JPWO2016147439A1 - 電解槽および電解水生成方法 - Google Patents

電解槽および電解水生成方法 Download PDF

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Abstract

陽極が設けられた陽極室と、陰極が設けられた陰極室と、前記陽極室と前記陰極室の間に位置し電解液を収容する中間室と、透水性を有する多孔質膜により形成され前記陽極室と前記中間室との間を仕切る第1隔膜と、陽イオン交換膜により形成され前記陰極室と前記中間室との間を仕切る第2隔膜と、を備えた3室型の電解槽。

Description

本発明の実施形態は、電解槽および電解水生成方法に関する。
アルカリイオン水、オゾン水、水素水または次亜塩素酸水などを生成する電解水生成装置として、3室型の電解槽(電解セル)を有する電解水生成装置が用いられている。3室型の電解槽は、その内部の電解室が、隔膜によって陽極室、中間室および陰極室と3室に区切られる。隔膜としては、陰極側にはナフィオン(登録商標)等の陽イオン交換膜、陽極側には四級アンモニウム塩や四級ホスホニウム塩等を有する陰イオン交換膜が使用される。陽極室および陰極室には、多孔構造を有する陽極および陰極がそれぞれ配置されている。
このような電解水生成装置では、例えば、中間室に食塩水を流し、左右の陰極室および陽極室に水を流して、中間室の食塩水を陰極および陽極で電解することで、陽極室で発生した塩素ガスから次亜塩素酸水を生成するとともに、陰極室で水酸化ナトリウム水を生成する。生成した次亜塩素酸水は殺菌消毒水として、水酸化ナトリウム水は洗浄水として活用される。
このような3室型電解槽では陰イオン交換膜は塩素や次亜塩素酸により劣化しやすい。そのため、パンチング等で作製した多孔構造の陽極と陰イオン交換膜との間に、オーバーラップや切り込みを入れた不織布を挿入して塩素による陰イオン交換膜の劣化を低減させる技術が提案されている。また、電極の多数の孔を塞がないように多孔質膜を配置する技術が知られている。
特許第4090665号公報 特許第3353964号公報
しかしながら、上述した構成の電解水生成装置では、非常に長期間の運転により、不織布の劣化およびそれに伴う隔膜の劣化が生じる。
本発明が解決しようとする課題は、隔膜の劣化を抑制し長寿命の電解槽を提供することにある。
本実施形態によれば、3室型の電解槽は、陽極が設けられた陽極室と、陰極が設けられた陰極室と、前記陽極室と前記陰極室の間に位置し電解液を収容する中間室と、多孔質膜により形成され前記陽極室と前記中間室との間を仕切る第1隔膜と、陽イオン交換膜により形成され前記陰極室と前記中間室との間を仕切る第2隔膜と、を備えている。
図1は、第1の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置の構成を示すブロック図である。 図2は、第1の実施形態に係る電解水生成装置の電極ユニットを示す分解斜視図である。 図3は、多孔質膜に様々な水圧差を印加したときに多孔質膜を透過する透水量を実測した結果を示す表である。 図4は、横軸に印加水圧差を、縦軸に1cm2あたり1分あたりに換算した透水量を示すグラフである。 図5は、実施例と比較例における第1隔膜と第2隔膜の種類を示す表である。 図6は、第1隔膜として多孔質膜を用い、陽極室と中間室の水圧を様々に変えて陽極室で生成する電解水の水質を実測した結果を示す図である。 図7は、横軸に陽極室と中間室の水圧差(中間室-陽極室)を、縦軸に有効塩素濃度を示すグラフである。 図8は、横軸に陽極室と中間室の水圧差(中間室-陽極室)を、縦軸にNaイオン濃度を示すグラフである。 図9は、縦軸に指標を、横軸に水圧差(中間室−陽極室)を示すグラフである。 図10は、有効塩素濃度、電解槽の寿命、および中間室へのスケール堆積量の比較結果を示す図である。 図11は、第2の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置の構成を示すブロック図である。 図12は、第3の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置の構成を示すブロック図である。
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置の構成を示すブロック図である。
