JPWO2017073425A1 - 弾性波共振子、弾性波フィルタ、分波器、通信装置および弾性波共振子の設計方法 - Google Patents

弾性波共振子、弾性波フィルタ、分波器、通信装置および弾性波共振子の設計方法 Download PDF

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Abstract

弾性波共振子は、圧電基板と、該圧電基板の上面上に位置しているIDT電極と、を有している。SAWによる共振周波数と反共振周波数との間に、バルク波による共振周波数および反共振周波数の少なくとも一方が位置している。

Description

本開示は、弾性波を用いた弾性波共振子、当該弾性波共振子を有する弾性波フィルタ、当該弾性波フィルタを有する分波器および当該分波器を有する通信装置ならびに弾性波共振子の設計方法に関する。
圧電基板と、当該圧電基板の上面に設けられ、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を励振するIDT(Interdigital Transducer)電極とを有している弾性表面波共振子(SAW共振子)が知られている(例えば特許文献1および2)。
特許文献1では、IDT電極に並列に容量素子を接続している。このような容量素子を設けることによって、SAWの反共振周波数を低周波側に移動させ、共振周波数から反共振周波数までの周波数の差を狭くできることが知られている。なお、特許文献1では、反射器を容量素子に兼用することによってSAW共振子の小型化を図っている。
特許文献2では、圧電基板を単体でSAW共振子に用いるのではなく、圧電基板と当該圧電基板に比較して熱膨張係数の小さい支持基板とを貼り合せた貼り合せ基板をSAW共振子に用いている。このような貼り合せ基板を利用することによって、例えば、SAW共振子の電気特性の温度変化が補償される。特許文献2では、貼り合わせ基板を用いると、スプリアスが生じること、そのスプリアスの要因がバルク波であることを開示している。そして、特許文献2では、バルク波同士を相殺するための電極構造を提案している。
特許第5436729号公報 特開2014−229916号公報
本開示の一態様に係る弾性波共振子は、圧電基板と、該圧電基板の上面上に位置しているIDT電極と、を有している。弾性表面波による共振周波数と反共振周波数との間に、バルク波による共振周波数および反共振周波数の少なくとも一方が1個以上4個以下位置している。
本開示の一態様に係る弾性波フィルタは、圧電基板と、該圧電基板の下面に貼り合わされている支持基板と、前記圧電基板の上面上に位置している複数のIDT電極と、を有している。前記複数のIDT電極は、第1のIDT電極と、当該第1のIDT電極と厚みが異なる第2のIDT電極とを含んでいる。
本開示の一態様に係る分波器は、アンテナ端子と、送信信号をフィルタリングして前記アンテナ端子に出力する送信フィルタと、前記アンテナ端子からの受信信号をフィルタリングする受信フィルタと、を有している。前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの少なくとも一方は、上記の弾性波フィルタを含んでいる。
本開示の一態様に係る通信装置は、アンテナと、前記アンテナに前記アンテナ端子が接続されている上記の分波器と、前記送信フィルタおよび前記受信フィルタに接続されているICと、を有している。
本開示の一態様に係る弾性波共振子の設計方法は、IDT電極の電極指のピッチが所定の初期値である場合において弾性表面波による共振周波数および反共振周波数がバルク波による共振周波数および反共振周波数の少なくとも一方の両側に位置する前記電極指の厚みを特定し、前記電極膜厚設定ステップで特定した前記電極指の厚みで、前記一方の周波数が所定の目標周波数に一致する前記電極指のピッチを特定する。
本開示の実施形態に係る弾性波共振子の構成を示す平面図である。 図1のII−II線における断面図である。 図3(a)および図3(b)は図1の弾性波共振子の原理を説明するための図である。 IDT電極の厚みが共振特性に及ぼす影響を示す図である。 図5(a)は圧電基板の厚みがバルク波スプリアスの周波数に及ぼす影響を示す図である。図5(b)は圧電基板の厚みがバルク波スプリアスの周波数間隔に及ぼす影響を示す図である。 図1の弾性波共振子において利用するバルク波スプリアスを説明するための図である。 IDT電極の厚みおよびピッチの変化が図6のバルク波スプリアスに及ぼす影響を示す図である。 図1の弾性波共振子の設計方法の手順の一例を示すフローチャートである。 図9(a)〜図9(c)は図1の弾性波共振子の利用例としてのラダー型フィルタを示す模式図である。 図10(a)および図10(b)はラダー型フィルタの実施例の特性を示す図である。 ラダー型フィルタの利用例としての分波器を示す模式図である。 分波器の利用例としての通信装置を示すブロック図である。 図13(a)〜図13(c)は種々の変形例を示すための模式図である。 変形例を示すための模式図である。
<弾性波共振子>
以下、本開示の実施形態に係る弾性波共振子について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
弾性波共振子は、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、D1軸、D2軸およびD3軸からなる直交座標系を定義するとともに、D3軸方向の正側を上方として、上面、下面等の用語を用いることがある。
(弾性波共振子の構成の概要)
図1は、本開示の実施形態に係る弾性波共振子1の構成を示す平面図である。図2は、図1のII−II線における断面図である。ただし、図2において、後述する電極指の数は図1よりも少なく描かれている。
弾性波共振子1は、弾性波としてSAWおよびバルク波を利用する、新たな原理に基づく共振子である。ただし、弾性波共振子1の構成は、各種寸法等を除いて、基本的には、SAW共振子の構成と同様とされてよい。具体的には、以下のとおりである。
弾性波共振子1は、例えば、貼り合せ基板3と、貼り合せ基板3の上面上に構成された電極部5とを有している。特に図示しないが、弾性波共振子1は、この他、SiO等からなり、電極部5を覆う保護層等を有していてもよい。
貼り合せ基板3は、例えば、圧電基板7と、圧電基板7の下面に貼り合わされた支持基板9(図2)とを有している。なお、図1では、圧電基板7のX軸、Y軸およびZ軸の一例を示している。
圧電基板7は、例えば、圧電性を有する単結晶基板によって構成されている。単結晶基板は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)または水晶(SiO)からなる。カット角は適宜なものとされてよい。例えば、タンタル酸リチウムであれば、42°±10°Y板または0°±10°X板などである。ニオブ酸リチウムであれば、128°±10°Y板または64°±10°Y板などである。
なお、以下では、主として圧電基板7がタンタル酸リチウムからなる38°以上48°以下Y板である態様を例にとって説明するものとする。特に断りがない限り、後述するシミュレーション結果等は、タンタル酸リチウムからなる38°以上48°以下Y板のものである。確認的に記載すると、このY板では、X軸回りにY軸からZ軸へ38°以上48°以下の角度で回転したY′軸(不図示)に主面(上面および下面)が直交する。
圧電基板7の厚みt(図2)は、例えば、圧電基板7の平面方向全体に亘って一定である。後述するように、本実施形態の弾性波共振子1では、SAW共振子とは異なり、この厚みtも共振子特性を規定するパラメータとなっている。
支持基板9は、例えば、圧電基板7の材料よりも熱膨張係数が小さい材料によって形成されている。これによって、弾性波共振子1の電気特性の温度変化を補償することができる。このような材料としては、例えば、シリコン等の半導体、サファイア等の単結晶および酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックを挙げることができる。なお、支持基板9は、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。
支持基板9の厚みは、例えば、支持基板9の平面方向全体に亘って一定であり、その大きさは、弾性波共振子1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、支持基板9の厚みは、圧電基板7の厚みよりも厚くされる。この場合、例えば、温度補償の作用が強くなったり、圧電基板7の強度が補強されたりする。一例として、支持基板9の厚みは100μm以上300μm以下である。支持基板9の平面形状および各種寸法は、例えば、圧電基板7と同等である。
圧電基板7および支持基板9は、例えば、不図示の接着層を介して互いに貼り合わされている。接着層の材料は、有機材料であってもよいし、無機材料であってもよい。有機材料としては、例えば、熱硬化性樹脂等の樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、SiOが挙げられる。また、圧電基板7および支持基板9は、接着面をプラズマなどで活性化処理した後に接着層無しに貼り合わせる、いわゆる直接接合によって貼り合わされていても良い。
電極部5の構成は、例えば、いわゆる1ポートSAW共振子のための電極部と同様の構成とされている。すなわち、電極部5は、IDT電極11と、IDT電極11の両側に位置する1対の反射器13とを有している。
IDT電極11は、圧電基板7の上面上に形成された導電パターン(導電層)によって構成されており、図1に示すように1対の櫛歯電極15を有している。
1対の櫛歯電極15は、例えば、互いに対向するバスバー17(図1)と、バスバー17からバスバー17の対向方向に延びる複数の電極指19と、複数の電極指19の間においてバスバー17から突出するダミー電極21とを有している。そして、1対の櫛歯電極15は、複数の電極指19が互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。
バスバー17は、例えば、概ね一定の幅でSAWの伝搬方向(D1軸方向、X軸方向)に直線状に延びる長尺状に形成されている。1対の櫛歯電極15のバスバー17は、SAWの伝搬方向に交差する方向(D2軸方向)において対向している。
