JP6641240B2 - ナチュラルキラー細胞の活性化剤 - Google Patents

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Description

本発明は、ナチュラルキラー細胞(以下、「NK細胞」という。)を活性化させる作用を有する素材、及び当該素材を有効成分とする免疫力の増強剤に関する。
NK細胞は細胞傷害性リンパ球の1種であり、ウイルス感染や細胞のがん化等によって体内に異常な細胞が発生した時に防御機構として働く細胞である。しかしながら、NK細胞の細胞傷害活性は加齢と共に低下するため、高齢になるほどがんの発生率が高まること等に関連していると言われている。
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、補酵素NADの生合成中間代謝産物である。近年、NMNは、老化マウスにおけるインスリン分泌能の改善効果、高脂肪食や老化によってひき起こされる2型糖尿病のマウスモデルにおいてインスリン感受性や分泌を劇的に改善する効果を有すること(例えば、特許文献1参照。)、サーカディアンリズムの制御に関与していること(例えば、特許文献2参照。)、老化した筋肉のミトコンドリア機能を顕著に高める効果を有することなどが報告されている。さらに、NMNの投与により、肥満、血中脂質濃度の上昇、インシュリン感受性の低下、記憶力低下、及び黄斑変性症等の眼機能劣化といった加齢に伴う各種疾患の症状の改善や予防に有用であることも報告されている(例えば、特許文献3参照。)。
米国特許第7737158号明細書 米国特許出願公開第2011/123510号明細書 国際公開第2014/146044号
Gomes,et al.,Cell,2013,vol.155,p.1624-1638. Yoshino, et al., Cell Metabolism, 2011, vol.14, p.528-536. Takeda,et al.,Nature Medicine,2001,vol.7(1),p.94-100. Takeda,et al.,Blood,2005,vol.105(5),p.2082-2089. Yuminamochi,et al.,Immunology,2007,vol.121(2),p.197-206.
本発明は、安全に摂取することができ、免疫力増強作用を有する素材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、β−NMNがNK細胞の細胞傷害活性を増強させる作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のNK細胞の活性化剤、免疫力増強剤、健康補助食品、及び飼料を提供するものである。
[1] β−NMNその薬理学的に許容される塩、及びそれらの溶媒和物から選ばれるひとつを有効成分とすることを特徴とする、NK細胞の活性化剤。
[2] 経口投与される、前記[1]の活性化剤。
[3] 前記[1]又は[2]の活性化剤を含有する、免疫力増強剤。
[4] 前記[1]又は[2]の活性化剤を含有し、免疫力の増強のため、健康補助食品。
[5] 前記[1]又は[2]の活性化剤を含有し、免疫力の増強のため、飼料。
本発明に係るNK細胞の活性化剤は、元々生体内に存在するβ−NMNを有効成分とし、NK細胞の細胞傷害活性を増強させることができる。このため、本発明に係るNK細胞の活性化剤は、副作用を起こすことなく安全に摂取することができ、免疫力の増強を補助することができる。
実施例1において、β−NMN投与群(625mg/kg/day)とコントロール群の肝臓から回収された単核球のNK細胞活性(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、β−NMN投与群(625mg/kg/day、1250mg/kg/day)とコントロール群から回収された単核球のNK細胞活性(%)の測定結果を示した図である。左図が肝臓から回収された単核球の結果であり、右図が脾臓から回収された単核球の結果である。 実施例3において、β−NMN投与群(625mg/kg/day)とコントロール群から回収された単核球のNK細胞活性(%)の測定結果を示した図である。左図が肝臓から回収された単核球の結果であり、右図が脾臓から回収された単核球の結果である。 実施例4において、β−NMN投与群(625mg/kg/day)とコントロール群から回収された単核球のNK細胞活性(%)の測定結果を示した図である。左列がC57BL/6Nマウスから回収された単核球の結果であり、右列がBALB/cマウスから回収された単核球の結果である。また、上段が肝臓から回収された単核球の結果であり、下段が脾臓から回収された単核球の結果である。 実施例5において、β−NMN投与群(125mg/kg/day、313mg/kg/day、625mg/kg/day、1250mg/kg/day)とコントロール群から回収された単核球のNK細胞活性(%)の測定結果を示した図である。左図が肝臓から回収された単核球の結果であり、右図が脾臓から回収された単核球の結果である。