始めに、電解水生成装置全体の構成を説明する。図1に示すように、電解水生成装置10は、いわゆる3室型の電解槽11を備えている。電解槽11は、例えば偏平な矩形箱状に形成され、その内部は、中間室19と、中間室19の両側に位置する陽極室16および陰極室18との3室に仕切られている。電解槽11は、陽極室16と中間室19との間を仕切る第1隔膜24aと、陰極室18と中間室19との間を仕切る第2隔膜24bと、を備えている。陽極室16内に陽極20が設けられ、第1隔膜24aに対向している。陰極室18内に陰極22が設けられ、第2隔膜24bに対向している。陽極20および陰極22は、中間室19を挟んで、互いに対向している。電解槽11は、更に、陽極室16に被電解水を供給する第1流入口16aと、陽極室16から電解水を排水する第1排水口16bと、陰極室18に被電解水を供給する第2流入口18aと、陰極室18から電解水を排水する第2排水口18bと、中間室19に電解液を供給する第3流入口19aと、中間室19から電解液を排水する第3排水口19bと、を備えている。
電解水生成装置10は、電解槽11の中間室19に電解液、例えば、飽和食塩水を供給する電解液供給部50と、陽極室16および陰極室18に被電解水、例えば、水道水を供給する原水供給部40と、陽極20および陰極22に電圧を印加する電源ユニット30と、を備えている。なお、被電解水としては水道水、地下水等が使用できるが、電解中に主として陰極室18に堆積する炭酸カルシウム等のスケールを防止する観点からは、イオン交換樹脂等から構成される軟水器を通して、アルカリ成分を低減した軟水を用いることが好ましい。
電解液供給部50は、電解液を生成する塩水タンク53と、塩水タンク53から中間室19の第3流入口19aに電解液を導く供給配管51と、供給配管51中に設けられた送液ポンプ54と、中間室19内を流れた電解液を中間室19の第3排水口19bから塩水タンク53に送る排水配管52と、排水配管52中に設けられた圧力調整バルブ55と、を備えている。なお、電解液に溶解している電解質は、例えば塩化ナトリウム(食塩)が用いられるが、特に限定されるものではなく、塩化カリウム等の塩素を含み水に可溶な塩あれば使用することが可能である。また、電解液の濃度は、特に制限されるものではないが、電解の安定性を考慮すると濃度が高い方が好ましく、濃度管理の観点から飽和電解液であることが好ましい。
なお、圧力調整バルブ55は、第3排水口19bに接続され、電解液に圧力損失を発生させる圧損機構の一例である。圧損機構は、中間室19に収容された電解液を陽極室16に収容された被電解水よりも陽圧に維持できさえすれば圧力調整バルブ55に限定されるものではなく、排水配管52の形状に起因した流れ抵抗や、塩水タンク53を高所に配置することによって生じる水頭圧、などであってもよい。ただし、電解液の水圧の高さを調整可能とする観点から、圧損機構は圧力調整バルブ55を有していることが好ましい。
原水供給部40は、水を供給する図示しない給水源と、給水源から陽極室16の第1流入口16aおよび陰極室18の第2流入口18aに水を導く給水配管41と、陽極室16を流れた電解水を陽極室16の第1排水口16bから排水する第1排水配管42と、陰極室18を流れた電解水を陰極室18の第2排水口18bから排水する第2排水配管43と、第2排水配管43中に設けられた気液分離器44と、を備えている。
上記のように構成された電解水生成装置により、実際に飽和食塩水を電解して陽極水と陰極水を生成する動作について説明する。図1に示すように、送液ポンプ54を作動させ、電解槽11の中間室19に飽和食塩水を供給するとともに、陽極室16および陰極室18に被電解水を給水する。同時に、電源ユニット30によって、陽極20へ正電圧が印加され、陰極22へ負電圧が印加する。
中間室19へ流入した電解液中において電離しているナトリウムイオンは、陰極22に引き寄せられ、第2隔膜24bを通過して、陰極室18へ流入する。そして、陰極室18において、陰極22で水が電気分解されて水素ガスを生成する際に発生する水酸イオンと反応し水酸化ナトリウムとなり、水に溶解して水酸化ナトリウム水溶液が生成される。このようにして生成された水酸化ナトリウム水溶液および水素ガスは、第2排水口18bを通って第2排水配管43に流出し、気液分離器44により、水酸化ナトリウム水溶液と水素ガスとに分離される。分離されたアルカリ性の陰極水(水酸化ナトリウム水溶液)は、第2排水配管43を通って排出される。
また、中間室19内の電解液中において電離している塩素イオンは、陽極20に引き寄せられ、第1隔膜24aを通過して、陽極室16へ流入する。そして、陽極室16において、陽極20で塩素イオンが酸化され塩素ガスが発生する。その後、塩素ガスは陽極室16内で水と反応して次亜塩素酸と塩酸を生じる。このようにして生成された、酸性で殺菌作用を有する陽極水(次亜塩素酸水および塩酸)は、第1排水口16bを通って第1排水配管42に流出する。
