JPWO2018096937A1 - 変性ビニルアルコール系重合体及びその製造方法 - Google Patents

変性ビニルアルコール系重合体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

ビニル系化合物を懸濁重合するに際して、微細で粒度の均一性が高く、可塑剤吸収性が高く、かさ比重が適正な樹脂粒子を得るのに適した分散安定剤を提供する。一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端を有する変性ビニルアルコール系重合体であって、末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率が10モル%〜40モル%であり、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率が1モル%〜25モル%であり、両者の合計含有率が15モル%〜45モル%である変性ビニルアルコール系重合体。
Figure 2018096937

(式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)

Description

本発明は、変性ビニルアルコール系重合体及びその製造方法に関する。また、本発明は懸濁重合用分散安定剤、とりわけ塩化ビニルに代表されるビニル化合物の重合用に適した分散安定剤に関するものである。
工業的に塩化ビニル系樹脂などのビニル系樹脂を製造する場合には、水性媒体中で分散安定剤の存在下で塩化ビニルなどのビニル系化合物を分散させ、油溶性触媒を用いて重合を行う懸濁重合が広く実施されている。一般に、ビニル系樹脂の品質を支配する因子としては、重合率、水−モノマー比、重合温度、触媒の種類および量、重合槽の型式、撹拌速度、並びに分散安定剤の種類などが挙げられるが、なかでも分散安定剤の種類による影響が非常に大きい。
ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤に要求される性能としては、得られるビニル系樹脂粒子の粒度分布をできるだけシャープにする働きのあること、可塑剤の吸収速度を大きくして加工性を容易にし、樹脂粒子中に残存する塩化ビニルなどのモノマーの除去を容易にし、かつ成形品中のフィッシュアイなどの生成を防止するために、各樹脂粒子を多孔性にする働きがあること、かさ比重の大きい樹脂粒子を形成する働きがあることなどが挙げられる。
従来、ビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体あるいは部分けん化ポリビニルアルコールなどが単独でまたは組み合わせて使用されている。なかでもポリビニルアルコール(PVA)は優れた性質を有しており、一般に最も使用されている。しかし一口にポリビニルアルコールと言ってもその重合度やけん化度といった物理的、化学的特性値等によってビニル系樹脂の特性に微妙な影響を与えることが知られており、ビニルアルコール系重合体の末端にアルデヒド由来のカルボニル基を導入し、けん化時に脱水反応又は脱酢酸反応を受けることで不飽和二重結合を導入することや(例えば特許文献1参照)、特定の酸素濃度雰囲気下で熱処理してカルボキシル基を導入すること(例えば特許文献2参照)等、種々の変性ビニルアルコール系重合体が提案されている。
特開平8−208724号公報 特許第3093351号公報
しかしながら、これらの方法では、近年用いられる大型重合缶等、様々なタイプの重合缶に充分対応できていない。すなわち、分散力が乏しく可塑剤吸収性の低い粗大なビニル系樹脂粒子となったり、分散力が強く微細なビニル系樹脂粒子になりすぎてかさ比重が小さすぎたり、微細なビニル系樹脂粒子ではあるが可塑剤吸収性が低い等、安定して満足したビニル系樹脂粒子を得るのには不十分であった。
そこで、本発明は、塩化ビニルのようなビニル系化合物を懸濁重合するに際して、微細で粒度の均一性が高く、可塑剤吸収性が高く、かさ比重が適正な樹脂粒子を得るのに適した分散安定剤を提供することを課題の一つとする。
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、所定のカルボニル末端及び所定のホルミル末端を有する変性ビニルアルコール系重合体であって、各末端(末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端)の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率が10モル%〜40モル%であり、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率が1モル%〜25モル%であり、両者の合計含有率が15〜45モル%である変性ビニルアルコール系重合体をビニル系化合物の懸濁重合用分散安定剤として使用することが有効であることを見出した。
従って、本発明は一側面において、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端を有する変性ビニルアルコール系重合体であって、末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率が10モル%〜40モル%であり、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率が1モル%〜25モル%であり、両者の合計含有率が15モル%〜45モル%である変性ビニルアルコール系重合体である。
