JPWO2017208701A1 - モータ制御装置 - Google Patents

モータ制御装置

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Abstract

速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を簡単に行うモータ制御装置を得るために、発振指示信号を出力する発振指示部(103)と、フィルタパラメータによって規定される周波数特性を有するフィルタ処理を行うフィルタ部(107)と、発振指示信号がオンである発振期間に、フィルタ部(107)、電流制御部(108)、モータ(1)および速度演算部(101)と共に発振期間における制御ループを構成し、発振期間における制御ループを発振させる強制発振部(105)と、発振期間における制御ループが発振されたときに強制発振部(105)の入力信号の振幅の出力信号の振幅に対する比を評価値として取得する振幅評価部(109)と、フィルタパラメータの複数の候補を順次、フィルタ部(107)に設定した場合の複数の評価値を比較して評価値が小さくなるフィルタパラメータを選択し、フィルタ部(107)に設定するフィルタ調整部(110)を備える。

Description

本発明は機械負荷を駆動するモータの制御を行うモータ制御装置に関する発明である。
機械負荷とモータを連結したモータ制御装置では、機械負荷とモータの慣性比、機械の剛性に依存する共振特性を有するため、速度制御の制御帯域を拡大しようとすると、共振周波数における振動が生じることがある。安定かつ高応答な制御を行うためには、共振周波数における振動を低減しつつモータの速度制御帯域が大きくなるように、速度制御器とフィルタの周波数特性の調整を行う必要がある。フィルタとしてノッチフィルタを用いる場合、入力信号を減衰させる帯域の中心周波数であるノッチ周波数、減衰させる幅(帯域の幅)、深さ(減衰振幅)を調整する必要がある。フィルタの周波数特性を手動で調整する際には、操作者はフィルタのパラメータ、速度制御器の制御ゲインを変更する毎に機械システムを動作させると共に、その応答を測定して良し悪しを判断するといった作業を繰り返す必要がある。
機械システムの共振特性に応じてフィルタの周波数特性を調整する技術として、特許文献1、特許文献2に記載される技術が開示される。
特許文献1に記載の技術では、速度検出値に含まれる所定の帯域の周波数の振動成分を抽出するバンドパス特性を持つ振動抽出フィルタを備え、抽出される振動成分の振幅の大きさを評価指標とする。この評価指標が最小となるようにノッチ周波数を勾配法に基づき探索して調整する技術が開示される。
特許文献2に記載の技術では、制御器から出力される操作量に対してハイパス特性を持つフィルタを作用させることで高周波数成分を励起させた操作量をモータに印加する。このときに励振される位置検出値をフーリエ変換し共振周波数を計算し、共振周波数にノッチフィルタのノッチ周波数を調整する技術が開示される。
特開2009―296746号公報(7〜8ページ、図4) 特開2005―149711号公報(14〜16ページ、図2)
特許文献1に記載の技術では、速度制御の安定性を確保しつつ制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことができず、また、速度制御部の事前設定の状況に依っては調整が実施できないという課題があった。
第一の理由を挙げる。ノッチフィルタを速度制御ループ内に設置すると、開ループ特性においてノッチ周波数よりも低い周波数帯域では位相が遅延するため、低周波数帯域において位相が180度以上遅延し、速度制御の安定性が劣化し、応答が振動的になる可能性がある。バンドパスフィルタを用いて共振周波数近傍の高周波数帯域のみを抽出する評価方法では、低周波数帯域における振動成分は評価できず、速度制御の安定性の劣化を防ぐことができない。そのため、ノッチフィルタを設定することで低周波数帯域の安定性を劣化させてしまう場合がある。つまり、ノッチフィルタの調整の後に速度制御の制御帯域を小さくして安定性を確保する措置が必要となり、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整ができない。
第二の理由を挙げる。特許文献1に記載の技術はノッチ周波数のみが調整可能な技術である。抽出される振動成分の振幅を評価指標とすると、どのような機械システムを対象としても、抽出される周波数帯域においてフィルタのゲイン低減の特性が大きいほど、評価指標が小さくなる。そのため、例えば特許文献1に記載の技術でノッチフィルタの深さ(減衰振幅)、幅(帯域の幅)を調整しようとすると、ノッチフィルタの深さが深くなる(減衰振幅が大きくなる)につれて評価指標は単調に小さくなる。また、ノッチフィルタの幅は広くなる(帯域の幅が大きくなる)につれて評価指標は単調に小さくなる。そのため、ノッチフィルタの妥当性を評価することはできず、ノッチフィルタの深さと幅を調整することはできない。よって、フィルタの周波数特性を良好に調整することはできない。結果として、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整ができない。
第三の理由を挙げる。特許文献1に記載の技術では、予め選択された帯域に振動成分が含まれなければノッチ周波数の調整を実施できない。例えば、速度制御部の制御ゲインが事前に小さく設定されている場合には、振動が励振されずフィルタパラメータの探索が進まないため、フィルタの調整を実施することができない。従って、ノッチフィルタ調整を行うために、速度制御部の速度ゲインを試行錯誤的に設定する必要がある。
以上より、特許文献1の技術では、速度制御帯域が最大化されるようなフィルタ調整ができず、また、速度制御部の事前設定の状況に依っては調整が実施できない。
次に、特許文献2に記載の技術は、ハイパス特性を持つフィルタを作用させて共振周波数の近傍の帯域を励振し、共振特性を調べて共振周波数におけるゲイン特性が低下するようにフィルタを調整する技術である。
しかし、ハイパス特性を持つフィルタを用いて共振周波数近傍の高周波数帯域のみを抽出する評価方法では、特許文献1の技術に関する上述の第一の理由と同様に、低周波数帯域における振動成分は評価できず、速度制御の安定性の劣化を防ぐことができない。そのため、ノッチフィルタを設定することで低周波数帯域の安定性を劣化させてしまう場合がある。つまり、ノッチフィルタの調整の後に速度制御の制御帯域を小さくして安定性を確保する措置が必要となり、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整ができない。
以上より、特許文献2の技術では、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことができず、また、フィルタの調整にあたっては操作者の試行錯誤による操作を要するという問題がある。
また、特許文献1および特許文献2のいずれの技術においても、抽出される振動の周波数の成分のみが低減されるようにノッチフィルタが調整される。そのため、抽出される振動の周波数にノッチ周波数が設定されることになる。しかしながら、振動周波数と異なる周波数にノッチ周波数を設定した方が速度制御帯域を拡大できる場合も多い。そのような場合には特許文献1および特許文献2の技術では、速度制御帯域を最大化することができないという問題がある。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、速度制御部の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、また、試行錯誤の煩わしさがなく、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を簡単に行うことができるモータ制御装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るモータ制御装置は、機械負荷に連結されるモータの速度を表す速度信号と、モータの速度の指令値である速度指令とに基づいて、モータのトルクの指令値であるトルク指令を演算してモータを制御するモータ制御装置において、速度信号が速度指令に一致するように第1操作信号を演算して出力する速度制御部と、トルク指令に基づいてモータに電流を与える電流制御部と、速度信号を出力する速度演算部と、発振の実行を指示するオン又は停止を指示するオフの信号である発振指示信号を出力する発振指示部と、フィルタパラメータによって規定される周波数特性を有するフィルタ処理を行うフィルタ部と、発振指示信号がオンである発振期間に、フィルタ部、電流制御部、モータおよび速度演算部と共に発振期間における制御ループを構成し、発振期間における制御ループを発振させる強制発振部と、強制発振部によって発振期間における制御ループが発振されたときに、強制発振部の入力信号の振幅の強制発振部の出力信号の振幅に対する比を評価値として取得する振幅評価部と、フィルタパラメータの複数の候補を順次、フィルタ部に設定した場合の評価値を取得し、複数の評価値を比較して評価値が小さくなるフィルタパラメータを選択し、フィルタ部に設定するフィルタ調整部と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、速度制御部の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、試行錯誤の煩わしさがなく、また、速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を簡単に行うモータ制御装置を得ることができる。
本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態1における発振期間における制御ループを示すブロック図である。 本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置の挙動を示す時間応答グラフである。 本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置において保持されるパラメータ候補と評価値の例を示す図である。 本発明の実施の形態2におけるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態3におけるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態4におけるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態5におけるモータ制御装置の構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態5における発振期間における制御ループを示すブロック図である。
本発明に係るモータ制御装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は例示であって、以下の実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10の構成を示すブロック図である。
図1に示すようにモータ制御装置10は、モータ1とモータ位置検出器2に接続される。モータ制御装置10は、モータの位置を示す信号である位置信号Pfbを入力として、電流Ioを出力する。電流Ioは、モータ1がトルク指令Trのトルクを発生させるための電流である。モータ1は、機械負荷3に連結される。モータ1は、電流Ioによってトルク指令Trに追従するようにトルクを発生させる。モータ位置検出器2は、モータ1の位置を検出する装置であり、位置信号Pfbを出力する。
ここで、モータ1の位置とは、モータ1の内部に備えられる可動子の回転位置、あるいは固定子に対する可動子の相対位置である。
また、図1は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10を適用する機械システムの構成の一例を示すものでもある。
モータ制御装置10は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部104、強制発振部105、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部109、フィルタ調整部110を構成要素に持つ。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置10の動作について説明する。
速度演算部101は、位置信号Pfbを入力として、モータ1の速度を示す信号である速度信号Vfbを演算して出力する。例えば、位置信号Pfbを微分操作することで速度信号Vfbを得る。
減算器102は、モータ1の速度の指令値を示す信号である速度指令Vrと、速度信号Vfbとの偏差を演算して速度偏差Veとして出力する。
発振指示部103は、発振の実行を指示するオンまたは発振の停止を指示するオフのいずれかを示す信号である発振指示信号Rtを出力する。発振指示部103は、機械システムの外部からの操作に基づいてその動作を開始して、発振指示信号Rtとしてオンまたはオフの信号をそれぞれ交互に予め定められた回数だけ繰り返して出力し、その動作を終了するものとする。以下、発振指示信号Rtがオンの状態である期間を発振期間と呼び、発振指示信号Rtがオフの状態である期間を通常期間と呼ぶ。発振指示部103の動作が開始していない状態および発振指示部103の動作が終了した後の状態においては、発振指示信号Rtはオフの状態であるとする。後述するフィルタパラメータ候補の組の数と同数だけ発振指示信号Rtがオンとオフの信号をそれぞれ交互に繰り返して出力する。
速度制御部104は、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力とする。速度制御部104は、通常期間においては、速度偏差Veに対して制御ゲインの1つである比例ゲインを乗じて得た比例補償と、速度偏差Veに対して制御ゲインの1つである積分ゲインを乗じて積分を行って得た積分補償との和を演算して第1操作信号u1として出力する。また、発振指示信号Rtがオンの状態になり発振期間となったとき、速度制御部104は、出力である第1操作信号u1として、発振指示信号Rtがオンの状態になる直前の値を保って一定値を出力する。