次に電解槽11内に設けられた電極ユニット12について詳細に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る電解水生成装置の電極ユニットを示す分解斜視図である。
電極ユニット12は、前述した陽極20、陰極22、第1隔膜24a、および第2隔膜24bを備えている。陽極20は、例えば、矩形状の金属板からなる基材21に多数の貫通孔13を形成した多孔構造を有している。基材21は、第1表面21aおよび、第1表面21aとほぼ平行に対向する第2表面21bを有している。第1表面21aと第2表面21bとの間隔、すなわち、電極の板厚はT1に形成されている。第1表面21aは第1隔膜24aに対向し、第2表面21bは陽極室16に対向する。陰極22は、陽極20と同様に構成されている。すなわち、陰極22は、例えば、矩形状の金属板からなる基材23に多数の貫通孔15を形成した多孔構造を有している。基材23は、第1表面23aおよび、第1表面23aとほぼ平行に対向する第2表面23bを有している。第1表面23aは第2隔膜24bに対向し、第2表面23bは陰極室18に対向する。
貫通孔13は、陽極20の全面に亘って多数形成されている。各貫通孔13は、第1表面21aおよび第2表面21bに開口している。貫通孔13は、例えば第1表面21a側の口径と第2表面21b側の口径とが同じとなるストレート孔が形成される。ただし、貫通孔13は、ストレート孔に限定されるものではなく、第1表面21a側の開口径が第2表面21b側の開口径よりも大きくなるように、テーパー状の壁面、あるいは湾曲した壁面により形成してもよい。貫通孔13は、矩形状、円形、楕円形等、種々の形状を用いることができる。また、貫通孔13は、規則的に限らず、ランダムに並んで形成してもよい。なお、貫通孔15は、貫通孔13と同様に形成される。
基材21および基材23としては、チタン、クロム、アルミニウムやその合金等の弁金属、導電性金属を用いることができる。電解反応の効率向上の観点から、陽極20および陰極22の表面に電解触媒(触媒層)を備えることが好ましい。陽極としての機能を向上させるため、陽極20の電解触媒は、白金等の貴金属触媒や酸化イリジウム等の酸化物触媒を用いることが好ましい。陰極としての機能を向上させるため、陰極22の電解触媒は、白金を用いることが好ましい。ただし、陰極22は、電解触媒を備えずに、チタンやステンレス等の耐食性を有する金属を表面に備えていてもよい。
なお、電解触媒は、単位面積当たりの量が陽極20の両面で異なるように形成してもよい。これにより副反応等を抑制することができる。あるいは、陽極20の第1隔膜24aと反対側の表面(第2表面21b)を電気絶縁性膜で覆うことにより、副反応を低減することが可能である。陰極22についても同様である。すなわち、電解触媒は、単位面積当たりの量が陰極22の両面で異なっていてもよい。また、陰極22の第2隔膜24bと反対側の表面(第2表面23b)を電気絶縁性膜で覆っていてもよい。
中間室19と陰極室18との間を仕切る第2隔膜24bは、陰極22の第1表面23aに対向および隣接している。第2隔膜24bは、陽イオン交換膜により形成されている。陽イオン交換膜としては、例えば、NAFION(イー アイ デュポン社:登録商標)112、115、117、フレミオン(旭硝子株式会社:登録商標)、ACIPLEX(旭化成株式会社:登録商標)、ゴアセレクト(ダブリュー.エル.ゴア アンド アソシエーツ社:登録商標)、等を用いることができる。
中間室19と陽極室16との間を仕切る第1隔膜24aは、陽極20の第1表面21aに対向および隣接している。第1隔膜24aは、透水性を有する連続的な多孔質膜24により形成されている。多孔質膜24としては、化学的に安定な無機酸化物を含有する連続的な無機酸化物多孔質膜を用いることができる。無機酸化物としては種々のものを用いることができる。例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ニッケルを用いることができる。特に、多孔質膜24は、酸化チタン、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの無機材料を含む材料で形成されることが好ましい。その他多孔質膜としては、無機酸化物の他に、塩素系やフッ素系のハロゲン化高分子を有する多孔質ポリマー等を用いることもできる。