Figure 2018096937
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
本発明に係る変性ビニルアルコール系重合体は一実施形態においては、粘度平均重合度が500〜1000、且つ0.2質量%水溶液の波長320nmにおける吸光度が0.2以上である。
本発明に係る変性ビニルアルコール系重合体は別の一実施形態においては、けん化度が60モル%〜80モル%である。
本発明に係る変性ビニルアルコール系重合体は更に別の一実施形態においては、末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端の合計含有量に対して、末端カルボン酸塩基の含有率が2モル%〜8モル%である。
本発明は別の一側面において、本発明に係る変性ビニルアルコール系重合体を含有する懸濁重合用分散安定剤である。
本発明は更に別の一側面において、本発明に係る懸濁重合用分散安定剤を用いて、ビニル系化合物単量体、又はビニル系化合物単量体とそれに共重合し得る単量体との混合物を水中に分散させて懸濁重合を行うことを含むビニル系樹脂の製造方法である。
本発明は更に別の一側面において、ビニルエステル単量体を酸素を含む気体を導入しながら及び一般式(III)で表されるアルデヒドの存在下で重合してビニルエステル重合体を得る工程を含む変性ビニルアルコール系重合体の製造方法である。
Figure 2018096937
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
本発明は更に別の一側面において、ビニルエステル単量体を水性媒体中、酸素を含む気体を導入しながら及び一般式(III)で表されるアルデヒドの存在下で懸濁重合してビニルエステル重合体を得る工程を含む変性ビニルアルコール系重合体の製造方法である。
Figure 2018096937
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
本発明の懸濁重合用分散安定剤をビニル系化合物の懸濁重合に用いた場合、微細で粒度の均一性が高く、可塑剤吸収性が高く、かさ比重が適正な樹脂粒子を得ることが可能となる。このように、本発明の懸濁重合用分散安定剤は従来技術では達成することが難しかった要求性能を兼備することができる。また、樹脂粒子の粒度の均一性が高く、可塑剤吸収性が高い場合にはフィッシュアイの低減、更には優れた脱モノマー性が期待できる。よって、本発明に係る懸濁重合用分散安定剤は工業的に極めて有利なものである。
以下、本発明について詳述する。本発明の懸濁重合用分散安定剤は、以下の一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端を有する変性ビニルアルコール系重合体(変性PVA)を含有する。
Figure 2018096937
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
変性PVA中の一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率は、各末端(末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端)の合計含有量に対して、10モル%〜40モル%である必要がある。一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率が10モル%未満の場合はカルボニル末端に起因する不飽和二重結合起点が減少したり保護コロイド性が低下したりするため、結果として適度な粒子径を有するビニル系樹脂は得られない。そこで、上記各末端の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率は10モル%以上であることが必要であり、15モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。また、上記各末端の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率が40モル%を超える変性PVAとする為には、異種結合末端である末端グリコール基や酢酸ビニルモノマーから誘導される末端メチロール基を精密重合等で制御する必要があり、工業的な製造には不利である。そこで、上記各末端の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率は40モル%以下であることが必要であり、38モル%以下であることが好ましく、35モル%以下であることがより好ましい。
本発明において、末端グリコール基とは1,2グリコール末端(−CH2−CH(OH)−CH(OH)−CH3)を意味し、末端メチロール基とは−CH2CH2OHを意味し、末端カルボン酸塩基とは−CH2COOX(XはNa等のアルカリ金属等の金属原子)を指す。
