JP2014072278A - 発光素子の製造方法、その装置および発光素子 - Google Patents

発光素子の製造方法、その装置および発光素子 Download PDF

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Abstract

【課題】表面に微細な構造物を有する発光素子を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】表面の発光中心に対してN回対称の位置にN個の構造物が配列され前記Nが3以上の自然数である発光素子を製造する製造方法は、面発光型の発光素子の平坦な表面の法線方向の軸周りに、Nが偶数の場合、360/Nの角度を基準にして、Nが奇数の場合、360/Nの半分の角度を基準にして、等間隔に少なくとも1周分の角度を設定する工程と、設定角度の予め定められた順番で発光素子を相対的に回転させて設定角度の位置に固定する工程と、設定角度のそれぞれの位置において、発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料の予め定められた領域に集束イオンビームを照射して集束イオンビームを走査する工程と、を行うことでN個の構造物を形成することを特徴とする。
【選択図】図8

Description

本発明は、発光素子の製造方法、その装置および発光素子に係り、特に、立体映像表示装置に用いることができる技術に関する。
従来、像再生型立体表示の代表的な方式として、ホログラフィ、パララクスステレオグラム、レンチキュラシート、インテグラルフォトグラフィ(以下IPと称す)などが知られている。ホログラフィを除く、これらの方式の実用化に関しては、コヒーレント光を必要としない簡易な方式で早期に実現可能と考えられている。また、IPは水平方向に加え、垂直方向の視差情報も表現することができるため、自然な立体表示が可能な装置の早期実現に有望であると考えられている(例えば非特許文献1参照)。
IPの表示システムは、光線を再生する多数の微小なレンズ(要素レンズ)を配列したレンズアレイと、各レンズに対応した画像(要素画像)を多数並べて表示するディスプレイとによって構成される。観察者は、1つの要素レンズに対応する1つの要素画像から、観察者の位置に応じた部分的な情報を得、要素画像を要素レンズの数だけ並べた立体像を観察する。IPの表示システムにおいて、立体像の解像度は、要素レンズの解像度と、要素画像の解像度と、観視距離とで決まる。また、IPの表示システムの視域角については、要素レンズの性能が支配的な要因になる。このような事情から、実用的な立体像をIP方式で生成するには、発光素子と光学素子の高精細化・高機能化が不可欠である(例えば非特許文献2参照)。
しかし、発光素子と光学素子の高精細化が進んでも、レンズを使用する光学系には、レンズの回折限界や焦点距離のように原理的に取り除くことができない性能限界も存在する。例えばディスプレイの画素サイズが、要素レンズの最小スポットサイズより小さくなると、映像ボケが発生するため、同時にスポットサイズも小さくする必要があるが、スポットサイズをAbbeの回折限界より小さくすることは原理的に不可能である。
また、レンズを用いたシステムでの視域角は、要素レンズの焦点距離に反比例するが、視域角を大きくするために要素レンズの焦点距離を無限に小さくすることはできない。さらに、視域角は、要素レンズのピッチに比例もするため、要素レンズのピッチを大きくすれば視域角の拡大が可能であるが解像度が劣化するので、レンズを用いた光学系における解像度と視域角には、トレードオフの関係がある。
IPの表示システムとは直接関係ないものの、発光素子の分野においては、自発光素子であるLED(Light Emitting Diode)は、近年、その発光特性が飛躍的に進歩したことから、各種用途で注目を集めている。LEDは、放射される光の直進性が良いため、照明器具などへの応用においては拡散させる仕組みが必要となる。LEDの放射光を拡散させる技術がさらに進み、光の放射される方位の制御が可能となれば、ディスプレイなどへの応用も可能となる。
ディスプレイの関連技術として、例えば特許文献1には、液晶ディスプレイからなる画像表示手段の手前に、液晶デバイスを用いた空間光変調素子等のビーム偏向手段を設けることで、画素からの光を偏向させて、視点位置の異なる複数の2次元画像から立体像を表示する立体表示装置が記載されている。ただし、この装置は、LEDのような発光素子を用いたディスプレイではない。
また、LEDから取り出す光の方向を制御する技術として、LED光の出射角度を調整可能な発光装置が特許文献2に記載されている。
特開平6−110374号公報 特開2008−147182号公報 特開2009−139132号公報
「超高精細映像技術・立体映像技術」、電子情報通信学会誌、2010年5月、Vol.93, No.5, p.372-381 財団法人機械システム振興協会・財団法人光産業技術振興協会、「自然な立体視を可能とする空間像の形成に関する調査研究報告書−要旨−」、システム技術開発調査研究19-R-5、2008年3月、p.14-16
しかしながら、特許文献2に記載の発光装置は、LEDから取り出す光の方向を制御するために多種の部品が必要とされる。また、ディスプレイに応用して発光素子ごとの方位制御を行おうとする場合、多数の微細な発光素子を形成する必要がある。また、これら微細な発光素子の放射光を正面以外の方向へ射出することはきわめて難しい。また、微細な構造を備えたLEDから取り出す光の方向を制御できる技術は知られていないのが現状である。
LED等の発光素子上に光の方向を制御可能な微細な構造を形成するために、例えばフォトリソグラフィ技術を用いる場合、マスクを使用したエッチングが前提となる。マスクと試料(LED等の発光素子)とを接触させて露光するコンタクト露光では、その接合面にダメージが生じてしまう。また、マスクと試料との隙間を僅か(数〜数十μm程度)にあけて露光する非接触のプロキシミティ露光も知られているが、分解能に劣る。つまり、立体表示に適用できるような微細な構造を有した発光素子を製造するためにはフォトリソグラフィは適していない。よって、マスクを使わずに直接描画する方法、特に、分解能を考慮すると現状では集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)が有効であると考えられる(例えば特許文献3参照)。
しかしながら、立体表示に適用するためには、例えば発光波長のサイズあるいはその数倍程度のオーダーで設計された複数の構造物の3次元形状を設計どおり形成したり、各構造物を設計どおり配置したりするなどの精密な制御が必要になる。従来の集束イオンビーム装置によって構造物を設計どおりに形成してみると、エッチングされた領域における非対称な堆積物が発生したり、構造物間の予期しない段差が発生したりすることが分かった。
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、表面に微細な構造物を有する発光素子を製造する発光素子の製造方法、その装置および発光素子を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る発光素子の製造方法は、面発光型の発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料を集束イオンビームを照射して削ることで表面の発光中心に対してN回対称の位置にN個からなる複数の構造物が配列され前記Nが3以上の自然数である発光素子を製造する発光素子の製造方法であって、前記複数の構造物の配列対称性に合わせて前記発光素子の平坦な表面の法線方向の軸周りに、Nが偶数の場合、360/Nの角度を基準にして、Nが奇数の場合、360/Nの半分の角度を基準にして、等間隔に少なくとも1周分の角度を設定する工程と、前記設定角度の予め定められた順番で前記発光素子を相対的に回転させて前記設定角度の位置に固定する工程と、前記設定角度のそれぞれの位置において、前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料の予め定められた領域に集束イオンビームを照射して集束イオンビームを走査する工程と、を行うことで前記複数の構造物を形成することを特徴とする。