多孔質膜24の孔径は、陽極20側の開口径と陰極22側の開口径とが異なっていてもよい。孔の陰極22側の開口径を陽極20側の開口径より大きくすることにより、イオンの移動をより容易にすることができる。更に、多孔質膜24の孔は、面内および立体的に不規則な孔を有することができる。多孔質膜24は、孔径の異なる複数の多孔質膜の積層膜を用いてもよい。この場合、陰極22側に位置する多孔質膜の孔径を、陽極20側に位置する多孔質膜の孔径よりも大きくすることにより、イオンの移動をより容易にすることができる。
本実施形態において、多孔質膜24は、孔径が10〜200nmであり、例えば、膜両面に20KPaの差圧を印加した際の単位面積当たりの透水量が0.0024〜0.6mL/min/cm2となる透水性を有している。また、多孔質膜24を挟んだ陽極室16の水圧と中間室19の水圧の差圧は、±20kPa以内になるよう調整されている。本実施形態では、透水性のある多孔質膜24を特定の水圧差で用いることで、イオン交換膜を用いる場合よりも特性が良好で、かつ余分な電解質を含まない電解水を生成できることを見出した。
図3は、この多孔質膜24の5cm×5cm面積に様々な水圧差を印加したときに多孔質膜24を透過する透水量を実測した結果を示す表である。例えば、5cm×5cmの多孔質膜24に0.033MPaの水圧を20分間にわたり掛けたときに透水した透水量は86mLであったことなどを示している。また、図4は、横軸に印加水圧差を、縦軸に1cm2当たり1分あたりに換算した透水量を示すグラフである。
図3および図4に示すように、多孔質膜24の透水量は、単純に圧力に比例して増加し、透水率は6mL/分/cm2/MPaである。これは、圧力差20kPa印加時の透水量にすると、0.12mL/分/cm2に相当する。
次に、実施例1、比較例1乃至3による水質評価について説明する。図5は、実施例と比較例における第1隔膜と第2隔膜の種類を示す表である。実施例1は、第1の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置である。比較例1乃至3は、第1隔膜24aまたは第2隔膜24bの種類において、実施例1と相違している。
<実施例1>
図1に示した電解水生成装置10において、第1隔膜24aとして多孔質膜(ユアサメンブレンシステム製 Y-9211T)を用い、第2隔膜24bとして陽イオン交換膜(デュポン製 ナフィオンN117(登録商標))を用いて、中間室19に飽和食塩水を循環させながら、陽極20および陰極22に9Aの電流を流して電解を行った。このときの陽極水の水質を測定し、その測定結果を図6にまとめた。
<比較例1>
図1に示した電解水生成装置10において、第1隔膜24aとして陰イオン交換膜(株式会社アトムス製 AHA)を用いた以外は実施例1と同じ電解槽を用いて、実施例1と同様に電解を行った。
<比較例2>
図1に示した電解水生成装置10において、第2隔膜24bとして多孔質膜(ユアサメンブレンシステム製 Y-9211T)を用いた以外は実施例1と同じ電解槽を用いて、実施例1と同様に電解を行った。
<比較例3>
図1に示した電解水生成装置10において、第1隔膜24aとして陰イオン交換膜(株式会社アトムス製 AHA)、第2隔膜24bとして多孔質膜(ユアサメンブレンシステム製 Y-9211T)、を用いた以外は実施例1と同じ電解槽を用いて、実施例1と同様に電解を行った。
<評価結果>
図6は、実施例1の電解水生成装置10において、陽極室16と中間室19の水圧を様々に変えて陽極室16で生成する電解水の水質を実測した結果を示す図である。なお、陽極室16内の水圧は、例えば給水配管41に調整弁を設けて第1流入口16aから供給される被電解水の水圧を変化させることで、調整することができる。また、中間室19内の水圧は、送液ポンプ54の出力制御および圧力調整バルブ55による流量制御により調整することができる。通電を行うと陽極20では多孔質膜24を通過した塩素イオンが電気化学的に酸化されて塩素ガスを生成し、次いで生成した塩素ガスが水と反応して次亜塩素酸を生成、それが原水に溶解して次亜塩素酸水として排出される。水質としては、生成効率の指標となる次亜塩素酸の有効塩素濃度と、透水性のある多孔質膜で懸念される電解水中の塩分濃度(具体的にはNaイオン濃度)を測定した。
図7は、横軸に陽極室と中間室の水圧差を、縦軸に有効塩素濃度を示すグラフである。図8は、横軸に陽極室と中間室の水圧差を、縦軸にNaイオン濃度を示すグラフである。図7および図8中の点は、図6に示した実施例1における測定結果に基づいてプロットしたものである。なお、水圧差は、中間室19の入口(第3流入口19a)および出口(第3排水口19b)の水圧平均値から、陽極室16の入口(第1流入口16a)および出口(第1排水口16b)の水圧平均値を差し引いたものである。