この直前の値を保つ動作は、例えば比例ゲインおよび積分ゲインを0にし、積分の出力を保持するようにすることで実現できる。この動作により、発振期間においても直前の安定な制御状態を保つことができ、モータに掛かる負荷の程度に拠らず、発振期間へ安定に移行することが可能となる。これにより速度制御部104の事前の設定の状況によらず後述する調整を行うことができる。
強制発振部105は、後述のように発振期間において、フィルタ部107と電流制御部108とモータ1と速度演算部101と共に発振期間における制御ループCL0を構成し、発振期間における制御ループを発振させる動作を行う。具体的には、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力として、発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間に、予め定められた大きさの振幅を持ち、後述する方法で正負が決定される値である第2操作信号u2を出力する。すなわち、入力である速度偏差Veに基づく非線形な演算により予め定められた大きさの振幅を持つよう演算した信号を出力する。このとき第2操作信号u2の振幅を操作振幅Uaと呼ぶ。
具体的には、速度偏差Veの符号に応じて+Uaまたは−Uaのどちらかの値が第2操作信号u2として選択される。この選択に際しては、速度偏差Veにローパスフィルタを作用させた結果の信号の符号に応じて+Uaまたは−Uaの値のどちらかが選択されてもよい。また、+Uaまたは−Uaの値は単純に速度偏差Veの符号に応じて選択されるだけでなく、速度偏差Veに非線形なヒステリシス特性を持たせた信号に基づいて、+Uaと−Uaとから選択されてもよい。
なお、強制発振部105は、発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間において、値がゼロの第2操作信号u2を出力する。
次に、発振指示信号Rtがオンの状態の動作について図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10において発振指示信号Rtがオンの状態のときに構成される発振期間における制御ループCL0を抽出して示したブロック図である。図2において発振期間における制御ループCL0を一点鎖線の枠で示す。発振期間における制御ループCL0は、図2において速度演算部101、強制発振部105、フィルタ部107、電流制御部108、モータ1を含んで構成される。図2においては、発振期間における制御ループCL0には、さらに減算器102、第3操作信号出力部106、モータ位置検出器2も含まれる。
発振指示信号Rtがオンになると、上述した強制発振部105の作用によりこの発振期間における制御ループCL0が発振する。なお、発振期間における制御ループCL0としては、フィルタ部107、電流制御部108、モータ1、速度演算部101および強制発振部105が含まれているものであればよい。また、以下の実施の形態においても発振期間における制御ループは同様に構成される。
このとき、速度偏差Veと強制発振部105が出力する第2操作信号u2とは一定の周期で発振する。この発振は自励振動によるものであり、この自励振動をリミットサイクルと呼ぶ。
本実施の形態では、第2操作信号u2は予め定められた振幅で発振する。
上記の強制発振部105の発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間の動作は、温度調整制御などで用いられるリミットサイクル法と呼ばれる方法における動作と同様である。
第3操作信号出力部106は、第1操作信号u1と第2操作信号u2を入力として、第1操作信号u1と第2操作信号u2の和を演算して第3操作信号u3として出力する。ここでは、第3操作信号出力部106は、第1操作信号u1と第2操作信号u2の和を第3操作信号u3とするものとしたが、これに限るものではない。第3操作信号出力部106は、発振指示信号Rtがオフの状態であるときは第1操作信号u1を第3操作信号u3として選択して出力するものであってもよい。あるいは、第3操作信号出力部106は、第2操作信号u2を選択して第3操作信号u3として選択して出力するものであってもよい。
フィルタ部107は、第3操作信号u3を入力として、第3操作信号u3にフィルタを作用させて演算されるトルク指令Trを出力するフィルタ処理を行う。フィルタ部107のフィルタの周波数特性はフィルタパラメータFpに基づいて規定され、その周波数特性はフィルタパラメータFpに応じて可変であるとする。
なお、前述の如く、発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間においては強制発振部105が出力する第2操作信号u2は値がゼロとなる。そのため、通常期間においては、フィルタ部は第1操作信号u1に対してフィルタ処理を行ってトルク指令Trを出力する。
本実施の形態では、フィルタ部107で演算に使われるフィルタはローパスフィルタとノッチフィルタの積によって構成されるものとする。このとき、フィルタパラメータFpにはノッチフィルタの中心周波数であるノッチ周波数wnと、ノッチフィルタの幅(帯域の幅)および深さ(減衰振幅)をそれぞれ規定する係数zaおよび係数zbと、ローパスフィルタの遮断周波数wlが含まれる。フィルタパラメータFpにはまた、ノッチフィルタを有効または無効にするスイッチと、ローパスフィルタを有効または無効にするスイッチも含まれるものとする。ここで、ノッチフィルタが無効である状態とはその伝達関数が1である状態を示す。同様にローパスフィルタが無効である状態とはその伝達関数が1である状態を示す。
有効である状態のローパスフィルタの伝達関数LPFと、有効である状態のノッチフィルタの伝達関数NFはフィルタパラメータFpによってそれぞれ式(1)、式(2)のように表される。
Figure 2017208701
Figure 2017208701
ここで、sはラプラス演算子を表す。
なお、ここでは連続系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしているが、離散系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしてもよい。また、フィルタの周波数特性がパラメータに基づいて規定されるフィルタであれば他の構成でもよい。例えば、ローパスフィルタが直列に2つ以上設置されていてもよいし、あるいは位相進みフィルタ、位相遅れフィルタなどのフィルタを用いてもよい。
電流制御部108は、トルク指令Trを入力として、トルク指令Trのトルクを発生させるための電流Ioをモータ1へ供給する。このようにして、モータ1の制御が行われる。
振幅評価部109は、上述した発振期間における制御ループCL0の発振状態の評価、特に発振期間における制御ループCL0の信号の振幅に関する評価を行う。具体的には、強制発振部105の入力である速度偏差Veと強制発振部105の出力である第2操作信号u2を入力として、速度偏差Veの振幅である速度振幅Vaと、第2操作信号u2の操作振幅Uaを取得する。ここで、第2操作信号u2は強制発振部105の動作から、矩形波信号であるので、第2操作信号u2の絶対値をとることで操作振幅Uaを取得できる。また、速度振幅Vaの演算手段として、速度偏差Veの符号が変化してから次に符号が変化するまでの期間の信号の絶対値の最大値を速度振幅Vaとして演算してもよい。
また、上記速度偏差Veに対してFFT(Fast Fourier Transform)の処理を行うことにより得られるスペクトルが最大である信号を速度振幅Vaとしてもよい。あるいは、以上述べた信号にローパスフィルタを作用させて得た信号を速度振幅Vaとしてもよい。
さらに、振幅評価部109は、速度振幅Vaの操作振幅Uaに対する比を評価値Evとして演算する。具体的には速度振幅Vaを操作振幅Uaで除した値を評価値Evとして演算する。すなわち、Ev=Va/Uaとなる。振幅評価部109は、発振指示信号Rtがオンからオフへ変わる直前の評価値Evを出力する。ただし、評価値Evの取り方はこれに限るものではない。例えば、本実施の形態では、操作振幅Uaは予め定められた大きさであり、速度振幅Vaの操作振幅Uaに対する比の値が速度振幅Vaのみに依存するため、単に評価値Evとして速度振幅Vaを用いてもよい。その場合には振幅評価部109は第2操作信号u2を入力信号として持つ必要がないことは言うまでもない。
また、速度振幅Vaを操作振幅Uaで除した値にローパスフィルタを作用させて得た値を評価値Evとしてもよい。後述するが、ここで演算される評価値Evはフィルタ部107の特性に依存する速度制御帯域の限界の大きさを示しており、フィルタ部107に設定されているフィルタパラメータFpを評価する値となる。
フィルタ調整部110は、フィルタ部107のフィルタパラメータFpの候補であるフィルタパラメータ候補を複数組保持しており、それらを予め定められた順にフィルタ部107に設定する。発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間において、予め定められた順にフィルタパラメータ候補のうちの1組をフィルタ部107に設定する。また、フィルタ調整部110は、評価値Evを入力信号として有しており、フィルタ部107に設定されているフィルタパラメータFpと評価値Evとを関連付けて保存する。
フィルタ調整部110は、保持しているフィルタパラメータ候補を予め定められた順にフィルタ部107に設定し、それぞれに関連付けられる評価値Evを取得する。
フィルタ調整部110は取得される評価値Evを順次比較して小さい方の評価値Evを記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部107に設定する。
ここでは最終的に1組の最適フィルタパラメータを得られればよいので、フィルタ調整部110は必ずしもフィルタパラメータ候補と、フィルタパラメータ候補に関連付けられた評価値Evとを全て保存しておく必要はない。フィルタ調整部110は、各段階で最も小さい評価値Evと新たに取得された評価値Evを逐次比較して、より小さい方の評価値Evとそれに関連付けられるフィルタパラメータ候補を保存しておくとしてもよい。
ここで、図1において、フィルタ調整部110から出てフィルタ部107を斜めに突き抜けている矢印は、フィルタ調整部110がフィルタ部107の内部の設定内容を変更することを意味する。また、これは以下の実施の形態におけるブロック図においても同様である。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置10によって得られる効果を説明する。
まず、強制発振部105と振幅評価部109を構成要素に含むことによる効果を説明する。発振指示信号Rtがオフである通常期間には、モータ制御装置10では速度フィードバック制御が実行され、モータ1の速度がモータの速度指令Vrに近づくように動作をする。一方で、発振指示信号Rtがオンである発振期間には、強制発振部105の動作によって前述のようにリミットサイクルと呼ばれる自励振動が生じる。すなわち、強制発振部105は、フィルタ部107と電流制御部108とモータ1と速度演算部101と共に発振期間における制御ループCL0を構成して、発振期間における制御ループCL0を発振させる。
機械システムの外部からの操作に基づいて発振指示部103の動作が開始されると、発振指示部103が発振指示信号Rtを出力しリミットサイクルが生じる。強制発振部105の動作によって生じるリミットサイクルの波形に基づいて、フィルタ部107の周波数特性に依存して変わる速度制御部104の速度制御帯域の限界の大きさを調べることができる。具体的には、強制発振部105の入力信号と出力信号の振幅の比に基づいて速度制御部104の速度制御帯域の限界の大きさを調べることができる。ここで、速度制御帯域の限界の大きさとは、速度制御部104の制御ゲインを安定性が確保される範囲で最大化した場合の制御帯域の大きさを示す。
以下、その理由について説明する。強制発振部105を制御器であると考えたとき、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とする対象は、強制発振部105に対する制御対象と見ることができる。説明のため、この制御対象を制御対象P0と呼ぶ。図1において、制御対象P0に含まれる構成要素を破線の枠で囲んで示す。図1に示すように、制御対象P0はフィルタ部107を含む。なお、制御対象P0については以下の実施の形態の説明においても本実施の形態と同様の考え方で用いている。
強制発振部105の動作に基づいて生じるリミットサイクルは、制御対象P0の伝達関数の開ループ特性において位相が180度遅れる周波数で定常的に発振する。ここで、制御対象P0の伝達関数の位相が180度遅れる周波数を周波数wP0とする。周波数wP0は位相交差周波数と呼ばれる。周波数wP0における制御対象P0のゲインをゲインgP0とする。制御対象P0の周波数特性に依存して変わる速度制御部104の比例ゲインの最大値を評価する上で、位相交差周波数におけるゲインgP0は重要な値である。
発振指示信号Rtがオフであり、速度制御部104による速度制御が行われている状態において、速度制御が安定な状態から比例ゲインを徐々に大きくしていくと比例ゲインが特定の値Kpuに達したときに定常的な振動が生じる。この特定の値Kpuは限界比例ゲインと呼ばれる。このとき、周波数wP0における制御系の一巡ループゲインは1になっており、限界比例ゲインKpuと、前述のゲインgP0は次の式(3)を満たす。
Figure 2017208701
つまり、ゲインgP0の大きさが判れば、式(3)を用いて限界比例ゲインKpuを計算することができる。
ゲインgP0は、その定義より、制御対象P0に周波数wP0の正弦波信号が第2操作信号u2として入力されるときの出力信号である速度偏差Veの振幅を第2操作信号u2の振幅で除した値である。一方で、強制発振部105によって生じるリミットサイクルでは、制御対象P0に周波数wP0の矩形波信号が第2操作信号u2として入力される状態である。つまり、第2操作信号u2が矩形波信号であるという点を除いて、強制発振部105によって生じるリミットサイクルにおいて、速度振幅Vaを操作振幅Uaで除した評価値Evを求める演算はゲインgP0を計算することと同等である。
