JPWO2018003272A1 - 切削工具 - Google Patents

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Abstract

本開示の一態様に係る切削工具は、基材と、基材を被覆しているダイヤモンド層とを備えている。本開示の一態様に係る切削工具は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との稜線により構成される切れ刃とを有している。すくい面は、第1すくい面と、第1すくい面と逃げ面との間に配置されている第2すくい面とを有している。第2すくい面と基材のすくい面側の面とがなす角度は、負角である。第2すくい面は、ダイヤモンド層に形成されている。

Description

本開示は、切削工具に関する。本出願は、2016年6月29日に出願した日本特許出願である特願2016−128642号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
従来から、基材をダイヤモンド層で被覆した切削工具として、特開2015−85462号公報(特許文献1)に記載された切削工具が知られている。特許文献1に記載された切削工具の工具本体は、逃げ面と、すくい面と、逃げ面及びすくい面の交差稜線に形成された切れ刃とを有している。工具本体は、硬質皮膜に被覆されている。
特許文献1に記載の切削工具においては、工具本体のすくい面側を被覆している硬質皮膜が、レーザ等により除去されている。
特開2015−85462号公報
本開示の一態様に係る切削工具は、基材と、基材を被覆しているダイヤモンド層とを備えている。本開示の一態様に係る切削工具は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との稜線により構成される切れ刃とを有している。すくい面は、第1すくい面と、第1すくい面と逃げ面との間に配置されている第2すくい面とを有している。第2すくい面と基材のすくい面側の面とがなす角度は、負角である。第2すくい面は、ダイヤモンド層に形成されている。
図1は、第1の実施形態に係る切削工具の上面図である。 図2は、第1の実施形態に係る切削工具の先端部付近における図1の領域IIの拡大上面図である。 図3は、第1の実施形態に係る切削工具を用いた切削加工の模式図である。 図4Aは、図2のIV−IVにおける断面図である。 図4Bは、図4AのIV−Bにおける拡大図である。 図4Cは、図4AのIV−Cにおける拡大図である。 図5は、第1の実施形態に係る切削工具の製造方法の工程図である。 図6は、ダイヤモンド層コーティング工程が行われた後であってダイヤモンド層除去工程が行われる前の状態における第1の実施形態に係る切削工具の断面図である。 図7は、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第1の実施形態に係る切削工具の断面図である。 図8は、第2の実施形態に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向な断面における断面図である。 図9Aは、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第2の実施形態に係る切削工具の断面図である。 図9Bは、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第2の実施形態の第1変形例に係る切削工具の断面図である。 図9Cは、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第2の実施形態の第2変形例に係る切削工具の断面図である。 図10Aは、第3の実施形態に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向な断面における断面図の一例である。 図10Bは、第3の実施形態に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向な断面における断面図の別の例である。 図11は、第3の実施形態の第1変形例に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向における断面図である。 図12は、第3の実施形態の第2変形例に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向における断面図である。 図13は、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第3の実施形態に係る切削工具の断面図である。
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載の切削工具においては、切れ刃の耐久性が十分ではなく、加工量が増えていくと切れ刃が損壊し、被削材のコバ欠け(被削材の細かい欠け)が生じる。
