本開示は、音量調整が可能なアンプ機能と、音量調整が不可能なアンプ機能とを切り替えるように構成された、アンプ装置に関する。
特許文献1は、複数の外部入力端子と、入力切替手段と、音量設定手段と、音量記憶手段と、を備えたオーディオ装置を開示する。入力切替手段は、複数の外部入力端子から入力される音声信号を、択一的に選択してアンプ部に入力する。音量設定手段は、外部からの操作により、音量を増減する。音量記憶手段は、外部入力端子から入力される音声信号ごとに音量を記憶する。このオーディオ装置は、入力切替手段によりアンプ部に入力される音声信号が切り替えられると、その音声信号について記憶されている音量でオーディオスピーカを鳴動するよう構成される。これにより、外部入力端子ごとに音量を設定することができる。よって、例えば各外部入力端子に入力される音声信号の音量レベルにバラツキがある場合に、外部入力端子を切り替えても、同じ音量で音声信号を再生することを可能にする。また、ユーザは、音声信号ごとに個別の音量で再生したい場合に、外部入力端子を切り替えるごとに音量を設定し直す必要がない。
音量調整が可能な第1のアンプ機能と、音量調整が不可能な第2のアンプ機能とを切り替えるように構成されたアンプ装置において、アンプ機能を切り替えたときに、意図しない音量で音声が出力される場合がある。
本開示は、アンプ機能を切り替えるように構成されたアンプ装置であって、アンプ機能の切り替え時において、意図しない音量での音声出力を抑制するアンプ装置を提供する。
本開示に係るアンプ装置は、音量調整が可能な第1のアンプ機能と、音量調整が不可能な第2のアンプ機能とを切り替えるように構成されたアンプ装置である。前記アンプ装置は、音量の設定を受付け、前記音量に応じて状態が変化する操作部材と、前記操作部材で設定された前記音量が得られるように、入力された音声信号を増幅する信号処理回路と、前記信号処理回路を制御する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記第1のアンプ機能の実行中において、前記操作部材で設定された前記音量が得られるように前記信号処理回路の増幅動作を制御する。また前記制御部は、前記第1のアンプ機能から前記第2のアンプ機能へ切り替えられ、さらにその後、前記第1のアンプ機能に切り替えられた時に、前記操作部材の前記状態が、前記第1のアンプ機能から前記第2のアンプ機能へ切り替えられる直前に出力された第1音量よりも大きな第2音量に対応する前記状態である場合は、前記操作部材の前記状態を、前記第2音量よりも小さな第3音量に対応する前記状態に変化させ、前記信号処理回路の前記増幅動作を制御して、前記第3音量を出力させるように構成されている。
図1は、本開示のオーディオシステムの全体構成図である。
図2は、オーディオアンプのブロック図である。
図3は、アンプ機能の切り替え時のオーディオアンプの動作を示すフローチャートである。
図4は、ボリューム位置に応じて音量設定値を決定する際に参照されるテーブルの例を示した図である。
図5は、A/D値の範囲に対するヒステリシスを説明した図である。
図6は、音量を下げる操作を行ったときのA/D値の範囲に対するヒステリシスを説明した図である。
図7は、音量を上げる操作を行ったときのA/D値の範囲に対するヒステリシスを説明した図である。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
[1−1.構成]
図1は、本開示の実施の形態にかかるオーディオシステムの全体構成図を示す。オーディオシステム100は、オーディオアンプ10と、オーディオアンプ10に接続されたスピーカ61L、61Rと、AV(Audio Visual)セレクタ50と、AVセレクタ50に接続されたスピーカ63SL、63SR、63SB、63SWと、を含む。さらに、オーディオシステム100は、オーディオアンプ10に接続された音声再生装置41、42と、AVセレクタ50に接続された音声再生装置43、44とを含む。
AVセレクタ50は、音源としての複数の音声再生装置(例えば音声再生装置43、44)から1つを選択し、その選択した音源からの音声信号を外部の機器(例えば、オーディオアンプ10)へ出力する装置である。AVセレクタ50は、入力された音声信号を増幅し、増幅した音声信号を外部機器へ出力する。また、AVセレクタ50は、入力された音声信号に基づく音声信号を、スピーカ63SL、63SR、63SB、63SWへ出力する機能も有する。
音声再生装置41〜44は、音源の一例である。音声再生装置41〜44は、光ディスク、ハードディスク、及びメモリカードのような記録媒体から音声信号を再生し、出力する装置である。または、音声再生装置41〜44は、ネットワークを介して音声データを取得し、音声信号として出力する装置であってもよい。例えば、音声再生装置41〜44は、例えば、CD(Compact Disc)プレーヤ、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)プレーヤ、レコードプレーヤ、ネットワークオーディオプレーヤ、チューナ、またはスマートフォンなどである。
オーディオアンプ10は、音声信号を増幅し、増幅した音声信号に応じた音声をスピーカ61L、61Rから出力する装置である。オーディオアンプ10は、プリアンプ、メインアンプ(つまり、パワーアンプ)およびプリメインアンプとして機能することができる。プリアンプ機能及びプリメインアンプ機能は、音量調整が可能な第1のアンプ機能の一例である。メインアンプ機能は、音量調整が不可能な第2のアンプ機能の一例である。
オーディオアンプ10は、電源スイッチ11と、入力セレクタ15と、ボリュームつまみ13と、表示部17とを含む。電源スイッチ11は、オーディオアンプ10の電源オン/電源オフを切り替えるスイッチである。
入力セレクタ15は、スピーカ61L、61Rから出力する音声の音源を切り替えるスイッチである。オーディオアンプ10は複数の音声入力端子(以下、入力端子という)を備えている。それぞれの入力端子は、L、R端子対である。入力セレクタ15は、音声信号の入力先を、いずれかの入力端子に切り替える。例えば複数の入力端子は、それぞれ音声再生装置41、音声再生装置42、およびAVセレクタに1つずつ接続されているとする。この場合、入力セレクタ15は、音声入力先を、音声再生装置41、音声再生装置42、またはAVセレクタ50のいずれかに切り替える操作部材である。ボリュームつまみ13は、ユーザが回転操作により音量を設定するための操作部材である。表示部17は、種々の情報(例えば、音量)を表示する装置であり、液晶デバイス、または有機EL(Electro Luminescence)デバイスなどで構成される。
図2は、オーディオアンプ10の内部構成を示すブロック図である。なお、図2では、主として、オーディオアンプ10の音量調整機能に関する構成を示している。
オーディオアンプ10は、マイクロコントローラ20と、メモリ22と、音量制御回路24と、DSP(digital signal processor)25と、入力切替回路28と、モータ26とを備える。
マイクロコントローラ20は、制御部の一例である。マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10の動作に関する種々の制御を行う。マイクロコントローラ20は、入力セレクタ15及びボリュームつまみ13から、ユーザ操作に応じた信号を入力する。マイクロコントローラ20は内部にAD(アナログ・デジタル)変換器21を含む。
メモリ22は、ボリュームつまみ13による音量設定情報を記憶する不揮発性のメモリである。メモリは、例えば、フラッシュメモリである。音量制御回路24は、ボリューム設定に関する信号を出力する。
DSP25は、信号処理回路の一例である。DSP25は、入力した音声信号に対して、信号増幅、イコライジング、および左右バランスの調整等の所定の音声処理を行う回路である。DSP25は、AD変換器と、信号処理回路と、DA(デジタル・アナログ)変換器とを含む。
入力切替回路28は、入力端子31、32、33のいずれかを選択してDSP25に接続する。入力端子31、32、33は、それぞれLR端子対である。DSP25の出力は、出力端子34、35に接続される。モータ26は、制御部の制御にしたがい、ボリュームつまみ13を回転させる。
オーディオアンプ10は、音声信号を音源から入力するための入力端子31〜33と、音声信号を外部機器へ出力するための出力端子34、35とを備えている。
入力端子31は、オーディオアンプ10をプリアンプとして動作させるときに、オーディオアンプ10内で処理する音声信号を入力するための端子である。入力端子32は、オーディオアンプ10をプリメインアンプとして動作させるときに、オーディオアンプ10内で処理する音声信号を入力するための端子である。入力端子33は、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させるときに、オーディオアンプ10内で処理する音声信号を入力するための端子である。本実施の形態では、入力端子31に音声再生装置41が接続され、入力端子32に音声再生装置42が接続され、入力端子33にAVセレクタ50の出力が接続されているとする。
前述のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、プリアンプ、メインアンプおよびプリメインアンプとして機能することができる。いずれのアンプとして機能するかは、入力セレクタ15による選択に応じて切り替えられる。すなわち、入力セレクタ15により、入力端子31が選択されている場合、オーディオアンプ10はプリアンプとして動作する。入力セレクタ15により、入力端子32が選択されている場合、オーディオアンプ10はプリメインアンプとして動作する。入力セレクタ15により、入力端子33が選択されている場合、オーディオアンプ10はメインアンプとして動作する。
出力端子34は、スピーカ61L、61Rへ音声信号を出力するための端子である。出力端子35は、オーディオアンプ10がプリアンプとして動作する場合に、次段のメインアンプへ音声信号を出力するための端子である。
なお、実際には、入力端子として、LチャンネルおよびRチャンネルの音声信号を入力するために一対の端子が必要であるが、図2では、説明の便宜上、入力端子31〜33のそれぞれを1つの端子で示している。同様に、出力端子として、LチャンネルおよびRチャンネルの音声信号を出力するために一対の端子が必要であるが、図2では、説明の便宜上、出力端子34、35のそれぞれを1つの端子で示している。
[1−2.動作]
以上のように構成されるオーディオシステム100について、その動作を以下説明する。
(1)プリアンプとして動作する場合(プリアンプ機能)
オーディオシステム100において、オーディオアンプ10をプリアンプとして機能させる場合の動作を説明する。
この場合、オーディオアンプ10は、入力端子31を介して音声再生装置41から入力した音声信号に対して信号増幅処理を行う。さらに、オーディオアンプ10は、信号増幅に加えて、ユーザ操作に応じて、高音域、低音域、中音域のコントロール、および左右バランスの調整等を行うこともできる。オーディオアンプ10は、増幅した音声信号を、出力端子35を介して、メインアンプとして動作する外部のアンプ装置(図示せず)へ出力する。この外部のアンプ装置は、オーディオアンプ10から入力した音声信号を電力増幅し、スピーカを駆動する。このとき、最終的にスピーカから出力される音声の音量は、オーディオアンプ10で調整される。すなわち、オーディオアンプ10は、ボリュームつまみ13の操作に応じて、出力する音声信号の大きさを変化させる。
