JPWO2018147205A1 - めっきの前処理方法、めっき方法、めっき前処理物及びめっき物 - Google Patents
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Abstract
シランカップリング剤を被めっき部材の表面に化学的に結合させる。めっき膜を構成する金属イオンとキレート錯体を形成可能な多官能化合物の複数の官能基の少なくとも一つをシランカップリング剤に化学的に結合させる。
Description
本実施形態において、被めっき部材に対してめっきを行うめっき方法は、キレート剤を被めっき部材の表面に結合させる前処理工程と、キレート剤を結合させた被めっき部材の表面にめっきを施すことによりめっき膜を形成するめっき工程とを備えている。
キレート剤は、めっき膜を構成する金属とキレート錯体を形成可能な多官能化合物からなる。
本発明において、めっきされる部材である被めっき部材は、特に限定されない。被めっき部材として、ヒドロキシル基が導入可能な無機部材を用いてもよい。本発明において、被めっき部材としては、具体的には、例えば、炭素材料や窒化アルミ材料、窒化ケイ材料等が挙げられる。
シランカップリング剤は、被めっき部材及び多官能化合物に応じて適宜選択することができる。被めっき部材が例えば黒鉛である場合に好ましく用いられるシランカップリング剤としては、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アミノ系シランカップリング剤、イソシアネート系シランカップリング剤等が挙げられる。
シランカップリング剤と多官能化合物との反応を促進するために、縮合剤を用いてもよい。好ましく用いられる縮合剤の具体例としては、例えば、トリアジン系縮合剤、カルボジイミド系縮合剤、イミダゾール系縮合剤、ホスホニウム系縮合剤、ウロニウム系縮合剤、ハロウロニウム系縮合剤等が挙げられる。
本実施形態において、被めっき部材に対してめっきを行うに際しては、まず、めっき前処理を行う。具体的には、シランカップリング剤を被めっき部材の表面に化学的に結合させる。めっき膜を構成する金属イオンとキレート錯体を形成可能な多官能化合物の複数の官能基の少なくとも一つをシランカップリング剤に化学的に結合させる。めっき膜を構成する金属と結合し得る官能基が3つ以上形成されるように、多官能化合物を被めっき部材の表面に結合させることが好ましく、めっき膜を構成する金属と結合し得る官能基が4つ以上形成されるように、多官能化合物を被めっき部材の表面に結合させることがより好ましい。
上述の工程を行うことにより、めっき処理前物を製造することができる。めっき処理前物は、被めっき部材と、被めっき部材に結合したシランカップリング剤と、シランカップリング剤と結合した、めっき膜を構成する金属イオンとキレート錯体を形成可能な多官能化合物とを備えている。被めっき部材や、シランカップリング剤、めっき膜を構成する多官能化合物の詳細に関しては、前述の通りである。
図2に、製造されためっき物の模式的断面図を示す。図2に示すように、めっき物1は、被めっき部材10と、被めっき部材10の表面上に設けられためっき膜11とを備えている。被めっき部材10のめっき膜11が形成されている表面10aには、めっき膜11を構成している金属と多官能化合物が結合している。この多官能化合物により、被めっき部材10とめっき膜11との密着性、均一性及び均質性が向上されている。
等方性黒鉛材料(東洋炭素製 IG−43:CIP−A)を0.5Mの硝酸水溶液に室温で1時間浸漬させた後、水洗・乾燥した。次に、1質量%の3−アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤:CP−A)を含むメタノール溶液に1時間浸漬させ、アミノプロピル基を導入した。その後、アミノプロピル基が導入された等方性黒鉛材料を1mmolのエチレンジアミン四酢酸(EDTA:キレート剤)と、縮合剤として1.1倍モルのトリアジン系縮合剤(DMT−MM)とを含むメタノール溶液に浸漬し、さらに1時間反応させ、これを希塩酸で洗浄・乾燥して表面にEDTAが導入された黒鉛材料を得た。このEDTAが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、厚さ8μmの銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜の密着性をJIS K5600−5−6−1999記載のクロスカット試験に準じて直角の格子パターンを切り込んで評価したところ、剥離数は0個/25マスであった。めっき膜はカットの縁や交差点において剥がれているが、その状態はJIS記載の分類法に従って2と判断された。
(実施例2)
等方性黒鉛材料をCIP−B(東洋炭素製 ISEM−8)に変更する以外は実施例1と同様の方法で表面にEDTAが導入された黒鉛材料を得た。このEDTAが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は2であった。
CIP−Aを1.0Mの硝酸水溶液に室温で1時間浸漬させた後、水洗・乾燥した。次に、1質量%のCP−Aを含むメタノール溶液に1時間浸漬させ、アミノプロピル基を導入した。その後、アミノプロピル基が導入された等方性黒鉛材料を1mmolのEDTAと、縮合剤として1.1倍モルのDMT−MMとを含むメタノール溶液に浸漬し、さらに1時間反応させ、これを希塩酸で洗浄・乾燥して表面にEDTAが導入された黒鉛材料を得た。このEDTAが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、厚さ8μmの銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は1であった。
CIP−Aを1.0Mの硝酸水溶液に室温で1時間浸漬させた後、水洗・乾燥した。次に、1質量%のN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(シランカップリング剤:CP−B)を含むメタノール溶液に1時間浸漬させ、アミノプロピル基を導入した。その後、アミノプロピル基が導入された等方性黒鉛材料を1mmolのtrans−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸一水和物(CyDTA:キレート剤)と、縮合剤として1.1倍モルのトリアジン系縮合剤(DMT−MM)とを含むメタノール溶液に浸漬し、さらに1時間反応させ、これを希塩酸で洗浄・乾燥して表面にCyDTAが導入された黒鉛材料を得た。このCyDTAが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、厚さ8μmの銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は0であった。
(実施例5)
シランカップリング剤を3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(CP−C)としたこと以外は実施例3と同様にして銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は0であった。
(実施例6)
