JP2017197637A - 熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法 - Google Patents

熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法 Download PDF

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Hiroaki Suzuki
宏明 鈴木
知野 圭介
Keisuke Chino
圭介 知野
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Abstract

【課題】 十分に高度な防黴性及び/又は抗菌性を有するものとすることが可能であり、しかも100%モジュラスを基準とした引張特性をより高度なものとすることが可能な熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】 カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、を含有してなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性エラストマー組成物並びにその製造方法に関する。
熱可塑性エラストマーは、その成形加工時に加工温度で溶融し、周知の樹脂成形法で成形することが可能であることから、産業上極めて有用な材料である。このような熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開2006−131663号公報(特許文献1)において、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖と、共有結合性架橋部位を含有する他の側鎖とを有するガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーからなる熱可塑性エラストマーが開示されている。
特開2006−131663号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱可塑性エラストマーは、有機系樹脂を母体とする化合物であるため、菌やカビ類に対する耐性が必ずしも十分ではなく、そのままでは、高度な防黴性(防カビ性)及び抗菌性が要求される用途に対して使用することが困難であった。一方、防黴性(防カビ性)が求められる用途や抗菌性が要求される用途に利用するために、上記特許文献1に記載の熱可塑性エラストマーに対して防黴剤及び/又は抗菌性を単に添加しても、必ずしも十分に高度な防黴性や抗菌性を発揮させることができない。このように、上記特許文献1に記載のような従来の熱可塑性エラストマーにおいては、そもそも十分に高度な防黴性及び/又は抗菌性を発揮させることができないことから、そのような特性(防黴性及び/又は抗菌性)を十分に付与できるとともに100%モジュラス(引張特性)をより高度なものとすることが可能な熱可塑性エラストマーの出現が望まれている。
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分に高度な防黴性及び/又は抗菌性を有するものとすることが可能であり、しかも100%モジュラスを基準とした引張特性をより高度なものとすることが可能な熱可塑性エラストマー組成物、並びに、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、を組み合わせて含有せしめることにより、驚くべきことに、得られる熱可塑性エラストマー組成物を十分に高度な防黴性及び/又は抗菌性を有するものとすることが可能となるばかりか、100%モジュラスを基準とした引張特性(引張応力)をより高度なものとすることも可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含有してなることを特徴とするものである。
上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記抗菌剤及び防黴剤の総量が、前記エラストマー成分100質量部に対して0.01〜25質量部(より好ましくは0.1〜20質量部)であることが好ましい。
また、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記抗菌剤及び前記防黴剤が、それぞれ有機系化合物及び無機系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなることが好ましい。
また、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖が、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
さらに、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、有機化クレイとを混合して混合物を得る第一工程と、
前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を添加し、前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、エラストマー成分を形成して、エラストマー成分と有機化クレイとを含む熱可塑性エラストマー組成物前駆体を得る第二工程と、
前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体に、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加して、熱可塑性エラストマー組成物を得る第三工程と、
を含むこと、
前記第三工程において得られる前記熱可塑性エラストマー組成物が、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含有してなる組成物であること、及び、
前記第一工程において、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記有機化クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となるような割合で前記有機化クレイを用いて、前記エラストマー性ポリマーと、前記有機化クレイとを混合すること、
を特徴とする方法である。
上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法においては、前記エラストマー性ポリマーが無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、
前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明によれば、十分に高度な防黴性及び/又は抗菌性を有するものとすることが可能であり、しかも100%モジュラスを基準とした引張特性をより高度なものとすることが可能な熱可塑性エラストマー組成物、並びに、その製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含有してなることを特徴とするものである。
(エラストマー成分)
このようなエラストマー成分は、上述のエラストマー性ポリマー(A)〜(B)からなる群から選択される少なくとも1種のものである。このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)において、「側鎖」とは、エラストマー性ポリマーの側鎖および末端をいう。また、「カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a)」と称する。)」とは、エラストマー性ポリマーの主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)を形成する原子(通常、炭素原子)に、水素結合性架橋部位としてのカルボニル含有基および/または含窒素複素環(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。また、「側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有され」とは、水素結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(a’)」と称する。)と、共有結合性架橋部位を有する側鎖(以下、便宜上、場合により「側鎖(b)」と称する。)の双方の側鎖を含むことによってポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合の他、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖(1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖:以下、このような側鎖を便宜上、場合により「側鎖(c)」と称する。)を含むことで、ポリマーの側鎖に、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方が含有されている場合を含む概念である。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖:その主鎖部分を形成するポリマー)は、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であって、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーからなるものであればよく(いわゆるエラストマーからなるものであればよく)、特に限定されるものではない。そのため、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は、例えば、天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を含むもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、側鎖として、水素結合性架橋部位を有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を有する側鎖(b)を含有するもの;天然高分子または合成高分子等のガラス転移点が室温(25℃)以下のエラストマー性ポリマーを主鎖とし、かつ、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖(c)を含むもの;等としてもよい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖:その主鎖部分を形成するポリマー)としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖:その主鎖部分を形成するポリマー)は、樹脂成分を含むエラストマー性のポリマーからなるものであってもよく、例えば、水素添加されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)としては、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種が好ましい。また、このような前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)としては、老化しやすい二重結合がないという観点からは、ジエン系ゴムの水添物、オレフィン系ゴムが好ましく、コストの低さ、反応性の高さ(無水マレイン酸等の化合物のエン反応が可能な二重結合を多数有する)の観点からは、ジエン系ゴムが好ましい。
さらに、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は、液状または固体状であってもよく、その分子量は特に限定されず、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて適宜選択することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を加熱(脱架橋等)した時の流動性を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は液状であることが好ましく、例えば、主鎖部分がイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)を液状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が1,000〜100,000であることが好ましく、1,000〜50,000程度であることが特に好ましい。
一方、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の強度を重視する場合は、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は固体状であることが好ましく、例えば、主鎖部分がイソプレンゴム、ブタジエンゴム等のジエン系ゴムである場合には、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)を固体状のものとするために、該主鎖部分の重量平均分子量が100,000以上であることが好ましく、500,000〜1,500,000程度であることが特に好ましい。
このような重量平均分子量は、ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel permeation chromatography(GPC))により測定した重量平均分子量(ポリスチレン換算)である。測定にはテトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いることが好ましい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は2種以上を混合して用いることができる。この場合の各エラストマー性ポリマー同士の混合比は、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や要求される物性等に応じて任意の比率とすることができる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)のガラス転移点は、前述のように25℃以下である。エラストマー性ポリマーのガラス転移点がこの範囲であれば、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が室温でゴム状弾性を示すためである。また、本発明において「ガラス転移点」は、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)は、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)のガラス転移点が25℃以下となり、得られる熱可塑性エラストマー組成物からなる成形物が室温(25℃)でゴム状弾性を示すことから、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系ゴム;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)などのオレフィン系ゴム;であることが好ましい。また、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖に、それぞれオレフィン系ゴムを用いると、得られる熱可塑性エラストマー組成物の引張強度が向上し、二重結合が存在しないため組成物の劣化がより十分に抑制される傾向にある。
エラストマー性ポリマー(A)〜(B)に用いることが可能な前記スチレン−ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量や、水添エラストマー性ポリマーの水添率等は、特に限定されず、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が用いられる用途や、組成物に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
また、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖(前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖)として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、室温における良好なゴム状弾性発現の観点から、特に、結晶化度が10%未満(より好ましくは5〜0%)のものであることが好ましい。また、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖として、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)を用いる場合、そのエチレン含有量は、好ましくは10〜90モル%であり、より好ましくは30〜90モル%である。エチレン含有量がこの範囲であれば、熱可塑性エラストマー(組成物)としたときの圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度に優れるため好ましい。
さらに、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)としては、室温における良好なゴム状弾性発現の観点から、非晶性のものが好ましい。また、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)としては、一部に結晶性(結晶構造)を有するエラストマーであってもよいが、この場合であっても、結晶化度が10%未満(特に好ましくは5〜0%)であることが好ましい。なお、このような結晶化度は、測定装置としてX線回折装置(例えば、リガク社製の商品名「MiniFlex300」)を用い、回折ピークを測定し、結晶性/非晶性由来の散乱ピークの積分比を計算することにより求めることができる。
また、上記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)は、上述のように、側鎖として、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a);水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b);並びに、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有する側鎖(c);のうちの少なくとも1種を有するものとなる。なお、本発明において、側鎖(c)は、側鎖(a’)としても機能しつつ側鎖(b)としても機能するような側鎖であるとも言える。以下において、各側鎖を説明する。
<側鎖(a’):水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a’)は、水素結合による架橋を形成し得る基(例えば、水酸基、後述の側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位等)を有し、その基に基づいて水素結合を形成する側鎖であればよく、その構造は特に制限されるものではない。ここにおいて、水素結合性架橋部位は、水素結合によりポリマー同士(エラストマー同士)を架橋する部位である。なお、水素結合による架橋は、水素のアクセプター(孤立電子対を含む原子を含有する基等)と、水素のドナー(電気陰性度が大きな原子に共有結合した水素原子を備える基等)とがあって初めて形成されることから、エラストマー同士の側鎖間において水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在しない場合には、水素結合による架橋が形成されない。そのため、エラストマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターと水素のドナーの双方が存在することによって初めて、水素結合性架橋部位が系中に存在することとなる。なお、本発明においては、エラストマー同士の側鎖間において、水素のアクセプターとして機能し得る部分(例えばカルボニル基等)と、水素のドナーとして機能し得る部分(例えば水酸基等)の双方が存在することをもって、その側鎖の水素のアクセプターとして機能し得る部分とドナーとして機能し得る部分とを、水素結合性架橋部位と判断することができる。
このような側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合を形成するといった観点から、以下において説明する、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(側鎖(a)に含まれる水素結合性架橋部位)であることが好ましい。すなわち、かかる側鎖(a’)としては、後述の側鎖(a)がより好ましい。また、同様の観点で、前記側鎖(a’)中の水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位であることがより好ましい。
<側鎖(a):カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖>
カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有するものであればよく、他の構成は特に限定されない。このような水素結合性架橋部位としては、カルボニル含有基および含窒素複素環を有するものがより好ましい。
このようなカルボニル含有基としては、カルボニル基を含むものであればよく、特に限定されず、その具体例としては、アミド、エステル、イミド、カルボキシ基、カルボニル基等が挙げられる。このようなカルボニル含有基は、カルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物を用いて、前記主鎖(主鎖部分のポリマー)に導入した基であってもよい。このようなカルボニル含有基を前記主鎖に導入し得る化合物は特に限定されず、その具体例としては、ケトン、カルボン酸およびその誘導体等が挙げられる。
このようなカルボン酸としては、例えば、飽和または不飽和の炭化水素基を有する有機酸が挙げられ、該炭化水素基は、脂肪族、脂環族、芳香族等のいずれであってもよい。また、カルボン酸誘導体としては、具体的には、例えば、カルボン酸無水物、アミノ酸、チオカルボン酸(メルカプト基含有カルボン酸)、エステル、アミノ酸、ケトン、アミド類、イミド類、ジカルボン酸およびそのモノエステル等が挙げられる。
また、前記カルボン酸およびその誘導体等としては、具体的には、例えば、マロン酸、マレイン酸、スクシン酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、p−フェニレンジ酢酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−アミノ安息香酸、メルカプト酢酸などのカルボン酸および置換基含有するこれらのカルボン酸;無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などの酸無水物;マレイン酸エステル、マロン酸エステル、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、酢酸エチルなどの脂肪族エステル;フタル酸エステル、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル、エチル−m−アミノベンゾエート、メチル−p−ヒドロキシベンゾエートなどの芳香族エステル;キノン、アントラキノン、ナフトキノンなどのケトン;グリシン、チロシン、ビシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、メチオニン、プロリン、N−(p−アミノベンゾイル)−β−アラニンなどのアミノ酸;マレインアミド、マレインアミド酸(マレインモノアミド)、コハク酸モノアミド、5−ヒドロキシバレルアミド、N−アセチルエタノールアミン、N,N’−ヘキサメチレンビス(アセトアミド)、マロンアミド、シクロセリン、4−アセトアミドフェノール、p−アセトアミド安息香酸などのアミド類;マレインイミド、スクシンイミドなどのイミド類;等が挙げられる。
これらのうち、カルボニル基(カルボニル含有基)を導入し得る化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等の環状酸無水物であることが好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
また、前記側鎖(a)が含窒素複素環を有する場合、前記含窒素複素環は、直接又は有機基を介して前記主鎖に導入されていればよく、その構成等は特に制限されるものではない。このような含窒素複素環は、複素環内に窒素原子を含むものであれば複素環内に窒素原子以外のヘテロ原子、例えば、イオウ原子、酸素原子、リン原子等を有するものでも用いることができる。ここで、前記側鎖(a)中に含窒素複素環を用いた場合には、複素環構造を有すると架橋を形成する水素結合がより強くなり、得られる本発明の熱可塑性エラスマー組成物の引張強度がより向上するため好ましい。
また、上記含窒素複素環は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基、ヘキシル基などのアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子からなる基;シアノ基;アミノ基;芳香族炭化水素基;エステル基;エーテル基;アシル基;チオエーテル基;等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。これらの置換基の置換位置は特に限定されず、置換基数も限定されない。
さらに、上記含窒素複素環は、芳香族性を有していても、有していなくてもよいが、芳香族性を有していると得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の圧縮永久歪や機械的強度がより向上するため好ましい。
また、このような含窒素複素環は、特に制限されるものではないが、水素結合がより強固になり、圧縮永久歪や機械的強度がより向上するといった観点から、5員環、6員環であることが好ましい。このような含窒素複素環としては、具体的には、例えば、ピロロリン、ピロリドン、オキシインドール(2−オキシインドール)、インドキシル(3−オキシインドール)、ジオキシインドール、イサチン、インドリル、フタルイミジン、β−イソインジゴ、モノポルフィリン、ジポルフィリン、トリポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、ヘモグロビン、ウロポルフィリン、クロロフィル、フィロエリトリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾピラゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾリン、イミダゾロン、イミダゾリドン、ヒダントイン、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリドン、インダゾール、ピリドインドール、プリン、シンノリン、ピロール、ピロリン、インドール、インドリン、オキシルインドール、カルバゾール、フェノチアジン、インドレニン、イソインドール、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、オキサトリアゾール、チアトリアゾール、フェナントロリン、オキサジン、ベンゾオキサジン、フタラジン、プテリジン、ピラジン、フェナジン、テトラジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、アントラニル、ベンゾチアゾール、ベンゾフラザン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、アントラゾリン、ナフチリジン、チアジン、ピリダジン、ピリミジン、キナゾリン、キノキサリン、トリアジン、ヒスチジン、トリアゾリジン、メラミン、アデニン、グアニン、チミン、シトシン、ヒドロキシエチルイソシアヌレートおよびこれらの誘導体等が挙げられる。これらのうち、特に含窒素5員環については、下記の化合物(化学式で記載の環状構造)、下記一般式(10)で表されるトリアゾール誘導体および下記一般式(11)で表されるイミダゾール誘導体が好ましく例示される。また、これらは上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
上記一般式(10)及び(11)中の置換基X、Y、Zは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数6〜20のアリール基又はアミノ基である。なお、上記一般式(10)中のXおよびYのいずれか一方は水素原子ではなく、同様に、上記一般式(11)中のX、YおよびZの少なくとも1つは水素原子ではない。
