JPWO2017209195A1 - アンテナ装置及びそれを用いたicタグ - Google Patents

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Abstract

アンテナ装置(20)は、磁性体(33)に導体からなるアンテナ部(31)が形成されてなるメインアンテナ(30)と、磁性体(33)の表面上に配置された非磁性体(43)の同一表面に複数のループアンテナ部(41a, 41b)が形成されてなるブースターアンテナ(40)とを備え、複数のループアンテナ部(41a, 41b)は、メインアンテナ(30)のアンテナ部(31)と部分的にオーバーラップするように配置され、複数のループアンテナ部(41a,41b)同士は、互いに並列接続され且つ同一の向きに巻回されている。

Description

本発明は、アンテナ装置及びそれを用いたICタグに関し、特に、複数のアンテナによって構成されるブースターアンテナを備えることにより、交信特性が向上したアンテナ装置及びそれを用いたICタグに関する。
従来から、絶縁性の基体内にICチップと、該ICチップと電気的に接続されたアンテナとを備え、リーダライタからの電力の受給やリーダライタとの信号の送受信を、電磁波を用いて非接触で行うICタグが知られている。近年、ICタグは、工場における生産工程管理や倉庫における物品管理等に利用される他、ICタグが組み込まれたICカードとして交通機関の乗車券にも用いられている。ICタグに設けられるアンテナは、一般に、基材に導線が巻線されてコイルを形成することにより作製される他、基材の表面にコイルパターンを印刷することにより作製される。
ICタグにおいて、交信特性を向上することを目的として、リーダライタとアンテナとの間の交信距離を大きくしたり、交信可能な方向を拡大したりするために、ICタグに上記アンテナとは別にブースターアンテナを設けることが行われている(例えば、特許文献1を参照)。ブースターアンテナは、リーダライタに設けられたアンテナとの電磁界結合が可能であると共に、ICタグに設けられたアンテナと電磁界結合が可能である。
従って、このようなブースターアンテナをICタグに設けることによって、ICタグのアンテナのみでは交信できない距離や範囲を補うことが可能となる。特許文献1に開示の構成の他に、例えば、ICタグに設けられた異なる巻回軸を持つ複数のコイルアンテナの近傍に大型の平面ループコイルからなるブースターアンテナを設けることや、基材表面に形成された平面ループコイルからなるブースターアンテナを設けることが考えられている(例えば、特許文献2、3を参照)。
国際公開WO2012/005278号 国際公開WO2012/144482号 特開2008−129850号公報
しかしながら、特許文献1〜3のように、アンテナに対して、平面ループアンテナにより構成されたブースターアンテナを組み合わせたとしても、その配置及び構成によってはそれらが互いに干渉してアンテナの交信可能な範囲が縮小したり、交信可能なエリア内で局所的に交信できない部分が生じたりするおそれがある。また、交信可能な方向を補うことができたとしても、交信距離の低減等の他の交信特性の悪化が生じるおそれもある。
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブースターアンテナを好ましい配置で設けることにより、交信可能な範囲が拡大され、交信特性が改善されたアンテナ装置及びそれを用いたICタグを得ることにある。
前記の目的を達成するために、本発明では、アンテナ装置において、例えば磁性体にコイルが形成されてなるメインアンテナと、該アンテナ表面に配設された非磁性体の表面に、互いに並列に接続された複数のループアンテナで構成されてなるブースターアンテナとを組み合わせて設けた。
具体的に、本発明に係るアンテナ装置は、磁性体に導体からなるアンテナ部が形成されてなるメインアンテナと、磁性体の表面上に配置された非磁性体の同一表面に複数のループアンテナ部が形成されてなるブースターアンテナとを備え、複数のループアンテナ部は、メインアンテナのアンテナ部と部分的にオーバーラップするように配置され、ブースターアンテナを構成する複数のループアンテナ部同士は、互いに並列接続され且つ同一の向きに巻回されていることを特徴とする。
本発明に係るアンテナ装置によると、アンテナの交信可能範囲を拡大することができる。特に、本発明に係るアンテナ装置では、複数のループアンテナ部が、磁性体に設けられたメインアンテナのアンテナ部と部分的にオーバーラップして配置されているため、該メインアンテナとループアンテナ部で構成されたブースターアンテナとが強く結合でき、アンテナ装置の交信範囲を拡大することができる。また、本発明に係るアンテナ装置では、ブースターアンテナを構成する複数のループアンテナ部が非磁性体の同一表面上に互いに並列に接続されており、各ループアンテナ部の自己インダクタンスを大きくすることができ、その結果、リーダライタ側のアンテナとの結合係数を大きくすることができる。これにより、交信特性を向上でき、かつ通常は交信距離が落ち込む方向での交信距離を伸ばすことができる。さらに、本発明に係るアンテナ装置において、ブースターアンテナは、複数のループアンテナ部同士が同一の向きに巻回されているため、それぞれのループアンテナ部が独立してアンテナと電磁界結合をすることが可能となり、ループアンテナ部同士が互いに干渉するのではなく、それぞれのループアンテナ部の結合可能領域が重なる領域においてループアンテナ部同士が交信可能範囲を拡げる効果を強め合って、よりアンテナ装置の交信可能範囲を拡大できる。また、本発明ではブースターアンテナにループアンテナを採用しているため、生産工程の増大やアンテナ装置のサイズの増大を最小限にしながら、アンテナ装置の交信可能領域を拡大することができる。