かかる手順によれば、発光素子の製造方法は、材料の発光素子の平坦な表面に集束イオンビームを照射することで複数の構造物を形成する。ここで、複数の構造物は、N回対称の位置に配列されるように設計されている。発光素子の製造方法は、複数の構造物の配列対称性に合わせた角度において集束イオンビームを走査する。ここで、配列対称性に合わせた角度は、例えば3つの構造物の場合、その重心を中心に3回対称の対称軸の軸方向で規定される角度を示す。複数の構造物の個数が奇数の場合、時計回りに回転するか、半時計周り回転するかによって、構造物の位置が変わるので、360/N度の半分の角度を基準とする。よって、3つの構造物の場合、1周当たり、例えば時計周りに0(360)度,120度,180度,240度,300度の6個の設定角度が設定される。0(360)度と180度との組、120度と300度との組、240度と60度との組は、3回対称の対称軸の軸方向を互いに反対向きに走査する組となっている。複数の構造物の個数が偶数の場合、時計回りに回転しても、半時計周りに回転しても、構造物の位置が同様なので、360/N度の角度を基準とする。よって、6つの構造物の場合、1周当たり、例えば時計周りに0(360)度,120度,180度,240度,300度の6個の設定角度が設定される。通常のビーム走査だけでは、表面をエッチングして形成された凹部において、走査の進行方向(例えば右)の側壁と、走査の反対方向(例えば左)の側壁とで壁の傾斜が異なり、壁の形状に差異が発生することを本願発明者らは確かめた。これに対して、本発明の発光素子の製造方法は、1つの走査線に対して結果として双方向のビーム走査を行うので、N回対称の対称軸の軸方向の対称性が崩れることを防止して表面に微細な構造物を有する発光素子を形成することができる。
また、本発明の請求項2に係る発光素子の製造方法は、請求項1に記載の発光素子の製造方法において、前記発光素子上に一連のビーム走査で前記複数の構造物を形成し、当該一連のビーム走査において、走査線上に前記発光素子の構造物についての1つの配置領域を含むときに当該配置領域に1つの構造物を形成するように前記半導体材料を削り、走査線上に複数の配置領域を含むときに当該複数の配置領域に前記構造物をそれぞれ形成するように前記半導体材料を削ることを特徴とする。
かかる手順によれば、発光素子の製造方法は、走査線上に複数の配置領域を含むときに一連のビーム走査で当該複数の配置領域に構造物をそれぞれ形成する。例えば横一列に並んだ2つの構造物を形成する場合、一方を形成し終えてから他方を形成すると、2つの構造物間に継ぎ目ができ、段差が生じることを本願発明者らは確かめた。これに対して、本発明の発光素子の製造方法は、走査線上に複数の配置領域を含むときに一連のビーム走査を行うので、構造物間に段差が生じることを防止することができる。
また、本発明の請求項3に係る製造方法は、請求項1または請求項2に記載の発光素子の製造方法において、前記構造物が、平坦な表面から突出する柱体であり、前記集束イオンビームにより、前記発光素子の表面の発光中心から一方の側に第1の高さの複数の柱体からなる第1の柱体群を形成し、かつ、前記表面の発光中心から他方の側に第1の高さとは異なる第2の高さの少なくとも1つの柱体からなる第2の柱体群を形成することを特徴とする。
かかる手順によれば、発光素子の製造方法は、発光素子表面の構造物として第1の柱体群および第2の柱体群を発光中心の両側にそれぞれ形成する。この製造方法により製造された発光素子において、発光素子内部で発生する光は、複数の柱体を光導波路として柱上部の放射面から放射される。これらの放射面から放射された光は、発光素子内部を1つの光源として発生した光であるため、互いに干渉して合成され光線が形成される。また、発光素子は、第1の柱体群および第2の柱体群の高さを異なるように構成されているので、それぞれの放射面から放射された光に位相差を設けることができ、当該位相差に応じた方向に光線を放射することができる。
また、本発明の請求項4に係る発光素子の製造方法は、請求項1または請求項2に記載の発光素子の製造方法において、前記構造物が、平坦な表面から凹む穴であり、前記集束イオンビームにより、前記発光素子の表面の発光中心から一方の側に第1の深さの複数の穴からなる第1の穴群を形成し、かつ、前記表面の発光中心から他方の側に第1の深さとは異なる第2の深さの少なくとも1つの穴からなる第2の穴群を形成することを特徴とする。
かかる手順によれば、発光素子の製造方法は、発光素子表面の構造物として第1の穴群および第2の穴群を発光中心の両側にそれぞれ形成する。この製造方法により製造された発光素子において、発光素子内部で発生する光は、複数の穴から放射される。これらの光は、発光素子内部を1つの光源として発生した光であるため、互いに干渉して合成され光線が形成される。また、発光素子は、第1の穴群および第2の穴群の深さを異なるように構成されているので、それぞれの穴から放射された光に位相差を設けることができ、当該位相差に応じた方向に光線を放射することができる。
また、本発明の請求項5に係る発光素子の製造装置は、面発光型の発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料を集束イオンビームを照射して削ることで表面の発光中心に対してN回対称の位置にN個からなる複数の構造物が配置され前記Nが3以上の自然数である発光素子を製造する発光素子の製造装置であって、前記面発光型の発光素子を搭載するステージと、前記ステージを回転させるステージ駆動手段と、前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射手段と、制御装置と、を備え、前記制御装置が、記憶手段と、ステージ制御手段と、ビーム照射制御手段と、を備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、発光素子の製造装置において、前記制御装置は、記憶手段に、前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料を削る予め定められた領域の位置情報を記憶する。そして、制御装置は、ステージ制御手段によって、前記複数の構造物の配列対称性に合わせて前記発光素子の平坦な表面の法線方向の軸周りに、Nが偶数の場合、360/Nの角度を基準にして、Nが奇数の場合、360/Nの半分の角度を基準にして、等間隔に少なくとも1周分の角度を設定し、前記ステージ駆動手段を制御することで前記設定角度の予め定められた順番で前記ステージを前記軸周りに回転させて前記設定角度の位置に前記ステージを固定する。そして、制御装置は、ビーム照射制御手段によって、前記集束イオンビーム照射手段を制御することで、前記設定角度のそれぞれの位置において、前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料の予め定められた領域に集束イオンビームを照射して集束イオンビームを走査させる。
また、本発明の請求項6に係る発光素子は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする。
請求項1に係る発光素子の製造方法によれば、発光素子表面にN回対称の対称軸の軸方向の対称性が崩れることを防止した複数の構造物を形成することができる。そのため、発光素子の製造工程における発光性能の劣化を低減することができる。
請求項2に係る発光素子の製造方法によれば、発光素子表面において構造物間に段差が生じることを防止することができる。そのため、発光素子の製造工程における発光性能の劣化を低減することができる。
請求項3に係る発光素子の製造方法によれば、発光素子表面に高さの異なる柱体を形成するので、本発明の発光素子は、高さの差に相当する光の位相差に応じた方向に光線を放射することができる。
請求項4に係る発光素子の製造方法によれば、発光素子表面に深さの異なる穴を形成するので、本発明の発光素子は、深さの差に相当する光の位相差に応じた方向に光線を放射することができる。
請求項5に係る製造装置によれば、発光素子表面にN回対称の対称軸の軸方向の対称性が崩れることを防止した複数の構造物を形成することができる。そのため、発光素子の製造工程における発光性能の劣化を低減することができる。
請求項6に係る発光素子によれば、発光素子表面の法線方向から傾斜した方向に光線を成形できるので立体表示に適用することができる。
本発明の第1実施形態に係る発光素子を模式的に示す斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子を模式的に示す平面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の断面図であって、(a)は図2のA−A線矢視における断面図、(b)は図2のB−B線矢視における断面図である。 本発明の実施形態に係る発光素子の製造装置を模式的に示す構成図である。 発光素子の表面に構造物を形成する方法の説明図であって、(a)は柱体を個別に形成する場合の走査方法を示す平面図、(b)は(a)の走査方法で形成した柱体を模式的に示す平面図である。 発光素子の表面に複数の柱体を一連の走査で形成する場合の走査方法を模式的に示す平面図である。 発光素子の表面に構造物を形成する方法の説明図であって、(a)は一方から他方への走査により柱体を形成する場合の走査方法を示す平面図、(b)は(a)の走査方法で形成した柱体のC−C線矢視における断面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の表面に柱体を形成する方法の説明図であって、(a)〜(f)は3回対称の角度位置についてそれぞれ行う一方から他方への走査と他方から一方への走査の合計6回の走査を示す平面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子の表面に高さの異なる柱体を形成する方法の説明図であって、(a)〜(l)は2周に亘って3回対称の角度位置について一方から他方への走査と他方から一方への走査の合計12回の走査を行ったときの柱体の断面形状の変化を模式的に示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る発光素子の要部を模式的に示す破断斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る発光素子を模式的に示す構成図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)のC−C線矢視における断面図である。 本発明の第1実施形態に係る発光素子を用いたIP立体ディスプレイの概念図であって、(a)は正面図、(b)は斜視図を示す。