比較例1の構成における有効塩素濃度は、50ppm程度であった。図7に示すように、実施例1の構成においては、中間室19の水圧を陽極室16の水圧に対して−6kPaよりも高く保持することで、比較例1の構成よりも高い有効塩素濃度を得ることができることが確認できた。これは、比較例1の構成において第1隔膜24a(陰イオン交換膜)を透過する塩素イオン量よりも、実施例1の構成において多孔質膜24と水圧条件とをバランスさせた場合に第1隔膜24aを透過する塩素イオン量の方が多くなり、結果、陽極20近傍の塩素イオン濃度が高まることで、競合反応である酸素生成反応が抑制されて塩素生成反応が増加したものと考察される。すなわち、透水性のある多孔質膜24を第1隔膜24aとして用いることにより、同じ通電電気量でより多くの有効塩素を生成することが可能となり、塩素の生成効率が比較例1の構成より改善したことが分かる。
なお、多孔質膜24はイオン選択性がないため、塩素イオンのみならず余分なNaイオンも透過することが可能であり、陽極室16で生成する電解水に塩分が混入する懸念がある。図8に示すように、実施例1において、中間室19の水圧が陽極室16の水圧に対して+6kPaよりも低ければ、Naイオン濃度が150ppmを下回ることが確認された。塩分の許容量として水道水基準を参照すると、300ppmとされており、150ppm以下のNa濃度であれば水道水レベルであるといえる。
陽極室16中での塩素生成効率と塩分混入量は二律相反する関係にある。すなわち、陰イオン交換膜のようなイオン選択透過性を持たない多孔質膜24においては、中間室19からの塩素イオン透過量が多ければ生成効率は向上するが、同時にNaイオンも透過するため塩分混入量が増大してしまう関係にあった。ところが、この関係は完全に相反するものではなく、上述したように限られた水圧条件範囲では塩素生成効率向上と塩分混入量低減が両立する範囲があることを見出した。
図6に示す表の最下欄に指標を設定している。これは、二律相反する塩素生成効率と塩分混入量の総合的な良し悪しを示したもので、(1)有効塩素濃度と、(2)300ppmよりNaイオン濃度を差し引いた値と、を掛けあわせたものである。すなわち、この指標の値が高いほど塩素生成効率が高く、かつ、塩分混入量が低いことを示している。
図9は、縦軸に上記指標を、横軸に水圧差(中間室−陽極室)を示すグラフである。水圧差を零とすることで指標が極大値となることを見出した。すなわち、第1隔膜24aとして透水性のある多孔質膜24を用いて中間室19と陽極室16との水圧差を零とすることで、従来構成では達成できない優れた電解装置を実現することができる。
実用的には、多孔質膜24として孔径10〜200nm、透水率0.6〜12mL/分/cm2/MPa(1cm当たり20kPa水圧差において透水量0.012〜0.24mL/分)を用い、中間室と陽極室の水圧差として±6kPaの範囲に設定することで実施形態の機能を発揮することができる。すなわち、電解中の多孔質膜24両面に印加される水圧の差圧は、±6kPa以内であることが好ましい。なお、図7に示すように水圧差(中間室19−陽極室16)が大きいほど有効塩素濃度は高くなるため、電解中の多孔質膜24両面に印加される水圧は、中間室19側が陽圧であることがより好ましい。
次に、実施例1および比較例1乃至3を同一条件で連続運転した場合の、有効塩素濃度、電解槽11の寿命、中間室19へのスケール堆積量の少なさ、についての比較を行った。図10は、有効塩素濃度、電解槽の寿命、および中間室へのスケール堆積量の少なさの比較結果を示す図である。なお、比較例1を基準とし、比較例1と同水準の場合には△、比較例1より劣っている場合には×、比較例1より優れている場合には○とした。
(1)有効塩素濃度
有効塩素濃度の高さにおいて、実施例1は比較例2より高濃度であり、比較例2は比較例1よりも高濃度であり、比較例3は比較例1と同程度である。第1隔膜24aとして多孔質膜24を用いた場合、有効塩素濃度が第1隔膜24aとして陰イオン交換膜を用いた場合より改善されることは上述の通りである。実施例1と比較例2との比較結果から、有効塩素濃度は、さらに第2隔膜24bの影響も受けているものと考えられる。つまり、比較例2のように第2隔膜24bとして多孔質膜を用いると陰極室18へNaイオンとともに塩素イオンも流出可能であるが、実施例1のように第2隔膜24bとして陽イオン交換膜を用いると、塩素イオンは陽イオン交換膜を通過できないため、Naイオンとプロトン(水素イオン)のみが陽イオン交換膜を通過する。このため、中間室19の塩素濃度が比較例2に比べ実施例1では高濃度となり、結果として陽極室16へ移動する塩素イオン濃度が高くなり、陽極20で酸化される塩素イオン量が増加して有効塩素濃度が増大したものと推察される。
