JPWO2017039019A1 - プライマー組成物及びフォトクロミック積層体 - Google Patents
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Abstract
(A)ポリロタキサン、(B)樹脂及び/又はその前駆体を含有する光学物品用プライマー組成物を提供する。この光学物品用プライマー組成物は光学基材に対し、フォトクロミックコート層のクラックの発生を抑制し、フォトクロミックコート層にキズ付きにくい積層構造を形成し、優れた密着性、及びフォトクロミック特性を発現するプライマーコート層を形成することができる。
Description
本発明は、新規光学物品用プライマー組成物、及び該光学物品用プライマー組成物の硬化層を含むフォトクロミック積層体に関する。詳しくは、フォトクロミック積層体製造時におけるフォトクロミックコート層のクラックの発生が抑制され、フォトクロミックコート層がキズ付きにくい積層構造を形成し、優れた密着性、及びフォトクロミック特性を発現するプライマーコート層を形成することが可能な光学物品用プライマー組成物、及び該プライマーコート層の硬化層を含むフォトクロミック積層体に関するものである。
フォトクロミック眼鏡とは、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外ではレンズが速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能する眼鏡であり、近年その需要は増大している。
フォトクロミック眼鏡用レンズとしては、軽量性や安全性の観点から、特にプラスチックレンズにフォトクロミック性能を付与したものが広く使用されている。フォトクロミック性を有するプラスチックレンズの製造方法としては、フォトクロミック性を有しないレンズの表面にフォトクロミック化合物を含浸させる方法(以下、「含浸法」という)、あるいはプラスチックレンズの表面にフォトクロミック性を有する硬化性組成物(以下、「フォトクロミック硬化性組成物」ともいう)からなるコーティング剤を塗布した後にこれを硬化させてフォトクロミック性を有する樹脂層(以下、「フォトクロミックコート層」ともいう)を設ける方法(以下、「コーティング法」という)、あるいはモノマーにフォトクロミック化合物を溶解させ、それを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(以下、「練り混み法」という)が知られている。これらの製造方法の中でもコーティング法は、プラスチックレンズの材質によらずフォトクロミック性能を付与できる点で優れた方法である。
コーティング法で製造されたフォトクロミックレンズ(以下「フォトクロミック積層体」ともいう)を長時間使用するためには、フォトクロミックコート層を、種々のプラスチックレンズ基材表面に接着させることが必要である。また、フォトクロミックコート層のキズつきを防止することも必要であり、フォトクロミックコート層が十分な表面硬度を有することも重要である。さらには、フォトクロミックコート層上にハードコート層や反射防止膜を積層した物品においても、その表面のキズつきを防止することが重要であり、そのためにはフォトクロミック積層体の状態において、十分な表面硬度を有することが重要である。
フォトクロミック積層体のキズ付き防止のために、これまでに様々な改良がなされている。例えば、フォトクロミック硬化性組成物に、シラノール基または加水分解によりシラノール基を生成する基を有するラジカル重合性単量体とアミン化合物等を添加し、プラスチックレンズ基材への密着性を向上させる方法が知られている(WO2003/011967号参照)。あるいは、湿気硬化型ポリウレタンの硬化体からなるポリウレタンをプライマーコート層に用い、その上にフォトクロミックコート層を積層する方法も知られている(特開2005−199683号公報参照)。また、ポリウレタンを含むエマルジョンからなるプライマー組成物をプライマーコート層に用い、その上にフォトクロミックコート層を積層する方法も知られている(WO2008/001875号参照)。
フォトクロミック眼鏡用レンズとしては、軽量性や安全性の観点から、特にプラスチックレンズにフォトクロミック性能を付与したものが広く使用されている。フォトクロミック性を有するプラスチックレンズの製造方法としては、フォトクロミック性を有しないレンズの表面にフォトクロミック化合物を含浸させる方法(以下、「含浸法」という)、あるいはプラスチックレンズの表面にフォトクロミック性を有する硬化性組成物(以下、「フォトクロミック硬化性組成物」ともいう)からなるコーティング剤を塗布した後にこれを硬化させてフォトクロミック性を有する樹脂層(以下、「フォトクロミックコート層」ともいう)を設ける方法(以下、「コーティング法」という)、あるいはモノマーにフォトクロミック化合物を溶解させ、それを重合させることにより直接フォトクロミックレンズを得る方法(以下、「練り混み法」という)が知られている。これらの製造方法の中でもコーティング法は、プラスチックレンズの材質によらずフォトクロミック性能を付与できる点で優れた方法である。
コーティング法で製造されたフォトクロミックレンズ(以下「フォトクロミック積層体」ともいう)を長時間使用するためには、フォトクロミックコート層を、種々のプラスチックレンズ基材表面に接着させることが必要である。また、フォトクロミックコート層のキズつきを防止することも必要であり、フォトクロミックコート層が十分な表面硬度を有することも重要である。さらには、フォトクロミックコート層上にハードコート層や反射防止膜を積層した物品においても、その表面のキズつきを防止することが重要であり、そのためにはフォトクロミック積層体の状態において、十分な表面硬度を有することが重要である。
フォトクロミック積層体のキズ付き防止のために、これまでに様々な改良がなされている。例えば、フォトクロミック硬化性組成物に、シラノール基または加水分解によりシラノール基を生成する基を有するラジカル重合性単量体とアミン化合物等を添加し、プラスチックレンズ基材への密着性を向上させる方法が知られている(WO2003/011967号参照)。あるいは、湿気硬化型ポリウレタンの硬化体からなるポリウレタンをプライマーコート層に用い、その上にフォトクロミックコート層を積層する方法も知られている(特開2005−199683号公報参照)。また、ポリウレタンを含むエマルジョンからなるプライマー組成物をプライマーコート層に用い、その上にフォトクロミックコート層を積層する方法も知られている(WO2008/001875号参照)。
しかしながら、これら従来の方法においては、以下の点で改善の余地があった。すなわち、フォトクロミック硬化性組成物にプラスチックレンズ表面との結合基を有する化合物を添加することでプラスチックレンズ基材への密着性を向上させる方法であるWO2003/011967号に記載の方法は、初期密着性はあるものの、高温高湿条件下で繰り返して使用すると、基材の種類によってはフォトクロミックコート層の密着性が低下して剥離が生じる場合があることが分かった。
また、湿気硬化型ポリウレタンを用いる特開2005−199683号公報の方法は、高温高湿条件下での繰り返し使用に耐え、フォトクロミックコート層の表面硬度も十分であった。しかしながら、プラスチックレンズ基材の種類によってはプライマー組成物によって基材表面が侵されてしまうため、プライマー組成物を塗布する前に基材表面をハードコート層のような架橋膜で、事前に被覆しておく必要があった。また、フォトクロミックコート層として表面硬度の高い硬化体を用いた場合には、プライマーコート層を形成した後にフォトクロミックコート層を塗布した際にクラック(割れ目状の外観不良)が生じる場合があることが分かった。
一方、ポリウレタンを含むエマルジョンをプライマーに用いるWO2008/001875号に記載の方法は、プライマーコート層とフォトクロミックコート層との濡れ性は良好で、フォトクロミックコート層とプラスチックレンズとの密着性、及びフォトクロミック特性は良好であった。しかしながら、フォトクロミックコート層の表面硬度が不足し、フォトクロミックコート層がキズつき易いことが明らかとなった。
上記のとおり従来技術によるフォトクロミック積層体において、高いフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミック積層体製造時にクラックが発生せず、更にフォトクロミックコート層がキズつき難い十分な表面硬度を有するフォトクロミック積層体は得られておらず、これらの特性を満足するフォトクロミック積層体の開発が望まれていた。
したがって、本発明の目的は、フォトクロミック積層体製造時におけるフォトクロミックコート層のクラックの発生が抑制され、フォトクロミック特性にも優れ、かつフォトクロミックコート層がキズつき難い、フォトクロミック積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。特にクラックは、フォトクロミックコート層形成工程における重合時に重合収縮応力により生じた膜歪みの緩和が、重合時及び加熱時に積層膜の割れという形で起こると考え、フォトクロミック積層体のクラックを防止するためには、フォトクロミックコート層に柔軟性を付与することが効果的と考えフォトクロミックコート層に柔軟性を付与したところ、フォトクロミックコート層の表面硬度が低下し、フォトクロミック積層体のキズつきが生じることが判明した。さらに詳細にフォトクロミックコート層の検討を重ねたところ、クラック等の外観不良の抑制と、表面硬度の向上を両立させると、フォトクロミック特性が低下し、これらを満足するフォトクロミックコート層を得ることは困難であることも判明した。
そこで、フォトクロミックコート層の下地となるプライマーコート層や、フォトクロミックコート層とハードコート層の間になるプライマーコート層に柔軟性を付与することが効果的と考え、プライマーコート層を形成するプライマー組成物について検討を行ったところ、ポリロタキサンをプライマー組成物に含有させてプライマーコート層としてフォトクロミック積層体に適用したところ、良好なフォトクロミックコート層とプラスチックレンズとの密着性、及びフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミックコート層が高い表面硬度を有し、フォトクロミックコート層のクラックや、ハードコート層のキズ付きも防止されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、(A)ポリロタキサン、(B)樹脂及び/又はその前駆体を含有しそしてフォトクロミック化合物を実質的に含有しない光学物品用プライマー組成物が提供される。
本発明において、上記のポリロタキサンは、複数の環状分子の環内を鎖状の軸分子が貫通しており且つ軸分子の両端に嵩高い基が結合しており、立体障害により環状分子が軸分子から抜けなくなった構造を有している分子の複合体である。
本発明の光学物品用プライマー組成物は、次の態様を好適に採り得る。
(1)(B)樹脂及び/又はその前駆体がポリウレタン及び/又はその前駆体であること。
(2)ポリロタキサンの環状分子が側鎖を有し且つその側鎖の少なくとも一部に重合性官能基を有すること。
さらに本発明によれば光学基材上にフォトクロミックコート層及びハードコート層がこの順に積層されたフォトクロミック積層体であって、光学基材とフォトクロミックコート層及び/またはフォトクロミックコート層とハードコート層との間に上記の光学物品用プライマーコート組成物の硬化体であるプライマーコート層を有することを特徴とするフォトクロミック積層体が提供される。
また、湿気硬化型ポリウレタンを用いる特開2005−199683号公報の方法は、高温高湿条件下での繰り返し使用に耐え、フォトクロミックコート層の表面硬度も十分であった。しかしながら、プラスチックレンズ基材の種類によってはプライマー組成物によって基材表面が侵されてしまうため、プライマー組成物を塗布する前に基材表面をハードコート層のような架橋膜で、事前に被覆しておく必要があった。また、フォトクロミックコート層として表面硬度の高い硬化体を用いた場合には、プライマーコート層を形成した後にフォトクロミックコート層を塗布した際にクラック(割れ目状の外観不良)が生じる場合があることが分かった。
一方、ポリウレタンを含むエマルジョンをプライマーに用いるWO2008/001875号に記載の方法は、プライマーコート層とフォトクロミックコート層との濡れ性は良好で、フォトクロミックコート層とプラスチックレンズとの密着性、及びフォトクロミック特性は良好であった。しかしながら、フォトクロミックコート層の表面硬度が不足し、フォトクロミックコート層がキズつき易いことが明らかとなった。
上記のとおり従来技術によるフォトクロミック積層体において、高いフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミック積層体製造時にクラックが発生せず、更にフォトクロミックコート層がキズつき難い十分な表面硬度を有するフォトクロミック積層体は得られておらず、これらの特性を満足するフォトクロミック積層体の開発が望まれていた。
したがって、本発明の目的は、フォトクロミック積層体製造時におけるフォトクロミックコート層のクラックの発生が抑制され、フォトクロミック特性にも優れ、かつフォトクロミックコート層がキズつき難い、フォトクロミック積層体を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。特にクラックは、フォトクロミックコート層形成工程における重合時に重合収縮応力により生じた膜歪みの緩和が、重合時及び加熱時に積層膜の割れという形で起こると考え、フォトクロミック積層体のクラックを防止するためには、フォトクロミックコート層に柔軟性を付与することが効果的と考えフォトクロミックコート層に柔軟性を付与したところ、フォトクロミックコート層の表面硬度が低下し、フォトクロミック積層体のキズつきが生じることが判明した。さらに詳細にフォトクロミックコート層の検討を重ねたところ、クラック等の外観不良の抑制と、表面硬度の向上を両立させると、フォトクロミック特性が低下し、これらを満足するフォトクロミックコート層を得ることは困難であることも判明した。
そこで、フォトクロミックコート層の下地となるプライマーコート層や、フォトクロミックコート層とハードコート層の間になるプライマーコート層に柔軟性を付与することが効果的と考え、プライマーコート層を形成するプライマー組成物について検討を行ったところ、ポリロタキサンをプライマー組成物に含有させてプライマーコート層としてフォトクロミック積層体に適用したところ、良好なフォトクロミックコート層とプラスチックレンズとの密着性、及びフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミックコート層が高い表面硬度を有し、フォトクロミックコート層のクラックや、ハードコート層のキズ付きも防止されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、(A)ポリロタキサン、(B)樹脂及び/又はその前駆体を含有しそしてフォトクロミック化合物を実質的に含有しない光学物品用プライマー組成物が提供される。
本発明において、上記のポリロタキサンは、複数の環状分子の環内を鎖状の軸分子が貫通しており且つ軸分子の両端に嵩高い基が結合しており、立体障害により環状分子が軸分子から抜けなくなった構造を有している分子の複合体である。
本発明の光学物品用プライマー組成物は、次の態様を好適に採り得る。
(1)(B)樹脂及び/又はその前駆体がポリウレタン及び/又はその前駆体であること。
(2)ポリロタキサンの環状分子が側鎖を有し且つその側鎖の少なくとも一部に重合性官能基を有すること。
さらに本発明によれば光学基材上にフォトクロミックコート層及びハードコート層がこの順に積層されたフォトクロミック積層体であって、光学基材とフォトクロミックコート層及び/またはフォトクロミックコート層とハードコート層との間に上記の光学物品用プライマーコート組成物の硬化体であるプライマーコート層を有することを特徴とするフォトクロミック積層体が提供される。
図1は、本発明に用いるポリロタキサンの分子構造を示す概略図である。
図2は、本発明のフォトクロミック積層体の積層構造を示す概略図である。
図3は、本発明のフォトクロミック積層体の他の積層構造を示す概略図である。
図4は、本発明のフォトクロミック積層体のさらに他の積層構造を示す概略図である。
図2は、本発明のフォトクロミック積層体の積層構造を示す概略図である。
図3は、本発明のフォトクロミック積層体の他の積層構造を示す概略図である。
図4は、本発明のフォトクロミック積層体のさらに他の積層構造を示す概略図である。
<光学物品用プライマー組成物>
本発明の光学物品用プライマー組成物(以下、単に「プライマー組成物」とも言う)は、ポリロタキサンを含有することが特徴である。本発明のプライマー組成物から形成される硬化体を、後述するように、光学基材とフォトクロミック化合物を含有する層(フォトクロミックコート層)及び/またはフォトクロミック化合物を含有する層(フォトクロミックコート層)とハードコート層との間に設けられるプライマーコート層として用いることで、プライマーコート層が接触する両層との密着性を確保し、かつフォトクロミックコート層のクラックを防止することができる。また、フォトクロミックコート層及び/またはハードコート層の表面硬度を高くする効果、及びフォトクロミック化合物の劣化を抑制する効果を示す。
このように本発明のプライマー組成物を用いたプライマーコート層が、上記の効果を有する理由について、詳細は不明であるが、本発明者らは以下のように考えている。ポリロタキサンの環状分子は軸分子上を自由に動くことができるため、フォトクロミックコート層に生じた応力をプライマーコート層に含有されるポリロタキサン分子にて緩和することによるものと思われる。特に環状分子が重合性官能基を有する場合には、そこを起点としてポリロタキサンと他の構成成分を架橋しうるため、架橋点が自由に動く超分子ネットワークをつくることができる。この際、架橋点は滑車のように作用し(滑車効果)、フォトクロミックコート層に生じた応力の緩和効果が高くなると思われる。
本発明のプライマー組成物は、(A)ポリロタキサン、(B)樹脂及び/又はその前駆体の他に、必要に応じて、(C)水及び/または有機溶媒、(D)重合硬化促進剤、(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物、(F)無機酸化物微粒子、(G)その他成分等を含んでいてもよい。以下、本発明の光学物品用プライマー組成物の各成分について説明する。
<(A)ポリロタキサン>
(A)ポリロタキサンは、軸分子と該軸分子を包接する複数の環状分子とからなる複合分子構造を有する公知の化合物であり、その構造の概略図を図1に示す。全体として”1”で示されているポリロタキサン分子は、鎖状の軸分子”2”と環状分子”3”とから形成されている複合分子構造を有している。即ち、鎖状の軸分子”2”を複数の環状分子”3”が包接しており、環状分子”3”が有する環の内部を軸分子”2”が貫通している。従って、環状分子”3”は、軸分子”2”上を自由にスライドし得るのであるが、軸分子”2”の両端には、嵩高い末端基”4”が形成されており、環状分子”3”の軸分子”2”からの脱落が防止されている。また”5”は環状分子”3”の側鎖である。(以下、この成分を単に「(A)成分」と表示する場合もある。)
かかるポリロタキサンにおいて、軸分子としては、種々のものが知られており、例えば、鎖状部分としては、環状分子が有する環を貫通し得る限りにおいて直鎖状或いは分岐鎖であってよく、一般にポリマーにより形成される。
このような軸分子の鎖状部分を形成するポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエーテル系樹脂(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフランなど)、ポリビニルアセタール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサゾリン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリα−アセチル−γ−ブチロラクトン)、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂など)、アクリル系樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂など)、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリイミド、ポリシロキサン系樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサンなど)、ポリカーボネート樹脂(ポリエチレンカーボネート、ポリ炭酸プロピレンなど)、ポリスルホン、ポリイミン、ポリ無水酢酸、ポリ尿素、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリケトンポリフェニレン、ポリハロオレフィン等を挙げることができる。これらのポリマーは、適宜ランダム共重合体、或いはブロック共重合体であってもよく、また変性されたものであってもよい。またこれらのポリマーは、重合性及び/または非重合性の置換基を有していてもよい。
本発明において、これらのうち、鎖状部分を形成するポリマーとして好適なものは、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールまたはポリビニルメチルエーテルでありおよびポリエチレングリコールである。
さらに、鎖状部分の両端に形成される嵩高い基としては、軸分子からの環状分子の脱離を防ぐ基であれば、特に制限されないが、嵩高さの観点から、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイニル基、ジニトロフェニル基、及びピレニル基体を挙げることができ、特に導入のし易さなどの点で、アダマンチル基を好ましいものとして挙げることができる。
上述した軸分子の分子量は、特に制限されないが、大きすぎると、他の成分との相溶性が悪くなる傾向があり、小さすぎると環状分子の可動性が低下し、本発明のプライマー組成物によって得られるプライマーコート層の柔軟性が低下する傾向がある。このような観点から、軸分子の重量平均分子量Mwは、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜50,000の範囲にある。
また、環状分子は、上記のような軸分子を包接し得る大きさの環を有するものであればよい。このような環としては、例えばシクロデキストリン環、クラウンエーテル環、ベンゾクラウン環、ジベンゾクラウン環及びジシクロヘキサノクラウン環を挙げることができ、特にシクロデキストリン環が好ましい。
シクロデキストリン環には、α体(環内径0.45〜0.6nm)、β体(環内径0.6〜0.8nm)、γ体(環内径0.8〜0.95nm)があるが、本発明では、特にα−シクロデキストリン環及びγ−シクロデキストリン環が好ましく、α−シクロデキストリン環が最も好ましい。
上記のような環を有する環状分子は、1つの軸分子に複数個が包接しているが、一般に、軸分子1個当たりに包接し得る環状分子の最大包接数を1としたとき、環状分子の包接数は、0.001乃至0.6、の範囲にあることが好ましい。環状分子の包接数が多すぎると、一つの軸分子に対して環状分子が密に存在するため、その可動性が低下し、本発明のプライマー組成物によって得られるプライマーコート層の柔軟性が低下する傾向がある。また包接数が少なすぎると、ポリロタキサンが示す滑車効果が小さくなり、応力緩和能が小さくなる傾向がある。
一つの軸分子に対する環状分子の最大包接数は、軸分子の長さ及び環状分子が有する環の厚みから算出することができる。
例えば、軸分子の鎖状部分がポリエチレングリコールで形成され、環状分子が有する環がα−シクロデキストリン環である場合を例にとると、次のようにして最大包接数が算出される。
ポリエチレングリコールの繰り返し単位[−CH2−CH2O−]の2つ分がα−シクロデキストリン環1つの厚みに近似する。従って、このポリエチレングリコールの分子量から繰り返し単位数を算出し、この繰り返し単位数の1/2が環状分子の最大包接数として求められる。この最大包接数を1.0とし、環状分子の包接数が前述した範囲に調整されることとなる。
また、本発明においては、上述した環状分子が有する環は、側鎖が導入されていてもよい。この側鎖は、図1において”5”で示されている。このような側鎖”5”を環に導入することにより、側鎖、架橋点が自由に動く超分子ネットワークをつくることができる。これがスライドリングマテリアルとしてのポリロタキサンの基本構造であり、この際架橋点は滑車のように作用し(滑車効果)、膜応力を緩和することによりクラック防止効果を向上させることが出来る。
上記の側鎖としては、炭素数が3〜20の範囲にある有機鎖の繰り返しにより形成されていることが好適であり、このような側鎖の平均重量分子量は300〜10,000の範囲にあるのがよい。
さらに、上記のような側鎖は、環状分子の環が有する官能基を利用し、この官能基を修飾することによって導入される。例えば、α−シクロデキストリン環は、官能基として18個の水酸基を有しており、この水酸基を介して側鎖が導入される。即ち、1つのα−シクロデキストリン環に対しては最大で18個の側鎖を導入することができることとなる。本発明においては、前述した側鎖の機能を十分に発揮させるためには、このような環が有する全官能基数の6%以上、特に30%以上が、修飾され、側鎖を有していることが好ましい。因みに、上記α−シクロデキストリン環の18個の水酸基の内の9個に側鎖が結合している場合、その修飾度は50%となる。
本発明において、上記のような側鎖(有機鎖)は、その大きさが前述した範囲内にある限り、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。開環重合;ラジカル重合;カチオン重合;アニオン重合;原子移動ラジカル重合、RAFT重合、NMP重合などのリビングラジカル重合などを利用し、適宜の化合物を前記環が有する官能基に反応させることによって適宜の大きさの側鎖を導入することができる。
例えば、開環重合により、環状ラクトン、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状カーボネート、環状イミノエーテル、環状チオカーボネート等の環状化合物に由来する側鎖を導入することができるが、これらの中でも、入手が容易であり、反応性が高く、さらには大きさ(分子量)の調整が容易であるという観点から、環状エーテル、環状シロキサン、ラクトン、環状カーボネートを用いることが好ましい。好適な環状化合物の具体例は、以下のとおりである。
例えば、開環重合により、環状ラクトン、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状カーボネート、環状イミノエーテル、環状チオカーボネート等の環状化合物に由来する側鎖を導入することができるが、これらの中でも、入手が容易であり、反応性が高く、さらには大きさ(分子量)の調整が容易であるという観点から、環状エーテル、環状シロキサン、環状ラクトン、環状カーボネートを用いることが好ましい。好適な環状化合物の具体例は、以下のとおりである。
環状エーテル;エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、オキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランなど。
環状シロキサン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど。
環状ラクトン;
4員環ラクトン;β−プロピオラクトン、β−メチルプロピオラクトン、L−セリン−β−ラクトンなど。
5員環ラクトン;γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−デカノラクトン、γ−ドデカノラクトン、α−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ヘプチル−γ−ブチロラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α,α−ジメチル−γ−ブチロラクトン、D−エリスロノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−ノナノラクトン、DL−パントラクトン、γ−フェニル−γ−ブチロラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−バレロラクトン、2,2−ペンタメチレン−1,3−ジオキソラン−4−オン、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、γ−クロトノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンなど。
6員環ラクトン;δ−バレロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナノラクトン、δ−デカノラクトン、δ−ウンデカノラクトン、δ−ドデカノラクトン、δ−トリデカノラクトン、δ−テトラデカノラクトン、DL−メバロノラクトン、4−ヒドロキシ−1−シクロヘキサンカルボン酸δ−ラクトン、モノメチル−δ−バレロラクトン、モノエチル−δ−バレロラクトン、モノヘキシル−δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オンなど。
7員環ラクトン;ノンアルキル−ε−カプロラクトン、ジアルキル−ε−カプロラクトン、モノメチル−ε−カプロラクトン、モノエチル−ε−カプロラクトン、モノヘキシル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、ジ−n−プロピル−ε−カプロラクトン、ジ−n−ヘキシル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン、トリエチル−ε−カプロラクトン、トリ−n−ε−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、5−ノニル−オキセパン−2−オン、4,4,6−トリメチル−オキセパン−2−オン、4,6,6−トリメチル−オキセパン−2−オン、5−ヒドロキシメチル−オキセパン−2−オンなど。
8員環ラクトン;ζ−エナントラクトンなど。
その他の環状ラクトン;ラクトン、ラクチド、ジラクチド、テトラメチルグリコシド、1,5−ジオキセパン−2−オン、t−ブチルカプロラクトンなど。
環状カーボネート;エチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸1,2−ブチレン、グリセロール1,2−カルボナート、4−(メトキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、(クロロメチル)エチレンカーボネート、炭酸ビニレン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−クロロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフェニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5,5−ジエチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなど。
上記の環状化合物は、単独で使用することができまた複数種を併用することもできる。
