スペックルを低減するための別の方法として、拡散特性が経時的に変化するスクリーンも有効であると考えられる。ここで特開2008−310260号公報は、電子ペーパーによって構成されたスクリーンを提案している。特開2008−310260号公報のスクリーンでは、ラスタースキャン方式により照射される画像光の照射位置に対応して、反射率が変化する。
スクリーンの拡散特性を経時的に変化させることにより、通常のプロジェクタを用いながら、スペックル低減を実現することができる。また、ラスタースキャン型のプロジェクタのように、国際公開2012/033174パンフレットの手法を採用できないプロジェクタとの組み合わせにおいて、スペックルを低減できる点において非常に有用と言える。
しかしながら、特開2008−310260号公報に開示されたスクリーンでは、耐久性が十分でなく且つ大型化が困難であるといった問題がある。この結果、スペックル低減機能を有したスクリーンとして広く普及するに至っていない。本開示は、以上の点を考慮してなされたものであって、従来とは異なる手法により、スペックルを十分に低減することができるスクリーンを提供することを目的とする。
本開示の一態様では、プロジェクタから光を照射されて画像を表示するスクリーンであって、
第1部分及び第2部分を含んだ複数の粒子と、
前記複数の粒子を有した粒子層と、
前記粒子層に電圧を印加されることによって、前記粒子層の前記粒子を駆動するための電場を形成する電極と、を備える、スクリーンが提供される。
前記粒子の前記第1部分及び前記第2部分の比誘電率が異なっていてもよい。
前記粒子は、単一色であってもよい。
前記粒子の前記第1部分及び前記第2部分のいずれか一方が、透明であってもよい。
前記粒子の前記第1部分の体積比率は、当該粒子の前記第2部分の体積比率よりも大きくてもよい。
前記粒子の前記第1部分は、光拡散機能を有し、前記粒子の前記第2部分は、光吸収機能を有していてもよい。
前記第1部分および前記第2部分は、曲面形状の界面にて互いに接し、
前記第1部分は透明であり、
前記粒子層は、前記電極間に印加される交流電圧により、前記複数の粒子のうち少なくとも一部の粒子について、前記第1部分および前記第2部分を回転させてもよい。
前記第1部分は、前記第2部分よりも当該スクリーンの観察者に近い側に配置されてもよい。
前記粒子層は、前記電極間に印加される交流電圧の周波数に応じて、前記複数の粒子のうち少なくとも一部の粒子について、前記第1部分および前記第2部分を180度未満の回転角度範囲内で回転させてもよい。
前記第1部分と前記第2部分の体積は互いに異なっていてもよい。
前記第1部分は、前記第2部分よりも体積が大きく、
前記第2部分の前記界面に接する表面は、凹面形状であってもよい。
前記第1部分は、前記第2部分よりも体積が小さく、
前記第2部分の前記界面に接する表面は、凸面形状であってもよい。
前記第2部分は、光拡散機能または光吸収機能を有していてもよい。
前記第2部分は、球体または楕円体であってもよい。
前記プロジェクタは、コヒーレント光を射出し、
前記粒子は、前記コヒーレント光の波長帯域内の光の反射率が前記コヒーレント光の波長帯域外の光の反射率より高くなるように構成されていてもよい。
前記プロジェクタは、コヒーレント光を射出し、
前記粒子は、前記コヒーレント光の波長帯域内の光の透過率が前記コヒーレント光の波長帯域外の光の透過率より高くなるように構成されていてもよい。
前記コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する吸収層をさらに備えていてもよい。
前記粒子は、前記コヒーレント光の波長帯域内の光を選択的に散乱する顔料を含有していてもよい。
前記粒子は、前記コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料を含有していてもよい。
当該スクリーンに含まれる少なくとも1つの層が、前記コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料を含有していてもよい。
前記第1部分および前記第2部分に面接触しており、前記第1部分からの入射光を制御する第3部分を有し、
前記第1部分および前記第2部分は、透明であり、
前記粒子層は、前記電極に印加される交流電圧により、前記複数の粒子のうち少なくとも一部の粒子について、前記第1乃至第3部分を回転させてもよい。
前記粒子層は、前記電極に印加される交流電圧の周波数に応じて、前記複数の粒子のうち少なくとも一部の粒子について、前記第1乃至第3部分を180度未満の回転角度範囲内で回転させてもよい。
前記第3部分は、前記第1部分からの入射光を散乱または反射してもよい。
前記第3部分の前記第1面と前記第2面との間の厚さは、前記第1部分の前記第1面の法線方向における最大厚さよりも薄く、
前記第3部分の前記第1面と前記第2面との間の厚さは、前記第3部分の前記第2面の法線方向における最大厚さよりも薄くてもよい。
前記第3部分は、前記第1部分および前記第2部分よりも可視光透過率が低くてもよい。
前記第1面および前記第2面は、円形または楕円形であり、
前記第3部分は、円板、楕円板、円筒体、または楕円筒体であってもよい。
前記プロジェクタから光を照射されて画像を表示するスクリーンであって、
前記複数の粒子の少なくとも一部は、前記第1部分及び前記第2部分に分散された複数の拡散成分を含んでいてもよい。
前記粒子層の前記光が入射する面側に配置されたフレネルレンズ層を備えていてもよい。
プロジェクタから光を照射されて画像を表示するスクリーンであって、
それぞれが第1部分及び第2部分を含んだ複数の粒子と、
前記複数の粒子を有した粒子層と、
前記粒子層に電圧を印加されることによって、前記粒子層の前記粒子を駆動するための電場を形成する電極と、を備え、
前記電場によって前記粒子が回転可能であってもよい。
プロジェクタから光を照射されて画像を表示するスクリーンであって、
複数の粒子と、前記粒子を保持する保持部とを有し、前記保持部が有するキャビティ内に前記粒子が収納されている粒子層と、
前記粒子層に電圧を印加されることによって、前記粒子層の前記粒子を駆動するための電場を形成する電極と、を備えてもよく、
単一の前記キャビティには、単一の前記粒子が収納されていてもよい。
上述したスクリーンと、
前記スクリーンの表示側面とは反対側に配置され、前記スクリーンを透過した前記光が照射される光電変換パネルと、
を有する、光電変換パネル付きスクリーンが提供されてもよい。
上述したスクリーンと、
前記スクリーンに並んで配置され、前記プロジェクタから光が照射される光電変換パネルと、
を有する、光電変換パネル付きスクリーンが提供されてもよい。
前記スクリーンには、前記プロジェクタから第1の光が照射され、
前記光電変換パネルには、前記プロジェクタから、前記第1の光の波長帯と異なる波長帯の第2の光が照射され、
前記光電変換パネルの変換効率は、前記第2の光の波長帯において最大になっていてもよい。
前記第2の光は不可視光であってもよい。
前記光電変換パネルで発電された電力に基づいて印加電圧を生成し、当該印加電圧を前記電極に印加する電源装置と、
前記印加電圧を制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記粒子層で前記粒子を動作させるよう、前記印加電圧を制御してもよい。
前記制御装置は、180°未満の角度範囲内で前記粒子を繰り返し回転させるよう、前記印加電圧を制御してもよい。
前記制御装置は、前記スクリーンの法線方向に沿って観察者側から前記第1部分が前記第2部分の少なくとも一部分を覆うよう、前記印加電圧により、前記粒子の向き及び位置の少なくとも一方を制御してもよい。
コヒーレント光を射出するプロジェクタと、
上述したスクリーンと、を備える表示装置が提供されてもよい。
前記スクリーンの前記電極に電圧を印加する電力源と、
前記電力源から前記電極に印加される印加電圧を制御する制御装置と、をさらに備え、
前記制御装置は、前記粒子層で前記粒子を動作させるよう、前記電力源の印加電圧を制御してもよい。
前記制御装置は、180°未満の角度範囲内で前記粒子を繰り返し回転させるよう、前記電力源の印加電圧を制御してもよい。
前記制御装置は、前記スクリーンの法線方向に沿って観察者側から前記第1部分が前記第2部分の少なくとも一部分を覆うよう、前記電力源の印加電圧により、前記粒子の向き及び位置の少なくとも一方を制御してもよい。
レーザー光によって形成された光を照射するプロジェクタと、
上述した光電変換パネル付きスクリーンと、を備える表示装置が提供されてもよい。
上述した光電変換パネル付きスクリーンと、
レーザー光によって形成された第1の光を前記スクリーンに照射すると同時に、前記第1の光の波長帯と異なる波長帯の第2の光を前記光電変換パネルに照射するプロジェクタと、を備え、
前記光電変換パネルの変換効率は、前記第2の光の波長帯において最大になっている、表示装置が提供されてもよい。
上述したスクリーンの使用方法であって、
前記スクリーンに光が照射されている間、前記粒子層で前記粒子を動作させる、スクリーンの使用方法が提供されてもよい。
前記スクリーンに光が照射されている間、180°未満の角度範囲内で前記粒子を繰り返し回転させてもよい。
前記スクリーンに光が照射されている間、前記スクリーンの法線方向に沿って観察者側から前記第1部分が前記第2部分の少なくとも一部分を覆うよう、前記粒子の向き及び位置の少なくとも一方を制御してもよい。
プロジェクタから光を照射されて画像を表示するスクリーンに用いられる粒子であって、比誘電率の異なる第1部分及び第2部分を備える、粒子が提供されてもよい。
前記粒子は、単一色であってもよい。
前記第1部分及び前記第2部分のいずれか一方が、透明であってもよい。
前記第1部分の体積比率は、前記第2部分の体積比率よりも大きくてもよい。
前記第1部分は、光拡散機能を有し、前記第2部分は、光吸収機能を有してもよい。
曲面形状の界面にて互いに接している、前記第1部分および前記第2部分を備え、
前記第1部分は透明であってもよい。
前記第1部分と前記第2部分の体積は互いに異なってもよい。
前記第1部分は、前記第2部分よりも体積が大きく、
前記第2部分の前記界面に接する表面は、凸面形状であってもよい。
前記第1部分は、前記第2部分よりも体積が小さく、
前記第2部分の前記界面に接する表面は、凹面形状であってもよい。
前記第2部分は、光の散乱または反射機能を有してもよい。
前記第2部分は、球体または楕円体であってもよい。
本開示の一態様では、プロジェクタからの照射光を用いて画像を表示するスクリーンに用いられる粒子であって、
透明な第1部分と、
前記第1部分とは比誘電率が異なる透明な第2部分と、
前記第1部分および前記第2部分に面接触しており、前記第1部分からの入射光を制御する第3部分と、を備える、粒子が提供される。
前記第3部分は、前記第1部分からの入射光を散乱または反射してもよい。
前記第3部分の前記第1面と前記第2面との間の厚さは、前記第1部分の前記第1面の法線方向における最大厚さよりも薄く、
前記第3部分の前記第1面と前記第2面との間の厚さは、前記第3部分の前記第2面の法線方向における最大厚さよりも薄くてもよい。
前記第3部分は、前記第1部分および前記第2部分よりも可視光透過率が低くてもよい。
前記第1面および前記第2面は、円形または楕円形であり、
前記第3部分は、円板、楕円板、円筒体、または楕円筒体であってもよい。
上述した粒子を含む、粒子層が提供されてもよい。
上述した粒子を含む、粒子シートが提供されてもよい。
本開示の一態様では、光を制御する光制御シートであって、
複数の粒子を有する粒子層を備え、
前記粒子は、
透明な第1部分と、
前記第1部分とは比誘電率が異なる透明な第2部分と、
前記第1部分および前記第2部分に面接触しており、前記第1部分からの入射光を制御する第3部分と、を有する光制御シートが提供されてもよい。
前記第3部分は、前記第1部分からの入射光を散乱、反射または吸収してもよい。
前記第3部分の前記第1面と前記第2面との間の厚さは、前記第1部分の前記第1面の法線方向における最大厚さよりも薄く、
前記第3部分の前記第1面と前記第2面との間の厚さは、前記第3部分の前記第2面の法線方向における最大厚さよりも薄くてもよい。
前記第3部分は、前記第1部分および前記第2部分よりも可視光透過率が低くてもよい。
前記第1面および前記第2面は、円形または楕円形であり、
前記第3部分は、円板、楕円板、円筒体、または楕円筒体であってもよい。
前記粒子層の内部に電場を形成する電極を備え、
前記粒子層は、前記電極に印加される交流電圧により、前記複数の粒子のうち少なくとも一部の粒子について、前記第1乃至第3部分を回転させてもよい。
本開示によれば、スペックルを十分に低減することができる。
以下、図面を参照して本開示の実施形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(第1の実施形態)
図1〜図6は、本開示の第1の実施形態を説明するための図である。図1は、表示装置を示す図であり、図2は、スクリーンを示す縦断面図であり、図3は、スクリーンへの画像光の照射方法を説明するための図である。図4〜図6は、スクリーンの動作を説明するための図であり、図7は、電力源からスクリーンへ印加される電圧の一例を示すグラフである。
図1〜図6に示すように、表示装置10は、プロジェクタ20と、プロジェクタ20から画像光を照射されるスクリーン40と、を有している。スクリーン40は、後述するように、入射光に対して及ぼす拡散特性を経時的に変化させることができ、これにより、スペックルを目立たなくすることができる。このようなスクリーン40の機能に関連し、表示装置10は、電力源30及び制御装置35をさらに有している。電力源30は、スクリーン40に対して電圧を印加する。制御装置35は、電力源30からの印加電圧を調整して、スクリーン40の状態を制御する。また、制御装置35は、プロジェクタ20の動作も制御する。一例として、制御装置35は、汎用コンピューターとすることができる。
プロジェクタ20は、画像を形成する光、すなわち画像光を、スクリーン40へ投射する。図示された例において、プロジェクタ20は、コヒーレント光を発振するコヒーレント光源21と、コヒーレント光源21の光路を調整する走査装置(図示せず)と、を有している。コヒーレント光源21は、典型例として、レーザー光を発振するレーザー光源から構成されている。コヒーレント光源21は、互いに異なる波長域の光を生成する複数のコヒーレント光源を有するようにしてもよい。
図示された例において、プロジェクタ20は、ラスタースキャン方式にて、スクリーン40上にコヒーレント光を投射する。図3に示すように、プロジェクタ20は、スクリーン40上の全域を走査するよう、コヒーレント光を投射する。走査は、高速で実施される。プロジェクタ20は、形成すべき画像に応じ、コヒーレント光源21からのコヒーレント光の射出を停止する。すなわち、スクリーン40上の画像が形成されるべき位置のみにコヒーレント光を投射する。この結果、スクリーン40上に画像が形成される。プロジェクタ20の動作は、制御装置35によって制御される。
次に、スクリーン40について説明する。図1および図2に示す例において、スクリーン40は、複数の粒子を有した粒子シート50と、電力源30と接続された電極41,42と、を有している。粒子シート50の一方の主面上に、第1電極41が面状に広がっており、粒子シート50の他方の主面上に、第2電極42が面状に広がっている。また、図示されたスクリーン40は、第1電極41を覆ってスクリーン40の一方の最表面を形成する第1カバー層46と、第2電極42を覆ってスクリーン40の他方の最表面を形成する第2カバー層47と、を有している。
図示された例において、スクリーン40は、反射型のスクリーンを構成している。プロジェクタ20は、第1カバー層46によって形成される表示側面40aに、画像光を照射する。画像光は、スクリーン40の第1カバー層46及び第1電極41を透過し、その後、粒子シート50において拡散反射する。この結果、スクリーン40の表示側面40aに対面して位置する観察者は、画像を観察することが可能となる。
画像光が透過する第1電極41及び第1カバー層46は、透明となっている。第1電極41及び第1カバー層46は、それぞれ、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、84%以上であることがより好ましい。なお、可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV−3100PC」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm〜780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
第1電極41をなす導電材料として、ITO(Indium Tin Oxide;インジウム錫酸化物)、InZnO(Indium Zinc Oxide;インジウム亜鉛酸化物)、Agナノワイヤー、カーボンナノチューブ等を用いることができる。一方、第1カバー層46は、第1電極41及び粒子シート50を保護するための層である。この第1カバー層46は、透明樹脂、例えば優れた安定性を有するポリエチレンテレフタレート、あるいはポリカーボネートやシクロオレフィンポリマー等から、形成することができる。
