JPWO2016143701A1 - 遷移金属多硫化物を含有する成形体、電池用電極、及びその製造方法 - Google Patents

遷移金属多硫化物を含有する成形体、電池用電極、及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、全固体電池用電極として高い電極特性(特に電極活物質充填比率、容量、エネルギー密度、サイクル性に優れる)を有する成形体を提供することを目的とするものであって、本発明では、粒径1μm以下の遷移金属多硫化物の微粒子を10体積分率以上含有する金属多硫化物粉末を原料として用い、5℃〜35℃以下の温度で加圧することで焼結させることにより、空隙の直径(細孔径)が5μm以下、または平均空隙断面積が20μm2以下の加圧成形体が得られ、該加圧成形体を全固体電池用電極として用いることにより高い電極特性が得られる。

Description

本発明は、遷移金属多硫化物を含有する成形体、電池用電極、及びその製造方法に関する。
本発明は、遷移金属多硫化物若しくはリチウム遷移金属硫化物の成形体及び該硫化物から構成される電極、及びその製造方法、並びに該成形体を用いた電池に関する。
無機化合物の粉末成形体は、様々な工業製品の要素となっており、その目的に合わせて、様々な機能性の粉末を原料として作製される。
機能性粉体を用いるデバイスとして、例えば、リチウムイオン電池や全固体電池などが挙げられる。特に、近年の携帯電子機器・ハイブリッド車等の高性能化により、電池の高容量化・高安全化が求められており、無機固体電解質を用いた全固体電池が、可燃性の有機溶媒を使用する必要が無い安全性の高い電池として提案されている。
全固体電池は、正極活物質を含む正電極層と、負極活物質を含む負電極層と、正電極層と負電極層の間に位置する固体電解質層とを備えている。
現行のリチウム二次電池の正電極層には、酸化物系活物質が用いられているが、比較的高容量と言われるニッケル酸リチウム系材料でも190〜220mAh/g程度に過ぎない。
これに対し、金属硫化物系活物質は、比較的高い理論容量を有するものであり、リチウム二次電池用電極材料として知られる硫化物としては、TiS2、TiS3、NbS3などが知られている。
特に近年、チタンやニオブ等の遷移金属に対する硫黄の元素比率が高い遷移金属硫化物(以下、「遷移金属多硫化物」とする)である、非晶質性のチタンの多硫化物やニオブの多硫化物や、低結晶性のリチウムチタン多硫化物、リチウムニオブ多硫化物及びそれらの固溶体などが高容量電極材料であることが報告されており、本発明者らも、リチウムチタン硫化物、リチウムニオブ硫化物、あるいはリチウムチタンニオブ硫化物を、リチウム二次電池の正極活物質とする場合には、高い充放電容量とエネルギー密度を有する優れた材料となることを報告している(特許文献1、非特許文献1)。
こうした機能性デバイスとしての無機化合物の粉末成形体においては、粉体同士の接触や化学結合の制御は極めて重要であり、そのため、その粉体成形法は極めて重要な技術である。
例えば、前述の正電極層は、正電極活物質と、固体電解質と、必要に応じて導電性カーボン等の導電性助剤との混合物を用いて成形されるが、活物質を高効率で利用するためには活物質粒子への電子及びイオン伝導経路の形成と、電極活物質と固体電解質の粒子界面が良好に接触している必要があり、電極‐電解質の界面の接触面積が広い方が好ましい。
しかしながら、一般的な材料においては、常温のプレス成形で粒子間の接合はおきず、また、プレスの圧力が高い場合には、粒子が微細化して充填率が向上することもあるが、粒子間に割れ(クラック)が入ることによって、導電経路が阻害され性能が低下する場合がある。
そこで、通常は、正極層に用いる固体電解質として、結晶成分を有する固体電解質、ガラス状の固体電解質、又はこれらの混合物を用いて、加圧・加熱して成形することで、電極活物質と固体電解質の粒子間に結合を生じさせて、その界面を強固にしている。
また、近年では、硫化物系固体電解質が、酸化物系固体電解質と比較して高い成形性を有することが報告されており、硫化物系固体電解質の成形性を利用してプレス成形により、高密度な全固体電池用電極成形体も多く報告されている(特許文献2、3等)。
本発明者らは、硫化物系固体電解質が、室温でのプレスによって、高密度化することを報告している(非特許文献2)。この固定電解質は、リチウムイオン(Li+)とチオリン酸イオン(PS4 3-)から構成され、これらのイオンは室温でのプレスによって、粒子界面で拡散し、その結果、接触した粒子間に存在する界面や空隙は減少していると考えられ、この高密度化を常温加圧シンタリング(常温加圧焼結)と名付けた。
上記特許文献1及び非特許文献1においては、Li2TiS3またはLi3NbS4などのリチウムを含有する遷移金属多硫化物と、カーボンブラックと、該硫化物系固体電解質(Li2S−P25−LiI)を混練した後、常温加圧焼結法により全固体電池が得られたことが報告されている。
国際公開2014/148432号 特開2014−029777号公報 特開2008−270137号公報
A.Sakuda et al, Sci. Rep. 4-4883(2014) 1-5 A.Sakuda et al, Sci. Rep. 3-2261(2013) 1-5.