本発明において、好適に使用されるものは、環状ラクトン及び環状カーボネートであり、それらのうち、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等の環状ラクトンが特に好適であり、もっとも好ましいものはε−カプロラクトンである。
また本発明において、上記ポリロタキサンの側鎖に重合性官能基を導入することにより、ポリロタキサンの側鎖や(B)樹脂及び/又はその前駆体における樹脂前駆体(以下、「重合性モノマー」とも言う。)との架橋結合形成等に伴い、プライマーコート層の強度を向上させることができる。その結果、得られるフォトクロミック積層体の機械的強度を向上させることができる。
上記重合性官能基含有ポリロタキサンの重合性官能基の導入位置としては、側鎖のポリマー末端、あるいは、側鎖のポリマー鎖中のいずれでもよい。ただし、該重合性官能基は、側鎖のポリマー末端の官能基を利用して導入するのが合成上容易である。その際の重合性官能基導入のための官能基としては、下記重合性官能基の導入に適した基が適宜用いられる。
この重合性官能基としては、例えば(メタ)アクリル基、ビニル基及びアリル基のようなラジカル重合性基や、エポキシ基、水酸基、チオール基、アミノ基(−NH2)、エピスルフィド基、チエタニル基、イソシアネート基、又はチオイソシアネート基のような活性水素化合物が挙げられる。
例えば、エポキシ基、エピスルフィド基、チエタニル基は、アミノ基、イソシアネート基と反応し、水酸基やチオール基は、イソシアネート基やチオイソシアネート基と反応して、ウレタン結合、チオウレタン結合が生成する。イソシアネート基やチオイソシアネート基は、有する水酸基、チオール基、又はアミノ基と反応することとなる。
本発明において、最も好適に使用される(A)ポリロタキサンは、両端にアダマンチル基が結合しているポリエチレングリコールを軸分子とし、α−シクロデキストリン環を有する環状分子を環状分子とする。そして該環に、ポリカプロラクトンからなる側鎖が導入され、水酸基を有する側鎖を有するものである。さらに、該環の該側鎖に、(メタ)アクリル基を有する基を導入したものであってもよい。
上記ポリロタキサンの分子量は、特に制限されるものではないが、大きすぎると、他の成分との相溶性が悪くなる傾向があり、小さすぎると環状分子の可動性が低下し、本発明のプライマー組成物から形成されるプライマーコート層の柔軟性が低下する傾向がある。このような観点から、上記ポリロタキサンの重量平均分子量Mwは、100,000〜3,000,000の範囲にあることが好適である。
本発明における(A)ポリロタキサンの使用量としては、特に密着性および表面硬度の観点から、(A)ポリロタキサン、並びに後述する(B)樹脂及び/又はその前駆体の合計100質量部当たり、0.01〜99質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1〜90質量部の範囲で用いることがより好ましく、0.5〜70質量部の範囲で用いることがさらに好ましく、0.5〜50質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
<(B)樹脂及び/又はその前駆体>
本発明のプライマー組成物において、(B)樹脂及び/又はその前駆体は、該プライマー組成物を硬化させてプライマーコート層とした際に、光学基材とフォトクロミックコート層、及びフォトクロミックコート層とハードコート層との密着性や機械的強度を向上させる機能を有する。(以下、この成分を単に「(B)成分」と表示する場合もある。)
本発明において、(B)樹脂及び/又はその前駆体としては、例えばウレタン系、アクリル等のラジカル重合系、エポキシ系等の材料、あるいはこれらの2種以上の混合物を用いることが出来る。ウレタン系としては(B−1)ポリウレタン、(B−2)ポリウレタンの前駆体、ラジカル重合系としては、(B−3)ラジカル重合により得られた樹脂及び/又はラジカル重合性モノマー、エポキシ系としては(B−4)エポキシ重合性モノマーを用いることが出来る。
(B−1)ポリウレタン
上記ポリウレタンは、活性水素基成分とポリ(チオ)イソシアネート成分とをワンショット法やプレポリマー法等で反応させることにより得ることができ、その分子鎖中にウレタン結合やウレア結合を有するものである。例えば、ウレタン結合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応で形成されるものである。このウレタン結合の中には、ポリオールとポリイソチアシアネートとの反応、或いはポリチオールとポリイソチアイソシアネートとの反応で形成されるチオウレタン結合も含まれる。また、ウレア結合は、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応で形成されるものである。このウレア結合の中には、ポリアミンとポリイソチアシアネートとの反応で形成されるチオウレア結合も含まれる。
本発明におけるポリウレタンは、活性水素を有する化合物としてポリオール化合物、ポリチオール化合物、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物、及びアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む成分を用いたものが好ましい。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるポリオール化合物は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物である。これらポリオール化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール;ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等のポリ(アルキレンアジペート);ポリ−ε−カプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリカプロラクトンポリオール;ポリ(1,4−ブタジエン)グリコール、ポリ(1,2−ブタジエン)グリコール等のポリブタジエングリコール;ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等のポリ(アルキレンカーボネート);ポリエステルポリオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の1分子中に3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール;シリコーンポリオール等。
これらのポリオール化合物は単独で用いることも、或いは2種以上のポリオール化合物を組み合わせて用いることも可能である。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるポリチオール化合物は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物である。これらポリチオール化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコ−ルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ブタンジチオール、1,4−ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、1,1,1,1−テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−メルカプトメタノール、トリス−{(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル}−イソシアヌレート等。
これらのポリチオール化合物は単独で用いることも、或いは2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるアニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、アニオン性基としてカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物が挙げられる。具体的には、例えば2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシルカルボン酸;リジン、アルギニン等のジアミノカルボン酸等が挙げられる。
ポリウレタンの原料である活性水素基含有アクリレート化合物は、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレート等が挙げられる。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられ、具体的には、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N’−ビス〔α−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等が挙げられる。
また、本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
かかるポリイソシアネート化合物として具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
上記ポリイソシアネート化合物の多量体(例えば、二量体、三量体等);
ポリイソシアネート化合物の多量体と水との反応により生成するビウレット変性体;
ポリイソシアネート化合物の多量体とアルコール又は後述する低分子量ポリオールとの反応により生成するアロファネート変性体やポリオール変性体;
ポリイソシアネート化合物の多量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、及びこれら変性体の多量体等も、本発明におけるポリウレタンの原料として用いることが可能である。上記のポリイソシアネート化合物の中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は単独で用いることも、或いは2種以上のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いることも可能である。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基の1個以上がブロック剤で保護されたポリブロックイソシアネート化合物を用いてもよい。上記ポリブロックイソシアネート化合物とは、イソシアネート基(−NCO)が熱脱離可能な保護基によりブロックされた化合物のことである。
上記ポリウレタンを製造する際に、鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤として具体的には、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物以外の、他のアミン類、ヒドラジン類を併用することもできる。そのような他のアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリウレタンは、有機溶媒に希釈したり、水分散の形で用いることが出来る。水分散の場合には、水分散ポリウレタンとして、水又は、水に対する親和性が高い有機溶媒と水との混合物からなる溶媒中にポリウレタンをエマルジョン、ディスパージョン、又はコロイダル分散液状に分散させた分散状態のものを用いることができる。上記本発明における水分散ポリウレタンは、ポリウレタン骨格に水分散性の機能付与のためにアニオン性基を有する化合物である。アニオン性基として具体的には、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタイン等のベタイン構造含有基等のアニオン性基等が挙げられる。
また、水分散ポリウレタンを良好に溶解、又は分散させるため、中和剤を使用することが好ましい。上記中和剤としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルエタノールアミン等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン;トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
さらに、水分散ポリウレタンの分散液には、光学基材に対するプライマー組成物の濡れ性を向上させる目的でさらに乳化剤を含有させることも可能である。かかる乳化剤としては、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等が挙げられる。
このような水分散ポリウレタンは、工業的に或いは試薬として入手可能であり、具体的には、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックスシリーズ」、株式会社トクヤマ製「NJ−321A」、三井化学株式会社製「タケラックWSシリーズ」、日華化学株式会社製「エバファノールシリーズ」、「ネオステッカーシリーズ」等が挙げられる。
本発明において、水分散ポリウレタンの硬化体は、上記水分散ポリウレタンとポリロタキサンとを含むプライマー組成物を光学基材に塗布し、水分を除去した後に硬化させることで形成される。
(B−2)ポリウレタンの前駆体
本発明におけるポリウレタン前駆体は、硬化によりポリウレタンを生成するものである。ポリウレタンの前駆体としては、上記(B−1)に記した様な活性水素を有する化合物、ポリイソ(チオ)シアネート化合物、さらには(B−1)に記した様な活性水素を有する化合物とポリイソ(チオ)シアネート化合物を反応させたプレポリマーが挙げられる。(B−1)と(B−2)の違いは、(B−1)ポリウレタンを合成してから(A)ポリロタキサンと混合するか、(B−2)ポリウレタンの前駆体と(A)ポリロタキサンとを混合している状態かの違いである。光学基材との密着性の観点から、(B−2)ポリウレタンの前駆体と(A)ポリロタキサンをと混合した組成物を用いるのが好適である。
活性水素を有する化合物としてポリイソ(チオ)シアネート化合物が残存するような設計のポリウレタンの前駆体は、湿気硬化型ポリウレタンとして用いることが出来る。上記湿気硬化型ポリウレタンは、ポリウレタン分子中にイソシアネート基が残存するように設計されており、分子中に複数存在するイソシアネート基の一部が、例えば、大気中の水分と反応してカルバミン酸を生じた後に脱炭酸してアミンを生成し、該アミンと残存イソシアネート基が反応して尿素結合を生じることにより架橋硬化する化合物である。上記湿気硬化型ポリウレタンとしては、好適には数平均分子量で300〜5,000、特に500〜3,000であることが好ましい。さらに、上記湿気硬化型ポリウレタンとしては、1分子中において末端に存在するイソシアネート基の平均含有量が好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは1質量%〜10質量%に調整されたポリウレタンオリゴマー、或いはポリウレタンプレポリマーであることが好ましい。なお、湿気硬化型ポリウレタン中のイソシアネート基の含有量は、アミンによる逆滴定により定量することができる。すなわち、湿気硬化型ポリウレタン中のイソシアネート基と既知量のアミンとを反応させたのち、残存したアミン量を酸の滴定で定量し、そこから反応したアミン量を算出することにより定量することができる。
上記湿気硬化型ポリウレタンは、イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させることで得ることができる。本発明における湿気硬化型ポリウレタンの原料として好適に使用できるイソシアネート化合物を例示すれば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;
トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物;
イオウ若しくはハロゲン基を1種または2種以上含むポリイソシアネート、及びその変性体等が挙げられる。変性体の例としてはビウレット、イソシアヌレート、アロファネート、カルボジイミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記のイソシアネート化合物の中でも、比較的低温で優れた密着性を発現できる観点から、脂肪族イソシアネート化合物が好適に使用できる。また、硬化速度が速いという観点から、芳香族イソシアネート化合物が好適に使用できる。これらのイソシアネート化合物を用いた場合、水分とイソシアネートとの反応の結果、ウレア結合が生成するが、本発明におけるポリウレタン層にはこのようなウレア結合が含まれていてもよい。
また、本発明における湿気硬化型ポリウレタンの原料として好適に使用できる活性水素を有する化合物としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール;
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;
ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等のポリ(アルキレンアジペート);ポリ−ε−カプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリカプロラクトン;
ポリ(1,4−ブタジエン)グリコール、ポリ(1,2−ブタジエン)グリコール等のポリブタジエングリコール;
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等のポリ(アルキレンカーボネート);ポリエステルポリオール;
1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール;
シリコーンポリオールが挙げられるが、その他の公知の活性水素含有化合物の使用も可能である。これらの中でもポリアルキレングリコール、3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール、ポリアルキレンアジペート、ポリアルキレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエステルポリオールは、硬化させる際の加熱温度をより低くすることができ、基材の熱変形や変色をより確実に防止することができる点で好適に用いることができる。
なお、上記した活性水素を有する化合物は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。特にトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族イソシアネート化合物を用いる場合には、得られる湿気硬化型ポリウレタンの結晶性が高くなる場合もあり、2種類以上の活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。
また、硬化速度が速いという観点から、本発明で使用する湿気硬化型ポリウレタンの分子量は、比較的高いほうが好ましい。分子量を高くする手法としては、前述のイソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させる際に、イソシアネート基の残る量を少なくするように調整する方法がある。あるいは、湿気硬化型ポリウレタン中に複数存在するイソシアネート基を鎖延長剤などにより結合する方法もある。ここで、鎖延長剤としては、先述したような活性水素を有する化合物やエチレンジアミン等のジアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、鎖延長反応の制御のし易さという観点から、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールが好適に用いられる。
このような湿気硬化型ポリウレタンは、工業的に或いは試薬として入手可能であり、具体的には、三井化学株式会社製「タケネートMシリーズ」、株式会社トクヤマ製「TR−SC−P」、竹林化学工業株式会社製「タケシールプライマー」、アルプス化学産業株式会社製「ウレタンプライマー06」等が挙げられる。
本発明において、湿気硬化型ポリウレタンの硬化体は、上記湿気硬化型ポリウレタンとポリロタキサン、溶媒等からなるプライマー組成物を光学基材に塗布し、溶媒を除去した後に硬化させることで形成される。
(B−3)ラジカル重合により得られた樹脂及び/又はラジカル重合性モノマー
ラジカル重合により得られる樹脂としては、例えば(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基等を有するラジカル重合性モノマーを重合することによって得られる単独重合ポリマー、及び共重合ポリマーを挙げることが出来る。
かかるポリマーを例示すると、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリ塩化ビニル、スチレン樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂など)、アクリル樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂など)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリジエン(ポリイソプレン、ポリブタジエンなど)が挙げられる。またこれらのポリマーは、適宜ランダム共重合体、或いはブロック共重合体であってもよく、また変性されたものであってもよい。またこれらのポリマーは、重合性及び/または非重合性の置換基を有していてもよい。
これらのポリマーの中でも、密着性向上の観点から、特にポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。
ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合により硬化するモノマーであり、具体的には(メタ)アクリル重合性モノマー、ビニル基を有するビニル重合性モノマー、アリル基を有するアリル重合性モノマー、シルセスキオキサン重合性モノマーに分類される。以下に、その具体例を示す。
(メタ)アクリル重合性モノマー
(メタ)アクリレ−ト重合性モノマーは、ラジカル重合により硬化する。これらの化合物は、レンズ硬度の調整にも用いることができる。その具体例としては、以下のものを例示することができる。
エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレ−ト、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレートメチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート、2官能ウレタンアクリレート、2官能ウレタンメタクリレート。
ビニル系重合性モノマー
ビニル基を有するビニル系重合性モノマーとしては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、エチルビニルエーテル、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルプロパンジシロキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルスルホキシド、ジビニルペルスルフィド、ジメチルジビニルシラン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、メチルトリビニルシラン、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)、α−メチルスチレンおよびα−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
アリル重合性モノマー
アリル基を有するアリル重合性モノマーとしては、以下のものを例示することができる。
アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカ−ボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量550)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量350)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1500)、ポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量450)、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量750)、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、フェノキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量430)、アクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量420)、ビニロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、スチリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量650)、メトキシポリエチレンチオグリコールアリルチオエーテル(特に平均分子量730)。
尚、アリル重合性モノマーは、連鎖移動剤として作用することで、フォトクロミック組成物のフォトクロミック性(発色濃度、退色速度)を向上させることが可能である。
シルセスキオキサン重合性モノマー
シルセスキオキサン重合性モノマーは、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の分子構造を取るものであり、(メタ)アクリル基等のラジカル重合性基を有している。
このようなシルセスキオキサン重合性モノマーの例としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
{式中、nは、重合度を表わし、3〜100の整数であり、複数個あるR1は、互いに同一もしくは異なっていてもよく、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基を含む有機基、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基及び/またはチオール基を含む有機基であり、少なくとも1つのR1は、ラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基である。}
ここで、R1で示されるラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基としては、例えば(メタ)アクリル基;(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基等の(メタ)アクリル基を有する有機基;アリル基;アリルプロピル基、アリルプロピルジメチルシロキシ基等のアリル基を有する有機基;ビニル基;ビニルプロピル基、ビニルジメチルシロキシ基等のビニル基を有する有機基等が挙げられる。
このような他のラジカル重合性モノマーとして、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーの中でも、密着性及び硬度向上の点から、特に(メタ)アクリレート重合性モノマーが好ましい。
(B−4)エポキシ重合性モノマー
この重合性モノマーは、重合性基として、分子内にエポキシ基を有するものであり開環重合により硬化する。本発明のエポキシ重合性モノマーは、特に硬度向上に効果を示す。このようなエポキシ重合性モノマーは、大きく分けて、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物に分類され、その具体例としては、以下のものを例示することができる。これらの中でも、特に多官能のエポキシ化合物が好ましい。
脂肪族エポキシ化合物;エチレンオキシド、2−エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’−メチレンビスオキシラン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル。
脂環族エポキシ化合物;イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル。
芳香族エポキシ化合物;レゾールシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オールトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル。
また、上記以外にも、エポキシ基と共に、分子内に硫黄原子を有するエポキシ化合物も使用することができる。このような含硫黄原子エポキシ化合物は、特に屈折率向上に寄与するものであり、鎖状脂肪族及び環状脂肪族のものがあり、その具体例は、次のとおりである。
鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1−(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン。
環状脂肪族含硫黄原子エポキシ化合物;1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[<2−(2,3−エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン。
本発明における(B)樹脂及び/又はその前駆体としては、光学基材、フォトクロミックコート層との密着性が高く、表面硬度が高いことから、(B−1)ポリウレタン、(B−2)ポリウレタンの前駆体が好ましく、特に(B−2)ポリウレタンの前駆体を含む組成物である湿気硬化型ポリウレタンが好ましい。
<(C)溶媒>
本発明のプライマー組成物において、(C)溶媒は、上記(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体の種類に応じて、これら成分をプライマー組成物に均一に希釈溶解または分散させ、かつ粘度調整を行い均一性の高い塗膜を形成させるために、必要に応じ、添加することが出来る。(以下、この成分を単に「(C)成分」と表示する場合もある。)
用いる溶媒は、(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体の種類や量に応じて調整すればよく、(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体が希釈溶解または分散しやすい溶媒が選択される。
用いる溶媒としては、特に制限はないが、
水;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール等のアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;
蟻酸メチル、酢酸エチルエチル、酢酸ブチル等のエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
塩化メチレン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;
メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;
