以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る換気システム1について説明する。換気システム1は、換気対象のエリアを換気するシステムである。換気とは、換気対象のエリア内の空気環境を維持又は改善するために、当該エリア内の空気を当該エリア外の空気と入れ替えることを意味する。以下では、換気対象のエリアを「換気エリア」と呼ぶ。
図1に示すように、換気システム1は、家屋Hに設置される。家屋Hは、一例として、いわゆる一般的な戸建て住宅である。換気システム1は、家屋H内の換気エリアを換気する複数の換気装置20a,20b,…と、人によって視聴される複数の視聴装置40a,40b,…と、システム全体を制御する制御装置50と、を備える。また、換気システム1は、それぞれ換気エリアの環境に関する情報を検知するセンサである、複数の音センサ31a,31b,…、複数の臭気センサ32a,32b,…、及び、複数の人感センサ33a,33b,…を備える。
これら各装置及び各センサは、家屋H内又は家屋Hの敷地内に設置されており、宅内ネットワークN1を介して通信可能に接続されている。宅内ネットワークN1は、例えばエコーネットライト(ECHONET Lite)に準じたネットワークである。また、各装置及び各センサは、図示しない商用電源、太陽光発電設備、蓄電設備等から電力の供給を得て動作する。
図2に、家屋Hの平面図を示す。図2に示すように、家屋Hは、1つのフロアに、リビング、ダイニング、キッチン、寝室、子供部屋、玄関、廊下、浴室、トイレ等の部屋及び空間を備えている。以下では、リビングとダイニングとキッチンとを合わせて「LDK」と呼ぶ。これら部屋及び空間は、図2において斜線を付して示している扉によって、行き来可能に接続されている。なお、家屋Hは、図2に示した部屋又は空間以外にも、別のフロアに別の部屋及び空間を備えていても良い。各装置及び各センサは、このような部屋及び空間内の適宜の場所に設置されている。
換気装置20a,20b,…は、家屋H内の換気エリアを換気する設備である。換気装置20a,20b,…のそれぞれは、例えば、換気扇、全熱交換器、カウンターアローファン、レンジフード、バス乾燥機、又は、中間取付ファンである。換気装置20a,20b,…のそれぞれは、家屋Hの壁、天井等、換気エリアを換気可能な位置に設置される。なお、換気装置20a,20b,…のそれぞれは、ダクトを介して空気を送る方式の設備であっても良いし、外壁に直接取り付けられ、ダクトを介さずに空気を送る方式の設備であっても良い。また、換気装置20a,20b,…のそれぞれは、給気及び排気の両方の機能を備えていても良いし、給気及び換気のどちらか一方だけの機能を備えていても良い。
図2の例では、リビングとキッチンと寝室と子供部屋と浴室とに、それぞれ換気装置20a〜20eが設置されている。換気装置20a〜20eは、それぞれ設置されたエリアを換気する。例えば、換気装置20a,20c,20dは、屋外の新鮮な空気を、それぞれリビング、寝室及び子供部屋に供給する。また、換気装置20b,20eは、それぞれキッチン及び浴室の空気を、屋外に排出する。このように、換気装置20a〜20eのそれぞれが、自装置が設置された換気エリアを換気することによって、家屋H全体が換気される。以下、換気装置20a,20b,…のそれぞれを区別せずに称する場合には、換気装置20と総称する。
図3に示すように、換気装置20(20a,20b,…)のそれぞれは、制御部21と、記憶部22と、計時部23と、通信部24と、換気部25と、を備える。これら各部はバス29を介して接続されている。
制御部21は、いずれも図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はDSP(Digital Signal Processor)ともいう。制御部21において、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、換気装置20を統括制御する。
記憶部22は、例えば、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリであって、いわゆる二次記憶装置(補助記憶装置)としての役割を担う。記憶部22は、この換気装置20を識別するための識別情報、制御装置50と通信するためのプログラム及びデータ、並びに、換気部25を制御するためのプログラム及びデータを記憶する。
計時部23は、RTC(Real Time Clock)を備えており、換気装置20の電源がオフの間も計時を継続する計時デバイスである。
通信部24は、宅内ネットワークN1に接続し、宅内ネットワークN1を介して制御装置50と通信するための通信インタフェースを備える。具体的に説明すると、通信部24は、制御装置50から換気装置20の運転指令を取得する。制御部21は、受信した運転指令に従って換気部25を制御して、換気を開始又は停止させる。また、通信部24は、換気部25による現在の換気量を制御装置50に通知する。
換気部25は、換気装置20の本来的な機能を実現するための構成部であって、換気エリアを換気する換気手段として機能する。具体的に説明すると、換気部25は、何れも図示しないが、ファン、モータ、及び、モータ駆動回路を備える。モータ駆動回路は、通信部24により受信された制御装置50からの制御データに基づいて、モータを駆動させる。これにより、モータは、回転軸を介して接続するファンを回転させる。ファンが回転すると、屋外の空気が家屋H内に取り込まれて、又は、家屋H内の空気が屋外へ排出される。
音センサ31a,31b,…は、マイクロフォンともいい、音を検知するセンサである。音とは、会話、音声、音楽、騒音、雑音等、人の聴覚を刺激するものである。音センサ31a,31b,…は、空気の振動を検知する振動検知部と、検知した振動を電気信号に変換する変換部と、を備えており、周知の方式で音の大きさを検知する。音の大きさは、音圧レベルとも呼ばれ、デシベル(dB)の単位で表される。
図2の例では、リビング、寝室及び子供部屋に、それぞれ音センサ31a〜31cが設置されている。音センサ31a〜31cは、それぞれ、リビング、寝室及び子供部屋で聞こえる音を検知する。音センサ31a〜31cによって検知される音は、家屋Hの内部から発生した生活音と、家屋Hの外部から発生した環境音と、を含む。以下、音センサ31a,31b,…のそれぞれを区別せずに称する場合には、音センサ31と総称する。
臭気センサ32a,32b,…は、臭気を検知するセンサである。臭気とは、例えば、食べ物、煙、排水、ペット等から発生し、空気中を漂って人の臭覚を刺激するものである。臭気は、匂い、香り、悪臭等を含む。臭気センサ32a,32b,…は、半導体式、水晶振動子式等のような周知の方式で、キッチンにおける臭気の強さを検知する。臭気の強さは、臭気レベルとも呼ばれ、空気中における臭気の元となる物質の濃度で表される。
図2の例では、キッチンに臭気センサ32aが設置されている。臭気センサ32aは、キッチンでの料理の際に発生した匂い、キッチンに置かれた飲食物から発生した匂い等を検知する。なお、家屋H内には、臭気センサ32a以外にも、図2に示したフロアとは別のフロアに、臭気センサ32b,…が設置されていても良い。以下、臭気センサ32a,32b,…のそれぞれを区別せずに称する場合には、臭気センサ32と総称する。
人感センサ33a,33b,…は、人の存在を検知する人感センサである。人とは、例えば、家屋Hの居住者又は所有者である。人感センサ33a,33b,…は、一例として、赤外線を介して周囲の温度変化を検知することによって、周囲に人が存在しているか否かを検知する赤外線センサである。或いは、人感センサ33a,33b,…は、周囲の画像を撮影し、撮影した画像を解析することによって、周囲に人が存在しているか否かを検知する画像センサであっても良い。
図2の例では、リビング及び寝室に、それぞれ人感センサ33a,33bが設置されている。人感センサ33a,33bは、それぞれ、リビング及び寝室に人が存在しているか否かを検知する。以下、人感センサ33a,33b,…のそれぞれを区別せずに称する場合には、人感センサ33と総称する。
音センサ31(31a,31b,…)、臭気センサ32(32a,32b,…)、及び、人感センサ33(33a,33b,…)のそれぞれは、いずれも図示しないが、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース及び読み書き可能な不揮発性の半導体メモリを備える。これら各センサは、通信インタフェースを介して宅内ネットワークN1と接続されており、宅内ネットワークN1を介して、検知結果を示す検知情報を制御装置50に送信する。
視聴装置40a,40b,…は、人によって視聴される装置である。視聴装置40a,40b,…のそれぞれは、例えば、テレビ、オーディオプレイヤ、ラジカセ等のような、人が見る又は聞くことによって利用する装置である。
図2の例では、リビング及び子供部屋に、それぞれ視聴装置40a,40bが設置されている。リビング又は子供部屋に居る人は、操作部を操作して、視聴装置40a又は視聴装置40bの稼働を開始又は停止させることができる。以下、視聴装置40a,40b,…のそれぞれを区別せずに称する場合には、視聴装置40と総称する。
