以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
前記エラストマー性ポリマー(A)及び(B)以外のポリマーであり、SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー成分のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有するポリマー(Z)と、
を含有してなるものである。
(エラストマー成分)
このようなエラストマー成分は、上述のエラストマー性ポリマー(A)〜(B)からなる群から選択される少なくとも1種のものである。このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)において、「側鎖」とは、エラストマー性ポリマーの側鎖および末端をいう。また、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a)」と称する。)」とは、エラストマー性ポリマーの主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)を形成する原子(通常、炭素原子)に、水素結合性架橋部位としてのカルボニル含有基および/または含窒素複素環(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。また、「側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有され」とは、水素結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a’)」と称する。)と、共有結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(b)」と称する。)の双方の側鎖を含むことによってポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合の他、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖(1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖:以下、このような側鎖を便宜上、場合により「側鎖(c)」と称する。)を含むことで、ポリマーの側鎖に、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合を含む概念である。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖:その主鎖部分を形成するポリマー)は、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であって、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーからなるものであればよく(いわゆるエラストマーからなるものであればよく)、特に限定されるものではない。そのため、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は、例えば、天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を含むもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、側鎖として、水素結合性架橋部位を有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を有する側鎖(b)を含有するもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖(c)を含むもの;等としてもよい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖:その主鎖部分を形成するポリマー)としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖:その主鎖部分を形成するポリマー)は、樹脂成分を含むエラストマー性のポリマーからなるものであってもよく、例えば、水素添加されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)としては、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましい。また、このような前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)としては、老化しやすい二重結合がないという観点からは、ジエン系ゴムの水添物、オレフィン系ゴムが好ましく、コストの低さ、反応性の高さ(無水マレイン酸等の化合物のエン反応が可能な二重結合を多数有する)の観点からは、ジエン系ゴムが好ましい。
さらに、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は、液状または固体状であってもよく、その分子量は特に限定されず、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて適宜選択することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱(脱架橋等)した時の流動性を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は液状であることが好ましく、例えば、主鎖部分がイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)を液状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000程度であることが特に好ましい。
一方、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の強度を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は固体状であることが好ましく、例えば、主鎖部分がイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)を固体状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、500,000〜1,500,000程度であることが特に好ましい。
このような重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は2種以上を混合して用いることができる。この場合の各エラストマー性ポリマー同士の混合比は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて任意の比率とすることができる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)のガラス転移点は、前述のように25℃以下である。エラストマー性ポリマーのガラス転移点がこの範囲であれば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が室温でゴム状弾性を示すためである。また、本発明において「ガラス転移点」は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)は、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)のガラス転移点が25℃以下となり、得られる熱可塑性エラストマー組成物からなる成形物が室温(25℃)でゴム状弾性を示すことから、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)などのオレフィン系ゴム;であることが好ましい。また、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖に、それぞれオレフィン系ゴムを用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張強度が向上し、二重結合が存在しないため組成物の劣化がより十分に抑制される傾向にある。
エラストマー性ポリマー(A)〜(B)に用いることが可能な前記スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量や、水添エラストマー性ポリマーの水添率等は、特に限定されず、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や、組成物に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
また、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、室温における良好なゴム状弾性発現の観点から、特に、結晶化度が10%未満(より好ましくは5〜0%)のものであることが好ましい。また、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、そのエチレン含有量は、好ましくは10〜90モル%であり、より好ましくは30〜90モル%である。エチレン含有量がこの範囲であれば、熱可塑性エラストマー(組成物)としたときの圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度に優れるため好ましい。
さらに、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)としては、室温における良好なゴム状弾性発現の観点から、非晶性のものが好ましい。また、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)としては、一部に結晶性(結晶構造)を有するエラストマーであってもよいが、この場合であっても、結晶化度が10%未満(特に好ましくは5〜0%)であることが好ましい。なお、このような結晶化度は、測定装置としてX線回折装置(例えば、リガク社製の商品名「MiniFlex300」を用い、回折ピークを測定し、結晶性/非晶性由来の散乱ピークの積分比を計算することにより求めることができる。
また、前記エラストマー成分(前記エラストマー性ポリマー(A)及び/又は(B))のSP値は、6.0〜13.0であることが好ましく、7.0〜12.0であることがより好ましく、7.0〜9.0であることが特に好ましく、7.0〜8.5であることが最も好ましい。このようなSP値が前記下限未満では極性が低すぎて他の樹脂との混合性が低くなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると極性が高すぎて、この場合も他の樹脂との混合性が低くなる傾向にある。このようなSP値の測定方法等については、後述する。
また、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は、上述のように、側鎖として、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a);水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b);並びに、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(c);のうちの少なくとも1種を有するものとなる。なお、本発明において、側鎖(c)は、側鎖(a’)としても機能しつつ側鎖(b)としても機能するような側鎖であるとも言える。以下において、各側鎖を説明する。
<側鎖(a’):水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)は、水素結合による架橋を形成し得る基(例えば、水酸基、後述の側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位等)を有し、その基に基づいて水素結合を形成する側鎖であればよく、その構造は特に制限されるものではない。ここにおいて、水素結合性架橋部位は、水素結合によりポリマー同士(エラストマー同士)を架橋する部位である。なお、水素結合による架橋は、水素のアクセプター(孤立電子対を含む原子を含有する基等)と、水素のドナー(電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子を備える基等)とがあって初めて形成されることから、エラストマー同士の側鎖間において水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在しない場合には、水素結合による架橋が形成されない。そのため、エラストマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在することによって初めて、水素結合性架橋部位が系中に存在することとなる。なお、本発明においては、エラストマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターとして機能し得る部分(例えばカルボニル基等)と、水素のドナーとして機能し得る部分(例えば水酸基等)の双方が存在することをもって、その側鎖の水素のアクセプターとして機能し得る部分とドナーとして機能し得る部分とを、水素結合性架橋部位と判断することができる。
このような側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合を形成するといった観点から、以下において説明する、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位)であることが好ましい。すなわち、かかる側鎖(a’)としては、後述の側鎖(a)がより好ましい。また、同様の観点で、前記側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位であることがより好ましい。
<側鎖(a):カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有するものであればよく、他の構成は特に限定されない。このような水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有するものがより好ましい。
このようなカルボニル含有基としては、カルボニル基を含むものであればよく、特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基等が挙げられる。このようなカルボニル含有基は、カルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物を用いて、前記主鎖(主鎖部分のポリマー)に導入した基であってもよい。このようなカルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物は特に限定されず、その具体例としては、ケトン、カルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。
このようなカルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の炭化水素基を有する有機酸が挙げられ、該炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族等のいずれであってもよい。また、カルボン酸誘導体としては、具体的には、例えば、カルボン酸無水物、アミノ酸、チオカルボン酸(メルカプト基含有カルボン酸)、エステル、アミノ酸、ケトン、アミド類、イミド類、ジカルボン酸およびそのモノエステル等が挙げられる。
また、前記カルボン酸およびその誘導体等としては、具体的には、例えば、マロン酸、マレイン酸、スクシン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−フェニレンジ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、メルカプト酢酸などのカルボン酸および置換基含有するこれらのカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などの酸無水物;マレイン酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、酢酸エチルなどの脂肪族エステル;フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、エチル−m−アミノベンゾエート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエートなどの芳香族エステル;キノン、アントラキノン、ナフトキノンなどのケトン;グリシン、チロシン、ビシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、プロリン、N−(p−アミノベンゾイル)−β−アラニンなどのアミノ酸;マレインアミド、マレインアミド酸(マレインモノアミド)、コハク酸モノアミド、5−ヒドロキシバレルアミド、N−アセチルエタノールアミン、N,N’−ヘキサメチレンビス(アセトアミド)、マロンアミド、シクロセリン、4−アセトアミドフェノール、p−アセトアミド安息香酸などのアミド類;マレインイミド、スクシンイミドなどのイミド類;等が挙げられる。
これらのうち、カルボニル基(カルボニル含有基)を導入し得る化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の環状酸無水物であることが好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
また、前記側鎖(a)が含窒素複素環を有する場合、前記含窒素複素環は、直接又は有機基を介して前記主鎖に導入されていればよく、その構成等は特に制限されるものではない。このような含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。ここで、前記側鎖(a)中に含窒素複素環を用いた場合には、複素環構造を有すると架橋を形成する水素結合がより強くなり、得られる本発明の熱可塑性エラスマー組成物の引張強度がより向上するため好ましい。
また、上記含窒素複素環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基;等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
さらに、上記含窒素複素環は、芳香族性を有していても、有していなくてもよいが、芳香族性を有していると得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪や機械的強度がより向上するため好ましい。
また、このような含窒素複素環は、特に制限されるものではないが、水素結合がより強固になり、圧縮永久歪や機械的強度がより向上するといった観点から、5員環、6員環であることが好ましい。このような含窒素複素環としては、具体的には、例えば、ピロロリン、ピロリドン、オキシインドール(2−オキシインドール)、インドキシル(3−オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β−イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、オキシルインドール、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ヒドロキシエチルイソシアヌレートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、特に含窒素5員環については、下記の化合物(化学式で記載の環状構造)、下記一般式(10)で表されるトリアゾール誘導体および下記一般式(11)で表されるイミダゾール誘導体が好ましく例示される。また、これらは上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
上記一般式(10)及び(11)中の置換基X、Y、Zは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はアミノ基である。なお、上記一般式(10)中のXおよびYのいずれか一方は水素原子ではなく、同様に、上記一般式(11)中のX、YおよびZの少なくとも1つは水素原子ではない。
このような置換基X、Y、Zとしては、水素原子、アミノ基以外に、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニル基、トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、メシチル基などのアリール基;等が挙げられる。
これらのうち、置換基X、Y、Zとしては、アルキル基、特に、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基であることが、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の加工性が良好となるため好ましい。
また、含窒素6員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基(例えば、前述の含窒素複素環が有していてもよい置換基)を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
また、上記含窒素複素環とベンゼン環または含窒素複素環同士が縮合したものも用いることができ、具体的には、下記の縮合環が好適に例示される。これらの縮合環についても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
このような含窒素複素環としては、中でも、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性、圧縮永久歪、硬度および機械的強度、特に引張強度に優れるため、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環およびヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記側鎖(a)において、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環の双方が含まれる場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環は、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環とが互いに異なる基を介して結合した1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましい。このように、側鎖(a)としては、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましく、下記一般式(1):
[式(1)中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、式:NR’(R'は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)で表されるアミノ基又はイオウ原子;或いはこれらの原子又は基を含んでもよい有機基である。]
で表される構造部分を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることがより好ましい。このように、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、上記一般式(1)で表される構造部分を含有することが好ましい。
ここで、上記式(1)における含窒素複素環Aは、具体的には、上記で例示した含窒素複素環が挙げられる。また、上記式(1)における置換基Bとしては、具体的には、例えば、単結合;酸素原子、イオウ原子または式:NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表されるアミノ基(なお、以下、便宜上、場合により、式:NR’で表されるアミノ基を単に「アミノ基NR’」と称する。);これらの原子または基を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基(アルキレンオキシ基、例えば、−O−CH2CH2−基)、アルキレンアミノ基(例えば、−NH−CH2CH2−基等)またはアルキレンチオエーテル基(アルキレンチオ基、例えば、−S−CH2CH2−基);これらを末端に有する、炭素数1〜20のアラルキレンエーテル基(アラルキレンオキシ基)、アラルキレンアミノ基またはアラルキレンチオエーテル基;等が挙げられる。
ここで、上記アミノ基NR’中のR’として選択され得る炭素数1〜10のアルキル基としては、異性体を含む、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。上記式(1)における置換基B中の酸素原子、イオウ原子およびアミノ基NR’;ならびに;これらの原子または基を末端に有する炭素数1〜20の、アルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基、アルキレンチオエーテル基、または、アラルキレンエーテル基、アラルキレンアミノ基、アラルキレンチオエーテル基等の酸素原子、アミノ基NR’およびイオウ原子は、隣接するカルボニル基と組み合わされ共役系のエステル基、アミド基、イミド基、チオエステル基等を形成することが好ましい。
これらのうち、前記置換基Bは、共役系を形成する、酸素原子、イオウ原子またはアミノ基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基またはアルキレンチオエーテル基であることが好ましく、アミノ基(NH)、アルキレンアミノ基(−NH−CH2−基、−NH−CH2CH2−基、−NH−CH2CH2CH2−基)、アルキレンエーテル基(−O−CH2−基、−O−CH2CH2−基、−O−CH2CH2CH2−基)であることが特に好ましい。
また、側鎖(a)が、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する前記水素結合性架橋部位は、下記式(2)または(3)で表される1つの側鎖として、そのα位またはβ位で上記ポリマー主鎖に導入されている側鎖であることがより好ましい。
[式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基である。]
ここで、含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様であり、置換基BおよびDはそれぞれ独立に、上記式(1)の置換基Bと基本的に同様である。ただし、上記式(3)における置換基Dは、上記式(1)の置換基Bで例示したもののうち、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基の共役系を形成するものであることが好ましく、単結合であることが特に好ましい。すなわち、上記式(3)のイミド窒素と共に、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレンアミノ基またはアラルキレンアミノ基を形成することが好ましく、上記式(3)のイミド窒素に含窒素複素環が直接結合する(単結合)ことが特に好ましい。具体的には、上記置換基Dとしては、単結合;上記した酸素原子、イオウ原子またはアミノ基を末端に有する炭素数1〜20のアルキレンエーテルまたはアラルキレンエーテル基等;異性体を含む、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
また、側鎖(a)が上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位が下記一般式(101):
[式(101)中、Aは含窒素複素環である。]
で表される構造部分を含有することが好ましい。このような式(101)中の含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様のものである。また、このような側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、高モジュラス、高破断強度の観点から、下記一般式(102):
