以下に、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材及びこれを用いたプレキャストコンクリート部材の接合方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、同一の構成要素については、他の形態を採り得るものについても同一の記号を用い、重複する説明や構成乃至表示については、一部省略する場合がある。また、図面に示す各構成要素の大きさや比率などは、説明の便宜のために実際のものとは異なる場合が有る。
本発明は、図1及び図2に示したように、例えば、耐震壁のような第1のPCa部材100に予め第1の管状部材110を設け、前記管状部材110の内部に移動可能に鉄筋900を組み込んでおくことで、前記第1のPCa部材100のうち鉄筋を組み込んだものと組み込まないもの等との相互間を接合する事が可能であり、これと併せて、前記第1のPCa部材100と接合する他のPCa部材(第2のPCa部材200)を構成して、前記第2のPCa部材200と組み合わせて接合を行う事も可能である。
そのため、前記第2のPCa部材200は、前記第1のPCa部材100に組み込まれた鉄筋900を引き出すための第2の管状部材210からなる誘導路が設けられていて、前記第2の管状部材200に連通する鉄筋引出手段挿入孔213から鉄筋引出手段600を挿入して、前記第1のPCa部材100に組み込まれた鉄筋900を引き出して前記第1のPCa部材100と第2のPCa部材200の間に連通させてこれらの間を跨ぐように配置して、前記鉄筋900を前記第1のPCa部材100と第2のPCa部材200に固定するようになっている。
そこで、以下では、最初に、本発明による第1のPCa部材100及び第2のPCa部材200を構成する各構成要素について、順を追って説明する。
なお、ここで上記図1は、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材の例について概略を示す斜視図である。そして、上記図1では、本発明の接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材として、耐震壁の一部を例示した一部透視図を含む斜視図を示しているが、プレキャストコンクリート部材自体の詳細な構造は示さずに、本発明による管状部材110と、同じく管状部材210とからなる誘導路の部分と、管状部材110に取り付けられる鉄筋900のみを主に示している。また、図2は、上記図1に記載したような耐震壁に本発明の接合手段を設けた例を示したものであり、図2(A)は上記耐震壁の一部を正面から見た部分立面図、図2(B)は、上記耐震壁のうち、上記管状部材を埋め込んだ部分を上面から見た部分平面図であり、図2(C)は、上記図2(B)と同様の図であるが、管状部材に組み込んだ鉄筋を移動させた後の例を示した部分平面図である。なお、上記図2では、上記図1同様にプレキャストコンクリート部材自体の詳細な構造は示していない。また、上述の正面とは、接合部分である側面に隣接する垂直な面を便宜上正面と表現したものであり、耐震壁の場合では壁面が該当する。また、上記図1と図2では、本発明による管状部材と鉄筋はダブル配筋とした例を示しているが、配筋方法はこれに限らずシングル配筋等であっても構わない。
本発明の構成要素のうち、第1及び第2のプレキャストコンクリート(PCa)部材(100、200)は、後述する第3及び第4のPCa部材(300,400)を含め、予めPCa工場などで製造される一般的なPCa部材を用いる事が可能であり、その種類について特に限定を設けるものではない。そのため、図1又は図2に例示したような建築物の(耐震)壁の他、床スラブ、バルコニー等に用いられるものであっても、或いは、柱や梁などに用いられるものであっても構わない。但し、本発明では、前記PCa部材の製造の際に、管状部材110等或いは後述するような鉄筋継手310等を埋め込む必要があるため、前記PCa部材は、前記管状部材或いは鉄筋継手を埋め込むことが可能であり、且つ、これにより必要な強度を低下させないような構造を有していることが必要である。
また、前記第1のPCa部材100に埋め込む管状部材110(後述する第2のPCa部材との関係では第1の管状部材となるため、第1の管状部材と言う場合もある)は、後述する図3に示すように、一端が蓋体119により封止され、他端が解放された、内部が中空の管状になっている。
そして、前記第1の管状部材110は、その内側に鉄筋900を組み込むものであり、前記組み込まれた鉄筋900は、前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200とを接合する場合には、これを引出し可能に収納されるようになっている。
また、このような前記第1の管状部材100への鉄筋900の組み込みは、前記第1のPCa部材100を、例えば、PCa工場で製造する際に組み込むものであっても、或いは、建設現場などで前記PCa部材相互を接合する前に組み込むものであっても構わない。
また、前記第1の管状部材110の内側部分は、組み込まれた鉄筋900を移動して、前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200との間に連通させてまたがるように配置した後には、モルタルなどのグラウトが充填されることになる。
そのため、前記第1の管状部材110は上記のように、鉄筋900の組み込みと引出しが円滑に可能な円管状の部材であり、後にグラウトの充填に阻害を生じないものであれば、特に限定を設けるものではなく、例えば、シース管などを用いる事も可能である。
また、前記第1の管状部材110には、予め、後に充填するグラウトの流動を妨げないような形態を考慮した上で、図示しない円環状の突起を前記管状部材110を構成する円管の管軸に沿った内面に複数形成したり、或いは、前記管軸の内面に沿って螺旋状の突起を設けたりしたものでも良い。そのため、上記のような突起を前記第1の管状部材110の内面に形成した場合には、前記鉄筋900を予めPCa工場などで組み込むような場合、その後、建築現場などへ輸送する際に、前記鉄筋900が外れたりすることを防止する為に、予め、前記第1の管状部材110の内面に形成された突起と鉄筋900との摩擦等を考慮して、一定の保持力が生ずるように調整しておくことも可能である。
また、図3に示すように、前記第1の管状部材110の内側にはバーガイド800を適宜設けることも可能である。前記バーガイド800は、例えば、図4に示すように、前記管状部材110の内周方向に沿っては等間隔に複数、管軸方向に沿っては連続的又は断続的に設けることが可能であり、合成樹脂や金属板などから形成することが可能である。なお、ここで、上記図3は、本発明によりPCa部材に埋め込まれる管状部材の断面の一部(両端側の部分)の例を、中央部を省略して示したものである。また、上記図4は、バーガイド800の例を図示したものであり、図4(A)は上記バーガイド800を管軸方向から見た例を示した図であり、図4(B)は図4(A)のX−X部分を管軸に垂直な方向から見た例を示した断面図である。
そして、前記バーガイド800は、鉄筋900の組み込みと引き出しを容易にするように、鉄筋の動きを円滑にするものであり、これにより、建築現場で接合作業を行う前に管状部材110に鉄筋900を組み込む場合には、組み込み方向を調整して鉄筋900の挿入作業を容易とし、組み込まれた鉄筋900の引き出しの円滑化を図る事も可能である。
