以下、図面を参照して本発明の一実施の形態およびその変形例について説明する。図1〜図14は、本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1は、筋力補助装置10の全体構成を示す斜視図である。また、図4〜図7は、筋力補助装置を着用者とともに示す側面図であって、筋力補助装置の動作を説明するための図である。
筋力補助装置10は、着用者Hの動作時における筋力を補助する装置である。筋力補助装置10は、着用者Hの体に装着される第1装着具20及び第2装着具30と、第1装着具20及び第2装着具30に接続して力を出力する力供給部40と、力供給部40を制御する制御部50と、を主たる構成要素として有している。第1装着具20及び第2装着具30は、それぞれ、着用者Hの体の第1部分P1及び第2部分P2に取り付けられる。着用者Hは、第1部分P1及び第2部分P2の間に、関節等からなる可動部を有している。力供給部40から出力された力が装着具20,30を介して着用者Hの体に作用することで、着用者Hの動作が補助される。着用者Hとして、例えば、工場内での作業者、建設現場での作業者、農作業者、介護作業者、介護を受ける者、リハビリ中の患者等が想定される。
とりわけ、以下に説明する例では、着用者に対して適切な筋力補助を行うことを可能にするための工夫がなされている。具体的には、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に応じて、力供給部40からの力の出力を調節することで、着用者に対して適切な筋力補助を行うことを可能にしている。
以下、図示された具体例を参照しながら、一実施の形態に係る筋力補助装置10について説明する。図示された例では、図1及び図4に示すように、第1装着具20が、着用者の第1部分P1である胴体に取り付けられる。ここで胴体とは、人体の頭、首および四肢を除く部位であり、胴および腰と呼ばれる部位を含む。第2装着具30は、着用者Hの第2部分P2としての上肢、とりわけ上腕に取り付けられる。この筋力補助装置10は、肩の動作、より具体的には、上腕を胴体に対して屈伸軸を中心として相対回転させる屈曲伸展運動を補助する。
ただし、ここで説明する筋力補助装置10は、図示された例に限られず、肩の屈曲運動、伸展運動、内転運動、外転運動、内旋運動、外旋運動のいずれか一以上を補助するようにしてもよい。さらに、筋力補助装置10は、肘、首、腰、股、膝、手首等における人体の動作を補助するようにしてもよい。さらに、図示された筋力補助装置10は、両方の肩に作用するように構成されているが、この例に限られず、筋力補助装置10は、片方の肩、片方の手首、片方の膝、片方の肘等に作用するようにしてもよい。
まず、図示された具体例を参照しながら、筋力補助装置10に含まれる各構成要素について順に説明していく。なお、以下で参照する図1〜図9においては、理解の容易を図るため、一の図面で示されている構成要素が、他の図面で省略されていることもある。また、以下の説明で用いる「上」、「下」、「左」、「右」等は、起立した筋力補助装置10の着用者Hを基準とした「上」、「下」、「左」、「右」を指すものとする。
まず、第1装着具20について説明する。第1装着具20は、図1及び図4に示すように、第1装着具20は、ベースフレーム21及び第1装着ベルト22を有している。ベースフレーム21は、第1装着具20のうちの後述する力供給部40に接続する部分となる。とりわけ図示された例において、ベースフレーム21は、力供給部40を支持している。一方、第1装着ベルト22は、ベースフレーム21を着用者Hの体に固定する部分として機能する。
図示されたベースフレーム21は、ベース部21aと、側方フレーム部21bと、前方フレーム部21cと、上方フレーム部21dと、を有している。ベース部21aは、着用者Hの背中に対面して配置されるようになる。側方フレーム部21bは、ベース部21aの上方且つ側方から側外方に延び出している。前方フレーム部21cは、側方フレーム部21bの側外方の端部から前方に延び出している。側方フレーム部21bは、着用者Hの体の後を横方向に延びる。前方フレーム部21cは、着用者Hの肩に、側外方から対面して配置されるようになる。上方フレーム部21dは、ベース部21aの上縁から前方に延び出している。上方フレーム部21dは、着用者Hの肩に上方から接触するようになる。ここで「側外方」とは、横方向(側方向)における着用者Hの体の中心から離間する側のことを指し示している。
図1に示すように、第1装着具20を含む筋力補助装置10は、横方向における中心に位置する面を中心としてほぼ面対称な構成を有している。図1に示すように、第1装着具20は、一対の側方フレーム部21b、一対の前方フレーム部21c及び一対の上方フレーム部21dを有している。一対の前方フレーム部21cの間に、着用者Hの両肩が入るようになる。また、一対の上方フレーム部21dの間に着用者Hの首が位置するようになる。
ベースフレーム21は、力供給部40と接続し、力供給部40から力を加えられるようになる。したがって、ベースフレーム21は、変形に抗するために、高剛性を有している。ベースフレーム21が或る程度の剛性を有することで、着用者Hへ効率的に力を伝達することができる。ベースフレーム21は、例えば、金属や樹脂を用いて作製される。ベースフレーム21を構成するベース部21a、側方フレーム部21b、前方フレーム部21c及び上方フレーム部21dの二以上が、一体的に形成されていてもよいし、別部品として構成され締結具等で互いに固定されていてもよい。
第1装着ベルト22は、柔軟なベルト材等を用いて作製される。第1装着ベルト22は、その両側において、ベースフレーム21に固定され得る。図1に二点鎖線で示すように、各上方フレーム部21dの前方端部とベース部21aの下方部分との間に第1装着ベルト22が設けられている。
次に、第2装着具30について説明する。第2装着具30は、図4に示すように、アーム32及び第2装着ベルト33を有している。アーム32は、着用者Hの上腕に沿って延びるようになる。第2装着ベルト33は、アーム32を着用者Hの体に固定する。また、図2に示すように、第2装着具30は、第1装着具20の前方フレーム部21cの前端部分を貫通した軸部材31を更に有している。軸部材31は、前方フレーム部21cによって回転可能に保持されている。すなわち、第2装着具30は、第1装着具20に回転可能に接続している。第2装着具30の第1装着具20に対する回転軸線RAは、軸部材31の中心軸線上に位置する。
