JPWO2018173653A1 - オートファジー誘導剤とその用途 - Google Patents

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Abstract

顕著なオートファジー誘導作用を有する、安全性の高い天然素材を有効成分とし、ヒトに安全かつ容易に比較的長期間に亘って投与可能なオートファジー誘導剤を提供することを課題とし、有効成分として環状グルコオリゴ糖を含んでなるオートファジー誘導剤とその用途を提供することにより、前記課題を解決する。

Description

本発明は、オートファジー誘導剤とその用途に関するものである。
オートファジーとは、酵母からヒトに至る真核生物において見られる、細胞内の不要な蛋白質などを分解するための仕組みの一つであり、細胞が自己成分を分解処理することから自食作用とも呼ばれる。オートファジーは、細胞質の一部が隔離膜によって取り囲まれ、オートファゴソームと呼ばれる膜構造が形成されることを特徴とし、形成されたオートファゴソームの外膜がリソソーム膜と融合してオートリソソームとなり、このオートリソソーム内で老廃物や不要な蛋白質などが消化され、自己成分の分解過程が完結する。なお、オートファジーにより分解されるのは、老廃物や蛋白質に限られず、脂肪滴やグリコーゲン、更には、ミトコンドリア、ペルオキシソームなどの細胞内小器官にまで及ぶ(非特許文献1参照)。
オートファジーという現象は、歴史的には1950年代後半から観察されていたが、その検出はもっぱら電子顕微鏡による形態学的観察であったため、研究が思うように進まない時期があった。その後、酵母の変異体の研究から種々のオートファジー関連因子が発見され、哺乳類などの高等動物にも類似の因子が存在することが明らかになり、研究が一気に加速された。特に、オートファゴソーム形成に関連する遺伝子として、18個のオートファジー関連遺伝子[Atg(Autophagy−related gene)1乃至10、Atg12乃至14、Atg16乃至18、Atg29、Atg31]が同定され、これにより、ノックアウトマウスの作製や遺伝子産物である蛋白質に対する抗体を用いた観察が可能となり、Atg遺伝子の機能解析やオートファゴソームの形成・分布・挙動に関する研究が進んだ(非特許文献2参照)。
更に、オートファジーは、細胞の様々な生理学的/病理学的機能において、根本的な役割を担っていることが見出され、その研究過程で、オートファジーの異常に起因すると考えられる疾患が多数報告されている。例えば、非特許文献3には、神経変性疾患、肺性疾患などの疾患が挙げられている。前記神経変性疾患としては、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病などが挙げられ、これらの疾患においては、オートファジーの機能が阻害されているため、アミロイドβやポリグルタミン、α−シヌクレインなどの凝集蛋白質が生体内に蓄積され、これが発症に関わっていることが知られている。前記パーキンソン病の発症には、オートファジーの機能の内、不良ミトコンドリアを除去する機能(ミトファジー)異常が関与していることが知られている。更に、代謝性疾患においてオートファジーの機能が損なわれると、膵臓のβ細胞にアミロイドペプチドが蓄積し、糖尿病の発症へと繋がることが知られている。また、オートファジーは、自然免疫や適応免疫において重要な役割を担っており、細菌やウイルスの分解(ゼノファジー)やウイルス由来ペプチドの抗原提示に関与していることも知られている。
更に、オートファジーは飢餓時などにおいても誘導され、生体において、いわば恒常的に機能している。加齢に伴いその誘導能が低下すると、細胞内老廃物の蓄積、ひいては種々の老化現象が引き起こされると言われ(非特許文献4参照)、近年、オートファジーと寿命との関連性についても関心が高まりつつある。
これら一連のオートファジーの研究において、種々のオートファジー活性測定方法が考案されている。最も繁用されている方法として、オートファゴソームの構成蛋白質であるLC3と呼ばれる蛋白質、殊に、LC3のアイソフォームであるLC3Bと呼ばれる蛋白質(以下、単に「LC3B」と言う。)、及びLC3Bの膜結合型(脂溶性)蛋白質、すなわち、オートファゴソームの内膜表面と外膜表面の両面に発現し、その発現量がオートファゴソーム形成と正の相関を示すことが知られているLC3B−IIと呼ばれる蛋白質(以下、単に「LC3B−II」と言う。)を検出する方法がある(非特許文献5参照)。LC3B、LC3B−IIの検出法としては、それら蛋白質に対する抗体を用いる方法を例示できる。抗体による検出方法においては、更に細胞を固定し、免疫細胞化学染色を行う方法と、細胞の抽出液を調製し、抽出されたLC3B、LC3B−IIをウエスタンブロッティングにより検出する方法がある。免疫細胞化学染色法は、オートファゴソームを形態的に捉え、その細胞内局在を把握できるという利点がある。一方、ウエスタンブロッティングによる方法は、オートファゴソームを定量的に把握できるという利点がある。但し、オートファゴソームの形成が促進されてもその後の進行が不完全である場合、オートファジーは完結しないので、被験物質にオートファジー誘導作用があることを確認するためには、オートファゴソームの形成、オートリソソームの形成、及びオートリソソーム内で内容物が分解されるまでの一連の流れ、つまり、オートファジックフラックス(autophagic flux)が進行していることの確認が必要である(非特許文献6参照)。オートファジックフラックスが進行している場合には、例えば、NHClやクロロキンなどのリソソーム阻害剤の存在下で細胞を培養すると、リソソームの作用が阻害され、LC3B、LC3B−IIが分解されずに残存するため、リソソーム阻害剤非存在下で培養した場合と比べ、細胞内のLC3B、LC3B−IIの量が増加する。この原理に基づき、細胞を被験物質とともに、リソソーム阻害剤の存在下で培養したとき、リソソーム阻害剤非存在下で培養した場合と比べ、LC3B、LC3B−IIの量が増加している場合には、オートファジックフラックスが進行していると判断される。一方、オートファジックフラックスが進行していない場合には、細胞を被験物質とともにリソソーム阻害剤の存在下で培養しても、リソソーム阻害剤非存在下で培養した場合と比べ、LC3B、LC3B−IIの量は増加しない。
更に、オートファジーと疾患との関連性において、オートファジー誘導剤を用いて、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、或いは加齢を抑制する試みなどがなされている。オートファジーを誘導する物質として、例えば、ラパマイシン、トリン1、メトホルミン、塩化リチウム、カルバマゼピンなどが知られている。しかし、それらはオートファジーに特異的ではなく、多機能な薬効を有していることから、副作用を惹起し易いという欠点がある。一方、安全な天然素材であって、自体、穏やかな甘味を有し、多機能な特性を有する糖質として知られるα,α−トレハロース(以下、特に断りがない限り、単に「トレハロース」と言う。)にオートファジー誘導作用があることが知られている(非特許文献7参照)。トレハロースは、様々な病態モデルにおいてオートファジーの活性化に関与しており、殊に、高脂肪食による肝脂肪の病態モデル動物において詳細な解析がなされ、ヒトへの応用の可能性を示唆する報告もある(非特許文献8参照)。トレハロースは、整腸作用、抗う蝕作用、ミネラル吸収促進作用、血糖調節作用、コレステロール低下作用、インスリン抵抗性の予防/改善作用などの種々の生理機能を有する極めて有用な糖質であり、斯かる糖質が更にオートファジー誘導能をも有しているということは、天然素材としての糖質が有する生理機能の広がりにより一層の期待を抱かせるものである。
