JPWO2018180696A1 - cis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
cis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物は、cis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸を酢酸及び無水酢酸中で脱水反応を行うことにより得られる。
また、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸無水物の一般的な製造方法としては、トリメリット酸を核水添して1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸とし、これを晶析により精製した後、無水化反応を行う方法が挙げられる。
特許文献2には、トリメリット酸の核水添工程、及び晶析工程を、一貫して水中で行う1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の製造方法が記載されている。
更に、特許文献1では、水添反応時及び晶析時濃縮後の(溶媒/仕込み原料)の質量比が高く、大量の溶媒を必要とするため、効率が悪いという問題があった。
また、水添反応時の(溶媒/仕込み原料)の質量比、及び晶析時濃縮後の(溶媒/仕込み原料)の質量比が、共に特許文献1と比較して低いため、溶媒使用量が少なく、効率的である。
しかし、トリメリット酸の核水添反応液から、高純度なcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶を得ることについては検討されていない。
工程1:cis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸を含有する原料水溶液中のcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸のtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に対する質量比(cis/trans比)を測定し、cis/trans比が10以上(好ましくは15以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは35以上)である晶析用原料水溶液とする工程
工程2:工程1で得られた晶析用原料水溶液を晶析する工程
〔2〕 前記工程2において、晶析用原料水溶液を濃縮し、濃縮後の晶析用原料水溶液の溶媒の溶質に対する質量比が0.1〜5(好ましくは0.3〜3、より好ましくは0.5〜1.5、更に好ましくは0.8〜1.3)である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 前記cis/trans比が40以上(好ましくは45以上)である、〔1〕又は〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕 得られたcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶の純度が、90質量%以上(好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上)である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕 工程2におけるcis,cis−1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸の回収率が、60質量%以上(好ましくは65質量%以上、より好ましくは70質量%以上)である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕 工程2において種結晶を添加する、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕 種結晶の添加量が、晶析原料水溶液が含有するcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に対して、0.01〜40質量%(好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜25質量%、更に好ましくは1〜20質量%)である、〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕 種結晶の添加するときの晶析用原料水溶液の温度が、1〜60℃(好ましくは5〜55℃、より好ましくは10〜50℃)である、〔6〕又は〔7〕に記載の製造方法。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
工程1:cis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸を含有する原料水溶液中のcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸のtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に対する質量比(cis/trans比)を測定し、cis/trans比が10以上である晶析用原料水溶液とする工程
工程2:工程1で得られた晶析用原料水溶液を晶析する工程