視聴装置40(40a,40b,…)のそれぞれは、いずれも図示しないが、CPU、ROM、RAM、通信インタフェース及び読み書き可能な不揮発性の半導体メモリを備える。CPUは、RAMをワークメモリとして用いながらROMに格納された制御プログラムを実行することにより、視聴装置40の動作を制御する。CPUは、視聴装置40が稼働しているか否かを示す稼働情報を、宅内ネットワークN1を介して制御装置50に送信する。
制御装置50は、家屋H内に設置された各装置から宅内ネットワークN1を介して送信される情報を収集する情報収集ユニットである。制御装置50は、一例として、家屋H内に設置された各装置を統合的に制御することが可能なHEMS(Home Energy Management System)コントローラである。制御装置50は、各装置から収集した情報に基づいて、複数の換気装置20のそれぞれの換気量を制御する。
図4に示すように、制御装置50は、制御部51と、記憶部52と、ユーザインタフェース53と、計時部54と、宅内通信部55と、宅外通信部56と、を備える。これら各部はバス59を介して接続されている。
制御部51は、いずれも図示しないが、CPU、ROM及びRAMを備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ又はDSPともいう。制御部51において、CPUは、ROMに格納されたプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、制御装置50を統括制御する。
記憶部52は、例えば、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の不揮発性の半導体メモリであって、いわゆる二次記憶装置又は補助記憶装置としての役割を担う。記憶部52は、制御部51が各種処理を行うために使用するプログラム及びデータ、並びに、制御部51が各種処理を行うことにより生成又は取得するデータを記憶する。
ユーザインタフェース53は、表示部57と入力部58とを備える。表示部57は、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL、LED(Light Emitting Diode)等の表示デバイスである。入力部58は、タッチパネル、タッチパッド、スイッチ、押圧ボタン等の入力デバイスである。ユーザインタフェース53は、入力部58を介してユーザから操作を受け付け、また、表示部57を介して表示画像を表示する。なお、表示部57と入力部58とは、これらが互いに重畳して配置されたタッチパネル又はタッチスクリーンとして構成されるものであってもよい。
計時部54は、RTCを備えており、制御装置50の電源がオフの間も計時を継続する計時デバイスである。
宅内通信部55は、宅内ネットワークN1に接続し、宅内ネットワークN1を介して家屋H内の機器と通信するための通信インタフェースを備える。宅内通信部55は、制御部51の制御のもと、宅内ネットワークN1を介して、複数の換気装置20、複数のセンサ31,32,33、及び、複数の視聴装置40のそれぞれと通信する。
宅外通信部56は、インターネット等の広域ネットワークに接続し、広域ネットワークを介して家屋Hの外部の機器と通信するための通信インタフェースを備える。
次に、図5を参照して、換気システム1の機能的な構成について説明する。図5に示すように、制御装置50は、機能的に、情報取得部510と、在否判定部520と、換気制御部530と、入力受付部550と、報知部560と、を備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部52に記憶される。そして、制御部51において、CPUが、ROM又は記憶部52に記憶されたプログラムを実行することによって、各機能を実現する。
情報取得部510は、複数の換気エリアのそれぞれについて、換気エリアにおける音の大きさを示す第1の情報と、換気エリアにおける臭気の強さと換気エリアに人が存在しているか否かとのうちの少なくとも一方を示す第2の情報と、を取得する。情報取得部510は、制御部51が、宅内通信部55と協働することによって実現される。情報取得部510は、情報取得手段として機能する。
第1に、情報取得部510は、第1の換気エリアにおける音の大きさを示す第1の情報と、第1の換気エリアにおける臭気の強さと第1の換気エリアに人が存在しているか否かとのうちの少なくとも一方を示す第2の情報と、を取得する。第1の換気エリアとは、家屋H内の複数の換気エリアであるLDK、寝室、子供部屋及び浴室のうちの1つである。以下では、第1の換気エリアとして、LDKを例にとって説明する。
情報取得部510は、第1の情報として、LDKにおける音の大きさを示す音情報を取得する。LDKにおける音とは、リビング内での会話、リビング外で発生してリビングまで伝わった騒音等である。LDKにおける音の大きさは、リビングに設置された音センサ31aによって検知される。
情報取得部510は、第2の情報として、LDKにおける臭気の強さを示す臭気情報と、LDKに人が存在しているか否かを示す在否情報と、を取得する。LDKにおける臭気とは、例えばキッチンでの料理の際に発生した匂い、キッチンに置かれた飲食物から発生した匂い等である。LDKにおける臭気の強さは、キッチンに設置された臭気センサ32aによって検知される。
LDKに人が存在しているか否かは、リビングに設置された人感センサ33aと視聴装置40aとによって検知される。人感センサ33aは、人感センサ33aで検知可能な範囲内に人が居る場合、その存在を直接的に検知することができる。また、視聴装置40aが稼働している場合、通常、視聴装置40aを視聴している人が周囲に居ることが推定される。そのため、情報取得部510は、LDKにおける人の在否を示す在否情報として、人感センサ33aによる検知情報と視聴装置40aの稼働情報とをどちらも取得する。
更に、情報取得部510は、第2、第3の換気エリアについても、音の大きさを示す第1の情報と、臭気の強さと人が存在しているか否かとのうちの少なくとも一方を示す第2の情報と、を取得する。以下では、第2、第3の換気エリアとして、それぞれ寝室及び子供部屋を例にとって説明する。
情報取得部510は、第2の換気エリアにおける第1の情報として、寝室における音の大きさを示す音情報を、音センサ31bから取得する。また、情報取得部510は、第2の換気エリアにおける第2の情報として、寝室に人が存在しているか否かを示す在否情報を、人感センサ33bから取得する。
情報取得部510は、第3の換気エリアにおける第1の情報として、子供部屋における音の大きさを示す音情報を、音センサ31cから取得する。また、情報取得部510は、第3の換気エリアにおける第2の情報として、子供部屋に人が存在しているか否かを示す在否情報を、視聴装置40bから取得する。
また、情報取得部510は、換気装置20a〜20eのそれぞれから、現在の換気量を示す換気情報を取得する。情報取得部510は、音センサ31a〜31c、臭気センサ32a、及び、人感センサ33a,33bによって得られた検知情報と、視聴装置40a,40bの稼働情報と、換気装置20a〜20eの換気情報とを、宅内ネットワークN1及び宅内通信部55を介して取得する。各センサ及び各装置は、検知情報、稼働情報又は換気情報を、予め定められた周期で定期的に制御装置50に送信する。予め定められた周期は、一例として、10秒から数10秒程度である。或いは、情報取得部510が必要に応じて各センサ及び各装置に要求を送信し、各センサ及び各装置がこの要求に応答する方式で、検知情報、稼働情報又は換気情報を制御装置50に送信しても良い。
在否判定部520は、情報取得部510によって人感センサ33から取得された検知情報、又は、情報取得部510によって視聴装置40から取得された稼働情報に基づいて、換気エリアに人が存在しているか否かを判定する。在否判定部520は、制御部51によって実現される。在否判定部520は、在否判定手段として機能する。
具体的に説明すると、在否判定部520は、人感センサ33aによって人の存在が検知された場合、LDKに人が存在していると判定する。また、在否判定部520は、視聴装置40aが稼働している場合にも、LDKに人が存在していると判定する。言い換えると、在否判定部520は、人感センサ33aによって直接的に人の存在が検知された場合だけでなく、視聴装置40aによって人の存在が間接的に検知された場合にも、LDKに人が存在していると判定する。
これに対して、寝室には、人感センサ33bが設置されているが、視聴装置40は設置されていない。そのため、在否判定部520は、寝室に人が存在しているか否かを、人感センサ33bによって人が検知されたか否かのみに基づいて判定する。具体的に説明すると、在否判定部520は、人感センサ33bによって人の存在が検知された場合、寝室に人が存在していると判定する。
また、子供部屋には、視聴装置40bが設置されているが、人感センサ33は設置されていない。そのため、在否判定部520は、子供部屋に人が存在しているか否かを、視聴装置40bが稼働中であるか否かのみに基づいて判定する。具体的に説明すると、在否判定部520は、視聴装置40bが稼働している場合、子供部屋に人が存在していると判定する。
図5に示すように、制御装置50は、エリア記憶部590を備えている。エリア記憶部590は、複数の換気エリアに関する情報を記憶している。エリア記憶部590は、記憶部52の記憶領域に構築される。エリア記憶部590は、エリア記憶手段として機能する。