変性PVA中の一般式(I)に示すカルボニル末端のRは、炭素数が2〜9のアルキル基であることが重要である。式(I)に示すカルボニル末端のRの炭素数が1のアセトアルデヒドを用いる方法があるが、沸点が低いため、重合の制御が難しいことや、懸濁重合法の際は水溶性が高いため酢酸ビニルモノマー液滴との親和性が低く、重合安定性に乏しい欠点があり、工業的に適さない。そこで、Rの炭素数は2以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。また、Rの炭素数が9を越えると、沸点が高い為、未反応分の除去が難しいことや、分散性能の乏しい変性PVAとなり、要求物性が十分に発現しない。そこで、Rの炭素数は9以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましく、6以下であることが更により好ましく、5以下であることが更により好ましい。Rは直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましいRの具体例としては、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。
変性PVA中の一般式(II)に示すホルミル末端の含有率は、各末端(末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端)の合計含有量に対して、1モル%〜25モル%である必要がある。含有率が1モル%未満の場合はホルミル末端に起因する不飽和二重結合起点が減少したり保護コロイド性が低下したりするため、結果として適度な粒子径を有するビニル系樹脂は得られない。そこで、上記各末端の合計含有量に対して、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率は1モル%以上であることが必要であり、2モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましい。また、上記各末端の合計含有量に対して、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率が25モル%を超える変性PVAとすると着色が顕著になり、分散剤として使用した際、ビニル系樹脂の着色に影響を与える。また、化学的に不安定となり、水溶液の粘度が高くなったり、ゲル化したりする場合がある。そこで、上記各末端の合計含有量に対して、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率は25モル%以下であることが必要であり、23モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。
ビニルアルコール系重合体の末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基は、網屋繁俊,「PVAの微細構造」,高分子加工,38(8),P388−396,1989年に記載されている通りプロトンNMRのピーク位置及びその積分値から同定及び定量可能である。一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端についても、プロトンNMRのピーク位置及びその積分値から求めることができる。
末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端、及び一般式(II)に示すホルミル末端の含有量の測定手順について説明する。ビニルアルコール系重合体をけん化度99.95モル%以上に完全にけん化した後、十分にメタノール洗浄を行い、分析用のビニルアルコール系重合体を作製する。但し、一般式(II)に示すホルミル末端を測定する場合はけん化不要であり、そのまま分析する。作製した分析用のビニルアルコール系重合体を測定対象となる官能基に応じて表1に記載の各溶媒に溶解し、更にNaOH重水溶液を数滴加えpH=14にした後、表1に記載の測定温度で表1に記載の積算回数とした1H−NMRスペクトルを得る。何れの末端の含有量もPVAの主鎖のメチレン基(1.2〜2.0ppm)のピークの積分値を基準として、表1に記載の各末端を示すピークの積分値から算出する。具体的には、各末端測定用の1H−NMRスペクトルにおいて、変性PVAの主鎖のメチレン基の積分値をbとし、各末端の積分値をaとすると、プロトン数(メチレン基は2、各末端はX(カルボニル末端及び末端グリコール基は見ているピークがメチル基なのでX=3、末端カルボン酸塩基及び末端メチロール基は見ているピークがメチレン基なのでX=2、ホルミル末端はX=1))を鑑み、変性率(%)は(a/X)/(b/2)×100と計算される。
なお、末端カルボン酸塩基は末端γ−ラクトン構造と化学平衡にある。プロトンNMRの測定は上述の通りpH14で行うため、変性PVA中に末端γ−ラクトン構造が存在していた場合でもすべて末端カルボン酸塩基に変化する。このため、本発明において末端カルボン酸塩基の含有量は末端カルボン酸塩基及び末端γ−ラクトン構造の合計含有量を意味することになる。
Figure 2018096937
また、本発明に係る変性PVAにおいて、各末端(末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端)の合計含有量に対する末端カルボン酸塩基の含有率は2モル%〜8モル%が好ましい。末端カルボン酸塩基の含有率を2モル%以上、望ましくは3モル%以上とすることにより、変性PVAのビニル系化合物に対する親和性が向上し、空隙が増えて可塑剤吸収量が増加する等の物性面での改善が見られるからである。また、末端カルボン酸塩基の含有率を8モル%以下、望ましくは6モル%以下とすることで、保護コロイド性が高くなり、分散力が向上する。
本発明に係る変性PVAの粘度平均重合度は一般に使用されている200〜3500とすることができるが、粘度平均重合度は500〜1000が好ましい。粘度平均重合度が500以上であることにより、保護コロイド性が高まり、二次粒子が微細化しやすくなるという利点が得られる。また、粘度平均重合度を1000以下とすることにより生成するビニル系樹脂粒子の多孔性が増大し、可塑剤吸収性を高めることができる。
