JPWO2014188913A1 - 透明電極、及び、電子デバイス - Google Patents

透明電極、及び、電子デバイス Download PDF

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Abstract

透明基板と、透明基板の一主面側に設けられた散乱層と、散乱層を介して透明基板の一主面側に設けられた金属酸化物層と、金属酸化物層を介して透明基板の一主面側に設けられた有機層と、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成され、有機層を介して透明基板の一主面側に設けられた金属層とを有する透明電極である。

Description

本発明は、透明電極、及び電子デバイスに関し、特には導電性と耐久性の向上とを兼ね備えた透明電極、さらにはこの透明電極を用いた電子デバイスおよび有機電界発光素子に関する。
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下ELと記す)を利用した有機電界発光素子(いわゆる有機EL素子)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有する。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として近年注目されている。
このような有機電界発光素子は、2枚の電極間に有機材料を用いて構成された発光層を挟持した構成であり、発光層で生じた発光光は電極を透過して外部に取り出される。このため、2枚の電極のうちの少なくとも一方は透明電極として構成される。
透明電極としては、電気伝導率の高い銀等の金属材料を薄膜化した構成や、銀にアルミニウムを混ぜることにより銀単独よりも薄い膜厚で導電性を確保する構成(例えば下記特許文献1参照)、さらには銀以外の金属からなる下地層上に銀薄膜層を設けた積層構造とすることにより光透過性を確保する構成(例えば下記特許文献2参照)が提案されている。
一方、有機EL素子としては、透明電極と基板との間に光拡散層を設けることにより光取り出し効率を向上させる構成(例えば下記特許文献3)、また、表面修飾した表面修飾微粒子とバインダー樹脂で構成された光取り出し部材を有機EL素子が設けられた基板の光取り出し面側に設けることにより、光取り出し効率及びヒートサイクルによる劣化が抑制される構成(例えば下記特許文献4)が提案されている。
特開2009−151963号公報 特開2008−171637号公報 特開2004−296437号公報 特開2010−256458号公報
しかしながら、散乱構造と透明電極とを単純に組み合わせた構成の場合には、高温保持時や、折り曲げ時に剥離が生じてしまうという課題がある。すなわち、上述した何れの構成の透明電極であっても、十分な導電性と耐久性との両立を図ることは困難であった。
そこで本発明は、十分な導電性と耐久性とを兼ね備えた透明電極を提供すること、及びこの透明電極を用いることによって性能の向上が図られた電子デバイスを提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の透明電極は、透明基板と、前記透明基板の一主面側に設けられた散乱層と、前記散乱層を介して前記透明基板の一主面側に設けられた金属酸化物層と、前記金属酸化物層を介して前記透明基板の一主面側に設けられた有機層と、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成され、前記有機層を介して前記透明基板の一主面側に設けられた金属層とを有する。
また本発明の電子デバイスは、上記構成の透明電極を有することを特徴としている。電子デバイスは、例えば有機電界発光素子であることとする。
以上のように構成された透明電極は、有機層を下地として銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された金属層が設けられている。これにより、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された金属層は、有機層との相互作用により、隣接界面においての銀の拡散距離が減少して凝集が抑えられたものとなる。このため、一般的には核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易い銀薄膜が、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されるようになる。したがって、薄い膜厚でありながらも、均一な膜厚の金属層が得られるようになる。
さらに、透明基板上に散乱層を設けることにより、透明電極を通過して透明基板側から取り出される光の取り出し効率が向上する。
そして特に、散乱層と有機層との間に金属酸化物層を有する構成である。これにより、散乱層、金属酸化物層、有機層、及び金属層の間での相互作用によって各層間での密着性のバランスが図られ、透明電極の耐久性の向上が図られたものとなる。
したがって、この透明電極は、均一な膜厚であることで導電性が確保された金属層が確実に得られたものであり、散乱層を設けることにより光の取り出し面から取り出される光の取り出し効率が向上する。さらに、散乱層、金属酸化物層、有機層、及び金属層の間での相互作用によって電極の耐久性の向上が図られたものとなる。以上により、透明電極における導電性の向上と耐久性の向上を図ることが可能となり、この透明電極を用いた電子デバイスにおける性能の向上を図ることが可能になる。
以上説明したように本発明によれば、透明電極における導電性の向上と耐久性の向上を図ることが可能となり、またこの透明電極を用いた電子デバイス(例えば、有機電界発光素子)の性能の向上を図ることが可能になる。
本発明の第1実施形態に係る透明電極の(4層構造の積層体を有する)構成を示す断面模式図である。 窒素原子の結合様式を説明するためのTBACとIr(ppy)の構造式を示す図である。 ピリジン環の構造式と分子軌道を示す図である。 ピロール環の構造式と分子軌道を示す図である。 イミダゾール環の構造式と分子軌道を示す図である。 δ−カルボリン環の構造式と分子軌道を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る透明電極の(平滑層を設けた積層体を有する)構成を示す断面模式図である。 本発明の第3実施形態に係る透明電極の(高表面エネルギー材料層を設けた積層体を有する)構成を示す断面模式図である。 本発明の第4実施形態に係る透明電極の(ポリシラザン改質層を設けた積層体を有する)構成を示す断面模式図である。 本発明の第5実施形態に係る透明電極の(バリア層を設けた積層体を有する)構成を示す断面模式図である。 本発明の第6実施形態に係る透明電極の(フッ素含有層を設けた積層体を有する)構成を示す断面模式図である。 本発明の透明電極を用いた有機電界発光素子の一例を示す断面構成図である。 有機層の有効非共有電子対含有率[n/M]と、有機層に積層された金属層のシート抵抗との関係を示すグラフである。 実施例2で作製したボトムエミッション型の有機電界発光素子を説明する断面構成図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の実施形態に限定されない。また、図面に示す各部の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
1.第1実施形態:4層構造の積層体を有する透明電極
2.第2実施形態:平滑層を設けた積層体を有する透明電極
3.第3実施形態:高表面エネルギー材料層を設けた積層体を有する透明電極
4.第4実施形態:ポリシラザン改質層を設けた積層体を有する透明電極
5.第5実施形態:バリア層を設けた積層体を有する透明電極
6.第6実施形態:フッ素含有層を設けた積層体を有する透明電極
7.第7実施形態:透明電極の用途
8.第8実施形態:有機電界発光素子(ボトムエミッション型)
9.第9実施形態:有機電界発光素子の用途
10.第10実施形態:照明装置―1
11.第11実施形態:照明装置−2
≪1.第1実施形態:4層構造の積層体を有する透明電極≫
図1は、本発明の第1実施形態に係る透明電極の構成を示す断面模式図である。この図に示すように、透明電極10は、透明基板11の一主面側に、散乱層1a、金属酸化物層1b、有機層1c、及び金属層1dをこの順に積層した4層構造の積層体10’を有する構成である。このうち、透明電極10における電極部分を構成する金属層1dは、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された層である。
以下に、このような積層構造の透明電極10を構成する各構成要素の詳細を、透明基板11、散乱層1a、金属酸化物層1b、有機層1c、及び金属層1dの順に説明する。尚、本発明の透明電極10の透明とは波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。尚、散乱構造を含む場合の透過率は、積分球を用いて透過率を測定する必要がある。この場合、例えば島津製作所の積分球付属装置ISR−240Aを用いて測定することができる。
<透明基板11>
上述した透明基板11は、例えばガラス、石英、透明樹脂フィルム等を挙げることができるが、これらに限定されない。
ガラスとしては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、散乱層1aとの密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理を施したり、無機物または有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成される。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。また、樹脂フィルムとしては、シルセスキオキサンを基本骨格とした材料からなり、有機無機ハイブリッド構造を有する耐熱透明フィルム(例えばSila−DEC(登録商標):チッソ株式会社製)等を用いてもよい。
<散乱層1a>
散乱層1aは、光取り出し効率を向上させる層であり、波長550nmにおける屈折率が1.7以上2.5未満の範囲内である高屈折率層であることが好ましい。有機電界発光素子の発光層内に閉じ込められる導波モード光や陰極から反射されるプラズモンモード光は特異な光学モードの光であり、これらの光を取り出すためには少なくとも1.7以上の屈折率が必要である。一方、プラズモンモードの最も高次側のモードであっても屈折率2.5以上の領域の光は略存在せず、これ以上の屈折率としても取り出せる光の量が増えることはない。
本実施形態の散乱層1aは、屈折率1.7以上2.5未満を有する単独の素材で層を形成してもよいし、2種類以上の化合物(以降に説明する微粒子を含む)と混合することで屈折率1.7以上2.5未満の層を形成してもよい。このような混合系の場合、散乱層1aの屈折率は、各々の素材固有の屈折率に混合比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率でも代用可能である。また、この場合、各々の素材の屈折率は、1.7未満もしくは2.5以上であってもよく、混合した場合には層全体の屈折率として1.7以上2.5未満を満たしていればよい。
なお、本発明において、屈折率は、多波長アッベ屈折計、プリズムカプラ、ミケルソン干渉計、分光エリプソメーター等で測定することができる。
また、本発明の散乱層1aは、樹脂と粒子との混合物による屈折率差を利用した混合散乱層(散乱膜)としてもよいし、凹凸構造等の形状制御により形成された形状制御散乱層としてもよい。
[混合散乱層(散乱層1a)]
次に、本発明において、光を回折もしくは拡散させる層(混合散乱層)を散乱層1aとする場合について説明する。
混合散乱層は、層媒体と該層媒体に含有される粒子とから構成されている。層媒体である樹脂材料(バインダー)と含有される粒子との屈折率差は、粒子の方が屈折率は大きく、0.03以上であり、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上であり、特に好ましくは0.3以上である。層媒体と粒子との屈折率差が0.03以上であれば、層媒体と粒子との界面で散乱効果が発生する。屈折率差が大きいほど、界面での屈折が大きくなり、散乱効果が向上するため好ましい。
混合散乱層は、上記のように、層媒体と粒子との屈折率の違いにより光を拡散させる層である。そのため、含有される粒子としては、可視光域のMie散乱を生じさせる領域以上の粒径を有する透明な粒子であることが好ましく、その平均粒径は0.2μm以上であることが好ましい。
一方、平均粒径の上限としては、粒径がより大きい場合、粒子を含有した混合散乱層の粗さを平坦化する必要があり、工程の負荷、膜の吸収の観点で不利な点があることから、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満、特に好ましくは3μm未満、最も好ましくは1μm未満である。
ここで、高屈折率粒子の平均粒径は、たとえば、日機装社製ナノトラックUPA−EX150といった動的光散乱法を利用した装置や、電子顕微鏡写真の画像処理により測定することができる。
このような粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよいが、中でも高屈折率を有する無機微粒子であることが好ましい。
高屈折率を有する有機微粒子としては、たとえば、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン−メラミンホルムアルデヒドビーズ等が挙げられる。
高屈折率を有する無機微粒子としては、たとえば、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモン等の中から選ばれる少なくとも1つの酸化物からなる無機酸化物粒子が挙げられる。無機酸化物粒子としては、具体的には、ZrO、TiO、BaTiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITO、SiO、ZrSiO、ゼオライト等が挙げられ、中でも、TiO、BaTiO、ZrO、ZnO、SnOが好ましく、TiOが最も好ましい。また、TiOの中でも、アナターゼ型よりルチル型の方が、触媒活性が低いため高屈折率層や隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率が高いことから好ましい。
また、これらの粒子は、高屈折率の混合散乱層に含有させるために、後述の分散液とした場合の分散性や安定性向上の観点から、表面処理を施したものを用いるか、あるいは表面処理を施さないものを用いるかを選択することができる。
表面処理を行う場合、表面処理の具体的な材料としては、酸化ケイ素や酸化ジルコニウム等の異種無機酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、オルガノシロキサン、ステアリン酸等の有機酸等が挙げられる。これら表面処理材は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。中でも、分散液の安定性の観点から、表面処理材としては、異種無機酸化物および/または金属水酸化物が好ましく、金属水酸化物がより好ましい。
無機酸化物粒子が、表面処理材で表面被覆処理されている場合、その被覆量(一般的に、この被覆量は、粒子の質量に対する当該粒子の表面に用いた表面処理材の質量割合で示される。)は、0.01〜99質量%であることが好ましい。表面処理材の被覆量が少な過ぎると、表面処理による分散性や安定性の向上効果を十分に得ることができず、また、多過ぎると高屈折率の混合散乱層の屈折率が低下するため好ましくない。
その他、高屈折率材料として、国際公開第2009/014707号や米国特許第6608439号明細書等に記載の量子ドットも好適に用いることができる。
上記高屈折率粒子は、その屈折率が1.7以上であり、1.85以上が好ましく、2.0以上が特に好ましい。屈折率が1.7未満であると、バインダーとの屈折率差が小さくなるため散乱量が減少し、光取り出し効率の向上効果が得られないことがある。
一方で、高屈折率粒子の屈折率の上限は3.0未満である。バインダーとの屈折率差が大きければ十分な散乱量を得ることができ、光取り出し効率の向上効果が得られる。
上記高屈折率粒子の配置は、粒子が混合散乱層(散乱層1a)と金属酸化物層1bとの界面に接触または近接するように粒子1層の厚みで配置されるのが好ましい。これにより、金属酸化物層1b内で全反射が起きたときに混合散乱層に染み出してくるエバネッセント光を高屈折率粒子で散乱させることができ、光取り出し効率が向上する。
尚、本実施形態においては、混合散乱層に隣接する層を金属酸化物層1bとしたが、これに限らず他の層が隣接しても同様の効果がある。
また、高屈折率粒子がその平均粒径を超える範囲(たとえば、混合散乱層の膜厚が高屈折率粒子の平均粒径の1.3倍)で存在する場合、粒子が散乱層1aの界面から遠く離れた位置に存在するため、エバネッセント光を散乱させることがなく、光取り出し効率の向上に寄与しない。また、粒子の分布厚みが増えると、塗布の均一性もしくは界面平滑性の低下といった問題が生じる可能性がある。
高屈折率粒子の混合散乱層における含有量は、体積充填率で、1.0〜70%の範囲内であることが好ましく、5〜50%の範囲内であることがより好ましい。これにより、混合散乱層と金属酸化物層1bの界面に屈折率分布の粗密を作ることができ、光散乱量を増加させて光取り出し効率を向上させることができる。
混合散乱層の形成方法としては、たとえば、層媒体が樹脂材料の場合、媒体となる樹脂材料(ポリマー)溶液(溶媒としては、粒子の溶解しないものを用いる。)に上記粒子を分散し、透明基板11上に塗布することで形成する。
これらの粒子は、実際には、多分散粒子であることや規則的に配置することが難しいことから、局部的には回折効果を有するものの、多くは拡散により光の方向を変化させ光取り出し効率を向上させる。
本発明のバインダーとしては、公知の樹脂(バインダー)が特に制限なく使用可能であり、たとえば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(たとえば、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラデシル)トリエトキシシラン)の他、含フッ素モノマーと架橋性基付与のためのモノマーを構成単位とする含フッ素共重合体等が挙げられる。これら樹脂は、二種以上混合して使用することができる。これらの中でも、有機無機ハイブリッド構造を有するものが好ましい。
また、以下の親水性樹脂を使うことも可能である。親水性樹脂としては水溶性の樹脂、水分散性の樹脂、コロイド分散樹脂またはそれらの混合物が挙げられる。親水性樹脂としては、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、フッ素系等の樹脂が挙げられ、たとえば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等のポリマーを挙げることができるが、これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。
バインダー樹脂として用いられるポリマーは、1種類を単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を混合して使用してもよい。
また、同様に、従来公知の樹脂粒子(エマルジョン)等も好適に使用可能である。
また、バインダーとしては、主として紫外線・電子線によって硬化する樹脂、すなわち、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤とを混合したものや熱硬化型樹脂も好適に使用できる。
このようなバインダー樹脂としては、飽和炭化水素またはポリエーテルを主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーであることがより好ましい。
また、バインダーは架橋していることが好ましい。飽和炭化水素を主鎖として有するポリマーは、エチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることが好ましい。架橋しているバインダーを得るためには、2つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを用いることが好ましい。
[形状制御散乱層(散乱層1a)]
本発明において、散乱層1aとなる形状制御散乱層は全反射界面に設けられることが好ましく、全反射の強度の大きな屈折率の異なる層の界面に設けられることが好ましい。全反射界面とは、屈折率差が0.05以上の界面を言い、より効果が大きいのは屈折率差0.1以上、特に効果が大きいのは屈折率差0.15以上の界面である。
この様な界面が複数ある場合には、その複数個所に散乱層を設けることが好ましい態様である。また、最も透明基板11に近い場所に設けることが好ましい態様である。
光を回折もしくは拡散させる凹凸構造を有する形状制御散乱層は、透明基板11上に設けられる。透明基板11最表面に形状制御散乱層を設けることにより、該形状制御散乱層(散乱層1a)の上方に、金属層1dを作製した場合、金属層1d側から放射された光が、透明基板11と金属層1dとの界面で全反射することを防止でき、発光効率を向上させることができる。
光を回折させる凹凸構造は、図示を省略するが、一定のピッチ(周期)を有する凹凸状の構造からなるものである。
可視光の取り出し効率を向上させるためには、可視光の媒質中での光の波長400〜750nmの範囲内の光を回折させるための回折格子であることが必要である。回折格子への光の入射角と出射角、回折格子間隔(凹凸配列の周期)、光の波長、媒体の屈折率、回折次数等の間には、一定の関係があり、可視光およびその近傍の波長領域の光を回折させるため、本発明においては、凹凸配列のピッチは、取り出し効率が向上する波長に対応して、150〜3000nmの範囲内にある一定値をもつ必要がある。
回折格子として作用する凹凸構造は、たとえば、特開平11−283751号公報、特開2003−115377号公報等に記載されている。ストライプ状の回折格子は、ストライプに平行な方向に対しては回折効果がないため、2次元的にどの方向からも均一に回折格子としての作用するものが好ましい。たとえば、透明基板11表面あるいは表示面の法線方向から見た形状として、所定の形状を有する凹部と凸部とが規則的に所定の間隔で形成されているものが好ましい。
凹部を構成する孔の形状としては、たとえば、円形、三角形、四角形、多角形等が挙げられるが特に限定されるものではない。その孔の内径は(同面積の円を想定して)、75〜1500nmの範囲内であることが好ましい。
また、凹部(窪み)の平面方向から見た断面形状としては、半球状、矩形状、かまぼこ状、ピラミッド状等が挙げられるが特に限定されるものではない。この凹部の深さは、50〜1600nmの範囲内であることが好ましく、50〜1200nmの範囲内であることがより好ましい。凹部の深さがこれより小さい場合には、回折あるいは散乱を起こす効果が小さく、また大きすぎると透明電極10の平面性が損なわれ好ましくない。
また、回折格子とするために、これらの凹部の配列は、正方形のラチス状(正方格子状)、ハニカムラチス状等、2次元的に規則的に配列が繰り返されることが好ましい。
また、突起である場合(凸型)、突起の形状は上記凹部の形状と同様であり、たとえば、凸部が柱状突起である場合、表面の法線方向から見た形状としては、円形、三角形、四角形、多角形のいずれであってもよい。突起の高さやピッチ(周期)は、上述の孔を形成した場合と同様である。すなわち、これらの凹凸の形状は、全く逆に、凸部が上記凹部の値を有するように形成されてもよい。
このような凹凸構造を有する形状制御散乱層を、たとえば、透明基板11表面に形成することで、透明基板11側から発光を取り出す際に、凹凸構造のピッチ(周期)に対応した波長の光の取り出し効率を向上させることができる。
これらの回折格子を形成する方法としては、たとえば、樹脂材料膜上に形成しようとする場合には、インプリント手法等がある。インプリント手法を用いた場合には、たとえば、ポリマー膜としてポリメチルメタクリレート(PMMA)等の熱可塑性樹脂を透明基板11上に成膜した後、凹凸が設けられた金型で熱可塑性樹脂を加熱、加圧し、金型の凹凸形状を転写することで、所望の凹凸構造を形成することができる。