本開示は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。具体的には、本開示は、切れ刃の耐久性を向上させ、被削材のコバ欠けを抑制することが可能な切削工具を提供するものである。
[本開示の効果]
上記によれば、切れ刃の耐久性を向上させることができ、被削材のコバ欠けを抑制することができる。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る切削工具は、基材と、基材を被覆しているダイヤモンド層とを備えている。本開示の一態様に係る切削工具は、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との稜線により構成される切れ刃とを有している。すくい面は、第1すくい面と、第1すくい面と逃げ面との間に配置されている第2すくい面とを有している。第2すくい面と基材のすくい面側の面とがなす角度は、負角である。第2すくい面は、ダイヤモンド層に形成されている。
本発明者らは、鋭意検討した結果、基材と、その基材を被覆しているダイヤモンド層とを備える切削工具において、第1すくい面と逃げ面との間に設けられた第2すくい面が、基材のすくい面側の面に対して負角をなしていることにより、切れ刃の耐久性が向上するとともに、被削材のコバ欠けを抑制できることを見出した。そのため、(1)の切削工具によると、切れ刃の耐久性を向上させることができ、被削材のコバ欠けを抑制することができる。
(2)(1)の切削工具において、基材のすくい面側の面はダイヤモンド層により被覆されており、第2すくい面は、基材の逃げ面側の面を被覆しているダイヤモンド層と基材のすくい面側の面を被覆しているダイヤモンド層とに跨って形成されていてもよい。
(2)の切削工具においては、切り子の排出性が改善される。その結果、すくい面と逃げ面との界面の摩耗が抑制される。そのため、(2)の切削工具によると、ダイヤモンド層の逃げ面剥離を抑制することができる。
(3)(2)の切削工具においては、第1すくい面は、第2すくい面から遠ざかるにしたがって基材に近づくように傾斜していてもよい。
(3)の切削工具においては、第1すくい面及び第2すくい面の傾斜がブレーカとして作用し、切り子が細かく分断される。そのため、切削中における切り子の噛み込みが抑制される。そのため、(3)の切削工具によると、切り子による被削材の加工面の光沢の劣化を抑制することが可能となる。
(4)(1)〜(3)の切削工具において、第2すくい面と基材のすくい面側の面とがなす角度は、−20°以上0°未満であってもよい。
(4)の切削工具によると、切れ刃の耐久性と切削工具の切れ味とを両立することができる。
(5)(1)〜(4)の切削工具において、基材の逃げ面側の面を被覆しているダイヤモンド層の厚さは、4μm以上30μm以下であってもよい。
(5)の切削工具によると、切れ刃の耐久性をさらに向上させることができるとともに、被削材のコバ欠けをさらに抑制することができる。
(6)(1)〜(5)の切削工具において、切れ刃の先端の曲率半径は、基材の逃げ面側の面を被覆しているダイヤモンド層の厚さに0.1を乗じた値以下であってもよい。
(6)の切削工具によると、切れ刃の耐久性が高い状態を維持でき、被削材のコバ欠けをさらに抑制することができる。
(7)(1)〜(6)の切削工具において、ダイヤモンド層は、基材と反対側の面においてクラスター状になっていてもよい。
(7)の切削工具によると、レーザ加工によってダイヤモンド層の表面にダメージ層が形成されることを抑制できる。
(8)(1)〜(7)の切削工具において、基材の先端の曲率半径は、切れ刃の先端の曲率半径よりも大きくてもよい。(8)の切削工具によると、基材のチッピングを抑制することができる。
(9)(8)の切削工具において、基材の先端の曲率半径は、0.5μm以上15μm以下であってもよい。(9)の切削工具によると、基材のチッピングをさらに抑制することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下に、本開示の実施形態の詳細について図を参照して説明する。なお、各図中同一または相当部分には同一符号を付している。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態に係る切削工具の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る切削工具の上面図である。第1の実施形態に係る切削工具は、先端部6と、ボディ部7と、シャンク部8とを有している。第1の実施形態に係る切削工具は、ボールエンドミルである。第1の実施形態に係る切削工具は、ボールエンドミルに限られるものではない。例えば、第1の実施形態に係る切削工具は、ラジアスエンドミル等であってもよい。
