以下、本発明の製造方法が適用される電動パワーステアリング装置の一実施例を図面に基づき説明する。
(パワーステアリング装置の構成)
図1(a)は、車両の前方側から見た電動パワーステアリング装置1の正面図である。図1(b)は、車両の下側から見た電動パワーステアリング装置1の底面図である。
図1に示すように、電動パワーステアリング装置1は、運転者からの操舵力を伝達する操舵機構2と、運転者の操舵操作を補助する操舵アシスト機構3と、を備えている。
操舵機構2は、車両の運転室内に配置された図示せぬステアリングホイールと、車両の前輪である図示せぬ2つの転舵輪と、を機械的に連結している。操舵機構2は、上記ステアリングホイールからの回転力が伝達される入力軸4と、トーションバー5(図2参照)を介して入力軸4に接続された出力軸6と、を有した操舵軸7、およびこの操舵軸7の回転を図示せぬ転舵輪に伝達する伝達機構8を備えている。伝達機構8は、出力軸6の外周に設けられたピニオン9(図2参照)と、ラックバー10の外周に設けられたラック11(図2参照)と、からなるラック&ピニオン機構(ラック&ピニオン・ギヤ)により構成されている。ラックバー10の両端は、タイロッド12,12およびナックルアーム13,13を介して対応する転舵輪にそれぞれ連結されている。ラックバー10は、細長い円筒状のラックバーハウジング部14内に収容されている。
操舵アシスト機構3は、操舵機構2に操舵力を付与する電動アクチュエータ15と、この電動アクチュエータ15に接続された減速機16と、を備えている。電動アクチュエータ15は、ラックバーハウジング部14の下方に位置しており、電子制御ユニット(ECU)17と一体に構成されている。電動アクチュエータ15は、アクチュエータハウジング18内に収容されている。電子制御ユニット17は、各種制御処理を記憶および実行する機能を有し、トルクセンサ19からの操舵トルクの信号等に基づいて電動アクチュエータ15を駆動制御する。
減速機16は、電動アクチュエータ15に付随する図示せぬ電動モータの回転を減速する減速ギヤ機構を備えている。減速機16は、金属例えばアルミニウムからなる減速機ハウジング20内に収容されている。減速機ハウジング20は、ウォームホイール21(図2参照)を収容するウォームホイールハウジング部22と、このウォームホイールハウジング部22と一体に形成され、ウォーム軸23を収容するウォーム軸ハウジング部24と、を備えている。
ラックバーハウジング部14の軸方向両端には、それぞれタイロッド12,12の一端側外周を覆う蛇腹状のブーツ25,25が設置されている。ブーツ25,25は、弾性材料例えば合成ゴム材料により所定の可撓性を確保するように形成されており、ラックバー10等への水や埃等の侵入を防止している。
さらに、ラックバーハウジング部14の軸方向両端には、このラックバーハウジング部14を車体に取り付けるためのマウントブラケット26がそれぞれ設けられている。マウントブラケット26には、図示せぬゴムブッシュが設置され、このゴムブッシュを介して、ラックバーハウジング部14が車体に取り付けられる。
かかる電動パワーステアリング装置1の構成から、運転者がステアリングホイールを回転操作すると、入力軸4が回転してトーションバー5が捩られ、これにより生じるトーションバー5の弾性力によって、出力軸6が回転する。そして、出力軸6の回転運動が上記ラック&ピニオン機構によりラックバー10の軸方向に沿う直線運動に変換され、タイロッド12,12を介してナックルアーム13,13が車幅方向へと引っ張られることによって、対応した転舵輪の向きが変更される。
図2は、操舵軸方向に沿って取ったハウジング部材27等の断面図である。
図2に示すように、操舵軸7の一部を収容するハウジング部材27が、円筒状のセンサハウジング部28と、同じく円筒状のラック&ピニオン・ギヤハウジング部29と、同じく円筒状のウォームホイールハウジング部22と、を備えている。センサハウジング部28は、ボルト30(図1(a)参照)によってラック&ピニオン・ギヤハウジング部29に接続されている。センサハウジング部28は、操舵軸7の回転軸線31の方向において一方側(図2の上方側)に設けられており、一方、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29は、操舵軸7の回転軸線31の方向において他方側に設けられている。センサハウジング部28とラック&ピニオン・ギヤハウジング部29とは、内部において互いに連通しており、両者の接続部間は、環状に連続したシール部材32によって気密にシールされている。また、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29は、ラックバーハウジング部14を介してブーツ25,25とそれぞれ連通している。
また、ウォームホイールハウジング部22は、ボルト33(図1(a)参照)によってラック&ピニオン・ギヤハウジング部29に接続されている。ウォームホイールハウジング部22とラック&ピニオン・ギヤハウジング部29とは、内部において互いに連通しており、両者の接続部間は環状に連続したシール部材34によって気密にシールされている。ウォームホイールハウジング部22は、ウォーム軸ハウジング部24を介してアクチュエータハウジング18と連通している。
このように構成されたハウジング部材27において、操舵軸7は、センサハウジング部28およびラック&ピニオン・ギヤハウジング部29を通してウォームホイールハウジング部22内に延びている。具体的には、センサハウジング部28において入力軸4と出力軸6が接続され、出力軸6がラック&ピニオン・ギヤハウジング部29を貫通してウォームホイールハウジング部22まで延びている。操舵軸7は、センサハウジング部28およびラック&ピニオン・ギヤハウジング部29において、軸受35例えばボールベアリングによって軸支されている。軸受35は、インナレース36と、アウタレース37と、インナレース36とアウタレース37との間に配置された複数のボール38と、を備えている。インナレース36は、出力軸6の外周部に固定されている。アウタレース37は、環状溝42に嵌め込まれており、環状溝42は、センサハウジング部28とラック&ピニオン・ギヤハウジング部29の対向端部にまたがって当該両端部の内周面に連続して形成された1対の段差部40,41によって構成されている。アウタレース37の外周面は、環状溝42の溝底面であるアウタレース当接面部43と当接している。アウタレース当接面部43は、操舵軸7の回転軸線31に対する径方向において、後述する突起部当接面部92とオーバラップする。また、操舵軸7は、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29の下端部に収容される、後述する軸受69によっても軸支されている。
なお、センサハウジング部28およびラック&ピニオン・ギヤハウジング部29は、請求の範囲に記載の「第1ハウジング部」および「第2ハウジング部」にそれぞれ相当する。