第2電極42は、第1電極41と同様に構成することができる。また、第2カバー層47は、第1カバー層46と同様に構成することができる。ただし、第2電極42は、透明である必要がない。したがって、第2電極42は、例えば、アルミニウムや銅等の金属薄膜によって形成され得る。金属膜からなる第2電極42は、反射型のスクリーン40において、画像光を反射する反射層としても機能することができる。第2カバー層47は、第1カバー層46と同様に構成することができる。
次に、粒子シート50について説明する。図2に示すように、粒子シート50は、一対の基材51,52と、一対の基材51,52間に設けられた粒子層55と、を有している。第1基材51は、第1電極41を支持しており、第2基材52は、第2電極42を支持している。粒子層55は、第1基材51及び第2基材52の間に封止されている。第1基材51及び第2基材52は、粒子層55を封止することができ且つ電極41,42及び粒子層55の支持体として機能し得る強度を有した材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムから構成され得る。なお、図示された実施形態において、スクリーン40は、反射型のスクリーンとして構成され、画像光が、第1基材51を透過する。したがって、第1基材51は、透明となっており、第1電極41及び第1カバー層46と同様の可視光透過率を有することが好ましい。
次に、粒子層55について説明する。図2によく示されているように、粒子層55は、多数の粒子60と、粒子60を保持する保持部56と、を有している。保持部56は、粒子60を動作可能に保持している。図示された例において、保持部56は、多数のキャビティ56aを有しており、各キャビティ56a内に粒子60が収容されている。各キャビティ56aの内寸法は、当該キャビティ56a内の粒子60の外寸法よりも大きくなっている。したがって、粒子60は、キャビティ56a内で動作可能となっている。保持部56は、溶媒57によって膨潤している。キャビティ56a内において、保持部56と粒子60との間は溶媒57で満たされている。溶媒57によって膨潤した保持部56によれば、粒子60の円滑な動作を安定して確保することができる。以下、保持部56、溶媒57及び粒子60について、順に説明する。
まず、保持部56及び溶媒57について説明する。溶媒57は、粒子60の動作を円滑とするために用いられる。溶媒57は、保持部56が膨潤することによって、キャビティ56a内に保持されるようになる。溶媒57は、粒子60が電場に対応して動作することを阻害しないよう、低極性であることが好ましい。低極性の溶媒57として、粒子60の動作を円滑化させる種々の材料を用いることができる。溶媒57の一例として、ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン系溶媒、および直鎖パラフィン系溶媒、ドデカン、トリデカン等の直鎖アルカンを例示することができる。
次に、保持部56は、一例として、エラストマー材料からなるエラストマーシートを用いて構成され得る。エラストマーシートとしての保持部56は、前述の溶媒57を膨潤することが可能である。エラストマーシートの材料としては、シリコーン樹脂、(微架橋した)アクリル樹脂、(微架橋した)スチレン樹脂、およびポリオレフィン樹脂等を例示することができる。
図示された例において、保持部56内において、キャビティ56aは、スクリーン40の面方向に高密度で分布している。また、キャビティ56aは、スクリーン40の法線方向ndにも分布している。図示された例では、面状に広がったキャビティ56aの群が、スクリーン40の厚み方向に三層並んでいる。
次に、粒子60について説明する。粒子60は、プロジェクタ20から投射される画像光の進行方向を変化させる機能を有している。図示された例において、粒子60は、画像光を拡散させる、とりわけ拡散反射させる機能を有している。
粒子60は、比誘電率が異なる第1部分61及び第2部分62を含んでいる。したがって、この粒子60が電場内に置かれると、当該粒子60内に電子双極子モーメントが発生する。このとき、粒子60は、その双極子モーメントのベクトルが電場のベクトルと真逆を向く位置へ向けて動作するようになる。したがって、第1電極41及び第2電極42の間に電圧が印加され、第1電極41及び第2電極42の間に位置する粒子シート50に電場が発生すると、粒子60は、電場に対して安定した姿勢、すなわち電場に対して安定した位置および向きをとるよう、キャビティ56a内で動作する。このスクリーン40は、光拡散機能を有した粒子60の動作にともなって、その拡散波面を変化させる。
比誘電率が異なる第1部分61及び第2部分62を含む粒子60は、公知技術を含む様々な方法で製造できる。例えば、有機物または無機物の球状粒子を粘着テープなどを用いて単層に配列させ、球状粒子と異なる正負に帯電する樹脂成分の層または無機物層を半球面に蒸着する方法(蒸着法、例えば特開昭56−67887)、回転ディスクを用いる方法(例えば、特開平6−226875号公報)、比誘電率が異なる2種類の液滴をスプレー法やインクジェット法を用いて空気中で接触させて1つの液滴にする方法(例えば、特開2003−140204号公報)、及びJP2004−197083Aで提案されているマイクロチャンネル製造方法を用いて製造することができる。JP2004−197083Aで提案されているように、比誘電率が互いに異なる第1部分61及び第2部分62は、帯電特性の互いに異なる材料を用いて形成することができる。マイクロチャンネル製造方法は、連続相と粒子化相とが互いに油性/水性(O/W型)又は水性/油性(W/O型)の関係にあるものを用い、連続相が移送される第1マイクロチャンネルから、第2マイクロチャンネルに流れる流動媒体の粒子化相内に、二種類の帯電特性の互いに異なる材料を含む連続相を、順次吐出することにより、二相ポリマー粒子60で、かつ、電荷的に(±)の極性を有する双極性粒子60を製造する製造方法である。
マイクロチャンネル製造方法においては、重合性樹脂成分を含有する油性又は水性の流動性媒体中に、この媒体に対して不溶性である分相した連続相中の重合性樹脂成分を、互いに異なる正負に帯電する重合性モノマーで形成して、第1マイクロチャンネルに移送させ、次いで、この連続相を、第2マイクロチャンネル内を流れる水性又は油性の粒子化相中に、連続又は間欠的に順次吐出する。次いで、粒子化相中に吐出した吐出物は、マイクロチャンネル内での一連の吐出・分散・移送中に粒子化されるので、この粒子中の重合性樹脂成分をUV照射下及び/又は加熱下に重合硬化させることにより粒子60が適宜調製される。
粒子60に用いられる重合性樹脂成分(又は重合性モノマー)としては、粒子60に用いられる重合性モノマーの官能基又は置換基の種類によって、粒子60の帯電性が、それぞれ(−)帯電性と(+)帯電性を示す傾向にあるモノマー種を挙げることができる。従って、少なくとも2種以上の複数種のモノマーを重合性樹脂成分として使用する場合には、その(+)及び(−)帯電性を示す傾向を周知のうえで、好ましくは、同種帯電性の傾向にあるモノマー同士を複数組み合わせて適宜好適に使用することもできる。その他、重合開始剤などのモノマー以外の添加剤は材料全体での帯電性を失わないように調整して添加される。
一方、少なくとも1種の官能基及び/又は置換基を分子内に有する重合性樹脂成分(又は重合性モノマー)において、その官能基又は置換基としては、例えば、カルボニル基,ビニル基,フェニル基,アミノ基,アミド基,イミド基,ヒドロキシル基,ハロゲン基,スルホン酸基,エポキシ基及びウレタン結合等を挙げることができる。このような重合性モノマーにおける官能基又は置換基を有するモノマー種の単独又は2種以上の複数種を組み合わせて適宜好適に使用することができる。
(−)帯電性の傾向にある重合性モノマーおよび(+)帯電性の傾向にある重合性モノマーとしては、JP2004−197083Aに記載されたものを用いることができるので、ここでの記載は省略する。
マイクロチャンネル製造方法で粒子60を製造する場合、連続相をなす二種の重合性樹脂成分の合流時における速度や合流方向等、並びに、連続相の粒子相への吐出時における速度や吐出方向等を調整することにより、得られる粒子60の外径状や、粒子60における第1部分61及び第2部分62の界面の形状等を、調整することができる。なお、図4〜図6に示された粒子60の例において、第1部分61の体積比率と、第2部分62の体積比率は、同一となっている。また、図4〜図6に示された粒子60の例において、第1部分61及び第2部分62の界面は、平面状に形成されている。そして、図4〜図6に示された粒子60は、球形状となっている。すなわち、図4〜図6に示された粒子60において、第1部分61及び第2部分62は、それぞれ、半球状となっている。
また、連続相をなす二種の重合性樹脂成分が、拡散成分を含む場合、粒子60の第1部分61及び第2部分62に内部拡散機能を付与することができる。図4〜図6に示された例において、粒子60の第1部分61は、第1主部66a及び第1主部66a内に分散した第1拡散成分66bを有している。同様に、第2部分62は、第2主部67aと第2主部67a内に分散した第2拡散成分67bを有している。すなわち、図4〜図6に示された球状粒子60は、第1部分61の内部を進む光および第2部分62の内部を進む光に対して、拡散機能を発現することができる。ここで拡散成分66b,67bとは、粒子60内を進む光に対し、反射や屈折等によって、当該光の進路方向を変化させる作用を及ぼし得る成分のことである。このような拡散成分66b,67bの光拡散機能(光散乱機能)は、例えば、粒子60の主部66a,67aをなす材料とは異なる屈折率を有した材料から拡散成分66b,67bを構成することにより、あるいは、光に対して反射作用を及ぼし得る材料から拡散成分66b,67bを構成することにより、付与され得る。主部66a,67aをなす材料とは異なる屈折率を有する拡散成分66b,67bとして、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、さらには、単なる気泡が例示される。
ところで、図示された例において、粒子60は、単一色となっている。すなわち、第1部分61および第2部分62は、同一色となっている。第1部分61及び第2部分62の色は、第1部分61及び第2部分62に、顔料や染料等の色材を添加することにより、調整され得る。顔料や染料は、種々の公知の顔料や染料等を用いることができる。一例として、JP2005−99158A及びJP2780723Bで開示された顔料や、JP5463911Bで開示された顔料または染料を用いることができる。
粒子60に対して用いる単一色とは、スクリーン40で画像の表示を行っていない状態において、粒子60が粒子シート50内で動作したとしても、スクリーン40の表示側面40aを観察する観察者が、通常の観察力でスクリーン40の色の変化を認識できない程度に一様な色を有していることを意味する。すなわち、粒子60の第1部分61がスクリーン40の表示側面40aに向いている状態でのスクリーン40の表示側面40aと、粒子60の第2部分62がスクリーン40の表示側面40aに向いている状態でのスクリーン40の表示側面40aが、当該スクリーン40で画像の表示を行っていない状態において、観察者の通常の注意力での観察において、同一の色として認識される場合、粒子60が単一色であると言える。より具体的には、粒子60の第1部分61がスクリーン40の表示側面40aに向いている状態でのスクリーン40の表示側面40aと、粒子60の第2部分62がスクリーン40の表示側面40aに向いている状態でのスクリーン40の表示側面40aとの色差ΔE*ab(=〔(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2〕1/2)が、1.5以下となっていることが好ましい。なお、色差ΔE*abは、JIS Z 8730に準拠して、コニカミノルタ社製の色彩計(CM-700d)を用いて計測されたL*a*b*表色系における明度L*及び色度a*,b*に基づいて特定された値とする。また、スクリーン40が反射型である場合には、反射光の明度L*及び色度a*,b*に基づいて特定されたΔE*abの値で評価し、スクリーン40が透過型である場合には、透過光の明度L*及び色度a*,b*に基づいて特定されたΔE*abの値で評価する。
なお、粒子層55、粒子シート50及びスクリーン40は、一例として次のようにして作製することができる。
粒子層55は、JP1−28259Aに開示された製造方法により製造することができる。すなわち、まず、粒子60を重合性シリコーンゴムに分散させたインキを作製する。次に、このインキをコーターなどで延伸し、更に、加熱等で重合させ、シート化する。以上の手順により、粒子60を保持した保持部56が得られる。次に、保持部56を、シリコーンオイルなどの溶媒57に一定期間浸漬する。保持部56が膨潤することで、シリコーンゴムからなる保持部56と粒子60との間に、溶媒57で満たされた隙間が形成される。この結果、溶媒57及び粒子60を収容したキャビティ56aが、画成される。以上のようにして、粒子層55を製造することができる。
次に、JP2011−112792Aに開示された製造方法により、粒子層55を用いてスクリーン40を作製することができる。まず、一対の基材51,52によって粒子層55を覆い、ラミネート又は接着剤等を用いて粒子層55を封止する。これにより、粒子シート50が作製される。次に、粒子シート50上に第1電極41及び第2電極42を設け、更に、第1カバー層46及び第2カバー層47を積層することで、スクリーン40が得られる。
次に、この表示装置10を用いて画像を表示する際の作用について説明する。
まず、制御装置35からの制御によって、プロジェクタ20のコヒーレント光源21がコヒーレント光を発振する。プロジェクタ20からの光は、図示しない走査装置によって光路を調整され、スクリーン40に照射される。図3に示すように、図示しない走査装置は、スクリーン40の表示側面40a上を光が走査するよう、当該光の光路を調整する。ただし、コヒーレント光源21によるコヒーレント光の射出は、制御装置35によって制御される。制御装置35は、スクリーン40上に表示したい画像に対応して、コヒーレント光源21からのコヒーレント光の射出を停止する。プロジェクタ20に含まれる走査装置の動作は、人間の目で分解不可能な程度にまで高速となっている。したがって、観察者は、時間を隔てて照射されるスクリーン40上の各位置に照射された光を、同時に観察することになる。
スクリーン40上に投射された光は、第1カバー層46及び第1電極41を透過して、粒子シート50に到達する。この光は、粒子シート50の粒子60で拡散反射し、スクリーン40の観察者側となる種々の方向へ向けて射出する。したがって、スクリーン40の観察者側となる各位置において、スクリーン40上の各位置からの反射光を観察することができる。この結果、スクリーン40上のコヒーレント光を照射されている領域に対応した画像を観察することができる。
また、コヒーレント光源21が、互いに異なる波長域のコヒーレント光を射出する複数の光源を含むようにしてもよい。この場合、制御装置35は、各波長域の光に対応した光源を、他の光源から独立して制御する。この結果、スクリーン40上にカラー画像を表示することが可能となる。
ところで、コヒーレント光を用いてスクリーン上に画像を形成する場合、斑点模様のスペックルが観察されるようになる。スペックルの一原因は、レーザー光に代表されるコヒーレント光が、スクリーン上で拡散した後に、光センサ面上(人間の場合は網膜上)に干渉パターンを生じさせるためと考えられる。とりわけ、ラスタースキャンによってスクリーンにコヒーレント光を照射する場合、スクリーン上の各位置には一定の入射方向からコヒーレント光が入射する。したがって、ラスタースキャンを採用した場合、スクリーンの各点で発生するスペックル波面はスクリーンが搖動しない限り不動となり、スペックルパターンが画像とともに観察者に視認されると、表示画像の画質を著しく劣化させることになる。
一方、本実施形態における表示装置10のスクリーン40は、拡散波面を経時的に変化させるようになっている。スクリーン40での拡散波面が変化すれば、スクリーン40上でのスペックルパターンが経時的に変化するようになる。そして、拡散波面の経時的な変化を十分に高速にすると、スペックルパターンが重ねられて平均化され、観察者に観察されるようになる。これにより、スペックルを目立たなくさせることができる。
図示されたスクリーン40は、一対の電極41,42を有している。この一対の電極41,42は電力源30に電気的に接続している。電力源30は、一対の電極41,42に電圧を印加することができる。一対の電極41,42間に電圧が印加されると、一対の電極41,42間に位置する粒子シート50に電場が形成される。粒子シート50の粒子層55には、比誘電率の異なる複数の部分61,62を有した粒子60が、動作可能に保持されている。この粒子60は、そもそも帯電していることから、或いは、少なくとも粒子層55に電場が形成されると双極子モーメントが発生することから、形成された電場のベクトルに応じて、動作する。光の進行方向を変化させる機能、例えば反射機能や拡散機能を有した粒子60が動作すると、図4〜図6に示すように、スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。この結果、スペックルを目立たなくさせることができる。図4〜図6、並びに、後に言及する図8及び図10において、符号「La」は、プロジェクタ20からスクリーン40へ照射された画像光であり、符号「Lb」は、スクリーン40で拡散された画像光である。