アーム32は、例えばベースフレーム21と同様の材料を用いて作製され、高剛性を付与される。第2装着ベルト33は、第1装着ベルト22と同様に、柔軟なベルト材等を用いて作製される。軸部材31は、金属や樹脂を用いて作製され、高剛性を有している。
次に、力供給部40について説明する。力供給部40は、第1装着具20と第2装着具30との相対位置(例えば、相対的な距離や相対的な向き(角度))を維持するための力および第1装着具20と第2装着具30とを相対移動させるための力の少なくとも一方を出力する。力供給部40は、第1装着具20及び第2装着具30の一方に対して固定され、第1装着具20及び第2装着具30の他方に力を出力する。図2に示された例において、力供給部40は、第1装着具20に固定され、第2装着具30に力を出力する。
なお、二つの部分が「相対移動」するとは、二つの部分の一方に対する二つの部分の他方の位置及び向き(角度)の少なくとも一つが変化することを意味する。したがって、第1装着具20及び第2装着具30が相対移動するとは、第1装着具20及び第2装着具30の一方に対する他方の位置及び向きの少なくとも一つが変化することを意味する。
図2に示された一具体例において、力供給部40は、電動機41、クラッチ42及びブレーキ43を有している。電動機41は、駆動手段として回転力を出力する。電動機41は、ケース41bと、ケース41bによって回転可能に保持された回転軸41aと、を有している。ケース41bはステータとして機能し、回転軸41aはロータとして機能する。ケース41bは、第1装着具20のベースフレーム21に固定されている。回転軸41aは、第2装着具30の軸部材31と同軸上に配置されている。電動機41は、軸部材31の回転軸線RAを中心とした回転力を、回転軸41aから出力可能となっている。
クラッチ42は、電動機41の回転軸41aと第2装着具30の軸部材31との接続および遮断を切り換える。クラッチ42によって電動機41と第1装着具20とが接続されると、電動機41から第2装着具30に回転力を出力することができる。一方、クラッチ42によって電動機41と第2装着具30との接続が遮断されると、第2装着具30は、力供給部40に拘束されることなく、第1装着具20に対して自由な回転が許容される。
ブレーキ43は、電動機41のケース41bと同様に、第1装着具20のベースフレーム21に対して固定されている。そして、ブレーキ43は、回転軸41aを保持することで、回転軸41aのケース41bに対する回転を規制することができる。また、ブレーキ43は、回転軸41aのケース41bに対する回転を制動することもできる。
電動機41、クラッチ42及びブレーキ43は、図示しない電源に接続されている。力供給部40の電動機41、クラッチ42及びブレーキ43は、制御部50からの制御に基づいて動作する。
なお、図示された力供給部40は例示に過ぎず、後述するように、種々の変更が可能である。例えば、駆動手段として、電動機41に代えて又は電動機41に加えて、全長を伸縮させることが可能な伸縮部材を含み、伸縮部材の伸縮により、第1装着具20及び第2装着具30に対して必要な力を出力するようにしてもよい。このような伸縮部材としては、流体圧によって駆動されるシリンダーとピストンとの組み合わせや、流体注入型バルーンアクチュエータ(いわゆる人工筋肉型アクチュエータ)を例示することができる。
次に、制御部50について説明する。制御部50は、力供給部40からの力の出力を制御する。本実施の形態において、制御部50は、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置を考慮して、力供給部40を制御するようになっている。例えば、制御部50は、第1装着具20の着用者Hの体に対する距離や向き(角度)を考慮して、力供給部40を制御する。したがって、制御部50は、第1装着具20の着用者Hの体に対する位置ずれを考慮して、力供給部40の出力を調整することができる。ここで、考慮すべき位置ずれとしては、第1装着具20のベースフレーム21が、本来保持されるべき位置からの傾き(傾きの大きさ)や、本来保持されるべき位置からの所定の方向に沿ったずれ(ずれの長さ)とすることができる。制御部50は、例えば、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて、第1装着具20及び第2装着具30が維持されるべき相対位置と、第1装着具20から出力される力と、の少なくとも一方を調整するようにしてもよい。
なお、筋力補助装置10は、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に関する情報を取得する後述の検出部60を更に有している。制御部50は、検出部60のセンサ61から検出情報を取得して、力供給部40の動作を制御する。一例として、図3に示された制御部50は、記憶部51と、計算部52と、指示部53と、を有している。記憶部51には、制御部50が力供給部40の動作を制御するために用いる情報が記録されている。例えば、記憶部51には、着用者Hが特定の作業を行うことを補助する際に第1装着具20及び第2装着具30が維持されるべき相対位置に関する情報が、記憶されている。また、記憶部51には、第1装着具20のベースフレーム21が本来保持されるべき着用者Hの体に対する相対位置に関する情報も、記憶されている。計算部52は、記憶部51に記憶されている情報と後述の検出部60からの情報とに基づいて、力供給部40の動作条件を計算する。指示部53は、計算部52で計算された条件で力供給部40を動作させるよう、力供給部40の動作を制御する。
ただし、制御部50の具体的な構成は特に限定されない。制御部50は、一例として、演算手段としてのCPU、アシスト力を制御するためのプログラム及びパラメータを記憶するROM、及び、検出部60や入力手段からの入力値や演算結果を一時的に記憶するRAMやROM等の記憶手段を含むマイクロコンピュータと、外部と接続できるI/Oと、を有するようにしてもよい。
次に、検出部60について説明する。上述のように、検出部60は、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に関する情報を取得する。この検出部60は、第1装着具20との組み合わせにおいて、検出部付き装着具20Xを構成する。第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に関する情報としては、第1装着具20と着用者Hの体との距離、第1装着具20と着用者Hの体との距離、第1装着具20と着用者Hの体との傾き(角度)、第1装着具20と着用者Hの体との変位、第1装着具20と着用者Hの体との相対移動速度、第1装着具20と着用者Hの体との相対加速度等を例示することができる。