斯かる状況下、トレハロースと同様、安全性の高い天然素材であって、オートファジー誘導作用を有するものが存在すれば、オートファジーの研究のみならず、オートファジーの異常に起因する種々の疾患及び症状の予防、治療、緩和に新たな展開がもたらされるものと期待される。
水島昇、『細胞が自分を食べるオートファジーの謎』、PHPサイエンス・ワールド新書、80乃至82頁、2011年 水島昇等、『ジ・アニュアル・レビュー・オブ・セル・アンド・ディベロプメンタンル・バイオロジー』、第27巻、107乃至132頁、2011年 オーカズチン・エム・ケイ・チョイ等、『ザ・ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』、第368巻、第7号、651乃至662頁、2013年 マウリジオ・レナ等、『ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー』、第285巻、第15号、11061乃至11067頁、2010年 クリオンスキー・ディ・ジェイ等、『オートファジー』、第12巻、第1号、1乃至222頁、2016年 水島昇等、『セル』、第140巻、第3号、313乃至326頁、2010年 ソバン・サーカー等、『ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー』、第282巻、第8号、5641乃至5652頁、2007年 ブリアン・ジェイ・デボッシュ等、『サイエンス・シグナリング』、第9巻、第416号、ra21、1乃至13頁、2016年
本発明は、オートファジーを顕著に誘導し、活性化し、及び/又は促進する作用(本願明細書においては、これらを纏めて「オートファジー誘導作用」と言う。)を有する安全性の高い天然素材を有効成分とする、ヒトに安全かつ容易に比較的長期間に亘って投与することのできる、新規なオートファジー誘導剤とその用途を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、安全性の高い天然素材に着目し鋭意研究を重ねた結果、環状グルコオリゴ糖が、顕著なオートファジー誘導作用を有することを新規に見出した。すなわち、本発明は、環状グルコオリゴ糖を有効成分として含んでなるオートファジー誘導剤とその用途を提供することにより、前記課題を解決するものである。
本発明のオートファジー誘導剤は、顕著なオートファジー誘導作用を有しているとともに、毒性、副作用などを実質的に懸念する必要のない、安全な天然素材である環状グルコオリゴ糖を有効成分とするものであることから、ヒトに安全かつ容易に比較的長期間に亘って投与することができ、オートファジー誘導作用を効果的に発揮することができる。ちなみに、環状グルコオリゴ糖は、実質的に甘味を有さず、かつ、生体へのエネルギー源になり難いことから、これらの特徴を活かして、甘味や生体へのエネルギー供給が望ましくないとされる用途、対象者、対象動物に対しても投与することができる新たなオートファジー誘導剤を提供できるという利点を有している。したがって、本発明のオートファジー誘導剤によれば、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病など)、肺性疾患、筋委縮疾患、筋疾患、心筋症、脳腫脹、疲労、睡眠不足、又は冷え性などを効果的に予防、治療、及び/又は緩和することができる。更に、本発明のオートファジー誘導剤を飲食品、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、滋養強壮剤などに添加、混合、又は配合することにより、ユーザが当該オートファジー誘導剤の摂取を意識することなく、これを日常生活の中でごく自然に、かつ、安全に継続的に摂取できるという利点が得られる。
環状グルコオリゴ糖(CNN)、ラクトース、又はα,α−トレハロースによりNHEK細胞内に発現誘導されたLC3Bを免疫細胞化学染色法により検出し、顕微鏡用デジタルカメラで撮影した画像である。 図の上段は、環状グルコオリゴ糖(CNN、CMM、又はICG5)又はラクトースによりCaco−2細胞内に発現誘導されたLC3B−IIをドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS−PAGE)とウエスタンブロッティングに供した後、化学発光法により検出したバンドの画像であり、下段は各バンド強度を画像解析ソフトを用いて解析し、解析されたLC3B−IIの発現量を対照に対する相対値で示した図である。 環状グルコオリゴ糖(CNN、CMM、又はICG5)又はラクトースによりMKN45細胞内に発現誘導されたLC3B−IIをSDS−PAGEとウエスタンブロッティングにより検出定量し、定量されたLC3B−IIの発現量を対照に対する相対値で示した図である。 NHCl存在下/非存在下、環状グルコオリゴ糖(CNN、CMM、又はICG5)によりCaco−2細胞を免疫細胞化学染色し、顕微鏡用デジタルカメラで撮影した画像である。 NHCl存在下/非存在下、環状グルコオリゴ糖(CNN)又はα,α−トレハロースによりNHEK細胞内に発現誘導されたLC3B−IIをSDS−PAGEとウエスタンブロッティングにより検出定量し、定量されたLC3B−IIの発現量を対照に対する相対値で示した図である。 マウスに環状グルコオリゴ糖(CNN)又はα,α−トレハロースを静脈内投与又は経口投与し、リソソーム阻害剤であるクロロキンを腹腔内へ投与又は投与せずに所定の時間絶食させ、腎臓組織を採取し、その抽出液をSDS−PAGEとウエスタンブロッティングに供した後、化学発光法によりLC3B−IIのバンドを検出し、検出したバンド強度を画像解析ソフトを用いて解析し、解析されたLC3B−IIの発現量を対照に対する相対値で示した図である。
本発明は、有効成分として環状グルコオリゴ糖を含んでなるオートファジー誘導剤に関する。本発明で言う環状グルコオリゴ糖とは、4個以上のグルコース残基が、α−1,3結合、α−1,4結合、及び/又はα−1,6結合を介して環状に連なった構造を有する環状糖質、更には、それら環状糖質のグリコシル誘導体を意味する(以下、特に断りがない限り、これらを纏めて「環状グルコオリゴ糖」と言う。)。環状グルコオリゴ糖は、実質的に甘味を有さず、生体へのエネルギー源となり難い糖質であり、しかも、ヒトに比較的長期間に亘って安全かつ容易に投与でき、これにより、所望のオートファジー誘導作用を発揮させることができる。有効成分として使用される環状グルコオリゴ糖は、上記環状構造を有する環状グルコオリゴ糖であれば良く、当該環状構造を構成する糖の数に特段の制限はないが、オートファジー誘導作用、安全性、取り扱い性、安定性などの点から、構成糖の数が4乃至10、好適には、4乃至6、より好適には4乃至5の環状グルコオリゴ糖が特に好ましい。ちなみに、構成糖の数が多い環状グルコオリゴ糖は、必然的に分子量が大きくなり、細胞への取り込み効率が低下する傾向にある。