ここで、トリメリット酸(TMA)の芳香環の水添反応では、目的とするcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸以外にも、trans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸(trans−H−TMA)等の構造異性体や、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸のカルボキシ基の1つがメチル基に置換された副生成物(4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物:Me−HHPA)が生成する。そのため、高純度のcis−H−TMAを得るためには、トリメリット酸(TMA)水添後のcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸を含有する原料水溶液(以下、TMA核水添反応液)の晶析を行い、cis−H−TMAを選択的に得る必要がある。
なお、本発明において、晶析用原料水溶液中のcis−H−TMAの純度に比べ、得られるcis−H−TMA結晶の純度が向上するものであり、このような効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように推察される。
すなわち、cis−H−TMA結晶の晶析の際に、一定以上のcis/trans比である晶析用原料水溶液を使用することにより、trans−H−TMAが結晶中に混入することなく、極めて高純度のcis−H−TMA結晶が得られると推定される。
本発明のcis−H−TMA結晶の製造方法において、工程1は、cis−H−TMAを含有する原料水溶液中のcis/trans比を測定し、cis/trans比が10以上である晶析用原料水溶液とする工程である。
<原料水溶液>
本発明において、原料水溶液は、cis−H−TMAを含有する水溶液であれば特に限定されないが、後述するトリメリット酸の核水添反応液であることが好ましい。
なお、原料水溶液は、溶媒として水を含有する。溶媒中の水の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは溶媒として水のみを含有する。なお、水はイオン交換水又は蒸留水が好ましく、得られるcis−H−TMA結晶を電気・電子分野に利用する場合には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等の金属成分の含有量が極力少ない水を用いることが好ましい。
原料水溶液は、溶媒として水に加え、水混和性の範囲で他の溶媒を更に含有していてもよく、具体的には、酢酸、プロピオン酸、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
より具体的には、特開2003−286222号公報に記載されているように、トリメリット酸100質量部に対して、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10質量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上で水素化する方法や、国際公開第2010/010869号に記載されているように、触媒としてロジウムをカーボン担体に担持した担持触媒及びパラジウムをカーボン担体に担持した担持触媒を使用し、特定の触媒量、反応水素分圧、反応温度にて、芳香族ポリカルボン酸の芳香環を触媒存在下で水素化する方法等が例示される。
また、特許文献1に記載されているように、特定の表面積を有するカーボン担体に遷移金属が担持された触媒を使用し、加圧及び加熱下で水素分子によってTMAを水素化する方法等が例示される。
なお、トリメリット酸の核水添反応の生成物中のcis−H−TMAの含有量は、使用する触媒、反応温度等により変化する。本発明においてcis−H−TMA含有量が多く、収率に優れた核水添反応条件を選択することが好ましい。
工程1において、上述のように得られたcis−H−TMAを含有する原料水溶液中のcis−H−TMAのtrans−H−TMAに対する質量比(cis/trans比)を測定し、cis/trans比が10以上である晶析用原料水溶液とする。
ここで、原料水溶液中のcis/trans比の測定方法は特に限定されないが、原料水溶液中のcis−H−TMA及びtrans−H−TMAをエステル化した後、ガスクロマトグラフィーで分析する方法が例示され、具体的には実施例に記載の方法により測定される。
晶析用原料水溶液のcis/trans比は、好ましくは15以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは35以上、より更に好ましくは40以上、より更に好ましくは45以上である。晶析用原料水溶液のcis/trans比が40以上であると、特にcis−H−TMA結晶の回収率が向上するので好ましい。
晶析用原料水溶液のcis/trans比の上限は特に限定されないが、晶析用原料水溶液の調製の容易性や、十分な効果が得られ、それ以上のcis/trans比とすることの効果が低くなるといった観点から、好ましくは1,000以下、より好ましくは500以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは75以下、より更に好ましくは70以下である。
これらの中でも、cis−H−TMAを添加する方法が、容易にcis/trans比を向上可能である点から好ましい。
なお、測定した原料水溶液のcis/trans比が10以上であれば、そのまま原料水溶液を晶析用原料水溶液として使用してもよい。また、更にcis/trans比を高めるために、cis−H−TMAを原料水溶液に添加してもよい。
また、本発明のcis−H−TMA結晶の製造方法において、原料水溶液をTMAの水添反応により得る場合、反応条件を設定することによって、cis/trans比が10以上であることが明らかであれば、毎回測定する必要はなく、適宜省略して工程2を行ってもよく、そのような態様も本発明の範囲に含まれるものである。
本発明において、工程2は、前記工程1において得られた晶析用原料水溶液を晶析する工程(晶析工程)である。
晶析工程においては、晶析用原料水溶液を濃縮して濃縮液を作製し、更に該濃縮液を冷却して結晶を析出させることが好ましい。また、濃縮液の冷却前、冷却中、又は冷却後に、種結晶を添加することが好ましい。以下、それぞれについて詳述する。
