<実施の形態1>
本発明では、自車を他車に合流させるときの自車の運転者負担の大きさを表す指標として「合流コスト」という概念を導入する。運転者負担の大きさは、運転時間、運転距離、運転中の操作回数などに依存するため、合流コストは、自車を他車に合流させるまでの自車の走行時間、走行距離、加速量、減速量、加減速量(加速量と減速量の両方)などを基準にして表すことができる。
以下、合流コストの算出方法の具体例を説明する。例えば、図1のように自車Sの前方を他車Xが走行している状態から、他車Xを先導車(合流目標)として定め、自車Sを他車Xに追従させるために、図2のように自車Sを他車Xに合流させる(自車Sを他車Xに追いつかせる)場合を考える。ここで、図1の状態の時刻(他車Xを先導車として定めた時刻)をt0、自車Sが他車Xに合流した時刻をt1とする。また、時刻tにおける自車Sおよび他車Xの位置をそれぞれPs(t)、Px(t)と表す。
自車Sが他車Xを先導車として定めてから他車Xに合流するまでの合流コストを、走行時間を基準にして表す場合、合流コストCTは、他車Xを先導車として定めた時刻t0と、自車Sが他車Xに合流した時刻t1との差として表される。すなわち、
CT=t1−t0 …式(1)
となる。
一方、上記の合流コストを走行距離を基準にして表す場合、合流コストCDは、時刻t0における自車Sの位置Ps(t0)と時刻t1における自車Sの位置Ps(t1)との差として表される。すなわち、
CD=Ps(t1)−Ps(t0) …式(2)
となる。
簡単のため、自車Sおよび他車Xの速度が一定であると仮定し、自車Sの速度をVFs、他車Xの速度をVFxとすると(VFs>VFx)、時刻tにおける自車の位置Ps(t)および他車の位置Px(t)は、
Ps(t)=Ps(t0)+VFs・(t−t0) …式(3)
Px(t)=Px(t0)+VFx・(t−t0) …式(4)
と表される。また、時刻tにおける自車Sと他車Xとの距離D(t)は、
D(t)=Px(t)−Ps(t) …式(5)
と表される。
追従走行が実施されるときに確保される自車Sと他車Xとの車間距離を無視し、合流時には自車Sと他車Xとの距離が0となるとみなすと(すなわち、D(t1)=0)、以上の式から、走行時間を基準にした合流コストCTは、
CT=t1−t0=D(t0)/(VFs−VFx) …式(6)
と表される。D(t0)は、時刻t0における自車Sと他車Xとの距離(Px(t0)−Ps(t0))である。式(6)から分かるように、走行時間を基準にした合流コストは、合流するまでの自車Sおよび他車Xの速度と、合流前の自車Sと他車Xとの距離(位置の差)とから算出できる。
また、ここでは自車Sの速度VFsが一定であるので、式(2)は、
CD=Ps(t1)−Ps(t0)=VFs・(t1−t0) …式(7)
と変形できる。よって、走行距離を基準にした合流コストCDは、
CD=VFs・D(t0)/(VFs−VFx) …式(8)
と表される。式(8)から分かるように、走行距離を基準にした合流コストも、合流するまでの自車Sおよび他車Xの速度と、合流前の自車Sと他車Xとの距離とから算出できる。
ここで、自車Sが時刻t0から時間T経過するまでに他車Xと合流できる条件は、
T>t1−t0=D(t0)/(VFs−VFx) …式(9)
である。すなわち、自車Sの速度VFsが、
VFs>VFx+D(t0)/T …式(10)
を満たすことが必要である。よって、仮に、時刻t0での自車Sの速度が、VFx+D(t0)/Tよりも小さいVs0であった場合、自車Sが時刻t0から時間T経過するまでに他車Xと合流するために最低限必要な加速量Asは、加速に要する時間を無視すると、
As=VFx+D(t0)/T−Vs0 …式(11)
となる。加速量を基準にした合流コストCAは、この必要な加速量Asとして定義できる。すなわち、加速量を基準にした合流コストCAは、Tを定数として、
CA=As=VFx+D(t0)/T−Vs0 …式(12)
と表される。
また、図3のように自車Sの後方を他車Xが走行している状態から、他車Xを先導車として定め、自車Sを他車Xに追従させるために、図4のように自車Sを他車Xに合流させる(他車Xを自車Sを追いつかせる)場合を考える。ここで、図3の状態の時刻(他車Xを先導車として定めた時刻)をt0、自車Sが他車Xに合流した時刻をt1とする。
この場合も、図1および図2の場合と同様に、走行時間を基準にした合流コストCTは式(1)で表され、走行距離を基準にした合流コストCDは、式(2)で表される。また、自車Sおよび他車Xの速度がそれぞれ一定値VFs、VFx(VFs<VFx)であると仮定すると、走行時間を基準にした合流コストCTは式(6)で表され、走行距離を基準にした合流コストCDは式(8)で表される。ただし、他車Xは自車Sの後方に位置しているため、時刻t0〜t1におけるD(t)は負の値になる。
またこの場合、自車Sが時刻t0から時間T経過するまでに他車Xと合流するための条件は、
T>t1−t0=|D(t0)|/(VFx−VFs) …式(13)
である。すなわち、自車Sの速度VFsが、
VFs<VFx−|D(t0)|/T …式(14)
を満たすことが必要である。よって、仮に、時刻t0での自車Sの速度が、VFx−|D(t0)|/Tよりも大きいVs0であった場合、自車Sが時刻t0から時間T経過するまでに他車Xと合流するために最低限必要な減速量Bsは、減速に要する時間を無視すると、
Bs=Vs0−(VFx−|D(t0)|/T) …式(15)
となる。減速量を基準にした合流コストCBは、この必要な減速量Bsとして定義できる。すなわち、減速量を基準にした合流コストCDは、Tを定数として、
CB=Bs=VFx+D(t0)/T−Vs0 …式(16)
と表される。
このように、合流コストは、自車および他車の速度と、合流前の自車と他車との距離(位置の差)とから算出可能である。従って、自車および他車の速度と、合流前の自車と他車との位置関係とを事前に得ることができれば、その他車に自車を合流させるまでの合流コストを予測することが可能である。
さらに、自車Sの燃費データを用いれば、自車Sが他車Xに合流するまでの時間または自車Sの走行距離と、その期間の自車Sの速度とから、当該期間における自車Sの燃料消費量を算出できる。合流コストは、自車Sが他車Xに合流するまでの間の燃料消費量を基準として表してもよい。
以上では、自車Sと他車Xとが同じ道路を走行している場合の合流コストの算出方法を示したが、自車Sと他車Xとが異なる道路を走行している場合にも、合流コストは算出可能である。
例えば、図5のように、交差点C1で道路R1,R2,R3が接続しており、自車Sが道路R1,R2を走行予定であり、他車Xが道路R3,R2を走行予定である場合を考える。自車Sは交差点C1を通過した後、図6のように、道路R2上で他車Xと合流することができる。この場合、他車Xが道路R3上における交差点C1までの距離がd1の位置を走行している状態(図5)を、図7のように、他車Xが道路R1上における交差点C1までの距離がd1の位置を走行している状態に置き換えて考えることによって、自車Sと他車Xとが同じ道路を走行している場合と同様の方法で合流コストを算出できる。ただし、自車Sが他車Xに合流する地点は、必ず交差点C1よりも先の道路R2上であると規定する必要がある。
また、上の説明では、自車Sの速度が一定であると仮定したが、例えば図8および図9のように、自車Sが他車Xを先導車として定めた時刻t0の直後と、自車Sが他車Xに合流する時刻t1の直前とに、自車Sが加速または減速するものと仮定して、自車Sの速度を時間または距離の関数として表してもよい。そうすることで、より実際の走行に則した合流コストを算出することができる。なお、図8は、自車Sがその前方を走行する他車Xに合流する場合の自車Sの速度変化の例を示しており、図9は、自車Sがその後方を走行する他車Xに合流する場合の自車Sの速度変化の例を示している。また、図8および図9では自車Sの速度が直線的に変化する例を示したが、図10および図11のように、自車Sの速度が曲線的に変化すると仮定してもよい。
同様に、上の説明では、他車Xの速度が一定であると仮定したが、他車Xの走行計画が既知、例えば速度変化が既知または想定可能ならば、他車Xの速度が変化するものとして合流コストを計算可能である。そうすることで、合流コストの算出の精度を上げることができる。
また、自車Sが他車Xとの通信(車車間通信またはサーバーを通した通信)で得た、他車Xの先導車としての質の高さの評価値(運転評価値)、他車Xの走行予定経路および通過予定時刻の確実性(経路確実性)などの情報を、合流コストの値の算出に加味してもよい。運転評価値は、例えば先導車としての実績(例えば、先導車としての走行時間の長さ)や、過去に先導した追従者からの評価などに基づいて決められる。経路確実性は、走行予定経路や経由地に高い計画性が求められない車両(主に自家用車)では低い値となり、走行予定経路や経由地に高い計画性が求められる車両(主に商用車)では高い値となる。
例えば、上記の方法で算出した合流コストの値に、他車Xの運転評価値および経路確実性に応じた係数を乗じることが考えられる。他車Xの運転評価値が高い場合や、経路確実性が高い場合には、合流コストが小さく見積もられるように、1よりも小さい係数を乗じるとよい。
また、自車Sが追従走行の途中で先導車を変更することも想定される。例えば、図12のように、道路R1において、道路R1,R4を走行予定の自車Sが、道路R1,R2を走行予定の他車X1を先導車として追従走行している場合を考える。この例において、道路R3,R4を走行予定の他車X2が存在する場合、交差点C1(道路R1〜R4の接続地点)で自車Sの他車X1への追従を終了させ、その後、図13のように自車Sを他車X2に追従させることができる。このように先導車を乗り継ぐことで、追従走行距離を長くすることができる。その場合、自車Sが他車X1への追従を終了したとき(自車Sが交差点C1に到着したとき)から、他車X2に合流するまでの合流コストは、自車Sの先導車変更のための合流コストとして定義される。
本発明に係る先導車選択支援装置は、当該装置を搭載する車両(自車)が追従可能な他車(先導車の候補)を見つけると共に、それぞれの先導車候補に自車を合流させる場合の合流コストを算出することで、先導車の選択を支援するものである。実施の形態1では、本発明に係る先導車選択支援装置を、車両情報表示装置に適用した例を示す。
図14は、実施の形態1に係る車両情報表示装置20の構成を示す図である。車両情報表示装置20は、自車の先導車を自動的に決定して、ユーザに提示する機能を有している。なお、車両情報表示装置20は、例えばスマートフォンや携帯電話など、自車とは独立した機器でもよい。その場合、自車の情報(自車情報)を先導車選択支援装置10に登録することによって、車両情報表示装置20としてのスマートフォン等を自車に対応付けさせる必要がある。
図14に示すように、車両情報表示装置20は、先導車選択支援装置10と、先導車選択支援装置10と連携して動作する入力装置21、通信装置22、地図情報記憶装置23および表示装置24とから成るシステムとして構成されている。
入力装置21は、ユーザが先導車選択支援装置10に対して入力する操作や情報を受け付けるユーザインターフェイスである。入力装置21は、操作ボタンやマウス等のハードウェアでもよいし、画面に表示されるアイコンを用いたソフトウェアキーでもよい。さらに、ユーザが音声で操作内容を入力する音声認識装置であってもよい。
入力装置21から入力される情報には、他車との合流コストを算出するために必要な自車の情報(自車情報)と、算出された合流コストの大きさを評価する際に優先させる項目(優先項目)とが含まれる。なお、優先項目は、ユーザが入力したものに限られず、例えば、予め定められたものでもよい。
先導車選択支援装置10が取得する自車情報には、少なくとも、自車の現在位置および走行予定経路の情報が含まれている。本実施の形態では、先導車選択支援装置10に経路探索機能を持たせており、ユーザが入力装置21を用いて目的地(さらには経由地)を入力すると、先導車選択支援装置10が現在位置から目的地までの適切な経路を探索して、走行予定経路を決定する構成となっている。目的地および経由地の表現形式は、住所でもよいし、緯度・経度でもよい。