このような置換基X、Y、Zとしては、水素原子、アミノ基以外に、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基、ドデシル基、ステアリル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐状のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基;フェニル基、トリル基(o−、m−、p−)、ジメチルフェニル基、メシチル基などのアリール基;等が挙げられる。
これらのうち、置換基X、Y、Zとしては、アルキル基、特に、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、イソプロピル基、2−エチルヘキシル基であることが、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物の加工性が良好となるため好ましい。
また、含窒素6員環については、下記の化合物が好ましく例示される。これらについても上記した種々の置換基(例えば、前述の含窒素複素環が有していてもよい置換基)を有していてもよいし、水素付加または脱離されたものであってもよい。
また、上記含窒素複素環とベンゼン環または含窒素複素環同士が縮合したものも用いることができ、具体的には、下記の縮合環が好適に例示される。これらの縮合環についても上記した種々の置換基を有していてもよいし、水素原子が付加または脱離されたものであってもよい。
このような含窒素複素環としては、中でも、得られる本発明の熱可塑性エラストマー組成物のリサイクル性、圧縮永久歪、硬度および機械的強度、特に引張強度に優れるため、トリアゾール環、イソシアヌレート環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環、トリアジン環及びヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましく、トリアゾール環、チアジアゾール環、ピリジン環、イミダゾール環およびヒダントイン環の中から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
また、前記側鎖(a)において、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環の双方が含まれる場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環は、互いに独立の側鎖として主鎖に導入されていてもよいが、上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環とが互いに異なる基を介して結合した1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましい。このように、側鎖(a)としては、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることが好ましく、下記一般式(1):
[式(1)中、Aは含窒素複素環であり、Bは単結合;酸素原子、式:NR’(R'は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)で表されるアミノ基又はイオウ原子;或いはこれらの原子又は基を含んでもよい有機基である。]
で表される構造部分を含有する側鎖が1つの側鎖として主鎖に導入されていることがより好ましい。このように、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、上記一般式(1)で表される構造部分を含有することが好ましい。
ここで、上記式(1)における含窒素複素環Aは、具体的には、上記で例示した含窒素複素環が挙げられる。また、上記式(1)における置換基Bとしては、具体的には、例えば、単結合;酸素原子、イオウ原子または式:NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基)で表されるアミノ基(なお、以下、便宜上、場合により、式:NR’で表されるアミノ基を単に「アミノ基NR’」と称する。);これらの原子または基を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基(アルキレンオキシ基、例えば、−O−CH2CH2−基)、アルキレンアミノ基(例えば、−NH−CH2CH2−基等)またはアルキレンチオエーテル基(アルキレンチオ基、例えば、−S−CH2CH2−基);これらを末端に有する、炭素数1〜20のアラルキレンエーテル基(アラルキレンオキシ基)、アラルキレンアミノ基またはアラルキレンチオエーテル基;等が挙げられる。
ここで、上記アミノ基NR’中のR’として選択され得る炭素数1〜10のアルキル基としては、異性体を含む、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。上記式(1)における置換基B中の酸素原子、イオウ原子およびアミノ基NR’;ならびに;これらの原子または基を末端に有する炭素数1〜20の、アルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基、アルキレンチオエーテル基、または、アラルキレンエーテル基、アラルキレンアミノ基、アラルキレンチオエーテル基等の酸素原子、アミノ基NR’およびイオウ原子は、隣接するカルボニル基と組み合わされ共役系のエステル基、アミド基、イミド基、チオエステル基等を形成することが好ましい。
これらのうち、前記置換基Bは、共役系を形成する、酸素原子、イオウ原子またはアミノ基;これらの原子または基を末端に有する、炭素数1〜20のアルキレンエーテル基、アルキレンアミノ基またはアルキレンチオエーテル基であることが好ましく、アミノ基(NH)、アルキレンアミノ基(−NH−CH2−基、−NH−CH2CH2−基、−NH−CH2CH2CH2−基)、アルキレンエーテル基(−O−CH2−基、−O−CH2CH2−基、−O−CH2CH2CH2−基)であることが特に好ましい。
また、側鎖(a)が、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する前記水素結合性架橋部位は、下記式(2)または(3)で表される1つの側鎖として、そのα位またはβ位で上記ポリマー主鎖に導入されている側鎖であることがより好ましい。
[式中、Aは含窒素複素環であり、BおよびDはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基である。]
ここで、含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様であり、置換基BおよびDはそれぞれ独立に、上記式(1)の置換基Bと基本的に同様である。ただし、上記式(3)における置換基Dは、上記式(1)の置換基Bで例示したもののうち、単結合;酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレン基またはアラルキレン基の共役系を形成するものであることが好ましく、単結合であることが特に好ましい。すなわち、上記式(3)のイミド窒素と共に、酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキレンアミノ基またはアラルキレンアミノ基を形成することが好ましく、上記式(3)のイミド窒素に含窒素複素環が直接結合する(単結合)ことが特に好ましい。具体的には、上記置換基Dとしては、単結合;上記した酸素原子、イオウ原子またはアミノ基を末端に有する炭素数1〜20のアルキレンエーテルまたはアラルキレンエーテル基等;異性体を含む、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、フェニレン基、キシリレン基等が挙げられる。
また、側鎖(a)が上記カルボニル含有基および上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖である場合、前記側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位が下記一般式(101):
[式(101)中、Aは含窒素複素環である。]
で表される構造部分を含有することが好ましい。このような式(101)中の含窒素複素環Aは上記式(1)の含窒素複素環Aと基本的に同様のものである。また、このような側鎖(a)の前記水素結合性架橋部位としては、高モジュラス、高破断強度の観点から、下記一般式(102):
で表される構造を有するものがより好ましい。更に、前記側鎖(a)が上記一般式(102)で表される基であることが特に好ましい。
上記熱可塑性エラストマーが有する上記カルボニル含有基と上記含窒素複素環との割合は特に限定されず、1:1〜3:1の範囲(より好ましくは1:1、2:1もしくは3:1)であると相補的な相互作用を形成しやすくなり、また、容易に製造できるため好ましい。
このようなカルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)は、主鎖部分100モル%に対して、0.1〜50モル%の割合(導入率)で導入されていることが好ましく、1〜30モル%の割合で導入されていることがより好ましい。このような側鎖(a)の導入率が0.1モル%未満では架橋時の引張強度が十分でない場合があり、他方、50モル%を超えると架橋密度が高くなりゴム弾性が失われる場合がある。すなわち、導入率が上記した範囲内であれば、上記熱可塑性エラストマーの側鎖同士の相互作用によって、分子間で効率良く架橋が形成されるため、架橋時の引張強度が高く、リサイクル性に優れるため好ましい。
上記導入率は、側鎖(a)として、上記カルボニル含有基を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a−i)と上記含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a−ii)とがそれぞれ独立に導入されている場合には、該カルボニル含有基を含有する側鎖(a−i)と該含窒素複素環を含有する側鎖(a−ii)との割合に従って、これらを一組で1つの側鎖(a)として考えて算出する。なお、側鎖(a−i)及び(a−ii)のうちの何れかが過剰の場合は、多い方の側鎖を基準として、上記導入率を考えればよい。
また、上記導入率は、例えば、主鎖部分がエチレン−プロピレンゴム(EPM)である場合には、エチレンおよびプロピレンモノマー単位100ユニット当り、側鎖部分の導入されたモノマーが、0.1〜50ユニット程度である。
また、側鎖(a)としては、反応後に前記主鎖を形成するポリマー(エラストマー性ポリマー形成用の材料)に、官能基として環状酸無水物基(より好ましくは無水マレイン酸基)を有するポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー)を用いて、前記官能基(環状酸無水物基)と、該環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)とを反応させて、水素結合性架橋部位を形成して、ポリマーの側鎖を側鎖(a)としたものが好ましい。このような含窒素複素環を導入し得る化合物は、上記で例示した含窒素複素環そのものであってもよく、無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)を有する含窒素複素環であってもよい。
ここで、側鎖(a)における含窒素複素環の結合位置について説明する。なお、窒素複素環を便宜上「含窒素n員環化合物(n≧3)」とする。
以下に説明する結合位置(「1〜n位」)は、IUPAC命名法に基づくものである。例えば、非共有電子対を有する窒素原子を3個有する化合物の場合、IUPAC命名法に基づく順位によって結合位置を決定する。具体的には、上記で例示した5員環、6員環および縮合環の含窒素複素環に結合位置を記している。
このような側鎖(a)においては、直接または有機基を介して共重合体と結合する含窒素n員環化合物の結合位置は特に限定されず、いずれの結合位置(1位〜n位)でもよい。好ましくは、その1位または3位〜n位である。
含窒素n員環化合物に含まれる窒素原子が1個(例えば、ピリジン環等)の場合は、分子内でキレートが形成されやすく組成物としたときの引張強度等の物性に優れるため、3位〜(n−1)位が好ましい。含窒素n員環化合物の結合位置を選択することにより、エラストマー性ポリマーは、エラストマー性ポリマー同士の分子間で、水素結合、イオン結合、配位結合等による架橋が形成されやすく、リサイクル性に優れ、機械的特性、特に引張強度に優れるものとなる傾向にある。
<側鎖(b):共有結合性架橋部位を含有する側鎖>
本明細書において「共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)」は、エラストマー性ポリマーの主鎖を形成する原子(通常、炭素原子)に、共有結合性架橋部位(後述するアミノ基含有化合物等の「共有結合を生成する化合物」等と反応することで、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起しうる官能基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしていることを意味する。なお、側鎖(b)は共有結合性架橋部位を含有する側鎖であるが、共有結合性部位を有しつつ、更に、水素結合が可能な基を有して、側鎖間において水素結合による架橋を形成するような場合には、後述の側鎖(c)として利用されることとなる(なお、エラストマー同士の側鎖間に水素結合を形成することが可能な、水素のドナーと、水素のアクセプターの双方が含まれていない場合、例えば、系中に単にエステル基(−COO−)が含まれている側鎖のみが存在するような場合には、エステル基(−COO−)同士では特に水素結合は形成されないため、かかる基は水素結合性架橋部位としては機能しない。他方、例えば、カルボキシ基やトリアゾール環のような、水素結合の水素のドナーとなる部位と、水素のアクセプターとなる部位の双方を有する構造をエラストマー同士の側鎖にそれぞれ含む場合には、エラストマー同士の側鎖間で水素結合が形成されるため、水素結合性架橋部位が含有されることとなる。また、例えば、エラストマー同士の側鎖間に、エステル基と水酸基とが共存して、それらの基により側鎖間で水素結合が形成される場合、その水素結合を形成する部位が水素結合性架橋部位となる。そのため、側鎖(b)が有する構造自体や、側鎖(b)が有する構造と他の側鎖が有する置換基の種類等に応じて、側鎖(c)として利用される場合がある。)。また、ここにいう「共有結合性架橋部位」は、共有結合によりポリマー同士(エラストマー同士)を架橋する部位である。
このような共有結合性架橋部位を含有する側鎖(b)は特に制限されないが、例えば、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させることで、形成される共有結合性架橋部位を含有するものであることが好ましい。このような側鎖(b)の前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることが好ましい。そのため、前記主鎖を構成するポリマーが有する前記官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起しうる官能基であることが好ましい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、例えば、1分子中にアミノ基および/またはイミノ基を2個以上(アミノ基およびイミノ基をともに有する場合はこれらの基を合計して2個以上)有するポリアミン化合物;1分子中に水酸基を2個以上有するポリオール化合物;1分子中にイソシアネート(NCO)基を2個以上有するポリイソシアネート化合物;1分子中にチオール基(メルカプト基)を2個以上有するポリチオール化合物;等が挙げられる。ここにおいて「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」は、かかる化合物が有する置換基の種類や、かかる化合物を利用して反応せしめた場合に反応の進行の程度、等によっては、前記水素結合性架橋部位及び前記共有結合性架橋部位の双方を導入し得る化合物となる(例えば、水酸基を3個以上有する化合物を利用して、共有結合による架橋部位を形成する場合において、反応の進行の程度によっては、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの該官能基に2個の水酸基が反応して、残りの1個の水酸基が水酸基として残るような場合も生じ、その場合には、水素結合性の架橋を形成する部位も併せて導入され得ることとなる。)。そのため、ここに例示する「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」には、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物」も含まれ得る。このような観点から、側鎖(b)を形成する場合には、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」の中から目的の設計に応じて化合物を適宜選択したり、反応の進行の程度を適宜制御する等して、側鎖(b)を形成すればよい。なお、共有結合性架橋部位を形成する化合物が複素環を有している場合には、より効率よく水素結合性の架橋部位も同時に製造することが可能になり、後述の側鎖(c)として、前記共有結合性架橋部位を有する側鎖を効率よく形成することが可能となる。そのため、かかる複素環を有しているような化合物の具体例については、側鎖(c)を製造するための好適な化合物として、特に側鎖(c)と併せて説明する。なお、側鎖(c)は、その構造から、側鎖(a)や側鎖(b)等の側鎖の好適な一形態であるとも言える。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」として利用可能なポリアミン化合物としては、例えば、以下に示す脂環族アミン、脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、含窒素複素環アミン等が挙げられる。
このような脂環族アミンとしては、具体的には、例えば、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ−(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
また、前記脂肪族ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノヘプタン、ジアミノドデカン、ジエチレントリアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−アミノエチルピペラジン、トリエチレンテトラミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジイソプロピル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、N,N’,N’’−トリメチルビス(ヘキサメチレン)トリアミン等が挙げられる。
前記芳香族ポリアミンおよび前記含窒素複素環アミンとしては、特に制限されないが、例えば、ジアミノトルエン、ジアミノキシレン、テトラメチルキシリレンジアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール等が挙げられる。
また、前記ポリアミン化合物は、その水素原子の一つ以上を、アルキル基、アルキレン基、アラルキレン基、オキシ基、アシル基、ハロゲン原子等で置換してもよく、また、その骨格に、酸素原子、イオウ原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
また、前記ポリアミン化合物は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の混合比は、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)が用いられる用途、本発明の熱可塑性エラストマー(組成物)に要求される物性等に応じて任意の比率に調整することができる。
上記で例示したポリアミン化合物のうち、ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン等が、圧縮永久歪、機械的強度、特に引張強度の改善効果が高く好ましい。
前記ポリオール化合物は、水酸基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、例えば、以下に示すポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4’−ジヒドロキシフェニルプロパン、4,4’−ジヒドロキシフェニルメタン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイド;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリエステルポリオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオールペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパンその他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトンなどの開環重合体;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)などの低分子ポリオール;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
前記ポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)、H6TDI(水添TDI)等の脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物;これらのイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;これらのイソシアネート化合物と上記で例示したポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマー;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリチオール化合物は、チオール基を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、メタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパジチオール、トルエン−3,4−ジチオール、3,6−ジクロロ−1,2−ベンゼンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,2−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,4−ベンゼンジメタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール(トリメルカプト−トリアジン)、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリメチロールプロパントリス(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ポリチオール(チオコールまたはチオール変性高分子(樹脂、ゴム等))等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
このような「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起(生成:形成)し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
なお、前記側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマー(B)は、かかる側鎖(b)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋、すなわち、前記官能基と上述した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」との反応により形成される共有結合による架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのがさらに好ましい。
また、前記側鎖(b)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより容易に改善され得るとの理由から好ましい。なお、この場合において、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)に対して、水素結合を形成することが可能な基を含む側鎖を有するエラストマーが含まれている場合(例えば、水酸基等を含む側鎖を有するエラストマーが他に存在する場合等)には、前記共有結合性架橋部位が、後述の側鎖(c)として機能し得る。例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー(B)の場合(すなわちエラストマー性ポリマー(B)が側鎖(a)及び(b)の双方を有するエラストマー性ポリマーである場合)において、共有結合性架橋部位における架橋が前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を有する場合、それらの基と、側鎖(a)(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する側鎖)中の基とが水素結合(相互作用)することで、架橋密度をより向上させることも可能となるものと考えられる。なお、このような第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している構造の側鎖(b)を形成するとの観点で、「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」としては、上記で例示したもののうち、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)であることが好ましい。
なお、上述のような共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)を利用しても、反応の進行度や置換基の種類、用いる原料の化学量論比等によっては、水素結合性の架橋部位も併せて導入されるような場合もあるため、前記共有結合性架橋部位の好適な構造については、側鎖(c)中の共有結合性架橋部位の好適な構造と併せて説明する。
<側鎖(c):水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖>
このような側鎖(c)は、1つの側鎖中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む側鎖である。このような側鎖(c)に含まれる水素結合性架橋部位は、側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位と同様のものであり、側鎖(a)中の水素結合性架橋部位と同様のものが好ましい。また、側鎖(c)に含まれる共有結合性架橋部位としては、側鎖(b)中の共有結合性架橋部位と同様のものを利用できる(その好適な架橋も同様のものを利用できる。)。
このような側鎖(c)は、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)とを反応させることで、形成される側鎖であることが好ましい。 このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)としては、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有しかつ共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)が好ましく、中でも、複素環含有ポリオール、複素環含有ポリアミン、複素環含有ポリチオール等がより好ましい。
なお、このような複素環を含有する、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールは、複素環(特に好ましくは含窒素複素環)を有するものである以外は、前述の「共有結合性架橋部位を形成することが可能な化合物(共有結合を生成する化合物)」において説明したポリオール、ポリアミンおよびポリチオールと同様のものを適宜利用することができる。また、このような複素環含有ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ビス、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、コウジ酸、ジヒドロキシジチアン、トリスヒドロキシエチルトリアジンが挙げられる。また、前記複素環含有ポリアミンとしては、特に制限されないが、例えば、アセトグアナミン、ピペラジン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ベンゾグアナミン、メラミンが挙げられる。更に、このような複素環含有ポリチオールとしては、ジメルカプトチアジアゾール、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレートが挙げられる。このように、側鎖(c)としては、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(前記主鎖部分を形成させるためのポリマー)と、複素環を含有するポリオール、ポリアミンおよびポリチオール等とを反応させて、得られる側鎖であることが好ましい。