で表される構造を有するものがより好ましい。更に、前記側鎖(a)が上記一般式(102)で表される基であることが特に好ましい。
上記熱可塑性エラストマーが有する上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合は特に限定されず、1:1〜3:1の範囲(より好ましくは1:1、2:1もしくは3:1)であると相補的な相互作用を形成しやすくなり、また、容易に製造できるため好ましい。
このようなカルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、主鎖部分100モル%に対して、0.1〜50モル%の割合(導入率)で導入されていることが好ましく、1〜30モル%の割合で導入されていることがより好ましい。このような側鎖(a)の導入率が0.1モル%未満では架橋時の引張強度が十分でない場合があり、他方、50モル%を超えると架橋密度が高くなりゴム弾性が失われる場合がある。すなわち、導入率が上記した範囲内であれば、上記熱可塑性エラストマーの側鎖同士の相互作用によって、分子間で効率良く架橋が形成されるため、架橋時の引張強度が高く、リサイクル性に優れるため好ましい。
上記導入率は、側鎖(a)として、上記カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a−i)と上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a−ii)とがそれぞれ独立に導入されている場合には、該カルボニル含有基を含有する側鎖(a−i)と該含窒素複素環を含有する側鎖(a−ii)との割合に従って、これらを一組で1つの側鎖(a)として考えて算出する。なお、側鎖(a−i)及び(a−ii)のうちの何れかが過剰の場合は、多い方の側鎖を基準として、上記導入率を考えればよい。
また、上記導入率は、例えば、主鎖部分がエチレン−プロピレンゴム(EPM)である場合には、エチレンおよびプロピレンモノマー単位100ユニット当り、側鎖部分の導入されたモノマーが、0.1〜50ユニット程度である。
また、側鎖(a)としては、反応後に前記主鎖を形成するポリマー(エラストマー性ポリマー形成用の材料)に、官能基として環状酸無水物基(より好ましくは無水マレイン酸基)を有するポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー)を用いて、前記官能基(環状酸無水物基)と、該環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)とを反応させて、水素結合性架橋部位を形成して、ポリマーの側鎖を側鎖(a)としたものが好ましい。このような含窒素複素環を導入し得る化合物は、上記で例示した含窒素複素環そのものであってもよく、無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)を有する含窒素複素環であってもよい。
ここで、側鎖(a)における含窒素複素環の結合位置について説明する。なお、窒素複素環を便宜上「含窒素n員環化合物(n≧3)」とする。
以下に説明する結合位置(「1〜n位」)は、IUPAC命名法に基づくものである。例えば、非共有電子対を有する窒素原子を3個有する化合物の場合、IUPAC命名法に基づく順位によって結合位置を決定する。具体的には、上記で例示した5員環、6員環および縮合環の含窒素複素環に結合位置を記している。
このような側鎖(a)においては、直接または有機基を介して共重合体と結合する含窒素n員環化合物の結合位置は特に限定されず、いずれの結合位置(1位〜n位)でもよい。好ましくは、その1位または3位〜n位である。
含窒素n員環化合物に含まれる窒素原子が1個(例えば、ピリジン環等)の場合は、分子内でキレートが形成されやすく組成物としたときの引張強度等の物性に優れるため、3位〜(n−1)位が好ましい。含窒素n員環化合物の結合位置を選択することにより、エラストマー性ポリマーは、エラストマー性ポリマー同士の分子間で、水素結合、イオン結合、配位結合等による架橋が形成されやすく、リサイクル性に優れ、機械的特性、特に引張強度に優れるものとなる傾向にある。
<側鎖(b):共有結合性架橋部位を含有する側鎖>
本明細書において「共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)」は、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、共有結合性架橋部位(後述するアミノ基含有化合物等の「共有結合を生成する化合物」等と反応することで、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起しうる官能基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。なお、側鎖(b)は共有結合性架橋部位を含有する側鎖であるが、共有結合性部位を有しつつ、更に、水素結合が可能な基を有して、側鎖間において水素結合による架橋を形成するような場合には、後述の側鎖(c)として利用されることとなる(なお、エラストマー同士の側鎖間に水素結合を形成することが可能な、水素のドナーと、水素のアクセプターの双方が含まれていない場合、例えば、系中に単にエステル基(−COO−)が含まれている側鎖のみが存在するような場合には、エステル基(−COO−)同士では特に水素結合は形成されないため、かかる基は水素結合性架橋部位としては機能しない。他方、例えば、カルボキシ基やトリアゾール環のような、水素結合の水素のドナーとなる部位と、水素のアクセプターとなる部位の双方を有する構造をエラストマー同士の側鎖にそれぞれ含む場合には、エラストマー同士の側鎖間で水素結合が形成されるため、水素結合性架橋部位が含有されることとなる。また、例えば、エラストマー同士の側鎖間に、エステル基と水酸基とが共存して、それらの基により側鎖間で水素結合が形成される場合、その水素結合を形成する部位が水素結合性架橋部位となる。そのため、側鎖(b)が有する構造自体や、側鎖(b)が有する構造と他の側鎖が有する置換基の種類等に応じて、側鎖(c)として利用される場合がある。)。また、ここにいう「共有結合性架橋部位」は、共有結合によりポリマー同士(エラストマー同士)を架橋する部位である。
このような共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)は特に制限されないが、例えば、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させることで、形成される共有結合性架橋部位を含有するものであることが好ましい。このような側鎖(b)の前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。そのため、前記主鎖を構成するポリマーが有する前記官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起しうる官能基であることが好ましい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物;等が挙げられる。ここにおいて「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」は、かかる化合物が有する置換基の種類や、かかる化合物を利用して反応せしめた場合に反応の進行の程度、等によっては、前記水素結合性架橋部位及び前記共有結合性架橋部位の双方を導入し得る化合物となる(例えば、水酸基を3個以上有する化合物を利用して、共有結合による架橋部位を形成する場合において、反応の進行の程度によっては、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの該官能基に2個の水酸基が反応して、残りの1個の水酸基が水酸基として残るような場合も生じ、その場合には、水素結合性の架橋を形成する部位も併せて導入され得ることとなる。)。そのため、ここに例示する「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」には、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物」も含まれ得る。このような観点から、側鎖(b)を形成する場合には、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」の中から目的の設計に応じて化合物を適宜選択したり、反応の進行の程度を適宜制御する等して、側鎖(b)を形成すればよい。なお、共有結合性架橋部位を形成する化合物が複素環を有している場合には、より効率よく水素結合性の架橋部位も同時に製造することが可能になり、後述の側鎖(c)として、前記共有結合性架橋部位を有する側鎖を効率よく形成することが可能となる。そのため、かかる複素環を有しているような化合物の具体例については、側鎖(c)を製造するための好適な化合物として、特に側鎖(c)と併せて説明する。なお、側鎖(c)は、その構造から、側鎖(a)や側鎖(b)等の側鎖の好適な一形態であるとも言える。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能なポリアミン化合物としては、例えば、以下に示す脂環族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、含窒素複素環アミン等が挙げられる。
このような脂環族アミンとしては、具体的には、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ−(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、前記脂肪族ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’,N’’−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
前記芳香族ポリアミンおよび前記含窒素複素環アミンとしては、特に制限されないが、例えば、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
また、前記ポリアミン化合物は、その水素原子の一つ以上を、アルキル基、アルキレン基、アラルキレン基、オキシ基、アシル基、ハロゲン原子等で置換してもよく、また、その骨格に、酸素原子、イオウ原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
また、前記ポリアミン化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)が用いられる用途、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
上記で例示したポリアミン化合物のうち、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が、圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度の改善効果が高く好ましい。
前記ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、例えば、以下に示すポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)などの低分子ポリオール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリチオール化合物は、チオール基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(チオコールまたはチオール変性高分子(樹脂、ゴム等))等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起(生成:形成)し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
なお、前記側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマー(B)は、かかる側鎖(b)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋、すなわち、前記官能基と上述した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」との反応により形成される共有結合による架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのがさらに好ましい。
また、前記側鎖(b)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより容易に改善され得るとの理由から好ましい。なお、この場合において、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)に対して、水素結合を形成することが可能な基を含む側鎖を有するエラストマーが含まれている場合(例えば、水酸基等を含む側鎖を有するエラストマーが他に存在する場合等)には、前記共有結合性架橋部位が、後述の側鎖(c)として機能し得る。例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー(B)の場合(すなわちエラストマー性ポリマー(B)が側鎖(a)及び(b)の双方を有するエラストマー性ポリマーである場合)において、共有結合性架橋部位における架橋が前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を有する場合、それらの基と、側鎖(a)(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する側鎖)中の基とが水素結合(相互作用)することで、架橋密度をより向上させることも可能となるものと考えられる。なお、このような第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している構造の側鎖(b)を形成するとの観点で、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、上記で例示したもののうち、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)であることが好ましい。
なお、上述のような共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)を利用しても、反応の進行度や置換基の種類、用いる原料の化学量論比等によっては、水素結合性の架橋部位も併せて導入されるような場合もあるため、前記共有結合性架橋部位の好適な構造については、側鎖(c)中の共有結合性架橋部位の好適な構造と併せて説明する。
<側鎖(c):水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖>
このような側鎖(c)は、1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖である。このような側鎖(c)に含まれる水素結合性架橋部位は、側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位と同様のものであり、側鎖(a)中の水素結合性架橋部位と同様のものが好ましい。また、側鎖(c)に含まれる共有結合性架橋部位としては、側鎖(b)中の共有結合性架橋部位と同様のものを利用できる(その好適な架橋も同様のものを利用できる。)。
このような側鎖(c)は、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)とを反応させることで、形成される側鎖であることが好ましい。 このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有しかつ共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)が好ましく、中でも、複素環含有ポリオール、複素環含有ポリアミン、複素環含有ポリチオール等がより好ましい。
なお、このような複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールは、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有するものである以外は、前述の「共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)」において説明したポリオール、ポリアミンおよびポリチオールと同様のものを適宜利用することができる。また、このような複素環含有ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ビス、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、コウジ酸、ジヒドロキシジチアン、トリスヒドロキシエチルトリアジンが挙げられる。また、前記複素環含有ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、アセトグアナミン、ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミンが挙げられる。更に、このような複素環含有ポリチオールとしては、ジメルカプトチアジアゾール、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレートが挙げられる。このように、側鎖(c)としては、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、複素環を含有するポリオール、ポリアミンおよびポリチオール等とを反応させて、得られる側鎖であることが好ましい。
なお、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起(生成:形成)し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
また、前記側鎖(c)を有するエラストマー性ポリマー(B)は、かかる側鎖(c)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのがさらに好ましい。また、前記側鎖(c)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより改善されるとの理由から好ましい。
(側鎖(b)〜(c)中の共有結合性架橋部位として好適な構造について)
側鎖(b)及び/又は(c)に関して、共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している場合であって、これらの結合部位が水素結合性架橋部位としても機能する場合、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより高度に改善されるとの理由から好ましい。このように、共有結合性架橋部位を有する側鎖中の第三級アミノ結合(−N=)やエステル結合(−COO−)が、他の側鎖との間において、水素結合を形成するような場合、かかる第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している共有結合性架橋部位は、水素結合性架橋部位も備えることとなり、側鎖(c)として機能し得る。
なお、例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー(B)の場合であって、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を有する場合において、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合が、前記側鎖(a)中の基と水素結合(相互作用)を形成すると、架橋密度をより向上させることが可能となるものと考えられる。ここで、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基と反応して前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を形成させることが可能な化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成することが可能な化合物)としては、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)を好適なものとして挙げることができる。
前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有しているものが好ましく、式中のGが第三級アミノ結合、エステル結合を含有しているものがより好ましい(なお、以下の構造において、水素結合性架橋部位を含む場合、その構造を有する側鎖は、側鎖(c)として利用されるものである。)。
上記一般式(4)〜(6)中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基であり、Gは酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜20の炭化水素基である。
ここで、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記一般式(1)の置換基Bと基本的に同様である。
また、置換基Gとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、1,11−ウンデシレン基、1,12−ドデシレン基などのアルキレン基;N,N−ジエチルドデシルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルドデシルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジエチルオクチルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルオクチルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジエチルステアリルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルステアリルアミン−2,2’−ジイル、;ビニレン基;1,4−シクロへキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基;1,4−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,3−フェニレンビス(メチレン)基などの2価の芳香族炭化水素基;プロパン−1,2,3−トリイル、ブタン−1,3,4−トリイル、トリメチルアミン−1,1’,1’’−トリイル、トリエチルアミン−2,2’,2’’−トリイル等の3価の炭化水素基;イソシアヌレート基、トリアジン基等の酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含む3価の環状炭化水素;下記式(12)および(13)で表される4価の炭化水素基;およびこれらを組み合わせて形成される置換基;等が挙げられる。また、このような式中の置換基Gとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、イソシアヌレート基(イソシアヌレート環)の構造を有するものであることが好ましい。また、このような式中の置換基Gとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、下記一般式(111)で表される基及び下記一般式(112)で表される基であることがより好ましい。
さらに、前記側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋が、上述した上記エラストマー性ポリマーの主鎖にα位またはβ位で結合する下記式(7)〜(9)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有するのが好ましく、式中のGが第三級アミノ基を含有しているのがより好ましい(式(7)〜(9)に示す構造は水酸基とカルボニル基を含有しており、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む構造といえ、かかる構造を有する側鎖は側鎖(c)として機能し得る。)。
式(7)〜(9)中、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記式(4)〜(6)の置換基E、J、KおよびLと基本的に同様であり、置換基Gは、上記式(4)〜(6)中の置換基Gと基本的に同様である。
また、このような式(7)〜(9)のいずれかで表される構造としては、具体的には、下記式(14)〜(25)で表される構造が好適なものとして例示される。
(式中、lは、1以上の整数を表す。)
(式中、l、mおよびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
また、前記側鎖(b)及び(c)において、上記共有結合性架橋部位における架橋は、環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基及び/又はイミノ基との反応により形成されることが好ましい。例えば、反応後に主鎖部分を形成するポリマーが官能基として環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を有している場合に、該ポリマーの環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基および/またはイミノ基を有する前記共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させて、共有結合により架橋する部位を形成してポリマー間を架橋させることで、形成される架橋としてもよい。
また、このような側鎖(b)及び(c)において、前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることがより好ましい。
以上、側鎖(a’)、側鎖(a)、側鎖(b)、側鎖(c)について説明したが、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)は、前記側鎖(a)を有するガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーであり、前記エラストマー性ポリマー(B)は、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有しているガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマー(側鎖として、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーや、側鎖に側鎖(c)を少なくとも一つ含むポリマー等)である。このようなエラストマー成分としては、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)のうちの1種を単独で利用してもよく、あるいは、それらのうちの2種以上を混合して利用してもよい。