なお、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるとは、スペックル低減機能を発現し得る程度に比誘電率が異なっていれば十分である。したがって、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるか否かは、動作可能に保持された粒子60が、電場ベクトルの変化にともなって動作し得るか否かにより、判定することができる。
ここで、粒子60が保持部56に対して動作する原理は、粒子60の電荷または双極子モーメントが電場ベクトルに対して安定的な位置関係となるよう、粒子60の向き及び位置を変化させる、というものである。したがって、粒子層55に一定の電場が印加され続けると、粒子60の動作は一定期間後には停止する。その一方で、スペックルを目立たなくするには、粒子60の保持部56に対する動作が継続する必要がある。そこで、電力源30は、粒子層55に形成される電場が経時的に変化するよう、電圧を印加する。図示された例において、電力源30は、粒子シート50内に生成される電場のベクトルを反転させるよう、一対の電極41,42間に電圧を印加する。例えば、図7に示された例では、電力源30からスクリーン40の一対の電極41,42に、X〔V〕の電圧と−Y〔V〕の電圧とが繰り返し印加される。このような反転電場の印加にともない、粒子60は、一例として、図5の状態を中心として、図6の状態と図7の状態との間で繰り返し動作することができる。
図7の印加電圧の制御は、極めて容易である。とりわけ、図7に示された例において、X〔V〕及び−Y〔V〕の電圧の絶対値は同一となっており、制御が極めて単純化されている。ただし、図7に示された印加電圧は例示に過ぎない。X〔V〕及び−Y〔V〕の電圧の絶対値は異なっていてもよい。また、三以上の異なる値の電圧を印加するようにしてもよい。さらに、通常の交流電圧を採用する等、印加電圧が連続的に変化するようにしてもよい。
なお、粒子60は、保持部56に形成されたキャビティ56a内に収容されている。そして、図4〜図6に示された例において、粒子60は、略球状の外形を有している。また、粒子60を収容するキャビティ56aは、略球状の内形を有している。したがって、粒子60は、図4〜図6の紙面に直交する方向に延びる回転軸線raを中心として、回転振動することができる。ただし、粒子60を収容するキャビティ56aの大きさに依存して、粒子60は、繰り返し回転運動だけでなく、並進運動も行うようになる。さらに、キャビティ56aには、溶媒57が充填されている。溶媒57は、粒子60の保持部56に対する動作を円滑にする。
なお、図35(a)〜図35(c)に示されるように、粒子層55における各保持部56が有するキャビティ56aは単一の粒子56を含むように構成されていてもよい。図35(a)は、単一キャビティ56a内に単一の粒子56を含む保持部56を示す。図35(b)は、連結された2つキャビティ56a1、56a2内にそれぞれ単一の粒子60−1、60−2を含む保持部56を示している。粒子60−1、60−2は、対応するキャビティ56a1、56a2により可動範囲が規制されている。図35(c)は、連結された3つのキャビティ56a1、56a2、56a3内にそれぞれ単一の粒子60−1、60−2、60−3を含む保持部56を示している。粒子60−1、60−2、60−3は、対応するキャビティ56a1、56a2、56a3により可動範囲が規制されている。上記のように、複数のキャビティが連結していたとしても、複数の粒子の可動範囲が重なることなく配置される場合には、保持部56が有するキャビティは単一の粒子を含むように構成されているとみなすことができる。
また、キャビティの内径は、内包される粒子の外径よりも大きければ制限はない。例えば、キャビティの内径は、内包される粒子の外径の1.1倍以上1.3倍以下に設定されていてもよい。
以上に説明した本実施形態において、スクリーン40は、比誘電率の異なる第1部分61及び第2部分62を含む粒子60を有した粒子層55と、電圧を印加されることによって粒子層55の粒子60を駆動するための電場を形成する電極41,42と、を有している。このスクリーン40において、第1電極41及び第2電極42の間に電圧を印加すると、粒子層55に電場が形成される。このとき、粒子60は、形成された電場に応じて動作する。そして、光の進行方向を変化させる機能、例えば反射機能や拡散機能を有した粒子60が動作すると、スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。したがって、スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55に電場を形成して、粒子60を動作させることにより、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。このようなスクリーン40は、例えば上述の製造方法を用いて比較的に容易に製造することができる。加えて、このスクリーン40は、大型スクリーンにも好適であり、且つ、耐久性及び動作の安定性に優れ、さらに、制御も容易である。
また、本実施形態によれば、比誘電率の異なる第1部分61及び第2部分62を含んだ粒子60は、単一色に形成されている。したがって、粒子60の向き及び位置の少なくとも一方が変化したとしても、スクリーン40は一定の色を有する。これにより、画像を表示する際に、スクリーン40の色味が変化したように感知されることはない。この結果、スクリーン40の色変化にともなった画質の劣化を効果的に回避することもできる。なお、電場内で動作可能であり且つ単一色を有する粒子60は、第1部分61及び第2部分62を、同一種の合成樹脂材料から形成し、且つ、第1部分61及び第2部分62の一方に帯電性を付与する添加剤を混入することにより、製造され得る。したがって、この有用なスクリーン40用粒子60は、容易に製造され得る。
さらに、本実施形態によれば、スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55において、粒子60を繰り返し回転させることができる。すなわち、粒子60は、ごくわずかなスペースで、拡散波面を有効に変化させ得るよう、動作することができる。ただし、スクリーンの拡散特性は一定に保つことが可能であるため、スクリーン輝度等のパラメータは一定に保ったまま、スペックルのみ低減することが可能となる。したがって、粒子60を繰り返し回転させることによれば、粒子層55及びスクリーン40の薄型化を実現しながら、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。また、粒子60を繰り返し回転させる場合には、その角度範囲を、図4〜図6に示すように、180°未満とすることが好ましい。この場合、第1部分61及び第2部分62のうちの一方が、主として、観察者側に位置するようにすることができる。すなわち、スクリーン40に光が照射されている間、スクリーン40の法線方向ndに沿って観察者側から第1部分61が第2部分62の少なくとも一部分を覆うようにすることが可能となる。したがって、第1部分61及び第2部分62が厳密に同一色でない場合においても、粒子60を動作させながら画像を表示している間、スクリーン40の色味が変化することを効果的に感知されにくくすることができる。
ここで、粒子60が回転していることは、以下の様な方法で確認することができる。具体的には、図36に示すように、スクリーン40に光源111からのコヒーレント光を照射し、スクリーン40を透過あるいは反射した光、すなわち拡散光を測定用スクリーン112に照射し、測定用スクリーン112(観察面)の光強度分布をカメラ113で測定する。あるいは、測定用のスクリーンを用いずに、直接2次元アレイセンサで拡散光の2次元光強度分布を測定してもよい。
粒子60が回転駆動されていると、粒子60によって拡散される光の波面が変化し、観察面の光強度分布も時間変化する。したがって、粒子60の動作が上述の並進運動のみの場合、観察面上の光強度分布は、並進移動するのみである、すなわち拡散波面の構造自体は変化しない。
一方、粒子60の動作が回転運動の場合、粒子60の回転により拡散面の位置及び角度が変化するため、すなわち、拡散面の異なる部分からの波面となるため、粒子60からの拡散波面は構造自体が変化する。よって、図36のような測定方法により、スクリーン40内の粒子60が回転しているか否かを比較的容易に検出できる。
上述の実施形態で説明したように、一対の電極41,42への印加電圧を変化させることで、粒子60を動作させることができる。そして、印加電圧の変化範囲、および、印加電圧の中心電圧等を調整することにより、粒子60の繰り返し動作範囲や、当該動作範囲内の中心位置での粒子60の向きや位置を制御することができる。
なお、上述した実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した実施形態において、第1部分61及び第2部分62が同一の色を有する例を示したが、この例に限られない。第1部分61及び第2部分62の一方が透明であるようにしてもよい。図8に示された粒子60において、第1部分61は、透明に形成されている。図8に示された粒子60は、第1部分61及び第2部分62の界面での反射又は屈折、第2部分62での拡散、粒子60の表面での反射又は屈折によって、当該粒子60へ入射する光の進行方向を変化させることができる。このような粒子60の色は、第1部分61が透明であることから、第2部分62の色として把握される。したがって、粒子60の向き、姿勢、位置が変化したとしても、スクリーン40は一定の色を有する。これにより、画像を表示する際に、スクリーン40の色味が変化したように感知されることはない。この結果、スクリーン40の色変化にともなった画質の劣化を効果的に回避することができる。
また、粒子60の第1部分61及び第2部分62は、図9に示すように、体積比率において、異なるようにしてもよい。すなわち、粒子60に占める第1部分61の体積比率が、粒子60に占める第2部分62の体積比率と、異なるようにしてもよい。図9に示された粒子60では、第1部分61の体積比率が、第2部分62の体積比率よりも大きくなっている。このような粒子60を用いた場合、スクリーン40に光が照射されている間、スクリーン40の法線方向ndに沿って観察者側から第1部分61が第2部分62の少なくとも一部分を覆うようにすることが容易となる。さらに、粒子60の回転動作にともなって、図9に二点鎖線で示された位置まで第2部分62が移動する場合、スクリーン40の法線方向ndに沿った観察者側から第1部分61によって第2部分62を覆い隠すことが可能ともなる。したがって、第1部分61及び第2部分62が厳密に同一色でない場合においても、粒子60を動作させながら画像を表示している間、スクリーン40の色味が変化することを効果的に感知されにくくすることができる。
さらに、粒子60の駆動を制御することにより、第1部分61及び第2部分62の色の相違に大きな影響を受けることなく、スクリーン40の色味変化を効果的に感知されにくくすることができる場合には、第1部分61及び第2部分62の一方が、光吸収機能を有するようにしてもよい。図10に示された例において、第1部分61は、光拡散性を有し、第2部分62は、光吸収機能を有する。第2部分62の光吸収機能は、一例として、第2部分62が光吸収性の色材、具体的にはカーボンブラックやチタンブラック等の顔料を含むことにより、発現され得る。図10に示された粒子60では、プロジェクタ20からの画像光Laとは異なる方向から入射する光Lcを、第2部分62によって吸収することができる。第2部分62によって吸収される光は、例えば、表示装置10が設置された場所に存在する照明装置90(図1参照)からの環境光とすることができる。スクリーン40に入射する画像光La以外の光Lcを選択して吸収することにより、表示画像の明るさを損なうことなく、表示画像のコントラストを効率的に改善することができる。
(第2の実施形態)
図11〜図14は、本開示の第2の実施形態を説明するための図である。図11は第2の実施形態によるスクリーン40の縦断面図である。図12〜図14は図11のスクリーン40の動作を説明する図である。
図1と同様に、第2の実施形態による表示装置10は、プロジェクタ20と、プロジェクタ20から画像光を照射されるスクリーン40と、を有する。スクリーン40は、後述するように、入射光に対して及ぼす拡散特性を経時的に変化させることができ、これにより、スペックルを目立たなくすることができる。第2の実施形態によるプロジェクタ20は、図3と同様に、ラスタースキャン方式にて、スクリーン40上にコヒーレント光を投射する。
次に、第2の実施形態によるスクリーン40について説明する。図示された例において、スクリーン40は、複数の粒子60を有する粒子シート50と、電力源30と接続されて粒子シート50の両側に配置される透明な第1および第2電極41,42と、を有する。粒子シート50の一方の主面上に、第1電極41が面状に広がっており、粒子シート50の他方の主面上に、第2電極42が面状に広がっている。また、図示されたスクリーン40は、図1と同様に、第1電極41を覆ってスクリーン40の一方の最表面を形成する第1カバー層46と、第2電極42を覆ってスクリーン40の他方の最表面を形成する第2カバー層47と、を有する。
次に、粒子シート50について説明する。図11に示すように、粒子シート50は、一対の基材51,52と、一対の基材51,52間に設けられた粒子層55と、を有する。第1基材51は、第1電極41に接合されており、第2基材52は、第2電極42に接合されている。粒子層55は、第1基材51及び第2基材52の間に封止されている。第1基材51及び第2基材52は、粒子層55を封止することができ且つ第1および第2電極41,42と粒子層55との支持体として機能し得る強度を有する材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムから構成され得る。なお、図示された実施形態において、スクリーン40は、反射型のスクリーン40として構成され、画像光が、第1基材51を透過する。したがって、第1基材51は、透明となっており、第1電極41及び第1カバー層46と同様の可視光透過率を有することが好ましい。
次に、粒子層55について説明する。図11によく示されているように、粒子層55は、多数の粒子60と、粒子60を保持する保持部56と、を有する。保持部56は、粒子60を動作可能に保持している。図示された例において、保持部56は、多数のキャビティ56aを有しており、各キャビティ56a内に粒子60が収容されている。各キャビティ56aの内寸法は、当該キャビティ56a内の粒子60の外寸法よりも大きくなっている。したがって、粒子60は、キャビティ56a内で動作可能となっている。保持部56は、図2と同様に、溶媒57によって膨潤している。保持部56及び溶媒57は、図2と同様の材料であるため、詳細な説明を省略する。
第2の実施形態による粒子60は、典型的には球形であり、比誘電率が互いに異なる第1部分61および第2部分62を備えている。第1部分61は透明であり、観察者側に配置されている。第1部分61および第2部分62は、曲面形状の界面にて接している。
第1部分61と第2部分62の体積は、互いに異なっている。図11は、第1部分61の体積が第2部分62の体積よりも大きい例を示している。図11の場合、第2部分62は、球体または楕円球体に近い形状であり、第2部分62の表面、すなわち第1部分61との界面は、凸面になっている。なお、粒子60は、必ずしも理想的な球体とは限らないし、第2部分62も理想的な球体または楕円体から少し歪んだ形状となることもありうる。
第1部分61は、透明部材である。第1部分61の具体的な材料としては、例えばシリコーンオイルや透明な樹脂部材である。第1部分61は、理想的には、図11に示すように、観察者側に配置される。第1部分61に入射された光は、そのまま第1部分61を通過して、第2部分62に到達する。第2部分62は、第1部分61とは比誘電率が異なっており、また、光の散乱または反射機能を有する。さらに、第2部分62は、第1部分61とは異なる屈折率で構成されている。また、第2部分62の内部には、図12に示すように、光を拡散させる拡散成分62cが含まれていてもよい。これら拡散成分62cは、粒子60内を進む光に対して、反射や屈折等によって、光の進路方向を変化させる作用を行う。このような拡散成分62cの光拡散機能(光散乱機能)は、例えば、粒子60の主部62cをなす材料とは異なる屈折率を有した材料から拡散成分62cを構成することにより、あるいは、光に対して反射作用を及ぼし得る材料から拡散成分62cを構成することにより、付与され得る。第2部分62の母材とは異なる屈折率を有する拡散成分62cとして、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、さらには、単なる気泡が例示される。
