JPWO2017208701A1 - モータ制御装置 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載の技術では、速度検出値に含まれる所定の帯域の周波数の振動成分を抽出するバンドパス特性を持つ振動抽出フィルタを備え、抽出される振動成分の振幅の大きさを評価指標とする。この評価指標が最小となるようにノッチ周波数を勾配法に基づき探索して調整する技術が開示される。
特許文献2に記載の技術では、制御器から出力される操作量に対してハイパス特性を持つフィルタを作用させることで高周波数成分を励起させた操作量をモータに印加する。このときに励振される位置検出値をフーリエ変換し共振周波数を計算し、共振周波数にノッチフィルタのノッチ周波数を調整する技術が開示される。
しかし、ハイパス特性を持つフィルタを用いて共振周波数近傍の高周波数帯域のみを抽出する評価方法では、特許文献1の技術に関する上述の第一の理由と同様に、低周波数帯域における振動成分は評価できず、速度制御の安定性の劣化を防ぐことができない。そのため、ノッチフィルタを設定することで低周波数帯域の安定性を劣化させてしまう場合がある。つまり、ノッチフィルタの調整の後に速度制御の制御帯域を小さくして安定性を確保する措置が必要となり、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整ができない。
図1は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10の構成を示すブロック図である。
図1に示すようにモータ制御装置10は、モータ1とモータ位置検出器2に接続される。モータ制御装置10は、モータの位置を示す信号である位置信号Pfbを入力として、電流Ioを出力する。電流Ioは、モータ1がトルク指令Trのトルクを発生させるための電流である。モータ1は、機械負荷3に連結される。モータ1は、電流Ioによってトルク指令Trに追従するようにトルクを発生させる。モータ位置検出器2は、モータ1の位置を検出する装置であり、位置信号Pfbを出力する。
また、図1は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10を適用する機械システムの構成の一例を示すものでもある。
速度演算部101は、位置信号Pfbを入力として、モータ1の速度を示す信号である速度信号Vfbを演算して出力する。例えば、位置信号Pfbを微分操作することで速度信号Vfbを得る。
減算器102は、モータ1の速度の指令値を示す信号である速度指令Vrと、速度信号Vfbとの偏差を演算して速度偏差Veとして出力する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10において発振指示信号Rtがオンの状態のときに構成される発振期間における制御ループCL0を抽出して示したブロック図である。図2において発振期間における制御ループCL0を一点鎖線の枠で示す。発振期間における制御ループCL0は、図2において速度演算部101、強制発振部105、フィルタ部107、電流制御部108、モータ1を含んで構成される。図2においては、発振期間における制御ループCL0には、さらに減算器102、第3操作信号出力部106、モータ位置検出器2も含まれる。
本実施の形態では、第2操作信号u2は予め定められた振幅で発振する。
上記の強制発振部105の発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間の動作は、温度調整制御などで用いられるリミットサイクル法と呼ばれる方法における動作と同様である。
なお、前述の如く、発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間においては強制発振部105が出力する第2操作信号u2は値がゼロとなる。そのため、通常期間においては、フィルタ部は第1操作信号u1に対してフィルタ処理を行ってトルク指令Trを出力する。
なお、ここでは連続系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしているが、離散系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしてもよい。また、フィルタの周波数特性がパラメータに基づいて規定されるフィルタであれば他の構成でもよい。例えば、ローパスフィルタが直列に2つ以上設置されていてもよいし、あるいは位相進みフィルタ、位相遅れフィルタなどのフィルタを用いてもよい。
電流制御部108は、トルク指令Trを入力として、トルク指令Trのトルクを発生させるための電流Ioをモータ1へ供給する。このようにして、モータ1の制御が行われる。
フィルタ調整部110は取得される評価値Evを順次比較して小さい方の評価値Evを記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部107に設定する。
振幅評価部109で計算される評価値EvとゲインgP0とは次の関係式を満たす。