図示された検出部60は、センサ61及び基準部材62を有している。このうち、基準部材62は、着用者Hの体に接触した状態に維持される。そして、センサ61が、基準部材62と第1装着具20のベースフレーム21との相対位置に関する情報を取得する。すなわち、図示された例では、基準部材62が、着用者Hの体の位置を示す指標として用いられている。センサ61は、力供給部40を搭載したベースフレーム21と基準部材62との相対位置を、ベースフレーム21と着用者Hの体との相対位置に関する情報として取得している。
図示された具体例において、検出部60は、基準部材62を支持する支持部材63を有している。支持部材63は、第1装着具20のベースフレーム21に取り付けられている。そして、支持部材63は、伸長又は膨張することで基準部材62を着用者Hに向けて押し付ける。支持部材63からの押し付けによって、基準部材62は、ベースフレーム21の着用者Hの体に対する相対位置が変化したとしても、着用者Hの体に接触した状態に維持される。
支持部材63として、伸長又は膨張することで基準部材62を押すことができる種々の構成を採用することができる。支持部材63は、例えば、ばね等の弾性体であってもよいし、ウレタンフォーム等のように圧縮状態からの復元力を有する材料や部材を用いることもできる。一方、基準部材62として、着用者Hの体に接触可能な種々の部材を用いることができる。図示された例では、基準部材62は、一定の平面領域に広がる形状を有する部材、典型的には、板状の部材として構成されている。このような基準部材62は、着用者Hの体のうちの一点だけでなく、体の面を示す指標として用いられ得る。したがって、ベースフレーム21の着用者Hの体からの距離だけでなく、ベースフレーム21の着用者Hの体に対する向きを、基準部材62に基づいて特定することも可能となる。
なお、基準部材62が「体に接触した状態に維持される」とは、着用者Hの素肌に接触していることのみを意味するのでなく、着用者Hの体の位置を特定するために十分な程度に着用者Hの体との間の隙間が埋められている状態を含む。したがって、基準部材62が着用者Hの着衣等の身に着けたものに接触している状態も、「体に接触した状態に維持される」に含まれる。
支持部材63は、好ましくは、第1装着具20のベースフレーム21と支持部材63との間の複数の位置に配置される。この例によれば、基準部材62を着用者Hの体に向けて複数の位置で押し付けることが可能となる。図示された例のように一定の平面に広がる基準部材62、とりわけ板状の基準部材62を、着用者Hの体、図示された例では着用者Hの背中に沿うように維持することができる。したがって、着用者Hの体の位置を高精度に示す指標として基準部材62を用いることができる。なお、支持部材63が「複数の位置に配置される」とは、複数の位置に別個の支持部材63が配置されていることだけでなく、上述した効果を期待し得る程度の距離だけ離れた複数の位置に亘って、単一の支持部材63、例えば細長い単一の支持部材63が存在していることも含む。
また、図示された第1装着具20は、着用者Hの肩に掛けられる上方フレーム部21dを有している。力供給部40は、第1装着具20及び第2装着具30を肩近傍の回転軸線RAで相対回転させる力を出力する。このような筋力補助装置10では、力供給部40を搭載されたベースフレーム21が、上方フレーム部21dと肩との接触位置またはその近傍を通過して横方向に延びる軸線RRを中心として、図6及び図7に示すように着用者Hに対して揺動し易く、結果として傾きを生じさせる。なお、軸線RRは、図6及び図7の紙面に垂直な方向に延びている。
このような揺動により生じたベースフレーム21の傾きを検出するには、肩からの距離が異なる複数の位置に支持部材63が配置されていることが好ましい。このような支持部材63の配置によれば、揺動によりベースフレーム21が着用者Hに対して傾いた際に、基準部材62をベースフレーム21に対して傾かせて着用者Hの体に沿わせることが可能となる。なお、支持部材63が「肩からの距離が異なる複数の位置に配置されている」とは、複数の位置に別個の支持部材63が配置されていることだけでなく、上述した効果を期待し得る程度の距離だけ離れた複数の位置に亘って、単一の支持部材63、例えば細長い単一の支持部材63が存在していることも含む。
図1に示された具体例において、検出部60は、鉛直方向に離間して配置された、すなわち、上方フレーム部21dからの距離が異なる位置に配置された二つの支持部材63を有している。各支持部材63は、横方向に細長く延びている。そして、二つの支持部材63は、平板状からなる基準部材62の上縁および下縁に沿って延びている。このような支持部材63としては、例えば角柱状に形成されたウレタンフォームを用いることができる。一方。基準部材62は、高剛性を有して変形しにくくなっていることが好ましい。基準部材62として、例えば、金属や樹脂を用いて形成された板材を用いることができる。基準部材62をなす板材には、軽量化のために穴等が形成されていてもよい。
センサ61は、第1装着具20のベースフレーム21及び基準部材62のいずれか一方に対して固定される。つまり、センサ61は、第1装着具20のベースフレーム21及び基準部材62のいずれか一方との相対位置を維持するようになる。このセンサ61は、ベースフレーム21及び基準部材62の他方の位置に関する情報を取得する。センサ61として、加速度センサ、ジャイロセンサ、磁気コンパスセンサ等を用い、ベースフレーム21及び基準部材62の位置関係を特定するようにしてもよい。また、センサ61として、ベースフレーム21及び基準部材62の他方までの距離に関する情報を取得する測距センサを用いてもよい。測距センサとして、光学センサや超音波センサ等の非接触式センサを用いることができる。また、測距センサとして、非接触式以外のセンサ、例えばベースフレーム21及び基準部材62の間に架け渡されるワイヤの長さに基づいて距離を測定するセンサや、圧力検知式のセンサを用いてもよい。
また、複数のセンサ61が設けられていることが好ましい。例えば測距センサを用いる場合には、ベースフレーム21と基準部材62との間の距離を複数の位置で測定することにより、ベースフレーム21と基準部材62との離間距離の変動だけでなく、ベースフレーム21と基準部材62との傾きの変動を検出することが可能となる。さらに、ベースフレーム21と基準部材62との間の距離を三以上の位置で測定することにより、ベースフレーム21と基準部材62との三次元的な相対位置の変動を検出することが可能となる。