なお、「水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入する化合物)」と反応する、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起(生成:形成)し得る官能基が好ましく、かかる官能基としては、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好適に例示される。
また、前記側鎖(c)を有するエラストマー性ポリマー(B)は、かかる側鎖(c)の部分において、前記共有結合性架橋部位における架橋を1分子中に少なくとも1個有しており、特に、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により架橋が形成される場合は、2個以上有しているのが好ましく、2〜20個有しているのがより好ましく、2〜10個有しているのがさらに好ましい。また、前記側鎖(c)の共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有していることが、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより改善されるとの理由から好ましい。
(側鎖(b)〜(c)中の共有結合性架橋部位として好適な構造について)
側鎖(b)及び/又は(c)に関して、共有結合性架橋部位における架橋が、第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している場合であって、これらの結合部位が水素結合性架橋部位としても機能する場合、得られる熱可塑性エラストマー(組成物)の圧縮永久歪および機械的強度(破断伸び、破断強度)がより高度に改善されるとの理由から好ましい。このように、共有結合性架橋部位を有する側鎖中の第三級アミノ結合(−N=)やエステル結合(−COO−)が、他の側鎖との間において、水素結合を形成するような場合、かかる第三級アミノ結合(−N=)、エステル結合(−COO−)を含有している共有結合性架橋部位は、水素結合性架橋部位も備えることとなり、側鎖(c)として機能し得る。
なお、例えば、前記側鎖(a’)として前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー(B)の場合であって、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を有する場合において、前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合が、前記側鎖(a)中の基と水素結合(相互作用)を形成すると、架橋密度をより向上させることが可能となるものと考えられる。ここで、前記主鎖を構成するポリマーが有する官能基と反応して前記第三級アミノ結合及び/又は前記エステル結合を含有している共有結合性架橋部位を形成させることが可能な化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成することが可能な化合物)としては、ポリエチレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリプロピレングリコールラウリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ラウリルアミン)、ポリエチレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリプロピレングリコールオクチルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)オクチルアミン)、ポリエチレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)、ポリプロピレングリコールステアリルアミン(例えば、N,N−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)ステアリルアミン)を好適なものとして挙げることができる。
前記側鎖(b)及び/又は側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋としては、下記一般式(4)〜(6)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有しているものが好ましく、式中のGが第三級アミノ結合、エステル結合を含有しているものがより好ましい(なお、以下の構造において、水素結合性架橋部位を含む場合、その構造を有する側鎖は、側鎖(c)として利用されるものである。)。
上記一般式(4)〜(6)中、E、J、KおよびLはそれぞれ独立に単結合;酸素原子、アミノ基NR’(R’は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基である。)またはイオウ原子;あるいはこれらの原子または基を含んでもよい有機基であり、Gは酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含んでいてもよく、直鎖状、分岐鎖状又は環状の炭素数1〜20の炭化水素基である。
ここで、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記一般式(1)の置換基Bと基本的に同様である。
また、置換基Gとしては、例えば、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9−ノニレン基、1,10−デシレン基、1,11−ウンデシレン基、1,12−ドデシレン基などのアルキレン基;N,N−ジエチルドデシルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルドデシルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジエチルオクチルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルオクチルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジエチルステアリルアミン−2,2’−ジイル、N,N−ジプロピルステアリルアミン−2,2’−ジイル、;ビニレン基;1,4−シクロへキシレン基等の2価の脂環式炭化水素基;1,4−フェニレン基、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,3−フェニレンビス(メチレン)基などの2価の芳香族炭化水素基;プロパン−1,2,3−トリイル、ブタン−1,3,4−トリイル、トリメチルアミン−1,1’,1’’−トリイル、トリエチルアミン−2,2’,2’’−トリイル等の3価の炭化水素基;イソシアヌレート基、トリアジン基等の酸素原子、イオウ原子または窒素原子を含む3価の環状炭化水素;下記式(12)および(13)で表される4価の炭化水素基;およびこれらを組み合わせて形成される置換基;等が挙げられる。また、このような式中の置換基Gとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、イソシアヌレート基(イソシアヌレート環)の構造を有するものであることが好ましい。また、このような式中の置換基Gとしては、耐熱性が高く、水素結合により、高強度になるという観点から、下記一般式(111)で表される基及び下記一般式(112)で表される基であることがより好ましい。
さらに、前記側鎖(c)の上記共有結合性架橋部位における架橋が、上述した上記エラストマー性ポリマーの主鎖にα位またはβ位で結合する下記式(7)〜(9)のいずれかで表される構造を少なくとも1つ含有するのが好ましく、式中のGが第三級アミノ基を含有しているのがより好ましい(式(7)〜(9)に示す構造は水酸基とカルボニル基を含有しており、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を含む構造といえ、かかる構造を有する側鎖は側鎖(c)として機能し得る。)。
式(7)〜(9)中、置換基E、J、KおよびLはそれぞれ独立に、上記式(4)〜(6)の置換基E、J、KおよびLと基本的に同様であり、置換基Gは、上記式(4)〜(6)中の置換基Gと基本的に同様である。
また、このような式(7)〜(9)のいずれかで表される構造としては、具体的には、下記式(14)〜(25)で表される構造が好適なものとして例示される。
(式中、lは、1以上の整数を表す。)
(式中、l、mおよびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表す。)
また、前記側鎖(b)及び(c)において、上記共有結合性架橋部位における架橋は、環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基及び/又はイミノ基との反応により形成されることが好ましい。例えば、反応後に主鎖部分を形成するポリマーが官能基として環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を有している場合に、該ポリマーの環状酸無水物基と、水酸基あるいはアミノ基および/またはイミノ基を有する前記共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)とを反応させて、共有結合により架橋する部位を形成してポリマー間を架橋させることで、形成される架橋としてもよい。
また、このような側鎖(b)及び(c)において、前記共有結合性架橋部位における架橋は、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合により形成されてなることがより好ましい。
以上、側鎖(a’)、側鎖(a)、側鎖(b)、側鎖(c)について説明したが、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
また、前記エラストマー性ポリマー(A)は、前記側鎖(a)を有するガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーであり、前記エラストマー性ポリマー(B)は、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有しているガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマー(側鎖として、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーや、側鎖に側鎖(c)を少なくとも一つ含むポリマー等)である。このようなエラストマー成分としては、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)のうちの1種を単独で利用してもよく、あるいは、それらのうちの2種以上を混合して利用してもよい。
なお、エラストマー性ポリマー(B)は、側鎖(a’)及び側鎖(b)の双方を有するポリマーであっても、側鎖(c)を有するポリマーであってもよいが、このようなエラストマー性ポリマー(B)の側鎖に含有される水素結合性架橋部位としては、より強固な水素結合が形成されるといった観点から、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位(より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位)であることが好ましい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)及び(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分としては、工業的に入手しやすく、しかも機械的強度及び圧縮永久歪を高度にバランスよく有するものとすることが可能であるといった観点から、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物(以下、場合により単に「化合物(X)」と称する。)との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。このように、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)としては、前記無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと前記化合物(X)との反応物が好ましい。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)を製造する方法としては特に制限されず、上述のような側鎖(a);側鎖(a')及び側鎖(b);、並びに、側鎖(c);からなる群から選択される少なくとも1種を、ガラス転移点が25℃以下のエラストマー性ポリマーの側鎖として導入することが可能な公知の方法を適宜採用することができる。例えば、エラストマー性ポリマー(B)を製造するための方法としては、特開2006−131663号公報に記載の方法を採用してもよい。また、上述のような側鎖(a’)及び側鎖(b)を備えるエラストマー性ポリマー(B)を得るために、例えば、官能基としての環状酸無水物基(例えば無水マレイン酸基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーに、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)との混合物(混合原料)を利用して、それぞれの側鎖を同時に導入してもよい。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)を製造する方法としては、例えば、官能基(例えば環状酸無水物基等)を側鎖に有するエラストマー性ポリマー(例えば、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーが好適のものとして挙げられる。)を用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物(例えば、前記化合物(X)が好適なものとして挙げられる。)と反応させて、前記側鎖(a)を有するエラストマー性ポリマー;側鎖(a')及び側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマー;及び/又は前記側鎖(c)を有するエラストマー性ポリマー(前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B))を製造する方法を採用してもよい。なお、このような反応の際に採用する条件(温度条件や雰囲気条件等)は特に制限されず、官能基や該官能基と反応させる化合物(水素結合性架橋部位を形成する化合物及び/又は共有結合性架橋部位を形成する化合物)の種類に応じて適宜設定すればよい。なお、前記エラストマー性ポリマー(A)の場合は、水素結合部位を持つモノマーを重合して製造しても良い。
このような官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、前述のエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖を形成することが可能なポリマーであって、官能基を側鎖に有するものが好ましい。ここで、「官能基を側鎖に含有するエラストマー性ポリマー」とは、主鎖を形成する原子に官能基(上述の官能基等、例えば、環状酸無水物基等)が化学的に安定な結合(共有結合)をしているエラストマー性ポリマーをいい、エラストマー性ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)と官能基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用できる。
また、このような官能基としては、アミド、エステル、ラクトン、ウレタン、エーテル、チオウレタンおよびチオエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの結合を生起し得る官能基であることが好ましく、中でも、環状酸無水物基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、イソシアネート基、チオール基等が好ましく、組成物中にクレイをより効率よく分散させることが可能であるといった観点からは、環状酸無水物基が特に好ましい。また、このような環状酸無水物基としては、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、容易にポリマー側鎖に導入可能で、工業上入手が容易である観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。また、前記官能基が環状酸無水物基である場合には、例えば、前記官能基を導入しうる化合物として、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物を用いて、エラストマー性ポリマー(例えば公知の天然高分子または合成高分子)に官能基を導入してもよい。
なお、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)」を利用することが好ましい。また、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物としては特に制限されないが、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することが好ましい。また、水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)、及び、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(例えば、含窒素複素環を含むポリオール、ポリアミン、ポリチオール等)も好適に利用することができる。
また、このようなエラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)〜(B))を製造する方法に、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物、並びに、前記官能基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物及び前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物と反応させて、前記側鎖(a)を有する前記エラストマー性ポリマー(A)、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されている前記エラストマー性ポリマー(B)を製造する方法を採用する場合、官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを、前記原料化合物と反応させる前に、有機化クレイと官能基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとを混合し、その後、前記原料化合物を添加し、反応させて、エラストマー成分の調製と同時に組成物を形成する方法(有機化クレイを先添加する方法)を採用してもよい。
なお、有機化クレイの分散性がより向上し、より高度な耐熱性が得られることから、エラストマー成分(エラストマー性ポリマー(A)〜(B))を製造する際に、有機化クレイを先添加する方法を採用して、エラストマー成分の調製時に有機化クレイを分散させることが好ましい。また、このような有機化クレイを先添加する方法としては、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用することがより好ましい。
(有機化クレイ)
本発明にかかる有機化クレイとしては特に制限されず、例えば、有機化剤により有機化されたクレイを好適に利用することができる。このような「有機化されたクレイ」としては、層間に第4級アンモニウム塩等の有機化剤が導入された状態(例えば、層間に有機化剤が入れ込まれた状態)にあるクレイであることが好ましい。なお、クレイの層間に有機化剤を導入する方法としては特に制限されず、例えば、層状鉱物であるモンモリロナイト等のクレイが有する陽イオン交換性を利用することにより、クレイの層間に有機化剤を導入する方法を適宜採用することが可能である。このように、公知の方法を適宜利用して、クレイの層間に有機化剤が導入されるように、有機化剤により層状鉱物であるクレイを処理することで、有機化されたクレイを容易に得ることができる。なお、このような有機化クレイによれば、クレイの層の剥離をより容易にすることが可能となり、単層のクレイを有機溶媒や樹脂に、より効率よく分散させることが可能となる。
有機化剤により有機化するためのクレイ(有機化前のクレイ)としては、特に制限されず、公知のクレイを適宜利用でき、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、マイカ、フッ素化マイカ、カオリナイト(高陵石)、パイロフィロライト、スメクタイト、セリサイト(絹雲母)、イライト、グローコナイト(海緑石)、クロライト(緑泥石)、タルク(滑石)、ゼオライト(沸石)、ハイドロタルサイト等が挙げられる。このようなクレイは天然物であっても合成物であってもよい。
このようなクレイを有機化するために用いることが可能な有機化剤としては特に制限されず、クレイを有機化することが可能な公知の有機化剤を適宜利用することができ、例えば、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジオクタデシルジメチルアンモニウムイオン、トリオクタデシルアンモニウムイオン、ジメチルステアリルベンジルアンモニウムイオン、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)メチルアンモニウムイオン、トリメチルステアリルベンジルアンモニウムイオン等の公知の有機化剤を適宜用いることができる。
このような有機化剤としては、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発揮できるとともに、圧縮永久歪に対する耐性及び100%モジュラスを基準とした引張特性(機械的特性)をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、下記一般式(I):
(CH・X (I)
(式(I)中、Rはそれぞれ独立にアルキル基及びアラルキル基の中から選択される少なくとも1種を示し、Xはカウンターアニオンを示す。)
で表されるアンモニウム塩の中から選択される少なくとも1種の有機化剤が好ましい。
このような一般式(I)中のRとして選択され得るアルキル基としては、炭素数が1〜40(より好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20)のものが好ましい。このような炭素数が、前記上限を超えると分子が大きくなり過ぎて、クレイの層間に有機化剤(アンモニウム塩)の分子が侵入し難くなり、クレイの有機化が困難となる傾向にある。また、前記一般式(I)中のRとして選択され得るアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、オレイル、オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル基(ステアリル基)等が挙げられるが、中でも、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発揮できるとともに、圧縮永久歪に対する耐性及び100%モジュラスを基準とした引張特性(機械的特性)をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、メチル、オクタデシル基(ステアリル基)が好ましく、オクタデシル基(ステアリル基)がより好ましい。
また、このような一般式(I)中のRとして選択され得るアラルキル基としては、炭素数が6〜30(より好ましくは6〜25、更に好ましくは6〜20)のものが好ましい。このような炭素数が前記上限を超えると、分子が大きくなり過ぎて、クレイの層間に有機化剤(アンモニウム塩)の分子が侵入し難くなり、クレイの有機化が困難となる傾向にある。このようなアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、フルオレニルメチル基等が挙げられるが、中でも、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発揮できるとともに、圧縮永久歪に対する耐性及び100%モジュラスを基準とした引張特性(機械的特性)をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点からは、ベンジル基がより好ましい。
また、Xはカウンターアニオンを示す。このようなカウンターアニオンとしては特に制限されず、例えば、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン類、およびホウ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロホウ酸アニオン等のホウ酸イオン類が挙げられる。
また、このような有機化剤としては、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発揮できるとともに、圧縮永久歪に対する耐性及び100%モジュラスを基準とした引張特性(機械的特性)をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、前記一般式(I)で表されかつ式(I)中の2つのRがいずれもアルキル基であるアンモニウム塩(A)と、前記一般式(I)中の2つのRのうちの一つがアルキル基でありかつもう一つがアラルキル基であるアンモニウム塩(B)との双方を含むものがより好ましい。なお、このようなアンモニウム塩(A)としては、例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩等が挙げられ、前記アンモニウム塩(B)としては、例えば、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
また、前記有機化クレイとしては、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発揮できるとともに、圧縮永久歪に対する耐性及び100%モジュラスを基準とした引張特性(機械的特性)をより高度にバランスよく有するものとすることが可能となるといった観点から、4級アンモニウム塩で有機化されたクレイを好適に利用することができる。このようなクレイの4級アンモニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルステアリルアンモニウム塩、オレイルビス(2−ヒドロキシルエチル)の塩、メチルアンモニウム塩、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらのうちの2種以上の混合物を好適に用いることができる。なお、このような有機化クレイの4級アンモニウム塩としては、引張強度、耐熱性向上の観点から、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩、ジメチルオクタデシルアンモニウム塩、及び、これらの混合物をより好適に利用でき、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム塩とジメチルオクタデシルアンモニウム塩との混合物を更に好適に利用できる。
また、このような有機化クレイとしては、市販のものを利用してもよく、例えば、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」、「クニフィル−B1」、「クニフィル−HY」などの他、ホージュン社製の商品名「エスベンシリーズ(C,E,W,WX,N−400,NX,NX80,NZ,NZ70,NE,NEZ,NO12S,NO12」、「オルガナイトシリーズ(D,T)などを適宜利用することができる。このような市販の有機化クレイの中でも、クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」とホージュン社製の商品名「エスベンシリーズWX」を好適に利用できる。なお、このような市販の有機化クレイは、クレイの層間に有機化剤が導入された状態のものである。
(抗菌剤及び防黴剤)