(2)プリメインアンプとして動作する場合(プリメインアンプ機能)
オーディオシステム100において、オーディオアンプ10をプリメインアンプとして機能させる場合の動作を説明する。
この場合、オーディオアンプ10は、入力端子32を介して音声再生装置42から入力した音声信号に対して、信号増幅処理及び電力増幅処理を行う。また、オーディオアンプ10は、信号増幅に加えて、ユーザ操作に応じて、高音域、低音域、中音域のコントロール(つまり、イコライジング処理)、および左右バランスの調整等を行う。オーディオアンプ10は、増幅した音声信号をスピーカ61L、61Rへ出力する。スピーカ61L、61Rから出力される音声の音量は、オーディオアンプ10で調整される。オーディオアンプ10は、ボリュームつまみ13の操作に応じて、出力する音声信号の大きさを変化させる。
(3)メインアンプとして動作する場合(メインアンプ機能)
オーディオシステム100において、オーディオアンプ10をメインアンプとして機能させる場合の動作を説明する。
例えば、図1に示すオーディオシステム100において、AVセレクタ50をプリアンプとして動作させ、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させることができる。この場合、オーディオアンプ10は、AVセレクタ50から入力端子33を介して音声信号を入力し、入力した音声信号の電力を、スピーカ61L、61Rを駆動するための大きさに増幅し、スピーカ61L、61Rに出力する。これにより、スピーカ61L、61Rから音声が出力される。
メインアンプとして動作する場合、オーディオアンプ10は、音量調整機能がオフとなるように構成されている。つまり、メインアンプとして動作する場合、オーディオアンプ10は、固定の増幅率(例えば、増幅率の最大値)で音声信号に対する信号増幅を行う。
よって、メインアンプとして動作する場合、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13を操作しても、最終的にスピーカ61L、61Rから出力される音声の音量は変化しない。このとき、音量は、プリアンプとして機能する装置、すなわちAVセレクタ50のボリュームつまみ53で調整される。
[1−2−1.アンプ機能切り替え時の音量制御]
以上のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、プリアンプ、プリメインアンプ、メインアンプそれぞれの機能に切り替えて動作することができる。本願発明者らは、このようにアンプ装置のアンプ機能を切り替えた場合、スピーカから出力される音声の音量について、以下のような課題が生じ得ることを発見した。
オーディオアンプ10をプリアンプまたはプリメインアンプとして動作させている場合、スピーカから出力される音声の音量は、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13の操作に応じて調整される。よって、オーディオアンプ10を、プリアンプまたはプリメインアンプとして動作させている状態では、スピーカから所望の音量が出力されるように、ボリュームつまみ13が、ユーザによりある程度回転した位置に設定されている。
この状態で、オーディオアンプ10がメインアンプとして動作する状態に切り替えられた場合、最終的にスピーカから出力される音量は、オーディオアンプ10ではなく、オーディオアンプ10の前段のプリアンプとして機能する装置(例えば、AVセレクタ50)において調整される。すなわち、オーディオアンプ10は、音量のコントロールを行わない。よって、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13がユーザに操作された場合でも、スピーカから出力される音声の音量は変化しない。
その後、オーディオアンプ10が、メインアンプとして動作する状態から、プリアンプまたはプリメインアンプとして動作する状態に切り替えられた場合、スピーカからは、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13の位置に応じた音量の音声が出力される。
よって、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させている間に、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13が、音量が増大する方向に移動していた場合、オーディオアンプ10をプリアンプまたはプリメインアンプとして動作させる状態に切り替えると、意図しない大音量で音声がスピーカから出力されてしまう。
このような意図しない大音量を抑制するため、本実施の形態のオーディオアンプ10は、図3のフローチャートに示すような制御を行う。図3は、オーディオアンプ10におけるアンプ機能の切り替え時の動作を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、オーディオアンプ10のマイクロコントローラ20により実行され、所定の周期で定期的に実行される。
まず、オーディオアンプ10のマイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10がプリアンプまたはプリメインアンプとして動作中か否かを判断する(S10)。マイクロコントローラ20は、この判断を、入力セレクタ15からの設定信号に基づき行う。
オーディオアンプ10がメインアンプとして動作中の場合(S10でNo)、ステップS14に進む(詳細は後述)。
オーディオアンプ10がプリアンプまたはプリメインアンプとして動作している場合(S10でYes)、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の設定に応じた音量で音声が出力されるように、オーディオアンプ10を制御する(S11)。マイクロコントローラ20は、その時点のボリュームつまみ13の位置に応じた音量の設定値(以下、音量設定値という)を示す情報を、メモリ22に記憶する(S12)。例えば、ステップS12でメモリ22に記憶された音量設定値は、本開示の第1音量に対応付けられた設定値である。
オーディオアンプ10の機能がメインアンプ機能に切り替えられるまで(S13でNo)、上記の処理が繰り返される(S11、S12)。
オーディオアンプ10の機能がメインアンプ機能に切り替えられると(S13でYes)、マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させる(S14)。このとき、マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10での音量調整機能をオフにする。すなわち、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置が変更されたとしても、音量を変化させないようにする。すなわち、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置によらず、一定の増幅率で音声信号を増幅する。この場合は、オーディオアンプ10の前段にあるプリアンプとして動作する機器において、音量の調整が行われる。
その後、マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10の機能をプリアンプまたはプリメインアンプ機能に切り替えられたか否かを判断する(S15)。オーディオアンプ10の機能がプリアンプまたはプリメインアンプ機能に切り替えられるまでは(S15でNo)、オーディオアンプ10はメインアンプとして動作する(S14)。
オーディオアンプ10の機能がプリアンプまたはプリメインアンプ機能に切り替えられたときは(S15でYes)、マイクロコントローラ20は、現時点でのボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値を、メインアンプへの切り替え直前にメモリ22に記憶していた音量設定値と比較する(S16)。
現時点でのボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値がメモリ22に記憶していた音量設定値よりも大きい場合(S16でYes)、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプへの切り替え直前にメモリ22に記憶していた音量設定値に対応した位置に制御する(S17)。具体的には、マイクロコントローラ20は、メモリ22から、メインアンプへの切り替え直前の音量設定値を読み出し、その読み出した音量設定値に対応する位置に応じてモータ26を駆動する。これにより、ボリュームつまみ13を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置に移動(本実施の形態の場合は、回転)させる。なお、ステップS16でYesと判断される時点での、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値は、本開示の第2音量に対応する設定値である。また、ステップS16でYesと判断される時点での、メモリ22に記憶された音量設定値は、本開示の第1音量に対応する設定値である。また、ステップS17において、制御された位置に対応する音量は、本開示の第3音量に相当する。また、本実施の形態において、第3音量は第1音量と同じに設定される。
一方、現時点でのボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値が、メモリ22に記憶していた音量設定値よりも大きくない場合(S16でNo)、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13を移動させない。
なお、ステップS16でNoと判断される時点での、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値は、本開示の第4音量に対応する設定値である。また、ステップS16でNoと判断される時点での、メモリ22に記憶された音量設定値は、本開示の第1音量の設定値に対応する設定値である。
その後、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量(つまり、第3音量、または第4音量)で音声が出力されるように制御する(S18)。具体的には、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値を、音量制御回路24に出力する。音量制御回路24は、音量設定値に基づき、DSP25へ音量設定を示す指示を出力する。DSP25は、音量設定値に基づく音量になるように、音声信号を増幅し、出力端子34を介してスピーカ61L、61Rに出力する。