複数の電極指19は、例えば、概ね一定の幅でSAWの伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)に直線状に延びる長尺状に形成されており、SAWの伝搬方向(D1軸方向)に概ね一定の間隔で配列されている。
一般に、SAW共振子においては、1対の櫛歯電極15の複数の電極指19は、そのピッチp(例えば電極指19の中心間距離)が、共振させたい周波数でのSAWの波長λの半波長(λ/2)と同等となるように設けられている。一方、後述の説明から理解されるように、本実施形態の弾性波共振子においては、ピッチpは、そのような大きさになるとは限らない。なお、SAWの波長λは、例えば、1.5μm以上6μm以下である。
SAW共振子と同様に、複数の電極指19の一部においては、そのピッチpが相対的に小さくされたり、逆に、ピッチpが相対的に大きくされたりしてもよいし、また、ピッチpが通常のピッチpの整数倍となるいわゆる間引きが行われてもよい。なお、本実施形態において、単にピッチpという場合、特に断りがない限り、上記のような特異な部分(狭ピッチ部、広ピッチ部または間引き部等)を除いた部分(複数の電極指19の大部分)のピッチpまたはその平均値をいうものとする。また、同様に、特に断りがない限り、単に電極指19というときは、特異な部分以外における電極指19を指すものとする。
複数の電極指19の本数、長さ(D2軸方向)および幅(D1軸方向)は、弾性波共振子1に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。その設定においては、後述する説明から理解されるように、基本的にはSAW共振子における考え方を利用できる。一例として、電極指19の本数は100以上400本以下である。電極指19の長さおよび幅は、例えば、複数の電極指19間で互いに同等である。
ダミー電極21は、例えば、一方の櫛歯電極15において複数の電極指19の中間位置にてバスバー17から突出しており、その先端は、他方の櫛歯電極15の電極指19の先端とギャップを介して対向している。ダミー電極21の長さおよび幅は、例えば、複数のダミー電極21間で互いに同等である。
反射器13は、例えば、圧電基板7の上面上に形成された導電パターン(導電層)によって構成されており、平面視において格子状に形成されている。すなわち、反射器13は、SAWの伝搬方向に交差する方向において互いに対向する1対のバスバー(符号省略)と、これらバスバー間において弾性波(例えばSAW)の伝搬方向に直交する方向(D2軸方向)に延びる複数のストリップ電極(符号省略)とを有している。
反射器13の複数のストリップ電極は、複数の電極指19の配列に続くようにD1軸方向に配列されている。ストリップ電極の本数および幅は、弾性波共振子1に要求される電気特性等に応じて適宜に設定されてよい。複数のストリップ電極のピッチは、例えば、複数の電極指19のピッチと同等である。また、反射器13の端部のストリップ電極とIDT電極11の端部の電極指19との間隔は、例えば、複数の電極指19のピッチpと同等である(ピッチpの整数倍でもよい。)。
IDT電極11および反射器13等を構成する導体層は、例えば、金属により構成されている。この金属としては、例えば、AlまたはAlを主成分とする合金(Al合金)が挙げられる。Al合金は、例えば、Al−Cu合金である。なお、導体層は、複数の金属層から構成されてもよい。
IDT電極11および反射器13の厚みt(図2)は、例えば、これら全体に亘って一定である。後述するように、本実施形態の弾性波共振子1では、この厚みtは、共振子特性を規定するパラメータとして利用される。
以上のような構成の弾性波共振子1においては、まず、SAW共振子と同様の作用が生じる。具体的には、一方の櫛歯電極15に電気信号が入力され、複数の電極指19によって圧電基板7に電圧が印加されると、圧電基板7の上面付近において、当該上面に沿って伝搬するSAWが誘起される。このSAWは、複数の電極指19および反射器13の複数のストリップ電極によって反射される。その結果、電極指19のピッチpを概ね半波長(λ/2)とするSAWの定在波が形成される。定在波は、圧電基板7の上面に電荷(定在波と同一周波数の電気信号)を生じさせ、その電気信号は他方の櫛歯電極15の複数の電極指19によって取り出される。
また、弾性波共振子1では、上記のように、複数の電極指19によって圧電基板7に電圧が印加されると、SAWだけでなく、圧電基板7の内部を伝搬するバルク波も励起される。特許文献2では、貼り合わせ基板3の圧電基板7のように圧電基板が薄いと、バルク波がスプリアスの要因となることを開示している。本実施形態では、このバルク波スプリアスを、共振周波数と反共振周波数との間の周波数の差Δfを狭くすることに利用する。
(新たな弾性波共振子の原理)
図3(a)および図3(b)は、弾性波共振子1の原理を説明するための図である。図3(a)および図3(b)において、横軸は周波数f(Hz)を示しており、縦軸はインピーダンスの絶対値|Z|(Ω)を示している。
なお、以下の説明において、便宜上、共振点および共振周波数に同一の符号を用いることがある。同様に、反共振点および反共振周波数に同一の符号を用いることがある。
図3(a)において、点線L0は、本実施形態の弾性波共振子1とは異なる、通常のSAW共振子における共振特性を示している。公知のように、SAW共振子においては、インピーダンスが極小値を取るSAW共振点fsrと、インピーダンスが極大値を取るSAW反共振点fsaとが現れる。SAW反共振周波数fsaはSAW共振周波数fsrよりも高い。また、両者の間の周波数の差Δf(=fsa−fsr)が狭くなると、例えば、SAW共振子によってフィルタを構成したときに、周波数の変化に対する減衰量の立ち上がりまたは立ち下りが急峻になり、フィルタ特性が向上する。
なお、このSAW共振子は、SAW共振点fsrとSAW反共振点fsaとの間にバルク波スプリアスが存在しない場合を例に説明している。
図3(b)において、実線L1は、本実施形態の弾性波共振子1における共振特性を示している。弾性波共振子1においては、圧電基板7が薄いことによって、バルク波スプリアスSP0が現れる。バルク波スプリアスSP0には、例えば、インピーダンスが極小値を取るバルク波共振点fbrと、インピーダンスが極大値を取るバルク波反共振点fbaとが現れる。バルク波共振周波数fbrとバルク波反共振周波数fbaとの高低の関係は、例えば、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの高低の関係と逆であり、バルク波共振周波数fbrはバルク波反共振周波数fbaよりも高い。また、両者間の周波数の差Δf(=fbr−fba)は、例えば、SAWにおける周波数の差Δfに比較して狭い。
ここで、圧電基板7の厚みtおよび電極部5の厚みtならびに電極指間隔等を適宜に設定すると、バルク波スプリアスSP0(バルク波共振周波数fbrおよびバルク波反共振周波数fba)がSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置する。その結果、SAW共振点fsrとバルク波反共振点fbaとで、周波数の差Δf(=fba−fsr)の共振点と反共振点とが構成される。同様に、バルク波共振点fbrとSAW反共振点fsaとで、周波数の差Δf(=fsa−fbr)の共振点と反共振点とが構成される。
そこで、本実施形態の弾性波共振子1では、上記のSAW共振点fsrとバルク波反共振点fbaとの組み合わせ(周波数の差Δf)、またはバルク波共振点fbrとSAW反共振点fsaとの組み合わせ(周波数の差Δf)を正規の共振点と反共振点との組み合わせとして利用する。周波数の差ΔfおよびΔfは、Δfよりも狭いから、周波数の差Δfが狭い共振特性が実現される。これが新たな弾性波共振子の原理である。
なお、このように、本実施形態では、バルク波スプリアスをスプリアスとしては扱わないことがある。ただし、便宜上、共振点または反共振点が利用されるバルク波についてもバルク波スプリアスということがある。
(各種の寸法の設定)
以下では、弾性波共振子1の各種の寸法がSAWおよびバルク波による共振特性に及ぼす影響を示し、上述した新たな原理を利用するための各種の寸法の具体的な設定方法について説明する。
(電極厚み)
電極部5(電極指19)の厚みtを互いに異ならせた複数の弾性波共振子1を想定して、共振特性をシミュレーション計算によって求めた。
シミュレーション計算の条件は、以下のとおりである。
圧電基板:
材料:タンタル酸リチウム単結晶
カット角:42°Y板
厚みt:7.2μm
支持基板:シリコン
IDT電極:
材料:Al−Cu合金
厚みt:121〜181nmまで10nmずつ異ならせた。
電極指のピッチp:0.81207μm
電極指のデューティー比:0.5
なお、デューティー比は、電極指の幅/pである。
図4は、上記のようなシミュレーション計算結果を示す図である。
この図において、横軸は周波数f(MHz)を示し、縦軸はインピーダンスの絶対値|Z|(Ω)を示している。線L51〜L57と、電極の厚みtとの対応関係は、次のとおりである。なお、括弧内は、厚みtを電極指19のピッチpで正規化した正規化厚みt/2pの値を示している。L51:121nm(約0.075)、L52:131nm(約0.081)、L53:141nm(約0.087)、L54:151nm(約0.093)、L55:161nm(約0.099)、L56:171nm(約0.105)、L51:181nm(約0.111)。
点線で囲った領域Rrは、線L51〜L57のSAWによる共振点が現れている領域を示している。また、点線で囲った領域Raは、線L51〜L57のSAWによる反共振点が現れている領域を示している。矢印で示す領域R1〜R4は、バルク波スプリアスが現れている領域を示している。
線L51〜L57の比較から理解されるように、電極部5の厚みtを厚くすると、SAWによる共振周波数および反共振周波数は低周波数側へ移動する。一方、電極部5の厚みtを厚くしても、バルク波スプリアスの周波数は、SAWによる共振周波数および反共振周波数に比較して、殆ど変化しない。