本発明にかかる抗菌剤及び防黴剤としては、特に制限されず、公知の抗菌性を有する化合物や防黴性を有する化合物を用いることができる。このような抗菌剤及び防黴剤としては、それぞれ有機系化合物及び無機系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。なお、有機系化合物及び無機系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物としては、いわゆる有機無機ハイブリット材料であってもよい。
このような抗菌剤として利用可能な有機系化合物としては、例えば、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、リンコマイシン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、ポリペプチド系、グリコペプチド系、テトラサイクリン系、ピリドンカルボン酸(キノロン)系、ニューキノロン系、オキサゾリジノン系、サルファ剤系、イミダゾール系、チアベンダゾール系、アゾール系、ピリジン系、ヨード系、ピリチオン系および前記の混合系等が挙げられる。
また、前記抗菌剤として利用可能な無機系化合物としては、例えば、銀、銅、亜鉛等の金属を、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)、シリカゲル、粘土鉱物などのケイ酸塩系担体、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩系担体、およびその他として、溶解性ガラス、活性炭、金属担体、有機金属等の各種担体と複合したもの等が挙げられる。
このような防黴剤として利用可能な有機系化合物としては、フェノール系、ピリジン・キノリン系、トリアジン系、イソチアゾロン系、アニリド系、ニトリル系、イミダゾール系、ピリジン系、アゾール系、ヨード系、ピリチオン系、チアゾール系、酵素等、アルデヒド系、カルボン酸系、エステル系、ジスルフィド系、チアベンダゾール系、チオカーバメート系、エーテル系、四級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、界面活性剤系等が挙げられる。
また、前記防黴剤として利用可能な無機系化合物としては、例えば、銀、銅、亜鉛等の金属を、ゼオライト(結晶性アルミノケイ酸塩)、シリカゲル、粘土鉱物などのケイ酸塩系担体、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウムなどのリン酸塩系担体、およびその他として、溶解性ガラス、活性炭、金属担体、有機金属等の各種担体と複合したもの、および酸化チタン(光触媒)等が挙げられる。
また、前記抗菌剤及び前記防黴剤としては、それぞれ、平均粒子径が0.01〜100μm(より好ましくは0.1〜90μm、更に好ましくは0.2〜80μm、特に好ましくは0.5〜75μm)の化合物であることが好ましい。このような平均粒子径が前記下限未満では粒子が細かくなり、舞い上がりやすくなるため、エラストマーに混合して製造する際に作業性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると凝集が起こりやすくなりエラストマーへの分散性が低下する傾向にある。
また、このような抗菌剤及び前記防黴剤としては、エラストマーへの混合性、分散性の観点から、エラストマー成分(エラストマー基材)に対する溶解性が高いものを適宜選択して利用することが好ましい。なお、ここにいう「溶解性が高い」とはエラストマーに対して抗菌剤、防カビ剤がエラストマーの軟化点以上の温度で完全に可塑化し、軟化点から冷却(例えば室温)された際にブルーム等、成分の分離が生じない状態である。ここではエラストマー成分100質量部(phr)に対して、添加剤が10質量部(phr)以上溶解可能であれば溶解性が高いと判断することができる。
なお、本明細書においては、上述のように、抗菌剤と防黴剤とを分けて説明しているが、いわゆる抗菌剤として知られる化合物の中には防黴性も併せ有する化合物が多く散見されるとともに、いわゆる防黴剤として知られる化合物の中には抗菌性も併せ有する化合物が多く散見されるため、抗菌性と防黴性とを併せ有する化合物については、目的とする用途(菌や黴の種類等)に応じて、抗菌剤として利用しても、あるいは、防黴剤として利用してもよい。なお、このような抗菌性と防黴性とを併せ有する化合物としては、例えば、界面活性剤系化合物(有機系)、銀/ゼオライト系化合物(無機系)が挙げられる。
(組成物)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、前記エラストマー成分と、前記有機化クレイと、前記抗菌剤及び前記防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種とを含有するものである。
このようなエラストマー成分に関して、側鎖に共有結合性架橋部位を含むエラストマー成分を含有する場合(例えば、エラストマー性ポリマー(B)を含む場合)には、共有結合性架橋部位を含む側鎖により、より高い水準の耐圧縮永久歪性を発現させることも可能となるものと本発明者らは推察する。また、前記エラストマー成分中に、水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位とが存在する場合(エラストマー性ポリマー(B)を含有する場合、エラストマー性ポリマー(B)と他のエラストマー性ポリマーの混合物を含有する場合、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)との混合物を含有する場合、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマーとの混合物を利用する場合等)には、水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の存在に起因して、使用時に、共有結合による、より高度な機械的強度と、水素結合による加熱時の開裂による、より高度な流動性(成形性)を同時に発現させることも可能となる。そのため、側鎖の種類に応じて組成を適宜変更して、用途に応じた特性を適宜発揮させることも可能となるものと本発明者らは推察する。なお、上述のようなエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有するエラストマー性ポリマーは、官能基(例えば環状酸無水物基)を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを用いて、該エラストマー性ポリマーを、前記官能基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)と反応させて、前記側鎖(b)を有する前記エラストマー性ポリマーを製造する方法により得ることが可能である。なお、この場合においても、共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)としては、前述の「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」を利用することができる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、有機化クレイを用いる。このような有機化クレイの代わりに、エラストマーに、いわゆるフィラー等として利用されるような他の成分(例えばクレイ(有機化していないもの)等)を単に利用した場合には、その理由は必ずしも定かではないが、本願において要求するような十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発現させることができない。一方、前記エラストマー成分と、前記抗菌剤及び前記防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と組み合わせて、前記有機化クレイを利用した場合には、その理由は定かではないが、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性を発現させることが可能となる。
このような有機化クレイの含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下である。このような有機化クレイの含有量が前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する。このような熱可塑性エラストマー組成物における有機化クレイの含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが更に好ましく、1〜3質量部であることが特に好ましい。このような有機化クレイの含有量が前記下限未満では、有機化クレイの含有量が少なすぎて十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋が強くなり過ぎて、却って伸びや強度が低下してしまい、エラストマーとして各種用途に利用することが困難となる(実用性が低下する)傾向にある。
また、このような有機化クレイは、単層の形態のクレイ(単層のクレイ)として組成物中に存在することが好ましい。このような単層状の形態のクレイの存在は、組成物の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することにより確認できる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μmの大きさの測定点を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した場合において、全測定点において、個数を基準として、全有機化クレイのうちの50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは80〜100%、特に好ましくは85〜100%)が単層のクレイとして存在することが好ましい。単層のクレイの存在率が前記下限未満では破断伸び、破断強度が低下する傾向にある。なお、このような単層のクレイの存在率(割合)の測定に際しては、透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製の商品名「JEM−2010」)を用いて、試料として前記熱可塑性エラストマー組成物10gを準備し、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の5.63μmの大きさの測定点を3点以上それぞれ測定し、かかる測定により得られる各TEM画像において、単層のクレイの個数と、多層状の有機化クレイの個数とをそれぞれ求めて、各測定点(各TEM画像)に関して、個数を基準として、全クレイのうちの単層のクレイの存在率(割合)を計算することで求めることができる。なお、単層の形態になる前の多層構造の場合に、一般的な有機化クレイの層間距離は20〜40オングストローム(2〜4nm)程度である(なお、有機化前のモンモリロナイトの層間距離は通常9.8オングストローム程度である)。また、一般的な有機化クレイを有機溶剤に分散させて単層にした場合、それらの層間距離は50オングストローム(>5nm)以上となることから、TEM画像により確認できる各層の層間距離がそのような層間距離よりも広くなっていることに基づいて、単層と判断してもよい。このように、有機化されたクレイの種類にもよるが、例えば、5nm以上層の間隔があることをもって単層の状態であると判断してもよく、場合によっては、数10nm以上の層の間隔があることをもって単層の状態であると判断してもよい。
なお、組成物中に、上述のような割合(存在率)で単層のクレイが含有されている場合、多層状の有機化クレイがそのまま分散されているよりも、クレイがより分散して含有された状態となるため(多層状の有機化クレイが分解されて単層のクレイが形成されるためである。)、より高い分散性でクレイを組成物中に分散させることが可能となる。このように、前記有機化クレイは、組成物中において多層状のまま存在するよりも、単層状のものが前記割合で存在する場合に、より高い分散性が得られ、耐熱性や破断強度をより高度なものとすることが可能である。そのため、上述のような割合で、単層の状態のクレイを含有させることがより好ましく、これにより有機化クレイがより分散されて耐熱性や破断強度の向上をより効率よく図ることが可能となる。また、上述のような割合(存在率)で単層のクレイを含有させる方法としては、特に制限されないが、後述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用して熱可塑性エラストマー組成物を製造することで、より効率よく、単層のクレイを上記割合で含有させることが可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μmの大きさの測定点を透過型電子顕微鏡により測定した場合において、全測定点において、単層のクレイが1μmあたり、1〜100個(より好ましくは3〜80個、更に好ましくは5〜50個)分散されていることが好ましい。このような単層のクレイの個数が前記下限未満ではクレイの量が少なすぎて、十分な効果が得られなくなる傾向にある。なお、このような単層のクレイの個数は、単層のクレイの存在率(割合)の測定と同様の方法でTEM画像を確認することにより求めることができる。
また、前記抗菌剤及び前記防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種の含有量としては、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記抗菌剤及び防黴剤の総量(合計量)が、前記エラストマー成分100質量部に対して0.01〜25質量部であることが好ましく、0.1〜25質量部であることがより好ましく、0.1〜22.5質量部であることが更に好ましく、0.1〜20質量部であることが特に好ましい。このような組成物中の前記抗菌剤及び防黴剤の総量(合計量)が、前記下限未満では混合後の前記抗菌剤及び防黴剤の濃度が低く、十分な性能を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると引張特性、圧縮永久歪等の機械特性、および流動性が低下する傾向にある。なお、前記エラストマー成分100質量部に対する前記抗菌剤及び防黴剤の総量(合計量)の上限値は、15質量部であることがより好ましく、10質量部であることが更に好ましく、5質量部であることが最も好ましい。このような抗菌剤及び防黴剤の総量を、かかる上限値以下とした場合には、圧縮永久歪に対する耐性と、100%モジュラスを基準とする引張特性とを、更に高度にバランスよく有するものとすることが可能となる傾向にある(特に圧縮永久歪に対する耐性をより高度に維持することが可能な傾向にある)。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記抗菌剤及び防黴剤の総量(前記抗菌剤の含有量と防黴剤の含有量の合計量)は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して0.01〜3.6質量%であることが好ましく、0.01〜3.2質量%であることがより好ましく、0.01〜2.9質量%であることが更に好ましい。このような組成物中の前記抗菌剤及び防黴剤の総量(合計量)が、前記下限未満では混合後の前記抗菌剤及び防黴剤の濃度が低く、十分な性能を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると引張特性、圧縮永久歪等の機械特性、および流動性が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記抗菌剤及び防黴剤のうち、前記抗菌剤のみ含有する場合、前記抗菌剤の含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して0.01〜25質量部であることが好ましく、0.1〜25質量部であることがより好ましく、0.1〜22.5質量部であることが更に好ましく、0.1〜20質量部であることが特に好ましい。このような組成物中の前記抗菌剤の含有量が、前記下限未満では混合後の前記抗菌剤の濃度が低く、十分な性能を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると引張特性、圧縮永久歪等の機械特性、および流動性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記抗菌剤及び防黴剤のうち、前記防黴剤のみ含有する場合、前記防黴剤の含有量としては、前記エラストマー成分100質量部に対して0.01〜25質量部であることが好ましく、0.1〜25質量部であることがより好ましく、0.1〜22.5質量部であることが更に好ましく、0.1〜20質量部であることが特に好ましい。このような組成物中の前記防黴剤の含有量が、前記下限未満では混合後の前記防黴剤の濃度が低く、十分な性能を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると引張特性、圧縮永久歪等の機械特性、および流動性が低下する傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、用いるエラストマー成分の種類に応じて、用途に応じた特性を適宜付与することもできる。例えば、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a)に由来する特性を付与できるため、特に破断伸び、破断強度、流動性を向上させることが可能となる。また、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に、側鎖中の共有結合性架橋部位に由来する特性を付与できるため、特に圧縮永久歪に対する耐性(耐圧縮永久歪性)を向上させることが可能となる。なお、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分として含有する熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、共有結合性架橋部位に由来する特性の他に、水素結合性架橋部位(側鎖(a’)において説明した水素結合性架橋部位)に由来する特性をも付与できるため、流動性(成形性)を保持した状態で、耐圧縮永久歪性をより向上させることも可能となり、その側鎖の種類やポリマー(B)の種類等を適宜変更することで、用途に応じた所望の特性を、より効率よく発揮させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、本発明においては、エラストマー成分は、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を少なくとも含有していればよいが、組成物中に共有結合性架橋部位を存在せしめて、より効率よく共有結合性架橋部位の特性を利用するといった観点から、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを混合して用いてもよい。例えば、エラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)を用いる場合に、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを組み合わせて用いた場合には、組成物中に含まれる側鎖に由来して、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位を含有するエラストマー性ポリマー(B)を利用した熱可塑性エラストマー組成物と、ほぼ同様の特性を付与することも可能となる。また、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合や、エラストマー性ポリマー(A)及びエラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマーを含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、各成分(例えばエラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の各成分)の比率を適宜変更することで、所望の特性を適宜発揮させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の含有比率は質量比([ポリマー(A)]:[ポリマー(B)])で1:9〜9:1とすることが好ましく、2:8〜8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物がエラストマー成分として、エラストマー性ポリマー(A)と、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマー(以下、場合により「エラストマー性ポリマー(C)」と称する。)とを含有する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(C)の含有比率は質量比([エラストマー性ポリマー(A)]:[エラストマー性ポリマー(C)])で1:9〜9:1とすることが好ましく、2:8〜8:2とすることがより好ましい。このようなポリマー(A)の含有比率が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中に側鎖(a’)と側鎖(b)の双方が存在する場合には、その側鎖(a’)の全量と側鎖(b)の全量とが、質量比を基準として、1:9〜9:1となっていることが好ましく、2:8〜8:2となっていることがより好ましい。このような側鎖(a’)の全量が前記下限未満では流動性(成形性)、機械的強度が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると圧縮永久歪に対する耐性が低下する傾向にある。なお、このような側鎖(a’)は、側鎖(a)を含む概念である。そのため、側鎖(a’)として側鎖(a)のみが含まれるような場合においても、上記質量比で、組成物中に側鎖(a)と側鎖(b)の双方が存在することが好ましい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損わない範囲で、前記エラストマー成分以外のポリマー成分(以下、単に「他のポリマー」と称する。)、パラフィンオイル、補強剤(充填剤)、水素結合性の補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、前記パラフィンオイル以外の可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、熱膨張性マイクロカプセル、既膨張のマイクロカプセル、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等を含有することができる。このような添加剤等は、特に制限されず、一般に用いられるもの(公知のもの)を適宜使用することができる。例えば、前記他のポリマー、パラフィンオイル、補強剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤等としては、以下に記載のようなものを適宜利用することができる。
前記他のポリマーとしては、エラストマー性ポリマー(B)以外の側鎖(b)を有する他のエラストマー性ポリマー;化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂;化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体;を好適に利用することができる。なお、ここにいう「化学結合性の架橋部位」とは、水素結合、共有結合等といった化学結合により架橋が形成されている部位をいう。そのため、本発明にいう「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、化学結合(例えば水素結合、共有結合等)により形成される架橋を有さない状態であることをいう。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、化学結合による架橋点を形成するような、官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、アミノ基)を含まず、更に、高分子鎖同士を直接架橋する結合部位(共有結合による架橋部位等)を含まないものが好適に用いられる。また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂は、少なくとも、上述のような側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)等を有していないポリマーとなる。
また、ここにいう「α−オレフィン系樹脂」とは、α−オレフィンの単独重合体、α−オレフィンの共重合体をいう。ここにいう「α−オレフィン」とは、α位に炭素−炭素二重結合を有するアルケン(末端に炭素−炭素二重結合を有するアルケン:なお、かかるアルケンは直鎖状のものであっても分岐鎖状のものであってもよく、炭素数が2〜20(より好ましくは2〜10)であることが好ましい。)をいい、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が挙げられる。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの重合体(ポリα−オレフィン:単独重合体であっても共重合体であってもよい。)であればよく、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等が挙げられる。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の中でも、母体となるエラストマーに対する相溶性の観点からは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体が好ましい。なお、このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、結晶化度が10%以上のものが好ましく、10〜80%のものがより好ましく、10〜75%のものが更に好ましい。このような結晶化度が前記下限未満では樹脂的な性質が希薄になるため、機械特性、流動性をより高度なものとすることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると樹脂的な性質が強くなるため、機械特性をより高い水準でバランスよく発揮させることが困難となる傾向にある。なお、このような結晶化度は、測定装置としてX線回折装置(例えば、リガク社製の商品名「MiniFlex300」を用い、回折ピークを測定し、結晶性/非晶性由来の散乱ピークの積分比を計算することにより求めることができる。
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂としては、JIS K6922−2(2010年発行)に準拠して測定される、190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が40g/10分以上であることが好ましい。このようなメルトフローレート(MFR)が前記下限未満では組成物中に配合しても流動性を向上させることが困難となる傾向にある。なお、このようなメルトフローレート(MFR)は、JIS K6922−2(2010年発行)に記載のB法に準拠して測定される値であり、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G−01」を用いて、該装置の炉体内に前記α−オレフィン系樹脂を3g添加した後、温度を190℃にして5分間保持した後、190℃に維持しつつ2.16kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部から、10分の間に流出する組成物の質量(g)を測定(前記炉体内において温度を190℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めることができる。
さらに、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上150万以下であることがより好ましく、5万以上125万以下であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下してしまい、相分離しやすくなる傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、1万以上200万以下であることが好ましく、3万以上150万以下であることがより好ましく、5万以上125万以下であることが更に好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では機械強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下してしまい、相分離しやすくなる傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の分子量分布の分散度(Mw/Mn)は5以下であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。このような分子量分布の分散度(Mw/Mn)の値が前記下限未満では流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分に対する相溶性が低下する傾向にある。