式(3)および式(4)に基づき、限界比例ゲインKpuと評価値Evは次の関係を満たす。
上述したとおり、強制発振部105の動作によってリミットサイクルを生じさせた結果、強制発振部105の入力信号と出力信号の振幅の比が速度制御部104の限界比例ゲインKpuを示す値となる。
つまり、強制発振部105の入力信号と出力信号の振幅の比の値を調べることで、速度制御部104の限界比例ゲインKpuを簡単に調べることができる。
強制発振部105と振幅評価部109の動作から、上記のように試行錯誤的に比例ゲインを徐々に上げて限界比例ゲインKpuを調べる作業は必要がなく、試行錯誤の煩わしさがない。
また、強制発振部105と振幅評価部109を用いることにより、機械システムの場合には1秒未満の短時間で限界比例ゲインKpuを推定することが可能である。
機械システムの外部からの操作に基づいて、発振指示部103の動作が開始され、発振指示信号Rtがオンの状態となると、前述の通り、強制発振部105の動作に基づいてリミットサイクルと呼ばれる自励振動が発生する。この自励振動により、第2操作信号u2と速度偏差Veが発振し、振幅評価部109において評価値Evが計算される。フィルタ調整部110は、1組目のフィルタパラメータ候補とこのときの評価値Evとを関連付けて保存する。
以上より、フィルタ調整部110の動作に基づいて、保持されるフィルタパラメータ候補のうちで速度制御帯域が最大化されるようなフィルタパラメータFpが選択され、フィルタ部107に設定される。
また、フィルタ調整部110は、評価値Evを用いることですべての周波数帯域における振動の振幅を評価することができる。従って、仮にノッチフィルタを設定することで低周波数帯域の振動が発生してもその振幅を評価することができる。つまり、フィルタ調整部110の動作によれば、低周波数帯域の安定性を劣化させることがない。
一般的な勾配法では、評価値が小さくなるように評価値の勾配が負である方向にパラメータの探索が進められるが、このとき評価値の勾配が0となる局所最適解で探索が終了されるため、局所最適解に陥る場合がある。これに対して、本実施の形態におけるフィルタ調整部110の動作においては、評価値Evの勾配に依存せずにフィルタパラメータFpを変更するため、前述のような局所最適解に陥ることがない。
また、フィルタ調整部110は、上述のように速度振幅Vaの操作振幅Uaに対する比である評価値Evの値に基づいてフィルタ部107の周波数特性の調整を実施する。そのため、調整結果においてノッチフィルタのノッチ周波数wnが共振周波数に必ずしも一致するような調整とはならず、多岐の選択肢から速度制御帯域を最大化する調整を実現することができる。
本実施の形態では、モータ位置検出器2によって検出される位置信号Pfbに基づいて速度信号Vfbが演算されるものについて説明したが、モータの速度を検出する速度検出器をモータ1に取り付け、速度信号Vfbを得るような構成にしてもよい。またモータ1の電流と電圧とからモータ1の速度を推定して速度信号Vfbを得るような構成にしてもよい。
フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御部104の限界比例ゲインKpuを推定するためには、評価値Evの取り方はこれに限るものではない。
例えば、上述の評価値Evの逆数である、操作振幅Uaを速度振幅Vaで除した値を評価値とすることが可能である。このときの評価値をEv1と呼ぶことにすると、Ev1=Ua/Vaとなる。限界比例ゲインKpuは、評価値Ev1を前述の定数cで除した値として取得することができる。
振幅評価部109は第2操作信号u2を入力信号として取得するものとしたが、振幅評価部109はトルク指令Trを入力信号としてもよい。
また、トルク指令Trを振幅評価部109の入力信号とする場合には、振幅評価部109は、入力されるトルク指令Trに対してフィルタ部107のフィルタの逆モデルの伝達関数を作用させた信号の振幅を操作振幅Uaとして得ればよい。
同様に、振幅評価部109は電流Ioを入力信号としてもよい。電流Ioを入力信号とする場合には、フィルタ部107と電流制御部108の逆モデルを用いることで上述の評価値Evと同等の評価値を得ることができる。
また、例えば第1操作信号u1を入力とした強制発振部105の内部において、第1操作信号u1を速度制御部104の比例ゲインで除した信号を得て、上述の説明における速度偏差Veに代入すれば、上述した説明と同様な動作を行うことは言うまでもない。
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択してフィルタ部の調整を行うものである。本実施の形態では速度制御部の調整をフィルタ部の調整と併せて行うことができるモータ制御装置について説明する。
モータ制御装置20は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部204、強制発振部105、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部109、フィルタ調整部210、ゲイン演算部211を構成要素に持つ。