全固体電池において、活物質を高効率で利用するためには、活物質粒子への電子及びイオン伝導経路の形成と、電極活物質と固体電解質の粒子界面が良好に接触している必要があり、そのため、前記の硫化物系固体電解質の常温加圧焼結による高密度化が用いられており、上記特許文献1及び非特許文献1においては、遷移金属多硫化物、カーボンブラック、及び硫化物系固体電解質(Li2S−P25−LiI)を62:7:31の重量比の電極において可逆な充放電が可能であることが報告されている。
しかしながら、電池の高容量化のためには、電極活物質として用いられる金属多硫化物及びリチウム金属多硫化物の混合比を向上する必要がある。特に、体積当たりの容量を向上するためには、電極活物質の体積比を向上する必要がある。
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、全固体電池用電極として高い電極特性(特に電極活物質充填比率、容量、エネルギー密度、サイクル性に優れる)を有する成形体を提供することにある。さらに、本発明のもう一つの目的は、室温付近の加圧成形によって成形可能な新規な機能性成形体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、前記全固体電池の正電極活物質として用いられている、遷移金属に対する硫黄の含有量の多い金属多硫化物粒子が、室温付近での加圧成形により、高導電性、均質な空隙、高密度、クラックの少ない成形体を形成できることを見出した。
すなわち、金属多硫化物微粒子を室温付近で加圧成形することで、金属多硫化物微粒子同士が加圧焼結するという現象(常温加圧焼結現象)を用いて成形体を製造できることを見出したものである。
原料として用いる金属多硫化物微粒子の粒径を調整することで、空隙のサイズや均質性を制御することが可能となり、より機能性の高い粉末成形体を得ることができる。
また、この成形体を、例えば全固体電池の電極層とする場合には、室温加圧成形によって、電極活物質として機能する金属多硫化物同士の接合や、電極活物質と固体電解質粒子などの固体−固体界面の接合性を向上することが可能で、高い充放電容量及び充放電寿命(サイクル特性)に優れた電池を供給することができる。さらに、本手法及び現象を用いることで、電極の導電性が向上するため、電池容量に寄与しない導電剤の添加が必ずしも必要ではなくなるので、電極として機能する金属多硫化物の体積分率を向上することができる。
また、本発明者らは、原料として用いる金属多硫化物粒子の粒子径を制御することで、得られる成形体の空隙のサイズ及び均質性が制御できることも見出した。これによって、電池用電極において、電極活物質の分布を均質化することが可能となり、かつ、充放電時に生じる電極活物質粒子の体積変化に伴い生じる機械的応力の緩和が可能になる。
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]遷移金属及び硫黄を構成元素として含み、硫黄と遷移金属の元素比(硫黄/遷移金属)が3以上6以下の遷移金属多硫化物を含有し、空隙(マクロ孔)を内包し、かつその空隙の直径(細孔径)が5μm以下、又は、平均空隙断面積が20μm2以下であることを特徴とする成形体。
[2]更に固体電解質を構成要素として含み、前記遷移金属多硫化物の含有量が、70重量%以上であることを特徴とする[1]に記載の成形体。
[3]粒径1μm以下の常温加圧焼結が可能な遷移金属多硫化物粒子を含有する粉末を用いて、成形されたことを特徴とする[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]前記遷移金属多硫化物がさらにアルカリ金属を含有し、アルカリ金属と硫黄の含有比(アルカリ金属/硫黄)が1以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の成形体。
[5]前記遷移金属多硫化物が、単独で室温500MPaで加圧成形した際に充填率80%以上になる物質であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の成形体。
[6]前記遷移金属が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、及びモリブデンから選ばれる1つ以上であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の成形体。
[7]空隙の直径が2μm以下又は平均空隙断面積が3μm2以下であり、かつ空隙率が20%以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の成形体。
[8]導電性炭素の混合比率が5重量%以下であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載の成形体。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載の成形体からなることを特徴とする電池用電極。
[10][9]に記載の電池用電極を有するリチウム2次電池。
[11]粒径1μm以下の遷移金属多硫化物の微粒子を10体積分率以上含有する金属多硫化物粉末を原料として用い、5℃〜35℃以下の温度で加圧することで焼結させることを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
[12]前記遷移金属多硫化物の微粒子が、メカニカルミリング法で合成、粉砕及び/又は造粒された微粒子であることを特徴とする[11]に記載の成形体の製造方法。
[13]前記遷移金属多硫化物が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、及びモリブデンから選ばれる1つ以上であることを特徴とする[11]又は[12]に記載の製造方法。
[14]前記加圧における圧力が、10〜1000MPaの範囲にあることを特徴とする[11]〜[13]のいずれかに記載の成形体の製造方法。
本発明の成形体を用いた全固体電池は、優れた充放電寿命(サイクル特性)を有する。
このため、本発明の成形体は、一次電池、二次電池、及び全固体電池等の電極層として有用である。
また、本発明の成形体は、イオン伝導体、電子伝導体、混合伝導体、その他の電池用電極等として有効に用いることができるので、各種の用途に有用な優れた性能を有する新規材料を提供することができる。