なお、上述のようなα−オレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mw)や前記数平均分子量(Mn)および分子量分布の分散度(Mw/Mn)は、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。また、このような分子量等の測定の具体的な装置や条件としては、島津製作所製「Prominence GPCシステム」を利用できる。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂のガラス転移点は、−150〜5℃であることが好ましく、−125〜0℃であることがより好ましい。このようなガラス転移点が前記下限未満では融点が低くなるため耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー成分への配合後のゴム弾性が低下しやすい傾向にある。なお、ここにいう「ガラス転移点」は、前述のように、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。このようなDSC測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなα−オレフィン系樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えば、三井化学社製の商品名「タフマー」;日本ポリエチレン社製の商品名「ノバテックHD」「ノバテックLD」「ノバテックLL」「カーネル」;プライムポリマー社製の商品名「ハイネックス」「ネオゼックス」「ウルトゼックス」「エボリュー」「プライムポリプロ」「ポリファイン」「モストロンーL」;サンアロマー社製のPP等を適宜用いてもよい。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂を更に含有する場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量(含有比率)が、前記エラストマー成分100質量部に対して250質量部以下であることが好ましく、5〜250質量部であることがより好ましく、10〜225質量部であることが更に好ましく、25〜200質量部であることが特に好ましく、35〜175質量部であることが最も好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では、流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂を更に含有する場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量は、前記組成物の総量に対して1〜50質量%であることが好ましく、3〜45質量%であることがより好ましく、5〜40質量%であることが更に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂の含有量が前記下限未満では、流動性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にある。
また、前記他のポリマーとしては、母体となるエラストマーの架橋反応に干渉しない成分であるとの観点からは、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体が好ましい。なお、このようなスチレンブロック共重合体を用いた場合、基本的に、母体となるエラストマー性ポリマー(前記エラストマー成分)の架橋構造や製造時の架橋反応に干渉しないため、架橋した母体となるエラストマー構造固有の物性が阻害されないことから、前記エラストマー成分に由来する特性を十分に維持しつつ、スチレンブロック共重合体に由来する優れた機械特性(特に引張特性、圧縮永久歪等)を、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に反映させること(付与すること)ができ、より高度な特性を有するものとすることが可能であるものと本発明者らは推察する。
このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物に好適に用いられる成分である前記スチレンブロック共重合体は、化学結合性の架橋部位を有さないものである。ここにいう「化学結合性の架橋部位を有さない」とは、前述の通りである。従って、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、化学結合による架橋点を形成するような、官能基(例えば、水酸基、カルボニル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、アミノ基)を含まず、更に、高分子鎖同士を直接架橋する結合部位(共有結合による架橋部位等)を含まないものが好適に用いられる。また、このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体は、少なくとも、上述のような側鎖(a)、側鎖(a’)、側鎖(b)、側鎖(c)等を有していないポリマーとなる。
また、ここにいう「スチレンブロック共重合体」とは、いずれかの部位にスチレンブロック構造を有するポリマーであればよい。なお、一般に、スチレンブロック共重合体は、スチレンブロック構造を有し、常温では、そのスチレンブロック構造の部位が凝集して物理的架橋点(物理的な疑似架橋点)が形成され、加熱した場合にはかかる物理的な疑似架橋点が崩壊することに基づいて、熱可塑性を有しかつ常温でゴムのような特性(弾性等)を有するものとして利用可能なものである。
また、このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体(以下、場合により単に「化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体」と称する。)としてはゴム弾性と熱可塑性の両立の観点から、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン‐エチレン‐プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン‐エチレン‐エチレン‐プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、これらの水素添加物(いわゆる水添物)が好ましく、SEBS、SEEPSがより好ましい。このようなスチレンブロック共重合体は1種を単独で用いてもよく、あるいは、2種以上を組み合わせて利用してもよい。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体としては、スチレン含有量が20〜40質量%(より好ましくは25〜37質量%)のスチレンブロック共重合体であることが好ましい。このようなスチレン含有量が前記下限未満ではスチレンブロック成分の減少により熱可塑性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとオレフィン成分の減少によりゴム弾性が低下する傾向にある。なお、このようなスチレンブロック共重合体中のスチレン含有量は、JIS K6239(2007年発行)に記載のIR法に準拠した方法により測定できる。
さらに、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上70万以下であることが好ましく、30万以上60万以下であることがより好ましく、35万以上55万以下であることが更に好ましい。このような重量平均分子量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー性ポリマーとの相溶性が低下する傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、10万以上60万以下であることが好ましく、15万以上55万以下であることがより好ましく、20万以上50万以下であることが更に好ましい。このような数平均分子量が前記下限未満では耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとエラストマー性ポリマー(前記エラストマー成分)との相溶性が低下する傾向にある。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の分子量分布の分散度(Mw/Mn)は5以下であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。なお、このような重量平均分子量(Mw)や前記数平均分子量(Mn)および分子量分布の分散度(Mw/Mn)は、いわゆるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めることができる。また、このような分子量等の測定の具体的な装置や条件としては、島津製作所製の「Prominence GPCシステム」を利用できる。
また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体のガラス転移点は、−80〜−40℃であることが好ましく、−70〜−50であることがより好ましい。このようなガラス転移点が前記下限未満では融点が低くなるため耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとゴム弾性が低下する傾向にある。なお、ここにいう「ガラス転移点」は、前述のように、示差走査熱量測定(DSC−Differential Scanning Calorimetry)により測定したガラス転移点である。このようなDSC測定に際しては、昇温速度は10℃/minにするのが好ましい。
前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、このようなスチレンブロック共重合体としては、市販品を用いてもよく、例えば、クレイトン社製の商品名「G1633」「G1640」「G1641」「G1642」「G1643」「G1645」「G1650」「G1651」「G1652」「G1654」「G1657」「G1660」;クラレ社製の商品名「S4055」「S4077」「S4099」「S8006」「S4044」「S8006」「S4033」「S8004」「S8007」「S8076」;旭化成社製の商品名「タフテックH1041」「タフテックN504」「タフテックH1272」「タフテックM1911」「タフテックM1913」「タフテックMP10」;アロン化成社製の商品名「AR−710」「AR−720」「AR−731」「AR−741」「AR−750」「AR−760」「AR−770」「AR−781」「AR−791」;等を適宜用いてもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量(含有比率)は、前記エラストマー成分100質量部に対して10〜400質量部以下であることが好ましく、15〜350質量部であることがより好ましく、20〜300質量部であることが更に好ましく、30〜250質量部であることが特に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満では、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋したエラストマーによる母体構造の特性(前記エラストマー成分に由来する特性)が希薄になる傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して5〜60質量%であることが好ましく、7〜45質量%であることがより好ましく、10〜30質量%であることが更に好ましい。このような化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体の含有量が前記下限未満では、前記スチレンブロック共重合体の含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋したエラストマーによる母体構造の特性(前記エラストマー成分に由来する特性)が希薄になる傾向にある。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物においては、前述の他のポリマーとして、例えば、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体以外にも、他の種類のポリマーを適宜利用することも可能である。このような他の種類のポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイソブチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ステアリル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸プロピル、フッ素ゴム、シリコーンゴム(MQ)、酸化ポリプロピレン、ポリジメチルシロキサン、ブチルゴム(IIR)、ポリ塩化ビニル、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン(IR:イソプレンゴム)、ポリブタジエン(BR:ブタジエンゴム)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリスチレン、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーアクリル酸ブチル共重合体が挙げられる。
また、前記パラフィンオイルは、組成物の諸物性を低下させることなく、流動性をより向上させることが可能となるといった観点から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に更に含有させる添加成分(他の成分:添加剤)として好適に用いることができる。なお、このようなパラフィンオイルと、前述のスチレン系ブロックポリマーとを併用した場合、オイル成分をブロックポリマー内に吸収させることが可能となり、オイル添加による加工性改善(流動性の向上)とスチレン系ブロックポリマー添加による機械特性向上とを十分に高度な水準で両立することが可能となるため、機械的特性や耐熱性をより十分に維持しつつ、押し出し加工性や射出成型性などの生産加工性をより高度なものとすることができる。また、パラフィンオイルを用いた場合には、例えば、加熱してオリフィス(例えば直径1mmの開口部を有するようなもの等)から押し出した場合に、オリフィスの開口部から押し出された紐状の熱可塑性エラストマー組成物の形状(ストランド形状)が十分に均一の太さを有するものとなり、その表面に毛羽立ちが見られない状態となるような、優れた押し出し加工性が得られる傾向にある。このようなパラフィンオイルとしては特に制限されず、公知のパラフィンオイルを適宜利用することができる。
また、このようなパラフィンオイルとしては、そのオイルに対して、ASTM D3238−85に準拠した相関環分析(n−d−M環分析)を行って、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(パラフィン部:C)、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率(ナフテン部:C)、及び、芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率(芳香族部:C)をそれぞれ求めた場合において、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率(C)が60%以上であることが好ましい。
また、このようなパラフィンオイルとしては、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される、40℃における動粘度が50mm/s〜700mm/sのものが好ましく、150〜600mm/sのものがより好ましく、300〜500mm/sのものが更に好ましい。このような動粘度(ν)が前記下限未満ではオイルのブリードが起こりやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると充分な流動性を付与できなくなる傾向にある。なお、このようなパラフィンオイルの動粘度は、40℃の温度条件下において、JIS K 2283(2000年発行)に準拠して測定される値を採用するが、例えば、JIS K 2283(2000年発行)に準拠したキャノン・フェンスケ式粘度計(例えば柴田科学社製の商品名「SOシリーズ」)を利用して、40℃の温度条件で自動測定した値を採用してもよい。
さらに、このようなパラフィンオイルは、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定されるアニリン点が80℃〜145℃であることが好ましく、100〜145℃であることがより好ましく、105〜145℃であることが更に好ましい。なお、このようなパラフィンオイルのアニリン点は、JIS K2256(2013年発行)に準拠したU字管法により測定される値を採用するが、例えば、JIS K2256(2013年発行)に準拠したアニリン点測定装置(例えば田中科学機器社製の商品名「aap−6」)を利用して測定した値を採用してもよい。
また、このようなパラフィンオイルとしては、適宜市販のものを利用することができ、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P200」、「スーパーオイルMシリーズ P400」、「スーパーオイルMシリーズ P500S」;出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、「ダイアナプロセスオイルPW150」、「ダイアナプロセスオイルPW380」;日本サン石油社製の商品名「SUNPARシリーズ(110、115、120、130、150、2100、2280など)」;モービル社製の商品名「ガーゴイルアークティックシリーズ(1010、1022、1032、1046、1068、1100など)」;等を適宜利用してもよい。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記パラフィンオイルを更に含有させる場合、前記パラフィンオイルの含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して10〜600質量部であることが好ましく、50〜550質量部であることがより好ましく、75〜500質量部であることが更に好ましく、100〜400質量部であることが特に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、パラフィンオイルを添加することにより得られる効果(特に流動性及び加工性を向上せしめる効果)が必ずしも十分なものではなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において前記パラフィンオイルを更に含有させる場合、前記パラフィンオイルの含有量は、熱可塑性エラストマー組成物の総量に対して20〜60質量%であることが好ましく、25〜55質量%であることがより好ましく、35〜55質量%であることが更に好ましい。このようなパラフィンオイルの含有量が前記下限未満では、パラフィンオイルの含有量が少なすぎて、特に流動性及び加工性の点で十分な効果が得られなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、パラフィンオイルのブリードが誘発されやすくなる傾向にある。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、流動性、機械特性改善の観点から、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を組み合わせて含有しているものが好ましい。すなわち、本発明の熱可塑性エラストマー組成物としては、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル、並びに、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を含有しているものがより好ましい。このように、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種、前記α−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル及び前記スチレンブロック共重合体を含有する場合においては、十分に高度な抗菌性及び/又は防黴性の他、破断強度や耐圧縮永久歪性等といった特性をより高度な水準でバランスよく発揮できる傾向にある。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に更に含有させることが可能な前記補強剤(充填剤)としては、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等を上げることができる。このようなシリカとしては湿式シリカが好適に用いられる。
また、前記老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系、脂肪族および芳香族のヒンダードアミン系等の化合物を適宜利用することができる。また、前記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等を適宜利用することができる。また、前記顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を適宜利用することができ、また、前記可塑剤としては、例えば、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバチン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クエン酸等の誘導体をはじめ、ポリエステル、ポリエーテル、エポキシ系等を適宜利用することができる。また、前記可塑剤(軟化剤)としては、流動性をより向上させるといった観点から、熱可塑性エラストマーに用いることが可能なものを適宜利用でき、例えば、オイル類を用いることもできる。なお、このような添加剤等としては、特開2006−131663号公報に例示されているようなものを適宜利用してもよい。
なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、前記エラストマー成分、前記有機化クレイ、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種、前記化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、前記パラフィンオイル、並びに、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体以外の他の成分(例えば、前記添加剤等)を含有する場合において、前記他の成分の含有量は特に制限されるものではないが、ポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、それぞれ、前記エラストマー成分100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、20〜300質量部であることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、基質のエラストマーの効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
前述の他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は、それぞれ、前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基質のエラストマーの反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、加熱(例えば100〜250℃に加熱)することにより、水素結合性架橋部位において形成されていた水素結合や、他の架橋構造(スチレンブロック共重合体を含む場合にはその物理架橋等)が解離する等して軟化し、流動性を付与することができる。これは、主に、加熱により分子間または分子内で形成されている側鎖同士の相互作用(主に水素結合による相互作用)が弱まるためであると考えられる。なお、本発明においては、側鎖に、少なくとも水素結合性架橋部位を含むエラストマー成分が含有されていること等から、加熱により流動性が付与された後、放置した場合に、解離した水素結合が再び結合して硬化するため、その組成によっては、熱可塑性エラストマー組成物に、より効率よくリサイクル性を発現させることも可能となる。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、JIS K6922−2(2010年発行)に準拠して測定される230℃、10kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が2g/10分以上であることが好ましく、4g/10分以上であることがより好ましく、8g/10分以上であることが更に好ましい。このようなメルトフローレート(MFR)が前記下限未満では必ずしも充分な加工性を発現できない場合も生じ得る傾向にある。なお、このようなメルトフローレート(MFR)は、JIS K6922−2(2010年発行)に記載のB法に準拠して測定される値であり、メルトフローレート測定装置として東洋精機製作所製の商品名「Melt Indexer G−01」を用いて、該装置の炉体内に熱可塑性エラストマー組成物を3g添加した後、温度を230℃にして5分間保持した後、230℃に維持しつつ10kgに荷重する条件で、前記炉体の下部に接続されている直径1mm、長さ8mmの筒状のオリフィス部材の開口部から、10分の間に流出するエラストマーの質量(g)を測定(前記炉体内において温度を230℃にして5分間保持した後に荷重を開始してから、流出するエラストマーの質量の測定を開始する。)することにより求めることができる。
さらに、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、5%重量減少温度が320℃以上であることが好ましく、325℃以上であることがより好ましい。このような5%重量減少温度が前記下限未満では耐熱性に劣る傾向にある。なお、このような5%重量減少温度は、測定試料として10mgの熱可塑性エラストマー組成物を準備し、測定装置として熱重量測定装置(TGA)を用い、昇温速度10℃/minで加熱して、初期の重量(10mg)から5%重量が減少した際の温度を測定することにより求めることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、ゴム弾性を活用して種々のゴム用途に使用することができる。またホットメルト接着剤として、またはこれに含ませる添加剤として使用すると、耐熱性およびリサイクル性を向上させることができるので好ましい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー等の用途に好適に用いられる。
上記自動車用ゴム部品としては、具体的には、例えば、タイヤのトレッド、カーカス、サイドウォール、インナーライナー、アンダートレッド、ベルト部などのタイヤ各部;外装のラジエータグリル、サイドモール、ガーニッシュ(ピラー、リア、カウルトップ)、エアロパーツ(エアダム、スポイラー)、ホイールカバー、ウェザーストリップ、カウベルトグリル、エアアウトレット・ルーバー、エアスクープ、フードバルジ、換気口部品、防触対策部品(オーバーフェンダー、サイドシールパネル、モール(ウインドー、フード、ドアベルト))、マーク類;ドア、ライト、ワイパーのウェザーストリップ、グラスラン、グラスランチャンネルなどの内装窓枠用部品;エアダクトホース、ラジエターホース、ブレーキホース;クランクシャフトシール、バルブステムシール、ヘッドカバーガスケット、A/Tオイルクーラーホース、ミッションオイルシール、P/Sホース、P/Sオイルシールなどの潤滑油系部品;燃料ホース、エミッションコントロールホース、インレットフィラーホース、ダイヤフラム類などの燃料系部品;エンジンマウント、インタンクポンプマウントなどの防振用部品;CVJブーツ、ラック&ピニオンブーツ等のブーツ類;A/Cホース、A/Cシール等のエアコンデショニング用部品;タイミングベルト、補機用ベルトなどのベルト部品;ウィンドシールドシーラー、ビニルプラスチゾルシーラー、嫌気性シーラー、ボディシーラー、スポットウェルドシーラーなどのシーラー類;等が挙げられる。