本発明に係るアンテナ装置において、メインアンテナのアンテナ部は、磁性体を磁心として導体が巻回されてなるソレノイドコイル形状であり、非磁性体は、導体の巻回軸方向と平行な磁性体の表面上に配置されていてもよい。
このようにすると、上記ソレノイドコイル状のメインアンテナのみでは交信できない方向に対して、ブースターアンテナによって交信が可能となるため、アンテナ装置の交信可能範囲を拡大することができる。具体的に、上記ソレノイドコイル状のメインアンテナのみでは、巻回軸方向及び該方向からある程度傾斜した方向では良好に交信可能であるが、巻回軸に対して垂直な方向、特にソレノイドコイル状のメインアンテナの中心領域から巻回軸に垂直な方向に対しては良好に交信することができない。しかし、本発明のアンテナ装置では前記ソレノイドコイル状のメインアンテナの巻回軸に対して垂直な方向、特にソレノイドコイル状のメインアンテナの中心領域から巻回軸に垂直な方向に優れた交信性能を示すように、磁性体の表面上に配置された非磁性体の同一表面に、ブースターアンテナとして互いに並列に接続された複数のループアンテナ部が配置されている。より具体的には、非磁性体は、ソレノイドコイル状のメインアンテナの巻回軸方向と平行な磁性体の表面上に配置されており、すなわち、上記ソレノイドコイル状のメインアンテナが良好に交信できない巻回軸に対して垂直な方向に、非磁性体に形成された複数のループアンテナ部の開口面が向くように配置されている。これらのループアンテナ部は、特に前記ソレノイドコイル状のメインアンテナの巻回軸に対して垂直な方向に存在するアンテナと良好に電磁界結合が可能である。特に、本発明に係るアンテナ装置では、複数のループアンテナ部のそれぞれが、磁性体における導体が巻回された部分と部分的にオーバーラップするように配置されているため、ソレノイドコイル状のメインアンテナの中心領域から巻回軸に垂直な方向に対しての交信を良好にすることができる。
上記アンテナがソレノイドコイル状のメインアンテナの場合、非磁性体は、磁性体の複数の表面上にそれぞれ配置されていることが好ましい。なお、この場合、異なる面に配置されたそれぞれのブースターアンテナは互いに並列接続されていてもよく、或いは接続されていなくてもよい。
このようにすると、ソレノイドコイル状のメインアンテナの巻回軸に垂直な一方向のみならず、ブースターアンテナを設けた面が向く全ての方向で交信可能領域を拡大することができる。例えば、ソレノイドコイル状のメインアンテナを有する直方体状のアンテナ装置においてソレノイドコイル状のメインアンテナの巻回軸が交差する面を除く4面にブースターアンテナを設ければ、アンテナ装置が全方位において交信可能領域を拡大することができる。
上記メインアンテナがソレノイドコイル状の場合、ブースターアンテナの複数のループアンテナ部同士の間には、間隙を設けてもよく、ソレノイドコイルアンテナのコイル長さの2分の1以下の間隔であることが好ましい。
このようにすると、ソレノイドコイル状のメインアンテナの中心領域から巻回軸に垂直な方向に対する交信性能をブースターアンテナがより良好に補うことができ、アンテナ装置の交信領域を拡大することができる。
本発明に係る他のアンテナ装置では、メインアンテナは、前記アンテナ部として前記磁性体の表面上にループアンテナ部が形成されてなるメインアンテナであり、ブースターアンテナの開口方向は、メインアンテナのアンテナ部の開口方向と同一であってもよい。
このように、メインアンテナがソレノイドコイル状のアンテナでなく、ループアンテナ状であっても同様に、ブースターアンテナによって交信可能範囲を向上することができる。
上記メインアンテナがループアンテナ状の場合、ブースターアンテナの複数のループアンテナ部同士の間には間隙を設けてもよく、メインアンテナの半径以下の間隔であることが好ましい。
このようにすると、メインアンテナの中心領域から巻回軸に垂直な方向に対する交信性能をブースターアンテナがより良好に補うことができ、アンテナ装置の交信領域を拡大することができる。
本発明に係るアンテナ装置において、ブースターアンテナは、前記メインアンテナと部分的にオーバーラップするように配置されていることが好ましい。
このようにすると、メインアンテナとブースターアンテナとが強く結合でき、アンテナ装置の交信領域を拡大することができる。