(2)電解槽の寿命
電解槽11の寿命において、実施例1と比較例2とは同水準であり、比較例1は実施例1より短寿命であり、比較例1と3とは同水準であった。電解槽11の寿命は、塩素や次亜塩素酸による陰イオン交換膜の劣化に起因するものである。このため、第1隔膜24aとして多孔質膜を用いた実施例1および比較例2において、第1隔膜24aとして陰イオン交換膜を用いた比較例1および3に比べて、電解槽11が明確に長寿命化していることが確認された。
(3)中間室へのスケール堆積量
中間室19へのスケール堆積量において、実施例1と比較例1とは同水準であり、比較例2と比較例3とは同水準であった。なお、実施例1および比較例1における中間室へのスケール堆積量は比較例2および3におけるスケール堆積量より少なかった。これは、陽イオン交換膜を第2隔膜24bとして使用した実施例1および比較例1では、陰極室18で生成した水酸化ナトリウム水溶液や、陰極室18の被電解水に含まれるカルシウム等の中間室19への流入が陽イオン交換膜で妨げられるため、中間室へのスケール堆積が確認されなかったものと考えられる。それに対し、多孔質膜を第2隔膜24bとして使用した比較例2および比較例3では、多孔質膜を通じて、陰極室18で生成した水酸化ナトリウム水溶液や、陰極室18の被電解水に含まれるカルシウム等が中間室19へ流入することが可能である。このため、中間室19の塩水液性がアルカリ性になり、その結果として、スケールが堆積したものと推察している。
次に、第2および第3の実施形態について説明する。なお、以下に説明する他の実施形態において、前述した第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。なお、第2および第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置の構成を示すブロック図である。第2の実施形態は、第3排水口19bに接続された圧力調整バルブを備えていない点で、第1の実施形態と相違している。電解水生成装置10は、圧力調整バルブを備えていなくても、送液ポンプ54の送液量の調整で中間室19の塩水圧を調整することが可能である。第2の実施形態においては、圧力調整バルブを省略することにより、装置構成の簡略化を図ることができる。
なお、電解中の多孔質膜24両面に印加される水圧の差圧には許容範囲があるため電解水の生成には支障はないが、最適運転を継続するためには圧力調整バルブのような圧力調整機構を装着することが好ましい。
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態に係る電解槽を備えた電解水生成装置の構成を示すブロック図である。第3の実施形態は、原水供給部40および電解液供給部50を備えておらず、電解中に陽極室16内の被電解水および陰極室18内の被電解水が静水状態である点で相違している。なお、ここでいう静水状態とは、陽極室16および陰極室18において、第1隔膜24aおよび第2隔膜24bを通さない水の出入りがない状態のことである。また、図12の説明において、下方とは電解中に被電解水の水底が位置する側であり、上方とは電解中に被電解水の水面が位置する側である。
電解槽11は、有底の第1電解槽61と、有底の第2電解槽62と、を備えている。第1電解槽61は、中間室19、陰極室18、第1隔膜24a、および第2隔膜24bを備えている。有底形状の中間室19および陰極室18は、陽イオン交換膜により形成された第2隔膜24bを介して結合され、それぞれの上部には電解液又は被電解水の注入と電解水の排水を行うための注排水口が備えられている。また、中間室19の外周面には、多孔質膜24からなる第1隔膜24aが装着されている。第1電解槽61は、第2電解槽62の内部に着脱可能に配置される。第2電解槽62は、第1電解槽61によって占有されていない領域が陽極室16として機能し、その上部には注排水口が備えられている。