上記の優先項目は、合流コストの大きさを評価するための評価基準となるものである。本実施の形態では、優先項目の候補として、予め複数の項目が用意されており、ユーザがそれらのうちの1以上を優先項目として選択するものとする。優先項目としては、自車が他車に合流するまでの走行距離、走行時間、燃料消費量、加速量、減速量および加減速量などが考えられる。
通信装置22は、先導車選択支援装置10が他車との通信を行うためのものである。先導車選択支援装置10は他車との通信によって、他車との合流コストを算出するために必要な他車の情報(他車情報)を取得する。他車情報には、少なくとも、他車の現在位置、速度および走行予定経路を特定できる情報が含まれている。他車がバスや配送車両のような商用車の場合、他車の走行予定経路の情報は、バスの運行情報や配送車両の配送情報から求めたものでもよい。通信装置22と他車との通信は、通信装置22と他車とが直接通信を行う車車間通信でもよいし、他車がサーバーに送信した情報を通信装置22がサーバーから取得する間接的な通信であってもよい。
先導車選択支援装置10は、自車情報および他車情報に基づいて、先導車候補を選出し、先導車候補のそれぞれについて自車が合流するための合流コストを算出する。そして、ユーザが設定(選択)した優先項目に基づいて合流コストの大きさを評価し、先導車候補のうち合流コストが最小のものを先導車として決定する。また、優先項目が複数設定されている場合には、先導車選択支援装置10が、それぞれの優先項目ごとに、合流コストが最小となる先導車候補を抽出して、ユーザがそのうちの一つを選択するようにしてもよい。
また、先導車選択支援装置10は、自車の追従走行制御装置40へ、決定した先導車を通知する。追従走行制御装置40は、自車の走行制御系(不図示)を制御して、自車を先導車に追従走行させるものである。追従走行制御装置40に先導車を通知することで、自車が先導車以外の他車に誤って追従することを防止できる。
地図情報記憶装置23は、道路網のデータを含む地図情報を記憶する記憶媒体であり、例えばハードディスク、リムーバブルディスク、メモリなどで構成される。この地図情報は、先導車選択支援装置10が自車の走行予定経路を決定するための経路探索を行うときや、算出した合流コストの情報を地図に重畳して表示させるときに用いられる。
表示装置24は、先導車選択支援装置10が算出した合流コストを表示してユーザに提示するためのものである。なお、入力装置21としてのソフトウェアキーを、表示装置24の画面に表示させる場合、表示装置24と入力装置21は、両者の機能を兼ね備えた1つのタッチパネルとして構成されてもよい。
次に、先導車選択支援装置10の構成を説明する。先導車選択支援装置10は、自車情報取得部11、他車情報取得部12、合流コスト計算部13、優先項目設定部14、先導車決定部15および表示処理部16から構成されている。
自車情報取得部11は、ユーザが入力装置21から入力した自車の情報(自車情報)を取得する。本実施の形態では、自車情報取得部11は、地図情報記憶装置23に記憶されている地図情報を用いた経路探索を行う走行予定経路取得部11aを備えた構成となっている。走行予定経路取得部11aは、自車の現在位置と目的地との間の最適な経路を探索することによって、自車の走行予定経路を決定する。この構成によれば、ユーザは目的地の情報を入力装置21に入力するだけで、自車情報取得部11に自車の走行予定経路を取得させることができる。
なお、走行予定経路取得部11aは、自車の走行予定経路を自ら算出せずに、外部のナビゲーション装置が算出した走行予定経路を取得するものであってもよい。また、ユーザが入力装置21から走行予定経路の情報を入力可能な場合には、走行予定経路取得部11aは省略してもよい。
他車情報取得部12は、通信装置22を用いて、他車との通信を行い、車両情報(他車情報)を取得する。合流コスト計算部13は、自車情報取得部11が取得した自車情報および他車情報取得部12が取得した他車情報に基づいて、自車の合流コストを先導車候補のそれぞれについて算出する。
優先項目設定部14は、ユーザが入力装置21を用いて選択した優先項目の情報を取得する。先導車決定部15は、ユーザにより選択された優先項目に基づいて合流コストの大きさを評価し、先導車候補のうち合流コストが最も小さいものを先導車として決定する。表示処理部16は、先導車決定部15が決定した先導車の情報を、表示装置24に表示させるための処理を行う。
図15は、実施の形態1に係る先導車選択支援装置10のハードウェア構成を示す図である。図15のように、先導車選択支援装置10は、少なくともプロセッサ51、メモリ52(記憶装置)および入出力インターフェイス53を含む構成となっている。上記の自車情報取得部11、他車情報取得部12、合流コスト計算部13、優先項目設定部14、先導車決定部15および表示処理部16は、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
また、車両情報表示装置20を構成する入力装置21、通信装置22、地図情報記憶装置23および表示装置24は、入出力インターフェイス53に接続され、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することによって制御される。図14では、入力装置21、通信装置22、地図情報記憶装置23および表示装置24が、先導車選択支援装置10に外付けされた構成としたが、それらのハードウェアが先導車選択支援装置10の内部に配設されるようにしてもよい。
なお、図15には、プロセッサ51およびメモリ52を1つずつ示したが、複数のプロセッサ51および複数のメモリ52が連携して、先導車選択支援装置10の各要素の機能を実現してもよい。
次に、実施の形態1に係る先導車選択支援装置10の動作を説明する。図16は、その動作を示すフローチャートである。
先導車選択支援装置10が起動すると、まず、自車情報取得部11および優先項目設定部14が、ユーザが入力装置21から入力した情報を取得する(ステップS1)。具体的には、自車情報取得部11はユーザが入力した自車情報を取得し、優先項目設定部14はユーザが選択した優先項目を取得する。自車情報は、少なくとも、自車の現在位置および走行予定経路を特定できる情報を含む。本実施の形態の自車情報取得部11は、走行予定経路取得部11aを有しているため、ユーザが自車の目的地を入力すれば、自車情報取得部11は自車の走行予定経路を取得できる。
次に、他車情報取得部12が、通信装置22を介して他車情報を取得する(ステップS2)。他車情報には、少なくとも、複数の他車の現在位置、速度および走行予定経路を特定できる情報が含まれる。
その後、合流コスト計算部13は、複数の他車うちから先導車候補を選出する(ステップS3)。この処理では、例えば、自車から一定範囲内に位置し、且つ、走行予定経路の少なくとも一部が自車の走行予定経路と同じものが選出される。
ここで、合流コスト計算部13は、先導車候補が複数選出されたかどうかを確認する(ステップS4)。先導車候補が複数選出されている場合(ステップS4でYES)、それぞれの先導車候補の合流コストを算出する(ステップS5)。そして、先導車決定部15が、優先項目に基づいて合流コストの大きさを評価して、最も合流コストの小さいものを先導車として決定する(ステップS6)。
表示処理部16は、先導車決定部15が決定した先導車を特定する情報(先導車特定情報)を、表示装置24に表示するための画像データを生成する(ステップS7)。表示処理部16が生成した画像データは表示装置24に入力され、その結果、表示装置24に先導車特定情報が表示される(ステップS8)。それによって、先導車決定部15が決定した先導車がユーザに通知される。
なお、先導車候補が1台しか選出されなかった場合(ステップS4でNO)は、ステップS5,S6は行われず、その先導車候補が先導車として決定されて、その先導車を示す先導車特定情報が表示装置24に表示される(ステップS7,S8)。また、先導車候補が0台の場合は、ステップS7,S8において先導車特定情報の表示は行われない。
先導車選択支援装置10は、自車が目的地に到着するまで、図16の動作を繰り返し実行してもよい。例えば、一定周期で実行したり、自車の走行予定経路が変更されるごとに実行したり、先導車の走行予定経路が変更されるごとに実行したり、自車の追従走行が終了するごとに実行したりすることが考えられる。また、高速道路や二車線以上の道路など、一定範囲の区間を走行中のみ実行してもよい。
先導車特定情報の表示態様としては、図17のようにテキスト表示とすることが考えられる。図17の例では、先導車として決定された他車X1を示す情報と共に、走行時間を基準にした合流コスト(合流するまでの時間)が表示されている。合流コストの表示は、合流するまでの時間で表わした合流コストのほか、合流するまでの距離や燃費で表した合流コストを表示してもよい。
なお、本明細書における先導車特定情報の表示例では、図示の便宜上、先導車を示す情報を「車両X1」などと簡易な表示とするが、実際にはより具体的に先導車を特定できる情報が表示される。運転者は追従走行を開始する前に目視で先導車を見つける必要があるため、外見から先導車を特定できる情報、例えば、車種、車名、車体の色、ナンバープレートの番号などを、先導車を示す情報として表示することが望ましい。また、車種、車名および車体の色については、車両の写真や画像を用いて表現してもよい。
また、図18のように、先導車特定情報を表す文字や図形を地図に重畳表示させてもよい。図18の例では、地図上に、自車Sの位置(円で囲まれた三角形のアイコン)と、先導車として決定された他車X1の位置(三角形のアイコン)と、他車X1の合流コストとを表示させている。合流コスト(合流するまでの時間)は、文字だけでなく、グラフでも表している。なお、図18において、小さな白い三角形のアイコンは、先導車以外の他車の位置を表している。合流コストの表示は、合流するまでの時間、距離、燃費のいずれかを、優先項目の設定に応じて表示するものであってもよい。
また、図16のフローでは、先導車候補が1台しか選出されなかった場合(ステップS4でNO)は、先導車がすぐに決まるため、ステップS5,S6の処理が行われないものとした。しかし、その場合も、ステップS5,S6の処理を行ってその先導車に合流するための合流コストを算出し、ステップS7,S8で、表示装置24に先導車特定情報と共に合流コストを表示させてもよい。
本発明に係る車両情報表示装置20は、自車が他車に合流するまでの運転者負担を定量的に示す合流コストを算出し、合流コストの小さい他車を先導車として決定する。よって、容易に合流可能な先導車をユーザに提示することができる。
図16のフローチャートでは、1つの優先項目(走行時間)を基準にして合流コストを評価し、それが最小となる1台の他車を先導車として選択したが、例えば、複数の優先項目を基準にして合流コストを評価し、優先項目ごとに、合流コストが最小となる先導車候補を抽出して、ユーザがそのうちの一つを選択するようにしてもよい。その場合、複数の先導車特定情報を同時に表示装置24に表示させるとよい。図19は、複数の先導車特定情報をテキスト表示とした例である。それぞれの優先項目での合流コストの最小値が太い枠で示されている。図19の画面に対しユーザがいずれかの先導車候補を選択すると、選択された先導車を示す図18のような画面に切り替わるようにしてもよい。
また、実施の形態1では、先導車決定部15が、先導車候補のうちから合流コストが最小の1台を先導車として決定する(すなわち、先導車候補を1台に絞り込む)例を示したが、先導車決定部15の動作はこれに限られない。例えば、先導車決定部15が、合流コストの小さい方から数台を抽出してその結果をユーザに提示し、ユーザがそれら数台のうちから1台を好みに応じて選択するようにしてもよい。その場合、先導車決定部15が先導車候補を絞り込んだ後の数台の先導車候補を示す複数の先導車特定情報を同時に表示装置24に表示させるとよい。図20は、複数の先導車特定情報を表す文字や図形を地図に重畳表示させた表示例である。
