以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。図1〜図24は、本発明の一実施の形態及びその変形例を説明するための図である。このうち、図1は、筋力補助装置10の全体を示す斜視図であり、とりわけ図1は、人体に着用した状態で筋力補助装置を示している。
筋力補助装置10は、相対動作可能に連結された第1装着具20及び第2装着具30と、第1装着具20及び第2装着具30の相対位置を制御するアシスト機構(位置制御装置)15と、を有している。第1装着具20及び第2装着具30は、関節によって接続された人体の二つの部位にそれぞれ取り付けられる。以下に説明する例において、第1装着具20及び第2装着具30は、アシスト軸線となる第1回転軸線d1を中心として相対回転可能となっている。アシスト機構15は、第2装着具30の第1装着具20に対するアシスト軸線(第1回転軸線d1)を中心とした回転位置を制御して、関節を介した二つの部位の筋力を補助する。すなわち、アシスト軸線は、筋力補助装置10から筋力補助のために出力されるアシスト力によって相対回転を制御されるようになる第1装着具20及び第2装着具30の回転軸線のことを指している。アシスト機構15からの筋力補助力の供給および供給停止は、筋力補助装置10に取り付けられたセンサや、筋力補助装置10の着用者からの操作により制御される。
なお、アシスト機構15から供給される筋力補助力は、人体の二つの部位の相対位置を保持する力であってもよいし、人体の二つの部位を積極的に相対動作させる力であってもよい。すなわち、アシスト機構15から供給される筋力補助力は、アシスト軸線を中心とした第1装着具20及び第2装着具30の相対回転位置を保持する力であってもよいし、アシスト軸線を中心として第1装着具20及び第2装着具30の相対回転させる力であってもよい。
とりわけここで説明する筋力補助装置10には、着用者に与える拘束感を軽減するための工夫がなされている。また、ここで説明する筋力補助装置10には、所望の体勢で適切に筋力補助力を受けることを可能にするための工夫が成されている。
以下、図面に示された例に基づき説明を行っていく。図示された例では、図1及び図2に示すように、第1装着具20が、装着プレート21及び装着ベルト22を介して着用者の胴体に取り付けられる。第2装着具30は、装着部37を介して上腕に取り付けられる。そして、筋力補助装置10は、肩の動作を補助する。ここで、一つの関節は、互いに異なる軸線を中心とした複数種の相対回転運動を可能にする。図1に示すように、肩関節は、上腕を胴体に対して屈伸軸daを中心として相対回転させる屈曲伸展運動と、上腕を胴体に対して内外旋軸dbを中心として相対回転させる内旋外旋運動と、上腕を胴体に対して内外転軸dcを中心として相対回転させる内転外転運動と、を可能にする。
図示された例において、アシスト機構15は、ブレーキ機構40及び駆動機構70を有している。ブレーキ機構40は、筋肉補助力(アシスト力)の出力部としての回転部材(出力軸)41を含んでいる。回転部材41は、第2装着具30と接続している。回転部材41の回転軸線となる第1回転軸線d1は、肩の屈伸軸daに対応して設けられている。第2装着具30が第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として相対回転することにより、肩関節を中心とした、上腕の屈曲運動及び伸展運動が可能となる。ブレーキ機構40は、駆動機構70に駆動されることで、回転部材41の自由な回転を規制する状態と、回転部材41の自由な回転を許容する状態と、に切り替わる。回転部材41の自由な回転が規制されることで、第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する相対位置が制御される、とりわけ以下の例では、上腕が下がらないように所定の位置に保持される。
なお、本発明による筋力補助装置は、図示された例に限られず、屈曲運動、伸展運動、内転運動、外転運動、内旋運動、外旋運動のいずれか一以上を補助するようにしてもよい。また、本発明による筋力補助装置は、図示された例に限られず、肘、首、腰、股、手首等における人体の動作を補助するようにしてもよい。また、図示された筋力補助装置10は、両方の肩に作用するように構成されているが、この例に限られず、筋力補助装置10は、片方の肩、片方の手首、片方の膝、片方の肘等に作用するようにしてもよい。
以下、図示された具体例を参照しながら、各構成要素について順に説明していく。なお、以下で参照する図1〜図24においては、理解の容易を図るため、一の図面で示されている構成要素が、他の図面に省略されていることもある。
まず、第1装着具20について説明する。図1及び図2に示すように、第1装着具20は、体に装着される装着プレート21及び装着ベルト22を有している。図示された例にいて、装着プレート21は、樹脂製又は金属製の板状材からなっている。ただし、装着プレート21に代えて、縫製品として構成された装着部材が用いられても良いし、縫製品と板状材(プレート)との組み合わせとして構成された装着部材が用いられてもよい。装着ベルト22は、体側部ベルトおよび一対の肩ベルトを含んでいる。装着ベルト22は、着用者の胴体、とりわけ背中に対面する位置に装着プレート21を固定する。
また、図1に示すように、第1装着具20は、中央フレーム23、側方フレーム24及び支持アーム25を更に有している。中央フレーム23、側方フレーム24及び支持アーム25は、比較的軽量で比較的剛性の高い金属製、例えばアルミニウム合金製のフレーム材からなる。中央フレーム23は、装着プレート21に固定されている。側方フレーム24は、中央フレーム23から横方向外方に延び出している。
図3及び図4に示すように、側方フレーム24は、中央フレーム23に接続した後方フレーム部24aと、後方フレーム部24aの横方向外方端から前方に延び出した前方延出フレーム部24bと、を有している。後方フレーム部24aは、肩に後方から対面する位置に配置されている。前方延出フレーム部24bは、肩に横方向における外方から対面する位置に配置されている。側方フレーム24は、中央フレーム23に対して、第2回転軸線d2を中心として相対回転可能に接続されている。この第2回転軸線d2は、肩の内外旋軸dbに対応して設けられている。側方フレーム24が中央フレーム23に対して第2回転軸線d2を中心として相対回転することにより、肩関節を中心とした、上腕の内旋運動及び外旋運動が可能となる。支持アーム25は、前方延出フレーム部24bの前方端に設けられている。支持アーム25は、後述するブレーキ機構40のケーシング50を支持するブラケットとして機能する。
肩の動作を補助する図示された筋力補助装置10は、両方の肩に作用するように構成されている。具体的には、中央フレーム23の両側方にそれぞれ側方フレーム24が設けられている。各側方フレーム24に、アシスト機構15のブレーキ機構40等が支持されている。また、各側方フレーム24に対応して、第2装着具30がそれぞれ設けられている。中央フレーム23を中心として両側方に設けられた一対の構成要素は、対称性を有しており、同様に構成され得る。したがって、以下の説明及び以下の説明で参照する図においては、一方の肩に作用する構成、具体的には右肩に作用する構成について記載する。
また、本明細書で用いる「前」、「後」、「上」、「下」及び「横方向」等の用語は、筋力補助装置10を着用した着用者を基準とする「前」、「後」、「上」、「下」及び「横方向」を意味することとする。
次に、第2装着具30について説明する。図10に示すように、第2装着具30は、詳しくは後述するアシスト機構15の出力軸をなす回転部材41(図5及び図10参照)と接続している。第2装着具30は、回転部材41の回転にともなって、回転部材41の回転軸線である第1回転軸線d1を中心として回転する。図10に示すように、第2装着具30は、人体に取り付けられる装着部37と、回転部材41と装着部37とを連結する連結アーム部31と、を有している。装着部37は、回転部材41からアシスト軸線である第1回転軸線d1と非平行な方向に延び出している。連結アーム部31は、アシスト機構15の最下流側(最出力側)となる回転部材41から筋力補助力を入力される。連結アーム部31は、回転部材41の第1装着具20に対する回転にともなって装着部37が第1装着具20に対して回転するよう、回転部材41と装着部37とを連結している。
まず、装着部37について説明する。図示された例において、装着部37は、図8及び図9に示すように、人体の上腕に取り付けられる。装着部37は、アシスト機構15から供給される力を上腕に効率的に伝達するため、第1回転軸線d1周りの回転にともなった移動方向への上腕との相対移動を規制されることが好ましい。とりわけ筋力補助装置10が上腕の持ち上げを補助する場合には、上腕の装着部37に対する下方又は後方への相対移動を効果的に規制することが好ましい。図3及び図4によく示されているように、図示された装着部37は、上腕が挿入される筒状部を形成する装着体38及び補助ベルト39を有している。装着体38は、例えば、高剛性の樹脂成形物等からなる。図示された例において、装着体38は、その外面にボス38aを有している。装着体38は、ボス38aを介して、連結アーム部31と接続している。図1及び図8に示すように、装着体38は、下がった位置にある上腕に対して後方から対面する位置に配置され、図9に示すように、持ち上げられた上腕に対して下方から対面する位置に配置される。一方、図2に示すように、補助ベルト39は、柔軟性を有したベルト材からなり、上腕に対して主として前方から対面する位置に配置される。補助ベルト39の長さを調節することで、装着部37が上腕を安定して保持することが可能となる。