図6に、エリア記憶部590に記憶されている情報の例を示す。図6に示すように、エリア記憶部590は、複数の換気エリアのそれぞれと、それぞれに設置されている装置及びセンサと、の対応関係を記憶している。複数の換気エリアに設置されている装置及びセンサの情報は、操作者が入力受付部550を介して入力することができる。また、後述する換気装置20のエリア判定部230によって判定された結果を用いることもできる。
また、エリア記憶部590は、複数の換気エリアのそれぞれと、それぞれにおける音の大きさ、臭気の強さ、人の在否及び換気量と、の対応関係を記憶している。音の大きさ、臭気の強さ及び換気量は、それぞれ該当する換気エリアに設置されている音センサ31、臭気センサ32及び換気装置20から取得される。また、人の在否は、人感センサ33による検知情報又は視聴装置40の稼働情報に基づいて、在否判定部520によって判定される。エリア記憶部590は、これらの情報が新たに取得される毎に、新たに取得された情報を記憶し、記憶内容を随時更新していく。
図5に示した換気システム1の機能構成の説明に戻る。換気制御部530は、エリア記憶部590に記憶された音情報、臭気情報又は在否情報に基づいて、複数の換気装置20の換気量を制御する。換気制御部530は、宅内通信部55及び宅内ネットワークN1を介して複数の換気装置20のそれぞれと通信し、複数の換気装置20のそれぞれに、必要に応じて、換気を開始又は停止する指令及び換気量を調整する指令を送信する。換気制御部530は、制御部51が、宅内通信部55と協働することによって実現される。換気制御部530は、換気制御手段として機能する。
換気制御部530は、情報取得部510によって取得された第2の情報が特定の条件を満たしているか否かを判定する。第2の情報は、換気エリアにおける臭気の強さを示す臭気情報と、換気エリアに人が存在しているか否かを示す在否情報と、のうちの少なくとも一方である。また、特定の条件とは、換気装置20の換気量の制御の方法を決めるための条件である。特定の条件は、換気エリアにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きい場合、又は、換気エリアに人が存在していない場合に、満たされる。
具体的に説明すると、換気制御部530は、第1の換気エリアであるLDKについて、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きいか否かを判定する。第1の閾値Th1は、人が不快に感じるか否かの境界となる臭気の強さに相当する値であって、予め設定されてROM又は記憶部52に記憶されている。臭気の感じ方には個人差があるが、第1の閾値Th1は、臭気の強さが第1の閾値Th1より大きい場合に、一般的に多くの人が不快であると感じる強さに相当する値に設定される。
LDKにおける臭気の強さは、キッチンに設置された臭気センサ32aによって検知されて、エリア記憶部590に記憶されている。換気制御部530は、エリア記憶部590に記憶された臭気の強さを、予め設定された第1の閾値Th1と比較して、臭気の強さが第1の閾値Th1より大きいか否かを判定する。
判定の結果、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きいと判定された場合、換気制御部530は、LDKにおける音の大きさに依らずに、LDKに設置された換気装置20a,20bの換気量を制御する。また、換気制御部530は、LDKに人が存在していないと判定された場合にも、LDKにおける音の大きさに依らずに、LDKに設置された換気装置20a,20bの換気量を制御する。LDKに人が存在しているか否かについては、換気制御部530は、在否判定部520による判定の結果を参照する。
具体的には図7に示すように、換気制御部530は、換気装置20a,20bの換気量を設定する。図7に示すように、換気制御部530は、LDKに人が存在していない場合、換気装置20a,20bの換気量を、第1の規定量である必要量に設定する。また、換気制御部530は、LDKに人が存在していても、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きい場合、換気装置20a,20bの換気量を、第1の規定量である必要量に設定する。
必要量とは、換気エリアを換気するために必要な換気量であって、家屋H内に設置された複数の換気装置20のそれぞれに規定された、周囲の音、臭気、人の在否等の環境に依存しない量である。各換気装置20の必要量は、各換気装置20によって換気される換気エリアの広さ、種類、用途等に応じて予め規定されている。具体的に説明すると、建物の換気量は、建物全体で0.5回/時間、すなわち単位時間当たりに家屋H内の半分の空気を入れ換えるように、法令で定められている。そのため、各換気装置20の必要量は、各換気装置20の必要量の和が家屋H全体での必要な換気量に相当するように、規定される。
人が存在していなければ、そもそも人の快適性を考慮する必要が無い。そのため、換気制御部530は、LDKに人が存在していない場合、換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定し、LDKを必要なだけ換気する。
更に、人が存在していても、臭気の強さが第1の閾値Th1より大きい場合、臭気によって人が不快に感じる可能性が高いため、換気エリアを十分に換気して臭気を抑制する必要がある。そのため、換気制御部530は、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きい場合、換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定する。これにより、換気制御部530は、LDK内の空気を十分に換気させる。
これに対して、情報取得部510によって取得された第2の情報が特定の条件を満たしていない場合、換気制御部530は、換気装置20a,20bの換気量を、LDKにおける音に応じて制御する。第2の情報が特定の条件を満たしていない場合とは、具体的には、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より小さく、且つ、LDKに人が存在している場合である。LDKにおける音の大きさは、リビングに設置された音センサ31aによって検知された環境音、生活音等の大きさであって、エリア記憶部590に記憶されている。換気制御部530は、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合、エリア記憶部590に記憶されたLDKにおける音の大きさを参照して、換気装置20a,20bの換気量を調整する。
図8に、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合における、音の大きさと換気量との関係を示す。図8に示すように、換気制御部530は、換気装置20a,20bの換気音による不快感を抑制するため、LDKにおける音の大きさに応じて、換気装置20a,20bの制御の方法を変更する。換気音とは、例えばファンの回転音又は送風音のように、換気装置20a,20bの換気に伴って生じる音である。
具体的に説明すると、換気制御部530は、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合において、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より大きければ、換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定する。この必要量は、第2の情報が特定の条件を満たしている場合に設定された、LDKを換気するために必要な換気量と同じである。第2の閾値Th2は、人が騒がしいと感じるか否かの境界となる音の大きさに相当する値である。第2の閾値Th2は、一例として、掃除機の運転音の大きさに相当する70dB程度に設定されて、予めROM又は記憶部52に記憶されている。
人が騒がしいと感じるくらいLDKにおける音が大きい場合、換気装置20a,20bの換気音は周囲の音と比較して小さいため、換気音が人に影響を与えることはほとんど無い。そのため、換気制御部530は、LDKにおける音が第2の閾値Th2より大きい場合、換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定して、LDK内の空気を十分に換気させる。
これに対して、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合において、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より小さければ、換気制御部530は、LDKにおける音の大きさが小さいほど、換気装置20a,20bの換気量を減少させる。LDKにおける音が小さくなると、LDKにおける音の中で、換気装置20a,20bの換気音の割合が高くなるため、換気音が人に不快感を与える可能性が高くなる。そのため、換気制御部530は、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より小さい場合、換気量を必要量よりも減少させる。