メチルセルソルブ、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のセルソルブ;
N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等の環状アミド;
ジメチルスルホキシド;
メトキシプロピルアセテート;
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることが出来る。
溶媒の含有量は、特に制限されるものではない。ただし、プライマー組成物の塗布性を向上するためには、プライマー組成物における固形分濃度が、例えば、0.1〜98質量%の範囲となるように、溶媒量を調製することが好ましい。該固形分とは、上記(A)ポリロタキサン、上記(B)樹脂及び/又はその前駆体、等を含むものである。
特に本発明のプライマー組成物として、(B)樹脂及び/又はその前駆体の水分散液を用いる場合には、水に対する親和性が高い有機溶媒を併用することが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコール;そのエーテル誘導体;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート;及びメトキシプロピルアセテートなどが使用できる。
<(D)重合硬化促進剤>
本発明のプライマー組成物においては、上記(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体の種類に応じて、その重合硬化を速やかに促進させるために各種の重合硬化促進剤を使用することができる(以下、この成分を単に「(D)成分」と表示する場合もある。)。
例えば、水酸基、及びチオール基とイソシアネート基、及びイソチオシアネート基との反応に用いる場合には、ウレタン或いはウレア用反応触媒や縮合剤が重合硬化促進剤として使用される。
エピスルフィド化合物、チエタニル化合物、エポキシ化合物が使用された場合は、エポキシ硬化剤やエポキシ基を開環重合させるためのカチオン重合触媒が重合硬化促進剤として使用される。
(メタ)アクリル基、ビニル基を含むラジカル重合性モノマーが含まれている場合は、ラジカル重合開始剤が重合硬化促進剤として使用される。
(ウレタン或いはウレア用反応触媒)
この反応触媒は、ポリイソ(チア)シアネートと、ポリオール又はポリチオールとの反応によるポリ(チオ)ウレタン結合生成において用いられる。これらの重合触媒は3級アミンおよびこれらに対応する無機または有機塩、ホスフィン類、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、ルイス酸、または有機スルホン酸を挙げることが出来る。この具体例としては、以下のものを例示することができる。また、選択する上述の化合物の種類により、触媒活性が高すぎる場合は、3級アミンとルイス酸を混合して用いることにより触媒活性を抑えることが可能である。
3級アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−7−ウンデセン。
ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン。
4級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド。
4級ホスホニウム塩;テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド。
ルイス酸;トリフェニルアルミ、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルスズマレエ−ト、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)。
各種金属;オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2−エチルヘキシル。
有機スルホン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸。
(縮合剤)
縮合剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
無機酸;塩化水素、臭化水素、硫酸やリン酸等。
有機酸;p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等。
酸性イオン交換樹脂;アンバーライト、アンバーリスト等。
カルボジイミド;ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノピロリル)−カルボジイミド。
(エポキシ硬化剤)
エポキシ硬化剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
アミン化合物及びその塩;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール。
4級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド。
有機ホスフィン化合物;テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート。
金属カルボン酸塩;クロム(III)トリカルボキシレート、オクチル酸スズ
アセチルアセトンキレート化合物;クロムアセチルアセトナート。
(カチオン重合触媒)
カチオン重合触媒としての具体例は、以下のものを例示することができる。
ルイス酸系触媒;BF3・アミン錯体、PF5、BF3、AsF5、SbF5等。
熱硬化性カチオン重合触媒;ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド。
紫外硬化性カチオン重合触媒;ジアリールヨードニウムヘキサフロオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム。
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤には、光重合開始剤及び熱重合開始剤があり、用いる(B)樹脂及び/又は樹脂の前駆体の種類に応じて適宜選択すればよい。
光重合開始剤の具体例は以下のとおりである。
アセトフェノン化合物;1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン。
α−ジカルボニル化合物;1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート。
アシルフォスフィンオキシド化合物;2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド。
光重合開始剤を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合硬化促進助剤を併用することもできる。
熱重合開始剤の具体例は以下のとおりである。
ジアシルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド。
アセチルパーオキサイドパーオキシエステル;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート。
パーカーボネート;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート。
アゾ化合物;アゾビスイソブチロニトリル。
(D)重合硬化促進剤の添加量としては、重合性基を有する成分の重量を基準として0.1〜5重量%であるのが好適である。
<(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物>
本発明の光学物品用プライマー組成物には、(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物を含むこともできる。(以下、この成分を単に「(E)成分」と表示する場合もある。)。この(E)成分を配合することにより、得られるプライマーコート層と光学基材(プラスチックレンズ)との、プライマーコート層とハードコート層との、更にはプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性をより向上させることができる。
好適な(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物を例示すれば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、1,6−ビストリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル]カーボネート、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等及びこれらの化合物の加水分解性基の一部或いは全部が加水分解したもの又はこれらの化合物が一部縮合したもの等が挙げられる。これらの中でも、光学基材との密着性、更には、プライマーコート層上に積層される無機酸化物微粒子及び加水分解性基含有有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物を硬化させて得られるハードコート層やフォトクロミックコート層との密着性をより向上させるためには、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの化合物の加水分解性基の一部或いは全部加水分解したもの又はこれらの化合物の一部縮合したものを使用するのが好適である。なお、上記加水分解性基含有有機ケイ素化合物は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物の量は、(A)成分と(B)成分との合計質量を基準として、50質量%以下であることが好適である。なお、前記(E)成分の配合量は、加水分解していない加水分解性基含有有機ケイ素化合物を基準とした量である。
<(F)無機酸化物微粒子>
本発明の光学物品用プライマー組成物には、(F)無機酸化物微粒子を配合することができる(以下、この成分を単に「(F)成分」と表示する場合もある。)。(F)無機酸化物微粒子を配合することにより、得られるプライマーコート層の屈折率を向上させ、ハードコート層の耐擦傷性を、より向上させることができる。(F)無機酸化物微粒子は、前記(E)有機ケイ素化合物と併用され、又は(E)有機ケイ素化合物を配合することなく単独で使用される。また、光学物品用プライマー組成物がフォトクロミックコート層用のプライマーコート層を形成するために使用されるものである場合においても、(F)無機酸化物微粒子を配合することにより、得られるプライマーコート層の屈折率の向上、フォトクロミック層の耐擦傷性の向上が期待される。
(F)無機酸化物微粒子として、具体的には、シリカが使用される。また、屈折率を高めるために配合する場合には、Si、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb、W及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物又は複合無機酸化物からなる微粒子、特にSi、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物微粒子又は複合無機酸化物微粒子を使用するのが好適である。
(F)無機酸化物微粒子の粒子径は、電子顕微鏡(TEM)により観察される1次粒子径が1〜300nm程度のものが好適に使用できる。このような粒子径の微粒子は、通常、分散媒として水又は後述する有機溶媒の一部、特にアルコール溶媒に分散させた形で使用に供される。一般には、コロイド分散させることにより、粒子が凝集するのを防止している。例えば、本発明においては、無機酸化物微粒子は、プライマー組成物中に均一に分散されるという観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの水溶性の有機溶媒又は水に分散させたゾルの形態で、プライマー組成物中に配合されることが好ましい。
上述のように、(F)無機酸化物微粒子の分散媒として使用される水溶性有機溶媒としては、例えばイソプロパノール、エタノール、メタノール、エチレングリコール等のアルコール溶媒が好適であるが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド等を使用することもできる。
つまり、本発明においては、(F)無機酸化物微粒子は、水又は上記水溶性有機溶媒に分散されたゾルの状態、具体的には、シリカゾル、無機酸化物微粒子ゾル又は複合無機酸化物微粒子ゾルの状態で、他の各成分と混合されることが好ましい。各成分と混合される順序等は、特に制限されるものではない。
シリカゾルは工業的に入手でき、例えば、水を分散媒とするゾルは、日産化学工業(株)より、スノーテックスOXS、スノーテックスOS、スノーテックスO、スノーテックスO−40等の商品名で市販されている。水溶性有機溶媒を分散媒とするゾルは、日産化学工業(株)より、メタノールシリカゾル、MA−ST−MS(分散媒;メタノール)、IPA−ST(分散媒;イソプロパノール)等として市販されている。
複合無機酸化物微粒子のゾルも、市販のものを使用することができ、例えば、日産化学工業(株)製HXシリーズ、HITシリーズ、HTシリーズ、及び日揮触媒化成(株)製オプトレイクシリーズなどが挙げられる。
本発明において、(F)無機酸化物微粒子の配合量は、最終的に得られるプライマーコート層に求められる物性に応じて適宜決定すればよいが、(A)ポリロタキサン、及び(B)樹脂及び又はその前駆体の合計量を100質量部とした時に、無機酸化物微粒子の固形分が5質量部以上150質量部以下、さらに10質量部以上130質量部以下であることが好ましい。(F)無機酸化物微粒子が、無機酸化物微粒子換算で上記配合量を満足することにより、ハードコート層又はフォトクロミックコート層が形成された光学物品において、耐衝撃性、密着性の低下を抑制することができる。
<(G)その他成分>
本発明におけるプライマー組成物には、前述の成分以外にも、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤を必要に応じて混合することができる。
また、本発明で使用するプライマー組成物には、得られるプライマーコート層の平滑性を向上させるという目的から、界面活性剤をレベリング剤として添加することができる。界面活性剤としては、公知のものが何ら制限なく使用できるが、好適なものを例示すれば、シリコン系、フッ素系、アクリル系、ビニル系等を挙げることができる。該レベリング剤の使用量は、本発明の光学物品用プライマー組成物中に、10〜10,000ppm添加するのが好適である。
なお、本発明のプライマー組成物は、フォトクロミック化合物を実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、含有していないかあるいは含有していてもその含有量では、光学基材に塗布性十分なフォトクロミック性を発現できない量を意味する。具体的には、該プライマー組成物におけるフォトクロミック化合物の含有量は、0.01質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%(全く含まれない)であることが最も好ましい。ただし、本発明のフォトクロミック積層体を製造するに際し、形成されたプライマーコート層に、フォトクロミック化合物が不可避的に混入される場合がある。本発明においては、該プライマーコート層を有するフォトクロミック積層体を除外するものではない。
<プライマー組成物の製造方法>
本発明のプライマー組成物は、前記(A)成分、(B)成分、必要に応じて(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、及び(G)成分を加えて混合することにより製造することができる。ただし、(E)成分は、前記の通り、加水分解させたものを混合することが好ましい。これら各成分を混合する順序は特に制限されるものではなく、公知の方法により混合してやればよい。
(E)成分は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分と直接混合することもできるが、完全に加水分解を行なってから各成分と混合することが好ましい。(A)成分に水が含まれる場合には、そのまま(E)成分と他の成分を混合することにより、(E)成分を加水分解することもできるが、上記の通り、(E)成分は加水分解させたものを配合することが好ましい。そのため、別途、酸水溶液で(E)成分を完全に加水分解させたものを各成分と混合することが好ましい。この場合、酸水溶液は、(E)成分が完全に加水分解する量を使用することが好ましく、特に好ましくは0.001〜1N塩酸水溶液を、(E)成分に含まれる加水分解性基(アルコキシシリル基)に対して、等モル〜5倍モル使用することが好ましい。なお、前記モル数は、水のモル数である。
このように加水分解した(E)成分は、酸水溶液を含んだまま、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分と混合することができる。
上記の通り、酸水溶液を使用した場合、本発明のプライマー組成物において、上記好ましい水の配合量は、この酸水溶液の配合量を含むものとする。ただし、(E)成分が加水分解した際に生じる低級アルコールは、上記好ましい(C)成分の配合量には含まれないものとする。
(F)無機酸化物微粒子の量は、(A)成分と(B)成分との合計質量を基準として、150質量%以下であることが好適である。
本発明において、(F)成分を、水に分散させたゾル又は有機溶媒に分散させたゾルの状態で使用した場合、上記の(C)成分の配合量は、これらゾルに含まれる水及び有機溶媒の量を含むものとする。
(G)その他成分である乳化剤の添加量としては、必要に応じて任意の量を使用することができるが、前記水分散ポリウレタンに対して、0.01〜10質量%添加することが好ましい。
上述のようにして製造される本発明のプライマー組成物は、得られるプライマーコート層の外観向上の観点、また光学基材とプライマーコート層間、プライマーコート層とフォトクロミックコート層間の密着性の観点から、光学基材に塗布する前に異物を除去する目的でろ過してから使用することが好ましい。
<プライマーコート層の製造方法>
本発明のプライマー組成物を光学基材上に塗布し、該プライマー組成物を硬化(乾燥)させることによって、プライマーコート層を形成することができる。硬化方法は、熱硬化、光硬化など成分(A)及び成分(B)の有する官能基の種類によって適宜採用される。
プライマー組成物から形成されたプライマーコート層は、光学基材、特にプラスチックレンズの光学特性を低下させることがない。そのため、プライマーコート層が積層されたプラスチックレンズは、そのままで光学物品として使用することができる。さらに、プライマーコート層上に、無機酸化物微粒子及び有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物を塗布し、硬化させてハードコート層を積層することにより、優れた耐衝撃性と耐擦傷性を有する光学物品(積層体)とすることもできる。
本発明において、プライマー組成物を光学基材上に塗布する場合、光学基材について、密着性を向上させる目的で前処理を行なうことが好ましい。前処理としては、有機溶剤による脱脂処理、塩基性水溶液又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理又はUVオゾン処理等を挙げることができる。中でも、光学基材とプライマーコート層との密着性を向上させる観点から、有機溶剤による脱脂処理、アルカリ処理、研磨処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、又はUVオゾン処理、或いはこれらを組み合わせた処理を行なうのが好適である。
プライマー組成物を光学基材(プラスチックレンズ)に塗布する方法は、特に制限されるものではなく、ディップコーティング、スピンコーティング、ディップスピンコーティングなどの方法が挙げられる。中でも、外観の良好な塗膜が得られやすいことからスピンコーティングを採用することが好ましい。
本発明において、プライマー組成物中に溶媒が含まれる場合、あるいは熱硬化性のプライマー組成物である場合には、溶媒を除去するため、上記方法により光学基材上及び/またはフォトクロミックコート層上に塗布されたプライマー組成物を乾燥する。本発明においては、上記方法により塗布されたプライマー組成物からなるプライマーコート層を、塗布終了後、加熱して溶媒を除去し、プライマーコート層を形成させることが好ましい。このときの加熱温度は特に限定されないが、加熱による光学基材の変形や変色を防止するという観点から、室温〜200℃の範囲であるのが好適である。加熱時間は、特に限定されないが、通常1分〜1時間の範囲である。
光硬化性のプライマー組成物である場合には、スピンコーティング法等によりプライマー組成物を塗布した後、窒素などの不活性ガス中に設置した後に、UV照射を行うことでプライマーコート層を得ることができるし、さらに後述するフォトクロミックコート層を塗布した後に、プライマーコート層とフォトクロミックコート層を同時に光硬化してもよい。
スピンコーティング法により、プライマー組成物を塗布する際には、均一な厚さのプライマーコート層を得易いという理由から、プライマー組成物の25℃における粘度は、5〜200cP、特に10〜100cPの範囲に調整することが好ましい。粘度の調整は、分散媒の種類や量を変えることにより行うことができる。
上記プライマーコート層の厚さは、良好な光学特性、及び光学基材とプライマーコート層間、プライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、乾燥後に形成されるプライマーコート層の厚さが0.1〜20μm、特に1〜10μm、更に好ましくは、1〜7μmとなるような厚さとするのが好適である。
本発明のプライマー組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック積層体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や、重合性モノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で、50〜500mW/cm2のUV光を、0.5〜5分の時間で光照射するように条件を選ぶのが好ましい。
<本発明のプライマー組成物を用いた積層体>
上記本発明のプライマー組成物は、光学基材上にフォトクロミックコート層が積層されたフォトクロミック積層体におけるプライマーコート層に用いることができる。特に光学基材上にフォトクロミックコート層及びハードコート層がこの順に積層されたフォトクロミック積層体における、光学基材とフォトクロミックコート層及び/またはフォトクロミックコート層とハードコート層との間に、本発明のプライマー組成物の硬化体であるプライマーコート層を形成させることで、高いフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミックコート層にクラックなどの外観不良が発生しにくく、更にキズつきにくい表面硬度を有するフォトクロミック積層体を得ることが出来るため好ましい。本発明の光学物品用プライマー組成物から形成されるプライマーコート層は、光学基材とフォトクロミックコート層の間に用いることで、フォトクロミックコート層の硬化時の収縮に起因するクラックの発生を効果的に抑制することができる。さらに、該プライマーコート層をフォトクロミック層とハードコート層の間に形成することで、ハードコート層の硬化時の収縮に起因するクラックの発生も効果的に抑制することができる。
以下、本発明のフォトクロミック積層体を構成する光学基材、フォトクロミックコート層、及びハードコート層について説明する。
<光学基材>
本発明で使用する光学基材としては、光透過性を有する基材であれば特に限定されず、ガラス及びプラスチックレンズ、家屋や自動車の窓ガラス等公知のレンズ基材が挙げられるが、プラスチックレンズを用いるのが特に好適である。
上記プラスチックレンズとしては、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂レンズ;多官能(メタ)アクリル樹脂、アリル樹脂、チオウレタン樹脂、ウレタン樹脂およびチオエポキシ樹脂等の架橋性樹脂レンズ等、現在プラスチックレンズとして使用されている公知のものが使用できる。
<フォトクロミックコート層>
本発明のフォトクロミック積層体におけるフォトクロミックコート層は、フォトクロミック硬化性組成物からなるコーティング剤を塗布した後に、これを硬化させることで光学基材上に積層させることができる。
上記フォトクロミック硬化性組成物は、フォトクロミック化合物、(メタ)アクリルモノマー及び重合開始剤を含むことができる。このようなフォトクロミック硬化性組成物としては、従来のコーティング法で使用可能なフォトクロミック硬化性組成物が特に限定なく使用できる。しかしながら、フォトクロミック特性、光学特性及びフォトクロミック層の耐溶剤性、表面硬度、及び密着性の観点から、国際公開第03/011967号パンフレット、国際公開第04/050775号パンフレット、国際公開第05/014717号パンフレット、国際公開2011/125956号パンフレット、国際公開2013/008825号パンフレット、特開2013−072000号公報、特願2013−155220号公報、国際公開第2014/136804号パンフレットに記載されているフォトクロミック硬化性組成物を使用するのが好適である。
本発明におけるフォトクロミック硬化性組成物で使用される成分としては、公知の(メタ)アクリルモノマーを特に制限なく使用することが出来る。具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量628のビス(4−メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量804の2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量468のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、平均分子量330のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量736のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量258のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量308のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量508のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量708のポリエチレングリコールジアクリレート、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物であるポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート等の多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート等の多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有し、かつケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を有するシルセスキオキサンモノマー、2−イソシアナトエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
これらの中でも、クラック等の外観不良を生じにくく、高い表面硬度を有するフォトクロミックコート層を得るためには、国際公開第2014/136804号パンフレット、及び特開2015−025063号公報等に記載されているフォトクロミック硬化性組成物を採用することが好適である。
すなわち、
1)ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、及び
2)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、及び
3)2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)等のビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート、を含んでなるフォトクロミック硬化性組成物、もしくは、
4)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、
5)2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)等のビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート、及び
6)分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーを含んでなるフォトクロミック硬化性組成物であることが好適である。
さらには、1)〜3)の(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、1)が10〜30質量%、2)が35〜55質量%、3)が15〜55質量%であるフォトクロミック硬化性組成物、もしくは、
4)〜6)の(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、4)が35〜70質量%、5)が10〜40質量%、6)が10〜40質量%であるフォトクロミック硬化性組成物であることがより好適である。
また、以下の配合割合のフォトクロミック硬化性組成物とすることにより、本発明のプライマー組成物からなるプライマーコート層との密着性をより向上できる。さらには、得られるフォトクロミック積層体のフォトクロミック特性も向上できる。具体的には、
7)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、
8)分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマー
9)(メタ)アクリレート基を有するポリロタキサンモノマーを含んでなるフォトクロミック硬化性組成物であることが好適である。さらに、(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、7)が30〜50質量%、8)が30〜60質量%、9)が1〜10質量%、7)、8)、および9)以外の(メタ)アクリレートモノマーが0〜20質量%であるフォトクロミック硬化性組成物であることがより好適である。
該フォトクロミック硬化性組成物は、ポリロタキサンを含有することが出来る。ポリロタキサンを含有することにより、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙を確実に確保することができ、優れたフォトクロミック性を発現させることができる。
また、該フォトクロミック硬化性組成物には、フォトクロミック化合物として、フォトクロミック作用を示す化合物を採用することができる。例えば、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物等のフォトクロミック化合物がよく知られており、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することができる。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても構わない。前記のフルギド化合物、クロメン化合物、及びスピロオキサジン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレット等に記載されている化合物が挙げられる。
フォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ〔2,1−f〕ナフト〔1,2−b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。
本発明におけるフォトクロミック硬化性組成物には、前述の成分以外にも、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤を必要に応じて混合することができる。
界面活性剤としては、シリコーン鎖(ポリアルキルシロキサンユニット)を疎水基とするシリコーン界面活性剤、またフッ化炭素鎖を有するフッ素含有界面活性剤などの、公知の界面活性剤が何ら制限なく使用できる。界面活性剤を添加することにより、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を用いた時のフォトクロミックコート層のフォトクロミック特性や密着性に悪影響を与えることなくプライマーあるいは光学基材に対する濡れ性を向上させると共に外観不良発生を防止しやすくなる。
本発明で好適に使用できるシリコーン界面活性剤及びフッ素含有界面活性剤を具体的に例示すると、東レ・ダウコーニング株式会社製『L−7001』、『L−7002』、『L−7604』、『FZ−2123』、大日本インキ化学工業株式会社製『メガファックF−470』、『メガファックF−1405』、『メガファックF−479』、住友スリーエム社製『フローラッドFC−430』等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。
特に、フォトクロミック硬化性組成物に紫外線安定剤を混合して使用すると、フォトクロミック化合物の耐久性をさらに向上させることができるために好適である。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を好適に使用することができる。好適な例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール、2,6−エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX 1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565等を挙げることができる。
<ハードコート層>
本発明のフォトクロミック積層体においては、フォトクロミックコート層に、さらに、無機酸化物微粒子及び加水分解性基含有有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物(以下、「ハードコート組成物」とも言う。)を硬化させて得られるハードコート層を積層させることができる。ハードコート層に使用される無機酸化物微粒子としては、前述のシリカゾル、無機酸化物又は複合無機酸化物微粒子を何ら制限なく使用できる。無機酸化物微粒子の配合量は、無機酸化物の種類、最終的に得られるハードコート層に望まれる物性、目的に応じて適宜決定すればよい。一般的には、最終的に形成されるハードコート層に占める無機酸化物微粒子の割合が20〜80質量%、特に40〜60質量%となるような量に、他の成分の使用量に合わせて設定するのがよい。
加水分解性基含有有機ケイ素化合物は、無機酸化物微粒子のバインダーとしての機能を有し、ハードコート層中でマトリックスとなる透明な硬化体を形成するものであり、重合可能な有機ケイ素化合物が使用される。当該有機ケイ素化合物は、官能基であるアルコキシル基を有するものであり、前述の公知の加水分解性基含有有機ケイ素化合物を何ら制限無く使用できる。当該有機ケイ素化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。当該有機ケイ素化合物は、その少なくとも一部が加水分解した形で、或いはその部分加水分解物が縮合した部分縮合物の形で使用に供することもできる。本発明においては、特にプラスチックレンズとの密着性、架橋性の観点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシラン、及びこれらの部分加水分解物又は部分縮合物等が好適に使用される。
このハードコート組成物では、加水分解性基含有有機ケイ素化合物が加水分解し、この加水分解物が無機酸化物微粒子を取り込んだ形で重合硬化(重縮合)してマトリックスとなる硬化体を形成し、無機酸化物微粒子が緻密にマトリックス中に分散したハードコート層を形成するものと考えられる。そのため、この硬化体を形成するために、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の加水分解を促進させるための水が必要となる。
この目的で使用される水は、酸水溶液の形で添加されても構わず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸を水溶液の形で添加することができる。
ハードコート組成物には、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の加水分解物の硬化を促進させるための硬化触媒を配合することもできる。この硬化触媒は、それ自体公知のもの、例えば、アセチルアセトナート錯体、過塩素酸塩、有機金属塩、各種ルイス酸が使用され、これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
アセチルアセトナート錯体を、具体的に例示すれば、アルミニウムアセチルアセトナート、が好適である。
過塩素酸塩としては、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アンモニウム等を例示することができる。
また、該ハードコート組成物には、有機溶媒を配合することもできる。この有機溶媒は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の溶剤となり、且つ無機酸化物微粒子の分散媒となるものであるが、このような機能を有していると同時に、揮発性を有するものであれば、公知の有機溶媒が使用できる。このような有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の低級カルボン酸の低級アルコールエステル;セロソルブ、ジオキサン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン;メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これら有機溶媒は単独又は2種以上混合して使用される。
ハードコート層を形成するためのハードコート組成物は、上記成分を公知の方法により混合することで製造できる。中でも、加水分解性基含有有機ケイ素化合物は、完全に加水分解させた後に、他の成分と混合することが好ましい。
<フォトクロミック積層体の構成>
本発明においては、プライマーコート層を光学基材の上部に有するが、ハードコート層を有するフォトクロミック積層体としては、図2〜図4に示すいずれの積層形態も好適に構成することができる。
すなわち光学基材にプライマーコート層2を形成したすぐ上に、フォトクロミックコート層4、続いてハードコート層3を形成した場合の積層体(図2)、フォトクロミックコート層4のすぐ上に、プライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成した場合の積層体(図3)、さらにはプライマーコート層2、続いてフォトクロミックコート層4のすぐ上に、さらにプライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成した場合の積層体(図4)である。
光学基材のすぐ上にプライマーコート層を形成させることにより、フォトクロミックコート層形成時に光重合工程で生じる重合収縮応力を緩和し、また光重合後の熱処理工程における熱膨張による応力を緩和しやすく、クラックを防止しやすくなる。さらには、ハードコート処理後のキズ付きを防止する効果も期待できる。
また、フォトクロミックコート層のすぐ上にプライマーコート層を形成させることにより、ハードコート処理時の熱膨張による応力を緩和しやすく、クラックを防止しやすくなり、ハードコート処理後のキズ付きを防止する効果も期待できる。さらにはプライマーコート層に酸素透過性の低い層を用いることでフォトクロミックコート層中に含まれるフォトクロミック化合物の劣化を抑える効果も期待出来る。
これらの積層体の中で、特にフォトクロミックコート層形成時にクラックを防止することが出来、フォトクロミック積層体の歩留まりを向上させる効果が高いことから、光学基材にプライマーコート層2を形成したすぐ上に、フォトクロミックコート層を形成させることが好ましく、さらには、フォトクロミックコート層のすぐ上に、プライマーコート層を併せて設けることが特に好ましい。
光学基材上に形成されるプライマーコート層の厚さは、良好な光学特性、光学基材とプライマーコート層間との密着性、及びプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、乾燥後に形成されるプライマーコート層の厚さが好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm、特に好ましくは、1〜8μmとなるような厚さとするのが好適である。
プライマーコート層上に形成されるフォトクロミックコート層の厚さは、良好な光学特性、フォトクロミック特性、及びプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmとなるような厚さとするのが好適である。
<フォトクロミック積層体の製造方法>
(フォトクロミックコート層の製造方法)
本発明のフォトクロミック積層体は、光学基材上に直接あるいはプライマーコート層を積層後、更にフォトクロミック硬化性組成物を積層することにより得られる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物の塗布方法は、特に限定されず公知のコーティング法がなんら制限なく適用できる。具体的には、該組成物をスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ディップ−スピンコーティング等の方法で塗布する方法が例示される。これら塗布方法の中でも膜厚の制御が容易で、外観の良好な塗膜が得られるという理由から、スピンコーティングを採用するのが好ましい。
コーティング法によりフォトクロミック硬化性組成物を塗布する場合には、光学基材上に、スピンコーティング法などによりプライマーコート層を積層し、窒素などの不活性ガス中に設置した後に、UV照射を行うことで、コーティング法によるプライマーコート層を得ることができるし、さらに後述するフォトクロミックコート層を塗布した後に、プライマーコート層とフォトクロミックコート層を同時に光硬化してもよい。その中でも、プライマーコート層とフォトクロミックコート層の密着性の観点から、プライマー組成物を光学基材上に塗布後、乾燥させた後に、得られたプライマーコート層上にフォトクロミック硬化性組成物を塗布し、窒素などの不活性ガス中に設置し、UV照射により、プライマーコート層とフォトクロミックコート層を、同時に光硬化を行う方法が好適である。
プライマーコート層上に形成されるフォトクロミックコート層の厚さは、良好な光学特性、フォトクロミック特性、及びプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmとなるような厚さとするのが好適である。
該フォトクロミック硬化性組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック積層体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や、(メタ)アクリルモノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、例えば365nmの波長で、50〜500mW/cm2のUV光を、0.5〜5分の時間で光照射するような条件を選ぶのが好ましい。
本発明のフォトクロミック積層体においては、フォトクロミックコート層をUV硬化により積層した後、光学基材とフォトクロミックコート層間、あるいはプライマーコート層とフォトクロミックコート層間との密着性を高めるため、60〜120℃の温度範囲で0.5〜6時間程度加熱処理することが好ましい。こうすることにより、密着性が良好なフォトクロミック積層体を得ることができる。
<ハードコート層の形成方法>
本発明におけるハードコート層は、フォトクロミックコート層あるいはプライマーコート層が形成された光学物品上にハードコート組成物を塗布し、乾燥・硬化させることによって、形成することができる。ハードコート層を設けることにより、優れた耐擦傷性を有する製品を製造することができる。
ハードコート組成物をフォトクロミックコート層あるいはプライマーコート層上に塗布する方法は、特に制限されるものではなく、ディップコーティング、スピンコーティング、ディップスピンコーティングなどの方法が挙げられる。中でも、生産性、塗膜の均一性の観点から、ディップコーティングを採用することが好ましい。
本発明において、最終的に、ハードコート組成物中に含まれる溶剤を除去する必要があるため、上記方法によりプライマーコート層上に塗布されたハードコート組成物を乾燥する。本発明においては、ハードコート組成物の塗膜を加熱して溶剤を除去することによってハードコート層を形成させることが好ましい。このときの加熱温度は特に限定されないが、密着性、耐擦傷性及び加熱によるプラスチックレンズの変形や変色を防止するという観点から、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは90〜110℃の範囲であるのが好適である。加熱時間は、特に限定されないが、通常1時間〜5時間の範囲であり、生産性の観点から1時間〜3時間であることが特に好適である。
このようにして形成されたハードコート層3の膜厚は、1.0μm以上4.0μm以下であることが好ましい。ハードコート層の膜厚が上記範囲を満足することにより、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れる積層体が得られる。
本発明のプライマー組成物は、耐衝撃性の改良効果が高いため、高硬度ハードコート層が形成される積層体に好適に適用できる。
<その他の層>
また、さらに必要に応じてハードコート層上に、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物から成る薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも勿論可能である。
本発明の光学物品用プライマー組成物(以下、単に「プライマー組成物」とも言う)は、ポリロタキサンを含有することが特徴である。本発明のプライマー組成物から形成される硬化体を、後述するように、光学基材とフォトクロミック化合物を含有する層(フォトクロミックコート層)及び/またはフォトクロミック化合物を含有する層(フォトクロミックコート層)とハードコート層との間に設けられるプライマーコート層として用いることで、プライマーコート層が接触する両層との密着性を確保し、かつフォトクロミックコート層のクラックを防止することができる。また、フォトクロミックコート層及び/またはハードコート層の表面硬度を高くする効果、及びフォトクロミック化合物の劣化を抑制する効果を示す。
このように本発明のプライマー組成物を用いたプライマーコート層が、上記の効果を有する理由について、詳細は不明であるが、本発明者らは以下のように考えている。ポリロタキサンの環状分子は軸分子上を自由に動くことができるため、フォトクロミックコート層に生じた応力をプライマーコート層に含有されるポリロタキサン分子にて緩和することによるものと思われる。特に環状分子が重合性官能基を有する場合には、そこを起点としてポリロタキサンと他の構成成分を架橋しうるため、架橋点が自由に動く超分子ネットワークをつくることができる。この際、架橋点は滑車のように作用し(滑車効果)、フォトクロミックコート層に生じた応力の緩和効果が高くなると思われる。
本発明のプライマー組成物は、(A)ポリロタキサン、(B)樹脂及び/又はその前駆体の他に、必要に応じて、(C)水及び/または有機溶媒、(D)重合硬化促進剤、(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物、(F)無機酸化物微粒子、(G)その他成分等を含んでいてもよい。以下、本発明の光学物品用プライマー組成物の各成分について説明する。
<(A)ポリロタキサン>
(A)ポリロタキサンは、軸分子と該軸分子を包接する複数の環状分子とからなる複合分子構造を有する公知の化合物であり、その構造の概略図を図1に示す。全体として”1”で示されているポリロタキサン分子は、鎖状の軸分子”2”と環状分子”3”とから形成されている複合分子構造を有している。即ち、鎖状の軸分子”2”を複数の環状分子”3”が包接しており、環状分子”3”が有する環の内部を軸分子”2”が貫通している。従って、環状分子”3”は、軸分子”2”上を自由にスライドし得るのであるが、軸分子”2”の両端には、嵩高い末端基”4”が形成されており、環状分子”3”の軸分子”2”からの脱落が防止されている。また”5”は環状分子”3”の側鎖である。(以下、この成分を単に「(A)成分」と表示する場合もある。)
かかるポリロタキサンにおいて、軸分子としては、種々のものが知られており、例えば、鎖状部分としては、環状分子が有する環を貫通し得る限りにおいて直鎖状或いは分岐鎖であってよく、一般にポリマーにより形成される。
このような軸分子の鎖状部分を形成するポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース系樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリエーテル系樹脂(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフランなど)、ポリビニルアセタール、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサゾリン、カゼイン、ゼラチン、でんぷん、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリα−アセチル−γ−ブチロラクトン)、ポリ塩化ビニル、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂など)、アクリル系樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂など)、ポリカーボネート、ポリウレタン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリアニリン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリイミド、ポリシロキサン系樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリフェニルビニルシロキサンなど)、ポリカーボネート樹脂(ポリエチレンカーボネート、ポリ炭酸プロピレンなど)、ポリスルホン、ポリイミン、ポリ無水酢酸、ポリ尿素、ポリスルフィド、ポリフォスファゼン、ポリケトンポリフェニレン、ポリハロオレフィン等を挙げることができる。これらのポリマーは、適宜ランダム共重合体、或いはブロック共重合体であってもよく、また変性されたものであってもよい。またこれらのポリマーは、重合性及び/または非重合性の置換基を有していてもよい。
本発明において、これらのうち、鎖状部分を形成するポリマーとして好適なものは、ポリエチレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコールまたはポリビニルメチルエーテルでありおよびポリエチレングリコールである。
さらに、鎖状部分の両端に形成される嵩高い基としては、軸分子からの環状分子の脱離を防ぐ基であれば、特に制限されないが、嵩高さの観点から、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイニル基、ジニトロフェニル基、及びピレニル基体を挙げることができ、特に導入のし易さなどの点で、アダマンチル基を好ましいものとして挙げることができる。
上述した軸分子の分子量は、特に制限されないが、大きすぎると、他の成分との相溶性が悪くなる傾向があり、小さすぎると環状分子の可動性が低下し、本発明のプライマー組成物によって得られるプライマーコート層の柔軟性が低下する傾向がある。このような観点から、軸分子の重量平均分子量Mwは、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜50,000の範囲にある。
また、環状分子は、上記のような軸分子を包接し得る大きさの環を有するものであればよい。このような環としては、例えばシクロデキストリン環、クラウンエーテル環、ベンゾクラウン環、ジベンゾクラウン環及びジシクロヘキサノクラウン環を挙げることができ、特にシクロデキストリン環が好ましい。
シクロデキストリン環には、α体(環内径0.45〜0.6nm)、β体(環内径0.6〜0.8nm)、γ体(環内径0.8〜0.95nm)があるが、本発明では、特にα−シクロデキストリン環及びγ−シクロデキストリン環が好ましく、α−シクロデキストリン環が最も好ましい。
上記のような環を有する環状分子は、1つの軸分子に複数個が包接しているが、一般に、軸分子1個当たりに包接し得る環状分子の最大包接数を1としたとき、環状分子の包接数は、0.001乃至0.6、の範囲にあることが好ましい。環状分子の包接数が多すぎると、一つの軸分子に対して環状分子が密に存在するため、その可動性が低下し、本発明のプライマー組成物によって得られるプライマーコート層の柔軟性が低下する傾向がある。また包接数が少なすぎると、ポリロタキサンが示す滑車効果が小さくなり、応力緩和能が小さくなる傾向がある。
一つの軸分子に対する環状分子の最大包接数は、軸分子の長さ及び環状分子が有する環の厚みから算出することができる。
例えば、軸分子の鎖状部分がポリエチレングリコールで形成され、環状分子が有する環がα−シクロデキストリン環である場合を例にとると、次のようにして最大包接数が算出される。
ポリエチレングリコールの繰り返し単位[−CH2−CH2O−]の2つ分がα−シクロデキストリン環1つの厚みに近似する。従って、このポリエチレングリコールの分子量から繰り返し単位数を算出し、この繰り返し単位数の1/2が環状分子の最大包接数として求められる。この最大包接数を1.0とし、環状分子の包接数が前述した範囲に調整されることとなる。
また、本発明においては、上述した環状分子が有する環は、側鎖が導入されていてもよい。この側鎖は、図1において”5”で示されている。このような側鎖”5”を環に導入することにより、側鎖、架橋点が自由に動く超分子ネットワークをつくることができる。これがスライドリングマテリアルとしてのポリロタキサンの基本構造であり、この際架橋点は滑車のように作用し(滑車効果)、膜応力を緩和することによりクラック防止効果を向上させることが出来る。
上記の側鎖としては、炭素数が3〜20の範囲にある有機鎖の繰り返しにより形成されていることが好適であり、このような側鎖の平均重量分子量は300〜10,000の範囲にあるのがよい。
さらに、上記のような側鎖は、環状分子の環が有する官能基を利用し、この官能基を修飾することによって導入される。例えば、α−シクロデキストリン環は、官能基として18個の水酸基を有しており、この水酸基を介して側鎖が導入される。即ち、1つのα−シクロデキストリン環に対しては最大で18個の側鎖を導入することができることとなる。本発明においては、前述した側鎖の機能を十分に発揮させるためには、このような環が有する全官能基数の6%以上、特に30%以上が、修飾され、側鎖を有していることが好ましい。因みに、上記α−シクロデキストリン環の18個の水酸基の内の9個に側鎖が結合している場合、その修飾度は50%となる。
本発明において、上記のような側鎖(有機鎖)は、その大きさが前述した範囲内にある限り、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。開環重合;ラジカル重合;カチオン重合;アニオン重合;原子移動ラジカル重合、RAFT重合、NMP重合などのリビングラジカル重合などを利用し、適宜の化合物を前記環が有する官能基に反応させることによって適宜の大きさの側鎖を導入することができる。
例えば、開環重合により、環状ラクトン、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状カーボネート、環状イミノエーテル、環状チオカーボネート等の環状化合物に由来する側鎖を導入することができるが、これらの中でも、入手が容易であり、反応性が高く、さらには大きさ(分子量)の調整が容易であるという観点から、環状エーテル、環状シロキサン、ラクトン、環状カーボネートを用いることが好ましい。好適な環状化合物の具体例は、以下のとおりである。
例えば、開環重合により、環状ラクトン、環状エーテル、環状アセタール、環状アミン、環状カーボネート、環状イミノエーテル、環状チオカーボネート等の環状化合物に由来する側鎖を導入することができるが、これらの中でも、入手が容易であり、反応性が高く、さらには大きさ(分子量)の調整が容易であるという観点から、環状エーテル、環状シロキサン、環状ラクトン、環状カーボネートを用いることが好ましい。好適な環状化合物の具体例は、以下のとおりである。
環状エーテル;エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、オキセタン、3−メチルオキセタン、3,3−ジメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフランなど。
環状シロキサン;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンなど。
環状ラクトン;
4員環ラクトン;β−プロピオラクトン、β−メチルプロピオラクトン、L−セリン−β−ラクトンなど。
5員環ラクトン;γ−ブチロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、γ−ヘプタノラクトン、γ−オクタノラクトン、γ−デカノラクトン、γ−ドデカノラクトン、α−ヘキシル−γ−ブチロラクトン、α−ヘプチル−γ−ブチロラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトン、γ−メチル−γ−デカノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α,α−ジメチル−γ−ブチロラクトン、D−エリスロノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−ノナノラクトン、DL−パントラクトン、γ−フェニル−γ−ブチロラクトン、γ−ウンデカノラクトン、γ−バレロラクトン、2,2−ペンタメチレン−1,3−ジオキソラン−4−オン、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、γ−クロトノラクトン、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン、β−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンなど。
6員環ラクトン;δ−バレロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、δ−オクタノラクトン、δ−ノナノラクトン、δ−デカノラクトン、δ−ウンデカノラクトン、δ−ドデカノラクトン、δ−トリデカノラクトン、δ−テトラデカノラクトン、DL−メバロノラクトン、4−ヒドロキシ−1−シクロヘキサンカルボン酸δ−ラクトン、モノメチル−δ−バレロラクトン、モノエチル−δ−バレロラクトン、モノヘキシル−δ−バレロラクトン、1,4−ジオキサン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オンなど。
7員環ラクトン;ノンアルキル−ε−カプロラクトン、ジアルキル−ε−カプロラクトン、モノメチル−ε−カプロラクトン、モノエチル−ε−カプロラクトン、モノヘキシル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、ジ−n−プロピル−ε−カプロラクトン、ジ−n−ヘキシル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン、トリエチル−ε−カプロラクトン、トリ−n−ε−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、5−ノニル−オキセパン−2−オン、4,4,6−トリメチル−オキセパン−2−オン、4,6,6−トリメチル−オキセパン−2−オン、5−ヒドロキシメチル−オキセパン−2−オンなど。
8員環ラクトン;ζ−エナントラクトンなど。
その他の環状ラクトン;ラクトン、ラクチド、ジラクチド、テトラメチルグリコシド、1,5−ジオキセパン−2−オン、t−ブチルカプロラクトンなど。
環状カーボネート;エチレンカーボネート、炭酸プロピレン、炭酸1,2−ブチレン、グリセロール1,2−カルボナート、4−(メトキシメチル)−1,3−ジオキソラン−2−オン、(クロロメチル)エチレンカーボネート、炭酸ビニレン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−クロロメチル−5−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,5−ジフェニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,3−ジオキサン−2−オン、5−メチル−5−プロピル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5,5−ジエチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなど。
上記の環状化合物は、単独で使用することができまた複数種を併用することもできる。
本発明において、好適に使用されるものは、環状ラクトン及び環状カーボネートであり、それらのうち、ε−カプロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ブチロラクトン等の環状ラクトンが特に好適であり、もっとも好ましいものはε−カプロラクトンである。
また本発明において、上記ポリロタキサンの側鎖に重合性官能基を導入することにより、ポリロタキサンの側鎖や(B)樹脂及び/又はその前駆体における樹脂前駆体(以下、「重合性モノマー」とも言う。)との架橋結合形成等に伴い、プライマーコート層の強度を向上させることができる。その結果、得られるフォトクロミック積層体の機械的強度を向上させることができる。