本発明において、工程1で得られた晶析用原料水溶液を濃縮し、濃縮液を作製することが好ましい。濃縮する方法は特に限定されず、溶媒を除去することにより濃縮すればよいが、晶析用原料水溶液を加熱して、晶析用原料水溶液中の溶媒を留去し、濃縮する工程であることが好ましい。
加熱温度(反応溶液中温度)は特に限定されないが、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。
また、前記濃縮は、大気圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよく、特に限定されない。減圧下で濃縮(溶媒の留去)を行う場合、圧力は、好ましくは30〜450hPa、より好ましくは70〜300hPa、更に好ましくは100〜200hPaである。
濃縮の際には、濃縮液の温度分布を抑制し、突沸を防ぐ観点から、撹拌しながら濃縮を行うことが好ましい。
濃縮の際の撹拌速度は液が十分に撹拌されていれば、特に限定されていないが、好ましくは50rpm〜1,000rpm、より好ましくは100rpm〜800rpm、更に好ましくは200rpm〜600rpmである。
所望のSRとなった濃縮液は、冷却することが好ましい。
なお、加熱して濃縮液の作製を行った場合、冷却速度は、高純度のcis−H−TMAを得る観点、又は、効率及びバッチサイクルの観点から、好ましくは1〜40℃/h、より好ましくは5〜30℃/h、更に好ましくは10〜20℃/hである。
濃縮液は、好ましくは0〜40℃まで冷却することが好ましく、より好ましくは3〜30℃、更に好ましくは5〜20℃である。上記の温度まで冷却すると、結晶の析出が促進され、cis−H−TMA結晶の回収率が向上するので好ましい。
冷却中の濃縮液は、撹拌下に冷却してもよい。
なお、冷却後に濃縮液を前記冷却温度にて、0.5〜72時間保持することが好ましく、1〜48時間保持することがより好ましく、1.5〜24時間保持することが更に好ましい。なお、前記冷却温度での保持は、撹拌下に行ってもよい。上記の保持時間冷却すると結晶の析出が促進され、cis−H−TMA結晶の回収率が向上するので好ましい。
なお、撹拌速度に関しては、冷却中及び保持中において、液が十分に撹拌されていれば、特に限定されないが、好ましくは50rpm〜1,000rpm、より好ましくは100rpm〜800rpm、更に好ましくは200rpm〜600rpmである。
本発明において、冷却前、冷却中、又は冷却後に、種結晶を追加することが好ましい。該種結晶は、冷却中に添加することが好ましく、種結晶を添加するときの濃縮液の温度は、好ましくは1〜60℃、より好ましくは5〜55℃、更に好ましくは10〜50℃である。
添加する種結晶の量は、晶析原料水溶液が含有する全H−TMAに対して、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、更に好ましくは0.5〜25質量%、より更に好ましくは1〜20質量%である。
種結晶スラリーとは、40℃でcis−H−TMAがわずかでも結晶として存在している溶液である。また、種結晶スラリー中のcis−H−TMAの濃度は、好ましくは1〜60質量%、より好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは10〜45質量%である。種結晶スラリーの溶媒としては、原料水溶液における溶媒が同様に例示され、原料水溶液と同じ溶媒を使用することが好ましい。
なお、種結晶スラリーは、後述するように工程2後の母液をそのままで使用してもよく、母液に更にcis−H−TMAを添加したものを使用してもよい。
晶析用原料水溶液中のcis/trans比を高くすることにより、工程2におけるcis−H−TMAの回収率を向上させることが可能であり、上述の通り、工程2におけるcis−H−TMAの回収率を向上させる観点からは、cis/trans比が40以上であることが特に好ましい。
なお、工程2におけるcis−H−TMAの回収率は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明において、工程2に続いて、cis−H−TMA結晶を単離する工程(以下、単に「単離工程」ともいう。)を有することが好ましい。
工程2により析出した結晶(固体)を濾別し、更に、濾別した固体を乾燥することによって、cis−H−TMA結晶を単離することができる。
結晶を分離した母液は、種結晶スラリー用母液として使用してもよい。また、不純物の系内蓄積の度合いに応じて、母液を種結晶スラリー用母液として使用するか否かを選択すればよい。
本発明の製造方法により得られるcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶の純度は、晶析原料水溶液のcis−H−TMAの純度よりも高い。
得られるcis−H−TMA結晶の純度は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは99質量%以上である。cis−H−TMAの純度は高いことが好ましく、上限は100質量%である。
cis−H−TMA結晶の純度は、実施例に記載の方法により測定される。
上述のように、cis−H−TMA結晶を高純度、かつ高い回収率で得られる本発明の製造方法は、工業的に非常に有利である。
(1)H−TMA純度の測定(リン酸トリメチル法)
得られた結晶中のH−TMA純度は、以下のようにして測定した。