以下、本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法における発光素子、当該製造方法および製造装置について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材のサイズや位置関係等は、説明の便宜上誇張していることがある。さらに、以下の説明において、同一の名称および符号については原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。
(第1実施形態)
[発光素子の構造の概要]
本発明の第1実施形態に係る発光素子1の構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。発光素子1は、例えばLEDのように電圧を印加することで自発光する半導体素子である。発光素子1は、指向性の高い光を発光する素子であって、特定の方向に光線を射出する光線指向型の発光素子である。発光素子1は、図1に示すように、n型半導体層20と、半導体発光層30と、p型半導体層40とが積層された構造を有している。発光素子1は、p型半導体層40の平坦な表面を削る(スパッタ)加工をして形成された複数の構造物を備える。本実施形態では、3つの構造物として、平坦な表面から突出した柱体が円柱状に形成されている。以下では、これらの構造物を区別する場合には半導体柱状部11,12,13と表記し、特に区別しない場合、半導体柱状部10と表記する。
なお、図1では図示を省略しているが、電極の構造は、例えば一般的なLED素子と同様に、n型半導体層20とp型半導体層40との間に段差を設け、当該段差から引き出された部分にオーミックコンタクトを形成する形で電極を形成できれば特に限定されない。例えばp電極を、p型半導体層40の上面における半導体柱状部10のない部分に設け、n電極をn型半導体層20に設けてもよい。また、電極材料としては一般的な金属電極を使用することができる。また、発光素子1は、n型半導体層20の下に図示しない基板を備えた構成であっても構わない。
n型半導体層20は、半導体発光層30に対して電子を注入する層である。n型半導体層20は、例えば下から順に、n型GaN層と、n型GaN/InGaN障壁層とが積層されて形成される。n型半導体層20は、図1に示すように、半導体発光層30の下部に形成されており、ここでは矩形状に形成されている。なお、n型半導体層20の厚さは特に限定されない。
半導体発光層30は、n型半導体層20から注入される電子とp型半導体層40から注入される正孔との再結合によって生成されるエネルギーを光として放出する層である。半導体発光層30は、n型半導体層20とp型半導体層40との接合部にIn等の不純物が添加されることで形成され、例えばInGaNの量子井戸層として形成される。半導体発光層30は、図1に示すように、n型半導体層20とp型半導体層40との間に形成されており、ここでは矩形状に形成されている。なお、半導体発光層30の厚さは特に限定されない。
p型半導体層40は、半導体発光層30に対して正孔を注入する層である。p型半導体層40は、例えば下から順に、p型GaN/InGaN障壁層と、p型GaN層とが積層されて形成される。p型半導体層40は、図1に示すように、半導体発光層30の上部に形成されており、ここでは矩形状に形成されている。なお、p型半導体層40の厚さは特に限定されないが、例えば200〜1500nmの厚さで形成することができる。
このp型半導体層40上には、図1に示すように、複数の半導体柱状部10が形成されている。半導体柱状部10は、半導体発光層30から発生した光の導波路として機能するものである。半導体柱状部10は、p型半導体層40と一体的に構成されている。そのため、半導体柱状部10は、p型半導体層40と同様に例えばp型GaNで構成されている。
[半導体柱状部の構造]
半導体柱状部11〜13は、図2に示すように、平面視で半径rの円形状に形成されている。半導体柱状部11〜13の直径(2r)は、半導体発光層30で発生した光が充分に通れる大きさに設定され、例えば自由空間(空気中)における光の波長λ程度に設定される。図2に示すp型半導体層40上において、半導体柱状部11〜13の中心をO1,O2,O3としたときにそれらの重心Gの位置が発光中心となる。この重心Gを中心とした破線で示す円周上に等間隔で、半導体柱状部11〜13の中心O1,O2,O3が配置されている。半導体柱状部11〜13は、p型半導体層40の表面において所定領域を取り囲むように環状に配列され、それぞれの中心O1,O2,O3は正三角形の頂点を形成している。つまり、3個の半導体柱状部11〜13は、発光素子1の表面の発光中心(重心G)に対して3回対称の位置に配列されている。ここで、p型半導体層40の上面の面積に対する半導体柱状部11〜13の断面積の割合等は特に限定されない。また、半導体柱状部11〜13同士の間隔は、それぞれが放射する光を互いに干渉させることができる長さに設定されていればよく、例えば前記した直径(2r)と同様に、自由空間(空気中)における光の波長λ程度に設定される。
半導体柱状部10は、一部の柱の高さが異なるように構成されている。ここで、一部の柱とは、半導体柱状部10の総数の半数以下の柱のことを意味している。具体的には図1に示すように、3本のうちの1本である半導体柱状部13の高さが、その他の2本である半導体柱状部11,12の高さよりも低くなるように構成されている。また、半導体柱状部11,12の高さは等しい。一般化すると、複数の半導体柱状部10は、高さによって2つのグループ(第1の柱体群,第2の柱体群)に分類することができる。具体的には、図1のように3本の半導体柱状部11,12,13の場合、発光素子1の表面の発光中心(重心G:図2参照)から一方の側に配された半導体柱状部11,12は第1の高さ(例えばH2)を有した第1の柱体群を形成している。そして、発光素子1の表面の発光中心(重心G)から他方の側に配された半導体柱状部13は第2の高さ(例えばH3)を有した第2の柱体群を形成している。
図3(a)に示すように、半導体柱状部12の高さH2および半導体柱状部13の高さH3は、柱内部を伝播する光の波長(λ/n)と同程度から、(λ/n)の数倍程度までの範囲の高さに設定される。ここで、nは半導体柱状部10の屈折率を示す。また、半導体柱状部13の高さH3は、半導体柱状部12の高さH2よりもdだけ低い。また、半導体柱状部11の高さは、図3(b)に示すように半導体柱状部12の高さH2と等しい。以下では、一例として半導体柱状部11,12の高さを、半導体柱状部13の高さの2倍にしたものとして説明する。このとき、H2=2×H3なので、高さの差d=H3となる。
例えばLEDからなる発光素子1において、一般的にLEDは10〜50μm程度の可干渉長を持っているため、前記した光の波長程度といった微小な空間において異なる経路長を経た光は、干渉効果による空間分布を形成する。したがって、半導体柱状部11〜13内部を伝播した光は、柱の上端面(放射面)から素子表面(p型半導体層40の上面)と垂直な方向、すなわち図1におけるZ軸方向に放射された後、光の干渉効果によって干渉し、3本の半導体柱状部10の素子表面上における重心Gを通る1本の光線が生成される。仮に、半導体柱状部10の高さが全て同じ場合(高さの差がない場合)、半導体柱状部10によって形成される光線は、素子表面と垂直な方向に放射されることになる。
一方、本実施形態の発光素子1は、半導体柱状部11〜13のうちの半導体柱状部13を他とは異なる高さに形成したので、当該高さの差dに応じて光線の方向を制御することができる。そして、発光素子1において、3本の半導体柱状部10の素子表面上における重心Gを通る1本の光線は、Z軸方向から所定の角度だけ傾斜した方向に放射される。また、発光素子1は、平面視で半導体柱状部11〜13が円周上に等間隔で配列されているので、各半導体柱状部10の放射面から光が放射された際に、光線として形成される光以外の余分な光(迷光)が特定箇所に固まって妨害となることがないため、形成される光線の品質を向上させることができる。
[発光素子の製造装置]