上記重合性官能基含有ポリロタキサンの重合性官能基の導入位置としては、側鎖のポリマー末端、あるいは、側鎖のポリマー鎖中のいずれでもよい。ただし、該重合性官能基は、側鎖のポリマー末端の官能基を利用して導入するのが合成上容易である。その際の重合性官能基導入のための官能基としては、下記重合性官能基の導入に適した基が適宜用いられる。
この重合性官能基としては、例えば(メタ)アクリル基、ビニル基及びアリル基のようなラジカル重合性基や、エポキシ基、水酸基、チオール基、アミノ基(−NH2)、エピスルフィド基、チエタニル基、イソシアネート基、又はチオイソシアネート基のような活性水素化合物が挙げられる。
例えば、エポキシ基、エピスルフィド基、チエタニル基は、アミノ基、イソシアネート基と反応し、水酸基やチオール基は、イソシアネート基やチオイソシアネート基と反応して、ウレタン結合、チオウレタン結合が生成する。イソシアネート基やチオイソシアネート基は、有する水酸基、チオール基、又はアミノ基と反応することとなる。
本発明において、最も好適に使用される(A)ポリロタキサンは、両端にアダマンチル基が結合しているポリエチレングリコールを軸分子とし、α−シクロデキストリン環を有する環状分子を環状分子とする。そして該環に、ポリカプロラクトンからなる側鎖が導入され、水酸基を有する側鎖を有するものである。さらに、該環の該側鎖に、(メタ)アクリル基を有する基を導入したものであってもよい。
上記ポリロタキサンの分子量は、特に制限されるものではないが、大きすぎると、他の成分との相溶性が悪くなる傾向があり、小さすぎると環状分子の可動性が低下し、本発明のプライマー組成物から形成されるプライマーコート層の柔軟性が低下する傾向がある。このような観点から、上記ポリロタキサンの重量平均分子量Mwは、100,000〜3,000,000の範囲にあることが好適である。
本発明における(A)ポリロタキサンの使用量としては、特に密着性および表面硬度の観点から、(A)ポリロタキサン、並びに後述する(B)樹脂及び/又はその前駆体の合計100質量部当たり、0.01〜99質量部の範囲で用いることが好ましく、0.1〜90質量部の範囲で用いることがより好ましく、0.5〜70質量部の範囲で用いることがさらに好ましく、0.5〜50質量部の範囲で用いることが特に好ましい。
<(B)樹脂及び/又はその前駆体>
本発明のプライマー組成物において、(B)樹脂及び/又はその前駆体は、該プライマー組成物を硬化させてプライマーコート層とした際に、光学基材とフォトクロミックコート層、及びフォトクロミックコート層とハードコート層との密着性や機械的強度を向上させる機能を有する。(以下、この成分を単に「(B)成分」と表示する場合もある。)
本発明において、(B)樹脂及び/又はその前駆体としては、例えばウレタン系、アクリル等のラジカル重合系、エポキシ系等の材料、あるいはこれらの2種以上の混合物を用いることが出来る。ウレタン系としては(B−1)ポリウレタン、(B−2)ポリウレタンの前駆体、ラジカル重合系としては、(B−3)ラジカル重合により得られた樹脂及び/又はラジカル重合性モノマー、エポキシ系としては(B−4)エポキシ重合性モノマーを用いることが出来る。
(B−1)ポリウレタン
上記ポリウレタンは、活性水素基成分とポリ(チオ)イソシアネート成分とをワンショット法やプレポリマー法等で反応させることにより得ることができ、その分子鎖中にウレタン結合やウレア結合を有するものである。例えば、ウレタン結合は、ポリオールとポリイソシアネートの反応で形成されるものである。このウレタン結合の中には、ポリオールとポリイソチアシアネートとの反応、或いはポリチオールとポリイソチアイソシアネートとの反応で形成されるチオウレタン結合も含まれる。また、ウレア結合は、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応で形成されるものである。このウレア結合の中には、ポリアミンとポリイソチアシアネートとの反応で形成されるチオウレア結合も含まれる。
本発明におけるポリウレタンは、活性水素を有する化合物としてポリオール化合物、ポリチオール化合物、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物、活性水素基含有アクリレート化合物、及びアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物から選ばれる少なくとも1種以上を含む成分を用いたものが好ましい。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるポリオール化合物は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物である。これらポリオール化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール;ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等のポリ(アルキレンアジペート);ポリ−ε−カプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリカプロラクトンポリオール;ポリ(1,4−ブタジエン)グリコール、ポリ(1,2−ブタジエン)グリコール等のポリブタジエングリコール;ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等のポリ(アルキレンカーボネート);ポリエステルポリオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等の1分子中に3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール;シリコーンポリオール等。
これらのポリオール化合物は単独で用いることも、或いは2種以上のポリオール化合物を組み合わせて用いることも可能である。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるポリチオール化合物は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物である。これらポリチオール化合物としては、以下の化合物を例示することができる。
トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコ−ルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ブタンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,6−ヘキサンジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ブタンジチオール、1,4−ビス(メルカプトプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン、4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、1,1,1,1−テトラキス(メルカプトメチル)メタン、1,1,3,3−テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2−テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−メルカプトメタノール、トリス−{(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル}−イソシアヌレート等。
これらのポリチオール化合物は単独で用いることも、或いは2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるアニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、アニオン性基としてカルボキシル基を有する活性水素基含有化合物が挙げられる。具体的には、例えば2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のジヒドロキシルカルボン酸;リジン、アルギニン等のジアミノカルボン酸等が挙げられる。
ポリウレタンの原料である活性水素基含有アクリレート化合物は、分子内に1個以上のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート化合物であって、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレート等が挙げられる。
本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるアルコキシシリル基含有ポリアミン化合物としては、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられ、具体的には、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジエトキシシラン、N,N’−ビス〔α−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等が挙げられる。
また、本発明におけるポリウレタンの原料として好適に使用されるポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
かかるポリイソシアネート化合物として具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;
上記ポリイソシアネート化合物の多量体(例えば、二量体、三量体等);
ポリイソシアネート化合物の多量体と水との反応により生成するビウレット変性体;
ポリイソシアネート化合物の多量体とアルコール又は後述する低分子量ポリオールとの反応により生成するアロファネート変性体やポリオール変性体;
ポリイソシアネート化合物の多量体と炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、及びこれら変性体の多量体等も、本発明におけるポリウレタンの原料として用いることが可能である。上記のポリイソシアネート化合物の中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。これらのポリイソシアネート化合物は単独で用いることも、或いは2種以上のポリイソシアネート化合物を組み合わせて用いることも可能である。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基の1個以上がブロック剤で保護されたポリブロックイソシアネート化合物を用いてもよい。上記ポリブロックイソシアネート化合物とは、イソシアネート基(−NCO)が熱脱離可能な保護基によりブロックされた化合物のことである。
上記ポリウレタンを製造する際に、鎖伸長剤を使用することもできる。鎖伸長剤として具体的には、アルコキシシリル基含有ポリアミン化合物以外の、他のアミン類、ヒドラジン類を併用することもできる。そのような他のアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等のジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン等が挙げられる。
本発明におけるポリウレタンは、有機溶媒に希釈したり、水分散の形で用いることが出来る。水分散の場合には、水分散ポリウレタンとして、水又は、水に対する親和性が高い有機溶媒と水との混合物からなる溶媒中にポリウレタンをエマルジョン、ディスパージョン、又はコロイダル分散液状に分散させた分散状態のものを用いることができる。上記本発明における水分散ポリウレタンは、ポリウレタン骨格に水分散性の機能付与のためにアニオン性基を有する化合物である。アニオン性基として具体的には、カルボキシル基、スルホニル基、リン酸基、スルホベタイン等のベタイン構造含有基等のアニオン性基等が挙げられる。
また、水分散ポリウレタンを良好に溶解、又は分散させるため、中和剤を使用することが好ましい。上記中和剤としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン;N,N−ジメチルエタノールアミン等のN,N−ジアルキルアルカノールアミン;トリエタノールアミン等のトリアルカノールアミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、トリメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
さらに、水分散ポリウレタンの分散液には、光学基材に対するプライマー組成物の濡れ性を向上させる目的でさらに乳化剤を含有させることも可能である。かかる乳化剤としては、ノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等が挙げられる。
このような水分散ポリウレタンは、工業的に或いは試薬として入手可能であり、具体的には、第一工業製薬株式会社製「スーパーフレックスシリーズ」、株式会社トクヤマ製「NJ−321A」、三井化学株式会社製「タケラックWSシリーズ」、日華化学株式会社製「エバファノールシリーズ」、「ネオステッカーシリーズ」等が挙げられる。
本発明において、水分散ポリウレタンの硬化体は、上記水分散ポリウレタンとポリロタキサンとを含むプライマー組成物を光学基材に塗布し、水分を除去した後に硬化させることで形成される。
(B−2)ポリウレタンの前駆体
本発明におけるポリウレタン前駆体は、硬化によりポリウレタンを生成するものである。ポリウレタンの前駆体としては、上記(B−1)に記した様な活性水素を有する化合物、ポリイソ(チオ)シアネート化合物、さらには(B−1)に記した様な活性水素を有する化合物とポリイソ(チオ)シアネート化合物を反応させたプレポリマーが挙げられる。(B−1)と(B−2)の違いは、(B−1)ポリウレタンを合成してから(A)ポリロタキサンと混合するか、(B−2)ポリウレタンの前駆体と(A)ポリロタキサンとを混合している状態かの違いである。光学基材との密着性の観点から、(B−2)ポリウレタンの前駆体と(A)ポリロタキサンをと混合した組成物を用いるのが好適である。
活性水素を有する化合物としてポリイソ(チオ)シアネート化合物が残存するような設計のポリウレタンの前駆体は、湿気硬化型ポリウレタンとして用いることが出来る。上記湿気硬化型ポリウレタンは、ポリウレタン分子中にイソシアネート基が残存するように設計されており、分子中に複数存在するイソシアネート基の一部が、例えば、大気中の水分と反応してカルバミン酸を生じた後に脱炭酸してアミンを生成し、該アミンと残存イソシアネート基が反応して尿素結合を生じることにより架橋硬化する化合物である。上記湿気硬化型ポリウレタンとしては、好適には数平均分子量で300〜5,000、特に500〜3,000であることが好ましい。さらに、上記湿気硬化型ポリウレタンとしては、1分子中において末端に存在するイソシアネート基の平均含有量が好ましくは0.1質量%〜50質量%、より好ましくは0.5質量%〜30質量%、特に好ましくは1質量%〜10質量%に調整されたポリウレタンオリゴマー、或いはポリウレタンプレポリマーであることが好ましい。なお、湿気硬化型ポリウレタン中のイソシアネート基の含有量は、アミンによる逆滴定により定量することができる。すなわち、湿気硬化型ポリウレタン中のイソシアネート基と既知量のアミンとを反応させたのち、残存したアミン量を酸の滴定で定量し、そこから反応したアミン量を算出することにより定量することができる。
上記湿気硬化型ポリウレタンは、イソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させることで得ることができる。本発明における湿気硬化型ポリウレタンの原料として好適に使用できるイソシアネート化合物を例示すれば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物;
トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物;
イオウ若しくはハロゲン基を1種または2種以上含むポリイソシアネート、及びその変性体等が挙げられる。変性体の例としてはビウレット、イソシアヌレート、アロファネート、カルボジイミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記のイソシアネート化合物の中でも、比較的低温で優れた密着性を発現できる観点から、脂肪族イソシアネート化合物が好適に使用できる。また、硬化速度が速いという観点から、芳香族イソシアネート化合物が好適に使用できる。これらのイソシアネート化合物を用いた場合、水分とイソシアネートとの反応の結果、ウレア結合が生成するが、本発明におけるポリウレタン層にはこのようなウレア結合が含まれていてもよい。
また、本発明における湿気硬化型ポリウレタンの原料として好適に使用できる活性水素を有する化合物としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール;
ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール;
ポリ(ジエチレンアジペート)、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(ヘキサメチレンアジペート)、ポリ(ネオペンチレンアジペート)等のポリ(アルキレンアジペート);ポリ−ε−カプロラクトン、ポリカプロラクトンジオール、ポリカプロラクトントリオール等のポリカプロラクトン;
ポリ(1,4−ブタジエン)グリコール、ポリ(1,2−ブタジエン)グリコール等のポリブタジエングリコール;
ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)等のポリ(アルキレンカーボネート);ポリエステルポリオール;
1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等の3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール;
シリコーンポリオールが挙げられるが、その他の公知の活性水素含有化合物の使用も可能である。これらの中でもポリアルキレングリコール、3個以上のヒドロキシ基を含有するポリオール、ポリアルキレンアジペート、ポリアルキレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリエステルポリオールは、硬化させる際の加熱温度をより低くすることができ、基材の熱変形や変色をより確実に防止することができる点で好適に用いることができる。
なお、上記した活性水素を有する化合物は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。特にトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族イソシアネート化合物を用いる場合には、得られる湿気硬化型ポリウレタンの結晶性が高くなる場合もあり、2種類以上の活性水素を有する化合物を用いることが好ましい。
また、硬化速度が速いという観点から、本発明で使用する湿気硬化型ポリウレタンの分子量は、比較的高いほうが好ましい。分子量を高くする手法としては、前述のイソシアネート化合物と活性水素を有する化合物とをイソシアネート基が残るような仕込み比で種々の方法で結合させる際に、イソシアネート基の残る量を少なくするように調整する方法がある。あるいは、湿気硬化型ポリウレタン中に複数存在するイソシアネート基を鎖延長剤などにより結合する方法もある。ここで、鎖延長剤としては、先述したような活性水素を有する化合物やエチレンジアミン等のジアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、鎖延長反応の制御のし易さという観点から、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールや、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールが好適に用いられる。
このような湿気硬化型ポリウレタンは、工業的に或いは試薬として入手可能であり、具体的には、三井化学株式会社製「タケネートMシリーズ」、株式会社トクヤマ製「TR−SC−P」、竹林化学工業株式会社製「タケシールプライマー」、アルプス化学産業株式会社製「ウレタンプライマー06」等が挙げられる。
本発明において、湿気硬化型ポリウレタンの硬化体は、上記湿気硬化型ポリウレタンとポリロタキサン、溶媒等からなるプライマー組成物を光学基材に塗布し、溶媒を除去した後に硬化させることで形成される。
(B−3)ラジカル重合により得られた樹脂及び/又はラジカル重合性モノマー
ラジカル重合により得られる樹脂としては、例えば(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基等を有するラジカル重合性モノマーを重合することによって得られる単独重合ポリマー、及び共重合ポリマーを挙げることが出来る。
かかるポリマーを例示すると、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、オレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリ塩化ビニル、スチレン樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂など)、アクリル樹脂(ポリ(メタ)アクリル酸、ポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合樹脂など)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルブチラール、ポリイソブチレン、ポリテトラヒドロフラン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリジエン(ポリイソプレン、ポリブタジエンなど)が挙げられる。またこれらのポリマーは、適宜ランダム共重合体、或いはブロック共重合体であってもよく、また変性されたものであってもよい。またこれらのポリマーは、重合性及び/または非重合性の置換基を有していてもよい。
これらのポリマーの中でも、密着性向上の観点から、特にポリメチル(メタ)アクリレ−ト、ポリシアノ(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂が好ましい。
ラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合により硬化するモノマーであり、具体的には(メタ)アクリル重合性モノマー、ビニル基を有するビニル重合性モノマー、アリル基を有するアリル重合性モノマー、シルセスキオキサン重合性モノマーに分類される。以下に、その具体例を示す。
(メタ)アクリル重合性モノマー
(メタ)アクリレ−ト重合性モノマーは、ラジカル重合により硬化する。これらの化合物は、レンズ硬度の調整にも用いることができる。その具体例としては、以下のものを例示することができる。
エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)メタン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレ−ト、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレートメチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート、2官能ウレタンアクリレート、2官能ウレタンメタクリレート。
ビニル系重合性モノマー
ビニル基を有するビニル系重合性モノマーとしては、メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、エチルビニルエーテル、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルプロパンジシロキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジビニルスルホキシド、ジビニルペルスルフィド、ジメチルジビニルシラン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、メチルトリビニルシラン、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)、α−メチルスチレンおよびα−メチルスチレンダイマー等を挙げることができる。
アリル重合性モノマー
アリル基を有するアリル重合性モノマーとしては、以下のものを例示することができる。
アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカ−ボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量550)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量350)、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1500)、ポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量450)、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量750)、ブトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量1600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、フェノキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量600)、メタクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量430)、アクリロイルオキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量420)、ビニロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量560)、スチリロキシポリエチレングリコールアリルエーテル(特に平均分子量650)、メトキシポリエチレンチオグリコールアリルチオエーテル(特に平均分子量730)。
尚、アリル重合性モノマーは、連鎖移動剤として作用することで、フォトクロミック組成物のフォトクロミック性(発色濃度、退色速度)を向上させることが可能である。
シルセスキオキサン重合性モノマー
シルセスキオキサン重合性モノマーは、ケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の分子構造を取るものであり、(メタ)アクリル基等のラジカル重合性基を有している。
このようなシルセスキオキサン重合性モノマーの例としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
{式中、nは、重合度を表わし、3〜100の整数であり、複数個あるR1は、互いに同一もしくは異なっていてもよく、ラジカル重合性基、ラジカル重合性基を含む有機基、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、水酸基及び/またはチオール基を含む有機基であり、少なくとも1つのR1は、ラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基である。}
ここで、R1で示されるラジカル重合性基、又はラジカル重合性基を含む有機基としては、例えば(メタ)アクリル基;(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ジメチルシロキシ基等の(メタ)アクリル基を有する有機基;アリル基;アリルプロピル基、アリルプロピルジメチルシロキシ基等のアリル基を有する有機基;ビニル基;ビニルプロピル基、ビニルジメチルシロキシ基等のビニル基を有する有機基等が挙げられる。
このような他のラジカル重合性モノマーとして、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
これらのラジカル重合性モノマーの中でも、密着性及び硬度向上の点から、特に(メタ)アクリレート重合性モノマーが好ましい。
(B−4)エポキシ重合性モノマー
この重合性モノマーは、重合性基として、分子内にエポキシ基を有するものであり開環重合により硬化する。本発明のエポキシ重合性モノマーは、特に硬度向上に効果を示す。このようなエポキシ重合性モノマーは、大きく分けて、脂肪族エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物に分類され、その具体例としては、以下のものを例示することができる。これらの中でも、特に多官能のエポキシ化合物が好ましい。
脂肪族エポキシ化合物;エチレンオキシド、2−エチルオキシラン、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2,2’−メチレンビスオキシラン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル。
脂環族エポキシ化合物;イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル。
芳香族エポキシ化合物;レゾールシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オールトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル。
また、上記以外にも、エポキシ基と共に、分子内に硫黄原子を有するエポキシ化合物も使用することができる。このような含硫黄原子エポキシ化合物は、特に屈折率向上に寄与するものであり、鎖状脂肪族及び環状脂肪族のものがあり、その具体例は、次のとおりである。
鎖状脂肪族系含硫黄原子エポキシ化合物;ビス(2,3−エポキシプロピル)スルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピル)ジスルフィド、ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)エタン、1,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルプロパン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルブタン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルペンタン、1,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3−チアペンタン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)ヘキサン、1,6−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−2−メチルヘキサン、3,8−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−3,6−ジチアオクタン、1,2,3−トリス(2,3−エポキシプロピルチオ)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)−1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)プロパン、2,2−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1−(2,3−エポキシプロピルチオ)ブタン。