また、後述する記述関数法に基づいて、矩形波信号の振幅は正弦波信号の振幅に近似的に置き換えることができる。つまり、速度振幅Vaの操作振幅Uaに対する比である評価値Evは、ゲインgP0を示す良い指標である。
振幅評価部109で計算される評価値EvとゲインgP0とは次の関係式を満たす。
Figure 2017208701
ここで、定数cは記述関数法に基づいて定められる定数である。定数cは記述関数法に基づき矩形波信号を正弦波信号に近似的に置き換える際の変換係数である。記述関数法によれば、定数cは入出力信号に対してフーリエ級数展開を施した場合の主成分の係数に基づいて計算することができる。具体的には、定数cは0.5から2.0までの範囲を取る。
操作振幅Uaが一定である場合には、定数c1をc1=c/Uaとして新たに定めることにすると、式(4)から、速度振幅Vaにc1を乗じた値がゲインgP0に一致する。よって、操作振幅Uaが一定の大きさである場合には、前述の通り速度振幅Vaを評価値Evとしても、評価値EvはゲインgP0と比例関係を満たし、良い指標となる。
式(3)および式(4)に基づき、限界比例ゲインKpuと評価値Evは次の関係を満たす。
Figure 2017208701
つまり、評価値Evを取得することで、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御部104の限界比例ゲインKpuを推定することが可能である。比例ゲインを大きい値に調整した速度制御部104は制御帯域が大きいため制御性能が良好であるが、速度制御の安定性を確保するためには比例ゲインは限界比例ゲインKpuよりも小さい範囲に調整される必要がある。限界比例ゲインKpuの値は、速度制御帯域の上限を決める値となる。ただし、限界比例ゲインKpuの大きさは制御対象P0の周波数特性に依存して様々な値をとる。特に、機械システムが共振特性を持つ場合には、限界比例ゲインKpuの値はフィルタ部107の周波数特性に大きく依存する。
フィルタ部107の周波数特性の調整によって速度制御部104の限界比例ゲインKpuが最大化されれば、速度制御部104の比例ゲインの調整可能な範囲が最大化され、速度制御の制御帯域を最大化することが可能になる。前述の通り、フィルタ部107の周波数特性の調整に際して、限界比例ゲインKpuを調べることは有益である。
上述したとおり、強制発振部105の動作によってリミットサイクルを生じさせた結果、強制発振部105の入力信号と出力信号の振幅の比が速度制御部104の限界比例ゲインKpuを示す値となる。
つまり、強制発振部105の入力信号と出力信号の振幅の比の値を調べることで、速度制御部104の限界比例ゲインKpuを簡単に調べることができる。
上述した強制発振部105の動作により、機械システムの場合であれば数十Hzから数千Hzの周波数のリミットサイクルが発生するため、1秒未満の短時間のリミットサイクルを発生させれば評価値Evの取得が可能である。仮に、強制発振部105がない場合には、出力である速度信号Vfbなどを測定しつつ、試行錯誤的に比例ゲインを徐々に大きくすることで限界比例ゲインKpuを調べる作業が必要となってくる。
強制発振部105と振幅評価部109の動作から、上記のように試行錯誤的に比例ゲインを徐々に上げて限界比例ゲインKpuを調べる作業は必要がなく、試行錯誤の煩わしさがない。
また、強制発振部105と振幅評価部109を用いることにより、機械システムの場合には1秒未満の短時間で限界比例ゲインKpuを推定することが可能である。
以上より、強制発振部105と振幅評価部109とを構成要素に含むことによってフィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。
次に、フィルタ調整部110を構成要素に追加したことによるモータ制御装置10の効果を、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の実施の形態1におけるモータ制御装置10の挙動を示す時間応答グラフである。図3は、上段から、発振指示信号Rt、第2操作信号u2、速度偏差Ve、評価値Evをそれぞれ示す。この例では、速度制御部104には、比例ゲインと積分ゲインとして小さな値が設定されており、速度制御が不安定ではないものとする。ここでは説明の簡単のため、フィルタ調整部110は3組のフィルタパラメータ候補を保持しているものとする。
それぞれのフィルタパラメータ候補は、フィルタ部107に設定される順に、1組目のフィルタパラメータ候補、2組目のフィルタパラメータ候補、3組目のフィルタパラメータ候補と呼ぶことにする。前述の通り、機械システムの外部からの操作に基づいて発振指示部103の動作が開始される。この例では、3組のフィルタパラメータ候補を評価するために、発振指示部103は発振指示信号Rtとしてオンの信号を3回出力する。
まず、フィルタ調整部110は、発振指示部103の動作が開始される前の発振指示信号Rtがオフである通常期間に、1組目のフィルタパラメータ候補をフィルタ部107に設定する。このときフィルタ部107の周波数特性は1組目のフィルタパラメータ候補に基づいて規定されている。
機械システムの外部からの操作に基づいて、発振指示部103の動作が開始され、発振指示信号Rtがオンの状態となると、前述の通り、強制発振部105の動作に基づいてリミットサイクルと呼ばれる自励振動が発生する。この自励振動により、第2操作信号u2と速度偏差Veが発振し、振幅評価部109において評価値Evが計算される。フィルタ調整部110は、1組目のフィルタパラメータ候補とこのときの評価値Evとを関連付けて保存する。
1回目の発振期間が終了した後の通常期間において、2組目のフィルタパラメータ候補がフィルタ部107に設定される。次に、発振指示信号Rtがオンの状態になると、再びリミットサイクルと呼ばれる自励振動が発生して、振幅評価部109において新たに評価値Evが計算される。フィルタ調整部110は、2組目のフィルタパラメータ候補とこのときの評価値Evとを関連付けて保存する。3組目に関しても、フィルタパラメータ候補がフィルタ部107に設定された後にリミットサイクルを発生させて、フィルタ調整部110が3組目のフィルタパラメータ候補とこのときの評価値Evとを関連付けて保存する。
このように、フィルタ調整部110が保持する複数組のフィルタパラメータ候補のそれぞれに対して評価値Evが計算される。前述の通り、振幅評価部109が評価値Evを計算することによって、それぞれのフィルタパラメータ候補の組に基づいて規定されるフィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを調べることができる。
図4は、フィルタ調整部110に保持されるフィルタパラメータ候補と評価値Evの値の例を示す。図4に示すフィルタパラメータ候補の値は単なる例であり、フィルタパラメータ候補として選択される値はこれに限るものではない。この例では2組目のフィルタパラメータ候補をフィルタ部107に設定した場合が、最も小さい評価値Evを得られるものとする。このとき、2組目のフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータと呼ぶ。
つまり、2組目のフィルタパラメータ候補をフィルタ部107に設定する調整は、限界比例ゲインKpuを最も大きくすることができ、速度制御帯域を最大化できるようなフィルタの調整であるといえる。3組のフィルタパラメータ候補の評価を終えた後に、フィルタ調整部110は、この例において最小となった評価値Evと関連付けられた第2のフィルタパラメータ候補をフィルタ部107に設定する。
以上より、フィルタ調整部110の動作に基づいて、保持されるフィルタパラメータ候補のうちで速度制御帯域が最大化されるようなフィルタパラメータFpが選択され、フィルタ部107に設定される。
前述の通り、強制発振部105の動作によりフィルタパラメータ候補の評価は短時間で完了する。特に、機械システムの場合には1組のフィルタパラメータ候補の評価は1秒未満で完了する。ここでは説明の簡単のため、フィルタパラメータ候補は3組であるとしたが、例えばフィルタパラメータ候補の組を100組としても100秒未満の短時間で調整を終えることが可能である。
以上より、フィルタ調整部110を構成要素に追加したことによりモータ制御装置10は、複数組のフィルタパラメータ候補を保持しておくことができる。そのフィルタパラメータ候補の中から評価値Evを最小化する最適フィルタパラメータを選択することで、速度制御帯域を最大化するフィルタ部107の調整が可能である。
また、フィルタ調整部110は、評価値Evを用いることですべての周波数帯域における振動の振幅を評価することができる。従って、仮にノッチフィルタを設定することで低周波数帯域の振動が発生してもその振幅を評価することができる。つまり、フィルタ調整部110の動作によれば、低周波数帯域の安定性を劣化させることがない。
また、フィルタ調整部110は、複数のフィルタパラメータ候補を保持しておくことができるため、フィルタ部107の周波数特性を連続的に変更することができ、フィルタ部107の周波数特性を離散的にも変更することができる。
一般的な勾配法では、評価値が小さくなるように評価値の勾配が負である方向にパラメータの探索が進められるが、このとき評価値の勾配が0となる局所最適解で探索が終了されるため、局所最適解に陥る場合がある。これに対して、本実施の形態におけるフィルタ調整部110の動作においては、評価値Evの勾配に依存せずにフィルタパラメータFpを変更するため、前述のような局所最適解に陥ることがない。
また、2組のフィルタパラメータ候補を保持しておき、評価値Evが小さくなる方のフィルタパラメータ候補を選択する方法も考えられる。その場合にはいずれか評価値Evが小さくなる点で探索が終了する。
また、フィルタパラメータ候補としてノッチ周波数wnのみならず、ノッチフィルタの深さと幅をパラメータとして保持し、それぞれを評価することが可能である。つまり、フィルタ調整部110の動作により、ノッチフィルタの深さと幅も調整することが可能である。
また、フィルタ調整部110は、上述のように速度振幅Vaの操作振幅Uaに対する比である評価値Evの値に基づいてフィルタ部107の周波数特性の調整を実施する。そのため、調整結果においてノッチフィルタのノッチ周波数wnが共振周波数に必ずしも一致するような調整とはならず、多岐の選択肢から速度制御帯域を最大化する調整を実現することができる。
また、強制発振部105とフィルタ調整部110とを構成要素に含むことによって、速度制御部104の事前の設定の状況によらずにリミットサイクルを発生させてフィルタパラメータ候補の評価を実施することができる。つまり、速度制御部104に設定される制御ゲインの値によらずにフィルタパラメータ候補の評価を実施することができ、速度制御帯域を最大化する調整を実施することができる。つまり、速度制御部104の事前の設定の状況によらず調整を実施することが可能である。
上述の構成では、発振指示信号Rtはオンとオフの状態をそれぞれ交互に予め定められた回数だけ繰り返す出力する信号であるとして、リミットサイクルを発生させないオフの状態の期間を設ける例について説明した。しかしながら、調整途中の段階でのオフの状態は必ずしも必要ではない。つまり、発振指示信号Rtは一度オンの状態になった後に各フィルタパラメータ候補の評価が終了するまでリミットサイクルを発生させ続けるものとしてもよい。このとき予め定められた時間が経過したらフィルタパラメータFpを変更すればよい。
また、速度制御部104において第1操作信号u1は比例補償と積分補償との和から演算されるものについて説明したが、速度制御部104における第1操作信号u1を演算する手段はこれに限るものではない。例えば、微分補償も備えたPID(比例積分微分)制御に基づく演算により第1操作信号u1を演算してもよい。
本実施の形態では、モータ位置検出器2によって検出される位置信号Pfbに基づいて速度信号Vfbが演算されるものについて説明したが、モータの速度を検出する速度検出器をモータ1に取り付け、速度信号Vfbを得るような構成にしてもよい。またモータ1の電流と電圧とからモータ1の速度を推定して速度信号Vfbを得るような構成にしてもよい。
上述の構成では、振幅評価部109は速度偏差Veを入力信号として速度偏差Veの振幅を速度振幅Vaとして演算するものについて説明した。これとは別に、速度信号Vfbを入力信号として速度信号Vfbの振幅を速度振幅Vaとして演算しても、実質的に速度偏差Veの振幅を評価するのと等価である。すなわち速度偏差Veを直接用いなくても実質的に速度偏差Veの振幅を評価できればよい。
上述の構成では、振幅評価部109は第2操作信号u2を入力信号として第2操作信号u2の振幅を操作振幅Uaとして演算するものについて説明したが、第3操作信号u3を入力信号として第3操作信号u3の振幅を操作振幅Uaとして演算してもよい。
また、説明のためフィルタ調整部110が保持するフィルタパラメータ候補を3組としたが、これに限るものではない。フィルタパラメータ候補が4組以上の場合であっても、上述と同様にフィルタ調整部110の動作に基づいて速度制御帯域を最大化することができるフィルタパラメータ候補が選択されてフィルタ部107に設定することができる。また、フィルタパラメータ候補が2つの場合でも、速度帯域を高くすることが可能なフィルタを短時間で選択できる効果が得られることに違いはない。また、フィルタパラメータ候補として、フィルタ部107が入力をその出力するような直達特性の場合を含むことも言うまでもない。
以上の説明では、振幅評価部109において、速度振幅Vaを操作振幅Uaで除した値を評価値Evとして取得することで、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御部104の限界比例ゲインKpuを推定することが可能であることを説明した。
フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御部104の限界比例ゲインKpuを推定するためには、評価値Evの取り方はこれに限るものではない。
例えば、上述の評価値Evの逆数である、操作振幅Uaを速度振幅Vaで除した値を評価値とすることが可能である。このときの評価値をEv1と呼ぶことにすると、Ev1=Ua/Vaとなる。限界比例ゲインKpuは、評価値Ev1を前述の定数cで除した値として取得することができる。
また、評価値Ev1の最大値を取得することが、評価値Evの最小値を取得することと等価であるため、最適なフィルタパラメータの選択に際しては、評価値Ev1の最大値をとるときのフィルタパラメータFpを最適フィルタパラメータとすればよい。
振幅評価部109は第2操作信号u2を入力信号として取得するものとしたが、振幅評価部109はトルク指令Trを入力信号としてもよい。
また、トルク指令Trを振幅評価部109の入力信号とする場合には、振幅評価部109は、入力されるトルク指令Trに対してフィルタ部107のフィルタの逆モデルの伝達関数を作用させた信号の振幅を操作振幅Uaとして得ればよい。
トルク指令Trに対してフィルタ部107のフィルタの逆モデルの伝達関数を作用させた信号の振幅は、第2操作信号u2の振幅と同等の大きさとなるため、振幅評価部109は上述した評価値Evと同等の評価値を取得することができる。
同様に、振幅評価部109は電流Ioを入力信号としてもよい。電流Ioを入力信号とする場合には、フィルタ部107と電流制御部108の逆モデルを用いることで上述の評価値Evと同等の評価値を得ることができる。
また、上記の説明では、強制発振部105への入力として速度偏差Veの代わりに速度制御部104の出力である第1操作信号u1を用いてもよい。この場合も、強制発振部105は、発振指示信号Rtがオンである発振期間にフィルタ部107と電流制御部108とモータ1と速度演算部101と共に発振期間における制御ループCL0を構成する。強制発振部105は、発振期間における制御ループCL0を発振させる動作を行う。
また、例えば第1操作信号u1を入力とした強制発振部105の内部において、第1操作信号u1を速度制御部104の比例ゲインで除した信号を得て、上述の説明における速度偏差Veに代入すれば、上述した説明と同様な動作を行うことは言うまでもない。
本実施の形態におけるモータ制御装置10は上記のように動作する。すなわち、機械システムの外部からの操作によって発振指示部103の動作が開始されると、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定し、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。また、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
本実施の形態によれば、速度制御部の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、試行錯誤の煩わしさがなく、また、簡単に速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
実施の形態2.
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択してフィルタ部の調整を行うものである。本実施の形態では速度制御部の調整をフィルタ部の調整と併せて行うことができるモータ制御装置について説明する。
図5は、実施の形態2におけるモータ制御装置20の構成を表すブロック図である。
モータ制御装置20は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部204、強制発振部105、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部109、フィルタ調整部210、ゲイン演算部211を構成要素に持つ。
また、実施の形態1で説明したのと同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とする部分を制御対象P0と呼ぶことにし、図5において破線の枠で示す。この制御対象P0は強制発振部105を制御器と考えたときの制御対象と見ることができる。
また、実施の形態1と同様に、発振期間における制御ループCL0が構成される。すなわち、発振期間における制御ループCL0は、速度演算部101、強制発振部105、フィルタ部107、電流制御部108、モータ1を含んで構成される。なお、発振期間における制御ループCL0には、実施の形態1と同様、さらに減算器102、第3操作信号出力部106、モータ位置検出器2も含まれている。
なお、図5において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置20の動作について説明する。
発振指示部103は、実施の形態1と同様に、オンまたはオフのいずれかの指示を示す発振指示信号Rtを出力する。
速度制御部204は、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力とする。速度制御部204は、発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間においては、速度偏差Veに対して、制御ゲインの1つである比例ゲインを乗じて得た比例補償と、速度偏差Veに対して、制御ゲインの1つである積分ゲインを乗じて積分を行って得た積分補償との和を演算して第1操作信号u1として出力する。また、発振指示信号Rtがオンの状態になり発振期間となったとき、速度制御部204の出力である第1操作信号u1は発振指示信号Rtがオンの状態になる直前の値を保って一定値を出力する。この直前の値を保つ動作は、例えば比例ゲインおよび積分ゲインを0にし、積分の出力を保持するようにすることで実現できる。これにより、発振期間においても直前の安定な制御状態を保つことができ、モータに掛かる負荷の程度に拠らず、発振期間へと安定に移行することが可能となる。
発振指示信号Rtがオンの状態になり発振期間となったとき、事前に速度制御部204に設定される制御ゲインの大きさによらず、発振期間へと安定に移行する。よって、速度制御部204の事前の設定の状況によらず調整を実施することが可能である。
また、速度制御部204の演算で用いられる比例ゲインと積分ゲインは可変の値であり、ここでは制御ゲイン信号Gnに基づいて変更されるものとする。制御ゲイン信号Gnは比例ゲインと積分ゲインの値の情報を含む信号である。
フィルタ調整部210は、フィルタ部107のフィルタパラメータFpの候補であるフィルタパラメータ候補を例えば100組保持しており、それらを予め定められた順にフィルタ部107に設定する。発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間において、予め定められた順にフィルタパラメータ候補のうちの1組をフィルタ部107に設定する。また、フィルタ調整部210は、速度振幅Vaの操作振幅Uaに対する比である評価値Evを入力信号として有しており、フィルタ部107に設定されているフィルタパラメータ候補と評価値Evとを関連付けて保存する。
フィルタ調整部210は、保持しているフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定し、それぞれに関連付けられる評価値Evを取得する。
フィルタ調整部210は取得される評価値Evを順次比較して小さいものを記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部107に設定する。
ここでは最終的に1組の最適フィルタパラメータを得られればよいので、必ずしもフィルタパラメータ候補とフィルタパラメータ候補に関連付けられた評価値Evを全て保存しておく必要はない。フィルタ調整部210は各段階で最も小さい評価値Evと新たに取得された評価値Evとを逐次比較して、より小さい方の評価値Evとそれに関連付けられるフィルタパラメータ候補とを保存しておくものとしてもよい。
また、フィルタ部207は、それぞれのフィルタパラメータ候補に関連付けられる評価値Evを取得した後に、取得した複数の評価値Evのうちで最小の値となった評価値Evを最小評価値Evminとして出力する。
ゲイン演算部211は、最小評価値Evminを入力信号として有する。最小評価値Evminが入力されると、後述するように最小評価値Evminの逆数に予め定められた値を掛けた比例ゲインを演算する。また、比例ゲインの大きさによって決められる速度制御帯域の大きさに基づいて積分ゲインを演算する。それら比例ゲインと積分ゲインの値の情報を制御ゲイン信号Gnとして出力する。
本実施の形態におけるモータ制御装置20によって得られる効果を説明する。
モータ制御装置20において、フィルタ調整部210は、最小となった評価値Evを最小評価値Evminとして出力する点を除いては、実施の形態1のフィルタ調整部110の動作と同様である。そのため、強制発振部105と振幅評価部109とフィルタ調整部210の動作に基づいて得られる効果は、実施の形態1と同様である。
モータ制御装置20は、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合における、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域を簡単に調べることができる。また、モータ制御装置20は、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
次に、ゲイン演算部211を追加したことによる効果を説明する。フィルタ調整部210の動作に基づいて複数組のフィルタパラメータ候補の評価が終了した後に、フィルタ部107の周波数特性が調整される。また、ゲイン演算部211には最小評価値Evminが入力される。最小評価値Evminと、このときのフィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御部204の限界比例ゲインKpuは、次の式(6)を満たす。
Figure 2017208701
従って、ゲイン演算部211は入力される最小評価値Evminから、調整されたフィルタ部107の周波数特性に応じた限界比例ゲインKpuを計算することができる。さらに、限界比例ゲインKpuに対して、0より大きく1より小さい定数γを掛けることによって比例ゲインを得る。限界比例ゲインKpuに対して定数γを掛けた比例ゲインは、限界比例ゲインKpuよりも小さい値となるので、安定性を確保した速度制御を実現することができる。
このときの比例ゲインを、例えばγ=0.45として設定すると、PI(比例積分)制御の良好な応答が得られるとされるZiegler−Nicholsの調整則に基づいて決められる比例ゲインと同等の比例ゲインを得ることができる。ただし、γの値はこの値に限るものではない。
定数γに基づいて得られる比例ゲインに基づいて決まる速度制御帯域をwscとする。また、積分ゲインの比例ゲインに対する比をwsiとする。wsiは積分補償が支配的である周波数帯と、比例補償が支配的である周波数帯の境界である折点周波数を示す。ゲイン演算部211では、折点周波数wsiが速度制御帯域wscよりも小さくなるように、積分ゲインを演算する。具体的には、速度制御帯域wscに対して0より大きく1より小さい定数δを掛けた値が折点周波数wsiとなるように積分ゲインを演算する。
このように積分ゲインを演算して調整することで、積分補償によって得られる低周波数帯域の高ゲイン特性を享受することができる。併せて、積分補償の持つ位相遅れ特性の速度制御帯域wscとその近辺への影響を小さくするような良好な応答を示す速度制御部204を実現することができる。
以上により、ゲイン演算部211では、最小評価値Evminに基づいて、速度制御部204が良好な応答を示すような比例ゲインと積分ゲインとを演算することができる。速度制御部204は、入力される制御ゲイン信号Gnに基づいて比例ゲインと積分ゲインとの値を変更し、良好な応答を示す速度制御を実現する。
上述した構成では、速度制御部204において第1操作信号u1は比例補償と積分補償との和から演算されるものについて説明したが、速度制御部204における第1操作信号u1の演算手段はこれに限るものではない。例えば、微分補償を備えたPID制御に基づく演算により第1操作信号u1を演算してもよい。このとき、制御ゲイン信号Gnは比例ゲインと積分ゲインと微分ゲインの情報を含む信号となる。
また、速度制御部204は比例ゲインと積分ゲインのどちらもが可変の値であるものについて説明したが、これらの一方のみ、例えば比例ゲインのみを可変の値としてもよい。このとき、制御ゲイン信号Gnは比例ゲインの情報を含む信号となる。同様に、積分ゲインだけを可変の値とする構成も可能である。
以上の構成においては、説明のためフィルタ調整部210が保持するフィルタパラメータ候補を100組として説明したが、フィルタパラメータ候補の組の数はこれに限るものではない。
本実施の形態におけるモータ制御装置20は上記のように動作する。機械システムの外部からの操作によって発振指示部103の動作が開始されると、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合における、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。また、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。さらに、速度制御部204の比例ゲインと積分ゲインを調整して、良好な応答を示す速度制御部204を実現することができる。
本実施の形態によれば、速度制御部の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、また試行錯誤の煩わしさを必要とすることなく、簡単に速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
また、速度制御部の比例ゲインと積分ゲインとを調整して、良好な応答を示す速度制御を実現するモータ制御装置を得ることができる。
実施の形態3.
