JPWO2016174950A1 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Abstract

V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、及び、Alから選ばれる少なくとも1種以上の金属の化合物を含む金属含有層、及び、ケイ素と窒素とを含むケイ素含有層からなるガスバリア層を有するガスバリア性フィルム上に、一般式(1)、又は、一般式(2)で表される構造の有機化合物を少なくとも1種以上の含有する有機機能層、銀を主成分とする透明電極、発光ユニット、及び、対向電極が形成された有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する。

Description

本発明は、ガスバリアフィルム上に設けられた有機エレクトロルミネッセンス素子に係わる。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下、単にELともいう。)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、及び軽量といった多くの優れた特徴を有する。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として、特に近年では薄型・軽量な樹脂基材にガスバリア層を有するガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子が注目されている。
このような有機EL素子に用いるガスバリア性フィルムとして、例えば、基材上に溶液を塗布して形成された前駆体層に、エネルギーを印加してガスバリア層を形成するガスバリア性フィルムの製造方法も検討されてきている。特に、前駆体としてポリシラザン化合物を用いた検討が広く行われており、塗布による高生産性とバリア性とを両立する技術として検討が進められている。なかでも、波長172nmのエキシマ光を用いてポリシラザン層を改質したガスバリア層が注目されている。(例えば、特許文献1参照)。
特開2014−94572号公報
しかしながら、上述のガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子は、40℃程度までの低温における保存性は良好であるものの、80℃85%RHといった高温高湿の非常に過酷な環境下では保存性が低下してしまう。このため、上述のガスバリア性フィルムを用いた場合には、有機EL素子の信頼性を確保することができない。
上述した問題の解決のため、本発明においては、信頼性に優れるガスバリア性フィルムを用いた信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供するものである。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、樹脂基材上にガスバリア層が形成されたガスバリア性フィルムと、ガスバリア性フィルムと上に設けられた透明電極、発光ユニット、及び、対向電極とを備える。そして、ガスバリア層が、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、及び、Alから選ばれる少なくとも1種以上の金属の化合物を含む金属含有層と、ケイ素と窒素とを含むケイ素含有層とを有する。また、透明電極が、銀を主成分とし、ガスバリア層と透明電極との間に、下記一般式(1)、又は、下記一般式(2)で表される構造の有機化合物を少なくとも1種以上の含有する有機機能層を有する。
Figure 2016174950
式中、E101〜E108は、各々C(R12)又は窒素原子を表し、E101〜E108のうち少なくとも一つは窒素原子である。また、R11及びR12は、各々水素原子又は置換基を表す。
Figure 2016174950
式中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。L21は、窒素原子と結合している芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
本発明によれば、信頼性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
有機EL素子の概略構成を示す図である。
〈有機エレクトロルミネッセンス素子〉
以下、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の具体的な実施の形態について説明する。図1に有機EL素子の概略構成図(断面図)を示す。
[有機EL素子の構成]
図1に示す有機EL素子10は、ガスバリア性フィルム20と、このガスバリア性フィルム20上に、有機機能層11、透明電極12、発光ユニット13、及び、対向電極15がこの順に積層されている。
透明電極12は、銀を主成分として構成されている。そして、透明電極12と、ガスバリア性フィルム20のガスバリア層22との間に、後述する有機化合物を含む有機機能層11が設けられている。また、透明電極12の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極12に接して補助電極18が設けられていてもよい。
また、有機EL素子10は、ガスバリア性フィルム20と透明電極12の間に、下記一般式(1)、又は、下記一般式(2)で表される構造の有機化合物(第1有機化合物)を少なくとも1種以上含有する有機機能層11を有する。有機機能層11は、図1に示すように、透明電極12の下層の全面に形成されていることが好ましい。また、有機機能層11は、透明電極12が形成されていない領域には形成されていなくてもよい。
発光ユニット13の層構造が限定されることはなく、一般的な層構造であってよい。ここでは、透明電極12がアノード(すなわち陽極)として機能し、対向電極15がカソード(すなわち陰極)として機能する例について説明する。この場合、例えば、発光ユニット13は、アノードである透明電極12側から順に正孔注入層13a/正孔輸送層13b/発光層13c/電子輸送層13d/電子注入層13eを積層した構成が例示される。なお、透明電極12がカソード(すなわち陰極)として機能し、対向電極15がアノード(すなわち陽極)として機能する場合には、発光ユニット13の積層順が上記の逆となる。
上記構成の発光ユニット13は、少なくとも有機材料を用いて構成された発光層13cを有することが必須である。正孔注入層13a及び正孔輸送層13bは、正孔輸送注入層として設けられてもよい。電子輸送層13d及び電子注入層13eは、電子輸送注入層として設けられてもよい。また、これらの発光ユニット13のうち、例えば、電子注入層13eは無機材料で構成されている場合もある。
また、発光ユニット13は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていてもよい。さらに、発光層13cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させた構造としてもよい。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能してもよい。さらに、カソードである対向電極15も、必要に応じた積層構造であってもよい。このような構成において、透明電極12と対向電極15とで発光ユニット13が挟持された部分のみが、有機EL素子10における発光領域となる。
ガスバリア性フィルム20は、樹脂基材21と、この樹脂基材21上に設けられたガスバリア層22とからなる。ガスバリア層22は、樹脂基材21に設けられたケイ素含有層23と、ケイ素含有層23上に設けられたた金属含有層24とを有する。
ケイ素含有層23は、ケイ素と窒素とを含むケイ素化合物により形成される。金属含有層24は、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、及び、Alから選ばれる少なくとも1種以上の金属Mを含む金属化合物を含んで形成される。
また、ガスバリア層22のケイ素含有層23と金属含有層24との界面には、層厚方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、ケイ素原子組成比を100としたとき、窒素原子組成比が0を超え60以下、且つ、金属原子組成比が20以上300以下となる領域Aが存在することが好ましい。そして、この領域Aを介してケイ素含有層23と金属含有層24とが接触していることが好ましい。
さらに、上記領域Aは、ケイ素原子組成比を100としたとき、酸素原子組成比が40以上300以下である領域を有することが好ましい。
有機EL素子10は、発生させた光(発光光h)を、少なくともガスバリア性フィルム20側から取り出すように構成されている。このような構成の有機EL素子10は、有機材料等を用いて構成された発光ユニット13の劣化を防止することを目的として、ガスバリア性フィルム20上において後述する封止部材17で封止されている。この封止部材17は、接着層19を介してガスバリア性フィルム20側に固定されている。ただし、透明電極12及び対向電極15の端子部分は、ガスバリア性フィルム20上において封止部材17から露出させた状態で設けられている。このため、この端子部分においては、封止部材17が透明電極12、又は、対向電極15を介してガスバリア性フィルム20側に接続されている。
なお、透明とは、測定光波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。また、主成分とは、構成する成分のうち構成比率が最も高い成分をいう。
以下、上述した有機EL素子10を構成するための主要各層の詳細とその製造方法について説明する。
[ガスバリア性フィルム]
ガスバリア性フィルム20は、樹脂基材21と、この樹脂基材21上に設けられたガスバリア層22とからなる。ガスバリア層22は、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、及び、Alから選ばれる少なくとも1種以上の金属Mの化合物を含む金属含有層24と、ケイ素と窒素とを含むケイ素含有層23とを有する。
ガスバリア性フィルム20において、金属含有層24及びケイ素含有層23は、樹脂基材21側から金属含有層24、ケイ素含有層23の順であっても、ケイ素含有層23、金属含有層24の順であってもよい。また、樹脂基材21の一方の面に金属含有層24、ケイ素含有層23が形成される形態だけではなく、基材の両面に金属含有層24及びケイ素含有層23が形成されていてもよい。さらに、樹脂基材21と各層との間、又は、各層上には他の層が配置されていてもよい。
(原子組成プロファイル)
ガスバリア層22は、厚さ方向のXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、金属含有層24とケイ素含有層23との界面付近に、組成SiMが下記式(1)及び式(2)を満足する領域Aを有する。このような構成のガスバリア層22を有するガスバリア性フィルム20は、高温高湿環境での耐久性に優れる。
Figure 2016174950
また、ガスバリア層22は、ケイ素含有層23がポリシラザンを含む塗布液から形成され、且つ、領域Aは上記yが下記式(3)を満足することが好ましい。
Figure 2016174950
領域Aは、式(1)及び式(2)を同時に満足することが必要である。つまり、領域Aは、ケイ素原子と金属原子とが同時に存在する領域であって、金属原子/ケイ素原子の比率が0.2以上3.0以下であることにより、ガスバリア性フィルム20が高いガスバリア性を発現する。特に、金属原子/ケイ素原子の比率が0.5以上2.0以下であることが好ましい。
また、高いガスバリア性が得られるという観点から、領域Aの中にケイ素原子組成比を100としたとき、酸素原子組成比が40以上300以下である領域を有することが好ましい。特に、酸素原子組成比が100以上200以下であることが好ましい。
また、ケイ素含有層23の形成に用いるケイ素含有化合物として、ポリシラザンを含む態様の場合に、特に著しく高いガスバリア性が得られる。この態様においては、ケイ素原子と金属原子と窒素原子とが同時に存在する領域が形成され、金属原子/ケイ素原子の比率が0.2以上3.0以下であり、かつ、窒素原子/ケイ素原子の比率が0.05以上0.6以下であると著しく高いガスバリア性を発現する。
窒素原子/ケイ素原子の比率が0.05未満の場合は、ケイ素含有層23に含有されるポリシラザンの含有比率が低い、又は、ポリシラザンが変性してケイ素−窒素結合が減少するため、ガスバリア性が低下すると考えられる。また、窒素原子/ケイ素原子の比率が0.6を超える場合は、窒素原子が増加した分、相対的にケイ素原子と金属原子とが減少し、ケイ素−金属の結合も減少するため、同様にガスバリア性が低下すると考えられる。
ポリシラザンのケイ素−窒素結合(Si−N結合)は、気相成膜法等の方法で形成される金属原子と接した場合や、金属原子と接した状態で真空紫外線等のエネルギーを印加することで、ケイ素−金属の結合へと変化し易いものと考えられる。このため、他のケイ素−窒素結合を有さないケイ素含有化合物を用いた場合よりも、著しく高いガスバリア性が得られると考えられる。
なお、領域Aの厚さは、下記に示すXPS組成分析において、SiO換算で2.5nm毎の深さ方向のデプスプロファイルを得ているため、2.5nmの整数倍の厚さとなる。また、領域Aが複数種の金属Mを有する場合は、各金属の含有量の重み付けをした総和からxを算出する。
このような領域Aの組成や厚さの制御は、金属含有層24(又はケイ素含有層23)を形成した後、ケイ素含有層23(又は金属含有層24)を形成するまでの間に、比較的低い温度及び湿度の条件でフィルムを保管する、又は、乾燥窒素雰囲気下で保管する等の方法により行うことができる。
さらに、より高いガスバリア性が得られるという観点から、領域Aの原子組成をSiMで示した際に、下記式(4)で表される領域Bを領域Aの中に有することが好ましい。
Figure 2016174950
上記式(4)は、SiとMとを合計した結合手数に対して、OとNとを合計した結合手数が少ないことを意味する。推定ではあるが、上記式(4)の(4+ax)−(3y+2z)が0を超える場合には、SiとMとの直接の結合が形成されていると考えられる。そして、(4+ax)−(3y+2z)の値が大きくなるほどSiとMとの直接結合の割合が多くなり、領域Aの組成の密度が増加し、ガスバリア性がさらに向上すると考えられる。このため、領域B中の(4+ax)−(3y+2z)は、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上、特に好ましくは3以上である。なお、領域Bが複数種の金属Mを有する場合は、各金属の含有量の重み付けをした総和からxを算出する。
(4+ax)−(3y+2z)の値の制御は、例えば、金属Mを含有する層の形成をスパッタで行う場合を例に挙げると、ターゲットとして金属、又は、化学量論的に酸素が欠損した金属酸化物を用い、スパッタの際に導入する酸素の量を適宜調整することで行うことができる。
領域Bが形成される位置は特に制限されないが、領域Aと金属含有層24との界面近傍、又は、領域Aとケイ素含有層23との界面近傍であることが好ましい。これらの界面近傍に領域Bが形成されていれば、金属含有層24とケイ素含有層23との界面において、Siと金属Mとの共酸化窒化物層が形成されていることを意味し、このSiとMとの共酸化窒化物層が、高い湿熱耐性を発現すると考えられる。
領域A及び領域Bの組成は、以下の方法により測定することができる。
XPS組成分析により、金属含有層24とケイ素含有層23との界面近傍について、厚さ方向の組成分布プロファイルを測定し、組成をSiMで示す。この際、xとyとの関係から、領域Aを有するかどうか判定する。また、領域Aを有する場合には、(4+ax)−(3y+2z)の値を求めて、さらに領域Bを有するかどうか判定する。
(XPS組成分析条件)
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算で2.5nm相当のスパッタ後、測定を繰り返し、SiO換算深さ方向2.5nmごとのデプスプロファイルを得る
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量する。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いる。
上記構成のガスバリア層22によって高温高湿環境での耐久性効果が発現する理由は不明であるが、下記のようなメカニズムが考えられる。なお、下記のメカニズムは推測によるものであり、下記メカニズムに何ら拘泥されるものではない。