このように、第1部分61と第2部分は光学特性が異なっており、さらに、第2部分の表面は凸面形状である。これにより、第1部分61から第2部分62に到達した光は、第2部分62の表面の凸面形状に応じた方向に散乱または反射される。よって、プロジェクタ20からの投射光が第2部分62で散乱または反射されてスクリーン40に映し出される。
第2部分62の表面が凸面形状で有るため、第1部分61を通過して第2部分62の表面に到達した光は、凸面の曲率に応じた方向に散乱または反射される。凸面に入射された光は、凹面に入射された光よりも光の拡散範囲が広くなる。よって、本実施形態のように、第1部分61よりも第2部分62の体積が小さくて、第2部分62の表面が凸面になる場合には、各粒子60に入射された光の拡散範囲を広げることができる。
第1および第2電極41,42に電圧を印加していない状態では、粒子層55内の各粒子60は、種々の方向を向いていることがありうる。この場合、第1および第2電極間に所定の初期電圧を印加することで、図11に示すように、各粒子60の第1部分61が観察者側を向くように整列させることが可能となる。あるいは、第1部分61と第2部分62の比重を調整することで、図11のような向きに各粒子60を整列させることも可能である。
図11の状態で、第1および第2電極41,42間に電圧が印加されると、第1および第2電極41,42間に電場が発生し、この電場により、粒子60内に電子双極子モーメントが発生する。このとき、粒子60は、その双極子モーメントのベクトルが電場のベクトルと真逆を向く位置へ向けて動作するようになる。したがって、第1電極41及び第2電極42の間に電圧が印加され、第1電極41及び第2電極42の間に位置する粒子シート50に電場が発生すると、粒子60は、電場に対して安定した姿勢、すなわち電場に対して安定した位置や向きをとるようキャビティ56a内で動作する。図11の状態では、粒子60内の第2部分62は、粒子層55の面方向に対向配置されているが、第1電極41および第2電極42間の電圧を変化させることで、粒子60の姿勢が変化し、これにより、粒子層55の面方向に対する第2部分62の表面方向が変化する。第2部分62は、第1部分61に入射された光を散乱または反射させる機能を有するため、第2部分62の表面方向が変化することで、第2部分62の表面に入射される光の入射角度が変化し、第2部分62での光の散乱または反射方向も変化する。これにより、スクリーン40の拡散特性を変化させることができる。
本実施形態においても、粒子60の回転角度は、180度未満の角度に留めるのが望ましい。すなわち、粒子60の回転角度は、粒子60の初期姿勢を基準位置として、±90度未満に回転させるのが望ましい。これにより、粒子60の初期姿勢時に第1部分61が観察者に対向していれば、粒子60を回転させても、第1部分61の少なくとも一部が観察者に対向することになり、プロジェクタ20からスクリーン40に入射された光の大半が第1部分61を通って第2部分62に導かれて散乱または反射させることができ、スクリーン40の投射光強度を高く維持できる。
比誘電率が異なる第1部分61及び第2部分62を含む粒子60は、公知技術を含む様々な方法で製造できる。例えば、有機物または無機物の球状粒子を粘着テープなどを用いて単層に配列させ、球状粒子と異なる正負に帯電する樹脂成分の層または無機物層を半球面に蒸着する方法(蒸着法、例えば特開昭56−67887)、回転ディスクを用いる方法(例えば、特開平6−226875号公報)、比誘電率が異なる2種類の液滴をスプレー法やインクジェット法を用いて空気中で接触させて1つの液滴にする方法(例えば、特開2003−140204号公報)、JP2004−197083Aで提案されているマイクロチャンネル製造方法を用いて製造することができる。JP2004−197083Aで提案されているように、比誘電率が互いに異なる第1部分61及び第2部分62は、帯電特性の互いに異なる材料を用いて形成することができる。
マイクロチャンネル製造方法で粒子60を製造する場合、連続相をなす二種の重合性樹脂成分の合流時における速度や合流方向等、並びに、連続相の粒子相への吐出時における速度や吐出方向等を調整することにより、得られる粒子60の外径状や、粒子60における第1部分61及び第2部分62の界面の形状等を、調整することができる。なお、図12〜図14に示された粒子60の例では、第1部分61の体積を第2部分62の体積よりも大きくしている。また、図12〜図14に示された粒子60の例では、第1部分61と第2部分62とが面接触する界面を、第1部分61から見て凹面に、第2部分62から見て凸面にしている。そして、第2部分62を球体または楕円球体に近い形状にしている。
粒子60の第1部分61は透明であるため、第2部分62の色が粒子60の色として視認されることになる。粒子60の第2部分62の色は、顔料や染料等の色材により、調整され得る。顔料や染料は、種々の公知の顔料や染料等を用いることができる。一例として、JP2005−99158A及びJP2780723Bで開示された顔料や、JP5463911Bで開示された顔料または染料を用いることができる。
次に、この表示装置10を用いて画像を表示する際の作用について説明する。図11の粒子60の場合、第1部分61よりも第2部分62が小さく、第2部分62の表面は凸面であるため、第1部分61を通過して第2部分62の表面に到達した光は、凸面の曲率に応じて、比較的広い範囲に散乱または反射、すなわち拡散される。すなわち、図11の粒子60の拡散範囲は広くなる。よって、スクリーン40の真正面に対向して位置する観察者だけでなく、少し斜めに位置する観察者にもスクリーン40からの拡散光が届くことになり、視野角を広くすることができる。
本実施形態における表示装置10のスクリーン40は、第1および第2電極41,42に交流電圧を印加して粒子60を回転させることで、拡散特性を経時的に変化させることができる。より詳細には、本実施形態では、粒子60を回転させることで、入射光の方向に対する粒子60の第2部分62の表面の凸面方向を経時的に変化させる。これにより、スクリーン40での拡散特性が経時的に変化し、スクリーン40上でのスペックルパターンが経時的に変化する。そして、拡散特性の経時的な変化を十分に高速にすると、スペックルパターンが重ねられて平均化され、観察者に観察されるようになる。これにより、スペックルを目立たなくさせることができる。
図示されたスクリーン40は、一対の第1および第2電極41,42を有する。一対の第1および第2電極41,42間に電圧が印加されると、一対の第1および第2電極41,42間に位置する粒子シート50に電場が形成される。粒子シート50の粒子層55には、比誘電率の異なる第1部分61および第2部分62を有する粒子60が、動作可能に保持されている。この粒子60は、そもそも帯電していることから、或いは、少なくとも粒子層55に電場が形成されると双極子モーメントが発生することから、形成された電場のベクトルに応じて、動作する。光の進行方向を変化させる機能、例えば反射機能や拡散機能を有する粒子60が動作すると、図12〜図14に示すように、スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。この結果、スペックルを目立たなくさせることができる。
なお、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるとは、スペックル低減機能を発現し得る程度に比誘電率が異なっていれば十分である。したがって、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるか否かは、動作可能に保持された粒子60が、電場ベクトルの変化にともなって動作し得るか否かにより、判定することができる。
ここで、粒子60が保持部56に対して動作する原理は、粒子60の電荷または双極子モーメントが電場ベクトルに対して安定的な位置関係となるよう、粒子60の向き及び位置を変化させる、というものである。したがって、粒子層55に一定の電場が印加され続けると、粒子60の動作は一定期間後には停止する。その一方で、スペックルを目立たなくするには、粒子60の保持部56に対する動作が継続する必要がある。そこで、電力源30は、粒子層55に形成される電場が経時的に変化するよう、電圧を印加する。図示された例において、電力源30は、粒子シート50内に生成される電場のベクトルを反転させるよう、一対の第1および第2電極41,42間に交流電圧を印加する。例えば、図7に示された例では、電力源30からスクリーン40の一対の第1および第2電極41,42に、X〔V〕の電圧と−Y〔V〕の電圧とが繰り返し印加される。このような反転電場の印加にともない、粒子60は、一例として、図13の状態を中心として、図14の状態と図12の状態との間で繰り返し動作することができる。なお、第1および第2電極41,42に印加される電圧は、図7に示したものに限定されず、例えば交流電圧などでもよい。
上述したように、粒子60は、保持部56に形成されたキャビティ56a内に収容されている。そして、図12〜図14に示された例において、粒子60は、略球状の外形を有する。また、粒子60を収容するキャビティ56aは、略球状の内形を有する。したがって、粒子60は、その中心軸線周りを、図12〜図14の矢印線に示すように回転振動することができる。また、粒子60を収容するキャビティ56aの大きさに依存して、粒子60は、繰り返し回転運動だけでなく、並進運動も行うようになる。さらに、キャビティ56aには、溶媒57が充填されている。溶媒57は、粒子60の保持部56に対する動作を円滑にする。
このように、第2の実施形態では、スクリーン40内の粒子層55における粒子60を、第1部分61と第2部分62の2層構造とし、第2部分62を第1部分61よりも体積を小さくしている。第1部分61は透明で、第2部分62は光の散乱または反射特性を有する。第1部分61を通過して第2部分62との界面に入射された光は、第2部分62の凸面にて、広い範囲に拡散される。これにより、スクリーン40の真正面だけでなく、斜め方向に位置する観察者であっても、スクリーン40に映し出された投影光を視認できるようになり、視野角を広げることができる。
また、本実施形態の粒子60の第1部分61と第2部分62の比誘電率は互いに異なることから、粒子層55の両側に第1および第2電極41,42を配置して、第1および第2電極41,42間に交流電圧を印加することで、粒子60を回転させることができる。これにより、第1部分61を通過して第2部分62に入射される光の方向に対する第2部分62の凸面の方向を経時的に変化させることができる。第2部分62は、光の散乱または反射特性を有するため、第2部分62に入射された光の散乱または反射角度が経時的に変化し、スペックルが視認されにくくなる。
なお、粒子60を繰り返し回転させる場合には、その角度範囲を、図12〜図14に示すように、180°未満とすることが好ましい。この場合、第1部分61を主として、観察者側に配置することができる。すなわち、スクリーン40に光が照射されている間、スクリーン40の法線方向ndに沿って観察者側から第1部分61を覆うようにすることができ、第1部分61を通過した光を第2部分62に導いて、第2部分62にて散乱または反射させることが可能となる。
また、粒子60の第1部分61は透明であることから、第2部分62の色によって粒子60の色が決定され、粒子60が回転または並進移動を行っても、常に第2部分62の色が視認されることから、スクリーン40の色合いが変化することがない。
(第3の実施形態)
第2の実施形態では、粒子60内に、表面が凸面形状の第2部分62を設けて拡散範囲を広げる例を示したが、第3の実施形態では、第2部分62の形状を変えて拡散範囲を狭めるものである。
図15〜図18は第3の実施形態を説明する図である。図15はスクリーン40の縦断面図、図16〜図18は図15のスクリーン40の動作を説明する図である。
第3の実施形態による粒子60は、第1部分61と、第1部分61よりも体積が大きい第2部分62とを有する。第1部分61と第2部分62の材料は、第2の実施形態と同様であり、第1部分61は透明部材であり、第2部分62は光の散乱または反射機能を有する。
第1部分61と第2部分62との界面は、第1部分61から見ると凸面であり、第2部分62から見ると凹面である。第1部分61から第2部分62に入射された光は、収束する方向に進行する。これにより、本実施形態による粒子60を有するスクリーン40は、狭い範囲に光を拡散させることができる。したがって、スクリーン40の正面側の特定の位置にいる観察者に集中的に拡散光を集めることができ、この観察者から見ると、高コントラストでスクリーン40を視認できることになる。
このように、第3の実施形態では、スクリーン40の粒子層55内の各粒子60がプロジェクタ20からの映像光の拡散範囲を狭めるため、特定の場所に位置する観察者はスクリーン40の投影像をより高いコントラストで視認することができる。
上述した第1〜第3実施形態では、反射型のスクリーン40について説明したが、これらの実施形態は、透過型のスクリーン40にも適用可能である。透過型のスクリーン40の場合、プロジェクタ20からの光が粒子60を通過する必要がある。このため、例えば、第2部分62の体積を第1部分61に対してより小さくすることで、第1部分61を通過して第2部分62に入射される光の割合を減らしてもよい。あるいは、第2部分62がある粒子60と第2部分62がない粒子60を混在させてもよい。透過型のスクリーン40の場合、粒子層55の全体での光の透過率が反射率よりも高くなるように、各粒子60の第1部分61と第2部分62との体積比を調整するのが望ましい。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によるスクリーンは、上述した第1〜第3の実施形態によるスクリーンとは粒子60が異なっている。第4の実施形態における粒子60は、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光の反射率が、当該コヒーレント光の波長帯域外の光の反射率より高くなるように構成されている。
本実施形態による粒子60に含まれる拡散成分66b、67bは、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光を選択的に散乱する顔料を含んでいる。あるいは、粒子60の主部66a、67aに、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が添加されていてもよい。このような顔料または染料として、JP2780723Bに開示されたカラーフィルタ顔料や、JP5463911Bに開示されたカラーフィルタ染料を例示することができる。コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が、粒子60の主部66a、67aに添加されていることで、外光や照明光などの環境光に含まれる波長のうち、コヒーレント光の波長帯域外の波長の光は、粒子60の内部で散乱されずに吸収される。これにより、画像光に対する環境光の影響が低減され得て、高コントラストな画像を表示することが可能となる。なお、この場合、粒子60の拡散成分66b、67bは、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光を選択的に散乱する顔料から構成されていてもよいし、粒子60の主部66a,67aをなす材料とは異なる屈折率を有する材料、たとえば樹脂ビーズ、ガラスビーズ、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、さらには、単なる気泡などから構成されていてもよい。
従来のスクリーンでは、外光や照明光などの環境光を画像光との区別なく反射してしまうため、画像光が照射されている部分と画像光が照射されていない部分との明るさの差が小さくなってしまう。このため、従来のスクリーンにおいて、高コントラストな画像の表示を実現するためには、部屋を暗くするための手段や環境などを用いて外光や照明光などの環境光の影響を抑える必要があった。
一方、本実施形態における表示装置10のスクリーン40では、粒子層55に含まれる粒子60は、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光の反射率が、当該コヒーレント光の波長帯域外の光の反射率より高くなるように構成されているため、外光や照明光などの環境光に含まれる波長のうち前記コヒーレント光の波長帯域外の波長の光が、スクリーン40上で散乱されることが抑制され得る。これにより、画像光に対する環境光の影響を低減させることが可能となり、明るい環境の下でも高コントラストな画像を表示することができる。
また、本実施形態によれば、粒子層55に含まれる粒子60の各々は、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光の反射率が、当該コヒーレント光の波長帯域外の光の反射率より高くなるように構成されているため、外光や照明光などの環境光に含まれる波長のうち、コヒーレント光の波長帯域外の波長の光がスクリーン40上で散乱されることが抑制され得る。これにより、画像光に対する環境光の影響を低減させることが可能となり、明るい環境の下でも高コントラストな画像を表示することができる。