また、実施の形態1で説明したのと同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とする部分を制御対象P0と呼ぶことにし、図5において破線の枠で示す。この制御対象P0は強制発振部105を制御器と考えたときの制御対象と見ることができる。
なお、図5において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
発振指示部103は、実施の形態1と同様に、オンまたはオフのいずれかの指示を示す発振指示信号Rtを出力する。
また、速度制御部204の演算で用いられる比例ゲインと積分ゲインは可変の値であり、ここでは制御ゲイン信号Gnに基づいて変更されるものとする。制御ゲイン信号Gnは比例ゲインと積分ゲインの値の情報を含む信号である。
フィルタ調整部210は取得される評価値Evを順次比較して小さいものを記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部107に設定する。
ゲイン演算部211は、最小評価値Evminを入力信号として有する。最小評価値Evminが入力されると、後述するように最小評価値Evminの逆数に予め定められた値を掛けた比例ゲインを演算する。また、比例ゲインの大きさによって決められる速度制御帯域の大きさに基づいて積分ゲインを演算する。それら比例ゲインと積分ゲインの値の情報を制御ゲイン信号Gnとして出力する。
モータ制御装置20において、フィルタ調整部210は、最小となった評価値Evを最小評価値Evminとして出力する点を除いては、実施の形態1のフィルタ調整部110の動作と同様である。そのため、強制発振部105と振幅評価部109とフィルタ調整部210の動作に基づいて得られる効果は、実施の形態1と同様である。
モータ制御装置20は、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合における、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域を簡単に調べることができる。また、モータ制御装置20は、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
また、速度制御部204は比例ゲインと積分ゲインのどちらもが可変の値であるものについて説明したが、これらの一方のみ、例えば比例ゲインのみを可変の値としてもよい。このとき、制御ゲイン信号Gnは比例ゲインの情報を含む信号となる。同様に、積分ゲインだけを可変の値とする構成も可能である。
本実施の形態におけるモータ制御装置20は上記のように動作する。機械システムの外部からの操作によって発振指示部103の動作が開始されると、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合における、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。また、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。さらに、速度制御部204の比例ゲインと積分ゲインを調整して、良好な応答を示す速度制御部204を実現することができる。
また、速度制御部の比例ゲインと積分ゲインとを調整して、良好な応答を示す速度制御を実現するモータ制御装置を得ることができる。
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、フィルタ調整部に複数組のフィルタパラメータ候補が保持されるものである。本実施の形態では、保持されるフィルタパラメータ候補を決定する機能を有するモータ制御装置について説明する。
モータ制御装置30は、速度演算部101、減算器102、発振指示部303、速度制御部104、強制発振部105、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部109、フィルタ調整部310、周波数演算部312を構成要素に持つ。
また、実施の形態1と同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とする部分を制御対象P0と呼ぶことにし、図6において破線の枠で示す。
実施の形態1と同様に、この制御対象P0は強制発振部105を制御器と考えたときの制御対象と見ることができる。
なお、図6において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
発振指示部303は、オンまたはオフのいずれかの状態を示す信号である発振指示信号Rtを出力する。発振指示部303は、機械システムの外部からの操作に基づいてその動作を開始して、発振指示信号Rtとしてオンとオフの信号をそれぞれ交互に予め定められた回数だけ繰り返して出力し、その動作を終了するものとする。発振指示部303の動作が開始していない状態および発振指示部303の動作が終了したとき以降の状態においては、発振指示信号Rtはオフの状態であるとする。本実施の形態では発振指示信号Rtは7回だけオンとなるものとする。