ガスバリア層22は、ケイ素原子と金属原子とが同時に存在し、ケイ素原子と金属原子とが直接結合した高密度の領域Aを形成することで、ガスバリア性を発現していると推定される。金属原子/ケイ素原子の比率が0.2未満であっても、また、3.0を超えても、ケイ素原子と金属原子との結合が減少するため、バリア性が低下すると考えられる。
ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布及び乾燥することを有して得られるケイ素含有層23は、特定の組成を有することでガスバリア性を発現する。また、気相成膜法で形成される場合とは異なり、ケイ素含有層23は、成膜時にパーティクル等の異物混入がほとんどなくなり、欠陥が非常に少ないガスバリア層を形成することが可能となる。
ケイ素と窒素とを含むケイ素含有層23は、特定の組成を有することでガスバリア性を発現する。しかし、このケイ素含有層23は、酸化に対して完全に安定ではなく、高温高湿環境では徐々に酸化されてガスバリア性が低下することがある。
これに対し、ガスバリア性フィルム20は、ケイ素含有層23と共に金属含有層24を有し、このケイ素含有層23と金属含有層24との界面付近に、上記領域Aを有する。金属含有層24は、ケイ素含有層23よりも酸化されやすいため、金属含有層24が先に酸化されることにより、ケイ素含有層23の酸化が抑制され、高温高湿環境での耐久性に優れると考えられる。さらに、領域Aを有することにより、高温高湿環境下での耐久性がさらに向上すると考えられる。
[樹脂基材]
樹脂基材21としては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂を含む基材が挙げられる。樹脂基材21は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
樹脂基材21は耐熱性を有する材料からなることが好ましい。具体的には、線膨張係数が15ppm/K以上100ppm/K以下で、かつガラス転移温度(Tg)が100℃以上300℃以下の材料が使用される。樹脂基材21のTgや線膨張係数は、添加剤などによって調整することができる。
ガスバリア性フィルム20を用いて有機EL素子10を作製する場合に、ガスバリア性フィルム20が150℃以上の工程に曝されることがある。この場合、ガスバリア性フィルム20における基材の線膨張係数が100ppm/Kを超えると、上述の熱工程で基板寸法が安定せず、熱膨張及び収縮に伴い、遮断性性能が劣化する。或いは、熱工程に耐えられないという不具合が生じやすい。樹脂基材21の線膨張係数が15ppm/K未満では、ガスバリア性フィルム20ガラスのように割れてしまいフレキシビリティが劣化する場合がある。
樹脂基材21として用いることができる熱可塑性樹脂のより好ましい具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET:70℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN:120℃)、ポリカーボネート(PC:140℃)、脂環式ポリオレフィン(例えば日本ゼオン株式会社製、ゼオノア(登録商標)1600:160℃)、ポリアリレート(PAr:210℃)、ポリエーテルスルホン(PES:220℃)、ポリスルホン(PSF:190℃)、シクロオレフィンコポリマー(COC:特開2001−150584号公報に記載の化合物:162℃)、ポリイミド(例えば三菱ガス化学株式会社製、ネオプリム(登録商標):260℃)、フルオレン環変性ポリカーボネート(BCF−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:225℃)、脂環変性ポリカーボネート(IP−PC:特開2000−227603号公報に記載の化合物:205℃)、アクリロイル化合物(特開2002−80616号公報に記載の化合物:300℃以上)等が挙げられる(括弧内はTgを示す)。
有機EL素子10の発光光をガスバリア性フィルム20側から取り出す構成(ボトムエミッション)の場合には、透明な樹脂基材21を用いる。即ち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上の樹脂基材21を用いる。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された、積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率及び散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出する方法を適用する。
ただし、有機EL素子10の発光光をガスバリア性フィルム20と逆側から取り出す構成(トップエミッション)の場合には、必ずしも透明性が要求されない。このような場合は、樹脂基材21として不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
また、樹脂基材21は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。樹脂基材21は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。これらの基材の製造方法については、国際公開第2013/002026号の段落「0051」〜「0055」の記載された構成を適用することができる。
樹脂基材21の表面には、密着性向上のための公知の種々の処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、又は、プラズマ処理等を行っていてもよく、必要に応じて上記処理を組み合わせて行っていてもよい。
樹脂基材21は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。樹脂基材21が2層以上の積層構造である場合、各樹脂基材21は同じ種類であってもよいし異なる種類であってもよい。樹脂基材21の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、10〜200μmであることが好ましく、20〜150μmであることがより好ましい。
[ケイ素含有層]
ケイ素含有層23は、ケイ素と窒素とを含むケイ素含有化合物を用いて形成される。このケイ素含有層23は、ケイ素含有化合物を含有する塗布液(ケイ素含有塗布液)を塗布及び乾燥することで得られる。ケイ素含有層23は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。
ケイ素含有化合物としては、例えば、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリシラザン、ポリシロキサザン、ポリシラン、ポリカルボシラン等を挙げることができる。これらの中でも、ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、及び、ケイ素−ケイ素結合からなる群より選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。
ケイ素含有化合物としてより好ましくは、ケイ素−窒素結合とケイ素−水素結合とを有するポリシラザン、ケイ素−窒素結合を有するポリシロキサザン、ケイ素−水素結合を有するポリシロキサン、ケイ素−水素結合を有するポリシルセスキオキサン、ケイ素−ケイ素結合を有するポリシランを用いることができる。ケイ素−窒素結合、ケイ素−水素結合、及び、ケイ素−ケイ素結合のいずれかを有するケイ素含有化合物を用いてケイ素含有層23を形成すると、上述の領域Bを形成し易くなる。
ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、及び、ポリシロキサザンの具体例としては、特開2012−116101号公報の段落「0093」〜「0121」に記載の化合物が挙げられる。ポリシロキサンとしては、特に水素化(ハイドロジェン)ポリシロキサンが好ましい。
ポリシランの形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であってもよく、また、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシランが非環状ポリシランである場合は、ポリシランの末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
ポリシランの具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー、ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマー、等が挙げられる。
ポリカルボシランは、分子内の主鎖に(−Si−C−)結合を有する高分子化合物である。ポリカルボシランとしては、下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
Figure 2016174950
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は、1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rは、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
式(d)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシランの重量平均分子量は、通常400〜12000である。
Rw、Rvの1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(13,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(13,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(13,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。アリーレン基としては、p−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。Rのアルキレン基、アリーレン基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
Rの2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基、2,5−フランジイル基等のフランジイル基、2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基、2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基、2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基、2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基、2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基、1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基、5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基、4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基、4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基、2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基、3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基、3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基、2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。Rの2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
これらの中でも、式(d)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rがアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むポリカルボシランがより好ましい。さらに、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むポリカルボシランが好ましい。
ケイ素含有層23の形成材料として、ポリシラザンがより好ましい。
ポリシラザンとは、ケイ素−窒素結合を有するポリマーであり、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO、Si、及び両方の中間固溶体SiO等のセラミック前駆体無機ポリマーである。具体的には、ポリシラザンは、好ましくは下記一般式(I)に示す構造を有する。
Figure 2016174950
上記一般式(I)において、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R、R及びRは、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。また、上記一般式(I)において、nは、整数であり、上記一般式(I)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。
上記一般式(I)で表される構造を有する化合物において、好ましい態様の一つは、R、R及びRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンである。
また、ポリシラザンとしては、好ましくは下記一般式(II)で表される構造を有する。
Figure 2016174950
上記一般式(II)において、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’及びR6’は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’及びR6’は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。また、上記一般式(II)において、n’及びpは、整数であり、一般式(II)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n’及びpは、同じであっても、異なっていてもよい。
上記一般式(II)のポリシラザンのうち、R1’、R3’及びR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’及びR5’が各々メチル基を表す化合物、R1’、R3’及びR6’が各々水素原子を表し、R2’、R4’が各々メチル基を表し、R5’がビニル基を表す化合物、又は、R1’、R3’、R4’及びR6’が各々水素原子を表し、R2’及びR5’が各々メチル基を表す化合物が好ましい。
又は、ポリシラザンとしては、好ましくは、下記一般式(III)で表される構造を有する。
Figure 2016174950
上記一般式(III)において、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”及びR9”は、それぞれ独立して、水素原子、置換又は非置換の、アルキル基、アリール基、ビニル基又は(トリアルコキシシリル)アルキル基である。この際、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R6”、R7”、R8”及びR9”は、それぞれ、同じであっても、異なっていてもよい。
また、上記一般式(III)において、n”、p”及びqは、整数であり、一般式(III)で表される構造を有するポリシラザンが150〜150000g/モルの数平均分子量を有するように定められることが好ましい。なお、n”、p及びqは、同じであっても、異なっていてもよい。
上記一般式(III)のポリシラザンのうち、R1”、R3”及びR6”が各々水素原子を表し、R2”、R4”、R5”及びR8”が各々メチル基を表し、R9”が(トリエトキシシリル)プロピル基を表し、R7”がアルキル基又は水素原子を表す化合物が好ましい。