具体的には、得られた結晶を含む水溶液(濃度5〜30質量%)を調製し、これを試験管に0.60g採取し、トリエチルアンモニウムクロリド(和光純薬工業株式会社製)を3.0g、トリメチルホスファート(キシダ化学株式会社製)を10ml加え、ブロックヒーターにて180℃で90分間加熱して、エステル化処理を行った。その後、内標としてトリフェニルメタン(東京化成工業株式会社製)を0.10g加え、クロロホルム9mlに完全溶解させ、更にイオン交換水を加えて分液処理を行い、得られたクロロホルム溶液をガスクロマトグラフィー分析に供した。H−TMA純度は内標トリフェニルメタンにより内標法により算出している。また、原料液中のH−TMA純度(濃度5〜30質量%)についても結晶中のH−TMA純度の算出方法と同様に内標法により算出した。
(ガスクロマトグラフィー分析条件)
ガスクロマトグラフィー分析装置:6890N(Agilent Technologies製)
キャピラリーカラム:DB−1(Agilent Technologies製)
インジェクション温度:300℃
検出温度:290℃
初期カラム温度、保持時間:160℃、20分
昇温速度:10℃/分
最終カラム温度、保持時間:280℃、15分
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス圧力:33.1kPa
検出器:FID
[前処理]
<エステル化条件(BF3・MeOH法)>
1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸を含有する原料水溶液中を試験管に0.60g採取し、三フッ化ホウ素メタノール溶媒(東京化成工業株式会社製)を10ml加え、150℃のブロックヒーターで6分間加熱し、エステル化処理を行った。反応終了後、クロロホルム3ml加え、水、0.5規定炭酸ナトリウム水溶液、水の順で分液処理を行い、得られたクロロホルム溶液をガスクロマトグラフィーにて分析に供した。cis−H−TMA、trans−H−TMAの選択性(質量比)については、面積百分率で算出した。
[ガスクロマトグラフィー分析条件]
ガスクロマトグラフィー分析条件は、前記(1)H−TMA純度の測定と同じ条件で行った。
撹拌機、熱電対温度計さや管、圧力計、ガスライン2本(内径3mm)、ベントラインを具備した5LのSUS316L製オートクレーブに、トリメリット酸無水物327g(Flint Hills Resources社製)とイオン交換水2,174gを加え、90℃で30分間加熱し、加水分解を行った後に反応容器へ仕込んだ。
続いて、反応容器内に5質量%パラジウム−カーボン担持触媒PEタイプ(エヌ・イーケムキャット社製、含水品を110℃、8時間の条件で乾燥させたもの)78.5g(トリメリット酸(以下、「TMA」ともいう。)100質量部に対し、パラジウム金属として1.2質量部)と、5質量%ロジウム−カーボン担持触媒(エヌ・イーケムキャット社製、含水品を110℃、8時間の条件で乾燥させたもの)33.6g(TMA100質量部に対し、ロジウム金属として0.5質量部)を投入した。触媒のPd:Rh比(質量比)は7:3であった。
内容物を撹拌しながら系内を窒素ガスで2回、2.0MPaで置換し、次いで水素ガスにより1回、2.0MPaで系内を置換した。この時に撹拌速度を700rpmにした。水素ガスで3.0MPaに昇圧し、液温30℃で反応開始とした。反応開始後2時間経過した後に落圧を行った。
落圧終了後、反応液をオートクレーブ底部から窒素加圧により抜き出した。この濾液(粗反応物)反応液からADVANTEC 5Bろ紙(JIS P 3801)を用いて触媒をろ別し、透明な核水添反応液(原料水溶液)を得た。
撹拌機、熱電対温度計さや管2本、熱交換器2本、原料投入ライン、のぞき穴を具備した4Lのジャケット式SUS316L製オートクレーブに核水添反応液を仕込み撹拌数200rpmで濃縮を開始し、全H−TMA濃度が45.5質量%になるまで濃縮した。
20℃まで降温した後に、スラリーを抜き出し固液分離を行った。得られた結晶を乾燥機で110℃、8時間乾燥することにより、結晶−1を得た。結晶−1中のH−TMA純度(4つの異性体を合計した、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の純度)は、97.0質量%であった。また、当該結晶中の異性体比率は、trans体が0.1質量%、cis体が99.8質量%であり、該結晶中のcis−H−TMA純度は、97.0×0.998=96.8質量%であった。
温度計、撹拌機、コンデンサ、温度制御装置を備えた四つ口フラスコに、1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸を仕込み、窒素ガス流通下250℃で3時間加熱溶融を行い、淡黄色透明液状の1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸1,2−無水物を得た。原料の1,2,4ーシクロへキサントリカルボン酸基準の無水化率は95%であった。
前記液状無水物中のtrans,trans−1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸1,2−無水物は56質量%、cis,cis−1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸1,2−無水物は44質量%であった。
5Lフラスコに上記液状シクロヘキサントリカルボン酸無水物1,000gと水3,000gを加えて、80℃で1時間撹拌した。その後、反応系を25℃まで冷却して、結晶を析出させた。この結晶をブフナー漏斗を用いて吸引ろ過後、真空乾燥することにより、結晶−2を得た。結晶−2中のH−TMA純度(4つの異性体を合計した、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸の純度)は99.3質量%であった。また、当該結晶のH−TMAの異性体比率(H−TMA中の各異性体の比率)は、trans体が97.2質量%、cis体が2.6質量%であり、該結晶中のtrans−H−TMA純度は、99.3×0.972=96.5質量%であった。
以下の表1に製造例1で得られた結晶−1、及び製造例2で得られた結晶−2について示した。