粘度平均重合度は、JIS K6726:1994に準拠して測定される。すなわち、変性PVAを完全にけん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から求める。
本発明に係る変性PVAのけん化度は水溶性や水分散性の観点から60モル%以上であることが好ましく、65モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることが更により好ましい。また、本発明に係る変性PVAのけん化度は、生成するビニル系樹脂粒子の多孔性を増大させるという観点から、80モル%以下であることが好ましく、75モル%以下であることがより好ましい。
変性PVAのけん化度は、JIS K6726:1994に準拠して測定される。すなわち、水酸化ナトリウムで試料中の残存酢酸基(モル%)を定量し、100から差し引くことで求めることができる。
本発明に係る変性PVAは、生成するビニル系粒子の微細化を促進させ、また、生成するビニル系粒子の多孔性を増大しやすいという観点から、ポリマー(変性PVA)の二重結合量に比例する0.2質量%水溶液の波長320nmにおける吸光度が0.2以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.4以上であることが更に好ましい。本発明に係る変性PVAは、二重結合量が増え、ポリマー(変性PVA)の安定性が低下する観点から、0.2質量%水溶液の波長320nmにおける吸光度が2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
本発明においては、変性PVAの0.2質量%水溶液の波長320nmにおける吸光度は以下のようにして測定する。測定対象の変性PVAを水に溶解して25℃の0.2質量%水溶液を調製する。次に、当該水溶液をセル(光路長さ10mm)に入れ、波長320nmにおける吸光度を測定する。なお、実施例においては、島津製作所社製の吸光光度計「UV−1800」を用いて吸光度測定を行った。
本発明に係る変性PVAの製造方法は特に制限されないが、ビニルエステル単量体をラジカル重合する際に、酸素を含む気体を導入(典型的には吹き込み)しながら下記の式(III)で表されるアルデヒド共存下で重合し、得られた重合体をアルコール類に溶解した上で水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリ、あるいは塩酸やパラトルエンスルホン酸等の酸で処理してビニルエステル重合体をけん化する方法が簡便で効率的である。本発明において、「酸素を含む気体を導入」するという概念は、反応系外から反応系内に追加的に酸素を送り込むことを指し、反応系内に空気等に起因する酸素が当初存在しても、その酸素は導入された酸素としては取り扱わない。
理論によって本発明が限定されることを意図するものではないが、ビニルエステル単量体を式(III)で表されるアルデヒド共存下で重合すると、アルデヒドの末端プロトンが引き抜かれて連鎖移動することにより、変性PVA中に一般式(I)に示すカルボニル末端が生成する。また、末端カルボン酸塩基はビニルエステル単量体の分岐がけん化処理により切断されて生成すると考えられることから、重合率や重合法等でその含有量を制御することができる(重合率が高いほど分岐が増えて末端カルボン酸塩基が増える)。
一般式(III):
Figure 2018096937
(式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
Rの具体例は式(I)で述べたとおりである。式(III)で表されるアルデヒドの具体例としては、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ペンチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デカンアルデヒドが挙げられる。式(III)で表されるアルデヒドは単独で用いても複数を組み合わせて用いてもよい。
ビニルエステル単量体としては、酢酸ビニルの他、蟻酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、飽和分岐脂肪酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等が挙げられる。
本発明に係る変性PVAの重合法は特に制限はなく、溶液、乳化、懸濁、塊状重合等公知の重合方法が任意に用いられるが、溶剤が連鎖移動し末端に結合しうる溶液重合よりも、ビニルエステル単量体濃度と変性種であるアルデヒド濃度が高い重合法で製造する方法が末端にカルボニル基を導入しやすい点で好適であり、懸濁重合法が好ましい。
ホルミル末端を生成させるための方法としては、PVAを酸化剤によって主鎖を酸化開裂させる方法(特許文献:特開2000−86992号公報)やホルムアルデヒドを共存させて重合させる方法等があるが、前者は酸化剤の処理やPVAの溶解等の工程が増えてしまうことや重合度分布の制御が困難となる。また、後者に関しては、ホルムアルデヒドは低沸点化合物であるため単独では取り扱いが難しく、重合制御が困難となる。これに対して、本発明者の検討結果によれば、酸素の共存下で重合させて得られるポリ酢酸ビニルをけん化するとホルミル末端が生成するため、当該方法が簡便で好ましい。