本発明における常温加圧焼結現象を説明するための概念図。 電極活物質の充放電中に発生する膨張収縮現象を説明するための概念図。 合成例1で得られた微小粒子を含むLi3NbS4粉末のSEM写真。 合成例1で得られた粉末の粒度分布(体積分率)を示す図。 合成例2で得られた微細化Li3NbS4粉末のSEM写真。 合成例2で得られた粉末の粒度分布(体積分率)を示す図。 合成例3で得られた微細化Li3NbS4粉末のSEM写真。 合成例3で得られた粉末の粒度分布(体積分率)を示す図。 合成例1及び3で得られた微細化Li3NbS4粉末のX線回折パターン。 実施例1(合成例1で得られた粉末使用)で得られたLi3NbS4粉末の加圧成形体の断面SEM写真。 実施例2で得られたLi3NbS4粉末の成形体の断面SEM写真であり、a、bは、合成例2で得られた粉末を使用したもの、cは、合成例3で得られた粉末を使用したものを示す。 実施例3で得られた成形体の密度(形状法によって測定)と使用したLi3NbS4の粉体密度との相対密度の関係を示す図。 実施例4で得られたLi3NbS4粉末のみを用いて作製した電極を用いた全固体電池の充放電曲線。 実施例5で得られた電極層の断面SEM観察。 実施例5で得られた電極層の断面のエネルギー分散型X線分析による元素マッピング像。 実施例5で作製した電極を用いた全固体電池の充放電曲線。 実施例5で作製した電極を用いた全固体電池のサイクル特性。 実施例5で得られた電極層の初期充放電後の断面SEM写真。 実施例6で得られた電極層の断面SEM写真。 実施例7で得られた電極層の断面SEM写真。 比較例1で得られた電極層の断面SEM写真。 比較例2で得られたLi3NbS4粉末のSEM写真。 比較例2で得られた粉末の粒度分布(体積分率)を示す図。 比較例2で得られた全固体電池の充放電曲線。 比較例3で得られた全固体電池の充放電曲線。 合成例4で得られたLiTiS粉末のX線回折パターン。 合成例5で得られた非晶質NbSのX線回折パターン。 合成例6で得られた硫化ニオブ結晶相を含む非晶質ニオブ多硫化物のSEM写真。 合成例6で得られた硫化ニオブ結晶相を含む非晶質ニオブ多硫化物のX線回折パターン。 合成例6で得られた硫化ニオブ結晶相を含む非晶質ニオブ多硫化物を示す模式図。 合成例7で得られた非晶質TiS粉末のX線回折パターン。 合成例4で得られたLiTiSの成形体の断面SEM写真。 合成例5で得られた非晶質NbSの成形体の断面SEM写真。 合成例6で得られた非晶質NbSの成形体の断面SEM写真。 合成例7で得られた非晶質TiSの成形体の断面SEM写真。
本発明の成形体ついて具体的に説明する。
本発明の成形体は、室温付近での加圧焼結されるものであって、通常の圧粉体とは本質的に異なる。通常の焼結は、粉体を接触あるいは成形し、融点以下の温度で熱することで、粉体粒子の間に結合を生じさせて緻密化する現象で、通常は高温での熱処理を必要とする。
これに対して、本発明においては、常温において加圧焼結を行うことのできる金属多硫化物を用いて、比較的低温で加圧成形することで焼結体を得ることができる。日本工業規格では「常温」を20℃±15℃(5〜35℃)の範囲として規定(JIS Z 8703)している。
これまで、常温で加圧焼結を生じる無機材料として、非特許文献2に、硫化物電解質が記載されているが、遷移金属多硫化物については、これまで報告されていない。
本発明においては、硫黄含有量の高い遷移金属の多硫化物粒子を室温付近で加圧成形することで、金属多硫化物微粒子同士が加圧焼結するという現象(常温加圧焼結現象)を見出した。図1は、その概念図であり、図に示すように、室温付近の加圧成形で、接触した粒子同士の粒界のない成形体が得られる。
この現象を用いることで、金属多硫化物微粒子が緻密化され、かつ微細な空隙を有する成形体を室温付近で得ることができる。
本発明の、硫黄含有量の高い遷移金属の多硫化物粒子における常温加圧焼結のメカニズムは、まず、粒子の再配列が生じ、その後、弾性領域において粒子が弾性変形する。その後、局所応力が生じる粒子間の接触界面で構成要素(原子、イオン、遷移金属硫化物クラスターなど)の移動または拡散が生じ、粒子間に新規な化学結合を形成することで粒子同士が接合する。
硫黄含有量の高い遷移金属の多硫化物粒子は、上記常温加圧焼結によって、粒子が破砕(微細化)することなく粒子同士の接合を形成することができる。応力の生じ方によっては部分的に破砕する箇所も生じる。
成形体は、その内部に空隙を有するのが好ましい。電極活物質は充放電中に膨張収縮するが、成形体中に空隙を有することで、充放電によるリチウムやナトリウムイオンの挿脱に伴う膨張収縮によって生じうる応力を緩和することができる。図2は、その概念図である。それによって、充放電寿命(サイクル特性)を向上することができる。
成形体の空隙率は、2〜30%が好ましく、より好ましくは3〜25%であり、さらに好ましくは5〜20%である。
また、空隙の直径(細孔径)は5μm以下であることが好ましい。それに相当する平均空隙断面積は約20μm2(2.5×2.5×円周率=約20μm2)である。空隙率が等しい場合、空隙が小さい方が均質に応力を緩和することができる。空隙が大きいと、応力の生じ方が不均質化してしまい、応力を効果的に緩和できなくなるため、好ましくない。空隙(細孔)の直径は、空隙を円筒として考えた際の直径であり、直径(D)は奥行(L)よりも短い。平均空隙断面積は、イオンミリング装置等で作製した断面試料に対する顕微鏡写真から、空隙を抽出し、その面積測定することで測定することが可能である。
上記の好ましい空隙率及び細孔径を有する成形体を得るためには、成形体中で、電極活物質または固体電解質が加圧成形性に優れることが求められ、特に電極活物質の体積比を向上させて、体積当たりの容量を高めるためには、電極活物質が加圧成形性に優れることが好ましいが、前述のとおり、電極活物質に用いる硫黄含有量の高い遷移金属の多硫化物粒子は、常温加圧焼結によって、粒子の破砕(微細化)することなく粒子同士の接合を形成することができるという優れた加圧成形性を有するものである。
電極活物質として振る舞う金属多硫化物微粒子としては、成形に必要な温度での圧縮成形において相対密度が80%以上になるものが好ましく、0.1〜10.0mmの範囲のいずれかの厚さの試料に対して、一軸成形において相対密度80%以上の成形体を成形圧1000MPa以下の応力で得ることができるものが好ましく、成形圧500MPa以下で得ることができるものが好ましく、成形圧300MPa以下で得ることができるものがさらに好ましい。
金属多硫化物粒子としては、電池の使用温度において塑性変形するものが好ましく、加圧焼結するものがさらに好ましい。塑性変形は擬似的な塑性変形も含み、応力集中に伴う粒子の変形において、粒子の顕著な破壊や大きな空隙を生じないものを示す。ここでの加圧焼結とは、単なる空隙の減少ではなく、接触する二つ以上の粒子の間で構成原子やイオン等が移動または拡散し、化学結合を形成し、粒界が消失するものを示す。
このような特性を有する材料においては、その内部にある空隙は、充放電において生じ得る電極活物質の膨張収縮の際に局所的に生じ得る電極活物質間の接触界面で応力を緩和することができる。