従って、電極部5の厚みtを厚くまたは薄くすることによって、バルク波による共振周波数および反共振周波数(図4の例では領域R1のバルク波スプリアス)をSAWによる共振周波数および反共振周波数の間に位置させることができる。さらには、SAWの共振周波数とバルク波の反共振周波数との間の周波数の差Δf(図3)、またはバルク波の共振周波数とSAWの反共振周波数との間の周波数の差Δf(図3)を調整できる。
なお、後述するように、圧電基板7の厚みを変化させると、バルク波スプリアスの周波数は変化する。従って、圧電基板7の厚みによっては、電極部5の厚みtを厚くまたは薄くしなくても、バルク波スプリアスは、SAWによる共振周波数および反共振周波数の間に位置する。すなわち、本実施形態の弾性波共振子1の実現において、厚みtの調整は必須の要件ではない。
バルク波スプリアスは、1つの周波数領域だけでなく、複数の周波数領域R1〜R4において現れている。SAWによる共振周波数および反共振周波数の間に位置させるバルク波スプリアスは、いずれの領域のバルク波スプリアスであってもよい。
線L51およびL52においては、一見すると領域R1においてバルク波スプリアスが生じていないようにみえる。また、線L53〜L57において、電極部5の厚みtが厚いものほど、領域R1のバルク波スプリアスの振れ幅が大きくなっている。これは、バルク波スプリアスの励振効率が高い周波数が、厚みtが厚くなるにつれて低周波数側に移動することからである。すなわち、厚みtを厚くすると、バルク波スプリアスの周波数と、SAWによる共振周波数および反共振周波数との相対関係を変化させることができるだけでなく、バルク波スプリアスの振れ幅を大きくすることができる。
図4は、上記のような電極部5の厚みtが共振特性に及ぼす定性的な影響だけでなく、定量的な影響の一例も示している。以下に、図4の各線L51〜L57について、SAWによる反共振周波数fsa(領域Ra)と、領域R2におけるバルク波による反共振周波数fb2aと、これらの周波数差(fb2a−fsa)の一覧を示す。なお、領域R1のバルク波スプリアスではなく、領域R2のバルク波スプリアスを用いるのは、上述のように、線L51およびL52については領域R1においてバルク波スプリアスが生じなかったことなどからである。
sab2ab2a−fsa
(nm) (MHz) (MHz) (MHz)
121 2533.1 2573.6 40.5
131 2520.7 2573.6 52.9
141 2506.7 2572.1 65.4
151 2492.0 2572.1 80.1
161 2474.9 2572.1 97.2
171 2455.9 2570.5 114.7
181 2436.6 2570.5 133.9
=121nm(t/2p≒0.075)の場合と、t=181nm(t/2p≒0.111)の場合との比較から理解されるように、厚みtを60nm(t/2pを0.036)変えると(t=121nmから約50%厚くすると)、バルク波スプリアスの周波数に対してSAWによる共振周波数および反共振周波数を90MHz以上(2500MHzで正規化すると90/2500×100=3.6%以上)変化させることができる。従って、例えば、本実施形態の弾性波共振子1を実現するためのバルク波およびSAWの周波数の相対関係の調整は、厚みtを現実的な範囲で調整することによって十分に実現できることが確認された。
また、図4において、バルク波スプリアスR1が小さくSAWの共振周波数と反共振周波数との間に位置しないように見える線L51は、従来のSAW共振子の共振特性として捉えることができる。また、線L51において、SAW共振周波数とSAW反共振周波数との間の周波数の差Δfは約100MHzである。一方、例えば、線L57において、バルク波共振周波数とSAW反共振周波数との間の周波数の差Δfは約30MHzである。従って、図4の例では、従来のSAW共振子に対して電極部5の厚みtを50%だけ厚くすることによって、周波数の差Δfを従来の30%まで狭くでき、顕著な効果が奏されている。
本実施形態の弾性波共振子1を実現するために、電極部5の厚みtは、通常のSAW共振子の電極部5の厚みtに比較して、厚くされてもよいし、薄くされてもよい。例えば、通常のSAW共振子の電極部5に比較して弾性波共振子1の電極部5を厚くしてよい。この場合、例えば、圧電基板7の材料およびカット角等として、実際に利用されている、または利用が容易なものを採用しつつ、周波数が比較的低いバルク波スプリアスを利用することが容易である。周波数が比較的低いバルク波スプリアスを利用することによる効果については後述する。
通常のSAW共振子においては、電極部5(電極指19)の厚みtは、SAWの励振効率が最も高くなるように設定される。一般に、厚みtを電極指19のピッチpで正規化した正規化厚みt/2pは0.070程度である。従って、例えば、正規化厚みt/2pが0.075以上であれば、バルク波を考慮している可能性がある。また、正規化厚みt/2pが0.080を超えていれば、通常のSAW共振子の正規化厚みt/2p(0.07)から約15%厚くなっており、誤差の範囲を優に越えており、ほぼ確実にバルク波を考慮しているといえる。
また、電極部5の厚みtが正規化厚みで0.06以下や0.09以上となると、ロスが大きくなり、通常の設計では採用しない厚みである。このように、厚すぎる場合および薄すぎる場合であってもバルク波を考慮しているといえる。
なお、通常のSAW共振子において、電極指19の厚みとは、電極指19の交差領域の中心付近における厚みを指すものとする。
(電極指ピッチ)
特に図示しないが、電極指19のピッチpを変化させると、SAWの定在波およびバルク波の定在波(バルク波スプリアス)の双方の周波数が変化する。すなわち、ピッチpを小さくすれば、SAWの定在波およびバルク波の定在波の周波数は高くなり、ひいては、SAWおよびバルク波による共振周波数および反共振周波数は高くなる。これは、IDT電極11による定在波の励振の原理から自明である。
従って、所望の周波数の差ΔfまたはΔfを得るように電極指19(電極部5)の厚みtを設定するとともに、ピッチpを適宜に設定すれば、周波数の差Δf、SAW共振周波数fsrおよびバルク波反共振周波数fbaの所望の組み合わせ、または周波数の差Δf、バルク波共振周波数fbrおよびSAW反共振周波数fsaの所望の組み合わせが実現される。
具体的には、例えば、まず、ピッチpとして適当な値を仮定する。例えば、弾性波共振子1において得ようとするSAW共振周波数fsrまたはSAW反共振周波数fsaを、通常のSAW共振子において得る場合と同様にピッチpを設定する。次に、その仮定のもとで所望の周波数の差ΔfまたはΔfを得ることができる電極指19の厚みtを算出する。次に、その算出された厚みtにおいて所望のSAW共振周波数fsrおよびバルク波反共振周波数fba、または所望のバルク波共振周波数fbrおよびSAW反共振周波数fsaが得られるピッチpを算出する。ピッチpを最初に仮定した値から変えても、SAWおよびバルク波の双方の周波数が共に変化することから、所望の周波数の差ΔfまたはΔfが維持されたまま、所望のfsrおよびfba、または所望のfbrおよびfsaが実現される。
上記のような設定において、電極指19の厚みtが厚くされた場合においては、SAWの共振周波数および反共振周波数は低周波数側へ移動するから、これらの周波数が高くなるように電極指19のピッチpは狭くされる。逆に、電極指19の厚みtが薄くされた場合においては、SAWの共振周波数および反共振周波数は高周波数側へ移動するから、これらの周波数が低くなるように電極指19のピッチpは広くされる。
ただし、既述のように、電極指19の厚みtが通常のSAW共振子における厚みtよりも厚くされることによって本実施形態の弾性波共振子1が実現される場合においては、圧電基板7の材料およびカット角等として、実際に利用されている、または利用が容易なものを採用しつつ、周波数が比較的低いバルク波スプリアスを利用することが容易である。従って、電極指19のピッチpは、弾性波共振子1において、通常のSAW共振子のピッチpに比較して狭くなる場合が多いと考えられる。
ここで、通常のSAW共振子におけるピッチpは、基本的に、SAWの伝搬速度Vと共振周波数fsrとから求まる波長λ=V/fsrの半分(λ/2)となっている。従って、ピッチpを狭くすることによって周波数が調整された弾性波共振子1(製品)においては、圧電基板7の材料およびカット角に基づいて伝搬速度Vを特定し(実測されてもよい)、実際の共振周波数f(fsrまたはfbr(>fsr))を測定し、λ=V/fを算出すると、p<λ/2となっている。なお、ピッチpが半波長λ/2よりも小さいという場合、製造誤差によってそのような状態が生じている場合を除くものとする。ピッチpの製造誤差は、例えば、50nmである。
上述のように、後に説明する圧電基板7の厚み等によっては、電極指19の厚みtを調整しなくても、所望の周波数の差ΔfまたはΔfが得られることもある。この場合は、例えば、電極指19のピッチpのみの調整でよいことになる。また、例えば、ピッチpの初期値を適当に設定した結果、バルク波による反共振周波数または共振周波数が、得ようとしているバルク波反共振周波数fba、またはバルク波共振周波数fbrに概ね一致することも考えられる。この場合は、電極指19の厚みtのみの調整でよいことになる。もちろん、厚みtおよびピッチpの双方の調整が不要な場合も生じ得る。
(圧電基板の厚みの定性的な影響)
本願発明者は、鋭意遂行を重ねた結果、種々の周波数のバルク波スプリアスが以下のメカニズムで発生していることを推定した。
IDT電極11によって圧電基板7に電圧を印加すると、振動方向のモードおよび次数のモードの少なくとも一方が互いに異なる複数種類のバルク波が生じる。振動方向のモードは、例えば、D3軸方向に振動するモード、D2軸方向に振動するモードおよびD1軸方向に振動するモードである。各振動方向のモードにはそれぞれ、複数の次数のモードがある。この次数のモードは、例えば、深さ方向(D3軸方向)における節および腹の数により規定される。
そこで、圧電基板7の厚みtを互いに異ならせた複数のSAW共振子(本実施形態の弾性波共振子1とは異なり、電極指19の厚みtおよびピッチpの調整をしていないもの)を想定して、圧電基板7の厚みが各モードのバルク波の周波数に及ぼす影響を調べた。具体的には、シミュレーション計算によって、種々の厚みの圧電基板7において生じる各モードのバルク波の周波数を計算した。