図2は第1の実施形態に係る切削工具の先端部付近における図1の領域IIの拡大上面図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る切削工具は、すくい面1と、逃げ面2(図4A参照)とを有している。すくい面1は、逃げ面2に連なっている。すくい面1と逃げ面2との稜線は、切れ刃3を構成している。図3は、第1の実施形態に係る切削工具を用いた切削加工の模式図である。図3に示すように、第1の実施形態に係る切削工具は、中心軸Aを中心として回転するとともに、切れ刃3が被削材に付勢されることにより、被削材の切削加工が行われる。
図4Aは、図2のIV−IVにおける断面図である。図4Bは、図4AのIV−Bにおける拡大図である。図4A及び図4Bに示すように、第1の実施形態に係る切削工具は、基材4と、ダイヤモンド層5とを有している。基材4は、例えば、WC(炭化タングステン)等の粉末と、Co(コバルト)等の結合剤とを含む焼結体である超硬合金である。
ダイヤモンド層5は、例えば、ダイヤモンド結晶を含有する層である。ダイヤモンド層5は、例えば、ダイヤモンド多結晶膜である。ダイヤモンド層5は、非ダイヤモンド成分(例えば非晶質成分)等を含有していてもよい。ダイヤモンド層5は、ダイヤモンド結晶を含有していなくてもよい。例えば、ダイヤモンド層5は、DLC(Diamond Like Carbon)の層であってもよい。ダイヤモンド層5の表層(基材4とは反対側の表面に位置する層)は、クラスター状になっていることが好ましい。ここで、ダイヤモンド層5がクラスター状になっているとは、結晶粒径が大きい一次粒子の間に一次粒子よりも結晶粒径が小さい二次粒子が充填されていることをいう。クラスター状のダイヤモンド層は、相対的に硬度が小さい。そのため、この場合には、レーザ加工によるダメージ層が表面において少なくなり、工具寿命が5〜10パーセント向上する。
ダイヤモンド層5は、基材4を被覆している。より具体的には、第1の実施形態に係る切削工具においては、ダイヤモンド層5は、基材4の逃げ面2側の面のみを被覆している。但し、後述するように、ダイヤモンド層5は、基材4のすくい面1側の面を被覆していてもよい。なお、以下においては、基材4のすくい面1側の面を頂面41とする。基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の厚さは、厚さh1である。厚さh1は、例えば3μm以上35μm以下である。厚さh1は、好ましくは、4μm以上30μm以下である。
すくい面1は、第1すくい面11と、第2すくい面12とを有している。第2すくい面12は、第1すくい面11と逃げ面2との間に設けられている。第2すくい面12は、ダイヤモンド層5に形成されている。好ましくは、第2すくい面12は、その少なくとも一部が、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5(すなわち、基材4の頂面41の延長線上よりも逃げ面2側に形成されているダイヤモンド層5)に形成されている。
すなわち、第2すくい面12のその少なくとも一部が、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の表面から構成されている。このことを別の観点からいえば、切れ刃3は、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5に形成されている。なお、第1の実施形態に係る切削工具においては、ダイヤモンド層5が基材4の頂面41を被覆していないため、ダイヤモンド層5と基材4との界面が露出しており、第1すくい面11は基材4の頂面41から構成されている。
第2すくい面12は、基材4の頂面41に対して傾斜している。第2すくい面12が基材4の頂面41に対して傾斜する角度は、角度θである。角度θは、負角となっている。ここで、角度θが負角であるとは、切れ刃3が左方を向いている状態において、第2すくい面12が基材4の頂面41に対して、反時計回りに回転している状態をいう。
角度θは、−30°以上0°未満であることが好ましい。角度θは、−20°以上0°未満であることがさらに好ましい。なお、角度θに関して、数字の前に付した「−(マイナス)」は、負角であることを意味する。
ダイヤモンド層5の切れ刃3の先端は、曲率半径R1となっている。曲率半径R1は、0.1×h1以下であることが好ましい。曲率半径R1は、5μm以下であることが好ましい。曲率半径R1は、1.5μm以下であることがさらに好ましい。図4Cは、図4AのIV−Cにおける拡大図である。図4Cに示すように、基材4は、先端において曲率半径R2を有している。基材4の先端とは、基材4のすくい面1側の面(頂面41)と基材4の逃げ面2側の面とが連なっている部分である。曲率半径R2は、曲率半径R1よりも大きいことが好ましい。曲率半径R2は、15μm以下であることが好ましい。曲率半径R2は、5μm以下であることがさらに好ましい。曲率半径R2は、1.5μm以下であることが殊に好ましい。これにより、基材4を加工する際のチッピングの発生を抑制することができるとともに、角度θを大きくしても基材4の先端が露出しにくくなる。そのため、工具寿命を5〜10パーセント向上する。なお、曲率半径R2を0.5μm未満とするとかえって基材4にチッピングが発生しやすくなるため、曲率半径R2は、0.5μm以上であることが好ましい。