本発明に係るNK細胞の活性化剤(以下、「本発明に係る活性化剤」ということがある。)は、NMN(化学式:C1115P)を有効成分とし、NK細胞の細胞障害活性を増強させるという効果を有する。NK細胞は、自然免疫の主要因子であり、免疫力(疾病等に対する抵抗力)の指標とされている。免疫力が低下している動物では、NK細胞の細胞障害活性が低く、NK細胞の細胞障害活性を増強させることにより、動物の免疫力を増強させることができる。すなわち、本発明に係る活性化剤は、免疫力増強剤の有効成分として好適である。例えば、本発明に係る活性化剤を摂取させることにより、加齢、疲労、ストレス、睡眠不足等により低下した免疫力を改善することが可能になる。
NMNには、光学異性体としてα、βの2種類が存在するが、本発明に係る活性化剤の有効成分となるNMNは、β−NMN(CAS番号:1094−61−7)である。β−NMNの構造を下記に示す。
Figure 0006641240
有効成分とするβ−NMNとしては、いずれの方法で調製されたものであってもよい。例えば、化学合成法、酵素法、発酵法等により、人工的に合成したβ−NMNを精製したものを、有効成分として用いることができる。また、β−NMNは広く生体に存在する成分であるため、動物、植物、微生物などの天然原料から抽出・精製することによって得られたβ−NMNを有効成分として用いることもできる。また、市販されている精製されたβ−NMNを使用してもよい。
β−NMNを合成する化学合成法としては、例えば、ニコチンアミドとL−リボーステトラアセテートとを反応させ、得られたニコチンアミドモノヌクレオシドをリン酸化することによりβ−NMNを製造できる。また、酵素法としては、例えば、ニコチンアミドと5’−ホスホリボシル−1’−ピロリン酸(PRPP)から、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(NAMPT)によりβ−NMNを製造できる。発酵法としては、例えば、NAMPTを発現している微生物の代謝系を利用して、ニコチンアミドからβ−NMNを製造できる。
本発明に係る活性化剤の有効成分としては、β−NMNの薬理学的に許容される塩であってもよい。β−NMNの薬理学的に許容される塩としては、無機酸塩であってもよく、アミンのような塩基性部位を有する有機酸塩であってもよい。このような酸塩を構成する酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エテンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。また、β−NMNの薬理学的に許容される塩としては、アルカリ塩であってもよく、カルボン酸のような酸性部位を有する有機塩であってもよい。このような酸塩を構成する塩基としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であって、水素化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、アンモニア、トリメチルアンモニア、トリエチルアンモニア、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、プロカイン、ジエタノールアミン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基から誘導されるものが挙げられる。
本発明に係る活性化剤の有効成分としては、遊離のβ−NMN又はβ−NMNの薬理学的に許容される塩の溶媒和物であってもよい。当該溶媒和物を形成する溶媒としては、水、エタノール等が挙げられる。
本発明に係る活性化剤は、有効成分のみからなるものであってもよく、その他の成分を含むものであってもよい。例えば、本発明に係る活性化剤は、有効成分を医薬用無毒担体と組み合わせて、製剤上の常套手段により様々な剤型に製剤化することができる。本発明に係る活性化剤の剤型のうち、経口投与剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤;溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤;凍結乾燥製剤等が挙げられる。非経口投与剤としては、注射剤のほか、坐剤、噴霧剤、経皮吸収剤等が挙げられる。