図5(a)は、上記のようなシミュレーション計算結果を示す図である。
この図において、横軸(t)は、圧電基板7の厚みを示している。縦軸(f)は、バルク波の周波数(弾性波共振子1ではバルク波共振周波数fbrとして現れる)を示している。複数の線L11〜L17は、振動方向のモードおよび次数のモードの少なくとも一方が互いに異なる複数種類のバルク波の周波数を示している。
なお、この図において、線L15,L16,L17のプロットは途中までとしたが、実際には線L11〜L14と同様に厚みの増加とともに周波数が低下する線が続く。さらに、図示はしていないが、線L17以降(線L18、線L19・・・)もL11〜L17と同様の傾向を有する線が無数に存在している。また、通常の貼り合せ基板において、圧電基板7の厚みは20μmが推奨されていることが多い。すなわち、通常の貼り合せ基板の厚みは、図5(a)に示す厚み範囲よりもさらに厚い。
この図に示されているように、いずれのモードのバルク波も、圧電基板7の厚みを薄くすると、周波数が高くなる。
線L11および線L12は、振動方向のモードが互いに同一で、次数のモードが互いに異なるバルク波の周波数を示している。矢印で示しているように、この2つのバルク波の周波数間隔は、圧電基板7の厚みを薄くすると、大きくなる。なお、他の、振動方向のモードが互いに同一で、次数のモードが互いに異なるバルク波(例えば線L13およびL14)についても同様である。
図5(b)は、圧電基板7の厚みと、上記のような同一の振動方向のモードで次数のモードが異なるバルク波の周波数間隔との関係を示す図である。この図は、シミュレーション計算結果から得られている。
横軸Dfは、周波数間隔を示している。縦軸t/2pは、圧電基板7の正規化厚みを示している。正規化厚みt/2pは、圧電基板7の厚みtを電極指19のピッチpの2倍(ここでは基本的にSAWの波長λと同一)で割ったものであり、無次元量である(単位はない)。この図において各プロットはシミュレーション計算によって得られたバルク波の周波数間隔を示しており、線は近似曲線を示している。
この図に示されているように、圧電基板7の正規化厚みを薄くした場合のバルク波の周波数間隔は、圧電基板7の正規化厚みが薄いほど、急激に増加する。例えば、正規化厚みt/2pが5以上においては、周波数間隔はあまり変化しない。一方、正規化厚みt/2pが3以下になると周波数間隔が急激に増加する。なお、正規化厚みt/2pが3以下になると曲線の傾きは一定に近づく。
従って、例えば、圧電基板7の厚みt(正規化厚みt/2p)を比較的薄くすると、バルク波スプリアス間の周波数間隔が広くなることから、SAW共振周波数fsrおよびSAW反共振周波数fsaの間およびその周囲の周波数領域において、Δfを狭くすることに利用しようとしているバルク波スプリアスの周波数のみを位置させ、真にスプリアスとなる他のバルク波スプリアスを前記の周波数領域から遠ざけることができる。
また、例えば、厚みt(正規化厚みt/2p)を比較的薄くすると、バルク波スプリアス間の周波数が高くなる。その結果、例えば、無数のバルク波スプリアスのうち最も周波数が低いバルク波スプリアス(線L11)が、弾性波共振子1において実現しようとしている共振周波数および反共振周波数に近づきやすくなる。これにより、Δfを狭くすることに利用するバルク波スプリアスとして、最も周波数が低いバルク波スプリアスを選択しやすくなる。これによる効果は後述する。
(圧電基板の厚みの定量的な影響)
図6を参照して、圧電基板7の厚みの影響を定量的に評価して、圧電基板7の厚みの範囲の例について述べる。
図6は、図5(a)のような圧電基板7の厚みとバルク波の周波数との関係を示す図であり、圧電基板7の厚みが比較的薄い範囲における、周波数が低い側の3つのバルク波の周波数を示している。
図6は、シミュレーション計算に基づいて得られている。シミュレーションの条件を以下に示す。
圧電基板:
材料:タンタル酸リチウム単結晶
カット角:42°Y板
支持基板:シリコン
IDT電極:
材料:Al−Cu合金
厚みt:121nm
電極指のピッチp:0.80413μm
電極指のデューティー比:0.5
なお、デューティー比は、電極指の幅/pである。
図6において、横軸は正規化厚みt/2pを示しており、縦軸は正規化周波数f×2pを示している。正規化周波数f×2pは、周波数fと、電極指19のピッチpの2倍(ここでは基本的にSAWの波長λと同一)との積である。
線L21は、図示の範囲(t/2pが1以上3以下である範囲およびその周囲)において最も周波数が低いバルク波を示している。このバルク波を、第1振動方向モードの1番目の次数モードのバルク波と呼ぶこととする。なお、第1振動方向モードの振動方向は、タンタル酸リチウムでは概ねD3軸方向に振動するバルク波である。なお、この線L21は、発生し得るバルク波のうち、1番低周波数側に発生するものである。
線L22は、線L21のバルク波と振動方向のモードが同一であるバルク波のうち、次数(別の観点では周波数)が線L21のバルク波に次いで低いものを示している。このバルク波を、第1振動方向モードの2番目の次数モードのバルク波と呼ぶこととする。
線L23は、線L21およびL22のバルク波とは振動方向のモードが異なるバルク波のうち、図示の範囲で最も周波数が低いバルク波である。このバルク波を、第2振動方向モードの1番目の次数モードのバルク波と呼ぶこととする。線L23は、線L21よりも周波数が高いが、線L22と交差しており、当該交差点よりも正規化厚みt/2pが薄い範囲においては、線L22よりも周波数が低い。なお、第2振動方向モードの振動方向は、タンタル酸リチウムでは概ねD2軸方向に振動するバルク波である。
線L21〜L23は、図5(a)の線L11〜L13に対応している。上述の線L21〜L23についての説明および図6と図5(a)との比較から理解されるように、図示の範囲において、線L21よりも下に位置する(周波数が低い)線を描くバルク波は存在しない。また、図示の範囲において、線L21と、線L22または線L23との間に位置する線を描くバルク波も存在しない。換言すれば、他のバルク波は、図示の範囲において、線L22およびL23よりも上に位置する(周波数が高い)。
従って、SAW共振周波数fsrが線L21よりも低周波数側に位置し、SAW反共振周波数fsaが線L21〜L23に囲まれる領域に収まっていれば、周波数の差Δfを狭くすることに線L21のバルク波スプリアスを利用できる。弾性波共振子1では、そのような周波数の関係になるように圧電基板7の厚みt(正規化厚みt/2p)が設定されてよい。
作製された1つの製品としての弾性波共振子について見れば、当該製品は、正規化厚みt/2pとして1つの値のみを有するから、最も低い周波数のバルク波スプリアスの周波数と、その次に低い周波数のバルク波周波数との間に、SAW反共振周波数fsaが収まることになる。そして、上記次に低い周波数のバルク波周波数が、線L22のものか線L23のものか(交点においては双方)ということになる。
線L21よりも低周波数側の領域または線L21〜L23で囲まれる領域は、上述の通り他のバルク波が発生しない領域であるが、この領域は、他の線のどの組み合わせで囲まれる領域に比べても極めて広くなっている特異領域である。これは、ある周波数範囲(例えば、SAW共振周波数fsrまたはSAW反共振周波数fsaの周辺の範囲)においてバルク波スプリアスが全く発生しないという、グラフ縦軸方向の利点に加え、圧電基板7の厚みが多少ばらついてもバルク波スプリアスが発生しないというグラフ横軸方向の利点を実現できる。
正規化厚みt/2pは、例えば、1以上3以下とされてよい。この場合、例えば、上記のように最も周波数が低いバルク波スプリアス(線L21)を利用できる。
/2pが1未満であると、例えば、SAWの損失が大きくなる。また、例えば、SAWの周波数が圧電基板7の下面の状態の影響を受けやすくなり、周波数特性の複数の弾性波共振子1間におけるばらつきが大きくなる。また、例えば、圧電基板7の強度を確保することが難しくなる。逆に言えば、t/2pが1以上であると、そのような不都合が解消または低減される。
また、t/2pが3以下であると、例えば、既に言及したように、モードが互いに異なるバルク波同士の周波数間隔が比較的広い。また、例えば、実際のSAWの伝搬速度等を考慮したときに、最も周波数が低いバルク波スプリアスの周波数をSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置させやすい。
なお、正規化厚みt/2pが1以上3以下というのは、あくまで範囲の一例であり、正規化厚みt/2pが1未満または3超の範囲で、最も周波数が低いバルク波スプリアスの周波数がSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置していてもよい。
弾性波共振子1におけるピッチpの2倍(2p)は、例えば、1.5μm以上6μm以下である。従って、tは、例えば、1.5μm以上18μm以下である。圧電基板7の薄型化に付随する他の効果(例えば支持基板9の温度補償効果の増大)等を目的として、上記の範囲よりもさらに薄くして、tは、1.5μm以上10μm未満とされてもよい。
(支持基板)
上述の例では、支持基板9としてSi基板を用いた場合を例に説明したが、サファイア基板を用いた場合についても、同様であることを確認している。具体的には、図6で示す線L21〜L23を数式で表すと、傾き等を定める各係数に違いはあるが、同様の傾向が示される。具体的には、正規化厚みをx、正規化周波数をyとすると、支持基板としてSi基板を用いた場合には線L21〜L23の近似式は以下の通りとなる。
L21:y = 71.865x4 - 706.82x3 + 2641.5x2 - 4567.1x + 6518.1
L22:y = 466.89x4 - 2884x3 + 6768x2 - 7310.5x + 7544.4
L23:y = -66.245x3 + 689.86x2 - 2546x + 6941.6
同様にサファイア基板を用いた場合には線L21〜L23の近似式は以下の通りとなる。
L21:y = 33.795x4 - 419.77x3 + 1966.9x2 - 4212.8x + 6990.5
L22:y = -54.624x3 + 625.48x2 - 2533.6x + 7334.6