またゴムの改質剤として、例えば、流れ防止剤として、室温でコールドフローを起こす樹脂あるいはゴムに含ませると、押出し時の流れやコールドフローを防止することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、より高度な耐熱性を有するものとすることが可能であるとともに、破断強度を基準とした引張特性をより高度なものとすることができる。なお、このような熱可塑性エラストマー組成物においては、組成を適宜変更することで、用途に応じて必要となる特性(例えば、自己修復性等の特性)も適宜発揮させることが可能である。このように、組成を適宜変更することで熱可塑性エラストマー組成物の用途に応じて、必要となる特性をバランスよく適宜発揮させることが可能であるため、上述のような各種用途に用いる場合には、その用途に応じて必要となる特性を考慮して、組成物中の成分の種類(組成)を適宜変更して利用することが好ましい。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物について説明したが、以下において、そのような本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法としても好適に利用することが可能な本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法について説明する。
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、有機化クレイとを混合して混合物を得る第一工程と、
前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を添加し、前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、エラストマー成分を形成して、エラストマー成分と有機化クレイとを含む熱可塑性エラストマー組成物前駆体を得る第二工程と、
前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体に、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加して、熱可塑性エラストマー組成物を得る第三工程と、
を含むこと、
前記第三工程において得られる前記熱可塑性エラストマー組成物が、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含有してなる組成物であること、及び、
前記第一工程において、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記有機化クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となるような割合で前記有機化クレイを用いて、前記エラストマー性ポリマーと、前記有機化クレイとを混合すること、
を特徴とする方法である。以下、第一工程〜第三工程を分けて説明する。
(第一工程)
第一工程は、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、前記有機化クレイとを混合して混合物を得る工程である。
ここで、「環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー」とは、ポリマーの主鎖を形成する原子に環状酸無水物基が化学的に安定な結合(共有結合)をしているエラストマー性ポリマーのことをいい、例えば、前記エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーと、環状酸無水物基を導入し得る化合物とを反応させることにより得られるものを好適に利用することができる。
なお、このような主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、一般的に公知の天然高分子または合成高分子であって、そのガラス転移点が室温(25℃)以下のポリマーからなるものであればよく(いわゆるエラストマーからなるものであればよく)、特に限定されるものではない。
このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などのジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物;エチレン−プロピレンゴム(EPM)、エチレン−アクリルゴム(AEM)、エチレン−ブテンゴム(EBM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ポリエチレンゴム、ポリプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム;エピクロロヒドリンゴム;多硫化ゴム;シリコーンゴム;ウレタンゴム;等が挙げられる。
また、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、樹脂成分を含むエラストマー性のポリマーであってもよく、例えば、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー(例えば、SBS、SIS、SEBS等)、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、ポリアミド系エラストマー性ポリマー等が挙げられる。
さらに、このようなエラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーとしては、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種からなることが好ましい。また、このようなポリマーとしては、環状酸無水物基として好適な無水マレイン酸基の導入のし易さといった観点からは、ジエン系ゴムが好ましく、耐老化性の観点からは、オレフィン系ゴムが好ましい。
また、前記環状酸無水物基を導入し得る化合物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸およびこれらの誘導体等の環状酸無水物が挙げられる。
また、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの前記環状酸無水物基としては、無水コハク酸基、無水マレイン酸基、無水グルタル酸基、無水フタル酸基が好ましく、中でも、原料の反応性が高く、しかも工業的に原料の入手が容易であるといった観点からは、無水マレイン酸基がより好ましい。
さらに、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーは、通常行われる方法、例えば、エラストマー性ポリマー(A)〜(B)の主鎖部分を形成することが可能なポリマーに、通常行われる条件、例えば、加熱下での撹拌等により環状酸無水物をグラフト重合させる方法で製造してもよい。また、第一工程に用いられる環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、市販品を用いてもよい。
このような環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの市販品としては、例えば、LIR−403(クラレ社製)、LIR−410A(クラレ社試作品)などの無水マレイン酸変性イソプレンゴム;LIR−410(クラレ社製)などの変性イソプレンゴム;クライナック110、221、231(ポリサー社製)などのカルボキシ変性ニトリルゴム;CPIB(日石化学社製)、HRPIB(日石化学社ラボ試作品)などのカルボキシ変性ポリブテン;ニュクレル(三井デュポンポリケミカル社製)、ユカロン(三菱化学社製)、タフマーM(例えば、MP0610(三井化学社製)、MP0620(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム;タフマーM(例えば、MA8510、MH7010、MH7020(三井化学社製)、MH5010、MH5020(三井化学社製)、MH5040(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴム;アドテックスシリーズ(無水マレイン酸変性EVA、無水マレイン酸変性EMA(日本ポリオレフィン社製))、HPRシリーズ(無水マレイン酸変性EEA、無水マレイン酸変性EVA(三井・ジュポンポリオレフィン社製))、ボンドファストシリーズ(無水マレイン酸変性EMA(住友化学社製))、デュミランシリーズ(無水マレイン酸変性EVOH(武田薬品工業社製))、ボンダイン(エチレン・アクリル酸エステル・無水マレイン酸三元共重合体(アトフィナ社製))、タフテック(無水マレイン酸変性SEBS、M1943(旭化成社製))、クレイトン(無水マレイン酸変性SEBS、FG1901,FG1924(クレイトンポリマー社製))、タフプレン(無水マレイン酸変性SBS、912(旭化成社製))、セプトン(無水マレイン酸変性SEPS(クラレ社製))、レクスパール(無水マレイン酸変性EVA、ET−182G、224M、234M(日本ポリオレフィン社製))、アウローレン(無水マレイン酸変性EVA、200S、250S(日本製紙ケミカル社製))などの無水マレイン酸変性ポリエチレン;アドマー(例えば、QB550、LF128(三井化学社製))などの無水マレイン酸変性ポリプロピレン;等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーとしては、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーが好ましく、中でも、高分子量で高強度であるといった観点から、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレンゴム、無水マレイン酸変性エチレン−ブテンゴムがより好ましい。
さらに、第一工程に用いられる前記有機化クレイは、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した有機化クレイと同様のものである(その好適なものも同様である)。
また、第一工程においては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、前記有機化クレイとを混合して混合物を得る。また、前記混合物を得るために有機化クレイを添加する際には、有機化クレイが十分に分散するように、予め環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを可塑化した後に、有機化クレイを添加することが好ましい。
このように、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーを可塑化する方法としては特に制限されず、例えば、これらを可塑化することが可能となるような温度(例えば100〜250℃程度)でロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等を用いて素練りする方法等を適宜採用できる。このような環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの可塑化を行う際の温度等の条件は特に制限されず、含有している成分の種類(例えば環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの種類)等に応じて適宜設定すればよい。
また、このような混合物の調製工程においては、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中の有機化クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下(より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部)となるような割合で前記有機化クレイを用いて、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと前記有機化クレイとを混合することが好ましい。このような有機化クレイの含有量が前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、有機化クレイの量が少なすぎて、有機化クレイを用いることにより得られる効果が低下してしまう傾向にある。
また、このような混合物中の有機化クレイの含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましく、1〜3質量部であることが更に好ましい。このような含有量が前記下限未満では、有機化クレイの量が少なすぎて、有機化クレイを用いることにより得られる効果が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると、架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にある。なお、このような含有量で有機化クレイを用いることで、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中の有機化クレイの含有量が前記範囲内の値となる。
更に、このような混合物の形成の際に用いる有機化クレイの量としては、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー中の環状酸無水物基1mmolに対して、有機化クレイが0.01g〜2.0g(より好ましくは0.02〜1.0g)となるような割合で含有することが好ましい。このような酸無水物基に対する有機化クレイの割合が前記下限未満では少なすぎて効果が低下してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると架橋が強すぎて、却って伸びや強度が低下する傾向にある。なお、このような割合の範囲内で有機化クレイを含有させることで、混合物中に含有せしめた有機化クレイが効率よく分解されて、単層のクレイを効率よく製造することができ、クレイの分散性をより高度のものとすることができる傾向にある。
また、このような混合物を得るための混合の方法は特に制限されず、公知の方法等を適宜採用することができ、例えば、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機等により混合する方法を採用することができる。
なお、このような混合物には、更に、流動性、機械強度の増加の観点から、化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、パラフィンオイル、化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体等を更に含有させてもよい。このような化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、パラフィンオイル及び化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体は、それぞれ、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂、パラフィンオイル及び化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体と同様のものである(それぞれ、その好適なものも同様である)。
また、このように、化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂及び/又はパラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を更に含有させる場合において、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、有機化クレイと、化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂及び/又はパラフィンオイル及び/又は化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体等の添加成分と、の添加順序は特に制限されるものではないが、有機化クレイの分散性をより向上させるといった観点から、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、前記添加成分(前記α−オレフィン系樹脂及び/又は前記パラフィンオイル及び/又は前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体)と、を含む混合物の前駆体を調製した後、該前駆体中に有機化クレイを添加することが好ましい。
また、前記α−オレフィン系樹脂(化学結合性の架橋部位を有さないα−オレフィン系樹脂)を前記混合物中に含有させる場合、前記α−オレフィン系樹脂の含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して250質量部以下(より好ましくは5〜250質量部、更に好ましくは10〜225質量部、特に好ましくは25〜200質量部、最も好ましくは35〜175質量部)であることが好ましい。このようなα−オレフィン系樹脂の含有量が前記上限を超えると機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、流動性が低下する傾向にある。なお、このような混合物中の前記α−オレフィン系樹脂の含有量としては、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー100質量部に対して250質量部以下(より好ましくは5〜250質量部、更に好ましくは10〜225質量部、特に好ましくは25〜200質量部、最も好ましくは35〜175質量部)とすることが好ましい。このような含有量が前記下限未満では、機械特性(破断強度、圧縮永久歪)が低下する傾向にあり、他方、前記下限未満では、流動性が低下する傾向にある。
また、前記パラフィンオイルを前記混合物中に含有させる場合、パラフィンオイル含有量は、前記エラストマー成分100質量部に対して600質量部以下であることが好ましく、10〜600質量部であることがより好ましく、50〜550質量部であることが更に好ましく、75〜500質量部であることが特に好ましく、100〜400質量部であることが最も好ましい。また、前記化学結合性の架橋部位を有さないスチレンブロック共重合体を前記混合物中に含有させる場合、前記エラストマー成分100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、10〜400質量部であることがより好ましく、15〜350質量部であることが更に好ましく、20〜300質量部であることが特に好ましく、30〜250質量部であることが最も好ましい。
また、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物の用途等に応じ、前記混合物に対して、本発明の目的を損わない範囲で、前記エラストマー成分、前記α−オレフィン系樹脂および前記スチレンブロック共重合体以外のポリマー、補強剤(充填剤)、アミノ基を導入してなる充填剤(以下、単に「アミノ基導入充填剤」という。)、該アミノ基導入充填剤以外のアミノ基含有化合物、金属元素を含む化合物(以下、単に「金属塩」という。)、無水マレイン酸変性ポリマー、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、防錆剤、接着付与剤、帯電防止剤、フィラーなどの各種添加剤等の他の成分を更に含有することができる。このように、前記混合物に対して他の成分を含有せしめることにより、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中に、かかる成分を適宜含有せしめることが可能となる。なお、このような添加剤等は、特に制限されず、一般に用いられるものを適宜使用することができる。また、このような添加剤等としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したものを適宜利用できる。
また、このような他の成分の含有量は、前記他の成分がポリマー類、補強材(充填剤)の場合は、前記エラストマー成分100質量部に対して500質量部以下とすることが好ましく、20〜400質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、利用する成分の種類にもよるが、基質のエラストマーの効果が薄まって、物性が低下してしまう傾向にある。
また、他の成分が、その他の添加剤の場合(ポリマー類、補強材(充填剤)以外のものである場合)は、前記他の成分の含有量は前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましく、0.1〜10質量部とすることがより好ましい。このような他の成分の含有量が前記下限未満では他の成分を利用することによる効果が十分に発現しなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、基質のエラストマーの反応に悪影響を及ぼし、却って物性が低下してしまう傾向にある。
(第二工程)
第二工程は、前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を添加し、前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、エラストマー成分を形成して、エラストマー成分と有機化クレイとを含む熱可塑性エラストマー組成物前駆体を得る工程である。
前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した水素結合性架橋部位を形成する化合物(含窒素複素環を導入し得る化合物)と同様のものを好適に利用することができ、例えば、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した含窒素複素環そのものであってもよく、あるいは、前記含窒素複素環に無水マレイン酸等の環状酸無水物基と反応する置換基(例えば、水酸基、チオール基、アミノ基等)が結合した化合物(前記置換基を有する含窒素複素環)であってもよい。なお、このような化合物(I)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、水素結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
また、このような化合物(I)としては、特に制限されず、目的とするポリマー中の側鎖の種類(側鎖(a)又は側鎖(a’))に応じて、上述のような化合物(I)の中から好適な化合物を適宜選択して用いることができる。このような化合物(I)としては、より高い反応性が得られるといった観点からは、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよい、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントインであることが好ましく、前記置換基を有している、トリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾール、イソシアヌレート、トリアジンおよびヒダントインであることがより好ましく、前記置換基を有しているトリアゾール、イソシアヌレート、トリアジンであることが更に好ましく、前記置換基を有しているトリアゾールが特に好ましい。なお、このような置換基を有していてもよいトリアゾール、ピリジン、チアジアゾール、イミダゾールおよびヒダントインとしては、例えば、4H−3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、アミノピリジン、アミノイミダゾール、アミノトリアジン、アミノイソシアヌレート、ヒドロキシピリジン、ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
また、前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)としては、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明した「共有結合性架橋部位を形成する化合物(共有結合を生成する化合物)」と同様のものを好適に利用することができる(その化合物として好適なものも同様である。)。また、このような化合物(II)としては、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用してもよい(なお、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を有する側鎖は、共有結合性架橋部位を有する側鎖の好適な一形態といえる。)。
このような化合物(II)としては、耐圧縮永久歪性の観点から、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、ポリエーテルポリオールが好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミドがより好ましく、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが更に好ましい。
また、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、水素結合性架橋部位を導入する観点から、水酸基、チオール基、アミノ基及びイミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有する化合物を利用することが好ましい。さらに、前記化合物(I)及び/又は(II)としては、より効率よく組成物中に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を導入することが可能となることから、前記環状酸無水物基と反応して、水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物(水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を同時に導入することが可能な化合物)を利用することが好ましい。このような水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位の双方を形成する化合物としては、前記複素環含有ポリオール、前記複素環含有ポリアミン、前記複素環含有ポリチオールを好適に利用することができ、中でも、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが特に好ましい。
また、化合物(I)及び化合物(II)の添加量(これらの総量:一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)は、特に制限されないが、該化合物中にアミン、アルコール等の活性水素が含まれる場合においては、環状酸無水物基100モル%に対して、該化合物中のアミン、アルコール等の活性水素が20〜250モル%となる量であることが好ましく、50〜150モル%となる量であることがより好ましく、80〜120モル%となる量であることが更に好ましい。このような添加量が前記下限未満では、導入される側鎖の量が少なくなって、架橋密度を十分に高度なものとすることが困難となり、引張強度等の物性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、用いる化合物の量が多すぎて、ブランチが多くなり、却って架橋密度が下がってしまう傾向にある。
また、化合物(I)及び化合物(II)の添加量は、これらの総量が(一方の化合物のみを利用する場合には、その一方の化合物の量となる。)、前記混合物中の前記ポリマー(環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマー)100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.3〜7質量部であることがより好ましく、0.5〜5.0質量部であることが更に好ましい。このような化合物(I)及び化合物(II)の添加量(質量部に基づく量)が前記下限未満では少なすぎて架橋密度が上がらず所望の物性が発現しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると多すぎてブランチが多くなり架橋密度が下がってしまう傾向にある。
化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)及び化合物(II)を添加する順序は特に制限されず、どちらを先に加えても良い。また、化合物(I)及び化合物(II)の双方を利用する場合において、化合物(I)を、環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーの、環状酸無水物基の一部と反応させてもよい。これにより、未反応の環状酸無水物基(反応させていない環状酸無水物基)に、化合物(II)を反応させて共有結合性架橋部位を形成させることも可能となる。ここにいう一部とは、環状酸無水物基100モル%に対して1モル%以上50モル%以下であることが好ましい。この範囲であれば、得られるエラストマー性ポリマー(B)において、化合物(I)に由来した基(例えば含窒素複素環等)を導入した効果が十分に発現され、リサイクル性がより向上する傾向にある。なお、化合物(II)は、共有結合による架橋が適当な個数(例えば、1分子中に1〜3個)となるように前記環状酸無水物基と反応させることが好ましい。