発光素子の製造装置100の構成の一例を図4に示す。以下、発光素子1の材料であって平坦な表面を有する面発光型の発光素子(構造物が形成される前の状態の発光素子)のことを試料と呼ぶ。発光素子の製造装置100は、試料101に集束イオンビームを照射して試料101の平坦な表面を構成する半導体材料を削ることで発光素子1を製造するものである。発光素子の製造装置100は、図4に示すように、ステージ110と、ステージ駆動手段120と、集束イオンビーム照射手段130と、ガス供給装置140と、2次荷電粒子検出器150と、表示装置160と、制御装置200とを備えている。なお、制御装置200や表示装置160を除いた各構成は、図示しない真空容器内に配設されている。
ステージ110は、試料101を搭載するものである。試料101はステージ110上の図示しないホルダに保持される。ステージ110の中には図示しないヒータが設置されており、試料101を加熱することができる。
ステージ駆動手段120は、ステージ110を精密に位置制御するものであり、制御装置200と通信可能に接続され、制御装置200からの制御信号によってステージ110の平行移動や回転の移動量が制御される。ステージ駆動手段120は、集束イオンビーム照射手段130から照射されるイオンビーム102の照射中心軸回りにステージ110を回転移動させる機構(ヨー角回転機構)を備える。イオンビーム102の照射中心軸は、試料101の平坦な表面の法線方向の軸(Z軸)と一致している。ステージ駆動手段120は、ステージ110をXYZ軸方向にそれぞれスライドさせるXYZ移動機構を備える。なお、ステージ110をX軸周りに回転させる機構(ピッチ角回転機構)やY軸周りに回転させる機構(ロール角回転機構)を備えてもよい。
集束イオンビーム照射手段130は、試料をイオンビーム照射により加工する公知の手段である。本実施形態では、集束イオンビーム照射手段130は、集束イオンビーム(以下、単にイオンビーム102という)を当てて試料101の表面の原子をはじき飛ばすこと(スパッタリング現象)によって試料101を削るために用いられる。集束イオンビーム照射手段130は、試料101表面の予め定められた領域だけにイオンビーム102を照射することでマスクなしでエッチングを行うことができる。
集束イオンビーム照射手段130は、制御装置200と電気的に接続され、制御装置200からの制御信号によってイオンビーム102の照射位置や照射条件の制御が行われる。集束イオンビーム照射手段130は、イオンビーム102の光軸が鉛直方向(Z軸方向)に配置され、図4に示すようにビームユニット内に、イオン源131等の公知の構成要素を備える。
イオン源131は、例えばGa液体金属イオン源である。偏向器132は、イオン源131から出射されたイオンを選択し、偏向器132で選択されたイオンは、イオンビーム102として、光学系133と光学系136により試料101の表面上に集束される。光学系133は、例えばイオン源131からのイオンビームを集束するコンデンサーレンズを備える。光学系136は、例えばイオンビームを試料101に対して集束する対物レンズを備える。イオンビーム102は必要に応じて走査され、遮断される。イオンビーム102の走査は偏向電極135によって行われ、イオンビーム102の遮断はブランカ等の遮断器134によって行われる。
ガス供給装置140は、試料101の表面のイオン照射部の近くに配設され、イオンビーム102によるエッチングのエッチングレートを高めるためのエッチングレート増大用のガスを供給するものである。エッチングガスとして、エッチングされる試料101と反応して気化するもの、例えばフッ素化合物のガスや有機系化合物のガスが用いられる。
2次荷電粒子検出器150は、試料101の表面のイオン照射部の近くに配設され、試料101にイオンビーム102を走査したときに試料101から放出される2次荷電粒子を検出し、制御装置200に2次荷電粒子の強度の情報を送出するものである。この検出信号は制御装置200に送られ、画像情報として記憶され、試料の像として表示装置160に表示される。表示装置160は例えば液晶ディスプレイで構成される。
制御装置200は、集束イオンビーム照射手段130、ステージ駆動手段120、2次荷電粒子検出器150等と電気的に接続されている。制御装置200は、装置全体の制御とデータ及び画像の処理を行うものであり、CPU、メモリ、外部記憶装置、入出力インターフェースなどを備えたコンピュータによって、プログラムを実行させることで実現している。なお、制御装置200は、専用のハードウェアを用いて実現してもよい。
制御装置200は、ステージ制御手段210と、ビーム照射制御手段220と、画像処理手段230と、記憶手段240と、を備える。
ステージ制御手段210は、記憶手段240に記憶された加工手順の情報に基づいて、ステージ駆動手段120を制御するものである。ステージ制御手段210は、ステージ110に搭載された試料101の位置、姿勢が、集束イオンビーム照射手段130の照射軸に対して所定の位置、姿勢となるように、ステージ110を移動させる。
本実施形態では、ステージ制御手段210は、図2に示す3個の半導体柱状部11,12,13の配列対称性に合わせて試料101の平坦な表面の法線方向の軸周りに60度を基準にして等間隔に少なくとも1周分の角度を設定し、ステージ駆動手段120を制御することで設定角度の予め定められた順番でステージをZ軸周りに回転させて設定角度の位置にステージ110を固定する。なお、本実施形態のように半導体柱状部の個数が奇数Nの場合、360/Nの半分の角度を基準にし、また、第3実施形態のように半導体柱状部の個数が偶数Nの場合、360/Nの角度を基準にする。
ビーム照射制御手段220は、集束イオンビーム照射手段130を制御して、ステージ制御手段210による設定角度のそれぞれの位置において、試料101の表面を構成する半導体材料の予め定められた領域にイオンビーム102を試料101上で走査(ラスタ走査)させるものである。このビーム走査の方法の詳細については後記する。
画像処理手段230は、2次荷電粒子検出器150からの2次荷電粒子の強度の検出出力をイオンビーム102の走査位置(照射位置)ごとの輝度データとして取り込み、2次元の画像データを生成して、記憶手段240に送出するものである。なお、イオンビーム102の走査位置情報は、ビーム照射制御手段220から取得される。
記憶手段240は、画像処理手段230が取り込んだ画像データを記憶するとともに、ステージ制御手段210、ビーム照射制御手段220、画像処理手段230での演算、制御に必要な情報や演算結果などを記憶するものである。記憶手段240は、必要な情報として、例えばエリアマップ241や、構造物を形成するためにイオンビーム102を走査させる手順の情報などを記憶する。エリアマップ241は、試料101上の平坦な表面を構成する半導体材料を削る予め定められた領域の位置情報を示す。つまり、エリアマップ241は、エッチング範囲の位置情報を示す。
[発光素子の製造方法]
まず、発光素子1の材料として、前記した試料101を予め準備しておく。なお、試料101、つまり、構造物が形成されていないLED等の面発光素子を製造する場合、公知の種々の微細加工技術を用いることができる。製造工程の一例を挙げると、例えばGaAsやSi等の半導体基板を用意し、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法などの成膜方法により、n型半導体層20と、半導体発光層30と、p型半導体層40とを順次積層すればよい。
以下、発光素子の製造方法として、主として、準備した試料101の表面に構造物として半導体柱状部10を形成する方法について説明する。本発明の発光素子の製造方法では、複数の半導体柱状部10を形成するために、概略、次の第1工程〜第3工程を備える。
<第1工程>
第1工程は、準備工程であって、図2に示す3個の半導体柱状部11,12,13の配列対称性に合わせて試料101の平坦な表面の法線方向の軸周りに60度を基準にして等間隔に少なくとも1周分の角度を設定する工程である。
<第2工程>
第2工程は、設定角度の予め定められた順番でステージ110を回転させることで試料101(発光素子)を相対的に回転させ、ステージ110を設定角度の位置に固定する工程である。図2に示す3個の半導体柱状部11,12,13の配列対称性によれば、設定角度は、例えば時計回りの0度(360度)、60度、120度、180度、240度、300度となる。ステージ110を設定角度の位置に固定する順番は、任意であり、予め定められているものとする。例えば3個の半導体柱状部11,12,13の配列対称性に合わせた3回対称の軸方向を特定する0度、120度、240度の位置でビーム走査をしてから、他の設定角度の位置とする順番や、軸方向を特定する1つの角度(例えば0度)について一方から他方へ走査し、続いて他方から一方へ走査(例えば180度)するようにしてもよい。所定角度(例えば0度)から順次60度ずつ角度を増加させるか、または逆に順次60度ずつ角度を減少させれば、ステージ110の累積回転移動量を最小にすることができるので、このようにすることが最適である。