<実施の形態2>
実施の形態1では、自車および他車が交差点を通過するための運転者負担を無視して説明したが、実施の形態2では、合流コストを算出する際、合流までに自車および他車が通過する各交差点の影響を加味する。本発明では、車両が交差点を通過するための運転者負担の大きさを表す指標として「通過コスト」という概念を導入する。
通常、車両が交差点を通過するとき、直進する場合と、右折する場合と、左折する場合とで、通過に要する時間は異なる。一般的な交差点では、右左折する場合は減速するため、直進する場合よりも長い時間を要する。そのため、例えば図21のように自車Sが交差点C1を右折して他車Xに合流するときの合流コストは、図22のように自車Sが交差点C1を直進して他車Xに合流するときの合流コストよりも大きいと考えることができる。
例えば、交差点C1における通過方向(進入方向と退出方向の組み合わせ)ごとの通過コストが図23のように表されるとする。図23において、進入方向および退出方向は、北(N)、南(S)、東(E)、西(W)の方角を用いて表されている。また、通過コストは走行距離を基準にして表されている。図23のテーブルから、例えば、図21のように自車Sが交差点C1を右折(進入方向は北、退出方向は東)するときは自車Sを40m走行させるのに相当する運転者負担を要し、図22のように自車Sが交差点C1を直進(進入方向および退出方向は共に東)するときは自車Sを10m走行させるのに相当する運転者負担を要することが分かる。
実施の形態2では、各交差点の通過コストを示す図23のようなテーブル(通過コストテーブル)を、先導車選択支援装置10に保持させる。そして、合流コスト計算部13が合流コストを計算する際、自車および他車が合流するまでの走行距離に、その間に自車および他車が通過した各交差点の通過コストを加算した上で、合流コストを算出する。それによって、より実際の走行に則した合流コストを算出することができる。具体的には、通過コストを考慮すると、自車と先導車である他車との距離は、式(5)を変形して、
D(t)=(Px(t)−他車Xの時刻t0から時刻tまでの間の通過コスト)−(Ps(t)−自車Sの時刻t0から時刻tまでの間の通過コスト) …式(17)
として表すことができる。
この式は、時刻t0から時刻tまでの間に他車Xは本来はPx(t)だけ進むはずだが、交差点で減速するペナルティがあるので、実際には、「Px(t)−通過コスト」しか進めないことを表している。自車Sについても同様である。
また、詳細な説明は省くが、通過する交差点の数を加味して、上の式をさらに変形してもよい。例えば、自車の前方を先導車である他車が走行しており、自車が他車よりも多くの交差点を通過する場合、自車の方が多く交差点で減速することで、自車が他車に追いつくまでに要する走行距離が長くなるので、合流コストは大きくなる。逆に、他車が自車よりも多くの交差点を通過する場合、他車の方が多く交差点で減速することで、自車が他車に追いつくまでに要する走行距離が短くなるので、合流コストは小さくなる。また、自車と他車が同じ経路を走行する場合は、自車と他車は同じように交差点で減速するので、自車が他車に追いつくまでに要する走行距離は交差点の通過に影響されず、合流コストは変わらない。
図23の通過コストテーブルでは、進入方向を問わず、左折時の通過コストを60m、直進時の通過コストを10m、右折時の通過コストを40mとしたが、例えば制限速度の異なる道路が交わる交差点などでは、それらの値は進入方向によって異なるものとなる。また、高速道路が立体交差するジャンクションでは、右折又は左折するための連絡路(ランプ)合流道路が設けられているため、連絡路の長さと連絡路での制限速度の低下が、通過コストに反映される。図23には静的な通過コストテーブルを示したが、例えば、各交差点での信号機の状態や渋滞状況によって通過コストが動的に変化するものであってもよい。
なお、通過コストテーブルは、合流コスト計算部13に保持させてもよいし、地図情報記憶装置23に記憶されている地図情報に含ませてもよい。あるいは、通過コストテーブル自体を先導車選択支援装置10に保持させるのではなく、合流コスト計算部13が、各交差点の属性(T字路、十字路、車線数、ジャンクション、サービスエリア/パーキングエリアの出入口など)から、その都度、各交差点の通過コストを計算してもよい。
<実施の形態3>
実施の形態3では、本発明に係る先導車選択支援装置10をナビゲーション装置に適用する。図24は、実施の形態3に係るナビゲーション装置30の構成を示す図である。ナビゲーション装置30は、図14の車両情報表示装置20に、現在位置取得装置31、経路探索装置32および案内装置33を追加した構成となっている。
ナビゲーション装置30のハードウェア構成は、基本的には図15と同様であり、現在位置取得装置31、経路探索装置32および案内装置33も、先導車選択支援装置10の各要素と同様に、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、ナビゲーション装置30は、自車に常設されたものでなくてもよく、例えば、自車に持ち込み可能なポータブル型のナビゲーション装置でもよい。
ナビゲーション装置30の現在位置取得装置31は、GPS(Global Positioning System)等から取得した位置情報などから、当該ナビゲーション装置30の現在地を算出するものである。
経路探索装置32は、ユーザが設定した出発地から目的地までの最適な経路を検索するものである。通常は、現在位置取得装置31が取得した現在地が自動的に出発地として設定されるため、ユーザは目的地を入力するだけで、現在地から目的地までの経路(自車の走行予定経路)を得ることができる。本実施の形態において、自車情報取得部11が有する走行予定経路取得部11aは、経路探索装置32が算出した自車の走行予定経路を取得するものとする。
案内装置33は、経路探索装置32が算出した走行予定経路に沿って自車を走行させるように運転者に案内情報を提供するものである。さらに、本実施の形態では、案内装置33は、先導車選択支援装置10が決定した先導車に自車が追従して走行できるように、自車を先導車の位置へ案内する。なお、先導車選択支援装置10が先導車を決定するための動作は、実施の形態1と同様でよい。
例えば、案内装置33は、通信装置22を用いた車車間通信により、先導車選択支援装置10が決定した先導車である他車の位置を取得する。そして、自車と先導車との位置関係から、自車を先導車に追従可能な位置へと案内する。例えば、表示装置24に表示した地図上に自車と先導車の位置を表示し、自車が先導車にある程度接近すると、図25のように、自車と先導車との位置関係を拡大表示するとよい。その際、自車が追従走行を開始することが可能なエリア(追従可能エリア)を示すと更に好ましい。
また、図25において、自車と先導車との位置関係を示す画像は、図15のプロセッサ51に含まれるCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によって作成された画像である例を示したが、それに代えて、例えば自車が搭載するカメラが撮影した自車の前方の映像を用いてもよい。その場合、自車の前方の映像に、追従可能エリアを示す画像を合成して表示するとよい。また、ヘッドアップディスプレイを用いて、運転者の視野に追従可能エリアを表示させてもよい。なお、ヘッドアップディスプレイとは、運転者が前方を見通せる画面(例えばフロントガラス)に画像を表示することによって、運転者の視野に画像を直接表示させる表示装置である。
また、案内装置33が生成する案内情報は、表示装置24に表示する他、自車内のスピーカ等から音声メッセージとして出力させてもよい。例えば、先導車選択支援装置10によって先導車が決定されたときに、「次の交差点から、車両X1に追従可能です。車両X1に合流する場合は時速40km以上で走行し、自動追従可能な位置へ移動してください。」などの音声メッセージを出力して、ユーザに自車を先導車に合流させるように促すとよい。また、図25のような表示と共に、「先導車は時速40kmで走行しています。時速40km以上で走行し、追従可能エリアへ移動して下さい。追従可能エリアに入ると自動的に追従走行が始まります。」という音声メッセージを出力してもよい。
ここで、追従可能エリアは、追従走行制御装置40の性能、典型的には追従可能な車間距離に左右される。追従走行制御装置40の性能は、先導車選択支援装置10に予め記憶されていてもよいし、先導車選択支援装置10が追従走行制御装置40との通信によって入手してもよい。後者の方法の場合は、天候や明るさ、時刻などの走行環境に応じた追従走行制御装置40の動的な性能を反映させることができ、先導車選択支援装置10がより正確な追従可能エリアを表示装置24に表示させることができる。
また、図25の例において、先導車の画像に特別な表示効果を与えてもよい。例えば、現在追従中の先導車の画像を青い実線の枠で囲み、先導車を変更する際に、追従中の先導車の画像の枠を黄色い破線に変更し、新たに追従すべき車両を青い破線の枠で囲み、先導車の乗り換えが完了した後は、新たな先導車を青い実線の枠で囲む、というように、現在および将来の先導車をそれぞれ識別できるように表示するとよい。また、現在の先導車への追従が困難になったにもかかわらず、乗り換える新たな追従車が見つからない場合に、現在の先導車の画像に赤い破線の枠を付加してもよい。
このような特別な表示効果を与えるタイミングは、先導車を変更する前後の一定期間のみにしてもよい。また、そのような特別な表示効果は、カメラが撮影した自車の前方の映像を表示装置24に表示させる場合や、ヘッドアップディスプレイを用いる場合にも適用してもよい。また、特別な表示効果は、枠の表示に限られず、他の図形や文字などを用いた効果でもよい。
<実施の形態4>
実施の形態4では、本発明に係る先導車選択支援装置を、自車の走行計画を作成する走行計画作成装置に適用した例を示す。
図26は、実施の形態4に係る走行計画提示装置220の構成を示す図である。また、図27は、各地を走行する車両の情報(車両情報)を走行計画提示装置220に配信する車両情報配信システムの構成を示す図である。
走行計画提示装置220は、自車100の走行計画を作成し、作成した走行計画をユーザに提示する装置である。ここでは、走行計画提示装置220が自車100に搭載されているものとして説明するが、走行計画提示装置220は、例えば携帯電話やスマートフォンなど、自車100とは独立した機器に搭載されてもよい。ただし、自車100とは独立した走行計画提示装置220を使用する際には、走行計画提示装置220に自車100の情報(自車情報)を登録して、走行計画提示装置220を自車100と対応付けする必要がある。
走行計画提示装置220が提示する走行計画は、自車100の走行予定経路だけでなく、自車100を他車101に追従させて走行する追従走行の計画も含まれている。すなわち、走行計画には、少なくとも、自車100の走行予定経路の情報と、走行予定経路において自車100を手動運転で走行させる区間(手動運転区間)を示す情報と、走行予定経路において自車100を他車101(先導車)に追従させて走行させる区間(追従走行区間)を示す情報と、それぞれの追従走行区間で先導車となる他車101を示す情報とが含まれる。
図26に示すように、走行計画提示装置220は、走行計画作成装置200と、走行計画作成装置200と連携して動作する入力装置221、通信装置222、地図情報記憶装置223および表示装置224とから成るシステムとして構成されている。
入力装置221は、ユーザが走行計画作成装置200に対して入力する操作や情報を受け付けるユーザインターフェイスである。入力装置221は、操作ボタンやマウス等のハードウェアでもよいし、画面に表示されるアイコンを用いたソフトウェアキーでもよい。さらに、ユーザが音声で操作内容を入力する音声認識装置であってもよい。