また、その他の形成方法として、透明基板11上に紫外線硬化樹脂を塗布した後、凹凸が設けられた金型を密着させて紫外線を照射し、光重合により硬化して金型の凹凸形状を転写するといった手法を用いることもできる。
また、ガスバリア層である酸化ケイ素等の無機酸化物をエッチングして形成する場合には、反応性イオンエッチング等を用いることができる。
ガスバリア層である酸化ケイ素等の無機酸化物の膜については、ゾルゲル手法を用いてゲル状の膜を作成した後、ゲル状膜に凹凸が設けられた金型を押し当てたまま加熱することで、凹凸構造を形成することができる。
一方で、光を拡散させる凹凸構造とは、光の回折や屈折、反射により光を拡散させる構造であり、たとえば、平均ピッチ(周期)が0.3〜20μmの範囲内であり、平均高さがピッチの1/5〜1/3程度である100〜7000nmの範囲内であるような波型形状等がある。取り出す光量が、直接外部に出射される光量と比較して充分な量とするには、少なくとも100nm以上の高さであることが好ましい。また、波型形状のピッチ(周期)は長すぎると散乱効果が十分に得られず、平均高さが大きすぎると散乱層1a上に形成する層の成膜が困難となるため、望ましくない。
<金属酸化物層1b>
金属酸化物層1bは、散乱層1aを介して透明基板11の一主面側に設けられた層である。この金属酸化物層1bは、その屈折率が、以降に説明する有機層1cの屈折率よりも高いところが特徴的である。金属酸化物層1bの屈折率は、波長550nmにおける屈折率(n)が、有機層1cの屈折率(n=1.6〜1.8)より0.1以上高いと好ましく、0.3以上高いとさらに好ましい。典型的には、波長550nmにおける屈折率(n)が2.0以上の層であることが好ましい。
このような金属酸化物層1bは、高屈折率材料や、光学フィルムに一般的に用いられる材料が挙げられ、例えば、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(NbO5)、または酸化モリブデン(MoO)を主成分とする酸化物で構成されている。このような酸化物の一例としては、酸化チタン(TiO:n=2.3〜2.4)、酸化インジウムスズ(ITO:n=2.1〜2.2)、酸化インジウム亜鉛(In+ZnO:n=2.0〜2.4、例えばIZO)、酸化亜鉛(ZnO:n=1.9〜2.0)、酸化ニオブ(Nb:n=2.2〜2.4)等が例示される。
以上の他にも、酸化ハフニウム(HfO:n=1.9〜2.1)、五酸化タンタル(Ta:n=2.16)、酸化セリウム(CeO:n=2.2)、酸化カドミウム(CdO:n=2.49)、酸化ジルコニウム(ZrO:n=2.4)等が、金属酸化物層1bとして用いられる。
また、金属酸化物層1bは、導電性を有する材料で構成されている場合であっても、主たる電極として用いられることはない。このため金属酸化物層1bは、電極として必要な膜厚を備えている必要はなく、これらの金属酸化物層1bを備えた透明電極10が用いられる電子デバイス中における透明電極10の配置状態によって、適切に設定された膜厚を有していれば良い。
[金属酸化物層1bの成膜方法]
以上のような金属酸化物層1bは、真空蒸着法、スパッタリング法のようなドライ法、またはナノサイズの金属酸化物インクが溶媒中に分散したインクを塗布する方法のようなウェット法など、公知の製膜方法から適宜選択して成膜することができる。
例えば、その成膜方法としては、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)またはスパッタ法が挙げられる。特に、EB蒸着であれば、イオンアシストを用いた方法が好適である。このような金属酸化物層1bの成膜方法は、これを構成する材料によって適切な方法が選択される。例えば、酸化亜鉛(ZnO)または酸化チタン(TiO)を用いた金属酸化物層1bの成膜であれば蒸着法が適用される。また酸化インジウム(In)、酸化インジウムスズ(ITO)、または酸化ニオブ(Nb)を用いた金属酸化物層1bの成膜であればスパッタ法が適用される。
<有機層1c>
有機層1cは、金属酸化物層1bを介して透明基板11の一主面側に設けられた層であり、金属酸化物層1bに隣接して設けられていても良い。このような有機層1cは、ルイス塩基を含む層であり、ルイス塩基を有する化合物、すなわち非共有電子対を持っている原子を含む化合物を用いて構成されている。このようなルイス塩基を有する化合物としては、窒素含有化合物または硫黄含有化合物が例示される。
一例として有機層1cは、窒素含有化合物および硫黄含有化合物の少なくとも一方または両方を用いて構成された層であり、それぞれ複数種類の化合物を含有していても良い。また、有機層1cを構成する化合物は、窒素と硫黄の両方を含有した化合物であっても良い。
有機層1cを構成する窒素含有化合物は、窒素原子(N)を含んだ化合物であれば良いが、特に非共有電子対を有する窒素原子を含む有機化合物であることが好ましい。また有機層1cを構成する硫黄含有化合物は、硫黄(S)を含んだ化合物であれば良いが、特に非共有電子対を有する硫黄原子を含む有機化合物であることが好ましい。
また、有機層1cは、導電性を有する材料で構成されている場合であっても、主たる電極となることはない。このため有機層1cは、電極として必要な膜厚を備えている必要はなく、有機層1cを備えた透明電極10が用いられる電子デバイス中における透明電極10の配置状態によって、適切に設定された膜厚を有していれば良い。
次に、有機層1cを構成する化合物の詳細を、窒素含有化合物(1)、窒素含有化合物(2)、窒素含有化合物(3)、硫黄含有化合物、および有機層1cの成膜方法の順に説明する。
[窒素含有化合物(1)]
有機層1cを構成する窒素含有化合物は、窒素原子(N)を含んだ化合物であれば良いが、特に非共有電子対を有する窒素原子を含む有機化合物であり、次のような化合物であることが好ましい。すなわち、有機層1cを構成する窒素含有化合物は、化合物に含有される窒素原子のうち、特に金属層1dを構成する主材料である銀と安定的に結合する窒素原子の非共有電子対を[有効非共有電子対]とした場合、この[有効非共有電子対]の含有率が所定範囲であることが好ましい。
ここで[有効非共有電子対]とは、化合物に含有される窒素原子が有する非共有電子対のうち、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない非共有電子対であることとする。ここでの芳香族性とは、π電子を持つ原子が環状に並んだ不飽和環状構造を言い、いわゆる「ヒュッケル則」に従う芳香族性であって、環上のπ電子系に含まれる電子の数が「4n+2」(n=0、または自然数)個であることを条件としている。
以上のような[有効非共有電子対]は、その非共有電子対を備えた窒素原子自体が、芳香環を構成するヘテロ原子であるか否かにかかわらず、窒素原子が有する非共有電子対が芳香族性と関与しているか否かによって選択される。例えば、ある窒素原子が芳香環を構成するヘテロ原子であっても、その窒素原子の非共有電子対が芳香族性に必須要素として直接的に関与しない非共有電子対、すなわち共役不飽和環構造(芳香環)上の非局在化したπ電子系に芳香族性発現のために必須のものとして関与していない非共有電子対であれば、その非共有電子対は[有効非共有電子対]の一つとしてカウントされる。これに対して、ある窒素原子が芳香環を構成するヘテロ原子でない場合であっても、その窒素原子の非共有電子対が芳香族性に関与していれば、その窒素原子の非共有電子対は[有効非共有電子対]としてカウントされることはない。尚、各化合物において、上述した[有効非共有電子対]の数nは、[有効非共有電子対]を有する窒素原子の数と一致する。
次に、上述した[有効非共有電子対]について、具体例を挙げて詳細に説明する。
窒素原子は、第15族元素であり、最外殻に5個の電子を有する。このうち3個の不対電子は他の原子との共有結合に用いられ、残りの2個は一対の非共有電子対となる。このため、通常、窒素原子の結合本数は3本である。
例えば、窒素原子を有する基として、アミノ基(−NR)、アミド基(−C(=O)NR)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ジアゾ基(−N)、アジド基(−N)、ウレア結合(−NRC=ONR−)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、チオアミド基(−C(=S)NR)などが挙げられる。尚、R,Rは、それぞれ水素原子(H)または置換基である。これらの基を構成する窒素原子の非共有電子対は、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していないため、[有効非共有電子対]に該当する。このうち、ニトロ基(−NO)の窒素原子が有する非共有電子対は、酸素原子との共鳴構造に利用されているものの、以降の実施例で示すように良好な効果が得られていることから、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]として窒素上に存在すると考えられる。
また、窒素原子は、非共有電子対を利用することで4本目の結合を作り出すこともできる。この場合の一例として、図2を用いて説明する。図2は、テトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)の構造式と、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)[Ir(ppy)]の構造式である。
このうち、TBACは、四つのブチル基のうちの1つが窒素原子とイオン結合しており、対イオンとして塩化物イオンを有する第四級アンモニウム塩である。この場合、窒素原子の非共有電子対を構成する電子のうちの1つは、ブチル基とのイオン結合に供与される。このため、TBACの窒素原子は、そもそも非共有電子対が存在していないと同等になる。したがって、TBACを構成する窒素原子の非共有電子対は、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]には該当しない。
また、Ir(ppy)は、イリジウム原子と窒素原子とが配位結合している中性の金属錯体である。このIr(ppy)を構成する窒素原子の非共有電子対は、イリジウム原子に配位していて、配位結合に利用されている。したがって、Ir(ppy)を構成する窒素原子の非共有電子対も、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]には該当しない。
また、窒素原子は、芳香環を構成することのできるヘテロ原子として一般的であり、芳香族性の発現に寄与することができる。この「含窒素芳香環」としては、たとえば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
図3は、以上に例示した基のうちの一つであるピリジン環の構造式と分子軌道を示す図である。図3に示すとおり、ピリジン環は、6員環状に並んだ共役(共鳴)不飽和環構造において、非局在化したπ電子の数が6個であるため、4n+2(n=0または自然数)のヒュッケル則を満たす。6員環内の窒素原子は、−CH=を置換したものであるため、1個の不対電子を6π電子系に動員するのみで、非共有電子対は芳香族性発現のために必須のものとして関与していない。
したがって、ピリジン環を構成する窒素原子の非共有電子対は、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]に該当する。
図4は、ピロール環の構造式と分子軌道を示す図である。図4に示すとおり、ピロール環は、5員環を構成する炭素原子のうちの一つが窒素原子に置換された構造であるが、やはりπ電子の数は6個であり、ヒュッケル則を満たした含窒素芳香環である。ピロール環の窒素原子は、水素原子とも結合しているため、非共有電子対が6π電子系に動員される。
したがって、ピロール環の窒素原子は、非共有電子対を有するものの、この非共有電子対は、芳香族性発現のために必須のものとして利用されているため、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]には該当しない。
図5は、イミダゾール環の構造式と分子軌道を示す図である。図5に示すとおり、イミダゾール環は、二つの窒素原子N,Nが、5員環内の1、3位に置換した構造を有しており、やはりπ電子数が6個の含窒素芳香環である。このうち一つの窒素原子Nは、1個の不対電子のみを6π電子系に動員し、非共有電子対を芳香族性発現のために利用していないピリジン環型の窒素原子であり、この窒素原子Nの非共有電子対は、[有効非共有電子対]に該当する。これに対して、他方の窒素原子Nは、非共有電子対を6π電子系に動員しているピロール環型の窒素原子であるため、この窒素原子Nの非共有電子対は、[有効非共有電子対]に該当しない。
したがって、イミダゾール環においては、これを構成する二つの窒素原子N,Nのうちの一つの窒素原子Nの非共有電子対のみが、[有効非共有電子対]に該当する。
以上のような「含窒素芳香環」の窒素原子における非共有電子対の選別は、含窒素芳香環骨格を有する縮合環化合物の場合も同様に適用される。
図6は、δ−カルボリン環の構造式と分子軌道を示す図である。図6に示すとおり、δ−カルボリン環は、含窒素芳香環骨格を有する縮合環化合物であり、ベンゼン環骨格、ピロール環骨格、およびピリジン環骨格がこの順に縮合したアザカルバゾール化合物である。このうち、ピリジン環の窒素原子Nは1個の不対電子のみをπ電子系に動員し、ピロール環の窒素原子Nは非共有電子対をπ電子系に動員しており、環を形成している炭素原子からの11個のπ電子とともに、全体のπ電子数が14個の芳香環となっている。
したがって、δ-カルボリン環の二つの窒素原子N,Nのうち、ピリジン環を構成する窒素原子Nの非共有電子対は[有効非共有電子対]に該当するが、ピロール環を構成する窒素原子Nの非共有電子対は、[有効非共有電子対]に該当しない。
このように、縮合環化合物を構成する窒素原子の非共有電子対は、縮合環化合物を構成するピリジン環やピロール環等の単環化合物中の結合と同様に、縮合環化合物中の結合に関与する。
そして以上説明した[有効非共有電子対]は、金属層1dの主成分である銀と強い相互作用を発現するために重要である。そのような[有効非共有電子対]を有する窒素原子は、安定性、耐久性の観点から、含窒素芳香環中の窒素原子であることが好ましい。したがって、有機層1cに含有される化合物は、[有効非共有電子対]を持つ窒素原子をヘテロ原子とした芳香族複素環を有することが好ましい。
特に本実施形態においては、このような化合物の分子量Mに対する[有効非共有電子対]の数nを、例えば有効非共有電子対含有率[n/M]と定義する。そして有機層1cは、この[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]となるように選択された化合物を用いて構成されているところが特徴的である。また有機層1cは、以上のように定義される有効非共有電子対含有率[n/M]が、3.9×10-3≦[n/M]の範囲であれば好ましく、6.5×10-3≦[n/M]の範囲であればさらに好ましい。
また有機層1cは、有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲である窒素含有化合物を用いて構成されていれば良く、このような化合物のみで構成されていても良く、またこのような化合物と他の化合物とを混合して用いて構成されていても良い。他の化合物は、窒素原子が含有されていてもいなくても良く、さらに有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲でなくても良い。
有機層1cが、複数の化合物を用いて構成されている場合、例えば化合物の混合比に基づき、これらの化合物を混合した混合化合物の分子量Mを求め、この分子量Mに対しての[有効非共有電子対]の合計の数nを、有効非共有電子対含有率[n/M]の平均値として求め、この値が上述した所定範囲であることが好ましい。つまり有機層1c自体の有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲であることが好ましい。
尚、有機層1cが、複数の化合物を用いて構成されている場合であって、膜厚方向に化合物の混合比(含有比)が異なる構成であれば、金属層1dと接する側の有機層1cの表面層における有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲であれば良い。
以下に、窒素含有化合物を構成する化合物として、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]となる化合物を用いて有機層1cを構成することで、金属層1dの「銀の凝集を抑える」効果が確実に得られる有機層1cを設けることが可能になる。これは、後の実施例で詳細に説明するように、このような有機層1c上には、9nmと言った極薄膜でありながらもシート抵抗の測定が可能な金属層1dが形成されることからも確認された。
以下に、有機層1cを構成する窒素含有化合物として、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]が2.0×10-3≦[n/M]を満たす窒素含有化合物の具体例(No.1〜No.48)を示す。各窒素含有化合物No.1〜No.48には、[有効非共有電子対]を有する窒素原子に対して○を付した。また、下記表1には、これらの窒素含有化合物No.1〜No.48の分子量M、[有効非共有電子対]の数n、および有効非共有電子対含有率[n/M]を示す。下記窒素含有化合物No.33の銅フタロシアニンにおいては、窒素原子が有する非共有電子対のうち銅に配位していない非共有電子対が[有効非共有電子対]としてカウントされる。
Figure 2014188913
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Figure 2014188913
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尚、上記表1には、これらの例示した窒素含有化合物が、以降に説明する他の窒素含有化合物(2)を表す一般式(1)〜(8a)にも属する場合の該当一般式を示した。
[窒素含有化合物(2)]
また有機層1cを構成する窒素含有化合物としては、以上のような有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲である窒素含有化合物(1)に限定されず、他の窒素含有化合物を用いても良い。有機層1cに用いられる他の窒素含有化合物は、有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲で有る無しにかかわらず、窒素原子を含有する化合物が好ましく用いられる。中でも上述した[有効非共有電子対]を有する窒素原子を含有する化合物が特に好ましく用いられる。また、この有機層1cに用いられる他の窒素含有化合物は、この有機層1cを備えた透明電極10が適用される電子デバイスごとに必要とされる性質を有する化合物が用いられる。例えば、この透明電極10が、有機電界発光素子の電極として用いられる場合、その成膜性の観点から、有機層1cを構成する窒素含有化合物としては、以降に説明する一般式(1)〜(8a)で表される構造を有する窒素含有化合物(2)が用いられる。
これらの一般式(1)〜(8a)で示される構造を有する窒素含有化合物(2)の中には、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]の範囲に当てはまる窒素含有化合物も含まれ、このような窒素含有化合物であれば単独で有機層1cを構成する窒素含有化合物として用いることができる(上記表1参照)。一方、下記一般式(1)〜(8a)で示される構造を有する化合物が、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]の範囲に当てはまらない窒素含有化合物であれば、有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した範囲の窒素含有化合物と混合することで有機層1cを構成する化合物として用いることが好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(1)中におけるX11は、−N(R11)−または−O−を表す。また一般式(1)中におけるE101〜E108は、各々−C(R12)=または−N=を表す。E101〜E108のうち少なくとも1つは−N=である。上記R11およびR12は、それぞれが水素原子(H)または置換基を表す。
この置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(上記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、ピペリジル基(ピペリジニル基ともいう)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基等)、亜リン酸エステル基(例えばジフェニルホスフィニル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基の一部は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。これらの置換基は、化合物と銀(Ag)との相互作用を阻害することのないものが好ましく用いられ、さらには上述した有効非共有電子対を有する窒素原子を有するものが特に好ましく適用される。尚、以上の置換基に関する記述は、以降に説明する一般式(2)〜(8a)の説明において示される置換基に対して同様に適用される。
以上のような一般式(1)で表される構造を有する窒素含有化合物は、化合物中の窒素原子と、金属層1dを構成する銀との間で強力な相互作用を発現できるため好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(1a)で示される構造を有する化合物は、上記一般式(1)で示される構造を有する化合物の一形態であり、一般式(1)におけるX11を−N(R11)−とした化合物である。このような窒素含有化合物であれば、上記相互作用をより強力に発現できるため、好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(1a−1)で示される構造を有する化合物は、上記一般式(1a)で示される構造を有する化合物の一形態であり、一般式(1a)におけるE104を−N=とした化合物である。このような窒素含有化合物であれば、より効果的に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(1a−2)で示される構造を有する化合物は、上記一般式(1a)で示される構造を有する化合物の他の一形態であり、一般式(1a)におけるE103およびE106を−N=とした化合物である。このような窒素含有化合物は、窒素原子の数が多いことから、より強力に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(1b)で示される構造を有する化合物は、上記一般式(1)で示される構造を有する化合物の他の一形態であり、一般式(1)におけるX11を−O−とし、E104を−N=とした化合物である。このような化合物であれば、より効果的に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
さらに、以下の一般式(2)〜(8a)で表される構造を有する化合物であれば、より効果的に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(2)は、一般式(1)の一形態でもある。上記一般式(2)の式中、Y21は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。E201〜E216、E221〜E238は、各々−C(R21)=または−N=を表す。R21は水素原子(H)または置換基を表す。ただし、E221〜E229の少なくとも1つ、およびE230〜E238の少なくとも1つは−N=を表す。k21およびk22は0〜4の整数を表すが、k21+k22は2以上の整数である。
一般式(2)において、Y21で表されるアリーレン基としては、例えば、o−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、ピレンジイル基、ナフチルナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基(例えば、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル基、3,3’−ビフェニルジイル基、3,6−ビフェニルジイル基等)、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基、キンクフェニルジイル基、セキシフェニルジイル基、セプチフェニルジイル基、オクチフェニルジイル基、ノビフェニルジイル基、デシフェニルジイル基等が例示される。