センサハウジング部28は、金属例えばアルミニウムによって型成形で形成されている。センサハウジング部28は、回転軸線31に沿ったセンサハウジング部28の中央部の内径が下部つまりセンサハウジング部側開口部44側の内径よりも小さな段差径状に形成されている。ここで、センサハウジング部側開口部44は、センサハウジング部28におけるラック&ピニオン・ギヤハウジング部29との接合部側開口である。
センサハウジング部28の中央部に、トーションバー5の捩れ量に応じて変化する操舵トルクを検出する環状のトルクセンサ19が、トーションバー5の周囲に設けられている。トルクセンサ19は、トーションバー5が環状のトルクセンサ19内部を貫通した状態で、センサハウジング部28の内周面39に形成された段差部45に当接している。トルクセンサ19は、軸受35よりも入力軸4側に設けられている。トルクセンサ19の外径は、センサハウジング部28の下部の内径よりも小さくなっている。
トルクセンサ19は、永久磁石111と、ホルダ部材112と、1対の第1、第2ヨーク120,114と、1対の第1、第2集磁リング115,116と、磁気センサ117と、から主に構成されている。永久磁石111、ホルダ部材112、ヨーク120,114および集磁リング115,116は、いずれも操舵軸7の回転軸線31とほぼ同心円上となるように配置されている。
永久磁石111は、磁性材料によりほぼ円筒状に形成され、出力軸6の一端部外周に取付固定された磁性部材である。永久磁石111は、該永久磁石111の周方向に沿ってN極とS極が交互に配置(着磁)されることで構成されている。
ホルダ部材112は、ほぼ円筒状に形成されて入力軸4の一端部外周に取付固定されている。
1対のヨーク120,114は、いずれも軟磁性体によりほぼ円筒状に形成されると共に、ホルダ部材112を介して入力軸4に接続され、それぞれ出力軸6側となる一端側が永久磁石111と径方向で対向するように設けられている。ヨーク120,114は、図示せぬ円環状の溶着プレートによってホルダ部材112に溶着固定されている。
1対の集磁リング115,116は、両ヨーク120,114の他端側へと漏洩した永久磁石111による磁束を所定の範囲に集約するほぼ円環状のリングである。集磁リング115は、トルクセンサ19の外周側に配置されており、一方、集磁リング116は、トルクセンサ19の内周側に集磁リング115と対向するように配置されている。集磁リング115の周方向の所定位置には、径方向内側へ押圧されてなる集磁部115aが設けられており、一方、集磁リング116の周方向における集磁部115aと対向する位置には、径方向外部へ突出させてなる集磁部116aが設けられている。
磁気センサ117は、集磁部115aと集磁部116aとの間の径方向隙間に収容配置されたホール素子118と、このホール素子118をトルクセンサ19の上方に配置された制御基板48に接続するための接続端子49と、から構成されている。磁気センサ117は、上記ホール素子によるホール効果を利用することでホール素子118により集磁部115a,116aの間を通過する磁束を検出し、この磁束に応じた信号を制御基板48に出力する。これにより、制御基板48における入力軸4と出力軸6との間の相対回転角の演算や、該相対回転角に基づく操舵トルクの演算が行われる。
なお、トルクセンサ19は、請求の範囲に記載の「トルク検出部材」に相当する。
さらに、センサハウジング部28の中央部には、センサハウジング部28と直交するように環状に突出した突出部50によって、断面円形のハーネス取り付け孔51が形成されている。ハーネス取り付け孔51は、呼吸弁取り付け孔57と同じ周方向位置において、操舵軸7の回転軸線31に直交する径方向において、後述する呼吸弁取り付け孔57と同じ方向に向いている。つまり、ハーネス取り付け孔51および呼吸弁取り付け孔57は、呼吸弁取り付け孔57と同じ周方向位置において、操舵軸7の回転軸線31に直交するセンサハウジング部28の径方向にそれぞれ延びている。このハーネス取り付け孔51に、ハーネス52が接続された樹脂製のコネクタ53が取り付けられている。つまり、コネクタ53の円筒部53Aが断面円形のハーネス取り付け孔51に挿入されることで、ハーネス取り付け孔51に、コネクタ53が取り付けられている。コネクタ53には、コネクタ端子54がインサート成形されており、コネクタ端子54は、制御基板48に接続されている。
突出部50とコネクタ53との接触面間は、環状に連続した2つのシール部材55,55によって気密にシールされている。
ハーネス52は、トルクセンサ19からの操舵トルク信号(出力信号)をセンサハウジング部28外部の電子制御ユニット17(図1参照)に出力する。
また、センサハウジング部28の下部には、センサハウジング部28の外部からの水分の浸入を抑制すると共に空気をセンサハウジング部28の内部と外部とで双方向に通過可能とする呼吸弁56が設けられている。この呼吸弁56は、軸受35よりも入力軸4側に配置されており、操舵軸7の回転軸線31の方向においてトルクセンサ19とセンサハウジング部側開口部44との間に設けられている。呼吸弁56は、センサハウジング部28に形成された呼吸弁取り付け孔57に嵌め込まれている。呼吸弁56は、この呼吸弁56が設けられたセンサハウジング部28内の空気量を調整する。さらに、呼吸弁56は、センサハウジング部28と連通したラック&ピニオン・ギヤハウジング部29と、ウォームホイールハウジング部22、ウォーム軸ハウジング部24、アクチュエータハウジング18、ラックバーハウジング部14およびブーツ25,25内の空気量を調整する。
上述したように、センサハウジング部28は、回転軸線31に沿ったセンサハウジング部28の中央部の内径が下部よりも小さな段差径状に形成されている。よって、センサハウジング部28の内径である回転軸線31とセンサハウジング部28の内周面39の最短距離は、トルクセンサ19が設けられる領域58よりも呼吸弁56が設けられる領域59の方が大きくなっている。ここで、トルクセンサ19が設けられる領域58は、センサハウジング部28の中央部に相当しており、一方、呼吸弁56が設けられる領域59は、センサハウジング部28の下部に相当している。
呼吸弁56の内端部56aにおける半径方向距離である呼吸弁56と回転軸線31との最短距離Dbは、回転軸線31に対する径方向寸法におけるトルクセンサ19の径方向寸法の最大値Dtよりも小さくなっている。即ち、呼吸弁56が設けられる領域59において、呼吸弁56は、センサハウジング部28の内周面39からセンサハウジング部28内に突出しており、回転軸線31に直交する径方向において、トルクセンサ19とオーバーラップしている。
また、最短距離Dbは、センサハウジング部28のうち回転軸線31方向において呼吸弁56が設けられる領域59におけるセンサハウジング部28の内径である回転軸線31とセンサハウジング部28の内周面39との最短距離Dsよりも小さくなっている。即ち、センサハウジング部28が設けられる領域58において、呼吸弁56は、センサハウジング部28を貫通してセンサハウジング部28内に突出しており、呼吸弁56の内端部56aは、センサハウジング部28の内周面39よりも回転軸線31に近い位置にある。
また、センサハウジング部28の上部において、センサハウジング部28の内周面39と操舵軸7との間には、防塵用の環状のダストシール60が設けられている。
ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29は、金属例えばアルミニウムによって、細長い円筒状のラックバーハウジング部14と一体に型成形されている。ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29は、回転軸線31と直交するようにラック&ピニオン・ギヤハウジング部29から円筒状に突出したラックリテーナ収容部61を備えている。ラックリテーナ収容部61内には、ラックバー10の外周の円弧面に追従した曲面62を有したラックリテーナ63と、出力軸6に向けてラックバー10を付勢するばね64と、ラックリテーナ収容部61の外端部を閉塞するように螺着され、ばね64の付勢力を調整する閉塞部材65と、が設けられている。ばね64およびラックリテーナ63によって出力軸6に向けてラックバー10を付勢することで、ラックバー10の外周のラック11と出力軸6の外周のピニオン9とのバックラッシュを抑制している。ラックリテーナ収容部61とラックリテーナ63との間は、環状に連続したシール部材119によって気密にシールされている。
ウォームホイールハウジング部22は、金属例えばアルミニウムによって形成されている。ウォームホイールハウジング部22内には、出力軸6の先端に取り付けられたウォームホイール21が収容されている。ウォームホイール21は、樹脂製のギヤ形成部66に円筒状をなす金属製の芯金部67をインサート成形することにより形成されている。芯金部67は、出力軸6に圧入されている。ウォームホイール21は、ウォームホイールハウジング部22の開口端面68からラック&ピニオン・ギヤハウジング部29側にオフセット配置されている。出力軸6は、軸受69を介してラック&ピニオン・ギヤハウジング部29に回転可能に支持されている。軸受69は、例えばボールベアリングであり、インナレース70と、アウタレース71と、インナレース70とアウタレース71との間に配置された複数のボール72と、を備えている。インナレース70は、出力軸6の外周に形成された段差部73に突き当てられ、止め輪74によって出力軸6に固定されている。アウタレース71は、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29に形成された段差部75と板状の固定部材76との間に配置されている。そして、ボルト77によってラック&ピニオン・ギヤハウジング部29と固定部材76とを締結することで、アウタレース71は、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29に固定されている。
ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29とは反対側に位置したウォームホイールハウジング部側開口部78は、円形かつ浅皿状の閉塞部材79によって閉塞されている。閉塞部材79は、ウォームホイールハウジング部22の開口端面68に複数のねじ80(図1参照)によって固定されている。ウォームホイールハウジング部22と閉塞部材79とは、環状に連続したシール部材81よって気密にシールされている。
ウォーム軸ハウジング部24には、電動アクチュエータ15の出力軸と一体に回転するウォーム軸23と、このウォーム軸23の外周に一体に形成され、ウォームホイール21のギヤ形成部66と噛み合うウォーム82と、が収容されている。
電動アクチュエータ15のウォーム軸23の駆動によりウォームホイール21が回転することで、操舵アシスト力としての補助動力が、出力軸6の回転に対して与えられる。ウォームホイール21の潤滑は、グリスによって行われる。
(呼吸弁取り付け孔の説明)
図3は、図2の呼吸弁56が取り付けられる呼吸弁取り付け孔57の拡大断面図である。
呼吸弁取り付け孔57は、センサハウジング部28の内周側と外周側とを連通させるように機械加工によって段状に形成された貫通孔である。つまり、呼吸弁取り付け孔57は、センサハウジング部28の外周側の端部57aからセンサハウジング部28内部に向かって延びる断面円形の外周側孔121と、該外周側孔121と連通し、外周側孔121よりも小さい断面円形に形成された内周側孔122と、を備えている。ここで、外周側孔121の内周面84は、後述する鋳肌面90を除いて機械加工されている。さらに、内周側孔122の内周面113と、該内周面113と内周面84との接続面85とが、機械加工されている。また、内周面84と内周面113との間には、円弧面123が形成されている。
なお、呼吸弁取り付け孔57の内周面84および内周面113は、請求の範囲に記載の「呼吸弁取り付け孔の内周面」に相当する。
また、図3に示すように、センサハウジング部28は、その外周部に、機械加工によって形成された平面部86を備えている。この平面部86は、呼吸弁取り付け孔57の1対の端部57a,57bのうちセンサハウジング部28の外周側の端部57aの開口112の全周を包囲するように環状に連続して形成されている。この環状の平面部86は、呼吸弁取り付け孔57を介してハウジング部材27や電動パワーステアリング装置1全体の気密試験を行う際に図示せぬバキューム装置の吸引口を密着させるための面となる。
図4は、呼吸弁取り付け孔57の外周側孔121の内周面84およびこれに隣接した領域を示す拡大断面図である。
呼吸弁取り付け孔57の1対の端部57a,57b(図3参照)のうちセンサハウジング部28の外周側の端部57aにおける呼吸弁取り付け孔57の開口112と隣接する領域87は、センサハウジング部28の鋳造時に形成された凸凹の曲面状の鋳肌面90を備えている。鋳肌面90は、機械加工により形成された内周面84と滑らかに接続されている。鋳肌面90は、呼吸弁取り付け孔57の孔縁に環状に連続して形成されている。
また、呼吸弁取り付け孔57の内周面113のうち接続面85に隣接した部分は、呼吸弁取り付け孔57に対して呼吸弁56を仮組付けする際に、呼吸弁取り付け孔57の途中で呼吸弁56を保持可能な呼吸弁保持部91となる(図8,9参照)。
図5は、図2の線A−Aに沿って取ったセンサハウジング部28の断面図である。
図5では、呼吸弁56の後述する突起部98(図6参照)が当接する突起部当接面部92が、内周面113とセンサハウジング部28の開口端面68に隣接したセンサハウジング部側開口部44との間で、内周面39に機械加工により形成されている。ここで、突起部当接面部92以外のセンサハウジング部28の内周面39の部分は、鋳造時に形成された鋳肌面93となっている。
(呼吸弁の説明)
図6は、図2の呼吸弁56の拡大断面図である。