一方、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができる。このため、ケイ素含有層23の膜厚(平均)を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。このため、用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンとを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造とが存在する構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体又は固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。
ポリシラザンは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままケイ素含有層23を形成するためのケイ素含有塗布液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120、NN120−20、NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL120−20、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。これらポリシラザン溶液は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることもできる。
ケイ素含有層23の形成に用いるポリシラザンの別の例として、以下のポリシラザンを挙げることができる。例えば、上記ポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等の、低温でセラミック化するポリシラザンが挙げられる。
ケイ素含有層23の形成にポリシラザンを用いる場合、真空紫外線照射前のケイ素含有層23中におけるポリシラザンの含有率は、ケイ素含有層23の全質量を100質量%としたとき、100質量%とすることができる。また、真空紫外線照射前のケイ素含有層23がポリシラザン以外のものを含む場合には、層中におけるポリシラザンの含有率は、10質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、特に好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
(ケイ素含有塗布液)
ケイ素含有層23を形成するための塗布液(ケイ素含有塗布液)を調製する溶剤としては、ケイ素含有化合物を溶解できるものであれば特に制限されない。溶剤としては、ケイ素含有化合物と容易に反応してしまう水及び反応性基(例えば、ヒドロキシル基、又は、アミン基等)を含まず、ケイ素含有化合物に対して不活性の有機溶剤が好ましく、非プロトン性の有機溶剤がより好ましい。具体的には、溶剤としては、非プロトン性溶剤、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターペン等の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類、例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、モノ−及びポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(ジグライム類)等を挙げることができる。上記溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度等の目的にあわせて選択され、単独で使用されても又は2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
ケイ素含有塗布液におけるケイ素含有化合物の濃度は、特に制限されない。ケイ素含有塗布液におけるケイ素含有化合物の濃度は、層の厚さや塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
ケイ素含有層23の改質を行う場合には、ケイ素含有塗布液に改質を促進するための触媒が含有されていることが好ましい。改質を促進するための触媒としては、塩基性触媒が好ましく、特に、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−13−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等のアミン触媒、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒、N−複素環式化合物が挙げられる。これらのうち、アミン触媒を用いることが好ましい。この際添加する触媒の濃度としては、ケイ素化合物を基準としたとき、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%の範囲である。触媒添加量をこの範囲とすることで、反応の急激な進行による過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大などを避けることができる。
ケイ素含有塗布液には、必要に応じて下記に挙げる添加剤を用いることができる。例えば、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセトブチレート等、天然樹脂、例えば、ゴム、ロジン樹脂等、合成樹脂、例えば、重合樹脂等、縮合樹脂、例えば、アミノプラスト、特に尿素樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂もしくは変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート又はブロック化ポリイソシアネート、ポリシロキサン等である。
(塗布方法)
ケイ素含有塗布液を塗布する方法としては、従来公知の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、ダイコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、好ましい厚さや目的に応じて適切に設定される。
塗布液を塗布した後は、塗膜を乾燥させる。塗膜を乾燥することによって、塗膜中に含有される有機溶媒を除去する。この際、塗膜に含有される有機溶媒は、すべてを乾燥させてもよいが、一部残存させていてもよい。一部の有機溶媒を残存させる場合であっても、好適なケイ素含有層23が得られる。なお、残存する溶媒は後に除去される。
塗膜の乾燥温度は、適用する基材によっても異なるが、50〜200℃であることが好ましい。例えば、ガラス転移温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレートフィルムを樹脂基材21として用いる場合には、乾燥温度は、熱による樹脂基材21の変形等を考慮して150℃以下に設定することが好ましい。上記温度は、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することによって設定される。乾燥時間は短時間に設定することが好ましく、例えば、乾燥温度が150℃である場合には30分以内に設定することが好ましい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下、酸素濃度をコントロールした減圧雰囲気下等のいずれの条件であってもよい。
ケイ素含有塗布液を塗布して得られた塗膜は、真空紫外線の照射前又は真空紫外線の照射中に水分を除去する工程を含んでいてもよい。水分を除去する方法としては、低湿度環境に、塗膜を保持して除湿する形態が好ましい。低湿度環境における湿度は温度により変化するため、温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−5℃以下(温度25℃/湿度10%)である。塗膜を保持維持する時間は適宜設定することが好ましい。具体的には、露点温度は−5℃以下で、維持される時間は1分以上であることが好ましい。なお、露点温度の下限は特に制限されないが、通常、−50℃以上であり、−40℃以上であることが好ましい。改質処理前、又は、改質処理中に水分を除去することによって、シラノールに転化したケイ素含有層23の脱水反応を促進する観点から好ましい形態である。
(真空紫外線照射)
上記のようにして形成されたケイ素含有化合物を含む塗膜は、そのままの状態でケイ素含有層23とすることができるが、得られた塗膜に対して真空紫外線を照射し、酸窒化ケイ素等への転化反応を行うことによりケイ素含有層23を形成することが好ましい。樹脂基材21側から順に、ケイ素含有層23と金属含有層24とを有する構成のガスバリア層22では、真空紫外線照射を行うことにより、ケイ素含有層23の形成から金属含有層24の形成までの間で、環境影響によるガスバリア性の劣化が発生しにくい。樹脂基材21側から順に、金属含有層24とケイ素含有層23とを有する構成のガスバリア層22では、真空紫外線照射を行うことにより、ガスバリア性が向上するため、真空紫外線照射を行うことが好ましい。
真空紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する樹脂基材21の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス株式会社製の紫外線焼成炉を使用することができる。また、対象が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基材やケイ素含有層23の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
真空紫外線照射による改質は、ケイ素含有化合物(特にポリシラザン化合物)内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用いる。好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用いる。この真空紫外線照射により、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用で、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させる。これにより、比較的低温(約200℃以下)で、酸窒化ケイ素を含む膜の形成を行うことができる。なお、下記のエキシマ照射処理を行う際は、エキシマ照射処理に熱処理を併用することが好ましい。
真空紫外線源は、100〜180nmの波長の光を発生させるものであればよい。好適には、約172nmに最大放射を有するエキシマラジエータ(例えば、Xeエキシマランプ)、約185nmに輝線を有する低圧水銀蒸気ランプ、230nm以下の波長成分を有する中圧及び高圧水銀蒸気ランプ、及び、約222nmに最大放射を有するエキシマランプである。
このうち、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから、発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、波長の短い172nmの光のエネルギーは、有機物の結合を解離させる能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間で塗膜の改質を実現できる。
エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域の短い波長でエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられる。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料に適している。
真空紫外線照射による反応では酸素が必要となるが、真空紫外線は酸素による吸収があるため、紫外線照射工程の効率が酸素によって低下しやすい。このため、真空紫外線の照射は、可能な限り酸素濃度及び水蒸気濃度が低い状態で行うことが好ましい。即ち、真空紫外線照射の際の酸素濃度は、10〜20000体積ppm(0.001〜2体積%)とすることが好ましく、50〜10000体積ppm(0.005〜1体積%)とすることがより好ましい。また、真空紫外線照射の際の水蒸気濃度は、好ましくは1000〜4000体積ppmの範囲である。
真空紫外線照射に用いる照射雰囲気を満たすガスは、乾燥不活性ガスであることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスであることが好ましい。酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス及び不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整できる。
真空紫外線照射工程において、塗膜が受ける塗膜面での該真空紫外線の照度は1mW/cm〜10W/cmであると好ましく、30mW/cm〜200mW/cmであることがより好ましく、50mW/cm〜160mW/cmであるとさらに好ましい。1mW/cm以上であれば、改質効率が向上する。10W/cm以下であれば、塗膜に生じ得るアブレーションや、樹脂基材21へのダメージを低減することができる。
樹脂基材21側から順にケイ素含有層23と金属含有層24とを形成する場合、塗膜の表面における真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、0.1〜10J/cmであることが好ましく、0.1〜7J/cmであることがより好ましく、0.1〜3J/cmであることがさらに好ましい。樹脂基材21側から順に金属含有層24とケイ素含有層23とを形成する場合、塗膜の表面への真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)は、1〜10J/cmであることが好ましく、3〜7J/cmであることがより好ましい。この範囲であれば、過剰改質によるクラックの発生や、樹脂基材21の熱変形を抑制することができ、また生産性が向上する。
塗膜の表面への照射に用いられる真空紫外線は、CO、CO及びCHの少なくとも一種を含むガスによって形成されるプラズマから発生させてもよい。さらに、CO、CO及びCHの少なくとも一種を含むガス(以下、炭素含有ガスとも称する)は、炭素含有ガスを単独で使用してもよいが、希ガス又はHを主ガスとして、炭素含有ガスを少量添加することが好ましい。プラズマの生成方式としては容量結合プラズマなどが挙げられる。
[金属含有層]
ガスバリア性フィルム20は、ケイ素含有層23とともに、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、及び、Alから選ばれる少なくとも1種以上の金属Mの化合物を含む金属含有層24を有する。上記金属Mを含有する金属含有層24は、電気化学的にケイ素含有層23よりも酸化されやすく、ケイ素含有層23の酸化を抑制する。金属含有層24は、上記金属Mを含む金属化合物を用いて、気相成膜法により形成されることが好ましい。
主要な金属の標準酸化還元電位を下記表に示す。
Figure 2016174950
金属Mを含む金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、金属Mの酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、又は、酸炭化物が挙げられる。特に、ケイ素含有層23の酸化をより効果的に抑制するという観点からは、金属Mの酸化物であることが好ましい。金属化合物は1種単独であっても2種以上併用してもよい。
また、金属化合物に含まれる金属Mは、ケイ素よりも酸化還元電位が低い金属であることが好ましい。ケイ素よりも酸化還元電位の低い金属の化合物を含む層とすることで、より良好なバリア性が得られる。ケイ素よりも酸化還元電位が低い金属の具体例としては、例えば、V、Nb、Ta、Zr、Ti、Hf、及び、Yが挙げられる。これら金属は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、特に第5族元素であるV、Nb、Taがケイ素含有層23の酸化を抑制する効果が高い。このため、金属含有層24は、金属MとしてV、Nb、及び、Taから選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含むことが好ましい。さらに、金属含有層24は、光学特性の観点から、金属Mとして透明性が良好な化合物が得られるNbを含むことが好ましい。
金属含有層24中における金属化合物の含有量は、金属含有層24の全質量に対して50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、98質量%以上であることが特に好ましく、100質量%である(すなわち、金属含有層24は金属化合物からなる)ことが最も好ましい。