具体的に説明すると、換気制御部530は、換気装置20a,20bの換気量を、その換気音がLDKにおける音の大きさよりも規定の大きさΔLだけ小さくなる量に設定する。規定の大きさΔLは、周囲の音に対する換気音の割合を制御するための値であって、デシベル(dB)の単位で設定されて、予めROM又は記憶部52に記憶されている。
換気制御部530は、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より小さい場合、LDKにおける音の大きさを基準として、換気音がそれより規定の大きさΔLだけ小さくなるように、換気装置20a,20bの換気量を調整する。これにより、換気装置20a,20bの換気音は、周囲の音にかき消されるため、LDKに居る人にとって気にならなくなる。
更に、換気制御部530は、図8に示すように、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合において、LDKにおける音の大きさが第3の閾値Th3より小さければ、換気装置20a,20bの換気量を最小量に設定する。最小量とは、家屋H内に設置された複数の換気装置20のそれぞれに規定された量であって、各換気装置20が設定可能な換気量の最小値である。換気装置20によっては、最小値は0であっても良い。最小値が0である場合、換気量を最小量に設定することは、換気を停止することに相当する。
第3の閾値Th3は、第2の閾値Th2よりも小さい値であって、人が気にするか否かの境界となる音の大きさに相当する値である。第3の閾値Th3は、一例として、小さな声又は空調機の運転音の大きさに相当する50dB程度に設定されて、予めROM又は記憶部52に記憶されている。
人が気にならないくらいLDKにおける音が小さい場合、LDKにおける音の中で、換気装置20a,20bの換気音が支配的になるため、換気音が人に不快感を与える可能性がより高くなる。そのため、換気制御部530は、LDKにおける音が第3の閾値Th3より小さい場合、換気装置20a,20bの換気量を最小量に設定して、換気音を可能な限り小さくする。
換気制御部530は、第1の換気エリアであるLDKについて実行したこのような換気制御処理を、第2の換気エリアである寝室、及び第3の換気エリアである子供部屋についても実行する。但し、第2の換気エリアである寝室、及び第3の換気エリアである子供部屋には、臭気センサ32が設置されていない。そのため、換気制御部530は、臭気の強さを判定する処理を実行せず、換気エリアに人が存在していない場合に、特定の条件が満たされると判定する。
第2の換気エリアである寝室について具体的に説明する。換気制御部530は、寝室に人が存在していない場合、寝室に設置された換気装置20cの換気量を、第1の規定量である必要量に設定する。これは、寝室に人が存在していなければ、人の快適性を考慮する必要が無いため、寝室を必要なだけ換気できるからである。寝室に人が存在しているか否かについては、換気制御部530は、在否判定部520による判定の結果を参照する。
これに対して、寝室に人が存在している場合、換気制御部530は、換気装置20cの換気量を、寝室に設置された音センサ31bによって検知された音に応じて制御する。具体的には図8に示したように、換気制御部530は、寝室における音の大きさが小さいほど、換気装置20cの換気量を減少させる。換気量の制御の方法は、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より小さく、且つ、LDKに人が存在している場合と同様である。
第3の換気エリアである子供部屋についても同様である。換気制御部530は、子供部屋に人が存在していない場合、子供部屋に設置された換気装置20dの換気量を、第1の規定量である必要量に設定する。これに対して、子供部屋に人が存在している場合、換気制御部530は、換気装置20dの換気量を、子供部屋に設置された音センサ31cによって検知された音に応じて制御する。
このように複数の換気エリアの換気量を調整すると、家屋H全体で換気量が不足するおそれがある。そのため、換気制御部530は、複数の換気エリアの換気量の和が第2の規定量よりも小さい場合、複数の換気エリアのうちの、人が存在していない少なくとも1つの換気エリアの換気量を増加させる。
第2の規定量は、家屋H全体で必要な換気量であって、単位時間当たりに家屋H内の半分の空気を入れ替える量である。言い換えると、換気制御部530は、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量に達していない場合、人が存在していない少なくとも1つの換気エリアの換気量を優先的に増加させる。人が存在していない少なくとも1つの換気エリアの換気量は、上述したように第1の規定量に設定されているため、換気制御部530は、人が存在していない少なくとも1つの換気エリアの換気量を、第1の規定量よりも更に大きな量に設定する。
人が存在していない換気エリアを優先するのは、人が存在していなければ、快適性を考慮する必要が無いからである。換気制御部530は、在否判定部520による判定結果を参照して、人が存在していないと判定された少なくとも1つの換気エリアを換気する換気装置20に、換気量を増加させる指令を送信する。これにより、家屋H全体での換気量を調整する。
図5に示した換気システム1の機能構成の説明に戻る。制御装置50において、報知部560は、家屋H内における現在の換気状態を報知する。報知部560は、例えば図9に示す報知画像を、ユーザインタフェース53の表示部57に表示する。報知部560は、制御部51が表示部57と協働することによって実現される。報知部560は、報知手段として機能する。
図9に示すように、報知部560は、家屋H全体での現在の換気量を、LEDを点灯させることで報知する。現在の換気量の情報は、情報取得部510によって複数の換気装置20のそれぞれから取得された換気量の和である。
また、報知部560は、換気システム1の運転モードが換気優先であるか生活優先であるかを報知する。運転モードが生活優先である場合、換気システム1は、上述した換気制御部530の換気制御処理を実行して、換気音による人の不快感を抑制する。これに対して運転モードが換気優先である場合、換気システム1は、人の快適性を考慮せずに換気を優先させる。操作者は、入力部58を操作することで、換気優先と生活優先とのどちらかを選択することができる。
入力受付部550は、換気量を必要量に設定するか否かを切り替えるための第2の閾値Th2の設定を受け付ける。操作者は、入力部58を操作することで、うるさいと感じる音の大きさを入力することができる。入力受付部550は、このようにして入力された音の大きさを、第2の閾値Th2として設定する。入力受付部550は、制御部51が入力部58と協働することによって実現される。入力受付部550は、入力受付手段として機能する。
報知部560は、図9に示すように、入力受付部550によって受け付けられた第2の閾値Th2を、雑音閾値として表示部57に表示する。操作者は、表示部57に表示された雑音閾値を参照しながら、状況に応じて第2の閾値Th2を最適な値に調整することができる。
図5に示した換気システム1の機能構成の説明に戻る。視聴装置40(40a,40b,…)は、機能的に、稼働情報送信部410を備える。稼働情報送信部410は、視聴装置40が稼働しているか否かを示す稼働情報を、宅内ネットワークN1を介して制御装置50に送信する。稼働情報送信部410によって送信された稼働情報は、制御装置50の情報取得部510によって取得される。稼働情報送信部410は、視聴装置40のCPUが通信インタフェースと協働することによって実現される。稼働情報送信部410は、稼働情報送信手段として機能する。
換気装置20(20a,20b,…)は、機能的に、換気量計測部210と、換気情報送信部220と、エリア判定部230と、換気量調整部240と、を備える。これらの各機能は、制御部21において、CPUが、ROM又は記憶部22に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。
換気量計測部210は、換気量を計測する。換気量とは、換気装置20によって単位時間当たりに換気される空気の量である。換気量計測部210は、例えば、換気部25におけるファン又はモータの回転速度を計測することによって、或いは、換気部25によって送風される空気の風量を風量センサで計測することによって、換気量を計測する。風量センサは、換気装置20が備えていても良いし、家屋H内の適宜の場所に設置されていても良い。換気量計測部210は、制御部21が換気部25と協働するによって実現される。換気量計測部210は、換気量計測手段として機能する。
換気情報送信部220は、換気量計測部210によって計測された換気量を示す換気情報を、宅内ネットワークN1を介して制御装置50に送信する。換気情報送信部220によって送信された換気情報は、制御装置50の情報取得部510によって取得されて、エリア記憶部590に記憶される。換気情報送信部220は、制御部21が通信部24と協働することによって実現される。換気情報送信部220は、換気情報送信手段として機能する。