<第3工程>
第3工程は、設定角度のそれぞれの位置において、準備した試料101(構造物が形成されていない発光素子)の平坦な表面を構成する半導体材料の予め定められた領域にイオンビーム102を照射してイオンビーム102を走査する工程である。図2に示す3つの半導体柱状部11,12,13の平面配置のときに、例えばX軸方向のビーム走査を行う場合、走査線上に発光素子の構造物についての配置領域以外にイオンビーム102を照射する。
第3工程にて設定角度のそれぞれの位置においてビーム走査を行うと、ステージ110を1回転させたときに、ステージ110を設定角度の位置に固定する順番に関わらず、結果として3個の半導体柱状部11,12,13の配列対称性に合わせた方向、つまり、重心Gを中心に3回対称の対称軸の軸方向において、各走査線上にて一方から他方へのビーム走査を行う処理と、他方から一方へのビーム走査を行う処理とが実行されることになる。このように配列対称性に合わせた方向の双方向にスキャンする効果については後記する。
また、本実施形態の発光素子の製造方法では、準備した試料101(構造物が形成されていない発光素子)上に一連のビーム走査で複数の半導体柱状部10を形成することとした。このビーム走査方法について図5および図6を参照して説明する。ここでは、説明の都合、一例として3つの半導体柱状部10が横一列に並んだものを形成する場合を想定する。
図5(a)は、半導体柱状部10を個別に形成する場合の走査方法を示す平面図であり、図5(b)は実際に形成した半導体柱状部10を模式的に示す平面図である。また、図6は、3つの半導体柱状部10を一連の走査で形成する場合の走査方法を模式的に示す平面図である。図5(a)および図6において、水平方向の矢印(走査線)の実線部分は、ビーム照射を行うことを示し、破線部分はビームの照射は行わないことを示している。これらの例では、構造物が形成されていない発光素子の所定の矩形領域を想定し、仕上がりの半導体柱状部10の配置領域にはビームの照射は行わず、それ以外の矩形領域内にビームの照射を行っている。
図5(a)は、ビーム走査により、横一列の左の半導体柱状部10を完成させ、次に右隣の半導体柱状部10を完成させ、最後に、最も右の半導体柱状部10を完成させる、という走査方法を示している。この走査方法を所定のビーム条件で実行した場合、図5(b)に示すように、横一列の左の半導体柱状部10とその右隣の半導体柱状部10との中間地点に、2つの構造物の継ぎ目(Y軸方向の直線)が観察され、X軸方向の意図しない段差が生じた。同様に、横一列の右の半導体柱状部10とその左隣の半導体柱状部10との中間地点にも継ぎ目が生じた。このような継ぎ目が発光素子の表面に生じると、その形状に依存して発光性能が低下してしまう。
このような継ぎ目が生じた理由は次のように考えられる。これは、通常、集束イオンビーム装置を用いた微細加工では、対象とする試料のサイズに対してビーム径の大きさが無視できるが、本実施形態のように半導体柱状部10の平面視の直径が光の波長程度である場合、有限の大きさをもったビーム径の影響が無視できなくなってくるためでると考えられる。すなわち、集束イオンビームのスキャンにより矩形領域の内部をエッチングする場合、有限のビーム径のため原理的に矩形領域の輪郭線の4隅を削ることは困難である。
図6は、横一列の3つの半導体柱状部10の3つの配置領域の全体を含む矩形領域に対して、ビームを走査する方法を示している。これによれば、2つの構造物の間に継ぎ目ができることはない。よって微細構造を精度よく形成できる。したがって、継ぎ目が発光素子の表面に生じた場合の発光性能の低下といった不都合を防止することができる。図6に示すようなビーム走査方法が、一連のビーム走査で複数の半導体柱状部10を形成する方法を表している。そして、本実施形態の発光素子の製造方法にて採用している。
次に、配列対称性に合わせた方向の双方向にスキャンする効果について説明する。そのために、一般的なビーム走査のように走査線を一方向にしかスキャンしない場合について図7を参照(適宜図2参照)して説明する。図7(a)は、図2と同様な平面図において左から右へ一方向のみのビーム走査の模式図である。図7(a)において、水平方向の矢印(走査線)の実線部分は、ビーム照射を行うことを示し、破線部分はビームの照射は行わないことを示している。このときに、図7(a)のC−C線矢視における断面の模式図を図7(b)に示す。
このとき走査線(C−C線)をスキャンすると、矩形領域の図7(a)の最左端の位置にビーム径に対応してエッチングができていない領域が、図7(b)に示すように、凹部の左側壁として残っている。そして、その右隣に、エッチングがなされた幅広の凹部と、中央の半導体柱状部11に対応して形成された凸部(柱)と、その右隣の幅広の凹部と、この凹部の右側壁とが、この順番に形成されている。断面図において、2つの凹部は、ビームの走査方向に対して、壁の左右の形状が類似している。そして、2つの凹部はいずれも、左の側壁と右の側壁とで壁の傾斜が異なっており、壁の形状に差異が発生している。
このような構造になる原因の詳細は不明であるが、例えば、ビームの走査方法に基づく次のようなメカニズムに起因していると推察される。この例のように左から右へ走査しながらビーム照射をしたときに、叩きだされた原子が等方散乱すると、走査の進行方向(つまり右側)と、走査の反対方向(つまり左側)とでは、はじき飛ばされた原子の行方が異なってくる。走査の進行方向(つまり右側)では、再びビーム照射されるので、きれいにエッチングされていく。一方、走査の反対方向(つまり左側)では、はじき飛ばされた原子は最初に触れた物に付着するが、条件(下記条件1,条件2)によって堆積の仕方が異なる。
(条件1)断面において左側が平らになっているとき
(条件2)断面において左側に半導体柱状部や側壁といったなんらかの構造物が存在しているとき
前記条件1のように、左側が平らになっているとき、はじき飛ばされた原子は、その平らな表面に堆積していくので、削られている素子表面でほぼ均一な形状となり、特に問題は無いと考えられる。
前記条件2のように、左側になんらかの構造物が存在しているとき、はじき飛ばされた原子は、そのなんらかの構造物の近傍に堆積し、新たな山を築いていく。このため、図7(b)に示すように、幅広の凹部において、左の側壁と右の側壁とで形状に差異が発生することから、中央の凸部(柱)において左右の対称性が崩れて、その結果、発光素子の発光特性が劣化してしまうと考えられる。
そこで、中央の凸部(柱)において左右の対称性の維持のために、本実施形態の発光素子の製造方法では、右から左にもスキャンすることとした。このように、双方向にスキャンする場合、双方向のスキャンの結果、エッチングによる目的の深さとなるように、各方向のビーム走査の際には、目的の深さの半分まで削れるようにイオンビームの出力や照射時間等の条件を調整する。
さらに、図1および図2に示す発光素子1の場合、エッチング目的の構造物が1つではない。3つの半導体柱状部11,12,13全体としても対称性の崩れを防止する必要がある。3つの半導体柱状部11,12,13は3回対称で配列されているので、本実施形態の発光素子の製造方法では、構造物(半導体柱状部10)の配列対称性に合わせてビームを走査することとした。
したがって、3つの半導体柱状部11,12,13の配列対称性に合わせた3回対称軸の軸方向に関して双方向に合計6回スキャン動作を実行する。これらは、図8(a)〜図8(f)に示すように、例えば時計回りの0度(360度)、60度、120度、180度、240度、300度の位置で行う。なお、図8において、水平方向の矢印(走査線)の実線部分は、ビーム照射を行うことを示し、破線部分はビームの照射は行わないことを示している。また、このように、6回のスキャン動作の場合、合計のスキャン動作の結果、エッチングによる目的の深さとなるように、各回のビーム走査の際には、目的の深さの1/6まで削れるようにイオンビームの出力や照射時間等の条件を調整する。
次に、発光素子1において、複数の半導体柱状部10として、高さの異なる2つのグループ(第1の柱体群,第2の柱体群)を形成する際のイオンビーム102の走査方法の一例について製造過程を示す図9を参照(適宜図2および図3(a)参照)して説明する。
図9(a)〜図9(l)では、構造物の配列対称性に関する時計回りの角度をθ度として示しており、それぞれにおいて、上段が図2のA−A線上の2つの構造物(半導体柱状部12,13)の配置領域を示す平面図、下段がA−A線断面図に相当している。なお、上段において、走査線を1本の矢印で代表して示し、その実線部分は、ビーム照射を行うことを示し、破線部分はビームの照射は行わないことを示している。下段において13本の破線は、試料101の表面位置の遷移を表すためのスケールであって、このうち最上部の破線は高い柱の上端面(放射面)の位置の基準線、最下部の破線は素子表面(p型半導体層40の上面)の位置の基準線を示す。