(金属含有層の形成)
金属含有層24の形成には、金属元素と酸素との組成比の調整しやすさの観点から、気相成膜法を用いることが好ましい。気相成膜法としては、特に制限されず、例えば、スパッタ法、蒸着法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法(PVD)法、プラズマCVD(chemical vapor deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等の化学気相成長法が挙げられる。中でも、下層へのダメージを与えることなく成膜が可能となり、高い生産性を有することから、スパッタ法を用いることが好ましい。
スパッタ法による成膜は、2極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、中間的な周波数領域を用いたデュアルマグネトロン(DMS)スパッタリング、イオンビームスパッタリング、ECRスパッタリング等を、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ターゲットの印加方式はターゲット種に応じて適宜選択され、DC(直流)スパッタリング、及びRF(高周波)スパッタリングのいずれを用いてもよい。金属モードと、酸化物モードの中間である遷移モードを利用した反応性スパッタ法も用いることもできる。反応性スパッタ法は、遷移領域となるようにスパッタ現象を制御することにより、高い成膜スピードで金属酸化物を成膜することが可能となるため好ましい。DCスパッタリングやDMSスパッタリングを行なう際には、そのターゲットに金属を用い、さらに、プロセスガス中に酸素を導入することで、金属酸化物の薄膜を形成することができる。また、RF(高周波)スパッタリングで成膜する場合は、金属の酸化物のターゲットを用いることができる。プロセスガスに用いられる不活性ガスとしては、He、Ne、Ar、Kr、Xe等を用いることができ、Arを用いることが好ましい。さらに、プロセスガス中に酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素を導入することで、金属の酸化物、窒化物、窒酸化物、炭酸化物等の金属化合物の薄膜を作製することができる。スパッタ法における成膜条件としては、印加電力、放電電流、放電電圧、時間等が挙げられるが、これらは、スパッタ装置や、膜の材料、膜厚等に応じて適宜選択することができる。好ましくは、特に、成膜レートがより高く、より高い生産性を有することから、金属の酸化物をターゲットとするスパッタ法を用いる。
金属含有層24は、単層でもよいし2層以上の積層構造であってもよい。金属含有層24が2層以上の積層構造である場合、金属含有層24に含まれる金属化合物は同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
金属含有層24は、ケイ素含有層23の酸化を抑制しガスバリア性を維持する機能を有する層であると考えられるため、必ずしもガスバリア性は必要ではない。従って、金属含有層24は比較的薄い層でも効果を発揮し得る。具体的には、樹脂基材21/ケイ素含有層23/金属含有層24の層構成の場合、金属含有層24の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、バリア性の面内均一性の観点から、1〜200nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましく、3〜50nmであることがさらに好ましい。特に50nm以下であれば、金属含有層24の成膜の生産性がより向上する。また、樹脂基材21/金属含有層24/ケイ素含有層23の層構成の場合には、金属含有層24の厚さ(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、バリア性の面内均一性の観点から、1〜200nmであることが好ましく、2〜150nmであることがより好ましく、10〜150nmであることがさらに好ましい。
[ガスバリア性フィルムの形成方法]
ガスバリア性フィルム20が、樹脂基材21/ケイ素含有層23/金属含有層24の構成である場合、ケイ素含有層23を形成し、次に、金属含有層24を形成することが好ましい。領域Aを形成する場合には、ケイ素含有層23の真空紫外線照射による改質は行ってもよく、行わなくてもよい。領域Aが形成されれば、ケイ素含有層23の真空紫外線照射を行なわなくても良好なガスバリア性が得られる。このため、上記真空紫外線照射を行なわないことにより、高速成膜が可能となり、高い生産性が得られる。一方、領域Aをより効率的に形成するという観点からは、3J/cm未満の照射エネルギー量でケイ素含有層23の真空紫外線照射による改質を行なうことが好ましく、1J/cm未満とすることがより好ましい。さらに、照射エネルギー量が0J/cm、即ち真空紫外線照射による改質を行わない態様も好ましく選択することができる。
ケイ素含有層23を形成する際、真空紫外線照射を行わない場合には、ケイ素含有化合物を含有する塗布液を塗布及び乾燥して得られる塗膜を、5〜40℃で、相対湿度0〜60%RHの条件下で1〜1000時間で保管してケイ素含有層23を形成する。その後、金属含有層24を形成することが好ましい。
上記環境下に保管することにより、ケイ素含有層23の塗布乾燥後から金属含有層24を形成するまでの間に、ケイ素含有層23の表面組成に発生する望ましくない変化を抑制することができるため、高温高湿条件下でのガスバリア性能が向上する。望ましくない変化とは、例えば、ケイ素含有化合物としてポリシラザンを用いた場合では、大気中の水分とポリシラザンとの反応による、ケイ素含有層23の表面の窒素含有量の低下、及び、酸素含有量の増加等である。
樹脂基材21/ケイ素含有層23/金属含有層24の構成である場合、ケイ素含有層23の1層あたりの膜厚(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、ガスバリア性能の観点から、10〜1000nmであることが好ましく、50〜600nmであることがより好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。この範囲であれば、ガスバリア性と耐久性とのバランスが良好となり好ましい。
ガスバリア性フィルム20が、樹脂基材21/金属含有層24/ケイ素含有層23の構成である場合、金属含有層24を形成後、ケイ素含有化合物を含む塗布液を塗布及び乾燥して塗膜を形成し、この塗膜を真空紫外線処理によって改質する。
金属含有層24によるケイ素含有層23の酸化抑制効果は、ケイ素含有層23が改質されているほうが高い。このため、樹脂基材21/金属含有層24/ケイ素含有層23の構成である場合、ケイ素含有層23は、金属含有層24に近接する下面側まで改質されていることが好ましい。
従って、上面側から172nmの真空紫外線を照射してケイ素含有層23を改質する場合、ケイ素含有層23の下面まで172nm光を到達させるために、ケイ素含有層23の厚さは、比較的薄いことが好ましい。具体的には、ケイ素含有層23の1層あたりの膜厚(2層以上の積層構造である場合はその総厚)は、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましく、150nm以下であることがさら好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。一方、ケイ素含有層23は、薄すぎるとガスバリア性が劣化する。このため、ケイ素含有層23のガスバリア性を考慮すると、厚さは5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、40nm以上であることが特に好ましい。
樹脂基材21/金属含有層24/ケイ素含有層23の構成である場合、領域Aの形成は、次のように行なうことができる。例えば、金属含有層24を形成した後、形成した金属含有層24を形成した5〜40℃、相対湿度0〜60%RHの条件下で1〜1000時間保管する。この後、金属含有層24上にケイ素含有層23を形成することにより、領域Aを有するガスバリア層22を作製できる。
(種々の機能を有する層)
ガスバリア性フィルム20には、上記構成の他、種々の機能を有する層を設けることができる。
(アンカーコート層)
金属含有層24及びケイ素含有層23を形成する側の樹脂基材21の表面には、樹脂基材21と金属含有層24又はケイ素含有層23との密着性の向上を目的として、アンカーコート層を形成してもよい。アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
アンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、及びアルキルチタネート等を単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により支持体上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコーティングすることができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5.0g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
また、アンカーコート層は、物理蒸着法又は化学蒸着法といった気相法により形成することもできる。例えば、特開2008−142941号公報に記載のように、接着層19性等を改善する目的で酸化珪素を主体とした無機膜を形成することもできる。或いは、特開2004−314626号公報に記載されているように、アンカーコート層上に気相法で無機薄膜を形成する際、基材側から発生するガスをある程度遮断し、無機薄膜の組成を制御するために、アンカーコート層を形成することもできる。
(ハードコート層)
樹脂基材21は、表面(片面又は両面)にハードコート層を有していてもよい。ハードコート層に含まれる材料の例としては、例えば、熱硬化性樹脂や活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられるが、成形が容易なことから、活性エネルギー線硬化性樹脂が好ましい。このような硬化性樹脂は、単独又は2種以上組み合わせても用いることができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含む材料が好ましく用いられる。この材料を、紫外線や電子線のような活性エネルギー線を照射することによって硬化させて、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物を含む層、すなわちハードコート層を形成する。活性エネルギー線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線照射によって硬化する紫外線硬化性樹脂が好ましい。また、予めハードコート層が形成されている市販の樹脂基材21を用いてもよい。
(平滑化層)
ガスバリア性フィルム20は、樹脂基材21と金属含有層24又はケイ素含有層23との間に、平滑化層を有してもよい。平滑化層は、突起等が存在する樹脂基材21の粗面を平坦化するため、又は、樹脂基材21に存在する突起により透明無機化合物層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑化層は、基本的には感光性材料、又は、熱硬化性材料を硬化させて作製される。
平滑化層の感光性材料としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含む樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含む樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。具体的には、JSR株式会社製のUV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材
また、平滑化層の感光性材料としては、OPSTAR(登録商標)シリーズを用いることができる。また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
熱硬化性材料として、具体的には、クラリアント社製のトゥットプロムシリーズ(有機ポリシラザン)、セラミックコート株式会社製のSP COAT耐熱クリアー塗料、株式会社アデカ製のナノハイブリッドシリコーン、DIC株式会社製のユニディック(登録商標)V−8000シリーズ、EPICLON(登録商標)EXA−4710(超高耐熱性エポキシ樹脂)、信越化学工業株式会社製の各種シリコン樹脂、日東紡株式会社製の無機・有機ナノコンポジット材料SSGコート、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。この中でも特に耐熱性を有するエポキシ樹脂ベースの材料であることが好ましい。
平滑化層の形成方法は、特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、又は、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑化層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。また、平滑化層の積層位置に関係なく、いずれの平滑化層においても、成膜性向上及び膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑化層の厚さとしては、フィルムの耐熱性を向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にする観点から、1〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
平滑化層の平滑性は、JIS B 0601:2001で規定される表面粗さで表現される値で、十点平均粗さRzが、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。
[有機機能層]
有機機能層11は、ガスバリア性フィルム20と、銀を主成分として形成される透明電極12との間に設けられる。有機機能層11は、透明電極12の金属原子の配列を均一にし、光透過性と抵抗特性の両立を達成するために設けられる。このため、下記一般式(1)、又は、下記一般式(2)で表される構造の有機化合物(第1有機化合物)を少なくとも1種以上含有する有機機能層を有する。さらに、一般式(1)、又は、一般式(2)で表される構造の第1有機化合物を少なくとも1種以上と、下記一般式(3)で表される構造の第2有機化合物とを含むことが好ましい。
(一般式(1)で表される構造を有する有機化合物)
有機機能層11を構成する下記一般式(1)で表される構造を有する有機化合物について説明する。
Figure 2016174950
上記一般式(1)において、E101〜E108は、各々C(R12)又は窒素原子を表し、E101〜E108のうち少なくとも一つは窒素原子である。また、R11及びR12は、各々水素原子又は置換基を表す。
11又はR12で表される置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、ピペリジル基(ピペリジニル基ともいう)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基等)、亜リン酸エステル基(例えばジフェニルホスフィニル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基の一部は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
以下に、一般式(1)で表される有機化合物例を示すが、有機機能層11に適用される一般式(1)で表される有機化合物はこれら例示する有機化合物に限定されない。
Figure 2016174950
Figure 2016174950
Figure 2016174950
上記一般式(1)で表される有機化合物の中でも、有機化合物1−1〜1−3、1−12が好ましい。
一般式(1)で表される有機化合物は、従来公知の合成法に従って、容易の合成することができる。
(一般式(2)で表される構造を有する有機化合物)
有機機能層11を構成する下記一般式(2)で表される構造を有する有機化合物について説明する。
Figure 2016174950
上記一般式(2)において、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。L21は、窒素原子と結合している芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。