以下に、第1の実施形態に係る切削工具の製造方法について説明する。
図5は、第1の実施形態に係る切削工具の製造方法の工程図である。図5に示すように、第1の実施形態に係る切削工具の製造方法は、ダイヤモンド層コーティング工程S1と、ダイヤモンド層除去工程S2とを有する。
ダイヤモンド層コーティング工程S1においては、基材4上にダイヤモンド層5が成膜される。ダイヤモンド層5の成膜は、例えばHFCVD(Hot Filament Chemical Vapor Deposition)等により行われる。
図6は、ダイヤモンド層コーティング工程が行われた後であってダイヤモンド層除去工程が行われる前の状態における第1の実施形態に係る切削工具の断面図である。図6に示すように、ダイヤモンド層コーティング工程S1が行われた後であってダイヤモンド層除去工程S2が行われる前の状態においては、基材4のすくい面1側の面(頂面41)及び基材4の逃げ面2側の面が、ダイヤモンド層5により被覆されている。
ダイヤモンド層コーティング工程S1が行われた後であってダイヤモンド層除去工程S2が行われる前の状態においては、第1の実施形態に係る切削工具の先端周辺が丸まっている。これは、ダイヤモンド層5の成膜時には、第1の実施形態に係る切削工具の先端周辺の温度が他の部分よりも高くなるため、ダイヤモンド層5の成膜が促進されることによる。
ダイヤモンド層コーティング工程S1が行われた後であってダイヤモンド層除去工程S2が行われる前の状態においては、第1の実施形態に係る切削工具の先端周辺が丸まっている。そのため、この段階では、第1の実施形態に係る切削工具の切削抵抗は高く、切れ味は悪い。
ダイヤモンド層除去工程S2は、すくい面処理工程S21と、傾斜面処理工程S22とを含んでいる。すくい面処理工程S21においては、基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5の除去が行われる。ダイヤモンド層5の除去は、例えばレーザ等をすくい面1上に照射することにより行われる。この工程に用いられるレーザは、例えばYVOレーザの2倍高調波である。ダイヤモンド層除去工程S2に用いられるレーザのスポット径は、20μm以下であることが好ましい。ダイヤモンド層除去工程S2に用いられるレーザのスポット径は、10μm以下であることがさらに好ましい。この場合、基材4のすくい面1側の面を被覆しているダイヤモンド層5を精度よく除去することができるため、切れ刃3の曲率半径R1を小さくすることができる。その結果、この場合には、第1の実施形態に係る切削工具の切れ味を改善されることにより、工具寿命が5〜10パーセント向上する。
図7は、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第1の実施形態に係る切削工具の断面図である。図7に示すように、すくい面処理工程S21が行われた後においては、基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5が除去されている。
しかしながら、この段階では、第1の実施形態に係る切削工具は、依然として耐久性が低く、加工量が増えてくると切れ刃3が損壊し、被削材にコバ欠けを生じさせやすい。
傾斜面処理工程S22においては、第2すくい面12が形成される。より具体的には、すくい面処理工程S21が行われた後の第1の実施形態に係る切削工具の切れ刃3の先端付近に、すくい面1側からレーザを照射することにより、切れ刃3の先端付近のダイヤモンド層5を除去する。以上の工程から、第1の実施形態に係る切削工具が得られる。
以下に、第1の実施形態に係る切削工具の効果について説明する。
上記のとおり、第1の実施形態に係る切削工具は、第2すくい面12を有しており、第2すくい面12と基材4の頂面41とが負角をなしている。その結果、第1の実施形態に係る切削工具の切れ刃3は、単にダイヤモンド層5を基材4上にCVD等により被覆したままの状態よりもシャープとなる。そのため、第1の実施形態に係る切削工具においては、切れ刃3の耐久性が向上し、被削材のコバ欠けを抑制することができる。
第1の実施形態に係る切削工具において、第2すくい面12が基材4の頂面41とがなす角度が負角であるため、切れ刃3が切削時に加わる主分力により損傷しにくくなる。そのため、第1の実施形態に係る切削工具においては、切れ刃3の耐久性をさらに向上させることができる。