製剤化に使用する医薬用無毒担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、果糖、還元麦芽糖等の糖類;デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、デキストリン、β−シクロデキストリン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の炭水化物;マンニトール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール;脂肪酸グリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエステル類;ポリエチレングリコール、エチレングリコール、アミノ酸、アルブミン、カゼイン、二酸化珪素、水、生理食塩水等が挙げられる。また、本発明に係る活性化剤の製剤化においては、製剤上の必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、結合剤、崩壊剤、溶剤、溶解補助剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、矯味矯臭剤、着色剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。
本発明に係る免疫力増強剤は、本発明に係る活性化剤を、そのNK細胞の細胞障害性活性化効果が発揮されるために十分な量含有させたものである。本発明に係る免疫力増強剤は、本発明に係る活性化剤のみを有効成分として含有するものであってもよく、その他の有効成分を含有するものであってもよい。当該他の有効成分としては、穀物由来のアルキルレゾルシノール、酵母由来のβ−グルカン、アガリスク、フコイダン、プロポリス、アラビノキシラン、ラクトフェリン、ムチン、ルチン、イソフラボン、スピルナ、ポリフェノール、セサミン、アリシン、アスタキサンチン、クルクミン、カテキン、キトサン、キトサンオリゴ糖、キチンオリゴ糖、L−アスコルビン酸、コエンザイムQ10等の免疫力の増強作用を有することが知られている各種成分が挙げられる。
本発明に係る免疫力増強剤は、本発明に係る活性化剤と同様に、有効成分を医薬用無毒担体と組み合わせて、製剤上の常套手段により様々な剤型に製剤化することができる。本発明に係る免疫力増強剤の製剤化は、前記と同様にして行うことができる。
本発明に係る活性化剤及び免疫力増強剤は、ヒトやヒト以外の動物に投与されることが好ましい。ヒト以外の動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ロバ、サル、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等の哺乳動物が挙げられる。本発明に係る活性化剤及び免疫力増強剤としては、ヒト、家畜、実験動物、ペットに投与・摂取されるものであることが好ましく、ヒトに投与・摂取されるものであることがさらに好ましい。
本発明に係る活性化剤及び免疫力増強剤の投与・摂取量は、投与される動物の生物種、年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により、適宜選択・決定される。例えば、成人1人あたりの1日量を、β−NMN量として、0.1mg〜10g、好ましくは0.5mg〜7g、より好ましくは10mg〜5g、さらに好ましくは100mg〜2gを、1回又は数回に分けて投与することができる。
β−NMNは、生体構成成分であり、かつ食品中にも含まれている成分であることから、安全性が高いと考えられる。そこで、本発明に係る活性化剤は、免疫力の増強のために摂取される健康補助食品の有効成分として用いることができる。健康補助食品は、健康状態の維持又は改善を目的として栄養を補助するための飲食品であり、特定保健用食品、栄養機能食品、及び健康食品も含む。
また、本発明に係る活性化剤は、免疫力の増強のために動物に摂取させる飼料の有効成分として用いることができる。当該飼料を家畜、ペット、実験動物等に与えることにより、摂取させた動物のNK細胞の細胞障害性を高める結果、当該動物の免疫力が維持され、健康の維持に貢献できる。