また、前記第1の管状部材110は、上記のように円管状の形態を有しているが、上記図1乃至4に示したように、その一端側は、前記第1のPCa部材100に埋め込まれて蓋体119により封止された封止端となっており、他の一端側は、前記第1のPCa部材100の側面に設けられ、前記鉄筋900の取り付けや引出しのために解放端として形成されている。そして、前記第1の管状部材100は、前記第1のPCa部材100が接合される側面対しては、垂直に複数が構成されるようになっている。そのため、前記第1のPCa部材100として、図1に表示したような耐震壁を用いる場合には、前記第1の管状部材110は、垂直に形成された接合面に対して水平方向に配置される。
また、上記第1の管状部材110の解放端が形成される前記第1のPCa部材100の側面は、図1、図2又は図5(A)に示したようなコッター100Cを形成する凹部のくぼみ部分でも良く、或いは、図示はしないが、上記のようにコッターを形成する凹部を有しない平坦な側面であっても良い。
そして、上記のようにコッターを形成する凹部のくぼみ内に、上記第1の管状部材110の解放端を設けた場合には、後述するように、他のPCa部材と接合を行う際に、当該他のPCa部材(例えば第2のPCa部材)にもコッター(例えば、第2のPCa部材の場合には200C)を設けておくことで、前記コッターにより形成される接合部間の間隔Dを、例えば80mm程度取ることが可能である。そのため、このような構成とした場合には、接合しようとするPCa部材に設けた鉄筋900を引き出す場合の視認性が良くなり、上記コッター(例えば、100Cと200C)の部分から手作業で前記鉄筋900を引き出すことも可能となり、前記コッター内にモルタル等のグラウトを充填する際に、前記鉄筋900を含む前記第1の管状部材110内にもグラウトを充填して、前記鉄筋900を接合するPCa部材間に固定することも可能である。なお、ここで、上記図5は、管状部材の解放端が形成されるPCa部材の側面の例を示したものであり、(A)はコッターを側面に形成した例を示した側断面図、(B)は(A)同様の場合に、後述するような鉄筋の解放端側寄りに係止部910を設けた例を示した側断面図である。
また、前記第1の管状部材110の長さについては特に限定を設けるものではなく、相互に接合しようとするPCa部材の種類や大きさ及び、接合に必要な鉄筋900の長さに応じて予め決定することが可能である。そのため、例えば、水平方向の長さが6メートル程度のPCa部材からなる耐震壁に使用する場合には、取り付ける鉄筋の長さを1.2メートルとした場合、第1の管状部材110の長さを少なくともこれと同等程度若しくはこれ以上の長さに決定することも可能である。但し、上記鉄筋900は、上記第1の管状部材110に取付けた後に、前記PCa部材(例えば、100と200)の接合に用いる際には、後述するように鉄筋引出手段600により引き出されることになる。そのため、上記鉄筋引出手段600の形態や機能に応じて、前記第1の管状部材110の長さと鉄筋900の長さとを調整し、上記鉄筋900の端部を解放端側からはみ出した構成としたり、解放端側と同一の面上にしたり、解放端側から内部に位置させることも可能である。
また、前記第1の管状部材には、上記図1乃至図3に示したように、モルタルなどのグラウトの注入口113と排出口115とを設けることも可能である。前記グラウトはモルタルなどを用いて、前記第1のPCa部材100に設けた前記第1の管状部材110から前記鉄筋900の一部を引き出して、前記第2のPCa部材200に連通させた後で、前記鉄筋900を前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200とに固定するものである。そのため、上記グラウトの注入は、上記のようにコッター100Cを介して、前記第1の管状部材110の解放端側から行っても良いが、例えば、上記図1乃至図3に示したように、前記第1の管状部材110の封止端側近傍の側面側に前記第1のPCa部材100の正面側に連通する注入口113を設け、前記第1の管状部材110の解放端側近傍に前記第1のPCa部材の正面側に連通する排出口115を設けて、上記グラウトの注入と、余分なグラウトの排出を行う構成を採用することも可能である。なお、ここで、PCa部材の正面側とは、前記PCa部材の接合面側と垂直な面のいずれか一方の面のことを示すための、便宜上の呼称として用いており、例えば、前記PCa部材が耐震壁の場合には壁面側になる。
次に、上記本発明に用いる鉄筋900は、特に限定を設けるものではないが、本発明では、異形鉄筋のように表面にリブ乃至節などの凹凸を備えたものが望ましい。すなわち、これらの凹凸による突起が形成されている事で、上記のように管状部材110の内面で上記鉄筋900とグラウトとの接触面積が向上することから、上記のような接合を行う際にモルタルなどの定着性が向上するためである。
また、前記鉄筋900の長さは、前記鉄筋900を組み込む前記第1の管状部材110の長さにもよるが、上述のように鉄筋引出手段600の形態や機能に応じて把持が可能な部分を残しつつ、前記第1の管状部材110の内部に収まることを前提として、予め接合するPCa部材の寸法や部材間の隙間などを考慮して定めることが出来る。また、前記鉄筋900の引き出し量は、接合する前記PCa部材に応じて建設現場で調整することも可能であるため、現場の状況や必要に応じて、前記鉄筋を任意の長さだけ引き出すことが可能である。
また、前記鉄筋900の太さは特に限定を設けるものではなく前記管状部材110の内部収まるものであれば良いが、前記鉄筋900は、上述のように前記管状110の内部に納められた状態で、前記管状部材110と前記鉄筋900との間にグラウトを充填するものであるため、前記グラウトの流動を妨げない程度の太さを考慮することが必要である。なお、上述のように、前記鉄筋900を予めPCa工場などで組み込む場合には、前記管状部材110内部と適当な摩擦を生ずる程度の太さを考慮して用いる事が可能である。更に、後述するシール用管状部材700が用いられる場合には、前記鉄筋900と前記管状部材110等との間に、当該シール用管状部材700を収めて移動できる程度の太さが選択される。
また、前記鉄筋900については、既存の異形鉄筋等をそのまま使用することも可能であるが、例えば、上記図5(B)に示したように、前記鉄筋900の一端にリング状等の係止部910などを設けて、前記係止部910が前記第1の管状部材110に組み込んだ場合に解放端側になるように配置し、前記鉄筋900を引き出す作業の際の利便性を高めておくことも可能である。
上記のように構成される接合手段を有する第1のPCa部材100によれば、前記第1のPCa部材100に予め第1の管状部材110を埋め込んでおき、その中に移動可能に鉄筋900を組み込むことが可能である。そのため、前記第1のPCa部材100を他のPCa部材に接合する場合には、例えば、同様な第1の管状部材110を埋め込んでいるが鉄筋を組み込んでいない他の第1のPCa部材100に接合することも可能であり、その場合には上記のようなコッター100Cを構成する凹部による接合部間の間隔Dを利用して手作業で前記鉄筋900を両PCa部材間に連通し、その後、前記鉄筋900を両PCa部材それぞれに固定することが可能である。そのため、本発明では、接合するPCa部材と部材の側面(鉛直接合部)の隙間、すなわち力を伝達可能とするコッターと目地幅で、人間の手で移動できる空間のある隙間を利用して、鉄筋、シール用管状部材等を引き出すことも可能である。
また、前記第1のPCa部材100と組み合わせて使用する後述する第2のPCa部材200を用いた場合には、更に容易に前記鉄筋900を引出し、PCa部材相互間の接合を図ることも可能である。