本発明の金属多硫化物における硫黄Sと遷移金属Mの比率(S/M)は、3〜6の範囲であることが望ましい。硫黄の比率が2よりも小さい場合は、硫黄が遷移金属と強固な結合を形成するために加圧焼結が生じにくくなり、粒子同士の結合が形成されにくくなるため好ましくない。また、硫黄の比率が6よりも大きくなると、遷移金属と化学結合を形成していない硫黄の比率が高くなり、実質的に遷移金属(多)硫化物と硫黄の複合体とみなされるようになるため好ましくない。
また、複数の遷移金属を含有する金属多硫化物である場合は、硫黄(S)とそれらの遷移金属の和(MSUM)の比率(S/MSUM)が、3〜6の範囲であることが望ましい。
本発明の金属多硫化物としては、アルカリ金属を含有する物も用いることができる。アルカリ金属を含有する金属多硫化物は、加圧焼結を行う際にアルカリ金属の拡散によって、原子間の静電反発の緩和や化学結合の再形成の促進を期待することができるため好ましい。そのため、アルカリ金属イオンの伝導性を有する物質であることがさらに好ましい。
アルカリ金属の含有量としては、アルカリ金属(AM)と硫黄(S)の化学量論比(AM/S)が1以下であることが好ましい。アルカリ金属の化学量論比が1以上になると安定性が低下し、リチウム金属硫化物として存在することが困難になるため好ましくない。ちなみに下限は0である。
本発明の遷移金属としては、多硫化物相が存在可能な遷移金属であり、加圧成形性に優れるものであれば特に元素の種類は限定されない。また、結晶性でも非晶質でもよい。また、実質的に非晶質であれば、非晶質相に微結晶が含まれていてもよい。自由体積の大きな物質の方が構成要素の移動または拡散が有利になることから、非晶質相または実質的に非晶質な相を含有する粒子が好ましい。
本発明の成形体の原料金属多硫化物粒子としては、性能を阻害しない範囲であれば、その他の構成要素、不純物及びその他の添加剤が含まれていてもよい。その他の構成要素、不純物としては、遷移金属多硫化物に機能性を付与するために加えられる典型元素や典型金属、原料及び製造時に混入する可能性のある炭素や酸素などを例示できる。
さらに、本発明の成形体を電池用の電極材料として用いる際には、含有する遷移金属多硫化物が電極活物質として大きな充放電容量を発現するものを用いることが好ましい。そのため、遷移金属多硫化物質量当たりの容量は、100mAhg-1以上であることが好ましく、200mAhg-1以上であることがより好ましく、300mAhg-1以上であることがさらに好ましい。さらに、二次電池として用いる際には、該容量が可逆容量であることが好ましい。
微小な空隙が分散した高密度成形体を形成するためには、1μm以下の遷移金属多硫化物粒子を原料粉末として用いることが好ましい。粒子間の隙間を埋めることで空隙の体積を減少し、高密度化を可能にするためである。また、同じ空隙率を有する成形体においても、空隙を分散させることができ、電池用電極として用いる際には、充放電に伴う電極活物質の膨張収縮によって生じる応力を効果的に緩和することができる。
湿式レーザー回折法により測定される10%以上の体積基準粒子径(D10)が1μm以下であることが好ましい。
平均粒子径(D50)も50μm以下の粒子であることが好ましい。好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であることが好ましい。
本発明の成形体には、常温加圧焼結する遷移金属多硫化物粒子の他に、その他の粒子を含んでいてもよい。
例えば、本発明の加圧成形体を構成する遷移金属多硫化物に、電子伝導性やイオン伝導性を有する物質を用いた際には、電池用電極材料、電子伝導体、イオン伝導体として用いることができる。それぞれ必要な伝導率を有する材料を用いることが適しているが、例えば電池用電極として用いる場合は、10-6Scm-1以上の電子伝導性を有することが好ましい。また、電極活物質の混合比率が高い電極用の成形体を形成するためには、電極の原料またはその充放電生成物が高いイオン伝導性(イオン拡散係数)を有することが好ましく、例えば10-8Scm-1以上のアルカリ金属イオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
成形体の製造方法
本発明の成形体は、例えば、原料として、遷移金属多硫化物微粒子を用い0℃〜200℃で加圧成形することによって得ることができる。
本発明においては、遷移金属多硫化物微粒子を、十分に微粒子化して均一に混合するために、例えば、メカニカルミリングによる粉砕または合成を行なうことが望ましい。
メカニカルミリング処理は、機械的エネルギーを付与しながら原料を摩砕混合する方法であり、この方法によれば、原料に機械的な衝撃及び摩擦を与えて摩砕混合することによって、原料粉末が微細化された後、原料の反応が生じる。つまり、この際、混合、粉砕及び反応が同時に生じる。このため、原料を高温に熱することなく、原料をより確実に反応させることが可能である。メカニカルミリング処理を用いることで通常の熱処理では得ることのできない、準安定結晶構造が得られることがある。また、メカニカルミリング処理は、合成した粒子の粉砕及び/又は造粒においても、本発明の原料粉末の調整に適している。
メカニカルミリング処理としては、具体的には、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、振動ミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル、VISミル等の機械的粉砕装置を用いて混合粉砕を行うことができる。特に、ボールミルやビーズミルが微細な粒子を得るためには好ましい。
本発明において、加圧方法は特に限定はなく、任意の加圧成形手法を用いることができる。加圧方法としては、一軸プレス、ロールプレス、静水圧プレス、振動プレス、真空プレス等が用いられる。
加圧速度についても特に限定されない。目的の成形体に合わせて任意に調整することができる。
プレス方式も限定はなく、機械式、油圧式、空気圧式など一般に加圧成形に使用されるものを用いることができる。
用途
上記した成形体は、金属多硫化物微粒子が緻密化されており、かつ微細な空隙を有することから、電子伝導体、イオン伝導体、混合伝導体、電池用電極として使用可能である。
本発明の成形体を電極として使用する電池は、電解質として非水溶媒系電解液を用いる非水電解質電池であってもよく、固体電解質を用いる全固体型電池であってもよい。また、一次電池でも二次電池でもよく、キャリアイオンがリチウムでもナトリウムでもマグネシウムでもよい。
電池の構造は、本発明の成形体を用いること以外は、公知の電池と同様とすることができる。
例えば、上記した成形体を正極として用いる際には、Al、Ni、ステンレス、カーボンクロス等の正極集電体に担持または接触させればよい。
同様に上記の成形体を負極として用いる際にも、Al、Cu、Ni、ステンレス、カーボン等からなる負極集電体に担持または接触させればよい。