上述した実施形態において、粒子60に含まれる拡散成分66b、67bが、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光を選択的に散乱する顔料から構成されている例を示したが、この例に限られない。たとえば、粒子60の主部66a、67aには、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が添加されていてもよい。このような顔料または染料として、JP2780723Bに開示されたカラーフィルタ顔料や、JP5463911Bに開示されたカラーフィルタ染料を例示することができる。コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が、粒子60の主部66a、67aに添加されていることで、外光や照明光などの環境光に含まれる波長のうち、コヒーレント光の波長帯域外の波長の光は、粒子60の内部で散乱されずに吸収される。これにより、画像光に対する環境光の影響が低減され得て、高コントラストな画像を表示することが可能となる。なお、この場合、粒子60の拡散成分66b、67bは、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光を選択的に散乱する顔料から構成されていてもよいし、粒子60の主部66a,67aをなす材料とは異なる屈折率を有する材料、たとえば樹脂ビーズ、ガラスビーズ、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、さらには、単なる気泡などから構成されていてもよい。
あるいは、シリコーンゴム等からなる保持部56に、コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が添加されていてもよい。さらには、スクリーン40の機能を妨げない範囲において、スクリーン40の電極41,42、カバー層46,47、基材51,52およびこれらを接合する接着剤等の層に、コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が添加されていてもよい。また、スクリーン40に、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する機能を有する層を設けてもよい。これらの例によっても、粒子60の主部66a、67aにコヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する顔料または染料が添加されている場合と同様に、画像光に対する環境光の影響が低減され得て、高コントラストな画像を表示することが可能となる。
なお、スクリーン40が反射型である場合、粒子層55に入射する光および粒子層55で反射された光からコヒーレント光の波長帯域外の光を吸収するために、コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する機能を有する層は、粒子層55より観察者側に設けられる。
一方、スクリーン40が透過型である場合、コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する機能を有する層は、スクリーン40の任意の位置、すなわち粒子層55と第1基材51または第2基材52の間、第1基材51と第1電極41または第2基材52と第2電極42の間、および第1電極41と第1カバー層46または第2電極42と第2カバー層47の間のいずれかに設けられ得る。しかしながら、コヒーレント光の波長帯域外の環境光の反射を抑制する観点から、コヒーレント光の波長帯域外の光を吸収する機能を有する層は、観察者側に近い位置に設けられることが好ましい。この場合、コントラスト向上をより効果的に実現することができる。
さらに、上述した実施形態において、スクリーン40が反射型スクリーンとして構成される例を示したが、この例に限られず、図19に示すように、スクリーン40が透過型スクリーンとして構成されるようにしてもよい。この場合、粒子層55に含まれる粒子60の各々は、コヒーレント光源21から発振されるコヒーレント光の波長帯域内の光の透過率が、当該コヒーレント光の波長帯域外の光の透過率より高くなるように構成される。これにより、外光や照明光などの環境光に含まれる波長のうち、コヒーレント光の波長帯域外の波長の光がスクリーン40を透過することが抑制され、スクリーン40の表示側面40aとは反対側の面に対面して位置する観察者は、明るい環境の下でも高コントラストな画像を観察することが可能となる。透過型のスクリーン40では、第2電極42、第2カバー層47及び第2基材52は、第1電極41、第1カバー層46及び第1基材51と同様に透明に構成され、上述した第1電極41、第1カバー層46及び第1基材51と同様の可視光透過率を有することが好ましい。また、粒子60に入射した光の透過率が、粒子60に入射した光の反射率よりも高くなるよう、粒子60内に添加される拡散成分66b,67bの量が調整されていることが好ましい。
(第5の実施形態)
図20〜図23は、本開示の第5の実施形態を説明するための図である。第5の実施形態による表示装置1は、図1と同様の構成を有する。図20は第5の実施形態によるスクリーン40の縦断面図である。図21〜図23は図1のスクリーン40の動作を説明する図である。
第5の実施形態による表示装置10は、図1と同様に、プロジェクタ20と、プロジェクタ20から画像光を照射されるスクリーン40と、を有する。スクリーン40は、図20に示すように、複数の粒子を有する粒子シート50と、電力源30と接続されて粒子シート50の両側に配置される透明な第1および第2電極41,42と、を有する。
粒子シート50は、一対の基材51,52と、一対の基材51,52間に設けられた粒子層55と、を有する。粒子層55は、多数の粒子60と、粒子60を保持する保持部56と、を有する。保持部56は、粒子60を動作可能に保持している。粒子60は、プロジェクタ20から投射される画像光の進行方向を変化させる機能を有する。図示された例において、粒子60は、画像光を拡散させる拡散反射させる機能を有する。
粒子60は、第1部分61、第3部分63および第2部分62がこの順に並んだ3層構造であり、第1部分61が観察者側に配置されている。第3部分63は、第1部分61に面接触しており、第1部分61からの入射光を制御する。第2部分62は、第3部分63の第1部分61に面接触する第1面63aとは反対側の第2面63bに面接触しており、第1部分61とは比誘電率が異なっている。このように、第3部分63は、第1部分61と第2部分62によって挟まれており、第3部分63は第1部分61と第2部分62に面接触している。
第1部分61と第2部分62は透明部材である。第3部分63は、第1部分61に入射された光を散乱または反射させる機能を有する。第3部分63は、第1部分61とは異なる屈折率で構成されている。また、第3部分63の内部には、光を拡散させる拡散成分63cが含まれていてもよい。これら拡散成分63cは、粒子60内を進む光に対して、反射や屈折等によって、光の進路方向を変化させる作用を行う。このような拡散成分63cの光拡散機能(光散乱機能)は、例えば、粒子60の主部63cをなす材料とは異なる屈折率を有した材料から拡散成分63cを構成することにより、あるいは、光に対して反射作用を及ぼし得る材料から拡散成分63cを構成することにより、付与され得る。第3部分63の母材とは異なる屈折率を有する拡散成分63cとして、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、さらには、単なる気泡が例示される。
粒子60は、典型的には球形であり、その中心付近を通過する薄い層が第3部分63であり、第3部分63の両面(第1面63aと第2面63b)側に第1部分61と第2部分62が面接触している。なお、粒子60の形状は、理想的な球体であるとは限らない。よって、第1部分61、第3部分63および第2部分62の形状も、粒子60の形状に応じて変化する。
粒子60の第3部分63の第1面63aと第2面63bとの間の厚さは、第1部分61の第1面63aの法線方向における最大厚さよりも薄い。第3部分63の第1面63aと第2面63bとの間の厚さは、第3部分63の第2面63bの法線方向における最大厚さよりも薄い。第1面63aと第2面63bは、例えば円形または楕円形であり、第3部分63は、例えば円板、楕円板、円筒体、または楕円筒体の形状である。
第1および第2電極41,42に電圧を印加していない初期状態では、第3部分63の面方向は、粒子層55の面方向に略平行に配置されている。なお、初期状態で、第3部分63の面方向を粒子層55の面方向に略平行に配置するには、例えば、粒子60の第1部分61、第2部分62および第3部分63の比重を調整することで、実現可能である。あるいは、初期状態のときに第1および第2電極41,42に所定の初期電圧を印加して、粒子層55内の各粒子60の第3部分63の面方向が粒子層55の面方向に略平行になるようにしてもよい。
第1および第2電極41,42間に電圧が印加されると、第1および第2電極41,42間に電場が発生し、この電場により、粒子60内に電子双極子モーメントが発生する。このとき、粒子60は、その双極子モーメントのベクトルが電場のベクトルと真逆を向く位置へ向けて動作するようになる。したがって、第1電極41及び第2電極42の間に電圧が印加され、第1電極41及び第2電極42の間に位置する粒子シート50に電場が発生すると、粒子60は、電場に対して安定した姿勢、すなわち電場に対して安定した位置や向きをとるよう、キャビティ56a内で動作する。第1電極41および第2電極42間の電圧を変化させることで、粒子60の姿勢が変化し、これにより、粒子層55の面方向に対する第3部分63の面方向の角度が変化する。第3部分63は、第1部分61に入射された光を散乱または反射させる機能を有するため、第3部分63の角度が変化することで、スクリーン40の拡散特性を変化させることができる。
粒子60の回転角度は、180度未満の角度に留めるのが望ましい。すなわち、粒子60の回転角度は、粒子60の初期姿勢を基準位置として、±90度未満に回転させるのが望ましい。これにより、粒子60の初期姿勢時に第1部分61が観察者に対向していれば、粒子60を回転させても、第1部分61の少なくとも一部が観察者に対向することになり、プロジェクタからスクリーン40に入射された光の大半が第1部分61を通って第3部分63に導かれて散乱または反射させることができ、スクリーン40の投射光強度を高く維持できる。
比誘電率が異なる第1部分61、第3部分63および第2部分62を含む粒子60は、公知技術を含む様々な方法で製造できる。例えば、有機物または無機物の球状粒子を粘着テープなどを用いて単層に配列させ、球状粒子と異なる正負に帯電する樹脂成分の層または無機物層を半球面に蒸着する方法(蒸着法、例えば特開昭56−67887)、回転ディスクを用いる方法(例えば、特開平6−226875号公報)、比誘電率が異なる2種類の液滴をスプレー法やインクジェット法を用いて空気中で接触させて1つの液滴にする方法(例えば、特開2003−140204号公報)、JP2004−197083Aで提案されているマイクロチャンネル製造方法を用いて製造することができる。JP2004−197083Aで提案されているように、比誘電率が互いに異なる第1部分61、第2部分62および第3部分63は、帯電特性の互いに異なる材料を用いて形成することができる。また、第3部分63は、散乱材料または光反射フレークなどを用いて形成することができる。光反射フレームは、例えば、反射材料を細かく粉砕したフレークを第3部分63の母材に混ぜたものである。
マイクロチャンネル製造方法では、連続相と粒子化相とが互いに油性/水性(O/W型)又は水性/油性(W/O型)の関係にあるものを用い、連続相が移送される第1マイクロチャンネルから、第2マイクロチャンネルに流れる流動媒体の粒子化相内に、第1部分61、第2部分62および第3部分63に対応する材料を含む連続相を、順次吐出することにより、三相ポリマー粒子60で、かつ、電荷的に(±)の極性を有する双極性粒子60を製造することができる。
マイクロチャンネル製造方法で粒子60を製造する場合、連続相をなす三種の重合性樹脂成分の合流時における速度や合流方向等、並びに、連続相の粒子化相への吐出時における速度や吐出方向等を調整することにより、得られる粒子60の外形や、粒子60における第1部分61、第2部分62および第3部分63の界面の形状等を、調整することができる。なお、図21〜図23に示された粒子60の例において、第1部分61の体積比率と、第2部分62の体積比率は、同一となっている。また、図21〜図23に示された粒子60の例において、第1部分61と第3部分63とが面接触する第1面63aと、第3部分63と第2部分62とが面接触する第2面63bとは、円形または楕円形に形成されている。そして、図21〜図23に示された粒子60は、球形状となっている。すなわち、図21〜図23に示された粒子60において、第1部分61及び第2部分62は、それぞれ、半球状であり、第3部分63は円板状となっているが、上述したように、第3部分63は若干の厚みを持っていてもよいし、粒子60の形状は理想的な球形でなくてもよい。
粒子60の第1部分61と第2部分62は透明であるため、第3部分63の色が粒子60の色として視認されることになる。粒子60の第3部分63の色は、顔料や染料等の色材により、調整され得る。顔料や染料は、種々の公知の顔料や染料等を用いることができる。一例として、JP2005−99158A及びJP2780723Bで開示された顔料や、JP5463911Bで開示された顔料または染料を用いることができる。
次に、この表示装置10を用いて画像を表示する際の作用について説明する。
スクリーン40上に投射された光は、第1カバー層46及び第1電極41を透過して、粒子シート50に到達する。この光は、粒子シート50の粒子60の第3部分63で拡散反射し、スクリーン40の観察者側となる種々の方向へ向けて射出される。したがって、スクリーン40の観察者側となる各位置において、スクリーン40上の各位置からの反射光を観察することができる。この結果、スクリーン40上のコヒーレント光を照射されている領域に対応した画像を観察することができる。
また、光源21が、互いに異なる波長域のコヒーレント光を射出する複数の光源を含むようにしてもよい。この場合、制御装置35は、各波長域の光に対応した光源を、他の光源から独立して制御する。この結果、スクリーン40上にカラー画像を表示することが可能となる。
本実施形態における表示装置10のスクリーン40は、粒子60を回転させることで、拡散特性を経時的に変化させるようになっている。より詳細には、本実施形態では、入射光の方向に対する粒子60の第3部分63の傾斜角度を経時的に変化させる。これにより、スクリーン40での拡散特性が経時的に変化し、スクリーン40上でのスペックルパターンが経時的に変化する。そして、拡散特性の経時的な変化を十分に高速にすると、スペックルパターンが重ねられて平均化され、観察者に観察されるようになる。これにより、スペックルを目立たなくさせることができる。
図示されたスクリーン40は、一対の第1および第2電極41,42を有する。一対の第1および第2電極41,42間に電圧が印加されると、一対の第1および第2電極41,42間に位置する粒子シート50に電場が形成される。粒子シート50の粒子層55には、比誘電率の異なる第1部分61および第2部分62を有する粒子60が、動作可能に保持されている。この粒子60は、そもそも帯電していることから、或いは、少なくとも粒子層55に電場が形成されると双極子モーメントが発生することから、形成された電場のベクトルに応じて、動作する。光の進行方向を変化させる機能、例えば反射機能や拡散機能を有する粒子60が動作すると、図21〜図23に示すように、スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。この結果、スペックルを目立たなくさせることができる。
なお、粒子60の第1部分61と第2部分62の間で比誘電率が異なるとは、スペックル低減機能を発現し得る程度に比誘電率が異なっていれば十分である。したがって、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるか否かは、動作可能に保持された粒子60が、電場ベクトルの変化にともなって動作し得るか否かにより、判定することができる。