本発明に係る健康補助食品及び飼料は、β−NMN等に適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、粉末状、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、ペースト状等に形成することによって製造できる。本発明に係る健康補助食品は、そのまま食用に供してもよく、種々の食品や飲料に混合させた状態で食用に供してもよい。例えば、粉末状の健康補助食品を、水、酒類、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲料に溶解又は分散させた状態で摂取させることができる。本発明に係る飼料も、そのまま動物に摂取させてもよく、他の固形飼料や飲料水に混合させた状態で動物に摂取させてもよい。
本発明に係る健康補助食品及び飼料は、その他の食品素材や種々の添加剤を含有することができる。食品素材としては、ビタミン類、糖質、蛋白質、脂質、食物繊維、果汁等が挙げられる。具体的には、例えば、ビタミンB誘導体、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンB12、ビタミンB13、ビオチン、パントテン酸、ニコチン酸、葉酸等のビタミンB群;ビタミンE、ビタミンD又はその誘導体、ビタミンK、ビタミンK、βカロチン等の脂溶性ビタミン;カルシウム、カリウム、鉄、亜鉛等のミネラル;酵母、L−カルニチン、クレアチン、α−リポ酸、グルタチオン、グルクロン酸、タウリン、コラーゲン、大豆イソフラボン、レシチン、ペプチド、アミノ酸、γ−アミノ酪酸、ジアシルグリセロール、DHA、EPA、カプサイシン、コンドロイチン硫酸、アガリクス茸エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、青汁、レシチン、ローヤルゼリー、プロポリス、オクタコサノール、フラバンジェノール、ピクノジェノール、マカ、キトサン、ガルシニアエキス、コンドロイチン、グルコサミン等が挙げられる。添加剤としては、甘味料、有機酸等の酸味料、安定剤、香料、着色料等が挙げられる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[マウス及び腹腔内投与]
以降の実験に用いたC57BL/6Nマウス、C57BL/6Jマウス、及びBALB/cマウスは、全実験期間中を通して、SPF環境下で飼育した。
マウスへの腹腔内投与は、β−NMN(オリエンタル酵母工業社製)をPBS(リン酸生理食塩水)に溶解させた溶液を、Dr. Sinclair 等の方法(非特許文献1)及びDr. Imai等の方法(非特許文献2)などに従って腹腔内投与した。具体的には、β−NMNの投与量が125mg/kg/day、313mg/kg/day、625mg/kg/day、及び1250mg/kg/dayの場合には、それぞれ、12.5mg/mL、31.3mg/mL、62.5mg/mL、及び125mg/mLにPBSで調整したβ−NMN溶液を、1日に、マウスに対して体重20g当たり200μLずつ腹腔内投与した。コントロールのマウスに対しては、1日に、PBSを200μLずつ腹腔内投与した。
[単核球の分離]
以降の実験において、マウスの肝臓及び脾臓からの単核球の分離は、以下のようにして行った。
肝臓からの単核球の分離は、まず、マウスから摘出した肝臓を、10cmシャーレ上で金属メッシュ(0.12×80、目開き0.2mm)上で、10mLの3%FCS−RPMI(3%のウシ胎児血清を含有させたRPMI培地)中ですりつぶし、組織抽出液を得た。得られた組織抽出液を50mL容チューブに移し、1500rpmにて5分間遠心分離処理した。得られた細胞のペレットを、33%Percoll液に懸濁し、得られた細胞懸濁液を1800rpmにて15分間遠心分離処理した。得られたペレットに1mLのlysing buffer{3.73gのNHClと0.45gのKHCOと0.165gのEDTA−Naを450mLの蒸留水に溶かした溶液と、50mLのTris−HCl Buffer(20.6gのTrisをHClでpH7.65に調整して1Lに調整した溶液)の混合物}を添加し、赤血球を溶解させた。次いで、処理後の溶液を15mL容チューブへ移し、10mLの3%FCS−RPMIを加え、1500rpmにて5分間遠心分離処理することにより肝臓の単核球を得た。
脾臓からの単核球の分離は、まず、マウスから摘出した脾臓を、肝臓と同様にして、金属メッシュ上ですりつぶし、得られた組織抽出液を遠心分離処理して細胞のペレットを得た。得られたペレットに1mLのlysing bufferを添加し、赤血球を溶解させた。次いで、処理後の溶液を15mL容チューブへ移し、10mLの3%FCS−RPMIを加え、1500rpmにて5分間遠心分離処理することにより脾臓の単核球を得た。