環状脂肪族含硫黄原子エポキシ化合物;1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス[<2−(2,3−エポキシプロピルチオ)エチル>チオメチル]−1,4−ジチアン、2,5−ビス(2,3−エポキシプロピルチオメチル)−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン。
本発明における(B)樹脂及び/又はその前駆体としては、光学基材、フォトクロミックコート層との密着性が高く、表面硬度が高いことから、(B−1)ポリウレタン、(B−2)ポリウレタンの前駆体が好ましく、特に(B−2)ポリウレタンの前駆体を含む組成物である湿気硬化型ポリウレタンが好ましい。
<(C)溶媒>
本発明のプライマー組成物において、(C)溶媒は、上記(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体の種類に応じて、これら成分をプライマー組成物に均一に希釈溶解または分散させ、かつ粘度調整を行い均一性の高い塗膜を形成させるために、必要に応じ、添加することが出来る。(以下、この成分を単に「(C)成分」と表示する場合もある。)
用いる溶媒は、(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体の種類や量に応じて調整すればよく、(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体が希釈溶解または分散しやすい溶媒が選択される。
用いる溶媒としては、特に制限はないが、
水;
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール等のアルコール;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;
蟻酸メチル、酢酸エチルエチル、酢酸ブチル等のエステル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール;
トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;
塩化メチレン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;
メチル−t−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;
メチルセルソルブ、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のセルソルブ;
N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等の環状アミド;
ジメチルスルホキシド;
メトキシプロピルアセテート;
プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることが出来る。
溶媒の含有量は、特に制限されるものではない。ただし、プライマー組成物の塗布性を向上するためには、プライマー組成物における固形分濃度が、例えば、0.1〜98質量%の範囲となるように、溶媒量を調製することが好ましい。該固形分とは、上記(A)ポリロタキサン、上記(B)樹脂及び/又はその前駆体、等を含むものである。
特に本発明のプライマー組成物として、(B)樹脂及び/又はその前駆体の水分散液を用いる場合には、水に対する親和性が高い有機溶媒を併用することが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのグリコール;そのエーテル誘導体;N−メチルピロリドン;ジメチルスルホキシド;プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート;及びメトキシプロピルアセテートなどが使用できる。
<(D)重合硬化促進剤>
本発明のプライマー組成物においては、上記(A)ポリロタキサンや(B)樹脂及び/又はその前駆体の種類に応じて、その重合硬化を速やかに促進させるために各種の重合硬化促進剤を使用することができる(以下、この成分を単に「(D)成分」と表示する場合もある。)。
例えば、水酸基、及びチオール基とイソシアネート基、及びイソチオシアネート基との反応に用いる場合には、ウレタン或いはウレア用反応触媒や縮合剤が重合硬化促進剤として使用される。
エピスルフィド化合物、チエタニル化合物、エポキシ化合物が使用された場合は、エポキシ硬化剤やエポキシ基を開環重合させるためのカチオン重合触媒が重合硬化促進剤として使用される。
(メタ)アクリル基、ビニル基を含むラジカル重合性モノマーが含まれている場合は、ラジカル重合開始剤が重合硬化促進剤として使用される。
(ウレタン或いはウレア用反応触媒)
この反応触媒は、ポリイソ(チア)シアネートと、ポリオール又はポリチオールとの反応によるポリ(チオ)ウレタン結合生成において用いられる。これらの重合触媒は3級アミンおよびこれらに対応する無機または有機塩、ホスフィン類、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、ルイス酸、または有機スルホン酸を挙げることが出来る。この具体例としては、以下のものを例示することができる。また、選択する上述の化合物の種類により、触媒活性が高すぎる場合は、3級アミンとルイス酸を混合して用いることにより触媒活性を抑えることが可能である。
3級アミン;トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−7−ウンデセン。
ホスフィン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリベンジルホスフィン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2−ビス(ジメチルホスフィノ)エタン。
4級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド。
4級ホスホニウム塩;テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムブロマイド。
ルイス酸;トリフェニルアルミ、ジメチルスズジクロライド、ジメチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジブチルスズジクロライド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルスズマレエ−ト、ジブチルスズマレエートポリマー、ジブチルスズジリシノレート、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(イソオクチルチオグリコレート)、ジオクチルスズジクロライド、ジオクチルスズマレエート、ジオクチルスズマレエートポリマー、ジオクチルスズビス(ブチルマレエート)。
各種金属;オレイン酸銅、アセチルアセトン酸銅、アセチルアセトン酸鉄、ナフテン酸鉄、乳酸鉄、クエン酸鉄、グルコン酸鉄、オクタン酸カリウム、チタン酸2−エチルヘキシル。
有機スルホン酸;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸。
(縮合剤)
縮合剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
無機酸;塩化水素、臭化水素、硫酸やリン酸等。
有機酸;p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等。
酸性イオン交換樹脂;アンバーライト、アンバーリスト等。
カルボジイミド;ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノピロリル)−カルボジイミド。
(エポキシ硬化剤)
エポキシ硬化剤としての具体例は、以下のものを例示することができる。
アミン化合物及びその塩;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7−トリメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール。
4級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド。
有機ホスフィン化合物;テトラ−n−ブチルホスホニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート。
金属カルボン酸塩;クロム(III)トリカルボキシレート、オクチル酸スズ
アセチルアセトンキレート化合物;クロムアセチルアセトナート。
(カチオン重合触媒)
カチオン重合触媒としての具体例は、以下のものを例示することができる。
ルイス酸系触媒;BF3・アミン錯体、PF5、BF3、AsF5、SbF5等。
熱硬化性カチオン重合触媒;ホスホニウム塩や4級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルスルホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド。
紫外硬化性カチオン重合触媒;ジアリールヨードニウムヘキサフロオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモン酸ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム。
(ラジカル重合開始剤)
ラジカル重合開始剤には、光重合開始剤及び熱重合開始剤があり、用いる(B)樹脂及び/又は樹脂の前駆体の種類に応じて適宜選択すればよい。
光重合開始剤の具体例は以下のとおりである。
アセトフェノン化合物;1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン。
α−ジカルボニル化合物;1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリコキシレート。
アシルフォスフィンオキシド化合物;2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2,6−ジクロルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド。
光重合開始剤を用いる場合には、3級アミン等の公知の重合硬化促進助剤を併用することもできる。
熱重合開始剤の具体例は以下のとおりである。
ジアシルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド。
アセチルパーオキサイドパーオキシエステル;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート。
パーカーボネート;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート。
アゾ化合物;アゾビスイソブチロニトリル。
(D)重合硬化促進剤の添加量としては、重合性基を有する成分の重量を基準として0.1〜5重量%であるのが好適である。
<(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物>
本発明の光学物品用プライマー組成物には、(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物を含むこともできる。(以下、この成分を単に「(E)成分」と表示する場合もある。)。この(E)成分を配合することにより、得られるプライマーコート層と光学基材(プラスチックレンズ)との、プライマーコート層とハードコート層との、更にはプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性をより向上させることができる。
好適な(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物を例示すれば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、1,6−ビストリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(ジエトキシメチルシリル)プロピル]カーボネート、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等及びこれらの化合物の加水分解性基の一部或いは全部が加水分解したもの又はこれらの化合物が一部縮合したもの等が挙げられる。これらの中でも、光学基材との密着性、更には、プライマーコート層上に積層される無機酸化物微粒子及び加水分解性基含有有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物を硬化させて得られるハードコート層やフォトクロミックコート層との密着性をより向上させるためには、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの化合物の加水分解性基の一部或いは全部加水分解したもの又はこれらの化合物の一部縮合したものを使用するのが好適である。なお、上記加水分解性基含有有機ケイ素化合物は、1種類のみを使用しても、2種類以上を併用してもよい。
(E)加水分解性基含有有機ケイ素化合物の量は、(A)成分と(B)成分との合計質量を基準として、50質量%以下であることが好適である。なお、前記(E)成分の配合量は、加水分解していない加水分解性基含有有機ケイ素化合物を基準とした量である。
<(F)無機酸化物微粒子>
本発明の光学物品用プライマー組成物には、(F)無機酸化物微粒子を配合することができる(以下、この成分を単に「(F)成分」と表示する場合もある。)。(F)無機酸化物微粒子を配合することにより、得られるプライマーコート層の屈折率を向上させ、ハードコート層の耐擦傷性を、より向上させることができる。(F)無機酸化物微粒子は、前記(E)有機ケイ素化合物と併用され、又は(E)有機ケイ素化合物を配合することなく単独で使用される。また、光学物品用プライマー組成物がフォトクロミックコート層用のプライマーコート層を形成するために使用されるものである場合においても、(F)無機酸化物微粒子を配合することにより、得られるプライマーコート層の屈折率の向上、フォトクロミック層の耐擦傷性の向上が期待される。
(F)無機酸化物微粒子として、具体的には、シリカが使用される。また、屈折率を高めるために配合する場合には、Si、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb、W及びCeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物又は複合無機酸化物からなる微粒子、特にSi、Al、Ti、Fe、In、Zr、Au、Sn、Sb及びWからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む無機酸化物微粒子又は複合無機酸化物微粒子を使用するのが好適である。
(F)無機酸化物微粒子の粒子径は、電子顕微鏡(TEM)により観察される1次粒子径が1〜300nm程度のものが好適に使用できる。このような粒子径の微粒子は、通常、分散媒として水又は後述する有機溶媒の一部、特にアルコール溶媒に分散させた形で使用に供される。一般には、コロイド分散させることにより、粒子が凝集するのを防止している。例えば、本発明においては、無機酸化物微粒子は、プライマー組成物中に均一に分散されるという観点から、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの水溶性の有機溶媒又は水に分散させたゾルの形態で、プライマー組成物中に配合されることが好ましい。
上述のように、(F)無機酸化物微粒子の分散媒として使用される水溶性有機溶媒としては、例えばイソプロパノール、エタノール、メタノール、エチレングリコール等のアルコール溶媒が好適であるが、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド等を使用することもできる。
つまり、本発明においては、(F)無機酸化物微粒子は、水又は上記水溶性有機溶媒に分散されたゾルの状態、具体的には、シリカゾル、無機酸化物微粒子ゾル又は複合無機酸化物微粒子ゾルの状態で、他の各成分と混合されることが好ましい。各成分と混合される順序等は、特に制限されるものではない。
シリカゾルは工業的に入手でき、例えば、水を分散媒とするゾルは、日産化学工業(株)より、スノーテックスOXS、スノーテックスOS、スノーテックスO、スノーテックスO−40等の商品名で市販されている。水溶性有機溶媒を分散媒とするゾルは、日産化学工業(株)より、メタノールシリカゾル、MA−ST−MS(分散媒;メタノール)、IPA−ST(分散媒;イソプロパノール)等として市販されている。
複合無機酸化物微粒子のゾルも、市販のものを使用することができ、例えば、日産化学工業(株)製HXシリーズ、HITシリーズ、HTシリーズ、及び日揮触媒化成(株)製オプトレイクシリーズなどが挙げられる。
本発明において、(F)無機酸化物微粒子の配合量は、最終的に得られるプライマーコート層に求められる物性に応じて適宜決定すればよいが、(A)ポリロタキサン、及び(B)樹脂及び又はその前駆体の合計量を100質量部とした時に、無機酸化物微粒子の固形分が5質量部以上150質量部以下、さらに10質量部以上130質量部以下であることが好ましい。(F)無機酸化物微粒子が、無機酸化物微粒子換算で上記配合量を満足することにより、ハードコート層又はフォトクロミックコート層が形成された光学物品において、耐衝撃性、密着性の低下を抑制することができる。
<(G)その他成分>
本発明におけるプライマー組成物には、前述の成分以外にも、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤を必要に応じて混合することができる。
また、本発明で使用するプライマー組成物には、得られるプライマーコート層の平滑性を向上させるという目的から、界面活性剤をレベリング剤として添加することができる。界面活性剤としては、公知のものが何ら制限なく使用できるが、好適なものを例示すれば、シリコン系、フッ素系、アクリル系、ビニル系等を挙げることができる。該レベリング剤の使用量は、本発明の光学物品用プライマー組成物中に、10〜10,000ppm添加するのが好適である。
なお、本発明のプライマー組成物は、フォトクロミック化合物を実質的に含有しない。実質的に含有しないとは、含有していないかあるいは含有していてもその含有量では、光学基材に塗布性十分なフォトクロミック性を発現できない量を意味する。具体的には、該プライマー組成物におけるフォトクロミック化合物の含有量は、0.01質量%以下であることが好ましく、0.005質量%以下であることがより好ましく、0.001質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%(全く含まれない)であることが最も好ましい。ただし、本発明のフォトクロミック積層体を製造するに際し、形成されたプライマーコート層に、フォトクロミック化合物が不可避的に混入される場合がある。本発明においては、該プライマーコート層を有するフォトクロミック積層体を除外するものではない。
<プライマー組成物の製造方法>
本発明のプライマー組成物は、前記(A)成分、(B)成分、必要に応じて(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、及び(G)成分を加えて混合することにより製造することができる。ただし、(E)成分は、前記の通り、加水分解させたものを混合することが好ましい。これら各成分を混合する順序は特に制限されるものではなく、公知の方法により混合してやればよい。
(E)成分は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分と直接混合することもできるが、完全に加水分解を行なってから各成分と混合することが好ましい。(A)成分に水が含まれる場合には、そのまま(E)成分と他の成分を混合することにより、(E)成分を加水分解することもできるが、上記の通り、(E)成分は加水分解させたものを配合することが好ましい。そのため、別途、酸水溶液で(E)成分を完全に加水分解させたものを各成分と混合することが好ましい。この場合、酸水溶液は、(E)成分が完全に加水分解する量を使用することが好ましく、特に好ましくは0.001〜1N塩酸水溶液を、(E)成分に含まれる加水分解性基(アルコキシシリル基)に対して、等モル〜5倍モル使用することが好ましい。なお、前記モル数は、水のモル数である。
このように加水分解した(E)成分は、酸水溶液を含んだまま、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分と混合することができる。
上記の通り、酸水溶液を使用した場合、本発明のプライマー組成物において、上記好ましい水の配合量は、この酸水溶液の配合量を含むものとする。ただし、(E)成分が加水分解した際に生じる低級アルコールは、上記好ましい(C)成分の配合量には含まれないものとする。
(F)無機酸化物微粒子の量は、(A)成分と(B)成分との合計質量を基準として、150質量%以下であることが好適である。
本発明において、(F)成分を、水に分散させたゾル又は有機溶媒に分散させたゾルの状態で使用した場合、上記の(C)成分の配合量は、これらゾルに含まれる水及び有機溶媒の量を含むものとする。
(G)その他成分である乳化剤の添加量としては、必要に応じて任意の量を使用することができるが、前記水分散ポリウレタンに対して、0.01〜10質量%添加することが好ましい。
上述のようにして製造される本発明のプライマー組成物は、得られるプライマーコート層の外観向上の観点、また光学基材とプライマーコート層間、プライマーコート層とフォトクロミックコート層間の密着性の観点から、光学基材に塗布する前に異物を除去する目的でろ過してから使用することが好ましい。
<プライマーコート層の製造方法>
本発明のプライマー組成物を光学基材上に塗布し、該プライマー組成物を硬化(乾燥)させることによって、プライマーコート層を形成することができる。硬化方法は、熱硬化、光硬化など成分(A)及び成分(B)の有する官能基の種類によって適宜採用される。
プライマー組成物から形成されたプライマーコート層は、光学基材、特にプラスチックレンズの光学特性を低下させることがない。そのため、プライマーコート層が積層されたプラスチックレンズは、そのままで光学物品として使用することができる。さらに、プライマーコート層上に、無機酸化物微粒子及び有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物を塗布し、硬化させてハードコート層を積層することにより、優れた耐衝撃性と耐擦傷性を有する光学物品(積層体)とすることもできる。
本発明において、プライマー組成物を光学基材上に塗布する場合、光学基材について、密着性を向上させる目的で前処理を行なうことが好ましい。前処理としては、有機溶剤による脱脂処理、塩基性水溶液又は酸性水溶液による化学的処理、研磨剤を用いた研磨処理、大気圧プラズマ及び低圧プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、火炎処理又はUVオゾン処理等を挙げることができる。中でも、光学基材とプライマーコート層との密着性を向上させる観点から、有機溶剤による脱脂処理、アルカリ処理、研磨処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、又はUVオゾン処理、或いはこれらを組み合わせた処理を行なうのが好適である。
プライマー組成物を光学基材(プラスチックレンズ)に塗布する方法は、特に制限されるものではなく、ディップコーティング、スピンコーティング、ディップスピンコーティングなどの方法が挙げられる。中でも、外観の良好な塗膜が得られやすいことからスピンコーティングを採用することが好ましい。
本発明において、プライマー組成物中に溶媒が含まれる場合、あるいは熱硬化性のプライマー組成物である場合には、溶媒を除去するため、上記方法により光学基材上及び/またはフォトクロミックコート層上に塗布されたプライマー組成物を乾燥する。本発明においては、上記方法により塗布されたプライマー組成物からなるプライマーコート層を、塗布終了後、加熱して溶媒を除去し、プライマーコート層を形成させることが好ましい。このときの加熱温度は特に限定されないが、加熱による光学基材の変形や変色を防止するという観点から、室温〜200℃の範囲であるのが好適である。加熱時間は、特に限定されないが、通常1分〜1時間の範囲である。
光硬化性のプライマー組成物である場合には、スピンコーティング法等によりプライマー組成物を塗布した後、窒素などの不活性ガス中に設置した後に、UV照射を行うことでプライマーコート層を得ることができるし、さらに後述するフォトクロミックコート層を塗布した後に、プライマーコート層とフォトクロミックコート層を同時に光硬化してもよい。
スピンコーティング法により、プライマー組成物を塗布する際には、均一な厚さのプライマーコート層を得易いという理由から、プライマー組成物の25℃における粘度は、5〜200cP、特に10〜100cPの範囲に調整することが好ましい。粘度の調整は、分散媒の種類や量を変えることにより行うことができる。
上記プライマーコート層の厚さは、良好な光学特性、及び光学基材とプライマーコート層間、プライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、乾燥後に形成されるプライマーコート層の厚さが0.1〜20μm、特に1〜10μm、更に好ましくは、1〜7μmとなるような厚さとするのが好適である。
本発明のプライマー組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック積層体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や、重合性モノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、一般的に365nmの波長で、50〜500mW/cm2のUV光を、0.5〜5分の時間で光照射するように条件を選ぶのが好ましい。
<本発明のプライマー組成物を用いた積層体>
上記本発明のプライマー組成物は、光学基材上にフォトクロミックコート層が積層されたフォトクロミック積層体におけるプライマーコート層に用いることができる。特に光学基材上にフォトクロミックコート層及びハードコート層がこの順に積層されたフォトクロミック積層体における、光学基材とフォトクロミックコート層及び/またはフォトクロミックコート層とハードコート層との間に、本発明のプライマー組成物の硬化体であるプライマーコート層を形成させることで、高いフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミックコート層にクラックなどの外観不良が発生しにくく、更にキズつきにくい表面硬度を有するフォトクロミック積層体を得ることが出来るため好ましい。本発明の光学物品用プライマー組成物から形成されるプライマーコート層は、光学基材とフォトクロミックコート層の間に用いることで、フォトクロミックコート層の硬化時の収縮に起因するクラックの発生を効果的に抑制することができる。さらに、該プライマーコート層をフォトクロミック層とハードコート層の間に形成することで、ハードコート層の硬化時の収縮に起因するクラックの発生も効果的に抑制することができる。
以下、本発明のフォトクロミック積層体を構成する光学基材、フォトクロミックコート層、及びハードコート層について説明する。
<光学基材>
本発明で使用する光学基材としては、光透過性を有する基材であれば特に限定されず、ガラス及びプラスチックレンズ、家屋や自動車の窓ガラス等公知のレンズ基材が挙げられるが、プラスチックレンズを用いるのが特に好適である。
上記プラスチックレンズとしては、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂レンズ;多官能(メタ)アクリル樹脂、アリル樹脂、チオウレタン樹脂、ウレタン樹脂およびチオエポキシ樹脂等の架橋性樹脂レンズ等、現在プラスチックレンズとして使用されている公知のものが使用できる。
<フォトクロミックコート層>
本発明のフォトクロミック積層体におけるフォトクロミックコート層は、フォトクロミック硬化性組成物からなるコーティング剤を塗布した後に、これを硬化させることで光学基材上に積層させることができる。
上記フォトクロミック硬化性組成物は、フォトクロミック化合物、(メタ)アクリルモノマー及び重合開始剤を含むことができる。このようなフォトクロミック硬化性組成物としては、従来のコーティング法で使用可能なフォトクロミック硬化性組成物が特に限定なく使用できる。しかしながら、フォトクロミック特性、光学特性及びフォトクロミック層の耐溶剤性、表面硬度、及び密着性の観点から、国際公開第03/011967号パンフレット、国際公開第04/050775号パンフレット、国際公開第05/014717号パンフレット、国際公開2011/125956号パンフレット、国際公開2013/008825号パンフレット、特開2013−072000号公報、特願2013−155220号公報、国際公開第2014/136804号パンフレットに記載されているフォトクロミック硬化性組成物を使用するのが好適である。
本発明におけるフォトクロミック硬化性組成物で使用される成分としては、公知の(メタ)アクリルモノマーを特に制限なく使用することが出来る。具体的には、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリメタクリレート、トリメチロールプロパントリエチレングリコールトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、平均分子量628のビス(4−メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量804の2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量776の2,2−ビス(4−アクリロイルオキシポリエチレングリコールフェニル)プロパン、平均分子量468のメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエチレングリコールジメタクリレート、ペンタプロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ペンタプロピレングリコールジアクリレート、平均分子量330のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリエチレングリコールジメタクリレート、平均分子量736のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、テトラプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量536のポリプロピレングリコールジメタクリレート、平均分子量258のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量308のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量508のポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量708のポリエチレングリコールジアクリレート、ポリカーボネートジオールと(メタ)アクリル酸との反応生成物であるポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、ウレタンオリゴマーテトラアクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサメタクリレート、ウレタンオリゴマーヘキサアクリレート等の多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステルオリゴマーヘキサアクリレート等の多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル基を有し、かつケージ状、ハシゴ状、ランダムといった種々の構造を有するシルセスキオキサンモノマー、2−イソシアナトエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