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、フィルタ調整部に複数組のフィルタパラメータ候補が保持されるものである。本実施の形態では、保持されるフィルタパラメータ候補を決定する機能を有するモータ制御装置について説明する。
図6は、本実施の形態におけるモータ制御装置30の構成を表すブロック図である。
モータ制御装置30は、速度演算部101、減算器102、発振指示部303、速度制御部104、強制発振部105、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部109、フィルタ調整部310、周波数演算部312を構成要素に持つ。
また、実施の形態1と同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とする部分を制御対象P0と呼ぶことにし、図6において破線の枠で示す。
実施の形態1と同様に、この制御対象P0は強制発振部105を制御器と考えたときの制御対象と見ることができる。
また、実施の形態1と同様に、発振期間における制御ループCL0が構成される。すなわち、発振期間における制御ループCL0は、速度演算部101、強制発振部105、フィルタ部107、電流制御部108、モータ1を含んで構成される。なお、発振期間における制御ループCL0には、実施の形態1と同様、さらに減算器102、第3操作信号出力部106、モータ位置検出器2も含まれる。
なお、図6において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置30の動作について説明する。
発振指示部303は、オンまたはオフのいずれかの状態を示す信号である発振指示信号Rtを出力する。発振指示部303は、機械システムの外部からの操作に基づいてその動作を開始して、発振指示信号Rtとしてオンとオフの信号をそれぞれ交互に予め定められた回数だけ繰り返して出力し、その動作を終了するものとする。発振指示部303の動作が開始していない状態および発振指示部303の動作が終了したとき以降の状態においては、発振指示信号Rtはオフの状態であるとする。本実施の形態では発振指示信号Rtは7回だけオンとなるものとする。
後述するが、発振指示信号Rtが1回目にオンとなったときに6組のパラメータ候補が決定され、後の2回目から7回目で6組のパラメータ候補の評価が実施される。
フィルタ調整部310において、1回目に発振指示信号Rtがオンとなり、リミットサイクルが発生した後にフィルタパラメータ候補の決定が行われる。フィルタ調整部310の動作によって1回目のリミットサイクルが発生する際には、フィルタ部107に設定されるフィルタパラメータFpは、フィルタ部107の伝達特性が1になるように調整されているものとする。
フィルタ調整部310は、1回目のリミットサイクルが発生した後に、後述する発振周波数Wvを入力信号として、発振周波数Wvに基づいて、フィルタ部107のフィルタパラメータFpの候補である6組のフィルタパラメータ候補を決定し、保持する。具体的には発振周波数Wvに基づいてフィルタパラメータ候補のうちのノッチ周波数wnの候補を決定する。フィルタパラメータ候補を決定した後のフィルタ調整部310の動作は、実施の形態1のフィルタ調整部110の動作と同様である。
フィルタ調整部310はフィルタパラメータ候補を予め定められた順にフィルタ部107に設定する。
また、フィルタ調整部310は評価値Evを入力信号とし、フィルタ部107に設定されているフィルタパラメータ候補と評価値Evとを関連付けて保存する。フィルタ調整部310は、保持しているフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定し、それぞれに関連付けられる評価値Evを取得する。
フィルタ調整部310は取得される評価値Evを順次比較して小さいものを記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部107に設定する。
ここでは最終的に1組の最適フィルタパラメータを得られればよいので、必ずしもフィルタパラメータ候補と、フィルタパラメータ候補に関連付けられた評価値Evを全て保存しておく必要はない。フィルタ調整部310は、各段階で最も小さい評価値Evと新たに取得された評価値Evとを逐次比較して、より小さい方の評価値Evとそれに関連付けられるフィルタパラメータ候補を保存しておくとしてもよい。
周波数演算部312は、速度偏差Veを入力信号として、予め定められた期間の速度偏差Veの周波数成分のうちスペクトルが最大である周波数を発振周波数Wvとして取得して、発振周波数Wvを出力する。このとき速度偏差Veにローパスフィルタを作用させた信号に対する発振周波数Wvを用いてもよい。発振周波数Wvは、速度偏差Veの符号が変化してから次に符号が変化するまでの時間を測定し、その逆数に基づいて演算されるものであってもよい。あるいは、発振周波数Wvは、速度偏差Veに対してFFT処理を施して最大スペクトルの周波数を調べる手段に基づいて演算されるものであってもよい。周波数演算部312は演算した発振周波数Wvを出力する。
本実施の形態におけるモータ制御装置30によって得られる効果について説明する。
まず、フィルタ調整部310と周波数演算部312を備えることによる効果を説明する。1回目にリミットサイクルを発生させるときには、フィルタ調整部310の動作によりフィルタ部107の伝達特性は1に調整されている。このとき周波数演算部312においてリミットサイクルの周波数が発振周波数Wvとして取得される。
図6における制御対象P0は、実施の形態1で述べたのと同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とし、強制発振部105に対する制御対象と見ることができる。
制御対象P0の周波数特性は、共振周波数においてゲインのピークを持つとともに、共振周波数の前後で位相が急峻に遅れる。そのため、共振周波数付近の周波数で発振する場合が多い。ただし、位相交差周波数は共振周波数と完全に一致するとは限らず、共振周波数と発振周波数の比が0.5〜2倍以内の範囲でずれる場合も多い。
ノッチフィルタはノッチ周波数wnよりも高い周波数帯域で位相を進めるため、ノッチ周波数wnを共振周波数の0.5〜1.0倍程度に設定しても共振周波数で安定性を確保する効果がある。また、複数の共振周波数があり、ある共振周波数の0.5〜2.0倍程度の近傍の帯域に別の共振周波数が存在しているなどの場合には、それらの周波数の中間にノッチ周波数wnを設定したほうが速度制御帯域を向上させられるときがある。
このように複雑な関係から、ノッチ周波数wnの最適値は発振周波数Wvに完全には一致しない場合も多い。
そこで、6組のフィルタパラメータ候補のうち、i番目のフィルタパラメータ候補のノッチ周波数wnの候補をwn(i)としたとき、発振周波数Wvに基づいてノッチ周波数の候補wn(i)は下記の式(7)のように決定する。なお、iはフィルタパラメータ候補の番号を示す自然数であり、この例ではiは1から6までの自然数である。
Figure 2017208701
式(7)によってフィルタパラメータ候補のノッチ周波数wn(i)が決定されることで、それぞれのフィルタパラメータ候補に基づいて規定されるフィルタ部107は、共振周波数の近傍でゲインを低減させるノッチフィルタの周波数特性を持つ。ここで共振周波数の近傍とは共振周波数の0.5倍から2.0倍の周波数の区間を示す。以下でも同様である。
共振周波数の近傍にノッチフィルタが設定されることによる効果を説明する。ノッチフィルタはノッチ周波数wnよりも高い周波数において位相進み特性を持つため、ノッチフィルタを共振周波数の近傍に設置することにより、共振周波数の近傍の位相遅れの特性を軽減することができる。すなわち、ノッチフィルタを設置することにより位相交差周波数を高くすることができる。フィルタ調整部310で決定される6組のフィルタパラメータ候補を用いれば、共振周波数の近傍にノッチフィルタが設定されるため、位相交差周波数が高くなり速度制御帯域を大きくすることができる。
また、フィルタ調整部310の動作により、前述の6組のフィルタパラメータ候補から速度制御帯域を最大とするフィルタパラメータ候補を選択することが可能である。
モータ制御装置30において、フィルタ調整部310は、発振周波数Wvに基づいて複数組のフィルタパラメータ候補を決定する点を除いては、実施の形態1のフィルタ調整部110の動作と同様である。そのため、強制発振部105と振幅評価部109とフィルタ調整部310の動作に基づいて得られる効果は、実施の形態1と同様である。モータ制御装置30は、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合の、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域を簡単に調べることができる。従って、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
以上の説明において、周波数演算部312は、速度偏差Veを入力信号として、予め定められた期間の速度偏差Veの周波数成分のうちスペクトルが最大である周波数を発振周波数Wvとして取得する構成について示したが、これに限るものではない。速度偏差Veの代わりに速度信号Vfbを入力信号として、予め定められた期間の速度信号Vfbの周波数成分のうちスペクトルが最大である周波数を発振周波数Wvとして取得してもよい。あるいは、第2操作信号u2を入力信号として予め定められた期間の第2操作信号u2の周波数成分のうち、スペクトルが最大である周波数を発振周波数Wvとして取得してもよい。
以上説明した構成において、フィルタ調整部310においてフィルタパラメータ候補を決定する際に、ノッチ周波数wnのみに関して複数の候補値を与えるものとしたが、これに限るものではない。例えば、実施の形態1における式(2)に示したノッチフィルタの幅および深さをそれぞれ規定する係数zaおよび係数zbについて複数の候補値を与えるようにしてもよい。また、ノッチ周波数wnについては式(7)を用いて6通り決定し、係数zaと係数zbの選択肢としてそれぞれ3通りずつを与えるものとしてもよい。その場合はパラメータ候補の組は54通りとなる。
以上に述べたとおり、発振指示信号Rtが1回目にオンの状態になり発生するリミットサイクルの発振周波数Wvに基づいてフィルタパラメータ候補の組を決定する構成について説明したが、フィルタパラメータ候補の決定の方法はこれに限るものではない。例えば、1回目のリミットサイクルの発振周波数Wvの周波数にノッチフィルタを設定し、2回目のリミットサイクルの発振周波数Wvに基づいてフィルタパラメータ候補の組を決定するようにしてもよい。
本実施の形態におけるモータ制御装置30は以上述べたように動作する。すなわち、機械システムの外部からの操作によって発振指示部303の動作が開始されると、複数組のフィルタパラメータ候補を決定する。それらのフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合に、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。また、そのフィルタパラメータ候補の中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
本実施の形態によれば、速度制御部104の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、また試行錯誤の煩わしさを必要とすることなく、簡単に速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
また、フィルタ調整部310の動作により複数組のフィルタパラメータ候補が決定されるため簡単にフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
実施の形態4.