とりわけ、本発明において好適に用いられる環状グルコオリゴ糖としては、例えば、特許第4919198号公報に開示された、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する非還元性の環状四糖(別名:シクロニゲロシルニゲロース;本願明細書においては、特に断りがない限り「CNN」と言う。);特許第4568035号公報に記載のサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する非還元性の環状四糖(別名:シクロマルトシルマルトース;本願明細書においては、特に断りがない限り「CMM」と言う。)、及び特許第4983258号公報に開示された、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する非還元性の環状五糖(別名:イソサイクロマルトペンタオース;本願明細書においては、特に断りがない限り「ICG5」と言う。)を例示できる。なお、環状四糖及び環状五糖の安全性に関しては、特許第4919198号公報には、CNNのLD50値は50g/kgマウス体重以上、特許第4568035号公報には、CMMのLD50値は5g/kgマウス体重以上、また特許第4983258号公報には、ICG5のLD50値は5g/kgマウス体重以上であることが開示されている。このように、環状四糖及び環状五糖は、自体、安全な天然素材であり、ヒトに安全かつ容易に比較的長期間に亘って投与可能である。本発明を実施するに際し、環状四糖及び環状五糖などの環状グルコオリゴ糖は、それらの1種又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。また、本発明で用いる環状グルコオリゴ糖は、本発明のオートファジー誘導剤の形態にもよるが、必ずしも、最高純度のものに限定されることはなく、環状グルコオリゴ糖含有量が、通常、30質量%(以下、特に断りがない限り、「質量%」は「%」と略記する。)以上、好適には50%以上、より好適には70%以上、更には80%以上、更に好適には90%以上100%以下であるものが好適に用いられる。
本発明のオートファジー誘導剤は、環状グルコオリゴ糖以外に、飲食品、飼料、餌料、ペットフード、化粧品、医薬品などの分野で用いられる、賦型剤、増量剤、増粘剤、結合剤、安定剤、pH調整剤、緩衝剤、呈味剤、甘味剤、着色剤、食物繊維(グアガム、グアガム酵素分解物、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ペクチン、大麦βグルカン、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、イソマルトデキストリンなど水溶性食物繊維を含む)、アミノ酸、オリゴペプチド、及び蛋白質などの1種又は2種以上の他の成分を適宜の割合で配合し、更に、必要に応じて、飲食品、飼料、餌料、ペットフード、化粧品、又は医薬品用素材の1種又は2種以上を配合して、液状、懸濁状、ペースト状、粉体状、顆粒状、球状、短棒状、板状、シート状、層状、立方体状、錠剤状、丸剤状、又はカプセル状などの各種形状の組成物に加工して用いることができる。斯かる組成物としては、食品、健康食品、保健機能食品、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品、飼料、餌料、ペットフード、化粧品、医薬品、又は医薬部外品などの形態にあるものを例示できる。なお、前記他の成分の内、甘味剤は、本発明のオートファジー誘導剤が経口投与される形態にある場合、その甘味付与のために用いられる。この際、トレハロースは、適度の穏やかな甘味を有するとともに、オートファジー誘導作用を有していることから、本発明のオートファジー誘導剤に甘味を付与する必要がある場合、極めて好適に用いることができる。トレハロース以外の他の甘味剤の具体例としては、例えば、粉飴、水飴、異性化糖、蜂蜜、グルコース、ラクトース、フルクトース、ガラクトース、D−プシコース、スクロース、マルトース、オリゴ糖(ラフィノース、パノース、メレチトース、スタキオース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオースなど)、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールなど)、メープルシュガー、グリシン、アラニン、ジヒドロカルコン、ステビオシド、α−グリコシルステビオシド、ラカンカ甘味物、グリチルリチン、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、アセスルファムK、α−L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(別名:アスパルテーム)などを例示できる。
本発明のオートファジー誘導剤に含まれる環状グルコオリゴ糖の量は、環状グルコオリゴ糖を無水物換算で、オートファジー誘導剤の質量当たり、通常、0.1%以上、好適には1%以上、より好適には5%以上、更には10%以上、更に好適には20乃至100%、より更に好適には30乃至100%、更に好適には40乃至100%の範囲とするのが良い。環状グルコオリゴ糖の配合量が0.1%を下回る場合には、所期の作用効果が著しく低下するか発揮できなくなる場合があるので好ましくない。一方、環状グルコオリゴ糖の配合量の上限は、オートファジー誘導剤の形態又は投与対象者(ヒト以外の温血動物全般を含む)の年齢、性別、体重、疾患、症状などに応じて適宜設定すればよい。
更に、本発明のオートファジー誘導剤は、従来公知のオートファジー誘導剤の1種又は2種以上と併用することにより、従来公知のオートファジー誘導剤のオートファジー誘導作用をより高めたり、その副作用を軽減したりすることもできる。従来公知のオートファジー誘導剤としては、例えば、ラパマイシン、トリン1、メトホルミン、塩化リチウム、カルバマゼピン、フルスピリレン、トリフルオペラジン、ピモジド、ニカルジピン、ペニトレムA、ニグルジピン、ロペラミド、アミオダロン、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノサミン、レスベラトール、スペルミジン、ビタミンD、ペルヘキシリン、ニクロスアミド、アミオダロン、ロットレリン、バルプロ酸ナトリウム、ベラパミル、ニモジピン、ニトレンジピン、カルパスタチン、カルペプチン、クロニジン、リルメニジン、2′,5′−ジデオキシアデノシン、NF449、ミノキシジル、α,α−トレハロース、α,β−トレハロース、β,β−トレハロースなどを例示できる。前記従来公知のオートファジー誘導剤は、無水物換算で、本発明のオートファジー誘導剤に、通常、0.1%以上、好適には1%以上、より好適には2乃至90%、更には5乃至80%更には10乃至60%の範囲で配合することができる。
本発明のオートファジー誘導剤を、液状、懸濁状、又はペースト状の形態とする場合、当該オートファジー誘導剤の有効成分である環状グルコオリゴ糖を溶解、分散、又は懸濁するための好適な溶媒としては、例えば、水、アルコール(エタノールなど)、ジメチルスルホキシドなどの1種又は2種以上の溶媒を例示できる。この際、本発明のオートファジー誘導剤のpHは、当該オートファジー誘導剤の有効成分である環状グルコオリゴ糖を安定に保つために、通常、pH3乃至10、好適には、pH4乃至9、より好適にはpH5乃至8の範囲とする。
本発明のオートファジー誘導剤は、有効成分として含まれる環状グルコオリゴ糖が、無水物換算で、通常、ヒト成人(体重60kg)当たり、0.1乃至50g/日、好適には0.5乃至25g/日、より好適には1乃至20g/日、更には2乃至10g/日の割合でヒトに投与されるよう、通常、1日当たり1乃至3回に分けて、経口又は非経口的に投与される。投与期間は、対象者の年齢、性別、体重、疾患、症状などに応じて変動するけれども、通常、1週間以上、好適には2週間以上、より好適には3週間以上、更に好適には1乃至12カ月間から選ばれる期間を例示することができる。