L23:y = -258.23x3 + 1477.7x2 - 2912.2x + 6418.1
(電極厚みおよび電極指ピッチの組み合わせ)
既に述べたように、例えば、電極部5の厚みtを厚くするとSAW共振周波数fsrおよびSAW反共振周波数fsaは低くなる。また、この周波数の低下は、電極指19のピッチpを狭くすることによって補償できる。この際、バルク波は、高次のモードほど、周波数が高くなる。その結果、例えば、バルク波スプリアスを利用することがより容易化される。このことを以下に示す。
図7は、図6よりもIDT電極11の厚みtを厚くした場合の図6に対応する図である。
図7は、図6と同様に、シミュレーション計算に基づいて得られている。図6と異なるシミュレーション条件を以下に示す。
IDT電極:
厚みt:201nm
電極指のピッチp:0.75768μm
線L31〜L33は、線L21〜L23に対応する。すなわち、線L31〜L33は、第1の振動方向モードの1番目の次数モード、第1の振動方向モードの2番目の次数モードおよび第2の振動方向モードの1番目の次数モードに対応している。なお、図の横軸は、図6と同様としている。すなわち、IDT電極11の厚みおよびピッチは調整前の値となっている。そして、線L31は図5と同様の厚みの場合の、線L32,線L33は上述の厚みとした場合のシミュレーション結果を示している。
図7では、図6に比較して、線L32およびL33(特に線L32)の周波数が高くなっており、ひいては、線L31〜L33に囲まれる領域の周波数の幅が広くなっている。これにより、図6よりも高周波側にSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとを位置させたい場合、および/または図6よりも高周波側にバルク波スプリアスの周波数を位置させたい場合に、その周辺の周波数領域に真にスプリアスとなる線L32およびL33のバルク波スプリアスが現れるおそれが低減される。
このように、図7の結果は、IDT電極11の厚みおよびピッチを調整することで、図5における線L21〜L23で囲まれる前述の特異範囲を、所望の位置にずらすことができることを示している。すなわち、特異領域を高周波数側にずらしたり、低周波数側にずらしたりすることができる。さらに、最も周波数が低いバルク波スプリアスを利用できる圧電基板7の厚み範囲を実現可能な領域にくるように調整したり、厚み範囲を広げたりすることができる。
(設計方法)
図8は、電極部5の厚みtおよび電極指19のピッチp等の設計手順の一例を示すフローチャートである。
この手順は、これまでに述べた設計方法の手順をより具体化して示している。また、図3(b)を参照して説明したように、弾性波共振子1は、SAW共振周波数fsrおよびバルク波反共振周波数fba(周波数の差Δf)を用いる態様と、バルク波共振周波数fbrおよびSAW反共振周波数fsa(周波数の差Δf)を用いる態様とがあるが、前者を例にとって説明する。
ステップST1では、弾性波共振子1の種々の設計条件乃至は設計値について初期設定を行う。例えば、圧電基板7の、材料、カット角および厚みt、ならびに電極指19の、材料、厚みt、交差幅、ピッチp、デューティー比および本数等について適宜に選択する。この際、ステップST1の後に変更される厚みtおよびピッチpについても仮の値を設定する。また、この初期設定は、例えば、既に述べたように、弾性波共振子1において得ようとするSAW共振周波数fsrまたはSAW反共振周波数fsa(図8の手順ではSAW共振周波数fsr)を、通常のSAW共振子において得る場合と同様になされてよい。
ステップST2では、ステップST1で設定した設計条件乃至は設計値に基づいて共振特性を計算する。具体的には、例えば、シミュレーション計算を行って、SAW共振周波数fsr、バルク波反共振周波数fbaおよびこれらの間の周波数の差Δfを算出する。
ステップST3では、ステップST2で算出した周波数の差Δfが、目標とする周波数の差Δfに一致するか否かを判定する。なお、ここでいう一致するか否かの判定は、両者の差が所定の許容範囲内に収まっているか否かの判定を含む。後述するステップST6およびST9等も同様である。そして、一致していないと判定したときは、ステップST4に進み、一致していると判定したときは、ステップST4およびST5をスキップしてステップST6に進む。
ステップST4では、算出される周波数の差Δfが、目標とする周波数の差Δfに近づくように電極部5の厚みtの設計値を変更する。すなわち、Δf(=fba−fsr)<Δfであれば(Δf≦0も含む)、SAW共振周波数fsrが低周波数側に移動するように厚みtの設計値を厚くする。逆に、Δf>Δfであれば、SAW共振周波数fsrが高周波数側に移動するように厚みtの設計値を薄くする。このときの変更量は適宜に設定されてよく、また、一定量であってもよいし、ΔfとΔfとの差の大きさに応じて調整されてもよい。
ステップST5では、ステップST2と同様の計算を行う。そして、ステップST3へ戻る。これにより、ステップST3で肯定判定がなされるまで、厚みtの設計値の変更が行われる。
ステップST6では、SAW共振周波数fsrが目標共振周波数ftrに一致するか否かを判定する。そして、一致していないと判定したときは、ステップST7に進み、一致していると判定したときは、ステップST7およびST8をスキップしてステップST9に進む。
ステップST7では、SAW共振周波数fsrが目標共振周波数ftrに近づくように電極指19のピッチpの設計値を変更する。すなわち、fsr<ftrであればSAW共振周波数fsrが高周波数側に移動するようにピッチpの設計値を狭くする。逆に、fsr>ftrであればSAW共振周波数fsrが低周波数側に移動するようにピッチpの設計値を広くする。このときの変更量は適宜に設定されてよく、また、一定量であってもよいし、fsrとftrとの差の大きさに応じて調整されてもよい。
ステップST8では、ステップST2と同様の計算を行う。そして、ステップST6へ戻る。これにより、ステップST6で肯定判定がなされるまで、ピッチpの設計値の変更が行われる。
ステップST9では、バルク波反共振周波数fbaが目標反共振周波数ftaに一致するか否かを判定する。基本的には、ステップST3で周波数の差Δfが目標値に一致した後、ステップST6でSAW共振周波数fsrが目標値に一致していれば、バルク波反共振周波数fba(=fsr+Δf)も目標反共振周波数ftaに一致する。ただし、ピッチpはΔfに若干影響を及ぼすことから、確認的にこのような判定を行う。
そして、ステップST9で一致していないと判定したときは、ステップST3に戻る。これにより、周波数の差ΔfおよびSAW共振周波数fsrの双方(ひいてはバルク波反共振周波数fba)が目標値に一致するまで、ステップST3以降が繰り返される。また、一致していると判定したときは、設計手順は完了する。
なお、ステップST9に代えてステップST3と同様の判定が行われてもよい。また、ステップST6の判定とステップST9の判定とは可逆である。すなわち、SAW共振周波数fsrを目標値に一致させるステップと、バルク波反共振周波数fbaを目標値に一致させるステップとは、同一のステップと捉えられてもよい。同様に、周波数の差Δfを利用する場合、SAW反共振周波数fsaを目標値に一致させるステップと、バルク波共振周波数fbrを目標値に一致させるステップとは、同一のステップと捉えられてよい。
<弾性波共振子の利用例>
以下、弾性波共振子1の利用例として、弾性波フィルタ、分波器および通信装置について説明する。
(弾性波フィルタ)
図9(a)は、弾性波共振子1を含む弾性波フィルタ51を模式的に示している。弾性波フィルタ51は、いわゆるラダー型共振子フィルタであり、ラダー型に接続された1以上(図9(a)では2つ)の直列共振子53Aおよび53Bならびに1以上(図9(a)では3つ)の並列共振子55A〜55Cを有している。なお、以下では、これらの符号のA、BまたはCを省略することがある。
直列共振子53および並列共振子55それぞれは、例えば、IDT電極11およびその両側の反射器13を含む1ポート共振子である。これら複数の共振子のIDT電極11および1対の反射器13(電極部5)は、例えば、共通の圧電基板7上に設けられている。
1以上の直列共振子53は、例えば、1対の端子57(端子に代えて配線でもよい)間に直列に接続されている。すなわち、1対の櫛歯電極15の一方は1対の端子57の一方に直接または間接に接続され、1対の櫛歯電極15の他方は1対の端子57の他方に直列または間接に接続されている。
1以上の並列共振子55は、例えば、1対の端子57間(別の観点ではいずれか一の直列共振子53の前または後)と、基準電位部との間に接続されている。すなわち、1対の櫛歯電極15の一方は1対の端子57間に接続され、1対の櫛歯電極15の他方は基準電位部に接続されている。
直列共振子53および並列共振子55は、並列共振子55の反共振周波数と直列共振子53の共振周波数とが一致するように構成されている。これにより、1対の端子57間に、並列共振子55の反共振周波数および直列共振子53の共振周波数を通過帯域の中心とするフィルタが構成される。
そして、1以上の直列共振子53および1以上の並列共振子55のうち少なくともいずれか1つは、本実施形態の弾性波共振子1によって構成されている。
例えば、図9(a)をさらに模式的にした図9(b)に示すように、並列共振子55の1つが本実施形態の弾性波共振子1によって構成され、直列共振子53および他の並列共振子55が従来のSAW共振子59によって構成されてもよい。このように並列共振子55に本実施形態の弾性波共振子1を用いると、周波数の差Δfを狭くできることから、通過帯域の低周波数側における減衰量の立ち上がりを急峻化でき、弾性波フィルタ51のフィルタ特性が向上する。特に、複数の並列共振子55の中で、最も共振周波数が高い並列共振子55に本実施形態の弾性波共振子1を用いるとよい。
また、例えば、図9(b)とは異なる例の模式図である図9(c)に示すように、直列共振子53の1つが本実施形態の弾性波共振子1によって構成され、他の直列共振子53および並列共振子55が従来のSAW共振子59によって構成されてもよい。このように直列共振子53に本実施形態の弾性波共振子1を用いると、周波数の差Δfを狭くできることから、通過帯域の高周波数側における減衰量の立ち下がりを急峻化でき、弾性波フィルタ51のフィルタ特性が向上する。特に、複数の直列共振子53の中で、最も共振周波数が低い直列共振子53に本実施形態の弾性波共振子1を用いるとよい。