酸素の導入方法は任意に選択できるが、酸素濃度が1質量%〜9質量%になるように窒素、アルゴン、又はヘリウムのような不活性ガスで薄めた気体を導入するのが好ましい。酸素濃度が1質量%未満であると反応場に十分量の酸素が導入されず、目的のホルミル末端をもつPVAを得るのが困難となる。また9質量%超となると酢酸ビニルの爆発限界酸素濃度(9〜10質量%)を超えるため、安全上の懸念が生じる。
酸素の反応系への導入は任意に選択できるが、重合液に直接バブリングしながら重合を行なう方法が反応系内と酸素の接触面積を大きく出来るため、導入効率が良い。
導入する酸素の量は任意に選択できるが、モノマー量に対しての酸素の物質量が0.02モル%〜20モル%の範囲が好ましい。20モル%以上を超えると重合中のラジカルと反応してしまい、重合が進行しなくなり、製造上好ましくない。また、0.02モル%以下となると十分なホルミル末端をもつ変性PVAを得ることが困難となる。
ビニルエステル単量体をラジカル重合する際の重合開始剤は、特に限定するものではないが、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリルなどのアゾ化合物、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートなどの過酸化物、ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル化合物などを単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。また、重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30〜90℃程度の範囲で設定することができる。
本発明において重合率はポリマー濃度測定法で測定される値を指す。つまり、重合中に重合液をサンプリングしてその重量を測り、モノマー及び溶媒を留去して得られるポリマーの重量を元に重合液のポリマー濃度を算出して、モノマーに対するポリマー量を求めて重合率を算出する。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ビニルエステル単量体と共重合可能な単量体、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸或いはこれら不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸或いはこれら不飽和ジカルボン酸のアルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのニトリル又はアミド、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸などのオレフィンスルホン酸或いはこれらの塩、ビニルエーテル、ビニルケトン、α−オレフィン、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン等を共重合させることも可能である。斯かる単量体の混合割合はビニルエステル単量体の合計モル数に対して10モル%以下、好ましくは5モル%以下が適当である。
けん化は、上記で得られるビニルエステル重合体をアルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒の存在下で行うことができる。アルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の重合体の濃度は20〜70重量%の範囲から選ばれる。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、酸触媒としては、塩酸、硫酸等の無機酸水溶液、p−トルエンスルホン酸等の有機酸を用いることができる。斯かる触媒の使用量はビニルエステル単量体に対して1〜100ミリモル当量にすることが必要である。斯かる場合、けん化温度は特に制限はないが、通常10〜70℃の範囲であり、好ましくは30〜50℃の範囲から選ぶのが望ましい。反応は通常1〜3時間にわたって行われる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、上記変性PVA以外のPVAや、その他の各種添加剤を含有してもよい。該添加剤としては、例えば、pH調整剤、架橋剤、防腐剤、防黴剤、ブロッキング防止剤、消泡剤等が挙げられる。本発明の効果を有意に発揮するという観点から、本発明の懸濁重合用分散安定剤は変性PVAを10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することが更により好ましい。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特にビニル系化合物の懸濁重合に好適に用いることができる。ビニル系化合物の単量体としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステルおよび塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステルおよび無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本発明の懸濁重合用分散安定剤は、特に好適には塩化ビニルを単独で、または塩化ビニルを塩化ビニルと共重合することが可能な単量体と共に懸濁重合する際に用いられる。