図示された例において、一対の基準部材62の間となる位置に、二つの測距センサ61が設けられている。二つのセンサ61は、肩からの距離が異なる位置に配置されている。既に説明したように図示されたベースフレーム21は、上方フレーム部21dと肩との接触位置またはその近傍を通過して横方向に延びる軸線RRを中心として、図6及び図7に示すように着用者Hに対して揺動し易くなる。肩からの距離が異なる位置に設けられた二つのセンサ61を用いることで、揺動により生じたベースフレーム21の着用者Hに対する傾きを高精度に検出することが可能となる。
次に、以上の構成を有する筋力補助装置10の動作について説明する。以下に説明する一例において、着用者Hの自由な上腕の屈伸運動を許容する自由モードと、着用者Hの上腕を所定の持ち上げ位置に維持する補助モードと、に図示された筋力補助装置10を切り換えることができるようになっている。このような筋力補助装置10によれば、例えば、腕を持ち上げた状態で行う作業時、例えば上方に位置する作業対象物に対して工具等を用いた処理を行う作業時に、着用者Hである作業者の筋力を有効に補助することができる。
まず、着用者Hは、第1装着具20を胴体(第1部分P1)に装着する。具体的には、第1装着ベルト22を用いてベースフレーム21を胴体に取り付ける。また、着用者Hは、第2装着具30を上腕(第2部分P2)に取り付ける。具体的には、第2装着ベルト33を用いてアーム32を上腕に取り付ける。なお、筋力補助装置10は、一対の第2装着具30を有しており、一対の第2装着具30は、着用者Hの右腕および左腕にそれぞれ取り付けられる。
着用者Hが、筋力の補助を必要とする作業を実施していない状態において、筋力補助装置10は、自由モードに維持される。自由モードにおいて、上述した力供給部40のクラッチ42は、電動機41の回転軸41aと第2装着具30の軸部材31との接続を解除する。すなわち、第1装着具20に搭載された力供給部40と、第2装着具30は、遮断されている。したがって、第2装着具30の軸部材31は、第1装着具20のベースフレーム21に対して回転可能となる。これにより、着用者Hは、筋力補助装置10によって拘束されることなく、上腕を屈曲または伸展させることができる。
一方、着用者Hが、筋力補助装置10によって筋力を補助され得る上腕を上げた特定の作業を行う場合、筋力補助装置10は、補助モードに移行する。まず、何らかのセンサからの信号に基づき又は着用者Hからの入力に基づき、制御部50は、例えば記憶部51の記憶された条件に基づいて、第2装着具30を第1装着具20に対する基準相対位置に維持することになる。基準相対位置は、予め設定された条件であって、例えば、着用者Hが特定の作業を行うことを補助する際に第1装着具20及び第2装着具30が維持されるべき相対位置に設定され得る。以下の説明において、基準相対位置は、持上角度θxが90°となる相対位置とする。
ここで持上角度θxは、図5に示すように、筋力補助装置10の側面視において、第1装着具20のベースフレーム21のベース部21aの板面BPに対して第2装着具30のアーム32の中心軸線CLがなす角度〔°〕とする。持上角度θxは、アーム32がベースフレーム21から垂れ下がり、ベース部21aの板面BPとアーム32の中心軸線CLとが平行となっているときを0°(図4の状態)とし、腕とともにアーム32を前方に持ち上げると増大していくものとする。持上角度θxが90°となる基準相対位置において、アーム32は腕とともに前方に延び出す。
具体的な動作として、制御部50の記憶部51からの信号により、クラッチ42が、電動機41の回転軸41aと第2装着具30の軸部材31とを接続する。次に、電動機41が回転軸41aを回転させる。回転軸41aの回転にともなって、回転軸41aとクラッチ42を介して接続した第2装着具30も動作する。具体的には、第2装着具30は、回転軸線RAを中心として、第1装着具20に対して回転する。この第2装着具30の第1装着具20に対する動作にともなって、第2装着具30を装着された着用者Hの上腕は、前方に持ち上げられる。すなわち、筋力補助装置10は、上腕の屈曲運動を補助する。
第2装着具30の第1装着具20に対する相対回転は、持上角度θxが90°となるまで継続する。最終的に、持上角度θxが90°となり第2装着具30が第1装着具20に対する相対基準位置に到達すると、制御部50からの制御によって、電動機41の回転出力が停止するとともに、ブレーキ43が回転軸41aの回転を規制する。これにより、着用者Hは、図5に示すように、上腕を持ち上げた状態に維持することを筋力補助装置10によって補助される。そして、着用者Hは、上腕をこの状態に維持することを筋力補助装置10によって補助されながら、作業を行うことができる。
作業が終了すると、何らかのセンサからの信号に基づき又は着用者Hからの入力に基づき、制御部50は、ブレーキ43による回転規制を解除し、また、クラッチ42は、電動機41と第2装着具30との接続を解除する。すなわち、筋力補助装置10は自由モードとなり、着用者Hは上腕の自由な動作を許容されるようになる。
ところで、着用者Hは、作業中に筋力補助装置10から筋力を補助される。逆に、筋力補助装置10の第2装着具30は、何らかの作業を行っている着用者Hから持上角度θxが小さくなる向きの力を受ける。このとき、力供給部40によって、第1装着具20と第2装着具30との相対移動が規制され、第2装着具30は第1装着具20と基準相対位置に維持されている。したがって、図6に示すように、第2装着具30に加えられる力は、第2装着具30を第1装着具20とともに着用者Hの胴体に対してずらすように働く。図6に示された状態において、第1装着具20のベースフレーム21は、上方フレーム部21dと肩との接触位置またはその近傍を通過して横方向に延びる軸線RRを中心として、着用者Hの胴体に対して回転している。図6に示すように、第1装着具20が着用者Hに対してずれてしまうと、第1装着具20に対して基準相対位置に維持されている第2装着具30は、当初予定した理想的な位置に上腕を保持することができない。それどころか、着用者Hは、自力で筋力補助装置10とともに上腕を持ち上げる必要も生じ得る。
このような不具合を考慮して、本実施の形態による筋力補助装置10では、制御部50が、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置を考慮して、力供給部40の動作を制御するようになっている。ここで、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置を考慮した力供給部40の動作制御の一具体例について説明する。