角度θの負の値の絶対値が大きくなると、切れ刃3は、切削時に切れ刃3に加わる主分力により損傷しにくくなる。他方で、角度θの負の値の絶対値が大きくなるほど、切れ刃3の切れ味は悪くなる。そのため、第1の実施形態に係る切削工具において、角度θが−20°以上0°未満である場合、切れ刃3の耐久性と切れ味とを両立させることができる。
第2すくい面12の幅が広くなるほど、切れ刃3は、切削時に切れ刃3に加わる主分力により損傷しにくくなる。他方で、第2すくい面12の幅が広くなるほど、切れ刃3の切れ味は悪くなる。第2すくい面12は基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5に形成されているため、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層が厚くなるほど、第2すくい面12の幅が広くなる。そのため、第1の実施形態に係る切削工具において、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の厚さが4μm以上30μm以下である場合には、切れ刃3の耐久性と切れ味とを両立させることができる。
また、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の厚さが4μm未満であると、ダイヤモンド層5が割れやすい。他方、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の厚さが30μmを超えると、残留応力が大きく剥離しやすい。そのため、第1の実施形態に係る切削工具において、基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5の厚さが4μm以上30μm以下である場合には、ダイヤモンド層5の割れ、剥離を抑制することができる。
第1の実施形態に係る切削工具において、切れ刃3先端の曲率半径R1が0.1×h1以下である場合、切れ刃3の耐久性をさらに向上させることができるとともに、切れ刃3の切れ味が良くなり、被削材のコバ欠けをさらに抑制することができる。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態に係る切削工具の構成について説明する。なお、以下においては、第1の実施形態に係る切削工具と異なる点について主に説明し、同様の説明は繰り返さない。
図8は、第2の実施形態に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向な断面における断面図である。図8に示すように、第2の実施形態に係る切削工具は、基材4と、ダイヤモンド層5とを有している。第2の実施形態に係る切削工具は、すくい面1と、逃げ面2と、切れ刃3とを有している。第2の実施形態に係る切削工具においては、すくい面1は、第1すくい面11と第2すくい面12とを有している。これらの点においては、第2の実施形態に係る切削工具は、第1の実施形態に係る切削工具と同様である。
第1の実施形態に係る切削工具においては、ダイヤモンド層5は、基材4の頂面41を被覆していなかった。しかしながら、第2の実施形態に係る切削工具においては、ダイヤモンド層5は、基材4の頂面41を被覆している。すなわち、第2の実施形態に係る切削工具においては、第1すくい面11がダイヤモンド層5により構成されている。また、第2の実施形態に係る切削工具においては、第2すくい面12が、基材4の頂面41を被覆しているダイヤモンド層5と基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5とに跨るように形成されている。この点において、第2の実施形態に係る切削工具は、第1の実施形態に係る切削工具と異なっている。
基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5は、厚さh2を有している。基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5は、上記のとおり、厚さh1を有している。厚さh2は、厚さh1よりも薄くなっている。すなわち、厚さh2は、0μm<h2<4μmとなっている。
以下に、第2の実施形態に係る切削工具の製造方法について説明する。
第2の実施形態に係る切削工具の製造方法は、ダイヤモンド層コーティング工程S1と、ダイヤモンド層除去工程S2とを有し、ダイヤモンド層除去工程S2が、すくい面処理工程S21と、傾斜面処理工程S22とを含んでいる点において、第1の実施形態に係る切削工具の製造方法と同様である。
図9Aは、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第2の実施形態に係る切削工具の断面図である。図9Aに示すように、第2の実施形態に係る切削工具の製造方法においては、すくい面処理工程S21において、基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5の全部が除去されない点において、第1の実施形態に係る切削工具の製造方法と異なっている。