本発明のオートファジー誘導剤は、前記形態、用量、用法でヒトに投与したとき、顕著なオートファジー誘導作用を発揮する。すなわち、本発明のオートファジー誘導剤によれば、オートファジーの異常に起因する疾患又は症状、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病など)、肺性疾患、筋委縮疾患、筋疾患、心筋症、脳腫脹、疲労、睡眠不足、又は冷え性などを効果的に予防、治療、及び/又は緩和することができる。更に、本発明のオートファジー誘導剤は、ヒト以外のウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜、更には、サル、ゾウ、トラ、ライオン、チータ、パンダ、レッサーパンダ、クマ、ヌートリア、コアラ、イタチ、シカ、イノシシ、イヌ、ネコ、ウサギ、キツネ、マウス、ラット、ハムスター、リスなどの温血動物全般(ニワトリなどの鳥類全般を含む)に対しても、顕著なオートファジー誘導作用を発揮する。
以下、実験に基づき、本発明をより詳細に説明する。
<実験1:環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用(1)>
ヒト由来の細胞を用いた免疫細胞化学染色法により、環状グルコオリゴ糖のオートファジー誘導作用について調べた。すなわち、正常ヒト新生児包皮角化細胞株であるNHEK細胞(製品番号:KK−4009、クラボウ社製)を、無血清細胞培養用培地(商品名『EpiLife培地』、製品番号:M−EPI−500−CA、ギブコ社製)に増殖因子(EpiLife Defined Growth Supplement(EDGS)(製品番号:S−012−5、ギブコ社製)を添加した培地を用いて、細胞濃度が1.0×10個/0.4mL/ウェルとなるように、予めタイプIVゼラチン(商品名『セルマトリックス タイプ IV』、新田ゼラチン社製)で表面を被覆しておいた、8穴プレート(商品名『Lab−Tek II チャンバー』、カタログ番号:154534、ヌンク社製)の各ウェルに播種し、37℃に設定された5%v/vCOインキュベーター内で一晩培養した。次いで、各ウェル中の培地を除去した後、環状グルコオリゴ糖として、特許第4919198号公報の実験24に開示された方法に準じて得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCNN)を用い、これを濃度50mMで含むEpiLife培地を各ウェルに添加し、48時間培養した。次いで、培養後の細胞に−20℃に冷却したメタノールを添加し、−20℃の冷凍室にて10分間冷却して細胞を固定した後、免疫細胞化学染色に供した。染色は、細胞を一次抗体(商品名『抗LC3B抗体』、CSTコード番号:2775、セル・シグナリング・テクノロジー社製)と4℃で一晩接触させ、次いで、蛍光標識した二次抗体(商品名『Alexa Fluor標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体』、カタログ番号:A−11012、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)と室温で1時間反応させ、次いで、蛍光核酸染色剤(商品名『Hoechst 33342』、製品番号:861405、シグマアルドリッチ社製)で核染色し、細胞を識別し易くした後、グリセロールを濃度50%で含有する、マグネシウム及びカルシウム不含有のリン酸緩衝生理食塩水(以下、「PBS(−)」と言う。]を添加し、システム生物顕微鏡(商品名『BX53F』、オリンパス社製)を用いて、前記蛍光標識した二次抗体から発せられる蛍光を顕微鏡観察するとともに、その視野内の培養細胞を顕微鏡用デジタルカメラ(商品名『DP80』、オリンパス社製)にて撮影した。また、CNNに代えて、オートファジー誘導作用を有さないことが知られているラクトース(純度98%、和光純薬工業社製)、又はオートファジー誘導作用を有することが知られているα,α−トレハロース(商品名『TREHALOSE,ENDOTOXIN FREE』、純度99.0%以上、コード番号:TH223、株式会社林原製)を、それぞれ濃度50mMで含む培地を用いた以外は、CNNの場合と同様にして試験に供し、蛍光顕微鏡観察を行うとともに、その視野内の培養細胞を顕微鏡用デジタルカメラにて撮影した。更に、対照として、CNN、ラクトース、及びα,α−トレハロースのいずれも含まない培地を用いる系を設け、CNNの場合と同様にして、蛍光顕微鏡観察を行うとともに、その視野内の培養細胞を顕微鏡用デジタルカメラにて撮影した。顕微鏡用デジタルカメラにて撮影した画像を図1に示す。
図1に示すとおり、ラクトースを含む培地中で培養したNHEK細胞(図1の右上の画像)においては、蛍光ドットの輝度と、細胞当たりの蛍光ドット数が、対照(図1の左上の画像)とほぼ同じであったのに対し、CNNを含む培地中で培養した培養細胞(図1の左下の画像)においては、対照と比べ、蛍光ドットの輝度と、細胞当たりの蛍光ドット数が共に顕著に増加し、しかも、その増加の程度は、オートファジー誘導作用を有するα,α−トレハロースを含む培地中で培養したNHEK細胞(図1の右下の画像)と同等以上に高レベルであった。図1に示す画像において、撮影された画像における蛍光ドットの輝度と細胞当たりの蛍光ドットの数は、オートファジー活性化の指標であるLC3Bの量を反映しているので、上記の結果は、NHEK細胞を用いた培養試験において、CNNが、α,α−トレハロースとほぼ同等以上のオートファジー誘導作用を有することを物語っている。
本実験結果から、CNNは、オートファゴソームの構成蛋白質であって、オートファジー活性化の指標である、細胞内LC3Bの発現量を顕著に増加させる作用を有することが判明し、CNNには、顕著なオートファゴソーム形成増強作用があることが判明した。なお、CNNによるオートファゴソーム形成増強作用についての定量的な実験データは、後述する実験5に示す。
<実験2:環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用(2)>
LC3Bと同様、オートファジー活性化の指標であるLC3B−IIを指標とし、環状グルコオリゴ糖(CNN、CMM、又はICG5)を濃度10mM、25mM、又は50mM含む培地中でヒト由来の細胞を培養し、細胞内LC3B−IIを定量することにより、CNN、CMM、及びICG5によるオートファジー誘導作用について調べた。本試験において、CNNは、実験1で用いたと同じものを、CMMは、特許第4568035号公報の実験14に開示された方法に準じて得た純度98.9%のものを、また、ICG5は、特許第4983258号公報の実験1に開示された方法準じて得た純度99%のものを用いた。
すなわち、ヒト結腸腺癌細胞株[Caco−2細胞、欧州細胞培養収集機関(ECACC)、カタログ番号:86010202]を細胞濃度が4×10個/0.8mL/ウェルとなるように10%v/v牛胎児血清含有ダルベッコ改変イーグル培地(以下、本願明細書においては、『D−MEM培地』と言う。)に懸濁し、この細胞懸濁液を予めタイプIVゼラチンで表面を被覆しておいた24穴プレ−ト(商品名『セルカルチャー24ウェル マルチウェルプレート、カタログ番号:353047、ファルコン社製)に播種し、37℃の5%v/vCOインキュベーター内で一晩培養した。次いで、各ウェル中の培地を除去した後、所定濃度のCNN、CMM、又はICG5を含むD−MEM培地を各ウェルに0.8mL加え、2日間培養した。次いで、各ウェルの培地を除去し、0.5mLのPBS(−)にて細胞を洗浄後、SDS緩衝溶液[50mMトリスHCl、2%SDS、10%グリセロール、及び100mMジチオスレイトールを含む溶液(pH6.8)]を150μL加え、1時間室温に保って細胞抽出処理を行った。次いで、抽出物を100℃で5分間煮沸し、SDS−PAGE用サンプルとした。