ここで、粒子60が保持部56に対して動作する原理は、粒子60の電荷または双極子モーメントが電場ベクトルに対して安定的な位置関係となるよう、粒子60の向き及び位置を変化させる、というものである。したがって、粒子層55に一定の電場が印加され続けると、粒子60の動作は一定期間後には停止する。その一方で、スペックルを目立たなくするには、粒子60の保持部56に対する動作が継続する必要がある。そこで、電力源30は、粒子層55に形成される電場が経時的に変化するよう、電圧を印加する。図示された例において、電力源30は、粒子シート50内に生成される電場のベクトルを反転させるよう、一対の第1および第2電極41,42間に交流電圧を印加する。例えば、図7に示された例では、電力源30からスクリーン40の一対の第1および第2電極41,42に、X〔V〕の電圧と−Y〔V〕の電圧とが繰り返し印加される。このような反転電場の印加にともない、粒子60は、一例として、図22の状態を中心として、図23の状態と図21の状態との間で繰り返し動作することができる。なお、第1および第2電極41,42に印加される電圧は、図7に示したものに限定されず、例えば交流電圧などでもよい。
上述したように、粒子60は、保持部56に形成されたキャビティ56a内に収容されている。そして、図21〜図23に示された例において、粒子60は、略球状の外形を有する。また、粒子60を収容するキャビティ56aは、略球状の内形を有する。したがって、粒子60は、その中心を通る回転軸線を中心として、図21〜図23の矢印線の向きに回転振動することができる。また、粒子60を収容するキャビティ56aの大きさに依存して、粒子60は、繰り返し回転運動だけでなく、並進運動も行うようになる。さらに、キャビティ56aには、溶媒57が充填されている。溶媒57は、粒子60の保持部56に対する動作を円滑にする。
このように、第5の実施形態では、スクリーン40内の粒子層55における粒子60を、第1部分61、第2部分62および第3部分63の3層構造としている。第1部分61と第2部分62は、透明でかつ比誘電率が互いに異なっている。第3部分63は、第1部分61と第2部分62との間に配置されて、光の散乱または反射機能を持っている。第1部分61と第2部分62は透明であることから、第3部分63の色によって粒子60の色が決定され、粒子60が回転または並進移動を行っても、粒子60の色は変化せず、スクリーン40の色も変わらない。第3部分63は、光の散乱または反射機能を持っているため、粒子60の第1部分61に入射された光を第3部分63で散乱または反射させることができる。
このような粒子60を含む粒子層55の両側に第1および第2電極41,42を配置して、第1および第2電極41,42間に交流電圧を印加すると、入射光の方向に対する第3部分63の面方向の傾斜角度を経時的に変化させることができる。第3部分63は、光の散乱または反射特性を有するため、第3部分63に入射された光の散乱または反射角度が経時的に変化し、スペックルが視認されにくくなる。
さらに、本実施形態によれば、スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55において、粒子60を繰り返し回転させることができる。すなわち、粒子60は、ごくわずかなスペースで、拡散特性を有効に変化させ得るよう、動作することができる。したがって、粒子60を繰り返し回転させることによれば、粒子層55及びスクリーン40の薄型化を実現しながら、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。また、粒子60を繰り返し回転させる場合には、その角度範囲を、図21〜図23に示すように、180°未満とすることが好ましい。この場合、第1部分61を第3部分63主として、観察者側に配置することができる。すなわち、スクリーン40に光が照射されている間、スクリーン40の法線方向ndに沿って観察者側から第1部分61第3部分63を覆うようにすることができ、第1部分61を通過した光を第3部分63に導いて、第3部分63にて散乱または反射させることが可能となる。
(第6の実施形態)
第5の実施形態では、反射型のスクリーン40の例を説明したが、第6の実施形態は、透過型のスクリーン40に適用する例を示している。
図24は第6の実施形態によるスクリーン40の縦断面図である。第6の実施形態によるスクリーン40は透過型である。図24のスクリーン40は、図20のスクリーン40と比べて、粒子層55内の粒子60の向きが異なっている。第6の実施形態による粒子60は、第5の実施形態と同様に、第1部分61、第2部分62および第3部分63の3層構造であり、各部分の材料も同じである。
図24の粒子60は、図20の粒子60を90度反転させた姿勢を基準姿勢としており、この基準姿勢から双方向に90度ずつ回転可能としている。図24の粒子60を回転させるには、粒子層55の内部に、図20とは90度異なる方向に電場をかける必要がある。そこで、本実施形態では、観察者とは反対側のみに第1電極41と第2電極42を交互にストライプ状に配置し、これら電極41,42にて粒子層55の面方向への電場、すなわち図20とは90度異なる方向の電場を形成している。より具体的には、本実施形態では、隣接する第1電極41および第2電極42間に交流電圧を印加することで、粒子層55の面方向に形成される電場を周期的に切り替える。これにより、対応する第1電極41および第2電極42間の近傍に位置する粒子60は、交流電圧の周波数に応じて回転する。
図24のスクリーン40は、第1電極41および第2電極42に電圧を印加していない初期状態で、粒子層55内の粒子60の第3部分63の面方向が粒子層55の法線方向に略平行に配置されている。第3部分63は、非常に薄いため、スクリーン40に入射された光の大半は、各粒子60の第1部分61と第2部分62を透過する。よって、プロジェクタからの光が入射されるスクリーン40の面とは反対の面側に対向して位置する観察者は、プロジェクタからの投影光を視認することができる。
なお、第1電極41および第2電極42に電圧を印加していない初期状態で、各粒子60の第3部分63の面方向を粒子層55の法線方向に平行に配置させるには、例えば、粒子60内の第1部分61、第2部分62および第3部分63の比重を調整することが考えられる。あるいは、第1電極および第2電極間に所定の初期電圧を印加して、各粒子60の第3部分63の面方向を粒子層55の法線方向に揃えてもよい。
第1電極41および第2電極42に交流電圧を印加すると、粒子60が回転し、入射光の方向に対する第3部分63の傾斜角度が経時的に変化する。よって、第3部分63にて散乱または反射される光の方向も経時的に変化し、スペックルが視認されにくくなる。
このように、第6の実施形態では、第5の実施形態とは90度異なる方向に粒子60を回転させた状態を粒子60の基準姿勢とすることで、透過型のスクリーン40を実現することができる。また、各粒子60を基準姿勢から180度未満の範囲内で回転させることで、スクリーン40上のスペックルを目立たせなくすることができる。
(第7の実施形態)
第1乃至第6の実施形態では、反射型または透過型のスクリーン40に適用する例を示したが、第7の実施形態は、窓や採光フィルムなどの光制御シートに適用するものである。
図25は第7の実施形態による光制御シート75の縦断面図である。図25の光制御シート75は、採光効率を向上させる採光シートとして用いることが可能なものである。
図25の光制御シート75は、光制御層71と、光制御層71の一方の面に配置される接着層72と、光制御層71の他方の面に配置される保護フィルム73とを備えている。図1の光制御シート75は、接着層72を介して窓等の採光具74に積層することが可能である。あるいは、本実施形態による光制御シート75は、窓等の採光具74の内部に一体的に形成されていてもよい。
接着層72を露出したままにすると、意図せぬものに光制御シート75が接着してしまうため、光制御シート75を窓等の採光具74に接着する前は、接着層72の上に不図示の剥離フィルムをつけてもよい。剥離フィルムは、光制御シート75を採光具74に接着する前に剥離される。また、保護フィルム73は、光制御シート75を採光具74に接着した後に剥離される。以下では、剥離フィルムと保護フィルム73のそれぞれを単に「層」と呼ぶこともある。
接着層72の組成物は、例えば、熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレンアクリル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等から一種若しくは複数を、可塑剤、酸化防止剤及び紫外線遮蔽剤といった添加剤と共に混合し用いたり、アクリル系樹脂の粘着材と、架橋剤と、希釈剤とを混合して形成されたりする。
光制御層71は、一対の基材層51,52と、これら基材層の間に設けられる粒子層55と、一方の基材層52側に配置される第1および第2電極41,42とを有する。粒子層55の構造は、図20と同様であり、複数の粒子60が含まれている。各粒子60は、図20や図24と同様に、第1部分61、第2部分62および第3部分63を有する。第1部分61と第2部分62が透明で、第3部分63が光の散乱または反射機能を有することも図20や図24と同様である。
第1および第2電極41,42は、第6の実施形態と同様に、交互にストライプ状に配置されており、隣接する第1および第2電極41,42間に所定の電圧を印加することで、対応する第1および第2電極41,42間に粒子層55の面方向への電場を形成できる。
なお、第7の実施形態は、レーザ光を照射するわけではなく、スペックルを目立たせなくする必要はないため、第1および第2電極41,42間に印加する電圧は直流電圧で構わない。
第3部分63の面方向は、光制御層71の積層方向に対して傾斜した方向に配置されている。これにより、光制御層71の採光具74側に配置された面から入射された光が第3部分63に入射されると、その光を斜め上方に跳ね上げることができる。よって、図25の光制御シート75を、鉛直方向に延びる窓に張り付けた場合は、窓から入射された外光を屋内の天井方向に跳ね上げることができ、自然光を利用して屋内の天井方向を明るく照明できる。
粒子層55内の各粒子60の第3部分63の面方向を、図25に示すように、光制御層71の積層方向に対して斜めに配置するには、隣接する第1および第2電極41,42間に所定の初期電圧を与えることが考えられる。なお、粒子60内の第1部分61、第2部分62および第3部分63の比重を調整することで、電圧を印加しなくても、第3部分63の面方向を光制御層71の積層方向に対して斜めに配置できる場合は、電極を省略してもよい。このように、本実施形態では、電極は必ずしも必須の構成部材ではない。
ただし、季節や時間帯により、各粒子60の第3部分63の傾斜角度を調整したい場合には、第1および第2電極41,42は必須である。太陽光の入射角度に応じて、第1および第2電極41,42に印加する電圧を調整することで、屋内の防眩性、採光性およびプライバシ性の少なくとも一つの機能を果たすことができる。
このように、第7の実施形態では、第1部分61、第2部分62および第3部分63を有する粒子60を含む粒子層55を光制御シート75に組み込むため、採光性、防眩性およびプライバシ性の少なくとも一つに優れた光制御シート75を実現できる。
なお、上述した第5乃至第7の実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
上述した例では、粒子60内の第1部分61と第2部分62の体積をほぼ同じにし、第3部分63を粒子60のほぼ中央付近に配置しているが、第1部分61と第2部分62の体積が異なっていてもよい。図26は第1部分61が第2部分62よりも体積が大きく、第3部分63が粒子60の中央からずれて設けられている。また、図26とは逆に、第1部分61の体積を第2部分62の体積よりも小さくしてもよい。
上述したマイクロチャンネル製造方法にて粒子60を形成すると、各粒子60ごとに第1部分61と第3部分63との体積が必ずしも同一にならず、図20の粒子60と図26の粒子60とが混在することもあり得るが、そのような場合でも、第1電極および第2電極に印加する交流電圧により、粒子60は同様に回転するため、実用上は特に問題はない。
本実施形態では、第1部分61は、第2部分62よりも観察者側に配置することを前提としている。よって、第1部分61はできるだけプロジェクタからの光を損失なく取り込んで第3部分63に導くのが望ましい。これに対して、第2部分62には光吸収機能を持たせてもよい。第2部分62の光吸収機能は、一例として、第2部分62が光吸収性の色材、具体的にはカーボンブラックやチタンブラック等の顔料を含むことにより、発現され得る。第2部分62に光吸収機能を持たせると、粒子60プロジェクタ20からの画像光Laとは異なる方向から入射する光Lcを、第2部分62によって吸収することができる。第3部分63によって吸収される光は、例えば、表示装置10が設置された場所に存在する照明装置90(図1参照)からの環境光とすることができる。スクリーン40に入射する画像光La以外の光Lcを選択して吸収することにより、表示画像の明るさを損なうことなく、表示画像のコントラストを効率的に改善することができる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態による表示装置10は、透過型スクリーン40を備えている。表示装置10の全体構成は例えば図19と同様である。また、透過型スクリーン40の縦断面図は、例えば図2と同様である。図27〜図29は、透過型スクリーンの動作を説明するための図である。電力源30から透過型スクリーン40へ印加される電圧波形は、例えば図7のようなグラフで表される。
本実施形態による透過型表示装置10は、プロジェクタ20と、プロジェクタ20から画像光を照射される透過型スクリーン40と、を有している。透過型スクリーン40は、後述するように、入射光に対して及ぼす拡散特性を経時的に変化させることができ、これにより、スペックルを目立たなくすることができる。このような透過型スクリーン40の機能に関連し、透過型表示装置10は、電力源30及び制御装置35をさらに有している。電力源30は、透過型スクリーン40に対して電圧を印加する。制御装置35は、電力源30からの印加電圧を調整して、透過型スクリーン40の状態を制御する。また、制御装置35は、プロジェクタ20の動作も制御する。一例として、制御装置35は、汎用コンピューターとすることができる。
例えば図3に示すように、プロジェクタ20は、透過型スクリーン40上の全域を走査するよう、コヒーレント光を投射する。走査は、高速で実施される。プロジェクタ20は、形成すべき画像に応じ、コヒーレント光源21からのコヒーレント光の射出を停止する。すなわち、透過型スクリーン40上の画像が形成されるべき位置のみにコヒーレント光を投射する。この結果、透過型スクリーン40上に画像が形成される。プロジェクタ20の動作は、制御装置35によって制御される。
本実施形態による透過型スクリーン40は、複数の粒子を有した粒子シート50と、電力源30と接続された電極41,42と、を有している。粒子シート50は、一対の基材51,52と、一対の基材51,52間に設けられた粒子層55と、を有している。粒子層55は、多数の粒子60と、粒子60を保持する保持部56と、を有している。粒子60は、プロジェクタ20から投射される画像光の進行方向を変化させる機能を有している。図示された例において、粒子60は、画像光を拡散させる、とりわけ拡散透過させる機能を有している。
粒子60は、比誘電率が異なる第1部分61及び第2部分62を含んでいる。したがって、この粒子60が電場内に置かれると、当該粒子60内に電子双極子モーメントが発生する。このとき、粒子60は、その双極子モーメントのベクトルが電場のベクトルと真逆を向く位置へ向けて動作するようになる。したがって、第1電極41及び第2電極42の間に電圧が印加され、第1電極41及び第2電極42の間に位置する粒子シート50に電場が発生すると、粒子60は、電場に対して安定した姿勢、すなわち電場に対して安定した位置や向きをとるよう、キャビティ56a内で動作する。この透過型スクリーン40は、光拡散機能を有した粒子60の動作にともなって、その拡散特性を変化させる。第1部分61及び第2部分62は、透明となっている。第1部分61及び第2部分62は、上述した第1電極41等と同様の可視光透過率を有することが好ましい。
マイクロチャンネル製造方法で粒子60を製造する場合、連続相をなす二種の重合性樹脂成分の合流時における速度や合流方向等、並びに、連続相の粒子相への吐出時における速度や吐出方向等を調整することにより、得られる粒子60の外径状や、粒子60における第1部分61及び第2部分62の界面の形状等を、調整することができる。なお、図27〜図29に示された粒子60の例において、第1部分61の体積比率と、第2部分62の体積比率は、同一となっている。また、図27〜図29に示された粒子60の例において、第1部分61及び第2部分62の界面は、平面状に形成されている。そして、図27〜図29に示された粒子60は、球形状となっている。すなわち、図27〜図29に示された粒子60において、第1部分61及び第2部分62は、それぞれ、半球状となっている。