塩化ビニルと共重合することができる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は可塑剤吸収性の優れた塩化ビニル粒子を製造する点では軟質用塩化ビニルの製造に適しているが、粒度分布等に優れている点から硬質用塩化ビニルの製造にも適用できる。また、可塑剤吸収性の優れた塩化ビニル粒子を製造できるということは、得られる塩化ビニル粒子の空隙が多いことを意味するため、本発明の懸濁重合用分散安定剤は脱モノマー性にも優れていることや、得られた塩化ビニル粒子にフィッシュアイが少ないことも期待できる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤は、単独でもまた他の安定剤、例えばセルロース系誘導体、界面活性剤等と併用することができる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を使用することにより、高温水仕込重合法により懸濁重合を行っても樹脂粒子が多孔性であり、粒径分布が均一な塩化ビニル樹脂が得られる。以下、ビニル系化合物の重合法について例を挙げ具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
塩化ビニル樹脂粒子等の樹脂粒子を製造する場合には、ビニル系化合物単量体に対し、上述の懸濁重合用分散安定剤を0.01質量%〜0.3質量%、好ましくは0.04質量%〜0.15質量%添加する。また、ビニル系化合物と水の比は質量比でビニル系化合物:水=1:0.9〜1:3とすることができ、好ましくは1:1〜1:1.5である。
重合開始剤は、ビニル系化合物の重合に従来使用されているものでよく、これにはジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等のパーエステル化合物、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物、アゾビス−2,4−ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物、更には過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等を単独又は組み合わせて使用することができる。
更に、ビニル系化合物の重合に適宜使用される重合調整剤、連鎖移動剤、ゲル化改良剤、帯電防止剤、PH調整剤等を添加することも任意である。
ビニル系化合物の重合を実施するに当たっての各成分の仕込み割合、重合温度等はビニル系化合物の懸濁重合で従来採用されている条件に準じて定めればよく、特に限定する理由は存在しない。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いることにより、微細で粒度の均一性が高く、可塑剤吸収性が高く、かさ比重が適正な樹脂粒子を得ることが可能となる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いて得られた樹脂粒子は一実施形態において、140μm以下、好ましくは130μm以下、典型的には110μm〜140μmの平均粒径を有することができる。平均粒径とはJIS Z8815:1994に準拠して、60メッシュ(目開き250μm)、80メッシュ(目開き180μm)、100メッシュ(目開き150μm)、150メッシュ(目開き106μm)、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて粒度分布を求めたときの、累積頻度50%(質量基準)の粒子径(D50)を指す。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いて得られた樹脂粒子は一実施形態において、上記の方法で粒度分布を求めたときの、累積頻度80%(質量基準)の粒子径(D80)と累積頻度20%(質量基準)の粒子径(D20)の差が60μm以下になることができ、好ましくは55μm以下になることができ、典型的には40μm〜60μmになることができる。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いて得られた樹脂粒子は一実施形態において、23phr以上の可塑剤吸収量を有することができ、好ましくは30phr以上の可塑剤吸収量を有することができ、典型的には23phr〜35phrの可塑剤吸収量を有することができる。本発明において、樹脂の可塑剤吸収量は以下の手順で測定される。内径25mm、深さ85mmのアルミニウム合金製容器の底にグラスファイバーを詰め、樹脂10gを投入する。これに可塑剤(ジオクチルフタレート、以下DOPとする)15mLを加え、30分放置してDOPを樹脂に充分浸透させる。その後1500Gの加速度下に過剰のDOPを遠心分離し、樹脂に吸収されたDOPの質量を測定して、樹脂100質量部当たりのDOP質量部(phr)に換算する。
本発明の懸濁重合用分散安定剤を用いて得られた樹脂粒子は一実施形態において、0.40g/mL以上、好ましくは0.42g/mL以上、典型的には0.40g/mL〜0.45g/mLののかさ比重を有することができる。かさ比重は、JIS K6720−2:1999に準拠して測定される。
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明する。