以上のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、そのアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに、前回プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能を実行していた時よりも音量が大きくなる場合は、ボリュームつまみ13の位置を、音量が小さくなる位置に変化させる。例えば、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置(すなわち、ユーザが、前回プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能を使用していたときに、意図して設定した位置)に戻す。これにより、オーディオアンプ10が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに、意図しない大音量での音声出力を抑制できる。
[1−2−2.音量設定値の決定]
ボリュームつまみ13の位置は、アナログ信号(例えば、アナログ電圧)として与えられる。マイクロコントローラ20には、このアナログ信号が入力される。マイクロコントローラ20は、AD変換器21により、入力されたアナログ信号をデジタル値(以下「A/D値」という)に変換する。そして、マイクロコントローラ20は、A/D値に基づき、音量設定値を決定する。
図4は、A/D値から音量設定値を決定するための判定テーブルの例を示した図である。判定テーブルは、A/D値がとり得る値の全範囲を、複数の範囲に分割し、分割された各範囲をステップ(STEP)として管理する。図4では、A/D値がとり得る値の全範囲を102個の範囲(STEP)に分割し、そのうちの101個の範囲にステップ0〜100を割り当てている。そして、ステップ0〜100のそれぞれに対して、音量設定値(Vol)0〜100が割り当てられる。
マイクロコントローラ20は、図4のテーブルを参照し、求めたA/D値に基づき、そのA/D値に対応するステップを特定する。例えば、A/D値が「105」の場合、その値はステップ9の範囲に属するため、マイクロコントローラ20は、A/D値「105」に対応するステップとして、ステップ9を特定する。また、A/D値が「475」の場合は、ステップ46が特定される。
マイクロコントローラ20は、図4のテーブルを参照し、特定したステップに基づき音量設定値を決定する。例えば、特定したステップがステップ9である場合、図4のテーブルを参照して、音量設定値(Vol)が「9」に決定される。また、特定したステップがステップ46である場合、図4のテーブルを参照して、音量設定値(Vol)が「46」に決定される。
以上のようにして、ボリュームつまみ13の位置に応じて音量設定値が決定される。ここで、ボリュームつまみ13のわずかな変動、またはノイズ等によりA/D値が変動することがある。したがって、A/D値がステップの境界近傍にある場合、A/D値が変動すると、音量設定値が頻繁に切り替わる場合がある。このような課題を解決するため、本実施の形態では、音量設定の変更方向に応じて、各ステップに割り当てられるA/D値の範囲の境界(上限、下限)を変化させている。このような、A/D値の範囲の境界を変化させる処理を、以下、ヒステリシス処理という。また、各ステップに割り当てられるA/D値の範囲を、各ステップの判定範囲という。図5を参照し、このヒステリシス処理を説明する。
図5の(A)では、一例として、ステップ4に割り当てられるA/D値の範囲(つまり、ステップの判定範囲)の境界を考える。ステップ4の判定範囲は、基本的には、つまり初期設定では、A/D値が50〜59となる(図4参照)。マイクロコントローラ20は、音量設定の変化の方向に応じて、ステップに割り当てられるA/D値の範囲の境界を変更する。具体的には、マイクロコントローラ20は、検出したA/D値が、それに対応するステップに割り当てられるA/D値の範囲の中心値(図5では、54.5)よりも大きい場合、図5の(B)に示すように、判定範囲の上限を+3だけシフトする。また、検出したA/D値が前述の中心値よりも小さい場合、図5の(C)に示すように、判定範囲の下限を−3だけシフトする。このように、マイクロコントローラ20は、検出したA/D値に対応するステップの判定範囲の境界(上限及び下限の少なくとも一方)をシフトさせる。これにより、検出したA/D値(すなわち音量設定値)が高い方から低い方へ変化している場合は、対応するステップの判定範囲の下限が拡張される。一方で、検出したA/D値(すなわち音量設定値)が低い方から高い方へ変化している場合、対応するステップの判定範囲の上限が拡張される。
以上のように、本実施の形態では、ステップの判定範囲の境界をシフトさせるヒステリシス処理が行われる。
図6は、音量を下げるようにボリュームつまみ13を操作したときのヒステリシス処理を説明した図である。図6では、ユーザにより、ボリュームつまみ13が、A/D値「43」に対応する位置からA/D値「26」に対応する位置へ操作された場合の例を示している。
最初、図6の(A)に示すように、A/D値が「43」のときは、図4のテーブルから、検出したA/D値「43」に対応するステップとして、ステップ3が特定される。ステップ3の判定範囲は、「40」〜「49」であり、この判定範囲の中心値は「45」である。このとき、検出したA/D値「43」は、対応するステップ3の中心値「45」よりも小さい。したがって、ステップ3の判定範囲の下限は、「40」から−3だけ拡張されて「37」となる。このため、ステップ3の判定範囲は「37〜49」となる。
この状態から音量を下げるようにボリュームつまみ13が操作されると、検出されたA/D値が「43」から減少していき、やがて下限「37」を超えると、図6の(B)に示すように、検出されたA/D値に対応するステップがステップ2に切り替わる。このとき、検出されたA/D値が「36」であるとする。ステップ2の判定範囲は、「30」〜「39」であり、この範囲の中心値は「35」である。したがって、図6の(B)に示す時点で検出されたA/D値「36」は、ステップ2の中心値「35」よりも大きい。これにより、ステップ2の判定範囲の上限「39」が+3だけ拡張され、ステップ2の判定範囲は「30〜42」となる。つまり、ステップ2の判定範囲の上限が拡張されているため、検出されるA/D値が増加する方向に若干変動しても、ステップ2の判定範囲内に含まれ、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
この状態からさらに音量を下げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値が中心値「35」未満になると、図6の(C)に示すように、ステップ2の判定範囲の上限が基準値(39)に戻されるとともに、下限が−3だけ拡張され、ステップ2の判定範囲は「27〜39」となる。
この状態からさらに音量を下げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値が「26」になると、ステップ2の下限を超えるため、図6の(D)に示すように、A/D値「26」に対応するステップが、ステップ2からステップ1に切り替えられる。このとき、ステップ1の判定範囲の上限が+3だけ拡張されているため、A/D値が若干増加する方向に変動しても、ステップ1の判定範囲内に含まれ、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
図7は、音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作されたときのヒステリシス処理を説明した図である。図7は、ユーザにより、ボリュームつまみ13が、A/D値「36」に対応する位置からA/D値「53」に対応する位置へ操作され場合の例を示している。
最初、図7の(A)に示すように、A/D値が「36」のときは、図4のテーブルから、A/D値に対応するステップとして、ステップ2が特定される。このとき、A/D値「36」はステップ2の中心値「35」よりも大きいため、ステップ2の判定範囲の上限「39」は+3だけ拡張されて「42」となる。このため、ステップ2の判定範囲は「30〜42」となる。
この状態から音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作され、検出されたA/D値が「36」から増加していき、やがて上限「42」を超えると、図7の(B)に示すように、A/D値に対応するステップがステップ3に切り替わる。このとき、ステップ3の判定範囲の下限「40」が−3だけ拡張され、ステップ3の判定範囲は「37〜49」となる。このようにステップ3の判定範囲の下限が拡張されるため、A/D値が減少する方向に若干変動しても、ステップ3の判定範囲内に含まれ、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
この状態からさらに音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値がステップ3の中心値「45」を超えると、図7の(C)に示すように、ステップ3の判定範囲の下限が基準値「40」に戻されるとともに、上限が+3だけ拡張され、ステップ3の判定範囲は「40〜52」となる。
この状態からさらに音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値が「53」になると、ステップ3の上限値「52」を超えるため、図7の(D)に示すように、A/D値「53」に対応するステップが、ステップ3からステップ4に切り替えられる。このとき、ステップ4の判定範囲の下限が−3だけ拡張されているため、A/D値が若干減少する方向に変動しても、ステップ4の判定範囲内に含まれる。したがって、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
以上のように、ヒステリシス処理を施すことで、検出されたA/D値が隣接するステップの境界近傍にある場合に、音量設定値が頻繁に切り替わることを低減できる。
以上のような、判定範囲の境界をシフトさせるヒステリシス処理は、所定のタイミングで行われる。
所定のタイミングは、例えば、検出したA/D値が、新たな判定範囲(すなわち、新たなステップ)に入ったタイミングである。
また、所定のタイミングは、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されたタイミングを含む。検出したA/D値の変動が所定値以下に収まったときに、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断される。例えば、今回検出したA/D値と、前回検出したA/D値との差分が所定値以下になったときに、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断される。または、今回検出したA/D値と、所定数の過去のA/D値の平均値との差分が所定値以下になったときに、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されてもよい。このように、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されたときにヒステリシス処理を行うことで、判定範囲の境界でボリュームつまみ13の位置が停止したときに、ノイズの影響による音量設定値の変動を抑制できる。例えば、ユーザによるボリューム操作が終了しているにもかかわらず、慣性によりボリュームつまみ13が移動した場合でも、ユーザの意思でボリュームつまみ13が停止した位置で音量設定値が求められるので、音量設定値の変動を抑制できる。特に、音量設定値が表示部17に表示される場合、ユーザがボリュームつまみ13の操作を停止しているにもかかわらず、表示部17上での音量設定値の表示が変動してしまうと、ユーザに混乱を招く。上述のようにボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されたときにヒステリシス処理を行うことで、このような課題を低減できる。