また一般式(2)において、Y21で表されるヘテロアリーレン基としては、例えば、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(モノアザカルボリン環ともいい、カルボリン環を構成する炭素原子のひとつが窒素原子で置き換わった構成の環構成を示す)、トリアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、チオフェン環、オキサジアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環からなる群から導出される2価の基等が例示される。
Y21で表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基の好ましい態様としては、ヘテロアリーレン基の中でも、3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基を含むことが好ましく、また、当該3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基としては、ジベンゾフラン環から導出される基またはジベンゾチオフェン環から導出される基が好ましい。
一般式(2)において、E201〜E216、E221〜E238で各々表される−C(R21)=のR21が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
一般式(2)において、E201〜E208のうちの6つ以上、およびE209〜E216のうちの6つ以上が、各々−C(R21)=で表されることが好ましい。
一般式(2)において、E225〜E229の少なくとも1つ、およびE234〜E238の少なくとも1つが−N=を表すことが好ましい。
さらには、一般式(2)において、E225〜E229のいずれか1つ、およびE234〜E238のいずれか1つが−N=を表すことが好ましい。
また、一般式(2)において、E221〜E224およびE230〜E233が、各々−C(R21)=で表されることが好ましい態様として挙げられる。
さらに、一般式(2)で表される構造を有する化合物において、E203が−C(R21)=で表され、かつR21が連結部位を表すことが好ましく、さらに、E211も同時に−C(R21)=で表され、かつR21が連結部位を表すことが好ましい。
さらに、E225及びE234が−N=で表されることが好ましく、E221〜E224およびE230〜E233が、各々−C(R21)=で表されることが好ましい。
Figure 2014188913
上記一般式(3)は、一般式(1a−2)の一形態でもある。上記一般式(3)の式中、E301〜E312は、各々−C(R31)=を表し、R31は水素原子(H)または置換基を表す。また、Y31は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。
上記一般式(3)において、E301〜E312で各々表される−C(R31)=のR31が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(3)において、Y31で表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基の好ましい態様としては、一般式(2)のY21と同様のものが挙げられる。
Figure 2014188913
上記一般式(4)は、一般式(1a−1)の一形態でもある。上記一般式(4)の式中、E401〜E414は、各々−C(R41)=を表し、R41は水素原子(H)または置換基を表す。またAr41は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。さらにk41は3以上の整数を表す。
上記一般式(4)において、E401〜E414で各々表される−C(R41)=のR41が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(4)において、Ar41が芳香族炭化水素環を表す場合、この芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は、さらに一般式(1)のR11,R12として例示した置換基を有しても良い。
また一般式(4)において、Ar41が芳香族複素環を表す場合、この芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環等が挙げられる。尚、アザカルバゾール環とは、カルバゾール環を構成するベンゼン環の炭素原子が1つ以上窒素原子で置き換わったものを示す。これらの環は、さらに一般式(1)において、R11,R12として例示した置換基を有しても良い。
Figure 2014188913
上記一般式(5)の式中、R51は置換基を表す。E501,E502、E511〜E515、E521〜E525は、各々−C(R52)=または−N=を表す。E503〜E505は、各々−C(R52)=を表す。R52は、水素原子(H)または置換基を表す。E501およびE502のうちの少なくとも1つは−N=であり、E511〜E515のうちの少なくとも1つは−N=であり、E521〜E525のうちの少なくとも1つは−N=である。
上記一般式(5)において、R51が表す置換基およびR52が置換基を表す場合、これらの置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
Figure 2014188913
上記一般式(6)の式中、E601〜E612は、各々−C(R61)=または−N=を表し、R61は水素原子(H)または置換基を表す。またAr61は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。
上記一般式(6)において、E601〜E612で各々表される−C(R61)=のR61が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(6)において、Ar61が表す、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(4)のAr41と同様のものが挙げられる。
Figure 2014188913
上記一般式(7)の式中、R71〜R73は、各々水素原子(H)または置換基を表し、Ar71は、芳香族炭化水素環基あるいは芳香族複素環基を表す。
また一般式(7)において、Ar71が表す芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(4)のAr41と同様のものが挙げられる。
Figure 2014188913
上記一般式(8)は、一般式(7)の一形態でもある。上記一般式(8)の式中、R81〜R86は、各々水素原子(H)または置換基を表す。E801〜E803は、各々−C(R87)=または−N=を表し、R87は水素原子(H)または置換基を表す。Ar81は、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。
また一般式(8)において、Ar81が表す、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(4)のAr41と同様のものが挙げられる。
Figure 2014188913
上記一般式(8a)で示される構造を有する窒素含有化合物は、上記一般式(8)で示される構造を有する窒素含有化合物の一形態であり、一般式(8)におけるAr81がカルバゾール誘導体である。上記一般式(8a)の式中、E804〜E811は、各々−C(R88)=または−N=を表し、R88は水素原子(H)または置換基を表す。E808〜E811のうち少なくとも一つは−N=であり、E804〜E807、E808〜E811は、各々互いに結合して新たな環を形成してもよい。
[窒素含有化合物(3)]
また有機層1cを構成するさらに他の窒素含有化合物(3)として、以上のような一般式(1)〜(8a)やその他の一般式で表される化合物の他、下記に具体例を示す化合物1〜166が例示される。これらの化合物は、電子輸送性または電子注入性を備えた材料である。尚、これらの化合物1〜166の中には、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]の範囲に当てはまる化合物も含まれ、このような化合物であれば単独で有機層1cを構成する化合物として用いることができる。さらに、これらの化合物1〜166の中には、上述した一般式(1)〜(8a)やその他の一般式に当てはまる化合物もある。
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
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Figure 2014188913
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Figure 2014188913
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Figure 2014188913
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Figure 2014188913
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Figure 2014188913
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Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
[窒素含有化合物の合成例]
以下に代表的な化合物の合成例として、化合物5の具体的な合成例を示すが、これに限定されない。
Figure 2014188913
工程1:(中間体1の合成)
窒素雰囲気下、2,8−ジブロモジベンゾフラン(1.0モル)、カルバゾール(2.0モル)、銅粉末(3.0モル)、炭酸カリウム(1.5モル)を、DMAc(ジメチルアセトアミド)300ml中で混合し、130℃で24時間撹拌した。これによって得た反応液を室温まで冷却後、トルエン1Lを加え、蒸留水で3回洗浄し、減圧雰囲気下において洗浄物から溶媒を留去し、その残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘプタン:トルエン=4:1〜3:1)にて精製し、中間体1を収率85%で得た。
工程2:(中間体2の合成)
室温、大気下で中間体1(0.5モル)をDMF(ジメチルホルムアミド)100mlに溶解し、NBS(N−ブロモコハク酸イミド)(2.0モル)を加え、一晩室温で撹拌した。得られた沈殿を濾過し、メタノールで洗浄し、中間体2を収率92%で得た。
工程3:(化合物5の合成)
窒素雰囲気下、中間体2(0.25モル)、2−フェニルピリジン(1.0モル)、ルテニウム錯体[(η−C)RuCl(0.05モル)、トリフェニルホスフィン(0.2モル)、炭酸カリウム(12モル)を、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)3L中で混合し、140℃で一晩撹拌した。
反応液を室温まで冷却後、ジクロロメタン5Lを加え、反応液を濾過した。次いで減圧雰囲気下(800Pa、80℃)において濾液から溶媒を留去し、その残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:EtN=20:1〜10:1)にて精製した。
減圧雰囲気下において、精製物から溶媒を留去した後、その残渣をジクロロメタンに再び溶解し、水で3回洗浄した。洗浄によって得られた物質を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧雰囲気下において乾燥後の物質から溶媒を留去することにより、化合物5を収率68%で得た。
[硫黄含有化合物]
有機層1cを構成する硫黄含有化合物は、硫黄原子(S)を含んだ化合物であれば良いが、特に非共有電子対を有する硫黄原子を含む有機化合物であり、次のような化合物であることが好ましい。また、硫黄含有化合物の分子内にスルフィド結合(チオエーテル結合ともいう。)、ジスルフィド結合、メルカプト基、スルホン基、チオカルボニル結合等を有していればよく、特に、スルフィド結合、メルカプト基を有していることが好ましい。
具体的には、下記一般式(9)〜一般式(12)で表される硫黄含有化合物を挙げることができる。
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
上記一般式(9)において、R91及びR92は、各々置換基を表す。R91およびR92で表される置換基としては、置換または無置換の炭化水素基が挙げられる。これらの炭化水素基では、酸素原子、窒素原子、リン原子、を含んでも良い。
91及びR92で表される置換または無置換の炭化水素基としては、アルキル基又はアリール基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、又はベンジル等の各基が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、またはナフチル基等が挙げられる。
上述した炭化水素基の何れかの部位に対してさらに置換可能な基としては、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、又はシアノ基等を挙げることができる。
上述した炭化水素基の何れかの部位に対してさらに置換可能な他の基としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
上記一般式(10)において、R93及びR94は、置換基を表す。R93及びR94で表される置換基としては、R91及びR92と同様の置換基が挙げられる。
上記一般式(11)において、R95は、置換基を表す。R95で表される置換基としては、R91及びR92と同様の置換基が挙げられる。
上記一般式(12)において、R96は、置換基を表す。R96で表される置換基としては、R91及びR92と同様の置換基が挙げられる。
以下に、有機層1cを構成する硫黄含有化合物の具体例を示すが、硫黄含有化合物はこれらの例示した化合物に限定されるものではない。
また、一般式(9)で表される硫黄含有化合物の具体例としては、下記1−1〜1−9が挙げられる。
Figure 2014188913
また、一般式(10)で表される硫黄含有化合物の具体例としては、下記2−1〜2−11が挙げられる。
Figure 2014188913
また、一般式(11)で表される硫黄含有化合物の具体例としては、下記3−1〜3−23が挙げられる。
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
Figure 2014188913
また、一般式(12)で表される硫黄含有化合物の具体例としては、下記4−1が挙げられる。
Figure 2014188913
尚、有機層1cを構成する硫黄含有化合物は、以上に例示した化合物の他、窒素含有化合物と同様に、有効非共有電子対含有率[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]となるように選択された化合物であっても良く、3.9×10-3≦[n/M]の範囲であれば好ましく、6.5×10-3≦[n/M]の範囲であればさらに好ましい。
ここで言う有効非共有電子対含有率[n/M]とは、窒素含有化合物(1)においての定義と同様である。すなわち、硫黄含有化合物に含有される硫黄原子のうち、特に金属層1dを構成する主材料である銀と安定的に結合する硫黄原子の非共有電子対を[有効非共有電子対]とした場合、この化合物の分子量Mに対する[有効非共有電子対]の数nである。また。有機層1cは、それ自体の有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲であることが好ましく、金属層1dと接する側の有機層1cの表面層における有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲であれば良いことも、窒素含有化合物(1)で説明した場合と同様である。
[有機層1cの成膜方法]
以上のような有機層1cの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱法、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。なかでも蒸着法が好ましく適用される。
特に、複数の化合物を用いて有機層1cを成膜する場合であれば、複数の蒸着源から複数の化合物を同時に供給する共蒸着が適用される。また化合物として高分子材料を用いる場合であれば、塗布法が好ましく適用される。この場合、化合物を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。化合物を溶解させる溶媒が限定されることはない。さらに、複数の化合物を用いて有機層1cを成膜する場合であれば、複数の化合物を溶解させることが可能な溶媒を用いて塗布液を作製すれば良い。
<金属層1d>
金属層1dは、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された層であって、銀もしくは銀を主成分とする合金を用いて構成され、有機層1cに隣接して成膜された層である。
金属層1dを構成する銀(Ag)を主成分とする合金としては、銀を50質量%以上含む合金であることが好ましい。金属層1dを構成する銀(Ag)を主成分とする合金は、一例として銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)、銀アルミニウム(AgAl)、銀モリブデン(AgMo)などが挙げられる。
以上のような金属層1dは、銀または銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
さらにこの金属層1dは、膜厚が4〜12nmの範囲にあることが好ましい。膜厚が12nm以下であることにより、層の吸収成分または反射成分が低く抑えられ、透明電極10の光透過率が維持されるため好ましい。また、膜厚が4nm以上であることにより、層の導電性も確保される。
[金属層1dの成膜方法]
以上のような金属層1dの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。
例えば、スパッタ法を適用した金属層1dの成膜であれば、銀を主成分とした合金のスパッタターゲット用意し、このスパッタゲートを用いたスパッタ成膜を行う。上述した合金の全ての場合において、スパッタ法を適用した金属層1dの成膜が行われるが、特に銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、または銀パラジウム銅(AgPdCu)、または銀モリブデン(AgMo)を成膜する場合には、スパッタ法を適用した金属層1dの成膜が行われる。
また特に、銀アルミニウム(AgAl)、銀マグネシウム(AgMg)、銀インジウム(AgIn)を成膜する場合であれば、蒸着法を適用した金属層1dの成膜も行われる。蒸着法の場合、合金成分と銀(Ag)とを共蒸着する。この際、合金成分の蒸着速度と銀(Ag)の蒸着速度とをそれぞれ調整することにより、主材料である銀(Ag)に対する合金成分の添加濃度を調整した蒸着成膜を行う。
また金属層1dは、有機層1c上に成膜されることにより、成膜後の高温アニール処理等がなくても十分に導電性を有することを特徴とするが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を行ったものであっても良い。
また以上のような透明電極10は、透明基板11との間に積層体10’が挟持される状態で、保護膜で覆われていたり、別の導電性層が積層されていても良い。この場合、透明電極10の光透過性を損なうことのないように、保護膜が光透過性を有することが好ましい。
<透明電極10の効果>
以上のように構成された透明電極10は、有機層1cを下地として銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された金属層1dが設けられている。これにより、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された金属層1dは、有機層1cとの相互作用により、隣接界面においての銀の拡散距離が減少して凝集が抑えられたものとなる。このため、一般的には核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易い銀薄膜が、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されるようになる。したがって、薄い膜厚でありながらも、均一な膜厚の金属層1dが得られるようになる。
さらに、透明基板11上に散乱層1aを設けることにより、散乱層1aと隣接する層との界面において光の取り出し効率が向上する。
そして特に、散乱層1aと有機層1cとの間に金属酸化物層1bを有する構成である。これにより、散乱層1a、金属酸化物層1b、有機層1c、及び金属層1dの間での相互作用によって各層間での密着性のバランスが図られ、透明電極10の耐久性の向上が図られたものとなる。
以上の結果、この透明電極10は、均一な膜厚であることで導電性が確保された金属層1dが確実に得られるものであり、散乱層1aを設けることにより光の取り出し面から取り出される光の取り出し効率が向上する。さらに、散乱層1a、金属酸化物層1b、有機層1c、及び金属層1dの間での相互作用によって電極の耐久性の向上が図られたものとなる。以上により、透明電極10における導電性の向上と耐久性との向上を図ることが可能となる。
またこのような透明電極10は、レアメタルであるインジウム(In)を用いていないため低コストであり、またZnOのような化学的に不安定な材料を用いていないことからも長期信頼性に優れたものとなる。
≪2.第2実施形態:平滑層を設けた積層体を有する透明電極≫
図7は、本発明の第2実施形態に係る透明電極20の構成を示す断面模式図である。この図に示す透明電極20が、先の図1を用いて説明した透明電極と異なるところは、散乱層1aと金属酸化物層1bとの間にさらに平滑層1eを設け、5層構造の積層体20’を有する透明電極20としたところにあり、他の構成は同一である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち透明電極20における積層体20’は、散乱層1a上に、さらに平滑層1eを設けた5層構造であり、散乱層1aと金属酸化物層1bとの間に平滑層1eを挟んだ5層構造である。すなわち、透明基板11の上部には、散乱層1a、平滑層1e、金属酸化物層1b、有機層1c、及び金属層1dがこの順に設けられている。
<平滑層1e>
平滑層1eは、層媒体と該層媒体に含有される微粒子とから構成されている。ここで、層媒体である樹脂材料(バインダー)に含有される微粒子は、散乱層1aが微粒子を有する混合散乱層である場合には、混合散乱層に含有される微粒子よりも小さい粒子とする。また、散乱層1aが、凹凸構造を有する形状制御散乱層である場合には、形状制御散乱層が有する凹凸形状の凹部の幅及び高さよりも小さい粒子とする。
平滑層1eは、波長550nmにおける屈折率が1.7以上2.5未満の高屈折率層であることが好ましい。屈折率が1.7以上2.5未満であれば、単独の素材で形成されていてもよいし、2種類以上の化合物を混合して屈折率が1.7以上2.5未満の膜を形成してもよい。混合物で形成する際の屈折率の考え方は、上記散乱層1aの場合と同様である。尚、ここでは、散乱層1a及び平滑層1eの屈折率が、それぞれ1.7以上2.5未満の範囲内であることが好ましいが、各層の屈折率を個別に測定することは困難である場合が多いことから、散乱層1a及び平滑層1eをまとめて測定した屈折率の測定値が上記範囲を満たしていればよい。