また、上述のように第1のPCa部材100に前記鉄筋900を組み込む際には、図6及び図7に示すように、前記管状部材110の内側の前記鉄筋900の引き出し側に、予め、前記鉄筋900の軸方向の周囲を取り囲んで、上記接合するPCa部材の接合部の間で前記鉄筋900の周りをシールするシール用管状部材700を、一緒に組み込んでおくことも可能である。なお、ここで図6は上記シール用管状部材700を前記管状部材110の解放端側に取付けた例を示す断面図である。また、図7は、このようなシール用管状部材700を用いる例を、前記第1のPCa部材100の側面側で見た例を示すものであり、図7(A)は、前記管状部材110の解放端側に、鉄筋900とその外周を軸方向と平行に囲む前記シール用管状部材700とを配置した場合の側断面図であり、図7(B)は、前記鉄筋900を引き出して、前記シール用管状部材700の端面周囲と前記管状部材110の解放端側との接合部730をシールした例を示す側断面図である。
そして、前記シール用管状部材700は、シース管等の円筒状の部材が用いられ、前記第1のPCa部材100を他のPCa部材(例えば、後述する第2のPCa部材200)に接合する際に、前記管状部材110から前記鉄筋900と共に引き出して、前記鉄筋と併せて前記シール用管状部材700を、前記鉄筋900の周りで前記他のPCa部材との間に連通させて接合を行うように使用される。
そのため、上記シール用管状部材700の外径は、上記管状部材110の内側で、前記鉄筋900と併せて移動可能なものにすると共に、その内径は前記鉄筋900と前記シール用管状部材700との間をグラウトが通流出来るくらいの間隔が確保できる程度に構成される。したがって、上記シール用管状部材700の外径は、上記管状部材110の内側にほぼ接触する程度にして、上記管状部材110へ組み込みと引き出しができれば良いように構成されている。そしてまた、こうして引き出された前記シール用管状部材700は、例えば、上記図7(B)の例で示すように、前記接合部間で、前記鉄筋900の軸方向の周囲を取り囲むと同時に、前記第1のPCa部材100と接合しようとする前記他の第1のPCa部材100や後述の第2のPCa部材の管状部材200等とを上述のように連通させた上で、前記接合しようとするそれぞれのPCa部材の側面で、前記シール用管状部材700と前記管状部材200との接合部730を接着剤等でシールして用いる事が可能である。
そのため、このようなシール用管状部材700を用いた場合には、上述のように、接合しようとする2つのPCa部材の接合部間にコッター100Cなどの隙間が形成されている場合であっても、前記接合しようとする2つのPCa部材のそれぞれの管状部材110等を外部から密閉して連通させることが可能であり、これにより前記管状部材110等の内部にグラウトを充填する場合には、前記接合しようとする2つのPCa部材間で漏れの無いように充填を行って前記鉄筋900を固定する事が可能である。
次に、前記第2のPCa部材200について説明する。前記第2のPCa部材200は基本的には、予めPCa工場などで製造される一般的なPCa部材を用いる事が出来る点などで、前記第1のPCa部材100と同様である。但し、前記第2のPCa部材200は、前記第1のPCa部材100と相互に接合するための構成を有するものであり、使用される管状部材210の一部の形態及び機能も、前記第1の管状部材110とは異なる第2の管状部材として構成している点で相異している。
すなわち、図1及び図2に示したように、前記第2のPCa部材200は、前記第1のPCa部材100の前記第1の管状部材110から前記鉄筋900を引き出すための誘導路210を備えたPCa部材であって、前記第2のPCa部材200は前記第1のPCa部材100の側面側に接合される。そのため、前記第2のPCa部材200では、前記第1のPCa部材100との接合位置において、前記第2のPCa部材200の前記第1のPCa部材100が接合される側面側の、前記第1のPCa部材100に設けた第1の管状部材110による解放端に対向する位置に第2の管状部材210からなる誘導路の出口が設けられている。
そして、前記第2の管状部材210は、前記第1の管状部材110と同様にシース管などの円管状の部材を用いることが出来るが、前記誘導路として用いられることにより、屈曲して使用されている。そのため、前記第2の管状部材210は、前記第1の管状部材110から引き出した鉄筋900の一部を収納するものであることから、前記第2のPCa部材200の側面から垂直に形成されてそのまま直線状に延伸しているが、前記第2の管状部材210からなる誘導路の出口側とは異なる他の一方の開口端側は、途中で前記第2の管状部材210が屈曲した形態を有することにより、後述する鉄筋引出手段600の挿入口213として、前記第2のPCa部材200の正面側に形成されている。
また、前記第2の管状部材210の長さは特に限定を設けるものではないが、前記第2の管状部材210は、上述のように、前記第1のPCa部材200の前記第1の管状部材110から前記鉄筋900の一部を引き出して、上記第2の管状部材210の内部に収納し、前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200とに連通して接合を行うものである。そのため、引き出されて連通することになる前記鉄筋900の長さが、前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200とで同等程度になることが望ましいため、前記鉄筋900を前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200とにそれぞれ固定する場合の長さ及び、前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200との接合部の接面間の間隔(例えば、コッター(100C、200C)間の幅など)を考慮して定められる。
また、前記第2の管状部材210は、鉄筋900を引き出して移動した後は、上述したグラウトを充填して固定するためのグラウトの挿入口213と排出口215を備えることも可能であり、本発明の上記実施形態の場合には、上記グラウトの挿入口213は、上記鉄筋引出手段600の挿入口213をそのまま用いる事が可能である。
次に、前記第2の管状部材210の挿入口213から挿入される鉄筋引出手段について、図8を用いて説明する。ここで、図8は、鉄筋引出手段600の概略の構成を示した平面図である。前記鉄筋引出手段600は、特に限定を設けるものではなく、一般的に市販されているハンドクリッパやハンドピッカ等を使用することが可能である。そして、前記ハンドクリッパ等は、例えば、図8に鉄筋引出手段600としてハンドクリッパの例を示したように、操作部610と、前記操作部610に接続されたフレキシブルシャフト630と、前記フレキシブルシャフト630の操作部側とは別の端部側に設けられた把持部650とからなっている。そして、使用者は前記ハンドクリッパの前記操作部610を持って、前記フレキシブルシャフト630先端の把持部650を把持対象まで誘導し、前記把持部650を把持対象まで誘導したら把持対象を前記把持部650で把持して前記ハンドクリッパ全体を引き寄せて把持対象を引き出すことが可能になっている。また、上記把持部650は、マジックハンド様のものを有するマニピュレータ型のものもあるが、先端が磁石型になっているものもあり、前記鉄筋900に相当程度近接させることで、前記鉄筋900を引き出して接触し、接触した状態で前記鉄筋900を引き出すことも可能である。そのため、前記ハンドクリッパ等の把持部がマニピュレータ型の場合には、前記第1の管状部材110の解放端側からはみ出した鉄筋900を把持することが可能であり、前記ハンドクリッパ等の把持部が磁石型の場合には、前記鉄筋900が前記第1の管状部材110等の解放端側から奥に位置する場合でも引き出すことが可能である。