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、第2操作信号u2の振幅は予め定められた大きさであるとしている。本実施の形態では速度偏差Veの振幅が予め定められた大きさとなるように第2操作信号u2の大きさを調整する機能を備えるモータ制御装置について説明を行う。
図7は、本実施の形態におけるモータ制御装置50の構成を表すブロック図である。
モータ制御装置50は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部104、強制発振部505、第3操作信号出力部106、フィルタ部107、電流制御部108、振幅評価部509、フィルタ調整部110を構成要素に持つ。
また、実施の形態1で説明したのと同様に、第3操作信号u3を入力として速度信号Vfbを出力とする部分を制御対象P0と呼ぶことにし、図7において破線の枠で示す。実施の形態1と同様に、この制御対象P0は強制発振部505を制御器と考えたときの制御対象と見ることができる。
図7において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置50の動作を説明する。
強制発振部505は、フィルタ部107と電流制御部108とモータ1と速度演算部101と共に発振期間における制御ループCL0を構成し、この発振期間における制御ループCL0を発振させる動作を行う。具体的には、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力として、発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間に、可変の大きさUvの操作振幅を持ち、後述する方法で正負が決定される値である第2操作信号u2を出力する。
すなわち、入力である速度偏差Veに基づく非線形な演算により、予め定められた特性として制限された大きさの振幅を持つよう演算した信号を出力する。具体的には、速度偏差Veの偏差の符号に応じて+Uvまたは−Uvのどちらかの値が第2操作信号u2として選択される。この選択に際しては、速度偏差Veにローパスフィルタを作用させた結果の信号の符号に応じて+Uvまたは−Uvの値のどちらかが選択されてもよい。また、+Uvまたは−Uvの値は単純に速度偏差Veの符号に応じて選択されるだけでなく、速度偏差Veに非線形なヒステリシス特性を持たせた信号に基づいて+Uvと−Uvとから選択されてもよい。
強制発振部505は、発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間において、値が0の第2操作信号u2を出力する。ここで、第2操作信号の振幅である操作振幅Uvは振幅評価部509によって調整されるものとする。
振幅評価部509は、速度偏差Veを入力として、速度偏差Veの振幅である速度振幅Vaを取得する。ここで、速度偏差Veの振幅の演算手段として、速度偏差Veの符号が変化してから次に符号が変化するまでの期間の信号の絶対値の最大値を信号の振幅として演算してもよい。あるいは、速度偏差Veの振幅は、FFTにより得られるスペクトルが最大である信号を振幅としてもよい。
また、振幅評価部509には速度振幅Vaの目標値である振幅目標値Vasが設定される。演算された速度振幅Vaが振幅目標値Vasよりも小さい場合には、速度振幅Vaが振幅目標値Vasと同等の値になるまで前述の操作振幅Uvを徐々に大きくする。振幅評価部509は、速度振幅Vaの操作振幅Uvに対する比を評価値Evとして演算する。具体的には速度振幅Vaを操作振幅Uvで除した値を評価値Evとして演算するとよい。
本実施の形態におけるモータ制御装置50によって得られる効果について説明する。
まず、強制発振部505と振幅評価部509とを備えることによる効果を説明する。フィルタ部107の周波数特性により速度制御帯域が大きく調整された状況を考える。このとき、操作振幅Uvが一定の大きさであると、図7における制御対象P0のゲインgP0は小さい値となる。つまり、強制発振部505の動作により生じるリミットサイクルの速度振幅Vaの大きさが小さくなる。本実施の形態では、振幅評価部509の動作により、速度振幅Vaが予め定められた振幅目標値Vasまで大きくなるように、操作振幅Uvが操作される。そのため、フィルタ部107の周波数特性に依らず、強制発振部505の動作により生じるリミットサイクルの速度振幅Vaは予め定められた大きさとなる。
モータ位置検出器2の分解能が低く小さな速度振幅Vaの測定が困難である場合にも、本実施の形態の強制発振部505と振幅評価部509の動作により、速度振幅Vaの大きさが予め定められた大きさとなるため、リミットサイクルを測定することが可能である。
本実施の形態におけるモータ制御装置50によれば、操作振幅Uvが調整されるが、操作振幅Uvの大きさの変更に伴って速度振幅Vaの大きさが一定の比率で変わるため、速度振幅Vaに対する操作振幅の比は操作振幅Uvの大きさに依存しない。つまり、評価値Evは、実施の形態1で取得されるものと同等である。従って、本実施の形態におけるモータ制御装置50で得られる効果は実施の形態1のモータ制御装置10によって得られる効果と同様である。
よって、本実施の形態におけるモータ制御装置50は、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定した場合における、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域を短時間で調べることができる。また、複数組のフィルタパラメータ候補の中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
本実施の形態では、振幅評価部509は速度偏差Veを入力信号として速度偏差Veの振幅を速度振幅Vaとして演算する構成について説明したが、これに限るものではない。振幅評価部509は速度信号Vfbを入力信号として速度信号Vfbの振幅を速度振幅Vaとして演算するようにしてもよい。
モータ制御装置50は上記のように動作する。すなわち、機械システムの外部からの操作によって発振指示部103の動作が開始されると、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部107に設定し、フィルタ部107の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。また、複数組のフィルタパラメータ候補の中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部107の周波数特性を調整することができる。
本実施の形態によれば、速度制御部の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、また試行錯誤の煩わしさを必要とすることなく、簡単に速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
実施の形態5.
実施の形態1におけるモータ制御装置10は、強制発振部105の出力信号である第2操作信号u2にフィルタ処理を行うことでトルク指令Trを演算するものである。
本実施の形態では強制発振部の出力信号をトルク指令Trとするモータ制御装置について説明を行う。
図8は、本発明の実施の形態5におけるモータ制御装置60の構成を示すブロック図である。
モータ制御装置60は、速度演算部101、減算器102、発振指示部103、速度制御部604、強制発振部605、トルク指令出力部606、フィルタ部607、電流制御部108、振幅評価部609、フィルタ調整部610を構成要素に持つ。
図8において、実施の形態1における構成と同一の部分を表すものは、実施の形態1と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置60の動作について説明する。
速度制御部604は、速度偏差Veと発振指示信号Rtを入力とする。速度制御部604は発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間においては、速度偏差Veに対して制御ゲインの1つである比例ゲインを乗じて得た比例補償と、速度偏差Veに対して制御ゲインの1つである積分ゲインを乗じて積分を行って得た積分補償との和を演算して第1操作信号u1として出力する。
また、発振指示信号Rtがオンの状態になり発振期間となったとき、速度制御部604は、積分補償として、発振指示信号Rtがオンの状態になる直前の値を保持する。この直前の値を保つ動作は、例えば積分ゲインを0にし、積分の出力を保持することで実現できる。速度偏差Veに対して比例ゲインKp0を乗じて得た比例補償と保持される積分補償との和を演算して第1操作信号u1として出力する。ここで比例ゲインKp0は、発振指示信号Rtがオフの状態の比例ゲインと必ずしも同じである必要はない。
積分補償を保持する動作により、発振期間においても直前の安定な制御状態を保つことができ、モータに掛かる負荷の程度に拠らず、発振期間へ安定に移行することが可能となる。これにより速度制御部604の事前の設定の状況によらず後述する調整を行うことができる。
フィルタ部607は、第1操作信号u1を入力として、第1操作信号u1にフィルタ処理を行って演算される第4操作信号u4を出力する。フィルタ部607のフィルタの周波数特性はフィルタパラメータFpに基づいて規定され、その周波数特性はフィルタパラメータFpに応じて可変であるとする。
本実施の形態では、フィルタ部607で演算に使われるフィルタは例としてローパスフィルタとノッチフィルタの積によって構成されるものとする。このとき、フィルタパラメータFpにはノッチフィルタの中心周波数であるノッチ周波数wnと、ノッチフィルタの幅(帯域の幅)および深さ(減衰振幅)をそれぞれ規定する係数zaおよび係数zbと、ローパスフィルタの遮断周波数wlが含まれる。フィルタパラメータFpにはまた、ノッチフィルタを有効または無効にするスイッチと、ローパスフィルタを有効または無効にするスイッチも含まれるものとする。ここで、ノッチフィルタが無効である状態とは伝達関数が1である状態を示す。同様にローパスフィルタが無効である状態とは伝達関数が1である状態を示す。
有効である状態のローパスフィルタの伝達関数LPFと、有効である状態のノッチフィルタの伝達関数NFはフィルタパラメータFpによってそれぞれ式(8)、式(9)のように表される。
Figure 2017208701
Figure 2017208701
ここで、sはラプラス演算子を表す。
なお、ここでは連続系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしているが、離散系の伝達関数の係数をフィルタパラメータFpとしてもよい。また、フィルタの周波数特性がパラメータに基づいて規定されるフィルタであれば他の構成でもよい。例えば、ローパスフィルタが直列に2つ以上設置されていてもよいし、あるいは位相進みフィルタ、位相遅れフィルタなどのフィルタを用いてもよい。
強制発振部605は、後述のようにフィルタ部607と電流制御部108とモータ1と速度演算部101と共に発振期間における制御ループCL1を構成し、この発振期間における制御ループCL1を発振させる動作を行う。具体的には、第4操作信号と発振指示信号Rtを入力として、発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間に、予め定められた大きさの振幅を持ち、後述する方法で正負が決定される値である第5操作信号u5を出力する。
すなわち、入力である第4操作信号u4に基づく非線形な演算により予め定められた大きさの振幅を持つよう演算した信号を出力する。このとき出力である第5操作信号u5の振幅を操作振幅Uaと呼ぶ。操作振幅Uaは出力の振幅(出力振幅)である。