図9Bは、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第2の実施形態の第1変形例に係る切削工具の断面図である。図9Bに示すように、すくい面処理工程S21後において、基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5の表面は、頂面41に対して傾斜していてもよい。図9Cは、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第2の実施形態の第2変形例に係る切削工具の断面図である。図9Cに示すように、すくい面処理工程S21は、第2の実施形態に係る切削工具の先端周辺の丸まった部分が除去されるように行われてもよい。
以下に、第2の実施形態に係る切削工具の効果について説明する。
図4Aに示すように、第1の実施形態に係る切削工具においては、基材4と基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5との界面が、露出している。そのため、基材4と基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5との界面を起点として、基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5の剥離が生じやすい。
他方で、第2の実施形態に係る切削工具においては、基材4のすくい面1側の面(頂面41)がダイヤモンド層5で被覆されており、第2すくい面12が基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5と基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5とに跨るように形成されているため、基材4と基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5との界面が露出していない。そのため、第2の実施形態に係る切削工具においては、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5と基材4との境界の摩耗が抑制され、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5と基材4との境界への集中的な負荷が分散されることにより、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の剥離が生じにくい。すなわち、第2の実施形態に係る切削工具によると、基材4の逃げ面2側の面を被覆しているダイヤモンド層5の逃げ面剥離を抑制することができる。
さらに、第2の実施形態に係る切削工具においては、基材4のすくい面1側の面(頂面41)がダイヤモンド層5により被覆されているため、被削材の切り子が基材4のすくい面1側と接触することを防止することができる。すなわち、第2の実施形態に係る切削工具においては、すくい面の摩耗を抑制することができる。
(第3の実施形態)
以下に、第3の実施形態に係る切削工具の構成について説明する。なお、以下においては、第2の実施形態に係る切削工具の構成と異なる点について主に説明し、同様の説明は繰り返さない。
図10Aは、第3の実施形態に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向な断面における断面図の一例である。図10Bは、第3の実施形態に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向な断面における断面図の別の例である。図10A及び図10Bに示すように、第3の実施形態に係る切削工具は、基材4と、ダイヤモンド層5とを有している。また、第3の実施形態に係る切削工具は、すくい面1と、逃げ面2と、切れ刃3とを有している。さらに、第3の実施形態に係る切削工具においては、基材4のすくい面1側の面(頂面41)が、ダイヤモンド層5により被覆されている。これらの点においては、第3の実施形態に係る切削工具は、第2の実施形態に係る切削工具と同様である。
第3の実施形態に係る切削工具においては、第1すくい面11が基材4のすくい面1側の面(頂面41)に対して傾斜している点において、第3の実施形態に係る切削工具は、第2の実施形態に係る切削工具と異なっている。より具体的には、第1すくい面11は、第2すくい面12から遠ざかるにつれて、基材4に近づくように傾斜している。
第1すくい面11は、幅Wを有している。幅Wは、切れ刃3に垂直な方向における幅である。