平滑層1eは、この上に金属酸化物層1bを良好に形成させる平坦性を有することが重要であり、その表面性は平均面粗さRaが100nm未満、好ましくは30nm未満、特に好ましくは10nm未満、最も好ましくは5nm未満である。なお、本発明において、平均面粗さRaとは、原子間力顕微鏡法(Atomic Force Microscopy;AFM)にて測定された、10μmにおける平均面粗さRaを言う。
平滑層1eに用いられる層媒体としては、散乱層1aと同様の樹脂材料(バインダー)が挙げられる。
平滑層1eに含有される微粒子は、微粒子高屈折率材料の金属酸化物微粒子(無機粒子)であることが好ましく、特に平滑層1eの透明性を確保するために、微粒子ゾルの形態で用いることが好ましい。
高屈折率の平滑層1eに含まれる金属酸化物微粒子(無機粒子)の屈折率の下限としては、バルクの状態で1.7以上であることが好ましく、1.85以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましく、2.5以上であることが特に好ましい。また、金属酸化物微粒子の屈折率の上限としては、3.0以下であることが好ましい。金属酸化物微粒子の屈折率が1.7より低いと本願の目的効果が小さくなるため好ましくない。金属酸化物微粒子の屈折率が3.0より高いと膜中での多重散乱が増加し、透明性が低下するため好ましくない。
高屈折率の平滑層1eに含まれる金属酸化物微粒子(無機粒子)の粒径の下限としては、通常4nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、6nm以上であることがさらに好ましい。また、金属酸化物微粒子の粒径の上限としては、70nm以下であることが好ましく、60nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。金属酸化物微粒子の粒径が4nmより小さい場合、金属酸化物微粒子が凝集しやすく、透明性がむしろ低くなるため好ましくない。また、粒径が小さいと表面積が大きくなり、触媒活性が高まり、平滑層1eや隣接した層の劣化を促進するおそれがあるため好ましくない。金属酸化物微粒子の粒径が70nmより大きいと平滑層1eの透明性が低下するため好ましくない。尚、本発明の効果を損なわない限り、粒径の分布は制限されず、広くても狭くても複数の分布を持っていてもよい。
また、散乱層1aが2種類以上の化合物を含有する混合散乱層を用いて構成される場合には、散乱層1aに含有される粒子の平均粒径の大きさによって表面に凹凸が生じる。平滑層1eに含まれる金属酸化物微粒子の粒径は、この散乱層1aの平均面粗さRaが上述した範囲となるように適宜設定することとする。
平滑層1eにおける金属酸化物微粒子の含有量の下限としては、全体質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることがさらに好ましい。また、金属酸化物微粒子の含有量の上限としては、97質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。平滑層1eの金属酸化物微粒子の含有量が70質量%より少ないと平滑層1eの屈折率を1.80以上とすることが実質的に難しくなる。平滑層1eの金属酸化物微粒子の含有量が95質量%より多いと平滑層1eの塗布が困難となることや、乾燥後の膜の脆性が大きくなり耐屈曲性が低下するため好ましくない。
本発明の平滑層1eに含有される金属酸化物微粒子としては、安定性の観点から、TiO(二酸化チタンゾル)であることが好ましい。また、TiOの中でも、特にアナターゼ型よりルチル型の方が、触媒活性は低いため、平滑層1eや隣接した層の耐候性が高くなり、さらに屈折率を高めることから好ましい。
本発明で用いることのできる二酸化チタンゾルの調製方法としては、たとえば、特開昭63−17221号公報、特開平7−819号公報、特開平9−165218号公報、特開平11−43327号公報等を参照することができる。
二酸化チタン微粒子の好ましい一次粒子径は、5〜15nmの範囲内であり、より好ましくは6〜10nmの範囲内である。
<透明電極20の効果>
このような透明電極20は、散乱層1aと金属酸化物層1bとの間に平滑層1eを挟持した構成であることにより、散乱層1aと金属酸化物層1bの間の界面が平坦となり透明電極における電界が均一となる。
したがって、本実施形態の透明電極20においても、導電性の向上と耐久性の向上を図ることが可能となり、さらに信頼性の向上を図ることが可能となる。
また、この透明電極20を有機電界発光素子に用いた場合に、ショートや欠陥が生じにくくなるとともに、均一で安定した光を取り出すことが可能となり、信頼性の向上が図られる。
≪3.第3実施形態:高表面エネルギー材料層を設けた積層体を有する透明電極≫
図8は、本発明の第3実施形態の透明電極30の構成を示す断面模式図である。この図に示す透明電極30が、先の図7を用いて説明した透明電極20と異なるところは、有機層1cと金属層1dとの間にさらに高表面エネルギー材料層1fを設け、6層構造の積層体30’を有する透明電極30としたところにあり、他の構成は同一である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち透明電極30における積層体30’は、有機層1c上に、さらに高表面エネルギー材料層1fを設けた6層構造であり、有機層1cと金属層1dとの間に高表面エネルギー材料層1fを挟んだ6層構造である。すなわち、透明基板11の上部には、散乱層1a、平滑層1e、金属酸化物層1b、有機層1c、高表面エネルギー材料層1f、及び金属層1dがこの順に設けられている。
<高表面エネルギー材料層1f>
高表面エネルギー材料層1fは、金属層1dを構成する銀(Ag)よりも、昇華熱エンタルピーが大きい高表面エネルギー材料を用いて構成された層であって、有機層1cおよび金属層1dに接した状態で、これらの層間に設けられている。銀(Ag)よりも、昇華熱エンタルピーが大きい材料(高表面エネルギー材料)としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、モリブデン酸化物(MoO、MoO)等が例示される。高表面エネルギー材料層1fは、これらの材料のうちの少なくとも1つを用いて構成されると共に、これらの材料を主成分とし、その他の材料を含有していてもよい。その他の材料としては、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、インジウム(In)、リチウム(Li)などが用いられる。
以上のような高表面エネルギー材料層1fは、透明電極30の光透過性を阻害することなく、かつ有機層1cに含有されている窒素等と金属層1dとが相互作用できる程度に十分に薄い膜厚であることが重要である。このため、このような高表面エネルギー材料層1fの膜厚は、好ましくは0.01nm以上1nm以下であり、より好ましくは0.05nm以上0.5nm以下である。また、連続した膜として構成されている必要はなく、島状であったり、複数の孔を有する形状であっても良い。このような高表面エネルギー材料層1fは、金属層1dと共に、透明電極30における実質的な電極層部分を構成する。
尚、このような高表面エネルギー材料層1fの成膜方法が特に限定されることはないが、なかでも蒸着法(特に電子ビーム蒸着法)やスパッタ法が好ましく適用される。
<透明電極30の効果>
このような透明電極30は、有機層1cと金属層1dとの間に銀(Ag)よりも昇華熱エンタルピーが大きい材料を用いて構成された高表面エネルギー材料層1fを挟持した構成である。これにより、銀を主成分とする金属層1dは、高表面エネルギー材料層1fを構成する材料と銀(Ag)との相互作用、および有機層1cを構成する窒素原子又は硫黄原子と銀(Ag)との相互作用により、隣接界面においての銀の拡散距離が減少して凝集が抑えられたものとなる。
このため、一般的には核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易い銀薄膜が、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されるようになる。これにより、本実施形態では、図2に示した平滑層1eを有する透明電極20の効果に加えて、薄い膜厚でありながらも、さらに均一な膜厚の金属層1dが得られるようになる。
以上のような金属層1dにおいての銀の凝集を抑える効果を得るためには、高表面エネルギー材料層1fの膜厚は極薄膜で良いため、高表面エネルギー材料層1fでの光の吸収が最小限に抑えられ、透明電極30の光透過性が阻害されることはない。また、高表面エネルギー材料層1fの膜厚が極薄膜であることにより、有機層1cを構成する窒素又は硫黄が高表面エネルギー材料層1fを介して金属層1dを構成する銀と相互作用することも可能となる。これにより、各層間での密着性のバランスが図られ、さらに透明電極30の耐久性の向上が図られたものとなる。
したがって、本実施形態の透明電極30は、第2実施形態の透明電極20と比較して、さらに導電性の向上と耐久性の向上を図ることが可能となり、信頼性の向上が図られる。
さらに、本実施形態は、第2実施形態の透明電極20に高表面エネルギー材料層1fを設ける構成を説明したが、第1実施形態の透明電極10と組み合わせても良い。この場合、図3に示す透明電極30において、例えば透明基板11の上部に、散乱層1a、金属酸化物層1b、有機層1c、高表面エネルギー材料層1f、及び金属層1dの順に設けた構成となる。
以上のように、本実施形態と第1実施形態とを組み合わせた構成の透明電極は、第1実施形態の透明電極10と比較して、有機層1cと金属層1dとの間に高表面エネルギー材料層1fを挟持した構成であるため、第1実施形態の効果に加えて、さらに均一な膜厚の金属層1dが得られるようになる。これにより、導電性と光透過性の向上を図るとともに耐久性の向上を図ることができる。
≪4.第4実施形態:ポリシラザン改質層を設けた積層体を有する透明電極≫
図9は、本発明の第4実施形態の透明電極40の構成を示す断面模式図である。この図に示す透明電極40が、先の図8を用いて説明した透明電極30と異なるところは、透明基板11と散乱層1aとの間にさらにポリシラザン改質層1gを設け、7層構造の積層体40’を有する透明電極40としたところにあり、他の構成は同一である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち透明電極40における積層体40’は、透明基板11上に、さらにポリシラザン改質層1gを設けた7層構造であり、透明基板11と散乱層1aとの間にポリシラザン改質層1gを挟んだ7層構造である。すなわち、透明基板11の上部には、ポリシラザン改質層1g、散乱層1a、平滑層1e、金属酸化物層1b、有機層1c、高表面エネルギー材料層1f、及び金属層1dがこの順に設けられている。
<ポリシラザン改質層1g>
ポリシラザン改質層1gとは、ポリシラザン含有液を塗布して得られたポリシラザン含有層に改質処理を施して形成された層である。この改質層は、主にケイ素酸化物又は酸化窒化ケイ素化合物から形成されている。
ケイ素酸化物又は酸化窒化ケイ素化合物のポリシラザン改質層1gを形成するためのケイ素酸化物、又は、酸化窒化ケイ素化合物の供給は、CVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法)のようにガスとして供給されるよりも、透明基板11表面に塗布したほうがより均一で、平滑な層を形成することができる。CVD法などの場合は気相で反応性が増した原料物質が透明基板11表面に堆積する工程と同時に、気相中で不必要なパーティクルよばれる異物が生成することが知られている。これらの発生したパーティクルが堆積することで、表面の平滑性が低下する。塗布法では、原料を気相反応空間に存在させないことにより、これらパーティクルの発生を抑制することが可能になる。このため、塗布法を用いることにより平滑な面を形成することができる。
(ポリシラザン含有層)
ポリシラザン含有層は、透明基板11上の少なくとも1層にポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成される。
ここで、「ポリシラザン」とは、ケイ素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。ポリシラザンは下記一般式(I)で表される。
Figure 2014188913
透明基板11が透明樹脂フィルムからなる場合、その透明樹脂フィルムを損なわないように一般式(I)で表されるポリシラザンを用いたポリシラザン改質層1gを形成するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものがよい。
上記一般式(I)中の、「R001」、「R002」及び「R003」のそれぞれは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、又は、アルコキシ基である。本実施形態では、散乱層1aの緻密性の観点から、上記一般式(I)中の「R001」、「R002」及び「R003」が全て水素原子である、パーヒドロポリシラザン(PHPS)を形成材料として用いることが特に好ましい。
上記一般式(I)中の、「R001」、「R002」及び「R003」のそれぞれは、独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基などを表す。
得られるバリア膜としての緻密性の観点からは、「R001」、「R002」及び「R003」のすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより透明基板11との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記一般式(I)で示されるポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
ポリシラザン含有液を調製する有機溶媒としては、具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの溶剤は、ポリシラザンの溶解度や溶剤の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の溶剤を混合してもよい。なお、アルコール系や水分を含有する溶剤は、ポリシラザンと容易に反応してしまうため好ましくない。
ポリシラザン含有液中のポリシラザン濃度は目的とするシリカ膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度である。
有機ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。アルキル基、特にもっとも分子量の少ないメチル基を有することにより透明基板11との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
酸化ケイ素化合物への転化を促進するために、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
(ポリシラザン含有層の形成工程)
上述したポリシラザン含有層は、改質処理前又は処理中に水分が除去されていることが好ましい。そのために、ポリシラザン含有層中の溶媒を取り除く目的の第一工程と、それに続くポリシラザン含有層中の水分を取り除く目的の第二工程に分かれていることが好ましい。ここでは、ポリシラザン含有層の水分を取り除く工程を説明する。尚、この工程は第1実施形態の散乱層1aの形成工程に用いてもよい。
第一工程は、ポリシラザン含有層中の有機溶媒を取り除くための工程で、有機溶媒を取り除くための方法としては、熱処理などの方法で適宜決めることができるが、このときに水分が除去される条件であってもよい。熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度が好ましいが、透明基板11が樹脂基板からなる場合には、樹脂基板への熱ダメージを考慮し温度と処理時間を決める。例えば、透明基板11にガラス転位温度(Tg)が70℃のPET基板を用いる場合には、熱処理温度は200℃以下を設定することができる。処理時間は溶媒が除去され、かつ透明基板11への熱ダメージが少なくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が200℃以下であれば30分以内に設定することができる。
第二工程は、ポリシラザン含有層中の水分を取り除くための工程で、水分を除去する方法としては低湿度環境に維持される形態が好ましい。低湿度環境における湿度は、温度により変化するので温度と湿度の関係は露点温度の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点温度は4度以下(温度25度/湿度25%)で、より好ましい露点温度は−8度(温度25度/湿度10%)以下、さらに好ましい露点温度は(温度25度/湿度1%)−31度以下であり、維持される時間はポリシラザン含有層の膜厚によって適宜変わる。ポリシラザン含有層の厚さが1μm以下の条件においては、好ましい露点温度は−8度以下で、維持される時間は5分以上である。また、水分を取り除きやすくするために減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜0.1MPaを選ぶことができる。
第一工程の条件に対する第二工程の好ましい条件としては、例えば第一工程で温度60〜150℃、処理時間1分〜30分間で溶媒を除去したときには、第二工程の露点は4度以下で処理時間は5分〜120分により水分を除去する条件を選ぶことができる。第一工程と第二工程の区分は露点の変化で区別することができ、工程環境の露点の差が10度以上変わることで区分ができる。
ポリシラザン含有層は第二工程により水分が取り除かれた後も、その状態を維持されて改質処理されることが好ましい。
(ポリシラザン含有層の含水率)
ポリシラザン含有層の含水量は以下の分析方法で検出できる。
ヘッドスペース−ガスクロマトグラフ/質量分析法
装置:HP6890GC/HP5973MSD
オーブン:40℃(2min)、その後、10℃/minの速度で150℃まで昇温
カラム:DB−624(0.25mmid×30m)
注入口:230℃
検出器:SIM
m/z=18
HS条件:190℃・30min
ポリシラザン含有層中の含水率は、上記の分析方法により得られる含水量からポリシラザン含有層の体積で除した値と定義され、第二工程により水分が取り除かれた状態において、好ましくは0.1%以下である。さらに好ましい含水率は0.01%以下(検出限界以下)である。
改質処理前、又は改質中に水分が除去されることでシラノールに転化したポリシラザンの脱水反応を促進するために好ましい形態である。
(改質処理)
ポリシラザン含有層の改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。この改質処理は、例えば電子線や、紫外線照射処理を適用することができる。この他にも、プラズマやオゾンの照射処理、または加熱処理を適用しても良い。ただし、シラザン化合物の置換反応による酸化ケイ素膜又は酸化窒化ケイ素膜の作製には450℃以上の高温が必要であり、透明基板11としてプラスチック等のフレキシブル基板を用いた場合には適応が難しい。プラスチック基板への適応のためには、より低温で転化反応が可能なプラズマやオゾンや紫外線を使う転化反応が好ましい。特に、希ガスエキシマランプを用いた真空紫外線照射による改質処理が好ましい。
以下、改質処理として行われる各処理のうち、1.紫外線照射処理、2.真空紫外線照射処理(エキシマ照射処理)3.プラズマ処理、をこの順に説明する。
(1.紫外線照射処理)
改質処理方法としての紫外線照射処理は、紫外線(紫外光と同義)を照射することで生成されるオゾンや活性酸素原子の高い酸化能力により、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素膜又は酸化窒化ケイ素膜の形成を行う方法である。
この紫外線照射により、透明基板11が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するOとHOや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるセラミックス膜がいっそう緻密になる。
本実施形態に係る方法では、常用されているいずれの紫外線発生装置でも使用することが可能である。
なお、本発明において、「紫外線」とは、一般には、10〜400nmの波長を有する電磁波をいうが、後述する真空紫外線(10〜200nm)処理以外の紫外線照射処理の場合は、好ましくは210〜350nmの紫外線を用いる。
紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している透明基板11がダメージを受けない範囲に、照射強度や照射時間を設定する。また、紫外線の照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
透明基板11としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、たとえば2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基板表面の強度が20〜300mW/cm、好ましくは50〜200mW/cmになるように基板−ランプ間距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基板温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には基板の変形や、強度の劣化など、基板が損なわれる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムや、金属等の基板の場合には、より高温での処理が可能である。従って、この紫外線照射時の基板温度に一般的な上限はなく、基板の種類によって当業者が適宜設定することができる。また、紫外線照射雰囲気に特に制限はなく、空気中で実施すればよい。
このような紫外線の発生方法としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ(172nm、222nm、308nmの単一波長、例えば、ウシオ電機(株)製)、UV光レーザー、等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線をポリシラザン塗膜に照射する際には、効率の向上のため均一な照射を達成するためにも、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから塗膜に当てることが望ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基板の形状によって適宜選定することができる。例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザン塗膜を表面に有する基板(例、シリコンウェハー)を上記のような紫外線発生源を具備した紫外線焼成炉で処理することができる。紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、アイグラフィクス(株)製を使用することができる。また、ポリシラザン塗膜を表面に有する基板が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、塗布される基板やコーティング組成物の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分、好ましくは0.5秒〜3分である。
(2.真空紫外線照射処理;エキシマ照射処理)
本実施形態において、さらに好ましい改質処理方法としては、真空紫外線照射による処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、ポリシラザン含有層中のシラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光のエネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化シリコン膜の形成を行う方法である。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
エキシマ発光とは、Xe,Kr,Ar,Neなどの希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電などによりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノンの場合には、
e+Xe→e+Xe
Xe+Xe+Xe→Xe2*+Xe