ここで、従来のSAW共振子59とは、弾性表面波を励振するIDT電極を備えたものであり、弾性波共振子1と異なり、弾性表面波の共振周波数と反共振周波数との間に、バルク波スプリアスが位置していないか、3以上位置しているものである。すなわち、弾性表面波の共振周波数と反共振周波数との間に、バルク波の共振周波数と反共振周波数は0個か5個以上か含むものとなる。
なお、特に図示しないが、直列共振子53および並列共振子55の双方に本実施形態の弾性波共振子1が適用されてもよい。この場合、通過帯域の低周波数側および高周波数側の双方において減衰量の変化の急峻性を向上させることができる。また、図9(b)および図9(c)では、複数の並列共振子55のうち1つのみ、または複数の直列共振子53のうち1つのみが、本実施形態の弾性波共振子1とされているが、2つ以上または全てが本実施形態の弾性波共振子1とされてもよい。
図9(b)および図9(c)のように、1以上の直列共振子53および1以上の並列共振子55のうち一部の共振子についてのみ本実施形態の弾性波共振子1を適用した場合、例えば、上記のような通過帯域の端における減衰量の変化の急峻化の効果を得つつ、SAW共振子59においては、種々のバルク波スプリアスの周波数を通過帯域から遠ざけて、通過帯域周辺のスプリアスを低減できる。なお、この場合、SAW共振子59の周波数の差Δfは、例えば、圧電基板7が比較的薄い(例えば1λ〜3λの厚さである)ことによって、図6の線L21〜L23に囲まれた範囲に位置する。また、逆に、全てまたは比較的多くの共振子について本実施形態の弾性波共振子1を適用した場合、例えば、上記のような急峻化の効果を増大させることができる。
図9(b)のように複数の並列共振子55のうち一部についてのみ本実施形態の弾性波共振子1を適用した場合、弾性波共振子1は、電極部5の厚みtおよび電極指19のピッチpが他の並列共振子55(SAW共振子59)と異なる。同様に、図9(c)のように複数の直列共振子53のうち一部についてのみ本実施形態の弾性波共振子1を適用した場合、弾性波共振子1は、電極部5の厚みtおよび電極指19のピッチpが他の直列共振子53(SAW共振子59)と異なる。一般に、並列共振子55としてのSAW共振子59と、直列共振子53としてのSAW共振子59とは、電極部5の厚みtは同一である。
従って、1以上の直列共振子53および1以上の並列共振子55を構成している複数のIDT電極11が、第1のIDT電極11と、当該第1のIDT電極11と厚みが異なる第2のIDT電極11とを含んでいるか否かによって、本実施形態の弾性波共振子1が設けられているか否かを判定することが可能である。なお、既に述べたように、圧電基板7の材料およびカット角等として、実際に利用されている、または利用が容易なものを採用しつつ、周波数が比較的低いバルク波スプリアスを利用する場合、弾性波共振子1では、SAW共振子59に比較して、電極部5の厚みtが厚く、電極指19のピッチpが狭くなる蓋然性が高い。
厚さの異なるIDT電極11は適宜に形成されてよい。例えば、厚い(または薄い)IDT電極11のための導体層の形成およびエッチングを行った後、薄い(または厚い)IDT電極11のための導体層の形成およびエッチングを行ってもよい。また、例えば、厚いIDT電極11の一部の厚みを形成するための導体層の形成およびエッチングを行った後、厚いIDT電極11の残りの厚みおよび薄いIDT電極11の全体を形成するための、導体層の形成およびエッチングを行ってもよい。マスクを介して導体層を成膜する場合においても、同様に、両者を別個のステップで形成してもよいし、厚いIDT電極11の形成のための一部のステップを薄いIDT電極11の形成のためのステップと共通化させてもよい。
(弾性波フィルタの実施例)
フィルタ51の具体的条件を想定してそのフィルタ特性を調べた。フィルタ51の構成は、直列共振子53Aと、並列共振子55Aおよび並列共振子55Bの3つの共振子を有するものとした。実施例においては、並列共振子55Aに本実施形態の弾性波共振子1を適用した。比較例においては、全ての共振子を通常のSAW共振子59とした。また、周波数の差Δfとして図3に示すΔfを用い、その大きさを異ならせた二種類のケース(ケース1、ケース2)について、実施例および比較例のモデルを作り、シミュレーション計算を行ない、その結果を比較した。
ケース1(比較例1および実施例1)の条件(主として設計値)を以下に示す。
圧電基板:
材料:タンタル酸リチウム単結晶
カット角:42°Y板
厚みt:2μm
支持基板:シリコン
IDT電極:
材料:Al−Cu合金
厚みt
比較例1:121nm
実施例1:181nm
電極指のピッチp:
比較例1:0.79115μm
実施例1:0.75325μm
電極指のデューティー比:0.5
ケース2(実施例2)は、ケース1よりもさらにΔfが小さくなるようにピッチp、厚みt等を調整した。
図10(a)および図10(b)は、ケース1のフィルタ特性のシミュレーション結果を示している。
これらの図において、横軸は周波数F(MHz)を示しており、縦軸は、減衰量A(dB)を示している。図10(b)は図10(a)のうちの低周波数側の拡大図である。図10(a)および図10(b)において、線L51は比較例1を示し、線L52は実施例1を示している。
これらの図に示すように、バルク波スプリアスをスプリアスとして捉えるのではなく、バルク波スプリアスを共振点または反共振点として利用する弾性波共振子1をフィルタ51に用いても、通常のSAW共振子59のみからなるフィルタ51と同様に、フィルタ51がフィルタとして機能することが確認された。また、周波数の差Δfを狭くすることによって、通過帯域の端の減衰量の変化(本実施例では低周波数側の立ち上がり)の急峻化の効果が得られることが確認された。
以下に、比較例1と実施例1との数値を比較した結果を示す。
比較例1 実施例1
(MHz) 2392.5 2391.3
(MHz) 2384.4 2387.2
(MHz) 8.1 4.1
dB/f 1.16 2.29
ここで、fは減衰量が0.6dBのときの周波数であり、fは減衰量が10dBのときの周波数であり、fはf−fである。従って、fが小さいほど急峻性が高い。また、dB/fは9.4(=10−0.6)dBをf(MHz)で割った比である。
上記の数値から、実施例1は、比較例1に対して急峻性が高くなっていることが確認された。具体的には、両者のdB/fについて、実施例1/比較例1×100≒2.29/1.16×100≒198%であり、急峻性が約2倍となっている。
実施例2は、実施例1に比べて、より低周波数側での減衰特性を考慮してΔfの大きさを調整したものである。実施例2の場合には、フィルタの通過帯域外の低周波側における減衰特性を向上させることができることを確認した。
なお、通過帯域の低周波数側の肩特性に着目すると、実施例1より急峻性は低下しているものの、比較例1に比べると急峻性が向上していることを確認した。このように、Δfの大きさを調整することで、肩特性のみならず、通過帯域外の減衰特性も向上させることができる。
(分波器)
図11は、弾性波共振子1の利用例としての分波器101を示す模式図である。
分波器101は、例えば、送信端子105からの送信信号をフィルタリングしてアンテナ端子103へ出力する送信フィルタ109と、アンテナ端子103からの受信信号をフィルタリングして1対の受信端子107に出力する受信フィルタ111とを有している。
送信フィルタ109は、例えば、図9(a)を参照して説明した弾性波フィルタ51と同様の構成とされている。すなわち、送信フィルタ109は、ラダー型に接続された1以上の直列共振子および1以上の並列共振子を有している。そして、これらの共振子のうち少なくとも1つは、弾性波共振子1によって構成されている。図11の例では、1つの直列共振子および1つの並列共振子が弾性波共振子1によって構成され、他の直列共振子および他の並列共振子が従来のSAW共振子59によって構成されている場合を例示している。これら複数の共振子を構成するIDT電極11および1対の反射器13(電極部5)は、例えば、同一の圧電基板7上に設けられている。
受信フィルタ111は、例えば、互いに直列に接続されたSAW共振子59およびSAWフィルタ61によって構成されている。これらを構成するIDT電極11および1対の反射器13は、例えば、同一の圧電基板7上に設けられている。受信フィルタ111が構成される圧電基板7は、送信フィルタ109が構成される圧電基板7と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
SAWフィルタ61は、例えば、縦結合多重モード(2重モードを含むものとする)型共振子フィルタであり、SAWの伝搬方向に配列された複数のIDT電極11と、その両側に配置された1対の反射器13とを有している。
(通信装置)
図12は、弾性波共振子1の利用例としての通信装置151の要部を示すブロック図である。
通信装置151は、電波を利用した無線通信を行うものである。通信装置151は、上述した分波器101を有していることによって、弾性波共振子1を利用している。具体的には、以下のとおりである。
通信装置151において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF−IC(Radio Frequency Integrated Circuit)153によって変調および周波数の引き上げ(搬送波周波数の高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ155によって送信用の通過帯以外の不要成分が除去され、増幅器157によって増幅されて分波器101(送信端子105)に入力される。そして、分波器101は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯以外の不要成分を除去し、その除去後の送信信号TSをアンテナ端子103からアンテナ159に出力する。アンテナ159は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号(電波)に変換して送信する。
