜図4参照)の値を徐々に増加させて制御角Ψを求めたとき、δ=50nmにおいて最大制御角となった。すなわち、ずれ幅δ=50nmの場合、図8(b)に示すように、制御角Ψは22°であって、素子表面と垂直な方向からY軸の負の方向に22°傾いた方向に光線を成形できることが分かる。なお、Z軸がX軸周りにY軸の正の方向から負の方向へ回転する方向を制御角Ψの正の方向とした。例えば図3(a)の断面図の場合、発光素子1の射出面の法線方向から図3中において右周りに回転する方向が制御角Ψの正の方向を示す。なお、δ=50nmの場合には、図8において左側のサイドローブが、右側のサイドローブよりも小さくなった。
[発光素子の製造方法]
発光素子1を製造する方法としては、公知の種々の微細加工技術を用いることができる。発光素子1は、例えばLEDのように平坦な放射面を有する発光素子を用意し、その表面を微細加工して作成することが可能である。
発光素子1の製造工程の一例を挙げると、まず、例えばGaAsやSi等の半導体基板に、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法などの成膜方法により、半導体層10と発光層20とバッファ層(第1バッファ層)30とを積層する。次いで、バッファ層30上に金属材料を蒸着法、スパッタリング法等により積層した後、フォトリソグラフィ法等によって金属層が作製される。
そして、金属層上において貫通孔を形成する領域以外をフォトレジスト等でマスクして、エッチングにより貫通孔を形成する。これにより、光源マスク層40が作製される。エッチングは、例えば反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)等のドライエッチングや薬液を用いたウェットエッチングを用いることができる。
そして、光源マスク層40上に例えば前記した所定の成膜方法により、バッファ層(第2バッファ層)50を積層する。次いで、バッファ層50上に例えば金属材料を蒸着法、スパッタリング法等により積層した後、フォトリソグラフィ法等によって遮光膜2が作製される。そして、この遮光膜2上において環状の穴を形成する領域以外をフォトレジスト等でマスクして、エッチングにより環状にくり抜く。これにより、環状の穴3および中心遮光部4が作製される。なお、環状の穴3の内壁や底面、または遮光膜2の表面にSiO2等の絶縁性の保護膜を形成してもよい。
[発光素子の応用例]
発光素子1(図1参照)は、内部の発光部分領域5の位置に対して、遮光膜2に形成する環状の穴3の位置をずらすことにより、当該発光素子1から出射する光線の方向を制御できる。よって、発光素子1を基板上に多数並べることにより、IP方式のディスプレイであるIP立体ディスプレイを提供することが可能である。この場合、各発光素子1に、同一サイズかつ同一形状の環状の穴3を設け、環状の穴3の位置をずらすパターンを変えるだけで、すべての光線の方向を制御できる。つまり、簡単構造で、IP方式の立体ディスプレイを提供することが可能である。このような応用例について図9を参照(適宜、図1、図2及び図5参照)して説明する。
図9(a)に示すIP立体ディスプレイ70は、画素アレイとして発光素子アレイ60を備えている。発光素子アレイ60は、発光素子1を並べたものである。それぞれの発光素子1は、発光素子アレイ60における配設位置(画素の位置)に応じた光の出射方位として、表面における所定の方位が予め定められている。図9(a)において、発光素子1の実線で示す輪郭は、発光素子の区画を分かり易くするために便宜的に示したものであり、図5において破線で示した光源マスク層40の輪郭に対応している。発光素子アレイ60において、縦横を整列させた共通の光源マスク層40を作製し、バッファ層50(図1参照)を積層した後に、個々の発光素子1(画素)において予め定められている射出方位となるように環状の穴3がくり抜かれる。よって、くり抜かれた環状の穴3の位置にだけ着目すると、縦横の整列位置からずれている。すなわち、個々の発光素子1において、図2(a)に示したように、遮光膜2は、中心遮光部4における中心O1を、発光素子1内部の発光部分領域5の中心O2から、当該発光素子1において所定の方位とは同じ向きにずらして配置されている。図9(a)に示すIP立体ディスプレイ70において、個々の発光素子1(画素)から射出する光線の方向は、図9(b)にて、例えば円柱や立方体を終点とする太い矢印の方向で示されている。