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2*が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。
また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電である。micro dischargeのストリーマ管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。このように、誘電体バリア放電とは、micro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分かる光のチラツキを生じる。また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。容量性結合による無電極電界放電で、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極およびその配置は基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られるため、チラツキが無い長寿命のランプが得られる。
誘電体バリア放電の場合はmicro dischargeが電極間のみで生じるため、放電空間全体で放電を行わせるには外側の電極は外表面全体を覆い、かつ外部に光を取り出すために光を透過するものでなければならない。このため細い金属線を網状にした電極が用いられる。この電極は光を遮らないようにできるだけ細い線が用いられるため、酸素雰囲気中では真空紫外光により発生するオゾンなどにより損傷しやすい。
これを防ぐためにはランプの周囲、すなわち照射装置内を窒素などの不活性ガスの雰囲気にし、合成石英の窓を設けて照射光を取り出す必要が生じる。合成石英の窓は高価な消耗品であるばかりでなく、光の損失も生じる。
二重円筒型ランプは外径が25mm程度であるため、ランプ軸の直下とランプ側面では照射面までの距離の差が無視できず、照度に大きな差を生じる。したがって仮にランプを密着して並べても、一様な照度分布が得られない。合成石英の窓を設けた照射装置にすれば酸素雰囲気中の距離を一様に出来、一様な照度分布が得られる。
無電極電界放電を用いた場合には外部電極を網状にする必要は無い。ランプ外面の一部に外部電極を設けるだけでグロー放電は放電空間全体に広がる。外部電極には通常アルミのブロックで作られた光の反射板を兼ねた電極がランプ背面に使用される。しかし、ランプの外径は誘電体バリア放電の場合と同様に大きいため一様な照度分布にするためには合成石英が必要となる。
細管エキシマランプの最大の特徴は構造がシンプルなことである。石英管の両端を閉じ、内部にエキシマ発光を行うためのガスを封入しているだけである。したがって、非常に安価な光源を提供できる。
二重円筒型ランプは内外管の両端を接続して閉じる加工をしているため、細管ランプに比べ取り扱いや輸送で破損しやすい。また、細管ランプの管の外径は6〜12mm程度で、あまり太いと始動に高い電圧が必要になる。
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であってもよいが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定できるとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
Xeエキシマランプは波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラディカルな酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光のエネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン含有層の改質を実現できる。したがって、波長185nm、254nmの発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板などへの照射を可能としている。
エキシマランプは光の発生効率が高いため低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長のエネルギーを照射するため、解射対象物の表面温度の上昇が抑えられる特徴を持っている。このため、熱の影響を受けやすいとされるPETなどのフレシキブルフィルム材料を透明基板11として用いた場合に適している。
(3.プラズマ処理)
改質処理としてのプラズマ処理は、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理方法が好ましい。大気圧プラズマ処理方法は、大気圧下で発生させたプラズマによりポリシラザン含有層の改質処理を行う方法である。また、本実施形態においては、真空紫外線によりエキシマ処理されたポリシラザン改質層1gに、追加の処理としてプラズマ処理を施すことがより好ましい。
プラズマ処理の一例として、大気プラズマ処理について説明する。ここで、大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス及び/又は周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
大気圧プラズマは、具体的には、国際公開第2007−026545号に記載される様に、放電空間に異なる周波数の電界を2つ以上形成し、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を形成することが好ましい。
大気圧プラズマ処理は、第1の高周波電界の周波数ω1より第2の高周波電界の周波数ω2が高く、且つ、第1の高周波電界の強さV1と、第2の高周波電界の強さV2と、放電開始電界の強さIVとの関係が、
V1≧IV>V2 又は V1>IV≧V2
を満たし、第2の高周波電界の出力密度が、1W/cm以上である。
この様な放電条件をとることにより、例えば窒素ガスのように放電開始電界強度が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、ポリシラザン含有層の十分な改質処理を行うことができる。
上記の測定により放電ガスを窒素ガスとした場合、その放電開始電界強度IV(1/2Vp−p)は3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の印加電界強度を、V1≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下を好ましく用いることができる。また、この電界波形としては、連続波でもパルス波でもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上を好ましく用いることができる。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、ポリシラザン含有層の十分な改質処理を行うことができる。上限は200MHz程度が望ましい。
このような2つの電源から高周波電界を形成することは、第1の高周波電界によって高い放電開始電界強度を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また、第2の高周波電界の高い周波数及び高い出力密度によりプラズマ密度を高くすることでポリシラザン含有層の十分な改質処理が行われ、緻密で良質なポリシラザン改質層1gが得られる。
以上のようなポリシラザン含有層の改質処理は、例えば、ポリシラザン含有層上に金属層1dまでの各層を形成する前後に、ポリシラザン含有層の改質処理を行ってもよい。
尚、本実施形態では、例えばポリシラザン改質層1g等が積層される透明基板11の表面に、必要に応じて、各種層を設けてもよい。例えば、透明基板11の表面にアンカーコート層(易接着層)を設けてもよい。この場合には、透明基板11と、ポリシラザン改質層1g(又はシラザン化合物層)との密着性を向上させることができる。
アンカーコート層の形成材料(アンカーコート剤)としては、任意のアンカーコート剤を用いることができるが、例えば、シランカップリング剤を用いることが好ましい。この場合には、透明基板11上に、単分子レベルからナノレベルの薄膜が形成され、層界面で分子結合を形成することができ、高い接着性を得ることができる。
ここでは、本実施形態にアンカーコート層を組み合わせる例を説明したが、上述した第1〜3実施形態と組み合わせてもよいし、後述する第5、6の実施形態と組み合わせてもよい。
<透明電極40の効果>
このような透明電極40は、透明基板11と散乱層1aとの間にポリシラザン改質層1gを挟持した構成である。これにより、ガスバリア性を高めるとともに、透明電極40を屈曲させた際に、各層に加わる応力をポリシラザン改質層1gで緩和することが可能となる。したがって、本実施形態では、図3に示した高表面エネルギー材料層1fを有する透明電極30の効果に加えて、透明電極40のガスバリア性を高めるとともに、透明電極40における各層間での密着性のバランスが図られ、さらに耐久性の向上が図られたものとなる。
尚、本実施形態は、第3実施形態の透明電極30にポリシラザン改質層1gを設ける構成を説明したが、第1又は第2実施形態の透明電極10又は20と組み合わせても良い。また、図4に示す透明電極40において、平滑層1eを設けない構成としてもよい。
以上のように、本第4実施形態と第1及び第2実施形態とを組み合わせた構成の透明電極は、第1又は第2実施形態の透明電極10又は20と比較して、透明基板11と散乱層1aとの間にポリシラザン改質層1gを挟持した構成であるため、第1又は第2実施形態の効果に加えて、透明電極のガスバリア性を高めるとともに、透明電極における各層間での密着性のバランスが図られ、さらに耐久性の向上が図られたものとなる。
≪5.第5実施形態:バリア層を設けた積層体を有する透明電極≫
図10は、本発明の第5実施形態の透明電極50の構成を示す断面模式図である。この図に示す透明電極50が、先の図9を用いて説明した透明電極40と異なるところは、透明基板11の一主面上に、金属酸化物で構成されたバリア層1hを設け、8層構造の積層体50’を有する透明電極50としたところにあり、他の構成は同一である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
透明電極50における積層体50’は、透明基板11上に、さらにバリア層1hを設けた8層構造であり、透明基板11とポリシラザン改質層1gとの間にバリア層1hを挟んだ8層構造である。すなわち、透明基板11の上部には、バリア層1h、ポリシラザン改質層1g、散乱層1a、平滑層1e、金属酸化物層1b、有機層1c、高表面エネルギー材料層1f、及び金属層1dがこの順に設けられている。
<バリア層1h>
バリア層1hは、透明基板11の一主面上に隣接して設けられ、金属酸化物で構成された層である。このようなバリア層1hを形成する材料としては、素子の劣化をもたらす水分や酸素等素子の浸入を抑制する機能を有する材料を用いる。例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等のケイ素化合物、酸化アルミニウム等を用いることができる。特に、本実施形態においては、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムが好ましく用いられる。
ここで、バリア層1hを構成する材料がケイ素化合物である場合には、炭素(C)、窒素(N)、及び、酸素(O)から選ばれる少なくとも1種以上の元素を含む。
(ケイ素化合物の組成)
ケイ素化合物は、表面から深さ方向(厚さ方向)において、傾斜状に組成が変化することが好ましい。この組成変化は、直線状や曲線状でよく、実質的に連続であればよい。
ケイ素化合物の組成変化は、ケイ素化合物を構成する任意の元素の元素比率変化から定義される。例えば、ケイ素炭素酸化物においては、炭素元素又は酸素の元素比率の変化量から、ケイ素化合物の組成変化量を定義する。つまり、ケイ素化合物の組成変化は、ケイ素化合物に含まれるC、N、及び、Oから選ばれる任意の1種の元素比率の変化により定義される。或いは、C、N、及び、Oから選ばれる任意の元素の合計比率、例えば、炭素と酸素の合計比率や、炭素と窒素の合計比率、又は、炭素と窒素と酸素との合計比率の変化により、ケイ素化合物の組成変化が定義される。
これらのC、N、及び、Oから選ばれる任意の元素、又は、任意の元素の合計の元素比率が、表面から厚さ方向に向けて連続的に変化することを、バリア層1hのケイ素化合物の連続的な組成変化とする。
ケイ素化合物の組成は、表面から30nm深さの領域において、5%以上変化していることが好ましく、10%以上変化していることがさらに好ましい。特に、表面から15nm深さの領域において、5%以上変化していることが好ましく、10%以上変化していることがさらに好ましい。
ケイ素化合物が深さ方向で組成変化する領域は、後述する表面処理が効力を発する領域となる。
また、ケイ素化合物の組成変化は、C、N、及び、Oから選ばれる少なくとも1種以上の元素の元素比率が表面から厚さ方向に向けて連続的に増加していてもよく、或いは、元素比率が表面から厚さ方向に向けて連続的に減少していてもよい。
バリア層1hの厚さは、5〜3000nmの範囲であることが好ましく、10〜2000nmの範囲であることより好ましく、100〜1000nmの範囲であることが特に好ましい。バリア層1hの厚さが上記範囲を外れると、バリア層1hのガスバリア性が不十分となる。
また、バリア層1hを複数の層から形成する場合には、バリア層1hの全体の厚さが10〜10000nmの範囲であり、10〜5000nmの範囲であることが好ましく、100〜3000nmの範囲であることより好ましく、200〜2000nmの範囲であることが特に好ましい。
[バリア層1hの形成工程]
バリア層1hの薄膜を形成する方法としては、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。
物理気相成長法は、気相中で透明基板11の表面に物理的手法により目的とする物質(例えば、炭素膜等)の薄膜を堆積する方法であり、これらの方法としては、蒸着(抵抗加熱法、電子ビーム蒸着、分子線エピタキシー)法、また、イオンプレーティング法、スパッタ法等がある。一方、化学気相成長法(化学蒸着法、Chemical Vapor Deposition)は、気相中で透明基板11に、目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを励起した放電ガスに混合して供給し、透明基板11表面或いは気相での化学反応によって、透明基板11上に薄膜を堆積する方法である。特に、化学反応を活性化する目的で、プラズマなどを発生させる方法などがあり、熱CVD法、触媒化学気相成長法、光CVD法、プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法など公知のCVD方式等がある。
本実施形態においては、透明基板11にバリア層1hを形成する方法として、成膜速度や処理面積の観点からプラズマCVD法が好ましく、真空を必要としない大気圧プラズマCVD法がさらに好ましい。大気圧または大気圧近傍でのプラズマCVD処理を行う大気圧プラズマCVD法は、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために成膜速度が速く、更には通常のCVD法の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件ではガスの平均自由工程が非常に短いために極めて均質の膜が得られる。尚、バリア層1hを構成する材料がケイ素化合物である場合には、プラズマ化学気相成長(プラズマCVD,PECVD)法により形成されることが好ましい。
(表面処理)
バリア層1hは、ポリシラザン改質層1gと接する側の面(表面)が、表面処理により改質されていてもよい。この表面処理は、ポリシラザン改質層1gとの接着性を向上させるために行われる。このため、バリア層1hの表面処理は、ポリシラザン改質層1gを形成する前に行う必要がある。
表面処理方法は、透明基板11として樹脂フィルムを用いることを考慮し、低温で行うことが可能な方法を選択することが好ましい。例えば、プラズマ、オゾン、及び、紫外線を用いる処理が好ましい。
表面処理により、バリア層1hの表面にヒドロキシル基(OH)、アシル基(COH)、カルボキシル基(COOH)等の親水基を形成する。この親水基により、バリア層1h上に形成されるポリシラザン改質層1gを形成する際のポリシラザンの塗布液の濡れ性が向上する。このため、ポリシラザン改質層1gの形成が容易になる。さらに、ヒドロキシル基(OH)等とポリシラザンと物理的又は化学的な相互作用(ファンデルワールス力や水素結合)により、バリア層1hとポリシラザン改質層1gとの接着性が向上する。
例えば、Xeエキシマランプによる表面処理では、エキシマランプから光子エネルギーの高い波長172nmの真空紫外光(VUV)が発生する。このVUVが蒸着層12に照射されると、バリア層1hを構成するケイ素化合物のケイ素と炭素との結合(Si−C)や、ケイ素と酸素との結合(Si−O)が、光子エネルギーにより切断される。
また、VUVが酸素に吸収され、活性酸素とオゾンを生成する。生成されたオゾンは再び分解して、活性酸素を形成する。
ケイ素化合物から分解された原子と、発生した活性酸素との結合により、ヒドロキシル基(OH)、アシル基(COH)、カルボキシル基(COOH)等の親水基が、蒸着層の表面に形成される。
<透明電極50の効果>
このような透明電極50は、透明基板11の一主面上に、金属酸化物で構成されたバリア層1hを設けた構成である。これにより、透明電極50のガスバリア性を高めることが可能となり、素子に劣化をもたらすような水分や酸素等素子の浸入が抑制される。したがって、本実施形態では、図9に示したポリシラザン改質層1gを有する透明電極40の効果に加えて、透明電極50のガスバリア性をさらに高めることが可能となり、透明電極50における各層間での密着性のバランスが図られ、さらに耐久性の向上が図られたものとなる。
尚、本実施形態は、第4実施形態の透明電極40にバリア層1hを設ける構成を説明したが、第1、第2又は第3実施形態の透明電極10、20、又は30と組み合わせても良い。また、図5に示す透明電極50において、平滑層1e、高表面エネルギー材料層1f、及びポリシラザン改質層1gの少なくとも1つを設けない、いずれかの構成としてもよい。
以上のように、本実施形態と第1、第2又は第3実施形態とを組み合わせた構成の透明電極は、第1、第2又は第3実施形態の透明電極10、20、又は30と比較して、透明基板11の一主面上に、バリア層1hを設けた構成であるため、第1〜第3実施形態の効果に加えて、透明電極のガスバリア性をさらに高めることが可能となり、透明電極50における各層間での密着性のバランスが図られ、さらに耐久性の向上が図られたものとなる。
≪6.第6実施形態:9層構造の積層体を有する透明電極≫
図11は、本発明の第6実施形態の透明電極60の構成を示す断面模式図である。この図に示す透明電極60が、先の図10を用いて説明した透明電極50と異なるところは、金属酸化物層1bの透明基板11側の面にさらにフッ素含有層1iを設け、9層構造の積層体60’を有する透明電極60としたところにあり、他の構成は同一である。このため、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
すなわち透明電極60における積層体60’は、平滑層1e上に、さらにフッ素含有層1iを設けた9層構造であり、平滑層1eと金属酸化物層1bとの間にフッ素含有層1iを挟んだ9層構造である。すなわち、透明基板11の上部には、バリア層1h、ポリシラザン改質層1g、散乱層1a、平滑層1e、フッ素含有層1i、金属酸化物層1b、有機層1c、高表面エネルギー材料層1f、及び金属層1dがこの順に設けられている。
<フッ素含有層1i>
フッ素含有層1iは、金属酸化物層1bの透明基板11側の面に設けられた層であり、フッ素原子(F)を有する化合物を用いて構成されている。フッ素含有層1iを構成する化合物は、例えば、無機化合物又は有機化合物が用いられる。
ここで、フッ素含有層1iを無機化合物で構成する場合には、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化アルミニウム(AlF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化セシウム(CsF)などが挙げられる。
また、フッ素含有層1iを有機化合物で構成する場合の化合物の具体例(F1〜F4)を以下に示す。
Figure 2014188913
以上のようなフッ素含有層1iは、透明電極60の光透過性を阻害しない程度の厚さとし、例えば0.1〜1000nmの範囲であることが好ましく、10〜300nmの範囲であることがより好ましい。
[フッ素含有層1iの成膜方法]
以上のようなフッ素含有層1iの成膜方法としては、無機化合物を用いて構成されている場合、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)のドライプロセスなどが挙げられる。有機化合物を用いて構成されている場合、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)のドライプロセス、または塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法などが挙げられる。
<透明電極60の効果>
このような透明電極60は、金属酸化物層1bの透明基板11側の面に、フッ素含有層1iを設けた構成である。これにより、フッ素含有層と隣接する層との界面において、フッ素含有層1i中に含まれるフッ素(F)原子の電気陰性度によって、フッ素含有層と隣接する層との密着性を高める。さらに、フッ素含有層1iは柔軟性を備えるため、透明電極60を屈曲させた際に、各層に加わる応力をフッ素含有層1iで緩和することが可能となる。これにより、本実施形態では、図10に示したバリア層1hを有する透明電極50の効果に加えて、透明電極50における各層間での密着性のバランスが図られ、さらに耐久性の向上が図られたものとなる。
尚、本実施形態は、第5実施形態の透明電極50にフッ素含有層1iを設ける構成を説明したが、第1、第2、第3又は第4実施形態の透明電極10、20、30又は40と組み合わせても良い。また、図6に示す透明電極60において、平滑層1e、高表面エネルギー材料層1f、ポリシラザン改質層1g、バリア層1hの少なくとも1つを設けない、いずれかの構成としてもよい。
以上のように、本実施形態と第1、第2、第3又は第4実施形態の透明電極10、20、30又は40とを組み合わせた構成の透明電極は、第1、第2、第3又は第4実施形態の透明電極10、20、30又は40と比較して、金属酸化物層1bの透明基板11側の面にフッ素含有層1iを設けた構成であるため、第1〜第4実施形態の効果に加えて、各層間での密着性のバランスが図られ、さらに耐久性の向上が図られたものとなる。
≪7.第7実施形態:透明電極の用途≫
第1〜第6実施形態で説明した透明電極は、各種電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例としては、有機電界発光素子、LED(light Emitting Diode)等が挙げられ、これらの電子デバイスにおいて光取り出し性を必要とする電極部材として、上述の電極を用いることができる。
以下では、用途の一例として、透明電極をアノード(すなわち陽極)およびカソード(すなわち陰極)として用いた有機電界発光素子の実施の形態を説明する。
≪8.第8実施形態:有機電界発光素子≫
<透明電極を用いた有機電界発光素子の構成>
図12は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極を用いた有機電界発光素子の一構成例を示す断面構成図である。以下にこの図に基づいて有機電界発光素子の構成を説明する。尚、ここでは、透明電極として第1実施形態の透明電極10を適用した構成を説明する。
図12に示す有機電界発光素子ELは、透明電極10における積層体10’の上部に、発光機能層3、および対向電極5をこの順に積層して構成されている。このうち、透明電極として、先に説明した本発明の透明電極10を用いているところが特徴的である。このため有機電界発光素子ELは、少なくとも透明基板11側から発光光hを取り出すボトムエミッション型として構成されている。