なお、エラストマー性ポリマー(B)は、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーであっても、側鎖(c)を有するポリマーであってもよいが、このようなエラストマー性ポリマー(B)の側鎖に含有される水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合が形成されるといった観点から、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)であることが好ましい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)及び(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分としては、工業的に入手しやすく、機械的強度、圧縮永久歪を高度にバランスできるという観点から、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ペンタエリスリトール(pentaerythritol)、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物(以下、場合により単に「化合物(X)」と称する。)との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。このように、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)としては、前記無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと前記化合物(X)との反応物が好ましい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)を製造する方法としては特に制限されず、上述のような側鎖(a);側鎖(a')及び側鎖(b);、並びに、側鎖(c);からなる群から選択される少なくとも1種を、ガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーの側鎖として導入することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。例えば、エラストマー性ポリマー(B)を製造するための方法としては、特開2006−131663号公報に記載の方法を採用してもよい。また、上述のような側鎖(a’)及び側鎖(b)を備えるエラストマー性ポリマー(B)を得るために、例えば、官能基としての環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーに、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)との混合物(混合原料)を利用して、それぞれの側鎖を同時に導入してもよい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)を製造する方法としては、例えば、官能基(例えば環状酸無水物基等)を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(例えば、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーが好適のものとして挙げられる。)を用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物(例えば、前記化合物(X)が好適なものとして挙げられる。)と反応させて、前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー;側鎖(a')及び側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマー;及び/又は前記側鎖(c)を有するエラストマー性ポリマー(前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B))を製造する方法を採用してもよい。なお、このような反応の際に採用する条件(温度条件や雰囲気条件等)は特に制限されず、官能基や該官能基と反応させる化合物(水素結合性架橋部位を形成する化合物及び/又は共有結合性架橋部位を形成する化合物)の種類に応じて適宜設定すればよい。なお、前記エラストマー性ポリマー(A)の場合は、水素結合部位を持つモノマーを重合して製造しても良い。
このような官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、前述のエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖を形成することが可能なポリマーであって、官能基を側鎖に有するものが好ましい。ここで、「官能基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマー」とは、主鎖を形成する原子に官能基(上述の官能基等、例えば、環状酸無水物基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしているエラストマー性ポリマーをいい、エラストマー性ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)と官能基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用できる。
また、このような官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起し得る官能基であることが好ましく、中でも、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好ましく、組成物中にクレイをより効率よく分散させることが可能であるといった観点からは、環状酸無水物基が特に好ましい。また、このような環状酸無水物基としては、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、容易にポリマー側鎖に導入可能で、工業上入手が容易である観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。また、前記官能基が環状酸無水物基である場合には、例えば、前記官能基を導入しうる化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物を用いて、エラストマー性ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)に官能基を導入してもよい。
なお、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)」を利用することが好ましい。また、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することが好ましい。また、水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)、及び、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(例えば、含窒素複素環を含むポリオール、ポリアミン、ポリチオール等)も好適に利用することができる。
また、このようなエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)〜(B))を製造する方法に、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物と反応させて、前記側鎖(a)を有する前記エラストマー性ポリマー(A)、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されている前記エラストマー性ポリマー(B)を製造する方法を採用する場合、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを、前記原料化合物と反応させる前に、クレイと官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとを混合し、その後、前記原料化合物を添加し、反応させて、エラストマー成分の調製と同時に組成物を形成する方法(クレイを先添加する方法)を採用してもよい。
なお、有機化クレイの分散性がより向上し、より高度な耐熱性が得られることから、エラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)〜(B))を製造する際に、有機化クレイを先添加する方法を採用して、エラストマー成分の調製時に有機化クレイを分散させることが好ましい。また、このような有機化クレイを先添加する方法としては、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用することがより好ましい。
(有機化クレイ)
本発明にかかる有機化クレイとしては特に制限されず、例えば、有機化剤により有機化されたクレイを好適に利用することができる。このような「有機化されたクレイ」としては、層間に第4級アンモニウム塩等の有機化剤が導入された状態(例えば、層間に有機化剤が入れ込まれた状態)にあるクレイであることが好ましい。なお、クレイの層間に有機化剤を導入する方法としては特に制限されず、例えば、層状鉱物であるモンモリロナイト等のクレイが有する陽イオン交換性を利用することにより、クレイの層間に有機化剤を導入する方法を適宜採用することが可能である。このように、公知の方法を適宜利用して、クレイの層間に有機化剤が導入されるように、有機化剤により層状鉱物であるクレイを処理することで、有機化されたクレイを容易に得ることができる。なお、このような有機化クレイによれば、クレイの層の剥離をより容易にすることが可能となり、単層のクレイを有機溶媒や樹脂に、より効率よく分散させることが可能となる。
有機化剤により有機化するためのクレイ(有機化前のクレイ)としては、特に制限されず、公知のクレイを適宜利用でき、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト(高陵石)、パイロフィロライト、スメクタイト、セリサイト(絹雲母)、イライト、グローコナイト(海緑石)、クロライト(緑泥石)、タルク(滑石)、ゼオライト(沸石)、ハイドロタルサイト等が挙げられる。このようなクレイは天然物であっても合成物であってもよい。
このようなクレイを有機化するために用いることが可能な有機化剤としては特に制限されず、クレイを有機化することが可能な公知の有機化剤を適宜利用することができ、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクタデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルベンジルアンモニウムイオン、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)メチルアンモニウムイオン、トリメチルステアリルベンジルアンモニウムイオン等の公知の有機化剤を適宜用いることができる。
このような有機化剤としては、100%モジュラス、破断強度、耐油性をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、下記一般式(I):
R2N+(CH3)2・X− (I)
(式(I)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基及びアラルキル基の中から選択される少なくとも1種を示し、X−はカウンターアニオンを示す。)
で表されるアンモニウム塩の中から選択される少なくとも1種の有機化剤が好ましい。
このような一般式(I)中のRとして選択され得るアルキル基としては、炭素数が1〜40(より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20)のものが好ましい。このような炭素数が、前記上限を超えると分子が大きくなり過ぎて、クレイの層間に有機化剤(アンモニウム塩)の分子が侵入し難くなり、クレイの有機化が困難となる傾向にある。また、前記一般式(I)中のRとして選択され得るアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、オレイル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル基(ステアリル基)等が挙げられるが、中でも、100%モジュラス、破断強度、耐油性をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、メチル、オクタデシル基(ステアリル基)が好ましく、オクタデシル基(ステアリル基)がより好ましい。
また、このような一般式(I)中のRとして選択され得るアラルキル基としては、炭素数が6〜30(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜20)のものが好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると、分子が大きくなり過ぎて、クレイの層間に有機化剤(アンモニウム塩)の分子が侵入し難くなり、クレイの有機化が困難となる傾向にある。このようなアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルオレニルメチル基等が挙げられるが、中でも、100%モジュラス、破断強度、耐油性をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点からは、ベンジル基がより好ましい。
また、X−はカウンターアニオンを示す。このようなカウンターアニオンとしては特に制限されず、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン類、およびホウ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロホウ酸アニオン等のホウ酸イオン類が挙げられる。
また、このような有機化剤としては、100%モジュラス、破断強度、耐油性をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、前記一般式(I)で表されかつ式(I)中の2つのRがいずれもアルキル基であるアンモニウム塩(A)と、前記一般式(I)中の2つのRのうちの一つがアルキル基でありかつもう一つがアラルキル基であるアンモニウム塩(B)との双方を含むものがより好ましい。なお、このようなアンモニウム塩(A)としては、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩等が挙げられ、前記アンモニウム塩(B)としては、例えば、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
また、前記有機化クレイとしては、100%モジュラス、破断強度、耐油性をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、4級アンモニウム塩で有機化されたクレイを好適に利用することができる。このようなクレイの4級アンモニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルステアリルアンモニウム塩、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)の塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらのうちの2種以上の混合物を好適に用いることができる。なお、このような有機化クレイの4級アンモニウム塩としては、引張強度、耐熱性向上の観点から、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらの混合物をより好適に利用でき、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩とジメチルオクタデシルアンモニウム塩との混合物を更に好適に利用できる。
また、このような有機化クレイとしては、市販のものを利用してもよく、例えば、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」、「クニフィル−B1」、「クニフィル−HY」などの他、ホージュン社製の商品名「エスベンシリーズ(C,E,W,WX,N−400,NX,NX80,NZ,NZ70,NE,NEZ,NO12S,NO12」、「オルガナイトシリーズ(D,T)などを適宜利用することができる。このような市販の有機化クレイの中でも、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」とホージュン社製の商品名「エスベンシリーズWX」を好適に利用できる。なお、このような市販の有機化クレイは、クレイの層間に有機化剤が導入された状態のものである。
(ポリマー(Z))
本発明にかかるポリマー(Z)は、前記エラストマー成分とともに含有される高分子成分である。そして、このようなポリマー(Z)は、前述のエラストマー性ポリマー(A)及びエラストマー性ポリマー(B)以外のポリマーである。ここで、ポリマー(Z)として利用可能なポリマーとしては、前述のエラストマー性ポリマー(A)及び(B)以外のポリマーから選択されるものであればよく、例えば、ガラス転移点が25℃超となるようなポリマー(この場合には水素結合性架橋部位等を有していてもよい。)や、エラストマー性ポリマー(A)及びエラストマー性ポリマー(B)において説明したような側鎖を含まないガラス転移点が25℃以下のポリマー等、を適宜利用できる。
また、このようなポリマー(Z)のSP値は、9.0以上であり、9.0〜16.0であることが好ましく、10.0〜15.0であることがより好ましい。このようなSP値が前記上限を超えると他の樹脂と混合不良となる傾向にあり、他方、前記下限未満では他の樹脂と混合不良となる傾向にある。
このようなSP値が9.0以上となるポリマーとしては、例えば、エチレン−メチルアクリレート共重合樹脂(略号:EMA、SP値:9.1)、ポリアミド12(略号:PA12、SP値:13)、NBR中(75/25)、メタクリル酸エチル、ポリスチレン、プロピルアクリレート、アクリル酸ブチル、多硫化ゴム(T)、メタクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、プロピレン、塩化ゴム、テトラヒドロフラン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル、NBR中〜中高(70/30)、塩化ビニル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリルゴム(ACM)、塩化メチレン、ホルムアルデヒド(オキシメチレン)ウレタンゴム(U)、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、NBR高(61/39)、メタクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、酢酸セルロース、エポキシレジン、フェノール樹脂、ジメチルホルムアミド、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリアミド(ナイロン66)、硝酸セルロース(11.8%N)、ポリアクリロニトリル、セルロース、ホルムアミド、酢酸セルロース(56%Acグループ)等が挙げられる。
なお、本明細書において「SP値」とは、いわゆるFedors法(例えば「Polym. Eng. Sci.14巻、2号」の第147頁〜第154頁に記載されている方法)により求められる溶解度パラメータ(solubility parameter)の値(単位:cal/cm3)を採用する(なお、このようなSP値としては、1999年発行の書籍「Polymer Handbook Third Edition」の第VII519頁〜第VII559頁に記載されている値を採用することもできる。)。なお、いわゆるFedors法の計算に利用する「25℃における各原子または原子団の凝集エネルギー」の値や、「25℃における各原子または原子団のモル分子容」の値は、例えば、「Polym. Eng. Sci.14巻、2号」の第147頁〜第154頁を参照して求めることができる。
ここで「エラストマー成分のSP値」に関して、エラストマー成分が複数種のポリマーの混合物である場合には、エラストマー成分中に含まれる各ポリマーのSP値に、エラストマー成分中に含まれる各ポリマーの質量比(総量に対する含有割合([比を求める対象となるポリマーの質量]/[エラストマー成分の総量]))を乗じた値をそれぞれ求めた後、得られた値を足し合わせること(得られた値の和を求めること)により求められる値を、その「エラストマー成分のSP値」として採用する。例えば、エラストマー成分がポリマー(A1)とポリマー(A2)との混合物である場合、先ず、エラストマー成分中に含まれる各ポリマーのSP値にエラストマー成分中に含まれる各ポリマーの質量比を乗じた値として、ポリマー(A1)のSP値にポリマー(A1)の質量比を乗じた値と、ポリマー(A2)のSP値にポリマー(A2)の質量比を乗じた値とをそれぞれ求め、その後、得られた値を足し合わせること(得られた値の和を求めること)によりエラストマー成分のSP値を求めることができ、より具体的には、下記計算式:
[SP値(E)]=[SP(A1)×{W(A1)/(W(A1)+W(A2))}]+[SP(A2)×{W(A2)/(W(A1)+W(A2))}]
(上記計算式中、SP値(E)はエラストマー成分のSP値を示し、SP(A1)はポリマー(A1)のSP値を示し、SP(A2)はポリマー(A2)のSP値を示し、W(A1)はポリマー(A1)の質量を示し、W(A2)はポリマー(A2)の質量を示す。)
を計算することにより、エラストマー成分のSP値を求めることができる。このように、各成分のSP値に、該当する成分の質量比(なお、1成分のみである場合には質量比は1となる。)を乗じて足し合わせることで、エラストマー成分が混合物である場合のSP値を求めることができる。
ここで、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を利用して該組成物中のエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)及び/又は(B))を調製する場合には、その製造に利用する成分である「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値を、そのままエラストマー成分のSP値とみなすことができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を利用してエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)及び/又は(B))を調製する場合、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)を利用して側鎖を形成することとなるが、反応に利用する原料化合物(架橋剤)の使用量が前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して0.1〜10質量部の割合であって、基本的に、架橋構造を形成するための反応に非常に少量の原料化合物(反応剤:架橋剤)しか用いないため、その反応後に得られるポリマーにおいて、極性が大きく変化することはなく、反応の前後でポリマーのSP値が変化するとは考えられないことから、エラストマー成分のSP値は、側鎖の形成前のエラストマー性ポリマー(D)のSP値とほぼ同一の値と見なすことができると考えられ、本特許では前記エラストマー成分のSP値として架橋前の「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値を採用する。なお、エラストマー性ポリマー(D)が複数種のポリマーの混合物である場合には、前述の「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)のSP値」としては、ポリマー(D)として含まれる各ポリマーのSP値に、ポリマー(D)として含まれる各ポリマーの質量比(総量に対する含有割合)を乗じた値をそれぞれ求め、その後、得られた値を足し合わせること(得られた値の和を求めること)により求めれる値を採用する。例えば、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)が、ポリマー(D1)、ポリマー(D2)の混合物である場合、下記計算式:
[SP値(D)]=SP(D1)×{W(D1)/(W(D1)+W(D2))}+SP(D2)×{W(D2)/(W(D1)+W(D2))}
(上記計算式中、SP値(D)は環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)のSP値を示し、SP(D1)はポリマー(D1)のSP値を示し、SP(D2)はポリマー(D2)のSP値を示し、W(D1)はポリマー(D1)の質量を示し、W(D2)はポリマー(D2)の質量を示す。)
を計算して求められる値を採用する。このように、各成分のSP値に該当する成分の質量比を乗じて足し合わせることで、エラストマー性ポリマー(D)が複数種のポリマーの混合物である場合であってもSP値を求めることができる。更に、ポリマー(Z)が混合物である場合も、同様に、「ポリマー(Z)のSP値」としては、ポリマー(Z)として含まれる各ポリマーのSP値に、ポリマー(Z)として含まれる各ポリマーの質量比(総量に対する含有割合)を乗じた値をそれぞれ求め、その後、得られた値を足し合わせること(得られた値の和を求めること)により求めれる値を採用する。
また、本発明にかかるポリマー(Z)は、前記エラストマー成分のSP値よりも0.5以上(より好ましくは1.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜7.0)大きな値のSP値を有する。このようなSP値の差([ポリマー(Z)のSP値]−[エラストマー成分として含まれるポリマーのSP値])の値が0.5未満となると、極性の上昇度合いが低すぎて耐油性を十分に改良することができない。また、このようなSP値の差の値が前記上限を超えると極性が違いすぎて混合不良となる傾向にある。
このように、本発明においては、前記エラストマー成分として含まれるポリマーの種類に応じて、ポリマー(Z)のSP値が、前記条件(SP値が9.0以上であるとの条件、及び、SP値が前記エラストマー成分のSP値よりも0.5以上大きな値となるとの条件)を満たすように、SP値が9.0以上のポリマーの中から用いるポリマーを適宜選択して利用すればよい。そして、このような条件を満たすポリマー(Z)を用いることにより、組成物の耐油性を十分に向上させることが可能となる。
また、本発明にかかるポリマー(Z)は、エラストマー成分に対する反応性官能基を有することが好ましい。ここにいう「反応性官能基」とは、エラストマー成分の主鎖又は側鎖に対して化学結合できるものもしくは水素結合等の相互作用により相溶性を向上できるものをいう。このような反応性官能基としては、水酸基、アミノ基、イミノ基、エステル基、酸無水物基及びカルボキシ基のうちの少なくとも1種であることが好ましく、水酸基、アミノ基、イミノ基、酸無水物基及びカルボキシ基のうちの少なくとも1種であることがより好ましい。このような反応性官能基を有するポリマー(Z)を利用することにより、例えば、SP値の差が5.0以上となるような、ポリマー(Z)とエラストマー成分とを用いた場合においてもポリマーが大きく分離することなく、十分に相溶性高い状態を保持でき、各成分が均一に分散、混合することが可能となり、より高度な耐油性を得ることが可能となる。このような反応性官能基を有しかつSP値が9.0以上となるようなポリマーとしては、例えば、ガラス転移点が25℃超のポリマーである、末端にアミンを有するポリアミド(例えば、ナイロン(ポリアミド12(PA12)等))が挙げられる。このようなポリマーにより、例えば、前記アミン(末端のアミン)と、エラストマー成分の側鎖に含まれる水酸基やカルボニル基等とにより水素結合を形成して十分に相溶性高い状態で安定的に存在させることも可能となったり、更には、エラストマー成分の製造時に酸無水物基を有するようなモノマーを利用する場合においては、そのような酸無水物基と前記ポリイミドの末端のアミンとを予め反応させることも可能となり、これによりマクロな相分離が生じることを十分に抑制させてSP値が大きく異なるポリマーであっても、十分に相溶性高い状態で、より安定的に存在させることが可能となり、各成分を十分に均一に分散、混合することも可能となる。このように、ポリマー(Z)としては、十分に相溶性高い状態でより安定的にポリマー(Z)を存在させることが可能となるといった観点からは、ガラス転移点が25℃超のポリマーであって、水酸基、アミノ基、イミノ基、エステル基、酸無水物基及びカルボキシ基のうちの少なくとも1種の反応性官能基を有するポリマーを好適に利用することができる。