入力装置221から入力される情報には、走行計画作成装置200が走行計画を作成するために必要な自車100の情報(自車情報)と、走行計画作成装置200が走行計画を作成する際に優先させる項目(第1の優先項目)と、走行計画における合流コストの大きさを評価する際に優先させる項目(第2の優先項目)とが含まれる。
また、走行計画作成装置200は、追従走行制御装置40との通信を行い、追従走行制御装置40に対し、走行計画に従った追従走行指示を送信する。追従走行制御装置40は、追従走行指示に基づいて自車100の走行制御系(不図示)を制御して、自車100を追従すべき先導車に追従させる。また、追従走行制御装置40は、手動運転が計画されている区間(手動運転区間)を自車100が走行しているときは、自車100に定速走行を行わせたり、ユーザに自車100の手動運転を行わせるように促したりする。なお、第1および第2の優先項目は、ユーザが入力したものに限られず、例えば、予め定められたものでもよい。
図28は、自車情報の例を示す図である。自車情報には、少なくとも、自車100の出発地から目的地までの走行予定経路を特定できる情報と、自車の出発予定時刻の情報とが含まれていればよい。図28では、さらに自車情報の付属情報(付属自車情報)として、自車100の最高速度や最適速度などの性能(車両性能)の情報と、自車100が追従走行するときに先導を許可する車両の条件(先導車条件)とを含ませている。車両性能の情報は、走行計画作成装置200が走行計画を作成する際に、自車100が性能的に追従可能な他車101を先導車の候補にするために用いられる。先導車条件は、走行計画作成装置200が走行計画を作成する際に、ユーザの好みに応じた他車101を先導車の候補にするために用いられる。
図28では、先導車条件を「小型車を除く」とした例を示したが、例えば、「自車よりも車両性能が劣る車両」、「走行制約条件が自車と同じ」、「走行方式(エンジン、EV(Electric Vehicle)、FCV(Fuel Cell Vehicle)など)が同じ車両」などでもよい。また、先導車条件は可または不可の二者択一ではなく、優先度を設けてもよい(例えば、「軽自動車よりも、小型自動車や普通自動車を優先する」など)。
また、本実施の形態では、走行計画作成装置200に経路探索機能を持たせており、ユーザが入力装置221を用いて出発地と目的地(さらには経由地)を入力すると、走行計画作成装置200が適切な経路を探索して、走行予定経路を決定する構成となっている。また、走行計画作成装置200は、自車100の目的地に近い地点を目的地とする先導車候補が存在したときに、その先導車候補の走行予定経路に合わせて、自車の走行予定経路を補正してもよい。出発地、目的地、経由地の表現形式は、住所でもよいし、緯度・経度でもよい。
また、第1の優先項目は、追従走行の計画を含む走行計画について運転者にかかる負担(運転者負担)の大きさを評価するための評価基準となるものである。以下、この運転者負担の大きさを「追従コスト」という。本実施の形態では、第1の優先項目の候補として、予め複数の項目が用意されており、ユーザがそれらのうちの1以上を第1の優先項目として選択するものとする。第1の優先項目としては、走行予定経路の全長に占める追従走行区間の割合(追従走行距離の長さ)、目的地への到着時刻、全走行時間に占める追従走行区間の走行時間の割合(追従走行時間の長さ)、先導車の変更回数などが考えられる。追従走行距離を長くすること、目的地への到着時刻を早くすること、追従走行時間を長くすること、先導車の変更回数を少なくすることは、追従コストを小さくすることに繋がる。また、先導車とする他車101の情報(図29に示す運転評価値、経路確実性など)を、第1の優先項目とすることも考えられる。
第1の優先項目として、走行予定経路の全長に占める追従走行区間の割合(追従走行距離の長さ)が選択される場合、追従コストとしては、例えば追従走行距離に追従走行での運転者負担を表す係数を掛けたものと、通常走行距離に通常走行での運転者負担を表す係数を掛けたものとの和、を用いることができる。第1の優先項目として他の項目が選択される場合も、同様に、その項目に対応する運転者負担を表す係数(予め定められた、又は、ユーザーによって設定された係数)と各パラメータとの掛け合わせたものを用いて、追従コストとすることができる。
一方、第2の優先項目は、実施の形態1で説明した優先項目と同じであり、合流コストの大きさを評価するための評価基準となるものである。本実施の形態では、第2の優先項目の候補として、予め複数の項目が用意されており、ユーザがそれらのうちの1以上を優先項目として選択するものとする。第2の優先項目としては、自車が他車に合流するまでの走行距離、走行時間、燃料消費量、加速量、減速量および加減速量などが考えられる。
走行計画作成装置200は、ユーザが設定(選択)した第1の優先項目に基づき評価した追従コストが最小となるように、または、第2の優先項目に基づき評価した合流コストが最小となるように、走行計画を作成する。また、第1の優先項目が複数設定されている場合には、走行計画作成装置200が、それぞれの第1の優先項目ごとに、追従コストが最小となる走行計画を作成し、ユーザがそのうちの一つを選択するようにしてもよい。同様に、第2の優先項目が複数設定されている場合には、走行計画作成装置200が、それぞれの第2の優先項目ごとに、合流コストが最小となる走行計画を作成し、ユーザがそのうちの一つを選択するようにしてもよい。また、走行計画作成装置200は、走行計画の追従コストと合流コストとを総合的に評価して、運転者負担がより小さくなる走行計画を作成してもよい。追従コストと合流コストとを総合的に評価して得た運転者負担を「総合追従コスト」という。
ここで「追従コストと合流コストとを総合的に評価」とは、追従コストおよび合流コストをパラメータとする予め定められた評価式(総合評価式)に基づいて評価することを示す。例えば、第1の優先項目と第2の優先項目とが距離や時間など同じ種類の項目であれば、単純に加算することで総合追従コストを算出すればよい。一方、第1の優先項目と第2の優先項目とが異なる種類の項目であった場合、追従コストと合流コストとが所定の比率になるように正規化して加算することで、総合追従コストを算出する。この際、ユーザが追従コストと合流コストのどちらを優先するかという情報に基づいて、追従コストおよび合流コストに係数を乗じてもよい。追従コストおよび合流コストの各係数は、ユーザ入力をもとに決定してもよいし、あらかじめ決められた値としてもよい。
図26の説明に戻り、走行計画提示装置220の通信装置222は、走行計画作成装置200が車両情報配信システム(図27)の車両情報サーバー102との通信を行うためのものである。車両情報サーバー102は、各地を走行する複数の車両(他車)101が送信する車両情報を収集しており、走行計画作成装置200からの要求に応じて、各他車101の車両情報を、他車情報として走行計画作成装置200へ送信する。このとき、車両情報サーバー102は、必ずしも全ての他車101の車両情報を、他車情報として走行計画作成装置200へ送信しなくてもよく、例えば、自車100の走行予定経路を通る予定のある他車101の車両情報のみを送信したり、自車100の走行予定経路から一定範囲内に存在する他車101の車両情報のみを送信したりしてもよい。
図27に示すように、本実施の形態の車両情報配信システムでは、自家用車である他車101は、車両情報を車両情報サーバー102へ直接送信する。しかし、他車101が商用車(路線バス、高速バス、配送車両、商用の先導車など)の場合は、他車101が車両情報を車両情報サーバー102へ直接送信する形態だけでなく、他車101の属する企業103が、他車101の車両情報を車両情報サーバー102へ送信する形態も考えられる。その場合、車両情報には、バスの運行情報(路線図、時刻表、運行遅延情報など)や配送車両の配送情報(配送経路および配送スケジュール)などを含んでいてもよい。
図29は、車両情報サーバー102が走行計画作成装置200へ送信する車両情報(他車情報)の例を示す図である。他車情報には、少なくとも、複数の他車101の走行予定経路と、その走行予定経路上の各地点の通過予定時刻と、当該走行予定経路上の各地点での走行速度とを予測可能な情報が含まれていればよい。他車101が商用車の場合、それらの情報は、バスの運行情報や配送車両の配送情報から求めたものでもよい。
図29の他車情報には、走行予定経路上の各地点での走行速度の情報は含まれていないが、各地点の通過予定時刻から他車101の予想速度を算出することができる。もちろん、他車情報には、他車101の予想速度の情報を含ませてもよい。その場合には、走行計画作成装置200が走行予定経路と予想速度とから、各地点の通過予定時刻を推定できるので、必ずしも車両情報サーバー102が各地点の通過予定時刻の情報を配信しなくてもよい。
図29では、さらに他車情報の付属情報(付属他車情報)として、他車101の出発予定時刻、出発地、目的地、先導車としての質の高さの評価値(運転評価値)、走行予定経路および通過予定時刻の確実性(経路確実性)、並びに、先導車となるときに追従を許可する車両の条件(追従車条件)を含ませている。運転評価は、例えば先導車としての実績(例えば、先導車としての走行時間の長さ)や、過去に先導した追従者からの評価などに基づいて決められる。経路確実性は、走行予定経路や経由地に高い計画性が求められない他車101(主に自家用車)では低い値となり、走行予定経路や経由地に高い計画性が求められる他車101(主に商用車)では高い値となる。
図26の説明に戻り、走行計画提示装置220の地図情報記憶装置223は、道路網のデータを含む地図情報を記憶する記憶媒体であり、例えばハードディスク、リムーバブルディスク、メモリなどで構成される。この地図情報は、走行計画作成装置200が自車100の走行予定経路を決定するための経路探索を行うときや、作成した走行計画を地図に重畳して表示させるときに用いられる。
表示装置224は、走行計画作成装置200が作成した走行計画を表示してユーザに提示するためのものである。なお、入力装置221としてのソフトウェアキーを、表示装置224の画面に表示させる場合、表示装置224と入力装置221は、両者の機能を兼ね備えた1つのタッチパネルとして構成されてもよい。
次に、走行計画作成装置200の構成を説明する。走行計画作成装置200は、自車情報取得部211、他車情報取得部212、走行計画算出部213、優先項目設定部214、走行計画保持部215および表示処理部216から構成されている。
自車情報取得部211は、ユーザが入力装置221から入力した自車100の情報(自車情報)を取得する。自車情報の例は図28に示したが、自車情報には、少なくとも、自車100の出発地から目的地までの走行予定経路を特定できる情報と、自車の出発予定時刻の情報とが含まれていればよい。
本実施の形態では、自車情報取得部211は、地図情報記憶装置223に記憶されている地図情報を用いた経路探索を行う走行予定経路取得部211aを備えた構成となっている。走行予定経路取得部211aは、自車100の出発地と目的地との間の最適な経路を探索することによって、自車100の走行予定経路を決定する。この構成によれば、ユーザは、自車100の走行予定経路の情報の代わりに、出発地と目的地の情報を入力装置221に入力すればよいため、利便性が向上する。
なお、走行予定経路取得部211aは、自車100の走行予定経路を自ら算出せずに、外部のナビゲーション装置が算出した走行予定経路を取得するものであってもよい。また、ユーザが入力装置221から走行予定経路の情報を入力可能な場合には、走行予定経路取得部211aは省略してもよい。
他車情報取得部212は、通信装置222を用いて、車両情報サーバー102から、複数の他車101の車両情報(他車情報)を取得する。他車情報の例は図29に示したが、他車情報には、少なくとも、各他車101の走行予定経路と、当該走行予定経路上の各地点の通過予定時刻と、当該走行予定経路上の各地点での走行速度とを予測可能な情報が含まれていればよい。