集電体箔と電極層を積層してから加圧成形し成形体を得ることで、集電体箔と電極層の密着性が向上し、良好な電極特性が得られるためより好ましい。
全固体リチウム二次電池については、上記した成形体を正極及び/又は負極として使用する他は、基本的な構造は、公知の全固体リチウム二次電池と同様でよい。
この場合、電解質としては、例えば、ポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖及びポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種を含む高分子化合物等のポリマー系固体電解質の他、硫化物系固体電解質、酸化物系固体電解質等を用いることができる。
電池、及び全固体電池の形状についても特に限定はなく、円筒型、角型、ラミネート型などのいずれであってもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
[合成例1:微細粒子を含むリチウムニオブ硫化物粉末の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、ニ硫化ニオブ(NbS2)粉末、及び硫黄(S8)粉末を、それぞれモル比で24:16:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボールを1kg入れた500mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ製P5)を用いて250rpm、120時間、メカニカルミリング処理を行うことでLi3NbS4粉末を得た。
得られた粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図3に示す。SEM写真は、日本電子(JEOL)製電子顕微鏡(JSM―6510A)を用いて観察した。また、試料の移動には大気非暴露ホルダーを用い大気暴露を避けた。粒子径1μm以下から10μm程度の粒子が確認されることが分かる。別視野の測定では、20μm以上の粒子や1μm以下の粒子が凝集した粒子も確認された。
得られた粉末の粒度分布(体積分率)を図4に示す。粒度分布は湿式レーザー回折法を用いる島津製作所製ナノ粒子径分布測定装置(SALD―7500nano)の回分セルで測定した。測定した粒度分布から算出した体積基準平均粒子径(D50)は、4.69μmであった。また、10%以上体積基準粒子径(D10)、20%以上体積基準粒子径(D20)、90%以上体積基準粒子径(D90)はそれぞれ、0.99μm、1.83μm、12.7μmであった。測定時に用いた溶媒(ヘプタン)中で粒子の凝集が示唆されたが、少なくとも体積分率で10%以上の粒子が1μm以下の粒径であることが分かった。
透過型電子顕微鏡観察及びナノビーム電子線回折測定の結果、粒径1μm以下の粒子においては、極めて結晶子サイズが小さいことが確認され、20nm以上の結晶子はほとんど確認されなかった。また、非晶質を示唆するハロパターンも確認された。
[合成例2:微細化リチウムニオブ硫化物粉末の作製]
合成例1で得られたLi3NbS4粉末1gをアルゴン雰囲気のグローブボックス中において秤量し、直径1mmのジルコニアボール約40gを入れた45mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ製P7プレミアムライン)で250rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi3NbS4粉末を得た。
得られた粉末のSEM写真を図5に示す。合成例1と比較して、平均粒子径は大きく低減し、粒子径分布が狭くなった上に、球状に造粒されているため、凝集が抑制されていることが分かる。
得られた粉末の粒度分布(体積分率)を図6に示す。粒度分布は湿式レーザー回折法を用いる島津製作所製ナノ粒子径分布測定装置(SALD―7500nano)の回分セルで測定した。測定した粒度分布から算出したD50は、2.71μmであった。また、D10、D20、D90はそれぞれ、0.69μm、1.19μm、6.50μmであった。溶媒中で粒子が凝集してしまっているため、二次粒子の粒径も含んでいるが、少なくとも体積分率で10%以上の粒子が1μm以下の粒径であることが分かった。
[合成例3:微細化リチウムニオブ硫化物粉末の作製−2]
合成例1で得られたLi3NbS4粉末1gをアルゴン雰囲気のグローブボックス中において秤量し、直径1mmのジルコニアボール約40gを入れた45mLの容器を用いて湿式粉砕溶媒としてヘプタンを4g添加し、ボールミル装置(フリッチュ製P7プレミアムライン)で250rpm、10時間のメカニカルミリング処理を行い、70℃で溶媒を乾燥させることでLi3NbS4粉末を得た。
得られた粉末のSEM写真を図7に示す。合成例2と比較して一次粒子がさらに微細化されていることが分かる。
得られた粉末の粒度分布(体積分率)を図8に示す。粒度分布は湿式レーザー回折法を用いる島津製作所製ナノ粒子径分布測定装置(SALD−7500nano)の回分セルで測定した。測定は、一度乾燥した粉末をヘプタンに再分散させて行った。測定した粒度分布から算出したD50は、1.75μmであった。また、D10、D20、D90はそれぞれ、0.46μm、0.79μm、4.93μmであった。溶媒中で粒子が凝集してしまっているため、二次粒子の粒径も含んでいるが、少なくとも体積分率で20%以上の粒子が1μm以下の粒径であることが分かった。
合成例1及び3で得られた粒子のX線回折パターンを図9に示す。XRDパターンに大きな変化はなく、同様の結晶構造を有することが分かる。
[実施例1:リチウムニオブ硫化物の成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例1で得られた粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形することで、Li3NbS4の成形体を得た。
得られた加圧成形体の断面SEM写真を図10に示す。観察用の断面試料は、大気非暴露ホルダーを用いて、日本電子製クロスセクションポリッシャを用いて作製した。様々な粒子径の粒子同士が加圧によって接合され、全体として加圧焼結されていることが分かる。粒子間での接触で粒子の顕著な脆性破壊は確認されず、接合した粒子間には空隙はなく、加圧によって粒子間で局所応力が生じ、構成原子やイオンが拡散し粒子同士が接合している。
1μm以下の粒子を含有した粉末を原料に用いることで、緻密な成形体を提供している。また、もとの粒子形状に対応する粒子が確認され、原料粒子の形状によって、成形体の粗密や空隙の分布を制御できることが分かった。