(組成物)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記エラストマー成分と、前記有機化クレイと、前記ポリマー(Z)とを含有するものである。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によって、十分に高度な引張強度(100%モジュラス及び破断強度を指標とした引張強度)と、優れた耐油性とを有することが可能となる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、先ず、本発明において、エラストマー成分は、少なくとも水素結合性架橋部位を有する側鎖を含むエラストマー性ポリマー(側鎖に、側鎖(a);側鎖(a’)及び側鎖(b);並びに、側鎖(c)のうちの少なくとも1種を含むポリマー)を含有している。先ず、このようなエラストマー性ポリマーと有機化クレイとを組み合わせると、有機化されたクレイが系中において効率よく剥離されて、単層状態のクレイが形成される。このようにして単層状態のクレイが形成されることで、ポリマー中にクレイがより均一にかつ高度に分散されることとなる。そして、このように系中に高度に分散されたクレイと水素結合性架橋部位とが相互作用(新たな水素結合が形成される等)して、クレイの表面を利用してエラストマー成分が面架橋される。このような面架橋が形成されると、架橋点への応力集中を抑えることが可能となり、有機化クレイを含有させなかった場合と比較して、より高い破断強度(破断されるまでの引張強度)を発現させることが可能となる。なお、本発明のように、有機化クレイを用いた場合には、通常のクレイ(有機化されていないもの)と比較して、単層の状態のクレイの存在率をより高度なものとすることができ、単層のクレイをより十分に分散させることが可能となるため、より多点で、上述のような面架橋が形成されることとなり、より高度な引張応力(引張強度)を得ることが可能となる。また、本発明においては、上述のようなSP値の条件を満たすポリマー(Z)が含有されている。このようなポリマー(Z)によって、極性が上がることにより、低極性油との相溶性を低下させることが可能となり、耐油性を十分に向上させることが可能となる。このように、本発明においては、エラストマー成分と有機化クレイとの組み合わせにより達成される引張強度の向上と、ポリマー(Z)に由来する耐油性の向上とを併せて図ることが可能となるものと本発明者らは推察する。
一方、水素結合性の架橋部位を側鎖に有する、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)のうちの少なくとも1種をエラストマー成分として利用せず、他のエラストマー成分のみを用いた場合には、例え、有機化クレイと組み合わせて利用したとしても、上述のような効果を得ることができない。この点に関して検討すると、先ず、一般的な熱可塑性エラストマーは、高分子分子鎖間の物理的な相互作用による擬似的架橋を利用したタイプ(高分子の分子間力等による相互作用によって物理的に弱い結合が形成されているタイプ)と、熱可塑性樹脂のマトリックスにゴムを分散させたタイプの2つに大別される。このような擬似的架橋を利用したタイプの熱可塑性エラストマーは、代表的なものとして、ブロックポリマーやウレタンエラストマー等のソフトセグメントとハードセグメントを持つポリマーが挙げられる。ここで、上述のような側鎖を有するポリマーを導入することなく、単に、擬似的架橋を利用したタイプの熱可塑性エラストマーにクレイ等のフィラーを配合すると、擬似的架橋点における相互作用(高分子分子鎖間の物理的な相互作用)がクレイにより阻害されて、却って高分子の機械的な強度が低下してしまい、ゴム製品として実使用に耐えられないものとなってしまう。このように、擬似的架橋を利用したタイプの熱可塑性エラストマーのみからなるような従来の熱可塑性のエラストマーは、これを単に有機化クレイと組み合わせた場合に、その組成物中において、却って擬似的架橋の形成が阻害され、組成物の機械的な強度(引張応力等)が低下してしまう。また、熱可塑性樹脂のマトリックスにゴムを分散させたタイプの熱可塑性エラストマーでは、その組成からも明らかなように、クレイ等のフィラーは、マトリックス相にしか導入されないこととなる。ここにおいて、上記側鎖を有していないような熱可塑性樹脂からなるマトリクスにおいては、マトリクスにおいてクレイとの相互作用が形成されることがない。そのため、単純にフィラーを導入しても、ある部分に高濃度にフィラーが導入され、また、ある部分にはまったくフィラーが導入されないといった状態となってしまう。その結果、かかるフィラーの濃度の差に起因して、エラストマーの内部において硬度の差が生まれ、機械的強度等が低下する。そのため、熱可塑性樹脂のマトリックスにゴムを分散させたタイプの熱可塑性エラストマーにおいて、水素結合性の架橋部位を側鎖を含まないポリマーを用いている場合においては、単純にクレイを導入したとしても、クレイを十分に分散させることができず、組成物の機械的な強度(破断強度等)が低下してしまう。このような観点で、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を、母体となるエラストマー成分に利用しなかった場合には、そもそも有機化クレイとの間に相互作用を形成することができないばかりか、クレイの存在により、却って機械的な強度が低下してしまい、エラストマー(ゴム)として必ずしも十分な特性を有するものとすることができないものと本発明者らは推察する。
また、本発明においては、前記有機化クレイの含有量は前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となっている。このような含有比率(十分に低い比率)であっても、引張応力(引張強度)において十分に高い効果が得られる。この点については、上述のように、組成物中に有機化クレイが十分に均一に分散されて、面架橋を十分に形成することが可能であるとともに、有機化されていることにより、より効率よくクレイが単層状態となって、単層で分散されているクレイの割合をより効率よく高度なものとすることが可能であり、これによりエラストマー内で面架橋をより多く形成することが可能となるため、その含有量が20質量部以下と微量であっても、十分に高度な引張応力を発揮させることも可能になるためであると本発明者らは推察する。
なお、本発明において、側鎖に共有結合性架橋部位を含むエラストマー成分を含有する場合(例えば、エラストマー性ポリマー(B)を含む場合)には、共有結合性架橋部位を含む側鎖により、より高い水準の耐圧縮永久歪性を発現させることも可能となるものと本発明者らは推察する。また、エラストマー成分中に、水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位とが存在する場合(エラストマー性ポリマー(B)を含有する場合、エラストマー性ポリマー(B)と他のエラストマー性ポリマーの混合物を含有する場合、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)との混合物を含有する場合、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマーとの混合物を利用する場合等)には、水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の存在に起因して、使用時に、共有結合による、より高度な機械的強度と、水素結合による加熱時の開裂による、より高度な流動性(成形性)を同時に発現させることも可能となる。そのため、側鎖の種類に応じて組成を適宜変更して、用途に応じた特性を適宜発揮させることも可能となるものと本発明者らは推察する。なお、上述のようなエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマーは、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と反応させて、前記側鎖(b)を有する前記エラストマー性ポリマーを製造する方法により得ることが可能である。なお、この場合においても、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することができる。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物によって、上述のような本発明の効果が得られる理由等について検討したが、以下、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の好適な実施形態(各成分の含有比率の好適な条件等)について更に説明する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記エラストマー成分と、前記有機化クレイと、前記ポリマー(Z)とを含有するものであり、前記有機化クレイの含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下である。このような有機化クレイの含有量が前記上限を超えると、耐熱性及び破断強度が低下する。このような熱可塑性エラストマー組成物における有機化クレイの含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが更に好ましく、1〜3質量部であることが特に好ましい。このような有機化クレイの含有量が前記下限未満では、有機化クレイの含有量が少なすぎて十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋が強くなり過ぎて、却って伸びや強度が低下してしまい、各種用途に利用することが困難となる(実用性が低下する)傾向にある。
また、このような有機化クレイは、単層の形態のクレイ(単層のクレイ)として組成物中に存在することが好ましい。このような単層状の形態のクレイの存在は、組成物の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することにより確認できる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μm2の大きさの測定点を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した場合において、全測定点において、個数を基準として、全有機化クレイのうちの50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは80〜100%、特に好ましくは85〜100%)が単層のクレイとして存在することが好ましい。単層のクレイの存在率が前記下限未満では破断伸び、破断強度が低下する傾向にある。なお、このような単層のクレイの存在率(割合)の測定に際しては、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製の商品名「JEM−2010」)を用いて、試料として前記熱可塑性エラストマー組成物10gを準備し、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の5.63μm2の大きさの測定点を3点以上それぞれ測定し、かかる測定により得られる各TEM画像において、単層のクレイの個数と、多層状の有機化クレイの個数とをそれぞれ求めて、各測定点(各TEM画像)に関して、個数を基準として、全クレイのうちの単層のクレイの存在率(割合)を計算することで求めることができる。なお、単層の形態になる前の多層構造の場合に、一般的な有機化クレイの層間距離は20〜40オングストローム(2〜4nm)程度である(なお、有機化前のモンモリロナイトの層間距離は通常9.8オングストローム程度である)。また、一般的な有機化クレイを有機溶剤に分散させて単層にした場合、それらの層間距離は50オングストローム(>5nm)以上となることから、TEM画像により確認できる各層の層間距離がそのような層間距離よりも広くなっていることに基づいて、単層と判断してもよい。このように、有機化されたクレイの種類にもよるが、例えば、5nm以上層の間隔があることをもって単層の状態であると判断してもよく、場合によっては、数10nm以上の層の間隔があることをもって単層の状態であると判断してもよい。
なお、組成物中に、上述のような割合(存在率)で単層のクレイが含有されている場合、多層状の有機化クレイがそのまま分散されているよりも、クレイがより分散して含有された状態となるため(多層状の有機化クレイが分解されて単層のクレイが形成されるためである。)、より高い分散性でクレイを組成物中に分散させることが可能となる。このように、前記有機化クレイは、組成物中において多層状のまま存在するよりも、単層状のものが前記割合で存在する場合に、より高い分散性が得られ、耐熱性や破断強度をより高度なものとすることが可能である。そのため、上述のような割合で、単層の状態のクレイを含有させることがより好ましく、これにより有機化クレイがより分散されて耐熱性や破断強度の向上をより効率よく図ることが可能となる。また、上述のような割合(存在率)で単層のクレイを含有させる方法としては、特に制限されないが、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用して熱可塑性エラストマー組成物を製造することで、より効率よく、単層のクレイを上記割合で含有させることが可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μm2の大きさの測定点を透過型電子顕微鏡により測定した場合において、全測定点において、単層のクレイが1μm2あたり、1〜100個(より好ましくは3〜80個、更に好ましくは5〜50個)分散されていることが好ましい。このような単層のクレイの個数が前記下限未満ではクレイの量が少なすぎて、十分な効果が得られなくなる傾向にある。なお、このような単層のクレイの個数は、単層のクレイの存在率(割合)の測定と同様の方法でTEM画像を確認することにより求めることができる。
上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、前記ポリマー(Z)の含有量(含有比率)が、前記エラストマー成分100質量部に対して10〜700質量部であることが好ましく、30〜600質量部であることがより好ましく、50〜500質量部であることが更に好ましく、80〜400質量部であることが特に好ましく、100〜300質量部であることが最も好ましい。このようなポリマー(Z)の含有量が前記下限未満では、耐油性を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、圧縮永久歪が上昇する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記ポリマー(Z)の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して5〜60質量%であることが好ましく、8〜50質量%であることがより好ましく、10〜40質量%であることが更に好ましい。このようなポリマー(Z)の含有量が前記下限未満では、耐油性を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、圧縮永久歪が上昇してしまうとなる傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、用いるエラストマー成分の種類に応じて、用途に応じた特性を適宜付与することもできる。例えば、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a)に由来する特性を付与できるため、特に破断伸び、破断強度、流動性を向上させることが可能となる。また、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に、側鎖中の共有結合性架橋部位に由来する特性を付与できるため、特に圧縮永久歪に対する耐性(耐圧縮永久歪性)を向上させることが可能となる。なお、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分として含有する熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、共有結合性架橋部位に由来する特性の他に、水素結合性架橋部位(側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位)に由来する特性をも付与できるため、流動性(成形性)を保持した状態で、耐圧縮永久歪性をより向上させることも可能となり、その側鎖の種類やポリマー(B)の種類等を適宜変更することで、用途に応じた所望の特性を、より効率よく発揮させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、本発明においては、エラストマー成分は、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を少なくとも含有していればよいが、組成物中に共有結合性架橋部位を存在せしめて、より効率よく共有結合性架橋部位の特性を利用するといった観点から、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを混合して用いてもよい。例えば、エラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)を用いる場合に、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを組み合わせて用いた場合には、組成物中に含まれる側鎖に由来して、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有するエラストマー性ポリマー(B)を利用した熱可塑性エラストマー組成物と、ほぼ同様の特性を付与することも可能となる。また、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合や、エラストマー性ポリマー(A)及びエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、各成分(例えばエラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の各成分)の比率を適宜変更することで、所望の特性を適宜発揮させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の含有比率は質量比([ポリマー(A)]:[ポリマー(B)])で1:9〜9:1とすることが好ましく、2:8〜8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)を含有し、他のポリマーとして、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマー(以下、場合により「エラストマー性ポリマー(C)」と称する。)を更に含有する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(C)の含有比率は質量比([エラストマー性ポリマー(A)]:[エラストマー性ポリマー(C)])で1:9〜9:1とすることが好ましく、2:8〜8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a’)と側鎖(b)の双方が存在する場合には、その側鎖(a’)の全量と側鎖(b)の全量とが、質量比を基準として、1:9〜9:1となっていることが好ましく、2:8〜8:2となっていることがより好ましい。このような側鎖(a’)の全量が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。なお、このような側鎖(a’)は、側鎖(a)を含む概念である。そのため、側鎖(a’)として側鎖(a)のみが含まれるような場合においても、上記質量比で、組成物中に側鎖(a)と側鎖(b)の双方が存在することが好ましい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、前記エラストマー成分や前記ポリマー(Z)以外のポリマー成分(以下、単に「他のポリマー」と称する。)、パラフィンオイル、補強剤(充填剤)、水素結合性の補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、前記パラフィンオイル以外の可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等を含有することができる。このような添加剤等は、特に制限されず、一般に用いられるもの(公知のもの)を適宜使用することができる。例えば、前記他のポリマー、パラフィンオイル、補強剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤等としては、以下に記載のようなものを適宜利用することができる。
前記他のポリマーとしては、エラストマー性ポリマー(B)及び前記ポリマー(Z)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマー;前記ポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂;前記ポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体;を好適に利用することができる。なお、ここにいう「化学結合性の架橋部位」とは、水素結合、共有結合等といった化学結合により架橋が形成されている部位をいう。そのため、本発明にいう「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、化学結合(例えば水素結合、共有結合等)により形成される架橋を有さない状態であることをいう。
このようなポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂(以下、単に「化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂」と称する。)としては、化学結合による架橋点を形成するような、官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、アミノ基)を含まず、更に、高分子鎖同士を直接架橋する結合部位(共有結合による架橋部位等)を含まないものが好適に用いられる。また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂は、少なくとも、上述のような側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)等を有していないポリマーとなる。
また、ここにいう「α−オレフィン系樹脂」とは、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィンの共重合体をいう。ここにいう「α−オレフィン」とは、α位に炭素−炭素二重結合を有するアルケン(末端に炭素−炭素二重結合を有するアルケン:なお、かかるアルケンは直鎖状のものであっても分岐鎖状のものであってもよく、炭素数が2〜20(より好ましくは2〜10)であることが好ましい。)をいい、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、SP値が前記ポリマー(Z)としての条件を満たしていないα−オレフィンの重合体(ポリα−オレフィン:単独重合体であっても共重合体であってもよい。)であればよく、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の中でも、母体となるエラストマーに対する相溶性の観点からは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体が好ましい。なお、このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、結晶化度が10%以上のものが好ましく、10〜80%のものがより好ましく、10〜75%のものが更に好ましい。このような結晶化度が前記下限未満では樹脂的な性質が希薄になるため、機械特性、流動性をより高度なものとすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると樹脂的な性質が強くなるため、機械特性をより高い水準でバランスよく発揮させることが困難となる傾向にある。なお、このような結晶化度は、測定装置としてX線回折装置(例えば、リガク社製の商品名「MiniFlex300」を用い、回折ピークを測定し、結晶性/非晶性由来の散乱ピークの積分比を計算することにより求めることができる。
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、JIS K6922−2(2010年発行)に準拠して測定される、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が40g/10分以上であることが好ましい。このようなメルトフローレート(MFR)が前記下限未満では組成物中に配合しても流動性を向上させることが困難となる傾向にある。なお、このようなメルトフローレート(MFR)は、JIS K6922−2(2010年発行)に記載のB法に準拠して測定される値であり、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G−01」を用いて、該装置の炉体内に前記α−オレフィン系樹脂を3g添加した後、温度を190℃にして5分間保持した後、190℃に維持しつつ2.16kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部から、10分の間に流出する組成物の質量(g)を測定(前記炉体内において温度を190℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めることができる。
さらに、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上150万以下であることがより好ましく、5万以上125万以下であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下してしまい、相分離しやすくなる傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上150万以下であることがより好ましく、5万以上125万以下であることが更に好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下してしまい、相分離しやすくなる傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の分子量分布の分散度(Mw/Mn)は100以下であることが好ましく、1.5〜50であることがより好ましい。このような分子量分布の分散度(Mw/Mn)の値が前記下限未満では流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下する傾向にある。