撹拌機、熱電対温度計さや管2本、熱交換器2本、原料投入ライン、のぞき穴を具備した4Lのジャケット式SUS316L製オートクレーブに、製造例1で得た結晶−1 749.5g、製造例2で得た結晶−2 8.2g、及び純水5,000gを仕込み、溶解させた。この溶液を晶析用原料水溶液1とした。この晶析用原料水溶液1中に含まれる全H−TMA質量は735.2g(cis−H−TMA質量としては725.8g)であった。晶析用原料水溶液1のcis/trans比は、84.0であった。
この晶析用原料水溶液1を撹拌数200rpmで加熱濃縮を開始し、濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1615.8gの濃縮液1が存在し、液温は100℃であった。なお、濃度とは、全H−TMAの濃度であり、濃度(質量%)=全H−TMA(質量)/(溶質+溶媒)(質量)×100にて算出される。
次に、濃縮液1を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液1の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶147.2g(cis−H−TMAとしては142.5g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、反応容器の底部からスラリーを回収し、ブフナー漏斗で15分間吸引ろ過を行った。結晶をスパチュラで回収し、得られた結晶を乾燥機で110℃、8時間乾燥させた。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は675.3g、回収率は72.6質量%であった。得られた結晶中のH−TMAの純度は、99.6質量%、H−TMA中のcis−H−TMAの選択率(純度)は99.5質量%であり、cis−H−TMA純度は、99.6×0.995=99.1質量%であった。
なお、回収率は以下の式により算出した。
回収率(質量%)={(得られた結晶中のcis−H−TMA質量)−(加えた種結晶中のcis−H−TMA質量)}/(原料中のcis−H−TMA質量)×100
実施例1で得られたH−TMA結晶(回収結晶)の分析結果を表2に示した。
TMAの水添触媒としてパラジウム−カーボン担持触媒PEタイプ(エヌ・イーケムキャット社製、含水品を110℃、8時間の条件で乾燥させたもの)100.9g(TMA100質量部に対し、パラジウム金属として1.5質量部)と、5質量%ロジウム−カーボン担持触媒(エヌ・イーケムキャット社製、含水品を110℃、8時間の条件で乾燥させたもの)11.2g(TMA100質量部に対し、ロジウム金属として0.2質量部)(触媒のPd:Rh(質量比)=9:1)を投入した以外は製造例1と同じように核水添反応及び晶析を行い、更に、固液分離及び乾燥を行った。得られた結晶中のcis−H−TMA純度は96.8質量%であり、実施例及び比較例にて種結晶として使用した。
実施例1と同様のオートクレーブに、製造例1で得られた結晶−1 751.7g、製造例2で得られた結晶−2 15.5gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液2とした。この晶析用原料水溶液2中に含まれる全H−TMA質量は744.5g(cis−H−TMA質量としては728.1g)であった。晶析用原料水溶液2のcis/trans比は、46.4であった。
この晶析用原料水溶液2を撹拌数200rpmで濃縮を開始し、濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,636.3gの濃縮液2が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液2を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液2の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶147.2g(cis−H−TMAとしては142.5g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は669.7g、回収率は71.4質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は99.5質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は99.5質量%であり、cis−H−TMA純度は99.5×0.995=99.0質量%であった。
実施例2で得られたH−TMA結晶(回収結晶)の分析結果を表2に示した。
なお、実施例2で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
実施例1と同様に、製造例1で得られた結晶−1 741.1g、製造例2で得られた結晶−2 19.1gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液3とした。この晶析用原料水溶液中に含まれる全H−TMA質量は737.8g(cis−H−TMA質量としては717.9g)であった。晶析用原料水溶液3のcis/trans比は、37.5であった。
撹拌数200rpmで濃縮を開始し、晶析用原料水溶液の濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,621.5gの濃縮液3が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液3を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液3の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶147.6g(cis−H−TMAとしては142.9g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は625.3g、回収率は66.0質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は99.4質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は99.2質量%であり、cis−H−TMA純度は99.4×0.992=98.6質量%であった。