[実施例2:リチウムニオブ硫化物の成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例2で得られた粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)560MPaで1分間加圧成形することでLi3NbS4の成形体を得た。得られた成形体の断面SEM写真を図11a、bに示す。図11bの左図には、断面写真から読み取ることができる空隙の幅も示している。また、図11bの右図においては、左図と同一視野で、空隙のサイズが大きいものを選び、断面積を読み取った値を示している。それぞれの空隙の幅及び断面積は、電子顕微鏡(JSM―6510A)に付属のソフトウェアにて測定した。装置の補正、装置の設定(作動距離、加速電圧など)、測定手法(読み取り誤差)による長さの誤差は10%程度であることを確認した。また、面積の誤差もおおよそ20%以内であることを確認した。これらの結果より、得られた試料の空隙の直径は5μm以下であることが分かり、断面写真における空隙の面積は、主として1μm2以下であることが分かった。
また、同様に、合成例3で得られた粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形することで、Li3NbS4の成形体を得た。得られた成形体の断面SEM写真を図11cに示す。
それぞれ相対密度80%以上の成形体が形成されていることが分かった。また、図11bに示すように、断面写真においては、いずれの空隙も5μm以上の隙間を有さないことが分かった。
前記実施例1、2の成形体の断面図(図10、11a〜c)と、上記合成例1〜3で得られた粒子の写真(図3、5、7)及び粒度分布(図4、6、8)の比較から、空隙の間隔は原料粒子形状に相関していることが分かり、平均粒径の小さな原料を用いることで、空隙が分散され、その平均サイズが小さくなることが分かった。
[実施例3:室温における加圧焼結現象を用いたリチウムニオブ硫化物の緻密成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例3で得られた粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)下、40、110、185、260、335、405、480及び555MPaのそれぞれで1分間加圧成形することでLi3NbS4の加圧成形体を得た。得られた加圧成形体の密度(形状法によって測定)と使用したLi3NbS4の粉体密度との相対密度の関係を図12に示す。
図中、Relative density(相対密度)(%)=(成形体の密度/乾式粉体密度計で測定した粉体密度)×100
室温における合成例3で得られた粉末は、室温での一軸プレス成形において単調に高密度化し、90%を超える極めて高い相対密度まで加圧成形できることが示された。
なお、前記の粉体密度は、乾式粉体密度計(マイクロメリティックス社製、アキュピックII 1340-1CC)を用いて実測した値を用いた。X線回折測定からも物質の密度を概算できるが、X線回折測定から算出される密度と乾式粉体密度計で測定された密度は、それぞれ3.0g/cm3及び2.9g/cm3でありその差は約3%であったが、X線回折測定の結果得られた回折パターンのピークがブロードであり、正確な単位格子の体積を決定できないため、ここでは乾式粉体密度計で測定した値を使用した。乾式粉体密度系において、測定される密度においても、粉体粒子内に存在する閉塞孔(空隙)を含んだ密度になるため、正確には物質の真密度とは異なるがここでは、相対密度を上記の式で定義したものを用いた。
[実施例4:リチウムニオブ硫化物の成形体のみを正極に用いた全固体電池の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例1で得られた粉末10mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)80mgを直径10mmの錠剤成形器内で積層し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形した後、対極側にリチウム−インジウム合金を貼り付け、110MPaで1分間加圧成形することで、Li3NbS4粉末の成形体のみを正極に用いた全固体電池を作製した。
充放電試験は、50℃の恒温槽で0.25mA/cm2の定電流充放電試験を行った。1−5サイクル目の充放電曲線を図13に示す。
図13で示した通り、本発明の加圧成形体においては遷移金属多硫化物粒子同士が加圧焼結しており、かつイオン伝導性を有するLi3NbS4を用いているため、リチウムニオブ硫化物の成形体のみを正極に、言い換えれば、固体電解質を含有しない成形体を用いた全固体電池も可逆な充放電が可能であった。このことは、全ての固体電解質が接続していなくても電極内のイオン伝導経路が形成可能であることを示しており、電極活物質の混合比(体積分率)が高い電極においても高い電極性能が期待できる。
[実施例5:合成例1で得られたリチウムニオブ硫化物を用いた全固体電池の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例1で得られた粉末75mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)25mgを秤量し、乳鉢を用いて混合した後、ボルテックスミキサーを用いて、均質に混合し電極粉末を作製した。その後、作製した電極粉末10mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)80mgを直径10mmの錠剤成形器内で積層し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形した後、対極側にリチウム及びインジウムを貼り付け、110MPaで1分間加圧成形することで、Li3NbS4粉末と固体電解質粉末を75:25の重量比で含有する成形体を正極に用いた全固体電池を作製した。正極及び負極ともに、ステンレススチールを集電体として用いた。
電極層の断面SEM写真を図14に示す。図14aからcは、それぞれ別視野での写真を示している。図14cにおいては、図11cと同様の手法で求めた空隙の断面積も示している。これらの結果より、得られた試料の空隙の直径は5μm以下であることが分かり、断面写真における空隙一つ当たりの断面積は、主として5μm2以下であることが分かった。
また、エネルギー分散型X線分析によって得られた元素分布マッピング像を図15に示す。図中で明るい粒子がリチウムニオブ硫化物粒子であり、暗い粒子が固体電解質粒子である。リチウムニオブ硫化物粒子の接触界面では、粒子同士が接合していることが分かる。また、リチウムニオブ硫化物と固体電解質の界面では、リチウムニオブ硫化物と固体電解質がいずれも変形することで極めて良好な接触性を有する電極‐電解質界面が形成されていることが分かる。