以上のように、前記第2のPCa部材200によれば、前記第1のPCa部材100のように構成された接合手段を有するPCa部材と、前記第2のPCa部材200との接合を図9に示すようなフローチャートに記載した手順により、極めて容易に行うことが可能である。ここで、図9は、第1のPCa部材100と第2のPCa部材200とを用いた場合の相互の接合手順を示すフローチャートである。
すなわち、最初に、前記第1のPCa部材100の第1の管状部材110内に、前記鉄筋900を上述のように移動可能に組み込んでおく(ステップS10)。この際、上記鉄筋900は、上述のように、予めPCa部材の製造工場で組み込んだものであっても良いし、建築現場でPCa部材の相互の接合を行う前に組み込んだものであっても良い。そして、次に、前記第1のPCa部材100の側面と前記第2のPCa部材200の側面とを当接する(ステップS20)。ここで、当接する前記第1のPCa部材100の側面は、前記第1の管状部材110の解放端が設けられた側の側面であり、前記第2のPCa部材200の側面は、前記第2の管状部材110による誘導路の出口側が設けられた側であって、前記解放端と前記出口側とは相互に対向するような位置に予め形成し配置することが必要である。なお、上記側面は上述のようにコッター(100C、200C)を構成する凹部が形成されたものでも良い。
上記のように第1のPCa100と第2のPCa部材200の配置を行ったら、次に、前記第2のPCa部材200の鉄筋引出手段挿入口(他の一方の開口部)213から前記鉄筋引出手段600を挿入して前記鉄筋900の一部を前記第2のPCa部材200の誘導路210内に引き出し、前記鉄筋900が前記第1のPCa部材100と前記第2のPCa部材200との間を跨るように配置する(ステップS30)。そのため、このように前記鉄筋900を、前記第1のPCa部材100の第1の管状部材110と前記第2のPCa部材200の第2の管状部材210との間を跨るように配置することにより、前記鉄筋900を介して前記第1の管状部材110と第2の管状部材210とが接続可能な状態になっている。そして、前記鉄筋900の前記第1の管状部材110からの引き出し量は、任意に設定可能であるが、前記鉄筋900の両端側に係る保持力を同様にする観点からは、前記第2のPCa部材200の第2の管状部材210内部に引き出された長さと、引き出されたことにより前記第1のPCa部材100の前記第1の管状部材110の内部に残存する長さが同一であることが望ましい。
次に、上記のような配置が終了したら、前記第1のPCa部材100の第1の管状部材110と前記第2のPCa部材200の第2の管状部材210とにモルタル等のグラウトを充填する(ステップS40)。そのため、上記グラウトの注入と、その後の固化により、前記鉄筋900を前記第1の管状部材110と前記第2の管状部材110とに安定的に保持することが可能である。なお、この際、上述のように接合部分にコッター(100C,200C)を形成している場合には、前記コッター(100C,200C)部分にも併せてグラウトを充填することにより、前記接合部分の強度を更に一層強化することも可能である。
以上のように、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材及びこれを用いたプレキャストコンクリート部材の接合方法によれば、出来る限り後打ちの現場コンクリートを無くしフルプレキャスト化を図りつつ、建築物の壁や床などの壁式(耐震壁)構造について、PCa部材の側面から予め鉄筋を突出させず、且つ、比較的簡便な構造を用いて、PCa部材の接合を容易かつ確実に行うことが可能である。
なお、上記の実施形態では、PCa部材として耐震壁を用いているが、上述のように本発明が用いられるPCa部材は、これに限らず、柱、梁、床などに用いる事も可能である。そのため、例えば、図10に示すように、PCa床板相互の接合に用いる事も可能である。なお、ここで上記図10は、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材を床板の接合に用いた例について、接合部の周辺領域を中心に示す図であり、図10(A)は鉄筋900を移動する前の状態を示す側断面図であり、図10(B)は鉄筋900を移動した後の状態を示す側断面図である。また、図面中では、上方が前記床板の上面を表している。
上記図10に示す例では、床板に使用されるPCa部材は、上述した第1のPCa部材100及び第2のPCa部材200と基本的には同様の構造を有しており、同図中の100Bが第1のPCa部材100に相当し、200Bが第2のPCa部材200に相当しているが、接合部分の側面部の形態が異なっている。(なお、ここでは、便宜的に、100Bを第1のPCa部材100Bと呼称し、200Bを第2のPCa部材200Bと呼称する。)
すなわち、上記接合部分の側面部には上記PCa床板の上下方向に段差が設けてあり、下側の段は上記2つのPCa床板(100B,200B)間で相互に当接して当接面ASを形成しているが、上側の段は、前記当接面ASから後退して前記PCa床板間に空間が設けてあり、前記空間に面して上記の段の側面が垂直に形成され、前記側面に前記第1のPCa部材100Bの開口部と前記第2のPCa部材200Bの開口部が形成されている。なお、前記上側の段に形成される前記PCa床板間の空間は、前記PCa部材全体の大きさにもよるが、例えば、80mm程度に採ることも可能である。
そして、上記のようなPCa床板(100B、200B)の相互の接合を行う場合には、前記第1のPCa部材100Bの管状部材110から鉄筋900を引き出して前記第2のPCa部材200Bの管状部材210内へ前記鉄筋の一部を挿入し、前記鉄筋900が前記第1のPCa部材100Bの管状部材110とBBと前記第2のPCa部材200Bの管状部材210との間に跨るように配置して、上記それぞれの管状部材内(110,210)と上記接合部の間に、グラウトの注入口と排出口を利用してモルタルなどのグラウトの充填を行う。なお、上述の例では、グラウトの注入口と排出口は、相互に、いずれの用途にも利用可能であり、例えば、上記グラウトの注入口213は排出口215として利用することも可能である。
また、上記のようなPCa床板(100B、200B)の相互の接合を行う際には、図11に示すように、上述したようなシール用管状部材700を用いる事も可能である。ここで、前記図11は、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材を床板の接合に用いた例について、シール用管状部材700を用いた例を、接合部の周辺領域を中心に示す図であり、図11(A)は鉄筋900とシール用管状部材700を移動する前の状態を示す側断面図であり、図11(B)は鉄筋900とシール用管状部材700を移動した後の状態を示す側断面図である。
そのため、図11(A)に示したように、前記シール用管状部材700を用いる場合には、前記第1のPCa部材100Bの管状部材110に鉄筋900を組み込むなどの際に、前記管状部材110の内側の前記鉄筋900の引き出し側に、予め、前記鉄筋900の軸方向の周囲を取り囲んで、上記接合するPCa部材の接合部の間で前記鉄筋900の周りをシールするシール用管状部材700を、一緒に組み込んでおく。
そのため、上記シール用管状部材700の外径は、上述した図6,7に関して説明したと同様に、上記管状部材110の内側で、前記鉄筋900と併せて移動可能なものにすると共に、その内径は前記鉄筋900と前記シール用管状部材700との間をグラウトが通流出来るくらいの間隔が確保できる程度に構成される。したがって、上記シール用管状部材700の外径は、上記管状部材110の内側にほぼ接触する程度にして、上記管状部材110へ組み込みと引き出しができれば良いように構成されている。
