JPWO2016203657A1 - 水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物、被覆製剤、水溶性酢酸セルロース複合体成形品及びその製造方法 - Google Patents
水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物、被覆製剤、水溶性酢酸セルロース複合体成形品及びその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
本発明の他の目的は、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系樹脂成形品を溶融状態で製造できる水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、溶融状態で紡糸することができ、比較的繊度が低く(細く)着色が少ない、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系繊維を得ることのできる水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物から形成される水溶性酢酸セルロース複合体成形品を提供することである。
本発明の他の目的は、上記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を含むコーティング層を有する被覆製剤を提供することである。
また、本発明の他の目的は、上記水溶性酢酸セルロース複合体成形品又は被覆製剤の工業的に効率のよい製造方法を提供することにある。
さらに、本発明者らは、アセチル総置換度が0.5〜1.0である酢酸セルロースと水溶性有機添加剤(ポリビニルアルコールを除く)とを含む樹脂組成物を成形材料とすると、ガラス転移温度を低くすることができ(好ましくは、200℃よりも十分低くすることができ)、比較的低い温度にて溶融状態で成形することが可能であること、こうして得られた成形品は水溶性で且つ生分解性を有すること、及び上記成形法によれば比較的繊度が低く着色の少ない繊維を簡易に製造できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を加えて完成したものである。
前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物において、酢酸セルロース(A1)のアセチル総置換度は、0.6〜0.9であってもよい。
前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物において、ポリビニルアルコール(B)のケン化度が、90モル%以上であってもよい。
前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物において、酢酸セルロース(A1)100重量部に対するポリビニルアルコール(B)の割合が500重量部以下であってもよい。
前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物において、前記水溶性有機添加剤(C)は、ポリエチレングリコール又はポリエチレンオキサイドであってもよい。
前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物において、前記水溶性有機添加剤(C)の含有量は、10〜50重量%であってもよい。
前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物において、前記水溶性有機添加剤(C)の含有量は、20〜50重量%であってもよい。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値)
前記水溶性酢酸セルロース複合体成形品は、フィルム状であってもよい。
前記水溶性酢酸セルロース複合体成形品は、繊維状であってもよい。
また、本発明は、前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を、溶融状態を経由して成形することを特徴とする水溶性酢酸セルロース複合体成形品の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、前記水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を、溶液を経由して成形することを特徴とする水溶性酢酸セルロース複合体成形品の製造方法を提供する。
水溶性酢酸セルロース複合体成形品の製造方法において、前記水溶性酢酸セルロース複合体成形品は、被覆製剤のコーティング層であってもよい。
また、本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第2態様によれば、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系樹脂成形品を溶融状態を経由して製造することができる。また、特に、比較的繊度が低く(例えば、従来のたばこフィルターと同様の2デニール程度の)、着色が少ない、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系繊維を製造することができる。