なお、上述のようなα−オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)や前記数平均分子量(Mn)および分子量分布の分散度(Mw/Mn)は、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。また、このような分子量等の測定の具体的な装置や条件としては、島津製作所製「Prominence GPCシステム」を利用できる。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂のガラス転移点は、−150〜5℃であることが好ましく、−125〜0℃であることがより好ましい。このようなガラス転移点が前記下限未満では融点が低くなるため耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分への配合後のゴム弾性が低下しやすい傾向にある。なお、ここにいう「ガラス転移点」は、前述のように、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。このようなDSC測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなα−オレフィン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学社製の商品名「タフマー」;日本ポリエチレン社製の商品名「ノバテックHD」「ノバテックLD」「ノバテックLL」「カーネル」;プライムポリマー社製の商品名「ハイネックス」「ネオゼックス」「ウルトゼックス」「エボリュー」「プライムポリプロ」「ポリファイン」「モストロンーL」;サンアロマー社製のPP等を適宜用いてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂を更に含有する場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量(含有比率)が、前記エラストマー成分100質量部に対して800質量部以下であることが好ましく、5〜700質量部であることがより好ましく、10〜600質量部であることが更に好ましく、25〜500質量部であることが特に好ましく、50〜400質量部であることが最も好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では、流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、圧縮永久歪が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂を更に含有する場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量は、前記組成物の総量に対して1〜90質量%であることが好ましく、3〜80質量%であることがより好ましく、5〜70質量%であることが更に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では、流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、圧縮永久歪が低下する傾向にある。
また、前記他のポリマーとしては、母体となるエラストマーの架橋反応に干渉しない成分であるとの観点からは、前記ポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体が好ましい。なお、このようなスチレンブロック共重合体を用いた場合、基本的に、母体となるエラストマー性ポリマー(前記エラストマー成分)の架橋構造や製造時の架橋反応に干渉しないため、架橋した母体となるエラストマー構造固有の物性が阻害されないことから、前記エラストマー成分に由来する特性を十分に維持しつつ、スチレンブロック共重合体に由来する優れた機械特性(特に引張特性、圧縮永久歪等)を、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に反映させること(付与すること)ができ、より高度な特性を有するものとすることが可能であるものと本発明者らは推察する。
このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物に好適に用いられる成分である前記スチレンブロック共重合体は、SP値が前記ポリマー(Z)の条件を満たさないものであり、かつ、化学結合性の架橋部位を有さないものである。ここにいう「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、前述のα−オレフィン系樹脂において説明したものと同義である。従って、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、化学結合による架橋点を形成するような、官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、アミノ基)を含まず、更に、高分子鎖同士を直接架橋する結合部位(共有結合による架橋部位等)を含まないものが好適に用いられる。また、このようなポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体は、少なくとも、上述のような側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)等を有していないポリマーとなる。
また、ここにいう「スチレンブロック共重合体」とは、いずれかの部位にスチレンブロック構造を有するポリマーであればよい。なお、一般に、スチレンブロック共重合体は、スチレンブロック構造を有し、常温では、そのスチレンブロック構造の部位が凝集して物理的架橋点(物理的な疑似架橋点)が形成され、加熱した場合にはかかる物理的な疑似架橋点が崩壊することに基づいて、熱可塑性を有しかつ常温でゴムのような特性(弾性等)を有するものとして利用可能なものである。
また、このようなポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体(以下、場合により単に「化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体」と称する。)としてはゴム弾性と熱可塑性の両立の観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン‐エチレン‐プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、これらの水素添加物(いわゆる水添物)が好ましく、SEBS、SEEPSがより好ましい。このようなスチレンブロック共重合体は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、スチレン含有量が20〜40質量%(より好ましくは25〜37質量%)のスチレンブロック共重合体であることが好ましい。このようなスチレン含有量が前記下限未満ではスチレンブロック成分の減少により熱可塑性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとオレフィン成分の減少によりゴム弾性が低下する傾向にある。なお、このようなスチレンブロックスチレンブロック共重合体中のスチレン含有量は、JIS K6239(2007年発行)に記載のIR法に準拠した方法により測定できる。
さらに、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上70万以下であることが好ましく、30万以上60万以下であることがより好ましく、35万以上55万以下であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー性ポリマーとの相溶性が低下する傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、10万以上60万以下であることが好ましく、15万以上55万以下であることがより好ましく、20万以上50万以下であることが更に好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー性ポリマー(前記エラストマー成分)との相溶性が低下する傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の分子量分布の分散度(Mw/Mn)は5以下であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。なお、このような重量平均分子量(Mw)や前記数平均分子量(Mn)および分子量分布の分散度(Mw/Mn)は、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。また、このような分子量等の測定の具体的な装置や条件としては、島津製作所製の「Prominence GPCシステム」を利用できる。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体のガラス転移点は、−80〜−40℃であることが好ましく、−70〜−50であることがより好ましい。このようなガラス転移点が前記下限未満では融点が低くなるため耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとゴム弾性が低下する傾向にある。なお、ここにいう「ガラス転移点」は、前述のように、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。このようなDSC測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなスチレンブロック共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、クレイトン社製の商品名「G1633」「G1640」「G1641」「G1642」「G1643」「G1645」「G1650」「G1651」「G1652」「G1654」「G1657」「G1660」;クラレ社製の商品名「S4055」「S4077」「S4099」「S8006」「S4044」「S8006」「S4033」「S8004」「S8007」「S8076」;旭化成社製の商品名「タフテックH1041」「タフテックN504」「タフテックH1272」「タフテックM1911」「タフテックM1913」「タフテックMP10」;アロン化成社製の商品名「AR−710」「AR−720」「AR−731」「AR−741」「AR−750」「AR−760」「AR−770」「AR−781」「AR−791」;等を適宜用いてもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量(含有比率)は、前記エラストマー成分100質量部に対して10〜400質量部以下であることが好ましく、15〜350質量部であることがより好ましく、20〜300質量部であることが更に好ましく、30〜250質量部であることが特に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満では、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋したエラストマーによる母体構造の特性(前記エラストマー成分に由来する特性)が希薄になる傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して5〜60質量%であることが好ましく、7〜45質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満では、前記スチレンブロック共重合体の含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋したエラストマーによる母体構造の特性(前記エラストマー成分に由来する特性)が希薄になる傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前述の他のポリマーとして、例えば、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体以外にも、SP値が前記ポリマー(Z)としての条件を満たしていない他の種類のポリマーを適宜利用することも可能である。このような他の種類のポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイソブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ステアリル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸プロピル、フッ素ゴム、シリコーンゴム(MQ)、酸化ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ブチルゴム(IIR)、ポリ塩化ビニル、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR:イソプレンゴム)、ポリブタジエン(BR:ブタジエンゴム)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリスチレンが挙げられる。
また、前記パラフィンオイルは、組成物の諸物性を低下させることなく、流動性をより向上させることが可能となるといった観点から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に更に含有させる添加成分(他の成分:添加剤)として好適に用いることができる。なお、このようなパラフィンオイルと、前述のスチレン系ブロックポリマーとを併用した場合、オイル成分をブロックポリマー内に吸収させることが可能となり、オイル添加による加工性改善(流動性の向上)とスチレン系ブロックポリマー添加による機械特性向上とを十分に高度な水準で両立することが可能となるため、機械的特性や耐熱性をより十分に維持しつつ、押し出し加工性や射出成型性などの生産加工性をより高度なものとすることができる。また、パラフィンオイルを用いた場合には、例えば、加熱してオリフィス(例えば直径1mmの開口部を有するようなもの等)から押し出した場合に、オリフィスの開口部から押し出された紐状の熱可塑性エラストマー組成物の形状(ストランド形状)が十分に均一の太さを有するものとなり、その表面に毛羽立ちが見られない状態となるような、優れた押し出し加工性が得られる傾向にある。このようなパラフィンオイルとしては特に制限されず、公知のパラフィンオイルを適宜利用することができる。
また、このようなパラフィンオイルとしては、そのオイルに対して、ASTM D3238−85に準拠した相関環分析(n−d−M環分析)を行って、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(パラフィン部:CP)、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率(ナフテン部:CN)、及び、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率(芳香族部:CA)をそれぞれ求めた場合において、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(CP)が60%以上であることが好ましい。
また、このようなパラフィンオイルとしては、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される、40℃における動粘度が50mm2/s〜700mm2/sのものが好ましく、150〜600mm2/sのものがより好ましく、300〜500mm2/sのものが更に好ましい。このような動粘度(ν)が前記下限未満ではオイルのブリードが起こりやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると充分な流動性を付与できなくなる傾向にある。なお、このようなパラフィンオイルの動粘度は、40℃の温度条件下において、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される値を採用するが、例えば、JIS K 2283(2000年発行)に準拠したキャノン・フェンスケ式粘度計(例えば柴田科学社製の商品名「SOシリーズ」)を利用して、40℃の温度条件で自動測定した値を採用してもよい。
さらに、このようなパラフィンオイルは、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定されるアニリン点が80℃〜145℃であることが好ましく、100〜145℃であることがより好ましく、105〜145℃であることが更に好ましい。なお、このようなパラフィンオイルのアニリン点は、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定される値を採用するが、例えば、JIS K2256(2013年発行)に準拠したアニリン点測定装置(例えば田中科学機器社製の商品名「aap−6」)を利用して測定した値を採用してもよい。
また、このようなパラフィンオイルとしては、適宜市販のものを利用することができ、例えば、JX日鉱日石エネルギー社(新社名「JXTGエネルギー株式会社」)製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P200」、「スーパーオイルMシリーズ P400」、「スーパーオイルMシリーズ P500S」;出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、「ダイアナプロセスオイルPW150」、「ダイアナプロセスオイルPW380」;日本サン石油社製の商品名「SUNPARシリーズ(110、115、120、130、150、2100、2280など)」;モービル社製の商品名「ガーゴイルアークティックシリーズ(1010、1022、1032、1046、1068、1100など)」;等を適宜利用してもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記パラフィンオイルを更に含有させる場合、前記パラフィンオイルの含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して10〜600質量部であることが好ましく、50〜550質量部であることがより好ましく、75〜500質量部であることが更に好ましく、100〜400質量部であることが特に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、パラフィンオイルを添加することにより得られる効果(特に流動性及び加工性を向上せしめる効果)が必ずしも十分なものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記パラフィンオイルを更に含有させる場合、前記パラフィンオイルの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して20〜60質量%であることが好ましく、25〜55質量%であることがより好ましく、35〜55質量%であることが更に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、流動性、機械特性改善の観点から、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を組み合わせて含有しているものが好ましい。すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、前記ポリマー(Z)、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有しているものがより好ましい。
このように、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、前記ポリマー(Z)、前記α−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する場合においては、耐熱性や破断強度、更には耐圧縮永久歪性等といった特性をより高度な水準でバランスよく発揮できる傾向にある。このような効果が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、先ず、前記パラフィンオイルと前記スチレンブロック共重合体とを組み合わせて利用した場合、これらの相溶性が十分に高いため、前記スチレンブロック共重合体が含まれる系中にパラフィンオイルが十分に均一に分散する。また、前記スチレンブロック共重合体と前記α−オレフィン系樹脂とは相溶性が高いため、系中で均一に分散する。また、このような前記スチレンブロック共重合体と前記α−オレフィン系樹脂とを含む系において、前記エラストマー成分が両者に対して高い相溶性を有するため、やはり組成物中において前記エラストマー成分も十分に均一に分散したものとなる。そして、前述のように、前記エラストマー成分と前記有機化クレイとが相互作用して面架橋を形成するため、エラストマー成分の分散に伴ってクレイも十分に分散した状態で存在することとなる。このように、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、前記α−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する場合においては、各成分がより十分に分散した状態で含有される。そのため、熱可塑性エラストマー組成物の特性に強く影響を与える前記エラストマー成分の状態が、前記有機化クレイと相互作用した状態(面架橋により強い結合を形成した状態)で十分に分散されたものとなるため、より高度な機械的強度や耐熱性をバランスよく発揮することが可能となる。また、このような系においては、前述のように前記有機化クレイと相互作用した状態(面架橋により強い結合を形成した状態)のため、前記エラストマー成分と有機化クレイとが系中に十分に分散されていることから、エラストマー成分の分散に伴って、熱可塑性エラストマー組成物の耐油性に強く影響する前記ポリマー(Z)もやはり十分に分散した状態となる。そのため、より高度な耐油性を有するものとなる。更に、このような系においては、前記α−オレフィン系樹脂に起因して、より高度な流動性(加熱時の流動性)を達成することも可能である。更に、前記スチレンブロック共重合体は、添加量によって機械強度を調節可能であるため、所望の機械物性に調節することも可能である。そのため、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、前記ポリマー(Z)、前記α−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する系においては、耐油性、引張強度、耐圧縮永久歪性等といった特性をより高度な水準でバランスよく発揮できるといった効果が得られるものと本発明者らは推察する。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に更に含有させることが可能な前記補強剤(充填剤)としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等を上げることができる。シリカとしては湿式シリカが好適に用いられる。
また、前記老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物を適宜利用することができる。また、前記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等を適宜利用することができる。また、前記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を適宜利用することができ、また、前記可塑剤としては、例えば、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体をはじめ、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等を適宜利用することができる。また、前記可塑剤(軟化剤)としては、流動性をより向上させるといった観点から、熱可塑性エラストマーに用いることが可能なものを適宜利用でき、例えば、オイル類を用いることもできる。なお、このような添加剤等としては、特開2006−131663号公報に例示されているようなものを適宜利用してもよい。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、前記ポリマー(Z)、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体以外の他の成分(例えば、前記添加剤等)を含有する場合において、前記他の成分の含有量は特に制限されるものではないが、ポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、それぞれ、前記エラストマー成分100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、20〜300質量部であることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、基質のエラストマーの効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
前述の他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は、それぞれ、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基質のエラストマーの反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、加熱(例えば100〜250℃に加熱)することにより、水素結合性架橋部位において形成されていた水素結合や、他の架橋構造(スチレンブロック共重合体を含む場合にはその物理架橋等)が解離する等して軟化し、流動性を付与することができる。これは、主に、加熱により分子間または分子内で形成されている側鎖同士の相互作用(主に水素結合による相互作用)が弱まるためであると考えられる。なお、本発明においては、側鎖に、少なくとも水素結合性架橋部位を含むエラストマー成分が含有されていること等から、加熱により流動性が付与された後、放置した場合に、解離した水素結合が再び結合して硬化するため、その組成によっては、熱可塑性エラストマー組成物に、より効率よくリサイクル性を発現させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6922−2(2010年発行)に準拠して測定される230℃、10kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が2g/10分以上であることが好ましく、4g/10分以上であることがより好ましく、8g/10分以上であることが更に好ましい。このようなメルトフローレート(MFR)が前記下限未満では必ずしも充分な加工性を発現できない場合も生じ得る傾向にある。なお、このようなメルトフローレート(MFR)は、JIS K6922−2(2010年発行)に記載のB法に準拠して測定される値であり、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G−01」を用いて、該装置の炉体内に熱可塑性エラストマー組成物を3g添加した後、温度を230℃にして5分間保持した後、230℃に維持しつつ10kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部から、10分の間に流出するエラストマーの質量(g)を測定(前記炉体内において温度を230℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めることができる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、5%重量減少温度が320℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では耐熱性に劣る傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、測定試料として10mgの熱可塑性エラストマー組成物を準備し、測定装置として熱重量測定装置(TGA)を用い、昇温速度10℃/minで加熱して、初期の重量(10mg)から5%重量が減少した際の温度を測定することにより求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、ゴム弾性を活用して種々のゴム用途に使用することができる。またホットメルト接着剤として、またはこれに含ませる添加剤として使用すると、耐熱性およびリサイクル性を向上させることができるので好ましい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー等の用途に好適に用いられる。