そして、前記接合の際には、前記管状部材110から、前記シール用管状部材700を前記鉄筋900と共に引き出して、図11(B)に示したように、前記接合部間で、前記鉄筋900の軸方向の周囲を取り囲むと同時に、前記第1のPCa部材100Bと接合しようとする前記第2のPCa部材200の管状部材210とを連通させた上で、前記接合しようとするそれぞれのPCa部材(100B、200B)の上側の段の側面で、前記シール用管状部材700の端部の周囲と前記管状部材(110,210)との接合部730を接着剤等でシールして密閉し、前記シール用管状部材700と前記接合しようとするそれぞれの前記管状部材(110,210)の内側だけにグラウトを充填して前記鉄筋900の固定を図る事が可能である。
そして、上記のようなPCa床板(100B,200B)をハーフPCa床スラブとして使用する場合には、図12に示すように、接合した前記PCa床板(100B,200B)上側に別途鉄筋等を組んで後打ちのコンクリートをなどで全体を固定することになる。ここで、上記図12は、図11(B)に示すようなPCa床板(100B,200B)の接合を行った後に、前記PCa床板(100B,200B)の上面にコンクリートを打設する例を示した側断面図である。
次に、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材及びこれを用いたプレキャストコンクリート部材の接合方法の、更に異なる実施形態の例について図13等を参照しつつ説明する。
ここで上記図13は本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材及びこれを用いたプレキャストコンクリート部材の接合方法の異なる例を図2(B)、(C)の場合と同様に示した部分平面図である。
上記図13に表示した実施形態の例は、本発明におけるプレキャストコンクリート部材の接合手段として、上述した例のように、前記第1のプレキャストコンクリート部材100に設けた管状部材110に移動可能に鉄筋900を取り付けるのではなく、プレキャストコンクリート部材に設けた鉄筋継手の内側に鉄筋を移動可能に設けた点が異なっている。
そのため、上記実施形態では、例えば、上記図13で示したように、第3のPCa部材300に予め鉄筋継手(後述する第4のPCa部材との関係では第1の鉄筋継手となるため、第1の鉄筋継手と言う場合もある)310を設け、前記第1の鉄筋継手310の内部に移動可能に鉄筋900を組み込んでおき、他のPCa部材との接合を行う場合には、前記鉄筋900の一部を当該他のPCa部材の内部に移動し、前記鉄筋900が接合しようとするPCa部材の双方に跨るようにして固定し、前記PCa部材の双方を相互に接合することが可能である。
そして、上記のような第3のPCa部材300と接合するPCa部材は、上述した第1のPCa部材100や、上述した図23に示したような、既存の鉄筋継手2410を内部に備えるPCa部材2400でも良いし、後述するような鉄筋引出口417を備える第4のPCa部材400でも良い。
そこで、以下では、本発明による上記第3のPCa部材300と第4のPCa部材400について、順を追って説明する。なお、本発明による上記第3のPCa部材300と第4のPCa部材400は、上述のように管状部材が鉄筋継手(310,410)に置き換えられている点以外は、上記第1のPCa部材100と第2のPCa部材200と共通している部分が多いため、相違点を中心に説明する。
上記のうち、第3のPCa部材300は、上述した第1のPCa部材100で説明したように、壁や梁、柱など特に限定されないものであるが、本発明の実施形態の場合には、後述するように鉄筋継手310を埋め込むものであるため、前記鉄筋継手310を埋め込んでも強度を低下させない構造を有することが必要である。
また、前記第3のPCa部材300に予め埋め込むことにより備えられる鉄筋継手310は、例えば、略円筒形状のスリーブ継手と言われるものを使用することが可能である。
そして、本発明の上記実施形態で用いる前記スリーブ継手は、例えば、前記スリーブの内側に、接続しようとする鉄筋900を配置してノロ止めシールNSなどを設けた後に、グラウトを前記スリーブの内側に充填して前記鉄筋900を定着するグラウト充填式継手ともいわれるものである。
また、前記グラウト充填式継手には、多種類の形式が存在するが、本発明では特に限定を設けるものではなく、例えば、図14に示すような、ねじ式スリーブ継手3000等を延伸して用いるものであっても良い。そして、前記ねじ式スリーブ継手3000は、例えば、鉄筋継手を構成する円筒形状のスリーブ3100の一端側の内側にねじ3110が切ってあり、他の一端側に鉄筋900を挿入する形式になっていて、グラウトの注入口3130と排出口3150も設けられているものなどがある。そのため、これを用いる場合には、前記プレキャスト部材300自体を構成する鉄筋900Pを前記一端側の内側にねじが切ってある部分3110に挿入した上で、プレキャスト部材300を形成し、その後に、前記スリーブ3100の他端側に、接合手段に用いる鉄筋900を組み込むことになる。
図13に戻って説明を続けると、前記鉄筋継手310は、上記のように、予め、前記第3のPCa部材300に埋め込んでおくが、その埋め込みの際には、前記第3のPCa部材300を構成する鉄筋900Pが前記鉄筋継手310を構成するスリーブの一端側から前記鉄筋継手310の内側の適当な位置まで延伸するように配置して固定しておき、後に前記鉄筋継手310に移動可能に組み込まれる鉄筋900を固定した際に、機能的な一体性が図られるように構成される。
なお、上記鉄筋継手310を埋め込んでおく場合であって、前記第3のPCa部材300として柱や梁を用いる場合には、前記第3のPCa部材300の寸法に対して占める前記鉄筋継手310の長さが過大になる可能性がある。しかし、その場合には、例えば、図15に示したように、前記第1の鉄筋継手310等に予め接続される前記第3のPCa部材300等を構成する鉄筋900Pを曲折させて、前記第3のPCa部材300等を構成しておくことも可能である。なお、ここで図15は、PCa部材に鉄筋継手を埋め込む際の前記PCa部材自体の鉄筋900Pの構成例を示す断面図である。
また、前記鉄筋継手310のうち、前記第3のPCa部材300の部材内に埋め込まれていない開口部の側は、前記第3のPCa部材300が他のPCa部材と接合を行う側面に、前記側面に対して垂直方向に設けられており、前記第3のPCa部材300の側面は、前記第1のPCa部材の場合と同様にコッターが設けられていても良い。
また、前記鉄筋継手310には、前記第1のPCa部材100と同様にモルタルなどのグラウトの注入口313と排出口315とを設けることも可能である。そして、その場合には、例えば、前記鉄筋継手310のうち、前記第3のPCa部材300からの鉄筋900Pが固定されている側に、前記鉄筋継手310の側面から前記第3のPCa部材300の正面に連通するグラウト排出口315を設け、前記鉄筋継手310のうち前記第3のPCa部材300の接合面側の解放端側にグラウトの注入口313を設ける構成としても良い。
なお、前記鉄筋継手310の内側には、(図示はしないが、)前記第1の管状部材110の場合と同様に、円環状の突起や螺旋状の突起、乃至は、前記第鉄筋継手310内に移動可能に組み込まれる鉄筋900の円滑な移動のためのバーガイド800等を設けることも可能である。