次に、連結アーム部31について説明する。連結アーム部31は、アシスト機構15から供給される力を装着部37に効率的に伝達するため、第1回転軸線d1を中心として、装着部37及び回転部材41が相対回転しないように、装着部37及び回転部材41を連結することが好ましい。すなわち、第2装着具30は、アシスト機構15から第1回転軸線d1を中心とした回転力を作用されるため、遊びや構成要素自体の弾性変形を除くと、アシスト機構15から回転力を入力される連結アーム部31と人体に補助力を出力する装着部37は、アシスト機構15から入力される力の方向、つまり第1回転軸線d1を中心とした円周方向に、相対動作しないようになっていることが好ましい。
図2、図8、図10に示すように、具体的な構成として、図示された連結アーム部31は、回転部材41の側から装着部37の側へ順に、基部材32、第1部材33、第2部材34及び第3部材35を有している。図10に示すように、基部材32は、回転部材41に固定され、第1回転軸線d1と非平行な方向に回転部材41から延び出している。基部材32は、回転部材41と同期して、第1回転軸線d1を中心として回転する。図2に示すように、第1部材33は、第3回転軸線d3を中心として基部材32と相対回転可能となるよう、基部材32に接続している。第2部材34は、第4回転軸線d4を中心として第1部材33と相対回転可能となるよう、第1部材33に接続している。第3部材35は、第5回転軸線d5を中心として第2部材34と相対回転可能となるよう、第2部材34に接続している。また、第3部材35は、第6回転軸線d6を中心として装着部37の装着体38と相対回転可能となるよう、装着体38のボス38aに接続している。
なお、連結アーム部31が回転部材41から延び出すとは、連結アーム部31が回転部材41と一体的に形成されていることも含む。すなわち、連結アーム部31の一部又は全部が、回転部材41と一体的に形成されていてもよい。例えば、基部材32が回転部材41と一体的に形成されていてもよい。
ところで、着用者の拘束感を軽減する目的からは、アシスト軸線である第1回転軸線d1と平行な方向への投影において、すなわち図8及び図9の紙面への投影において、装着部37は、連結アーム部31に対する向きを調節可能となっていることが好ましい。図示された例において、連結アーム部31と装着部37は、第6回転軸線d6を中心として相対回転可能に接続している。図8及び図9に示すように、第1回転軸線d1が屈伸軸daと一致していない場合、上腕の屈伸運動にともない、屈伸軸daと装着部37が取り付けられている上腕の部位とを結ぶ方向(上腕の長手方向)dxと、連結アーム部31の両端を結ぶ方向(より厳密には、連結アーム部31の回転部材41への接続位置ce1と連結アーム部31の装着部37への接続位置ce2とを結ぶ方向)dαとによってなされる角度θxは変化する。したがって、この屈伸運動にともない、装着部37は、上腕に対して向きを変化させるよう作用する。このとき着用者は、拘束感、さらには上腕に痛みを覚えることになる。しかしながら、ここで説明する装着部37は、連結アーム部31に対して第6回転軸線d6を中心として回転することで、上腕の長手方向に応じて連結アーム部31に対する装着部37の向きを自動的に調節することができる。
この装着部37の向き調整機能に鑑み、図2に示すように、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線(第6回転軸線d6)は、連結アーム部31の両端を結ぶ方向(より厳密には、連結アーム部31の回転部材41への接続位置ce1と連結アーム部31の装着部37への接続位置ce2とを結ぶ方向)dαと非平行となっている。装着部37の連結アーム部31に対する第6回転軸線d6を中心とした回転により、装着部37の上腕に対する向き調整を効率的に実現する観点から、図2に示すように、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線(第6回転軸線d6)が、連結アーム部31の両端を結ぶ方向(より厳密には、連結アーム部31の回転部材41への接続位置ce1と連結アーム部31の装着部37への接続位置ce2とを結ぶ方向)dαに対してなす角度θαは、好ましくは45°より大きく135°未満となるように設定され、より好ましくは60°より大きく120°未満となるように設定され、最も好ましくは、この角度θαは90°となるように設定される。
同様に、装着部37の連結アーム部31に対する第6回転軸線d6を中心とした回転により、装着部37の上腕に対する向き調整を効率的に実現する観点から、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線(第3回転軸線d3)が、アシスト軸線をなす第1回転軸線d1に対してなす角度θβは、図10に示すように、好ましくは45°未満となるように設定され、より好ましくは30°未満となるように設定され、最も好ましくは、この角度θβは0°となるように設定される。
その一方で、装着部37の向き調整機能が、回転部材41から装着部37への筋力補助力の効率的な伝達を阻害しないようにする必要がある。すなわち、装着部37の第6回転軸線d6を中心とした連結アーム部31に対する回転にともなって、装着部37が第1回転軸線d1を中心とする円周に沿って回転部材41に対して相対移動しないようにすることが好ましい。この点から、図8及び図9に示すように、アシスト軸線である第1回転軸線d1と平行な方向への投影において、連結アーム部31と装着部37との相対回転可能な接続位置ce2は、第1回転軸線d1から大きく離れており、装着部37が人体と接触している領域内に位置している。
さらに、連結アーム部31は、着用者の拘束感を軽減する目的から、回転部材41の回転軸線である第1回転軸線d1と直交し且つ装着部37及び連結アーム部31の接続位置(以下において、「先端側接続位置」とも呼ぶ)ce2を含む面内において、回転部材41及び連結アーム部31の接続位置(以下において、「基端側接続位置」とも呼ぶ)ce1と先端側接続位置ce2との間の距離laが変化するようになっている。ここで、第1回転軸線d1と直交し且つ先端側接続位置ce2を含む面とは、図8及び図9に示された面と平行な面となる。そして、図8及び図9に示された面と平行な面内における基端側接続位置ce1から先端側接続位置ce2までの距離laとは、第1回転軸線d1と先端側接続位置ce2とを含む面内における、第1回転軸線d1に直交する方向に沿った第1回転軸線d1と先端側接続位置ce2との離間間隔にも相当する。
また、着用者の拘束感を軽減する目的からは、回転部材41から連結アーム部31を介して装着部37までの部分が、4自由度の機構を形成していることが好ましい。図3及び図4によく示されているように、図示された連結アーム部31は、回転部材41に固定された基部材32と、基部材32に対して動作可能に接続した第1部材33と、第1部材33に動作可能に接続した第2部材34と、第2部材34に動作可能に接続し且つ装着部37に動作可能に接続した第3部材35と、を有している。この連結アーム部31によれば、回転部材41から装着部37までの構成により、4自由度の動作を行うことができる。言い換えると、装着部37は、回転部材41に対して、4自由度の相対動作を行うことができる。
さらに、回転部材41及び連結アーム部31の第1部材33、連結アーム部31の第1部材33及び連結アーム部31の第2部材34、及び、連結アーム部31の第2部材34及び連結アーム部31の第3部材35のいずれか一つの組み合わせは、回転部材41の回転軸線である第1回転軸線d1と非平行な軸線を中心として相対回転可能となっていることが好ましい。第1回転軸線d1と非平行な軸線を中心として回転可能な接続は、装着部37が、回転部材41の回転にともなって、第1回転軸線d1を中心として回転することを阻害することはない。すなわち、回転部材41から装着部37への筋力補助力の伝達を阻害することはない。その一方で、図示された例では、装着部37が、第1回転軸線d1と非平行な軸線を中心とした肩関節での動作に追随して、上腕とともに移動することを可能とすることができる。
図示された例において、連結アーム部31の第1部材33は、回転部材41に対して第3回転軸線d3を中心として、相対回転可能となっている。第3回転軸線d3は、第1回転軸線d1と非平行である。とりわけ図示された例において、第3回転軸線d3は、第1回転軸線d1に垂直である。また、第3回転軸線d3は、第2回転軸線d2にも垂直である。
同様に、連結アーム部31の第1部材33と連結アーム部31の第2部材34との相対回転軸線である第4回転軸線d4は、第1回転軸線d1と非平行であり、とりわけ図示された例において第1回転軸線d1に垂直である。また、第4回転軸線d4は、第2回転軸線d2にも垂直である。
同様に、連結アーム部31の第2部材34と連結アーム部31の第3部材35との相対回転軸線である第5回転軸線d5は、第1回転軸線d1と非平行であり、とりわけ図示された例において第1回転軸線d1に垂直である。また、第5回転軸線d5は、第2回転軸線d2にも垂直である。