前記ポリマーと前記原料化合物(化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応させると、前記ポリマーが有する環状酸無水物基が開環されて、環状酸無水物基と前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とが化学結合される。このような前記ポリマーと前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応(環状酸無水物基を開環)させる際の温度条件は特に制限されず、前記化合物と環状酸無水物基との種類に応じて、これらが反応可能な温度に調整すればよいが、軟化させて反応を瞬時に進める観点からは、100〜250℃とすることが好ましく、120〜230℃とすることがより好ましい。
このようなポリマーと前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))との反応により、前記化合物(I)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも水素結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖に水素結合性架橋部位(カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する部位、より好ましくはカルボニル含有基および含窒素複素環を有する部位)を含有させることが可能となる。このような反応により、形成(導入)される側鎖を、上記式(2)または(3)で表される構造を含有するものとすることができる。
また、このような反応により、前記化合物(II)と環状酸無水物基とが反応した箇所においては、少なくとも、共有結合性架橋部位が形成されるため、前記ポリマーの側鎖を共有結合性架橋部を含有するもの(側鎖(b)又は側鎖(c))とすることが可能となる。そして、このような反応により、形成される側鎖を、上記式(7)〜(9)で表される構造を含有するものとすることもできる。
なお、このようなポリマー中の側鎖の各基(構造)、すなわち、未反応の環状酸無水物基、上記式(2)、(3)および(7)〜(9)で表される構造等は、NMR、IRスペクトル等の通常用いられる分析手段により確認することができる。
このようにして、前記ポリマーと前記原料化合物(前記化合物(I)及び/又は化合物(II))とを反応させることで、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖(a)を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分を形成することができる。
また、本発明においては、入手の簡便さ、反応性の高さの観点から、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーが無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、前記原料化合物が、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物であり、かつ、前記エラストマー成分が、前記無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと前記原料化合物との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、本発明においては、前記環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーが無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、かつ、
前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物(前記原料化合物)との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
このようにして前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、エラストマー成分を形成することにより、エラストマー成分と有機化クレイとを含む熱可塑性エラストマー組成物前駆体を得ることができる。
(第三工程)
第三工程は、前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体に、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加して、熱可塑性エラストマー組成物を得る工程である。
このような抗菌剤及び防黴剤は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物において説明したものと同様のものである。
また、このような第三工程においては、前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体に、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加して、熱可塑性エラストマー組成物を得るが、かかる工程においては、最終的に得られる熱可塑性エラストマー組成物中における抗菌剤及び防黴剤の総量(これらの合計の含有量)が、前記エラストマー成分100質量部に対して0.01〜25質量部(より好ましくは0.1〜25質量部、更に好ましくは0.1〜22.5質量部、特に好ましくは0.1〜20質量部、最も好ましくは0.1〜19質量部)となるような割合で、前記前駆体中に抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を混合することが好ましい。このような抗菌剤及び防黴剤中の総量が前記下限未満では混合後の抗菌剤及び防黴剤の濃度が低く、十分な性能を発揮することが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると引張特性、圧縮永久歪等の機械特性、および流動性が低下する傾向にある。
また、前記抗菌剤及び/又は防黴剤を添加する際には、前記抗菌剤及び/又は防黴剤が十分に分散するように、予め前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体(特に前駆体中の前記エラストマー成分)を可塑化した後に、抗菌剤及び/又は防黴剤を添加することが好ましい。また、このように、前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体(特に前記エラストマー成分)を可塑化する方法としては特に制限されず、前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体が可塑化するような温度(例えば100〜250℃程度)でロール、ニーダー、バンバリー型ミキサー、押出し機(単軸、二軸等)、万能攪拌機等を用いて素練りする方法等を適宜採用できる。このような熱可塑性エラストマー組成物前駆体(特に前記エラストマー成分)の可塑化を行う際の温度等の条件は特に制限されず、エラストマー成分の種類に応じて適宜設定すればよい。
また、このような熱可塑性エラストマー組成物を得るための混合に際しては、前記抗菌剤及び/又は防黴剤が十分に分散するように混合すればよく、その方法は特に制限されず、公知の方法等を適宜採用することができ、例えば、ロール、ニーダー、バンバリー型ミキサー、押出し機(単軸、二軸等)、万能攪拌機等により混合する方法を採用することができる。
このようにして、前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体に、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加することで、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
を含有してなる熱可塑性エラストマー組成物を得ることができる。このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物と同様のものとすることができる。そのため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法として好適に利用することができる。そのため、このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物によって、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物と同様の効果を発現させることが可能である。
なお、このような本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法においては、第一工程において、有機化クレイを酸無水物ポリマー中に予め分散させることで、ポリマー中の酸無水物基と有機化クレイとを相互作用せしめて、クレイの層間が剥離され(なお、有機化されたクレイ(有機化クレイ)はアンモニウム塩等の有機物が層間に存在するものであるため、かかる有機物と前記酸無水物基とが相互作用してクレイの層間が剥離され易い。)、有機化クレイを十分に分散させることが可能となる。その後に、第二工程において、前記原料化合物(架橋を形成する架橋剤として機能する。以下、場合により、「架橋剤」と称する。)を添加することにより、架橋剤と酸無水物基とが反応して、少なくとも、水素結合性架橋部位(例えばカルボン酸基等)が系中で形成される。なお、このようにして形成される水素結合性架橋部位は、有機化クレイとの間で水素結合による相互作用を引き起こすため、有機化クレイをエラストマー中に更に均一に分散させることを可能とする。。そのため、本発明により得られる熱可塑性エラストマー組成物においては、組成物中において、単層の有機化クレイを含有するものとすることも可能である。そして、本発明においては、得られる熱可塑性エラストマー組成物を、前記熱可塑性エラストマー組成物の表面上の任意の3点以上の5.63μmの大きさの測定点を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定した場合において、全測定点において、個数を基準として、全クレイのうちの50%以上(より好ましくは70%以上、更に好ましくは80〜100%、特に好ましくは85〜100%)が単層のクレイとして存在するものとすることも可能である。このような単層のクレイの存在率が前記下限未満では破断伸び、破断強度が低下する傾向にある。なお、このような単層状の形態のクレイの存在は、得られた組成物の表面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することにより確認できる。
また、本発明により、例えば、エラストマー性ポリマー(A)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物と、エラストマー性ポリマー(B)をエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物とをそれぞれ別々に製造した後、これを混合して、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を含有する熱可塑性エラストマー組成物としてもよい。また、エラストマー成分としてエラストマー性ポリマー(A)及び(B)を組み合わせて含有する熱可塑性エラストマー組成物を製造する場合には、エラストマー性ポリマー(A)とエラストマー性ポリマー(B)の比率を適宜変更して、組成物中に存在する水素結合性架橋部位と共有結合性架橋部位の比率等を適宜変更することで、所望の特性を発揮させることも可能である。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、そのゴム弾性を活用して種々のゴム用途に好適に使用することができ、例えば、ホットメルト接着剤又はこれに含ませる添加剤、自動車用ゴム部品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー、プリンター用のゴム部品、シーリング材、塗料・コーティング材、印刷用インク等の用途に好適に用いることができる。
以上、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法として好適に利用可能な方法である、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を説明したが、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を製造するための方法は、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に限定されるものではなく、他の方法を適宜採用してもよい。このような他の方法としては、例えば、前記エラストマー性ポリマーと、前記原料化合物と、前記有機化クレイと、前記抗菌剤及び/又は防黴剤とを同時に添加して混合物を形成し、その混合物中で前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応せしめて熱可塑性エラストマー組成物を得る方法、前記エラストマー性ポリマーと、前記原料化合物との混合物を形成し、該混合物中において前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応せしめてエラストマー成分を形成した後、該エラストマー成分を含む混合物中に有機化クレイと、前記抗菌剤及び/又は防黴剤とを添加する方法、前記エラストマー性ポリマーと、前記抗菌剤及び/又は防黴剤と、前記原料化合物との混合物を形成し、該混合物中において前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応せしめてエラストマー成分を形成した後、該エラストマー成分を含む混合物中に有機化クレイを添加する方法等を適宜採用してもよい。なお、熱可塑性エラストマー組成物中における単層のクレイの存在率の観点からは、上記本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を採用することが好ましい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価方法について説明する。
<100%モジュラスの測定>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、200℃で10分間熱プレスして2mm厚のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)を形成した後、かかるシートを利用して3号ダンベル状の試験片を作成し、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251(2010年発行)に準拠して行い、100%モジュラス(M100)[MPa]を室温(25℃)にて測定した。
<圧縮永久歪み(C−Set)>
各実施例及び各比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ用い、200℃で10分間熱プレスして2mm厚のシート(厚さ2mm、縦150mm、横150mm)を形成した後、該シートを円盤状に打ち抜いて7枚重ね合わせて、高さを12.5±5mmになるようにして専用治具で25%圧縮し、70℃で22時間放置した後の圧縮永久歪み(単位:%)をJIS K6262(2013年発行)に準拠して測定した。
<防黴性能(防カビ性能)の評価>
防黴性能の評価は、JIS Z2911(2010年発行)「プラスチック製品の試験 方法A 試験区分Iおよび方法B 試験区分I」に準拠して実施した。なお、使用した培地や試験菌は以下の通りである。
(培地等について)
A法培地:無機塩寒天培地
B法培地:グルコース添加無機塩寒天培地
試験菌:Aspergillus niger, Penicillium pinophilum, Paecilomyces variotii, Trichoderma virens, Chaetomium globosum
なお、方法A(A法)及び方法B(B法)とも、4週間後のコロニーを以下の6段階の基準(0〜5の評価基準)で評価した。
(防黴性能(防カビ性能)の評価基準)
0:肉眼及び顕微鏡下のいずれにおいてもカビの発育は認められない。
1:肉眼ではカビの発育は認められないが、顕微鏡下ではカビの発育が明らかに確認できる。
2:肉眼でカビの発育が認められ、発育部分の面積が試料の全面積の25%未満である。
3:肉眼でカビの発育が認められ、発育部分の面積が試料の全面積の25%以上〜50%未満である。
4:菌糸がよく発育し、発育部分の面積が試料の全面積の50%以上である。
5:菌糸の発育が激しく、試料全面を覆っている。
<抗菌性能の評価>
抗菌性能の評価は、2種の試験菌(大腸菌Escherichia coli、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus)をそれぞれ別々に用いて、試験菌ごとにJIS Z2801(2012年発行)「抗菌加工製品 抗菌性試験」に準拠した試験方法で試験を行い、各試験菌の24時間後のコロニー数(cfu/mL)をそれぞれ測定(カウント)することにより行った。
(実施例1)
先ず、スチレンブロック共重合体(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS):クレイトン社製の商品名「G1633U」、分子量:40万〜50万、スチレン含有量:30質量%)200gを加圧ニーダーに投入して、200℃の条件で練りながら、前記加圧ニーダー中にパラフィンオイル(JX日鉱日石エネルギー社製の商品名「スーパーオイルMシリーズ P500S」、動粘度:472mm/s、Cp値:68.7%、アニリン点:123℃)400gを滴下し、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体とパラフィンオイルとを1分間混合した。次いで、前記加圧ニーダー中に、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体(マレイン化EBM(MEBM):三井化学社製の商品名「タフマーMH5020」、結晶化度:4%)100g、α−オレフィン系樹脂であるエチレン−ブテン共重合体(EBM:三井化学社製の商品名「タフマーDF7350」、結晶化度:10%、MFR:35g/10分(2.16kg、190℃)、Mw:100000)75gおよび老化防止剤(アデカ社製の商品名「AO−50」)0.3gを更に投入し、温度を180℃として2分間素練りして第一の混合物を得た。なお、かかる素練り工程により、前記第一の混合物は可塑化された。次に、前記加圧ニーダー中の前記第一の混合物に対して、有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」、有機化剤としてのアンモニウム塩の種類:ジメチルジオクタデシルアンモニウム及びジメチルステアリルベンジルアンモニウム(計2種))1gを更に加えて、180℃で4分間混練して第二の混合物を得た。次に、前記加圧ニーダー中の前記第二の混合物にトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナックP」)を1.31g加え、200℃で8分間混合することにより、混合物中において無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとを反応させてエラストマー性ポリマー(エラストマー成分)を形成し、熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製した。
なお、このような前駆体においては、用いた原料化合物の赤外分光分析の結果から、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン共重合体中の無水マレイン酸基とトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートとが反応して、下記式(26)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(i)」と称する。)、下記式(27)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(ii)」と称する。)、及び、下記式(28)で表される構造を含有する側鎖(以下、場合により単に「側鎖(iii)」と称する。)のうちの、前記側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーが形成されたことが分かる(なお、このような側鎖(i)〜(iii)に関して、用いた原料から化学量論的に考慮すれば、主として側鎖(iii)が形成されていることが明らかであるが、ポリマーの側鎖の位置等によっては、側鎖(i)及び/又は側鎖(ii)が形成され得る。以下、用いた原料に基づいて、反応により形成される側鎖の種類が主として側鎖(iii)となると考えられるエラストマー性ポリマーについては、場合により、単に「側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー」と称する。)。また、このようなエラストマー性ポリマーは、主鎖がエチレン−ブテン共重合体(エチレンとブテンと)からなっているため、ガラス転移点は25℃以下のものであることが分かった。
[式(26)〜(28)中、α及びβで示される炭素は、それらの炭素の位置(α位又はβ位)のいずれかにおいてエラストマー性ポリマーの主鎖に結合していることを示す。]
次に、前記加圧ニーダー中の前記熱可塑性エラストマー性組成物の前駆体を、160℃で1分間混練して可塑化(軟化)させた。次いで、前記熱可塑性エラストマー性組成物の前駆体中に、防黴剤(防カビ剤)として大阪ガスケミカル社製の商品名「コートサイド331B」を2.3g添加し、8分間混練して十分に可塑化した後、前記ニーダーから放出させることにより、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。なお、前記防黴剤(防カビ剤)は平均粒子径が100μm以下のものである。また、前記防黴剤(防カビ剤)は、前記エラストマー成分(基材)に対する溶解性が高い(エラストマー成分100質量部(phr)に対し10質量部(phr)以上の割合で溶解する。)ものである。
(実施例2)
有機化クレイの種類を、株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」から株式会社ホージュン製の商品名「エスベンNO12S」に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。なお、本実施例において利用した有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンNO12S」)は、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムを有機化剤として用いて有機化したものである。
(実施例3)
有機化クレイの種類を、株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」からクニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。なお、本実施例において利用した有機化クレイ(クニミネ工業社製の商品名「クニフィル−D36」)は、ジアルキルジメチルアンモニウムを有機化剤として用いて有機化したものである。
(実施例4)
防黴剤(防カビ剤)の種類を、大阪ガスケミカル社製の商品名「コートサイド331B」から、日本曹達社製の商品名「SP−100」に変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物をそれぞれ得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。なお、利用した防黴剤(防カビ剤)は、平均粒子径が100μm以下のものである。また、前記防黴剤(防カビ剤)は、前記エラストマー成分(基材)に対する溶解性が高い(エラストマー成分100phrに対し10phr以上の割合で溶解する。)ものである。
(実施例5)
防黴剤(防カビ剤)の種類を、大阪ガスケミカル社製の商品名「コートサイド331B」から、日本曹達社製の商品名「SP−100」に変更した以外は、実施例2と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(実施例6)
防黴剤(防カビ剤)の種類を、大阪ガスケミカル社製の商品名「コートサイド331B」から、日本曹達社製の商品名「SP−100」に変更した以外は、実施例3と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(比較例1)
熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製する際に、前記第一の混合物を得る工程を実施した後に、前記第二の混合物を得る工程を実施せずに(前記第一の混合物に対して有機化クレイを加えずに)、前記第一の混合物をそのまま用いて、前記第一の混合物を可塑化した後、前記第一の混合物に対してトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナックP」)を1.31g加え、200℃で8分間混合することにより熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製した以外は、実施例1と同様にして(有機化クレイを用いなかった以外は実施例1と同様にして)、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(比較例2)
有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」)を用いる代わりに、クレイ(有機化されていないもの:クニミネ工業社製の商品名「クニピア−F」)を用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(比較例3)
防黴剤(防カビ剤)を用いなかった以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物(実施例1において中間体として得られる「熱可塑性エラストマー組成物の前駆体」と同様のものをそのまま熱可塑性エラストマー組成物としたもの)を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
(比較例4)
防黴剤(防カビ剤)を用いなかった以外は、比較例2と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物(比較例2において中間体として得られる「熱可塑性エラストマー組成物の前駆体」と同様のものをそのまま熱可塑性エラストマー組成物としたもの)を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表1に示す。
表1に示す結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜6)はいずれも、方法A及び方法Bのいずれの試験においても防黴性能(防カビ性能)の評価が「0:肉眼及び顕微鏡下のいずれにおいてもカビの発育は認められない。」となっていた。このような結果に関して、実施例1〜3と実施例4〜6とでは組成物中に含有させた防黴剤(防カビ剤)の種類が異なるが、いずれにおいても非常に高度な防黴性能が得られていることから、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜6)においては、防黴剤(防カビ剤)の種類によらず、十分に高度な防黴性能(防カビ性能)が得られることが分かった。
また、実施例1〜3の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例1の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイの有無において組成が異なるが、有機クレイを用いなかった場合(比較例1)においては、防黴性能(防カビ性能)が必ずしも十分なものとはなっておらず、上述のような側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーをエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、比較例1のように、単純に防黴剤を利用しても十分に高度な防黴性能が得られず、実施例1〜3のように、かかるエラストマー成分と有機化クレイと防黴剤とを組み合わせることによってはじめて十分に高度な防黴性能が得られることが分かった。