本発明に係るアンテナ装置において、ブースターアンテナを構成するループアンテナ部は2つ形成されており、当該2つのループアンテナ部は互いに前記非磁性体の表面の中心を基準に対称に配置されていることが好ましい。
ブースターアンテナを構成するループアンテナ部を2つとすることで、生産工程の増大やアンテナ装置のサイズの増大を最小限にしながら、アンテナ装置の交信可能領域を拡大することができる。また、例えば上記ソレノイドコイル状のメインアンテナは、上述のとおりコイルの巻回軸に対して垂直な方向、特にソレノイドコイル状のメインアンテナの中心領域から巻回軸に垂直な方向について良好に交信できないが、2つのループアンテナ部を非磁性体の表面の中心を基準に対称に配置させることにより、特にソレノイドコイル状のメインアンテナの中心領域から巻回軸に対して垂直な方向の交信を良好に補うことができる。
また、本発明の他の対象は、上記のいずれかのアンテナ装置を含むICタグである。
このようなICタグは、上記の本発明に係るアンテナ装置を備えているため、交信可能な領域を拡大でき、優れた交信性能を発揮することができる。
本発明に係るアンテナ装置及びそれを用いたICタグによると、交信可能な領域を拡大することができ、交信性能を向上することができる。
図1は本発明の一実施形態に係るICタグの構成を示す回路図である。 図2は本発明の一実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す分解斜視図である。 図3−1はアンテナ装置のブースターアンテナを構成するループアンテナ部の配置と、アンテナ装置の交信可能領域との関係を説明するための図である。 図3−2はアンテナ装置のブースターアンテナを構成するループアンテナ部の配置と、アンテナ装置の交信可能領域との関係を説明するための図である。 図3−3はアンテナ装置のブースターアンテナを構成するループアンテナ部の配置と、アンテナ装置の交信可能領域との関係を説明するための図である。 図4は本発明の一実施形態の第1変形例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。 図5(a)、(b)は本発明の一実施形態の第2変形例に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。 図6は本発明の一実施形態の第3変形例に係るアンテナ装置の構成を示す分解斜視図である。 図7は本発明の一実施形態の第4変形例に係るアンテナ装置の構成を示す分解斜視図である。 図8は本発明の他の実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す分解斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用方法或いはその用途を制限することを意図するものではない。
まず、本発明の一実施形態に係るICタグについて図1を参照しながら説明する。図1に示すように、本実施形態に係るICタグ1は、ICチップ10とアンテナ装置20により構成されている。アンテナ装置20は、ICチップ10と電気的に接続するソレノイドコイル状のメインアンテナ30と、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の交信特性を向上するためのブースターアンテナ40とを備えている。メインアンテナ30は、ソレノイドコイル状のアンテナ部31及びコンデンサ32を備え、ブースターアンテナ40は、互いに並列に接続された第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41b、並びにコンデンサ42を備えている。ソレノイドコイル状のメインアンテナ30とブースターアンテナ40とは、互いに電磁界結合が可能である。このように、本実施形態に係るICタグ1は、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30とブースターアンテナ40とが組み合わされたアンテナ装置20を含むことにより、優れた交信性能を示すことができる。
以下に、本実施形態に係るアンテナ装置20の構成についてさらに詳細に説明する。図2では、図の簡略化のために、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30におけるコンデンサ32、及びブースターアンテナ40におけるコンデンサ42を省略し、2つのループアンテナ部41a、41b同士の接続についても図示を省略している。しかし、実際は図1に示すようにソレノイドコイル状のメインアンテナ30におけるコンデンサ32はアンテナ部31と接続され、ブースターアンテナ40におけるコンデンサ42は、第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41bが並列に接続されるようにそれぞれと接続されている。