エリア判定部230は、自装置と換気エリア内に設定されている他の換気装置20、センサ及び視聴装置40を判定する。具体的に説明すると、エリア判定部230は、換気エリアを仕切る壁を越えられない程度のパワーで電波を放出する。他の換気装置20、センサ又は視聴装置40は、放出した電波を受信すると、電波を放出した換気装置20に応答を送信する。エリア判定部230は、この応答が得られた他の換気装置20、センサ又は視聴装置40が、同じ換気エリア内に設定されていると判定する。
エリア判定部230によって判定された結果は、換気情報に含められて、換気情報送信部220によって制御装置50に送信される。エリア判定部230は、制御部21が通信部24と協働することによって実現される。エリア判定部230は、エリア判定手段として機能する。
換気量調整部240は、制御装置50の換気制御部530によって送信された換気量の制御指令を受信し、受信した制御指令に従って換気量を調整する。具体的に説明すると、換気量調整部240は、換気部25におけるファンの回転速度を、換気制御部530によって指定された換気量に対応する速度に変更する。換気量調整部240は、制御部21が通信部24及び換気部25と協働することによって実現される。換気量調整部240は、換気量調整手段として機能する。
以上のように構成された換気システム1の制御装置50において実行される処理の流れについて、図10及び図11に示すフローチャートを参照して、説明する。
図10は、第1の換気エリアであるLDKに人が存在しているか否かを判定する在否判定処理の流れを示している。制御装置50の制御部51は、図10に示す在否判定処理を、必要に応じて、又は予め定められた周期で定期的に、実行する。制御部51は、在否判定処理を実行している間、在否判定部520として機能する。
図10に示す在否判定処理において、制御部51は、第1に、リビングに設置された人感センサ33aによって人の存在が検知されているか否かを判定する(ステップS1)。具体的に説明すると、制御部51は、人感センサ33aから繰り返し送信された検知情報のうちの最新の検知情報が、人の存在を検知したことを示すものであるか否かを判定する。判定の結果、最新の検知情報が、人の存在を検知したことを示すものである場合に、人感センサ33aによって人の存在が検知されていると判定する。
人感センサ33aによって人の存在が検知されていないと判定した場合(ステップS1;NO)、制御部51は、第2に、リビングに設置された視聴装置40aが稼働中であるか否かを判定する(ステップS2)。具体的に説明すると、制御部51は、視聴装置40aから繰り返し送信された稼働情報のうちの最新の稼働情報が、視聴装置40aが稼働していることを示すものであるか否かを判定する。判定の結果、最新の稼働情報が、視聴装置40aが稼働していることを示すものである場合に、視聴装置40aが稼働中であると判定する。
視聴装置40aが稼働中であると判定した場合(ステップS2;YES)、及び、ステップS1において人感センサ33aによって人の存在が検知されていると判定した場合(ステップS1;YES)、制御部51は、LDKに人が存在していると判定する(ステップS3)。言い換えると、制御部51は、人感センサ33aによって人の存在が検知されている場合だけでなく、人感センサ33aによって人の存在が検知されていなくても、視聴装置40aが稼働中であれば、LDKに人が存在していると判定する。
これに対して、ステップS2において視聴装置40aが稼働中でないと判定した場合(ステップS2;NO)、制御部51は、LDKに人が存在していないと判定する(ステップS4)。言い換えると、制御部51は、人感センサ33aによって人の存在が検知されておらず、且つ、視聴装置40aが稼働中でないと判定した場合に、LDKに人が存在していないと判定する。
なお、第2の換気エリアである寝室には、人感センサ33bが設置されているが、視聴装置40は設置されていない。そのため、制御部51は、上記在否判定処理におけるステップS2を省略する。また、第3の換気エリアである子供部屋には、視聴装置40bが設置されているが、人感センサ33は設置されていない。そのため、制御部51は、上記在否判定処理におけるステップS1を省略する。更に、第4の換気エリアである浴室には、人感センサ33も視聴装置40も設置されていない。そのため、制御部51は、浴室については上記在否判定処理を実行しない。
図11は、制御装置50によって実行される換気制御処理の流れを示している。制御装置50の制御部51は、図11に示す換気制御処理を、必要に応じて、又は予め定められた周期で定期的に実行する。制御部51は、換気制御処理を実行している間、換気制御部530として機能する。
換気制御処理を開始すると、制御部51は、家屋H内の複数の換気エリアのうちから、換気量を制御する換気エリアを1つ選択する(ステップS11)。以下、換気エリアとしてLDKを選択した場合を例にとって、説明する。
換気エリアとしてLDKを選択すると、制御部51は、第1に、LDKに人が存在しているか否かを判定する(ステップS12)。LDKに人が存在しているか否かは、図10に示した在否判定処理によって判定される。制御部51は、LDKについて最後に実行した在否判定処理の結果を参照して、LDKに人が存在しているか否かを判定する。
LDKに人が存在していると判定した場合(ステップS12;YES)、制御部51は、第2に、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きいか否かを判定する(ステップS13)。LDKにおける臭気の大きさは、臭気センサ32aによって検知されて、エリア記憶部590に記憶されている。制御部51は、LDKにおける臭気の強さを第1の閾値Th1と比較して、人に不快感を与えるくらいに臭気が強いか否かを判定する。
LDKに人が存在していないと判定した場合(ステップS12;NO)、換気音による人への影響を考慮する必要は無い。そのため、制御部51は、LDKに設置された換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定する(ステップS14)。具体的に説明すると、制御部51は、宅内通信部55及び宅内ネットワークN1を介して換気装置20a,20bに指令を送信し、換気量を必要量に設定させる。
また、LDKに人が存在している場合であっても、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きいと判定した場合(ステップS13;YES)、臭気によって人が不快に感じる可能性が高い。そのため、制御部51は、この場合にも、ステップS14において、LDKに設置された換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定する。これにより、制御部51は、換気音を抑制することよりも、換気エリアを十分に換気することを優先する。
これに対して、LDKに人が存在しており、且つ、LDKにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より小さいと判定した場合(ステップS13;NO)、制御部51は、LDKにおける音の大きさを判定する処理に移行する。LDKにおける音の大きさは、音センサ31aによって検知されて、エリア記憶部590に記憶されている。
具体的に説明すると、制御部51は、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より大きいか否かを判定する(ステップS15)。第2の閾値Th2は、音の大きさが騒がしいと感じるレベルであるか否かを判定するための閾値である。
LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より大きい場合(ステップS15;YES)、換気装置20a,20bの換気音は周囲の音と比較して小さいため、換気音が人に影響を与えることはほとんど無い。そのため、制御部51は、処理をステップS14に移行して、LDKに設置された換気装置20a,20bの換気量を必要量に設定する。
これに対して、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より小さい場合(ステップS15;NO)、制御部51は、更に、LDKにおける音の大きさが第3の閾値Th3より小さいか否かを判定する(ステップS16)。第3の閾値Th3は、音の大きさが人によって意識されるレベルであるか否かを判定するための閾値である。
LDKにおける音の大きさが第3の閾値Th3より小さい場合(ステップS16;YES)、LDKにおける音の中で、換気装置20a,20bの換気音の割合が大きくなる。そのため、制御部51は、LDKに設置された換気装置20a,20bの換気量を最小量に設定する(ステップS17)。これにより、換気音によって人が不快に感じることが抑制される。
更に、LDKにおける音の大きさが第2の閾値Th2より小さく、且つ、第3の閾値Th3より大きい場合(ステップS16;NO)、制御部51は、換気装置20a,20bの換気量を、LDKにおける音の大きさに応じた量に設定する(ステップS18)。具体的に説明すると、制御部51は、LDKにおける音の中で換気音が支配的にならないように、換気装置20a,20bの換気量を、その換気音がLDKにおける音の大きさよりも規定の大きさΔLだけ小さくなる量に設定する。これにより、換気音によって人が不快に感じることが抑制される。
制御部51は、このようにステップS14、ステップS17又はステップS18においてLDKにおける換気量を設定すると、家屋H内における全ての換気エリアを選択したか否かを判定する(ステップS19)。