図示された一例において、筋力補助装置10の検出部60が、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に関した情報を取得する。検出部60は、図4及び図6に示すように、着用者Hの背中に対面して配置された基準部材62と、基準部材62を背中に向けて押し付ける支持部材63と、を有している。また、検出部60は、基準部材62とベースフレーム21との間の距離を測定できるセンサ61を更に有している。支持部材63は、肩からの距離が異なる二つの位置に配置されている。したがって、ベースフレーム21が肩との接触位置またはその近傍を中心として着用者Hの体に対して回転したとしても、基準部材62は、支持部材63によって着用者Hの背中に沿うように配置された状態に維持される。また、肩からの距離が異なる二つの位置において、ベースフレーム21に保持されたセンサ61から支持部材63までの距離D1,D2が計測される。
制御部50は、検出部60での検出結果に基づいて、力供給部40からの出力を制御する。まず、制御部50の計算部52は、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に応じて、第2装着具30が第1装着具20に対して維持されるべき補正相対位置を計算する。
まず、計算部52は、検出部60での検出結果として、ベースフレーム21に保持されたセンサ61から支持部材63までの距離D1,D2を取得する。その一方で、制御部50の着用者Hの体に対する第1装着具20の理想的な初期相対位置を予め特定し、且つ、初期相対位置での二つの距離D1,D2データを記憶部51に記憶しておく。他の例として、記憶部51には、力供給部40から力が出力される前における二つの距離D1,D2データを初期相対位置として記憶するようにしてもよい。計算部52は、実測値としての距離D1,D2データと、初期相対位置での距離D1,D2データとを比較することで、着用者Hの体に対するベースフレーム21の理想的な相対位置からの傾き変化量を、例えば傾斜角度θy〔°〕(図6参照)として、特定することができる。
計算部52は、次に、傾斜角度θy〔°〕と基準値とを比較し、傾斜角度が基準値よりも大きい場合には、第2装着具30の第1装着具20に対する相対位置を基準相対位置から補正する。一例として、計算部52は、基準相対位置における持上角度θx〔°〕を傾斜角度θy〔°〕分だけ増大させた、補正相対位置を計算する。例えば、基準相対位置における持上角度θxが90°であって、傾斜角度θyが5°となった場合には、補正相対位置での持上角度θxa(図7参照)を95°として算出する。
その後、制御部50の指示部53が力供給部40に制御信号を送信し、力供給部40を用いて、第2装着具30を第1装着具20に対して補正相対位置まで相対移動させる。具体的には、クラッチ42が電動機41と第2装着具30とを接続したままの状態で、ブレーキ43が解除され、電動機41が回転力を出力する。第2装着具30が第1装着具20に対して補正相対位置に到達したところで、電動機41からの回転力の出力が停止し、ブレーキ43が回転軸41aの回転を規制する。これにより、第2装着具30が、第1装着具20に対して補正相対位置に維持されるようにようなる。
以上の結果、第1装着具20に対する相対位置を基準相対位置から補正相対位置へと補正された第2装着具30によって、着用者Hの上腕は作業に適した位置、例えば前方に延び出した位置に、維持されるようになる。
ここで、図8を参照して、制御部50による力供給部40の動作制御の一具体例について、更に詳述する。図8は、力供給部40の動作制御の一具体例を示すフローチャートである。
図8に示すように、ステップS1として、制御部50が、出力の指示を受信する。すなわち、制御部50は、自由モードから補助モードへの切り換えを指示される。
ステップS2として、制御部50は、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置に基づいて、基準相対位置の補正の必要性を検討する。なお、図8に示されたフローにおいて、最初に基準相対位置の補正の必要性を検討するタイミングにおいて、第2装着具30は着用者Hの腕から力を受けていない。しかしながら、筋力補助装置10が着用者Hによって正しく着用されていないことも想定される。例えば、着用者H上における理想的な位置からずれた位置に筋力補助装置10が着用されている場合や、着用者Hの体格に筋力補助装置10が正確に適合していない場合には、最初から、外力を加えられる前に基準相対位置の補正が必要となることもある。
補正が不要と判断された場合、ステップS3として、力供給部40を用いて、第2装着具30を第1装着具20に対して相対移動させ、さらに、第2装着具30を第1装着具20に対して基準相対位置に保持する。一方、補正が必要と判断された場合、ステップS4として、力供給部40を用いて、第2装着具30を第1装着具20に対して相対移動させ、最終的に、第2装着具30を第1装着具20に対して基準相対位置を補正してなる補正相対位置に保持する。
その後、ステップS5として、制御部50が、出力停止の指示を受信して補助モードから自由モードへ切り換えられる。図示された例においては、ステップS3又はステップS4から一定時間経過する毎に、ステップS2が繰り返し実行される。一定時間経過毎に、ステップS2として第2装着具30の位置修正の必要性が、着用者Hの体に対する第2装着具30の相対位置に基づいて判断され、第2装着具30の位置が維持(ステップS3)または修正(ステップS4)される。
さらに、図9は、図8のフローチャートにおけるステップS2の制御フローの一具体例を示している。図9に示されたステップS2の制御フローの一具体例について説明する。
まず、ステップS21として、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置を特定する。着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置は、検出部60での検出結果を利用する。
次に、ステップS22として、着用者Hの体に対する第1装着具20の実測された相対位置を、着用者Hの体に対する第1装着具20の理想的な相対位置と比較する。第1装着具20の実測された位置が、理想的な位置から大きくずれていない場合には、第1装着具20の位置ずれ量は許容範囲内と判断する。具体的には、着用者Hの体に対するベースフレーム21の理想的な相対位置から傾き変化量を表す上述の傾斜角度θy〔°〕(図6参照)を、予め設定されて記憶部51に記録された閾値と比較することで、第1装着具20の位置ずれ量が許容範囲内か否かを判断する。なお、閾値を0°として、傾斜角度θyが生じた場合に常に、補正が必要と判断するようにしてもよい。