第3の実施形態に係る切削工具においては、すくい面1は、第3すくい面13を有している。第3すくい面13は、第2すくい面12との間で第1すくい面11を挟み込む位置に配置されている。図10Aにおいては、第3すくい面13はダイヤモンド層5により被覆されておらず、基材4のすくい面1側の面(頂面41)により構成されているが、図10Bに示すように、第3すくい面13はダイヤモンド層5により構成されていてもよい。
図11は、第3の実施形態の第1変形例に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向における断面図である。図11に示すように、第3の実施形態の第1変形例に係る切削工具において、すくい面1は、第4すくい面14をさらに有している。第4すくい面14は、第1すくい面11と第2すくい面12との間に配置されている。すなわち、第1すくい面11と第2すくい面12とは、連なってなくてもよい。第4すくい面14は、例えば、基材4のすくい面1側の面(頂面41)と平行となっている。第4すくい面14は、例えば、第2すくい面12から遠ざかるにつれて基材4に近づくように傾斜していてもよい。
図12は、第3の実施形態の第2変形例に係る切削工具の切れ刃に垂直な方向における断面図である。図12に示すように、第3の実施形態の第2変形例に係る切削工具においては、第1すくい面11の幅Wは、100μm以上である。
以下に、第3の実施形態に係る切削工具の製造方法について説明する。
第3の実施形態に係る切削工具の製造方法は、ダイヤモンド層コーティング工程S1と、ダイヤモンド層除去工程S2とを有し、ダイヤモンド層除去工程S2が、すくい面処理工程S21と、傾斜面処理工程S22とを含んでいる点において、第2の実施形態に係る切削工具の製造方法と同様である。
また、第3の実施形態に係る切削工具の製造方法においては、すくい面処理工程S21において、基材4のすくい面1側の面(頂面41)を被覆しているダイヤモンド層5の一部のみを除去する点においても、第2の実施形態に係る切削工具の製造方法と同様である。
図13は、すくい面処理工程が行われた後であって傾斜面処理工程が行われる前における第3の実施形態に係る切削工具の断面図である。図13に示すように、第3の実施形態に係る切削工具の製造方法は、工具の先端から遠ざかるにつれて基材4側に近づく傾斜を有するように基材4のすくい面1側の面(頂面41)上に成膜されたダイヤモンド層5を残存させる点において、第2の実施形態に係る切削工具の製造方法と異なっている。
以下に、第3の実施形態に係る切削工具の効果について説明する。
第3の実施形態に係る切削工具においては、第1すくい面11が、第2すくい面12から遠ざかるにつれて基材4に近づくように傾斜しているため、第1すくい面11が、第2の実施形態に係る切削工具と比較して、より基材4側に凹んでいる。
その結果、被削材の切り子が第1すくい面11上を通過しようとする際に、被削材の切り子が大きく曲がり、細かく分断される。すなわち、第1すくい面11が、一種のチップブレーカとして機能する。そのため、第3の実施形態に係る切削工具によると、被削材の切り子が被削材を傷つけることを抑止することができる。すなわち、第3の実施形態に係る切削工具によると、被削材の加工面の光沢の劣化を抑制することができる。
第3の実施形態に係る切削工具において、第3すくい面13がダイヤモンド層5により構成されている場合、被削材の切り子が基材4に接触することを抑制することができる。すなわち、この場合には、すくい面摩耗を低減することができる。
第3の実施形態に係る切削工具において、第1すくい面11の幅Wが100μm以上である場合、被削材の切り子が基材4に接触することを抑制することができる。すなわち、この場合には、すくい面摩耗を低減することができる。
第3の実施形態に係る切削工具において、第4すくい面14が設けられている場合も、同様の効果を奏する。
(切削試験結果)
以下に、第1の実施形態に係る切削工具、第2の実施形態に係る切削工具及び第3の実施形態に係る切削工具を用いた切削試験の結果について説明する。
この切削試験においては、第1の実施形態に係る切削工具、第2の実施形態に係る切削工具及び第3の実施形態に係る切削工具を用いて、10mmの直径を有する半球の加工を行った。
この切削試験においては、軸方向への切込みを0.1mmとし、径方向への切込みを0.3mmとした。この切削試験においては、工具回転数を20000回転/分、送り量を200m/分とした。この切削試験においては、被削材として住友電工ハードメタル株式会社製の超硬板材AF1を用いた。この切削加工中には、切削箇所近傍にエアブローが行われた。
表1に、比較例の切削工具及びサンプル1〜7の切削工具の製作条件並びにこの切削試験の試験結果を示す。
Figure 2018003272
表1に示すように、サンプル1〜7の切削工具は、切削工具が加工不能となるまでの間に少なくとも7穴以上の半球を加工することができた。他方、第2すくい面12を有していない比較例に係る切削工具においては、切削工具が加工不能となるまでの間に6穴の半球しか加工することができなかった。