全ての換気エリアを選択していない場合(ステップS19;NO)、制御部51は、処理をステップS11に戻し、ステップS11において、選択していない新たな換気エリアを1つ選択する。例えば、LDKにおける換気量を制御した後、制御部51は、次に換気量を制御する換気エリアとして、寝室、子供部屋又は浴室のうちから1つを選択する。そして、制御部51は、選択した換気エリアについて、上述したステップS12からステップS18の処理を実行する。このようにして、制御部51は、家屋H内における各換気エリアについて、各換気エリアに設置された換気装置20の換気量を制御する。
なお、換気エリアとして寝室又は子供部屋を選択した場合、寝室又は子供部屋には臭気センサ32が設置されていないため、制御部51は、ステップS13の処理をスキップする。また、換気エリアとして浴室を選択した場合、浴室にはどのセンサも設置されていないため、制御部51は、浴室に設置された換気装置20eの換気量を、常に必要量に設定する。
最終的に、全ての換気エリアを選択し終えると(ステップS19;YES)、制御部51は、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さいか否かを判定する(ステップS20)。言い換えると、制御部51は、複数の換気エリアのそれぞれで換気量を調整した結果、家屋H全体として換気量が不足している状態になっているか否かを判定する。
家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さい場合(ステップS20;YES)、制御部51は、人が不在の換気エリアから順に換気量を増加させる(ステップS21)。具体的に説明すると、制御部51は、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さい場合、ステップS12で人が存在していないと判定された換気エリアの換気量を優先的に増加させる。その後、依然として家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さい場合には、制御部51は、人が存在している換気エリアの換気量も増加させる。
これに対して、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量以上である場合(ステップS20;NO)、換気量を増加させる必要は無いため、制御部51は、ステップS21の処理をスキップする。以上により、図11に示した換気制御処理は終了する。
以上説明したように、実施の形態1に係る換気システム1は、換気エリアにおける臭気の強さと人の在否とのうちの少なくとも一方が特定の条件を満たしている場合、換気エリアにおける音の大きさに依らずに換気量を制御し、換気エリアにおける臭気の強さと人の在否とのうちの少なくとも一方が特定の条件を満たしていない場合、換気エリアにおける音の大きさに応じて換気量を制御する。音の大きさに応じて換気量を制御することで、換気エリアに居る人に換気音を意識させないようにすることができる。これにより、例えば換気音がうるさくてテレビの音が聞こえないといった、換気音による不快感を抑制することができる。これと共に、特定の条件が満たされた場合には、音の大きさに依らずに換気量を必要量に設定するため、換気量の不足も抑制することができる。
特に、近年増加している気密性及び断熱性が高い建物は、通気性に優れないため、十分な換気を必要とする。実施の形態1に係る換気システム1は、このような建物において、換気音による不快感を抑制しつつ、十分に換気することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図12に、実施の形態2に係る換気システム1aの機能的な構成を示す。換気システム1aにおいて、制御装置50aは、機能的に、情報取得部510と、在否判定部520と、換気制御部530と、報知部560と、入力受付部550と、エリア記憶部590と、音識別部610と、予測部620と、優先度設定部630と、音記憶部690と、を備える。
情報取得部510、在否判定部520、報知部560、入力受付部550及びエリア記憶部590は、実施形態1において制御装置50に備えられていたものと同様である。また、換気装置20、音センサ31、臭気センサ32、人感センサ33、及び視聴装置40は、実施の形態1における対応するものと同様である。これらの実施の形態1と同様の構成については、説明を省略する。
音識別部610は、音センサ31a〜31cによって検知された、各換気エリアにおける音が、第1の種類の音であるか第2の種類の音であるかを識別する。第1の種類の音とは、人の声、音楽等のような、一般的に人が聞きたい音である。第1の種類の音には、例えば宅内での会話、テレビの音声及びオーディオプレイヤからの音楽が含まれる。第2の種類の音とは、騒音、雑音等のような、一般的に人が聞きたくない音である。第2の種類の音には、例えば宅内雑音、宅外雑音及び換気装置20の換気音が含まれる。音識別部610は、制御部51によって実現される。音識別部610は、音識別手段として機能する。
音識別部610は、周知のアルゴリズムに基づいて、音センサ31a〜31cによって検知された音を解析する。具体的に説明すると、音識別部610は、検知された音の特徴を表す特徴量として、メル周波数ケプストラム係数(MFCC)を、単位時間区間毎に計算する。そして、音識別部610は、一般的な音声認識で利用される音響モデルである隠れマルコフモデル(HMM)を利用して、各時間区間における特徴量が出力される元となった音の種類を確率的に推定する。これにより、音識別部610は、音センサ31a〜31cによって検知された音のそれぞれについて、第1の種類の音である確率が高い時間区間と、第2の種類の音である確率が高い時間区間と、を特定する。
音記憶部690は、音識別部610によって識別された結果を示す情報を記憶する。具体的に説明すると、音記憶部690は、換気エリアにおける音が、第1の種類の音であるか第2の種類の音であるかを示す情報を、換気エリア毎に時系列順に記憶する。音記憶部690は、記憶部52の記憶領域に構築される。音記憶部690は、音記憶手段として機能する。
換気制御部530は、情報取得部510によって取得された第2の情報が特定の条件を満たしている場合、換気エリアを換気する換気装置20の換気量を、予め規定された量である必要量に設定する。言い換えると、換気制御部530は、換気エリアにおける臭気の強さが第1の閾値Th1より大きい場合、又は、換気エリアに人が存在している場合、実施の形態1と同様に、換気エリアにおける音の大きさに依らずに換気量を制御する。
これに対して、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合、換気制御部530は、換気エリアの音の大きさに応じて換気量を制御する。具体的に説明すると、換気制御部530は、換気エリアにおける音の大きさが第2の閾値Th2より大きい場合には、換気量を必要量に設定し、音の大きさが第2の閾値Th2より小さい場合には、音の大きさが小さくなるほど換気量を減少させる。
換気エリアにおける音の大きさが第2の閾値Th2より小さい場合、換気制御部530は、音識別部610による識別結果に応じて異なる手順で、換気装置20の換気量を制御する。具体的に説明すると、換気制御部530は、音識別部610によって換気エリアにおける音が第1の種類の音であると識別されたときには、換気装置20の換気量を、換気装置20の換気に伴って生じる音の大きさが換気エリアにおける音の大きさよりも第1の大きさだけ小さくなる量に設定する。これに対して、換気制御部530は、音識別部610によって換気エリアにおける音が第2の種類の音であると識別されたときには、換気装置20の換気量を、換気装置20の換気に伴って生じる音の大きさが換気エリアにおける音の大きさよりも第2の大きさだけ小さくなる量に設定する。
第2の大きさは、実施の形態1における規定の大きさΔLと同じ値に設定される。言い換えると、換気エリアにおける音が第2の種類の音であると識別された場合、換気制御部530は、実施の形態1と同じ手順で換気量を制御する。これに対して、第1の大きさは、第2の大きさよりも大きい値に設定される。言い換えると、換気制御部530は、換気エリアにおける音が第1の種類の音であると識別された場合には、換気エリアにおける音が第2の種類の音であると識別された場合よりも、換気量を大きく減少させる。
これは、人の会話、テレビの音声等、人にとって聞きたい音は、換気音によって妨げられずにクリアに聞こえる方が望ましいからである。換気制御部530は、人にとって聞きたい音が換気エリアに流れている場合には、換気量をより小さくすることで換気音を抑える。これにより、人にとって聞きたい音が換気音によって聞こえにくくなることを抑制する。
予測部620は、複数の換気エリアのそれぞれについて、音記憶部690に記憶された音情報の履歴を参照して、現時点から規定時間T1後における第1の種類の音の大きさを予測する。規定時間T1は、例えば1時間又は2時間であって、予め設定されてROM又は記憶部52に記憶されている。