さらに、本発明の水溶性酢酸セルロース複合体成形品の製造方法によれば、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系樹脂成形品、特に、比較的繊度が低く、着色が少ない、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系繊維を工業的に効率よく製造することができる。また、溶融状態を経由して成形できるので、乾式紡糸のように400℃程度の乾燥空気を使う必要がなく、省エネルギー化できる。
また、本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第2態様は、アセチル総置換度が0.5〜1.0である酢酸セルロース(A2)と水溶性有機添加剤(C)(ポリビニルアルコールを除く)とを含有している。
(アセチル総置換度)
本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第1態様における酢酸セルロースは、アセチル総置換度(平均置換度)が0.4〜1.6である。アセチル総置換度がこの範囲であると水に対する溶解性に優れ、また、酢酸セルロース(A1)とポリビニルアルコール(B)が相溶して透明な樹脂組成物を形成しやすく、この範囲を外れると水に対する溶解性が低下する傾向となる。前記アセチル総置換度の好ましい下限値は、0.45以上であり、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.55以上であり、特に好ましくは、0.6以上である。一方、前記アセチル総置換度の上限値は、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.4以下であり、さらに好ましくは1.3以下であり、さらに一層好ましくは1.2以下であり、なおさらに一層好ましくは1.1以下であり、特に好ましくは1.0以下であり、特に一層好ましくは0.9以下である。
アセチル総置換度は、酢酸セルロースを水に溶解し、酢酸セルロースの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。また、該アセチル総置換度は、酢酸セルロースの水酸基をプロピオニル化した上で(後述の方法参照)、重クロロホルムに溶解し、NMRにより測定することもできる。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥した酢酸セルロース(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶媒(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
本発明において、前記酢酸セルロース(A1)又は(A2)の組成分布(分子間置換度分布)は特に限定されず、組成分布指数(CDI)は、例えば1.0〜3.0である。組成分布指数(CDI)は、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8、さらに好ましくは1.0〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.5である。組成分布指数(CDI)が2.0以下であると、前記酢酸セルロース(A1)とポリビニルアルコール(B)との相溶性、前記酢酸セルロース(A2)と水溶性有機添加剤(C)との相溶性が向上するためか、成形品の強度(繊維の場合は糸強度)が大きく向上する。
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
p:酢酸セルロース1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
本発明において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
Z=(X2−Y2)1/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースアセテートの見掛けの置換度分布半値幅(実際は総置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル総置換度(0≦x≦3)である]
本発明において、前記酢酸セルロースのグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度は、手塚(Tezuka,Carbonydr.Res.273,83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。すなわち、酢酸セルロース試料の遊離水酸基をピリジン中で無水プロピオン酸によりプロピオニル化する。得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C−NMRスペクトルを測定する。アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、そして、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。それぞれ対応する位置でのアセチル基とプロピオニル基の存在比から、元のセルロースジアセテートにおけるグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度を求めることができる。なお、このように求めた2,3,6位の各アセチル置換度の和はアセチル総置換度であり、この方法でアセチル総置換度を求めることもできる。なお、アセチル総置換度は、13C−NMRのほか、1H−NMRで分析することもできる。