実施例3で得られたH−TMA結晶(回収結晶)の分析結果を表2に示した。
なお、実施例3で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
実施例1と同様に、製造例1で得られた結晶−1 728.5g、製造例2で得られた結晶−2 36.5gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液4とした。この晶析用原料水溶液中に含まれる全H−TMA質量は742.9g(cis−H−TMA質量としては706.2g)であった。晶析用原料水溶液4のcis/trans比は、19.7であった。
撹拌数200rpmで濃縮を開始し、晶析用原料水溶液の濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,632.7gの濃縮液4が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液4を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液4の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶148.1g(cis−H−TMAとしては143.4g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は611.5g、回収率は65.2質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は99.9質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は98.9質量%であり、cis−H−TMA純度は99.9×0.989=98.8質量%であった。
なお、実施例4で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
実施例1と同様に、製造例1で得られた結晶−1 716.2g、製造例2で得られた結晶−2 45.2gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液5とした。この晶析用原料水溶液中に含まれる全H−TMA質量は739.6g(cis−H−TMA質量としては694.5g)であった。晶析用原料水溶液5のcis/trans比は、15.7であった。
撹拌数200rpmで濃縮を開始し、晶析用原料水溶液の濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,625.5gの濃縮液5が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液5を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液5の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶147.6g(cis−H−TMAとしては142.9g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は661.7g、回収率は68.9質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は98.8質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は95.0質量%であり、cis−H−TMA純度は98.8×0.950=93.9質量%であった。
なお、実施例5で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
実施例1と同様に、製造例1で得られた結晶−1 699.7g、製造例2で得られた結晶−2 63.7gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液6とした。この晶析用原料水溶液中に含まれる全H−TMA質量は742.0g(cis−H−TMA質量としては679.0g)であった。晶析用原料水溶液6のcis/trans比は、10.9であった。
撹拌数200rpmで濃縮を開始し、晶析用原料水溶液の濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,630.8gの濃縮液6が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液6を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液6の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶148.0g(cis−H−TMAとしては143.3g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は607.7g、回収率は61.5質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は99.0質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は93.2質量%であり、cis−H−TMA純度は99.0×0.932=92.3質量%であった。