ここで、図示は省略するが、IP立体ディスプレイ70に対応したIP立体撮影装置がレンズ板を介して被写体(例えば図9(b)に示すような円柱や立方体等)を予め撮影した要素画像群を取得しておくことが、立体を表示(再生)するための前提となる。撮影に用いるレンズ板は、要素レンズを所定のレンズピッチで並置して構成された要素レンズアレイになっている。従来のIP方式のディスプレイでは、例えば液晶パネルに要素画像群を表示して、撮影時と同様の要素レンズアレイの各要素レンズを介して各要素画像を投影し、それらを集積した像を、被写体に対応した立体再生像として観察する。一方、IP立体ディスプレイ70の場合、密集して配置された複数の発光素子1が要素画像(1単位の要素画素群)を形成し、通常のIP立体ディスプレイの個々の要素レンズに相当する領域に、1単位の要素画素群(複数の発光素子1からなる1つの単位構造)が並置される構造となる。これにより、図9(b)に示すように、IP立体ディスプレイ70の単位構造それぞれが要素画像を空間上にそれぞれ投影し、それらが集積されて、被写体の再生像(立体像)として、例えば円柱や立方体が表示される。
このようにIP立体ディスプレイ70は、各画素を構成する発光素子1が、個別に、射出される方向(方位)が決定されていることによって、光学レンズを介することなく、各発光素子1から特定の方向(方位)への指向性をもった光を射出することができる。このような微細構造を有する発光素子1を多数個並べた表示素子(FPD)は、従来技術においてレンズ板と発光面とを接合させた装置と同じ働きを有するようになる。このようにして作成したIP立体ディスプレイ70においては、立体表示の解像度は、発光素子1の精細度にのみ依存し、光学系の解像度不足による映像ボケが生じない。また、発光素子1を用いたIP表示における視域角は、素子表面と垂直な方向に対する放射光の成す角(制御角θ)の最大値にのみ依存し、解像度と視域角とを独立に改善することが可能である。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る発光素子について図10および図11を参照して説明する。図10は、図1に対応した図であって第2実施形態に係る発光素子1Bの斜視図である。図11(a)は、図2(a)に対応した図であって発光素子1Bの上面図を示す。図11(b)は、図11(a)のE−E線矢視における断面図を示す。
発光素子1Bは、図10および図11に示すように、半導体層10と、発光層20と、バッファ層30と、遮光膜2と、を備え、光源マスク層を有していない。発光素子1Bにおいて、第1実施形態に係る発光素子1と同様な構成には同様の符号を付し、説明を適宜省略する。
発光層20は、当該発光層のうち環状の穴3の直下において光源となる領域(発光部分領域5Bという)を備える。発光部分領域5Bは、図1に示す光源領域21と同様である。ただし、発光部分領域5Bの幅を、図1に示す光源領域21の最大幅Wよりも短くして、図4に示す発光部分領域5の最大幅wと同様のサイズにした。発光素子1Bは、発光部分領域5Bの下方に設けた図示しない針状の電極と、例えば電極機能を有した金属膜からなる遮光膜2と、の間に外部電源を接続して所定電流を流すことで、発光層20において発光部分領域5Bを発光させることができる。
発光素子1Bは、中心遮光部4における中心O1と、発光部分領域5Bの中心O2とをずらして、遮光膜2が配置されている。ここでは、図11(b)に示すように発光素子1BのE−E線矢視による断面の場合、発光部分領域5Bから素子表面の一方の穴までの光路長と他方の穴までの光路長とは、異なる。よって、2つの穴の出射端で位相差が生じる。なお、発光素子1BのF−F線矢視による断面の場合、発光部分領域5Bから素子表面の一方の穴までの光路長と他方の穴までの光路長とは、同じである。よって、2つの穴の出射端で位相差は生じない。ただし、環状の穴3から出射される光は、環状の穴3の中心軸周りのすべての影響を受けて、素子表面の法線方向から傾いた所定の方向に出射される。よって、発光素子1Bのビームパターンは、第1実施形態の発光素子1と同様なビームパターンとなる。
発光素子1Bを製造する方法としては、基板上に、半導体層10と発光層20とバッファ層30とを積層した後、バッファ層30上に、例えば金属材料を蒸着法、スパッタリング法等により積層した後、フォトリソグラフィ法等によって遮光膜2を作製する点が、発光素子1を製造する方法と異なっている。このように、発光素子1Bによれば、発光素子1よりも容易に製造することができる。
以上説明したように、本発明の各実施形態に係る発光素子1,1Bは、素子表面を被覆する遮光膜2に設けた環状の穴3から出射する光の干渉効果により光線を成形できる。また、発光素子1,1Bは、素子表面を被覆する中心遮光部4における中心O1と、当該発光素子内部の発光部分領域5,5Bの中心O2とをずらす距離δを適切に選び、所望の方向に中心遮光部4の中心O1をずらして配置することで、素子表面から垂直な方向以外の任意方向へ放射する光線を成形することが可能となる。