[1−3.効果等]
以上のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、音量調整が可能なプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能(第1のアンプ機能の一例)と、音量調整が不可能なメインアンプ機能(第2のアンプ機能の一例)とを切り替えるように構成されたアンプ装置である。オーディオアンプ10は、音声信号を入力する入力端子31〜33と、音量を設定するためにユーザにより操作されるボリュームつまみ13(操作部材の一例)と、ボリュームつまみ13で設定された音量の設定値を記憶するメモリ22(記憶部の一例)と、ボリュームつまみ13で設定された音量が得られるように入力端子を介して入力した音声信号を増幅するDSP26(信号処理回路の一例)と、DSP25を制御するマイクロコントローラ20と、を備える。
マイクロコントローラ20は、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能の実行中において、ボリュームつまみ13で設定された音量が得られるようにDSP25の増幅動作を制御する。また、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13で設定された音量の設定値をメモリ22に記憶する。
マイクロコントローラ20は、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能からメインアンプ機能へ切り替えられ、さらにその後、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能に切り替えられたときに、所定の条件にしたがい、ボリュームつまみ13の状態を、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能からメインアンプ機能への切り替え直前にメモリ22に記憶された音量の設定値に対応する状態に戻す。さらに、マイクロコントローラ20は、切り替え直前にメモリ22に記憶された音量の設定値に対応した音量が得られるように、DSP25の増幅動作を制御する。例えば、マイクロコントローラ20は、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられた時に、ボリュームつまみ13の位置に対応する音量設定値(つまり、第2音量の設定値)が、メモリ22に記憶された音量設定値(つまり、第1音量の設定値)よりも大きい場合は、メモリ22に記憶された音量設定値にしたがい音量を制御する。一方、ボリュームつまみ13の位置に対応する音量設定値(つまり、第4音量の設定値)が、メモリ22に記憶された音量設定値よりも小さい場合(または、記憶された音量設定値以下の場合)、マイクロコントローラ20はボリュームつまみ13の位置に対応する音量(つまり、第4音量)が得られるように音量を制御する。
以上のように、ボリュームつまみ13の状態を制御することで、メインアンプ機能から、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに、ボリュームつまみ13の状態が、メインアンプ機能への切り替え前の状態に設定される。これにより、メインアンプ機能実行中にボリュームつまみ13が操作されていたとしても、意図しない大音量の音声の出力を抑制できる。
また、オーディオアンプ10は、ボリュームつまみ13での設定をデジタル値(A/D値)に変換するAD変換器21をさらに備える。マイクロコントローラ20は、デジタル値を所定の判定範囲(つまりステップ)に対応させ、ステップに応じて音量の設定値に変換する(図4参照)。マイクロコントローラ20は、判定範囲の上限または下限を、検出したデジタル値の変化方向に応じてシフトさせる(つまり、判定範囲をヒステリシス処理する)。マイクロコントローラ20は、ユーザによる音量操作が停止したときに、判定範囲の上限または下限をシフトさせる。このように、音量操作が停止したときにヒステリシス処理を行うことで、判定範囲の境界でボリュームつまみ13の位置が停止したときに、ノイズの影響による変動を抑制できる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
実施の形態1では、オーディオアンプ10は、第1のアンプ機能として、プリアンプ機能及びプリメインアンプ機能の双方を有するとした。しかし、オーディオアンプ10は、第1のアンプ機能として、プリアンプ機能及びプリメインアンプ機能のいずれか一方のみを有してもよい。
実施の形態1では、オーディオアンプ10のアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられ、かつ、ボリュームつまみ13による音量設定値がメモリ22に記憶された音量設定値よりも大きいときに、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置に戻した。しかし、ボリュームつまみ13の位置を、必ずしもメインアンプ機能への切り替え直前の位置に戻さなくてもよい。例えば、ボリュームつまみ13の位置を、現時点の位置で得られる音量(つまり、本開示の第2音量)よりも小さな音量(つまり、本開示の第3音量)が得られる所定の位置まで戻すようにしてもよい。第3音量は、記憶された音量(つまり、本開示の第1音量)と同じでなくてもよく、第1音量より大きくても小さくてもよい。
実施の形態1では、オーディオアンプ10のアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられ、かつ、ボリュームつまみ13による音量設定値とメモリ22に記憶された音量設定値を比較し、その比較結果に基づきボリュームつまみ13の位置を制御した。これに対して、オーディオアンプ10のアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに無条件に、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置に戻してもよい。
また、実施の形態1では、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えた時に、ボリュームつまみ13の位置に対応する音量設定値(つまり、第4音量の設定値)が、メモリ22に記憶された音量設定値よりも小さい場合(または、記憶された音量設定値以下の場合)、マイクロコントローラ20はボリュームつまみ13の位置を変化させず、当該位置に対応する音量(つまり、第4音量)が得られるように音量を制御している。この構成により、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替え直後、ユーザの意図に沿った、小さな音量を出力できる。例えば、ユーザは、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替える直前に、大音量を警戒して、意図的に音量を小さくするように、つまみを操作する場合がある。本実施の形態では、このユーザの意図に沿うことができる。しかし、本開示は、この構成に限定されず、例えば、オーディオアンプ100は、第4音量が、記憶された音量(つまり、第1音量)より小さい場合であっても、ボリュームつまみ13の位置を変化させ、所定の音量を出力するように構成されてもよい。所定の音量とは、例えば第1音量と同じでもよく、第1音量よりも大きくても小さくてもよい。
また、オーディオアンプ10において、ユーザにより入力セレクタ15が操作され、入力元が、音声再生装置41、音声再生装置42、AVセレクタ50のいずれかに切り替えられるときに、それぞれの入力元に対する音量設定値をメモリ22に記憶しておいてもよい。その後、入力セレクタ15が切り替えられるたびに、マイクロコントローラ20は、選択された入力元に対する音量設定値をメモリ22から読み出し、その読み出した音量設定値に対応する位置に、ボリュームつまみ13の位置を制御する(すなわち、音量設定値を、選択された入力元に応じた値に戻す)ようにしてもよい。
実施の形態1では、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替え時に、ユーザに戻したい音量を確認せずに、メモリ22に記憶した設定に基づきボリュームつまみ13の位置を制御した。これに対して、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能への切り替え時に、ユーザに、戻す音量設定の確認を行ってもよい。具体的には、オーディオアンプ10は、アンプ機能の切り替え時に、戻ろうとする音量の設定値を表示部に表示するとともに、ユーザが、その状態でボリュームつまみ13を操作することで、戻したい音量を設定できるようにしてもよい。
実施の形態1では、音量設定のための操作部材として、回転操作を行うボリュームつまみの例を示した。操作部材はこれに限定されず、例えば、スライド操作により音量設定を行うもの、またはタッチパネル方式で音量設定を行うものでもよい。
また、実施の形態では、操作部材の状態とは、操作部材の回転角を指す。しかし、操作部材がスライド移動する場合は、操作部材の状態とは、操作部材の位置でもよい。また、操作部材がタッチパネルの場合は、操作部材の状態とは、操作部材の表示でもよい。
実施の形態1において、音量設定値(ステップ)の判定のためのA/D値の範囲に対するヒステリシス処理の方法は、上記の例に限定されるものではない。例えば、A/D値の範囲の境界のシフト量は3に限定されない。また、実施の形態1では、A/D値の範囲の中心値を基準として、範囲の上限及び下限のいずれをシフトするかを判定したが、これに限定されるものではない。例えば、検出されたA/D値と、A/D値の範囲の上限または下限との差が所定値以内になった方の境界をシフトするようにしてもよい。
アンプ装置(オーディオアンプ10)における入力端子及び出力端子の数は上述した数に限定されるものではない。
実施の形態1において、制御部の一例としてマイクロコントローラを示したが、制御部はこれに限定されない。また、信号処理回路の一例としてDSPを示したが、信号処理回路はこれに限定されない。すなわち、制御部および信号処理回路は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、任意の半導体デバイスで実現することができる。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、音声信号を増幅するアンプ装置であって、音量調整が可能なアンプ機能と、音量調整が不可能なアンプ機能とを切り替えることのできるアンプ装置に有用である。
10 オーディオアンプ(アンプ装置)
13 ボリュームつまみ(操作部材)
15 入力セレクタ
20 マイクロコントローラ(制御部)
21 AD変換器
22 メモリ(記憶部)
24 音量制御回路
25 DSP(信号処理回路)
26 モータ(駆動部)
28 入力切替回路
31〜33 入力端子
34,35 出力端子
50 AVセレクタ
41〜44 音声再生装置
61R,61L,63SL,63SR,63SB,63SW スピーカ