本発明において、分子量分布(重合度分布)の多分散性(Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
本発明において、重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本発明における前記酢酸セルロース(A1)又は(A2)の6%粘度は、例えば5〜500mPa・s、好ましくは6〜300mPa・sである。6%粘度が高すぎると濾過性が悪くなる場合がある。
50mlのメスフラスコに乾燥試料3.00gを入れ、蒸留水を加え溶解させる。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温する。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出する。
6%粘度(mPa・s)=C×P×t
C:試料溶液恒数
P:試料溶液密度(0.997g/cm3)
t:試料溶液の流下秒数
試料溶液恒数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求める。
試料溶液恒数={標準液絶対粘度(mPa・s)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数}
本発明における前記酢酸セルロース(A1)又は(A2)(低置換度酢酸セルロース)は、例えば、(A)中乃至高置換度酢酸セルロースの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈殿工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。
この工程では、中乃至高置換度酢酸セルロース(以下、「原料酢酸セルロース」と称する場合がある)を加水分解する。原料として用いる中乃至高置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度は、例えば、1.5〜3、好ましくは2〜3である。原料酢酸セルロースとしては、市販のセルロースジアセテート(アセチル総置換度2.27〜2.56)やセルローストリアセテート(アセチル総置換度2.56超〜3)を用いることができる。
この工程では、加水分解反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、沈殿溶媒を加えて低置換度酢酸セルロースを沈殿させる。沈殿溶媒としては、水と混和する有機溶剤若しくは水に対する溶解度の大きい有機溶剤を使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトニトリル等の含窒素化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル;これらの混合溶媒などが挙げられる。
沈殿工程(B)で得られた沈殿物(固形物)は、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなどの有機溶媒(貧溶媒)で洗浄するのが好ましい。また、塩基性物質を含む有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなど)で洗浄、中和することも好ましい。なお、中和工程は加水分解工程の直後に設けても良く、その場合には塩基性物質またはその水溶液を加水分解反応浴に添加するのが好ましい。
本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第1態様のポリビニルアルコール(B)としては、ケン化度が50モル%以上のものを特に限定なく使用することができる。ポリビニルアルコール(B)のケン化度が50モル%以上であれば、水に対する溶解性に優れ、また、酢酸セルロース(A1)とポリビニルアルコール(B)が相溶して透明な樹脂組成物を形成しやすくなる。前記ケン化度の好ましい下限値は、60モル%以上であり、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくはモル75%以上、さらに一層好ましくは80モル%以上、なおさらに好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。前記ケン化度の上限値は、特に限定されないが、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、さらに好ましくは95モル%以下である。
なお、ポリビニルアルコールのケン化度及び平均重合度は、下記式で表される値であり、JIS K 6726に準拠する方法にて測定することができる
本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第1態様に含まれる水溶性有機添加剤(C)としては、ポリビニルアルコールを除く、水溶性の有機化合物であれば特に限定されず、用途に応じて適宜選択できる。水溶性有機添加剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性有機添加剤(C)として、例えば、水溶性高分子、水溶性低分子化合物などが挙げられる。