図2に示すように、アンテナ装置20において、メインアンテナ30は、直方体状の磁性体33に導線が巻回されてなるソレノイドコイル状のアンテナ部31により構成される。なお、図2には現れていないが、磁性体33にはソレノイドコイル状のアンテナ部31から伸びるICチップ接続用端子が設けられており、これが上記ICチップ10と接続する際に用いられる。磁性体33は磁性材料を含んでなるものであればよく、磁性体33に用いられる磁性材料としては特に限定されず、例えばNi−Znフェライト磁性体等を用いることができる。また、ソレノイドコイル状のアンテナ部31に用いられる導線の材料も特に限定されず、例えば銀、金及び銅といった金属導体等が用いられる。
一方、ブースターアンテナ40は、非磁性体43の表面に第1のループアンテナ部(第1のブースターアンテナ部)41aと第2のループアンテナ部(第2のブースターアンテナ部)41bとが形成されてなる。なお、本発明において、ループアンテナとは、ソレノイドコイルのように磁心を巻回軸として導体が巻回されてなるアンテナではなく、基体の表面上に導体が渦状に形成されてなるアンテナをいう。非磁性体43は、非磁性材料からなるものであれば特に限定されず、例えばガラス系セラミックや非磁性フェライト等を用いることができる。第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41bは、非磁性体43の表面上において導線を巻回することで形成できるが、例えばプリント技術等を利用して非磁性体43の表面に形成されてもよく、その材料としては、上記ソレノイドコイル状のアンテナ部31と同様に金属導体等を用いることができる。これらの第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41bは、上記ソレノイドコイル状のメインアンテナ30と電磁界結合するように構成されている。
また、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとは、上述の通り、並列に接続されており、このようにすることで、それぞれのループアンテナ部が独立してメインアンテナやリーダライタ側のアンテナと電磁界結合が可能となるために、通常は交信距離が落ち込む方向での交信距離を伸ばすことができる。さらに、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとは、同一の方向に巻回されており、このようにすることで、それぞれのループアンテナ部の交信可能領域が重なる領域においてループアンテナ部同士が交信可能範囲を拡げる効果を強め合って、より交信可能範囲を拡大できる。
上記アンテナ装置20において、図2に示すように、メインアンテナ30の磁性体33の上には、上記複数のループアンテナ部が設けられた非磁性体43が積層されるが、具体的には、磁性体33におけるアンテナ部31の巻回軸方向(図2の左右方向)に対して垂直な方向(図2の上方向)に非磁性体43が積層される。その結果、メインアンテナ30のアンテナ部31の開口面と、第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41bの開口面とが垂直になるように配置される。
上述のとおり、メインアンテナ30は、主にアンテナ部31の巻回軸方向及び該巻回軸方向からある程度傾斜した方向において交信可能であり、巻回軸に対して垂直な方向、特にメインアンテナ30の中心領域から巻回軸に垂直な方向に対しては良好に交信ができない。しかし、本実施形態では、メインアンテナ30の上にブースターアンテナ40が設けられ、該ブースターアンテナ40は、第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41bが形成された非磁性体43の表面に対して垂直な方向、すなわち上記アンテナ部31の巻回軸に対して垂直な方向において良好に交信が可能である。従って、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30が良好に交信できない領域をブースターアンテナ40が補うことができ、その結果、本実施形態のアンテナ装置20は、交信可能範囲が拡大される。
また、本実施形態において、アンテナ装置20の交信可能範囲をより拡大するために、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとは、それらの一部が磁性体33における導体が巻回された部分(アンテナ部31)の直上に配置されている。すなわち、第1のループアンテナ部41a及び第2のループアンテナ部41bは、ソレノイドコイル状のアンテナ部31と部分的にオーバーラップしている。特に、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとは、非磁性体43の表面における中心で対称に配置されていることが好ましく、さらに第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとの間隙は短いほうが好ましい。さらに、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとは、それぞれソレノイドコイル状のアンテナ部31の端部とオーバーラップしていることが好ましい。