第1装着具20の位置ずれ量が許容範囲内である場合には、ステップS23として、基準相対位置からの補正は不要との判断がなされる。
一方、第1装着具20の位置ずれ量が許容範囲外である場合には、ステップS24として、基準位置に対して必要となる補正量を計算する。上述した一具体例では、着用者Hの体に対するベースフレーム21の理想的な相対位置からの傾き変化量を表す上述の傾斜角度θy〔°〕を、そのまま補正量として用いた。ただし、この例に限られず、予め傾斜角度θy〔°〕と補正量としての補正角度〔°〕との関係を設定したテーブルを記憶部51に記憶しておき、このテーブルに基づいて傾斜角度θyから補正量(補正角度〔°〕)を決定するようにしてもよい。
次に、ステップS25として、制御部50の計算部52が、ステップS24で決定された補正量によって、記憶部51に記憶された基準相対位置を補正することで、補正相対位置を計算する。その後、ステップS26として、ステップS25で計算された補正相対位置への補正が必要との判断を出力する。
以上において説明してきた一実施の形態において、筋力補助装置10は、着用者Hの体に装着可能な第1装着具20及び第2装着具30と、第1装着具20および第2装着具30の相対位置を維持するための力並びに第1装着具20および第2装着具30を相対移動させるための力の少なくとも一方を出力する力供給部40と、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて力供給部40を制御する制御部50と、を有している。
一般に、筋力補助装置の使用においては、装着具の装着時における精度が不十分であることや、装着具が適切な位置に装着されたとしても、作業中の負荷等に起因して装着具が体上でずれてしまうことが想定され得る。装着具が着用者の体上で適切な位置に配置されていない場合、着用者に対して適切な筋力補助を行うことができない。例えば、筋力補助装置が一対の装着具を所定の相対位置に保持していたとしても、一対の装着具をそれぞれ装着された体の二つの部位を適切な相対位置に保持することができなくなる。
このような不具合に対して上述した一実施の形態では、第1装着具20の着用者Hの体に対する相対位置に応じて、筋力補助装置10からの出力を調整することができる。したがって、第1装着具20の着用者Hの体に対するずれ量に応じて、筋力補助装置10を制御することができる。これにより、着用者Hに対して適切な筋力補助を行うことができる。
また、以上において説明してきた一実施の形態において、検出部付き装着具20Xは、着用者Hの体に装着されて力を加えられる装着具(第1装着具)20と、装着具(第1装着具)20に相対移動可能に支持され着用者Hに接触した状態に維持される基準部材62と、基準部材62および装着具(第1装着具)20の相対位置に関する情報を取得するセンサ61と、を有した検出部60と、を有する。基準部材62が着用者Hに接触した状態に維持されていることから、着用者Hの体に対する装着具(第1装着具)20の相対位置を、装着具(第1装着具)20の基準部材62に対する相対位置として検出することができる。これにより、安定して、着用者Hの体に対する装着具(第1装着具)20の相対位置を特定することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、制御部50は、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて、第1装着具20および第2装着具30が維持される相対位置が調整されるよう、力供給部40を制御する。このような筋力補助装置10によれば、着用者Hに対してより適切な筋力補助を行うことができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1装着具20および第2装着具30は相対回転可能であり、制御部50は、第1装着具20の体に対する傾きを考慮して、力供給部40を制御する。第1装着具20および第2装着具30が相対回転可能となっている筋力補助装置10では、着用者Hの体に対して第1装着具20が傾いた場合、とりわけ第1装着具20および第2装着具30の回転軸線RAと平行な軸線を中心として揺動することで第1装着具20が傾いた場合、第2装着具30の位置も大きく変化してしまう。したがって、第1装着具20の傾きを考慮することで、着用者Hに対してより適切な筋力補助を行うことができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1装着具20および第2装着具30が、予め設定された基準相対位置を第1装着具20の体に対する相対位置に応じて調整することで決定された補正相対位置に、維持されるよう、制御部50は力供給部40を制御する。このような筋力補助装置10によれば、第1装着具20が体の本来装着されるべき位置に装着されていなかったとしても、第2装着具30が装着された体の部位を適切な位置に保持することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、筋力補助装置10が、第1装着具20の体に対する相対位置に関する情報を取得する検出部60を更に有している。制御部50は、検出部60の検出結果に基づいて、力供給部40を制御する。検出部60は、着用者Hに接触した状態に維持される基準部材62と、基準部材62および第1装着具20の相対位置に関する情報を取得するセンサ61と、を有している。基準部材62が着用者Hに接触した状態に維持されていることから、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置を、第1装着具20の基準部材62に対する相対位置として検出することができる。基準部材62を着用者Hの体よりもセンサ61で検出しやすく構成しておくことで、安定して、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置を特定することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、センサ61は、第1装着具20及び基準部材62のいずれか一方に対して固定され、第1装着具20及び基準部材62の他方までの距離に関する情報を取得する。