一般式(2)において、R21、R22及びR23で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、ピペリジル基(ピペリジニル基ともいう)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基等)、亜リン酸エステル基(例えばジフェニルホスフィニル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
一般式(2)において、L21は、芳香族六員環骨格を有することが好ましい。芳香族六員環骨格としては、例えば、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)等、あるいは芳香族複素環基(ヘテロアリール基ともいい、例えば、ピリジル基、ピリダジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基等)を有するものが好ましく、特に、L21は、ベンゼン環骨格又はトリアジン環骨格を有することが好ましい。ここで、芳香族六員環骨格、ベンゼン環骨格及びトリアジン環骨格とは、前述のピリジン環骨格と同様に、それぞれの部分構造を含んでいることを表している。
以下に、一般式(2)で表される有機化合物例を示すが、有機機能層11に適用される一般式(2)で表される有機化合物はこれら例示する有機化合物に限定されない。
Figure 2016174950
Figure 2016174950
Figure 2016174950
Figure 2016174950
一般式(2)で表される有機化合物は、従来公知の合成法に従って、容易の合成することができる。
(一般式(3)で表される構造を有する有機化合物)
はじめに、第1有機化合物である下記一般式(3)で表される構造を有する有機化合物(以下、「一般式(3)で表される有機化合物」という。)について説明する。
Figure 2016174950
上記一般式(3)において、R31〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基(−SO37)、スルフィニル基(−SOR37)、スルホンアミド基(−SONR3738)、スルホナート基(−SO37)、トリフルオロメチル基、エステル基(−COOR37)、アミド基(−CONHR37又は−CONR3738)、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、芳香族炭化水素環基、アリールアミノ基、非芳香族複素環基、芳香族複素環基又はアラルキルアミノ基を表す。R37及びR38は、それぞれ独立に、炭素数1〜60のアルキル基、アリール基又は5〜7員の複素環基を表す。
一般式(3)におけるR31〜R38は置換されていてもよく、その置換基としては、例えば、直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、ベンゼン環、ビフェニル、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−ターフェニル環、m−ターフェニル環、p−ターフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、インデン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環、テトラリン等から導出される基)、芳香族複素環基(例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、ジベンゾチオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環等から導出される基。また、カルボリン環とジアザカルバゾール環を合わせて「アザカルバゾール環」と呼ぶ場合もある。)、非芳香族炭化水素環基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、非芳香族複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、チオール基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、重水素原子等が挙げられる。
以下に、一般式(3)で表される有機化合物例を示すが、有機機能層11に適用される一般式(3)で表される有機化合物はこれら例示する有機化合物に限定されない。
Figure 2016174950
上記例示した一般式(3)で表される有機化合物の中でも、R31〜R36の全てがシアノ基である有機化合物3−1が特に好ましい。この有機化合物3−1は、HAT−CNという略称で記載される。
一般式(3)で表される有機化合物は、従来公知の合成法に従って、容易の合成することができる。
(一般式(1)又は(2)で表される有機化合物と、一般式(3)で表される有機化合物の使用比率)
有機機能層11は、一般式(1)又は(2)で表される第1有機化合物とともに、第1有機化合物とは構造の異なる一般式(3)で表される第2有機化合物を併用することが好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表される第1有機化合物と、一般式(3)で表される第2有機化合物の使用比率としては、特に制限はないが、一般式(1)又は一般式(2)で表される第1有機化合物を100質量%とした時、一般式(3)で表される第2有機化合物の使用比率は、5.0〜60質量%の範囲内であることが好ましく、更には、10〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
(有機機能層の形成方法)
有機機能層11の形成には、様々な薄膜形成方法を適用することができるが、その中でも、蒸着法又はスパッタ法により形成することが好ましい。
適用可能な蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法等が含まれる。蒸着装置としては、例えば、シンクロン社製のBMC−800T蒸着機等を用いることができ、2つの加熱用ボートを用い、一方の加熱用ボートに一般式(1)又は一般式(2)で表される第1有機化合物を充填し、他方の加熱用ボードに一般式(3)で表される第2有機化合物を充填し、所望の比率となるように加熱条件を制御して、共蒸着により有機機能層11を形成する。
スパッタ法は、真空チャンバー内に薄膜として形成したい金属をターゲットとして設置し、高電圧をかけてイオン化させた希ガス元素(通常はアルゴン)や窒素(通常は空気由来)を衝突させ、ターゲット表面の原子をはじき飛ばして、基板に高密度に金属を成膜する方法である。また、上記希ガスとともに、反応性ガス(OやN)を導入することで、金属酸化物や金属窒化物を成膜することもできる。
適用可能なスパッタ法としては、2極スパッタ法、マグネトロンスパッタ法、DCスパッタ法、DCパルススパッタ法、RF(高周波)スパッタ法、デュアルマグネトロンスパッタ法、反応性スパッタ法、イオンビームスパッタ法、バイアススパッタ法、及び対向ターゲットスパッタ法などの、公知のスパッタ法を適宜用いることができる。具体的な市販のスパッタ装置としては、大阪真空社製のマグネトロンスパッタ装置、ウルバック社の各種スパッタ装置(例えば、マルチチャンバ型スパッタリング装置ENTRONTM−EXW300)やアネルバ社のL−430S−FHSスパッタ装置等を用いることができる。
[電極]
有機EL素子10は、透明電極12と対向電極15とからなる一対の電極に挟持された発光ユニット13を有する。透明電極12と対向電極15とは、いずれか一方が有機EL素子10の陽極となり、他方が陰極となる。以下に、当該陽極及び陰極について説明をする。
[透明電極]
透明電極12は、銀を主成分として構成されている。また、透明電極12は、上記有機機能層11上に成膜された層である。透明電極12は、銀を主成分として構成されている層が、必要に応じて、複数の層に分けて積層された構成であってもよい。
透明電極12は、銀(Ag)を主成分として含有する合金から構成されていてもよく、そのような合金としては、例えば、銀−マグネシウム(Ag−Mg)、銀−銅(Ag−Cu)、銀−パラジウム(Ag−Pd)、銀−パラジウム−銅(Ag−Pd−Cu)、銀−インジウム(Ag−In)等が挙げられる。
透明電極12としての面抵抗値は、8Ω/sq.未満であることが好ましい。透明電極12は、厚さが5〜20nmの範囲内であることが好ましく、5〜12nmの範囲内であることがより好ましい。厚さが20nmより薄い場合には、層の吸収成分又は反射成分が少なくなり、透明電極12の光透過率が向上する。また、厚さが5nmより厚い場合には、透明電極12の導電性を十分に高めることができる。
透明電極12の形成方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセス法や、蒸着法、スパッタ法等のドライプロセス方を用いることができる。特に、透明電極12の形成方法としては、蒸着法を適用することが好ましい。透明電極12の形成に適用可能な蒸着法としては、抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法等が挙げられる。蒸着装置としては、例えば、シンクロン社製のBMC−800T蒸着機等を用いることができる。
透明電極12は、上述の特定の構造を有する有機化合物からなる有機機能層11上に形成されることにより、形成後の透明電極12に高温アニール処理(例えば、150℃以上の加熱プロセス)を行なわなくても、十分な導電性を有する。また、形成後の透明電極12には、必要に応じて高温アニール処理等が行なわれてもよい。
以上のような構成の透明電極12は、上述の特定の構造を有する有機化合物からなる有機機能層11上に、銀を主成分として構成される。このような構成とすると、有機機能層11に接して透明電極12を形成する際に、透明電極12に含まれる銀原子と有機機能層11に含まれる有機化合物との相互作用により、銀原子の有機機能層11表面での拡散距離が減少し、銀の凝集が抑えられる。
銀を主成分とする導電性層により、十分な導電性と光透過性とを兼ね備えた透明電極12を作製するには、導電性層が電極として作用する均一な薄層の形成が求められるため、凝集等による不均一な薄層の形成が起こらない条件の設定が必要である。
しかし、一般的に、銀原子は通常では核成長型(Volumer-Weber:VW型)で成長するため、銀原子は島状に孤立し易く、銀を主成分とする層の厚さが小さいときは、導電性を得ることが困難であり、シート抵抗値が高くなりやすい。一方、導電性を確保するために厚さを大きくすると、層の光透過率が下がるため、透明性が求められる用途への適用が困難である。このように、銀を主成分とする導電層では、導電性と光透過性を両立することが難しい。
銀を主成分とする導電性層を、上述の一般式(1)、又は、一般式(2)で表される構造の有機化合物を少なくとも1種以上の含有する有機機能層上に形成することにより、銀を主成分とする導電性層を、高い連続性を備えた状態に形成することができる。即ち、銀との親和性が高い一般式(1)、又は、一般式(2)で表される構造の有機化合物(銀原子と親和性のある原子を有する銀親和性化合物)を含有する有機機能層11を設けることにより、銀原子が有機機能層11の表面上において、銀原子と親和性のある有機化合物とが2次元的な核を形成する。そして、2次元的な核を中心に、2次元の単結晶層を形成する層状成長型(Frank-van der Merwe:FM型)の成長が行なわれる。
或いは、一般式(1)、又は、一般式(2)で表される構造を有する有機化合物の規則配列により、銀と親和性がある部位を効率的に表面に形成することができると推測している。
このため、上述の構成では、有機機能層11上における銀の拡散距離が減少し、銀粒子の凝集が抑えられるため、銀を主成分として構成されている透明電極12が層状成長型(Frank-van der Merwe:FM型)で薄膜成長するようになる。そして、銀を主成分とする導電性層により、十分な導電性と光透過性とを兼ね備えた透明電極12を作製することができる。
[対向電極]
対向電極15は、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又は、これらの混合物等から構成されている。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。
対向電極15は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、対向電極15としてのシート抵抗値は、数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
なお、この有機EL素子10が、対向電極15側からも発光光hを取り出すものである場合には、上述した導電性材料のうちから選択される光透過性の良好な導電性材料により対向電極15が構成されていればよい。
[補助電極]
補助電極18は、透明電極12の抵抗を下げる目的で設け、透明電極12に接して設けられることが好ましい。補助電極18を形成する材料としては、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面からの発光光hの取り出しに影響のない範囲でパターン形成される。
補助電極18の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極18の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。このような補助電極18の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法等が挙げられる。
[発光ユニット]
発光ユニット13は、少なくとも、各種有機化合物からなる発光材料を含有する発光層を主体として構成される発光体(単位)である。発光ユニット13は、陽極と陰極とからなる一対の電極の間に挟持されており、当該陽極から供給される正孔(ホール)と陰極から供給される電子とが当該発光体内で再結合することにより発光する。有機EL素子10は、所望の発光色に応じて、当該発光ユニット13を複数備えていてもよい。
また、有機EL素子10は、少なくとも1層の発光層を含む発光ユニット13を複数積層した、いわゆるタンデム構造の素子であってもよい。タンデム構造の代表的な素子構成としては、例えば、以下の構成を挙げることができる。
陽極/第1発光ユニット/中間コネクタ層/第2発光ユニット/中間コネクタ層/第3発光ユニット/陰極
ここで、上記第1発光ユニット、第2発光ユニット、及び、第3発光ユニットは全て同じであっても、異なっていてもよい。また、二つの発光ユニットが同じであり、残る一つが異なっていてもよい。
複数の発光ユニット13は直接積層されていても、中間コネクタ層を介して積層されていてもよい。
中間コネクタ層は、一般的に中間電極、中間導電層、電荷発生層、電子引抜層、接続層、中間絶縁層とも呼ばれ、陽極側の隣接層に電子を、陰極側の隣接層に正孔を供給する機能を持った層であれば、公知の材料構成を用いることができる。中間コネクタ層に用いられる材料としては、例えば、ITO(インジウム・錫酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)、ZnO、TiN、ZrN、HfN、TiO、VO、CuI、InN、GaN、CuAlO、CuGaO、SrCu、LaB、RuO、Al等の導電性無機化合物層や、Au/Bi等の2層膜や、SnO/Ag/SnO、ZnO/Ag/ZnO、Bi/Au/Bi、TiO/TiN/TiO、TiO/ZrN/TiO等の多層膜、またC60等のフラーレン類、オリゴチオフェン等の導電性有機物層、金属フタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、金属ポルフィリン類、無金属ポルフィリン類等の導電性有機化合物層等が挙げられるが、これらに限定されない。
発光ユニット13内の好ましい構成としては、例えば、上記の代表的な素子構成で挙げた構成から、陽極と陰極とを除いたもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