第4操作信号の符号に応じて+Uaまたは−Uaのどちらかの値が第5操作信号u5として選択される。この選択に際しては、第4操作信号にローパスフィルタを作用させた結果の信号の符号に応じて+Uaまたは−Uaの値のどちらかが選択されてもよい。また、+Uaまたは−Uaの値は単純に第4操作信号の符号に応じて選択されるだけでなく、第4操作信号に非線形なヒステリシス特性を持たせた信号に基づいて+Uaと−Uaとから選択されてもよい。
強制発振部605は、発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間において、値がゼロの第5操作信号u5を出力する。
次に、発振指示信号Rtがオンの状態の動作について図9を用いて説明する。図9は本発明の実施の形態5におけるモータ制御装置60から、発振指示信号Rtがオンの状態で構成される発振期間における制御ループCL1を抽出して示したブロック図である。同図において発振期間における制御ループを一点鎖線の枠で示す。発振期間における制御ループCL1は、図9において、速度演算部101、強制発振部105、フィルタ部107、電流制御部108、モータ1を含んで構成される。図9においては、発振期間における制御ループCL1にはさらに減算器102、トルク指令出力部606、モータ1、モータ位置検出器2も含まれる。
発振指示信号Rtがオンになると、上述した強制発振部605の作用により発振期間における制御ループCL1が発振する。なお、発振期間における制御ループCL1としては、フィルタ部607、電流制御部108、モータ1、速度演算部101および強制発振部605が含まれているものであればよい。
このとき、第4操作信号u4と強制発振部605が出力する第5操作信号u5はそれぞれ一定の周期で発振する。この発振は自励振動によるものであり、この自励振動をリミットサイクルと呼ぶ。
第5操作信号u5は予め定められた振幅で発振する。
上記の強制発振部605の発振指示信号Rtがオンの状態である発振期間の動作は、温度調整制御などで用いられるリミットサイクル法と呼ばれる方法における動作と同様である。
トルク指令出力部606は、第4操作信号u4と第5操作信号u5を入力として、第4操作信号u4と第5操作信号u5の和を演算してトルク指令Trとして出力する。前述の通り、第5操作信号u5としては+Uaまたは−Uaのどちらかの信号が選択されるため、第4操作信号が一定値である場合にはトルク指令Trは、その振幅がUaの波形となる。
ここでは、トルク指令出力部606は、第4操作信号u4と第5操作信号u5の和をトルク指令Trとするものとしたが、これに限るものではない。トルク指令出力部606は、発振指示信号Rtがオフの状態であるときは第4操作信号u4をトルク指令Trとして選択して出力するものであってもよい。あるいは、トルク指令出力部606は、第5操作信号u5を選択してトルク指令Trとして選択して出力するものであってもよい。
振幅評価部609は、強制発振部605の入力である第4操作信号u4と強制発振部605の出力である第5操作信号u5を入力として、第4操作信号の振幅である入力振幅Iaと第5操作信号u5の振幅である操作振幅Uaを取得する。ここで、第5操作信号u5は強制発振部605の動作から、矩形波信号であるので、第5操作信号u5の絶対値をとることで操作振幅Uaを取得できる。また、入力振幅Iaの演算手段として、第4操作信号の符号が変化してから次に符号が変化するまでの期間の信号の絶対値の最大値を入力振幅Iaとして演算してもよい。また、上記第4操作信号に対してFFT処理を行うことにより得られるスペクトルが最大である信号を入力振幅Iaとしてもよい。あるいは、以上述べた信号にローパスフィルタを作用させて得た信号を入力振幅Iaとしてもよい。
振幅評価部609は、入力振幅Iaの操作振幅Uaに対する比を評価値Evとして演算する。具体的には入力振幅Iaを操作振幅Uaで除した値を評価値Evとして演算する。すなわち、Ev=Ia/Uaとなる。振幅評価部609は、発振指示信号Rtがオンからオフへ変わる直前の評価値Evを出力する。
ただし、評価値Evの取り方はこれに限るものではない。例えば、本実施の形態では、操作振幅Uaは予め定められた大きさであり、入力振幅Iaの操作振幅Uaに対する比の値が入力振幅Iaのみに依存するため、単に評価値Evとして入力振幅Iaを用いてもよい。その場合には振幅評価部609は第5操作信号u5を入力信号として持つ必要がないことは言うまでもない。
また、入力振幅Iaを操作振幅Uaで除した値にローパスフィルタを作用させて得た値を評価値Evとしてもよい。ここで演算される評価値Evはフィルタ部607の特性に依存する速度制御帯域の限界の大きさを示しており、フィルタ部607に設定されているフィルタパラメータFpを評価する値となる。
フィルタ調整部610は、フィルタ部607のフィルタパラメータFpの候補であるフィルタパラメータ候補を複数組保持しており、それらを予め定められた順にフィルタ部607に設定する。発振指示信号Rtがオフの状態である通常期間において、予め定められた順に、フィルタパラメータ候補のうちの1組をフィルタ部607に設定する。また、フィルタ調整部610は、評価値Evを入力信号として有しており、フィルタ部607に設定されているフィルタパラメータFpと評価値Evとを関連付けて保存する。
フィルタ調整部610は、保持しているフィルタパラメータ候補を予め定められた順にフィルタ部607に設定し、それぞれに関連付けられる評価値Evを取得する。
フィルタ調整部610は取得される評価値Evを順次比較して小さい方を記憶し、最小となる評価値Evを得る。最小となる評価値Evに関連付けられるフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとして選択し、フィルタ部607に設定する。
ここでは最終的に1組の最適フィルタパラメータを得られればよいので、フィルタ調整部610は必ずしもフィルタパラメータ候補と、フィルタパラメータ候補に関連付けられた評価値Evとを全て保存しておく必要はない。フィルタ調整部610は、各段階で最も小さい評価値Evと新たに取得された評価値Evを逐次比較して、より小さい方の評価値Evとそれに関連付けられるフィルタパラメータ候補を保存しておくとしてもよい。
次に、本実施の形態におけるモータ制御装置60によって得られる効果を説明する。
まず、強制発振部605と振幅評価部609を構成要素に含むことによる効果を説明する。発振指示信号Rtがオフである通常期間には、モータ制御装置60では速度フィードバック制御が実行され、モータ1の速度がモータの速度指令Vrに近づくように動作をする。一方で、発振指示信号Rtがオンである発振期間には、強制発振部605の動作によって前述のようにリミットサイクルと呼ばれる自励振動が生じる。
機械システムの外部からの操作に基づいて発振指示部103の動作が開始されると、発振指示部103が発振指示信号Rtを出力しリミットサイクルが生じる。強制発振部605の動作によって生じるリミットサイクルの波形に基づいて、フィルタ部607の周波数特性に依存して変わる速度制御部604の速度制御帯域の限界の大きさを調べることができる。ここで、速度制御帯域の限界の大きさとは、速度制御部604の制御ゲインを安定性が確保される範囲で最大化した場合の制御帯域の大きさを示す。
以下、その理由について説明する。強制発振部605を制御器であると考えたとき、第5操作信号u5を入力として第4操作信号u4を出力とする対象は、強制発振部605に対する制御対象と見ることができる。説明のため、この制御対象を制御対象P1と呼ぶ。図8において、制御対象P1に含まれる構成要素は破線の枠で囲んで示す。
強制発振部605の動作に基づいて生じるリミットサイクルは、制御対象P1の伝達関数の開ループ特性において位相が180度遅れる周波数で発振する。ここで、制御対象P1の伝達関数の位相が180度遅れる周波数を周波数wP1とする。周波数wP1は位相交差周波数と呼ばれる。周波数wP1における制御対象P1のゲインをゲインgP1とする。
発振指示信号Rtがオフであり、速度制御部604による速度制御が行われている状態において、速度制御が安定な状態から比例ゲインを徐々に大きくしていくと比例ゲインが特定の値Kpuに達したときに定常的な振動が生じる。この特定の値Kpuは限界比例ゲインと呼ばれる。このとき限界比例ゲインKpuと、発振時に速度制御部604に設定されている比例ゲインKp0と、前述のゲインgP1は次の式(10)を満たす。
Figure 2017208701
つまり、ゲインgP1の大きさがわかれば、既知のKp0と式(10)を用いて限界比例ゲインKpuを計算することができる。
ゲインgP1は、その定義より、制御対象P1に周波数wP1の正弦波信号が第5操作信号u5として入力されるときの出力信号である第4操作信号の振幅を第5操作信号u5の振幅で除した値である。
一方で、強制発振部605によって生じるリミットサイクルでは、制御対象P1に周波数wP1の矩形波信号が第5操作信号u5として入力される状態である。つまり、第5操作信号u5が矩形波信号であるという点を除いて、強制発振部605によって生じるリミットサイクルにおいて、入力振幅Iaを操作振幅Uaで除した評価値Evを求める演算はゲインgP1を計算することと同等である。また、記述関数法に基づいて、矩形波信号の振幅は正弦波信号の振幅に近似的に置き換えることができる。つまり、入力振幅Iaの操作振幅Uaに対する比である評価値Evは、ゲインgP1を示す良い指標である。
振幅評価部609で計算される評価値EvとゲインgP1とは次の関係式を満たす。
Figure 2017208701
ここで、定数cは記述関数法に基づいて定められる定数である。定数cは記述関数法に基づき矩形波信号を正弦波信号に近似的に置き換える際の変換係数である。記述関数法によれば、定数cは入出力信号に対してフーリエ級数展開を施した場合の主成分の係数に基づいて計算することができる。具体的には、定数cは0.5から2.0までの範囲を取る。
操作振幅Uaが一定である場合には、定数c1をc1=c/Uaとして新たに定めることにすると、式(4)から、入力振幅Iaにc1を乗じた値がゲインgP1に一致する。よって、操作振幅Uaが一定の大きさである場合には、前述の通り入力振幅Iaを評価値Evとしても、評価値EvはゲインgP1と比例関係を満たし、良い指標となる。
式(10)および式(11)に基づき、限界比例ゲインKpuと、発振時に速度制御部604に設定されている比例ゲインKp0と、評価値Evは次の関係を満たす。
Figure 2017208701
つまり、評価値Evを取得することで、フィルタ部607の周波数特性に応じた速度制御部604の限界比例ゲインKpuを推定することが可能である。比例ゲインKp0を大きい値に調整した速度制御部604は制御帯域が大きいため制御性能が良好であるが、速度制御の安定性を確保するためには比例ゲインKp0は限界比例ゲインKpuよりも小さい範囲に調整される必要がある。限界比例ゲインKpuの値は、速度制御帯域の上限を決める値となる。
ただし、限界比例ゲインKpuの大きさは制御対象P1の周波数特性に依存して様々な値をとる。特に、機械システムが共振特性を持つ場合には、限界比例ゲインKpuの値はフィルタ部607の周波数特性に大きく依存する。
フィルタ部607の周波数特性の調整によって速度制御部604の限界比例ゲインKpuが最大化されれば、速度制御部604の比例ゲインKp0の調整可能な範囲が最大化され、速度制御の制御帯域を最大化することが可能になる。前述の通り、フィルタ部607の周波数特性の調整に際して、限界比例ゲインKpuを調べることは有益である。
上述した強制発振部605の動作により、機械システムの場合であれば数十Hzから数千Hzの周波数のリミットサイクルが発生するため、1秒未満の短時間のリミットサイクルを発生させれば評価値Evの取得が可能である。仮に、強制発振部605がない場合には、出力である速度信号Vfbなどを測定しつつ、試行錯誤的に比例ゲインを徐々に大きくすることで限界比例ゲインを調べる作業が必要となってくる。