この方法は、前記した1周360度の6回のスキャン動作を2周に亘って行うことで、合計12回のスキャン動作を行うものである。このように、12回のスキャン動作の場合、合計のスキャン動作の結果、エッチングによる目的の深さとなるように、各回のビーム走査の際には、目的の深さの1/12まで削れるようにイオンビームの出力や照射時間等の条件を調整する。一例として、平坦な表面を有する発光素子(試料101)の表面に、ビーム走査によって、高さが12単位の半導体柱状部12と、高さが6単位の半導体柱状部13とをエッチングで形成することを前提とする。ここで、12単位の高さとは、半導体柱状部12の周囲を12回のスキャン動作で目的の深さまで削った場合に生じる相対的な高さを示す。また、6単位の高さとは、半導体柱状部13の周囲を12回のスキャン動作で削り、かつ、半導体柱状部13の配置領域を前記12回のうちの6回のスキャン動作で削った場合に生じる相対的な高さを示す。
図9(a)〜図9(f)は、図8(a)〜図8(f)に対応しているが、1周目においてθが60度、180度、300度の位置において、低い半導体柱状部13となる配置領域についてもイオンビームを当てていることが相違している。
図9(g)〜図9(l)は、図8(a)〜図8(f)に対応しているが、2周目においてθが360度、480度、600度の位置において、低い半導体柱状部13となる配置領域についてもイオンビームを当てていることが相違している。
なお、発光素子の製造装置100の記憶手段240には、試料101(発光素子)の平坦な表面上の位置と、イオンビーム102の照射の有無および照射回数とを関連付けたエリアマップ241が記憶されている。
図9(b)と図9(k)との組は、θが60度の方向に対応した対称軸の双方向のスキャンを示しており、低い半導体柱状部13となる配置領域に双方向にイオンビームを当てている。
図9(d)と図9(g)との組は、θが180度の方向に対応した対称軸の双方向のスキャンを示しており、低い半導体柱状部13となる配置領域に双方向にイオンビームを当てている。
図9(f)と図9(i)との組は、θが300度の方向に対応した対称軸の双方向のスキャンを示しており、低い半導体柱状部13となる配置領域に双方向にイオンビームを当てている。
したがって、3本の半導体柱状部10全体の配列対称性を維持しつつ、低い半導体柱状部13自体の対称性を維持しながら、高さが12単位の半導体柱状部12と、高さが6単位の半導体柱状部13とを形成することができる。なお、3本の半導体柱状部を目的の高さに仕上げて形成し終わった後に、1つだけ低い半導体柱状部を形成しようとすると、位置合わせが困難であり、位置合わせできたとしても柱の上端の形状が変化するなどの問題がある。
上記製造方法における発光素子の製造装置100の動作は次の通りである。すなわち、製造装置100は、ステージ110の試料101をエッチング加工する。このとき、集束イオンビーム照射手段130において、偏向器132で選択されたイオンは、イオンビーム102として、光学系133と光学系136により試料101の表面上に集束される。そして、制御装置200から集束イオンビーム照射手段130に送られた信号により、偏向電極135の電圧を制御してイオンビーム102を走査する。すなわち、試料101の表面をXY方向の走査で塗りつぶすように走査し、半導体柱状部11,12となる構造物の配置領域を塗りつぶす位置では、イオンビーム102を試料101に当てないようにするために遮断器134に電圧を印加して、イオンビーム102を遮断する。半導体柱状部13となる構造物の配置領域を塗りつぶす位置ではステージの回転角度に応じてイオンビーム102の照射または遮断を実行する。そして、ガス供給装置140からエッチングガスを供給しながら、このような走査を繰り返すことにより、高さの異なる2つのグループ(第1の柱体群,第2の柱体群)が形成される。なお、半導体柱状部11,12,13の形成後、例えば電極等を形成し発光素子1とする。
以上説明したように、本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法および装置によれば、発光素子表面に3回対称の対称軸の軸方向の対称性が崩れることを防止した3本の半導体柱状部10を形成することができる。また、本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法および装置によれば、発光素子表面において半導体柱状部10間に段差が生じることを防止することができる。したがって、発光素子の製造工程における発光性能の劣化を低減することができる。
また、本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法および装置によれば、発光素子表面に高さの異なる半導体柱状部10を形成するので、第1実施形態に係る発光素子1は、高さの差dに相当する光の位相差に応じた方向に光線を放射することができる。また、発光素子1によれば、発光素子表面の法線方向から傾斜した方向に光線を成形できるので立体表示に適用することができる。
以上、実施形態に基づいて本発明に係る発光素子の製造方法、その製造装置、およびその製造方法で製造された発光素子について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、LED素子の材料は、GaNであるものとして説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、AlN、GaAlN、ZnO、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAlAsP等であってもよい。また、発光素子は、LED素子のような注入型のEL素子に限定されず、有機EL素子や無機EL素子のような真性EL素子であってもよい。また、発光素子の構造物の断面形状は、図示した円に限らず、多角形等であってもよい。
[その他の形態]
その他の形態として以下(1)〜(3)について図面を参照して順に詳細に説明する。
(1)発光素子の構造物が表面から突出した柱体であるものとして説明したが表面から凹んだ穴であってもよい。この形態を第2実施形態の発光素子として説明する。
(2)本発明に係る発光素子として、表面の発光中心に対して3回対称の位置に3個の構造物が配列された例を説明したが、この個数に限らず、Nが3以上の自然数のとき、N回対称の位置にN個からなる複数の構造物を配列することができる。第1実施形態は、Nが奇数の場合であったが偶数であってもよい。つまり、発光素子の表面に形成する構造物の個数は4個以上であってもよい。好ましい形態として6本の柱体を有する形態を第3実施形態の発光素子として説明する。
(3)発光素子単体で説明したが、これらをアレイ状に配置してディスプレイを構成することができる。本発明に係る発光素子の応用例のディスプレイについて説明する。
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態に係る発光素子1Bについて、図10を参照しながら説明する。発光素子1Bは、図10に一部を破断して示すように、表面の構造物として柱の代わりに、平坦な表面から凹んだ穴が形成され、穴以外の領域に金属層50が形成されている点が第1実施形態と異なっている。これらの穴を区別する場合には穴11B,12B,13Bと表記し、特に区別しない場合、穴10Bと表記する。第2実施形態に係る発光素子1Bにおいて、図1〜図3に示す発光素子と同じ構成には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
発光素子1Bは、p型半導体層40の平坦な表面を削る(スパッタ)加工をして形成された合計3つの穴10Bを有している。
金属層50は、p型半導体層40の上に積層されている。ただし、金属層50は、発光素子1Bの光取り出し面において穴10Bが形成されていない表面に設けられている。すなわち、金属層50は、半導体発光層30から光取り出し側(p型半導体層40側)に放射される光のうち、穴10B以外から放出される光をマスクするための遮光膜として機能する。金属層50を形成する金属は特に限定されないが、例えばモリブデンやタングステン等の遷移金属や、電極に一般的に使われる金属等を用いることができる。金属層50は、できるだけ薄くかつ遮光可能であれば厚みは特に限定されない。一例としては数十〜数百nmの厚みを挙げることができる。なお、図示を省略したが、電極の構造は特に限定されるものではなく、例えばp電極を、金属層50の部分に設け、n電極をn型半導体層20の基板側の面に設けてもよい。つまり、遮光機能としての金属層50に電極機能を持たせてもよい。また、金属層50の部分を、透明電極層と遮光機能としての金属薄膜とで構成してもよい。
穴10Bは、半導体発光層30から発生した光の導波路として機能するものである。
穴11B,12B,13Bは、図2に示す発光素子の半導体柱状部10と同様に、平面視で同半径の円形状に形成されており、穴の直径は、半導体発光層30で発生した光が充分に通れる大きさに設定されている。このように平面視で発光素子1Bの形状は図2に示す形状と同様なので平面図を省略する。なお、発光素子1Bでは、柱の代わりに穴11B,12B,13Bがp型半導体層40の表面において所定領域を取り囲むように環状に配列され、正三角形の頂点を形成している。