次いで、サンプルを、常法に従って、SDS−PAGEに供した後、蛋白質をニトロセルロース膜(製造元コード:1212596、フナコシ社製)上へ転写した。転写後の膜を免疫実験用ブロッキング剤(商品名『ブロックエース』、DSファーマバイオメディア社販売)でブロッキングした後、LC3B−IIを検出するための抗体としては、『Anti−LC3mAb』(コード番号:M186−3、MBLライフサイエンス社製)を用い、β−アクチンを検出するための抗体としては、『抗β−アクチン抗体』(カタログ番号:MAB1501、ミリポア社製)を用いた。二次抗体としてはいずれも西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗マウスIgポリクローナル抗体(商品名『Anti−Mouse Igs−HRP』、商品コード:P0447、ダコ社製)を用いた。検出には化学発光法としてウエスタンブロッティング検出システム(商品名『ECL Prime』、GEヘルスケア社製)を用いた。バンド強度の測定は、アメリカ国立衛生研究所(NIH)から提供されている画像解析ソフト『ImageJ』を用いた。また、環状グルコオリゴ糖に代えて、オートファジー誘導作用を有さないことが知られているラクトースを用い、濃度を50mMとした以外は、前記環状グルコオリゴ糖の場合と同様の試験に供した。なお、LC3B−IIのバンド強度を比較定量するに際し、β−アクチンは、生体内での産生量が一定で普遍的に存在する蛋白質なのでこれを内部標準とし、このβ−アクチンのバンド強度に対するLC3B−IIのバンド強度の比に基づき、LC3B−IIの発現量を標準化した。また、細胞をD−MEM培地中でのみ培養したときのLC3B−IIの発現量を調べる系として、前記環状グルコオリゴ糖及びラクトースのいずれも含まない培地を用いる系を設け、これを対照とした。結果は図2に示す。
図2において、上段はウエスタンブロッティング後の化学発光法により検出されたLC3B−IIのバンドをデジタルカメラで撮影した画像であり、中段は同じく化学発光法により検出されたβ−アクチンのバンドの画像である。図2の下段には、バンド強度を画像解析ソフトを用いて解析した結果を示しており、各被験試料毎のバンド強度を表す棒グラフは、対照におけるLC3B−II/β−アクチンの比を「1」とし、これに対する相対値で示した。LC3B−IIのバンド強度は、LC3B−IIの発現量を反映しているので、LC3B−II/β−アクチンの比が高いほど、LC3B−IIの発現量が多いことを意味している。すなわち、ラクトース(濃度50mM)存在下で培養した培養細胞のLC3B−II発現量は約1.1であり、対照の「1」と同等であったのに対し、濃度10乃至50mMのCNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した培養細胞のLC3B−II発現量はそれぞれ、対照の約2乃至約3倍、約2.3乃至約3.3倍、及び約1.5乃至約5.6倍増加していた。この結果は、環状グルコオリゴ糖が顕著にLC3B−IIの発現量を増加させたことを示している。殊に、ICG5は、濃度10乃至50mMの範囲で、濃度依存的にLC3B−IIの発現量を顕著に増加させた。
本実験結果に示されるとおり、環状グルコオリゴ糖は、オートファゴソーム形成と正の相関関係にあるLC3B−IIの発現量を顕著に増加させたことから、環状グルコオリゴ糖には、顕著なオートファゴソーム形成増強作用があることが確認された。
<実験3:環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用(3)>
ヒト結腸腺癌細胞(Caco−2細胞)に代えて、ヒト胃癌細胞株(MKN45細胞、JCRB細胞バンク登録番号:JCRB0254)を細胞濃度が1.6×10個/0.8mL/ウェルとなるように播種した以外は実験2と同様にして、環状グルコオリゴ糖(CNN、CMM、又はICG5)によるオートファジー誘導作用を調べた。結果は図3に示す。なお、図3において、ウエスタンブロッティング後に化学発光法で検出したバンドの画像は割愛した。
図3に示すとおり、MKN45細胞を用いた培養試験において、ラクトース(濃度50mM)(図3右端)を含む培地中で培養した培養細胞のLC3B−II/β−アクチンの比は約1.1であり、ラクトースのLC3B−II発現量は対照の「1」とほぼ変わらなかった。これに対し、濃度10乃至50mMのCNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した培養細胞のLC3B−II/β−アクチンの比は、それぞれ、対照の約1.6乃至約2.1倍、約1.8乃至約2.7倍、及び約1.5乃至約2.7倍まで増加し、CNN、CMM、又はICG5は、LC3B−II発現量を顕著に増加させた。
本実験結果に示されるとおり、環状グルコオリゴ糖は、実験2で用いたCaco−2細胞と同様、MKN45細胞においても、オートファゴソーム形成と正の相関関係にあるLC3B−IIの発現量を顕著に増加させたことから、環状グルコオリゴ糖は、細胞の種類を問わず、顕著なオートファゴソーム形成増強作用を発揮することが判明した。
<実験4:環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用(4)>
環状グルコオリゴ糖の存在下でヒト細胞を培養したとき、オートファジックフラックスが進行しているか否かを調べるために以下の実験を行った。なお、環状グルコオリゴ糖は、前記実験2で用いたと同じ、CNN、CMM、及びICG5を用いた。
すなわち、組織培養用タイプIVゼラチンで表面を予め被覆しておいた8穴プレート(商品名『Lab−Tek II チャンバー』、カタログ番号:154534、ヌンク社製)に前記培地を入れ、これにヒト細胞として、Caco−2細胞をその濃度が4×10個/0.4mL/ウェルとなるように播種し、37℃の5%v/vCOインキュベーター内で一晩培養した。次いで、各ウェル中の培地を除去した後、新たな培地として、(ア)前記3種類の環状グルコオリゴ糖のいずれかを25mM含むD−MEM培地、(イ)前記3種類の環状グルコオリゴ糖のいずれかを25mM含むとともに、リソソーム阻害剤であるNHClを10mM含むD−MEM培地、(ウ)D−MEM培地のみからなる培地、又は(エ)前記3種類の環状グルコオリゴ糖のいずれも含まず、NHClを10mM含むD−MEM培地のいずれかと交換し、更に48時間培養し、培養後の細胞を実験1と同様の手法で免疫細胞化学染色に供し、LC3Bの発現を蛍光顕微鏡観察するとともに、視野内の培養細胞を顕微鏡用デジタルカメラにて撮影した。なお、前記(ウ)又は(エ)の培地を用いる系をそれぞれ、「対照1」、「対照2」とした。上記顕微鏡用デジタルカメラにて撮影した画像を図4に示す。
図4の上段の画像A1乃至A4は、左から順に、NHCl非存在下で、Caco−2細胞をCNN、CMM、及びICG5の何れも含まない培地中で培養した系(対照1:A1)、CNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した系(それぞれ、A2、A3、及びA4)における培養細胞を顕微鏡用デジタルカメラで撮影したものである。これら4枚の画像に見られるとおり、CNN、CMM、又はICG5を含む培地で培養した培養細胞(A2乃至A4)は、それらのいずれも含まない培地で培養された培養細胞(対照1:A1)と比べ、蛍光ドットの輝度が顕著に増大していたとともに、細胞当たりの蛍光ドット数も顕著に増加していた。これは、オートファジー活性化の指標であるLC3Bの発現量が顕著に増加していたことを示している。