フィルタ調整部310において、1回目に発振指示信号Rtがオンとなり、リミットサイクルが発生した後にフィルタパラメータ候補の決定が行われる。フィルタ調整部310の動作によって1回目のリミットサイクルが発生する際には、フィルタ部107に設定されるフィルタパラメータFpは、フィルタ部107の伝達特性が1になるように調整されているものとする。
フィルタ調整部310はフィルタパラメータ候補を予め定められた順にフィルタ部107に設定する。
フィルタ調整部310は取得される評価値Evを順次比較して小さいものを記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部107に設定する。
まず、フィルタ調整部310と周波数演算部312を備えることによる効果を説明する。1回目にリミットサイクルを発生させるときには、フィルタ調整部310の動作によりフィルタ部107の伝達特性は1に調整されている。このとき周波数演算部312においてリミットサイクルの周波数が発振周波数Wvとして取得される。
図6における制御対象P0は、実施の形態1で述べたのと同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とし、強制発振部105に対する制御対象と見ることができる。
ノッチフィルタはノッチ周波数wnよりも高い周波数帯域で位相を進めるため、ノッチ周波数wnを共振周波数の0.5〜1.0倍程度に設定しても共振周波数で安定性を確保する効果がある。また、複数の共振周波数があり、ある共振周波数の0.5〜2.0倍程度の近傍の帯域に別の共振周波数が存在しているなどの場合には、それらの周波数の中間にノッチ周波数wnを設定したほうが速度制御帯域を向上させられるときがある。
そこで、6組のフィルタパラメータ候補のうち、i番目のフィルタパラメータ候補のノッチ周波数wnの候補をwn(i)としたとき、発振周波数Wvに基づいてノッチ周波数の候補wn(i)は下記の式(7)のように決定する。なお、iはフィルタパラメータ候補の番号を示す自然数であり、この例ではiは1から6までの自然数である。
モータ制御装置30において、フィルタ調整部310は、発振周波数Wvに基づいて複数組のフィルタパラメータ候補を決定する点を除いては、実施の形態1のフィルタ調整部110の動作と同様である。そのため、強制発振部105と振幅評価部109とフィルタ調整部310の動作に基づいて得られる効果は、実施の形態1と同様である。モータ制御装置30は、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合の、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域を簡単に調べることができる。従って、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
また、フィルタ調整部310の動作により複数組のフィルタパラメータ候補が決定されるため簡単にフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、第2操作信号u2の振幅は予め定められた大きさであるとしている。本実施の形態では速度偏差Veの振幅が予め定められた大きさとなるように第2操作信号u2の大きさを調整する機能を備えるモータ制御装置について説明を行う。
モータ制御装置50は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部104、強制発振部505、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部509、フィルタ調整部110を構成要素に持つ。
強制発振部505は、フィルタ部107と電流制御部108とモータ1と速度演算部101と共に発振期間における制御ループCL0を構成し、この発振期間における制御ループCL0を発振させる動作を行う。具体的には、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力として、発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間に、可変の大きさUvの操作振幅を持ち、後述する方法で正負が決定される値である第2操作信号u2を出力する。
振幅評価部509は、速度偏差Veを入力として、速度偏差Veの振幅である速度振幅Vaを取得する。ここで、速度偏差Veの振幅の演算手段として、速度偏差Veの符号が変化してから次に符号が変化するまでの期間の信号の絶対値の最大値を信号の振幅として演算してもよい。あるいは、速度偏差Veの振幅は、FFTにより得られるスペクトルが最大である信号を振幅としてもよい。