また、実施例1〜3の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例2の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイの代わりに有機化されていないクレイを用いた場合(比較例2)においては防黴性能(防カビ性能)が必ずしも十分なものとはなっていないことから、実施例1〜3のように、前記エラストマー成分(側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と有機化クレイと防黴剤とを組み合わせることによってはじめて十分に高度な防黴性能が得られることが分かった。なお、実施例1及び4の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例3の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、防黴剤(防カビ剤)の使用の有無のみが異なるが、防黴剤を使用することにより、はじめて十分に高度な防黴性能が得られることが分かった。
なお、クレイ(有機化していないクレイ)を用いているものの、防黴剤を利用していない比較例4においては、実施例1〜6の熱可塑性エラストマー組成物と対比して、防黴性能(防カビ性能)が十分なものとはならないことが分かった。
上述のような実施例4と比較例3の対比結果と、上記実施例1〜3と比較例1〜3との対比結果等を併せ勘案すれば、実施例1〜6のように、前記エラストマー成分(側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と有機化クレイと防黴剤とを組み合わせることによってはじめて十分に高度な防黴性能が得られることが分かった。
また、実施例1〜3の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例1の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイの有無において組成が異なるが、有機化クレイを用いた場合(実施例1〜3)においては100%モジュラスが0.42MPa以上となっており、十分に高度な引張応力が得られているのに対して、有機クレイを用いなかった場合(比較例1)においては、100%モジュラスが0.33MPaとなっており、有機化クレイを用いた場合(実施例1〜3)と比較すると引張応力が十分なものではなかった。また、有機化クレイを用いた実施例1〜3で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、クレイ(有機化していないもの)を用いた比較例2及び4の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイを用いた場合(実施例1〜3)においては100%モジュラスが0.42MPa以上となっており、十分に高度な引張応力が得られているのに対して、クレイ(有機化していないもの)を用いた場合(比較例2及び4)においては100%モジュラスが0.29MPa以下となっており、有機化クレイを用いた場合(実施例1〜3)と比較すると引張応力が十分なものではなかった。なお、実施例1及び4の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例3の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、防黴剤(防カビ剤)の使用の有無のみが異なるが、これらの対比結果から、有機化クレイとともに防黴剤を使用することにより、100%モジュラスがより向上することも分かった。また、実施例4〜6で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、100%モジュラスはいずれも0.44MPa以上となっており、比較例1〜4と比較して100%モジュラスがより高度な値となっており、十分に高度な引張応力が得られていることが分かった。
上述のような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜6)によれば、十分に高度な防黴性能が得られるばかりか、より高度な引張応力(100%モジュラス)が達成できることも分かった。
また、有機化クレイを用いた場合(実施例1〜6)においては圧縮永久歪が19%以下と十分に高い結果となっているが、クレイ(有機化していないもの)を用いた場合(比較例2及び4)においては圧縮永久歪が共に23%となっており、有機化クレイを用いることで、十分に高度な圧縮永久歪に対する耐性が得られることも分かった。なお、実施例1〜6で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例1〜4で得られた熱可塑性エラストマー組成物の結果を併せ勘案すれば、本発明(実施例1〜6)においては、圧縮永久歪に対する耐性が十分に高度な水準にあることが明らかであることから(圧縮永久歪が19%以下と十分に低い値となっている。)、優れた引張応力(100%モジュラス)と優れた圧縮永久歪に対する耐性をバランスよく発揮できるものであることが分かった。このように、本発明(実施例1〜6)によれば、引張応力(100%モジュラス)や圧縮永久歪に対する耐性といった機械的な特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとなることも分かった。
このような結果から、エラストマー成分と有機化クレイと防黴剤とを組み合わせて利用する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜6)においては、十分に高度な防黴性能が得られるとともに、より高度な引張応力(100%モジュラス)が得られることが分かった。なお、各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜6)においては、引張応力(100%モジュラス)と圧縮永久歪に対する耐性とを高度な水準でバランスよく有するものであることも分かった。
(実施例7)
防黴剤(防カビ剤)を用いる代わりに、抗菌剤(大阪ガスケミカル社製の商品名「スラオフ94」)を2.3g用いた以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。なお、利用した抗菌剤は、平均粒子径が100μm以下のものである。また、前記抗菌剤は、前記エラストマー成分(基材)に対する溶解性が高い(エラストマー成分100phrに対し10phr以上の割合で溶解する。)ものである。
(実施例8)
防黴剤(防カビ剤)を用いる代わりに、抗菌剤(大阪ガスケミカル社製の商品名「スラオフ94」)を2.3g用いた以外は、実施例2と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例9)
防黴剤(防カビ剤)を用いる代わりに、抗菌剤(大阪ガスケミカル社製の商品名「スラオフ94」)を2.3g用いた以外は、実施例3と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例10)
抗菌剤の種類を大阪ガスケミカル社製の商品名「TG−65」に変更した以外は、実施例7と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。なお、利用した抗菌剤は、平均粒子径が100μm以下のものである。また、前記抗菌剤は、エラストマー成分(基材)に対する溶解性が高い(エラストマー成分100phrに対し10phr以上の割合で溶解する。)ものである。
(実施例11)
抗菌剤の種類を大阪ガスケミカル社製の商品名「TG−65」に変更した以外は、実施例8と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(実施例12)
抗菌剤の種類を大阪ガスケミカル社製の商品名「TG−65」に変更した以外は、実施例9と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例5)
熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製する際に、前記第一の混合物を得る工程を実施した後に、前記第二の混合物を得る工程を実施せずに(前記第一の混合物に対して有機化クレイを加えずに)、前記第一の混合物をそのまま用いて、前記第一の混合物を可塑化した後、前記第一の混合物に対してトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナックP」)を1.31g加え、200℃で8分間混合することにより熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製した以外は、実施例10と同様にして(有機化クレイを用いなかった以外は実施例10と同様にして)、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例6)
有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」)を用いる代わりに、クレイ(有機化されていないもの:クニミネ工業社製の商品名「クニピア−F」)を用いた以外は、実施例10と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例7)
抗菌剤を用いなかった以外は、実施例7と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物(実施例7において中間体として得られる「熱可塑性エラストマー組成物の前駆体」と同様のものをそのまま熱可塑性エラストマー組成物としたもの)を得た(なお、組成は上記比較例3と同様である。)。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
(比較例8)
抗菌剤を用いなかった以外は、比較例6と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物(比較例2において中間体として得られる「熱可塑性エラストマー組成物の前駆体」と同様のものをそのまま熱可塑性エラストマー組成物としたもの)を得た(なお、組成は上記比較例4と同様である。)。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表2に示す。
表2に示す結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例7〜12)はいずれも、いずれの試験菌(大腸菌Escherichia coli、黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus)を用いた場合も、24時間経過後のコロニーの数が0cfu/mLとなっており、十分に高度な抗菌性能が得られることが分かった。このような結果に関して、実施例7〜9と実施例10〜12とでは組成物中に含有させた抗菌剤の種類が異なるが、いずれにおいても非常に高度な抗菌性能が得られていることから、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例7〜12)においては、抗菌剤の種類によらず、十分に高度な抗菌性能が得られることが分かった。
また、実施例10〜12の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例5の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイの有無において組成が異なるが、有機クレイを用いなかった場合(比較例5)においては、抗菌性能が必ずしも十分なものとはなっておらず、上述のような側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマーをエラストマー成分とする熱可塑性エラストマー組成物においては、比較例5のように、単純に抗菌剤を利用しても十分に高度な抗菌性能が得られず、実施例10〜12のように、かかるエラストマー成分と有機化クレイと抗菌剤とを組み合わせることによってはじめて十分に高度な抗菌性能が得られることが分かった。
また、実施例10〜12の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例6の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイの代わりに有機化されていないクレイを用いた場合(比較例6)においては抗菌性能が必ずしも十分なものとはなっていないことから、実施例10〜12のように、前記エラストマー成分(側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と有機化クレイと抗菌剤とを組み合わせることによってはじめて十分に高度な抗菌性能が得られることが分かった。なお、実施例7及び10の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例7の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、抗菌剤の使用の有無のみが異なるが、抗菌剤を使用することにより、はじめて十分に高度な抗菌性能が得られることが分かった。
なお、クレイ(有機化していないクレイ)を用いているものの、抗菌剤を利用していない比較例8においては、実施例7〜12の熱可塑性エラストマー組成物と対比して、抗菌性能が十分なものとはならないことも分かった。
上述のような実施例7と比較例7の対比結果と、上記実施例10〜12と比較例5〜7との対比結果等を併せ勘案すれば、実施例7〜12のように、前記エラストマー成分(側鎖(iii)を主として有するエラストマー性ポリマー)と有機化クレイと抗菌剤とを組み合わせることによってはじめて十分に高度な抗菌性能が得られることが分かった。
また、実施例10〜12の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例5の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイの有無において組成が異なるが、有機化クレイを用いた場合(実施例10〜12)においては100%モジュラスが0.43MPa以上となっており、十分に高度な引張応力が得られているのに対して、有機クレイを用いなかった場合(比較例5)においては、100%モジュラスが0.32MPaとなっており、有機化クレイを用いた場合(実施例10〜12)と比較すると引張応力が十分なものではなかった。また、有機化クレイを用いた実施例10〜12で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、クレイ(有機化していないもの)を用いた比較例6及び8で得られた熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、有機化クレイを用いた場合(実施例10〜12)においては100%モジュラスが0.43MPa以上となっており、十分に高度な引張応力が得られているのに対して、クレイ(有機化していないもの)を用いた場合(比較例6及び8)においては100%モジュラスが0.28MPa以下となっており、有機化クレイを用いた場合(実施例10〜12)と比較して引張応力が十分なものではなかった。なお、実施例7及び10の熱可塑性エラストマー組成物と、比較例7の熱可塑性エラストマー組成物とを対比すると、抗菌剤の使用の有無のみが異なるが、これらの対比結果から、有機化クレイとともに抗菌剤を使用することにより、100%モジュラスがより向上することも分かった。また、実施例7〜9で得られた熱可塑性エラストマー組成物においても、100%モジュラスはいずれも0.41MPa以上となっており、比較例5〜8と比較して100%モジュラスがより高度な値となっており、十分に高度な引張応力が得られていることが分かった。
上述のような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例7〜12)によれば、十分に高度な抗菌性能が得られるばかりか、より高度な引張応力(100%モジュラス)が達成できることも分かった。
また、有機化クレイを用いた場合(実施例7〜12)においては圧縮永久歪が19%以下と十分に高い結果となっているが、クレイ(有機化していないもの)を用いた場合(比較例6及び8)においては圧縮永久歪が共に23%となっており、有機化クレイを用いることで、十分に高度な圧縮永久歪に対する耐性が得られることも分かった。なお、実施例7〜12で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例5〜8の熱可塑性エラストマー組成物の結果を併せ勘案すれば、本発明(実施例7〜12)においては、圧縮永久歪に対する耐性が十分に高度な水準にあることが明らかであることから(圧縮永久歪が19%以下と十分に低い値となっている。)、優れた引張応力(100%モジュラス)と優れた圧縮永久歪に対する耐性をバランスよく発揮できるものであることが分かった。このように、本発明(実施例7〜12)によれば、引張応力(100%モジュラス)や圧縮永久歪に対する耐性といった機械的な特性を十分に高度な水準でバランスよく有するものとなることも分かった。
このような結果から、エラストマー成分と有機化クレイと抗菌剤とを組み合わせて利用する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例7〜12)においては、十分に高度な抗菌性能が得られるとともに、より高度な引張応力(100%モジュラス)が得られることが分かった。なお、各実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例7〜12)においては、引張応力(100%モジュラス)と圧縮永久歪に対する耐性とを高度な水準でバランスよく有するものであることも分かった。
(実施例13)
防黴剤(大阪ガスケミカル社製の商品名「コートサイド331B」)を単独で用いる代わりに、防黴剤(大阪ガスケミカル社製の商品名「コートサイド331B」)2.3gと抗菌剤(大阪ガスケミカル社製の商品名「スラオフ94」)2.3gとを組み合わせて用いた以外(防黴剤のみを添加する代わりに、防黴剤と抗菌剤の双方を添加した以外)は、実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表3に示す。
(比較例9)
有機化クレイ(株式会社ホージュン製の商品名「エスベンWX」)を用いる代わりに、クレイ(有機化されていないもの:クニミネ工業社製の商品名「クニピア−F」)を用いた以外は、実施例13と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表3に示す。
(比較例10)
熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製する際に、前記第一の混合物を得る工程を実施した後に、前記第二の混合物を得る工程を実施せずに(前記第一の混合物に対して有機化クレイを加えずに)、前記第一の混合物をそのまま用いて、前記第一の混合物を可塑化した後、前記第一の混合物に対してトリスヒドロキシエチルイソシアヌレート(日星産業社製の商品名「タナックP」)を1.31g加え、200℃で8分間混合することにより熱可塑性エラストマー組成物の前駆体を調製した以外は、実施例13と同様にして(有機化クレイを用いなかった以外は実施例13と同様にして)、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表3に示す。
表3に示す結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例13)は十分に高度な防カビ性能及び十分に高度な抗菌性能を同時に発揮できることが確認された。一方、有機化クレイを利用していない場合(比較例9〜10)には、防カビ性能及び抗菌性能が共に必ずしも十分なものとはならなかった。
また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例13)は、有機化クレイを利用していない場合(比較例9〜10)と比較して、より高度な100%モジュラスの値が得られており、より高度な引張応力(100%モジュラス)が得られることが分かった。
なお、実施例13で得られた熱可塑性エラストマー組成物と、比較例9〜10の熱可塑性エラストマー組成物の結果から、本発明(実施例13)においては、圧縮永久歪に対する耐性が十分に高度な水準にあることが明らかであることから(圧縮永久歪が18%と十分に低い値となっている。)、優れた引張応力(100%モジュラス)と優れた圧縮永久歪に対する耐性をバランスよく発揮できるものであることが分かった。
このような結果から、有機化クレイを利用する本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例13)においては、十分に高度な防カビ性能及び抗菌性能が得られるとともに、より高度な引張応力(100%モジュラス)が得られることが分かった。さらに、このような結果から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例13)においては、引張応力(100%モジュラス)と圧縮永久歪に対する耐性とを高度な水準でバランスよく有するものとなることも分かった。
(実施例14)
防黴剤の使用量を2.3gから15.5gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表4に示す。なお、参考のために、実施例1の結果も併せて表4に示す。
(実施例15)
抗菌剤の使用量を2.3gから15.5gに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物を得た。このようにして得られた熱可塑性エラストマー組成物の特性の評価結果を表4に示す。なお、参考のために、実施例10の結果も併せて表4に示す。
表4に示す結果からも明らかなように、各実施例においては、目的とする防黴性能又は抗菌性能が十分に高度なものとなっていることが分かった。また、実施例14及び15で得られた熱可塑性エラストマー組成物は、100%モジュラスはいずれも0.48MPa以上となっており、実施例1及び10で得られた熱可塑性エラストマー組成物よりも更に高度な引張応力(100%モジュラス)が得られていた。
このような結果からも明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1、10、14及び15)においては、防黴性能又は抗菌性能を十分に高度なものとすることが可能であるとともに、100%モジュラスを基準とした引張特性をより高度なものとすることが可能であることが分かった。なお、抗菌剤又は防黴剤の使用量をエラストマー成分100質量部に対して15.5質量部とした場合(実施例14又は15)と対比して、抗菌剤又は防黴剤の使用量をエラストマー成分に対して2.3質量部とした場合(実施例1又は10)には、圧縮永久歪に対する耐性をより高度な水準に維持することが可能であることも分かった。
以上説明したように、本発明によれば、十分に高度な防黴性及び/又は抗菌性を有するものとすることが可能であり、しかも100%モジュラスを基準とした引張特性をより高度なものとすることが可能な熱可塑性エラストマー組成物、並びに、その製造方法を提供することが可能となる。
したがって、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、電気・電子、家電、化学、医薬品、ガラス、土石、鉄鋼、非鉄金属、機械、精密機器、化粧品、繊維、鉱業、パルプ、紙、建築・土木・建設、食料・飲料、一般消費財・サービス、運送用機器、建機、電気機器、設備(産業、空調、給湯、エネファーム)、金属、メディア、情報、通信機器、照明、ディスプレイ、農業、漁業、林業、水産業、アグリビジネス、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、等の分野において利用する各種ゴム部品(より具体的には、自動車周りの商品、ホース、ベルト、シート、防振ゴム、ローラー、ライニング、ゴム引布、シール材、手袋、防舷材、医療用ゴム(シリンジガスケット、チューブ、カテーテル)、ガスケット(家電用、建築用)、アスファルト改質剤、ホットメルト接着剤、ブーツ類、グリップ類、玩具、靴、サンダル、キーパッド、ギア、ペットボトルキャプライナー、プリンター用成形材料、プリンター用のゴム部品、シーリング材、塗料・コーティング材、印刷用インク等の用途に用いる商品等)を製造するための材料等として有用である。

Claims (7)

  1. カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
    前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
    抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
    を含有してなることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記抗菌剤及び防黴剤の総量が、前記エラストマー成分100質量部に対して0.01〜25質量部であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記抗菌剤及び前記防黴剤が、それぞれ有機系化合物及び無機系化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記エラストマー成分として含まれるポリマーの主鎖が、ジエン系ゴム、ジエン系ゴムの水素添加物、オレフィン系ゴム、水添されていてもよいポリスチレン系エラストマー性ポリマー、ポリオレフィン系エラストマー性ポリマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー性ポリマー、ポリウレタン系エラストマー性ポリマー、ポリエステル系エラストマー性ポリマー、及び、ポリアミド系エラストマー性ポリマーの中から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 環状酸無水物基を側鎖に有するエラストマー性ポリマーと、有機化クレイとを混合して混合物を得る第一工程と、
    前記混合物に、前記環状酸無水物基と反応して水素結合性架橋部位を形成する化合物(I)、並びに、前記化合物(I)及び前記環状酸無水物基と反応して共有結合性架橋部位を形成する化合物(II)の混合原料のうちの少なくとも1種の原料化合物を添加し、前記エラストマー性ポリマーと前記原料化合物とを反応させることにより、エラストマー成分を形成して、エラストマー成分と有機化クレイとを含む熱可塑性エラストマー組成物前駆体を得る第二工程と、
    前記熱可塑性エラストマー組成物前駆体に、抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種を添加して、熱可塑性エラストマー組成物を得る第三工程と、
    を含むこと、
    前記第三工程において得られる前記熱可塑性エラストマー組成物が、カルボニル含有基および/または含窒素複素環を有する水素結合性架橋部位を含有する側鎖を有しかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(A)、並びに、側鎖に水素結合性架橋部位及び共有結合性架橋部位が含有されておりかつガラス転移点が25℃以下であるエラストマー性ポリマー(B)からなる群から選択される少なくとも1種のエラストマー成分と、
    前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下の含有比率の有機化クレイと、
    抗菌剤及び防黴剤からなる群から選択される少なくとも1種と、
    を含有してなる組成物であること、及び、
    前記第一工程において、前記熱可塑性エラストマー組成物中の前記有機化クレイの含有量が前記エラストマー成分100質量部に対して20質量部以下となるような割合で前記有機化クレイを用いて、前記エラストマー性ポリマーと、前記有機化クレイとを混合すること、
    を特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
  7. 前記エラストマー性ポリマーが無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーであり、
    前記エラストマー成分が、無水マレイン酸変性エラストマー性ポリマーと、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいピリジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいチアジアゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイミダゾール、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいイソシアヌレート、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいトリアジン、水酸基、チオール基及びアミノ基のうちの少なくとも1種の置換基を有していてもよいヒダントイン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、スルファミド、並びに、ポリエーテルポリオールのうちの少なくとも1種の化合物との反応物からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
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