一方、図4下段の画像B1乃至B4は、左から順に、NHCl存在下、Caco−2細胞をCNN、CMM、及びICG5の何れも含まない培地中で培養した系(対照2:B1)、CNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した系(それぞれ、B2、B3、及びB4)における培養細胞を顕微鏡用デジタルカメラで撮影したものである。これら4枚の画像に見られるとおり、CNN、CMM、又はICG5を含む培地で培養した培養細胞(B2乃至B4)は、それらのいずれも含まない培地で培養した培養細胞(対照2:B1)と比べ、蛍光ドットの輝度が顕著に増大し、細胞当たりのドット数も顕著に増加していた。
NHCl非存在下で、CNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した培養細胞を撮影した図4の上段に示す画像A2乃至A4と、NHCl存在下で、CNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した培養細胞を撮影した図4の下段に示す画像B2乃至B4とを比較すると、蛍光ドットの輝度及び細胞当たりの蛍光ドット数のいずれにおいても、A2と比べB2の方が、A3と比べB3の方が、また、A4と比べB4の方が顕著に増加していた。これは、NHCl存在下では、NHCl非存在下の場合より、オートファジー活性化の指標であるLC3Bの量が顕著に増加していたことを示している。ここで、オートファジックフラックスが進行している場合には、NHCl非存在下で培養した培養細胞と比べ、NHCl存在下で培養した培養細胞におけるLC3Bの量が増加するので、CNN、CMM、又はICG5を含む培地中で培養した培養細胞においては、オートファジックフラックスが進行していたことが確認された。
本実験結果によれば、実験1と同様、環状グルコオリゴ糖が、オートファジー活性化の指標であるLC3Bの量を顕著に増加させることが確認されたとともに、その作用は、オートファジックフラックス進行下での作用であることが確認された。
<実験5:環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用(5)>
本実験においては、実験4で確認された、オートファジックフラックス進行下での環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用について、LC3Bの膜結合型蛋白質であるLC3B−IIを指標にして、定量的に調べた。すなわち、EpiLife培地に増殖因子[EpiLife Defined Growth Supplement(EDGS)]を添加した培地を用いて、NHEK細胞を細胞濃度が1.0×10個/1.5mL/ウェルとなるように、予めタイプIVゼラチンで表面を被覆しておいた12穴プレ−ト(商品名『12ウェルマルチプルウェルプレート』、製品番号:3513、コースター社製)の各ウェルに播種し、37℃の5%v/vCOインキュベーター内で一晩培養した。次いで、各ウェル中の培地を除去し、濃度10mMのNHClの存在下、前記実験1で用いたと同じCNN又はα,α−トレハロースを濃度50mMで含む培地を各ウェルに1.2mLずつ加えた。なお、NHClは、リソソーム阻害剤として用いた。細胞を37℃の5%v/vCOインキュベーター内で2日間培養した後、各ウェル中の培地を除去し、細胞をPBS(−)で洗浄後、SDSサンプルバッファー溶液を各ウェル当たり300μL加え、実験2と同様にして細胞抽出処理を行い、SDS−PAGE用サンプルを調製し、実験2と同様にして、SDS−PAGEとウエスタンブロッティングに供し、LC3B−IIの発現量を対照に対する相対値で求めた。対照として、NHCl、CNN、及びα,α−トレハロースのいずれも含まない培地を用いる系を設けた。結果は、図5に示す。
図5に示すとおり、NHEK細胞を用いた培養試験において、NHCl非存在下、CNNのLC3B−II/β−アクチンの比は約10であり、対照の「1」に対し約10倍増加し、CNNは、細胞のLC3B−IIの発現量を約10倍増加させた。一方、NHCl存在下、CNNのLC3B−II/β−アクチンの比は約21であり、CNNによるLC3B−IIの発現量は、NHCl非存在下の場合と比べ、約2倍以上も高い値を示した。
これらの結果から、CNNを含む培地中で培養した培養細胞においては、オートファジックフラックスが進行していたことが確認された。なお、既述したとおり、オートファジックフラックスが進行している場合には、NHCl非存在下で培養した培養細胞と比べ、NHCl存在下で培養した培養細胞におけるLC3B−IIの量は増加するので、前記結果は、CNNを含む培地中で培養した培養細胞においては、オートファジックフラックスが進行していたことを示している。また、CNNによるLC3B−IIの発現量及びオートファジックフラックスの進行の程度に関し、培養細胞試験において、NHClの存在下、非存在下に拘わらず、CNNによるLC3B−IIの発現量は、陽性対照のα,α−トレハロースのそれとほぼ同等以上に高レベルであったことから、CNNには顕著なオートファゴソーム形成増強作用があることが再確認された。
本実験結果から、CNNによるオートファジー誘導作用は、オートファジックフラックス進行下での作用であることが確認された。
<実験6:環状グルコオリゴ糖によるオートファジー誘導作用(6)>
実験1乃至5において、CNNが、顕著なオートファジー誘導作用を有することを培養細胞試験(生体外試験)により確認した。引き続き、本実験においては、実験動物を用いる生体内試験により、CNNによるオートファジー誘導作用について、オートファジー活性化の指標であるLC3B−IIを指標にして調べた。なお、本実験において、CNNは前記実験1で用いたと同じものを用いた。
実験動物として、8週齢のC57BL/6J雌マウス(日本クレア社より購入)40匹を無作為に5匹ずつ8群[対照1、対照2、及びA乃至F群(表1参照)]に分けた。A群及びD群の各マウスにはCNNを静脈内投与し、B群及びE群の各マウスにはCNNを経口投与し、C群及びF群の各マウスには後述するα,α−トレハロースを経口投与した。対照1及び対照2の各マウスには、CNN又はα,α−トレハロースに代えて、生理食塩水を経口投与した。CNNのマウスへの経口投与は、CNNを30%水溶液となるように精製水に溶解し、胃ゾンデを用いて、CNNの投与量が無水物換算で3g/kgマウス体重の割合となるように強制的に経口投与した。一方、CNNを静脈内投与するに際しては、CNNを注射用水に15%水溶液となるように溶解し、注射器を用いて、CNNの投与量が無水物換算で1g/kgマウス体重の割合となるように尾静脈内投与した。また、オートファジー誘導作用を有することが知られている、陽性対照としてのα,α−トレハロースは、注射剤用の低エンドトキシンタイプのα,α−トレハロース(商品名『トレハロースSG』、ロット番号:6D11、株式会社林原製)を30%水溶液となるように精製水に溶解し、α,α−トレハロースの投与量が無水物換算で3g/kgマウス体重の割合となるように、CNNの場合と同様にして経口投与した。一方、対照1及びA乃至C群の各マウスに対しては、生理食塩水を10mL/kgマウス体重の割合で腹腔内投与するとともに、対照2及びD乃至F群の各マウスには、リソソーム阻害剤であるクロロキン(和光純薬工業株式会社販売)(予め生理食塩水に濃度12mg/mLとなるように溶解しておいたもの)を120mg/10mL/kgマウス体重の割合で腹腔内投与した。各群のマウスは、生理食塩水又はクロロキンを腹腔内投与後、絶食とし、各被験物質(生理食塩水、CNN、又はα,α−トレハロース)を投与してから6時間後、常法に従って深麻酔下で各群マウスの腎臓の一部を採取し、それら腎臓組織サンプルを液体窒素を用いて瞬間凍結し、ウエスタンブロッティング解析に供するまで−80℃で保存した。また、上記とは別に、各群マウスの腎臓組織サンプルを常法にしたがってホルマリン固定し、組織学的評価に供するまで室温にて保管した。