めっき法を無電解めっきとしたこと以外は実施例4と同様にして銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。無電解めっきは、CIP−Aを水洗した後、センシタイザーとなるSnCl2とアクティベーターとなるPdCl2が添加された前処理液に浸漬し、銅イオン源として硫酸銅を、錯化剤としてEDTAを用いてホルムアルデヒドで還元することで行った。基材表面には厚さは2μmの均一な膜厚の銅が被覆された。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は1であった。
(実施例7)
キレート剤をジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)としたこと以外は実施例4と同様にして銅で被覆された黒鉛材料を得た。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は0であった。
(実施例8)
キレート剤をO,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)としたこと以外は実施例4と同様にして銅で被覆された黒鉛材料を得た。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は1であった。
(実施例9)
キレート剤をトリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)としたこと以外は実施例4と同様にして銅で被覆された黒鉛材料を得た。得られためっき膜のクロスカット試験結果は0/25、分類は0であった。
CIP−Aを1.0Mの硝酸水溶液に室温で1時間浸漬させた後、水洗・乾燥した。次に、1質量%のCP−Aを含むメタノール溶液に1時間浸漬させ、アミノプロピル基を導入した。CP−Aが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、厚さ8μmの銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜のクロスカット試験結果は1/25、分類は3であった。
CIP−Aを1.0Mの硝酸水溶液に室温で1時間浸漬させた後、水洗・乾燥した。次に、1質量%のCP−Bを含むメタノール溶液に1時間浸漬させ、アミノプロピル基を導入した。CP−Bが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜のクロスカット試験結果は2/25、分類は3であった。
CP−AをCP−Cとしたこと以外は実施例5と同様にしてCP−Cが表面に導入された黒鉛材料に対して電解銅めっきを行い、銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。めっき膜にむらはなく、めっき膜は、均質な膜質を有していた。得られためっき膜のクロスカット試験結果は2/25、分類は3であった。
(比較例4)
CIP−Aを0.5Mの硝酸水溶液に室温で1時間浸漬させた後、水洗・乾燥してから電解銅めっきを行い、厚さ8μmの銅めっき膜で被覆された黒鉛材料を得た。得られためっき膜には、部分的なはがれが観察され、めっき膜は、均質な膜質を有していなかった。めっき膜のクロスカット試験結果は11/25、分類は3であった。
(比較例5)
CIP−Aに対して表面処理を行わず、等方性黒鉛材料に対して厚さ8μmの電解銅めっきを行った。得られためっき膜には、部分的なはがれが観察され、めっき膜は、均質な膜質を有していなかった。めっき膜のクロスカット試験結果は7/25、分類は4であった。
(比較例6)
CIP−Aに対して表面処理を行わず、実施例5と同様に無電解銅めっきを行った。めっき膜のクロスカット試験結果は10/25、分類は5であった。
CIP−Bに対して表面処理を行わず、比較例2と同様に無電解銅めっきを行った。めっき膜のクロスカット試験結果は12/25、分類は5であった。
10 :被めっき部材
10a:被めっき部材の表面
11 :めっき膜
Claims (11)
- シランカップリング剤を被めっき部材の表面に化学的に結合させる工程と、
めっき膜を構成する金属イオンとキレート錯体を形成可能な多官能化合物の複数の官能基の少なくとも一つをシランカップリング剤に化学的に結合させる工程と、
を含む、めっき前処理方法。 - 前記多官能化合物が、カルボキシル基を複数有する、請求項1に記載のめっき前処理方法。
- 前記多官能化合物が、めっき膜を構成する金属イオンと結合し得る官能基を3つ以上有する、請求項1または2に記載のめっき前処理方法。
- 前記多官能化合物が、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸、エチレンジアミン−N,N’−二酢酸−N,N’−ジプロピオン酸水和物、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、L−アスパラギン酸−N−N−二酢酸、ヒドロキシイミノジコハク酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸一水和物、O,O’−ビス(2−アミノエチル)エチレングリコール−N,N,N’,N’−四酢酸からなる群から選ばれた少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のめっき前処理方法。
- 前記シランカップリング剤として、鎖中及び末端の少なくとも一方に第一級アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基からなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有するシランカップリング剤を用いる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のめっきの前処理方法。
- 前記被めっき部材として、ヒドロキシル基が導入可能な無機部材を用いる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のめっき前処理方法。
- 前記被めっき部材として、炭素材料、窒化アルミ材料または窒化ケイ素材料を用いる、請求項6に記載のめっき前処理方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項に記載のめっき前処理方法を行う前処理工程と、
前記前処理工程を行った前記被めっき部材の表面にめっきを施すことによりめっき膜を形成するめっき工程と、
を備える、めっき方法。 - 前記前処理工程において前記被めっき部材の表面を酸化する工程を行う、請求項8に記載のめっき方法。
- 被めっき部材と、
被めっき部材の表面に化学的に結合したシランカップリング剤と、
複数の官能基の少なくとも一つが前記シランカップリング剤と結合した、めっき膜を構成する金属イオンとキレート錯体を形成可能な多官能化合物と、
を備える、めっき前処理物。 - 被めっき部材と、
被めっき部材の表面に化学的に結合したシランカップリング剤と、
複数の官能基の少なくとも一つが前記シランカップリング剤と結合した、めっき膜を構成する金属イオンとキレート錯体を形成可能な多官能化合物と、
前記多官能器化合物の前記シランカップリング剤と結合していない複数の官能基と結合しているめっき膜と、
を備える、めっき物。
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