図13に、第1の換気エリアであるLDKにおける第1の種類の音の大きさの時間変化を示す。図13に示すグラフは、過去の複数の日における第1の種類の音の大きさを、時間帯別に積算したものである。例えば、毎週日曜日の夕方19時に家族が食事をする場合、その時間帯に多くの会話がされるため、第1の種類の音は大きくなる。このように、第1の種類の音の大きさは、換気エリアにおける人の活動量の指標として用いることができる。予測部620は、第1の種類の音が大きくなる時間帯を予測することで、人の活動量が多い時間帯を予測する。予測部620は、制御部51によって実現される。予測部620は、予測手段として機能する。
人の活動量が多い時間帯では換気量を増やすことは見込めないため、必要量の空気を換気するためには、活動量が多くなる前に多くの量の空気を換気する必要がある。そのため、換気制御部530は、予測部620によって予測された第1の種類の音の大きさが、規定の閾値である第4の閾値Th4より大きい場合、現時点から規定時間T1が経過するまでの間における換気量を増加させる。第4の閾値Th4は、人の会話の大きさに相当する値に設定されて、予めROM又は記憶部52に記憶されている。
例えば図13では、時間帯P2と時間帯P4とにおいて、第1の種類の音の大きさが第4の閾値Th4を上回っている。そのため、時間帯P2の直前の時間帯P1と時間帯P4の直前の時間帯P3とにおいて、換気制御部530は、上述した換気制御処理によって設定された量よりも換気量を増加させる。具体的に説明すると、上述した換気制御処理によって、換気エリアの換気量は、必要量、換気エリアにおける音の大きさに応じた量、又は、最小量に設定されている。換気制御部530は、このようにして設定された換気量を、更に予め定められた調整量ΔMだけ増加させる。
また、換気制御部530は、複数の換気エリアのそれぞれについて、現時点より前の期間における換気量の実績値と、現時点より後の期間における換気量の予測値と、に応じて、換気量を調整する。現時点より前の期間とは、具体的には、現時点の直前の期間であって、予め定められた時間長T2の期間である。現時点より前の期間における換気量の実績値は、換気装置20によって実際に換気された量であって、換気装置20の換気量計測部210によって計測される。また、現時点より後の期間とは、具体的には、現時点の直後の期間であって、予め定められた時間長T3の期間である。現時点より後の期間における換気量の予測値は、音記憶部690に記憶された音情報の履歴に基づいて予測される。
換気制御部530は、複数の換気エリアのそれぞれについて、現時点より前の期間における換気量の実績値と現時点より後の期間における換気量の予測値との平均を、換気エリア毎の必要量と比較する。その結果、実績値と予測値との平均が必要量より小さい場合、換気制御部530は、換気量を増加させる。
図14に、第1の換気エリアであるLDKにおける換気量の時間変化を示す。図14に示すように、LDKにおける換気量は、期間Q1において必要量よりも小さくなっている。この期間Q1において、換気量の実績値と予測値との平均が必要量より小さくなったと判定した場合、換気制御部530は、換気量を徐々に増加させる。これにより、換気制御部530は、換気量が不足することが長期間続くことを回避する。また、換気量が必要量に達した後の期間Q2では、換気制御部530は、換気量を必要量より大きくする。これにより、換気制御部530は、期間Q1における換気量の不足分を期間Q2における増加分で埋め合わせる。
図12に示した換気システム1aの機能構成の説明に戻る。優先度設定部630は、音識別部610によって識別された結果に基づいて、複数の換気エリアのそれぞれに優先度を設定する。優先度とは、家屋H全体で換気量が不足している場合に、複数の換気エリアのうちのどの換気エリアの換気量を増加させるかを決めるための指標である。
優先度設定部630は、音記憶部690に記憶された音情報の履歴を参照して、過去の予め定められた長さの期間における、音センサ31によって第1の種類の音が検知された時間の長さを、複数の換気エリアのそれぞれについて計算する。そして、優先度設定部630は、第1の種類の音が検知された時間が長いほど、その換気エリアに高い優先度を設定する。例えば、LDKでの会話の頻度が高い場合、優先度設定部630は、LDKに高い優先度を設定する。このように、優先度は、各換気エリアにおける人の活動量を表している。優先度設定部630は、制御部51によって実現される。優先度設定部630は、優先度設定手段として機能する。
換気制御部530は、家屋H全体で換気量が不足している場合、優先度設定部630によって設定された優先度に従って、換気量を増加させる。第1に、換気制御部530は、複数の換気エリアの換気量の和が第2の規定量よりも小さい場合、複数の換気エリアのうちの、人が存在していない少なくとも1つの換気エリアの換気量を、予め定められた第1の量だけ増加させる。
人が存在していない少なくとも1つの換気エリアの換気量を増加させた後、依然として複数の換気エリアの換気量の和が第2の規定量よりも小さい場合、換気制御部530は、第2に、優先度設定部630によって設定された優先度の順に換気量を増加させる。具体的に説明すると、換気制御部530は、複数の換気エリアの換気量の和が第2の規定量より大きくなるまで、複数の換気エリアのうちの、優先度が低い換気エリアから順に、換気量を予め定められた第2の量ずつ増加させる。
このように、換気制御部530は、家屋H全体で換気量が不足している場合、まず人が存在していない換気エリアの換気量を増加させ、次に人の活動量が小さい換気エリアから順に換気量を増加させる。これにより、利用頻度が高い換気エリアの換気量を増加させることを可能な限り回避できるため、換気音によって人に不快感を与えることを抑制することにつながる。
以上のように構成された換気システム1aの制御装置50aにおいて実行される換気制御処理の流れについて、図15に示すフローチャートを参照して、説明する。制御装置50aの制御部51は、図15に示す換気制御処理を、必要に応じて、又は予め定められた周期で定期的に実行する。
換気制御処理を開始すると、制御部51は、図11に示したステップS11からステップS18の処理を実行する。具体的に説明すると、制御部51は、複数の換気エリアのうちから1つを選択し、選択した換気エリアを換気する換気装置20の換気量を、人の在否と臭気の強さと音の大きさとに応じて制御する。
なお、ステップS18では、制御部51は、選択した換気エリアにおける音が第1の種類の音であるか第2の種類の音であるかに応じて異なる手順で換気量を制御する。具体的に説明すると、制御部51は、換気エリアにおける音が第1の種類の音であると識別されたときには、換気音の大きさが換気エリアにおける音の大きさよりも第1の大きさだけ小さくなる量に、換気量を設定する。これに対して、制御部51は、換気エリアにおける音が第2の種類の音であると識別されたときには、換気音の大きさが換気エリアにおける音の大きさよりも第2の大きさだけ小さくなる量に、換気量を設定する。
このようにして換気量を制御すると、制御部51は、音記憶部690に記憶された音情報の履歴を参照して、選択した換気エリアにおける現時点から規定時間T1後の第1の種類の音の大きさが、第4の閾値Th4より大きいか否かを予測する(ステップS31)。言い換えると、制御部51は、規定時間T1後に、選択した換気エリアにおける人の活動量が大きくなることが予測されるか否かを判定する。
現時点から規定時間T1後の第1の種類の音の大きさが、第4の閾値Th4より大きいと予測した場合(ステップS31;YES)、制御部51は、選択した換気エリアの換気量を、予め定められた調整量ΔMだけ増加させる(ステップS32)。具体的に説明すると、制御部51は、選択した換気エリアの換気量を、ステップS11からステップS18において設定された量よりも、更に増加させる。これにより、制御部51は、人の活動量が大きくなって換気量を抑制することが求められる前に、前もって換気量を確保しておく。
これに対して、現時点から規定時間後の第1の種類の音の大きさが、第4の閾値Th4より小さいと予測した場合(ステップS31;NO)、制御部51は、ステップS32の処理をスキップする。
続いて、制御部51は、選択した換気エリアの換気量の実績値と予測値とに応じて換気量を調整する(ステップS33)。具体的に説明すると、制御部51は、現時点より前の期間における換気量の実績値と現時点より後の期間における換気量の予測値との平均を、選択した換気エリアに必要な換気量と比較する。比較の結果、実績値と予測値との平均が必要な換気量より小さい場合、制御部51は、換気量を増加させる。このように、制御部51は、選択した換気エリアの換気量が大きく不足することがないように、実績値と予測値とに応じて換気量を動的に変更する。
このようにして換気量を調整すると、制御部51は、家屋H内における全ての換気エリアを選択したか否かを判定する(ステップS34)。全ての換気エリアを選択していない場合(ステップS34;NO)、制御部51は、処理をステップS11に戻し、ステップS11において、選択していない新たな換気エリアを1つ選択する。そして、制御部51は、選択した換気エリアについて、上述したステップS12からステップS18及びステップS31からステップS33の処理を実行する。このようにして、制御部51は、家屋H内における各換気エリアについて、各換気エリアに設置された換気装置20の換気量を制御する。