図示された例において、第3回転軸線d3、第4回転軸線d4及び第5回転軸線d5は、互いに平行となっている。第3回転軸線d3、第4回転軸線d4及び第5回転軸線d5は、肩の内外転軸dcに対応して設けられている。第3〜第5回転軸線d3,d4,d5を中心として構成要素が相対回転することにより、肩関節を中心とした、上腕の内転運動及び外転運動が可能となる。さらに、このような構成の連結アーム部31では、内外転運動に対応して設けられた第3回転軸線d3に直交し且つ先端側接続位置ce2を含む面(図10及び図12)において、第3回転軸線d3と先端側接続位置ce2との距離lbが変化するようになっている。
次に、アシスト機構15について説明する。上述したように、アシスト機構15は、ブレーキ機構40及び駆動機構70を有している。ブレーキ機構40は、筋肉補助力(アシスト力)の出力部としての回転部材(出力軸)41を含んでいる。ブレーキ機構40は、駆動機構70に駆動されることで、回転部材41の自由な回転を規制する状態と、回転部材41の自由な回転を許容する状態と、に切り替わる。ブレーキ機構40は、回転部材41の回転を規制することで、第1装着具20に対する第2装着具30のアシスト軸線である第1回転軸線d1を中心とした少なくとも一方向への相対回転を規制する。
図7に模式的に示すように、ブレーキ機構40は、回転部材41に加え、ブレーキ回転体60と、接触部材65と、を有している。回転部材41は、第2装着具30と連動して第1回転軸線d1を中心として第1装着具20に対して相対回転することができる。接触部材65は、アシスト軸線に対して垂直な方向と非平行な方向に移動することができる。すなわち、接触部材65は、アシスト軸線(第1回転軸線d1)と平行な方向またはアシスト軸線(第1回転軸線d1)に傾斜した方向に移動可能となっている。そして、接触部材65は、所定の方向に移動することで、ブレーキ回転体60に接離することができる。すなわち、接触部材65は、所定の方向に沿って移動してブレーキ回転体60に接近すること、所定の方向にそって移動してブレーキ回転体60から離間することが可能となっている。このブレーキ機構40は、いわゆるディスクブレーキとも呼ばれる機構である。接触部材65がブレーキ回転体60に接触して摩擦を生じさせることで、ブレーキ回転体60の第1回転軸線d1を中心とした自由な回転が規制される。これにより、ブレーキ回転体60と連動して第1回転軸線d1を中心として回転可能な第2装着具30の第1装着具20に対する相対回転に規制が加えられるようになる。
図5〜図7を主に参照して、図示されたブレーキ機構40について具体的に説明する。図5〜図7に示すように、このブレーキ機構40は、ブレーキ回転体60及び接触部材65を支持するケーシング50を有している。ケーシング50は、図3及び図4に示すように、支持アーム25を介して第1装着具20に固定されている。図5に示すように、ケーシング50は、第1ケーシング部51及び第2ケーシング部52を含んでいる。第1ケーシング部51及び第2ケーシング部52のそれぞれに軸受42が設けられている。この軸受42によって、回転部材41が回転可能にケーシング50に支持されている。すなわち、ケーシング50が、回転部材41の回転軸線である第1回転軸線(アシスト軸線)d1を画成している。図示された例において、回転部材41は、ケーシング50を貫通している。
第1ケーシング部51及び第2ケーシング部52の間に画成された空間に、ブレーキ回転体60が収容されている。第1ケーシング部51には、この空間に開口した孔51aが形成されている。孔51a内には、接触部材65が収容されている。この孔51aは、接触部材65を動作させるシリンダ54として機能する。図示された例において、第1ケーシング部51には、八つのシリンダ54が形成されており、合計八つの接触部材65が支持されている。八つの接触部材65は、第1回転軸線d1を中心とする円周上に等間隔で配置されている。すなわち、八つの接触部材65は、回転部材41の周囲に配置されている。
シリンダ54は、第1回転軸線d1と平行に延びている。したがって、図示された例において、接触部材65は、第1回転軸線d1と平行な方向に移動する。第1ケーシング部51には、八つのシリンダ54に通じる流路55が形成されている。流路55から流体を注入することで、接触部材65は、ブレーキ回転体60に接近する向きに移動する。ブレーキ回転体60は、第1ケーシング部51及び第2ケーシング部52の間の空間において、第1回転軸線d1にいくらか移動することができる。第2ケーシング部52のブレーキ回転体60に対面する面は、受圧面53として機能する。接触部材65によって押圧されたブレーキ回転体60が、第2ケーシング部52の受圧面53に接触することで、ブレーキ回転体60と接触部材65との間だけでなく、ブレーキ回転体60と受圧面53との間にも摩擦力が発生する。つまり、ブレーキ回転体60と接触部材65との相対回転を規制する制動力に加え、ブレーキ回転体60と受圧面53との相対回転を規制する制動力も生じる。
ところで、図示された例において、ブレーキ機構40は、回転部材41とブレーキ回転体60との間に設けられたワンウェイクラッチ45をさらに有している。ワンウェイクラッチは、一方の方向のみに回転力を伝達する機構のことを指し、具体例として、ワンウェイベアリングが含まれる。図示された例において、ワンウェイクラッチは、ワンウェイベアリングとして構成されている。
図5に示すように、ワンウェイクラッチ45の外輪がブレーキ回転体60に固定され、ワンウェイクラッチ45の内輪が回転部材41を保持している。このワンウェイクラッチ45は、回転部材41のブレーキ回転体60に対する第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心とした一方向への相対回転を規制する。その一方で、ワンウェイクラッチ45は、回転部材41のブレーキ回転体60に対する第1回転軸線(アシスト軸線)d1を中心とした一方向とは逆の他方向への相対回転を許容する。したがって、図示された例では、接触部材65が動作してブレーキ回転体60の第1回転軸線d1を中心とした回転が制動された状態において、ワンウェイクラッチ45での回転により、回転部材41は第1回転軸線d1を中心として他方向には回転することができるが、第1回転軸線d1を中心として一方向には回転することができなくなる。すなわち、ブレーキ機構40が制動力を発生させている状態において、第2装着具30は、第1装着具20に対して、第1回転軸線d1を中心として他方向には回転することができるが、第1回転軸線d1を中心として一方向には回転することはできない。後述するように、図示された例では、ブレーキ機構40が制動力を生じている場合、上腕を持ち上げる向きの動作が許容されるが、上腕を下げる向きの動作が規制される。すなわち、上腕が下がらないように筋力補助を行いながら、上腕の持ち上げ動作を許容する。なお、ブレーキ回転体60の第1回転軸線d1を中心とした回転が制動されていない状態においては、ワンウェイクラッチ45は機能しない状態になっているので、第2装着具30は、第1装着具20に対して、自由回転が可能となっている。
次に、ブレーキ機構40を駆動する駆動機構70について説明する。図示された例において、ブレーキ機構40は、流体圧力によって駆動される。したがって、図1に示すように、駆動機構70は、流体圧源71と、流体圧源71及びブレーキ機構40の流路55とを連通させる流路形成部材72と、を有している。流体圧源71は、圧力タンクや、ポンプにより構成される。流体圧源71から供給される流体は、ブレーキ機構40に応じて適宜選択され、例えば空気、窒素、不活性ガス等の気体や、水、油等の液体を採用することができる。流路形成部材72は、流体圧源71から供給される流体に応じて選択され、例えば、ゴムチューブ等を用いることができる。
ブレーキ機構40からの流体の供給および供給停止は、制御部13によって、制御される。制御部13は、筋力補助装置10に取り付けられたセンサや、筋力補助装置10の着用者からの操作に基づき、ブレーキ機構40を作動させる。
次に、以上のような構成からなる筋力補助装置10の動作について説明する。
図1に示すように、まず、筋力補助装置10を着用者が着用する。具体的には、装着プレート21及び装着ベルト22を用いて、第1装着具20を胴体に装着する。また、装着部37の装着体38及び補助ベルト39を用いて、装着部37を上腕に装着する。なお、筋力補助装置10には、着用者が受ける拘束感を軽減するための工夫がなされている。したがって、肩関節の各回転軸da,db,dcに対して、筋力補助装置10の構成要素間の回転軸線d1,d2,d3を必ずしも一致させなくてもよい。したがって、厳密な位置合わせの必要性を排除することができるため、着用者は、筋力補助装置10を容易且つ短時間で着用することが可能となる。
筋力補助装置10を着用した着用者が、屈伸軸daを中心として屈伸運動または伸展運動を行う際、第2装着具30は、第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として回転する。このとき、着用者の上腕は、屈伸軸daを中心として胴体に対して相対回転する。一方、上腕に取り付けられた装着部37は、第1回転軸線d1を中心として、胴体に取り付けられた第1装着具20に対して相対回転する。ここで、第1回転軸線d1が屈伸軸daと一致していない場合、図8及び図9に示すように、上腕の屈伸運動にともない、屈伸軸daと装着部37が取り付けられている上腕の部位とを結ぶ方向(上腕の長手方向)dxと、第1回転軸線d1と装着部37とを結ぶ方向dαとによってなされる角度θxは変化する。したがって、この屈伸運動にともない、装着部37は、上腕に対して向きを変化させるよう作用する。このとき着用者は、拘束感、さらには上腕に痛みを覚えることになる。着用者は、この拘束感により、例えば肩の位置を動かしながら腕を屈曲または伸展させることを試みることになる。