また、連続相をなす二種の重合性樹脂成分が、拡散成分を含む場合、粒子60の第1部分61及び第2部分62に内部拡散機能を付与することができる。図27〜図29に示された例において、粒子60の第1部分61は、第1主部66a及び第1主部66a内に分散した複数の第1拡散成分(拡散粒子)66bを有している。同様に、第2部分62は、第2主部67a及び第2主部67a内に分散した複数の第2拡散成分(拡散粒子)67bを有している。すなわち、図27〜図29に示された球状粒子60は、第1部分61の内部を進む光および第2部分62の内部を進む光に対して、拡散機能を発現することができる。ここで拡散成分66b,67bとは、粒子60内を進む光に対し、反射や屈折等によって、当該光の進路方向を変化させる作用を及ぼし得る成分のことである。このような拡散成分66b,67bの光拡散機能(光散乱機能)は、例えば、粒子60の主部66a,67aをなす材料とは異なる屈折率を有した材料から拡散成分66b,67bを構成することにより、あるいは、光に対して反射作用を及ぼし得る材料から拡散成分66b,67bを構成することにより、付与され得る。主部66a,67aをなす材料とは異なる屈折率を有する拡散成分66b,67bとして、樹脂ビーズ、ガラスビーズ、金属化合物、気体を含有した多孔質物質、さらには、単なる気泡が例示される。粒子60に入射した光の透過率が、粒子60に入射した光の反射率よりも高くなるよう、粒子60内に添加される拡散成分66b,67bの量が調整されていることが好ましい。
なお、粒子層55、粒子シート50及び透過型スクリーン40は、一例として次のようにして作製することができる。
粒子層55は、JP1−28259Aに開示された製造方法により製造することができる。すなわち、まず、粒子60を重合性シリコーンゴムに分散させたインキを作製する。次に、このインキをコーターなどで延伸し、更に、加熱等で重合させ、シート化する。以上の手順により、粒子60を保持した保持部56が得られる。次に、保持部56を、シリコーンオイルなどの溶媒57に一定期間浸漬する。保持部56が膨潤することで、シリコーンゴムからなる保持部56と粒子60との間に、溶媒57で満たされた隙間が形成される。この結果、溶媒57及び粒子60を収容したキャビティ56aが、画成される。以上のようにして、粒子層55を製造することができる。
次に、JP2011−112792Aに開示された製造方法により、粒子層55を用いて透過型スクリーン40を作製することができる。まず、一対の基材51,52によって粒子層55を覆い、ラミネート又は接着剤等を用いて粒子層55を封止する。これにより、粒子シート50が作製される。次に、粒子シート50上に第1電極41及び第2電極42を設け、更に、第1カバー層46及び第2カバー層47を積層し、フレネルレンズ層70を積層することで、透過型スクリーン40が得られる。
次に、この透過型表示装置10を用いて画像を表示する際の作用について説明する。
まず、制御装置35からの制御によって、プロジェクタ20のコヒーレント光源21がコヒーレント光を発振する。プロジェクタ20からの光は、図示しない走査装置によって光路を調整され、透過型スクリーン40に照射される。図3に示すように、図示しない走査装置は、透過型スクリーン40の照射側面40a上を光が走査するよう、当該光の光路を調整する。ただし、コヒーレント光源21によるコヒーレント光の射出は、制御装置35によって制御される。制御装置35は、透過型スクリーン40上に表示したい画像に対応して、コヒーレント光源21からのコヒーレント光の射出を停止する。プロジェクタ20に含まれる走査装置の動作は、人間の目で分解不可能な程度にまで高速となっている。したがって、観察者は、時間を隔てて照射される透過型スクリーン40上の各位置に照射された光を、同時に観察することになる。
透過型スクリーン40上に投射された光は、フレネルレンズ層70によって略平行光に偏向された後、第1カバー層46及び第1電極41を透過して、粒子シート50に到達する。この光は、粒子シート50の粒子60で拡散されると共に粒子60を透過し、透過型スクリーン40の観察者側となる種々の方向へ向けて射出する。したがって、透過型スクリーン40の観察者側となる各位置において、透過型スクリーン40上の各位置からの透過光を観察することができる。この結果、透過型スクリーン40上のコヒーレント光を照射されている領域に対応した画像を観察することができる。
また、コヒーレント光源21が、互いに異なる波長域のコヒーレント光を射出する複数の光源を含むようにしてもよい。この場合、制御装置35は、各波長域の光に対応した光源を、他の光源から独立して制御する。この結果、透過型スクリーン40上にカラー画像を表示することが可能となる。
ところで、コヒーレント光を用いてスクリーン上に画像を形成する場合、斑点模様のスペックルが観察されるようになる。スペックルの一原因は、レーザー光に代表されるコヒーレント光が、スクリーン上で拡散した後に、光センサ面上(人間の場合は網膜上)に干渉パターンを生じさせるためと考えられる。とりわけ、ラスタースキャンによってスクリーンにコヒーレント光を照射する場合、スクリーン上の各位置には一定の入射方向からコヒーレント光が入射する。したがって、ラスタースキャンを採用した場合、スクリーンの各点に発生するスペックル波面はスクリーンが揺動しない限り不動となり、スペックルパターンが画像とともに観察者に視認されると、表示画像の画質を著しく劣化させることになる。
一方、本実施形態における透過型表示装置10の透過型スクリーン40は、拡散特性を経時的に変化させるようになっている。透過型スクリーン40での拡散特性が変化すれば、透過型スクリーン40上でのスペックルパターンが経時的に変化するようになる。そして、拡散特性の経時的な変化を十分に高速にすると、スペックルパターンが重ねられて平均化され、観察者に観察されるようになる。これにより、スペックルを目立たなくさせることができる。
図示された透過型スクリーン40は、一対の電極41,42を有している。この一対の電極41,42は電力源30に電気的に接続している。電力源30は、一対の電極41,42に電圧を印加することができる。一対の電極41,42間に電圧が印加されると、一対の電極41,42間に位置する粒子シート50に電場が形成される。粒子シート50の粒子層55には、比誘電率の異なる複数の部分61,62を有した粒子60が、動作可能に保持されている。この粒子60は、そもそも帯電していることから、或いは、少なくとも粒子層55に電場が形成されると双極子モーメントが発生することから、形成された電場のベクトルに応じて、動作する。光の進行方向を変化させる機能、例えば拡散機能を有した粒子60が動作すると、図27〜図29に示すように、透過型スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。この結果、スペックルを目立たなくさせることができる。図27〜図29において、符号「La」は、プロジェクタ20から透過型スクリーン40へ照射された画像光であり、符号「Lb」は、透過型スクリーン40で拡散された画像光である。
なお、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるとは、スペックル低減機能を発現し得る程度に比誘電率が異なっていれば十分である。したがって、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるか否かは、動作可能に保持された粒子60が、電場ベクトルの変化にともなって動作し得るか否かにより、判定することができる。
ここで、粒子60が保持部56に対して動作する原理は、粒子60の電荷または双極子モーメントが電場ベクトルに対して安定的な位置関係となるよう、粒子60の向き及び位置を変化させる、というものである。したがって、粒子層55に一定の電場が印加され続けると、粒子60の動作は一定期間後には停止する。その一方で、スペックルを目立たなくするには、粒子60の保持部56に対する動作が継続する必要がある。そこで、電力源30は、粒子層55に形成される電場が経時的に変化するよう、電圧を印加する。図示された例において、電力源30は、粒子シート50内に生成される電場のベクトルを反転させるよう、一対の電極41,42間に電圧を印加する。例えば、図7に示された例では、電力源30から透過型スクリーン40の一対の電極41,42に、X〔V〕の電圧と−Y〔V〕の電圧とが繰り返し印加される。このような反転電場の印加にともない、粒子60は、一例として、図28の状態を中心として、図29の状態と図27の状態との間で繰り返し動作することができる。なお、第1および第2電極41,42に印加される電圧は、図7に示したものに限定されず、例えば交流電圧などでもよい。
なお、粒子60は、保持部56に形成されたキャビティ56a内に収容されている。そして、図27〜図29に示された例において、粒子60は、略球状の外形を有している。また、粒子60を収容するキャビティ56aは、略球状の内形を有している。したがって、粒子60は、図27〜図29の紙面に直交する方向に延びる回転軸線raを中心として、回転振動することができる。ただし、粒子60を収容するキャビティ56aの大きさに依存して、粒子60は、繰り返し回転運動だけでなく、並進運動も行うようになる。さらに、キャビティ56aには、溶媒57が充填されている。溶媒57は、粒子60の保持部56に対する動作を円滑にする。
以上に説明した本実施形態において、透過型スクリーン40は、比誘電率の異なる透明な第1部分61及び透明な第2部分62と、第1部分61及び第2部分62に分散された複数の拡散成分66b,67bと、を含んだ複数の粒子60を有した粒子層55と、電圧を印加されることによって粒子層55の粒子60を駆動するための電場を形成する電極41,42と、を有している。この透過型スクリーン40において、第1電極41及び第2電極42の間に電圧を印加すると、粒子層55に電場が形成される。このとき、粒子60は、形成された電場に応じて動作する。そして、光の進行方向を変化させる機能、例えば拡散機能を有した粒子60が動作すると、透過型スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。したがって、透過型スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55に電場を形成して、粒子60を動作させることにより、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。このような透過型スクリーン40は、例えば上述の製造方法を用いて比較的に容易に製造することができる。加えて、この透過型スクリーン40は、大型スクリーンにも好適であり、且つ、耐久性及び動作の安定性に優れ、さらに、制御も容易である。
また、本実施形態によれば、比誘電率の異なる第1部分61及び第2部分62は、透明に形成されている。したがって、粒子60の向き、姿勢、位置が変化したとしても、透過型スクリーン40の色は変化しない。これにより、画像を表示する際に、透過型スクリーン40の色味が変化したように感知されることはない。この結果、透過型スクリーン40の色変化にともなった画質の劣化を効果的に回避することもできる。なお、電場内で動作可能であり且つ透明な粒子60は、第1部分61及び第2部分62を、同一種の合成樹脂材料から形成し、且つ、第1部分61及び第2部分62の一方に帯電性を付与する添加剤を混入することにより、製造され得る。したがって、この有用な透過型スクリーン40用粒子60は、容易に製造され得る。
さらに、本実施形態によれば、透過型スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55において、粒子60を繰り返し回転させることができる。すなわち、粒子60は、ごくわずかなスペースで、拡散特性を有効に変化させ得るよう、動作することができる。したがって、粒子60を繰り返し回転させることによれば、粒子層55及び透過型スクリーン40の薄型化を実現しながら、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。
上述の実施形態で説明したように、一対の電極41,42への印加電圧を変化させることで、粒子60を動作させることができる。そして、印加電圧の変化範囲、および、印加電圧の中心電圧等を調整することにより、粒子60の動作範囲や、当該動作範囲内の中心位置での粒子60の姿勢を制御することができる。
なお、上述した実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
粒子60の第1部分61及び第2部分62は、体積比率において、異なるようにしてもよい。すなわち、粒子60に占める第1部分61の体積比率が、粒子60に占める第2部分62の体積比率と、異なるようにしてもよい。
(第9の実施形態)
図30〜図33は、本開示の第9の実施形態を説明するための図である。図30は本実施形態による表示装置を示す図であり、図31は、スクリーンへの画像光の照射方法を説明するための図である。
図30〜図31に示すように、表示装置10は、プロジェクタ20と、太陽電池付きスクリーン(光電変換パネル付きスクリーン)70と、を備えている。太陽電池付きスクリーン70は、プロジェクタ20から表示側面40aに画像光を照射されて画像を表示するスクリーン40と、太陽電池パネル(光電変換パネル)80と、を有している。スクリーン40は、後述するように、入射光に対して及ぼす拡散特性を経時的に変化させることができ、これにより、スペックルを目立たなくすることができる。太陽電池パネル80は、スクリーン40の表示側面40aとは反対側に配置され、スクリーン40を透過した光が照射される。このようなスクリーン40及び太陽電池パネル80の機能に関連し、太陽電池付きスクリーン70は、電源装置30及び制御装置35をさらに有している。電源装置30は、太陽電池パネル80で発電された電力に基づいて印加電圧を生成し、当該印加電圧をスクリーン40に対して印加する。電源装置30は、例えば、太陽電池パネル80で発電された電力を交流の印加電圧に変換するDC−AC変換器とすることができる。制御装置35は、印加電圧を制御して、スクリーン40の状態を制御する。
本実施形態によるスクリーン40は、複数の粒子を有した粒子シート50と、電源装置30と接続された電極41,42と、を有している。粒子シート50の一方の主面上に、第1電極41が面状に広がっており、粒子シート50の他方の主面上に、第2電極42が面状に広がっている。また、図示されたスクリーン40は、第1電極41を覆ってスクリーン40の一方の最表面を形成する第1カバー層46と、第2電極42を覆ってスクリーン40の他方の最表面を形成する第2カバー層47と、を有している。
図示された例において、スクリーン40は、反射型のスクリーンを構成している。プロジェクタ20は、第1カバー層46によって形成される表示側面40aに、画像光を照射する。画像光は、スクリーン40の第1カバー層46及び第1電極41を透過し、その後、粒子シート50において拡散反射する。この結果、スクリーン40の表示側面40aに対面して位置する観観察者は、画像を観察することが可能となる。
粒子シート50は、一対の基材51,52と、一対の基材51,52間に設けられた粒子層55と、を有している。粒子層55は、多数の粒子60と、粒子60を保持する保持部56と、を有している。粒子60は、例えば図4〜図6に示すように、比誘電率が異なる第1部分61及び第2部分62を含んでいる。したがって、この粒子60が電場内に置かれると、当該粒子60内に電子双極子モーメントが発生する。このとき、粒子60は、その双極子モーメントのベクトルが電場のベクトルと真逆を向く位置へ向けて動作するようになる。したがって、第1電極41及び第2電極42の間に電圧が印加され、第1電極41及び第2電極42の間に位置する粒子シート50に電場が発生すると、粒子60は、電場に対して安定した姿勢、すなわち電場に対して安定した位置や向きをとるよう、キャビティ56a内で動作する。このスクリーン40は、光拡散機能を有した粒子60の動作にともなって、その拡散特性を変化させる。
次に、太陽電池パネル80について説明する。太陽電池パネル80は、受光面80aで受光した光を電気エネルギーに変換する発電装置である。太陽電池パネル80の受光面80aの面積は、スクリーン40の入射側面40aの面積と略等しくてもよい。また、太陽電池パネル80は、スクリーン40を透過した光の大部分が受光面80aに入射する位置に設けられていることが好ましい。これらにより、発電効率を高めることができる。太陽電池パネル80は、種々の形態のものを使用することができる。例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等からなる平板状のシリコン基板を含むシリコン系太陽電池、色素増感型太陽電池、薄膜太陽電池、カルコパイライト系太陽電池等を、太陽電池パネル80として用いることができる。太陽電池パネル80の変換効率は、プロジェクタ20からの光の波長帯において最大になっていることが好ましい。
次に、この表示装置10を用いて画像を表示する際の作用について説明する。本実施形態における表示装置10のスクリーン40は、拡散特性を経時的に変化させるようになっている。スクリーン40での拡散特性が変化すれば、スクリーン40上でのスペックルパターンが経時的に変化するようになる。そして、拡散特性の経時的な変化を十分に高速にすると、スペックルパターンが重ねられて平均化され、観察者に観察されるようになる。これにより、スペックルを目立たなくさせることができる。