なお、実施例6で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
実施例1と同様に、製造例1で得られた結晶−1 619.7g、製造例2で得られた結晶−2 128.9gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液7とした。この晶析用原料水溶液中に含まれる全H−TMA質量は729.1g(cis−H−TMA質量としては603.2g)であった。晶析用原料水溶液7のcis/trans比は、4.8であった。
撹拌数200rpmで濃縮を開始し、晶析用原料水溶液の濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,602.4gの濃縮液7が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液7を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液7の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶144.1g(cis−H−TMAとしては139.5g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は677.1g、回収率は67.7質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は99.2質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は81.6質量%であり、cis−H−TMA純度は99.2×0.816=80.9質量%であった。
なお、比較例1で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
実施例1と同様に、製造例1で得られた結晶−1 516.3g、製造例2で得られた結晶−2 210.7gを5,000gの純水に溶解させたものを晶析用原料水溶液8とした。この晶析用原料水溶液中に含まれる全H−TMA質量は710.0g(cis−H−TMA質量としては505.2g)であった。晶析用原料水溶液8のcis/trans比は、2.5であった。
撹拌数200rpmで濃縮を開始し、晶析用原料水溶液の濃度が45.5質量%(溶媒/全H−TMA質量比=1.2、(以下、SRとも呼ぶ))になるまで濃縮した。濃縮後オートクレーブ内には1,560.4gの濃縮液8が存在し、液温は100℃であった。
次に、濃縮液8を576rpmで撹拌しながら、10℃/hで濃縮液8の降温を開始した。液温が40.0℃に達した時に、あらかじめ準備した種結晶141.4g(cis−H−TMAとしては136.9g)をのぞき穴から投入した。その後、更に10℃/hで20℃まで降温した後、20℃のまま12時間撹拌をつづけた。
その後、実施例1と同様の操作を行った。
乾燥させたcis−H−TMA結晶の回収乾燥質量は640.1g、回収率は61.0質量%であった。得られた結晶中のH−TMA純度は98.1質量%、H−TMA中のcis−H−TMA選択率(純度)は70.9質量%であり、cis−H−TMA純度は98.1×0.709=69.6質量%であった。
なお、比較例2で使用した種結晶は、実施例1のものと同様であった。
また、本発明により得られたcis,cis−シクロヘキサントリカルボン酸は、その純度が高く、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂硬化剤、ソルダーレジスト等の原料として利用することが期待される。
Claims (8)
- 下記工程を有するcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶の製造方法。
工程1:cis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸を含有する原料水溶液中のcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸のtrans,trans−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に対する質量比(cis/trans比)を測定し、cis/trans比が10以上である晶析用原料水溶液とする工程
工程2:工程1で得られた晶析用原料水溶液を晶析する工程 - 前記工程2において、晶析用原料水溶液を濃縮し、濃縮後の晶析用原料水溶液の溶媒の溶質に対する質量比が0.1〜5である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記cis/trans比が40以上である、請求項1又は2に記載の製造方法。
- 得られたcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸結晶の純度が、90質量%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 工程2におけるcis,cis−1,2,4−シクロへキサントリカルボン酸の回収率が、60質量%以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 工程2において種結晶を添加する、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 種結晶の添加量が、晶析原料水溶液が含有するcis,cis−1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸に対して、0.01〜40質量%である、請求項6に記載の製造方法。
- 種結晶の添加するときの晶析用原料水溶液の温度が、1〜60℃である、請求項6又は7に記載の製造方法。
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