一方、図示された筋力補助装置10では、拘束感を軽減するための第1の工夫として、アシスト軸線である第1回転軸線d1と平行な方向への投影において、すなわち図8及び図9の紙面への投影において、装着部37は、連結アーム部31に対する向きを調節可能となっている。具体的な構成として、連結アーム部31の第3部材35と装着部37は、第6回転軸線d6を中心として相対回転可能に接続している。したがって、ここで説明する装着部37は、連結アーム部31に対して第6回転軸線d6を中心として回転することで、上腕の長手方向に応じて連結アーム部31に対する装着部37の向きを自動的に調節することができる。
また、図示された筋力補助装置10において、図2に示すように、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線(第6回転軸線)d6は、連結アーム部31の両端を結ぶ方向(より厳密には、連結アーム部31の回転部材41への接続位置ce1と連結アーム部31の装着部37への接続位置ce2とを結ぶ方向)dαと非平行となっている。とりわけ、第6回転軸線d6が方向dαに対してなす角度θαは、45°より大きく135°未満となるように設定され、より好ましくは60°より大きく120°未満となるように設定され、最も好ましくは90°となるように設定される。この構成によれば、第6回転軸線d6を中心とした連結アーム部31と装着部37との相対回転は、ここで問題とする拘束感に対処するための向き調整の回転に有効に用いられるようになる。
さらに、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線(第3回転軸線d3)が、アシスト軸線をなす第1回転軸線d1に対してなす角度θβは、図10に示すように、45°未満となるように設定され、より好ましくは30°未満となるように設定され、最も好ましくは、この角度θβは0°となるように設定される。この構成によれば、第6回転軸線d6を中心とした連結アーム部31と装着部37との相対回転は、ここで問題とする拘束感に対処するための向き調整の回転に有効に用いられるようになる。
その一方で、図8及び図9に示すように、アシスト軸線である第1回転軸線d1と平行な方向への投影において、連結アーム部31と装着部37との相対回転可能な接続位置ce2は、装着部37が人体と接触している領域内に位置している。すなわち、装着部37が第6回転軸線d6を中心として連結アーム部31に対して回転した場合に、装着部37が第1回転軸線d1を中心とする円周に沿って回転部材41に対して相対移動してしまうことを効果的に防止することができる。すなわち、拘束感を効果的に消失させるための装着部37の向き調整機能が、回転部材41から装着部37への筋力補助力の伝達を効率的に維持することができる。
加えて、第1回転軸線d1が屈伸軸daと一致していない場合、上腕のうちの装着部37を取り付けられている部位の屈伸軸daを中心とした移動軌跡と、装着部37の第1回転軸線d1を中心とした移動軌跡は、一致しない。すなわち、装着部37の向きと装着部37を取り付けられる上腕の向きとの相違に関連した拘束感とは別に、装着部37の位置と装着部37を取り付けられる上腕の位置との相違に関連した拘束感も生じる。
この点について、図示された筋力補助装置10では、拘束感を軽減するための第2の工夫として、回転部材41の回転軸線である第1回転軸線d1と直交し且つ第2装着具30の装着部37及び連結アーム部31の接続位置である先端側接続位置ce2を含む面内において、すなわち、図8及び図9に示す面と平行な面において、連結アーム部31の回転部材41への接続位置である基端側接続位置ce1と連結アーム部31の装着部37への接続位置である先端側接続位置ce2との間の距離laが変化する。言い換えると、第1回転軸線d1と先端側接続位置ce2とを含む図10及び図11の面内において、基端側接続位置ce1と先端側接続位置ce2との間の第1回転軸線d1に直交する方向に沿った離間間隔laが、変化する。図示された例において、この離間間隔(距離)laは、図10に示された状態において、図11に示された状態よりも、長くなっている。この基端側接続位置ce1と先端側接続位置ce2との間の距離laの変動により、屈伸・伸展運動において、上腕の装着部37が取り付けられている部位の移動軌跡に、装着部37の移動軌跡を一致させることができる。したがって、屈伸・伸展運動中における、筋力補助装置10を着用した着用者の拘束感を効果的に軽減することができる。
さらに、本実施の形態において、回転部材41、連結アーム部31及び装着部37は、4自由度の機構を構成している。このような連結アーム部31によれば、第1回転軸線d1を含む面内において、装着部37及び連結アーム部31の接続位置ce2を、装着部37の向きを調整しながら、第1回転軸線d1と平行な方向および第1回転軸線d1に直交する方向の二方向において、調節すること、並びに、第1回転軸線d1と直交する面内における装着部37の向きを調整すること、の両方を可能とすることができる。したがって、第1回転軸線d1が、筋力を補助しようとする関節の動作の回転軸線に対して傾斜していたとしても、当該関節の動作を、拘束感を軽減して、実現可能とすることができる。さらに、筋力を補助しようとする関節の動作以外の動作(上述した例では、屈伸運動以外の、内外転運動や内外旋運動)についても、拘束感を軽減することができる。
また、人体の関節は、互いに直交する複数の軸を中心とした回転運動を可能にする。上述してきたように、肩関節は、一つの関節で、屈曲・伸展運動、内転・外転運動、内旋・外旋運動を、互いに直交する三つの軸線da,db,dcを中心とした相対回転動作として可能にしている。このような多様な運動を拘束しないようにするため、特開2009−268839号公報に開示された筋力補助装置では、三つの相対回転軸線が設けられ且つ三つの相対回転軸線が一箇所で交わるようにしている。そして、この三つの相対回転軸線が交わる位置が、着用者の関節上に位置するよう、着用者は筋力補助装置を着用する。しかしながら、筋力補助装置において、三つの回転軸線が一箇所で交わるようにすることは、筋力補助装置の複雑大型化の原因となる。さらに、筋力補助装置の三つの回転軸線が交わる位置を、着用者の関節上に配置し続けることは困難である。
一方、図示された筋力補助装置10によれば、内外転運動および内外旋運動の際にも同様に、着用者が受ける拘束感を効果的に軽減することができる。
まず、筋力補助装置10を着用した着用者が、内外転軸dcを中心として内転運動または外転運動を行う際、図12に示すように、第2装着具30は、第1装着具20に対して第3回転軸線d3を中心として回転する。このとき、着用者の上腕は、内外転軸dcを中心として胴体に対して相対回転する。一方、上腕に取り付けられた装着部37は、第3回転軸線d3を中心として、胴体に取り付けられた第1装着具20に対して相対回転する。ここで、第3回転軸線d3が内外転軸dcと一致していない場合、上腕の装着部37を取り付けられている部位の内外転軸dcを中心とした移動軌跡と、装着部37の第3回転軸線d3を中心とした移動軌跡は、一致しない。したがって、着用者は、拘束感を覚えて肩の位置を動かしながら腕を内転または外転させることになる。
しかしながら、図示された筋力補助装置10では、第3回転軸線d3と直交し且つ先端側接続位置ce2を含む面内において、すなわち、図10及び図12に示す面において、第3回転軸線d3と先端側接続位置ce2との間の距離lbが変化する。言い換えると、第3回転軸線d3と先端側接続位置ce2とを含む面内において、第3回転軸線d3と先端側接続位置ce2との間の第3回転軸線d3に直交する方向に沿った離間間隔が、変化する。この第3回転軸線d3と先端側接続位置ce2との間の距離の変動により、内転・外転運動において、上腕の装着部37が取り付けられている部位の移動軌跡に、装着部37の移動軌跡を一致させることができる。したがって、内転・外転運動中における、筋力補助装置10を着用した着用者の拘束感を効果的に軽減することができる。
次に、筋力補助装置10を着用した着用者が、内外旋転軸dbを中心として内旋運動または外旋運動を行う際、第2装着具30は、第1装着具20に対して第2回転軸線d2を中心として回転する。このとき、着用者の上腕は、内外旋軸dcを中心として胴体に対して相対回転する。一方、上腕に取り付けられた装着部37は、第2回転軸線d2を中心として、胴体に取り付けられた第1装着具20の中央フレーム23に対して相対回転する。ここで、第2回転軸線d2が内外旋軸dbと一致していない場合、上腕の装着部37を取り付けられている部位の内外旋軸dbを中心とした移動軌跡と、装着部37の第2回転軸線d2を中心とした移動軌跡は、一致しない。したがって、着用者は、拘束感を覚えて肩の位置を動かしながら腕を内旋または外旋させることになる。
しかしながら、図示された筋力補助装置10では、第2回転軸線d2と直交し且つ先端側接続位置ce2を含む面内において、第2回転軸線d2と先端側接続位置ce2との間の距離が変化する。言い換えると、第2回転軸線d2と先端側接続位置ce2とを含む面内において、第2回転軸線d2と先端側接続位置ce2との間の第2回転軸線d2に直交する方向に沿った離間間隔が、変化する。この第2回転軸線d2と先端側接続位置ce2との間の距離の変動により、内旋・外旋運動において、上腕の装着部37が取り付けられている部位の移動軌跡に、装着部37の移動軌跡を一致させることができる。したがって、内旋・外旋運動中における、筋力補助装置10を着用した着用者の拘束感を効果的に軽減することができる。