サンプル1〜7の切削工具は、1穴あたりの平均コバ欠け数が10個以下であった。他方、比較例に係る切削工具において、1穴あたりの平均コバ欠け数が30個であった。
これらから、第1の実施形態に係る切削工具、第2の実施形態に係る切削工具及び第3の実施形態に係る切削工具は、第2すくい面12を有することにより、切れ刃の耐久性が向上し、被削材のコバ欠けを抑制することができることが明らかとなった。
切れ刃3先端の曲率半径R1が0.1×h1以下であるサンプル3〜5においては、切れ刃3先端の曲率半径R1が0.1×h1以上であるサンプル1及び6〜7と比較し、切削工具が加工不能となるまでの間に加工することができた穴の数及び1穴あたりの平均コバ欠け数に関して、より優れた結果を示す傾向にあった。
このことから、切れ刃3先端の曲率半径R1が0.1×h1以下であることにより、切れ刃3がシャープになり、被削材のコバ欠けを抑制することができることが明らかとなった。
基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5の厚さh1が4μm以上30μm以下の範囲にあるサンプル1〜5おいては、基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5の厚さh1が4μm以上30μm以下の範囲にないサンプル6〜7と比較して、切削工具が加工不能となるまでの間に加工することができた穴の数及び1穴あたりの平均コバ欠け数に関して、より優れた結果を示す傾向にあった。
このことから、基材4の逃げ面2側を被覆しているダイヤモンド層5の厚さh1が4μm以上30μm以下の範囲にあることにより、切れ刃の耐久性と切れ味とを両立させられることが明らかとなった。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 すくい面、11 第1すくい面、12 第2すくい面、13 第3すくい面、14 第4すくい面、2 逃げ面、3 切れ刃、4 基材、41 頂面、5 ダイヤモンド層、6 先端部、7 ボディ部、8 シャンク部、S1 ダイヤモンド層コーティング工程、S2 ダイヤモンド層除去工程、S21 すくい面処理工程、S22 傾斜面処理工程、W 幅、h1,h2 厚さ、R1,R2 曲率半径、θ 角度。

Claims (9)

  1. 基材と、
    前記基材を被覆しているダイヤモンド層とを備えた切削工具であって、
    前記切削工具は、すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との稜線により構成される切れ刃とを有し、
    前記すくい面は、第1すくい面と、前記第1すくい面と前記逃げ面との間に配置されている第2すくい面とを有し、
    前記第2すくい面と前記基材の前記すくい面側の面とがなす角度は、負角であり、
    前記第2すくい面は、前記ダイヤモンド層に形成されている、切削工具。
  2. 前記基材の前記すくい面側の面は前記ダイヤモンド層により被覆されており、
    前記第2すくい面は、前記基材の前記逃げ面側の面を被覆している前記ダイヤモンド層と前記基材の前記すくい面側の面を被覆している前記ダイヤモンド層とに跨って形成されている、請求項1に記載の切削工具。
  3. 前記第1すくい面は、前記第2すくい面から遠ざかるにつれて前記基材に近づくように傾斜している、請求項2に記載の切削工具。
  4. 前記第2すくい面と前記基材の前記すくい面側の面とがなす角度は、−20°以上0°未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の切削工具。
  5. 前記基材の前記逃げ面側の面を被覆している前記ダイヤモンド層の厚さは4μm以上30μm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の切削工具。
  6. 前記切れ刃の先端の曲率半径は、前記基材の前記逃げ面側の面を被覆している前記ダイヤモンド層の厚さに0.1を乗じた値以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の切削工具。
  7. 前記ダイヤモンド層は、前記基材と反対側の面においてクラスター状になっている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の切削工具。
  8. 前記基材の先端の曲率半径は、前記切れ刃の先端の曲率半径よりも大きい、請求項1〜7のいずれか1項に記載の切削工具。
  9. 前記基材の先端の曲率半径は、0.5μm以上15μm以下である、請求項8に記載の切削工具。
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