呼吸弁56は、弾性材料で形成された円筒状の弾性係合部94を備えている。図6に示すように、弾性係合部94には、この弾性係合部94の中心軸95に沿った細長い複数の切り欠き96が形成されている。弾性係合部94は、複数の切り欠き96のうち2つの切り欠き96,96の間に、中心軸95に沿って延びる弾性変形部97と、この弾性変形部97の先端部99付近に形成された突起部98と、を備えている。弾性変形部97は、呼吸弁取り付け孔57への呼吸弁56の挿入方向Aに対する直交断面において、呼吸弁取り付け孔57の径方向内側へ弾性変形可能となるように形成されている。突起部98は、弾性変形部97の先端部99付近において、弾性係合部94の径方向外側に突出している。具体的には、突起部98が弾性変形部97側に若干オフセットするかたちで設けられ、先端部99には、呼吸弁56を呼吸弁取り付け孔57に仮組付けするときに呼吸弁取り付け孔57の内周面113上の呼吸弁保持部91と接触する外側面100を備えている。突起部98は、弾性変形部97と直交した当接面101を備えており、この当接面101は、弾性係合部94の外周面94aが呼吸弁取り付け孔57の内周面113と当接する状態において、呼吸弁取り付け孔57の孔縁であるセンサハウジング部28の内周面39と当接することにより呼吸弁56が呼吸弁取り付け孔57から抜ける方向へ移動するのを規制するように形成されている。弾性変形部97および突起部98は、所謂スナップフィットを構成している。また、突起部98とは反対側の弾性係合部94の端部には、弾性係合部94の径方向外側に環状に張り出したフランジ部102が形成されている。
呼吸弁56は、円筒状の弾性係合部94のフランジ部102側の開口部103を閉塞するフィルタ104をさらに備えている。フィルタ104は、気体を通過させるが液体を通過させないように構成された撥水性フィルタである。フィルタ104として、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の多孔質膜を用いることができる。
さらに、呼吸弁56には、外部から加わる力に対してフィルタ104を保護するフィルタ保護部105が設けられている。フィルタ保護部105は、板状をなしており、弾性変形部97の反対側からフィルタ104を覆うことでフィルタ104を保護する。フィルタ保護部105は、フランジ部102の外周に形成された接続部106を介してフランジ部102に接続されている。
また、弾性係合部94の外周面94aには、環状に連続したシール部材107が装着される。シール部材107は、弾性係合部94およびフランジ部102の双方に当接し、呼吸弁56と上記センサハウジング部28との間を気密にシールする。
(パワーステアリング装置の製造方法の説明)
図7は、呼吸弁56の突起部98が当接する突起部当接面部92を形成する突起部当接面部形成工程を示している。
突起部当接面部形成工程では、図7に矢印Bで示すように、センサハウジング部側開口部44からセンサハウジング部28内部に切削工具108を挿入し、呼吸弁取り付け孔57の周囲においてセンサハウジング部28の内周面39を部分的に機械加工する。このとき、センサハウジング部28の内周面39の一部が、呼吸弁取り付け孔57の内周面113とセンサハウジング部側開口部44との間で機械加工される。これにより、浅い溝状の突起部当接面部92が形成される(図5参照)。
なお、突起部当接面部形成工程は、図示せぬセンサハウジング部形成用の型によるセンサハウジング部28の型成形と同時に、センサハウジング部形成用の型によって突起部当接面部92を形成する工程であっても良い。
図8は、センサハウジング部28の呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を仮組付けする呼吸弁仮組付け工程を示している。
呼吸弁仮組付け工程では、呼吸弁取り付け孔57の途中まで呼吸弁56を挿入方向Aに挿入することにより、呼吸弁取り付け孔57に対して呼吸弁56を仮組付けする。呼吸弁56の仮組付け時には、弾性係合部94の先端が呼吸弁取り付け孔57に挿入されることにより、弾性係合部94の先端が、呼吸弁取り付け孔57の呼吸弁保持部91に接触した状態となる。このとき、弾性変形部97が呼吸弁取り付け孔57の内方に適度に弾性変形し、その反力でもって弾性変形部97の先端部99の外側面100が呼吸弁保持部91に弾性的に接触することで、呼吸弁56が、呼吸弁取り付け孔57の途中で呼吸弁取り付け孔57に仮組付けされている。このとき、呼吸弁56のフィルタ104やフィルタ保護部105は、センサハウジング部28の外周の平面部86よりも外側に突出している。
図9は、センサハウジング部側開口部44からトルクセンサ19を挿入するトルクセンサ挿入工程を示している。
トルクセンサ挿入工程では、制御基板48にホール素子118を実装し、制御基板48にコネクタ端子54を接続し、ホール素子118およびコネクタ端子54を具備した制御基板48をハーネス取り付け孔51に挿入した上で、センサハウジング部側開口部44からセンサハウジング部28内部にトルクセンサ19を挿入する。挿入時には、トルクセンサ19の環状の端面109がセンサハウジング部28の段差部45に当接するまで、図9に矢印Cで示す方向に、トルクセンサ19を挿入する。トルクセンサ19の挿入後には、制御基板48に実装されたホール素子118が集磁リング115,116の間に収容されるようにして、トルクセンサ19がセンサハウジング部28に組み付けられている。
図10は、呼吸弁仮組付け工程で仮組付けされた呼吸弁56をセンサハウジング部28の呼吸弁取り付け孔57に組付ける呼吸弁組付け工程を示している。
呼吸弁組付け工程では、仮組付けされた呼吸弁56を呼吸弁取り付け孔57に挿入方向Aに沿ってさらに押し込むことにより、センサハウジング部28の組付け位置110において呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を組付ける。ここで、センサハウジング部28の組付け位置110とは、呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を挿入しきったときの最終的な組付け位置である。呼吸弁56の組付け後には、所謂スナップフィットにより、呼吸弁56の突起部98がセンサハウジング部28の突起部当接面部92と当接することで、呼吸弁56が、センサハウジング部28に対して抜け止め保持される。また、シール部材107は、弾性係合部94、フランジ部102および接続面85に接触している。呼吸弁56は、トルクセンサ19の外周部よりもセンサハウジング部28の内周側に突出している。呼吸弁56のフィルタ104やフィルタ保護部105は、センサハウジング部28の外周側孔121内に収容された状態となっている。
図11は、センサハウジング部28とラック&ピニオン・ギヤハウジング部29とを接続するハウジング接続工程を示している。
ハウジング接続工程では、センサハウジング部28とラック&ピニオン・ギヤハウジング部29とをボルト30(図1(a)参照)により接続する。ハウジング部28,29の接続は、軸受35のアウタレース37がセンサハウジング部28の段差部40およびラック&ピニオン・ギヤハウジング部29の段差部41に当接するように軸受35を配置した上で行われる。
ところで、上記特許文献1に記載の電子制御ユニットでは、独立した電子制御ユニットに呼吸弁が設けられているため、呼吸弁によって、操舵軸およびステアリングギヤを収容するハウジングやこのハウジングと連通したモータハウジング内の空気量を調整することができないという問題があった。
これに対し、本実施例では、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29に接続されたセンサハウジング部28に、呼吸弁56が組付けられている。従って、センサハウジング部28およびラック&ピニオン・ギヤハウジング部29内の空気量や、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29と連通したアクチュエータハウジング18等内の空気量を調整することができる。