本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第1態様は、アセチル総置換度が0.4〜1.6である酢酸セルロース(A1)と、ケン化度が50モル%以上であるポリビニルアルコール(B)とを含む。本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第1態様では、前記酢酸セルロース(A1)及び前記ポリビニルアルコール(B)が互いに相溶して、透明な樹脂組成物(ポリマーアロイ)を形成し、さらに酸素や水蒸気等の気体の透過性が低く、すなわち、ガスバリヤ性能が高い。さらに、本発明の第1態様の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物は、生分解性であり、且つ水溶性、安全性も高い。
ポリマーの非晶部分は、昇温過程でガラス状態からゴム状態に、降温過程でゴム状態からガラス状態に転移する。この転移温度(ガラス転移温度、あるいは、ガラス転移点)は、ポリマーを特徴付ける物性の一つである。2種類のポリマーをブレンドすると、もともとのポリマーに特徴的なそれぞれのガラス転移温度が観察される場合がある。この状況は、二種類のポリマーは分子レベルで相互作用していないと判定される。つまり、ポリマーブレンドにおいて、もともとのポリマーに特徴的なガラス転移温度が観察される場合、そのポリマーブレンドは非相溶性である(非相溶である)と判定される。
2種類のポリマーをブレンドすると、もともとのポリマーには現れないガラス転移温度が一つだけ観察される場合がある。この状況は、2種類のポリマーは分子レベルで相互作用していると判定される。つまり、ポリマーブレンドにおいて、もともとのポリマーに特徴的なガラス転移温度が消失し、あらたに一つのガラス転移温度が観察される場合、そのポリマーブレンドは相溶性である(相溶である)と判定される。言い換えれば、もともとのポリマーに特徴的なガラス転移温度が消失し、あらたに一つのガラス転移温度が観察される状況をもって、「相溶性」を定義して良い。
なお、2種類のポリマーのブレンドにおいて、非晶部分は相溶しており、加えて、もともとのポリマーの片方あるいは両方の結晶が混在する場合がある。この場合にも、ガラス転移温度は一つのみ観察されることとなる。この状況もまた、相溶性であると定義される。
ガラス転移点では、熱分析のチャートのベースラインが吸熱側(下側)にシフトする変曲点が観察され、融点では吸熱ピークが観測される。
パターン1は、ポリマーAとポリマーBはいずれも結晶性を示す吸熱ピークを有さず、ポリマーAとポリマーBの各種割合(重量%)のブレンド(例えば、ポリマーA/ポリマーB=80/20〜20/80)では、いずれもポリマーA又はポリマーBに由来するガラス転移点(↓)を示さず、ポリマーブレンド特有の単一のガラス転移点(↓)のみが観察される場合である。
パターン2は、ポリマーAとポリマーBはいずれも結晶性を示す吸熱ピークを有さず、ポリマーAとポリマーBの各種割合(重量%)のブレンド(例えば、ポリマーA/ポリマーB=80/20〜20/80)では、いずれもポリマーA及びポリマーBに由来する2つのガラス転移点(↓)が観察される場合である。
なお、あらかじめポリマーA及びポリマーBのそれぞれのガラス転移点が分かっており、それらがガラス転移点の測定精度(測定条件によるが、例えば±3℃程度)を考慮しても十分に分離している状況では、これらポリマーのブレンドにおいて1つのガラス転移点のみが観察され、それがそれぞれのポリマーに特徴的なガラス転移点の何れかと同一とみなされ、測定感度その他の理由により他方のガラス転移点が観察されない場合も、実質的にパターン2と同じものと判別される。
パターン3は、ポリマーAは結晶性を示す吸熱ピークを有さないが、ポリマーBは結晶性を示す吸熱ピーク(*)を有し、ポリマーAとポリマーBの各種割合(重量%)のブレンド(例えば、ポリマーA/ポリマーB=80/20〜20/80)では、いずれもポリマーA又はポリマーBに由来するガラス転移点(↓)を示さず、ポリマーブレンド特有の単一のガラス転移点(↓)を示し、さらに特定の割合(重量%)のポリマーAとポリマーBのブレンド(例えば、ポリマーA/ポリマーB=40/60〜20/80)では、ポリマーBに由来する結晶性を示す吸熱ピーク(*)が観察される場合である。
パターン4は、ポリマーAは結晶性を示す吸熱ピークを有さないが、ポリマーBは結晶性を示す吸熱ピーク(*)を有し、ポリマーAとポリマーBの各種割合(重量%)のブレンド(例えば、ポリマーA/ポリマーB=80/20〜20/80)では、いずれもポリマーA及びポリマーBに由来する2つのガラス転移点(↓)を示し、さらに特定の割合(重量%)のポリマーAとポリマーBのブレンド(例えば、ポリマーA/ポリマーB=80/20〜20/80)では、ポリマーBに由来する結晶性を示す吸熱ピーク(*)が観察される場合である。
なお、ポリマーAまたはポリマーBが結晶性を示す吸熱ピークを有する場合であって、あらかじめポリマーA及びポリマーBのそれぞれのガラス転移点が分かっており、それらがガラス転移点の測定精度(測定条件によるが、例えば±3℃程度)を考慮しても十分に分離している状況では、これらポリマーのブレンドにおいて1つのガラス転移点のみが観察され、それがそれぞれのポリマーに特徴的なガラス転移点の何れかと同一とみなされ、測定感度その他の理由により他方のガラス転移点が観察されない場合も、実質的にパターン4と同じものと判別される。
酢酸セルロース(A1)及びポリビニルアルコール(B)を溶解させる溶媒としては、水、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
本発明の水溶性酢酸セルロース複合体成形品は、前記本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物(第1態様および第2態様を含む。以下、同様)を、溶融状態を経由して成形することにより製造できる。すなわち、溶融紡糸法(メルトブロー紡糸法を含む)を用いることにより前記水溶性酢酸セルロース複合体成形品を製造することができる。