まず、強制発振部505と振幅評価部509とを備えることによる効果を説明する。フィルタ部107の周波数特性により速度制御帯域が大きく調整された状況を考える。このとき、操作振幅Uvが一定の大きさであると、図7における制御対象P0のゲインgP0は小さい値となる。つまり、強制発振部505の動作により生じるリミットサイクルの速度振幅Vaの大きさが小さくなる。本実施の形態では、振幅評価部509の動作により、速度振幅Vaが予め定められた振幅目標値Vasまで大きくなるように、操作振幅Uvが操作される。そのため、フィルタ部107の周波数特性に依らず、強制発振部505の動作により生じるリミットサイクルの速度振幅Vaは予め定められた大きさとなる。
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、強制発振部105の出力信号である第2操作信号u2にフィルタ処理を行うことでトルク指令Trを演算するものである。
本実施の形態では強制発振部の出力信号をトルク指令Trとするモータ制御装置について説明を行う。
モータ制御装置60は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部604、強制発振部605、トルク指令出力部606、フィルタ部607、電流制御部108、振幅評価部609、フィルタ調整部610を構成要素に持つ。
図8において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
速度制御部604は、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力とする。速度制御部604は発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間においては、速度偏差Veに対して制御ゲインの1つである比例ゲインを乗じて得た比例補償と、速度偏差Veに対して制御ゲインの1つである積分ゲインを乗じて積分を行って得た積分補償との和を演算して第1操作信号u1として出力する。
フィルタ部607は、第1操作信号u1を入力として、第1操作信号u1にフィルタ処理を行って演算される第4操作信号u4を出力する。フィルタ部607のフィルタの周波数特性はフィルタパラメータFpに基づいて規定され、その周波数特性はフィルタパラメータFpに応じて可変であるとする。
なお、ここでは連続系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしているが、離散系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしてもよい。また、フィルタの周波数特性がパラメータに基づいて規定されるフィルタであれば他の構成でもよい。例えば、ローパスフィルタが直列に2つ以上設置されていてもよいし、あるいは位相進みフィルタ、位相遅れフィルタなどのフィルタを用いてもよい。
第4操作信号の符号に応じて+Uaまたは−Uaのどちらかの値が第5操作信号u5として選択される。この選択に際しては、第4操作信号にローパスフィルタを作用させた結果の信号の符号に応じて+Uaまたは−Uaの値のどちらかが選択されてもよい。また、+Uaまたは−Uaの値は単純に第4操作信号の符号に応じて選択されるだけでなく、第4操作信号に非線形なヒステリシス特性を持たせた信号に基づいて+Uaと−Uaとから選択されてもよい。
第5操作信号u5は予め定められた振幅で発振する。
上記の強制発振部605の発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間の動作は、温度調整制御などで用いられるリミットサイクル法と呼ばれる方法における動作と同様である。
ここでは最終的に1組の最適フィルタパラメータを得られればよいので、フィルタ調整部610は必ずしもフィルタパラメータ候補と、フィルタパラメータ候補に関連付けられた評価値Evとを全て保存しておく必要はない。フィルタ調整部610は、各段階で最も小さい評価値Evと新たに取得された評価値Evを逐次比較して、より小さい方の評価値Evとそれに関連付けられるフィルタパラメータ候補を保存しておくとしてもよい。
まず、強制発振部605と振幅評価部609を構成要素に含むことによる効果を説明する。発振指示信号Rtがオフである通常期間には、モータ制御装置60では速度フィードバック制御が実行され、モータ1の速度がモータの速度指令Vrに近づくように動作をする。一方で、発振指示信号Rtがオンである発振期間には、強制発振部605の動作によって前述のようにリミットサイクルと呼ばれる自励振動が生じる。
ゲインgP1は、その定義より、制御対象P1に周波数wP1の正弦波信号が第5操作信号u5として入力されるときの出力信号である第4操作信号の振幅を第5操作信号u5の振幅で除した値である。
式(10)および式(11)に基づき、限界比例ゲインKpuと、発振時に速度制御部604に設定されている比例ゲインKp0と、評価値Evは次の関係を満たす。
強制発振部605と振幅評価部609の動作によれば、上記のように試行錯誤的に比例ゲインを徐々に上げて限界比例ゲインを調べる作業は必要がなく、試行錯誤の煩わしさがない。