ここで、ソレノイドコイル状のアンテナ部31の端部とは、該アンテナ部の巻回軸方向(図2の左右方向)の最も外側のコイル部分を意味する。このようにすることで、それぞれのループアンテナ部の持つ結合可能領域の重なりが大きくなり、特にソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中心領域から巻回軸に垂直な方向に対しての交信を良好にすることができる。一方、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとがソレノイドコイル状のアンテナ部31と全くオーバーラップしておらず、それらの間に大きな間隙がある場合、上記ソレノイドコイル状のメインアンテナ30が良好に交信できない領域における交信を第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bが補うことができず、アンテナ装置20の交信可能範囲を良好に拡大することができない。
以下に、第1のループアンテナ部41aと第2のループアンテナ部41bとの配置と、アンテナ装置20の交信可能範囲との関係について図3−1〜図3−3を参照しながら説明する。なお、図3−1〜図3−3において破線で囲まれた領域はアンテナ装置20の交信可能領域を示す。また、図3−1〜図3−3では、図の簡略化のために、コンデンサの図示を省略し、2つのループアンテナ部同士の接続についても図示を省略している。なお、後に説明する図4〜図8においても図3−1〜図3−3と同様にコンデンサの図示を省略し、2つのループアンテナ部同士の接続についても図示を省略している。
まず、図3−1(a)に示すように、ブースターアンテナ40を設けずにソレノイドコイル状のメインアンテナ30のみの場合は、上述したとおり、アンテナ部31の巻回軸方向及び該巻回軸方向からある程度傾斜した方向について交信可能となるが、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中央部分の上方においては交信ができない。
次に、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の上に2つのループアンテナ部41a、41bを設けた場合において、まず、図3−1(b)に示すように、2つのループアンテナ部41a、41bをソレノイドコイル状のアンテナ部31の直上には設けずに、すなわちアンテナ部31とオーバーラップしないように設けた場合は、2つのループアンテナ部41a、41bが設けられた領域の近傍の交信距離は大きくなるものの、図3−1(a)に示す2つのループアンテナ部41a、41bを設けない場合と同様に、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中央部分の上方においては交信ができない。
これに対して、図3−1(c)に示すように、2つのループアンテナ部41a、41bの一部のみがソレノイドコイル状のアンテナ部31の上にあり、すなわち2つのループアンテナ部41a、41bがアンテナ部31と部分的にオーバーラップし、特にアンテナ部31の端部とそれぞれオーバーラップしている場合、2つのループアンテナ部41a、41bが設けられた領域の近傍の交信距離が大きくなり、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中央部分の上方においても交信が可能となる。
また、図3−2(d)に示すように、2つのループアンテナ部41a、41bが図3−1(c)に示す場合よりも互いに近接して配置された場合、特に2つのループアンテナ部41a、41bの間隙の長さlがソレノイドコイル状のアンテナ部31のコイル長さLの2分の1未満の場合、これらのループアンテナ部41a、41bがソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中央部分の上方における交信距離をより大きくする。このため、アンテナ装置20としてソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中央部分の上方の交信がより良好となる。その結果、180°以上の方向で良好に交信可能となる。但し、ループアンテナ部41a、41bは、図3−1(c)と同様にアンテナ部31と部分的にオーバーラップすることが好ましい。言い換えると、ループアンテナ部41a、41bの一部は、アンテナ部31の外側の位置にはみ出していることが好ましい。このようにすると、アンテナ部31とループアンテナ部41a、41bとがより強く結合でき、アンテナ装置の交信範囲をより拡大することができる。