尚、以下特に断りがない限り、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を意味する。
(実施例1)
〈分散安定剤の製造〉
酢酸ビニル(モノマー)100部、水120部、分散剤のポリビニルアルコール0.087部、変性種のノルマルブチルアルデヒド1.5部、及び0.026部のアゾビスイソブチロニトリルを重合缶に仕込み、酸素−窒素混合ガス(酸素濃度4%、酢酸ビニルに対する酸素総量0.11モル%)を重合液直上の気相中に吹き込みながら加熱して60℃で重合せしめ、重合率90%に達した時点で重合を停止した。次いで常法により未重合の酢酸ビニルを除去し、得られた重合体をメタノールに溶解し、水酸化ナトリウムで常法によりけん化し、ろ過によりメタノールを分離し、90℃のギアオーブン内で80分乾燥させることで粉状の変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。得られた変性ビニルアルコール重合体の粘度平均重合度、けん化度、0.2質量%水溶液の波長320nmにおける吸光度、各末端(末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端)の合計含有量に占める末端カルボン酸塩基の含有率、式(I)に示すカルボニル末端の含有率、及び式(II)に示すホルミル末端の含有率を先述した分析法によってそれぞれ測定したところ、粘度平均重合度は600、けん化度は71モル%、吸光度は0.29、末端カルボン酸塩基の含有率が3.7モル%、一般式(I)に示すカルボニル末端が26.3モル%、一般式(II)に示すホルミル末端が3.7モル%であった。
〈塩化ビニルの懸濁重合〉
攪拌器を備えた容量30Lのステンレス製オートクレーブ中に攪拌下30℃の水12kg、上記で得た分散安定剤9.5g、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシネオデカノエートを4.6g、α−クミルパーオキシネオデカノエートを1g仕込んだ。オートクレーブを真空で脱気した後、塩化ビニル単量体を5kg加え、57℃で4時間重合した。
〈塩化ビニル樹脂の評価〉
得られた塩化ビニル樹脂の平均粒径、粒度分布、可塑剤吸収量、及びかさ比重について以下の方法で評価した。結果を表2(表2−1及び2−2)に示す。
平均粒径の測定はJIS Z8815:1994に準拠して、60メッシュ(目開き250μm)、80メッシュ(目開き180μm)、100メッシュ(目開き150μm)、150メッシュ(目開き106μm)、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて、累積頻度50%(質量基準)の粒子径(D50)を平均粒径、累積頻度80%(質量基準)の粒子径(D80)と累積頻度20%(質量基準)の粒子径(D20)の差を粒度分布とした。
かさ比重は、JIS K6720−2:1999に準拠して測定した。
可塑剤吸収量は以下の手順で測定した。内径25mm、深さ85mmのアルミニウム合金製容器の底にグラスファイバーを詰め、塩化ビニル樹脂10gを投入した。これに可塑剤(ジオクチルフタレート、以下DOPとする)15mLを加え、30分放置してDOPを塩化ビニル樹脂に充分浸透させた。その後1500Gの加速度下に過剰のDOPを遠心分離し、塩化ビニル樹脂10gに吸収されたDOPの質量を測定して、塩化ビニル樹脂100質量部当たりのDOP質量部(phr)に換算した。
(実施例2〜4、6、8、9)
変性種およびその仕込み量、酸素−窒素混合ガスによって供給された酸素総量、酸素−窒素混合ガスの酸素濃度、酸素−窒素混合ガスの吹き込み場所、重合率、重合度、けん化度を表2に記載の条件に変えた以外は実施例1と同様にして変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。表2における酸素−窒素混合ガスの吹き込み場所に関して、「気相」とあるのは実施例1と同様に酸素−窒素混合ガスの吐出口を重合液直上の気相に配置して吹き込む方法であり、「液相」とあるのは酸素−窒素混合ガスの吐出口を重合液内に差し込んで吹き込む方法(バブリング)である。
次いで、得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。
(実施例5)
実施例2で得た変性酢酸ビニル重合体に対し、水酸化ナトリウム量を調整してけん化を行なうことで、けん化度80%の変性ビニルアルコール重合体を得た。得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。
(実施例7)
実施例6で得た変性ビニルアルコール重合体を120℃で4時間熱処理することにより、吸光度を増加させた樹脂を得た。得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。
(実施例10)
酢酸ビニル100部、変性種のノルマルブチルアルデヒドを1.3部及びアゾビスイソブチロニトリル0.083部を重合缶に仕込み、酸素−窒素混合ガス(酸素濃度3%、酢酸ビニルに対する酸素総量0.05モル%)を重合液直上の気相中に吹き込みながら65℃に加熱して、重合率70%に達した時点で重合を停止した。その後は実施例1と同様の手順でけん化をし、分離操作を経て粉状の変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。
(比較例1)