また、通信装置151において、アンテナ159によって受信された無線信号(電波)は、アンテナ159によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器101に入力される。分波器101は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯以外の不要成分を除去して増幅器161に出力する。出力された受信信号RSは、増幅器161によって増幅され、バンドパスフィルタ163によって受信用の通過帯以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF−IC153によって周波数の引き下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
なお、送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の各種の規格に従ったものでよい。送信用の通過帯と、受信用の通過帯とは、通常、互いに重なっていない。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。回路方式は、図12では、ダイレクトコンバージョン方式を例示したが、それ以外の適宜なものとされてよく、例えば、ダブルスーパーヘテロダイン方式であってもよい。また、図12は、要部のみを模式的に示すものであり、適宜な位置にローパスフィルタやアイソレータ等が追加されてもよいし、また、増幅器等の位置が変更されてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、弾性波共振子1は、圧電基板7と、該圧電基板7の上面上に位置しているIDT電極11と、を有している。そして、SAWによる共振周波数fsrと反共振周波数fsaとの間に、バルク波による共振周波数fbrおよび反共振周波数fbaの少なくとも一方が位置している。
従って、図3(b)を参照して説明したように、SAW共振周波数fsrとバルク波反共振周波数fbaとで周波数の差Δfの共振特性、またはバルク波共振周波数fbrとSAW反共振周波数fsaとで周波数の差Δfの共振特性を実現することができる。そして、ΔfまたはΔfは、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの周波数の差Δfよりも狭いことから、SAW共振子に比較して周波数の差Δfの狭い共振特性が実現される。本実施形態の弾性波共振子1は、SAW共振子においてスプリアスとして扱われるバルク波を逆転の発想によって共振特性の実現に利用するものであり、画期的である。また、弾性波共振子1は、従来のSAW共振子またはバルク波共振子とは異なり、1種類の弾性波を前提とするのではなく、2種類の弾性波(SAWおよびバルク波)を利用しており、この点でも画期的である。
また、本実施形態では、弾性波フィルタ51は、ラダー型に接続された1以上の直列共振子53および1以上の並列共振子55を有しており、これら共振子の少なくとも1つは、本実施形態の弾性波共振子1からなる。
従って、周波数の差Δfが狭い弾性波共振子1が含まれることになり、図10(a),図10(b)を参照して説明したように、通過帯域の端の減衰量の立ち上がりまたは立ち下がりを急峻化でき、フィルタ特性が向上する。具体的には、1以上の並列共振子55の少なくとも1つが本実施形態の弾性波共振子1によって構成されれば、通過帯域の低周波数側の減衰量の立ち上がりを急峻化できる。また、1以上の直列共振子53の少なくとも1つが本実施形態の弾性波共振子1によって構成されれば、通過帯域の高周波数側の減衰量の立ち下がりを急峻化できる。
また、別の観点では、本実施形態では、弾性波フィルタ51は、圧電基板7と、該圧電基板7の下面に貼り合わされている支持基板9と、圧電基板7の上面上に位置しており、ラダー型に接続された1以上の直列共振子53および1以上の並列共振子55を構成している複数のIDT電極11と、を有している。複数のIDT電極11は、第1のIDT電極11(SAW共振子59を構成するIDT電極11)と、当該第1のIDT電極11と厚みが異なる(例えば第1のIDT電極11よりも厚い)第2のIDT電極11(弾性波共振子1を構成するIDT電極11)とを含んでいる。
従って、第1のIDT電極11によって、SAW共振周波数とSAW反共振周波数との間にバルク波スプリアスが位置しない通常のSAW共振子59を構成しつつ、第2のIDT電極11によって、SAW共振周波数とSAW反共振周波数との間にバルク波スプリアスが位置する本実施形態の弾性波共振子1を構成することができる。弾性波共振子1が設けられることによって、上述の種々の効果が奏される。また、SAW共振子59と弾性波共振子1とを混在させることによって、両者の長所を組み合わせることも可能となる。
また、本実施形態では、弾性波共振子1の設計方法は、IDT電極11の電極指19のピッチpが所定の初期値である場合においてSAWによる共振周波数fsrおよび反共振周波数fsaがバルク波による共振周波数fbrおよび反共振周波数fbaの少なくとも一方の両側に位置する電極指19の厚みtを特定する電極膜厚設定ステップ(ステップST3〜ST5)と、電極膜厚設定ステップで特定した電極指19の厚みtで、前記の一方の周波数(fbrまたはfba)が所定の目標周波数に一致する電極指19のピッチpを特定するステップ(ステップST6〜ST8。ここでステップST6とST9とが同一視されてよいことは既述のとおりである。)と、を有している。
従って、まず、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間にバルク波共振周波数fbrおよびバルク波反共振周波数fbaの少なくとも一方が位置する本実施形態の弾性波共振子1が実現される。また、電極指19の厚みtを変化させると、SAW共振周波数fsrおよびSAW反共振周波数fsaが変化する一方で、バルク波スプリアスの周波数が殆ど変化しないことから、所望の周波数の差Δfを実現することが容易である。一方で、ピッチpを変化させると、SAWおよびバルク波の定在波の周波数を概ね同等の量で変化させることができることから、厚みtを設定した後にピッチpを設定することによって、全体として簡便に周波数の差Δfと、その両端の周波数との所望の組み合わせを実現できる。
(変形例)
図13(a)〜図13(c)は、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間にバルク波共振周波数fbrおよびバルク波反共振周波数fbaの少なくとも一方が位置する本実施形態の弾性波共振子1の種々の変形例を示している。
図13(a)に示すように、電極指19(電極部5)の上には、平面視において電極指19(電極部5)の形状と概ね同等の形状とされた付加膜201が設けられてもよい。付加膜201は、導電体からなるものであってもよいし、絶縁体からなるものであってもよい。なお、付加膜201は、電極指19の下に設けることも可能である。
このような付加膜201は、例えば、電極指19における弾性波の反射係数を高くすることに寄与する。特に、不図示の保護層が電極指19よりも厚く形成されており、かつ保護層の材料(例えばSiO)と電極指19の材料(例えばAlまたはAl合金)とが音響的に近似しているときに有効である。付加膜201が絶縁体からなる場合においては、付加膜201は、必ずしも平面視において電極部5の形状と完全に同一の形状である必要はなく、例えば、電極指19とダミー電極21(図1)との間に位置する部分を有していてもよい。
付加膜201を有する構成においては、付加膜201の厚みtを厚くすることによっても、電極指19の厚みtを厚くすることと同様の効果を得ることができる。すなわち、バルク波スプリアスの周波数をあまり変化させずに、SAWによる共振周波数および反共振周波数を変化させることができる。なお、電極指19(金属層)と付加膜201(導電体でも絶縁体でもよい)とで電極指203が構成されていると捉えられてもよい。
実施形態では、電極指19(または201)の厚みtを変化させることによって、バルク波スプリアスの周波数をあまり変化させずに、SAWによる共振周波数および反共振周波数を変化させたり、バルク波スプリアスの励振効率が高い周波数をシフトさせたりした。一方、同様の効果を奏するパラメータは、他にも種々存在する。従って、厚みtの変化に加えてまたは代えて、他のパラメータが適宜に設定され、これによって本実施形態の弾性波共振子1が実現されてもよい。
例えば、電極指19の幅w(デューティー比w/p)を変化させても、電極指19の厚みtを変化させた場合と同様の効果を得ることができる。具体的には、デューティー比w/pを大きくすると、電極指19の厚みtを厚くした場合と同様に、バルク波スプリアスの周波数をあまり変化させずに、SAWによる共振周波数および反共振周波数を低くしたり、バルク波スプリアスの励振効率が高い周波数を低周波数側へシフトさせたりすることができる。
ただし、電極指19のデューティー比の変化よりも、電極指19の厚みtの変化の方がSAWによる共振周波数および反共振周波数を低くする等の効果が顕著である。また、デューティー比を大きくし過ぎると、短絡のおそれが生じることから、調整量に限界がある。
また、例えば、図13(b)に示すように、圧電基板7の上面が電極部5の上から保護層205によって覆われている場合において、保護層205の厚みtを変化させても、電極指19の厚みtを変化させた場合と同様の効果を得ることができる。具体的には、保護層205の厚みtを厚くすると、電極指19の厚みtを厚くした場合と同様に、バルク波スプリアスの周波数をあまり変化させずに、SAWによる共振周波数および反共振周波数を低くしたり、バルク波スプリアスの励振効率が高い周波数を低周波数側へシフトさせたりすることができる。
また、例えば、特に図示しないが、圧電基板7のカット角を変化させることによって、バルク波の励振効率が高い周波数をシフトさせることができる。これにより、バルク波の大きさを調整してもよい。例えば、タンタル酸リチウム単結晶のY板においては、カット角を大きくするほど、バルク波の励振効率が高い周波数は高周波数側にシフトする。