また、図3−1(c)及び図3−2(d)では、磁性体33と非磁性体43とが一致するように重なった構成を示したが、2つのループアンテナ部41a、41bがソレノイドコイル状のアンテナ部31と部分的にオーバーラップして配置されていれば、図3−2(e)に示すように、非磁性体43が磁性体33からはみ出した構成であっても構わない。このような構成であっても、図3−2(d)の場合と同様の効果を得ることができる。このとき、ソレノイドコイル状のアンテナ部31とループアンテナ部41a、41bの配置はこのままに、磁性体33の周囲を非磁性体によって補って、すなわち、磁性体33からはみ出した非磁性体43部分の直下に非磁性体を補って、直方体状のアンテナ装置20としても構わない。図3−1(c)〜図3−2(e)に示すように、2つのループアンテナ部41a、41bは、ソレノイドコイル状のアンテナ部31と部分的にオーバーラップし、且つ非磁性体43の表面の中心を基準に対称に配置されていることが特に好ましいが、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30によって交信できない範囲を補うことができれば、例えば図3−3(f)に示すように2つのループアンテナ部41a、41bのそれぞれがソレノイドコイル31と部分的にオーバーラップしていれば、2つのループアンテナの間隙が中央部分から幾分ずれていても構わない。また、図3−3(f)に示すようにループアンテナ部41a、41bの大きさは、同じでなくても構わない。このようにすることで、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の交信できない範囲を補いながら、特定方向(図3−3(f)では左方向)への指向性を高めることができる。
以上で説明した本実施形態によると、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30のみの場合と比較して交信可能な領域を拡大することができる。
以下に、本実施形態の種々の変形例について説明する。なお、以下の説明については、上記本実施形態と同一の構成については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本実施形態では、非磁性体43にループアンテナ部を2つ設けたが、3つ以上であっても構わない。例えば、本実施形態の第1変形例として、図4に示すように、非磁性体43にループアンテナ部が4つ設けられていてもよい。この場合、4つのループアンテナ部41a〜41dのそれぞれが、ソレノイドコイル状のアンテナ部31に部分的にオーバーラップするように配置されることが好ましい。従って、図4に示すように、4つのループアンテナ部41a〜41dがそれぞれ非磁性体43の表面の4隅に近接して配置されることが好ましい。
また、ループアンテナ部が3つ以上設けられる場合において、本実施形態の第2変形例として、図5(a)、(b)に示すように、非磁性体43が磁性体33からはみ出した構成であってもよい。このようにすることで、非磁性体43の表面の面積が大きくなり、複数のループアンテナ部のそれぞれを、一部がソレノイドコイル状のアンテナ部31の直上に位置するように、すなわちアンテナ部31に部分的にオーバーラップするように配置し易くなる。
また、本実施形態では、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の一方向の表面上にブースターアンテナ40を設けたが、本実施形態の第3変形例として、複数の面にブースターアンテナを設けてもよく、図6に示すように、例えばソレノイドコイル状のメインアンテナ30の対向する表面上に、アンテナ部31を挟むように2つのブースターアンテナ40、50が設けられてもよい。
具体的に、本変形例では図2に示す上記実施形態と同様に、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の磁性体33の上には、複数のループアンテナ部41a、41bが設けられた第1非磁性体43が積層される。具体的には、磁性体33におけるソレノイドコイル状のアンテナ部31の巻回軸方向(図6の左右方向)に対して垂直な方向(図6の上方向)に第1非磁性体43が積層される。さらに、図6に示すように、磁性体33の第1非磁性体43が設けられた側と反対側(図6の下側)にも、複数のループアンテナ部51a、51bが設けられた第2非磁性体53が積層される。これにより、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30が第1ブースターアンテナ40及び第2ブースターアンテナ50の2つのブースターアンテナによって巻回軸方向に対して垂直な方向(図6の上下方向)で挟まれた構成となる。
このようにすると、巻回軸方向に対して垂直な方向のうちの一方向のみならず、逆方向においてアンテナ装置20の交信領域を拡大することができる。なお、図6では、2つのブースターアンテナ40、50が、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30を巻回軸方向に対して垂直な方向で挟むように配置されているが、この配置に限らず、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の巻回軸方向に平行な磁性体33の4つの面上のうちの任意の2面にそれぞれブースターアンテナ40、50を配置できる。例えば、磁性体33の隣接する2面にそれぞれブースターアンテナ40、50を配置すれば、その配置した側にアンテナ装置としての指向性を向上することができる。また、磁性体33に配置するブースターアンテナの数は2つに限らず、3つでもよく、さらに、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の巻回軸と交差する2面を除く磁性体33の4面の全てに設けても構わない。このようにすると、360°方向で良好に交信が可能となる。なお、本変形例において、各ブースターアンテナ40、50における各ループアンテナ部41a、41b、51a、51bの巻回方向は同一であることが好ましい。また、異なる面に配置されたそれぞれのブースターアンテナは互いに並列接続されていてもよく、或いは接続されていなくてもよい。