次に、アシスト機構15の動作について説明する。
図示された筋力補助装置10では、着用者の操作や図示しないセンサでの検出結果に基づき、制御部13が筋力補助力を供給するか否かを制御する。筋力補助力が供給されていない場合、第2装着具30は第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として自由に回転することができる。またこの際、筋力補助装置10の着用者は、大きな拘束感を感じることはなく、上腕を動作させることができる。
筋力補助力を供給する場合、制御部13からの制御信号により、駆動機構70の流体圧源71から流路形成部材72を介してケーシング50の流路55に、流体、例えば圧縮気体が供給される。流路55内へ流体が供給されると、接触部材65が、シリンダ54内でブレーキ回転体60に接近するように移動する。接触部材65は、ブレーキ回転体60に接触し、さらに、ブレーキ回転体60を受圧面53に接触させる。これにより、ブレーキ回転体60は、第1回転軸線d1を中心とした、ケーシング50及び第1装着具20に対する相対回転を制動される。
ブレーキ回転体60にワンウェイクラッチ45を介して保持された回転部材41は、ブレーキ回転体60及び第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした一方向への回転を規制される。この結果、第2装着具30の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした一方向への回転が規制される。その一方で、回転部材41は、ワンウェイクラッチ45での内輪と外輪との相対回転により、ブレーキ回転体60及び第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした他方向への回転を許容されている。この結果、第2装着具30の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした他方向への回転は許容される。図示された例においては、筋力補助装置10の着用者は、その上腕を下げることを規制される。すなわち、着用者は、上腕を持ち上げた状態に保持することを筋力補助される。その一方で、筋力補助装置10の着用者は、その上腕を更に持ち上げることを許容されている。すなわち、着用者は、下方から支持されながら、さらに自力で持ち上げることも可能である。この点からも、着用者が受ける拘束力を軽減することができる。
ところで、ブレーキ機構40による第2装着具30の第1装着具20に対する相対回転の規制は、ブレーキ回転体60と接触部材65及び受圧面53との摩擦に起因している。しかも、接触部材65は、第1回転軸線d1と直交する方向、すなわちブレーキ回転体60の板面方向と非平行な方向へ移動してブレーキ回転体60の主面に接触する。同様に、受圧面53は、ブレーキ回転体60の反対側の主面と接触する。したがって、このブレーキ機構40では、ブレーキ回転体60を任意の位置にて静止させることができる。これにより、第2装着具30を第1装着具20に対して所望とする相対位置に保持することができる。したがって、筋力補助装置10の着用者は、所望とする体勢において、筋力補助を受けることができる。例えば、溶接具等の機器を把持して腕を持ち上げた状態での作業を、筋力補助を受けながら、適切な体勢で実施することができる。
筋力補助力の供給を停止する場合、制御部13は、流体圧源71から流路55への流体の供給を停止させる。このとき、第1ケーシング部51と第2ケーシング部52との間の空間から流体が漏れ出し、或いは、強制的に排出される。これにより、ブレーキ回転体60と接触部材65または受圧面53との間の摩擦力が消失し、筋力補助力の供給が停止する。着用者は、第1回転軸線d1を中心として第2装着具30を第1装着具20に対して自由に回転させることが可能となり、上腕を降ろすことができる。
なお、図1に示すように、筋力補助装置10は、横方向(幅方向)に離間して設けられた一対のブレーキ機構40を有している。右側のブレーキ機構40と左側のブレーキ機構40は、横方向における筋力補助装置10の中心に関し、対称的な動作を行うことが好ましい。具体的には、図5に示された例では、右肩用のブレーキ機構40において、接触部材65およびブレーキ回転体60は、駆動機構70からの流体供給により、横方向における左側に移動する。このとき、左肩用のブレーキ機構40において、接触部材65およびブレーキ回転体60は、駆動機構70からの流体供給により、横方向における右側に移動するようになっていることが好ましい。右肩用のブレーキ機構40の動作と左肩用のブレーキ機構40の動作が、対称的である場合、ブレーキ機構40の動作にともなって筋力補助装置10に伝達される反力が、互いに打ち消し合うようになる。これにより、着用者への衝撃を顕著に低下させることができ、結果として、さらに違和感及び拘束感を低減することが可能となる。
以上に説明してきた一実施の形態において、筋力補助装置10は、関節が間に位置する人体の二つの部位のうちの一方に取り付けられる第1装着具20と、アシスト軸線d1を中心として第1装着具20に対して相対回転可能であり、二つの部位のうちの他方に取り付けられる第2装着具30と、第1装着具20に対する第2装着具30のアシスト軸線d1を中心とした少なくとも一方向への相対回転を規制するブレーキ機構40と、を備えている。ブレーキ機構40は、第2装着具30に連動して第1装着具20に対して相対回転するブレーキ回転体60と、アシスト軸線d1に対して垂直な方向と非平行な方向(つまりアシスト軸線d1に対して垂直でない方向)に移動してブレーキ回転体60に接離する接触部材65と、を有している。そして、接触部材65がブレーキ回転体60に接触して、アシスト軸線d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する自由な回転を規制する。このような筋力補助装置10によれば、接触部材65がブレーキ回転体60に接触することで、ブレーキ回転体60の自由な相対回転を規制し、これにより、ブレーキ回転体60に連動し得る第2装着具30の第1装着具20に対する自由な相対回転を規制することができる。すなわち、本実施の形態では、接触部材65がブレーキ回転体60に接触した際のブレーキ回転体60と他の部材(例えば、接触部材65や受圧面53)との摩擦によって、第2装着具30の第1装着具20に対する自由な相対回転を規制することができる。したがって、第2装着具30を第1装着具20に対して任意の相対位置に保持することが可能となる。これにより、筋力補助装置10の装着者は、作業に適した所望の体勢にて筋力補助力を受けることができる。
また上述した一実施の形態において、筋力補助装置10は、ブレーキ機構40は、第1装着具20に対してアシスト軸線d1を中心として回転可能に支持され且つ第2装着具30に接続した回転部材(シャフト)41と、ブレーキ回転体60と、の間に設けられたワンウェイクラッチ45をさらに有している。ワンウェイクラッチ45は、回転部材41のブレーキ回転体60に対するアシスト軸線d1を中心とした一方向への相対回転を規制し且つ回転部材41のブレーキ回転体60に対するアシスト軸線d1を中心とした一方向とは逆の他方向への相対回転を許容するようにして、回転部材41を保持している。このような筋力補助装置10によれば、第2装着具30の第1装着具20に対する一方向への相対回転が規制される一方で、第2装着具30の第1装着具20に対する他方向への相対回転が許容される。例えば、持ち上げた腕を当該持ち上げた位置に保持することを筋力補助するとともに、作業内容に応じて腕をさらに持ち上げることができる。したがって、筋力補助力を受ける体勢を微調整することができる。また、筋力補助装置10を着用した着用者の作業性を向上させることができ、さらに、筋力補助装置10を着用した際に受ける拘束感を低減することができる。
さらに上述した一実施の形態において、接触部材65は、気圧または液圧で駆動される。このような筋力補助装置10は、簡易小型化が可能であるとともに、ブレーキ回転体60の回転を規制するための大きな制動力を確保することができる。
さらに上述した一実施の形態において、ブレーキ回転体60は、接触部材65に押圧されて移動し、第1装着具20に支持された受圧面に接触する。このような筋力補助装置10によれば、受圧面53とブレーキ回転体60との接触面積を大きく確保して、ブレーキ回転体60の回転を規制するための大きな制動力を確保することができる。
さらに上述した一実施の形態において、受圧面53は、ブレーキ回転体60を収容するケーシング50によって形成されている。このような筋力補助装置10によれば、ケーシング50が受圧面53を形成することで、筋力補助装置10を小型化することができる。
さらに上述した一実施の形態において、ブレーキ回転体60は、アシスト軸線d1と平行な方向において、接触部材65と受圧面53との間に位置する。このような筋力補助装置10によれば、ブレーキ回転体60は、接触部材65及び受圧面53との間でこれらの両方に接触する。したがって、接触部材65を動作させた場合に大きな摩擦力が生成され、ブレーキ回転体60の回転を規制するための大きな制動力を確保することができる。