また有機電界発光素子ELの全体的な層構造が限定されることはなく、一般的な層構造であって良い。ここでは、透明電極10がアノード(すなわち陽極)側に配置され、主に金属層1dがアノードとして機能する一方、対向電極5がカソード(すなわち陰極)として機能する。
この場合、例えば発光機能層3は、アノードとなる透明電極10側から順に、[正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3e]を積層した構成が例示されるが、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。正孔注入層3aおよび正孔輸送層3bは、正孔輸送性と正孔注入性とを有する正孔輸送/注入層として設けられても良い。電子輸送層3dおよび電子注入層3eは、電子輸送性と電子注入性とを有する単一層として設けられても良い。またこれらの発光機能層3のうち、例えば電子注入層3eは無機材料で構成されている場合もある。
尚、積層体10’における金属層1dをカソードとし、対向電極5をアノードとする場合であれば、透明電極10側から発光機能層3の積層順を、上述と逆にすればよい。
また発光機能層3は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていて良い。さらに発光層3cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させて発光層ユニットとして形成されていても良い。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能しても良い。さらにカソードである対向電極5も、必要に応じた積層構造であっても良い。このような構成において、透明電極10と対向電極5とで発光機能層3が挟持された部分のみが、有機電界発光素子ELにおける発光領域となる。
以上のような構成の有機電界発光素子ELは、有機材料等を用いて構成された発光機能層3の劣化を防止することを目的として、透明基板11上において後述する封止材17で封止されている。この封止材17は、接着剤19を介して透明基板11側に固定されている。ただし、透明電極10および対向電極5の端子部分は、透明基板11上において発光機能層3によって互いに絶縁性を保った状態で封止材17から露出させた状態で設けられていることとする。
以下、上述した有機電界発光素子ELを構成するための主要各層の詳細を、透明電極10、対向電極5、発光機能層3の発光層3c、発光機能層3の他の層、および封止材17の順に説明する。その後、有機電界発光素子ELの作製方法を説明する。
[透明電極10(アノード側)]
透明電極10は、先に説明した本発明の透明電極10であり、透明基板11上に4層構造の積層体10’を設けた構成である。この透明電極10は、透明基板11の一主面上に、散乱層1a、金属酸化物層1b、有機層1c、金属層1dをこの順に積層した4層構造の積層体10’を有する構成である。ここでは特に、透明電極10を構成する金属層1dが実質的なアノードとなる。
尚、透明電極として、図7〜11を用いて説明した第2〜6実施形態の透明電極を適用してもよい。例えば、図7を用いて説明した第2実施形態の透明電極20を適用する場合には、散乱層1aと金属酸化物層1bとの間に平滑層1eが配置された構成となる。
尚、透明電極10は、その端子部分を封止材17から露出させる形状にパターニングされていることとしたが、散乱層1a、金属酸化物層1b、及び有機層1cのそれぞれは、絶縁性が良好なものであれば、パターニングされていなくても良く、金属層1dのみがパターニングされていれば良い。
[対向電極5(カソード)]
対向電極5は、発光機能層3上の上部電極として配置されている。この対向電極5は、発光機能層3に電子を供給するためのカソードとして機能する電極膜であり、金属、合金、有機または無機の導電性化合物、およびこれらの混合物が用いられる。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体などが挙げられる。
以上のような対向電極5は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができるが、発光機能層3上への成膜であれば、蒸着法によって成膜されることが好ましい。また、対向電極5としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で選ばれる。
尚、この有機電界発光素子ELが、対向電極5側からも発光光hを取り出す、両面発光型であれば、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料を選択して対向電極5を構成すれば良い。
[発光層]
本発明に用いられる発光層3cは、発光材料として例えば燐光発光化合物が含有されている。
この発光層3cは、陰極側から注入された電子と、陽極側から注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層3cの層内であっても発光層3cにおける隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層3cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層3c間には非発光性の中間層(図示せず)を有していることが好ましい。
発光層3cの膜厚の総和は1〜100nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmである。尚、発光層3cの膜厚の総和とは、発光層3c間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む膜厚である。
複数層を積層した構成の発光層3cの場合、個々の発光層の膜厚としては、1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、さらに好ましくは1〜20nmの範囲に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
以上のような発光層3cは、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
また発光層3cは、複数の発光材料を混合してもよく、また燐光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)を同一発光層3c中に混合して用いてもよい。
発光層3cの構成として、ホスト化合物(発光ホストともいう)、発光材料(発光ドーパント化合物、ゲスト材料ともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
(ホスト化合物)
発光層3cに含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、発光層3cに含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子ELを高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)化合物が好ましい。ここでいうガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
有機電界発光素子に適用可能なホスト化合物の具体例としては、特開2013−4245の段落[0163]〜[0178]に記載の化合物H1〜H79を例示することができる。特開2013−4245の段落[0163]〜[0178]に記載の化合物H1〜H79を本願明細書に組み込む。
また、その他の公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物を用いることもできる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
(発光材料)
本発明で用いることのできる発光材料としては、燐光発光性化合物(燐光性化合物、燐光発光材料ともいう)が挙げられる。
燐光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明において燐光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
燐光発光性化合物の発光の原理としては2種挙げられる。一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーを燐光発光性化合物に移動させることで燐光発光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型であり、もう一つは、燐光発光性化合物がキャリアトラップとなり、燐光発光性化合物上でキャリアの再結合が起こり燐光発光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、燐光発光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
燐光発光性化合物は、一般的な有機電界発光素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、少なくとも一つの発光層3cに2種以上の燐光発光性化合物を含有していてもよく、発光層3cにおける燐光発光性化合物の濃度比が発光層3cの厚さ方向で変化していてもよい。
燐光発光性化合物は好ましくは発光層3cの総量に対し0.1体積%以上30体積%未満である。
本発明に適用可能な燐光発光性化合物としては、特開2013−4245の段落[0185]〜[0244]に記載の一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)で表される化合物、及び、例示化合物を好ましく挙げることができる。また、その他の例示化合物として、Ir−46、Ir−47、Ir−48を以下に示す。特開2013−4245の段落[0185]〜[0244]に記載の一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)で表される化合物、及び、例示化合物(Pt−1〜Pt−3、Os−1、Ir−1〜Ir−45)を本願明細書に組み込む。
Figure 2014188913
尚、これらの燐光発光性化合物(燐光発光性の金属錯体ともいう)は、発光層3cに発光ドーパントとして含有されることが好ましい態様であるが、発光層3c以外の各機能層に含有されていてもよい。
また、燐光発光性化合物は、発光層3cに使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
上記の燐光発光性化合物(燐光発光性金属錯体等ともいう)は、例えば、Organic Letters誌、vol.3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
(蛍光発光材料)
蛍光発光材料としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
[注入層:正孔注入層3a、電子注入層3e]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層3cの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層3aと電子注入層3eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層3aであれば、アノードと発光層3cまたは正孔輸送層3bの間、電子注入層3eであればカソードと発光層3cまたは電子輸送層3dとの間に存在させてもよい。
正孔注入層3aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層3eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。本発明の電子注入層3eはごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
[正孔輸送層3b]
正孔輸送層3bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層3a、電子阻止層も正孔輸送層3bに含まれる。正孔輸送層3bは単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような所謂、p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層3bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層3bの膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層3bは、上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、正孔輸送層3bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層3bのp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
[電子輸送層3d]
電子輸送層3dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層3e、正孔阻止層(図示せず)も電子輸送層3dに含まれる。電子輸送層3dは単層構造または複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層3d、および積層構造の電子輸送層3dにおいて発光層3cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層3cに伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層3dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層3cの材料としても例示されるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層3dの材料として用いることができるし、正孔注入層3a、正孔輸送層3bと同様にn型Si、n型SiC等の無機半導体も電子輸送層3dの材料として用いることができる。
電子輸送層3dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層3dの膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層3dは上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、電子輸送層3dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに電子輸送層3dには、カリウムやカリウム化合物などを含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層3dのn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
また、電子輸送層3dの材料(電子輸送性化合物)としては、例えば、上述の化合物No.1〜No.48の窒素含有化合物、上記一般式(1)〜(8a)で表される窒素含有化合物、上述の化合物1〜166の窒素含有化合物を用いることが好ましい。
また、一般式(9)〜一般式(12)で表される硫黄含有化合物、上述の1−1〜1−9、2−1〜2−11、3−1〜3−23、及び、4−1の硫黄含有化合物を用いることが好ましい。
[阻止層:正孔阻止層、電子阻止層]
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に、必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層3dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上述した電子輸送層3dの構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層3cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層3bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上述した正孔輸送層3bの構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る阻止層の膜厚としては、好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
[封止材17]
封止材17は、有機電界発光素子ELを覆うものであって、光透過性を有していてもいなくても良い。このような封止材17は、板状(フィルム状)の封止部材であって接着剤19によって透明基板11側に固定されるものであっても良く、封止膜であっても良い。
板状(フィルム状)の封止材17としては、例えばガラス基板、ポリマー基板が挙げられ、これに限定されない。また、これらの基板材料をさらに薄型のフィルム状にして用いても良い。
ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
なかでも、素子を薄膜化できるということから、封止材17としてポリマー基板を薄型のフィルム状にしたものを好ましく使用することができる。
さらには、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10-3ml/(m2・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が、1×10-3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
また以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止材17として用いても良い。この場合、上述した基板部材に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
また板状の封止材17の他の例として、金属材料で構成されたものを用いることができる。金属材料としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。このような金属材料は、薄型のフィルム状にして封止材17として用いることにより、有機電界発光素子ELが設けられた発光パネル全体を薄膜化できる。
また以上のような板状の封止材17を透明基板11側に固定するための接着剤19は、封止材17と透明基板11との間に挟持された有機電界発光素子ELを封止するためのシール剤として用いられる。このような接着剤19は、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
またこのような接着剤19としては、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機電界発光素子ELを構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着剤19は、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤19中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止材17と透明基板11との接着部分への接着剤19の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。この接着剤19は、図示したように封止材17の周縁のみに設けられても良いし、硬化後に十分な光透過性を有する材料であれば、封止材17と有機電界発光素子ELとの間に隙間なく充填されても良い。
また板状の封止材17と透明基板11と接着剤19との間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止材17として封止膜を用いる場合、有機電界発光素子ELにおける発光機能層3を完全に覆い、かつ有機電界発光素子ELにおける透明電極10および対向電極5の端子部分を露出させる状態で、透明基板11上に封止膜が設けられる。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機電界発光素子ELにおける発光機能層3の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成されることとする。このような材料として、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機材料が用いられる。さらに封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜と共に、有機材料からなる膜を用いて積層構造としても良い。
これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
以上のような封止材17は、有機電界発光素子ELにおける透明電極10および対向電極5の端子部分を露出させると共に、少なくとも発光機能層3を覆う状態で設けられている。また封止材17に電極を設け、有機電界発光素子ELの透明電極10および対向電極5の端子部分と、この電極とを導通させるように構成されていても良い。
尚、この有機電界発光素子ELが、対向電極5側からも発光光hを取り出すものである場合、封止材17としては、上述した板状の封止部材または封止膜の中から光透過性を有する透明封止材が用いられ、この封止材17の表面も、有機電界発光素子ELの発光光hを取り出す光取り出し面となる。
[保護フィルム]
なお、ここでの図示は省略したが、本発明の有機電界発光素子ELの透明基板11の外側には、保護フィルムを添付することができる。この保護フィルムは、有機電界発光素子ELの透明基板11の表面を保護するためのものである。
保護フィルムとしては、公知の樹脂があげられる。このような樹脂材料としては、例えば、上述した透明基板11で用いた樹脂フィルムと同じ材料が挙げられる。
また、この樹脂材料の表面や内部に光散乱機能を設けてもよい。例えば、このような樹脂材料で構成された透明基材内に光散乱性のフィラーを含有させる方法が挙げられる。透明基材内に光散乱性のフィラーを含有させる場合、含有させる層はハードコート層、透明フィルムのいずれでもよく、光散乱性のフィラーとしては、無機またはポリマーからなる公知のフィラーを使用することができる。
無機化合物の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、およびリン酸カルシウムを挙げることができる。ポリマーの例としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂を挙げることができる。これらフィラーをハードコート層あるいは透明フィルムに添加する場合の添加量は0.1〜30質量%が好ましいが、光散乱性の程度に合わせて調整しても良い。
[保護膜、保護板]
また、ここでの図示は省略したが、透明基板11との間に有機電界発光素子ELおよび封止材17を挟んで保護膜もしくは保護板を設けても良い。この保護膜もしくは保護板は、有機電界発光素子ELを機械的に保護するためのものであり、特に封止材17が封止膜である場合には、有機電界発光素子ELに対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜もしくは保護板を設けることが好ましい。
以上のような保護膜もしくは保護板は、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、またはポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち特に、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
[補助電極]
さらにここでの図示は省略したが、以上のような構成においては、透明電極10の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極10の金属層1dに接して補助電極が設けられていても良い。補助電極は、透明電極1の抵抗を下げる目的で設けるものであって、透明電極1の金属層1dに接して設けられる。補助電極を形成する材料は、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面13aからの発光光hの取り出しの影響のない範囲でパターン形成される。