また、本実施例において、図示せぬ電動モータを収容するアクチュエータハウジング18内では、電動モータにより生じる比較的高温の熱が、アクチュエータハウジング18内の空気を膨張させる虞があるため、アクチュエータハウジング18内の空気量を調整する必要がある。
本実施例では、呼吸弁56を具備したセンサハウジング部28が、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29およびウォーム軸ハウジング部24を介してアクチュエータハウジング18と連通している。従って、アクチュエータハウジング18内の空気量を調整して、電動モータからの熱により膨張した空気をセンサハウジング部28の外部へ逃がすことができる。
さらに、本実施例において、蛇腹状のブーツ25,25は、内部の空気量によって、蛇腹状のブーツ25が膨張または収縮し、ブーツ25に亀裂等の損傷が生じる虞があるため、ブーツ25内の空気量を調整する必要がある。
本実施例では、呼吸弁56を具備したセンサハウジング部28が、ラック&ピニオン・ギヤハウジング部29およびラックバーハウジング部14を介してブーツ25,25と連通している。従って、ブーツ25,25内の空気量を呼吸弁56により調整して、ブーツ25の過度の膨張および収縮を抑制し、ブーツ25の損傷を低減させることができる。
また、本実施例では、呼吸弁56が、センサハウジング部28のトルクセンサ19とセンサハウジング部側開口部44との間で、センサハウジング部28の内周面39よりも内側に突出している。トルクセンサ19とセンサハウジング部側開口部44との間のセンサハウジング部28の空間(呼吸弁56が設けられる領域59)は、トルクセンサ19が設けられる領域58よりも広くなっており、トルクセンサ19の挿入後には、デッドスペースとなる。従って、呼吸弁56が領域59内のデッドスペース内に延びることにより、スペース効率を向上させることができる。
さらに、本実施例では、トルクセンサ挿入工程後に、呼吸弁組付け工程において、センサハウジング部28の組付け位置110において呼吸弁56を組付けるようにしてある。仮に、呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を組付けた後にセンサハウジング部28内にトルクセンサ19を挿入した場合には、トルクセンサ19が、呼吸弁56と干渉してしまう。しかし、本実施例のようにトルクセンサ19が呼吸弁取り付け位置を通過した後、呼吸弁56を組付け位置110において組み付けることにより、呼吸弁56がトルクセンサ19に干渉することを抑制することができる。なお、この作用効果は、トルクセンサ挿入工程前に、呼吸弁56がセンサハウジング部28に仮組付けされ、呼吸弁56が最終的な組付け位置に組み付けられていない態様においても成立する。
また、本実施例では、呼吸弁56の内端部56aと操舵軸7の回転軸線31との最短距離Dbが、トルクセンサ19の径方向寸法の最大値Dtよりも小さくなっている。従って、スペース効率を高めながらトルクセンサ19と呼吸弁56との干渉を抑制することができる。
さらに、本実施例では、最短距離Dbが、センサハウジング部28の下部におけるセンサハウジング部28の内周面39と回転軸線31との間の最短距離Dsよりも小さくなっている。従って、呼吸弁56の内端部56aがセンサハウジング部28の内周面39よりも内周側に突出し、センサハウジング部28の下部のデッドスペースをより有効に利用可能となるので、スペース効率を向上させることができる。ここで、呼吸弁56の内端部56aがセンサハウジング部28の内周面39よりも内周側に突出するように組付けられるのは、トルクセンサ19の挿入後であるため、トルクセンサ19と呼吸弁56との干渉が抑制される。
また、本実施例では、呼吸弁56の弾性変形部97および突起部98により、所謂スナップフィットでもって、センサハウジング部28の呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を組付けてある。従って、センサハウジング部28に対する呼吸弁56の組付け作業性が良い。
さらに、本実施例では、呼吸弁取り付け孔57およびハーネス取り付け孔51は、共に、センサハウジング部28の径方向に延びている。従って、呼吸弁取り付け孔57とハーネス取り付け孔51を型成形によって形成する際、両者は同じ型抜き方向となるため、型割りを簡素化でき、型割りの複雑化を抑制することができる。
また、本実施例では、平面部86と内周面84との間に、エッジではなく、鋳肌面90が形成されていることから、呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を挿入する際にシール部材107が曲面状の鋳肌面90に接触する。従って、呼吸弁56の挿入時のシール部材107の損傷を抑制することができる。
なお、本実施例では、接続面85と内周面113との間に、滑らかな円弧面123が形成されている。このため、呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を挿入して弾性変形すると、シール部材107が、エッジではなく滑らかな円弧面123に接触する。従って、呼吸弁56の挿入時のシール部材107の損傷を抑制することができる。
さらに、呼吸弁取り付け孔57の内周面113に呼吸弁保持部91を設けてある。従って、呼吸弁保持部91において呼吸弁56を仮組付けした状態で、トルクセンサ19を組付け、その後、呼吸弁56を最終的な組付け位置に組付ける、という工順を採用することができる。
また、センサハウジング部28の外側の端部57aの開口112の全周を包囲する平面部86を設けたことから、呼吸弁取り付け孔57を介してハウジング部材27や電動パワーステアリング装置1全体の気密試験を行う際、バキューム装置の吸引口を平面部86に密着させることができる。
さらに、本実施例では、突起部当接面部92が、内周面39からセンサハウジング部側開口部44との間に連続して形成されている。これにより、センサハウジング部側開口部44側から突起部当接面部92を形成することが可能となり、呼吸弁取り付け孔57を介して突起部当接面部92を形成する場合と比べ、突起部当接面部92の形成が容易となる。
また、本実施例では、突起部当接面部形成工程において、比較的広いセンサハウジング部側開口部44からセンサハウジング部28内部に切削工具108を挿入し、機械加工により突起部当接面部92を形成している。従って、センサハウジング部側開口部44側から機械加工用工具が挿入し易く、突起部当接面部92の機械加工を容易に行うことができる。また、機械加工によって突起部当接面部92を形成するため、寸法精度、形状精度がよい。
さらに、呼吸弁56が設けられる領域59におけるセンサハウジング部28の内周面39は、突起部当接面部92以外の部分が鋳肌面93となっていることから、センサハウジング部28の加工工数を低減することができる。また、鋳肌面93の部分を含むセンサハウジング部28の内径が、トルクセンサ19が組み付けられる領域58の内径よりも大きいため、トルクセンサ19の挿入時にトルクセンサ19と鋳肌面93とが干渉し、トルクセンサ19が損傷することを抑制することができる。