穴11B,12B,13Bは、金属層50の厚みよりも深く、かつ、金属層50とp型半導体層40とを合わせた厚みよりも浅く形成されている。ここで、3つの穴のうち2つの穴11B,12Bの深さを、それぞれ基準となる深さDとする。そして、穴13Bと他の穴11B,12Bとの深さの差をδとすると、穴13Bの深さは(D−δ)となる(図10参照)。一般化すると、複数の穴10Bは、深さによって2つのグループ(第1の穴群,第2の穴群)に分類することができる。具体的には、図10のように3つの穴11B,12B,13Bの場合、発光素子1Bの表面の発光中心(重心)から一方の側に配された穴11B,12Bは第1の深さDを有した第1の穴群を形成している。そして、発光素子1Bの表面の発光中心(重心)から他方の側に配された穴13Bは第2の深さ(D−δ)を有した第2の穴群を形成している。発光素子1Bでは、穴の深さの差δは、自由空間(空気中)における光の波長λの半分の長さ以下であることが好ましい。
半導体発光層30で発生した光は、穴11B,12B,13Bから素子表面(金属層50の上面)と垂直な方向、すなわち図10におけるZ軸方向に放射された後、光の干渉効果によって干渉し、3つの穴11B,12B,13Bの素子表面上における重心を通る1本の光線が生成される。本実施形態の発光素子1Bは、穴11B,12B,13Bのうちの穴13Bを他とは異なる深さに形成したので、当該深さの差δに応じて光線の方向を制御することができる。そして、発光素子1Bにおいて、3つの穴10Bの素子表面上における重心を通る1本の光線は、Z軸方向から所定の角度だけ傾斜した方向に放射される。なお、仮に、穴10Bの深さが全て同じ場合(深さの差がない場合)は、穴10Bによって形成される光線は、素子表面と垂直な方向に放射されることになる。
[発光素子の製造方法]
第2実施形態の発光素子1Bを製造する方法は、金属層50を成膜する工程を有する点が第1実施形態の発光素子1を製造する方法と相違する。その他の同様な手順については適宜省略する。
発光素子1Bの製造工程の一例を挙げると、まず、例えばGaAsやSi等の半導体基板に、例えば分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、有機金属化学気相成長(MOCVD)法などの成膜方法により、n型半導体層20と、半導体発光層30と、p型半導体層40とを積層する。次いで、p型半導体層40上に金属材料を蒸着法、スパッタリング法等により積層した後、フォトリソグラフィ法等によって金属層50が作製される。なお、面発光素子、あるいは金属層で被覆された面発光素子を入手できれば、イオンビーム照射前のこれらの製造工程を行う必要はない。
そして、金属層50の上からイオンビームの走査により、穴13Bとなる領域とその他の穴11B,12Bとなる領域とを選択的にエッチングすることで、穴13Bをその他の穴11B,12Bよりも浅く形成する。なお、穴11B,12B,13Bの形成後に、穴の内壁や金属層50の表面にSiO2等の絶縁性の保護膜を形成してもよい。
本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法および装置によれば、発光素子表面に深さの異なる穴10Bを形成するので、第2実施形態に係る発光素子1Bは、深さの差δに相当する光の位相差に応じた方向に光線を放射することができる。また、本実施形態の発光素子1Bは、素子表面の構造物が穴10Bなので、素子表面の構造物の配列が同じであれば、構造物として柱を形成する場合に比べてイオンビームで削る(スパッタ)加工を行う領域が低減される。そのため、構造物を形成する時間やコストを低減することができる。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態に係る発光素子1Cについて、図11を参照しながら説明する。発光素子1Cは、図11に示すように、半導体柱状部(構造物)の個数が第1実施形態の発光素子1と異なっている。第3実施形態に係る発光素子1Cにおいて、図1〜図3に示す発光素子と同じ構成には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
発光素子1Cには、図11(a)に示すように、p型半導体層40上に、合計6本の半導体柱状部11C,12C,13C,14C,15C,16Cが形成されている。
半導体柱状部11C〜16Cは、図11(b)に示すように、それぞれの直径が等しくなるように形成されており、この直径が例えば自由空間(空気中)における光の波長λと同じ大きさに設定される。また、6個の半導体柱状部11C〜16Cは、発光素子1Cの表面の発光中心(重心G)に対して6回対称の位置に配列されている。また、半導体柱状部11C〜16Cは、ここでは図11(b)に示すように、6本の柱の重心G(発光素子1Cの発光中心)を中心とする円周上にそれぞれ隣接して配置されている。また、重心Gを中心とする円周の半径は、自由空間(空気中)における光の波長λの2倍の長さに設定されている。
半導体柱状部11C〜16Cは、高さによって2つのグループ(第1の柱体群,第2の柱体群)に分類することができる。具体的には、発光素子1Cの表面の発光中心(重心G)から一方の側に配された半導体柱状部11C,12C,13Cは第1の高さ(例えばH:図11(c)参照))を有した第1の柱体群を形成している。そして、発光素子1Cの表面の発光中心(重心G)から他方の側に配された半導体柱状部14C,15C,16Cは第2の高さ(例えばH−d:図11(c)参照)を有した第2の柱体群を形成している。ここで、dは、高さの差を示し、Hは柱内部を伝播する光の波長(λ/n)と同程度から、(λ/n)の数倍程度までの範囲の高さに設定される。なお、nは半導体柱状部の屈折率を示す。
第3実施形態の発光素子1Cを製造する方法は、形成すべき半導体柱状部の個数以外については第1実施形態の発光素子1を製造する方法と同様なので説明を省略する。
発光素子1Cにおいて、6個の半導体柱状部11C〜16Cは6回対称の位置に配列されているので、配列対称性に合わせた角度は、時計回りの0度(360度)、60度、120度、180度、240度、300度であり、これにより、双方向にスキャンする。この場合、双方向のスキャン動作は、それぞれ、0度と180度との組、60度と240度との組、120度と300度との組となる。つまり、結果として、半導体柱状部の個数が3個の場合と同じ回数だけスキャン動作することになる。
発光素子1Cは、第1の柱体群と第2の柱体群が互いに異なる高さに形成されているので、当該高さの差に応じて光線の方向を制御することができる。なお、第1の柱体群と第2の柱体群の高さが同じ場合(高さの差がない場合)に形成される光線は、素子表面と垂直な方向に放射されることになる。ところで、光は横波であるため、1本の半導体柱状部から放射された光の高調波を抑制するには光軸(重心G)を対称軸とした反対側に発生する電界を打ち消す必要がある。発光素子1Cのような合計6本の半導体柱状部11C〜16Cの配列によれば、ある柱から見て、光軸(重心G)を対称軸とした反対側にも柱が存在することになる。よって、第3実施形態によれば、発光素子1Cにおいて合計6本の半導体柱状部11C〜16Cをこのような配列で設けたことで、光線の放射方向を制御できることに加えて、光軸を含む面に対する対称性が良く、迷光の発生を抑制することができるという効果を奏する。
第3実施形態の変形例として、半導体柱状部の個数が4個の場合、配列対称性に合わせた角度は、時計回りの0度(360度)、90度、180度、270度であり、これにより、双方向にスキャンする。つまり、この場合、双方向のスキャン動作は、それぞれ、0度と180度との組、90度と270度との組となる。このときオプションとして時計回りの45度、135度、225度、325度においてもスキャン動作するようにしてもよい。この場合、手間がかかるが対称性に優れた発光素子を提供できる。なお、半導体柱状部の個数が偶数(N=2m)のときには、少なくとも合計2m回だけスキャン動作すればよい。
また、半導体柱状部の個数が奇数(N=2m+1)のときには、少なくとも合計(2m+1)×2回だけスキャン動作すればよい。具体的には、第3実施形態の変形例として、半導体柱状部の個数が5個の場合、配列対称性に合わせた角度としては、時計回りの0度(360度)、36度、72度、108度、144度、180度、216度、252度、288度、324度のときにスキャン動作を行う。この場合、双方向のスキャン動作は、それぞれ、0度と180度との組、72度と252度との組、144度と324度との組、216度と36度との組、288度と108度との組となる。
[発光素子の応用例]