走行計画算出部213は、自車情報および他車情報に基づいて、自車100の走行計画を作成する。先に述べたように、走行計画には、少なくとも走行予定経路の情報と、その走行予定経路における手動運転区間および追従走行区間を示す情報と、それぞれの追従走行区間で先導車となる他車101を示す情報と、が含まれる。また、走行計画算出部213は、追従走行区間ごとに、複数の他車101のうちから先導車を選択する。
さらに、走行計画算出部213は、走行計画における追従コストを計算する追従コスト算出部213aと、走行計画における合流コストを計算する合流コスト計算部213bとを含んでおり、追従コスト、合流コストまたは総合追従コストが最小となるように、走行計画を作成する。
優先項目設定部214は、ユーザが入力装置221を用いて選択した第1および第2の優先項目の情報を取得して、選択された第1および第2の優先項目を走行計画算出部213に設定する。
走行計画保持部215は、走行計画算出部213が算出した走行計画を保持する。表示処理部216は、走行計画保持部215に保持されている走行計画を、表示装置224に表示させるための処理を行う。
実施の形態4に係る走行計画作成装置200のハードウェア構成も、基本的には図15と同様であり、少なくともプロセッサ51、メモリ52(記憶装置)、入出力インターフェイス53を含む構成となっている。上記の自車情報取得部211、他車情報取得部212、走行計画算出部213、優先項目設定部214、走行計画保持部215および表示処理部216は、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することにより実現される(走行計画保持部215としての記憶領域は、メモリ52内に確保される)。
また、走行計画提示装置220を構成する入力装置221、通信装置222、地図情報記憶装置223および表示装置224は、入出力インターフェイス53に接続され、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することによって制御される。図26では、入力装置221、通信装置222、地図情報記憶装置223および表示装置224が、走行計画作成装置200に外付けされた構成としたが、それらのハードウェアが走行計画作成装置200の内部に配設されるようにしてもよい。
なお、図15には、プロセッサ51およびメモリ52を1つずつ示したが、複数のプロセッサ51および複数のメモリ52が連携して、走行計画作成装置200の各要素の機能を実現してもよい。
ここで、追従走行の幾つかの例を示しつつ、追従走行と運転者負担(追従コスト)との関係について説明する。図30〜図55において、自車Sは図27の自車100に対応し、他車X1,X2,…のそれぞれは図27の他車101に対応している。
まず、図30のように、道路R1,R2を走行予定の自車Sと、道路R3,R2を走行予定の他車X1とが、交差点C1(道路R1,R2,R3の接続地点)にほぼ同じ時刻に到達する場合を考える。自車Sおよび他車X1が道路R2に進入した後、図31のように、自車Sを他車X1に後続させた状態で、自車Sの運転者が自車Sに特定の操作を行うと、自車Sは他車X1を先導車とする追従走行を開始する。通常は、自車Sを追従走行させることによって、運転者負担が軽減される(追従コストを小さくできる)。
しかし、例えば他車X1の速度が非常に遅い場合には、自車Sを他車X1に追従させると目的地への到着時刻が遅くなる(走行時間が長くなる)ため、長時間運転を負担に感じる運転者にとっては、むしろ運転者負担が増えることも考えられる。そのよう場合には、図32のように、道路R2で自車Sを手動運転して目的地への走行時間を短縮する方が、運転者負担は低減される。このように、追従走行と運転者負担とは一定の関係にはなく、運転者の嗜好によって変わる。
ユーザが入力装置221を用いて走行計画作成装置200に入力する第1の優先項目は、そのような運転者の嗜好に基づいて運転者負担を評価するための評価基準となる。例えば、第1の優先項目が「追従走行距離の長さ」であれば、追従走行距離が長くなる図31のような走行計画よりも、図32のような走行計画の方が運転者負担が大きいと評価される。また、第1の優先項目が「目的地への到着時刻」であれば、走行時間が短縮される図32のような走行計画の方が、図31のような走行計画よりも運転者負担が小さいと評価される。
次に、図33のように、道路R1,R2を走行予定の自車Sが追従可能な2台の他車X1,X2が存在する場合を考える。この例では、他車X1は自車Sと同じく道路R1,R2を走行予定であり、他車X2は道路R1,R3を走行予定である。また、他車X1は他車X2よりも速度が遅いものとする。
この場合、図34のように自車Sを他車X1に追従させると、道路R1,R2で自車Sを他車X1に追従させて走行できるため、追従走行距離を長くできる点では運転者負担を小さくできるが、その反面、目的地への到着時刻は遅くなる。また、図35のように自車Sを他車X2に追従させると、走行時間を短縮できる点では運転者負担を小さくできるが、交差点C1(道路R1,R2,R3の接続地点)までしか自車Sを追従走行させることができないため追従走行距離は短くなる。
本実施の形態では、追従走行の途中で先導車を変更することも想定される。例えば、図36のように、道路R1において、道路R1,R4を走行予定の自車Sが、道路R1,R2を走行予定の他車X1を先導車として追従走行している場合を考える。この例において、道路R3,R4を走行予定の他車X2が存在し、他車X1と他車X2とが交差点C1(道路R1〜R4の接続地点)にほぼ同じ時刻に到達するものとする。この場合、交差点C1で自車Sの他車X1への追従を終了させ、その後、図37のように自車Sを他車X2に追従させることができる。このように先導車を乗り継ぐことで、追従走行距離を長くすることができる。
さらに、本実施の形態では、先導車の変更のしやすさも考慮される。例えば、図38のように、道路R1,R4を走行予定の自車Sが追従可能な2台の他車X1,X2が存在し、他車X1,X2は共に道路R1,R2を走行予定である場合を考える。この場合、自車Sを他車X1に追従させることができる距離と、自車Sを他車X2に追従させることができる距離とは同じである。しかし、道路R3,R4を走行予定の他車X3への乗り継ぎを考慮すると、自車Sを他車X1,X2のどちらに追従させるかによって、運転者負担が変わる。
ここで、図39(自車Sは不図示)のように、他車X1は他車X3とほぼ同じ時刻に交差点C1(道路R1〜R4の接続地点)に到達し、他車X2は他車X3よりも早い時刻に交差点C1に到達するものとする。この場合、図40のように自車Sを他車X1に追従させると、図41のように他車X3への乗り継ぎを楽に行うことができ(自車Sを他車X2に追従させると、他車X3を待たなければ、自車Sを他車X3へ追従させることができない)、運転者負担を小さくできる。
ただし、他車X1,X3の速度が非常に遅ければ、先導車を容易に変更できたとしても、目的地への到着時刻が遅くなることで運転者負担が大きくなることが考えられる。そのよう場合には、図42のように自車Sを他車X2に追従させて早く交差点C1へ到達させ、図43のように道路R4で自車Sを手動運転して走行時間を短縮すれば、運転者負担を小さくできる。
また、自車Sの付近に先導車にできる他車が存在しない場合に、自車Sを停車させて他車を待つことも考慮される。例えば、図44のように、道路R1を走行予定の自車Sの後方に、道路R1を走行経路とする他車X1が存在する場合を考える。この場合、図45のように、自車SをサービスエリアSAに停車させて他車X1が接近するのを待ち、その後、図46のように自車Sを他車X1に追従させれば、道路R1で自車Sを追従走行させることができる。このように他車X1を待つことで、追従走行距離を長くでき、運転者負担を小さくできる(目的地への到着時刻は遅くなるが、自車Sを停車させて待機させることで運転者負担の増大は抑えられる)。
自車Sの待機は、先導車の変更(乗り継ぎ)にも利用できる。例えば、図47のように、道路R1,R2を走行予定の自車Sが、道路R1,R3を走行予定の他車X1に追従して走行しており、その自車Sの後方に、道路R1,R2を走行経路とする他車X2が存在する場合を考える。この場合、サービスエリアSAの手前で自車Sの他車X1への追従を終了させ、図48のように、自車SをサービスエリアSAに停車させて他車X2が接近するのを待ち、その後、図49のように自車Sを他車X2に追従させることで、先導車を他車X1から他車X2へと変更できる。その結果、道路R1だけでなく道路R2でも自車Sを追従走行させることができる。
以上の例では、自車Sが走行中の道路またはその次の道路を走行する他車の存在を考慮したが、本実施の形態の走行計画作成装置200は、さらに先の道路を走行する他車の存在も考慮して、自車100の走行計画を作成する。
例えば、図50のように、自車Sが道路R1,R8,R9,R6を走行予定の場合、走行中の道路R1およびその次の道路R8を走行する他車だけでなく、さらに先の道路R9,R6を走行する他車まで考慮に入れる。例えば、第1の優先項目が「追従走行距離の長さ」に設定されている場合には、図51のように道路R8で自車Sを他車X1に追従させ、且つ、図52のように道路R9で自車Sを他車X2に追従させるように(つまり、他車X1と他車X2とを乗り継ぐように)、自車Sの走行計画が作成される。なお、第1の優先項目が「追従走行距離の長さ」に設定されていても、図53のように道路R6で自車Sが追従可能な他車が存在しないと予想されるときは、道路R6で自車Sを手動運転するような走行計画が立てられる。
また、図50の例において、第1の優先項目が「目的地への到着時刻」に設定されており、他車X1,X2の速度が非常に遅い場合には、道路R8で自車Sを他車X1に追従させずに手動運転する走行計画が作成される。その場合、図54のように自車Sが他車X2よりも先に交差点C2(道路R3,R4,R8,R9の接続地点)に到着するため、図55のように道路R9,R6も自車Sを手動運転するように走行計画が立てられる。なお、図54の状態で他車X2を待つことも可能であるが、そのようにすると道路R8で自車Sを手動運転して走行時間を短縮したことが無意味になるため、そのような走行計画は好ましくない。
次に、実施の形態4に係る走行計画作成装置200の動作を説明する。図56は、その動作を示すフローチャートである。
走行計画作成装置200が起動すると、まず、自車情報取得部211および優先項目設定部214が、ユーザが入力装置221から入力した情報を取得する(ステップS101)。具体的には、自車情報取得部211はユーザが入力した自車情報を取得し、優先項目設定部214はユーザが選択した第1および第2の優先項目を取得する。自車情報は、少なくとも、自車100の出発地から目的地までの走行予定経路を特定できる情報と、自車の出発予定時刻の情報とを含む。本実施の形態の自車情報取得部211は、走行予定経路取得部211aを有しているため、ユーザが自車100の出発地と目的地を入力すれば、自車情報取得部211は自車100の走行予定経路を取得できる。
次に、他車情報取得部212が、通信装置222を介して他車情報を取得する(ステップS102)。他車情報には、少なくとも、複数の他車101の走行予定経路と、その走行予定経路上の各地点の通過予定時刻と、当該走行予定経路上の各地点での走行速度を予測可能な情報が含まれる。
その後、走行計画算出部213が、自車100の走行計画を算出する処理(走行計画算出処理)を行う(ステップS103)。走行計画算出処理の詳細は後述する。
走行計画算出部213が算出した走行計画は、走行計画保持部215に格納される(ステップS104)。表示処理部216は、走行計画保持部215に格納されている走行計画を、表示装置224に表示するための画像データを生成する(ステップS105)。表示処理部216が生成した画像データは表示装置224に入力され、その結果、表示装置224に走行計画が表示される(ステップS106)。
次に、走行計画算出処理(図56のステップS103)を詳細に説明する。図57は、走行計画算出処理のフローチャートである。