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、LED素子の材料は、GaNであるもとして説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、AlN、GaAlN、ZnO、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAlAsP等であってもよい。
また、半導体層10はn型半導体層、バッファ層30およびバッファ層50はp型半導体層であるとして説明したが、半導体層10はp型半導体層、バッファ層30およびバッファ層50はn型半導体層であるものとしてもよい。
また、発光素子は、LED素子のような注入型のEL素子に限定されず、有機EL素子や無機EL素子のような真性EL素子であってもよい。
また、バッファ層にGaNを用いてビームパターン等を計算したが、バッファ層に例えばSiO2等の誘電体を用いてもよい。例えばSiO2は、誘電率(または屈折率)がGaNよりも小さいので、SiO2をバッファ層に用いたときのバッファ層中での光の波長は、GaNをバッファ層に用いたときのバッファ層中での光の波長よりも長くなる。よって、GaNを用いたときに、光線成形および方位制御のために例えばサイズをある程度微小にしなければならないといった制約について、SiO2を用いることで前記制約を緩和することができる。
また、発光素子の遮光膜に電極機能を持たせてもよい。また、発光素子の遮光膜の部分を、透明電極層と遮光機能としての金属薄膜とで構成してもよい。
また、環状の穴は、完全な円でなくても、環状であればよい。四角のリングやその他の多角のリングであってもよい。
発光素子は、光線の成形と方向制御を必要とするデバイス一般に応用することが可能である。例えば、プロジェクター用光源、空間光インターコネクションに用いる接続器、拡散板を必要としない照明用光源などに好適である。
1,1A,1B 発光素子
2 遮光膜
3 環状の穴
4 中心遮光部
5,5B 発光部分領域
10 半導体層
20 発光層
21 光源領域
30 バッファ層(第1バッファ層)
40 光源マスク層
50 バッファ層(第2バッファ層)
60 発光素子アレイ
70 IP立体ディスプレイ
71 基板

Claims (5)

  1. 一側の表面から光を放射する発光素子であって、
    前記発光素子内部の発光部分領域からの光を遮光するための遮光膜を前記表面に備え、
    前記遮光膜には、環状の穴が設けられており、
    前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部における中心と、前記発光素子内部の発光部分領域の中心とをずらして、前記遮光膜を配置し
    発光層と、
    前記発光層の一側に積層された第1バッファ層と、
    前記第1バッファ層の上に積層された光源マスク層と、
    前記光源マスク層の上に積層された第2バッファ層と、
    前記第2バッファ層の上に積層された前記遮光膜と、を備え、
    前記光源マスク層は、
    前記発光素子内部の前記発光部分領域に対応した位置に貫通孔を備え、前記貫通孔以外の領域が前記発光層からの光を遮蔽することを特徴とする発光素子。
  2. 前記遮光膜に設けた環状の穴の外径の最大値は、放射光の可干渉長以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
  3. 前記発光素子内部の発光部分領域は、前記一側の表面に平行な面における最大幅が、前記遮光膜に設けた環状の穴の外径の最大値よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
  4. 前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部における中心と、前記発光素子内部の発光部分領域の中心とのずれ幅は、前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部の径の最小値と前記発光部分領域において前記一側の表面に平行な面における最大幅との差の半分の値以下であることを特徴とする請求項3に記載の発光素子。
  5. 請求項1から請求項のいずれか一項に記載の発光素子を並べた発光素子アレイであって、
    それぞれの前記発光素子は、
    前記発光素子アレイにおける配設位置に応じた光の出射方位として、前記一側の表面における所定の方位が予め定められており、
    前記遮光膜に設けた環状の穴の内側にある中心遮光部における中心を、前記発光素子内部の前記発光部分領域の中心から、当該発光素子において前記所定の方位とは同じ向きにずらして前記遮光膜が配置されていることを特徴とする発光素子アレイ。
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