100 オーディオシステム
本開示は、音量調整が可能なアンプ機能と、音量調整が不可能なアンプ機能とを切り替えるように構成された、アンプ装置に関する。
特許文献1は、複数の外部入力端子と、入力切替手段と、音量設定手段と、音量記憶手段と、を備えたオーディオ装置を開示する。入力切替手段は、複数の外部入力端子から入力される音声信号を、択一的に選択してアンプ部に入力する。音量設定手段は、外部からの操作により、音量を増減する。音量記憶手段は、外部入力端子から入力される音声信号ごとに音量を記憶する。このオーディオ装置は、入力切替手段によりアンプ部に入力される音声信号が切り替えられると、その音声信号について記憶されている音量でオーディオスピーカを鳴動するよう構成される。これにより、外部入力端子ごとに音量を設定することができる。よって、例えば各外部入力端子に入力される音声信号の音量レベルにバラツキがある場合に、外部入力端子を切り替えても、同じ音量で音声信号を再生することを可能にする。また、ユーザは、音声信号ごとに個別の音量で再生したい場合に、外部入力端子を切り替えるごとに音量を設定し直す必要がない。
音量調整が可能な第1のアンプ機能と、音量調整が不可能な第2のアンプ機能とを切り替えるように構成されたアンプ装置において、アンプ機能を切り替えたときに、意図しない音量で音声が出力される場合がある。
本開示は、アンプ機能を切り替えるように構成されたアンプ装置であって、アンプ機能の切り替え時において、意図しない音量での音声出力を抑制するアンプ装置を提供する。
本開示に係るアンプ装置は、音量調整が可能な第1のアンプ機能と、音量調整が不可能な第2のアンプ機能とを切り替えるように構成されたアンプ装置である。前記アンプ装置は、音量の設定を受付け、前記音量に応じて状態が変化する操作部材と、前記操作部材で設定された前記音量が得られるように、入力された音声信号を増幅する信号処理回路と、前記信号処理回路を制御する制御部と、を備える。
前記制御部は、前記第1のアンプ機能の実行中において、前記操作部材で設定された前記音量が得られるように前記信号処理回路の増幅動作を制御する。また前記制御部は、前記第1のアンプ機能から前記第2のアンプ機能へ切り替えられ、さらにその後、前記第1のアンプ機能に切り替えられた時に、前記操作部材の前記状態が、前記第1のアンプ機能から前記第2のアンプ機能へ切り替えられる直前に出力された第1音量よりも大きな第2音量に対応する前記状態である場合は、前記操作部材の前記状態を、前記第2音量よりも小さな第3音量に対応する前記状態に変化させ、前記信号処理回路の前記増幅動作を制御して、前記第3音量を出力させるように構成されている。
図1は、本開示のオーディオシステムの全体構成図である。
図2は、オーディオアンプのブロック図である。
図3は、アンプ機能の切り替え時のオーディオアンプの動作を示すフローチャートである。
図4は、ボリューム位置に応じて音量設定値を決定する際に参照されるテーブルの例を示した図である。
図5は、A/D値の範囲に対するヒステリシスを説明した図である。
図6は、音量を下げる操作を行ったときのA/D値の範囲に対するヒステリシスを説明した図である。
図7は、音量を上げる操作を行ったときのA/D値の範囲に対するヒステリシスを説明した図である。
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
[1−1.構成]
図1は、本開示の実施の形態にかかるオーディオシステムの全体構成図を示す。オーディオシステム100は、オーディオアンプ10と、オーディオアンプ10に接続されたスピーカ61L、61Rと、AV(Audio Visual)セレクタ50と、AVセレクタ50に接続されたスピーカ63SL、63SR、63SB、63SWと、を含む。さらに、オーディオシステム100は、オーディオアンプ10に接続された音声再生装置41、42と、AVセレクタ50に接続された音声再生装置43、44とを含む。
AVセレクタ50は、音源としての複数の音声再生装置(例えば音声再生装置43、44)から1つを選択し、その選択した音源からの音声信号を外部の機器(例えば、オーディオアンプ10)へ出力する装置である。AVセレクタ50は、入力された音声信号を増幅し、増幅した音声信号を外部機器へ出力する。また、AVセレクタ50は、入力された音声信号に基づく音声信号を、スピーカ63SL、63SR、63SB、63SWへ出力する機能も有する。
音声再生装置41〜44は、音源の一例である。音声再生装置41〜44は、光ディスク、ハードディスク、及びメモリカードのような記録媒体から音声信号を再生し、出力する装置である。または、音声再生装置41〜44は、ネットワークを介して音声データを取得し、音声信号として出力する装置であってもよい。例えば、音声再生装置41〜44は、例えば、CD(Compact Disc)プレーヤ、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)プレーヤ、レコードプレーヤ、ネットワークオーディオプレーヤ、チューナ、またはスマートフォンなどである。
オーディオアンプ10は、音声信号を増幅し、増幅した音声信号に応じた音声をスピーカ61L、61Rから出力する装置である。オーディオアンプ10は、プリアンプ、メインアンプ(つまり、パワーアンプ)およびプリメインアンプとして機能することができる。プリアンプ機能及びプリメインアンプ機能は、音量調整が可能な第1のアンプ機能の一例である。メインアンプ機能は、音量調整が不可能な第2のアンプ機能の一例である。
オーディオアンプ10は、電源スイッチ11と、入力セレクタ15と、ボリュームつまみ13と、表示部17とを含む。電源スイッチ11は、オーディオアンプ10の電源オン/電源オフを切り替えるスイッチである。
入力セレクタ15は、スピーカ61L、61Rから出力する音声の音源を切り替えるスイッチである。オーディオアンプ10は複数の音声入力端子(以下、入力端子という)を備えている。それぞれの入力端子は、L、R端子対である。入力セレクタ15は、音声信号の入力先を、いずれかの入力端子に切り替える。例えば複数の入力端子は、それぞれ音声再生装置41、音声再生装置42、およびAVセレクタに1つずつ接続されているとする。この場合、入力セレクタ15は、音声入力先を、音声再生装置41、音声再生装置42、またはAVセレクタ50のいずれかに切り替える操作部材である。ボリュームつまみ13は、ユーザが回転操作により音量を設定するための操作部材である。表示部17は、種々の情報(例えば、音量)を表示する装置であり、液晶デバイス、または有機EL(Electro Luminescence)デバイスなどで構成される。
図2は、オーディオアンプ10の内部構成を示すブロック図である。なお、図2では、主として、オーディオアンプ10の音量調整機能に関する構成を示している。
オーディオアンプ10は、マイクロコントローラ20と、メモリ22と、音量制御回路24と、DSP(digital signal processor)25と、入力切替回路28と、モータ26とを備える。
マイクロコントローラ20は、制御部の一例である。マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10の動作に関する種々の制御を行う。マイクロコントローラ20は、入力セレクタ15及びボリュームつまみ13から、ユーザ操作に応じた信号を入力する。マイクロコントローラ20は内部にAD(アナログ・デジタル)変換器21を含む。
メモリ22は、ボリュームつまみ13による音量設定情報を記憶する不揮発性のメモリである。メモリは、例えば、フラッシュメモリである。音量制御回路24は、ボリューム設定に関する信号を出力する。
DSP25は、信号処理回路の一例である。DSP25は、入力した音声信号に対して、信号増幅、イコライジング、および左右バランスの調整等の所定の音声処理を行う回路である。DSP25は、AD変換器と、信号処理回路と、DA(デジタル・アナログ)変換器とを含む。
入力切替回路28は、入力端子31、32、33のいずれかを選択してDSP25に接続する。入力端子31、32、33は、それぞれLR端子対である。DSP25の出力は、出力端子34、35に接続される。モータ26は、制御部の制御にしたがい、ボリュームつまみ13を回転させる。
オーディオアンプ10は、音声信号を音源から入力するための入力端子31〜33と、音声信号を外部機器へ出力するための出力端子34、35とを備えている。
入力端子31は、オーディオアンプ10をプリアンプとして動作させるときに、オーディオアンプ10内で処理する音声信号を入力するための端子である。入力端子32は、オーディオアンプ10をプリメインアンプとして動作させるときに、オーディオアンプ10内で処理する音声信号を入力するための端子である。入力端子33は、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させるときに、オーディオアンプ10内で処理する音声信号を入力するための端子である。本実施の形態では、入力端子31に音声再生装置41が接続され、入力端子32に音声再生装置42が接続され、入力端子33にAVセレクタ50の出力が接続されているとする。
前述のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、プリアンプ、メインアンプおよびプリメインアンプとして機能することができる。いずれのアンプとして機能するかは、入力セレクタ15による選択に応じて切り替えられる。すなわち、入力セレクタ15により、入力端子31が選択されている場合、オーディオアンプ10はプリアンプとして動作する。入力セレクタ15により、入力端子32が選択されている場合、オーディオアンプ10はプリメインアンプとして動作する。入力セレクタ15により、入力端子33が選択されている場合、オーディオアンプ10はメインアンプとして動作する。
出力端子34は、スピーカ61L、61Rへ音声信号を出力するための端子である。出力端子35は、オーディオアンプ10がプリアンプとして動作する場合に、次段のメインアンプへ音声信号を出力するための端子である。
なお、実際には、入力端子として、LチャンネルおよびRチャンネルの音声信号を入力するために一対の端子が必要であるが、図2では、説明の便宜上、入力端子31〜33のそれぞれを1つの端子で示している。同様に、出力端子として、LチャンネルおよびRチャンネルの音声信号を出力するために一対の端子が必要であるが、図2では、説明の便宜上、出力端子34、35のそれぞれを1つの端子で示している。
[1−2.動作]
以上のように構成されるオーディオシステム100について、その動作を以下説明する。
(1)プリアンプとして動作する場合(プリアンプ機能)
オーディオシステム100において、オーディオアンプ10をプリアンプとして機能させる場合の動作を説明する。
この場合、オーディオアンプ10は、入力端子31を介して音声再生装置41から入力した音声信号に対して信号増幅処理を行う。さらに、オーディオアンプ10は、信号増幅に加えて、ユーザ操作に応じて、高音域、低音域、中音域のコントロール、および左右バランスの調整等を行うこともできる。オーディオアンプ10は、増幅した音声信号を、出力端子35を介して、メインアンプとして動作する外部のアンプ装置(図示せず)へ出力する。この外部のアンプ装置は、オーディオアンプ10から入力した音声信号を電力増幅し、スピーカを駆動する。このとき、最終的にスピーカから出力される音声の音量は、オーディオアンプ10で調整される。すなわち、オーディオアンプ10は、ボリュームつまみ13の操作に応じて、出力する音声信号の大きさを変化させる。