このような補助電極の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法などが挙げられる。補助電極の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。
<有機電界発光素子の作製方法>
以上のような有機電界発光素子ELの製造は、次のように行う。
まず、透明基板11の一主面上に積層体10’を形成する。ここで、積層体10’の各層における成膜方法は、上述した透明電極10の実施形態で説明した各層の成膜方法にしたがって成膜を行う。
尚、積層体10’の形成は、各層を成膜した後に、成膜された各層を所定形状にパターニングするようにしても良い。また金属層1dの形成前後には、必要に応じて補助電極のパターン形成を行っても良い。
次にこの上に、正孔注入層3a、正孔輸送層3b、発光層3c、電子輸送層3d、電子注入層3eの順に成膜し、発光機能層3を形成する。これらの各層の成膜は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、スパッタ法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法またはスピンコート法が特に好ましい。さらに層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般に化合物を収蔵したボート加熱温度50℃〜450℃、真空度10-6Pa〜10-2Pa、蒸着速度0.01nm/秒〜50nm/秒、基板温度−50℃〜300℃、膜厚0.1μm〜5μmの範囲で、各条件を適宜選択することが望ましい。
次いで、カソードとなる対向電極5を、蒸着法やスパッタ法などの適宜の成膜法によって形成する。
以上のような各層の成膜においては、必要に応じて例えばマスクを用いた成膜を行うか、または各層を成膜した後に、成膜された各層を所定形状にパターニングする。これにより、発光機能層3によって透明電極10と対向電極5との絶縁状態を保ちつつ、透明基板11の周縁に積層体10’および対向電極5の端子部分を引き出した形状に各層をパターン形成する。
尚、金属層1dの形成前後には、必要に応じて補助電極のパターン形成を行っても良い。
以上により、積層体10’が設けられた透明基板11側から発光光hを取り出すボトムエミッション型の有機電界発光素子ELが得られる。またその後には、有機電界発光素子ELにおける積層体10’および対向電極5の端子部分を露出させた状態で、少なくとも発光機能層3を覆う封止材17を設ける。この際、接着剤19を用いて、封止材17を透明基板11側に接着し、これらの封止材17−透明基板11間に有機電界発光素子ELを封止する。
以上により、透明基板11上に所望の有機電界発光素子ELが得られる。このような有機電界発光素子ELの作製においては、一回の真空引きで一貫して発光機能層3から対向電極5まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から透明基板11を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
このようにして得られた有機電界発光素子ELに直流電圧を印加する場合には、アノードである透明電極10(金属層1d)を+の極性とし、カソードである対向電極5を−の極性として、電圧2V以上40V以下程度を印加すると発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。尚、印加する交流の波形は任意でよい。
<有機電界発光素子ELの効果>
以上説明した有機電界発光素子ELは、本発明の導電性と光透過性とを兼ね備えると共に信頼性の向上が図られた透明電極10をアノードとして用い、この透明電極10における金属層1d側に発光機能層3とカソードとなる対向電極5とをこの順に設けた構成である。このため、透明電極10と対向電極5との間に十分な電圧を印加して有機電界発光素子ELでの高輝度発光を実現しつつ、透明電極10側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。しかも、このような性能を長期的に維持することができ、長期信頼性の向上をも図ることが可能である。さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減によっても、発光寿命の向上が図られる。
≪9.第9実施形態:有機電界発光素子の用途≫
上述した構成の有機電界発光素子は、面発光体であるため各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明などの照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これに限定するものではなく、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
また、本発明の有機電界発光素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。この場合、近年の照明装置およびディスプレイの大型化にともない、有機電界発光素子を設けた発光パネル同士を平面的に接合する、いわゆるタイリングによって発光面を大面積化しても良い。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また異なる発光色を有する本発明の有機電界発光素子を2種以上使用することにより、カラーまたはフルカラー表示装置を作製することが可能である。
以下では、用途の一例として照明装置について説明し、次にタイリングによって発光面を大面積化した照明装置について説明する。
≪10.第10実施形態:照明装置−1≫
本発明の照明装置は、上記有機電界発光素子を有する。
本発明の照明装置に用いる有機電界発光素子は、上述した構成の各有機電界発光素子に共振器構造を持たせた設計としてもよい。共振器構造として構成された有機電界発光素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
尚、本発明の有機電界発光素子に用いられる材料は、実質的に白色の発光を生じる有機電界発光素子(白色有機電界発光素子ともいう)に適用できる。例えば、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて混色により白色発光を得ることもできる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色、青色の3原色の3つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した2つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光または蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光またはリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよい。白色有機電界発光素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせて混合したものでもよい。
このような白色有機電界発光素子は、各色発光の有機電界発光素子をアレー状に個別に並列配置して白色発光を得る構成と異なり、有機電界発光素子自体が白色を発光する。このため、素子を構成するほとんどの層の成膜にマスクを必要とせず、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で例えば電極膜を形成でき、生産性も向上する。
またこのような白色有機電界発光素子の発光層に用いる発光材料としては、特に制限はなく、例えば液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係る金属錯体、また公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
以上に説明した白色有機電界発光素子を用いれば、実質的に白色の発光を生じる照明装置を作製することが可能である。
≪11.第11実施形態:照明装置−2≫
また本発明の有機電界発光素子は、複数用いて発光面を大面積化した照明装置としても用いることができる。この場合、透明基板上に有機電界発光素子を設けた複数の発光パネルを、支持基板上に複数配列する(すなわちタイリングする)ことによって発光面を大面積化する。支持基板は、封止材を兼ねるものであっても良く、この支持基板と、発光パネルの透明基板との間に有機電界発光素子を挟持する状態で各発光パネルをタイリングする。支持基板と透明基板との間には接着剤を充填し、これによって有機電界発光素子を封止しても良い。尚、発光パネルの周囲には、透明電極および対向電極の端子を露出させておく。
このような構成の照明装置では、各発光パネルの中央が発光領域となり、発光パネル間には非発光領域が発生する。このため、非発光領域からの光取り出し量を増加させるための光取り出し部材を、光取り出し面の非発光領域に設けても良い。光取り出し部材としては、集光シートや光拡散シートを用いることができる。
<透明電極の作製>
以降の表2に構成を示すように、試料101〜132の各透明電極を、導電性領域の面積が5cm×5cmとなるように作製した。
<試料101の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、散乱層と、下記に構造式を示すアントラセンを用いて構成された有機層と、銀からなる金属層との3層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、散乱層を構成する分散液1をスピン塗布(500rpm、30秒)にて回転塗布した後、簡易乾燥(80℃、2分)し、さらに、ベーク(120℃、60分)して、膜厚700nmからなる散乱層を形成した。
(分散液1の作製方法)
分散液1は、散乱層調液として、屈折率2.4、平均粒径0.25μmのTiO粒子(テイカ(株)製 JR600A)と樹脂溶液(APM社製 ED230AL(有機無機ハイブリッド樹脂))との固形分比率が70vol%/30vol%、n−プロピルアセテートとシクロヘキサノンとの溶媒比が10wt%/90wt%、固形分濃度が15wt%となるように、10ml量の比率で処方設計した。
具体的には、上記TiO粒子と溶剤とを混合し、常温で冷却しながら、超音波分散機(エスエムテー社製 UH−50)に、マイクロチップステップ(エスエムテー社製 MS−3 3mmφ)の標準条件で10分間分散を加え、TiOの分散液を作製した。
次いで、TiO分散液を100rpmで攪拌しながら、樹脂を少量ずつ混合添加し、添加完了後、500rpmまで攪拌速度を上げ、10分間混合し、散乱層塗布液を得た。
その後、疎水性PVDF 0.45μmフィルター(ワットマン社製)にて濾過し、目的の分散液を得た。
次に、散乱層まで形成した基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また、下記表2に示す化合物をタンタル製の抵抗加熱ボートに入れた。これらの基板ホルダーと抵抗加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、真空蒸着装置の第2真空槽内に取り付けた。
ここで用いた化合物は、下記に示す窒素原子を含有していないアントラセンである。
次いで、第1真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、化合物の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で基板上に膜厚5nmのアントラセンで構成された有機層を設けた。
次に、有機層まで形成した基板を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で膜厚9nmの銀からなる金属層を形成した。これにより、散乱層と、有機層と、金属層とがこの順に積層された試料101の透明電極を得た。
<試料102の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、散乱層と、平滑層と、有機層と、銀からなる金属層との4層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、散乱層を試料101の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
次に、散乱層まで形成した基板上に、平滑層を構成する分散液2をスピン塗布(500rpm、30秒)にて回転塗布した後、簡易乾燥(80℃、2分)し、さらに、ベーク(120℃、30分)して、膜厚500nmからなる平滑層を形成した。
(分散液2の作製方法)
分散液2は、平滑層調液として、平均粒径0.02μmのナノTiO分散液(テイカ(株)製 HDT−760T)と樹脂溶液(APM社製 ED230AL(有機無機ハイブリッド樹脂))との固形分比率が45vol%/55vol%、n−プロピルアセテートとシクロヘキサノンとトルエンとの溶媒比が20wt%/30wt%/50wt%、固形分濃度が20wt%となるように、10ml量の比率で処方設計した。
具体的には、上記ナノTiO分散液と溶剤を混合し、100rpmで攪拌しながら、樹脂を少量ずつ混合添加し、添加完了後、500rpmまで攪拌速度を上げ、10分間混合し、平滑層塗布液を得た。
その後、疎水性PVDF 0.45μmフィルター(ワットマン社製)にて濾過し、目的の分散液を得た。
次いで、平滑層まで形成した基板上に、有機層と、銀からなる金属層を、試料101の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。これにより、散乱層と、平滑層と、有機層と、金属層とがこの順に積層された試料102の透明電極を得た。
<試料103の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、有機層と、銀からなる金属層との5層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、ポリシラザン含有液を、ワイヤレスバーにて、乾燥後の平均膜厚が300nmとなるように塗布し、温度85℃、湿度55%RHの雰囲気下で1分間処理して乾燥させた。更に、温度25℃、湿度10%RH(露点温度−8℃)の雰囲気下に10分間保持し、除湿処理を行って、ポリシラザン含有層を形成した。
次に、ポリシラザン含有層を形成した基板を、エキシマ照射装置MECL−M−1−200(株式会社エム・ディ・コム製)の稼動ステージ上に固定し、下記の改質処理条件1で改質処理を行い、300nmからなるポリシラザン改質層を形成した。
(ポリシラザン含有液)
ポリシラザン含有液としては、パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、無触媒タイプ、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を作製した。
(改質処理条件1)
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:0.5%
エキシマランプ照射時間:5秒
次いで、ポリシラザン改質層まで形成した基板上に、散乱層と、平滑層と、有機層と、金属層とを、試料102の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。これにより、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、有機層と、金属層とがこの順に積層された試料103の透明電極を得た。
<試料104の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、バリア層と、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、有機層と、銀からなる金属層との6層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、下記成膜条件(プラズマCVD条件)にて、バリア層を300nmの厚さで作製した。
(プラズマCVD条件)
原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)
酸素ガス(O)の供給量:500sccm
真空チャンバー内の真空度:3Pa
プラズマ発生用電源からの印加電力:1.2kW
プラズマ発生用電源の周波数:80kHz
フィルムの搬送速度:0.5m/min
(エキシマランプによる表面処理)
次いで、バリア層まで形成した基板を、エキシマ照射装置MECL−M−1−200(株式会社エム・ディ・コム製)の稼動ステージ上に固定し、下記の改質処理条件2で表面処理を行い、バリア層を構成するケイ素化合物の改質処理を行った。
(改質処理条件2)
照射波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
エキシマランプ光強度:130mW/cm(172nm)
試料と光源の距離:1mm
ステージ加熱温度:70℃
照射装置内の酸素濃度:1.0%
エキシマランプ照射時間:3秒
次いで、バリア層まで形成した基板上に、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、有機層と、金属層とを、試料103の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。これにより、バリア層と、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、有機層と、金属層とがこの順に積層された試料104の透明電極を得た。
<試料105〜110の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、散乱層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との4層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、散乱層を試料101の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
次に、散乱層まで形成した基板上に、酸化ニオブ(Nb)で構成された金属酸化物層を、スパッタ法によって成膜した。この際、透明基板と共に各材料で構成されたスパッタターゲットを、スパッタ成膜装置の真空槽内にセットし、真空槽内を4×10-4Paまで減圧した後、アルゴンガス(ITOの場合はさらに酸素ガス)を導入し、真空槽内を0.4Paに調整し、RF(高周波)バイアス300W、成膜速度0.2nm/秒で膜厚20nmからなる金属酸化物層を形成した。
次いで、金属酸化物層まで形成した基板上に、下記表2に示す各化合物を用いた有機層を、試料101の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、試料104〜110の有機層の形成に用いた下記表2に示す化合物、窒素含有化合物(アントラセン、No.7,No.10、No.14、HAT−CN)、及び硫黄含有化合物(3−3)は、以下の通りである。
Figure 2014188913
次いで、有機層まで形成した基板上に、銀からなる金属層を試料101の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。これにより、散乱層と、金属酸化物層と、有機層と、金属層とがこの順に積層された試料105〜110の透明電極を得た。
<試料111〜117の作製手順>
透明なPET基板上に、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との5層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
試料111〜117では、散乱層と下記表2に示す各化合物で構成された有機層との間に平滑層を形成すること以外は、試料105〜110の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、平滑層は、散乱層の形成後に試料102と同様の手順を用いて形成した。
<試料118、119の作製手順>
金属酸化物層に用いる材料を二酸化チタン(TiO)とした以外は、上記試料112、113と同様の手順で試料118、119の透明電極を得た。尚、二酸化チタン(TiO)からなる金属酸化物層は、以下のようにして平滑層上に形成した。
平滑層が形成された基板上に、電子ビーム蒸着装置を用いて酸化チタン(TiO)で構成された金属酸化物層を形成した。この際、酸化チタン(TiO)が収容された銅(Cu)製のハースライナーを、電子ビーム蒸着装置の真空槽内にセットし、真空槽内に酸素ガス(O)を加えて2×10-2Paまで減圧し、イオンアシスト蒸着(IAD)を使用して成膜速度0.2nm/秒で膜厚20nmの金属酸化物層を形成した。
<試料120、121の作製手順>
金属酸化物層に用いる材料を酸化亜鉛(ZnO)とした以外は、上記試料118、119と同様の手順で試料120、121の透明電極を得た。
<試料122、123の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、高表面エネルギー材料層と、銀からなる金属層との6層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層とを試料112、113の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
次に、有機層まで形成した基板を真空のままスパッタリング装置の真空槽に移した。そして真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、予め真空層内に取り付けたPdのターゲットに電圧を印加し、有機層上にPdからなる高表面エネルギー材料層を0.1nmの厚さで設けた。
次いで、高表面エネルギー材料層まで形成した基板上に、銀からなる金属層を試料101の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。これにより、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、高表面エネルギー材料層と、金属層とがこの順に積層された試料122、123の透明電極を得た。
<試料124、125の作製手順>
高表面エネルギー材料層に用いる材料をモリブテン(Mo)とした以外は、上記試料122、123と同様の手順で試料124、125の透明電極を得た。
<試料126、127の作製手順>
以下のようにして、透明なPET基板上に、散乱層と、平滑層と、フッ素含有層、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との6層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
先ず、透明なPET基板上に、散乱層と、平滑層とを試料112、113の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
次に、平滑層まで形成した基板を、電子ビーム蒸着装置の真空槽に移し、真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で基板上に厚さ70nmのフッ化マグネシウム(MgF)からなるフッ素含有層を設けた。
次いで、フッ素含有層まで形成した基板上に、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層とを試料112、113の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。これにより、散乱層と、平滑層と、フッ素含有層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、金属層とがこの順に積層された試料126、127の透明電極を得た。
<試料128の作製手順>
透明なPET基板上に、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との6層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
試料128では、散乱層を形成する前にポリシラザン改質層を形成したこと以外は、試料112の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、ポリシラザン改質層は、基板上に試料103と同様の手順を用いて形成した。