変性種の仕込み量を表2に記載の条件に変え、窒素置換により反応系を窒素雰囲気下とし、窒素を気相から導入しながら重合した以外は実施例1と同様にして変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。次いで、得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の平均粒径は大きく、粒径分布も広いことから分散安定剤は分散力が不十分であった。
(比較例2)
重合率及びけん化度を表2に記載の条件に変え、窒素置換せずに反応系を液封して外部からの空気導入を遮断した状態で、その他の条件は実施例1と同様にして変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。次いで、得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の平均粒径は大きく、粒径分布も広いことから分散安定剤は分散力が不十分であった。なお、比較例2ではホルミル末端が若干生成しているが、これは反応系にもともと存在していた空気に起因すると考えられる。
(比較例3)
酢酸ビニル100部、メタノール120部を重合缶に仕込み、酸素−窒素混合ガス(酸素濃度6%、酸素総量0.10モル%)を重合液直上の気相中に吹き込みながら65℃に加熱して、重合率90%に達した時点で重合を停止した。その後は実施例1と同様の手順でけん化をし、分離操作を経て粉状の変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。次いで、得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。この場合、塩化ビニル樹脂はブロック化し、測定が行えなかった。
(比較例4)
酢酸ビニル100部、メタノール68部、変性種のドデシルアルデヒド10.7部及びアゾビスイソブチロニトリル0.083部を重合缶に仕込み、窒素置換により反応系を窒素雰囲気下とした後、加熱して70℃まで昇温し、重合率85%に達した時点で重合を停止した。その後は実施例1と同様の手順でけん化をし、分離操作を経て粉状の変性ビニルアルコール重合体(分散安定剤)を得た。次いで、得られた分散安定剤を使用した以外は実施例1と同様の条件で塩化ビニルの懸濁重合を実施した。分散安定剤及び塩化ビニル樹脂の特性を実施例1と同様の方法で評価した結果を表2に示す。この場合、得られた塩化ビニル樹脂粒子の平均粒径は大きく、粒径分布も広いことから分散安定剤は分散力が不十分であった。
Figure 2018096937
Figure 2018096937

Claims (8)

  1. 一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端を有する変性ビニルアルコール系重合体であって、末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端の合計含有量に対して、一般式(I)に示すカルボニル末端の含有率が10モル%〜40モル%であり、一般式(II)に示すホルミル末端の含有率が1モル%〜25モル%であり、両者の合計含有率が15モル%〜45モル%である変性ビニルアルコール系重合体。
    Figure 2018096937
    (式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
  2. 粘度平均重合度が500〜1000、且つ0.2質量%水溶液の波長320nmにおける吸光度が0.2以上である請求項1に記載の変性ビニルアルコール系重合体。
  3. けん化度が60モル%〜80モル%である請求項1または2に記載の変性ビニルアルコール系重合体。
  4. 末端グリコール基、末端メチロール基、末端カルボン酸塩基、一般式(I)に示すカルボニル末端及び一般式(II)に示すホルミル末端の合計含有量に対して、末端カルボン酸塩基の含有率が2モル%〜8モル%である請求項1から3のいずれかに記載の変性ビニルアルコール系重合体。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の変性ビニルアルコール系重合体を含有する懸濁重合用分散安定剤。
  6. 請求項5に記載された懸濁重合用分散安定剤を用いて、ビニル系化合物単量体、又はビニル系化合物単量体とそれに共重合し得る単量体との混合物を水中に分散させて懸濁重合を行うことを含むビニル系樹脂の製造方法。
  7. ビニルエステル単量体を酸素を含む気体を導入しながら一般式(III)で表されるアルデヒドの存在下で重合してビニルエステル重合体を得る工程を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の変性ビニルアルコール系重合体の製造方法。
    Figure 2018096937
    (式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
  8. ビニルエステル単量体を水性媒体中、酸素を含む気体を導入しながら一般式(III)で表されるアルデヒドの存在下で懸濁重合してビニルエステル重合体を得る工程を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の変性ビニルアルコール系重合体の製造方法。
    Figure 2018096937
    (式中、Rは炭素数2〜9のアルキル基を表す。)
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