[NK細胞活性の測定]
以降の実験において、NK細胞の細胞傷害活性の測定は、NK感受性細胞株YAC−1細胞を標的細胞として、51Crを用いた4時間のCrリリースアッセイにより行った(非特許文献3〜5参照。)。
具体的には、まず、YAC−1細胞をNa51CrO存在下で1時間培養して51Crにてラベルした後、10%FCS−RPMI(10%のFCSを含有させたRPMI培地)に1×10細胞/mLとなるように懸濁させた。
このラベル済YAC−1細胞懸濁液を、1ウェル当たり100μL(1×10細胞)ずつ分注した。次いで、96ウェルプレート「96-well round-bottomed microtitre plate」(NUNC, Roskilde, Denmark)の各ウェルに、マウスの脾臓又は肝臓から分離した単核球の10%FCS−RPMI懸濁液を、所定のEffector(単核球)/Target(YAC−1細胞)比となるように添加し、さらに1ウェル当たりの溶液量が200μLとなるように必要に応じて10%FCS−RPMIを添加した。コントロールとして、単核球を添加せず、100μLのラベル済YAC−1細胞懸濁液と100μLの10%FCS−RPMIの混合したウェルも調製した。このプレートを、5%COの加湿空気中、37℃で4時間培養した。培養後、各ウェルから上清を回収し、そのγ線量(cpm)を測定した。
特異的溶解率(特異的に溶解した細胞の比率、%)を、以下の計算式に基づき算出した。式中、「測定された放出量」は、単核球とYAC−1細胞の混合物の培養上清のγ線量の実測値であり、「自然放出量」は、YAC−1細胞のみの培養上清(コントロールの培養上清)のγ線量の実測値であり、「最大放出量」は、1ウェルに分注したラベル済YAC−1細胞の全細胞を溶解させた場合のγ線量の実測値である。各処置群のNK細胞の細胞傷害活性(cytotoxicity、%)は、各処置群のマウスから得られた特異的溶解率(%)の平均値±SDで表記した。
[特異的溶解率(%)]=100×([測定された放出量(cpm)]−[自然放出量(cpm)])/([最大放出量(cpm)]−[自然放出量(cpm)])
[NK細胞の比率の測定]
以降の実験において、各マウスから回収された単核球に占めるNK細胞の比率(%)の測定は、免疫染色法により行った(非特許文献3〜5参照。)。
具体的には、まず、抗体の非特異的なFcレセプターへの結合を抑制するために、単核球に抗マウスFcγレセプター抗体(2.4G2)を加えてインキュベートした後、FITC標識抗CD3抗体(145−2C11)とPE標識抗NK1.1抗体(PK136)を用いて単核球を染色した。染色後の細胞を、フローサイトメーター「FACS Caliber」(BD Bioscience社製)を用いて分析した後、分析結果をソフトウェア「Cell Quest Pro」(BD Bioscience社製)を用いて解析した。
[実施例1]
C57BL/6Nマウス(22週齢、メス)を用いて、β−NMNを625mg/kg/dayで8日間腹腔内投与した(β−NMN(625mg)投与群、n=3)。コントロール群(n=3)のマウスには、PBSを200μL/dayで腔内投与した。投与開始から8日後に、各マウスから肝臓を採取してNK細胞活性を測定した。NK細胞活性の測定は、Effector/Target比を30、15、7.5、又は3.8とした条件で行った。
各処置群のNK細胞活性(%)の測定結果を図1に示す。β−NMN(625mg)投与群では、コントロール群と比べて有意にNK細胞活性の増加が見られ、β−NMNにNK細胞活性を増強させる効果があることが示された。
[実施例2]
C57BL/6Nマウス(25週齢、メス)を用いて、β−NMNを625mg/kg/day(β−NMN(625mg)投与群、n=3)又は1250mg/kg/day(β−NMN(1250mg)投与群、n=3)で4日間腹腔内投与した。コントロール群(n=3)のマウスには、PBSを200μL/dayで腹腔内投与した。投与開始から4日後に、各マウスから肝臓及び脾臓を採取してNK細胞活性を測定した。NK細胞活性の測定は、肝臓から採取した単核球ではEffector/Target比を20、10、又は5とした条件で、脾臓から採取した単核球ではEffector/Target比を100とした条件で、それぞれ行った。