<試料129の作製手順>
透明なPET基板上に、バリア層、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、下記表2に示す化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との7層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
試料129では、散乱層を形成する前にバリア層及びポリシラザン改質層を形成したこと以外は、試料113の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、バリア層及びポリシラザン改質層は、基板上に試料103及び104と同様の手順を用いて形成した。
<試料130の作製手順>
透明なPET基板上に、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、フッ素含有層、金属酸化物層と、下記表2に示す化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との7層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
試料130では、平滑層と金属酸化物層との間にフッ素含有層を形成すること以外は、試料128の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、フッ素含有層は、試料126の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
<試料131の作製手順>
透明なPET基板上に、バリア層と、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、フッ素含有層、金属酸化物層と、下記表2に示す各化合物で構成された有機層と、銀からなる金属層との8層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
試料131では、平滑層と金属酸化物層との間にフッ素含有層を形成すること以外は、試料129の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、フッ素含有層は、試料127の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
<試料132の作製手順>
透明なPET基板上に、バリア層と、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、フッ素含有層、金属酸化物層と、下記表2に示す化合物で構成された有機層と、高表面エネルギー材料層と、銀からなる金属層との8層構造の積層体を有する透明電極を形成した。
試料132では、下記表2に示す化合物で構成された有機層と、金属層との間に高表面エネルギー材料層を形成すること以外は、試料131の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。尚、高表面エネルギー材料層は、試料125の作製手順で説明したのと同様の手順で形成した。
尚、本実施例1では、試料101〜132の作製手順において、各透明電極の基板として透明なPET基板を用いて作製したが、透明な無アルカリガラス製の基板においても同様の手順で作製した。
<実施例1の各試料の評価>
上記で作製した試料101〜132の各透明電極のうち、ガラス基板を使った試料101〜132においては、(1)シート抵抗を測定した。また、試料のうち、PET基板を使った試料101〜132については、(1)シート抵抗、(2)保存性(はく離検査後)、及び(3)折り曲げ耐性を測定した。
(1)シート抵抗の測定は、抵抗率計(三菱化学社製MCP−T610)を用い、4端子4探針法定電流印加方式で行った。
(2)保存性(はく離検査後)は、金属層が形成された各透明電極の表面に1mm角100マスをカッターでクロス切断し、セロハンテープを貼り付け、180度のはく離角度ではく離検査を行い、剥離しなかった部分の個数を表示した。
(3)折り曲げ耐性は、各透明電極を半径5mmの円柱に100回巻き戻しを繰り返した後、上記はく離検査を行い、はく離しなかった部分の個数を表示した。尚、保存性、及び折り曲げ耐性は残った個数が多いほど、好ましい結果であることを表す。この結果を下記表2に合わせて示す。
Figure 2014188913
<実施例1の評価結果>
表2から明らかなように、層構成が異なる試料101〜132の各透明電極を比較すると、試料105〜132の各透明電極、すなわち金属酸化物層が設けられた構成の透明電極は、シート抵抗値も18Ω/sq.以下であり、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性も良好な結果が得られた。したがって、透明電極に金属酸化物層を設けることにより、導電性の向上と耐久性の向上が図られることが確認された。
また層構成が同様であって有機層の材料のみが異なる試料105〜110の各透明電極を比較すると、試料106〜110の各透明電極、すなわち有機層がルイス塩基を含む化合物(窒素含有化合物、硫黄含有化合物)で構成されている透明電極は、シート抵抗値も16Ω/sq.以下であり、有機層がルイス塩基を含有する効果が確認された。
中でも、試料106〜109の各透明電極、すなわち有機層が窒素含有化合物を用いて構成されているものでは、さらにシート抵抗が15Ω/sq.以下に抑えられており、有機層に窒素含有化合物を含有させることによって、導電性の向上が図られることが確認された。
また特に、層構成が同様であって、有機層の材料のみが異なる試料111〜117の各透明電極を比較すると、試料116の透明電極は、上述したNo.47のニトロ基を有する窒素含有化合物を用いて有機層を形成したものであり、シート抵抗値、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性に良好な結果が得られることが確認された。また、試料116の透明電極は、この透明電極の有機層を構成するNo.47とほぼ同等の有効非共有電子対含有率[n/M]を有するNo.46を用いて構成される試料115の透明電極と比較しても同様に良好な結果が得られた。したがって、ニトロ基(−NO)の窒素原子が有する非共有電子対は、酸素原子との共鳴構造に利用されているものの、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない非共有電子対であって[有効非共有電子対]として、銀(Ag)との結合に効果を発揮していることが確認された。
また、層構成が異なる試料106〜109の各透明電極と試料111〜114の各透明電極とを比較すると、散乱層と、金属酸化物層と、有機層と、金属層とを有する各透明電極に平滑層が設けられた試料111〜114の各透明電極の方が、シート抵抗値も12Ω/sq.以下であり、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性も良好な結果が得られた。透明電極の散乱層と有機層の間に平滑層を設けることにより、信頼性の向上が図られることが確認された。
また、層構成が異なる試料112、113の各透明電極と試料122〜125の各透明電極を比較すると、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、有機層と、金属層とを有する各透明電極に高表面エネルギー材料層が設けられた試料122〜125の各透明電極の方が、シート抵抗値も8.5Ω/sq.以下であり、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性も良好な結果が得られた。透明電極の有機層と金属層の間に高表面エネルギー材料層を設けることにより、均一な膜厚の金属層が得られ、導電性の向上が図られることが確認された。さらに、保存性と折り曲げ耐性との差が3であることから、透明電極の折り曲げ前後における耐久性の向上が図られることが確認された。
また、層構成が異なる試料112、113の各透明電極と試料126、127の各透明電極を比較すると、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、有機層と、金属層とを有する各透明電極にフッ素含有層が設けられた試料126、127の各透明電極の方が、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性ともに良好な結果が得られた。透明電極の平滑層と金属酸化物層との間にフッ素含有層を設けることにより、密着性が向上し、信頼性の向上が図られることが確認された。
また、層構成が異なる試料112の透明電極と試料128の透明電極を比較すると、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、有機層と、金属層とを有する透明電極にポリシラザン改質層が設けられた試料128の透明電極の方が、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性ともに良好な結果が得られた。透明電極の基板の一主面上にポリシラザン改質層を設けることにより、ガスバリア性が高まり、信頼性の向上が図られることが確認された。
さらに、層構成が異なる試料113の透明電極と試料129の透明電極を比較すると、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、有機層と、金属層とを有する各透明電極にバリア層及びポリシラザン改質層が設けられた試料129の透明電極の方が、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性ともに良好な結果が得られた。透明電極の基板の一主面上にバリア層及びポリシラザン改質層を設けることにより、ガスバリア性が高まり、信頼性の向上が図られることが確認された。
また、層構成が異なる試料105〜132の各透明電極を比較すると、試料132の透明電極、すなわちバリア層と、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、有機層と、高表面エネルギー材料層と、金属層とを有する透明電極は、シート抵抗値も7.0Ω/sq.であり、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性ともに最良な結果が得られた。したがって、透明電極の各層の相互作用によって、各層間での密着性のバランスが図られ、透明電極の耐久性の向上が図られることが確認された。
また層構成が同様であって金属酸化物層の材料のみが異なる試料112、113、118〜121の各透明電極を比較すると、試料112、113の各透明電極、すなわち金属化合物層が酸化ニオブ(Nb)で構成されている透明電極は、シート抵抗値も9.5Ω/sq.以下であり、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性も良好な結果が得られた。
また層構成が同様であって高表面エネルギー材料層の材料のみが異なる試料122〜125の各透明電極を比較すると、試料124、125の各透明電極、すなわち高表面エネルギー材料層がモリブテン(Mo)で構成されている透明電極は、シート抵抗値も8.0Ω/sq.以下であり、導電性の向上が確認された。
また、シート抵抗の結果は、基板がガラスであってもプラスチック材料(PET)であっても同様であった。
一方、金属酸化物層を設けていない試料101〜104の各透明電極は、シート抵抗値が20.0Ω/sq.以上と高く、はく離検査後の保存性、及び折り曲げ耐性ともに良好な結果は得られなかった。導電性の向上と耐久性の向上が図られた透明電極はなかった。
尚、図13には、有効非共有電子対含有率[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]≦1.9×10-2である化合物No.1〜No.20を用いた有機層の上部に、膜厚6nmの銀(Ag)からなる金属層を設けた透明電極について、有機層を構成する化合物の有効非共有電子対含有率[n/M]と、各透明電極について測定されたシート抵抗の値をプロットしたグラフを示す。
図13のグラフから、有効非共有電子対含有率[n/M]が2.0×10-3≦[n/M]≦1.9×10-2の範囲では、有効非共有電子対含有率[n/M]の値が大きいほど、透明電極のシート抵抗が低くなる傾向が見られた。そして有効非共有電子対含有率[n/M]=3.9×10-3を境にして、3.9×10-3≦[n/M]の範囲であれば、飛躍的にシート抵抗を低下させる効果が得られることが確認された。
また以上の結果は、塗布成膜によって有機層を形成した試料でも同様であった。また、窒素を含有する化合物を他の化合物と混合して有機層を構成した試料でも同様の結果が得られた。
以上より、有効非共有電子対含有率[n/M]を指標として、金属層に隣接して設けた有機層を構成する化合物を選択して用いることにより、光透過性を得るために薄膜でありながらも低抵抗な電極膜(すなわち透明電極)が得られることが確認された。
≪ボトムエミッション型の有機電界発光素子の作製≫
以降の表3に構成を示すように、各構成の透明電極をアノードとして発光機能層の下部に設けた試料201〜237のボトムエミッション型の各有機電界発光素子EL’を作製した。図14を参照し、作製手順を説明する。尚、下記表3には、試料201〜237の有機電界発光素子EL’に用いた透明電極の構成を示した。
<試料201〜234の有機電界発光素子の作製手順>
(透明電極10の形成)
先ず試料201〜237において、PET製の透明基板11の上部に、下記表3に示した各構成の透明電極を形成した。透明電極の形成手順は、実施例1で対応する構造の透明電極の作製と同様に行った。各構成の透明電極のうち、試料205〜237では、本発明構成の透明電極となる。尚、図14では、透明電極として第1実施形態の透明電極10を図示している。
[正孔輸送・注入層31の形成]
正孔輸送注入材料として下記構造式に示すα−NPDが入った加熱ボートに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送・注入層31を、透明電極10上に成膜した。この際、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒、膜厚20nmとした。
Figure 2014188913
[発光層32の形成]
次に、発光層32として、下記に示すように第1発光層及び第2発光層を形成した。
(第1発光層の形成)
下記構造式に示す化合物BD−1及び化合物H01を、化合物BD−1が5%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、厚さ15nmの青色発光を呈する蛍光発光層を形成した。
(第2発光層の形成)
下記構造式に示す化合物GD−1、RD−1及び化合物H02を、化合物GD−1が17%、RD−1が0.8%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、厚さ15nmの黄色を呈する燐光発光層を形成した。尚、化合物RD−1及び化合物H02は、先に燐光発光性化合物の一例として構造式を示したIr−18、及びホスト化合物H32である。
Figure 2014188913
[正孔阻止層33の形成]
次いで、正孔阻止材料として先に窒素含有化合物(3)の一例として構造式を示した化合物No.10が入った加熱ボートに通電して加熱し、化合物No.10よりなる正孔阻止層33を、発光層32上に成膜した。この際、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒、膜厚5nmとした。
Figure 2014188913
[電子輸送層34の形成]
次いで、電子輸送材料として、先に窒素含有化合物(2)の一例として構造式を示した化合物7の入った加熱ボートに通電し、化合物7よりなる電子輸送層34を、正孔阻止層33上に成膜した。
[電子注入層35の形成]
その後、電子注入材料として、フッ化カリウムの入った加熱ボートに通電し、フッ化カリウムよりなる電子注入層35を、電子輸送層34上に成膜した。この際、蒸着速度0.02nm/秒〜0.05nm/秒、膜厚2nmとした。
(対向電極5:カソードの形成)
以上の後には、発光機能層3が形成された透明基板11を、真空蒸着装置の第2真空槽内に移送し、第2真空槽内を4×10-4Paまで減圧した後、第2真空槽内に取り付けられたアルミニウムの入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.3nm/秒で膜厚100nmのアルミニウムからなる対向電極5を形成した。この対向電極5は、カソードとして用いられる。以上により透明基板11上に、ボトムエミッション型の有機電界発光素子EL’を形成した。
(素子の封止)
その後、有機電界発光素子EL’を、厚さ300μmのガラス基板からなる封止材17で覆い、有機電界発光素子EL’を囲む状態で、封止材17と透明基板11との間に接着剤19(シール材)を充填した。接着剤19としては、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いた。封止材17と透明基板11との間に充填した接着剤19に対して、ガラス基板からなる封止材17側からUV光を照射し、接着剤19を硬化させて有機電界発光素子EL’を封止した。
尚、有機電界発光素子EL’の形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、5cm×5cmの透明基板11における中央の4.5cm×4.5cmを発光領域Aとし、発光領域Aの全周に幅0.25cmの非発光領域Bを設けた。また、アノードである透明電極10の金属層1dと、カソードである対向電極5とは、正孔輸送・注入層31〜電子注入層35によって絶縁された状態で、透明基板11の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
(保護フィルム)
試料233〜237においては、さらに、保護フィルムとして、きもと(株)製ライトアップPBUを発光面側に貼り付けた。
以上のようにして、透明基板11上に有機電界発光素子EL’を設け、これを封止材17と接着剤19とで封止した試料201〜237の有機電界発光素子の各発光パネルを得た。これらの各発光パネルにおいては、発光層32で発生した各色の発光光hが、透明基板11の光取り出し面13aから取り出される。
<実施例2の各試料の評価>
試料201〜237で作製した有機電界発光素子EL’(発光パネル)について、ガラス基板を使った試料201〜237においては、(1)輝度均一性、及び(2)演色性を測定した。また、試料のうち、PET基板を使った試料201〜237については、(1)輝度均一性、(2)演色性、及び(3)折り曲げ耐性を測定した。
(1)輝度均一性は、各有機電界発光素子を50A/mの電流を流し発光させた際の輝度、および発光スペクトルを、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて測定し、各有機電界発光素子の発光エリア(50×50mm)内の輝度測定値のうち、最低値を最高値で割って、発光エリア内の均一性の比率として算出した。尚、輝度均一性は、数値が高いほど、輝度ムラが少なく好ましい結果であることを表す。
(2)演色性は、50A/mの電流を流し分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いて、JIS Z8726に基づき測定し算出した。なお、測定点は50×50mmの発光範囲の中の中央の測定点とした。各有機電界発光素子(発光パネル)は、相関色温度4000Kから3500Kの範囲で白色発光を呈していた。尚、演色性は、得られた値が100に近いほど好ましい結果であることを表わす。
(3)折り曲げ耐性は、各有機電界発光素子を半径5mmの円柱に100回巻き戻しを繰り返した後、発光が確認されなかった非発光部の面積の割合を示した。尚、数値が小さいほど、非発光部の面積は小さく好ましい結果であることを表す。この結果を下記表3に合わせて示す。
Figure 2014188913
<実施例2の評価結果>
表3から明らかなように、試料205〜237の各有機電界発光素子EL’、すなわち金属酸化物層が設けられた構成の透明電極を用いた有機電界発光素子EL’は、試料201〜204と比較して、輝度均一性が高く、演色性、折り曲げ耐性ともに良好な結果が得られた。
また、層構成が異なる試料205〜232の各有機電界発光素子を比較すると、試料232の有機電界発光素子、すなわちバリア層と、ポリシラザン改質層と、散乱層と、平滑層と、金属酸化物層と、有機層と、高表面エネルギー材料層と、金属層とを有する透明電極を備えた有機電界発光素子は、輝度均一性が86.0%と最も高く、演色性、折り曲げ耐性ともに最良な結果が得られた。したがって、透明電極の各層の相互作用によって、各層間での密着性のバランスが図られ、透明電極の耐久性の向上が図られることにより、輝度均一性、演色性、及び折り曲げ耐性が向上することが確認された。
また、層構成が同様で、保護フィルムの有無のみ異なる試料232と試料237との各有機電界発光素子をそれぞれ比較すると、透明電極の光取り出し面側に保護フィルムが設けられた試料237の有機電界発光素子の方が輝度均一性も高く、演色性、折り曲げ耐性ともに良好な結果が得られた。尚、試料208と試料233、試料213と試料234、試料225と試料235、及び、試料227と試料236との各有機電界発光素子を比較した場合も同様に、保護フィルムが設けられた試料233〜236の各有機電界発光素子の方が良好な結果であった。したがって、有機電界発光素子に保護フィルムを設けることにより、輝度均一性、演色性、及び折り曲げ耐性が向上し、信頼性の向上が図られることが確認された。
以上より、本発明構成の透明電極を用いた有機電界発光素子EL’は、輝度均一性・演色性、及び折り曲げ耐性が向上することが確認された。
10,20,30,40,50,60…透明電極、10’,20’,30’,40’,50’,60’…積層体、1a…散乱層、1b…金属酸化物層、1c…有機層、1d…金属層、1e…平滑層、1f…高表面エネルギー材料層、1g…ポリシラザン改質層、1h…バリア層、1…フッ素含有層、3…発光機能層、3a…正孔注入層、3b…正孔輸送層、3b…正孔輸送層、3d…電子輸送層、3e…電子注入層、5…対向電極、11…透明基板、17…封止材、19…接着剤、31…正孔輸送・注入層、32…発光層、33…正孔阻止層、34…電子輸送層、35…電子注入層、EL、EL’…有機電界発光素子(電子デバイス)

Claims (11)

  1. 透明基板と、
    前記透明基板の一主面側に設けられた散乱層と、
    前記散乱層を介して前記透明基板の一主面側に設けられた金属酸化物層と、
    前記金属酸化物層を介して前記透明基板の一主面側に設けられた有機層と、
    銀もしくは銀を主成分とする合金で構成され、前記有機層を介して前記透明基板の一主面側に設けられた金属層と
    を有する透明電極。
  2. 前記有機層は、窒素含有化合物を用いて構成された
    請求項1に記載の透明電極。
  3. 前記有機層は、硫黄含有化合物を用いて構成された
    請求項1又は2に記載の透明電極。
  4. 前記散乱層と前記金属酸化物層との間に挟持された平滑層を有する
    請求項1〜3のいずれかに記載の透明電極。
  5. 銀よりも昇華熱エンタルピーが大きい高表面エネルギー材料を用いて構成され、前記有機層と前記金属層との間に挟持された高表面エネルギー材料層を有する
    請求項1〜4のいずれかに記載の透明電極。
  6. 前記透明基板と前記散乱層との間に挟持されたポリシラザン改質層を有する
    請求項1〜5のいずれかに記載の透明電極。
  7. 前記透明基板の一主面上に隣接して設けられ、金属酸化物層で構成されたバリア層を有する
    請求項1〜6のいずれかに記載の透明電極。
  8. 前記金属酸化物層の前記透明基板側の面にフッ素含有層を有する
    請求項1〜7のいずれかに記載の透明電極。
  9. 請求項1〜8の何れかに記載の透明電極を有する
    電子デバイス。
  10. 前記電子デバイスが有機電界発光素子である
    請求項9に記載の電子デバイス。
  11. 前記透明電極を構成する前記透明基板の他主面側に保護フィルムが設けられた
    請求項9又は10に記載の電子デバイス。
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