次に、前記鉄筋継手310内に設けられる鉄筋900は、前記第1のPCa部材110の場合と同様に、その長さは、前記鉄筋継手310の内部に組み込まれた場合に、前記第3のPCa部材300の接合側の側面から大きく突出しないように、前記鉄筋継手310の内部に収まるような長さに形成され、それと同時に、接合するPCa部材相互間の間隔やPCa部材全体の寸法を考慮して定められる。また、前記鉄筋900は、上述したと同様に既存の異形鉄筋などをそのまま用いる事が可能であるが、前記鉄筋900のうち端部に、例えばリング状等の係止部910を設けることも可能であり、これを利用して前記鉄筋900の引出しを行うことも可能である。また、当然ながら、前記鉄筋900の周囲には前記鉄筋継手310内で、後にグラウトが充填されるため、前記鉄筋継手310内で前記グラウトを通流出来る程度の外径を考慮することが必要である。
上記のように構成される第3のPCa部材300によれば、前記第3のPCa部材300に予め前記鉄筋継手310を埋め込んでおき、その中に移動可能に鉄筋900を組み込むことが可能である。
そのため、前記第3のPCa部材300を他のPCa部材に接合する場合には、例えば、図23に示したような、鉄筋継手2410が埋め込んである既存のプレキャスト部材2400や、第1の管状部材110を埋め込んでいるが鉄筋900を組み込んでいない上述したような他の第1のPCa部材100等に接合することも可能である。そして、その場合には上記のようなコッター100C等を構成する凹部を利用して、手作業で、前記鉄筋900を、接合しようとする上記のようなPCa部材(2400等)の間に連通し、その後、前記鉄筋900をこれら接合しようとするPCa部材のそれぞれに固定することが可能である。
また、前記第3のPCa部材300と組み合わせて使用する後述する第4のPCa部材400を用いた場合には、更に容易に前記鉄筋900を引き出し、PCa部材相互間の接合を図ることも可能である。
また、上記のように第3のPCa部材300に前記鉄筋900を組み込む際には、上述した第1のPCa部材100に前記鉄筋900を組み込む場合と同様に、図16(A)及び図17に示したように、前記第1の鉄筋継手310を構成するスリーブの内側の前記鉄筋900の引き出し側に、予め、前記鉄筋900の軸方向の周囲を取り囲んで、上記接合するPCa部材の接合部の間で前記鉄筋900の周りをシールするシール用管状部材700を、一緒に取り付けておくことも可能である。
ここで、上記図16は、前記シール用管状部材700を用いて前記第3のPCa部材300と他のPCa部材との接合する例を示した図であり、図16(A)は、前記第1の鉄筋継手310を構成するスリーブの内側の前記鉄筋900の引き出し側に、予め、前記鉄筋900の軸方向の周囲を取り囲んで、上記接合するPCa部材の接合部の間で前記鉄筋900の周りをシールするシール用管状部材700を設けた例を示す側断面図である。また、図16(B)は前記第3のPCa部材300に接合するPCa部材の例として、図23(B)に示すような鉄筋継手2410が埋め込んである既存のプレキャスト部材2400を示す側断面図であり、図16(C)は、上記の構成により第3のPCa部材300と前記既存のプレキャスト部材2400とを接合した状態を示す側断面図である。また、上記図17は、上記図16に対応する構成の斜視図を示したものであり、図17(A)は、接合前の前記第3のPCa部材300と他のPCa部材のそれぞれの状態を示す斜視図であり、図17(B)は、接合後の前記第3のPCa部材300と他のPCa部材との状態を示す斜視図である。なお、上記図17(B)では、接合部730における接着剤等によるシールの状態は省略して表示している。
そして、前記シール用管状部材700は、上記第1のPCa部材の接合について説明したと同様に、シース管等の円筒状の部材が用いる事が可能であり、前記第3のPCa部材を他のPCa部材に接合する際に、前記第1の鉄筋継手から前記鉄筋と共に引き出して使用される。こうして引き出された前記シール用管状部材700は、前記接合部間で、前記鉄筋の軸方向の周囲を取り囲むと同時に、前記第3のPCa部材300と接合しようとする前記他の第1のPCa部材100の管状部材110や、上記図16(B)に例示したような既存のPCa部材2400に埋め込まれている鉄筋継手2410や、又は、後述する第4のPCa部材400の第2の鉄筋継手410等とを連通させた上で、前記接合しようとするそれぞれのPCa部材の側面で、前記シール用管状部材700と前記各鉄筋継手との接合部730を接着剤等でシールして用いる事が可能である。
そのため、このようなシール用管状部材700を用いた場合には、上述の第1のPCa部材100に用いた場合と同様に、接合しようとする前記第3のPCa部材と他のPCa部材の接合部間にコッター100Cなどの隙間が形成されている場合であっても、前記接合しようとする前記第3のPCa部材300と他のPCa部材のそれぞれの鉄筋継手310や管状部材110等を外部から密閉して連通させることが可能である。そのため、こうした構造を採用することにより、前記鉄筋継手310や管状部材110内にグラウトを充填する場合には、前記接合しようとする前記第3のPCa部材300と他のPCa部材との間で漏れの無いように充填を行って前記鉄筋900を固定する事が可能である。そして、上記の例では、例えば、グラウトの注入を前記第3のPCa部材300のグラウト注入口313を利用して行い、既存のPCa部材2400のグラウト排出口2415を利用して、余分なグラウトの排出を行うことも可能であり、その場合には、上記図16で示したように、既存のPCa部材2400のグラウト注入口を省略して構成することも可能である。
次に、前記第4のPCa部材400について説明する。前記第4のPCa部材400は、図13(B)、(C)に示すように、前記第2のPCa200部材等と同様に、鉄筋を引き出すための構成である誘導路を備えているが、前記第3のPCa部材300の第1の鉄筋継手310に組み込まれた鉄筋900を引き出すための経路として、上述の管状部材210等ではなく第2の鉄筋継手410を用いる点などで、異なっている。
これを更に具体的に言えば、図13(B)に示したように、前記第4のPCa部材400は、前記第3のPCa部材300の前記第1の鉄筋継手310から前記鉄筋900を引き出すための誘導路(第2の鉄筋継手)410を備えたPCa部材であって、前記第4のPCa部材400を用いる場合には、前記第3のPCa部材300に組み込まれる鉄筋900には、一端側に係止具910が形成されたものが使用される。これは前記第4のPCa部材400は、後述するように、ワイヤ挿通部417からワイヤを挿通して鉄筋900を引き出す構成を採用しているため、鉄筋900側にもこれに応じた構造を備えていることが望ましいためである。なお、上記係止具910の構成は特に限定を設けるものではないが、上術した図5(B)や図13(A)に表示した鉄筋900に例を示すように、異形鉄筋の末端に設けたリング状のもの等でも良い。
また、前記第4のPCa部材400は前記第3のPCa部材300の側面側に接合されるものである為、前記誘導路410は上記のように前記第2の鉄筋継手410により形成され、前記第2の鉄筋継手410の一端側は、前記第4のPCa部材400の前記第3のPCa部材300が接合される側面側の、前記第3のPCa部材300に設けた第1の鉄筋継手310の一端側(開口端側)と対向して設けられている。
また、前記第2の鉄筋継手310の他の一端側には、前記第3のPCa部材300の場合と同様に、前記第4のPCa部材400を構成する鉄筋900Pが予め埋め込まれる。すなわち、前記第2の鉄筋継手410は、予め、前記第4のPCa部材400に埋め込むことにより備えられるものであるが、その埋め込みの際には、前記第4のPCa部材400を構成する鉄筋900Pが前記第2の鉄筋継手410を構成するスリーブの一端側から前記第2の鉄筋継手410の内側の適当な位置まで延伸するように配置して固定しておき、後に前記第2の鉄筋継手410に移動可能に組み込まれる鉄筋900を固定した際に、これらが組み合わされることにより、機能的な一体性が図られるように構成される。