また、他の実施例では、突起部当接面部形成工程は、図示せぬセンサハウジング部形成用の型によるセンサハウジング部28の型成形と同時に、センサハウジング部形成用の型によって突起部当接面部92を形成する工程となっている。従って、型抜きにより突起部当接面部92を形成することができ、突起部当接面部92の形成作業の簡略化を図ることができる。
さらに、本実施例では、円弧面状のアウタレース当接面部43は、回転軸線31に対する径方向において、突起部当接面部92とオーバーラップしている。このように、軸受35の保持に支障の無い範囲でアウタレース当接面部43と突起部当接面部92とをオーバーラップさせることにより、センサハウジング部28の径方向寸法の小型化を図ることができる。
なお、上記実施例では、呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を仮組付けした後に、トルクセンサ19を挿入する例を開示したが、呼吸弁56を仮組付けすることなく、トルクセンサ19の挿入後に、呼吸弁取り付け孔57に呼吸弁56を直接に組付けても良い。
[本実施例の効果]
以下に、本実施例のパワーステアリング装置1の製造方法により得られる効果を列挙する。
(1)ステアリングホイールからの回転力が伝達される入力軸4と、トーションバー5を介して入力軸4に接続される出力軸6と、を有する操舵軸7と、操舵軸7の回転を転舵輪に伝達する伝達機構8と、を有する操舵機構2と、操舵軸7の少なくとも一部を収容するハウジング部材27であって、操舵軸7の回転軸線31の方向において一方側に設けられたセンサハウジング部28と他方側に設けられセンサハウジング部28と接続されるラック&ピニオン・ギヤハウジング部29と、を備えたハウジング部材27と、ハウジング部材27に設けられ、出力軸6を軸支する軸受35と、センサハウジング部28内であって軸受35よりも入力軸4側に設けられ、トーションバー5の捩れ量に応じて変化する操舵トルクを検出するためのトルクセンサ19と、操舵トルクに基づき操舵機構2に操舵力を付与する電動アクチュエータ15と、センサハウジング部28に設けられた呼吸弁56であって、ハウジング部材27の外部からの水分の浸入を抑制すると共に空気をハウジング部材27の内部と外部とで双方向に通過可能であり、軸受35よりも入力軸4側に配置された呼吸弁56と、を備えたパワーステアリング装置1において、パワーステアリング装置1の製造方法は、トルクセンサ19をセンサハウジング部28のラック&ピニオン・ギヤハウジング部29との接合部側開口であるセンサハウジング部側開口部44から挿入するトルクセンサ挿入工程と、呼吸弁56をセンサハウジング部28に組み付ける呼吸弁組付け工程と、トルクセンサ挿入工程の後にセンサハウジング部28とラック&ピニオン・ギヤハウジング部29とを接続するハウジング接続工程と、を有する。
従って、センサハウジング部28の空気量と、該センサハウジング部28と連通するラック&ピニオン・ギヤハウジング部29内の空気量と、を調整することができる。
(2)呼吸弁56は、センサハウジング部28のうち、回転軸線31の方向においてトルクセンサ19とセンサハウジング部側開口部44との間に設けられる。
従って、センサハウジング部28のトルクセンサ収容部とセンサハウジング部側開口部44の間の領域は、その内径寸法がトルクセンサ収容部の内径寸法以上となっており、またトルクセンサ19の通過後は、内部空間に比較的余裕があるため、この領域に呼吸弁56を設けることにより、スペース効率を向上させることができる。
(3)呼吸弁組付け工程は、トルクセンサ挿入工程が終了した後、呼吸弁56をセンサハウジング部28の組付け位置において組み付ける。
従って、トルクセンサ19が呼吸弁取り付け位置を通過した後、呼吸弁56を組付け位置において組み付けることにより、呼吸弁56がトルクセンサ19に干渉することを抑制することができる。
(4)呼吸弁組付け工程後における呼吸弁56と回転軸線31との最短距離は、回転軸線31に対する径方向寸法におけるトルクセンサ19の径方向寸法の最大値よりも小さい。
従って、上記の寸法関係において、呼吸弁組付け後にトルクセンサ19を挿入する場合、呼吸弁56とトルクセンサ19とが干渉するが、トルクセンサ19の挿入後に呼吸弁56を最終的な組付け位置において組み付けるようにしたため、スペース効率を高めながらトルクセンサ19と呼吸弁56との干渉を抑制することができる。
(5)呼吸弁組付け工程後における呼吸弁56の内端部56aにおける半径方向距離である呼吸弁56と回転軸線31との最短距離Dbは、センサハウジング部28のうち回転軸線の方向において呼吸弁56が設けられる領域におけるセンサハウジング部28の内径である回転軸線31とセンサハウジング部28の内周面39との最短距離Dsよりも小さい。
従って、センサハウジング部28の内周面39よりも呼吸弁56の先端が突出するように呼吸弁56を設けることにより、スペース効率を高めることができる。また、センサハウジング部28の内周面39よりも呼吸弁56が突出する位置に組み付けられるのは、トルクセンサ挿入工程後であるため、トルクセンサ19と呼吸弁56とが干渉するのを抑制することができる。
(6)センサハウジング部28は、センサハウジング部28の内側と外側とを連通する貫通孔であって、呼吸弁56が設けられる呼吸弁取り付け孔57を備え、呼吸弁56は、弾性材料で形成された弾性係合部94を備え、弾性係合部94は、弾性変形部97と、弾性変形部97に設けられた突起部98を備え、弾性変形部97は、呼吸弁取り付け孔57への呼吸弁56の挿入方向Aに対する直交断面において、呼吸弁取り付け孔57の内側方向へ弾性変形可能であって、突起部98は、弾性変形部97が呼吸弁取り付け孔57の内周面113と当接する状態において、センサハウジング部28の内周側の面39と当接することにより呼吸弁56が呼吸弁取り付け孔57から抜ける方向へ移動するのを規制するように形成されている。
従って、呼吸弁56は、所謂スナップフィットによりセンサハウジング部28に固定されるため、組付け作業性がよい。
(7)センサハウジング部28は、型成形によって形成されると共に、センサハウジング部28の内側と外側とを連通する貫通孔であって、呼吸弁56が設けられる呼吸弁取り付け孔57と、トルクセンサ19からの出力信号をセンサハウジング部28外部に出力するためのハーネス52が設けられるハーネス取り付け孔51を備え、呼吸弁取り付け孔57とハーネス取り付け孔51は、回転軸線31に対する径方向において、同じ方向に向いている。
従って、呼吸弁取り付け孔57とハーネス取り付け孔51を型成形によって形成する際、両者は同じ型抜き方向となるため、型割りの複雑化を抑制することができる。