前記本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物(第1態様および第2態様を含む。以下、同様)は、被覆製剤のコーティング層の基剤として好適に使用することができる。特に、本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物の第1態様は、前記酢酸セルロース(A1)及び前記ポリビニルアルコール(B)が互いに相溶して、透明な樹脂組成物(ポリマーアロイ)を形成し、さらに酸素や水蒸気等の気体の透過性が低く、生分解性であり、且つ水溶性、安全性も高いため、被覆製剤のコーティング層の基剤に極めて適している。
医薬としては、特に制限はないが、例えば、鎮痛剤、解熱鎮痛剤、頭痛治療剤、鎮咳剤、去痰剤、鎮静剤、鎮けい剤、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、抗プラスミン剤、気管支拡張剤、喘息治療剤、糖尿病治療剤、肝疾患治療剤、潰瘍治療剤、胃炎治療剤、健胃消化剤、消化管運動賦活剤、高血圧治療剤、狭心症治療剤、血圧降下剤、低血圧治療剤、高脂血症治療剤、ホルモン剤、抗生物質、抗ウイルス剤、サルファ剤、抗炎症剤、精神神経用剤、眼圧降下剤、制吐剤、止瀉薬、痛風治療剤、不整脈治療剤、血管収縮剤、消化剤、睡眠又は催眠導入(誘導)剤、交感神経遮断剤、貧血治療剤、抗てんかん剤、抗めまい剤、平行傷害治療剤、結核治療剤、ビタミン欠乏症治療剤、痴呆治療剤、尿失禁治療剤、鎮うん剤、口内殺菌剤、寄生虫駆除剤、ビタミン剤、アミノ酸類、ミネラル類などが挙げられる。これら医薬は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
本発明の被覆製剤における、医薬、農薬、食品等の含量は、被覆製剤中5〜90重量%の範囲から適宜選択できる。
前記添加剤としては、医薬品、食品、農薬等の常用されるものを制限なく使用することができ、例えば、コーンスターチ、αスターチ、乳糖、白糖、マルトース、トレハロース、環状四糖、デキストリン、デンプン、結晶セルロース、重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の賦形剤(担体);カルボキシメチルセルロース、寒天、ゼラチン末等の崩壊剤;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤;シリカ、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤;界面活性剤;乳化剤;可塑剤;防腐剤(抗菌剤);保湿剤;増粘剤;増粘安定剤;抗酸化剤;キレート剤;色素;香料;酸味料;調味料;pH調整剤;ビタミン剤;各種アミノ酸;ミネラル;油脂;栄養補助剤;水溶性高分子;電解質;希釈剤;水;生理食塩水;アルコール類;有機溶媒;動物や植物のエキスなどが挙げられる。これら添加剤は2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE〔オイドラギットE(商品名)、ロームファルマ社〕、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子;プルランなどの多糖類などが挙げられる。
また、本発明の被覆製剤は、さらに前記コーティング液又は他のコーティング液で被覆した、多層被覆製剤としてもよい。
速放性製剤は、第十六改正日本薬局方の溶出試験において、第1液(pH1.2)及び第2液(pH6.8)で速やかに成分を放出する(例えば、10分で放出率85%以上)ものをいう。
徐放性製剤は、第十六改正日本薬局方の溶出試験において、第1液(pH1.2)及び第2液(pH6.8)で成分の放出速度が遅い(例えば、10分で放出率85%未満)ものをいう。
腸溶性製剤は、第十六改正日本薬局方の溶出試験において、第1液(pH1.2)で成分の放出速度が遅く(例えば、10分で放出率85%未満)、第2液(pH6.8)で成分の放出速度が速い(例えば、10分で放出率85%以上)ものをいう。
酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−50」、アセチル基総置換度2.43、6%粘度:110mPa・s)1重量部に対して、5.1重量部の酢酸および2.0重量部の水を加え、40℃で5時間撹拌して外観均一な溶液を得た。この溶液に0.13重量部の硫酸を加え、得られた溶液を70℃に保持し、加水分解(部分脱アセチル化反応;熟成)を行った。なお、この熟成過程においては、途中で2回、水を系に添加した。すなわち、反応を開始して1時間後に0.67重量部の水を加え、さらに2時間後、1.67重量部の水を加え、さらに3時間反応させた。合計の加水分解時間は6時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1熟成、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2熟成、2回目の水の添加から反応終了(熟成完了)までを第3熟成という。
加水分解を実施した後、系の温度を室温(約25℃)まで冷却し、反応混合物に15重量部のアセトン/メタノール=1/2(重量比)混合溶媒(沈殿化剤)を加えて沈殿を生成させた。