上記自動車用ゴム部品としては、具体的には、例えば、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部などのタイヤ各部;外装のラジエータグリル、サイドモール、ガーニッシュ(ピラー、リア、カウルトップ)、エアロパーツ(エアダム、スポイラー)、ホイールカバー、ウェザーストリップ、カウベルトグリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、換気口部品、防触対策部品(オーバーフェンダー、サイドシールパネル、モール(ウインドー、フード、ドアベルト))、マーク類;ドア、ライト、ワイパーのウェザーストリップ、グラスラン、グラスランチャンネルなどの内装窓枠用部品;エアダクトホース、ラジエターホース、ブレーキホース;クランクシャフトシール、バルブステムシール、ヘッドカバーガスケット、A/Tオイルクーラーホース、ミッションオイルシール、P/Sホース、P/Sオイルシールなどの潤滑油系部品;燃料ホース、エミッションコントロールホース、インレットフィラーホース、ダイヤフラム類などの燃料系部品;エンジンマウント、インタンクポンプマウントなどの防振用部品;CVJブーツ、ラック&ピニオンブーツ等のブーツ類;A/Cホース、A/Cシール等のエアコンデショニング用部品;タイミングベルト、補機用ベルトなどのベルト部品;ウィンドシールドシーラー、ビニルプラスチゾルシーラー、嫌気性シーラー、ボディシーラー、スポットウェルドシーラーなどのシーラー類;等が挙げられる。
またゴムの改質剤として、例えば、流れ防止剤として、室温でコールドフローを起こす樹脂あるいはゴムに含ませると、押出し時の流れやコールドフローを防止することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、より高度な耐熱性を有するものとすることが可能であるとともに、破断強度を基準とした引張特性をより高度なものとすることができる。なお、このような熱可塑性エラストマー組成物においては、組成を適宜変更することで、用途に応じて必要となる特性(例えば、自己修復性等の特性)も適宜発揮させることが可能である。このように、組成を適宜変更することで熱可塑性エラストマー組成物の用途に応じて、必要となる特性をバランスよく適宜発揮させることが可能であるため、上述のような各種用途に用いる場合には、その用途に応じて必要となる特性を考慮して、組成物中の成分の種類(組成)を適宜変更して利用することが好ましい。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物について説明したが、以下において、そのような本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法としても好適に利用することが可能な本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法について説明する。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と、
有機化クレイと、
SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー性ポリマー(D)のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有するポリマー(Z)と、
を混合して混合物を得る第一工程と、
前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で添加し、前記エラストマー性ポリマー(D)と前記原料化合物とを反応させることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得る第二工程と、
を含むこと、
前記第二工程において得られる前記熱可塑性エラストマー組成物が、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
前記エラストマー性ポリマー(A)及び(B)以外のポリマーであり、SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー成分のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有するポリマー(Z)と、
を含有してなる組成物であること、及び、
前記第一工程において、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記有機化クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となるような割合で前記有機化クレイを用いて、前記エラストマー性ポリマー(D)と、前記有機化クレイと、前記ポリマー(Z)とを混合する、方法である。以下、第一工程と第二工程とを分けて説明する。
(第一工程)
第一工程は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と、前記有機化クレイと、前記ポリマー(Z)とを混合して混合物を得る工程である。
ここで、「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」とは、ポリマーの主鎖を形成する原子に環状酸無水物基が化学的に安定な結合(共有結合)をしているエラストマー性ポリマーのことをいい、例えば、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーと、環状酸無水物基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用することができる。
なお、このような主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であって、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーからなるものであればよく(いわゆるエラストマーからなるものであればよく)、特に限定されるものではない。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、樹脂成分を含むエラストマー性のポリマーであってもよく、例えば、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
さらに、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。また、このようなポリマーとしては、環状酸無水物基として好適な無水マレイン酸基の導入のし易さといった観点からは、ジエン系ゴムが好ましく、耐老化性の観点からは、オレフィン系ゴムが好ましい。
また、前記環状酸無水物基を導入し得る化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物が挙げられる。
また、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの前記環状酸無水物基としては、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、原料の反応性が高く、しかも工業的に原料の入手が容易であるといった観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。
さらに、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーは、通常行われる方法、例えば、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により環状酸無水物をグラフト重合させる方法で製造してもよい。また、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、市販品を用いてもよい。
このような環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの市販品としては、例えば、LIR−403(クラレ社製)、LIR−410A(クラレ社試作品)などの無水マレイン酸変性イソプレンゴム;LIR−410(クラレ社製)などの変性イソプレンゴム;クライナック110、221、231(ポリサー社製)などのカルボキシ変性ニトリルゴム;CPIB(日石化学社製)、HRPIB(日石化学社ラボ試作品)などのカルボキシ変性ポリブテン;ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、ユカロン(三菱化学社製)、タフマーM(例えば、MP0610(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MA8510、MH7010、MH7020(三井化学社製)、MH5010、MH5020(三井化学社製)、MH5040(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴム;アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA)、エチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸共重合体(日本ポリオレフィン社製)、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、無水マレイン酸変性EVA(三井・ジュポンポリオレフィン社製))、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA(住友化学社製))、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH(武田薬品工業社製))、ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体(アトフィナ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901,FG1924(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))、レクスパール(無水マレイン酸変性EVA、ET−182G、224M、234M(日本ポリオレフィン社製))、アウローレン(無水マレイン酸変性EVA、200S、250S(日本製紙ケミカル社製))などの無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、LF128(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであることが好ましく、中でも、高分子量で高強度であるといった観点から、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴム、エチレン・メチルアクリレート・無水マレイン酸共重合体がより好ましい。また、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて利用してもよい。
さらに、第一工程に用いられる前記有機化クレイは、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した有機化クレイと同様のものである(その好適なものも同様である)。
また、第一工程に用いられるポリマー(Z)は、SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー性ポリマー(D)のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有するポリマーである。また、このようなポリマー(Z)としては、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)以外のポリマーを用いる必要がある。
なお、本発明においては、前記エラストマー性ポリマー(D)と後述の原料化合物とを反応させることにより、最終生成物(目的の生成物)である熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)及び/又は(B))が形成され、前記エラストマー性ポリマー(D)の主鎖部分は、そのまま、該エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖部分となる。ここで、本発明のように「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」を利用して側鎖を形成する場合においては、エラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で原料化合物(架橋剤)を利用するため、基本的に原料化合物(反応剤:架橋剤)が少量であり、形成される側鎖がSP値に大きな影響を与えることは無いため(基本的に、側鎖を形成してもSP値が変わらないため)、このような側鎖の形成反応後に得られるポリマー(エラストマー性ポリマー(A)及び/又は(B))のSP値は、基本的に「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値とほぼ同一の値となると考えられることから、本特許では架橋前の「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値を前記エラストマー成分のSP値として採用する。なお、「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値の求め方は、前述の通りであり、ポリマー(D)を複数種のポリマーの混合物として用いる場合であっても、基本的に側鎖を形成させるために用いる原料化合物(反応剤:架橋剤)が少量であるため、得られるエラストマー成分(ポリマーの混合物となる。)のSP値に、形成される側鎖が大きな影響を与えることが無いため、SP値は維持され、形成されるエラストマー成分のSP値は、「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値とほぼ同一の値となると考えられることから、本特許では架橋前の「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値を前記エラストマー成分のSP値として採用する。したがって、このようなポリマー(Z)は、最終生成物中において、SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)及び(B)からなる群から選択される少なくとも1種)のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有するものとなる。そのため、かかる第一工程に用いられるポリマー(Z)は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したポリマー(Z)と同様のもの(その好適な条件も同様である。)であり、エラストマー性ポリマー(D)のSP値との関係で、上記条件(SP値が9.0以上であるとの条件、及び、SP値が前記エラストマー性ポリマー(D)のSP値よりも0.5以上大きな値となるとの条件)を満たすように、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)以外のポリマーの中から適切なポリマーを適宜選択して利用すればよい。
また、第一工程においては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と、前記有機化クレイと、前記ポリマー(Z)とを混合して混合物を得る。このような混合物の調製工程においては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と、前記有機化クレイと、前記ポリマー(Z)の添加順序は特に制限されるものではないが、有機化クレイの分散性をより向上させるといった観点から、前記ポリマー(D)とポリマー(Z)とを含む混合物の前駆体を調製した後、該前駆体中にクレイを添加することが好ましい。
また、前記混合物を得るために有機化クレイを添加する際には、有機化クレイが十分に分散するように、予め環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)を可塑化した後に、有機化クレイを添加することが好ましく、前記混合物前駆体を可塑化して、そこに有機化クレイを添加することがより好ましい。
このように、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)や前記混合物前駆体を可塑化する方法としては特に制限されず、例えば、これらを可塑化することが可能となるような温度(例えば100〜250℃程度)でロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等を用いて素練りする方法等を適宜採用できる。このような環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)や前記混合物前駆体の可塑化を行う際の温度等の条件は特に制限されず、含有している成分の種類(例えば環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)の種類)等に応じて適宜設定すればよい。
また、このような混合物の調製工程においては、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中の有機化クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下(より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部)となるような割合で前記有機化クレイを用いて、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と前記有機化クレイと前記ポリマー(Z)とを混合することが好ましい。このような有機化クレイの含有量が前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、有機化クレイの量が少なすぎて、有機化クレイを用いることにより得られる効果が低下してしまう傾向にある。
また、このような混合物中の有機化クレイの含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることが更に好ましい。このような含有量が前記下限未満では、有機化クレイの量が少なすぎて、有機化クレイを用いることにより得られる効果が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にある。なお、このような含有量で有機化クレイを用いることで、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中の有機化クレイの含有量が前記範囲内の値となる。
更に、このような混合物の形成の際に用いる有機化クレイの量としては、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)中の環状酸無水物基1mmolに対して、有機化クレイが0.01g〜2.0g(より好ましくは0.02〜1.0g)となるような割合で含有することが好ましい。このような酸無水物基に対する有機化クレイの割合が前記下限未満では少なすぎて効果が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にある。なお、このような割合の範囲内で有機化クレイを含有させることで、混合物中に含有せしめた有機化クレイが効率よく分解されて、単層のクレイを効率よく製造することができ、クレイの分散性をより高度のものとすることができる傾向にある。
また、このような混合物の調製工程においては、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中の前記ポリマー(Z)の含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して10〜700質量部(より好ましくは30〜600質量部、更に好ましくは50〜500質量部、特に好ましくは80〜400質量部、最も好ましくは100〜300質量部)となるような割合で前記ポリマー(Z)を用いて、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と前記クレイと前記ポリマー(Z)とを混合することが好ましい。このようなポリマー(Z)の含有量が前記上限を超えると圧縮永久歪が上昇してしまう傾向にあり、他方、前記下限未満では、耐油性を十分に向上させることが困難となる傾向にある。
また、このような混合物中の前記ポリマー(Z)の含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して10〜700質量部(より好ましくは30〜600質量部、更に好ましくは50〜500質量部、特に好ましくは80〜400質量部、最も好ましくは100〜300質量部)とすることが好ましい。このような含有量が前記下限未満では、耐油性を十分に向上させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、圧縮永久歪が上昇してしまう傾向にある。
また、このような混合物を得るための混合の方法は特に制限されず、公知の方法等を適宜採用することができ、例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合する方法を採用することができる。
なお、このような混合物には、更に、流動性、機械強度の増加の観点から、前記ポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、パラフィンオイル、前記ポリマー(Z)以外の化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体等を更に含有させてもよい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、パラフィンオイル及び化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体は、それぞれ、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、パラフィンオイル及び化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体と同様のものである(それぞれ、その好適なものも同様である)。
また、このように、化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂及び/又はパラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合において、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と、有機化クレイと、前記ポリマー(Z)と、化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂及び/又はパラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体等の添加成分と、の添加順序は特に制限されるものではないが、有機化クレイの分散性をより向上させるといった観点から、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と、前記ポリマー(Z)と、前記添加成分(前記α−オレフィン系樹脂及び/又は前記パラフィンオイル及び/又は前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体)と、を含む混合物の前駆体を調製した後、該前駆体中に有機化クレイを添加することが好ましい。
また、前記α−オレフィン系樹脂(化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂)を前記混合物中に含有させる場合、前記α−オレフィン系樹脂の含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して800質量部以下(より好ましくは5〜700質量部、更に好ましくは10〜600質量部、特に好ましくは25〜500質量部、最も好ましくは50〜400質量部)であることが好ましい。このようなα−オレフィン系樹脂の含有量が前記上限を超えると機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、流動性が低下する傾向にある。なお、このような混合物中の前記α−オレフィン系樹脂の含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して800質量部以下(より好ましくは5〜700質量部、更に好ましくは10〜600質量部、特に好ましくは25〜500質量部、最も好ましくは35〜400質量部)とすることが好ましい。このような含有量が前記下限未満では、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、流動性が低下する傾向にある。
また、前記パラフィンオイルを前記混合物中に含有させる場合、パラフィンオイル含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して600質量部以下であることが好ましく、10〜600質量部であることがより好ましく、50〜550質量部であることが更に好ましく、75〜500質量部であることが特に好ましく、100〜400質量部であることが最も好ましい。また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を前記混合物中に含有させる場合、前記エラストマー成分100質量部に対して600質量部以下であることが好ましく、10〜600質量部であることがより好ましく、15〜550質量部であることが更に好ましく、20〜500質量部であることが特に好ましく、30〜400質量部であることが最も好ましい。
また、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物の用途等に応じ、前記混合物に対して、本発明の目的を損わない範囲で、前記エラストマー成分、前記ポリマー(Z)、前記α−オレフィン系樹脂および前記スチレンブロック共重合体以外のポリマー、補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等の他の成分を更に含有することができる。このように、前記混合物に対して他の成分を含有せしめることにより、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、かかる成分を適宜含有せしめることが可能となる。なお、このような添加剤等は、特に制限されず、一般に用いられるものを適宜使用することができる。また、このような添加剤等としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したものを適宜利用できる。
また、このような他の成分の含有量は、前記他の成分がポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、前記エラストマー成分100質量部に対して500質量部以下とすることが好ましく、20〜400質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、基質のエラストマーの効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
また、他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基質のエラストマーの反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
(第二工程)
第二工程は、前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)100質量部に対して0.1〜10質量部の割合で添加し、前記ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程である。
前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)と同様のものを好適に利用することができ、例えば、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した含窒素複素環そのものであってもよく、あるいは、前記含窒素複素環に無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)が結合した化合物(前記置換基を有する含窒素複素環)であってもよい。なお、このような化合物(I)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、水素結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