(2)プリメインアンプとして動作する場合(プリメインアンプ機能)
オーディオシステム100において、オーディオアンプ10をプリメインアンプとして機能させる場合の動作を説明する。
この場合、オーディオアンプ10は、入力端子32を介して音声再生装置42から入力した音声信号に対して、信号増幅処理及び電力増幅処理を行う。また、オーディオアンプ10は、信号増幅に加えて、ユーザ操作に応じて、高音域、低音域、中音域のコントロール(つまり、イコライジング処理)、および左右バランスの調整等を行う。オーディオアンプ10は、増幅した音声信号をスピーカ61L、61Rへ出力する。スピーカ61L、61Rから出力される音声の音量は、オーディオアンプ10で調整される。オーディオアンプ10は、ボリュームつまみ13の操作に応じて、出力する音声信号の大きさを変化させる。
(3)メインアンプとして動作する場合(メインアンプ機能)
オーディオシステム100において、オーディオアンプ10をメインアンプとして機能させる場合の動作を説明する。
例えば、図1に示すオーディオシステム100において、AVセレクタ50をプリアンプとして動作させ、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させることができる。この場合、オーディオアンプ10は、AVセレクタ50から入力端子33を介して音声信号を入力し、入力した音声信号の電力を、スピーカ61L、61Rを駆動するための大きさに増幅し、スピーカ61L、61Rに出力する。これにより、スピーカ61L、61Rから音声が出力される。
メインアンプとして動作する場合、オーディオアンプ10は、音量調整機能がオフとなるように構成されている。つまり、メインアンプとして動作する場合、オーディオアンプ10は、固定の増幅率(例えば、増幅率の最大値)で音声信号に対する信号増幅を行う。
よって、メインアンプとして動作する場合、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13を操作しても、最終的にスピーカ61L、61Rから出力される音声の音量は変化しない。このとき、音量は、プリアンプとして機能する装置、すなわちAVセレクタ50のボリュームつまみ53で調整される。
[1−2−1.アンプ機能切り替え時の音量制御]
以上のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、プリアンプ、プリメインアンプ、メインアンプそれぞれの機能に切り替えて動作することができる。本願発明者らは、このようにアンプ装置のアンプ機能を切り替えた場合、スピーカから出力される音声の音量について、以下のような課題が生じ得ることを発見した。
オーディオアンプ10をプリアンプまたはプリメインアンプとして動作させている場合、スピーカから出力される音声の音量は、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13の操作に応じて調整される。よって、オーディオアンプ10を、プリアンプまたはプリメインアンプとして動作させている状態では、スピーカから所望の音量が出力されるように、ボリュームつまみ13が、ユーザによりある程度回転した位置に設定されている。
この状態で、オーディオアンプ10がメインアンプとして動作する状態に切り替えられた場合、最終的にスピーカから出力される音量は、オーディオアンプ10ではなく、オーディオアンプ10の前段のプリアンプとして機能する装置(例えば、AVセレクタ50)において調整される。すなわち、オーディオアンプ10は、音量のコントロールを行わない。よって、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13がユーザに操作された場合でも、スピーカから出力される音声の音量は変化しない。
その後、オーディオアンプ10が、メインアンプとして動作する状態から、プリアンプまたはプリメインアンプとして動作する状態に切り替えられた場合、スピーカからは、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13の位置に応じた音量の音声が出力される。
よって、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させている間に、オーディオアンプ10のボリュームつまみ13が、音量が増大する方向に移動していた場合、オーディオアンプ10をプリアンプまたはプリメインアンプとして動作させる状態に切り替えると、意図しない大音量で音声がスピーカから出力されてしまう。
このような意図しない大音量を抑制するため、本実施の形態のオーディオアンプ10は、図3のフローチャートに示すような制御を行う。図3は、オーディオアンプ10におけるアンプ機能の切り替え時の動作を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートは、オーディオアンプ10のマイクロコントローラ20により実行され、所定の周期で定期的に実行される。
まず、オーディオアンプ10のマイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10がプリアンプまたはプリメインアンプとして動作中か否かを判断する(S10)。マイクロコントローラ20は、この判断を、入力セレクタ15からの設定信号に基づき行う。
オーディオアンプ10がメインアンプとして動作中の場合(S10でNo)、ステップS14に進む(詳細は後述)。
オーディオアンプ10がプリアンプまたはプリメインアンプとして動作している場合(S10でYes)、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の設定に応じた音量で音声が出力されるように、オーディオアンプ10を制御する(S11)。マイクロコントローラ20は、その時点のボリュームつまみ13の位置に応じた音量の設定値(以下、音量設定値という)を示す情報を、メモリ22に記憶する(S12)。例えば、ステップS12でメモリ22に記憶された音量設定値は、本開示の第1音量に対応付けられた設定値である。
オーディオアンプ10の機能がメインアンプ機能に切り替えられるまで(S13でNo)、上記の処理が繰り返される(S11、S12)。
オーディオアンプ10の機能がメインアンプ機能に切り替えられると(S13でYes)、マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10をメインアンプとして動作させる(S14)。このとき、マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10での音量調整機能をオフにする。すなわち、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置が変更されたとしても、音量を変化させないようにする。すなわち、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置によらず、一定の増幅率で音声信号を増幅する。この場合は、オーディオアンプ10の前段にあるプリアンプとして動作する機器において、音量の調整が行われる。
その後、マイクロコントローラ20は、オーディオアンプ10の機能をプリアンプまたはプリメインアンプ機能に切り替えられたか否かを判断する(S15)。オーディオアンプ10の機能がプリアンプまたはプリメインアンプ機能に切り替えられるまでは(S15でNo)、オーディオアンプ10はメインアンプとして動作する(S14)。
オーディオアンプ10の機能がプリアンプまたはプリメインアンプ機能に切り替えられたときは(S15でYes)、マイクロコントローラ20は、現時点でのボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値を、メインアンプへの切り替え直前にメモリ22に記憶していた音量設定値と比較する(S16)。
現時点でのボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値がメモリ22に記憶していた音量設定値よりも大きい場合(S16でYes)、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプへの切り替え直前にメモリ22に記憶していた音量設定値に対応した位置に制御する(S17)。具体的には、マイクロコントローラ20は、メモリ22から、メインアンプへの切り替え直前の音量設定値を読み出し、その読み出した音量設定値に対応する位置に応じてモータ26を駆動する。これにより、ボリュームつまみ13を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置に移動(本実施の形態の場合は、回転)させる。なお、ステップS16でYesと判断される時点での、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値は、本開示の第2音量に対応する設定値である。また、ステップS16でYesと判断される時点での、メモリ22に記憶された音量設定値は、本開示の第1音量に対応する設定値である。また、ステップS17において、制御された位置に対応する音量は、本開示の第3音量に相当する。また、本実施の形態において、第3音量は第1音量と同じに設定される。
一方、現時点でのボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値が、メモリ22に記憶していた音量設定値よりも大きくない場合(S16でNo)、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13を移動させない。
なお、ステップS16でNoと判断される時点での、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値は、本開示の第4音量に対応する設定値である。また、ステップS16でNoと判断される時点での、メモリ22に記憶された音量設定値は、本開示の第1音量の設定値に対応する設定値である。
その後、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量(つまり、第3音量、または第4音量)で音声が出力されるように制御する(S18)。具体的には、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13の位置に応じた音量設定値を、音量制御回路24に出力する。音量制御回路24は、音量設定値に基づき、DSP25へ音量設定を示す指示を出力する。DSP25は、音量設定値に基づく音量になるように、音声信号を増幅し、出力端子34を介してスピーカ61L、61Rに出力する。
以上のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、そのアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに、前回プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能を実行していた時よりも音量が大きくなる場合は、ボリュームつまみ13の位置を、音量が小さくなる位置に変化させる。例えば、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置(すなわち、ユーザが、前回プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能を使用していたときに、意図して設定した位置)に戻す。これにより、オーディオアンプ10が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに、意図しない大音量での音声出力を抑制できる。