充放電試験は、50℃の恒温槽で充放電試験を行った。5サイクル目の充放電曲線を図16に示す。1〜5サイクルは0.25mA/cm2と2.4Vの定電流定電圧充電と0.5mA/cm2の定電流放電、5サイクル目以降は0.5mA/cm2と2.4Vの定電流定電圧充電と0.5mA/cm2の定電流放電を行う充放電を行った。
サイクル特性を図17に示す。得られた全固体電池は良好なサイクル特性を示した。
図18には初期充放電後の電極の断面SEM写真を示す。
本発明の電極は微細な空隙を有するために、充放電時のリチウムニオブ硫化物の体積変化を効果的に緩和することができ、充放電前後において、電極構造に大きな差異が確認されない良好な電極構造を与えることができることが分かった。
[実施例6:合成例3で得られたリチウムニオブ硫化物を用いた全固体電池用成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例3で得られた粉末75mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)25mgを秤量し、乳鉢を用いて混合した後、ボルテックスミキサーを用いて、均質に混合し電極粉末を作製した。その後、作製した電極粉末10mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)80mgを直径10mmの錠剤成形器内で積層し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形した後、対極側にリチウム及びインジウムを貼り付け、110MPaで1分間加圧成形することで、Li3NbS4粉末と固体電解質粉末を75:25の重量比で含有する成形体を正極に用いた全固体電池を作製した。
電極層の断面SEM写真を図19に示す。実施例5(図14参照)と比較してより微細な空隙を有する高密度電極層が形成できることが分かった。
[実施例7:合成例3で得られたリチウムニオブ硫化物を用いた全固体電池用成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例3で得られた粉末75mgと微細化した硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass、平均粒径3μm)25mgを秤量し、乳鉢を用いて混合した後、ボルテックスミキサーを用いて、均質に混合し電極粉末を作製した。その後、作製した電極粉末10mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)80mgを直径10mmの錠剤成形器内で積層し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形した後、対極側にリチウム及びインジウムを貼り付け、110MPaで1分間加圧成形することで、Li3NbS4粉末と固体電解質粉末を75:25の重量比で含有する成形体を正極に用いた全固体電池を作製した。
電極層の断面SEM写真を図20に示す。図11c及び図14cと同様の手法で求めた空隙の断面積も合わせて示している。これらの結果より、得られた試料の空隙の直径は主として2μm以下であることが分かり、断面写真におけるそれぞれの空隙の断面積は、主として3μm2以下であることが分かった。実施例5(図14参照)と比較してより微細な空隙を有する高密度電極層が形成できることが分かった。
[比較例1:酸化物系正極活物質粒子を用いた全固体電池の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、酸化物系電極活物質(リチウムコバルトニッケルマンガン酸化物)75mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)25mgを秤量し、乳鉢を用いて混合した後、ボルテックスミキサーを用いて、均質に混合し電極粉末を作製した。その後、作製した電極粉末10mgと硫化物系固体電解質(Li2S−P25 glass)80mgを直径10mmの錠剤成形器内で積層し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)330MPaで1分間加圧成形した後、対極側にインジウムを貼り付け、110MPaで1分間加圧成形することで、リチウムコバルトニッケルマンガン酸化物粉末と固体電解質粉末を75:25の重量比で含有する成形体を正極に用いた全固体電池を作製した。酸化物系活物質の密度は約5g/cm3であり、硫化物系固体電解質の密度は約1.9g/cm3であり、密度と重量比から算出される酸化物系活物質と固体電解質の体積比は、約53:47である。
電極層の断面SEM写真を図21に示す。参考までに、図21dには、図11c及び図14c、図20と同様の手法で求めた空隙の断面積も合わせて示している。また、遷移金属多硫化物と比較して酸化物系正極材料は脆性が高く、実施例5、6、及び7(図14、19及び20)と比較して、活物質粒子に割れが多く目立ち、活物質粒子が偏在する部分で、大きな空隙が確認される。また、活物質粒子間の密着性が相対的に低いことが分かる。これらの結果より、得られた試料においては、空隙の直径2μm以上のものを多く含み、空隙面積が5μm2以上のものを多く含まれていることが分かった。特に、活物質粒子の偏在する部分において、断面観察において5μm以上の長さの空隙が多数確認された。
[比較例2:リチウムニオブ硫化物を用いた全固体電池用成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム粉末、二硫化ニオブ粉末、及び硫黄粉末を、それぞれモル比で24:16:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約90gを入れた45mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P7、クラシックライン)で510rpm、60時間のメカニカルミリング処理を行うことでLi3NbS4粉末を得た。得られた粒子のSEM写真を図22に示す。また、得られた粉末の粒度分布(体積分率)を図23に示す。粒度分布は湿式レーザー回折法を用いる島津製作所製ナノ粒子径分布測定装置(SALD―7500nano)の回分セルで測定した。測定した粒度分布から算出したD50は、6.83μmであった。また、D10、D20、D90はそれぞれ、3.30μm、5.54μm、20.5μmであった。
得られたLi3NbS4粉末を正極活物質として用いて、下記の方法で試験用の全固体型リチウム二次電池を作製し、定電流測定で充電開始することにより充放電試験を行った。