中間室19中において、例えば、電解中に第1隔膜24aおよび第2隔膜24bが液面63の下方に位置するように電解液が注がれている。陰極室18において、例えば、電解中に第2隔膜24bおよび陰極22が液面64の下方に位置するように被電解水が注がれている。陽極室16において、例えば、電解中に第1隔膜24aおよび陽極20が液面65の下方に位置するように被電解水が注がれている。電解中の液面64は、例えば液面63より高さL1だけ下方に位置していることが好ましい。電解中の液面65は例えば液面63より高さL2だけ下方に位置していることが好ましい。なお、高さL1とL2とは、同等であってもよい。L1がゼロ、すなわち液面63と液面64が同レベルであってもよい。このように、電解槽11は、液面63乃至65の高さの差によって、第1隔膜24a両面に印加される水圧の差圧、および第2隔膜24b両面に印加される水圧の差圧を制御することができる。すなわち、多孔質膜24に中間室19側から印加される水圧を陽極室16側から印加される水圧よりも陽圧とすることができる。
第3の実施形態に係る電解槽11を備えた電解水生成装置10は、中間室19および陰極室18の容積と中間室19へ注入する電解液濃度を適正化することで、中間室19の電解液および陰極室18の被電解水を交換することなく複数回の電解を行うことが可能である。すなわち、第3の実施形態によれば、取扱いが簡便な電解水生成装置10を提供することができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、隔膜の劣化を抑制し長寿命の電解槽を提供することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

Claims (10)

  1. 陽極が設けられた陽極室と、
    陰極が設けられた陰極室と、
    前記陽極室と前記陰極室の間に位置し電解液を収容する中間室と、
    透水性を有する多孔質膜により形成され前記陽極室と前記中間室との間を仕切る第1隔膜と、
    陽イオン交換膜により形成され前記陰極室と前記中間室との間を仕切る第2隔膜と、 を備えた3室型の電解槽。
  2. 前記陽極室に被電解水を供給する第1流入口と、
    前記陽極室から電解水を排水する第1排水口と、
    前記陰極室に被電解水を供給する第2流入口と、
    前記陰極室から電解水を排水する第2排水口と、
    前記中間室へ前記電解液を供給する第3流入口と、
    前記中間室から前記電解液を排水する第3排水口と、
    前記第3排水口に接続され、前記電解液に圧力損失を発生させる圧損機構と、を備えた請求項1に記載の電解槽。
  3. 前記圧損機構は、圧力調整バルブを有する請求項2に記載の電解槽。
  4. 電解中に前記陽極室内の被電解水および前記陰極室内の被電解水が静水状態となる、請求項1に記載の電解槽。
  5. 前記陽極室および前記陰極室は、被電解水の供給および電解水の排水を行う注排水口を上部に備えている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電解槽。
  6. 前記多孔質膜は、前記多孔質膜の膜両面に20kPaの差圧を印加した際の透水量が、0.0024〜0.6mL/min/cm2となる透水性を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電解槽。
  7. 電解中の前記多孔質膜両面に印加される水圧の差圧は、±6kPa以内である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電解槽。
  8. 電解中の前記多孔質膜両面に印加される水圧は、前記中間室側が陽圧である、請求項7に記載の電解槽。
  9. 前記多孔質膜は、酸化チタン、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムの中から選ばれた少なくとも1つの無機酸化物を含む材料で形成される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電解槽。
  10. 陽極が設けられた陽極室と、陰極が設けられた陰極室と、前記陽極室と前記陰極室の間に位置し電解液を収容する中間室と、透水性を有する多孔質膜からなり前記陽極室と前記中間室との間を仕切る第1隔膜と、陽イオン交換膜からなり前記陰極室と前記中間室との間を仕切る第2隔膜と、を備えた3室型の電解槽を用いて電解水を生成する電解水生成方法であって、
    前記中間室に塩素イオンを含む電解液を供給し、
    前記陽極室および前記陰極室に被電解水を供給し、
    前記多孔質膜に前記中間室側から印加される水圧を前記陽極室側から印加される水圧よりも陽圧とした状態で、前記陽極および前記陰極に電圧を印加して電解する電解水生成方法。
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