また、本実施形態の第4変形例として、図7に示すように、ブースターアンテナ40の上に他のブースターアンテナ60が積層されていてもよい。他のブースターアンテナ60は、例えば非磁性体63の表面の中央に1つのループアンテナ部61が形成されてなる。このような構成にすることで、ソレノイドコイル状のメインアンテナ30の中央部分の上方における交信をより良好にすることができる。
以上では、ブースターアンテナが補強するためのアンテナとしてソレノイドコイル状のメインアンテナを用いた実施形態及びその変形例について説明したが、ソレノイドコイル状のアンテナ部の代わりに平面ループコイル状のアンテナ部を用い、該ループアンテナ部に上述した各構成のブースターアンテナを組み合わせてもよい。例えば、本発明の他の実施形態に係るアンテナ装置では、図8に示すように、磁性体73の一面にループコイル状のアンテナ部71が形成されてなるループコイル状のメインアンテナ70の該一面上に上記ブースターアンテナ40が積層される。このような構成にすることにより、特にループアンテナ部71が配置され、且つブースターアンテナ40が設けられた側への指向性を向上することができる。
以上のとおり、本発明の各実施形態及び各変形例に係るアンテナ装置によると、交信可能な領域を拡大することができ、該アンテナ装置を含むICタグによると、該ICタグの交信性能を向上することができる。
以下に、本発明に係るアンテナ装置を詳細に説明するための実施例を示す。本実施例は、本発明について例示するものであり、発明の範囲を限定するものではない。
まず、本実施例のアンテナ装置の構成について説明する。本実施例のアンテナ装置におけるメインアンテナは、すべてソレノイドコイル状のアンテナ部で構成されるものとし、長さ10mm、幅3mm、厚さ1.0mmのフェライト磁性体を磁心とした。磁性体からなる磁心に焼結銀により形成される幅0.2mmの導体を0.25mmの間隔で20ターン巻回してコイル状になるようにしてメインアンテナを作製した。
ブースターアンテナは非磁性フェライト上に2つのループアンテナ部が同一方向に2ターン巻回されたパターンを幅0.2mmの導体を間隔0.2mmで形成するように銀ペーストにて印刷したものを作製した。そして、上記メインアンテナとブースターアンテナとを、重ね合わせて、アンテナ装置を作製した。
ブースターアンテナにおける2つのループアンテナ部の配置は、実施例毎に変えた。実施例1〜4のアンテナ装置において、2つのループアンテナ部の配置を、それぞれ図3−1(c)〜図3−3(f)に図示した配置とした。
具体的に、実施例1のアンテナ装置は、図3−1(c)に示すように、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップするように2つのループアンテナ部が配置された構成とし、特に2つのループアンテナ部の間の距離をソレノイドコイル状のアンテナ部のコイル長さの2分の1の長さとした。
実施例2のアンテナ装置は、実施例1のアンテナ装置と同様に、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップするように2つのループアンテナ部が配置された構成であるが、特に、図3−2(d)に示すように、実施例1のアンテナ装置よりも2つのループアンテナ部の間の距離を小さくして近接させた。
実施例3のアンテナ装置は、実施例1のアンテナ装置と同様に、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップするように2つのループアンテナ部が配置された構成であるが、特に、図3−2(e)に示すようにブースターアンテナを実施例1の1.5倍とし、メインアンテナからはみ出した構成とした。
実施例4のアンテナ装置は、実施例2のアンテナ装置と同様に、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップし、且つ近接するように2つのループアンテナ部が配置された構成であるが、特に、図3−3(f)に示すように、一方のループアンテナ部を他方のループアンテナ部よりも大きい構成とした。
これらの実施例に対して、以下のような各比較例のアンテナ装置も作製した。
比較例1のアンテナ装置として、図3−1(a)に示すように、ブースターアンテナを設けずにメインアンテナのみからアンテナ装置を作製した。
比較例2のアンテナ装置として、メインアンテナに、ループアンテナ部を中央に1つのみ有するブースターアンテナを重ね合わせてアンテナ装置を作製した。