図示されたスクリーン40は、一対の電極41,42を有している。この一対の電極41,42は電源装置30に電気的に接続している。電源装置30は、太陽電池パネル80で発電された電力に基づいて、一対の電極41,42に電圧を印加することができる。一対の電極41,42間に電圧が印加されると、一対の電極41,42間に位置する粒子シート50に電場が形成される。粒子シート50の粒子層55には、比誘電率の異なる複数の部分61,62を有した粒子60が、動作可能に保持されている。この粒子60は、そもそも帯電していることから、或いは、少なくとも粒子層55に電場が形成されると双極子モーメントが発生することから、形成された電場のベクトルに応じて、動作する。光の進行方向を変化させる機能、例えば反射機能や拡散機能を有した粒子60が動作すると、図4〜図6に示すように、スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。この結果、スペックルを目立たなくさせることができる。図4〜図6、並びに、後に言及する図10及び図12において、符号「La」は、プロジェクタ20からスクリーン40へ照射された画像光であり、符号「Lb」は、スクリーン40で拡散された画像光である。
なお、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるとは、スペックル低減機能を発現し得る程度に比誘電率が異なっていれば十分である。したがって、粒子60の第1部分61及び第2部分62の間で比誘電率が異なるか否かは、動作可能に保持された粒子60が、電場ベクトルの変化にともなって動作し得るか否かにより、判定することができる。
ここで、粒子60が保持部56に対して動作する原理は、粒子60の電荷または双極子モーメントが電場ベクトルに対して安定的な位置関係となるよう、粒子60の向き及び位置を変化させる、というものである。したがって、粒子層55に一定の電場が印加され続けると、粒子60の動作は一定期間後には停止する。その一方で、スペックルを目立たなくするには、粒子60の保持部56に対する動作が継続する必要がある。そこで、電源装置30は、粒子層55に形成される電場が経時的に変化するよう、電圧を印加する。即ち、制御装置35は、粒子層55で粒子60を動作させるよう、印加電圧を制御する。図示された例において、電源装置30は、粒子シート50内に生成される電場のベクトルを反転させるよう、一対の電極41,42間に電圧を印加する。例えば、図7に示された例では、電源装置30からスクリーン40の一対の電極41,42に、X〔V〕の電圧と−Y〔V〕の電圧とが繰り返し印加される。このような反転電場の印加にともない、粒子60は、一例として、図5の状態を中心として、図4の状態と図6の状態との間で繰り返し動作することができる。なお、第1および第2電極41,42に印加される電圧は、図7に示したものに限定されず、例えば交流電圧などでもよい。
なお、粒子60は、保持部56に形成されたキャビティ56a内に収容されている。そして、図4〜図6に示された例において、粒子60は、略球状の外形を有している。また、粒子60を収容するキャビティ56aは、略球状の内形を有している。したがって、粒子60は、図4〜図6の紙面に直交する方向に延びる回転軸線raを中心として、回転振動することができる。ただし、粒子60を収容するキャビティ56aの大きさに依存して、粒子60は、繰り返し回転運動だけでなく、並進運動も行うようになる。さらに、キャビティ56aには、溶媒57が充填されている。溶媒57は、粒子60の保持部56に対する動作を円滑にする。
以上に説明した本実施形態において、スクリーン40は、比誘電率の異なる第1部分61及び第2部分62を含む粒子60を有した粒子層55と、太陽電池パネル80で発電された電力が供給されることによって粒子層55の粒子60を駆動するための電場を形成する電極41,42と、を有している。このスクリーン40において、第1電極41及び第2電極42の間に電圧を印加すると、粒子層55に電場が形成される。このとき、粒子60は、形成された電場に応じて動作する。そして、光の進行方向を変化させる機能、例えば反射機能や拡散機能を有した粒子60が動作すると、スクリーン40の拡散特性が経時的に変化することになる。したがって、スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55に電場を形成して、粒子60を動作させることにより、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。このようなスクリーン40は、例えば上述の製造方法を用いて比較的に容易に製造することができる。加えて、このスクリーン40は、大型スクリーンにも好適であり、且つ、耐久性及び動作の安定性に優れ、さらに、制御も容易である。
また、本実施形態によれば、太陽電池付きスクリーン70は太陽電池パネル80を備えているため、粒子層55の粒子60を駆動するための別途の電源(商用電源等)を確保することや、当該別途の電源からスクリーン40へ電力供給するための配線を設置することを省略することができる。また、プロジェクタ20からの光を用いて発電するようにしているため、太陽電池パネル80に対して別途の発電用の照明光などを照射する必要もない。このような太陽電池付きスクリーン70は、設置場所の選択の自由度が極めて高く、様々な用途で利用可能である。即ち、電源を確保することや配線を設置することが困難な場所、及び、発電用の照明光を確保することが困難な場所にも太陽電池付きスクリーン70を設置することができる。
また、本実施形態によれば、比誘電率の異なる第1部分61及び第2部分62を含んだ粒子60は、単一色に形成されている。したがって、粒子60の向き、姿勢、位置が変化したとしても、スクリーン40は一定の色を有する。これにより、画像を表示する際に、スクリーン40の色味が変化したように感知されることはない。この結果、スクリーン40の色変化にともなった画質の劣化を効果的に回避することもできる。なお、電場内で動作可能であり且つ単一色を有する粒子60は、第1部分61及び第2部分62を、同一種の合成樹脂材料から形成し、且つ、第1部分61及び第2部分62の一方に帯電性を付与する添加剤を混入することにより、製造され得る。したがって、この有用なスクリーン40用粒子60は、容易に製造され得る。
さらに、本実施形態によれば、スクリーン40に光が照射されている間、粒子層55において、粒子60を繰り返し回転させることができる。すなわち、粒子60は、ごくわずかなスペースで、拡散特性を有効に変化させ得るよう、動作することができる。したがって、粒子60を繰り返し回転させることによれば、粒子層55及びスクリーン40の薄型化を実現しながら、スペックルを効果的に目立たなくさせることができる。また、粒子60を繰り返し回転させる場合には、その角度範囲を、図4〜図6に示すように、180°未満とすることが好ましい。この場合、第1部分61及び第2部分62のうちの一方が、主として、観察者側に位置するようにすることができる。すなわち、スクリーン40に光が照射されている間、スクリーン40の法線方向ndに沿って観察者側から第1部分61が第2部分62の少なくとも一部分を覆うようにすることが可能となる。したがって、第1部分61及び第2部分62が厳密に同一色でない場合においても、粒子60を動作させながら画像を表示している間、スクリーン40の色味が変化することを効果的に感知されにくくすることができる。
上述の実施形態で説明したように、一対の電極41,42への印加電圧を変化させることで、粒子60を動作させることができる。そして、印加電圧の変化範囲、および、印加電圧の中心電圧等を調整することにより、粒子60の動作範囲や、当該動作範囲内の中心位置での粒子60の姿勢を制御することができる。
なお、上述した実施形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
プロジェクタ20からの光は、可視光及び不可視光を含んでいてもよい。不可視光は、赤外光と紫外光の少なくとも何れかを含んでいてもよい。この場合、太陽電池パネル80の変換効率は、この不可視光の波長帯において最大になっていてもよい。これにより、太陽電池パネル80は、画像表示に用いられる可視光に加え、不可視光によっても発電できるため、発電電力を大きくすることができる。また、太陽電池パネル80の選択の幅を広げることができる。
また、太陽電池パネル80を配置する位置は、上述した例に限られず、プロジェクタ20の位置から見てスクリーン40に重ならない位置であってもよい。即ち、例えば、図32,図33に示すように、太陽電池パネル80は、スクリーン40の面方向にスクリーン40に並んで配置され、プロジェクタ20から直接的に光が照射されてもよい。太陽電池パネル80が配置される具体的な位置や、太陽電池パネル80の形状は、特に限定されず、観察者から見てスクリーン40の上方、下方又は側方等に配置されてもよく、上方及び側方等にL字型に配置されてもよく、スクリーン40の表示側面40aを取り囲むように配置されてもよい。また、太陽電池パネル80の受光面80aの面積は、特に限定されないが、前述のように比較的小さい電力を発電できればよいため、スクリーン40の表示側面40aの面積より小さいことが好ましい。
図32に示すように、プロジェクタ20は、レーザー光によって形成された第1の光をスクリーン40に照射すると同時に、第1の光の波長帯と異なる波長帯の第2の光を太陽電池パネル80に照射してもよい。第1の光は、可視光を含む。第2の光は、可視光と不可視光の少なくとも何れかを含む。つまり、プロジェクタ20は、第1の光を射出する光源と、第2の光を射出する光源と、を含み、第1の光でスクリーン40上の全域を繰り返し走査すると同時に、第2の光で太陽電池パネル80上の全域を繰り返し走査してもよい。ラスタースキャン方式のプロジェクタ20は、第2の光で太陽電池パネル80上の全域を正確に走査することができると共に、第2の光のロスも少ない。このような構成により、第1の光がスクリーン40の表示側面40a上を走査している間、太陽電池パネル80はスクリーン40に電力を供給し続けることができる。太陽電池パネル80の変換効率は、照射される第2の光の波長帯において最大になっていることが好ましい。これにより、効率的に発電することができる。
なお、プロジェクタ20は、第2の光を走査させず、太陽電池パネル80上の所定の領域を第2の光で照射し続けてもよい。これにより、プロジェクタ20の構成を簡略化できる。また、第2の光は、レーザー光によって形成されていてもよく、レーザー光によって形成されていなくてもよい。
また、図33に示すように、プロジェクタ20は、レーザー光によって形成された光を、スクリーン40及び太陽電池パネル80に交互に照射してもよい。具体的には、プロジェクタ20は、スクリーン40上の全域を走査した後、太陽電池パネル80上の全域を走査する動作を繰り返すよう、コヒーレント光を投射する。この場合、電源装置30は、太陽電池パネル80により発電された電力を蓄電する蓄電機能を備えている。これにより、スクリーン40上が走査されている間は、太陽電池パネル80が発電していなくても、電源装置30は、以前の発電時に蓄電された電力を電極41,42に供給できる。なお、コヒーレント光は、可視光のみを含んでいてもよく、可視光及び不可視光を含んでいてもよい。また、走査方向は、図示した例に限らず、例えば、図33の走査方向に交差する方向であってもよい。
これらの図32,図33の例の場合、第2電極42は、透明でなくてもよい。したがって、第2電極42は、例えば、アルミニウムや銅等の金属薄膜によって形成され得る。金属膜からなる第2電極42は、反射型のスクリーン40において、画像光を反射する反射層としても機能することができる。
また、上述した実施形態において、スクリーン40が反射型スクリーンとして構成される例を示したが、この例に限られず、図32,図33に示した太陽電池パネル80がスクリーン40に並んで配置されている場合には、スクリーン40が透過型スクリーンとして構成されるようにしてもよい。透過型のスクリーン40では、第2電極42、第2カバー層47及び第2基材52は、第1電極41、第1カバー層46及び第1基材51と同様に透明に構成され、上述した第1電極41、第1カバー層46及び第1基材51と同様の可視光透過率を有することが好ましい。また、粒子60に入射した光の透過率が、粒子60に入射した光の反射率よりも高くなるよう、粒子60内に添加される拡散成分66b,67bの量が調整されていることが好ましい。
上述したマイクロチャンネル製造方法にて粒子60を形成すると、各粒子60ごとに第1部分61と第2部分62との体積比が必ずしも一様にならず、体積比の異なる粒子60が混在することもあり得るが、そのような場合でも、第1電極および第2電極に印加する交流電圧により、粒子60は同様に回転するため、実用上は特に問題はない。
さらに、上述した実施形態において、正の帯電性を有するモノマーや負の帯電性を有するモノマーを合成樹脂の重合に用いて単一色の粒子60を作製し、この粒子60が帯電している例を示したが、この例に限られない。溶媒57中での帯電特性が異なる複数部分を有する粒子60は、公知の材料を用いて、様々な方法で合成される。例えば性能の異なる材料からなる板状体を二層積層し、この積層体を所望のサイズに粉砕することによって、粒子60を作製するようにしてもよい。帯電特性を有する材料は、例えば合成樹脂に、帯電制御剤を添加すればよい。帯電付与添加剤の例としては、静電気防止剤に用いられる、ポリアルキレングリコールを主成分とするポリマーに過塩素酸リチウムなどを複合化させたイオン導電性付与剤を採用することができる。
さらに、上述した実施形態において、粒子60が球体である例を示したが、この例に限られない。粒子60は、回転楕円体、立方体、直方体、錐体、円筒体等の外形を有するようにしてもよい。球体以外の外形を有する粒子60によれば、当該粒子60を動作させることにより、当該粒子60の内部拡散能によらず当該粒子60の表面反射によって、スクリーン40の拡散特性の経時変化を引き起こすことができる。
さらに、粒子シート50、粒子層55及び粒子60を、上述の実施形態で説明した製造方法とは異なる方法にて、製造してもよい。また、粒子60が、保持部56に対して動作可能に保持されれば、溶媒57が設けられていなくても良い。
さらに、上述した実施形態において、スクリーン40の積層構造の一例を示したが、これに限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層をスクリーン40に設けても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、第1カバー層46、第2カバー層47、第1基材51、第2基材52等が、この機能層として働くようにしてもよい。機能層に付与される機能として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有するハードコート(HC)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
さらに、上述した実施形態では、プロジェクタ20が、ラスタースキャン方式で、光をスクリーン40に投射する例について説明したが、この例に限られない。プロジェクタ20が、ラスタースキャン方式以外の方式、例えば、各瞬間に、スクリーン40の全領域に画像光を投射してもよい。このようなプロジェクタ20を用いた場合においてもスペックルが生じることになるが、上述のスクリーン20を用いることによって、スクリーン40での拡散波面が経時的に変化することになり、スペックルを効果的に目立たなくすることができる。さらに、背景技術の欄で説明した国際公開2012/033174に開示されたプロジェクタ、すなわち、スクリーンの各位置への画像光の入射角を経時的に変化させることができるプロジェクタと組み合わせて、上述したスクリーン20を用いることも可能である。このプロジェクタによればスペックルを有効に低減することができるが、このプロジェクタと上述のスクリーンとの組み合わせによれば、さらに効果的に、スペックルを目立たなくすることができる。
さらに、上述した各実施形態では、第1電極41及び第2電極42が面状に形成され、粒子層55を挟むように配置される例を示したが、この例に限られない。第1電極41及び第2電極42の一以上がストライプ状に形成されるようにしてもよい。例えば、図34の例では、第1電極41及び第2電極42の両方がストライプ状に形成されている。すなわち、第1電極41は、線状に延びる複数の線状電極部41aを有し、複数の線状電極部41aは、その長手方向に直交する方向に配列されている。第2電極42も、第1電極41と同様に、線状に延びる複数の線状電極部42aを有し、複数の線状電極部42aは、その長手方向に直交する方向に配列されている。図34に示された例において、第1電極41をなす複数の線状電極部41aおよび第2電極42をなす複数の線状電極部42aは、ともに、粒子シート50の観察者とは反対側の面上に配置されている。そして、第1電極41をなす複数の線状電極部41aおよび第2電極42をなす複数の線状電極部42aは、同一の配列方向に沿って交互に配列されている。図34に示された第1電極41及び第2電極42によっても、電力源30から電圧を印加されることにより、粒子シート50の粒子層55に電場を形成することができる。
なお、以上において上述した各実施形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。