強制発振部605と振幅評価部609の動作によれば、上記のように試行錯誤的に比例ゲインを徐々に上げて限界比例ゲインを調べる作業は必要がなく、試行錯誤の煩わしさがない。
また、強制発振部605と振幅評価部609の動作によれば、機械システムの場合には1秒未満の短時間で限界比例ゲインKpuを推定することが可能である。
本実施の形態では、強制発振部605の処理をフィルタ部607のフィルタ処理の後段において実行している。このため、発振指示信号Rtがオンである発振期間において、トルク指令Trの振幅は、強制発振部605が出力する第5操作信号u5の振幅と同等の一定の大きさの振幅となる。
よって、フィルタ部607の周波数特性がフィルタ調整部610によって変更されることがあっても、発振時のトルク指令Trの振幅はいつも一定とすることが可能である。
これにより、例えばモータ位置検出器2の分解能が粗い場合であっても、所定の大きさの振幅のトルク指令Trによってモータ1をいつも十分に大きな振幅で発振させることが可能であり、振幅評価部609において発振時の振幅の評価が可能となる。
以上より、強制発振部605と振幅評価部609とを構成要素に含むことによってフィルタ部607の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。
フィルタ調整部610を構成要素に追加したことによるモータ制御装置60の効果は、実施の形態1におけるフィルタ調整部110を追加したことによるモータ制御装置10と同様の効果を有する。
本実施の形態では、強制発振部605とフィルタ調整部610とを構成要素に含むことによって、速度制御部604の事前の設定の状況によらず、リミットサイクルを発生させてフィルタパラメータ候補の評価を実施することができる。つまり、速度制御部604に設定される制御ゲインの値によらずフィルタパラメータ候補の評価を実施することができ、速度制御帯域を最大化する調整を実施することができる。つまり、速度制御部604の事前の設定の状況によらず調整を実施することが可能である。
速度制御部604において第1操作信号u1は比例補償と積分補償との和から演算されるものについて説明したが、速度制御部604における第1操作信号u1を演算する手段はこれに限るものではない。例えば、微分補償も備えたPID制御に基づく演算により第1操作信号u1を演算してもよい。
また、モータ位置検出器2によって検出される位置信号Pfbに基づいて速度信号Vfbが演算されるものについて説明したが、モータの速度を検出する速度検出器をモータ1に取り付け、速度信号Vfbを得るような構成にしてもよい。
また、振幅評価部609は第5操作信号u5を入力信号として第5操作信号u5の振幅を操作振幅Uaとして演算するものについて説明したが、トルク指令Trを入力信号としてトルク指令Trの振幅を操作振幅Uaとして演算してもよい。
以上の構成においては、振幅評価部609において、入力振幅Iaを操作振幅Uaで除した値を評価値Evとして取得することで、フィルタ部607の周波数特性に応じた速度制御部604の限界比例ゲインKpuを推定することが可能であることを説明した。
しかしながら、フィルタ部607の周波数特性に応じた速度制御部604の限界比例ゲインKpuを推定するためには、評価値Evのとり方はこれに限るものではない。
例えば、上述の評価値Evの逆数である、操作振幅Uaを入力振幅Iaで除した値を評価値とすることが可能である。このときの評価値をEv1と呼ぶことにする。Ev1=Ua/Iaとなる。限界比例ゲインKpuは、発振時の速度制御部604の比例ゲインKp0と評価値Ev1との積を前述の定数cで除した値として取得することができる。
また、評価値Ev1の最大値を取得することが、評価値Evの最小値を取得することと等価であるため、最適なフィルタパラメータの選択に際しては、評価値Ev1の最大値をとるときのフィルタパラメータ候補を最適フィルタパラメータとすればよい。
上述の構成では、振幅評価部609は第5操作信号u5を入力信号として取得するものとしたが、振幅評価部609は電流Ioを入力信号としてもよい。電流Ioを振幅評価部609の入力信号とする場合には、振幅評価部609は、入力される電流Ioに対して電流制御部108の逆モデルの伝達関数を作用させた信号の振幅を操作振幅Uaとして得ればよい。
電流Ioに対して電流制御部108の逆モデルの伝達関数を作用させた信号の振幅は、第5操作信号u5の振幅と同等の大きさとなるため、振幅評価部609は上述される評価値Evと同等の評価値を取得することができる。
また、振幅評価部609は第4操作信号u4を入力信号として取得するものとしたが、振幅評価部609は第1操作信号u1を入力信号としてもよい。第1操作信号u1を振幅評価部609の入力信号とする場合には、振幅評価部609は、入力される第1操作信号u1に対して、フィルタ部607で行われるフィルタ処理と同じ処理を行い、その結果として得られる信号の振幅を入力振幅Iaとして得ればよい。
また、振幅評価部609は第4操作信号u4を入力信号として取得するものとしたが、振幅評価部609は速度偏差Veを入力信号としてもよい。速度偏差Veを振幅評価部609の入力信号とする場合には、振幅評価部609は、速度偏差Veに対して速度制御部604で行われる処理とフィルタ部607で行われる処理と同じ処理を行い、その結果として得られる信号の振幅を入力振幅Iaとすればよい。
また、振幅評価部609は第4操作信号u4を入力信号として取得するものとしたが、周波数wP1における第4操作信号u4の振幅が得られればよい。そのため、第4操作信号u4に対してローパスフィルタ処理を行った信号、バンドパスフィルタ処理を行った信号、あるいはハイパスフィルタ処理を行った信号を入力信号としてもよい。
本実施の形態におけるモータ制御装置60は上記のように動作する。すなわち、機械システムの外部からの操作によって発振指示部103の動作が開始されると、複数組のフィルタパラメータ候補を順にフィルタ部607に設定し、フィルタ部607の周波数特性に応じた速度制御帯域の限界の大きさを簡単に調べることができる。また、その中から速度制御帯域を最大化するフィルタパラメータ候補を選択し、フィルタ部607の周波数特性を調整することができる。
本実施の形態によれば、速度制御部の制御ゲインの事前設定の状況に依らず、試行錯誤の煩わしさがなく、また、簡単に速度制御帯域を最大化するフィルタの調整を行うことが可能なモータ制御装置を得ることができる。
1 モータ、3 機械負荷、10、20、30、50、60 モータ制御装置、101 速度演算部、103、303 発振指示部、104、204、604 速度制御部、105、605 強制発振部、106 第3操作信号出力部、107、607 フィルタ部、108 電流制御部、109、509、609 振幅評価部、110、210、310、610 フィルタ調整部、211 ゲイン演算部、312 周波数演算部、606 トルク指令出力部。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るモータ制御装置は、機械負荷に連結されるモータの速度を表す速度信号と、モータの速度の指令値である速度指令とに基づいて、モータのトルクの指令値であるトルク指令を演算してモータを制御するモータ制御装置において、速度信号が速度指令に一致するように第1操作信号を演算して出力する速度制御部と、トルク指令に基づいてモータに電流を与える電流制御部と、速度信号を出力する速度演算部と、発振の実行を指示するオン又は停止を指示するオフの信号である発振指示信号を出力する発振指示部と、フィルタパラメータによって規定される周波数特性を有するフィルタ処理を行うフィルタ部と、発振指示信号がオンである発振期間に、フィルタ部、電流制御部、モータおよび速度演算部と共に発振期間における制御ループを構成し、発振期間における制御ループを自励振動により発振させる強制発振部と、強制発振部によって発振期間における制御ループが発振されたときに、強制発振部の入力信号の振幅の強制発振部の出力信号の振幅に対する比を評価値として取得する振幅評価部と、フィルタパラメータの複数の候補を順次、フィルタ部に設定した場合の評価値を取得し、複数の評価値を比較して評価値が小さくなるフィルタパラメータを選択し、フィルタ部に設定するフィルタ調整部と、を備えたことを特徴とする。

Claims (6)

  1. 機械負荷に連結されるモータの速度を表す速度信号と、前記モータの速度の指令値である速度指令とに基づいて、前記モータのトルクの指令値であるトルク指令を演算して前記モータを制御するモータ制御装置において、
    前記速度信号が前記速度指令に一致するように第1操作信号を演算して出力する速度制御部と、
    前記トルク指令に基づいて前記モータに電流を与える電流制御部と、
    前記速度信号を出力する速度演算部と、
    発振の実行を指示するオン又は停止を指示するオフの信号である発振指示信号を出力する発振指示部と、
    フィルタパラメータによって規定される周波数特性を有するフィルタ処理を行うフィルタ部と、
    前記発振指示信号がオンである発振期間に、前記フィルタ部、前記電流制御部、前記モータおよび前記速度演算部と共に発振期間における制御ループを構成し、前記発振期間における制御ループを発振させる強制発振部と、
    前記強制発振部によって前記発振期間における制御ループが発振されたときに、前記強制発振部の入力信号の振幅の前記強制発振部の出力信号の振幅に対する比を評価値として取得する振幅評価部と、
    前記フィルタパラメータの複数の候補を順次、前記フィルタ部に設定した場合の前記評価値を取得し、複数の前記評価値を比較して前記評価値が小さくなる前記フィルタパラメータを選択し、前記フィルタ部に設定するフィルタ調整部と、
    を備えたことを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記フィルタ部は、前記発振指示信号がオフである通常期間に前記フィルタ処理を前記第1操作信号に行って前記トルク指令を出力し、前記電流制御部に出力することにより、前記モータを制御することを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記強制発振部は、前記速度指令と前記速度信号との偏差である速度偏差又は前記速度信号を入力として第2操作信号を出力し、
    前記第1操作信号および前記第2操作信号を加算するか又は前記第1操作信号および前記第2操作信号のうちのいずれか一方を選択することにより第3操作信号を得て出力する第3操作信号出力部をさらに備え、
    前記フィルタ部は、前記発振期間に前記第3操作信号に対して前記フィルタ処理を行って前記トルク指令を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記フィルタ部は、前記第1操作信号に対して前記フィルタ処理を行って第4操作信号を出力し、
    前記強制発振部は、前記第4操作信号を入力として第5操作信号を出力し、
    前記第4操作信号および前記第5操作信号を加算するか又は前記第4操作信号および前記第5操作信号のうちのいずれか一方を選択することにより前記トルク指令を得て出力するトルク指令出力部をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ制御装置。
  5. 前記強制発振部は、前記強制発振部の入力信号の正又は負の符号に応じてそれぞれ、予め定められた大きさの正又は負の値を出力することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記振幅評価部は、前記強制発振部の入力信号の振幅を前記強制発振部の出力信号の振幅で除した値又は前記出力信号の振幅を前記入力信号の振幅で除した値を前記評価値とすることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載のモータ制御装置。
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