タンデム型有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、国際公開第2005/009087号、特開2006−228712号公報、特開2006−24791号公報、特開2006−49393号公報、特開2006−49394号公報、特開2006−49396号公報、特開2011−96679号公報、特開2005−340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010−192719号公報、特開2009−076929号公報、特開2008−078414号公報、特開2007−059848号公報、特開2003−272860号公報、特開2003−045676号公報、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられる。
[発光層]
発光層13cは、電子輸送層13dから注入された電子と、正孔輸送層13bから注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層13cの層内であっても発光層13cと隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層13cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層13c間には、非発光性の補助層(図示略)を有していることが好ましい。
発光層13cの層厚の総和は、1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内であることがより好ましい。発光層13cの層厚の総和とは、発光層13c間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む層厚である。
複数層を積層した構成の発光層13cの場合、個々の発光層の層厚としては、1〜50nmの範囲内に調整することが好ましく、1〜20nmの範囲内に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の層厚の関係については、特に制限はない。
発光層13cの構成として、ホスト化合物(発光ホスト等)、発光材料(発光ドーパント)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。発光層13cは、複数の発光材料を混合してもよく、例えば、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料)と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物)とを同一発光層13c中に混合して用いてもよい。発光層13cは、発光材料としてリン光発光化合物が含有されていることが好ましい。発光層13cは、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
(1.ホスト化合物)
発光層13cに含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層13cに含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
ホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)の化合物であることが好ましい。
ここでいうガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121に準拠した方法により求められる値である。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物を用いることができる。例えば、特開2010−251675号公報、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
(2.発光材料)
発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料)と蛍光発光性化合物(蛍光性化合物、蛍光発光材料)が挙げられる。
(リン光発光性化合物)
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物である。具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物と定義される。好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、リン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光性化合物の発光の原理としては、2種挙げられる。
一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光発光性化合物に移動させることでリン光発光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型である。
もう一つは、リン光発光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光発光性化合物上でキャリアの再結合が起こり、リン光発光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型である。
いずれの場合においても、リン光発光性化合物の励起状態のエネルギーは、ホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される中から適宜選択して用いることができる。好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物又は白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体である。特にイリジウム化合物が好ましい。
リン光発光性化合物の具体例としては、特開2010−251675号公報に記載の化合物を用いることができるが、これらに限定されない。
リン光発光性化合物は、好ましくは発光層13cの総量に対し、0.1体積%以上30体積%未満である。発光層13cは、2種以上のリン光発光性化合物を含有していてもよく、発光層13cにおけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層13cの厚さ方向で変化していてもよい。
(蛍光発光性化合物)
蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
[注入層:正孔注入層、電子注入層]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と発光層13cとの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層13aと電子注入層13eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層13aであれば、陽極と発光層13c又は正孔輸送層13bとの間、電子注入層13eであれば陰極と発光層13c又は電子輸送層13dとの間に存在させてもよい。
正孔注入層13aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層13eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。電子注入層13eはごく薄い膜からなる層であることが望ましく、素材にもよるがその層厚は1nm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
[正孔輸送層]
正孔輸送層13bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層13a、電子阻止層も正孔輸送層13bに含まれる。
正孔輸送層13bは、単層又は複数層設けることができる。正孔輸送層13bは、下記材料の1種又は2種以上からなる一層構造であってもよい。
正孔輸送材料は、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有し、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。特に、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、N−フェニルカルバゾール、更には、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。さらに、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されている、いわゆるp型正孔輸送材料を用いることもできる。より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
また、正孔輸送層13bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。例えば、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載された材料が挙げられる。正孔輸送層13bのp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
正孔輸送層13bの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
正孔輸送層13bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することで形成することができる。
[電子輸送層]
電子輸送層13dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層13e、正孔阻止層(図示略)も電子輸送層13dに含まれる。
電子輸送層13dは、単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。電子輸送層13dは、下記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
電子輸送層13dにおいて、発光層13cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層13cに伝達する機能を有していればよい。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層13dの材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層13dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又は、それらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されたものも、電子輸送層13dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層13cの材料としても用いられるジスチリルピラジン誘導体や、正孔注入層13a、正孔輸送層13bと同様のn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層13dの材料として用いることができる。
また、電子輸送層13dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載された材料が挙げられる。さらに、電子輸送層13dには、カリウムやカリウム化合物などを含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層13dのn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
電子輸送層13dの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
電子輸送層13dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
[阻止層:正孔阻止層、電子阻止層]
阻止層は、上記の有機化合物薄膜の基本構成層の他に、必要に応じて設けられる。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、更に好ましくは5〜30nmの範囲内である。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層13dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、電子輸送層13dの構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層13cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層13bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層13bの構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
[封止部材]
封止部材17は、有機EL素子10の上面を覆う板状(フィルム状)の部材であって、接着層19によって樹脂基材21側に固定される。また、封止部材17は、封止膜であってもよい。このような封止部材17は、有機EL素子10の電極端子部分を露出させ、少なくとも発光ユニット13を覆う状態で設けられている。また、封止部材17に電極を設け、有機EL素子10の電極端子部分と、封止部材17の電極とを導通させる構成でもよい。
板状(フィルム状)の封止部材17としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板、金属基板等が挙げられ、これらの基板をさらに薄型のフィルム状にして用いてもよい。ガラス基板としては、特に、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属基板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。特に、素子を薄膜化できるということから、封止部材としてポリマー基板や金属基板を薄型のフィルム状にして使用することが好ましい。
また、基板材料は、凹板状に加工して封止部材17として用いてもよい。この場合、上述した基板部材に対して、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
さらに、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/(m・24h)以下であることが好ましい。
また、封止部材17を樹脂基材21側に固定する接着層19は、封止部材17とガスバリア性フィルム20とで発光ユニット13を封止するためのシール剤として用いられる。接着層19としては、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型の接着層19、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着層19を挙げることができる。
また、接着層19としては、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂により接着層19を挙げることができる。
封止部材17とガスバリア性フィルム20との接着層19部分への接着層19の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
なお、有機EL素子を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着層19は、室温(25℃)から80℃までに接着層19硬化できるものが好ましい。また、接着層19中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
また、板状の封止部材17とガスバリア性フィルム20と間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止部材17として封止膜を用いる場合、有機EL素子10における発光ユニット13を完全に覆い、かつ有機EL素子10の電極端子部分を露出させる状態で、ガスバリア性フィルム20上に封止膜が設けられる。このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機EL素子10における発光ユニット13の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成される。このような材料としては、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機材料が用いられる。さらに、封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜とともに、有機材料からなる膜を用いて積層構造としてもよい。
これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
[保護部材]
なお、ここでの図示は省略したが、有機EL素子10を機械的に保護するための保護膜又は保護板等の保護部材を設けてもよい。保護部材は、有機EL素子10及び封止部材17を、ガスバリア性フィルム20とで挟む位置に配置される。特に封止部材17が封止膜である場合には、有機EL素子10に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護部材を設けることが好ましい。
以上のような保護部材は、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、又はポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち、特に、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
[有機EL素子の製造方法]
次に、有機EL素子10の製造方法の一例を説明する。
まず、樹脂基材21上に、ガスバリア層22を形成する。まず、樹脂基材21上に、ポリシラザンを含む塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥後、真空紫外線照射による改質処理を行い、ケイ素と窒素とを含むケイ素含有層23を形成する。そして、ケイ素含有層23上に、気相成膜法を用いて金属Mの化合物を含む金属含有層24を形成する。これにより、ケイ素含有層23と金属含有層24とを含むガスバリア層22を形成する。このとき、ケイ素含有層23と金属含有層24との界面付近に、上述の領域Aが形成されていることが好ましい。
次に、ガスバリア層22上に、一般式(1)、又は、下記一般式(2)で表される構造の第1有機化合物を含む有機機能層11を、好ましくは10〜100nmの層厚になるように蒸着法等の適宜の方法により形成する。又は、一般式(1)、又は、下記一般式(2)で表される構造の第1有機化合物と、一般式(3)で表される構造の第2有機化合物とを共蒸着し、10〜100nmの層厚になるように形成する。
さらに、有機機能層11上に、銀(又は銀を含有する合金)を主成分とする透明電極12を5〜20nmの範囲内、好ましくは8〜12nmの範囲内の層厚になるように蒸着法等の適宜の方法により形成する。
次に、この透明電極12上に、正孔注入層13a、正孔輸送層13b、発光層13c、電子輸送層13d、電子注入層13eの順に成膜し、発光ユニット13を形成する。これらの各層の成膜方法としては、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが好ましい。
発光ユニット13を形成した後、この上部にカソードとなる対向電極15を、蒸着法やスパッタ法などの適宜の成膜法によって形成する。この際、対向電極15は、発光ユニット13によって透明電極12に対して絶縁状態を保ちつつ、発光ユニット13の上方からガスバリア性フィルム20の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
次に、有機EL素子10における透明電極12及び対向電極15の端子部分を露出させた状態で、少なくとも発光ユニット13を覆う封止部材17を設ける。
以上により、ガスバリア性フィルム20上に所望の有機EL素子10を形成することができる。このような有機EL素子10の作製においては、1回の真空引きで一貫して発光ユニット13から対向電極15まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から樹脂基材21を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
このようにして得られた有機EL素子10に直流電圧を印加する場合には、アノードである透明電極12を+の極性とし、カソードである対向電極15を−の極性として、電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
[有機EL素子の効果]
上述の有機EL素子10は、ガスバリア性フィルム20が、ケイ素含有層23と金属含有層24とを含むガスバリア層22を備える。このため、このガスバリア層22によって、樹脂基材21側からの不純物の侵入を阻止することができる。このため、有機EL素子10の信頼性、及び、保存性を向上させることができる。さらに、ガスバリア性フィルム20上に、上述の有機機能層11と透明電極12とを備えることにより、光取り出し効率の向上と、保存性の向上とを両立した発光装置を構成することができる。
[有機EL素子の用途]
上述した各構成の有機EL素子は、上述したように面発光体であるため、各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明などの照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定するものではなく、特に、カラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
また、有機EL素子は、照明用や露光光源のような1種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。この場合、近年の照明装置及びディスプレイの大型化に伴い、有機EL素子を設けた発光パネル同士を平面的に接合する、いわゆるタイリングによって発光面を大面積化してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する有機EL素子を2種以上使用することにより、カラー又はフルカラー表示装置を作製することが可能である。
[照明装置]
有機EL素子の用途の一例としては、照明装置を挙げることができる。
有機EL素子を用いる照明装置は、上述した構成の各有機EL素子に共振器構造を持たせた設計としてもよい。共振器構造として構成された有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより、上記用途に使用してもよい。
なお、有機EL素子に用いられる材料は、実質的に白色の発光を生じる有機EL素子(白色有機EL素子ともいう。)に適用できる。例えば、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ることもできる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色、青色の三原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光又は蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光又はリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよいが、白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせて混合したものでもよい。
このような白色有機EL素子は、各色発光の有機EL素子をアレー状に個別に並列配置して白色発光を得る構成と異なり、有機EL素子自体が白色を発光する。このため、素子を構成するほとんどの層の成膜にマスクを必要とせず、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で成膜することができ、生産性も向上する。
また、このような白色有機EL素子の発光層に用いる発光材料としては、特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、上記した金属錯体や公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
以上に説明した白色有機EL素子を用いれば、実質的に白色の発光を生じる照明装置を作製することが可能である。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
〈試料101のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
[ガスバリア性フィルムの作製]
両面に易接着処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)(U48))のケイ素含有層を形成する面とは反対の面に、厚さ0.5μmのアンチブロック機能を有するクリアハードコート層を形成した。すなわち、UV硬化型樹脂(アイカ工業株式会社製、品番:Z731L)を乾燥膜厚が0.5μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。
次に、上記PETフィルムのケイ素含有層を形成する側の面に厚さ2μmのクリアハードコート層を以下のようにして形成した。JSR株式会社製、UV硬化型樹脂オプスター(登録商標)Z7527を、乾燥膜厚が2μmになるように塗布した後、80℃で乾燥し、その後、空気下、高圧水銀ランプを用いて照射エネルギー量0.5J/cmの条件で硬化を行った。このようにして、ハードコート層付樹脂基材を得た。以降、実施例及び比較例においては、便宜上、このハードコート層付樹脂基材を単に樹脂基材とする。
ケイ素含有化合物として、パーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、NAX120−20)とを、4:1(質量比)の割合で混合し、さらに乾燥膜厚調整のためジブチルエーテルで適宜希釈し、塗布液を調製した。
次に、上記樹脂基材上に、スピンコート法により塗布液を乾燥膜厚が150nmになるよう塗布し、80℃で2分間乾燥した。次に、乾燥した塗膜に対して、波長172nmのXeエキシマランプ(エキシマランプ光強度:130mW/cm)を有する真空紫外線照射装置(試料の塗布層表面とエキシマランプ管面との最短距離が3mm)を用い、真空紫外線の照射エネルギー量(照射量)2.5J/cmで真空紫外線照射処理を行った。この際、照射雰囲気は窒素で置換し、酸素濃度は0.1体積%とした。また、試料を設置するステージ温度を80℃とした。
真空紫外線照射工程で試料塗布層表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサヘッドを真空紫外線照射装置の試料ステージ中央に設置し、かつ、装置チャンバー内の雰囲気が、真空紫外線照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージを0.5m/minの速度で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプの照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整し、上述の照射エネルギーとなるように調整した。尚、真空紫外線照射に際しては、10分間のエージング後に行った。
次に、ケイ素含有層まで形成した樹脂基材を、20℃、相対湿度50%RHの環境下で24時間保管した。その後、ケイ素含有層上に、マグネトロンスパッタ装置を用い、下記に示すターゲット及び成膜条件を用い、金属含有層を形成した。
ターゲットとして酸素欠損型Nbターゲットを用い、プロセスガスにはArとOとを用いたDCスパッタにより成膜した。予めガラス基板を用いた成膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がNbとなる条件を見出した。この条件を適用し、厚さ15nmで成膜を行った。
以上の工程により、試料101のガスバリア性フィルムを作製した。
[領域Aの組成の測定]
試料101のガスバリア性フィルムについて、後述の条件でXPS測定を行った。結果を下記表2に示す。下記表2のように、領域Aが形成されていることを確認した。
(XPS分析条件)
・装置:アルバックファイ製QUANTERASXM
・X線源:単色化Al−Kα
・スパッタイオン:Ar(2keV)
・デプスプロファイル:SiO換算で2.5nm相当のスパッタ後、測定を繰り返し、SiO換算深さ方向2.5nmごとのデプスプロファイルを得た
・定量:バックグラウンドをShirley法で求め、得られたピーク面積から相対感度係数法を用いて定量した。データ処理は、アルバックファイ社製のMultiPakを用いた。
[有機機能層、透明電極の作製]
次に、作製したガスバリア性フィルム上に、下記の方法で有機機能層と透明電極とを作製した。
まず、ガスバリア性フィルムを、市販の真空蒸着装置の基材ホルダーに固定し、有機化合物3−1(HAT−CN)をタンタル製抵抗加熱ボートに入れ、これらの基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、第2真空槽内に取り付けた。
この状態で、まず、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、有機化合物3−1の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で基材(平滑化層)上に層厚25nmの有機化合物3−1からなる有機機能層を設けた。
次に、有機機能層まで形成した樹脂基材を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、有機機能層上に層厚8nmの銀からなる透明電極(アノード)を形成た。以上の工程により、ガスバリア性フィルム上に、試料101の透明電極を作製した。
[発光ユニットの作製]
透明電極が形成されたガスバリア性フィルムを、中央部に幅30mm×30mmの開口部があるマスクと重ねて市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また真空蒸着装置内の加熱ボートの各々に、発光ユニットを構成する各材料を、それぞれの層の形成に最適な量で充填した。なお、加熱ボートはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次に、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10−4Paまで減圧し、各材料が入った加熱ボートを順次通電して加熱することにより、以下のように各層を形成した。
まず、正孔輸送注入材料として下記構造式に示すα−NPDが入った加熱ボートに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送注入層を、透明電極上に形成した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚140nmとした。
Figure 2016174950
次に、下記構造式に示すホスト材料H4の入った加熱ボートと、下記構造式に示すリン光発光性化合物Ir−4の入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、ホスト材料H4とリン光発光性化合物Ir−4とよりなる発光層を、正孔輸送注入層上に形成した。この際、蒸着速度がホスト材料H4:リン光発光性化合物Ir−4=100:6となるように、加熱ボートの通電を調節した。また層厚30nmとした。
次に、正孔阻止材料として下記構造式に示すBAlqが入った加熱ボートに通電して加熱し、BAlqよりなる正孔阻止層を、発光層上に形成した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚10nmとした。
Figure 2016174950
その後、電子輸送材料として下記構造式に示す例示化合物10の入った加熱ボートと、フッ化カリウムの入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、例示化合物10とフッ化カリウムとよりなる電子輸送層を、正孔阻止層上に形成した。この際、蒸着速度が例示化合物10:フッ化カリウム=75:25になるように、加熱ボートの通電を調節した。また層厚30nmとした。
Figure 2016174950
次に、電子注入材料としてフッ化カリウムの入った加熱ボートに通電して加熱し、フッ化カリウムよりなる電子注入層を、電子輸送層上に形成した。この際、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒、層厚1nmとした。
[対向電極の作製〜封止]
発光ユニットまで形成した樹脂基材を、アルミニウム(Al)を入れたタングステン製の抵抗加熱ボートが取り付けられた第2真空槽へ、真空状態を保持したまま移送した。そして、透明電極(アノード)と直行するように配置された幅20mm×20mmの開口部があるマスクと重ねて固定した。次に、処理室内において、成膜速度0.3〜0.5nm/秒で、膜厚100nmのAlからなる反射性の対向電極をカソードとして成膜した。