以上に説明してきた一実施の形態において、筋力補助装置10は、関節が間に位置する人体の二つの部位のうちの一方に取り付けられる第1装着具20と、アシスト軸線d1を中心として第1装着具20に対して相対回転可能であり、二つの部位のうちの他方に取り付けられる第2装着具30と、第1装着具20に対してアシスト軸線d1を中心として回転可能に支持され且つ第2装着具30に接続した回転部材(回転シャフト)41と、を備えている。第2装着具30は、人体の二つの部位のうちの他方に取り付けられる装着部37と、回転部材41からアシスト軸線d1と非平行な方向に延び出して回転部材41と装着部37とを連結する連結アーム部31と、を有している。連結アーム部31と装着部37は相対回転可能に接続している。このような筋力補助装置10によれば、アシスト軸線と平行な方向からの観察における装着部37の連結アーム部31に対する向きを調節することができる。したがって、アシスト軸線d1が、筋力を補助しようとする関節の動作の回転軸線daからずれていたとしても、当該関節の動作を、拘束感を軽減して、実現可能とすることができる。また、アシスト軸線d1を関節の回転軸線daと厳密に一致させる必要がないため、筋力補助装置10の構成を簡易小型化することが可能となり、また、筋力補助装置10の人体への位置決めを容易化することができる。
また上述した一実施の形態において、アシスト軸線d1と平行な方向への投影において、連結アーム部31と装着部37との相対回転可能な接続位置ce2は、装着部37の人体に接触する領域内に位置している。このような筋力補助装置10によれば、アシスト軸線d1と平行な方向からの観察における装着部37の連結アーム部31に対する向きをより柔軟に調節することができ、これにより、筋力補助装置10を装着した際の拘束感を効果的に軽減することができる。
さらに上述した一実施の形態において、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線d6は、連結アーム部31の両端を結ぶ方向dαと非平行である。このような筋力補助装置10によれば、アシスト軸線d1と平行な方向からの観察における装着部37の連結アーム部31に対する向き調整を有効に行うことができ、筋力補助装置10を装着した際の拘束感を軽減することが可能となる。
さらに上述した一実施の形態において、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線d6が、連結アーム部31の両端を結ぶ方向dαに対してなす角度θαは、45°より大きく135°未満となっている。このような筋力補助装置10では、連結アーム部31と装着部37とが相対回転することで、アシスト軸線d1と平行な方向からの観察における装着部37の連結アーム部31に対する向きを有効に変化させることができる。これにより、筋力補助装置10を装着した際の拘束感を効果的に軽減することができる。
さらに上述した一実施の形態において、連結アーム部31と装着部37との相対回転軸線d6が、アシスト軸線d1に対してなす角度θβは、45°未満となっている。このような筋力補助装置10では、連結アーム部31と装着部37とが相対回転することで、アシスト軸線d1と平行な方向からの観察における装着部37の連結アーム部31に対する向きを有効に変化させることができる。これにより、筋力補助装置10を装着した際の拘束感を効果的に軽減することができる。
さらに上述した一実施の形態において、関節は、肩関節であり、第2装着具30は、上腕に取り付けられる。上腕は長手方向を有しており、しかも、筋力を効率的に補助する観点から、第2装着具30の装着部37は肩関節から離間した位置に取り付けられることが好ましい。このように上腕に取り付けられた装着部37の連結アーム部31に対する向きは、アシスト軸線d1が肩関節の回転軸線daからずれると、上腕の胴体に対する動作にともなって大きく変化することになる。したがって、ここで説明した筋力補助装置10は、上腕の胴体に対する位置または動作における筋力補助に極めて好適である。
さらに上述した一実施の形態において、アシスト軸線d1と直交し且つ装着部37及び連結アーム部31の接続位置ce2を含む面において、アシスト軸線d1と連結アーム部31の装着部37への接続位置ce2との間の距離laが変化するようになっている。すなわち、アシスト軸線d1と平行な方向からの観察における装着部37の位置を調節することができる。したがって、アシスト軸線d1が、筋力を補助しようとする関節の動作の回転軸線daからずれていたとしても、当該関節の動作を、拘束感を軽減して、実現可能とすることができる。また、アシスト軸線d1を関節の回転軸daと厳密に一致させる必要がないため、筋力補助装置10の構成を簡易小型化することが可能となり、また、筋力補助装置10の人体への位置決めを容易化することができる。
さらに上述した一実施の形態において、回転部材41、連結アーム部31及び装着部37は、4自由度の機構を構成している。このような連結アーム部31によれば、アシスト軸線d1を含む面内において、装着部37及び連結アーム部31の接続位置ce2を、装着部37の向きを調整しながら、アシスト軸線d1と平行な方向およびアシスト軸線d1に直交する方向の二方向において調節すること、並びに、アシスト軸線d1と直交する面内における装着部37の向きを調整すること、の両方を可能とすることができる。したがって、アシスト軸線d1が、筋力を補助しようとする関節の動作の回転軸線daに対して傾斜していたとしても、当該関節の動作を、拘束感を軽減して、実現可能とすることができる。さらに、筋力を補助しようとする関節の動作以外の動作(上述した例では、屈伸運動以外の、内外転運動や内外旋運動)についても、拘束感を軽減することができる。
さらに上述した一実施の形態において、連結アーム部31は、回転部材41に対して動作可能な第1部材33と、第1部材33に動作可能に接続した第2部材34と、第2部材34に動作可能に接続し且つ装着部37に動作可能に接続した第3部材35と、を有している。このような連結アーム部31によれば、簡易且つ安価な構成により、4自由度のリンク機構を実現することができる。
さらに上述した一実施の形態において、回転部材41及び連結アーム部31の第1部材33、連結アーム部31の第1部材33及び連結アーム部31の第2部材34、及び、連結アーム部31の第2部材34及び連結アーム部31の第3部材35のいずれか一つの組み合わせは、アシスト軸線d1と非平行な軸線d3,d4,d5を中心として相対回転可能となっている。このような連結アーム部31によれば、筋力を補助しようとする関節の動作以外の動作についても、拘束感を軽減することができる。すなわち、連結アーム部31が、筋力を補助しようとする関節の動作に対する拘束感を軽減させる手段としてだけでなく、当該関節の動作とは異なる他の動作を可能とするための手段としても機能する。しかも、他の動作についても、拘束感を効果的に軽減することができる。
さらに上述した一実施の形態において、アシスト軸線d1を中心とした第1装着具20及び第2装着具30の相対回転により、関節の屈曲運動または進展運動を可能にし、アシスト軸線d1と非平行な軸線d3,d4,d5を中心としたいずれか一つの組み合わせの相対回転により、関節の内転運動または外転運動を可能にする。したがって、関節の屈曲運動および進展運動を、過度の拘束感を与えることなく、補助しながら、同時に、当該関節の内転運動および外転運動を、拘束感を軽減しながら、実現可能とすることができる。
なお、上述した一実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した一実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の一実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した一実施の形態において、ブレーキ機構40の一例について説明した。この例において、接触部材65が、移動してブレーキ回転体60を押圧することで、ブレーキ回転体60が、移動して受圧面53に接触する。この例において、例えば図13に示すように、接触部材65のブレーキ回転体60に接触する面、ブレーキ回転体60の接触部材65に接触する面、ブレーキ回転体60の受圧面53に接触する面、第1ケーシング部51のブレーキ回転体60に接触する面のうちの少なくとも一以上に、摩擦材56が積層されていてもよい。
また、図14に示す例のように、ブレーキ回転体60の両側に一以上の接触部材65が配置され、ブレーキ回転体60の両側から接触部材65が接離するようにしてもよい。すなわち、図14に示された例では、第2ケーシング部52が、第1ケーシング部51と対称的な構成を有している。第1ケーシング部51は、孔51aによって形成されたシリンダ54を有している。図14に示された例において、受圧面53は設けられていない。また、図14に示された例において、ブレーキ回転体60が回転部材41に対して第1回転軸線d1に静止しているようにしてもよい。図14に示された例では、ブレーキ回転体60と、当該ブレーキ回転体60の両側に設けられた接触部材65との摩擦による制動力を得ることができる。
さらに、図15に示す例のように、ブレーキ回転体60が二つ設けられていてもよい。図15に示された例でも、ケーシング50の第2ケーシング部52が、上述した一実施の形態における第1ケーシング部51と対称的な構成を有している。図15に示された例において、回転部材41上に一対のブレーキ回転体60が設けられている。一対の回転部材41の間には、受圧部材57が設けられている。受圧部材57は、ケーシング50に固定されている、又は、ケーシング50の一部をなしている。受圧部材57は、第1回転軸線d1に沿って両側に向く一対の受圧面53を有している。図15に示された例では、第1のブレーキ回転体60と、当該第1のブレーキ回転体60に対応して設けられた接触部材65及び受圧部材57の受圧面53との摩擦による制動力、並びに、第2のブレーキ回転体60と、当該第2のブレーキ回転体60に対応して設けられた接触部材65及び受圧部材57の受圧面53との摩擦による制動力によって、回転部材41の自由な回転をより安定して規制することができる。