例えば図1に示す発光素子1は、素子表面の正三角形の頂点の位置に3つの半導体柱状部10を配置し、高さの異なる2つのグループ(第1の柱体群、第2の柱体群)に分けたことにより、当該発光素子1から出射する光線の方向を、素子表面の法線方向から所定角度だけ傾斜した方向(以下、傾斜角度方向という)とする制御を行うことができる。よって、発光素子1を基板上に多数並べることにより、発光素子1を画素としたIP方式のディスプレイであるIP立体ディスプレイを提供することが可能である。この場合、ディスプレイの画素位置に対応して光線を出射すべき方向がそれぞれ異なるので、必要なそれぞれの傾斜角度方向の発光素子を製造する。発光素子の傾斜角度方向を変えるには柱の高さの差dを変えればよい。その際に、同じ傾斜角度方向に光線を出射する素子であって、傾斜する方位だけが異なるような発光素子も必要になる。その場合、同じ傾斜角度方向に光線を出射する複数の発光素子を一度に同様に製造しておき、図1のZ軸周りに回転させて画素位置に対応して必要な方位に合わせて配置すればよい。このような応用例について図12を参照(適宜、図1〜図3参照)して説明する。
図12(a)に示すIP立体ディスプレイ60は、発光素子1をアレイ状に並べたものを模式的に示したものである。それぞれの発光素子1は、配設位置(画素の位置)に応じた光の出射方位が予め定められている。図12(a)において、発光素子1の輪郭は、発光素子の区画を分かり易くするために便宜的に示したものである。それぞれの発光素子1は、低い半導体柱状部13(図1参照)が、当該発光素子1の配設位置に応じて予め定められている光の出射方位に向けて配置されているものとする。図12(a)に示すIP立体ディスプレイ60において、個々の発光素子1(画素)から射出する光線の方向は、図12(b)にて、例えば円柱や立方体を終点とする太い矢印の方向で示されている。
ここで、図示は省略するが、IP立体ディスプレイ60に対応したIP立体撮影装置がレンズ板を介して被写体(例えば図12(b)に示すような円柱や立方体等)を予め撮影した要素画像群を取得しておくことが、立体を表示(再生)するための前提となる。撮影に用いるレンズ板は、要素レンズを所定のレンズピッチで並置して構成された要素レンズアレイになっている。従来のIP方式のディスプレイでは、例えば液晶パネルに要素画像群を表示して、撮影時と同様の要素レンズアレイの各要素レンズを介して各要素画像を投影し、それらを集積した像を、被写体に対応した立体再生像として観察する。一方、IP立体ディスプレイ60の場合、密集して配置された複数の発光素子1が要素画像(1単位の要素画素群)を形成し、通常のIP立体ディスプレイの個々の要素レンズに相当する領域に、1単位の要素画素群(複数の発光素子1からなる1つの単位構造)が並置される構造となる。これにより、図12(b)に示すように、IP立体ディスプレイ60の単位構造それぞれが要素画像を空間上にそれぞれ投影し、それらが集積されて、被写体の再生像(立体像)として、例えば円柱や立方体が表示される。
このようにIP立体ディスプレイ60は、各画素を構成する発光素子1が、個別に、射出される方向(方位)が決定されていることによって、光学レンズを介することなく、各発光素子1から特定の方向(方位)への指向性をもった光を射出することができる。このような微細構造を有する発光素子1を多数個並べた表示素子(FPD)は、従来技術においてレンズ板と発光面とを接合させた装置と同じ働きを有するようになる。このようにして作製したIP立体ディスプレイ60においては、立体表示の解像度は、発光素子1の精細度にのみ依存し、光学系の解像度不足による映像ボケが生じない。また、発光素子1を用いたIP表示における視域角は、素子表面と垂直な方向に対する放射光の成す角(方位角)の最大値にのみ依存し、解像度と視域角とを独立に改善することが可能である。
1,1B,1C 発光素子
10,11,12,13 半導体柱状部(構造物)
10B,11B,12B,13B 穴(構造物)
20 n型半導体層
30 半導体発光層
40 p型半導体層
50 金属層
60 IP立体ディスプレイ
61 基板
100 製造装置
101 試料
102 イオンビーム
110 ステージ
120 ステージ駆動手段
130 集束イオンビーム照射手段
131 イオン源
132 偏向器
133 光学系
134 遮断器
135 偏向電極
136 光学系
140 ガス供給装置
150 2次荷電粒子検出器
160 表示装置
200 制御装置
210 ステージ制御手段
220 ビーム照射制御手段
230 画像処理手段
240 記憶手段
241 エリアマップ

Claims (6)

  1. 面発光型の発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料を集束イオンビームを照射して削ることで表面の発光中心に対してN回対称の位置にN個からなる複数の構造物が配列され前記Nが3以上の自然数である発光素子を製造する発光素子の製造方法であって、
    前記複数の構造物の配列対称性に合わせて前記発光素子の平坦な表面の法線方向の軸周りに、Nが偶数の場合、360/Nの角度を基準にして、Nが奇数の場合、360/Nの半分の角度を基準にして、等間隔に少なくとも1周分の角度を設定する工程と、
    前記設定角度の予め定められた順番で前記発光素子を相対的に回転させて前記設定角度の位置に固定する工程と、
    前記設定角度のそれぞれの位置において、前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料の予め定められた領域に集束イオンビームを照射して集束イオンビームを走査する工程と、
    を行うことで前記複数の構造物を形成することを特徴とする発光素子の製造方法。
  2. 前記発光素子上に一連のビーム走査で前記複数の構造物を形成し、当該一連のビーム走査において、走査線上に前記発光素子の構造物についての1つの配置領域を含むときに当該配置領域に1つの構造物を形成するように前記半導体材料を削り、走査線上に複数の配置領域を含むときに当該複数の配置領域に前記構造物をそれぞれ形成するように前記半導体材料を削ることを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
  3. 前記構造物は、平坦な表面から突出する柱体であり、
    前記集束イオンビームにより、前記発光素子の表面の発光中心から一方の側に第1の高さの複数の柱体からなる第1の柱体群を形成し、かつ、前記表面の発光中心から他方の側に第1の高さとは異なる第2の高さの少なくとも1つの柱体からなる第2の柱体群を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子の製造方法。
  4. 前記構造物は、平坦な表面から凹む穴であり、
    前記集束イオンビームにより、前記発光素子の表面の発光中心から一方の側に第1の深さの複数の穴からなる第1の穴群を形成し、かつ、前記表面の発光中心から他方の側に第1の深さとは異なる第2の深さの少なくとも1つの穴からなる第2の穴群を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子の製造方法。
  5. 面発光型の発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料を集束イオンビームを照射して削ることで表面の発光中心に対してN回対称の位置にN個からなる複数の構造物が配置され前記Nが3以上の自然数である発光素子を製造する発光素子の製造装置であって、
    前記面発光型の発光素子を搭載するステージと、
    前記ステージを回転させるステージ駆動手段と、
    前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料に集束イオンビームを照射する集束イオンビーム照射手段と、
    制御装置と、を備え、
    前記制御装置は、
    前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料を削る予め定められた領域の位置情報を記憶する記憶手段と、
    前記複数の構造物の配列対称性に合わせて前記発光素子の平坦な表面の法線方向の軸周りに、Nが偶数の場合、360/Nの角度を基準にして、Nが奇数の場合、360/Nの半分の角度を基準にして、等間隔に少なくとも1周分の角度を設定し、前記ステージ駆動手段を制御することで前記設定角度の予め定められた順番で前記ステージを前記軸周りに回転させて前記設定角度の位置に前記ステージを固定するステージ制御手段と、
    前記集束イオンビーム照射手段を制御することで、前記設定角度のそれぞれの位置において、前記発光素子の平坦な表面を構成する半導体材料の予め定められた領域に集束イオンビームを照射して集束イオンビームを走査させるビーム照射制御手段と、を備えることを特徴とする発光素子の製造装置。
  6. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の発光素子の製造方法により製造されたことを特徴とする発光素子。
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