<ウエスタンブロッティング解析>
対照1、対照2、及びA乃至F群の各マウスの腎臓組織サンプルそれぞれにつき、腎臓組織重量の3乃至10倍量のRIPA緩衝液(製造元コード:188−02453、和光純薬工業社製)と前記RIPA緩衝液の1/100量のプロテアーゼ阻害剤カクテル(商品コード:25955−11、ナカライテスク社販売)の混合液を加えてホモジネートし、30分間氷冷した後、4℃下、10,000prmで20分間遠心分離し、上清を回収し、上清中の総蛋白質量を『PierceTM BCA Protein Assay Kit』(カタログ番号:23227、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて定量した。別途、対照1、対照2、及びA乃至F群の各マウスの腎臓組織サンプルそれぞれに、SDSサンプルバッファー[2%SDS、10%グリセリン、及びジチオスレイトール(DTT)50mM含有62.5mMトリス−塩酸緩衝液(pH6.8)]を加えて細胞抽出液を得、各サンプルをそれぞれ、常法によりSDS−PAGEに供した後、蛋白質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜上へ転写した。転写後の膜を免疫実験用ブロッキング剤(商品名『ブロックエース』、DSファーマバイオメディカル社販売)でブロッキングした後、LC3B−IIを下記表2に示す一次抗体、二次抗体、及びウェスタンブロッティング検出システム(商品名『ECL Prime』、GEヘルスケア社製)と反応させ、化学発光用フィルム(商品名『Hyperfilm ECL』、GEヘルスケア社製)により前記LC3B−IIのバンドを検出した。次いで、実験2と同様にして、各検出バンドを画像解析ソフト『ImageJ』を用いて解析し、対照1又は対照2におけるLC3B−IIのバンド強度を「1」とし、これに対する相対値を求めた。なお、LC3B−IIの発現量をバンド強度に基づいて比較定量するに際し、実験2と同様、内部標準としてβ−アクチンを用い、そのバンド強度に対するLC3B−IIのバンド強度の比に基づいてLC3B−IIの発現量を標準化した。結果は、図6に示す。
図6から明らかなとおり、CNNをマウスに経口投与したとき、クロロキン投与の有無に拘わらず、LC3B−IIの発現量が有意に増加した(B群、E群参照)。同様に、CNNをマウスに静脈内投与したときにも、クロロキン投与の有無に拘わらず、LC3B−IIの発現量が顕著に増加又は有意に増加した(A群、D群参照)。また、CNNをマウスに経口投与したときのLC3B−IIの発現量(B群、E群参照)は、オートファジー誘導作用を有することが知られている、陽性対照としてのα,α−トレハロースによるLC3B−II発現量(C群、F群参照)とほぼ同等であった。
これらの結果から、CNNは、生体に投与したとき、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することが判明した。しかも、B群とC群との対比、及びE群とF群との対比から、CNNのオートファジー誘導作用は、クロロキン投与の有無に拘わらず、オートファジー誘導作用を有することが知られているα,α−トレハロースのそれと同程度に強いことも判明した。また、CNNによる生体内でのオートファジー誘導作用は、リソソーム阻害剤であるクロロキンを投与した場合、対照と比べ、LC3B−IIの発現量が有意に高レベルであり、かつ、クロロキンを投与しなかった場合と比べ、LC3B−IIの発現量が顕著ないしは有意に増加したことから、CNNによるオートファジー誘導作用は、オートファジックフラックス進行下での作用であることが確認された。また、CNNは、その投与経路にかかわらず、陽性対照としてのα,α−トレハロースを経口投与した場合と同程度のLC3B−IIの発現量を示したことから、CNNは、α,α−トレハロースと同程度に強いオートファジー誘導作用を有していることが判明した。
本実験結果から、環状グルコオリゴ糖がマウスの腎臓組織に作用し、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することが確認されたことから、環状グルコオリゴ糖は、生体内の各種臓器、器官、組織などにおける細胞において、顕著なオートファジー誘導作用を発揮すると結論される。
前記実験1乃至6の結果を要約すると、下記(1)乃至(6)に示すとおりのものである。
(1)環状グルコオリゴ糖は、NHEK細胞において、オートファジー活性化の指標であるLC3Bの発現量を顕著に増加させた。
(2)環状グルコオリゴ糖は、Caco−2細胞において、オートファジー活性化の指標であるLC3B−IIの発現量を顕著に増加させた。
(3)環状グルコオリゴ糖は、MKN45細胞において、オートファジー活性化の指標であるLC3B−IIの発現量を顕著に増加させた。
(4)環状グルコオリゴ糖は、Caco−2細胞において、リソソーム阻害剤であるNHCl存在下/非存在下で、オートファジー活性化の指標であるLC3Bの発現量を顕著に増加させ、その際、オートファジックフラックスが進行していた。
(5)環状グルコオリゴ糖は、NHEK細胞において、リソソーム阻害剤であるNHCl存在下でオートファジー活性化の指標であるLC3B−IIの発現量を顕著に増加させ、その際、オートファジックフラックスが進行していた。
(6)環状グルコオリゴ糖は、実験動物を用いた生体内試験において、オートファジー活性化の指標であるLC3B−IIの発現量を有意ないしは顕著に増加させた。また、CNNによるオートファジー誘導作用は、オートファジックフラックス進行下での作用であり、しかも、その作用は、オートファジー誘導作用を有することが知られているα,α−トレハロースと同程度に強い作用であった。
以上述べたとおり、環状グルコオリゴ糖は、顕著なオートファジー誘導作用を有していることから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状を予防、治療、及び/又は緩和するためのオートファジー誘導剤の有効成分として極めて有用である。しかも、環状グルコオリゴ糖は、自体、毒性、副作用などを実質的に懸念することのない安全な天然素材であることから、当該環状グルコオリゴ糖を有効成分とするオートファジー誘導剤は、安心して安全かつ容易に比較的長期間に亘って投与することができるので、ヒトを含む温血動物において所期の作用効果を効果的に発揮できる優れた利点を有している。
以下、実施例に基づき、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
<オートファジー誘導剤>
無水物換算で、特許第4919198号公報の実験24に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCNN)、特許第4568035号公報の実験14に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCMM)、又は特許第4983258号公報の実験1に開示された方法で得た粉末状の環状五糖(純度99%のICG5)を200質量部と、ショ糖脂肪酸エステル1質量部とを均一に混合し、得られた3種類の混合物をそれぞれ、顆粒成形機にかけ、常法に従って、1gずつ分包し、3種類の本発明の顆粒状のオートファジー誘導剤を得た。本品は、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、及び/又は緩和に有利に用いることができる。また、本品は、室温保存下、1年以上もの比較的長期間に亘って、変質劣化の懸念も無く、安定である。