また、前記第2の鉄筋継手410の軸方向の中央部には、前記第2の鉄筋継手410の側面から前記第4のPCa部材400の正面側と連通する開口部であるワイヤ挿通部417が設けられている。前記ワイヤ挿通部417は、前記第4のPCa部材400の前記ワイヤ挿通部417から前記第2の鉄筋継手410の内部へワイヤを挿入して前記第3のPCa部材300の前記第1の鉄筋継手310に組み込まれた前記鉄筋900の係止部910に前記ワイヤを接続して、前記第2の鉄筋継手410の内部に前記鉄筋900を引き出すことを目的に形成される。なお、ここで、前記ワイヤには、前記鉄筋900に設けた係止部910と係合するフックなどの係止手段を設けても良い。
また、上記ワイヤ挿通部417は、上記のようにワイヤを挿入して前記第1の鉄筋継手310に組み込まれた前記鉄筋900を引き出すことを目的とするものであるから、その目的が達せられれば、上記ワイヤ挿通部417の形態は特に限定を設けるものではない。そのため、例えば、上記図13(B),(C)では、前記ワイヤ挿通部417は、前記第2の鉄筋継手410の側方から前記第4のPCa部材400の正面に垂直に延伸しているが、斜めに延伸したものでも良く、また、前記ワイヤ挿通部417のPCa部材400の正面にある開口部から内側が視認しやすいように前記開口部が内側に向けて漏斗状になっているものでも構わない。
以上のように、前記第4のPCa部材400によれば、前記第3のPCa部材300のように構成された接合手段を有するPCa部材と、前記第4のPCa部材400との接合を図18に示したフローチャートに記載した手順により、極めて容易に行うことが可能である。なお、ここで、図18は、前記第3のPCa部材300と前記第4のPCa部材400とを用いた場合の相互の接合手順を示すフローチャートである。
すなわち、最初に、前記第3のPCa部材300の第1の鉄筋継手310のスリーブ内に、前記鉄筋900を上述のように移動可能に組み込んでおく(ステップS100)。この際、上記鉄筋900は、一端側に係止部910が形成されたものを用いられるが、上記第1の鉄筋継手410への組み込みは、予めPCa部材の製造工場で行うものであっても良いし、建築現場でPCa部材の相互の接合を行う前に行うものであっても良い。
そして、次に、前記第3のPCa部材300の側面と前記第4のPCa部材400の側面とを当接する(ステップS200)。ここで、当接する前記第3のPCa部材300の側面は、前記第1の鉄筋継手310を構成するスリーブの解放端が設けられた側の側面であり、前記第4のPCa部材400の側面は、前記第2の鉄筋継手420により形成される誘導路の出口側が設けられた側であって、前記解放端と前記出口側とは相互に対向するような位置に予め形成し配置することが必要である。なお、上記側面は上述した第1のPCa部材100等と同様にコッターを構成する凹部が形成されたものでも良い。
上記のように第3のPCa部材300と第4のPCa部材400の配置を行ったら、次に、前記第4のPCa部材400のワイヤ挿入部417の開口端からワイヤを挿入し、前記ワイヤを前記鉄筋900の係止部910に引っかけて、前記鉄筋900の一部を前記第4のPCa部材400の第2の鉄筋継手410に引き出し、前記鉄筋900が前記第3のPCa部材300と前記第4のPCa部材400との間を跨るように配置する(ステップS300)。そのため、このように前記鉄筋900を、前記第3のPCa部材300の第1の鉄筋継手310と前記第4のPCa部材400の第2鉄筋継手410との間を跨るように配置することにより、前記鉄筋900を介して上記第1の鉄筋継手310と第2の鉄筋継手410とが接続可能な状態になっている。
次に、上記のような配置が終了したら、前記第3のPCa部材300の第1の鉄筋継手310と前記第4のPCa部材400の第2の鉄筋継手410とに、グラウトの注入口(413,313)を利用して、モルタル等のグラウトを充填する(ステップS400)。そのため、上記グラウトの注入と、その後の固化により、前記鉄筋900を前記第1の鉄筋継手310と前記第2の鉄筋継手410とに安定的に保持することが可能である。なお、この際上述のように接合部分にコッターを形成している場合には、前記コッター部分にも併せてグラウトを充填することにより、前記接合部分の強度を更に一層強化することも可能である。
以上のように、本発明による接合手段を備えたプレキャストコンクリート部材及びこれを用いたプレキャストコンクリート部材の接合方法によれば、出来る限り後打ちの現場コンクリートを無くしフルプレキャスト化を図りつつ、建築物の壁や床などの壁式(耐震壁)構造について、PCa部材の側面から予め鉄筋を突出させず、且つ、比較的簡便な構造を用いて、PCa部材の接合を容易かつ確実に行うことが可能である。
そして、本発明では、PCa壁―PCa壁或いはPCa柱―PCa壁の鉛直接合部において、例えば、上述の従来技術では、上下階のPCa壁の水平接合部の接合方法が、下階からの突出した鉄筋を機械式継手を利用して接合するため、上記の同じ階のPCa壁―PCa壁或いはPCa柱―PCa壁の鉛直接合部での接合方法は、鉄筋の重ね継手やフレア溶接のためのスペースが必要で、その部分は現場打ちのコンクリートに頼らざるを得なかったのに対し、本発明ではほぼフルプレキャスト化を可能としている。
また、本発明では、接合するPCa部材と部材の側面(鉛直接合部等)の隙間、すなわち力を伝達可能とするコッターと目地幅で、人間の手で移動できる空間のある隙間を利用して、鉄筋、シール用管状部材等を引き出すことも可能である。
また、上記の実施形態は、本発明の構成の一例を示したものであり、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲で、各種の変形が可能である。
そのため、例えば、前記第3のPCa部材300や第4のPCa部材400で用いた鉄筋継手は、トルク固定方式の鉄筋継手や、無機或いは有機グラウト方式、或いはこれらを併用したねじ節鉄筋継手、端部ねじ加工継手、モルタル充填式継手などの各種金属継手を本発明所定の管状部材(110、310等)の寸法に形成して用いる事が可能である。また、本発明に使用する鉄筋も、これらの鉄筋継手に合わせて用いる事が可能であり、上述した異形鉄筋の他に、ねじ節鉄筋なども用いる事が可能である。
そして、図19に示したものは、上記のような鉄筋継手として、例えば、管状部材として、鉄筋を収納して移動できるスペースを持つように形成したねじ節鉄筋継手510Aを用いたものであり、これに使用される鉄筋として、ねじ節鉄筋900Nを用いた例を示したものである。ここで、上記図19は、本発明による管状部材としてねじ節鉄筋継手510Aを用い、前記鉄筋としてねじ節鉄筋900Nを用いる例を図示した側断面図である。
上記図19に示した例では、前記ねじ節鉄筋継手510Aは、図19(A)に示したように、PCa部材500Aの内部に埋め込まれていて、その一端側には前記PCa部材500Aを構成するねじ節鉄筋900Qが埋め込まれている。そして他の一端側は、前記PCa部材500Aが他のPCa部材と接合する面の側に接していて解放端となっており、前記解放端の側から、前記ねじ節鉄筋900Nを前記ねじ節鉄筋継手510A内に組み込み可能に形成されている。
また、上記PCa部材500Aと接合する他のPCa部材500Bについては、図19(B)に示したように、その内部には、前記ねじ節鉄筋900Nに使用可能な鉄筋継手510Bが埋め込まれていて、その一端側には、前記PCa部材500Aの場合と同様に、前記PCa部材500Bを構成するねじ節鉄筋900Qが埋め込まれ、他の一端側は、接合面に向けて解放端となっている。