実施形態では、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に1つのバルク波スプリアスのみを位置させた。ただし、図13(c)に示すように、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に、2つのバルク波スプリアス(図示の例では2つのバルク波スプリアスSP1およびSP2)が位置してもよい。この場合も、SAW共振周波数fsrとバルク波スプリアスSP1の反共振周波数fbaとで周波数の差Δfの共振特性を実現したり、バルク波スプリアスSP2の共振周波数fbrとSAW反共振周波数fsaとで周波数の差Δfの共振特性を実現したりすることができる。
バルク波スプリアスが3以上となると(バルク波の共振周波数と反共振周波数とが5個以上となると)、IDT電極の膜厚やピッチによる調整が実質的に困難となる。なお、2つのバルク波スプリアスが存在する場合には、図13(c)に示すように、その両方を利用してもよいし、一方を表面弾性波の共振周波数または反共振周波数付近に位置させてその影響を少なくしたり、バルク波の励振効率が極めて低い周波数に位置させてその影響を少なくしたりしてもよい。
また、特に図示しないが、バルク波スプリアスは、共振周波数fbrと反共振周波数fbaとの双方がSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置している必要はない。例えば、周波数の差Δfの共振特性を実現するのであれば、バルク波反共振周波数fbaがSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置すればよいし、周波数の差Δfの共振特性を実現するのであれば、バルク波共振周波数fbrがSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置すればよい。ただし、一般に、バルク波共振周波数fbrとバルク波反共振周波数fbaとの間の周波数の差は、SAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの周波数の差Δfよりも狭いから、現実的には、バルク波共振周波数fbrおよびバルク波反共振周波数fbaの双方がSAW共振周波数fsrとSAW反共振周波数fsaとの間に位置する場合が多いと考えられる。
さらに、実施形態では、弾性波フィルタ5として、弾性波共振子1をラダー型フィルタに用いた場合を例に説明したが、これに限定されない。弾性波フィルタ51は、図11に示す受信フィルタ111のような、縦結合型の共振子13を備えるフィルタにおいても弾性波共振子1を用いることができる。
具体的には、図14に示すように、端子103,107の間に、縦結合型(直列接続型)の共振子13と、基準電位との間に配置される並列共振子58とを備えたフィルタ51Aを設け、この並列共振子58として弾性波共振子1を用いてもよい。
このような並列共振子58は、図14のように、共振子13よりもアンテナ端子103
の側に配置してもよいし、受信端子107の側に配置してもよい。
本開示に係る技術は、以上の実施形態乃至は変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
IDT電極の形状は、図示のものに限定されない。例えば、IDT電極は、ダミー電極を有さないものであってもよい。また、例えば、IDT電極は、電極指の長さ等がSAWの伝搬方向において変化する、いわゆるアポダイズが施されたものであってもよい。バスバーは、SAWの伝搬方向に対して傾斜していてもよい。
本実施形態の弾性波共振子は、IDT電極に並列接続される容量素子を設けなくても、共振周波数と反共振周波数との間の周波数の差Δfを狭くすることができる。ただし、IDT電極に並列接続される容量素子が設けられてもよい。
バルク波スプリアスは、圧電基板が比較的薄ければ(例えば厚みtが30μm以下または正規化厚みt/2pが60以下)生じ得る。従って、支持基板は必須の要件ではない。ただし、圧電基板の下面に支持基板が貼り合わされている場合、例えば、製造工程において弾性波共振子(薄い圧電基板)が多数個取りされるウェハの強度を向上させることができる。また、支持基板は、温度補償機能を有していなくてもよい。
共振点または反共振点に利用されるバルク波スプリアスは、最も周波数が低いバルク波スプリアス(例えば図6の線L21)に限定されない。例えば、2番目に周波数が低いバルク波スプリアス(例えば図6の線L21または線L23)が利用されてもよい。
図8を参照して説明した設計方法では、シミュレーション計算によって共振特性を推定し、諸条件(ステップST3、ST6およびST9)を満たす各種寸法(実施形態では厚みtおよびピッチp)を特定した。ただし、シミュレーション計算に代えてまたは加えて、試作品が作製されて共振特性が実測され、諸条件を満たす各種寸法が特定されてもよい。すなわち、本実施形態の設計方法は、ソフトウェアによって実現されるものに限定されない。
実施形態の設計方法では、通常のSAW共振子の各種寸法を仮定し、この寸法を変化させる考え方で、諸条件を満たす各種寸法を特定した。ただし、各種寸法がSAWおよびバルク波に及ぼす影響を考慮して、当初から弾性波共振子の各種寸法を算出したり、またはその算出結果に基づいて調整を行ったりしてもよい。
1…弾性波共振子、3…貼り合わせ基板、7…圧電基板、9…支持基板、11…IDT電極、fsr…SAW共振周波数、fsa…SAW反共振周波数、fbr…バルク波共振周波数、fba…バルク波反共振周波数、SP0…バルク波スプリアス。

Claims (16)

  1. 圧電基板と、
    該圧電基板の上面上に位置しているIDT電極と、
    を有しており、
    弾性表面波による共振周波数と反共振周波数との間に、バルク波による共振周波数および反共振周波数の少なくとも一方が1個以上4個以下位置している
    弾性波共振子。
  2. 最も周波数が低いバルク波による共振周波数および反共振周波数の少なくとも一方が弾性表面波による共振周波数と反共振周波数との間に位置している
    請求項1に記載の弾性波共振子。
  3. 前記IDT電極の電極指のピッチをpとし、前記電極指の厚みをteとしたときに、電極指の正規化厚みte/2pが0.08を超えている、
    請求項1または2に記載の弾性波共振子。
  4. 前記IDT電極の電極指のピッチは、弾性表面波の伝搬速度を弾性表面波の共振周波数で除して得られる波長の半分よりも小さい
    請求項3に記載の弾性波共振子。
  5. 前記圧電基板は、タンタル酸リチウムの単結晶基板からなる、カット角が38°以上48°以下のY板であり、
    前記IDT電極の電極指のピッチをpとし、前記圧電基板の厚みをtsとしたときに、前記圧電基板の正規化厚みts/2pが1以上3以下である
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波共振子。
  6. ラダー型に接続された1以上の直列共振子および1以上の並列共振子を有しており、
    前記1以上の直列共振子および前記1以上の並列共振子の少なくとも1つは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性波共振子からなる
    弾性波フィルタ。
  7. 前記1以上の直列共振子および前記1以上の並列共振子は、前記弾性波共振子のIDT電極と厚みが異なるIDT電極を有し、弾性表面波による共振周波数と反共振周波数との間に、バルク波による共振周波数および反共振周波数が位置していないか、5個以上位置している、弾性表面波共振子を含んでいる
    請求項6に記載の弾性波フィルタ。
  8. 前記弾性波共振子のIDT電極の厚みが前記弾性表面波共振子のIDT電極の厚みよりも厚い
    請求項7に記載の弾性波フィルタ。
  9. 前記1以上の直列共振子の少なくとも1つは前記弾性波共振子からなる
    請求項6〜8のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
  10. 前記1以上の並列共振子の少なくとも1つは前記弾性波共振子からなる
    請求項6〜9のいずれか1項に記載の弾性波フィルタ。
  11. 圧電基板と、
    該圧電基板の下面に貼り合わされている支持基板と、
    前記圧電基板の上面上に位置している複数のIDT電極と、
    を有しており、
    前記複数のIDT電極は、第1のIDT電極と、当該第1のIDT電極と厚みが異なる第2のIDT電極とを含んでいる
    弾性波フィルタ。
  12. 複数のIDT電極は、ラダー型に接続された1以上の直列共振子および1以上の並列共振子を構成している
    請求項11に記載の弾性波フィルタ。
  13. 前記複数のIDT電極は、縦結合型の共振子と、前記縦結合型の共振子と基準電位との間に接続された並列共振子とを構成しており、
    前記第1のIDT電極は、前記並列共振子を構成しており、前記第2のIDT電極は、前記縦結合型の共振子を構成している
    請求項11に記載の弾性波フィルタ。
  14. アンテナ端子と、
    送信信号をフィルタリングして前記アンテナ端子に出力する送信フィルタと、
    前記アンテナ端子からの受信信号をフィルタリングする受信フィルタと、
    を有しており、
    前記送信フィルタおよび前記受信フィルタの少なくとも一方は、請求項6〜13のいずれか1項に記載の弾性波フィルタを含んでいる
    分波器。
  15. アンテナと、
    前記アンテナに前記アンテナ端子が接続されている請求項14に記載の分波器と、
    前記送信フィルタおよび前記受信フィルタに接続されているICと、
    を有している通信装置。
  16. IDT電極の電極指のピッチが所定の初期値である場合において弾性表面波による共振周波数および反共振周波数がバルク波による共振周波数および反共振周波数の少なくとも一方の両側に位置する前記電極指の厚みを特定する電極膜厚設定ステップと、
    前記電極膜厚設定ステップで特定した前記電極指の厚みで、前記一方の周波数が所定の目標周波数に一致する前記電極指のピッチを特定するステップと、
    を有している弾性波共振子の設計方法。
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