また、このような化合物(I)としては、特に制限されず、目的とするポリマー中の側鎖の種類(側鎖(a)又は側鎖(a’))に応じて、上述のような化合物(I)の中から好適な化合物を適宜選択して用いることができる。このような化合物(I)としては、より高い反応性が得られるといった観点からは、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントイン、並びに、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジンであることが好ましく、前記置換基を有している、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントイン、並びに、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジンであることがより好ましく、前記置換基を有しているトリアゾール、イソシアヌレートおよびトリアジン、並びに、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジンであることが更に好ましく、前記置換基を有しているトリアゾールが特に好ましい。なお、このような置換基を有していてもよいトリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾールおよびヒダントインとしては、例えば、4H−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、アミノピリジン、アミノイミダゾール、アミノトリアジン、アミノイソシアヌレート、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と同様のものを好適に利用することができる(その化合物として好適なものも同様である。)。また、このような化合物(II)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、共有結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
このような化合物(II)としては、耐圧縮永久歪性の観点から、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ペンタエリスリトール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、ポリエーテルポリオールが好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミドがより好ましく、ペンタエリスリトール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが更に好ましい。
また、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、水素結合性架橋部位を導入する観点から、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有する化合物を利用することが好ましい。さらに、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、より効率よく組成物中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入することが可能となることから、前記環状酸無水物基と反応して、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用することが好ましい。このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物としては、前記複素環含有ポリオール、前記複素環含有ポリアミン、前記複素環含有ポリチオールを好適に利用することができ、中でも、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが特に好ましい。
また、前記原料化合物(化合物(I)及び/又は化合物(II))の添加量(化合物(I)及び/又は化合物(II)の総量:一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)は、前記混合物中の前記ポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー)100質量部に対して0.1〜10質量部であり、0.3〜7質量部であることがより好ましく、0.5〜5.0質量部であることが更に好ましい。このような化合物(I)及び化合物(II)の添加量(質量部に基づく量)が前記下限未満では少なすぎて架橋密度が上がらず所望の物性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多すぎてブランチが多くなり架橋密度が下がってしまう傾向にある。なお、前記上限を超えると、得られるエラストマー成分と、エラストマー性ポリマー(D)とにおいてSP値が変化してしまう傾向にある。
また、前記原料化合物(化合物(I)及び/又は化合物(II))の添加量(化合物(I)及び/又は化合物(II)の総量:一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)は、特に制限されないが、該化合物中にアミン、アルコール等の活性水素が含まれる場合においては、環状酸無水物基100モル%に対して、該化合物中のアミン、アルコール等の活性水素が20〜250モル%となる量であることが好ましく、50〜150モル%となる量であることがより好ましく、80〜120モル%となる量であることが更に好ましい。このような添加量が前記下限未満では、導入される側鎖の量が少なくなって、架橋密度を十分に高度なものとすることが困難となり、引張強度等の物性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、用いる化合物の量が多すぎて、ブランチが多くなり、却って架橋密度が下がってしまう傾向にある。
化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)及び化合物(II)を添加する順序は特に制限されず、どちらを先に加えても良い。また、化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)を、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの、環状酸無水物基の一部と反応させてもよい。これにより、未反応の環状酸無水物基(反応させていない環状酸無水物基)に、化合物(II)を反応させて共有結合性架橋部位を形成させることも可能となる。ここにいう一部とは、環状酸無水物基100モル%に対して1モル%以上50モル%以下であることが好ましい。この範囲であれば、得られるエラストマー性ポリマー(B)において、化合物(I)に由来した基(例えば含窒素複素環等)を導入した効果が十分に発現され、リサイクル性がより向上する傾向にある。なお、化合物(II)は、共有結合による架橋が適当な個数(例えば、1分子中に1〜3個)となるように前記環状酸無水物基と反応させることが好ましい。
前記ポリマーと前記原料化合物(化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応させると、前記ポリマーが有する環状酸無水物基が開環されて、環状酸無水物基と前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とが化学結合される。このような前記ポリマーと前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応(環状酸無水物基を開環)させる際の温度条件は特に制限されず、前記化合物と環状酸無水物基との種類に応じて、これらが反応可能な温度に調整すればよいが、軟化させて反応を瞬時に進める観点からは、100〜250℃とすることが好ましく、120〜230℃とすることがより好ましい。
このような反応により、前記化合物(I)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも水素結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する部位、より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する部位)を含有させることが可能となる。このような反応により、形成(導入)される側鎖を、上記式(2)または(3)で表される構造を含有するものとすることができる。
また、このような反応により、前記化合物(II)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも、共有結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖を共有結合性架橋部を含有するもの(側鎖(b)又は側鎖(c))とすることが可能となる。そして、このような反応により、形成される側鎖を、上記式(7)〜(9)で表される構造を含有するものとすることもできる。
なお、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)、すなわち、未反応の環状酸無水物基、上記式(2)、(3)および(7)〜(9)で表される構造等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
このようにして反応させることで、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
エラストマー性ポリマー(A)及び(B)以外のポリマーであり、SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー成分のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有するポリマー(Z)と、を含有してなる組成物を得ることができる。
なお、このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物中のエラストマー性ポリマー(A)、エラストマー性ポリマー(B)は、各ポリマー中の側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)がそれぞれ環状酸無水物基との反応に由来するもの(例えば、上記式(2)、(3)および(7)〜(9)で表される構造を含有する側鎖等)となる以外は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したエラストマー性ポリマー(A)、エラストマー性ポリマー(B)と同様のものである。また、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)と前記原料化合物との反応は側鎖が形成される反応であり、反応の前後において基本的にSP値に大きな影響を及ぼす主鎖部分は同一のものとなること、また、側鎖の形成に利用する前記原料化合物が少量であり、側鎖がSP値に大きな影響を与えることが無いこと、等から、反応後に得られるエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)及び/又はエラストマー性ポリマー(B))のSP値は、前記エラストマー性ポリマー(D)のSP値とほぼ同様のものとなると考えられることから、本特許では架橋前の「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)」のSP値を前記エラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)及び/又はエラストマー性ポリマー(B))のSP値として採用する。そのため、第一工程において用いた「SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー性ポリマー(D)のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有する」との条件を満たすポリマーは、最終生成物中においては、「SP値が9.0以上であり、かつ、前記エラストマー成分のSP値よりも0.5以上大きな値のSP値を有する」との条件を満たすポリマーとなる。
また、本発明においては、入手の簡便さ、反応性の高さの観点から、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーが無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、前記原料化合物が、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ペンタエリスリトール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物であり、かつ、前記エラストマー成分が、前記無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと前記原料化合物との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、本発明においては、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記エラストマー性ポリマー(D))が無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、かつ、
前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ペンタエリスリトール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物(前記原料化合物)との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
なお、本発明によれば、十分に高度な引張強度及び優れた耐油性を有することが可能な熱可塑性エラストマー組成物を効率よく製造することが可能となる。本発明により、このような効果が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは、以下のように推察する。すなわち、先ず、本発明においては、熱可塑性エラストマー組成物が、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(D)(以下、場合により「酸無水物含有ポリマー」と称する。)を変性して製造される。このようにして、有機化クレイと酸無水物ポリマーとを混合して予め酸無水物ポリマー中に有機化クレイを分散させることにより、酸無水物基と有機化クレイとが相互作用して、有機化クレイの層間が剥離され易くなる。特に有機化されたクレイ(有機化クレイ)においては、層間に存在するアンモニウム塩等の有機物が酸無水物とより効率よく相互作用するため、より層が剥離され易い。そして、有機化クレイが分散した後に、前記原料化合物(架橋を形成する架橋剤として機能し得る。以下、場合により、「架橋剤」と称する。)を入れることにより、架橋剤と酸無水物基とが反応して、少なくとも、水素結合性架橋部位(例えばカルボン酸基等)が系中で発生する。そのため、有機化クレイとの間で、水素結合による相互作用が引き起こされ、さらに有機化クレイがエラストマー中に分散される。従って、本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、有機化クレイが十分に分散されたものとなり、また、かかる有機化クレイと水素結合性架橋部位とが相互作用して均一に面架橋部位が形成されることから、十分な引張特性が得られるものと本発明者らは推察する。また、本発明においては、得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、前記有機化クレイと前記エラストマー成分とともに前記ポリマー(Z)が含有されている。このようなポリマー(Z)は、極性が高いため、低極性のオイルに対する相溶性が低いことに由来して、高い耐油性を示すことができるものと本発明者らは推察する。そして、このようなポリマー(Z)は、組成物中において、エラストマー性ポリマー(D)と反応もしくは相互作用するため、十分に高度に分散された状態となり、ポリマー(Z)を添加することにより得られる効果を十分に高度に発現させることが可能となる。そのため、本発明においては、得られる熱可塑性エラストマー組成物が、十分に高度な耐油性及び引張強度を有することが可能となるものと本発明者らは推察する。
また、このようにして、本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、単層のクレイを含有するものとすることができる。また、このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μm2の大きさの測定点を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した場合において、全測定点において、個数を基準として、全有機化クレイのうちの50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは80〜100%、特に好ましくは85〜100%)が単層のクレイとして存在するものとすることも可能である。このような単層のクレイの存在率が前記下限未満では破断伸び、破断強度が低下する傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法においては、より効率よく、熱可塑性エラストマー組成物中の単層の形態のクレイ(単層のクレイ)の存在割合を上記好適な割合とすることが可能である。この点に関しては、上述の第一工程において、有機化クレイが環状酸無水物基と相互作用して、より効率よく、多層構造の有機化クレイの層間を剥離することが可能となり、有機化クレイを単層の状態で分散(微分散)させることが可能となるため、より高い割合で、単層の形態のクレイ(単層のクレイ)が組成物中に存在することとなって、上記好適な割合で単層のクレイを含有させることが可能となるものと本発明者らは推察する。なお、このような単層状の形態のクレイの存在は、得られた組成物の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することにより確認できる。
また、本発明により、例えば、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を組み合わせて含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の比率を適宜変更して、組成物中に存在する水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の比率等を適宜変更することで、所望の特性を発揮させることも可能である。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、そのゴム弾性を活用して種々のゴム用途に好適に使用することができ、例えば、ホットメルト接着剤又はこれに含ませる添加剤、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー、プリンター用のゴム部品、シーリング材、塗料・コーティング材、印刷用インク等の用途に好適に用いることができる。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法として好適に利用可能な方法である、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を説明したが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に限定されるものではなく、他の方法を適宜採用してもよい。このような他の方法としては、例えば、前記エラストマー性ポリマー(D)と、前記ポリマー(Z)と、前記原料化合物と、前記有機化クレイとを同時に添加して混合物を形成し、前記エラストマー性ポリマー(D)と前記原料化合物とを反応せしめて熱可塑性エラストマー組成物を得る方法、前記エラストマー性ポリマー(D)と、前記ポリマー(Z)と、前記原料化合物との混合物を形成し、該混合物中において前記エラストマー性ポリマー(D)と前記原料化合物とを反応せしめてエラストマー成分を形成した後、該エラストマー成分を含む混合物中に有機化クレイを添加する方法等、を適宜採用してもよい。なお、熱可塑性エラストマー組成物中における単層のクレイの存在率の観点からは、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用することが好ましい。
[エラストマー成形体]
本発明のエラストマー成形体は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるもの(上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成形物)である。このような本発明のエラストマー成形体は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の成形してなるものであればよく、用途に応じて、例えば、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物を単独で成形してなる熱可塑性エラストマー組成物の成形物そのものであってもよく、あるいは、他の部材と適宜組み合わせた構造体となるように上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるもの(他の部材を含んでなるもの)であってもよい。このように、本発明のエラストマー成形体は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形してなるものであればよく、その形状や形態等は特に制限されず、他の部材を含んだ構造体であってもよい。なお、このような他の部材としては特に制限されず、用途や必要に応じて、その用途に利用される公知の材料(部材)を適宜利用できる。
また、このような本発明のエラストマー成形体の形状としては、例えば、シート状、板状、パイプ状、チューブ状、円柱状、楕円状、ストランド状、フィラメント状、ネット状、被覆物としての形状(例えば電線被覆用途に利用される場合にその被覆物としての形状)などが挙げられる。このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形するための方法は特に制限されず、公知のエラストマーの成形方法(例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、押出ブロー成形、インフレーション成形、スタンピングモールド成形、圧縮成形、ビーズ成形等)を適宜採用することができる。また、このような成形の方法としては、例えば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、目的の形状に併せたモールドに導入して適宜プレスしながら加熱成形する方法を採用してもよい。このように、本発明のエラストマー成形体は、前記熱可塑性エラストマー組成物を、公知のエラストマーの成形方法を適宜採用して成形することにより得ることができる。
このような本発明のエラストマー成形体は、土木・建築材、工業部品、電気・電子部品及び日用品からなる群から選択されるいずれかの用途に利用するための成形体であることが好ましい。なお、これらの用途に利用するために、前述のように、本発明のエラストマー成形体は他の部材等と適宜組み合わせた形態のものとしてもよい。また、これらの用途(前記土木・建築材、前記工業部品、前記電気・電子部品、前記日用品)としては、特に制限されるものではないが、例えば、土木・建築用各種ガスケットおよびシート、隙間埋め材(例えば目地材)、建築用シール材、管継ぎ手用シール材、建築サッシシール材、配管プロテクト材、配線プロテクト材、断熱材、パッキン材、緩衝材、自動車部品(例えば、前述の自動車用ゴム部品、自動車の内装・外装部品、等速ジョイントブーツ、ウエザーストリップ、ダンパー、ワイパーブレード、絶縁カバー、フードシールゴム、ボディパネル、サイドシールド、パッキン材(自動車用:例えば、自動車エンジン用パッキン)等)、農業機械用の部品、農業資材、コンベヤベルト、コンタクトラバーシート、電気絶縁体、各種電子機器のハウジングや内部部品、電線被覆材、コネクター、キャップ、プラグ、スポーツ・レジャー用品(水泳用フィン、水中眼鏡、ゴルフクラブグリップ、野球バットグリップ等)、履物(靴底、サンダル等)、雑貨(包装材、ガーデンホース、階段用滑り止めテープ、掃除用具、化粧用品等)が挙げられる。
このような本発明のエラストマー成形体は、中でも、自動車部品、隙間埋め材、建築用シール材、管継ぎ手用シール材、配管プロテクト材、配線プロテクト材、断熱材、パッキン材、緩衝材、電気絶縁体、コンタクトラバーシート、スポーツ・レジャー用品及び雑貨からなる群から選択される1つの用途に利用するための成形体であることがより好ましい。また、このような本発明のエラストマー成形体としては、自動車エンジン用パッキン、等速ジョイントブーツ、ウェザーストリップ、ダンパー、ワイパーブレード、絶縁カバー及びフードシールゴムからなる群から選択される1つの用途に利用することがより好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価方法について説明する。
<JIS−A硬度>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)をそれぞれ用い、JIS K6253(2012年発行)に準拠して、JIS−A硬度を測定した。
<破断強度(TB)の測定>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)をそれぞれ用い、3号ダンベル状の試験片を打ち抜き作成し、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251(2010年発行)に準拠して行い、破断強度(TB)[単位:MPa]を室温(25℃)にて測定した。
<100%モジュラスの測定>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)をそれぞれ用い、3号ダンベル状の試験片を打ち抜き作成し、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251(2010年発行)に準拠して行い、100%モジュラス(M100)[MPa]を室温(25℃)にて測定した。
<ヘキサンに対する膨潤度の測定>
各実施例及び各比較例等で得られた熱可塑性エラストマー組成物のヘキサンに対する膨潤度は、各実施例及び各比較例等で得られた熱可塑性エラストマー組成物のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)をそれぞれ用いて、縦40mm、横5mm、厚さ2mmの試験片をそれぞれ作成し、該試験片の体積(膨潤前の体積)を密度計(アルファミラージュ社製の商品名「SD-200L」)を利用して測定する。その後、室温(25℃)条件下、該試験片をヘキサン中に1時間浸漬した後、取り出し、ヘキサン浸漬後の膨潤した試験片の体積(膨潤後の体積)を前記密度計を利用して測定する。そして、試験片の膨潤前後(ヘキサン浸漬前後)の体積に基づいて、下記計算式(I):
[膨潤度(%)]={([膨潤後の体積]/[膨潤前の体積])×100}−100 (I)
を計算して、ヘキサンに対する膨潤度を求めた。なお、このような膨潤度が低いほど耐油性が高いといえる。
<オイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度の測定>