なお、前記PCa部材500B及び前記PCa部材500Bに埋め込まれる鉄筋継手510Bには特に限定を設けるものではなく、前記鉄筋継手510Bについても、前記ねじ節鉄筋900Nに使用可能な鉄筋継手であれば、どのようなものでも使用可能である。したがって、例えば、市販のエポックジョイント(登録商標)などとして知られる、特許第3807604号公報に記載されるネジフシ鉄筋用継手などを用いることも可能である。
そして、上記図19に示したような構成を用いて、前記PCa部材500Aと前記PCa部材500Bとの接合を行う場合には、図19(A)に示すように、接合前に前記ねじ節鉄筋継手510A内にねじ節鉄筋900Nを組み込んでおき、接合の際には図19(C)に記載するように、前記ねじ節鉄筋900Nを前記PCa部材500Aと前記PCa部材500Bとの間に跨るように任意の長さだけ引き出して、前記PCa部材500Aと前記PCa部材500Bとを前記ねじ節鉄筋900Nを介して接続し、必要に応じて、エポキシ系樹脂グラウト剤などを前記PCa部材500Aと前記PCa部材500Bとに設けたグラウト注入口(513A、513B)から注入して固化させ、前記PCa部材500Aと前記PCa部材500Bとの接合を完了するようになっている。なお、上記のようにグラウトを注入することを考慮して、前記ねじ節鉄筋900Nには、図19(D1)、(D2)に示すように、前記ねじ節鉄筋900Nの軸方向に沿ってねじ節部分を削除した節無し部900NBを形成しておいても良い。ここで、上記図19(D1)は前記ねじ節鉄筋に節無し部900NBを設けた例を軸方向から見た図であり、図19(D2)は軸方向に垂直な方向から見た図である。
そのため、上記のように、本発明の管状部材としてねじ節鉄筋継手510Aを用い、本発明に用いる鉄筋としてねじ節鉄筋900Nを活用することによっても、本発明によるPCa部材相互間の接合を達成することが可能である。
また、上記の例ではねじ節鉄筋継手510Aを用いていたが、上記ねじ節鉄筋は寸法精度が劣る場合があり、グラウトの注入も必要とされる。そこで、本発明では、上記のようなねじ節鉄筋継手を用いずに、図20に示したように、本発明による管状部材の内側に雌ねじが形成されたもの(例えば、長ナット)と全ねじボルト(長ねじ)を用いる事も可能である。なお、ここで、上記図20は、本発明による管状部材として内側に雌ねじが形成された長ナットを用い、鉄筋として前記長ナットと螺合する全ねじボルトを用いる例を図示した側断面図である。
上記図20に示した例では、本発明による管状部材として用いる長ナット1010Aは、内側に雌ねじが形成されたものであり、後述するような全ねじボルト1900を組み込んで、接合時に任意の長さだけ引き出すことが可能な寸法等を有するものであれば、一般的に市販されている長ナットを用いる事が可能である。
そして、前記長ナット1010Aは、図20(A)に示したように、PCa部材1000Aの内部に埋め込まれていて、その一端側には前記PCa部材1000Aを構成する鉄筋900Rが接続されている。なおここで、前記長ナット1010Aと前記鉄筋900Rとの接続構造は特に限定を設けるものではないが、本実施形態では、前記鉄筋900Rの前記長ナット1010A側にねじ切り部900RSを設けておき、前記ねじ切り部900RSをロックナット1030を介して前記長ナット1010Aに、ねじ作用で嵌め合わされる(螺合する)ようにして接続している。
また、前記長ナット1010Aの他の一端側は、前記PCa部材1000Aが他のPCa部材と接合する面の側に接していて解放端となっており、前記解放端の側から、前記全ねじボルト1900を前記長ナット1010A内外にねじ送りすること(螺送すること)が可能に構成されている。そして、前記図20(A)の例では、前記全ねじボルト1900が前記長ナット1010Aの内部に螺送された状態を示しており、前記解放端側には前記全ねじボルト1900にダブルナット(1030A、1030B)が設けられていて、前記ダブルナット(1030A、1030B)等を用いて前記全ねじボルト1900を移動できるようになっている。
また、本発明の上記実施形態で用いる前記全ねじボルト1900については、特に限定を設けるものではないが、少なくとも前記長ナット1010Aに形成された雌ねじと螺合できることが必要である。また、前記全ねじボルト1900の径は、前記PCa部材1000Aを構成する鉄筋900Rの径以外の径を用いる事も可能であり、そのため前記鉄筋900Rよりも更に径の大きなものを使用することも可能である。
また、上記PCa部材1000Aと接合する他のPCa部材1000Bは、図20(B)に示したように、その内部には、前記全ねじボルト1900と螺合可能な長ナット1010Bが埋め込まれていて、その一端側には、前記PCa部材1000Aの場合と同様に、前記PCa部材1000Bを構成する鉄筋900Rが接続され、他の一端側は、接合面に向けて解放端となっている。
そのため、上記図20に示したような構成を用いて、前記PCa部材1000Aと前記PCa部材1000Bとの接合を行う場合には、図20(A)に示すように、接合前に前記管状部材を構成する長ナット1010A内に全ねじボルト1900を螺送させて組み込んでおく。そして、接合の際には図20(C)に記載するように、前記全ねじボルト1900をダブルナット(1030A、1030B)等を利用することにより螺送して移動させ、前記PCa部材1000Aと前記PCa部材1000Bとの間に跨るように任意の長さだけ引き出して、前記PCa部材1000Aと前記PCa部材1000Bとを前記全ねじボルト1900Nを介して接続する。そして、続いて、前記ダブルナット(1030A、1030B)を構成するそれぞれのナットを前記PCa部材1000Aと前記PCa部材1000Bとで前記全ねじボルト1900のロックナットとして使用して、接合を完了する。
そのため、上記のように長ナット1010Aを管状部材として用い、全ねじボルト1900を鉄筋として用いた本発明によるPCa部材の接合手段を用いた場合には、グラウトの充填を行うことなく、PCa部材相互間の接合を達成することが可能である。また、図示はしないが、応用例として、PCa部材1000AとPCa部材1000Bとの隙間を利用して、隙間部分に1010Bと同様の長ナットを用いれば、1010Aの長さを短くして、移動距離を短くすることもできる。
また、本発明の更に異なる展開例としては、上記実施形態の例では、上記接合手段の配置は、PCa部材の一つの側面に配置したものを示したが、これに限定されるものではなく他の配置を用いることも可能である。
そのため、上述した第1の管状部材110等を、例えば、図21(A)に模式的に示したように、PCa部材を構成する対向する側面や、同様に図21(B)に示したように、PCa部材の四方を含む周囲の各側面に配置した上で鉄筋900を組み込んで使用することが可能であり、これは、上述した鉄筋継手(310,410)を含む接合手段についても同様である。そして、例えば上記接合手段を、壁面相互を接続するような水平方向や、柱と柱を接続するような垂直方向に設けることも可能である。なお、ここで、図21は、本発明による第1の管状部材等の接合手段のPCa部材への配置例を模式的に示す一部透視図を含む正面図である。
また、上述したような第1のPCa部材100に構成される第1の管状部材110等からなる接合手段と第2のPCa部材200に構成される第2の管状部材210等からなる接合手段とを、一つのPCa部材の対向する側面に設けることも可能である。すなわち、図21(C)に模式的に示したように、単一のPCa部材の一方の側面側に鉄筋が組み込まれる前記第1の管状部材110を設け、他の一方の側面側に鉄筋を引き出すための第2の管状部材210を設ける構成としても良く、これは、上述した鉄筋継手(310,410)を含む接合手段についても同様である。