固形分15重量%のウェットケーキとして沈殿を回収し、8重量部のメタノールを加え、固形分15重量%まで脱液することにより洗浄した。これを3回繰り返した。洗浄した沈殿物を、酢酸カリウムを0.004重量%含有するメタノール8重量部でさらに2回洗浄して中和し、乾燥して、酢酸セルロース(低置換度酢酸セルロース)を得た。
反応温度、第1熟成時間、第2熟成時間、第3熟成時間、沈殿化剤を表1及び2に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様にして酢酸セルロース(低置換度酢酸セルロース)を得た。
針葉樹サルファイトパルプ(αセルロース含量96%)13重量部、硫酸2重量部、無水酢酸35重量部および氷酢酸50重量部からなる混合物を、36℃で3時間アセチル化反応を行い、反応後反応物を酢酸カリウムで部分中和し、残存する硫酸を1重量部、揮発分中の水の量を10重量%とし、60℃で9時間加水分解し、その後完全中和、沈澱化、洗浄、乾燥して酢化度40.2%(置換度(DS)1.51)の酢酸セルロース(CA−40)を得た。この酢酸セルロースを、特開平10−317228号公報(段落0016)に記載される方法で極限粘度を定め、平均重合度を求めたところ、107であった。また、後述の方法で測定したDPwは210、DPw/DPnは2.1であった。
手塚の方法(Carbohydr. Res. 273, 83(1995))に準じて水溶性酢酸セルロース試料の未置換水酸基をプロピオニル化した。プロピオニル化低置換度酢酸セルロースのアセチル基総置換度は、手塚の方法(同)に準じて13C−NMRにおける169〜171ppmのアセチルカルボニルのシグナルおよび172〜174ppmのプロピオニルカルボニルのシグナルから決定した。
酢酸セルロースのCDIは、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でHPLC分析を行うことで決定した。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度: 30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
まず、アセチルDS(アセチル基総置換度)が0〜3の範囲でDS既知の標品をHPLC分析することで、溶出時間対DSの較正曲線を作成した。較正曲線に基づき、未知試料の溶出曲線(時間対検出強度曲線)をDS対検出強度曲線(組成分布曲線)に変換し、この組成分布曲線の未補正半値幅Xを決定し、次式により組成分布の補正半値幅Zを決定した。
Z=(X2−Y2)1/2
なお、Yは次式で定義される装置定数である。
Y=(a−b)x/3+b
a: アセチルDS=3の標品のX値
b: アセチルDS=0の標品のX値
x: 未知試料のアセチルDS
補正半値幅Zから、次式により組成分布指数(CDI)を決定した。
CDI=Z/Z0
ここに、Z0は全ての部分置換酢酸セルロースの調製におけるアセチル化および部分脱アセチル化が全ての分子の全ての水酸基(又はアセチル基)に対して等しい確率で生じた場合に生成する組成分布であり、次式で定義される。
p:(未知試料のアセチルDS)/3
q:1−p
このように求めた水溶性酢酸セルロースのCDIは1.4であった。
酢酸セルロースの重量平均重合度および分散度は、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でGPC−光散乱測定を行うことで決定した。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、ガードカラム(東ソー製TSKgel guardcolumn HXL−H)
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
表3〜5に示された組成で、種々のアセチル総置換度を有する酢酸セルロースとケン化度の異なるポリビニルアルコールをN,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミドに混合し攪拌した後、ガラスシャーレに流延し、風乾することによりブレンドフィルムを調製した。表3〜5中、「比率」は重量%である。
得られたフィルムについて、以下の評価を行った。結果を表3〜5に示す。
得られたフィルムを目視で観察し、透明又はやや白濁している場合を合格、白濁している場合を不合格とした。
DSCによる熱分析はセイコーインスツルメンツ(株)製DSC6200/EXSTAR6000を用いて行った。測定は全て窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで行った。各試料約5mgを280℃まで昇温していったんビニルポリマーの結晶を溶融した後、速やかに−30℃まで冷却し、その後再び280℃まで昇温して安定なサーモグラムを得、ガラス転移温度及び融点の吸熱ピークの有無を観察した。
各種のアセチル総置換度を有する酢酸セルロースとケン化度の異なるポリビニルアルコールの各種割合(重量%)の(酢酸セルロース/ポリビニルアルコール=80/20〜20/80)のポリマーブレンドにおいてガラス転移温度(↓)及び融点の吸熱ピーク(*)が、図1〜4に示すチャートパターン1〜4のいずれかに該当するか判定し、相溶性を判定した。
また、実施例9〜13、29〜32、参照例1〜4については、ガラス転移温度(Tg)と融点(Tm)の観察の有無または温度(℃)を表3、5にそれぞれ示す。
Tg:ベースラインと吸熱側への変曲点の接線の交点の温度(℃)
Tm:吸熱ピークのピークトップの温度(℃)