走行計画算出処理が開始されると、走行計画算出部213は、自車100の走行予定経路上に複数の分割地点を設定することにより、複数の区間に分割する(ステップS201)。隣り合う2つの分割地点の間が1つの区間となり、各区間は走行計画を算出する単位となる。分割地点を配置する方法は任意でよい。例えば、複数の道路が接続する地点(交差点、分岐点等)、車両を停車できる地点(パーキングエリア、サービスエリア、道の駅等)など、特定の属性を有する地点を分割地点とする方法が考えられる。また、一定距離ごとに分割地点を配置するシンプルな方法でもよい。走行予定経路を細かく分割する(分割地点の数を多くする)と、より多くのパターンの走行計画を算出可能となるが、それらを算出するための計算量が膨大になる。よって、分割地点の数は、走行計画算出部213としてのプロセッサ51の計算能力、および、走行計画に要求される精細度に応じて決定するとよい。
ここでは、走行予定経路の始点(出発地)を分割地点P0とし、走行予定経路の終点(目的地)を分割地点PNとするN+1個の分割地点P0〜PNが設定されて、走行予定経路がN個の区間に分割されたと仮定する。また、分割地点Piと分割地点Pi+1とで区切られる区間を、区間Qiと定義する。つまり最初の区間はQ0と表され、最後の区間はQN−1と表される。
次に、走行計画算出部213は、算出済みの走行計画のデータがストックされるデータの集合体である「算出済み走行計画集合RF」をクリアする(ステップS202)。走行計画算出部213は、異なるパターンの走行計画を複数算出して、それらを算出済み走行計画集合RFに格納し、その後、格納された走行計画のうちからユーザが選択した第1および第2の優先項目に基づいて評価した追従コスト、合流コストまたは総合追従コストが最小になるものを抽出して出力する。ここでは、算出済み走行計画集合RFに格納された走行計画のうちから、総合追従コストが最小になるものが抽出されるものとする。
次に、走行計画算出部213は、算出途中の走行計画のデータである「算出中走行計画R」をクリアする(ステップS203)。算出中走行計画Rをクリアする際、走行計画の算出に使用する各変数を自車情報に基づいて初期化する。本実施の形態では、時刻を表す変数Tと、位置を表す変数Lと、区間を表す変数Dとが用いられる(以下ではそれらの各変数を単に「時刻T」、「位置L」、「区間D」という)。初期化によって、時刻Tは自車100の出発予定時刻に設定され、位置Lは出発地である分割地点P0に設定され、区間Dは最初の区間である区間Q0に設定される。
次に、走行計画算出部213は、地図情報記憶装置223の地図情報を参照して、位置Lの付近に、自車100を停車させて先導車としての他車101を待つことが可能な地点(待機可能地点)があるか否かを判断する(ステップS204)。ここでいう「位置Lの付近」は、区間Dの手前または途中(位置Lを含む)であればよい(ただし、位置Lが分割地点P0のときは区間D(区間Q0)の手前に区間は存在しない)。例えば、位置Lから一定距離内を「位置Lの付近」と定義してもよいし、位置Lを挟む2区間(区間Dとその直前の区間)を「位置Lの付近」と定義してもよい。また、待機可能地点は走行予定経路上の地点でなくてもよく、走行予定経路周辺の一定範囲内(例えば、区間Dとその直前の区間の周囲20mの範囲など)にある地点を待機可能地点としてもよい。その場合、走行予定経路と待機可能地点との間の距離が短い方が、先導車と合流できる時間が早くなる、すなわち、早く追従走行を開始できるので、運転者負担は小さくなる。
位置Lの付近に待機可能地点がある場合(ステップS204でYES)、走行計画算出部213は、その待機可能地点で待つことが可能な先導車の候補となる他車101を検索する。具体的には、走行計画算出部213は、時刻Tから予め定められた時間内に区間Dを通る他車101のうち、区間Dで合流可能なものを、他車情報に基づいて検索する(ステップS205)。
ここで、他車101が区間Dで自車100と合流可能か否かは、自車100が、区間Dに入ってから予め定められた時間内に合流できるか否かによって判断する(待機可能地点が区間Dの途中地点である場合は、待機可能地点を自車100が出発してから予め定められた時間内に合流できるか否かによって判断する)。例えば、自車100の車両性能を上回るような速度で区間Dを走行する他車101は、合流不可能である。
そして、走行計画算出部213は、区間Dでの行動を次の2通りから選択し、選択した内容を算出中走行計画Rに追加する(ステップS206)。
[行動1−1]待機可能地点で、ステップS205で見つかった他車101を待つ。
[行動1−2]他車101を待たない。
また、ステップS206で行動1−1が選択された場合は、その待ち時間を時刻Tに加算することによって、時刻Tが更新される。ステップS206で行動1−2が選択された場合は、時刻Tの値は維持される。
ステップS206では行動1−1または行動1−2の片方が選択されるが、後述するステップS211の処理によって、最終的には、行動1−1を選択する走行計画と、行動1−2を選択する走行計画との両方が作成されることになる。ただし、ステップS205で該当する他車101が見つからなかった場合には、行動1−1が選択されることはない。
ステップS205で該当する他車101が複数見つかった場合には、行動1−1が更に複数の選択肢に分けられ、それぞれの他車101を待つ走行計画が作成されることになる。例えば、ステップS205で、該当する他車101として車両A,Bの2台が見つかった場合は、ステップS206では以下の3通りの行動から1つが選択される。
[行動1−1A]待機可能地点で車両Aを待つ。
[行動1−1B]待機可能地点で車両Bを待つ。
[行動1−2]他車101(車両A,車両B)を待たない。
なお、ステップS205で該当する他車101が多数見つかった場合には、行動1−1の対象(自車100が待つ対象)をそのうちの一部に限定してもよい。例えば、該当する複数の他車101のうち、待ち時間が比較的短いものだけを対象としたり、自車100の目的地に比較的近い地点を目的地とするものだけを対象としたりすることが考えられる。そうすることにより、ステップS206での選択肢が減り、走行計画算出部213としてのプロセッサ51の計算負荷を軽減させることができる。
なお、上記のステップS205、S206の処理は、位置Lの付近に待機可能地点が存在しない場合(ステップS204でNO)には行われない。
次に、走行計画算出部213は、区間Dにおける自車100の先導車の候補となる他車101を検索する。具体的には、走行計画算出部213は、他車情報に基づいて、時刻Tに位置Lの付近にいる他車101のうち、区間Dを通り、区間Dで自車100が合流可能なものを検索する(ステップS207)。ここでも、他車101が区間Dで自車100と合流可能か否かは、自車100が区間Dに入ってから予め定められた時間内に合流できるか否かによって判断する。
ステップS207では、ユーザが選択した第1の優先項目に、先導車とする他車101に関する項目が含まれている場合には、その第1の優先項目に適した他車101のみを検索対象としてもよい。例えば、第1の優先項目として、他車101の運転評価値や経路確実性が選択されている場合には、それらが一定レベル以上の他車101のみが検索対象とされる。
さらに、ステップS207では、時刻Tと現在時刻との差が予め定められた閾値よりも大きい場合(つまり、時刻Tが現在時刻から長時間経過した後の時刻を示している場合)、経路確実性の高い他車101のみを検索対象にすることが好ましい。長時間経過した後には、経路確実性が低い他車101の走行予定経路や通過予定時刻は、変更されている可能性が高いからである。また、自車100と同等以下の車両性能を有する他車101のみを検索対象とすることが好ましい。自車100を、自車100よりも車両性能の高い他車101に追従させて走行させるのは困難な場合があるからである。
その後、走行計画算出部213は、区間Dでの行動を、次の2通りから選択し、その内容を算出中走行計画Rに追加する(ステップS208)。
[行動2−1]自車100を、ステップS207で見つかった他車101に追従させて走行させる。
[行動2−2]自車100を手動運転する。
行動2−1が選択された場合、区間Dは追従走行区間とされ、区間Dで先導車となる他車101を特定する情報(例えば、車体ナンバーや、車両情報配信システムへの登録IDなど)が算出中走行計画Rに追加される。そして、先導車としての他車101の予想速度から算出した区間Dの走行時間を時刻Tに加算することによって、時刻Tが更新される。また、位置Lを次の分割地点に設定することによって、位置Lが更新される。さらに、位置Dを次の区間(更新後の位置Lを始点とする区間)に設定することで、区間Dが更新される。なお、連続する区間で同一の他車101が先導車として選択された場合は、それらの区間では先導車を変更しない走行計画となる。
行動2−2が選択された場合、区間Dは手動運転区間とされる。その場合、自車100の速度に基づいて算出した区間Dの走行時間を時刻Tに加算することによって、時刻Tが更新される。また、位置Lを次の分割地点に設定することによって、位置Lが更新される。さらに、位置Dを次の区間(更新後の位置Lを始点とする区間)に設定することで、区間Dが更新される。
ステップS208では行動2−1または行動2−2の片方が選択されるが、後述するステップS211の処理によって、最終的には、行動2−1を選択する走行計画と、行動2−2を選択する走行計画との両方が作成されることになる。ただし、ステップS207で該当する他車101が見つからなかった場合には、ステップS208で行動2−1が選択されることはない。
ステップS207で該当する他車101が複数見つかった場合には、行動2−1が更に複数の選択肢に分けられ、それぞれの他車101に自車100を追従させる走行計画が作成されることになる。例えば、ステップS207で、該当する他車101として車両A,Bの2台が見つかった場合は、以下の3通りの行動から1つが選択される。
[行動2−1A]自車100を車両Aに追従させて走行させる。
[行動2−1B]自車100を車両Bに追従させて走行させる。
[行動2−2]自車100を手動運転する。
また、ステップS207で該当する他車101が多数見つかった場合には、第1の優先項目に応じて、行動2−1の対象(自車100が追従する対象)をそのうちの一部に限定してもよい。例えば、自車100の目的地に比較的近い地点を目的地とする他車101だけを対象としてもよい。そうすることにより、ステップS208での選択肢が減り、走行計画算出部213としてのプロセッサ51の計算負荷を軽減させることができる。
次に、走行計画算出部213は、更新された位置Lが目的地(分割地点PN)かどうかを確認する(ステップS209)。位置Lが目的地でない場合、すなわち位置Lが走行予定経路の途中地点である場合は(ステップS209でNO)、位置Lから始まる区間(更新後の区間D)の走行計画を算出するために、ステップS204に戻る。
位置Lが目的地(走行予定経路の終点)である場合は(ステップS209でYES)、算出中走行計画Rに走行予定経路全体の走行計画が格納されたことになるので、それを算出済み走行計画集合RFに追加する(ステップS210)。そして、ステップS206およびステップS208で選択され得る行動の組み合わせパターン(行動組み合わせパターン)が全通り選択されたか否か(各行動組み合わせパターンに対応する全ての走行計画が作成されたか否か)を判定する(ステップS211)。
未選択の行動組み合わせパターンが存在する場合には(ステップS211でNO)、それらの行動組み合わせパターンに対応する走行計画を作成するために、ステップ203に戻る。2回目以降のループでは、先に選択済みの行動組み合わせパターンと全く同じものが選択されないようにする。
全通りの行動組み合わせパターンが選択済みになると(ステップS211でYES)、各行動組み合わせパターンに対応する全ての走行計画が、算出済み走行計画集合RFに格納されたことになる。この場合、算出済み走行計画集合RFから、総合追従コストが小さいと判断される走行計画を抽出して出力する(ステップS212)。