[1−2−2.音量設定値の決定]
ボリュームつまみ13の位置は、アナログ信号(例えば、アナログ電圧)として与えられる。マイクロコントローラ20には、このアナログ信号が入力される。マイクロコントローラ20は、AD変換器21により、入力されたアナログ信号をデジタル値(以下「A/D値」という)に変換する。そして、マイクロコントローラ20は、A/D値に基づき、音量設定値を決定する。
図4は、A/D値から音量設定値を決定するための判定テーブルの例を示した図である。判定テーブルは、A/D値がとり得る値の全範囲を、複数の範囲に分割し、分割された各範囲をステップ(STEP)として管理する。図4では、A/D値がとり得る値の全範囲を102個の範囲(STEP)に分割し、そのうちの101個の範囲にステップ0〜100を割り当てている。そして、ステップ0〜100のそれぞれに対して、音量設定値(Vol)0〜100が割り当てられる。
マイクロコントローラ20は、図4のテーブルを参照し、求めたA/D値に基づき、そのA/D値に対応するステップを特定する。例えば、A/D値が「105」の場合、その値はステップ9の範囲に属するため、マイクロコントローラ20は、A/D値「105」に対応するステップとして、ステップ9を特定する。また、A/D値が「475」の場合は、ステップ46が特定される。
マイクロコントローラ20は、図4のテーブルを参照し、特定したステップに基づき音量設定値を決定する。例えば、特定したステップがステップ9である場合、図4のテーブルを参照して、音量設定値(Vol)が「9」に決定される。また、特定したステップがステップ46である場合、図4のテーブルを参照して、音量設定値(Vol)が「46」に決定される。
以上のようにして、ボリュームつまみ13の位置に応じて音量設定値が決定される。ここで、ボリュームつまみ13のわずかな変動、またはノイズ等によりA/D値が変動することがある。したがって、A/D値がステップの境界近傍にある場合、A/D値が変動すると、音量設定値が頻繁に切り替わる場合がある。このような課題を解決するため、本実施の形態では、音量設定の変更方向に応じて、各ステップに割り当てられるA/D値の範囲の境界(上限、下限)を変化させている。このような、A/D値の範囲の境界を変化させる処理を、以下、ヒステリシス処理という。また、各ステップに割り当てられるA/D値の範囲を、各ステップの判定範囲という。図5を参照し、このヒステリシス処理を説明する。
図5の(A)では、一例として、ステップ4に割り当てられるA/D値の範囲(つまり、ステップの判定範囲)の境界を考える。ステップ4の判定範囲は、基本的には、つまり初期設定では、A/D値が50〜59となる(図4参照)。マイクロコントローラ20は、音量設定の変化の方向に応じて、ステップに割り当てられるA/D値の範囲の境界を変更する。具体的には、マイクロコントローラ20は、検出したA/D値が、それに対応するステップに割り当てられるA/D値の範囲の中心値(図5では、54.5)よりも大きい場合、図5の(B)に示すように、判定範囲の上限を+3だけシフトする。また、検出したA/D値が前述の中心値よりも小さい場合、図5の(C)に示すように、判定範囲の下限を−3だけシフトする。このように、マイクロコントローラ20は、検出したA/D値に対応するステップの判定範囲の境界(上限及び下限の少なくとも一方)をシフトさせる。これにより、検出したA/D値(すなわち音量設定値)が高い方から低い方へ変化している場合は、対応するステップの判定範囲の下限が拡張される。一方で、検出したA/D値(すなわち音量設定値)が低い方から高い方へ変化している場合、対応するステップの判定範囲の上限が拡張される。
以上のように、本実施の形態では、ステップの判定範囲の境界をシフトさせるヒステリシス処理が行われる。
図6は、音量を下げるようにボリュームつまみ13を操作したときのヒステリシス処理を説明した図である。図6では、ユーザにより、ボリュームつまみ13が、A/D値「43」に対応する位置からA/D値「26」に対応する位置へ操作された場合の例を示している。
最初、図6の(A)に示すように、A/D値が「43」のときは、図4のテーブルから、検出したA/D値「43」に対応するステップとして、ステップ3が特定される。ステップ3の判定範囲は、「40」〜「49」であり、この判定範囲の中心値は「45」である。このとき、検出したA/D値「43」は、対応するステップ3の中心値「45」よりも小さい。したがって、ステップ3の判定範囲の下限は、「40」から−3だけ拡張されて「37」となる。このため、ステップ3の判定範囲は「37〜49」となる。
この状態から音量を下げるようにボリュームつまみ13が操作されると、検出されたA/D値が「43」から減少していき、やがて下限「37」を超えると、図6の(B)に示すように、検出されたA/D値に対応するステップがステップ2に切り替わる。このとき、検出されたA/D値が「36」であるとする。ステップ2の判定範囲は、「30」〜「39」であり、この範囲の中心値は「35」である。したがって、図6の(B)に示す時点で検出されたA/D値「36」は、ステップ2の中心値「35」よりも大きい。これにより、ステップ2の判定範囲の上限「39」が+3だけ拡張され、ステップ2の判定範囲は「30〜42」となる。つまり、ステップ2の判定範囲の上限が拡張されているため、検出されるA/D値が増加する方向に若干変動しても、ステップ2の判定範囲内に含まれ、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
この状態からさらに音量を下げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値が中心値「35」未満になると、図6の(C)に示すように、ステップ2の判定範囲の上限が基準値(39)に戻されるとともに、下限が−3だけ拡張され、ステップ2の判定範囲は「27〜39」となる。
この状態からさらに音量を下げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値が「26」になると、ステップ2の下限を超えるため、図6の(D)に示すように、A/D値「26」に対応するステップが、ステップ2からステップ1に切り替えられる。このとき、ステップ1の判定範囲の上限が+3だけ拡張されているため、A/D値が若干増加する方向に変動しても、ステップ1の判定範囲内に含まれ、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
図7は、音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作されたときのヒステリシス処理を説明した図である。図7は、ユーザにより、ボリュームつまみ13が、A/D値「36」に対応する位置からA/D値「53」に対応する位置へ操作され場合の例を示している。
最初、図7の(A)に示すように、A/D値が「36」のときは、図4のテーブルから、A/D値に対応するステップとして、ステップ2が特定される。このとき、A/D値「36」はステップ2の中心値「35」よりも大きいため、ステップ2の判定範囲の上限「39」は+3だけ拡張されて「42」となる。このため、ステップ2の判定範囲は「30〜42」となる。
この状態から音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作され、検出されたA/D値が「36」から増加していき、やがて上限「42」を超えると、図7の(B)に示すように、A/D値に対応するステップがステップ3に切り替わる。このとき、ステップ3の判定範囲の下限「40」が−3だけ拡張され、ステップ3の判定範囲は「37〜49」となる。このようにステップ3の判定範囲の下限が拡張されるため、A/D値が減少する方向に若干変動しても、ステップ3の判定範囲内に含まれ、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
この状態からさらに音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値がステップ3の中心値「45」を超えると、図7の(C)に示すように、ステップ3の判定範囲の下限が基準値「40」に戻されるとともに、上限が+3だけ拡張され、ステップ3の判定範囲は「40〜52」となる。
この状態からさらに音量を上げるようにボリュームつまみ13が操作され、A/D値が「53」になると、ステップ3の上限値「52」を超えるため、図7の(D)に示すように、A/D値「53」に対応するステップが、ステップ3からステップ4に切り替えられる。このとき、ステップ4の判定範囲の下限が−3だけ拡張されているため、A/D値が若干減少する方向に変動しても、ステップ4の判定範囲内に含まれる。したがって、判定されるステップが頻繁に切り替わることを抑制できる。
以上のように、ヒステリシス処理を施すことで、検出されたA/D値が隣接するステップの境界近傍にある場合に、音量設定値が頻繁に切り替わることを低減できる。
以上のような、判定範囲の境界をシフトさせるヒステリシス処理は、所定のタイミングで行われる。
所定のタイミングは、例えば、検出したA/D値が、新たな判定範囲(すなわち、新たなステップ)に入ったタイミングである。
また、所定のタイミングは、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されたタイミングを含む。検出したA/D値の変動が所定値以下に収まったときに、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断される。例えば、今回検出したA/D値と、前回検出したA/D値との差分が所定値以下になったときに、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断される。または、今回検出したA/D値と、所定数の過去のA/D値の平均値との差分が所定値以下になったときに、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されてもよい。このように、ボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されたときにヒステリシス処理を行うことで、判定範囲の境界でボリュームつまみ13の位置が停止したときに、ノイズの影響による音量設定値の変動を抑制できる。例えば、ユーザによるボリューム操作が終了しているにもかかわらず、慣性によりボリュームつまみ13が移動した場合でも、ユーザの意思でボリュームつまみ13が停止した位置で音量設定値が求められるので、音量設定値の変動を抑制できる。特に、音量設定値が表示部17に表示される場合、ユーザがボリュームつまみ13の操作を停止しているにもかかわらず、表示部17上での音量設定値の表示が変動してしまうと、ユーザに混乱を招く。上述のようにボリュームつまみ13の操作が停止したと判断されたときにヒステリシス処理を行うことで、このような課題を低減できる。