L−0302:ポリビニルアルコール(商品名「ゴーセノールL−0302」、日本合成化学工業(株))、ケン化度:約43モル%
EG−05:ポリビニルアルコール(商品名「ゴーセノールEG−05」、日本合成化学工業(株))、ケン化度:約90モル%
NH−17Q:ポリビニルアルコール(商品名「ゴーセノールNH−17Q」、日本合成化学工業(株))、ケン化度:約100モル%
LM−80:酢酸セルロース(商品名「LM−80」(株)ダイセル製)、アセチル総置換度:約2.1
LL−10:酢酸セルロース(商品名「LL−10」(株)ダイセル製)、アセチル総置換度:約1.7
上記合成例で得られた低置換度酢酸セルロース(WSCA−1.0、置換度1.0)90重量部に対し、ポリビニルアルコール(商品名「ゴーセノールEG−05PW」、日本合成化学工業(株)製)10部、水を900重量部添加し、撹拌装置(商品名「ラボリアクターRE162/P」、IKA社製)を用いて、10rpmで充分撹拌した。低置換度酢酸セルロースの溶解を確認後、撹拌を終了させ、得られた水溶液をガラス基板上に拡げて乾燥させることで、WSCA−1.0/PVA混合材料フィルム(WSCA−1.0/PVA=9/1、厚み:約100μm)を得た。
低置換度酢酸セルロース及びポリビニルアルコールの組成を表6に示す通りにしたこと以外は、実施例25と同様にして、混合材料フィルムを得た。表6中、「部」は重量部を示す。
ポリビニルアルコール(PVA、日本合成化学工業社製ゴーセノールEG−05PW)100部に対して水を900重量部添加し、撹拌装置(商品名「ラボリアクターRE162/P」、IKA社製)を用いて、10rpmで充分撹拌した。溶解を確認後、撹拌を終了させ、得られた水溶液をガラス基板上に拡げて乾燥させることで、PVAフィルム(厚み:約100μm)を得た。
上記合成例で得られた低置換度酢酸セルロース(WSCA−0.7、置換度0.7)100重量部に対し、水を900重量部添加し、撹拌装置(商品名「ラボリアクターRE162/P」、IKA社製)を用いて、10rpmで充分撹拌した。低置換度酢酸セルロースの溶解を確認後、撹拌を終了させ、得られた水溶液をガラス基板上に拡げて乾燥させることで、WSCA−0.7フィルム(厚み:約100μm)を得た。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、商品名「L−HPC」、信越化学工業社(株)製)100重量部に対し、水を900重量部添加し、撹拌装置(商品名「ラボリアクターRE162/P」、IKA社製)を用いて、10rpmで充分撹拌した。溶解を確認後、撹拌を終了させ、得られた水溶液をガラス基板上に拡げて乾燥させることで、HPCフィルム(厚み:約100μm)を得た。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業社製TC−5)100重量部に対し、水を900重量部添加し、撹拌装置(商品名「ラボリアクターRE162/P」、IKA社製)を用いて、10rpmで充分撹拌した。溶解を確認後、撹拌を終了させ、得られた水溶液をガラス基板上に拡げて乾燥させることで、HPMCフィルム(厚み:約100μm)を得た。
実施例26〜37及び比較例37〜40で得られたフィルムについて以下の評価を行った。結果を表6に示す。
実施例26〜37及び比較例37〜40で得られたフィルムの酸素透過度を、MOCON社製「OXTRAN2/20」を用い、40℃、75%RHの条件下で測定した。
また、水蒸気透過度をJIS Z0208に基づき、カップ法を用いて、40℃、75%RHの環境下の条件で測定した。
[外観]
実施例26〜37及び比較例37〜40で得られたフィルムを目視で観察し、上記と同じ基準で評価した。
PVA:ポリビニルアルコール(商品名「ゴーセノールEG−05PW」、日本合成化学工業(株))、ケン化度:約90モル%
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース(商品名「L−HPC」、信越化学工業社(株)製)
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名「TC−5」、信越化学工業社(株)製)
(ペレット調製)
所定量の酢酸セルロースと添加剤をヘンシェルミキサーで混合した後、エクストルーダーに移し、所定の紡糸温度よりも10℃低い温度で溶融し、ストランドとして押し出し、冷却した後長さ3mmに切断し、80℃の熱風乾燥機中で10時間乾燥させペレット状のサンプルを調製した。添加剤として以下のものを用いた。
比較例41:ダイセル社製、商品名「プラクセル405D」(カプロラクトンテトラオール、分子量500)
DSC−Q2000(TAインスツルメント社製)を用いてペレット状サンプルの小片を使いTgを測定した。まず、サンプルを40℃から250℃に10℃/分で昇温し、その後室温付近まで降温させた。その後、1℃/分で昇温し、このときのDSC曲線からTgを求めた。結果を表7に示す。なお、実施例40及び41ではTgが2つ存在するが、高温側は酢酸セルロースのTg、低温側は複合体(酢酸セルロース−添加剤複合体)のTgと考えられる。
特開平10−317228号公報に記載された方法に準じ、前記各ペレットを用いて溶融紡糸した。
キャピラリーレオメーター(株式会社東洋精機製作所製、キャピログラフ1B)のシリンダーにペレット状サンプルを入れ、シリンダーを所定の紡糸温度とし、口径0.3mmのキャピラリーから吐出し、吐出したフィラメントをエジェクターを通すことで線速3450m/分、ドラフト比550で紡糸し、1.9デニール(d)の糸を得た。溶融条件を表7に示す。