さらに、図16に示す例において、ケーシング50は、中央ケーシング部58と、中央ケーシング部58の第1回転軸線d1における両側に設けられた一対の側ケーシング部59と、を有している。中央ケーシング部58内には、二つの接触部材65が第1回転軸線d1と平行な方向に並べて配置されている。また、第1回転軸線d1の周囲に、多数対の接触部材65、例えば上述した一実施の形態と同様に八対の接触部材65が配置されている。第1回転軸線d1内に並べられた二つの接触部材65の間に、流路55が形成されている。二つの接触部材65は、駆動機構70に駆動されて、第1回転軸線d1に沿って互いから離間するよう移動する。接触部材65と当該接触部材65に対応する側ケーシング部59との間には、ブレーキ回転体60が配置されている。図16に示された例において、各ブレーキ回転体60は、上述した一実施の形態で説明したブレーキ回転体と同様に、接触部材65と側ケーシング部59の受圧面53との間の摩擦力により制動力を発生させる。
さらに、上述した一実施の形態において、ワンウェイクラッチ45が設けられている例を示したが、この例に限られず、ワンウェイクラッチ45を省いてもよい。また、受圧面53も必須ではなく、接触部材65とブレーキ回転体60との間の摩擦力のみにより制動力を発生するようにしてもよい。
さらに、図17〜図19に示す例のように、ブレーキ機構40が、接触部材65とは別の条件でブレーキ回転体60に接触するようになる補助接触部材66を含むようにしてもよい。図17〜図19に示された例において、アシスト軸線である第1回転軸線d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する自由な回転が規制された状態において、ブレーキ回転体60が、当該規制に抗する外力により、接触部材65とともに第1装着具20に対して動作するようになっている。このブレーキ回転体60の動作にともない、ブレーキ回転体60と補助接触部材66が接触して更なる制動力を発生させるようになっている。以下、図17〜図19に示された例について、さらに詳細に説明する。
図17〜図19に示された例において、ケーシング50は、第1装着具20に固定された支持台75に支持されている。図17〜図19に示された例において、ケーシング50は、図示を省略された第1ケーシング部と、第2ケーシング部52と、を有している。図示されていない第1ケーシング部は、上述した一実施の形態と同様に、孔51aによって形成されたシリンダ54および流路55を有しており、接触部材65を動作可能に保持している。第2ケーシング部52は、ブレーキ回転体60を収容し、第1回転軸線d1に沿ってブレーキ回転体60に対面する位置に図示しない受圧面を有している。ブレーキ機構40は、ケーシング50を付勢する付勢手段76をさらに有している。この付勢手段76からの付勢力を抗することで、第2ケーシング部52は、支持台75に対して動作する。図示された例において、付勢手段76は、圧縮ばねから構成されている。また、第2ケーシング部52は、上下方向に移動することができる。第2ケーシング部52の下方には切欠52aが設けられている。この切欠52aを介して、ブレーキ回転体60は、第1回転軸線d1を中心とする径方向に、第2ケーシング部52から露出している。そして、支持台75には、補助接触部材66が設けられている。補助接触部材66は第2ケーシング部52の切欠52a内に延び入っている。
ここで図17は、連結アーム部31が回転部材41に対して第1回転軸線d1を中心として自由に回転することができる状態を示している。一方、図18に示された状態において、接触部材65が、ブレーキ回転体60を押圧し、ブレーキ回転体60は、第2ケーシング部52に接触している。このとき、ブレーキ回転体60及び回転部材41は、第1回転軸線d1を中心としたケーシング50及び第1装着具20に対する自由な回転を規制されている。図18に示された状態では、連結アーム部31が持ち上がり、第2装着具30とともに上腕が持ち上げられている。そして、第2装着具30が回転部材41とともに、第1回転軸線d1を中心として一方向(図17〜図19における時計回り方向)に回転することが規制されている。ここで、第2装着具30を回転部材41とともに第1回転軸線d1を中心として一方向(図17〜図19における時計回り方向)に回転させよとする力が働いた場合、例えば、上腕を下げる方向への力が働いた場合、ケーシング50は、付勢手段76からの付勢力に抗して、下方に移動して支持台75に接近する。このとき、補助接触部材66が第2ケーシング部52の切欠52aに係合することで、第1装着具20に対するケーシング50の動作が案内される。この動作によって、ケーシング50とともに、ケーシング50に支持されたブレーキ回転体60、接触部材65及び回転部材41等も支持台75に対して動作する。この結果、図19に示すように、補助接触部材66が、第1装着具20に対して接触部材65とともに動作したブレーキ回転体60に接触する。補助接触部材66及びブレーキ回転体60との間の摩擦により、さらに、制動力が増強される。
以上のように図17〜図19に示された例では、ブレーキ回転体60は、アシスト軸線d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する自由な回転が規制された状態において、当該規制に抗する外力により、接触部材65とともに第1装着具20に対して動作するよう、第1装着具20に支持されている。とりわけ、図示された例では、接触部材65がブレーキ回転体60に接触して、アシスト軸線d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する一方向への相対回転が規制される。そして、ブレーキ回転体60は、アシスト軸線d1を中心として第2装着具30を第1装着具20に対して一方向へ相対回転させようとする外力により、接触部材65とともに第1装着具20に対して動作する。さらに、ブレーキ機構40は、第1装着具20に対して接触部材65とともに動作したブレーキ回転体60に接触する補助接触部材66を、さらに有している。このような筋力補助装置10によれば、接触部材65がブレーキ回転体60に接触することで生成された制動力に抗する外力が加えられた際、ブレーキ回転体60と補助接触部材66がさらに接触して、更なる摩擦力を生じさせる。これにより、ブレーキ回転体60の回転を規制するための更に大きな制動力が確保され、第2装着具30を第1装着具20に対して所望の位置に安定して保持することが可能となる。
また、図17〜図19に示された例において、ブレーキ回転体60及び接触部材65は、外力により、アシスト軸線d1と非平行な方向に、第1装着具20に対して移動し、補助接触部材66は、アシスト軸線d1を中心とする径方向から、ブレーキ回転体60に接触する。このような筋力補助装置10によれば、接触部材65と干渉しない位置に補助接触部材66を配置することができる。したがって、筋力補助装置10の複雑大型化を効果的に防止しながら、ブレーキ回転体60の回転を規制するための制動力を有効に増強することができる。
さらに、図17〜図19に示された例において、ブレーキ機構40は、ブレーキ回転体60および接触部材65を支持するケーシング50をさらに有し、ケーシング50が、第1装着具20に動作可能に支持されている。このような筋力補助装置10によれば、ケーシング50で支持された接触部材65及びブレーキ回転体60が、接触状態を維持したまま、第1装着具20に対して移動することが可能となる。これにより、ブレーキ回転体60の回転を規制するための制動力の段階的な増強を安定して得ることができる。
さらに、図17〜図19に示された例において、ブレーキ機構40は、ケーシング50を付勢する付勢手段76を、さらに有している。外力は、付勢手段76の付勢力に抗して、ブレーキ回転体60および接触部材65とともにケーシング50を第1装着具20に対して移動させる。このような筋力補助装置10は、簡易小型化が可能であるとともに、大きな制動力を確保することができる。
なお、図17〜図19に示された例において、ブレーキ回転体60が、アシスト軸線d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する自由な回転が規制された状態において、当該規制に抗する外力によって、接触部材65とともに第1装着具20に対して下方に移動し得る例を示したが、この例に限られない。例えば、当該規制に抗する外力により、ブレーキ回転体60が、接触部材65やケーシング50とともに、アシスト軸線d1からずれて位置する軸線を中心として第1装着具20に対して相対回転可能となっていてもよい。
また、図17〜図19に示された例において、補助接触部材66が、ブレーキ回転体60に接触して、ブレーキ回転体60との摩擦により制動力を増強する例を示したが、この例に限られない。例えば図20及び図21に示すように、ブレーキ機構40が、アシスト軸線d1を中心としてブレーキ回転体60と同期して回転する補助ブレーキ回転体61をさらに有し、補助接触部材66が、補助ブレーキ回転体61に接触するようにしてもよい。図20及び図21に示された例においても、ブレーキ機構40は、接触部材65及びブレーキ回転体60を収容したケーシング50を有している。補助ブレーキ回転体61は、ケーシング50から延び出した回転部材41に固定され、ブレーキ回転体60と同期して回転可能となっている。