[1−3.効果等]
以上のように、本実施の形態のオーディオアンプ10は、音量調整が可能なプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能(第1のアンプ機能の一例)と、音量調整が不可能なメインアンプ機能(第2のアンプ機能の一例)とを切り替えるように構成されたアンプ装置である。オーディオアンプ10は、音声信号を入力する入力端子31〜33と、音量を設定するためにユーザにより操作されるボリュームつまみ13(操作部材の一例)と、ボリュームつまみ13で設定された音量の設定値を記憶するメモリ22(記憶部の一例)と、ボリュームつまみ13で設定された音量が得られるように入力端子を介して入力した音声信号を増幅するDSP25(信号処理回路の一例)と、DSP25を制御するマイクロコントローラ20と、を備える。
マイクロコントローラ20は、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能の実行中において、ボリュームつまみ13で設定された音量が得られるようにDSP25の増幅動作を制御する。また、マイクロコントローラ20は、ボリュームつまみ13で設定された音量の設定値をメモリ22に記憶する。
マイクロコントローラ20は、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能からメインアンプ機能へ切り替えられ、さらにその後、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能に切り替えられたときに、所定の条件にしたがい、ボリュームつまみ13の状態を、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能からメインアンプ機能への切り替え直前にメモリ22に記憶された音量の設定値に対応する状態に戻す。さらに、マイクロコントローラ20は、切り替え直前にメモリ22に記憶された音量の設定値に対応した音量が得られるように、DSP25の増幅動作を制御する。例えば、マイクロコントローラ20は、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられた時に、ボリュームつまみ13の位置に対応する音量設定値(つまり、第2音量の設定値)が、メモリ22に記憶された音量設定値(つまり、第1音量の設定値)よりも大きい場合は、メモリ22に記憶された音量設定値にしたがい音量を制御する。一方、ボリュームつまみ13の位置に対応する音量設定値(つまり、第4音量の設定値)が、メモリ22に記憶された音量設定値よりも小さい場合(または、記憶された音量設定値以下の場合)、マイクロコントローラ20はボリュームつまみ13の位置に対応する音量(つまり、第4音量)が得られるように音量を制御する。
以上のように、ボリュームつまみ13の状態を制御することで、メインアンプ機能から、プリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに、ボリュームつまみ13の状態が、メインアンプ機能への切り替え前の状態に設定される。これにより、メインアンプ機能実行中にボリュームつまみ13が操作されていたとしても、意図しない大音量の音声の出力を抑制できる。
また、オーディオアンプ10は、ボリュームつまみ13での設定をデジタル値(A/D値)に変換するAD変換器21をさらに備える。マイクロコントローラ20は、デジタル値を所定の判定範囲(つまりステップ)に対応させ、ステップに応じて音量の設定値に変換する(図4参照)。マイクロコントローラ20は、判定範囲の上限または下限を、検出したデジタル値の変化方向に応じてシフトさせる(つまり、判定範囲をヒステリシス処理する)。マイクロコントローラ20は、ユーザによる音量操作が停止したときに、判定範囲の上限または下限をシフトさせる。このように、音量操作が停止したときにヒステリシス処理を行うことで、判定範囲の境界でボリュームつまみ13の位置が停止したときに、ノイズの影響による変動を抑制できる。
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施の形態1で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
実施の形態1では、オーディオアンプ10は、第1のアンプ機能として、プリアンプ機能及びプリメインアンプ機能の双方を有するとした。しかし、オーディオアンプ10は、第1のアンプ機能として、プリアンプ機能及びプリメインアンプ機能のいずれか一方のみを有してもよい。
実施の形態1では、オーディオアンプ10のアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられ、かつ、ボリュームつまみ13による音量設定値がメモリ22に記憶された音量設定値よりも大きいときに、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置に戻した。しかし、ボリュームつまみ13の位置を、必ずしもメインアンプ機能への切り替え直前の位置に戻さなくてもよい。例えば、ボリュームつまみ13の位置を、現時点の位置で得られる音量(つまり、本開示の第2音量)よりも小さな音量(つまり、本開示の第3音量)が得られる所定の位置まで戻すようにしてもよい。第3音量は、記憶された音量(つまり、本開示の第1音量)と同じでなくてもよく、第1音量より大きくても小さくてもよい。
実施の形態1では、オーディオアンプ10のアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられ、かつ、ボリュームつまみ13による音量設定値とメモリ22に記憶された音量設定値を比較し、その比較結果に基づきボリュームつまみ13の位置を制御した。これに対して、オーディオアンプ10のアンプ機能が、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えられたときに無条件に、ボリュームつまみ13の位置を、メインアンプ機能への切り替え直前の位置に戻してもよい。
また、実施の形態1では、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替えた時に、ボリュームつまみ13の位置に対応する音量設定値(つまり、第4音量の設定値)が、メモリ22に記憶された音量設定値よりも小さい場合(または、記憶された音量設定値以下の場合)、マイクロコントローラ20はボリュームつまみ13の位置を変化させず、当該位置に対応する音量(つまり、第4音量)が得られるように音量を制御している。この構成により、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替え直後、ユーザの意図に沿った、小さな音量を出力できる。例えば、ユーザは、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替える直前に、大音量を警戒して、意図的に音量を小さくするように、つまみを操作する場合がある。本実施の形態では、このユーザの意図に沿うことができる。しかし、本開示は、この構成に限定されず、例えば、オーディオアンプ100は、第4音量が、記憶された音量(つまり、第1音量)より小さい場合であっても、ボリュームつまみ13の位置を変化させ、所定の音量を出力するように構成されてもよい。所定の音量とは、例えば第1音量と同じでもよく、第1音量よりも大きくても小さくてもよい。
また、オーディオアンプ10において、ユーザにより入力セレクタ15が操作され、入力元が、音声再生装置41、音声再生装置42、AVセレクタ50のいずれかに切り替えられるときに、それぞれの入力元に対する音量設定値をメモリ22に記憶しておいてもよい。その後、入力セレクタ15が切り替えられるたびに、マイクロコントローラ20は、選択された入力元に対する音量設定値をメモリ22から読み出し、その読み出した音量設定値に対応する位置に、ボリュームつまみ13の位置を制御する(すなわち、音量設定値を、選択された入力元に応じた値に戻す)ようにしてもよい。
実施の形態1では、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能へ切り替え時に、ユーザに戻したい音量を確認せずに、メモリ22に記憶した設定に基づきボリュームつまみ13の位置を制御した。これに対して、メインアンプ機能からプリアンプ機能またはプリメインアンプ機能への切り替え時に、ユーザに、戻す音量設定の確認を行ってもよい。具体的には、オーディオアンプ10は、アンプ機能の切り替え時に、戻ろうとする音量の設定値を表示部に表示するとともに、ユーザが、その状態でボリュームつまみ13を操作することで、戻したい音量を設定できるようにしてもよい。
実施の形態1では、音量設定のための操作部材として、回転操作を行うボリュームつまみの例を示した。操作部材はこれに限定されず、例えば、スライド操作により音量設定を行うもの、またはタッチパネル方式で音量設定を行うものでもよい。
また、実施の形態では、操作部材の状態とは、操作部材の回転角を指す。しかし、操作部材がスライド移動する場合は、操作部材の状態とは、操作部材の位置でもよい。また、操作部材がタッチパネルの場合は、操作部材の状態とは、操作部材の表示でもよい。
実施の形態1において、音量設定値(ステップ)の判定のためのA/D値の範囲に対するヒステリシス処理の方法は、上記の例に限定されるものではない。例えば、A/D値の範囲の境界のシフト量は3に限定されない。また、実施の形態1では、A/D値の範囲の中心値を基準として、範囲の上限及び下限のいずれをシフトするかを判定したが、これに限定されるものではない。例えば、検出されたA/D値と、A/D値の範囲の上限または下限との差が所定値以内になった方の境界をシフトするようにしてもよい。
アンプ装置(オーディオアンプ10)における入力端子及び出力端子の数は上述した数に限定されるものではない。
実施の形態1において、制御部の一例としてマイクロコントローラを示したが、制御部はこれに限定されない。また、信号処理回路の一例としてDSPを示したが、信号処理回路はこれに限定されない。すなわち、制御部および信号処理回路は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、FPGA(Field‐Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、任意の半導体デバイスで実現することができる。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、添付図面および詳細な説明を提供した。
したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、音声信号を増幅するアンプ装置であって、音量調整が可能なアンプ機能と、音量調整が不可能なアンプ機能とを切り替えることのできるアンプ装置に有用である。
10 オーディオアンプ(アンプ装置)
13 ボリュームつまみ(操作部材)
15 入力セレクタ
20 マイクロコントローラ(制御部)
21 AD変換器
22 メモリ(記憶部)
24 音量制御回路
25 DSP(信号処理回路)
26 モータ(駆動部)
28 入力切替回路
31〜33 入力端子
34,35 出力端子
50 AVセレクタ
41〜44 音声再生装置
61R,61L,63SL,63SR,63SB,63SW スピーカ
100 オーディオシステム