最終的に、全ての換気エリアを選択し終えると(ステップS34;YES)、制御部51は、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さいか否かを判定する(ステップS35)。言い換えると、制御部51は、複数の換気エリアのそれぞれで換気量を調整した結果、家屋H全体として換気量が不足している状態になっているか否かを判定する。
家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さい場合(ステップS35;YES)、制御部51は、人が不在の換気エリアの換気量を増加させる(ステップS36)。具体的に説明すると、制御部51は、在否判定部520によって人が存在していないと判定された少なくとも1つの換気エリアの換気量を、第1の量だけ増加させる。
人が不在の換気エリアの換気量を増加させると、制御部51は、再度、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さいか否かを判定する(ステップS37)。家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量より小さい場合(ステップS37;YES)、制御部51は、優先度が低い換気エリアから順に、換気量を増加させる(ステップS38)。優先度は、音識別部610によって識別された結果に基づいて設定された、各換気エリアにおける人の活動量を表す指標である。制御部51は、人の活動量が小さい換気エリアから順に、換気量を第2の量ずつ増加させる。これにより、利用頻度が高い換気エリアの換気量を増加させることを可能な限り回避することができる。
これに対して、家屋H全体での換気量が家屋H全体での必要量以上であると判定した場合(ステップS35;NO、ステップS37;NO)、換気量を増加させる必要は無いため、制御部51は、以降の処理をスキップする。以上により、図15に示した換気制御処理は終了する。
以上説明したように、実施の形態2に係る換気システム1aは、換気エリアにおける音が、会話、音楽等の人にとって聞きたい音であるか、又は、騒音、雑音等の人にとって聞きたくない音であるかを識別する。そして、換気システム1aは、換気エリアにおける音が人にとって聞きたい音である場合には、換気エリアにおける音が人にとって聞きたくない音である場合よりも、換気量を減少させる。また、換気システム1aは、換気エリアにおける音が人にとって聞きたい音である場合に換気量が小さくなるように、人の活動量を予測して換気の時間を調整し、更に複数の換気エリアの間で換気の順序を調整する。このような結果、換気エリアに居る人は、換気音に妨げられずに、会話、音楽等の聞きたい音に集中することができ、快適性が向上する。
(変形例)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明を実施するにあたっては、種々の形態による変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施の形態では、入力受付部550は、操作者が入力部58を操作して入力した第2の閾値Th2を受け付けた。しかしながら、入力受付部550は、操作者の音声の入力を受け付け、受け付けた音声の大きさを、第2の閾値Th2と設定しても良い。或いは、制御装置50,50aは、音を発するスピーカを備えており、第2の閾値Th2を設定する際に、スピーカから発する音を徐々に大きくしても良い。この場合、操作者は、徐々に大きくなる音をうるさいと思った時点で入力部58を操作する。そして、入力受付部550は、入力部58が操作された時点で発せられていた音の大きさを、第2の閾値Th2として設定する。
上記実施の形態では、音識別部610は、音声認識の解析手法を用いて、各換気エリアにおける音が、第1の種類の音であるか第2の種類の音であるかを識別した。このとき、音識別部610は、非負値行列因子分解(NMF)のようなスパース信号解析によって得られる情報を利用しても良い。また、長期的なスパンで音の種類を識別できれば良いので、音識別部610は、ブザー、警笛等の突発的な音については、識別の対象から除外しても良い。
上記実施の形態では、制御装置50aが音識別部610を備えていた。しかしながら、本発明において、音センサ31が音識別部610を備えており、音センサ31によって検知された音が第1の種類の音であるか第2の種類の音であるかを、音センサ31自身が識別しても良い。また、上記実施の形態では家屋Hの様々な場所に設置されていた音センサ31と臭気センサ32と人感センサ33とのうちの少なくともいずれかを、換気装置20、視聴装置40又は制御装置50,50aが備えていても良い。
また、換気制御部530は、音識別部610が換気エリアにおける音が第1の種類の音であるか第2の種類の音であるかを識別する際に、この換気エリアを換気する換気装置20を制御して、この換気エリアの換気を停止させても良い。換気を停止させることにより、宅外の騒音及び雑音が宅内に入ることを抑制できるため、音識別部610による識別の精度を高めることができる。
上記実施の形態では、制御装置50,50aは、表示部57及び入力部58を備えていた。しかしながら、本発明において、制御装置50,50aは表示部57及び入力部58を備えておらず、制御装置50,50aとは異なる外部の端末が、表示部57及び入力部58として機能しても良い。この場合、制御装置50,50aは、宅内通信部55により、Wi−Fi(登録商標)、Wi−SUN(登録商標)、有線LAN等を介して、端末と通信する。このような無線又は有線による通信を介して、制御装置50,50aは、端末において入力された入力情報を端末から受信し、端末において表示する表示情報を端末に送信する。
上記実施の形態では、制御装置50,50aが家屋H内に設置されている場合について説明した。しかしながら、本発明において、制御装置50,50aと同等の機能を有する装置を家屋H外に設置しても良い。図16に、この場合の換気システム1bの例を示す。図16に示す換気システム1bでは、家屋Hには、制御装置50,50aの代わりにルータ91が設置されている。ルータ91は、宅外ネットワークN2を介してサーバ90と通信する装置であって、例えばブロードバンドルータである。サーバ90は、例えばクラウドコンピューティングにおけるリソースを提供するサーバである。宅外ネットワークN2は、例えばインターネット等の広域ネットワークである。この場合、ルータ91とサーバ90とが協調して制御装置50,50aの役割を果たす。
また、制御装置50,50aの機能を換気装置20が備えていても良い。図17に、この場合の換気システム1cの例を示す。図17に示す換気システム1cでは、複数の換気装置20a,20b,…のうちの少なくとも1つが、換気部25を含む本来的な機能に加えて、制御装置50,50aの機能を備えている。制御装置50,50aの機能を備えている換気装置20は、音センサ31、臭気センサ32、人感センサ33、視聴装置40、及び他の換気装置20と宅内ネットワークN1を介して通信し、上述した制御装置50,50aの役割を果たす。
上記実施の形態では、換気システム1,1a,1b,1cが適用される対象として、家屋Hを例に挙げて説明した。しかしながら、本発明において、換気システム1,1a,1b,1cが適用される対象は、家屋Hのような一般住宅であることに限らず、集合住宅、施設、ビル、工場等であっても良い。
上記実施の形態では、制御装置50,50aの制御部51において、CPUがROM又は記憶部52に記憶されたプログラムを実行することによって、情報取得部510、在否判定部520、換気制御部530、入力受付部550、報知部560、音識別部610、予測部620及び優先度設定部630のそれぞれとして機能した。しかしながら、本発明において、制御部51は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、これらの組み合わせ等である。制御部51が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。
また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部51は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
本発明に係る制御装置50,50aの動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本発明に係る制御装置50,50aとして機能させることも可能である。
また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD−ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
本発明によれば、換気装置によって換気されるエリアにおける音の大きさを示す第1の情報と、当該エリアにおける臭気の強さと当該エリアに人が存在しているか否かとのうちの少なくとも一方を示す第2の情報と、を取得し、第2の情報が特定の条件を満たしている場合、換気量を第1の規定量に制御し、第2の情報が特定の条件を満たしていない場合において、音の大きさが第2の閾値より大きければ、換気量を第1の規定量に設定し、音の大きさが第2の閾値より小さければ、音の大きさが小さいほど換気量を減少させる。従って、本発明によれば、換気量の不足を抑制しつつ、換気に伴って生じる音による不快感を抑制することができる。