次に、作製した試料101のガスバリア性フィルムと同様の構成の封止部材の片面に、封止樹脂層として熱硬化型の液状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ25μmで形成した。そして、この封止樹脂層を設けた封止部材を、対向電極までを形成した試料に重ね合わせた。このとき、透明電極及び対向電極の取出し部の端部が外に出るように、封止部材の封止樹脂層形成面を、有機EL素子のガスバリア性フィルム側に連続的に重ね合わせた。
次に、封止部材を貼り合せた試料を減圧装置内に配置し、90℃で0.1MPaの減圧条件下で押圧をかけて5分間保持した。続いて、試料を大気圧環境に戻し、さらに90℃で30分間加熱して接着剤を硬化させた。
上記封止工程は、大気圧下、含水率1ppm以下の窒素雰囲気下で、JIS B 9920に準拠し、測定した清浄度がクラス100で、露点温度が−80℃以下、酸素濃度0.8ppm以下の大気圧で行った。なお、透明電極及び対向電極からの取出し部等の形成に関する記載は省略してある。
〈試料102〜105のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
有機機能層を構成する材料を、表2に示す材料(上述の有機化合物1−1、有機化合物1−2、有機化合物1−3、及び、有機化合物3−1)に変更した以外は、上述の試料101と同様の方法で、試料102〜105のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子を作製した。なお、試料103〜試料105では、有機化合物1−1、有機化合物1−2及び有機化合物1−3を85質量部に対し、有機化合物3−1が15質量部となるように有機機能層を作製した。試料103〜試料105は、各有機化合物を用いた共蒸着により有機機能層を作製した。
〈試料106〜109のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
領域Aの組成を下記表2に示す構成となるように作製した以外は、上述の試料103と同様の手法を用いて、試料106〜109のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料110のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
金属含有層を構成する金属MをTaに変更し、領域Aの組成を下記表2に示す構成となるように作製した以外は、上述の試料103と同様の手法を用いて、試料110のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料111のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
金属含有層を構成する金属MをTiに変更し、領域Aの組成を下記表2に示す構成となるように作製した以外は、上述の試料103と同様の手法を用いて、試料111のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料112のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
有機機能層を設けずに透明電極を作製した以外は、上述の試料107と同様の手法を用いて、試料112のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子を作製した。
〈試料113のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
ガスバリア層の作製において金属含有層を形成しなかったこと以外は、上述の試料102と同様の手法を用いて、試料113のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子を作製した。試料113のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子では、ガスバリア層がケイ素含有層のみにより構成されている。
〈試料114のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子の作製〉
下記の方法を用いてCoを用いて金属含有層を形成した以外は、上述の試料107と同様の手法を用いて、試料114のガスバリア性フィルム、及び、有機EL素子を作製した。
[金属含有層の作製]
ケイ素含有層まで形成した樹脂基材を、20℃、相対湿度50%RHの環境下で24時間保管した。その後、ケイ素含有層上に、ターゲットとしてCoターゲットを用い、プロセスガスにArとOとを用いたDCスパッタにより、金属含有層を形成した。予めガラス基板を用いた成膜により、酸素分圧を調整することにより組成の条件出しを行い、表層から深さ10nm近傍の組成がCoとなる条件を見出した。この条件を適用し、厚さ15nmで成膜を行い、試料114のガスバリア性フィルムを作製した。
〈評価方法〉
作製した試料101〜114のガスバリア性フィルム、透明電極、及び、有機EL素子に対し、下記の評価を行なった。評価結果を表2に示す。
[透明電極の電極性能の評価]
下記の方法により、ガスバリア性フィルム上に透明電極までを形成した試料の透過率と面抵抗値とを測定し、両者の測定結果から下記の基準を用いて透明電極の電極性能を評価した。
(透過率の測定)
上記各透明電極までを形成した試料について、分光光度計(日立ハイテクノロジーズ社製U−3300)を用い、測定光波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。なお、光透過率は、透明電極を形成する前のガスバリア性フィルム、又は、有機機能層までを形成したガスバリア性フィルムをリファレンスとして測定した。
(面抵抗値の測定)
上記透明電極までを形成した試料について、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製MCP−T610)を用い、4探針法定電流印加方式で透明電極の面抵抗値(Ω/sq.)を測定した。
(評価基準)
5:透過率70%以上で面抵抗値が5Ω/sq未満
4:透過率65%以上70%未満で面抵抗値が5〜10Ω/sq
3:透過率60%以上65%未満で面抵抗値が11〜50Ω/sq
2:透過率55%以上60%未満で面抵抗値が51〜100Ω/sq
1:透過率55%未満で面抵抗値が100Ω/sq以上
[保存性:ガスバリア性フィルムのCa法評価]
下記のようにして作製したCa法評価試料(透過濃度により評価するタイプ)を85℃85%RH環境に保存して一定時間ごとに、Caの腐食率を観察した。1時間、5時間、10時間、20時間、それ以降は20時間ごとに観察・透過濃度測定(任意4点の平均)し、測定した透過濃度が透過濃度初期値の50%未満となった時点の観察時間を有機EL素子の保存性の指標とした。
5:400時間以上
4:300時間以上400時間未満
3:200時間以上300時間未満
2:100時間以上200時間未満
1:100時間未満
(Ca法評価試料)
各試料101〜114のガスバリア性フィルムを準備し、このガスバリア性フィルムのガスバリア層表面をUV洗浄した後、ガスバリア層面に封止樹脂層として熱硬化型のシート状接着剤(エポキシ系樹脂)を厚さ20μmで貼合した。これを50mm×50mmのサイズに打ち抜いた後、グローブボックス内に入れて、24時間乾燥処理を行った。
次に、50mm×50mmサイズの無アルカリガラス板(厚さ0.7mm)の片面をUV洗浄した。株式会社エイエルエステクノロジー製の真空蒸着装置を用い、ガラス板の中央に、マスクを介して20mm×20mmのサイズでCaを蒸着した。Caの厚さは80nmとした。そして、Ca蒸着済のガラス板をグローブボックス内に移し、ガスバリア性フィルムの封止樹脂層面と、ガラス板のCa蒸着面とを接するように配置し、真空ラミネートにより接着した。この際、110℃の加熱を行った。さらに、接着した試料を110℃に設定したホットプレート上にガラス板を下にして置き、30分間硬化させて、Ca法評価用セルを作製した。
[折り曲げ保存性試験]
各試料101〜114の有機EL素子を、曲率が6mmφのプラスチック製ローラーに、有機EL素子形成面が外側になるように巻き付けた状態で、85℃、85%RHの環境下で、500時間保存した。その後、ローラーからはずした各有機EL素子に、1mA/cmの電流を印加して発光させた。次に、100倍の光学顕微鏡(株式会社モリテックス製 MS−804、レンズMP−ZE25−200)で、有機EL素子の発光部の一部分を拡大して撮影した。次に、撮影画像を2mm四方に切り抜き、それぞれの画像について、ダークスポット発生の有無を観察した。観察結果より、発光面積に対するダークスポットの発生面積比率を求め、下記の基準に従って、ダークスポット耐性を評価した。
5:ダークスポットの発生は全く認められない
4:ダークスポットの発生面積が、0.1%以上、1.0%未満である
3:ダークスポットの発生面積が、1.0%以上、3.0%未満である
2:ダークスポットの発生面積が、3.0%以上、6.0%未満である
1:ダークスポットの発生面積が、6.0%以上である
のガスバリア性フィルム、等明電極、及び、有機EL素子における金属含有層に含まれる金属M、領域Aの組成、及び、各評価結果を表2に示す。
表2に作製した上記試料101〜114のガスバリア性フィルム、等明電極、及び、有機EL素子における金属含有層に含まれる金属M、有機機能層を構成する材料、領域Aの組成、及び、各評価結果を示す。また、各試料のガスバリア性フィルムの領域Aの組成は、ケイ素原子組成比(Si)を100としたときの窒素原子組成比(N)、金属原子組成比(M)、及び、ケイ素原子組成比(Si)を100としたとき酸素原子組成比(O)を示している。
Figure 2016174950
表2に示すように、金属含有層にNb、Ti、又は、Taを含み、且つ、一般式(1)で表される構造の有機化合物を含む有機機能層を備える構成の試料102〜111は、透明電極の電極性能、保存性、及び、折り曲げ保存性のいずれかにおいて、これら以外の試料よりも良好な結果が得られた。
特に、金属含有層にNbを含み、領域Aの組成が、ケイ素原子組成比を100としたとき、窒素原子組成比が0を超え60以下、金属原子組成比が20以上300以下、酸素原子組成比が40以上300以下を満たし、且つ、一般式(1)で表される構造の有機化合物と一般式(3)で表される構造の有機化合物とを含む有機機能層を備える構成の試料107は、透明電極の電極性能、保存性、及び、折り曲げ保存性のすべてで、最もよい結果が得られた。
金属含有層にNbを含むものの、領域Aの組成が、ケイ素原子組成比を100としたとき、窒素原子組成比が0を超え60以下、又は、金属原子組成比が20以上300以下を満たさない、試料108,109は、上記試料107に比べて、折り曲げ保存性が低い結果となった。
この結果から、領域Aの組成が、窒素原子組成比と金属原子組成比とが上記範囲を満たすことにより、折り曲げ保存性が向上することがわかる。
また、金属含有層にNbを含み、ケイ素原子組成比を100としたとき、窒素原子組成比が0を超え60以下、及び、金属原子組成比が20以上300以下を満たすものの、酸素原子組成比が40以上300以下を満たさない試料106は、上記試料107に比べて、保存性と折り曲げ保存性とが低い結果となった。
この結果から、領域Aの組成が、窒素原子組成比と金属原子組成比とともに、酸素原子組成比が上記範囲を満たすことにより、保存性、及び、折り曲げ保存性が向上することがわかる。
また、金属含有層にTa、又は、Tiを含み、領域Aの組成が、ケイ素原子組成比を100としたとき、窒素原子組成比が0を超え60以下、且つ、金属原子組成比が20以上300以下、さらに、酸素原子組成比が40以上300以下を満たす試料110、及び、試料111は、保存性、折り曲げ保存性ともに、良好な結果が得られた。この結果から、Nb以外の金属においても、ガスバリア層が領域Aを有することにより有機EL素子の信頼性を向上させることができる。
有機機能層に一般式(3)で表される構造の有機化合物のみを含む試料101は、有機機能層に一般式(1)で表される構造の有機化合物のみ、又は、一般式(1)で表される構造の有機化合物と一般式(3)で表される構造の有機化合物とを含む試料102〜105と比べて、電極性能が同等か低い結果が得られた。この結果から、有機機能層が、一般式(1)で表される構造の有機化合物含むことにより、透明電極の透過率を向上、及び、面抵抗を低下させることができる。
なお、本発明は上述の実施形態例において説明した構成に限定されるものではなく、その他本発明構成を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能である。
10 有機EL素子、11 有機機能層、12 透明電極、13 発光ユニット、13a 正孔注入層、13b 正孔輸送層、13c 発光層、13d 電子輸送層、13e 電子注入層、15 対向電極、17 封止部材、18 補助電極、19 接着層、20 ガスバリア性フィルム、21 樹脂基材、22 ガスバリア層、23 ケイ素含有層、24 金属含有層

Claims (5)

  1. 樹脂基材上にガスバリア層が形成されたガスバリア性フィルムと、
    前記ガスバリア性フィルムと上に設けられた透明電極、発光ユニット、及び、対向電極と、を備え、
    前記ガスバリア層が、V、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、Mg、Y、及び、Alから選ばれる少なくとも1種以上の金属の化合物を含む金属含有層と、ケイ素と窒素とを含むケイ素含有層とを有し、
    前記透明電極が、銀を主成分とし、
    前記ガスバリア層と、前記透明電極との間に、下記一般式(1)、又は、下記一般式(2)で表される構造の有機化合物を少なくとも1種以上含有する有機機能層を有する
    有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2016174950
    〔式中、E101〜E108は、各々C(R12)又は窒素原子を表し、E101〜E108のうち少なくとも一つは窒素原子である。また、R11及びR12は、各々水素原子又は置換基を表す。〕
    Figure 2016174950
    〔式中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。L21は、窒素原子と結合している芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基を表す。〕
  2. 前記ガスバリア層は、層厚方向にXPS組成分析を行った際に得られる原子組成分布プロファイルにおいて、ケイ素原子組成比を100としたとき、窒素原子組成比が0を超え60以下、且つ、金属原子組成比が20以上300以下となる領域を有し、
    前記金属含有層と前記ケイ素含有層とが前記領域を介して接触している
    請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記領域において、ケイ素原子組成比を100としたとき、酸素原子組成比が40以上300以下である請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記金属含有層に含まれる金属がNbである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 前記有機機能層が、前記一般式(1)、又は、前記一般式(2)で表される構造の有機化合物を少なくとも1種以上と、下記一般式(3)で表される構造の有機化合物とを含む請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2016174950
    〔式中、R31〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基(−SO37)、スルフィニル基(−SOR37)、スルホンアミド基(−SONR3738)、スルホナート基(−SO37)、トリフルオロメチル基、エステル基(−COOR37)、アミド基(−CONHR37又は−CONR3738)、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、芳香族炭化水素環基、アリールアミノ基、非芳香族複素環基、芳香族複素環基又はアラルキルアミノ基を表す。R37及びR38は、それぞれ独立に、炭素数1〜60のアルキル基、アリール基又は5〜7員の複素環基を表す。〕
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