各走行計画の総合追従コストは、その追従コストおよび合流コストを総合して評価されるが、各走行計画の追従コストは、追従コスト算出部213aが、第1の優先項目を考慮して評価する。例えば、第1の優先項目が「追従走行距離の長さ」の場合には、走行予定経路の全長に占める追従走行区間の割合が最も大きい走行計画ほど、追従コストが小さいと判断される。また、第1の優先項目が「目的地への到着時刻」の場合には、目的地への到着予想時刻が最も早い走行計画ほど、追従コストが小さいと判断される。第1の優先項目が「追従走行時間の長さ」の場合には、全走行時間に占める追従走行区間の走行時間の割合が最も大きい走行計画ほど、追従コストが小さいと判断される。第1の優先項目が「先導車の変更回数」の場合には、先導車の変更回数が少ない走行計画ほど、追従コストが小さいと判断される。
また、例えば、第1の優先項目が「運転評価値」の場合には、先導車となる他車101の運転評価値の平均値が高い走行計画ほど、追従コストが小さいと判断される。また、第1の優先項目が「経路確実性」の場合には、先導車となる他車101の経路確実性の評価値の平均値が高い走行計画ほど、追従コストが小さいと判断される。
各走行計画の合流コストは、合流コスト計算部213bが、第2の優先項目を考慮して評価する。例えば、第2の優先項目が「自車が他車に合流するまでの走行距離」の場合には、合流コスト計算部213bによって、各追従走行区間における自車100が先導車に合流するまでの走行コストが計算され、その総和が小さい走行計画ほど、合流コストが小さいと判断される。また、例えば、第2の優先項目が「自車が他車に合流するまでの加減速量」の場合には、合流コスト計算部213bによって、各追従走行区間における自車100が先導車に合流するまでの加速量または減速量が計算され、その総和が小さい走行計画ほど、合流コストが小さいと判断される。
各走行計画の追従コストおよび合流コストの算出は、必ずしも全区間の走行計画が決定した後(例えばステップS212)に行わなくてもよく、各区間の走行計画を決定する処理(ステップS204〜S209のループ)と並行して行われてもよい。
図57のステップS212で走行計画算出部213が複数の走行計画を出力して、ユーザがそのうちの1つを選択できるようにしてもよい。例えば、走行計画算出部213が、総合追従コストが小さいものから予め定められた数の走行計画を出力したり、第1または第2の優先項目ごとに最も追従コストまたは合流コストの小さいものを出力したりする態様が考えられる。
走行計画算出部213が出力した走行計画は、図56のステップS105,S106の処理により、表示装置224に表示される。ここでは、走行計画算出部213が出力した走行計画の表示態様の例を示す。
走行計画の表示態様としては、図58のようにテキスト表示とすることが考えられる。走行計画の内容が文章で表示されるので、例えば第三者に走行計画を電話等で伝える場合などに有効である。
また、図59のように走行計画をグラフ化して表示してもよい。図59のように、追従走行区間と手動運転区間とを色分けすることで、走行予定経路全体に占める追従走行区間または手動運転区間の割合を把握しやすくなる。そのため、ユーザが走行計画の運転者負担を直感的に認識できるという利点が得られる。
また、図60のように、走行計画を表す文字や図形を地図に重畳表示させてもよい。図60の例では、自車100(円で囲まれた三角形のアイコン)の走行予定経路を示すラインを、追従走行区間と手動運転区間とで色分けして表示させている。また、地図上に、先導車となる他車101の現在位置(三角形のアイコン)およびその走行予定経路も示させている。走行計画を地図に重畳表示させることで、走行計画の内容を直感的かつ具体的に表すことができる。
図57のステップS212で走行計画算出部213が複数の走行計画を出力して、ユーザがそのうちの1つを選択できるようにする場合、複数の走行計画を同時に表示装置224に表示させるとよい。図61は、複数の走行計画をそれぞれグラフ化して同時に表示する場合の表示例である。走行計画をグラフ化すると、ユーザが走行計画の運転者負担を直感的に認識できるので、グラフ化した走行計画を並べて表示すると、各走行計画の運転者負担を容易に比較することができる。例えば、ユーザが図61の画面を見れば、ユーザは追従走行距離が最も長い走行計画は「走行計画3」であり、先導車の変更回数が最も少ない走行計画は「走行計画1」であることを一目で把握できる。
図61では、各グラフの横軸の長さは距離を表しているが、時間を表すようにしてもよい。各グラフとの横軸の長さが時間を表す表示形態は、運転者が追従走行時間の長い走行計画を選択したい場合や、目的地への到着時間が最も早い走行計画を選択したい場合に、選択が容易となって有効である。
本実施の形態でも、図示の便宜上、先導車を示す情報を「車両X1に追従」などと簡易な表示としているが、実際にはより具体的に先導車を特定できる情報が表示される。運転者は追従走行を開始する前に目視で先導車を見つける必要があるため、外見から先導車を特定できる情報、例えば、車種、車名、車体の色、ナンバープレートの番号などを、先導車を示す情報として表示することが望ましい。また、車種、車名および車体の色については、車両の写真や画像を用いて表現してもよい。
<実施の形態5>
図62は、実施の形態5に係る走行計画提示装置220の構成を示す図である。実施の形態5に係る走行計画提示装置220は、実施の形態4の構成(図26)に対し、走行計画再算出指示部217を追加した構成となっている。走行計画再算出指示部217は、予め定められた条件が満たされた場合に、走行計画算出部213に対して走行計画の再算出を指示するものである。
実施の形態5の走行計画提示装置220のハードウェア構成も、基本的には図15と同様であり、走行計画再算出指示部217も、走行計画作成装置200の他の要素と同様に、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
実施の形態5の走行計画再算出指示部217は、前回の走行計画の算出から一定時間が経過した場合と、車両情報サーバー102が配信する他車情報に変更があった場合とに、走行計画算出部213に対して走行計画の再算出を指示する。
例えば、図50に示した例において、図51〜図53のように、自車100を他車X1と他車X2に追従させるような走行計画が作成されていたと仮定する(追従走行区間は道路R8,R9)。その走行計画が作成された後、図63のように、道路R4,R9,R6を走行予定の他車X3が現れた場合、道路R9で自車Sを他車X2ではなく他車X3に追従させるように走行計画を変更すると、図64のように道路R6も追従走行できる。それにより、追従走行距離が長くなるため、追従コストを小さくできる(第1の優先項目が「追従走行距離の長さ」の場合)。走行計画再算出指示部217は、そのような走行計画の変更を可能にするものである。
再算出された走行計画が、現在の走行計画よりも運転者負担(追従コスト、合流コストまたは総合追従コスト)を小さくできるものであれば、走行計画を変更することが望ましい。また、再算出された走行計画が、現在の走行計画よりも運転者負担が大きくなるものであっても、現在の走行計画が利用できない状態になっていれば、走行計画を再算出されたものに変更せざるを得ない。しかしそのような場合でも、ユーザの承認なしに走行計画を変更することは好ましくない。
そこで、現在の走行計画が利用可能な状態で、再算出によって現在の走行計画よりも運転者負担を小さくできる走行計画が得られた場合は、表示処理部216が、図65のように、どちらの走行計画を採用するか運転者に選択させる画面(走行計画選択画面)を表示装置224に表示させる。図65の走行計画選択画面では、再算出した走行計画と、走行計画を変更するか否かを選択させるテキストおよびアイコンとを、地図に重畳表示させている。
走行計画選択画面には、図66のように、現在の走行計画を表したテキストと、再算出した新たな走行計画を表したテキストとを並べて表示してもよい。あるいは、図67のように、走行計画選択画面に、現在の走行計画を表したグラフと、再算出した新たな走行計画を表したグラフとを並べて表示してもよい。図66および図67のように、走行計画選択画面に、現在の走行計画と再算出した走行計画の両方を表示させれば、ユーザは両者を容易に比較することができる。
また、現在の走行計画が利用不可能な状態で走行計画が再算出された場合には、運転者負担を小さくできるか否かに関わらず自動的に走行計画を変更し、図68のように、その旨を運転者に通知する画面(走行計画変更通知画面)を表示させる。図68の走行計画変更通知画面では、変更後の走行計画(再算出した走行計画)と、走行計画を変更した旨のテキストとを、地図に重畳表示させている。図示は省略するが、走行計画変更通知画面には、変更後の走行計画をテキストやグラフで表したものを表示してもよい。
次に、実施の形態5に係る走行計画作成装置200において走行計画を再算出するための処理(走行計画再算出処理)を説明する。図69は、その処理を示すフローチャートである。
走行計画再算出指示部217は、前回の走行計画作成から一定時間が経過したか否かを確認する(ステップS301)。前回の走行計画作成から一定時間が経過した場合(ステップS301でYES)、走行計画再算出指示部217は、走行計画算出部213に走行計画算出処理を行わせて、走行計画を再算出させる(ステップS306)。ステップS306の走行計画算出処理は、図57で示したものと同じでよい。
前回の走行計画作成から一定時間が経過していない場合には(ステップS301でNO)、走行計画再算出指示部217は、通信装置222を介して、自車100の先導車となる他車101の他車情報を取得し(ステップS302)、当該他車情報に変更があったか否かを確認する(ステップS303)。当該他車情報に変更があった場合も(ステップS303でYES)、走行計画再算出指示部217は、走行計画算出部213に走行計画を再算出させる(ステップS306)。
なお、前回の走行計画作成から一定時間が経過しておらず、且つ、他車情報の変更も無い場合には(ステップS303でNO)、走行計画の再算出は行われず、現在の走行計画が維持される(ステップS304)。すなわち、走行計画保持部215に記憶されている走行計画が維持される。
ステップS306の走行計画算出処理が完了して、再算出された走行計画が得られると、走行計画再算出指示部217は現在の走行計画が利用可能か否かを確認する(ステップS307)。現在の走行計画に寄与している他車101の他車情報に大きな変更(現在の走行経路を維持できない程の変更)が生じている場合には、現在の走行計画が利用不可能となる。この判断は、ステップS306の走行計画算出処理の際に、現在の走行計画と同じ走行計画が算出済み走行計画集合RFに格納されたか否かを確認することによって行うことができる。
現在の走行計画が利用可能である場合(ステップS307でYES)、再算出された走行計画によって運転者負担(追従コスト、合流コストまたは総合追従コスト)を小さくできるか否かを確認する(ステップS308)。すなわち、再算出された走行計画の追従コスト、合流コストまたは総合追従コストの方が、現在の走行計画のそれよりも小さいか否かを確認する。再算出された走行計画によって運転者負担を小さくできない場合は(ステップS308でNO)、現在の走行計画が維持される(ステップS304)。
再算出された走行計画によって運転者負担を小さくできる場合は(ステップS308でYES)、図65のような走行計画選択画面の画像データを生成し(ステップS309)、走行計画選択画面を表示装置224に表示する(ステップS310)。そして、ユーザから走行計画の変更指示があれば(ステップS311でYES)、再算出された走行計画を採用する。すなわち、走行計画保持部215に保持させる走行計画を、現在のものから再算出したものに変更する(ステップS312)。
なお、ユーザから走行計画の変更指示が得られなければ(ステップS311でNO)、現在の走行計画が維持される(ステップS304)。
一方、現在の走行計画が利用可能でない場合には(ステップS307でNO)、再算出された走行計画を自動的に採用して(ステップS313)、図68のような走行計画変更通知画面の画像データを生成し(ステップS314)、走行計画変更通知画面を表示装置224に表示する(ステップS315)。