本実施の形態では、強制発振部605の処理をフィルタ部607のフィルタ処理の後段において実行している。このため、発振指示信号Rtがオンである発振期間において、トルク指令Trの振幅は、強制発振部605が出力する第5操作信号u5の振幅と同等の一定の大きさの振幅となる。
これにより、例えばモータ位置検出器2の分解能が粗い場合であっても、所定の大きさの振幅のトルク指令Trによってモータ1をいつも十分に大きな振幅で発振させることが可能であり、振幅評価部609において発振時の振幅の評価が可能となる。
フィルタ調整部610を構成要素に追加したことによるモータ制御装置60の効果は、実施の形態1におけるフィルタ調整部110を追加したことによるモータ制御装置10と同様の効果を有する。
また、モータ位置検出器2によって検出される位置信号Pfbに基づいて速度信号Vfbが演算されるものについて説明したが、モータの速度を検出する速度検出器をモータ1に取り付け、速度信号Vfbを得るような構成にしてもよい。
しかしながら、フィルタ部607の周波数特性に応じた速度制御部604の限界比例ゲインKpuを推定するためには、評価値Evのとり方はこれに限るものではない。
電流Ioに対して電流制御部108の逆モデルの伝達関数を作用させた信号の振幅は、第5操作信号u5の振幅と同等の大きさとなるため、振幅評価部609は上述される評価値Evと同等の評価値を取得することができる。
Claims (6)
- 機械負荷に連結されるモータの速度を表す速度信号と、前記モータの速度の指令値である速度指令とに基づいて、前記モータのトルクの指令値であるトルク指令を演算して前記モータを制御するモータ制御装置において、
前記速度信号が前記速度指令に一致するように第1操作信号を演算して出力する速度制御部と、
前記トルク指令に基づいて前記モータに電流を与える電流制御部と、
前記速度信号を出力する速度演算部と、
発振の実行を指示するオン又は停止を指示するオフの信号である発振指示信号を出力する発振指示部と、
フィルタパラメータによって規定される周波数特性を有するフィルタ処理を行うフィルタ部と、
前記発振指示信号がオンである発振期間に、前記フィルタ部、前記電流制御部、前記モータおよび前記速度演算部と共に発振期間における制御ループを構成し、前記発振期間における制御ループを発振させる強制発振部と、
前記強制発振部によって前記発振期間における制御ループが発振されたときに、前記強制発振部の入力信号の振幅の前記強制発振部の出力信号の振幅に対する比を評価値として取得する振幅評価部と、
前記フィルタパラメータの複数の候補を順次、前記フィルタ部に設定した場合の前記評価値を取得し、複数の前記評価値を比較して前記評価値が小さくなる前記フィルタパラメータを選択し、前記フィルタ部に設定するフィルタ調整部と、
を備えたことを特徴とするモータ制御装置。 - 前記フィルタ部は、前記発振指示信号がオフである通常期間に前記フィルタ処理を前記第1操作信号に行って前記トルク指令を出力し、前記電流制御部に出力することにより、前記モータを制御することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
- 前記強制発振部は、前記速度指令と前記速度信号との偏差である速度偏差又は前記速度信号を入力として第2操作信号を出力し、
前記第1操作信号および前記第2操作信号を加算するか又は前記第1操作信号および前記第2操作信号のうちのいずれか一方を選択することにより第3操作信号を得て出力する第3操作信号出力部をさらに備え、
前記フィルタ部は、前記発振期間に前記第3操作信号に対して前記フィルタ処理を行って前記トルク指令を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。 - 前記フィルタ部は、前記第1操作信号に対して前記フィルタ処理を行って第4操作信号を出力し、
前記強制発振部は、前記第4操作信号を入力として第5操作信号を出力し、
前記第4操作信号および前記第5操作信号を加算するか又は前記第4操作信号および前記第5操作信号のうちのいずれか一方を選択することにより前記トルク指令を得て出力するトルク指令出力部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。 - 前記強制発振部は、前記強制発振部の入力信号の正又は負の符号に応じてそれぞれ、予め定められた大きさの正又は負の値を出力することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のモータ制御装置。
- 前記振幅評価部は、前記強制発振部の入力信号の振幅を前記強制発振部の出力信号の振幅で除した値又は前記出力信号の振幅を前記入力信号の振幅で除した値を前記評価値とすることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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