<オートファジー誘導剤>
無水物換算で、特許第4568035号公報の実験14に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCMM)1gを精製水10mLに溶解し、常法に従って、精密ろ過し、無菌的に100mL容滅菌容器に充填し、本発明の液状のオートファジー誘導剤を得た。本品は、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、及び/又は緩和に有利に用いることができる。また、本品は、室温保存下、1年以上もの比較的長期間に亘って、変質劣化の懸念も無く、安定である。
<オートファジー誘導剤>
無水物換算で、特許第4568035号公報の実験14に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCMM)1質量部と、α,α−トレハロース含水結晶(登録商標『トレハ』、株式会社林原製)0.5質量部とを均一に混合し、常法に従って、打錠成形機にかけ、1錠250mgの本発明の錠剤状のオートファジー誘導剤を得た。本品は、CMMとα,α−トレハロースの作用とが相俟って、それら単独の場合と比べより顕著なオートファジー誘導作用を発揮することから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、及び/又は緩和に有利に用いることができる。また、本品は、適度の甘味を有するので、口当たりが良く、室温保存下、1年以上もの比較的長期間に亘って、変質劣化の懸念も無く、安定である。
<オートファジー誘導剤>
無水物換算で、特許第4919198号公報の実験24に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCNN)1質量部と、特許第4568035号公報の実験14に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCMM)1質量部と、増粘安定剤(商品名『プルラン』、株式会社林原製)0.1質量部とを均一に混合し、打錠成形機にかけ、1錠300mgの本発明の錠剤状のオートファジー誘導剤を得た。本品は、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、及び/又は緩和に有利に用いることができる。また、本品は、室温保存下、1年以上もの比較的長期間に亘り、変質劣化の懸念が無く、安定である。
<オートファジー誘導剤>
無水物換算で、特許第4568035号公報の実験14に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCMM)1質量部と、特許第4983258号公報の実験1に開示された方法で得た粉末状の環状五糖(純度99%のICG5)を1質量部とを均一に混合し、一袋当たり5g含むように容器に充填し、本発明の粉末状のオートファジー誘導剤を得た。本品は、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、及び/又は緩和に有利に用いることができる。また、本品は、口当たりが良く、これをそのまま、或いは水などに溶解し、容易に経口摂取できる。更に、本品は、室温下で1年以上もの比較的長期間に亘って、変質劣化の懸念も無く、安定である。
<オートファジー誘導剤>
無水物換算で、特許第4919198号公報の実験24に開示された方法で得た結晶状粉末の環状四糖(純度99.9%のCNN)2質量部と、特許第4983258号公報の実験1に開示された方法で得た粉末状の環状五糖(純度99%のICG5)を1質量部とを0.05Mリン酸緩衝生理食塩水7質量部に溶解し、常法によりpHを7.2に調整後、膜濾過し、除菌し、無菌的に5mLずつアンプルに封入して、本発明のパイロジェンフリーの注射用オートファジー誘導剤を得た。本品は、顕著なオートファジー誘導作用を発揮することから、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状の予防、治療、及び/又は緩和に有利に用いることができる。また、本品は、室温保存下、1年以上もの比較的長期間に亘って、変質劣化の懸念も無く、安定である。
以上述べたとおり、本発明のオートファジー誘導剤は、顕著なオートファジー誘導作用を有するとともに、毒性、副作用を実質的に懸念することなく、ヒトを含む温血動物全般に対して、安全かつ容易に比較的長期間に亘って投与することができる。したがって、本発明のオートファジー誘導剤をヒトに適用する場合、オートファジーの異常に起因する各種疾患又は症状、例えば、神経変性疾患(アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病など)、肺性疾患、筋委縮疾患、筋疾患、心筋症、脳腫脹、疲労、睡眠不足、又は冷え性などの疾患又は症状を効果的に予防、治療、及び/又は緩和することができる。本発明は斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義ある発明である。

Claims (9)

  1. 有効成分として環状グルコオリゴ糖を含んでなるオートファジー誘導剤。
  2. 環状グルコオリゴ糖が、環状四糖及び環状五糖から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のオートファジー誘導剤。
  3. 環状四糖又は環状五糖が、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する非還元性の環状四糖、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する非還元性の環状四糖、又はサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→4)−α−D−グルコピラノシル−(1→}の構造を有する非還元性の環状五糖であることを特徴とする、請求項2に記載のオートファジー誘導剤。
  4. 環状グルコオリゴ糖を無水物換算で0.1質量%以上含んでなる請求項1乃至3のいずれかに記載のオートファジー誘導剤。
  5. 更に、α,α−トレハロース、α,β−トレハロース、及びβ,β−トレハロースから選ばれる1種又は2種以上を含んでなる、請求項1乃至4のいずれかに記載のオートファジー誘導剤。
  6. 前記α,α−トレハロース、α,β−トレハロース、及びβ,β−トレハロースから選ばれる1種又は2種以上を、無水物換算での合計で、0.1質量%以上含んでなる、請求項5に記載のオートファジー誘導剤。
  7. オートファジーの異常に起因する疾患又は症状を予防、治療、及び/又は緩和するための請求項1乃至6のいずれかに記載のオートファジー誘導剤。
  8. オートファジーの異常に起因する疾患又は症状が、神経変性疾患、肺性疾患、筋委縮疾患、筋疾患、心筋症、脳腫脹、疲労、睡眠不足、又は冷え性であることを特徴とする、請求項7に記載のオートファジー誘導剤。
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載のオートファジー誘導剤を含んでなる、食品、健康食品、保健機能食品、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品、飼料、餌料、ペットフード、化粧品、医薬品、又は医薬部外品の形態にある、オートファジー誘導用組成物。
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