比較例3のアンテナ装置は、実施例2のアンテナ装置と同様に、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップし、且つ近接するように2つのループアンテナ部が配置された構成とし、2つのループアンテナ部が直列接続された構成とした。
比較例4のアンテナ装置は、実施例2のアンテナ装置と同様に、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップし、且つ近接するように2つのループアンテナ部が配置された構成とし、2つのループアンテナ部が互いに反対の向きに巻回された構成とした。
比較例5のアンテナ装置は、図3−1(b)に示すように、ソレノイドコイル状のアンテナ部とそれぞれオーバーラップしないように2つのループアンテナ部を大きく離間させた構成とした。
以上の実施例1〜4及び比較例1〜5のアンテナ装置の交信距離について、タカヤ製リーダライタTR3−C2−01にて評価した。メインアンテナであるソレノイドコイルの開口部と直交する方向にて、アンテナ装置の端部をA(中心から5mm)、反対側の端部B(中心から5mm)、中央部の交信距離を比較評価した。なお、実施例4においては、2つのループアンテナ部のうち大きい方が配置された側の端部をAとした。それらの結果を表1に示す。
表1に示すように、ソレノイドコイル状のアンテナ部の両端部とそれぞれオーバーラップするように2つのループアンテナ部が配置された構成である実施例1〜4のアンテナ装置では、ブースターアンテナを備えない比較例1と比較して、端部A、中央部及び端部Bのいずれにおいても交信距離が長くなった。実施例1よりも、2つのループアンテナ部を近接させた実施例2の方が、交信距離が長くなり、ブースターアンテナを大きくした実施例3ではさらに交信距離が長くなった。また、片方のループアンテナ部のみを大きくした実施例4では、ループアンテナ部を大きくした側の交信距離が長くなったことがわかる。
一方、比較例では、比較例5ではわずかに交信距離を長くすることができたものの、目立った効果は認められなかった。
以上から、本発明に係るアンテナ装置は、交信性能を向上することができることがわかる。
本発明に係るアンテナ装置及びそれを用いたICタグは、交信可能な範囲が拡大され、生産工程管理や倉庫等における物品管理等への適用に有益である。
1 ICタグ
10 ICチップ
20 アンテナ装置
30 メインアンテナ
31 (ソレノイドコイル状)アンテナ部
32 コンデンサ
33 磁性体
40 (第1の)ブースターアンテナ
41a〜41d ループアンテナ部
42 コンデンサ
43 (第1の)非磁性体
50 第2のブースターアンテナ
51a、b ループアンテナ部
53 第2の非磁性体
60 他のブースターアンテナ
61 ループアンテナ部
63 非磁性体
70 メインアンテナ
71 (ループコイル状)アンテナ部
73 磁性体

Claims (7)

  1. 磁性体に導体からなるアンテナ部が形成されてなるメインアンテナと、前記磁性体の表面上に配置された非磁性体の同一表面に複数のループアンテナ部が形成されてなるブースターアンテナとを備え、
    前記複数のループアンテナ部は、前記メインアンテナのアンテナ部と部分的にオーバーラップするように配置され、前記ブースターアンテナを構成する複数のループアンテナ部同士は、互いに並列接続され且つ同一の向きに巻回されていることを特徴とするアンテナ装置。
  2. 前記メインアンテナのアンテナ部は、前記磁性体を磁心として導体が巻回されてなるソレノイドコイル形状であり、前記非磁性体は、前記導体の巻回軸方向と平行な前記磁性体の表面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
  3. 前記非磁性体は、前記磁性体の複数の表面上にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
  4. 前記メインアンテナは、前記アンテナ部として前記磁性体の表面上にループアンテナ部が形成されてなるメインアンテナであり、前記ブースターアンテナの開口方向は、前記メインアンテナのアンテナ部の開口方向と同一であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
  5. 前記ブースターアンテナを構成するループアンテナ部は、前記メインアンテナのアンテナ部と部分的にオーバーラップするように配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
  6. 前記ブースターアンテナを構成するループアンテナ部は、前記非磁性体の表面に2つ形成されており、前記2つのループアンテナ部、互いに前記非磁性体の表面の中心を基準に対称に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナ装置を含むICタグ。

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