これらの中でも、クラック等の外観不良を生じにくく、高い表面硬度を有するフォトクロミックコート層を得るためには、国際公開第2014/136804号パンフレット、及び特開2015−025063号公報等に記載されているフォトクロミック硬化性組成物を採用することが好適である。
すなわち、
1)ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、及び
2)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、及び
3)2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)等のビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート、を含んでなるフォトクロミック硬化性組成物、もしくは、
4)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、
5)2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)等のビスフェノールA骨格を有するジ(メタ)アクリレート、及び
6)分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマーを含んでなるフォトクロミック硬化性組成物であることが好適である。
さらには、1)〜3)の(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、1)が10〜30質量%、2)が35〜55質量%、3)が15〜55質量%であるフォトクロミック硬化性組成物、もしくは、
4)〜6)の(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、4)が35〜70質量%、5)が10〜40質量%、6)が10〜40質量%であるフォトクロミック硬化性組成物であることがより好適である。
また、以下の配合割合のフォトクロミック硬化性組成物とすることにより、本発明のプライマー組成物からなるプライマーコート層との密着性をより向上できる。さらには、得られるフォトクロミック積層体のフォトクロミック特性も向上できる。具体的には、
7)トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、
8)分子量600〜2000のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び分子量600〜2000のウレタンジ(メタ)アクリートからなる群より選ばれる少なくとも1種の長鎖(メタ)アクリルモノマー
9)(メタ)アクリレート基を有するポリロタキサンモノマーを含んでなるフォトクロミック硬化性組成物であることが好適である。さらに、(メタ)アクリレートモノマーの合計を100質量%とした場合には、7)が30〜50質量%、8)が30〜60質量%、9)が1〜10質量%、7)、8)、および9)以外の(メタ)アクリレートモノマーが0〜20質量%であるフォトクロミック硬化性組成物であることがより好適である。
該フォトクロミック硬化性組成物は、ポリロタキサンを含有することが出来る。ポリロタキサンを含有することにより、フォトクロミック化合物分子の可逆反応を許容し得る間隙を確実に確保することができ、優れたフォトクロミック性を発現させることができる。
また、該フォトクロミック硬化性組成物には、フォトクロミック化合物として、フォトクロミック作用を示す化合物を採用することができる。例えば、フルギド化合物、クロメン化合物及びスピロオキサジン化合物等のフォトクロミック化合物がよく知られており、本発明においては、これらのフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することができる。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても構わない。前記のフルギド化合物、クロメン化合物、及びスピロオキサジン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレット等に記載されている化合物が挙げられる。
フォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ〔2,1−f〕ナフト〔1,2−b〕ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。
本発明におけるフォトクロミック硬化性組成物には、前述の成分以外にも、例えば、界面活性剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料等の各種安定剤、添加剤を必要に応じて混合することができる。
界面活性剤としては、シリコーン鎖(ポリアルキルシロキサンユニット)を疎水基とするシリコーン界面活性剤、またフッ化炭素鎖を有するフッ素含有界面活性剤などの、公知の界面活性剤が何ら制限なく使用できる。界面活性剤を添加することにより、本発明のフォトクロミック硬化性組成物を用いた時のフォトクロミックコート層のフォトクロミック特性や密着性に悪影響を与えることなくプライマーあるいは光学基材に対する濡れ性を向上させると共に外観不良発生を防止しやすくなる。
本発明で好適に使用できるシリコーン界面活性剤及びフッ素含有界面活性剤を具体的に例示すると、東レ・ダウコーニング株式会社製『L−7001』、『L−7002』、『L−7604』、『FZ−2123』、大日本インキ化学工業株式会社製『メガファックF−470』、『メガファックF−1405』、『メガファックF−479』、住友スリーエム社製『フローラッドFC−430』等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。
特に、フォトクロミック硬化性組成物に紫外線安定剤を混合して使用すると、フォトクロミック化合物の耐久性をさらに向上させることができるために好適である。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤を好適に使用することができる。好適な例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、旭電化工業(株)製アデカスタブLA−52、LA−57、LA−62、LA−63、LA−67、LA−77、LA−82、LA−87、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチル−フェノール、2,6−エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製のIRGANOX 1010、1035、1075、1098、1135、1141、1222、1330、1425、1520、259、3114、3790、5057、565等を挙げることができる。
<ハードコート層>
本発明のフォトクロミック積層体においては、フォトクロミックコート層に、さらに、無機酸化物微粒子及び加水分解性基含有有機ケイ素化合物を含むコーティング組成物(以下、「ハードコート組成物」とも言う。)を硬化させて得られるハードコート層を積層させることができる。ハードコート層に使用される無機酸化物微粒子としては、前述のシリカゾル、無機酸化物又は複合無機酸化物微粒子を何ら制限なく使用できる。無機酸化物微粒子の配合量は、無機酸化物の種類、最終的に得られるハードコート層に望まれる物性、目的に応じて適宜決定すればよい。一般的には、最終的に形成されるハードコート層に占める無機酸化物微粒子の割合が20〜80質量%、特に40〜60質量%となるような量に、他の成分の使用量に合わせて設定するのがよい。
加水分解性基含有有機ケイ素化合物は、無機酸化物微粒子のバインダーとしての機能を有し、ハードコート層中でマトリックスとなる透明な硬化体を形成するものであり、重合可能な有機ケイ素化合物が使用される。当該有機ケイ素化合物は、官能基であるアルコキシル基を有するものであり、前述の公知の加水分解性基含有有機ケイ素化合物を何ら制限無く使用できる。当該有機ケイ素化合物は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用することもできる。当該有機ケイ素化合物は、その少なくとも一部が加水分解した形で、或いはその部分加水分解物が縮合した部分縮合物の形で使用に供することもできる。本発明においては、特にプラスチックレンズとの密着性、架橋性の観点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、テトラエトキシラン、及びこれらの部分加水分解物又は部分縮合物等が好適に使用される。
このハードコート組成物では、加水分解性基含有有機ケイ素化合物が加水分解し、この加水分解物が無機酸化物微粒子を取り込んだ形で重合硬化(重縮合)してマトリックスとなる硬化体を形成し、無機酸化物微粒子が緻密にマトリックス中に分散したハードコート層を形成するものと考えられる。そのため、この硬化体を形成するために、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の加水分解を促進させるための水が必要となる。
この目的で使用される水は、酸水溶液の形で添加されても構わず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸を水溶液の形で添加することができる。
ハードコート組成物には、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の加水分解物の硬化を促進させるための硬化触媒を配合することもできる。この硬化触媒は、それ自体公知のもの、例えば、アセチルアセトナート錯体、過塩素酸塩、有機金属塩、各種ルイス酸が使用され、これらは1種単独で使用することもできるし、2種以上を併用することもできる。
アセチルアセトナート錯体を、具体的に例示すれば、アルミニウムアセチルアセトナート、が好適である。
過塩素酸塩としては、過塩素酸マグネシウム、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸亜鉛、過塩素酸アンモニウム等を例示することができる。
また、該ハードコート組成物には、有機溶媒を配合することもできる。この有機溶媒は、加水分解性基含有有機ケイ素化合物の溶剤となり、且つ無機酸化物微粒子の分散媒となるものであるが、このような機能を有していると同時に、揮発性を有するものであれば、公知の有機溶媒が使用できる。このような有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等の低級カルボン酸の低級アルコールエステル;セロソルブ、ジオキサン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンなどのケトン;メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。これら有機溶媒は単独又は2種以上混合して使用される。
ハードコート層を形成するためのハードコート組成物は、上記成分を公知の方法により混合することで製造できる。中でも、加水分解性基含有有機ケイ素化合物は、完全に加水分解させた後に、他の成分と混合することが好ましい。
<フォトクロミック積層体の構成>
本発明においては、プライマーコート層を光学基材の上部に有するが、ハードコート層を有するフォトクロミック積層体としては、図2〜図4に示すいずれの積層形態も好適に構成することができる。
すなわち光学基材にプライマーコート層2を形成したすぐ上に、フォトクロミックコート層4、続いてハードコート層3を形成した場合の積層体(図2)、フォトクロミックコート層4のすぐ上に、プライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成した場合の積層体(図3)、さらにはプライマーコート層2、続いてフォトクロミックコート層4のすぐ上に、さらにプライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成した場合の積層体(図4)である。
光学基材のすぐ上にプライマーコート層を形成させることにより、フォトクロミックコート層形成時に光重合工程で生じる重合収縮応力を緩和し、また光重合後の熱処理工程における熱膨張による応力を緩和しやすく、クラックを防止しやすくなる。さらには、ハードコート処理後のキズ付きを防止する効果も期待できる。
また、フォトクロミックコート層のすぐ上にプライマーコート層を形成させることにより、ハードコート処理時の熱膨張による応力を緩和しやすく、クラックを防止しやすくなり、ハードコート処理後のキズ付きを防止する効果も期待できる。さらにはプライマーコート層に酸素透過性の低い層を用いることでフォトクロミックコート層中に含まれるフォトクロミック化合物の劣化を抑える効果も期待出来る。
これらの積層体の中で、特にフォトクロミックコート層形成時にクラックを防止することが出来、フォトクロミック積層体の歩留まりを向上させる効果が高いことから、光学基材にプライマーコート層2を形成したすぐ上に、フォトクロミックコート層を形成させることが好ましく、さらには、フォトクロミックコート層のすぐ上に、プライマーコート層を併せて設けることが特に好ましい。
光学基材上に形成されるプライマーコート層の厚さは、良好な光学特性、光学基材とプライマーコート層間との密着性、及びプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、乾燥後に形成されるプライマーコート層の厚さが好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μm、特に好ましくは、1〜8μmとなるような厚さとするのが好適である。
プライマーコート層上に形成されるフォトクロミックコート層の厚さは、良好な光学特性、フォトクロミック特性、及びプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmとなるような厚さとするのが好適である。
<フォトクロミック積層体の製造方法>
(フォトクロミックコート層の製造方法)
本発明のフォトクロミック積層体は、光学基材上に直接あるいはプライマーコート層を積層後、更にフォトクロミック硬化性組成物を積層することにより得られる。
本発明のフォトクロミック硬化性組成物の塗布方法は、特に限定されず公知のコーティング法がなんら制限なく適用できる。具体的には、該組成物をスピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ディップ−スピンコーティング等の方法で塗布する方法が例示される。これら塗布方法の中でも膜厚の制御が容易で、外観の良好な塗膜が得られるという理由から、スピンコーティングを採用するのが好ましい。
コーティング法によりフォトクロミック硬化性組成物を塗布する場合には、光学基材上に、スピンコーティング法などによりプライマーコート層を積層し、窒素などの不活性ガス中に設置した後に、UV照射を行うことで、コーティング法によるプライマーコート層を得ることができるし、さらに後述するフォトクロミックコート層を塗布した後に、プライマーコート層とフォトクロミックコート層を同時に光硬化してもよい。その中でも、プライマーコート層とフォトクロミックコート層の密着性の観点から、プライマー組成物を光学基材上に塗布後、乾燥させた後に、得られたプライマーコート層上にフォトクロミック硬化性組成物を塗布し、窒素などの不活性ガス中に設置し、UV照射により、プライマーコート層とフォトクロミックコート層を、同時に光硬化を行う方法が好適である。
プライマーコート層上に形成されるフォトクロミックコート層の厚さは、良好な光学特性、フォトクロミック特性、及びプライマーコート層とフォトクロミックコート層との密着性の観点から、好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは20〜50μmとなるような厚さとするのが好適である。
該フォトクロミック硬化性組成物を光重合させる際には、重合条件のうち、特にUV強度は得られるフォトクロミック積層体の性状に影響を与える。この照度条件は、光重合開始剤の種類と量や、(メタ)アクリルモノマーの種類によって影響を受けるので一概に限定はできないが、例えば365nmの波長で、50〜500mW/cm2のUV光を、0.5〜5分の時間で光照射するような条件を選ぶのが好ましい。
本発明のフォトクロミック積層体においては、フォトクロミックコート層をUV硬化により積層した後、光学基材とフォトクロミックコート層間、あるいはプライマーコート層とフォトクロミックコート層間との密着性を高めるため、60〜120℃の温度範囲で0.5〜6時間程度加熱処理することが好ましい。こうすることにより、密着性が良好なフォトクロミック積層体を得ることができる。
<ハードコート層の形成方法>
本発明におけるハードコート層は、フォトクロミックコート層あるいはプライマーコート層が形成された光学物品上にハードコート組成物を塗布し、乾燥・硬化させることによって、形成することができる。ハードコート層を設けることにより、優れた耐擦傷性を有する製品を製造することができる。
ハードコート組成物をフォトクロミックコート層あるいはプライマーコート層上に塗布する方法は、特に制限されるものではなく、ディップコーティング、スピンコーティング、ディップスピンコーティングなどの方法が挙げられる。中でも、生産性、塗膜の均一性の観点から、ディップコーティングを採用することが好ましい。
本発明において、最終的に、ハードコート組成物中に含まれる溶剤を除去する必要があるため、上記方法によりプライマーコート層上に塗布されたハードコート組成物を乾燥する。本発明においては、ハードコート組成物の塗膜を加熱して溶剤を除去することによってハードコート層を形成させることが好ましい。このときの加熱温度は特に限定されないが、密着性、耐擦傷性及び加熱によるプラスチックレンズの変形や変色を防止するという観点から、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは90〜110℃の範囲であるのが好適である。加熱時間は、特に限定されないが、通常1時間〜5時間の範囲であり、生産性の観点から1時間〜3時間であることが特に好適である。
このようにして形成されたハードコート層3の膜厚は、1.0μm以上4.0μm以下であることが好ましい。ハードコート層の膜厚が上記範囲を満足することにより、耐衝撃性及び耐擦傷性に優れる積層体が得られる。
本発明のプライマー組成物は、耐衝撃性の改良効果が高いため、高硬度ハードコート層が形成される積層体に好適に適用できる。
<その他の層>
また、さらに必要に応じてハードコート層上に、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物から成る薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工及び2次処理を施すことも勿論可能である。
次に、実施例及び比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
(プライマー組成物)
(A)ポリロタキサン;
RX−1:側鎖にヒドロキシル基を有する側鎖の分子量が平均で約600、重量平均分子量が700,000のポリロタキサン。
RX−2:側鎖にヒドロキシル基を有する側鎖の分子量が平均で約500、重量平均分子量が400,000のポリロタキサン。
RX−3:側鎖にヒドロキシル基を有する側鎖の分子量が平均で約500、重量平均分子量が180,000のポリロタキサン。
なお、本発明において、ポリロタキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC測定)により、以下の条件で測定した。GPCの測定は、装置として液体クロマトグラフ装置(日本ウォーターズ社製)を用いた。カラムは、昭和電工株式会社製Shodex GPC KF−805(排除限界分子量:2,000,000)を使用した。また、展開液としてジメチルホルムアミド(DMF)を用い、流速1ml/min、温度40℃の条件にて測定した。標準試料にポリスチレンを用い、比較換算により重量平均分子量を求めた。なお、検出器には示差屈折率計を用いた。
<RX−1の調製方法>
(1−1)PEG−COOHの調製;
軸分子形成用のポリマーとして、分子量3.5万の直鎖状ポリエチレングリコール(PEG)を用意した。
PEG 10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)100mgおよび臭化ナトリウム 1gを水100mLに溶解させた。この溶液に、市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mLを添加し、室温で10分間撹拌した。その後、エタノ−ルを最大5mLまでの範囲で添加して反応を終了させた。そして、50mLの塩化メチレンを用いた抽出を行った後、塩化メチレンを留去し、250mLのエタノ−ルに溶解させてから、−4℃の温度で12時間かけて再沈させ、PEG−COOHを回収し、乾燥した。
(1−2)ポリロタキサンの調製;
上記で調製されたPEG−COOH 3gおよびα−シクロデキストリン(α−CD)12gを、それぞれ、70℃の温水50mLに溶解させ、得られた各溶液を混合し、よく振り混ぜた。次いで、この混合溶液を、4℃の温度で12時間再沈させ、析出した包接錯体を凍結乾燥して回収した。その後、室温でジメチルホルムアミド(DMF)50mLに、アダマンタンアミン0.13gを溶解した後、上記の包接錯体を添加して速やかによく振り混ぜた。続いてBOP試薬(ベンゾトリアゾール1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェ−ト)0.38gをDMFに溶解した溶液をさらに添加して、よく振り混ぜた。さらにジイソプロピルエチルアミン0.14mLをDMFに溶解させた溶液を添加してよく振り混ぜてスラリ−状の試薬を得た。上記で得られたスラリ−状の試薬を4℃で12時間静置した。その後、DMF/メタノ−ル混合溶媒(体積比1/1)50mLを添加、混合、遠心分離を行なって上澄みを捨てた。さらに、上記DMF/メタノ−ル混合溶液による洗浄を行った後、メタノ−ルを用いて洗浄、遠心分離を行い、沈殿物を得た。得られた沈殿物を真空乾燥で乾燥させた後、50mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、得られた透明な溶液を700mLの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥させた。さらにDMSOに溶解、水中で析出、回収、乾燥を行い、精製ポリロタキサンを得た。このときのα−CDの包接量は0.25である。
ここで、包接量は、DMSO−d6にポリロタキサンを溶解し、1H−NMR測定装置(日本電子製JNM−LA500)により測定し、以下の方法により算出した。
ここで、X,Y及びX/(Y−X)は、以下の意味を示す。
X:4〜6ppmのシクロデキストリンの水酸基由来プロトンの積分値
Y:3〜4ppmのシクロデキストリン及びPEGのメチレン鎖由来プロトンの積分値
X/(Y−X):PEGに対するシクロデキストリンのプロトン比
先ず、理論的に最大包接量1の時のX/(Y−X)を予め算出し、この値と実際の化合物の分析値から算出されたX/(Y−X)を比較することにより包接量を算出した。
(1−3)ポリロタキサンへの側鎖の導入;
上記で精製されたポリロタキサン500mgを1mol/LのNaOH水溶液50mLに溶解し、プロピレンオキシド3.83g(66mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で12時間撹拌した。次いで、1mol/LのHCl水溶液を用い、上記のポリロタキサン溶液を、pHが7〜8となるように中和し、透析チュ−ブにて透析した後、凍結乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得た。
ヒドロキシプロピル基による環状分子のOH基への修飾度は0.5であった。得られたヒドロキシプロピル化ポリロタキサン5gを、ε−カプロラクトン30gに80℃で溶解させた混合液を調製した。この混合液を、乾燥窒素をブロ−させながら110℃で1時間攪拌した後、2−エチルヘキサン酸錫(II)の50質量%キシレン溶液0.16gを加え、130℃で6時間攪拌した。その後、キシレンを添加し、不揮発濃度が約35質量%の側鎖を導入したポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンキシレン溶液を得た。
上記で調製されたポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンキシレン溶液をヘキサン中に滴下し、回収し、乾燥することにより、重合性の官能基としてOH基を有する側鎖修飾ポリロタキサンRX−1を得た。得られたポリロタキサンRX−1は、1H−NMRおよびGPCで同定し、所望の構造を有するポリロタキサンであることを確認した。
この(A)ポリロタキサン(RX−1)の物性は以下の通りであった。
側鎖の修飾度:0.5、
側鎖の分子量:平均で約600、
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):700,000。
<RX−2の調製方法>
分子量が2万のPEGを用いた以外、上記RX−1の場合と同様にして、(A)ポリロタキサン(RX−2)を得た。
この(A)ポリロタキサン(RX−2)の物性は以下の通りであった。
α−CDの包接量:0.25、
側鎖の修飾度:0.5、
側鎖の分子量:平均で約500、
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):400,000。
<RX−3の調製方法>
分子量が1.1万のPEGを使用し、側鎖の導入に用いたε−カプロラクトンの量を15.0gに代えた以外は、上記RX−1の場合と同様にして、(A)ポリロタキサン(RX−3)を得た。
このポリロタキサンRX−3の物性は以下の通りであった。
α−CDの包接量:0.25、
側鎖の修飾度:0.5、
側鎖の分子量:平均で約400、
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):180,000。
(B)樹脂及び/又はその前駆体、及び(C)溶媒
B1:有機溶媒含有湿気硬化型ポリウレタン
湿気硬化型ポリウレタン(株式会社トクヤマ製「TR−SC−P」(イソシアネート基含有量:1.3質量%、固形分濃度26質量%。)。分散媒(溶媒);酢酸エチル)。
B2:水分散ポリウレタン樹脂
(株式会社トクヤマ製「NJ−321A」ディスパージョン、カルボキシル基含有、固形分濃度:35質量%、分散媒(溶媒):水。)。
(プライマー組成物の調製)
B3の調整;B1(湿気硬化型ポリウレタン「TR−SC−P」)100g、ポリロタキサンRX−1、0.26g、トルエン20gを混合し室温で1時間撹拌することによりポリロタキサンの含有量が1質量部のプライマー組成物を得た。
(フォトクロミック硬化性組成物)
(メタ)アクリルモノマー
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート。
BPE500;2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)。
9G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が9であり、平均分子量が536)。
14G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が14であり、平均分子量が736)。
PCA;ヘキサメチレングリコール(50mol%)とペンタメチレングリコール(50mol%)とのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオールとアクリル酸との反応生成物であるポリカーボネートジアクリレート(平均分子量が約600)。
GMA;グリシジルメタアクリレート。
SC;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
MA1;シルセスキオキサンモノマー。
(MA1の合成)
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート248g(1.0mol)にエタノール248mLおよび水54g(3.0mol)を加え、触媒として水酸化ナトリウム0.20g(0.005mol)を添加し、30℃で3時間反応させた。原料の消失を確認後、希塩酸で中和し、トルエン174mL、ヘプタン174mL、および水174gを添加し、水層を除去した。その後、水層が中性になるまで有機層を水洗し、溶媒を濃縮することによってシルセスキオキサンモノマー(MA1)を得た。なお、1H−NMRより、原料は完全に消費されていることを確認した。また、29Si−NMRより、ケージ状構造、ラダー状構造およびランダム構造の混合物であることを確認した。
シルセスキオキサンモノマー(MA1)の分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定したところ、重量平均分子量が4,800であった。
RM1;ポリロタキサンモノマー。
(RM1の合成)
(A)ポリロタキサン(RX−1)のキシレン溶液(35質量%)30gに、ジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)0.01gを添加した後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート3.8gを滴下した。40℃で16時間攪拌し、ポリカプロラクトン末端にアクリル基を導入したポリロタキサンのキシレン溶液を得た。このポリロタキサンキシレン溶液をヘキサン中に滴下し、回収し、乾燥することで、重合性官能基としてアクリル基が側鎖に導入されたポリロタキサンモノマーRM1を得た。RM1の物性は以下のとおりであった。
α−CDの包接量:0.25
側鎖の修飾度:0.5
側鎖の分子量:平均で約600
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):950,000
フォトクロミック化合物
PC1:
紫外線安定剤
HALS:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量508、Tinuvin765)。
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)。
(フォトクロミック硬化性組成物(H1)の調製)