(8)センサハウジング部28は、型成形によって形成されると共に、センサハウジング部28の内側と外側とを連通する貫通孔であって、呼吸弁56が設けられる呼吸弁取り付け孔57を備え、呼吸弁取り付け孔57は、呼吸弁取り付け孔57の内周面84,113が機械加工によって形成され、呼吸弁取り付け孔57の1対の端部57a,57bのうちセンサハウジング部28の外側の端部57bにおける呼吸弁取り付け孔57の開口112と隣接する領域87は、センサハウジング部28の型成形における鋳肌面90を有し、かつ呼吸弁取り付け孔57の機械加工による内周面84と連続的に形成された曲面状に形成されている。
従って、呼吸弁56に設けられたシール部材107が呼吸弁取り付け孔57の機械加工面と、その周りの鋳肌面90の境界を通過するとき、境界部がなだらかな曲面状を有するため、呼吸弁56挿入時におけるシール部材107の損傷を抑制することができる。
(9)センサハウジング部28は、センサハウジング部28の内側と外側とを連通する貫通孔であって、呼吸弁56が設けられる呼吸弁取り付け孔57を備え、呼吸弁取り付け孔57は、呼吸弁56の挿入方向Aにおいて、呼吸弁56を呼吸弁取り付け孔57の途中で保持可能な呼吸弁保持部91を有する。
従って、呼吸弁56を呼吸弁保持部91においてセンサハウジング部28に仮組付けした状態で、トルクセンサ19を組付け、その後、呼吸弁56を最終的な組付け位置に組付ける、という工順を採用することができる。
(10)センサハウジング部28は、センサハウジング部28の内側と外側とを連通する貫通孔であって、呼吸弁56が設けられる呼吸弁取り付け孔57と、センサハウジング部28の外周側に設けられた平面部86を備え、平面部86は、呼吸弁取り付け孔57の1対の端部のうちセンサハウジング部28の外側の端部の開口の全周を包囲するように形成されている。
従って、呼吸弁取り付け孔57を介してハウジング部材27やパワーステアリング装置1全体の気密試験を行う際、図示せぬバキューム装置の吸引口を平面部86に密着させることができる。
(11)パワーステアリング装置1の製造方法は、トルクセンサ挿入工程および呼吸弁組付け工程よりも前に行われる突起部当接面部形成工程を有し、センサハウジング部28は、センサハウジング部28の内側と外側とを連通する貫通孔であって、呼吸弁56が設けられる呼吸弁取り付け孔57を備え、呼吸弁56は、弾性材料で形成された弾性係合部94を備え、弾性係合部94は、弾性変形部97と、弾性変形部97に設けられた突起部98を備え、弾性変形部97は、呼吸弁取り付け孔57への呼吸弁56の挿入方向Aに対する直交断面において、呼吸弁取り付け孔57の内側方向へ弾性変形可能であって、突起部98は、弾性変形部97が呼吸弁取り付け孔57の内周面113と当接する状態において、センサハウジング部28の内周側の面と当接することにより呼吸弁56が呼吸弁取り付け孔57から抜ける方向へ移動するのを規制するように形成され、センサハウジング部28は、突起部当接面部形成工程で形成され、センサハウジング部28の内周側に設けられ、呼吸弁56の突起部98が当接する平面部であって、センサハウジング部側開口部44まで形成されている突起部当接面部92を有する。
従って、突起部当接面部92がセンサハウジング部側開口部44まで延びているため、突起部当接面部92をセンサハウジング部側開口部44側から形成が可能となり、センサハウジング部28の外周側から呼吸弁取り付け孔57を介して突起部当接面部92を形成する場合と比べ、形成が容易となる。
(12)突起部当接面部形成工程は、センサハウジング部側開口部44側から機械加工によって突起部当接面部92を形成する工程である。
従って、センサハウジング部側開口部44側から機械加工用ツールが入りやすく、容易に突起部当接面部92の機械加工を行うことができる。また、機械加工によって突起部当接面部92を形成するため、寸法精度、形状精度がよい。
(13)センサハウジング部28は、型成形によって形成され、センサハウジング部28の内径である回転軸線31とセンサハウジング部28の内周面39の最短距離は、トルクセンサ19が設けられる領域よりも呼吸弁56が設けられる領域の方が大きく、センサハウジング部28の回転軸線31の方向において呼吸弁56が設けられる領域におけるセンサハウジング部28の内周面39は、突起部当接面部92以外の部分が型成形によって形成された鋳肌面93を有する。
従って、回転軸線方向において呼吸弁56が設けられる領域(突起部当接面部92を除く)を鋳肌面93のままとしたことにより、センサハウジング部28の加工工数を抑制することができる。また、トルクセンサ19は、組付けの際、この鋳肌面93の部分を通過するが、この部分の内径が、トルクセンサ19が組み付けられる領域よりも大きく形成されているため、トルクセンサ19と鋳肌面93とが接触し、トルクセンサ19が損傷することを抑制することができる。
(14)センサハウジング部28は、型成形によって形成され、突起部当接面部形成工程は、センサハウジング部28の型成形と同時にセンサハウジング部28形成用の型によって突起部当接面部92を形成する工程である。
従って、突起部当接面部92がセンサハウジング部側開口部44まで延びているため、型抜きにより突起部当接面部92を形成することができ、突起部当接面部92形成作業の簡略化を図ることができる。
(15)軸受35はボールベアリングであって、センサハウジング部28は、センサハウジング部28の内周側であってセンサハウジング部側開口部44側に設けられ、ボールベアリングのアウタレース37の外周面が当接する円弧面であるアウタレース当接面部43を備え、アウタレース当接面部43は、回転軸線31に対する径方向において、突起部当接面部92とオーバーラップするように設けられている。
従って、ボールベアリングの保持に支障の無い範囲でアウタレース当接面部43と突起部当接面部92とをオーバーラップさせることにより、センサハウジング部28の径方向寸法の小型化を図ることができる。
以上説明した実施例に基づくパワーステアリング装置の製造方法としては、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
パワーステアリング装置の製造方法は、その一つの態様において、ステアリングホイールからの回転力が伝達される入力軸と、トーションバーを介して前記入力軸に接続される出力軸と、を有する操舵軸と、前記操舵軸の回転を転舵輪に伝達する伝達機構と、を有する操舵機構と、前記操舵軸の少なくとも一部を収容するハウジング部材であって、前記操舵軸の回転軸線の方向において一方側に設けられた第1ハウジング部と他方側に設けられ前記第1ハウジング部と接続される第2ハウジング部と、を備えたハウジング部材と、前記ハウジング部材に設けられ、前記出力軸を軸支する軸受と、前記第1ハウジング部内であって前記軸受よりも前記入力軸側に設けられ、前記トーションバーの捩れ量に応じて変化する操舵トルクを検出するためのトルク検出部材と、前記操舵トルクに基づき前記操舵機構に操舵力を付与するアクチュエータと、前記第1ハウジング部に設けられた呼吸弁であって、前記ハウジング部材の外部からの水分の浸入を抑制すると共に空気を前記ハウジング部材の内部と外部とで双方向に通過可能であり、前記軸受よりも前記入力軸側に配置された呼吸弁と、を備えたパワーステアリング装置において、前記トルク検出部材を前記第1ハウジング部の前記第2ハウジング部との接合部側開口である第1ハウジング部側開口部から挿入するトルク検出部材挿入工程と、前記呼吸弁を前記第1ハウジング部に組み付ける呼吸弁組付け工程と、前記トルク検出部材挿入工程の後に前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部とを接続するハウジング接続工程と、を有している。