以上の処理の後は、自車100の走行が終了したかを確認する(ステップS305)。ユーザがその旨を入力するか、走行計画作成装置200が自車100の現在地が目的地であることを確認できれば、自車100の走行が終了したと判断して(ステップS305でYES)、走行計画再算出処理を終了する。自車100の走行が終了していなければ、走行が終了するまで、以上の処理は繰り返し実行される。
また、現在の走行計画が利用可能でない場合としては、予定した先導車の走行計画が変更になった場合や、渋滞などの交通障害により走行計画どおりの走行が不可能になった場合などが考えられる。また、車車間通信などによって、新たに有利な追従条件(第1の優先項目に合う条件)を持つ車両を発見した場合に、その車両に追従するように追従走行計画を変更する処理(再算出およびその表示)が行われるようにしてもよい。
<実施の形態6>
実施の形態6では、本発明に係る走行計画提示装置220をナビゲーション装置に適用する。図70は、実施の形態6に係るナビゲーション装置230の構成を示す図である。ナビゲーション装置230は、図62の走行計画提示装置220に、現在位置取得装置231、経路探索装置232および案内装置233を追加した構成となっている。
ナビゲーション装置230のハードウェア構成は、基本的には図15と同様であり、現在位置取得装置231、経路探索装置232および案内装置233も、走行計画作成装置200の各要素と同様に、プロセッサ51がメモリ52に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
図71は、実施の形態6に係る車両情報配信システムの構成を示す図である。当該車両情報配信システムは、図27と実質的に同じであるが、走行計画提示装置220を含むナビゲーション装置230が、自車100に搭載された構成となっている。ナビゲーション装置230は、自車100に常設されたものでなくてもよく、例えば、自車100に持ち込み可能なポータブル型のナビゲーション装置でもよい。
ナビゲーション装置230の現在位置取得装置231は、GPS(Global Positioning System)等から取得した位置情報などから、当該ナビゲーション装置230の現在地を算出するものである。
経路探索装置232は、ユーザが設定した出発地から目的地までの最適な経路を検索するものである。通常は、現在位置取得装置231が取得した現在地が自動的に出発地として設定されるため、ユーザは目的地を入力するだけで、現在地から目的地までの経路(自車100の走行予定経路)を得ることができる。本実施の形態において、自車情報取得部211が有する走行予定経路取得部211aは、経路探索装置232が算出した自車100の走行予定経路を取得するものとする。
案内装置233は、走行計画作成装置200が作成した走行計画(走行計画保持部215に保存されている走行計画)に従って、自車100を走行させるように運転者に案内情報を提供するものである。案内装置233は、従来のナビゲーション装置のように走行予定経路を案内するだけでなく、自車100が走行計画どおりに追従走行できるように、自車100を先導車の位置へ案内したり、先導車を待つために自車100を待機可能地点(サービスエリア等)へ案内したりする。
例えば、自車100が、手動運転で追従走行区間に進入した場合、案内装置233は、通信装置222を用いた車車間通信により、先導車(他車101)の位置を取得する。そして、自車100と先導車との位置関係から、自車100を先導車に追従可能な位置へと案内する。例えば、表示装置224に表示した地図上に自車100と先導車の位置を表示し、自車100が先導車にある程度接近すると、図72のように、自車100と先導車との位置関係を拡大表示するとよい。その際、自車100が追従走行を開始することが可能なエリア(追従可能エリア)を示すと更に好ましい。
また、図72において、自車100と先導車との位置関係を示す画像は、図15のプロセッサ51に含まれるCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)によって作成された画像である例を示したが、それに代えて、例えば自車100が搭載するカメラが撮影した自車100の前方の映像を用いてもよい。その場合、自車100の前方の映像に、追従可能エリアを示す画像を合成して表示するとよい。また、ヘッドアップディスプレイを用いて、運転者の視野に追従可能エリアを表示させてもよい。なお、ヘッドアップディスプレイとは、運転者が前方を見通せる画面(例えばフロントガラス)に画像を表示することによって、運転者の視野に画像を直接表示させる表示装置である。
なお、本実施の形態においても、走行計画作成装置200は、追従走行制御装置40との通信を行い、追従走行制御装置40に対し、走行計画に従った追従走行指示を送信する。追従走行制御装置40は、追従走行指示に基づいて自車100の走行制御系(不図示)を制御して、自車100を追従すべき先導車に追従させる。また、追従走行制御装置40は、手動運転が計画されている区間(手動運転区間)を自車100が走行しているときは、自車100に定速走行を行わせたり、ユーザに自車100の手動運転を行わせるように促したりする。
また、案内装置233が生成する案内情報は、表示装置224に表示する他、自車100内のスピーカ等から音声メッセージとして出力させてもよい。例えば、手動運転から追従走行へ移行する際や、追従走行の途中で先導車を変更する際に、例えば「次の交差点から、車両X1に合流するために時速40kmで走行し、自動追従可能な位置へ移動してください。」という音声メッセージを出力して、ユーザに自車100を先導車に追従させるように促すとよい。また、図72のような表示と共に、「先導車は時速40kmで走行しています。時速40km以上で走行し、追従可能エリアへ移動して下さい。追従可能エリアに入ると自動的に追従走行が始まります。」という音声メッセージを出力してもよい。
ここで、追従可能エリアは、追従走行制御装置40の性能、典型的には追従可能な車間距離に左右される。追従走行制御装置40の性能は、走行計画作成装置200に予め記憶されていてもよいし、走行計画作成装置200が追従走行制御装置40との通信によって入手してもよい。後者の方法の場合は、天候や明るさ、時刻などの走行環境に応じた追従走行制御装置40の動的な性能を反映させることができ、走行計画作成装置200がより正確な追従可能エリアを表示装置224に表示させることができる。
また、図72の例において、先導車の画像に特別な表示効果を与えてもよい。例えば、現在追従中の先導車の画像を青い実線の枠で囲み、先導車を変更する際に、追従中の先導車の画像の枠を黄色い破線に変更し、新たに追従すべき車両を青い破線の枠で囲み、先導車の乗り換えが完了した後は、新たな先導車を青い実線の枠で囲む、というように、現在および将来の先導車をそれぞれ識別できるように表示するとよい。また、現在の先導車への追従が困難になったにもかかわらず、乗り換える新たな追従車が見つからない場合に、現在の先導車の画像に赤い破線の枠を付加してもよい。
このような特別な表示効果を与えるタイミングは、先導車を変更する前後の一定期間のみにしてもよい。また、そのような特別な表示効果は、カメラが撮影した自車100の前方の映像を表示装置224に表示させる場合や、ヘッドアップディスプレイを用いる場合にも適用してもよい。また、特別な表示効果は、枠の表示に限られず、他の図形や文字などを用いた効果でもよい。
また例えば、待機可能地点で先導車を待つ場合には、「先導車を待ちます。サービスエリアに入ってください。先導車の到着はおよそ10分後です。」という音声メッセージにより自車100を待機可能地点へ誘導し、その後、先導車が接近してきたら「先導車が接近しています。走行を開始して下さい。」という音声メッセージで出発を促すようにするとよい。
ここで、自車100が追従走行区間を走行するときにおけるナビゲーション装置230の案内装置233の動作を説明する。図73は、その動作を示すフローチャートである。なお、自車100が手動運転区間を走行するときの案内装置233の動作は一般的なナビゲーション装置と同じでよいためここでの説明は省略する。
自車100が追従走行区間を走行しているとき、案内装置233は、走行計画に従って、その区間の先導車である他車101に追従走行可能な位置へ自車100を案内する(ステップS401)(既に自車100が走行計画どおりの先導車に追従しているときは、その案内は不要である)。
そして、案内装置233は、走行計画に基づく先導車の変更があるか否かを確認する(ステップS402)。先導車の変更があれば(ステップS402でYES)、案内装置233は、案内の目標とする先導車を変更後の先導車に設定して(ステップS403)、ステップS401に戻る。
また、走行計画に基づく先導車の変更がなければ(ステップS402でNO)、案内装置233は、走行計画の変更(再作成)に伴う先導車の変更があるか否かを確認する(ステップS404)。走行計画の変更に伴う先導車の変更があれば(ステップS404でYES)、案内装置233は、案内の目標とする先導車を変更後の先導車に設定して(ステップS405)、ステップS401に戻る。
また、走行計画に基づく先導車の変更も、走行計画の変更に伴う先導車の変更もなければ(ステップS404でNO)、案内装置233は、自車100が目的地に到着した否かを確認する(ステップS406)。自車100が目的地に到着していれば(ステップS406でYES)、案内装置233は案内処理を終了する。自車100が目的地に到着していなければ(ステップS406でNO)、ステップS401に戻る。
以上の処理により、案内装置233は、案内の目標とする先導車を常に把握することができる。
次に、実施の形態6に係るナビゲーション装置230の走行計画作成装置200が行う走行計画再算出処理について説明する。図74はその走行計画再算出処理のフローチャートである。図74のフローは、図69に示したフローと基本的に同じであるが、走行計画を再算出するための走行計画算出処理(ステップS306)を実行する条件が、図69のフローよりも増加している。
すなわち、図69のフローでは、前回の走行計画の作成から一定時間が経過した場合と、先導車となる他車101の他車情報が変更になった場合に、ステップS306が実行されるが、図74のフローではさらに以下の場合にもステップS306が実行される。それ以外のフローは、図69と同様であるので、ここでの説明は省略する。
図74のフローでは、走行計画再算出指示部217が現在位置取得装置231から自車100の位置(自車位置)を取得して(ステップS351)、自車100の位置またはその変化量(つまり自車100の走行距離)が予め定められた条件を満たしていた場合も(ステップS352でYES)、ステップS306が実行される。ステップS352における「予め定められた条件」とは、例えば、自車100が一定距離だけ進んだ場合、自車100が予め定められた地点(例えば、交差点やサービスエリアなど特定の属性を有する地点や、走行計画を作成する際(図57のステップS201)に定めた分割地点など)を通過した場合、自車100が走行計画とは異なる行動をとった場合などである。
さらに、通信装置222を介した車車間通信により、現在追従している先導車がその車両情報(他車情報)とは異なる行動をとっていることが検出された場合にも(ステップS353でYES)、ステップS306の走行計画算出処理が実行される。他車情報とは異なる行動とは、例えば、走行予定経路とは異なる経路を走行することや、通過予定時刻から大きく外れた時刻に各地点を通過することなどである。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
本発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての態様において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。