簡易な構成を用いて、安定して、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置を特定することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、センサ61が複数設けられている。複数のセンサ61を用いることで、第1装着具20と着用者H(基準部材62)との間の距離だけでなく、第1装着具20と着用者H(基準部材62)との立体的な位置関係、例えば傾き(傾倒)、揺動の程度を特定することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、検出部60は、第1装着具20に取り付けられ基準部材62を着用者Hに押し付ける支持部材63を、更に有する。簡易な構成の支持部材63によって、基準部材62を着用者Hに体に安定して押し付けることができる。したがって、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置を、第1装着具20の基準部材62に対する相対位置としてより正確に検出することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、支持部材63が、第1装着具20と基準部材62との間の複数の位置に配置されている。複数の位置に支持部材63が位置していることにより、着用者Hの体に沿うようにして基準部材62を着用者Hに押し付けることができる。したがって、着用者Hの体に対する第1装着具20の相対位置を、第1装着具20の基準部材62に対する相対位置としてより正確に検出することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1装着具20は、着用者Hの肩に掛けられ、支持部材63が、肩からの距離が異なる複数の位置に配置されている。着用者Hの肩に掛けられた第1装着具20は、肩への接触位置またはその近傍を中心として着用者Hに対して相対揺動しやすくなる。その一方で、肩からの距離が異なる位置に支持部材が位置していることで、着用者Hの体に沿うようにして基準部材62を着用者Hに押し付けることができる。これにより、第1装着具20の着用者Hに対する相対揺動をより正確に検出することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1装着具20は、着用者Hの肩に掛けられ、センサ61が、肩からの距離が異なる位置に設けられた複数のセンサを含んでいる。着用者Hの肩に掛けられた第1装着具20は、肩への接触位置またはその近傍を中心として着用者Hに対して相対揺動しやすくなる。そして、肩からの距離が異なる位置に設けられたセンサ61を用いることで、第1装着具20の着用者Hに対する相対揺動をより正確に検出することができる。
上述した一実施の形態の一具体例において、第1装着具20および第2装着具30は相対回転可能である。第1装着具20および第2装着具30が相対回転可能となっている筋力補助装置10では、第1装着具20が着用者Hに対して揺動した場合、とりわけ第1装着具20および第2装着具30の回転軸線RAと平行な軸線を中心として第1装着具20が揺動した場合、第2装着具30の位置が大きく変化してしまう。したがって、より正確に特定された第1装着具20の揺動を考慮することで、着用者Hに対してより適切な筋力補助を行うことができる。
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した具体例において、検出部60の基準部材62は、支持部材63を介して第1装着具20のベースフレーム21に接続している例を示したがこれに限られない。基準部材62が、ベースフレーム21に対して相対移動可能に直接接続されていてもよい。一例として、図10に示された例において、基準部材62は、ベースフレーム21に対して揺動軸線RSを介して揺動可能に接続していてもよい。上述したように、着用者Hの肩に掛けられた第1装着具20は、肩への接触位置またはその近傍を中心として着用者Hに対して相対揺動しやすくなる。このような第1装着具20の動作に対応して、着用者Hに向けて押し付けられる基準部材62は、ベースフレーム21の体に対する揺動軸線RRと平行な軸線を中心としてベースフレーム21に対して揺動する。そして、ベースフレーム21に対する基準部材62の揺動量を特定することで、第1装着具20のベースフレーム21の着用者Hに対する揺動量を検出することができる。
図10に示された例では、単一の測距センサ61を用いることで、ベースフレーム21に対する基準部材62に揺動量を検出することができ、これにより、単一のセンサ61で第1装着具20のベースフレーム21の着用者Hに対する相対位置の変化を特定することができる。
また、図10に示された例において、ベースフレーム21と基準部材62との間に一つの支持部材63が設けられている。この支持部材63は、上述した具体例と同様に、ウレタンフォーム等から構成することができる。或いは、図示された支持部材63に代えて、ベースフレーム21と基準部材62との相対揺動を促すトーションバネを、支持部材63として用いてもよい。
また、図11に示すように、基準部材62は、ベースフレーム21に保持されている必要はない。基準部材62が第1装着具20とは別部材として、着用者Hの体に装着されるようにしてもよい。図11に示された例において、基準部材62は、固定ベルト64を用いて、着用者Hの胴体に固定されている。この例においても、基準部材62と第1装着具20のベースフレーム21との相対位置を検出することで、第1装着具20のベースフレーム21と着用者Hとの相対位置を特定することができる。
さらに、上述した具体例において、検出部60のセンサ61が、ベースフレーム21に対して固定される例を示したが、これに限られず、図11に示すように、基準部材62に対して固定されるようにしてもよい。
さらに、基準部材62を省略することもできる。この例において、検出部60のセンサ61が、着用者Hの体に対する第1装着具20のベースフレーム21の相対位置を直接検出するようにしてもよい。
また、上述した力供給部40は例示に過ぎず、種々の変更が可能である。例えば、ブレーキ43が動作しておらず且つ電動機41が回転力を出力していない状態で、回転軸41aがケース41bに対して十分円滑且つ自由に回転可能である場合には、図12に示すように、上述した力供給部40からクラッチ42を省くことができる。
さらに、図13に示すように、上述した力供給部40からブレーキ43を省くことも可能である。電動機41が、外力により第1装着具20と第2装着具30とを相対回転させようとするトルクとバランスする回転力を出力することで、第1装着具20と第2装着具30とを一定の相対位置に維持することができる。