(糸強度)
実施例38〜45、比較例41で得られた糸の糸強度を、JIS L 1013に記載される方法に準じて測定した。結果を表7に示す。
実施例38〜45、比較例41で得られた糸の色相を目視観察した。結果を表7に示す。
実施例38〜45、比較例41で得られた糸約2×10-5g(約10cm)を、水100gと混合し、よく振り混ぜた後、糸の水溶性を目視観察した。
装置:大倉電気(株)クーロメータOM3001
活性汚泥:福岡県多々良川浄化センターから入手した活性汚泥。1時間静置して得られる上澄み液を1培養瓶あたり300ml使用(活性汚泥濃度360ppm)。
被検体量:30mg
温度:25℃
クーロメータで培養瓶中の生物化学的酸素要求量(BOD)を測定した(培養開始から10日後、20日後、30日後、60日後)。ブランク測定を行い、BODは被検体の値からブランクの値を差し引いたものとした。被検体の化学組成に基づく完全分解における理論上のBOD値を求め、これに対する実測値のパーセンテージを分解率とした。結果を表7に示す。
また、本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物によれば、水溶性且つ生分解性を有する酢酸セルロース系樹脂成形品を溶融状態で製造することができる。従って、本発明の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物は、たばこフィルター、不織布、各種射出成形品等の材料としても有用である。
* ポリマーBの融点(吸熱ピーク)
Claims (16)
- アセチル総置換度が0.4〜1.6である酢酸セルロース(A1)と、ケン化度が50モル%以上であるポリビニルアルコール(B)とを含む水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- 酢酸セルロース(A1)のアセチル総置換度が、0.6〜0.9である、請求項1に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- ポリビニルアルコール(B)のケン化度が、90モル%以上である、請求項1又は2に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- 酢酸セルロース(A1)100重量部に対するポリビニルアルコール(B)の割合が500重量部以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- アセチル総置換度が0.5〜1.0である酢酸セルロース(A2)を50〜95重量%、及び水溶性有機添加剤(C)(但し、ポリビニルアルコールを除く)を5〜50重量%含む水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- 前記水溶性有機添加剤(C)がポリエチレングリコール又はポリエチレンオキサイドである請求項5記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- 前記水溶性有機添加剤(C)の含有量が10〜50重量%である請求項5又は6記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- 前記水溶性有機添加剤(C)の含有量が20〜50重量%である請求項5〜7の何れか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
- 前記酢酸セルロース(A1)及び(A2)が、下記で定義される組成分布指数(CDI)が2.0以下である酢酸セルロースである請求項1〜8の何れか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物。
CDI=(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅の実測値:酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅
DPw:重量平均重合度(酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値) - 請求項1〜9の何れか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物から形成された水溶性酢酸セルロース複合体成形品。
- フィルム状である、請求項10記載の水溶性酢酸セルロース複合体成形品。
- 繊維状である、請求項10記載の水溶性酢酸セルロース複合体成形品。
- 請求項1〜9の何れか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を含むコーティング層を有する、被覆製剤。
- 請求項1〜9の何れか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を、溶融状態を経由して成形することを特徴とする水溶性酢酸セルロース複合体成形品の製造方法。
- 請求項1〜9の何れか1項に記載の水溶性酢酸セルロース系樹脂組成物を、溶液を経由して成形することを特徴とする水溶性酢酸セルロース複合体成形品の製造方法。
- 前記水溶性酢酸セルロース複合体成形品が、被覆製剤のコーティング層である、請求項15に記載の製造方法。
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