パワーステアリング装置の製造方法の好ましい態様において、前記呼吸弁は、前記第1ハウジング部のうち、前記回転軸線の方向において前記トルク検出部材と前記第1ハウジング部側開口部との間に設けられている。
別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記呼吸弁組付け工程は、前記トルク検出部材挿入工程が終了した後、前記呼吸弁を前記第1ハウジング部の組付け位置において組み付ける。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記呼吸弁組付け工程後における前記呼吸弁と前記回転軸線との最短距離は、前記回転軸線に対する径方向寸法における前記トルク検出部材の前記径方向寸法の最大値よりも小さい。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記呼吸弁組付け工程後における前記呼吸弁の内端部における半径方向距離である前記呼吸弁と前記回転軸線との最短距離は、前記第1ハウジング部のうち前記回転軸線の方向において前記呼吸弁が設けられる領域における前記第1ハウジング部の内径である前記回転軸線と前記第1ハウジング部の内周面との最短距離よりも小さい。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、前記第1ハウジング部の内側と外側とを連通する貫通孔であって、前記呼吸弁が設けられる呼吸弁取り付け孔を備え、前記呼吸弁は、弾性材料で形成された弾性係合部を備え、前記弾性係合部は、弾性変形部と、前記弾性変形部に設けられた突起部を備え、前記弾性変形部は、前記呼吸弁取り付け孔への前記呼吸弁の挿入方向に対する直交断面において、前記呼吸弁取り付け孔の内側方向へ弾性変形可能であって、前記突起部は、前記弾性変形部が前記呼吸弁取り付け孔の内周面と当接する状態において、前記第1ハウジング部の内周側の面と当接することにより前記呼吸弁が前記呼吸弁取り付け孔から抜ける方向へ移動するのを規制するように形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、型成形によって形成されると共に、前記第1ハウジング部の内側と外側とを連通する貫通孔であって、前記呼吸弁が設けられる呼吸弁取り付け孔と、前記トルク検出部材からの出力信号を前記第1ハウジング部外部に出力するためのハーネスが設けられるハーネス取り付け孔を備え、前記呼吸弁取り付け孔と前記ハーネス取り付け孔は、前記回転軸線に対する径方向において、同じ方向に向いている。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、型成形によって形成されると共に、前記第1ハウジング部の内側と外側とを連通する貫通孔であって、前記呼吸弁が設けられる呼吸弁取り付け孔を備え、前記呼吸弁取り付け孔は、前記呼吸弁取り付け孔の内周面が機械加工によって形成され、前記呼吸弁取り付け孔の1対の端部のうち前記第1ハウジング部の外側の端部における前記呼吸弁取り付け孔の開口と隣接する領域は、前記第1ハウジング部の型成形における鋳肌面を有し、かつ前記呼吸弁取り付け孔の機械加工による内周面と連続的に形成された曲面状に形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、前記第1ハウジング部の内側と外側とを連通する貫通孔であって、前記呼吸弁が設けられる呼吸弁取り付け孔を備え、前記呼吸弁取り付け孔は、前記呼吸弁の挿入方向において、前記呼吸弁を前記呼吸弁取り付け孔の途中で保持可能な呼吸弁保持部を有している。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、前記第1ハウジング部の内側と外側とを連通する貫通孔であって、前記呼吸弁が設けられる呼吸弁取り付け孔と、前記第1ハウジング部の外周側に設けられた平面部を備え、前記平面部は、前記呼吸弁取り付け孔の1対の端部のうち前記第1ハウジング部の外側の端部の開口の全周を包囲するように形成されている。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記トルク検出部材挿入工程および前記呼吸弁組付け工程よりも前に行われる突起部当接面部形成工程を有し、前記第1ハウジング部は、前記第1ハウジング部の内側と外側とを連通する貫通孔であって、前記呼吸弁が設けられる呼吸弁取り付け孔を備え、前記呼吸弁は、弾性材料で形成された弾性係合部を備え、前記弾性係合部は、弾性変形部と、前記弾性変形部に設けられた突起部を備え、前記弾性変形部は、前記呼吸弁取り付け孔への前記呼吸弁の挿入方向に対する直交断面において、前記呼吸弁取り付け孔の内側方向へ弾性変形可能であって、前記突起部は、前記弾性変形部が前記呼吸弁取り付け孔の内周面と当接する状態において、前記第1ハウジング部の内周側の面と当接することにより前記呼吸弁が前記呼吸弁取り付け孔から抜ける方向へ移動するのを規制するように形成され、前記第1ハウジング部は、前記突起部当接面部形成工程で形成され、前記第1ハウジング部の内周側に設けられ、前記呼吸弁の前記突起部が当接する平面部であって、前記第1ハウジング部側開口部まで形成されている突起部当接面部を有している。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記突起部当接面部形成工程は、前記第1ハウジング部側開口部側から機械加工によって前記突起部当接面部を形成する工程である。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、型成形によって形成され、前記第1ハウジング部の内径である前記回転軸線と前記第1ハウジング部の内周面の最短距離は、前記トルク検出部材が設けられる領域よりも前記呼吸弁が設けられる領域の方が大きく、前記第1ハウジング部の前記回転軸線の方向において前記呼吸弁が設けられる領域における前記第1ハウジング部の内周面は、前記突起部当接面部以外の部分が前記型成形によって形成された鋳肌面を有している。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記第1ハウジング部は、型成形によって形成され、前記突起部当接面部形成工程は、前記第1ハウジング部の型成形と同時に第1ハウジング部形成用の型によって前記突起部当接面部を形成する工程である。
さらに別の好ましい態様では、前記パワーステアリング装置の製造方法の態様のいずれかにおいて、前記軸受はボールベアリングであって、前記第1ハウジング部は、前記第1ハウジング部の内周側であって前記第1ハウジング部側開口部側に設けられ、前記ボールベアリングのアウタレースの外周面が当接する円弧面であるアウタレース当接面部を備え、前記アウタレース当接面部は、前記回転軸線に対する径方向において、前記突起部当接面部とオーバーラップするように設けられている。