さらに、図14に示すように、回転軸41aがワンウェイベアリング44によって保持されるようにしてもよい。ワンウェイベアリング44は、ワンウェイクラッチとも呼ばれ、一方向への回転のみを許容し、他方向への回転を規制する部材である。図14に示された例において、クラッチ42を介して第2装着具30の軸部材31が、ワンウェイベアリング44に保持された回転軸41aと接続すると、軸部材31の一方向への回転が規制される。すなわち、第2装着具30の第1装着具20に対する一方向への回転が規制され、第2装着具30の第1装着具20に対する他方向への回転が許容されるようになる。例えば、ワンウェイベアリング44は、第2装着具30を装着された上腕を下げる方向への回転を規制し、第2装着具30を装着された上腕を持ち上げる方向への回転を許容するようにしてもよい。つまり、ワンウェイベアリング44によって、上腕が下がることを防止しながら、その一方で、上腕を上げる動作は許容される。このような例によれば、筋力補助装置10は、クラッチ42が回転軸41aと軸部材31との接続を解除した自由モードと、クラッチ42が回転軸41aと軸部材31との接続し且つ電動機41から回転力が出力されていない維持補助モードと、クラッチ42が回転軸41aと軸部材31との接続し且つ電動機41から回転力が出力されている動作補助モードと、に切り換えられるようになる。
なお、WO2017/170618A1やWO2018/97302に記載された力供給部(アシスト機構)を適用することが可能である。これらの力供給部(アシスト機構)も、図14に示された例と同様に、自由モードと、維持補助モードと、動作補助モードと、に切り換え可能となっている。
また、上述した力供給部40は、電動機41等の駆動手段を有する例を示したが、駆動手段を含んでいなくてもよい。例えば、力供給部40は、第1装着具および第2装着具30を相対移動させる力を出力せず、第1装着具および第2装着具30の相対位置を維持するための力だけを出力するようにしてもよい。このような例においては、第2装着具30の第1装着具20に対する基準相対位置から補正相対位置への移動を着用者H自身が担うことになる。このような例においても上述した一実施の形態と同様に、第1装着具20の着用者Hの体に対するずれ量を考慮して力供給部40を制御することで、着用者Hに対して適切な筋力補助を行うことができる。
また、上述した力供給部40の制御方法についても変更が可能である。例えば、図8に示された制御フローにおいて、第2装着具30の第1装着具20に対する相対位置を維持している間、第1装着具20の着用者Hに対する相対位置に基づいて、第2装着具30の第1装着具20に対する相対位置を補正する必要があるか否かを、一定時間の経過後に繰り返し行う例を示したが、この例に限られない。このような相対位置の補正の要否(図8のステップS2)を、一度だけ確認するようにしてもよいし、第2装着具30の第1装着具20に対する相対位置を保持する前と第2装着具30の第1装着具20に対する相対位置を保持した後の合計二回だけ確認するようにしてもよいし、補正の必要が無いと判断されるまでは繰り返し行うようにしてもよいし、或いは、一定時間の経過を待たず連続的に継続して確認して常に第2装着具30を装着された上腕が適切な位置に保持されるようにしてもよい。
さらに、上述した具体例において、第1装着具20および前記第2装着具30が、予め設定された基準相対位置を、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて、補正相対位置に調整する例を示した。すなわち、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて、第2装着具30の第1装着具20に対して保持されるべき相対位置を調整する例を示した。しかしながら、制御部50による力供給部40の制御はこの例に限られず、例えば、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて、力供給部40から出力される力を調整するようにしてもよい。
一具体例として、力供給部40から出力される力が、予め設定された力の大きさ(基準力量)を第1装着具20の体に対する相対位置に応じて調整することで決定された大きさ(補正力量)となるよう、制御部50が力供給部40を制御するようにしてもよい。さらに具体的には、第1装着具20の実測された着用者Hの体に対する相対位置が、第1装着具20が着用者Hの体に対して本来配置されるべき理想的な相対位置から大きくずれると、上述した力供給部40のブレーキ43から出力される力が大きくなるようにしてもよい。
より大きな外力が筋力補助装置10に付加されている場合に、第1装着具20は体の本来装着されるべき位置からより大きくずれやすくなる。すなわち、着用者Hの体上における本来装着されるべき位置からの第1装着具20のずれ量は、筋力補助装置10を着用した着用者Hに加えられる外力の大きさの指標となり得る。言い換えると、第1装着具20の位置ずれが大きい場合には、着用者に対する外力の負荷が大きいことを意味し、筋力補助力の大きさが不十分となっていることも想定される。したがって、例えば第1装着具20の位置ずれが大きい場合にブレーキ43の強さを強くすることで、回転軸41a及び軸部材31が滑って回転してしまうことを効果的に回避することができる。その一方で、第1装着具20の位置ずれが大きい場合にはブレーキ43の強さを弱くしても、第1装着具20及び第2装着具30の相対位置を安定して維持することができる。つまり、したがって、第1装着具20の体に対する相対位置に応じて力供給部40から出力される力の大きさを調整することによって、着用者Hに対してより適切な筋力補助を行うことができる。
また、上述した具体例において、制御部50は、着用者Hの体の第1部分P1に対する第1装着具20の相対位置を考慮して力供給部40を制御するようにしたが、着用者Hの体の第1部分P1に対する第1装着具20の相対位置だけでなく、着用者Hの体の第2部分P2に対する第2装着具30の相対位置も更に考慮して、力供給部40を制御するようにしてもよい。
また、上述した実施例において相対位置に基づくものを説明したがこれに限られず、相対角度に基づくものでも、相対位置と相対角度に基づくものであってもかまわない。相対角度については、光学式または磁気式の回転型エンコーダを利用できるほか、上述した実施例で記載されている距離センサ等の値から計算で求めることもできる。
なお、以上において上述した一実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。