各処置群のNK細胞活性(%)の測定結果を図2に示す。肝臓由来の単核球では、β−NMNを4日間投与した群は、実施例1の場合と同様に、コントロール群に比べて有意にNK細胞活性の増加が見られた。また、脾臓由来の単核球でも、β−NMN投与群では、コントロール群に比べてNK細胞活性の増加が観察された。これらの結果から、4日間という短期間の投与であっても、β−NMNにNK細胞活性を増強させる効果があることが示された。また、肝臓由来の単核球と脾臓由来の単核球のいずれにおいても、β−NMN(625mg)投与群とβ−NMN(1250mg)投与群の比較では有意な差は見られず、β−NMNによるNK細胞活性増強効果は、625mg/kg/dayで充分に得られることが示された。
[実施例3]
BALB/cマウス(8週齢、メス)を用いて、β−NMNを625mg/kg/day(β−NMN(625mg)投与群、n=3)で4日間腹腔内投与した。コントロール群(n=3)のマウスには、PBSを200μL/dayで腹腔内投与した。投与開始から4日後に、各マウスから肝臓及び脾臓を採取してNK細胞活性を測定した。NK細胞活性の測定は、肝臓から採取した単核球ではEffector/Target比を20、10、又は5とした条件で、脾臓から採取した単核球ではEffector/Target比を100又は50とした条件で、それぞれ行った。
各処置群のNK細胞活性(%)の測定結果を図3に示す。肝臓由来の単核球では、β−NMNを4日間投与した群は、実施例2の場合と同様に、コントロール群に比べて有意にNK細胞活性の増加が見られた。また、脾臓由来の単核球でも、β−NMN投与群では、コントロール群に比べてNK細胞活性の増加が観察された。これらの結果から、別系統で、若齢のマウスであってもβ−NMNによってNK細胞活性を増強させる効果が得られることが示された。
[実施例4]
C57BL/6Nマウス(8ヶ月齢、メス)及びBALB/cマウス(8ヶ月齢、メス)を用いて、β−NMNを625mg/kg/day(β−NMN(625mg)投与群、n=3)で4日間経口投与した。コントロール群(n=3)のマウスには、PBSを200μL/dayで経口投与した。投与開始から4日後に、各マウスから肝臓及び脾臓を採取してNK細胞活性を測定した。NK細胞活性の測定は、肝臓から採取した単核球ではEffector/Target比を20、10、又は5とした条件で、脾臓から採取した単核球ではEffector/Target比を200、100、又は50とした条件で、それぞれ行った。
各処置群のNK細胞活性(%)の測定結果を図4に示す。いずれのマウスにおいても、肝臓由来の単核球と脾臓由来の単核球の両方において、β−NMNを4日間投与した群は、コントロール群に比べて有意にNK細胞活性の増加が見られた。これらの結果から、マウスの系統にかかわらず、β−NMNを経口投与した場合であっても、NK細胞活性を増強させる効果が得られることが示された。
[実施例5]
C57BL/6Jマウス(9ヶ月齢、メス)を用いて、β−NMNを125mg/kg/day(β−NMN(125mg)投与群、n=3)、313mg/kg/day(β−NMN(313mg)投与群、n=3)、625mg/kg/day(β−NMN(625mg)投与群、n=3)、又は1250mg/kg/day(β−NMN(1250mg)投与群、n=3)で4日間腹腔内投与した。コントロール群(n=3)のマウスには、PBSを200μL/dayで腹腔内投与した。投与開始から4日後に、各マウスから肝臓及び脾臓を採取してNK細胞活性を測定した。NK細胞活性の測定は、肝臓から採取した単核球ではEffector/Target比を20、10、又は5とした条件で、脾臓から採取した単核球ではEffector/Target比を100とした条件で、それぞれ行った。
各処置群のNK細胞活性(%)の測定結果を図5に示す。この結果、肝臓由来の単核球と脾臓由来の単核球の両方において、β−NMNの容量依存的にNK細胞活性の増加が観察された。

Claims (5)

  1. β−ニコチンアミドモノヌクレオチドその薬理学的に許容される塩、及びそれらの溶媒和物から選ばれるひとつを有効成分とすることを特徴とする、ナチュラルキラー細胞の活性化剤。
  2. 経口投与される、請求項1に記載の活性化剤。
  3. 請求項1又は2に記載の活性化剤を含有する、免疫力増強剤。
  4. 請求項1又は2に記載の活性化剤を含有し、免疫力の増強のため、健康補助食品。
  5. 請求項1又は2に記載の活性化剤を含有し、免疫力の増強のため、飼料。
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