各実施例及び各比較例等で得られた熱可塑性エラストマー組成物のオイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度は、ヘキサンの代わりにオイル(JIS#3オイル)を用い、かつ、該オイルへの浸漬時間を1時間から24時間に変更した(オイル(JIS#3オイル)中に試験片を24時間浸漬するよう変更した)以外は、上述のヘキサンに対する膨潤度の測定において説明した方法と同様の方法を採用して、試験片の膨潤前後(オイル浸漬前後)の体積をそれぞれ求めて上記式(I)を計算し、オイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度を求めた。
<耐熱温度>
実施例10〜15及び比較例3〜8で得られた熱可塑性エラストマー組成物のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)をそれぞれ用いて、横5mm、縦20mm、厚さ2mmの試験片を打ち抜き、DMA測定装置(UBM社製の商品名「Rheogel−E4000」)を用いて、測定時に試験片の縦方向(試験片の長さが20mmとなる辺の方向)に歪みが生じるように、前記試験片を前記装置に設置し、50〜200℃まで2℃/分の昇温速度で昇温しながら、測定間隔:2℃、測定周波数:10Hz、測定モード:引張モード、及び、動的振幅:2%の歪みの測定条件で、前記試験片に対して歪みをかけて、該試験片(シート)の貯蔵弾性率(E’[単位:Pa])が低下する変曲点の温度を耐熱温度として求めた。
(実施例1)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633U」、分子量:40万〜50万、スチレン含有量:30質量%)200gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社(新社名「JXTGエネルギー株式会社」)製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm2/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃)400gを滴下し、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(マレイン化EBM(MEBM):三井化学社製の商品名「タフマーMH5040」、結晶化度:4%、SP値:8.0)100g、ポリアミド12(宇部興産社製の商品名「UBESTA Polyamide12」、SP値:13.0、ポリアミド12とMEBMのSP値の差(絶対値):5.0)100g、α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100,000、SP値:7.9、EPMとMEBMのSP値の差(絶対値):0.1)75gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)0.879gを更に投入し、温度を180℃として2分間混練して第一の混合物(前記マレイン化EBMと、ポリアミド12(前記ポリマー(Z)に相当)とを含む混合物)を得た。なお、かかる混練工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」、有機化剤としてのアンモニウム塩の種類:ジメチルジオクタデシルアンモニウム及びジメチルステアリルベンジルアンモニウム(計2種))0.1gを更に加えて、180℃で4分間混練して第二の混合物を得た。次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナックP」)を2.62g加え、180℃で8分間混合し、熱可塑性エラストマー組成物を調製した。
なお、このような組成物においては、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体中の無水マレイン酸基とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとが反応して、下記式(26)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(i)」と称する。)、下記式(27)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(ii)」と称する。)、及び、下記式(28)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(iii)」と称する。)のうちの、前記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーが形成されたことが分かる(なお、このような側鎖(i)〜(iii)に関して、用いた原料から化学量論的に考慮すれば、主として側鎖(iii)が形成されていることが明らかであるが、ポリマーの側鎖の位置等によっては、側鎖(i)及び/又は側鎖(ii)が形成され得る。以下、用いた原料に基づいて、反応により形成される側鎖の種類が主として側鎖(iii)となると考えられるエラストマー性ポリマーについては、場合により、単に「側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー」と称する。)。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレン−ブテン共重合体(エチレンとブテンと)からなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。また、このようなエラストマー性ポリマーは、用いた原料の種類(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体)から、SP値が8.0であるとみなすことができる。
[式(26)〜(28)中、α及びβで示される炭素は、それらの炭素の位置(α位又はβ位)のいずれかにおいてエラストマー性ポリマーの主鎖に結合していることを示す。]
このようにして得られた熱可塑性エラストマー性組成物42gを、200℃(予熱)で3分加熱したシート形成用のモールド(厚み2mm、縦150mm、横150mm)内に導入し、200℃の条件下において、16MPaで5分間加圧して成形し、次いで、水冷プレスで16MPaで2分間冷却することにより、前記熱可塑性エラストマー組成物のシート(厚み2mm、縦150mm、横150mm)を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例2)
老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.979gに変更し、かつ、前記ポリアミド12(宇部興産社製の商品名「UBESTA Polyamide12」、SP値:9.1)の使用量を100gから200gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例3)
老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから1.079gに変更し、かつ、前記ポリアミド12(宇部興産社製の商品名「UBESTA Polyamide12」、SP値:13.0)の使用量を100gから300gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例4)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.803gに変更し、更に、前記ポリアミド12(SP値:13.0)100gを用いる代わりにエチレン−メチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(EMA:日本ポリエチレン社製の商品名「ET350X」、SP値:9.1、EMAとMEBMのSP値の差(絶対値):1.1)100gを用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例5)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.903gに変更し、更に、前記ポリアミド12(SP値:13.0)100gを用いる代わりにエチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA:日本ポリオレフィン社製の商品名「ET350X」、SP値:9.1、EMAとMEBMのSP値の差(絶対値):1.1)200gを用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例6)
有機化クレイの種類を株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX(有機化剤としてのアンモニウム塩の種類:ジメチルジオクタデシルアンモニウム及びジメチルステアリルベンジルアンモニウム(計2種))」から、株式会社ホージュン製の商品名「エスベンNO12S(有機化剤としてのアンモニウム塩の種類:オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム(計1種))」に変更し(使用量は0.1gで同じとした。)、かつ、前記ポリアミド12(宇部興産社製の商品名「UBESTA Polyamide12」、SP値:13.0)の使用量を100gから300gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例7)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、かつ、前記ポリアミド12(宇部興産社製の商品名「UBESTA Polyamide12」、SP値:9.1)の使用量を100gから200gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例8)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.979gに変更し、更に、前記ポリアミド12(宇部興産社製の商品名「UBESTA Polyamide12」、SP値:9.1)の使用量を100gから300gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例9)
老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.979gに変更し、パラフィンオイルの種類を、JX日鉱日石エネルギー社(新社名「JXTGエネルギー株式会社」)製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」から出光興産株式会社製の商品名「ダイアナプロセスオイル PW380」に変更した(使用量は400gで同じとした。)以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。なお、パラフィンオイル(出光興産株式会社製の商品名「ダイアナプロセスオイル PW380」)の動粘度は380mm2/sであり、Cp値は68.0%であり、アニリン点:143℃であった。
(比較例1)
老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.779gに変更し、かつ、有機化クレイの代わりに有機化されていないクレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニピアF」)をそのまま用いた(使用量は0.1gで同じとした。)以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから0.779gに変更し、かつ、前記ポリアミド12(SP値:13.0)を利用しなかった以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜9及び比較例1〜2)の特性評価]
表1に示す結果からも明らかなように、エラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物:前記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)とともに、有機化クレイと、SP値が13.0(かかるSP値はMEBMのSP値よりも5.0大きい。)であるポリマー(ポリアミド12(ナイロン))又はSP値が9.1(かかるSP値はMEBMのSP値よりも1.1大きい。)であるポリマー(EMA)とを含む組成物(実施例1〜9)においては、100%モジュラスがいずれも0.46以上の値となっており、有機化クレイの代わりに有機化してないクレイを用いた場合(比較例1:100%モジュラスは0.42)及びSP値が9.0以上となるようなポリマーを用いていない場合(比較例2:100%モジュラスは0.42)と比較して、100%モジュラスがより高い値となることが分かった。なお、実施例5と実施例7とを対比すると、それらの組成は、SP値が9.0以上であり且つSP値がベースとなるエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマーの種類が異なるが(なお、老化防止剤の使用量の変化は微差であり、組成物の特性に大きく影響しないものと考えている。)、SP値が9.1であるポリマー(EMA)を用いた場合(実施例5)よりも、SP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12(ナイロン))を用いた場合(実施例7)に、100%モジュラスがより高い値となることが分かった。また、実施例1〜3、実施例4〜5、実施例7〜8の結果から、SP値が9.0以上であり且つSP値がエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマーの使用量がより増加するに従って、100%モジュラスがより高い値となることも分かった。更に、実施例3と実施例6とを比較すると、それらの組成は有機化クレイの種類において異なるが(なお、老化防止剤の使用量の変化は微差であり、組成物の特性に大きく影響しないものと考えている。)、ジメチルタイプのアンモニウム塩からなる有機化剤(ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム)により有機化されたクレイを用いた場合(実施例3)に、他のアンモニウム塩からなる有機化剤(オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム)を用いた場合(実施例6)よりも、100%モジュラスがより高い値となることが分かった。
また、前記エラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物)とともに、有機化クレイと、SP値が13.0(かかるSP値はMEBMのSP値よりも5.0大きい。)であるポリマー(ポリアミド12(ナイロン))又はSP値が9.1(かかるSP値はMEBMのSP値よりも1.1大きい。)であるポリマー(EMA)とを含む組成物(実施例1〜9)においては、破断強度がいずれも2.76以上の値となっており、有機化クレイの代わりに有機化してないクレイを用いた場合(比較例1:破断強度は2.32)及びSP値が9.0以上となるようなポリマーを用いていない場合(比較例2:破断強度は2.55)と比較して、破断強度がより高い値となることが分かった。
このような結果から、前記エラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物)とともに、SP値が9.0以上であり且つSP値がエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマーと、有機化クレイとを組み合わせて利用した場合(実施例1〜9)には、100%モジュラス及び破断強度を指標とした引張強度がより高度なもとなることが確認された。
また、前記エラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物)とともに、有機化クレイと、SP値が13.0(かかるSP値はMEBMのSP値よりも5.0大きい。)であるポリマー(ポリアミド12(ナイロン))又はSP値が9.1(かかるSP値はMEBMのSP値よりも1.1大きい。)であるポリマー(EMA)とを含む組成物(実施例1〜9)は、ヘキサンに対する膨潤度、及び、オイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度のいずれもが、有機化クレイの代わりに有機化してないクレイを用いた場合(比較例1)及びSP値が9.0以上となるようなポリマーを用いていない場合(比較例2)よりも低い値となることが確認された。このような結果から、ベースとなるエラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物)とともに、SP値が9.0以上であり且つSP値がエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマーと、有機化クレイとを組み合わせて利用した場合(実施例1〜9)には、ヘキサンに対する膨潤度、及び、オイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度を指標とする耐油性がより優れたものとなることが確認された。なお、実施例1〜3の結果、実施例4〜5の結果及び実施例7〜8の結果と、SP値が9.0以上であり且つSP値がエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマー(以下、場合により、単に「SP値が9.0以上のポリマー」という。)の使用量との関係から、SP値が9.0以上のポリマーの使用量を増加させるに従って、耐油性がより向上すること(膨潤度がより低下すること)が分かった。
このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜9)は、十分に高度な引張強度と十分に高度な耐油性とを有するものとなることが確認された。
(実施例10)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを2.62g用いる代わりにペンタエリスリトール(東京化成工業社製)を1.02g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから4.00gに変更し、スチレンブロック共重合体の使用量を200gから300gに変更し、パラフィンオイルとしてJX日鉱日石エネルギー社(新社名「JXTGエネルギー株式会社」)製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」を400g用いる代わりにSKオイル社製の商品名「YU−8J」を600g用い、かつ、ポリアミド12の使用量を100gから300gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例3)
ポリアミド12を300g使用する代わりに、α−オレフィン系樹脂であるポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、SP値:7.9)を300g用いた以外は、実施例10と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例11)
有機化クレイの種類を株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」から、株式会社ホージュン製の商品名「エスベンNO12S」に変更し(使用量は0.1gで同じとした。)、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を4.00gから4.81gに変更し、かつ、ポリアミド12の使用量を300gから600gに変更した以外は、実施例10と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例4)
ポリアミド12を600g使用する代わりに、α−オレフィン系樹脂であるポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、SP値:7.9)を600g用いた以外は、実施例11と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例12)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートを2.62g用いる代わりに2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン(東京化成工業社製)を2.82g用い、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから4.00gに変更し、スチレンブロック共重合体の使用量を100gから300gに変更し、パラフィンオイルとしてJX日鉱日石エネルギー社(新社名「JXTGエネルギー株式会社」)製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」を400g用いる代わりにSKオイル社製の商品名「YU−8J」を600g用い、かつ、ポリアミド12の使用量を100gから300gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例5)
ポリアミド12を300g使用する代わりに、α−オレフィン系樹脂であるポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、SP値:7.9)を300g用いた以外は、実施例12と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例13)
有機化クレイの種類を株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」から、株式会社ホージュン製の商品名「エスベンNO12S」に変更し(使用量は0.1gで同じとした。)、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を4.00gから4.81gに変更し、かつ、ポリアミド12の使用量を300gから600gに変更した以外は、実施例12と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例6)
ポリアミド12を600g使用する代わりに、α−オレフィン系樹脂であるポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、SP値:7.9)を600g用いた以外は、実施例13と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例14)
α−オレフィン系樹脂であるエチレンプロピレン共重合体(EPM、SP値:7.9)を利用せず、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を0.879gから4.00gに変更し、スチレンブロック共重合体の使用量を200gから300gに変更し、パラフィンオイルとしてJX日鉱日石エネルギー社(新社名「JXTGエネルギー株式会社」)製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」を400g用いる代わりにSKオイル社製の商品名「YU−8J」を600g用い、かつ、ポリアミド12の使用量を100gから300gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例7)
ポリアミド12を300g使用する代わりに、α−オレフィン系樹脂であるポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、SP値:7.9)を300g用いた以外は、実施例14と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例15)
有機化クレイの種類を株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」から、株式会社ホージュン製の商品名「エスベンNO12S」に変更し(使用量は0.1gで同じとした。)、老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)の使用量を4.00gから4.81gに変更し、かつ、ポリアミド12の使用量を300gから600gに変更した以外は、実施例14と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例8)
ポリアミド12を300g使用する代わりに、α−オレフィン系樹脂であるポリエチレン(高密度ポリエチレン(HDPE):日本ポリエチレン製の商品名「HJ590N」、SP値:7.9)を300g用いた以外は、実施例14と同様にして熱可塑性エラストマー組成物及びそのシートを得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
[熱可塑性エラストマー組成物(実施例10〜15及び比較例3〜8)の特性評価]
表2に示す結果からも明らかなように、SP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12)を含む組成物と、SP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12)の代わりにSP値が7.9であるポリマー(ポリエチレン)を含む組成物とを、これらのポリマー以外の組成が同一でありかつ組成物の総量が同じ量となる実施例と比較例同士(実施例10と比較例3同士、実施例11と比較例4同士、実施例12と比較例5同士、実施例13と比較例6同士、実施例14と比較例7同士、実施例15と比較例8同士)でそれぞれ対比すると、SP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12)を含む組成物(各実施例)の方が100%モジュラス及び破断強度がより高い値となるとともに、ヘキサンに対する膨潤度及びオイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度がいずれもより低い値となることが確認された。このような結果から、エラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)と、ペンタエリスリトール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物)とともに、SP値が9.0以上であり且つSP値がエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマーと、有機化クレイとを組み合わせて利用した場合(実施例10〜15)には、100%モジュラス及び破断強度を指標とした引張強度がより高度なものとなるとともに、ヘキサンに対する膨潤度及びオイル(JIS#3オイル)に対する膨潤度を指標とする耐油性がより向上すること(膨潤度がより低下すること)が分かった。このように、実施例10〜15で得られた熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体(シート)は、より高度な引張強度と、より高度な耐油性とを有するものとなることが確認された。
なお、SP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12)を含む組成物(実施例10〜15)と、SP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12)の代わりにSP値が7.9であるポリマー(ポリエチレン)を含む組成物(比較例3〜8)とを耐熱温度の観点から比較すると、エラストマー性ポリマー(無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(SP値が8.0)と、ペンタエリスリトール、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとの反応物)とともにSP値が13.0であるポリマー(ポリアミド12)を含む組成物(実施例10〜15)においては、耐熱温度がより高温となっており、SP値が9.0以上であり且つSP値がエラストマー性ポリマーのSP値より0.5以上大きいポリマーを含む本発明の熱可塑性エラストマー組成物によって、より高度な耐熱性が得られることも分かった。