ケーシング50は、第1装着具20の支持アーム25によって支持されている。支持アーム25は、第7回転軸線d7を中心として回転可能(揺動可能)に側方フレーム24に接続している。すなわち、ケーシング50は、アシスト軸線である第1回転軸線d1からずれて位置する第7回転軸線d7を中心として第1装着具20に対して相対回転可能となっている。
図20及び図21に示された状態で、連結アーム部31が持ち上がり、第2装着具30とともに上腕が持ち上げられている。そして、第2装着具30が回転部材41とともに、第1回転軸線d1を中心として一方向(図20〜図21における時計回り方向)に回転することが規制されている。ここで、第2装着具30を回転部材41とともに第1回転軸線d1を中心として一方向に回転させようとする力が働いた場合、例えば、上腕を下げる方向への力が働いた場合、支持アーム25は、図示しない付勢手段からの付勢力に抗して、下方に揺動し、これにともなってケーシング50も移動する。このとき、ケーシング50とともに、第1ケーシング部51に支持されたブレーキ回転体60、接触部材65、回転部材41、さらには、回転部材41に支持された補助ブレーキ回転体61が、第1装着具の側方フレーム24に対して動作する。この結果、図21に示すように、側方フレーム24に固定された補助接触部材66が、補助ブレーキ回転体61に接触する。補助ブレーキ回転体61及び補助接触部材66との間の摩擦により、さらに、回転部材41の回転を制動する制動力が増強される。
図20及び図21に示された例において、ブレーキ機構40は、アシスト軸線d1を中心としてブレーキ回転体60と同期して回転する補助接触部材66を、さらに有している。ブレーキ回転体60は、アシスト軸線d1を中心とした第2装着具30の第1装着具20に対する自由な回転が規制された状態において、当該規制に抗する外力により、接触部材65および補助ブレーキ回転体61とともに第1装着具20に対して動作するよう、第1装着具20に支持されている。そして、ブレーキ機構40は、第1装着具20に対してブレーキ回転体60とともに動作した補助ブレーキ回転体61に接触する補助接触部材66を、さらに有している。このような筋力補助装置10によれば、接触部材65がブレーキ回転体60に接触することで生成された制動力に抗する外力が加えられた際、補助ブレーキ回転体61と補助接触部材66がさらに接触して、更になる摩擦力を生じさせる。これにより、ブレーキ回転体60の回転を規制するための更に大きな制動力が確保され、第2装着具30を第1装着具20に対して所望の位置に安定して保持することができる。
また、図20及び図21に示された例において、ブレーキ回転体60、接触部材65及び補助ブレーキ回転体61は、規制に抗する外力により、アシスト軸線d1と非平行な方向に、第1装着具20に対して移動する。補助接触部材66は、アシスト軸線d1を中心とする径方向から、補助ブレーキ回転体61に接触する。このような筋力補助装置10によれば、接触部材65と干渉しない位置に補助接触部材66を配置することができる。したがって、筋力補助装置10の複雑大型化を効果的に防止しながら、ブレーキ回転体60の回転を規制するための制動力を有効に増強することができる。
さらに、上述した一実施の形態において、筋力補助装置10は、人体の二つの部位の相対位置を保持する補助力を有する例を示したが、この例に限られず、筋力補助装置10は、人体の二つの部位を相対動作させる筋力補助力を供給するようにしてもよい。図22〜図30に示す例において、ブレーキ機構40は、第1装着具20に第1回転軸線d1を中心として回転可能に支持された回転部材41と、回転部材41上に固定されたブレーキ回転体(ディスク)60と、回転部材41上に設けられた補助フレーム80に動作可能に支持された一対の接触部材65(図26及び図27参照)と、を有している。一対の接触部材65は、後述する保持アーム84の回転軸線d9(図26及び図27参照)を中心とした円弧状の軌道にそって、ブレーキ回転体60に接離することができる。
図22〜図30に示された例において、ブレーキ機構40は、回転部材41、ブレーキ回転体60及び接触部材65に加え、補助フレーム80、入力レバー81、被動ピン82、移動体83、保持アーム84及び位置決め部材85を有している。図28〜図30に示すように、補助フレーム80は、回転部材41上に設けられ、回転部材41に対して第1回転軸線d1を中心として回転可能となっている。図22によく示されているように、この補助フレーム80は、位置決め部材85を介して、第1装着具20と連結されている。位置決め部材85によって、補助フレーム80は所定に位置に位置決めされている。ただし、位置決め部材85は、弾性変形可能な部材、例えば圧縮ばねである。したがって、この位置決め部材85を弾性変形させることにより、第1回転軸線d1を中心として第1装着具20に対して補助フレーム80を回転させることができる。
入力レバー81、被動ピン82、移動体83及び保持アーム84は、補助フレーム80に支持されている。図24及び図25に示すように、入力レバー81は、補助フレーム80に対して第8回転軸線d8を中心として回転可能(揺動可能)となっている。被動ピン82及び移動体83は、第1回転軸線d1を中心とする径方向に補助フレーム80に対して相対移動可能となっている。被動ピン82は、入力レバー81の動作にともなって、径方向に移動する。また被動ピン82の径方向への移動によって、移動体83が径方向に移動する。図28及び図29に示すように、第9回転軸線d9を中心として揺動可能に、一対の保持アーム84が配置されている。各保持アーム84は、接触部材65を保持している。一対の保持アーム84は、接触部材65が互いに異なる側からブレーキ回転体60の主面に接触するよう、配置されている。保持アーム84は、移動体83によって径方向に押圧されることで動作する。移動体83から保持アーム84への力伝達を円滑化するため、保持アーム84は、ローラ84aを有しており、このローラ84aを介して移動体83と接触する。
図22〜図30に示された例において、入力レバー81が、駆動機構70に接続している。駆動機構70は、入力レバー81を引くことにより、入力レバー81を駆動させる。駆動機構70は、例えば、伸縮部材73として、流体圧により膨張および収縮可能な部材を用いることができる。一具体例として、伸縮部材73として、流体圧式アクチュエータとして知られたMcKibben人工筋肉を用いることができる。図28〜図30に示すように、McKibben人工筋肉からなる伸縮部材73は、流体(典型的には、気体)を内部に供給されることで、拡径するとともに短縮する。伸縮部材73は、この短縮にともなって、収縮力を発生し、入力レバー81を引き込む。
図6及び図27に示すように、駆動機構70によって、入力レバー81が引き込まれると、保持アーム84が動作して、一対の接触部材65によってブレーキ回転体60を挟持するようになる。これにより、ブレーキ回転体60及び回転部材41、さらには、回転部材41と接続した第2装着具30が、第1回転軸線d1を中心として第1装着具20に対して自由に回転することを規制される。なお、図24、図26、図28は、入力レバー81が引き込まれていない状態を示しており、図25、図27、図29、入力レバー81が引き込まれている状態を示している。
ただし、図29に示された状態から、着用者が位置決め部材85の弾性力に抗することで、補助フレーム80とともに回転部材41及びブレーキ回転体60を、第1回転軸線d1を中心として、第1装着具20に対して回転させることができる。すなわち、上述した一実施の形態と同様に、第2装着具30の第1装着具20に対する第1回転軸線d1を中心とした一方向への回転が規制される。その一方で、位置決め部材85の弾性力に抗することで、第2装着具30は第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として他方向へ回転することができる。
次に、一対の接触部材65がブレーキ回転体60に接触して制動力が発生している状態で、図30に示すように、さらに、駆動機構70が入力レバー81を引き込むと、位置決め部材85の弾性力に抗して補助フレーム80が第1回転軸線d1を中心として回転する。このとき、一対の接触部材65がブレーキ回転体60を挟持していることから、補助フレーム80とともにブレーキ回転体60及び回転部材41も、第1回転軸線d1を中心として回転する。これにより、回転部材41に接続した第2装着具30は、第1装着具20に対して第1回転軸線d1を中心として他方向へ回転することができる。すなわち、駆動機構70は、この第2装着具30の第1装着具20に対する相対回転にともなった人体の動作、例えば上腕を持ち上げる動作を筋力補助することができる。
さらに、図22〜図30に示された例等では、ブレーキ回転体60が、アシスト軸線を中心として回転可能となっている例を示したが、この例に限られない、ブレーキ回転体60と回転部材41との間にギヤ等が適宜配置されて、ブレーキ回転体60が、アシスト軸線とは異なる軸線を中心として回転可能となるようにしてもよい。この例によれば、ブレーキ機構40を、装着者の側方だけでなく背面側に配置することも可能となり、筋力補助装置10の小型軽量化を図ることができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。