TMPT 19質量部、BPE−500 15質量部、9G 10質量部、14G 30質量部、GMA 1質量部、MA1 25質量部、PC1 4質量部、HALS 3質量部、HP 3質量部、光重合開始剤としてIgracure819(BASF社製) 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(H1)を得た。
(フォトクロミック硬化性組成物(H2)の調製)
PCA 23質量部、TMPT 40質量部、BPE−500 30質量部、GMA 1質量部、SC 6質量部、PC1 4質量部、HALS 3質量部、HP 3質量部、光重合開始剤としてIgracure819 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(H2)を得た。
(フォトクロミック硬化性組成物(H3)の調製)
PCA 18質量部、TMPT 40質量部、BPE−500 30質量部、GMA 1質量部、SC 6質量部、RM1 5質量部、PC1 4質量部、HALS 3質量部、HP 3質量部、光重合開始剤としてIgracure819 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(H3)を得た。
(ハードコート組成物の調製)
t−ブタノール12.2g、エチレングリコールモノブチルエーテル7.0g、アセチルアセトン3.7g、メチルトリエトキシシラン0.41g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン18.9g、シリコーン界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)0.06gを混合し、室温で30分間撹拌した。さらに、0.05N塩酸を9.0g加えさらに1時間撹拌した。
0.1Nトリメチルアンモニウムクロリドのメタノール溶液3.2gを加え、室温で1時間撹拌した。続いてメタノールシリカゾル(固形分濃度30質量%)44.3g、及びアルミニウムアセチルアセトナート0.51gを添加し、一昼夜熟成させてハードコート組成物を得た。
実施例1
光学基材として厚さ2.0mmのMR−8(チオウレタン樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.60)を用いた。この光学基材をアセトンで十分に脱脂し、50℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬した後、温水で十分洗浄し、70℃の乾燥機で30分乾燥した。このプラスチックレンズ上に、下記の方法にてプライマーコート層、フォトクロミックコート層を順次積層させ、フォトクロミックコート層を有するレンズを得た。
(プライマーコート層の形成)
上記で得られたレンズに、MIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、プライマー組成物(前記(B3))をスピンコートした。これを、恒温器を用いて110℃、1時間で硬化した。本発明においては、プライマーコート層の膜厚を、6.5〜7.5μmとなるように調整した。
(フォトクロミックコート層の形成)
その後、フォトクロミック硬化性組成物(H1)約2gを、前記プライマーコート層を有する光学基材の表面にスピンコートした。前記フォトクロミック硬化性組成物の塗膜により表面がコートされた光学基材に、窒素ガス雰囲気中で、光学基材表面の405nmにおける出力が200mW/cm2になるように調整したフュージョンUVシステムズ社製のDバルブを搭載したF3000SQを用いて、90秒間、光照射し、塗膜を硬化させた(光重合工程)。その後、さらに100℃の恒温器にて、1時間の加熱処理(熱処理工程)を行うことでフォトクロミック積層体を得た。得られるフォトクロミックコート層の膜厚は、スピンコートの条件によって調整が可能である。本発明においては、フォトクロミックコート層の膜厚を40±1μmとなるように調整した。
(フォトクロミック積層体の評価)
上記方法により得られたフォトクロミックコート層を有するレンズについて、フォトクロミックコート層の密着性試験を行った。各試験の方法、評価基準、及び評価結果を以下に示す。また、評価結果は表1にて示した。
〔試料評価方法〕
1)外観評価
外観評価は、光学基材として厚さ2.0mmのMR−8を用いて得られたフォトクロミック積層体各10枚を目視により観察し、光重合工程、もしくはその後の加熱工程において、外観不良(クラック)が生じた枚数を数えた。
2)フォトクロミック特性
得られたフォトクロミック積層体(フォトクロミック層の厚み500マイクロメートル)を試料とし、これに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、前記積層体のフォトクロミック特性を測定した。各フォトクロミック特性は以下の方法で評価した。
・最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
・発色濃度{ε(120)−ε(0)}:前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。また屋外で発色させたとき発色色調を目視により評価した。
・退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
3)密着性
密着性は、JISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、カッターナイフを使い、得られたフォトクロミック積層体のフォトクロミック層の表面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、フォトクロミック層が残っているマス目を評価した。
4)ビッカース硬度
ビッカース硬度は、マイクロビッカース硬度計PMT−X7A(株式会社マツザワ製)を用いて実施した。圧子には、四角錐型ダイヤモンド圧子を用い、荷重10gf、圧子の保持時間30秒の条件にて評価を実施した。測定結果は、計4回の測定を実施した後、測定誤差の大きい1回目の値を除いた計3回の平均値で示した。
(ハードコート層の形成)
上記方法により得られたフォトクロミック積層体を下記要領で更にハードコート処理を行った。
フォトクロミック層を有するレンズを50℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬した後、温水で十分洗浄し、70℃の乾燥機で30分乾燥した。該レンズをハードコート組成物に浸漬し、引上げ速度30cm/分の速度で引き上げて該レンズの表面にハードコート組成物を塗布した。塗布後80℃で20分乾燥した後、120℃で4時間保持して硬化を行い、ハードコート膜を形成した。得られたハードコート膜は、厚みは約2ミクロンの無色透明な膜であった。
(ハードコート層を有するレンズの評価)
上記方法により得られたフォトクロミック層の上にハードコート層を有するフォトクロミック積層体について、上記1)の要領で外観評価を行った。評価結果を併せて表1に示した。
実施例2〜3、比較例1〜2
プライマー組成物として表1に示す配合割合の組成物を用いた以外は、実施例1と同様の操作にてフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4〜5
実施例1に記載のプライマーコート層、フォトクロミックコート層、ハードコート層の形成方法にて、フォトクロミックコート層4のすぐ上に、プライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成したフォトクロミック積層体(図3の積層構成、実施例4)、プライマーコート層2、続いてフォトクロミックコート層4のすぐ上に、さらにプライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成したフォトクロミック積層体(図4の積層構成、実施例5)を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6〜12
光学基材として、厚さ2.0mmのCR−39(アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)を用い、
フォトクロミック硬化性組成物として、前記(H2)、又は前記(H3)を用い、
プライマー組成物として、前記(B)樹脂及び/又はその前駆体で説明した(B1:湿気硬化型ポリウレタン「TR−SC−P」)を表1に示す割合で含む組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例1〜5と同様の操作にてフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例13〜14
前記(B)樹脂及び/又はその前駆体で説明した(B2:水分散ポリウレタン樹脂)、および(A)ポリロタキサン(RX−2)を表1に示す割合で含むプライマー組成物を用い、プライマー層の膜厚を4.0〜4.5μmとなるように調整した以外は、実施例1、5と同様の操作にてフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
比較のため、プライマー層を有さないフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
発明の効果
本発明によれば、高いフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミックコート層にクラックなどの外観不良が発生しにくく、更にキズつきにくい表面硬度を有するフォトクロミック積層体を得ることが出来る。
(プライマー組成物)
(A)ポリロタキサン;
RX−1:側鎖にヒドロキシル基を有する側鎖の分子量が平均で約600、重量平均分子量が700,000のポリロタキサン。
RX−2:側鎖にヒドロキシル基を有する側鎖の分子量が平均で約500、重量平均分子量が400,000のポリロタキサン。
RX−3:側鎖にヒドロキシル基を有する側鎖の分子量が平均で約500、重量平均分子量が180,000のポリロタキサン。
なお、本発明において、ポリロタキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC測定)により、以下の条件で測定した。GPCの測定は、装置として液体クロマトグラフ装置(日本ウォーターズ社製)を用いた。カラムは、昭和電工株式会社製Shodex GPC KF−805(排除限界分子量:2,000,000)を使用した。また、展開液としてジメチルホルムアミド(DMF)を用い、流速1ml/min、温度40℃の条件にて測定した。標準試料にポリスチレンを用い、比較換算により重量平均分子量を求めた。なお、検出器には示差屈折率計を用いた。
<RX−1の調製方法>
(1−1)PEG−COOHの調製;
軸分子形成用のポリマーとして、分子量3.5万の直鎖状ポリエチレングリコール(PEG)を用意した。
PEG 10g、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシラジカル)100mgおよび臭化ナトリウム 1gを水100mLに溶解させた。この溶液に、市販の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素濃度5%)5mLを添加し、室温で10分間撹拌した。その後、エタノ−ルを最大5mLまでの範囲で添加して反応を終了させた。そして、50mLの塩化メチレンを用いた抽出を行った後、塩化メチレンを留去し、250mLのエタノ−ルに溶解させてから、−4℃の温度で12時間かけて再沈させ、PEG−COOHを回収し、乾燥した。
(1−2)ポリロタキサンの調製;
上記で調製されたPEG−COOH 3gおよびα−シクロデキストリン(α−CD)12gを、それぞれ、70℃の温水50mLに溶解させ、得られた各溶液を混合し、よく振り混ぜた。次いで、この混合溶液を、4℃の温度で12時間再沈させ、析出した包接錯体を凍結乾燥して回収した。その後、室温でジメチルホルムアミド(DMF)50mLに、アダマンタンアミン0.13gを溶解した後、上記の包接錯体を添加して速やかによく振り混ぜた。続いてBOP試薬(ベンゾトリアゾール1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェ−ト)0.38gをDMFに溶解した溶液をさらに添加して、よく振り混ぜた。さらにジイソプロピルエチルアミン0.14mLをDMFに溶解させた溶液を添加してよく振り混ぜてスラリ−状の試薬を得た。上記で得られたスラリ−状の試薬を4℃で12時間静置した。その後、DMF/メタノ−ル混合溶媒(体積比1/1)50mLを添加、混合、遠心分離を行なって上澄みを捨てた。さらに、上記DMF/メタノ−ル混合溶液による洗浄を行った後、メタノ−ルを用いて洗浄、遠心分離を行い、沈殿物を得た。得られた沈殿物を真空乾燥で乾燥させた後、50mLのDMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させ、得られた透明な溶液を700mLの水中に滴下してポリロタキサンを析出させた。析出したポリロタキサンを遠心分離で回収し、真空乾燥させた。さらにDMSOに溶解、水中で析出、回収、乾燥を行い、精製ポリロタキサンを得た。このときのα−CDの包接量は0.25である。
ここで、包接量は、DMSO−d6にポリロタキサンを溶解し、1H−NMR測定装置(日本電子製JNM−LA500)により測定し、以下の方法により算出した。
ここで、X,Y及びX/(Y−X)は、以下の意味を示す。
X:4〜6ppmのシクロデキストリンの水酸基由来プロトンの積分値
Y:3〜4ppmのシクロデキストリン及びPEGのメチレン鎖由来プロトンの積分値
X/(Y−X):PEGに対するシクロデキストリンのプロトン比
先ず、理論的に最大包接量1の時のX/(Y−X)を予め算出し、この値と実際の化合物の分析値から算出されたX/(Y−X)を比較することにより包接量を算出した。
(1−3)ポリロタキサンへの側鎖の導入;
上記で精製されたポリロタキサン500mgを1mol/LのNaOH水溶液50mLに溶解し、プロピレンオキシド3.83g(66mmol)を添加し、アルゴン雰囲気下、室温で12時間撹拌した。次いで、1mol/LのHCl水溶液を用い、上記のポリロタキサン溶液を、pHが7〜8となるように中和し、透析チュ−ブにて透析した後、凍結乾燥し、ヒドロキシプロピル化ポリロタキサンを得た。
ヒドロキシプロピル基による環状分子のOH基への修飾度は0.5であった。得られたヒドロキシプロピル化ポリロタキサン5gを、ε−カプロラクトン30gに80℃で溶解させた混合液を調製した。この混合液を、乾燥窒素をブロ−させながら110℃で1時間攪拌した後、2−エチルヘキサン酸錫(II)の50質量%キシレン溶液0.16gを加え、130℃で6時間攪拌した。その後、キシレンを添加し、不揮発濃度が約35質量%の側鎖を導入したポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンキシレン溶液を得た。
上記で調製されたポリカプロラクトン修飾ポリロタキサンキシレン溶液をヘキサン中に滴下し、回収し、乾燥することにより、重合性の官能基としてOH基を有する側鎖修飾ポリロタキサンRX−1を得た。得られたポリロタキサンRX−1は、1H−NMRおよびGPCで同定し、所望の構造を有するポリロタキサンであることを確認した。
この(A)ポリロタキサン(RX−1)の物性は以下の通りであった。
側鎖の修飾度:0.5、
側鎖の分子量:平均で約600、
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):700,000。
<RX−2の調製方法>
分子量が2万のPEGを用いた以外、上記RX−1の場合と同様にして、(A)ポリロタキサン(RX−2)を得た。
この(A)ポリロタキサン(RX−2)の物性は以下の通りであった。
α−CDの包接量:0.25、
側鎖の修飾度:0.5、
側鎖の分子量:平均で約500、
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):400,000。
<RX−3の調製方法>
分子量が1.1万のPEGを使用し、側鎖の導入に用いたε−カプロラクトンの量を15.0gに代えた以外は、上記RX−1の場合と同様にして、(A)ポリロタキサン(RX−3)を得た。
このポリロタキサンRX−3の物性は以下の通りであった。
α−CDの包接量:0.25、
側鎖の修飾度:0.5、
側鎖の分子量:平均で約400、
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):180,000。
(B)樹脂及び/又はその前駆体、及び(C)溶媒
B1:有機溶媒含有湿気硬化型ポリウレタン
湿気硬化型ポリウレタン(株式会社トクヤマ製「TR−SC−P」(イソシアネート基含有量:1.3質量%、固形分濃度26質量%。)。分散媒(溶媒);酢酸エチル)。
B2:水分散ポリウレタン樹脂
(株式会社トクヤマ製「NJ−321A」ディスパージョン、カルボキシル基含有、固形分濃度:35質量%、分散媒(溶媒):水。)。
(プライマー組成物の調製)
B3の調整;B1(湿気硬化型ポリウレタン「TR−SC−P」)100g、ポリロタキサンRX−1、0.26g、トルエン20gを混合し室温で1時間撹拌することによりポリロタキサンの含有量が1質量部のプライマー組成物を得た。
(フォトクロミック硬化性組成物)
(メタ)アクリルモノマー
TMPT;トリメチロールプロパントリメタクリレート。
BPE500;2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(エチレングリコール鎖の平均鎖長が10であり、平均分子量が804)。
9G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が9であり、平均分子量が536)。
14G;ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の平均鎖長が14であり、平均分子量が736)。
PCA;ヘキサメチレングリコール(50mol%)とペンタメチレングリコール(50mol%)とのホスゲン化で得られるポリカーボネートジオールとアクリル酸との反応生成物であるポリカーボネートジアクリレート(平均分子量が約600)。
GMA;グリシジルメタアクリレート。
SC;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン。
MA1;シルセスキオキサンモノマー。
(MA1の合成)
3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレート248g(1.0mol)にエタノール248mLおよび水54g(3.0mol)を加え、触媒として水酸化ナトリウム0.20g(0.005mol)を添加し、30℃で3時間反応させた。原料の消失を確認後、希塩酸で中和し、トルエン174mL、ヘプタン174mL、および水174gを添加し、水層を除去した。その後、水層が中性になるまで有機層を水洗し、溶媒を濃縮することによってシルセスキオキサンモノマー(MA1)を得た。なお、1H−NMRより、原料は完全に消費されていることを確認した。また、29Si−NMRより、ケージ状構造、ラダー状構造およびランダム構造の混合物であることを確認した。
シルセスキオキサンモノマー(MA1)の分子量を、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により測定したところ、重量平均分子量が4,800であった。
RM1;ポリロタキサンモノマー。
(RM1の合成)
(A)ポリロタキサン(RX−1)のキシレン溶液(35質量%)30gに、ジブチルヒドロキシトルエン(重合禁止剤)0.01gを添加した後、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート3.8gを滴下した。40℃で16時間攪拌し、ポリカプロラクトン末端にアクリル基を導入したポリロタキサンのキシレン溶液を得た。このポリロタキサンキシレン溶液をヘキサン中に滴下し、回収し、乾燥することで、重合性官能基としてアクリル基が側鎖に導入されたポリロタキサンモノマーRM1を得た。RM1の物性は以下のとおりであった。
α−CDの包接量:0.25
側鎖の修飾度:0.5
側鎖の分子量:平均で約600
ポリロタキサン重量平均分子量Mw(GPC):950,000
フォトクロミック化合物
PC1:
紫外線安定剤
HALS:ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(分子量508、Tinuvin765)。
HP:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)。
(フォトクロミック硬化性組成物(H1)の調製)
TMPT 19質量部、BPE−500 15質量部、9G 10質量部、14G 30質量部、GMA 1質量部、MA1 25質量部、PC1 4質量部、HALS 3質量部、HP 3質量部、光重合開始剤としてIgracure819(BASF社製) 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(H1)を得た。
(フォトクロミック硬化性組成物(H2)の調製)
PCA 23質量部、TMPT 40質量部、BPE−500 30質量部、GMA 1質量部、SC 6質量部、PC1 4質量部、HALS 3質量部、HP 3質量部、光重合開始剤としてIgracure819 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(H2)を得た。
(フォトクロミック硬化性組成物(H3)の調製)
PCA 18質量部、TMPT 40質量部、BPE−500 30質量部、GMA 1質量部、SC 6質量部、RM1 5質量部、PC1 4質量部、HALS 3質量部、HP 3質量部、光重合開始剤としてIgracure819 0.3質量部、レベリング剤として東レ・ダウコーニング株式会社製L7001 0.1質量部を加え、70℃で15分間撹拌混合し、フォトクロミック硬化性組成物(H3)を得た。
(ハードコート組成物の調製)
t−ブタノール12.2g、エチレングリコールモノブチルエーテル7.0g、アセチルアセトン3.7g、メチルトリエトキシシラン0.41g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン18.9g、シリコーン界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)0.06gを混合し、室温で30分間撹拌した。さらに、0.05N塩酸を9.0g加えさらに1時間撹拌した。
0.1Nトリメチルアンモニウムクロリドのメタノール溶液3.2gを加え、室温で1時間撹拌した。続いてメタノールシリカゾル(固形分濃度30質量%)44.3g、及びアルミニウムアセチルアセトナート0.51gを添加し、一昼夜熟成させてハードコート組成物を得た。
実施例1
光学基材として厚さ2.0mmのMR−8(チオウレタン樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.60)を用いた。この光学基材をアセトンで十分に脱脂し、50℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬した後、温水で十分洗浄し、70℃の乾燥機で30分乾燥した。このプラスチックレンズ上に、下記の方法にてプライマーコート層、フォトクロミックコート層を順次積層させ、フォトクロミックコート層を有するレンズを得た。
(プライマーコート層の形成)
上記で得られたレンズに、MIKASA製スピンコーター1H−DX2を用いて、プライマー組成物(前記(B3))をスピンコートした。これを、恒温器を用いて110℃、1時間で硬化した。本発明においては、プライマーコート層の膜厚を、6.5〜7.5μmとなるように調整した。
(フォトクロミックコート層の形成)
その後、フォトクロミック硬化性組成物(H1)約2gを、前記プライマーコート層を有する光学基材の表面にスピンコートした。前記フォトクロミック硬化性組成物の塗膜により表面がコートされた光学基材に、窒素ガス雰囲気中で、光学基材表面の405nmにおける出力が200mW/cm2になるように調整したフュージョンUVシステムズ社製のDバルブを搭載したF3000SQを用いて、90秒間、光照射し、塗膜を硬化させた(光重合工程)。その後、さらに100℃の恒温器にて、1時間の加熱処理(熱処理工程)を行うことでフォトクロミック積層体を得た。得られるフォトクロミックコート層の膜厚は、スピンコートの条件によって調整が可能である。本発明においては、フォトクロミックコート層の膜厚を40±1μmとなるように調整した。
(フォトクロミック積層体の評価)
上記方法により得られたフォトクロミックコート層を有するレンズについて、フォトクロミックコート層の密着性試験を行った。各試験の方法、評価基準、及び評価結果を以下に示す。また、評価結果は表1にて示した。
〔試料評価方法〕
1)外観評価
外観評価は、光学基材として厚さ2.0mmのMR−8を用いて得られたフォトクロミック積層体各10枚を目視により観察し、光重合工程、もしくはその後の加熱工程において、外観不良(クラック)が生じた枚数を数えた。
2)フォトクロミック特性
得られたフォトクロミック積層体(フォトクロミック層の厚み500マイクロメートル)を試料とし、これに、浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して20℃±1℃、重合体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、前記積層体のフォトクロミック特性を測定した。各フォトクロミック特性は以下の方法で評価した。
・最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディテクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
・発色濃度{ε(120)−ε(0)}:前記最大吸収波長における、120秒間光照射した後の吸光度{ε(120)}と上記ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れているといえる。また屋外で発色させたとき発色色調を目視により評価した。
・退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間光照射後、光の照射を止めたときに、試料の前記最大波長における吸光度が{ε(120)−ε(0)}の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
3)密着性
密着性は、JISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、カッターナイフを使い、得られたフォトクロミック積層体のフォトクロミック層の表面に約1mm間隔に切れ目を入れ、マス目を100個形成させる。その上にセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製セロテープ(登録商標))を強く貼り付け、次いで、表面から90°方向へ一気に引っ張り剥離した後、フォトクロミック層が残っているマス目を評価した。
4)ビッカース硬度
ビッカース硬度は、マイクロビッカース硬度計PMT−X7A(株式会社マツザワ製)を用いて実施した。圧子には、四角錐型ダイヤモンド圧子を用い、荷重10gf、圧子の保持時間30秒の条件にて評価を実施した。測定結果は、計4回の測定を実施した後、測定誤差の大きい1回目の値を除いた計3回の平均値で示した。
(ハードコート層の形成)
上記方法により得られたフォトクロミック積層体を下記要領で更にハードコート処理を行った。
フォトクロミック層を有するレンズを50℃の10質量%水酸化ナトリウム水溶液に10分浸漬した後、温水で十分洗浄し、70℃の乾燥機で30分乾燥した。該レンズをハードコート組成物に浸漬し、引上げ速度30cm/分の速度で引き上げて該レンズの表面にハードコート組成物を塗布した。塗布後80℃で20分乾燥した後、120℃で4時間保持して硬化を行い、ハードコート膜を形成した。得られたハードコート膜は、厚みは約2ミクロンの無色透明な膜であった。
(ハードコート層を有するレンズの評価)
上記方法により得られたフォトクロミック層の上にハードコート層を有するフォトクロミック積層体について、上記1)の要領で外観評価を行った。評価結果を併せて表1に示した。
実施例2〜3、比較例1〜2
プライマー組成物として表1に示す配合割合の組成物を用いた以外は、実施例1と同様の操作にてフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例4〜5
実施例1に記載のプライマーコート層、フォトクロミックコート層、ハードコート層の形成方法にて、フォトクロミックコート層4のすぐ上に、プライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成したフォトクロミック積層体(図3の積層構成、実施例4)、プライマーコート層2、続いてフォトクロミックコート層4のすぐ上に、さらにプライマーコート層2、続いてハードコート層3を形成したフォトクロミック積層体(図4の積層構成、実施例5)を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例6〜12
光学基材として、厚さ2.0mmのCR−39(アリル樹脂プラスチックレンズ;屈折率=1.50)を用い、
フォトクロミック硬化性組成物として、前記(H2)、又は前記(H3)を用い、
プライマー組成物として、前記(B)樹脂及び/又はその前駆体で説明した(B1:湿気硬化型ポリウレタン「TR−SC−P」)を表1に示す割合で含む組成物をそれぞれ用いた以外は、実施例1〜5と同様の操作にてフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
実施例13〜14
前記(B)樹脂及び/又はその前駆体で説明した(B2:水分散ポリウレタン樹脂)、および(A)ポリロタキサン(RX−2)を表1に示す割合で含むプライマー組成物を用い、プライマー層の膜厚を4.0〜4.5μmとなるように調整した以外は、実施例1、5と同様の操作にてフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
比較例3
比較のため、プライマー層を有さないフォトクロミック積層体を製造し、評価を行った。結果を表1に示す。
本発明によれば、高いフォトクロミック特性を維持しながら、フォトクロミックコート層にクラックなどの外観不良が発生しにくく、更にキズつきにくい表面硬度を有するフォトクロミック積層体を得ることが出来る。
Claims (4)
- (A)ポリロタキサン、(B)樹脂及び/又はその前駆体を含有しそしてフォトクロミック化合物を実質的に含有しない光学物品用プライマー組成物。
- (B)樹脂及び/又はその前駆体がポリウレタン及び/又はその前駆体である請求項1記載の光学物品用プライマー組成物。
- ポリロタキサンの環状分子が側鎖を有し、且つその側鎖の少なくとも一部に重合性官能基を有する請求項1記載の光学物品用プライマー組成物。
- 光学基材上にフォトクロミックコート層及びハードコート層がこの順に積層されたフォトクロミック積層体であって、光学基材とフォトクロミックコート層及び/またはフォトクロミックコート層とハードコート層との間に請求項1記載の光学物品用プライマー組成物の硬化体であるプライマーコート層を有することを特徴とするフォトクロミック積層体。
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