試験用の全固体型リチウム二次電池の作製方法としては、まず、正極用材料として、Li3NbS4粉末(正極活物質)、カーボンブラック、及び硫化物系固体電解質(Li2S−P25−LiI glass)を、正極活物質:カーボンブラック:硫化物系固体電解質=62:7:31(重量比)となるように秤量し、乳鉢で5分間混練した後、得られた混練物10mgを直径10mmの成形器に均質に充填し、さらに80mgの硫化物系固体電解質(Li2S−P25−LiI glass)を積層した後、370MPaで一軸成形した。
その後、対極として、負極としてインジウム箔とリチウム箔を張り付けたのちに120MPaで一軸成形することによって、全固体型リチウム二次電池を得た。
正極及び負極ともに、ステンレススチールを集電体として用いた。充放電試験は、30℃でプレサイクルを行った後、50℃の恒温槽で0.13mA/cm2の定電流充放電試験を行った。充放電試験の結果(30サイクル目)を図24に示す。
[比較例3:リチウムチタン硫化物を用いた全固体電池用成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(Li2S)粉末、及び二硫化チタン(TiS2)粉末を、それぞれモル比で1:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボール約90gを入れた45mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ P7、クラシックライン)で510rpmでメカニカルミリング処理を行うことでLi2TiS3粉末を得た。
得られたLi2TiS3粉末を正極活物質として用いて、下記の方法で試験用の全固体型リチウム二次電池を作製し、定電流測定で充電開始することにより充放電試験を行った。
試験用の全固体型リチウム二次電池の作製方法としては、まず、正極用材料として、Li2TiS3粉末(正極活物質)、カーボンブラック、及び硫化物系固体電解質(Li2S−P25−LiI glass)を、正極活物質:カーボンブラック:硫化物系固体電解質=62:7:31(重量比)となるように秤量し、乳鉢で5分間混練した後、得られた混練物10mgを直径10mmの成形器に均質に充填し、さらに80mgの硫化物系固体電解質(Li2S−P25−LiI glass)を積層した後、370MPaで一軸成形した。その後、対極として、負極としてインジウム箔とリチウム箔を張り付けたのちに120MPaで一軸成形することによって、全固体型リチウム二次電池を得た。正極及び負極ともに、ステンレススチールを集電体として用いた。充放電試験は、30℃でプレサイクルを行った後、50℃の恒温槽で充放電試験を行った。充放電試験の結果を図25に示す。1〜4サイクルは50℃で0.1mA/cm2の定電流充放電を行い、5〜50サイクルは50℃で0.5mA/cm2(80mA/g)の定電流充放電を行った。
以下の表1に実施例5、比較例2、比較例3において作製された全固体電池の電極の重量比、固体の体積比、活物質重量当たりの容量と電極重量当たりの容量を示す。固体の体積比は、混合重量比と密度(Li3NbS4約3g/cm3、固体電解質約1.9g/cm3)から概算した。
比較例2、3と比べ、実施例5では、電極活物質の混合比を向上しつつ、活物質重量当たりの容量を維持することで、電池の高容量化を行うことができることが分かった。
[合成例4:リチウムチタン硫化物粉末の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(LiS)粉末、市販の硫化チタン(TiS)粉末を、モル比で1:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボールを1kg入れた500mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ製P5)を用いて250rpm、60時間、メカニカルミリング処理を行うことでLiTiS粉末を得た。
X線回折パターンを図26に示す。LiとTiがカチオンサイトを共有する立方晶岩塩型LiTiSのパターンが確認された。
[合成例5:非晶質ニオブ多硫化物粉末の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化ニオブ(NbS)粉末、及び硫黄(S)粉末を、モル比で8:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボールを1kg入れた500 mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ製P5)を用いて300rpm、20時間、メカニカルミリング処理を行うことで非晶質NbSを得た。さらに、非晶質NbSと硫黄(S)をモル比8:1となるように秤量・混合し、300rpm、20時間、メカニカルミリング処理を行うことで非晶質NbSを得た。
X線回折パターンを図27に示す。顕著な回折パターンが確認されないことから、得られた試料は実質的に非晶質であることが確認された。
[合成例6:硫化ニオブ結晶相を含む非晶質ニオブ多硫化物粉末の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化ニオブ(NbS)粉末、及び硫黄(S)粉末を、モル比で4:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボールを1kg入れた500 mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ製P5)を用いて300rpm、40時間、メカニカルミリング処理を行うことで硫化ニオブ結晶相を含む非晶質ニオブ多硫化物を得た。
得られた粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図28に示す。SEM写真は、日本電子(JEOL)製電子顕微鏡(JSM―6510A)を用いて観察した。また、試料の移動には大気非暴露ホルダーを用い大気暴露を避けた。大部分が粒子径10μm以下の粒子が確認されることが分かる。また、粒子径1μm以下の粒子を多く含むことが分かった。別視野の測定では、20μm以上の粒子も確認された。
X線回折パターンを図29に示す。硫黄のX線回折パターンが確認されないことから、硫黄と硫化ニオブの反応により、非晶質ニオブ多硫化物が生成していると考えられる。一方で、半値幅の比較的広い硫化ニオブに帰属できる回折パターンが確認され、得られた試料は、図30の模式図に示すように、部分的にナノサイズの硫化ニオブを内部に含む粒子であることが分かった。仕込み組成及び合成手法から粒子の平均化学組成はNbSであると見積もられる。
[合成例7:非晶質チタン多硫化物粉末の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化チタン(TiS)粉末、及び硫黄(S)粉末を、モル比で4:1となるように秤量・混合し、その後、直径4mmのジルコニアボールを90g入れた45mLの容器を用いて、ボールミル装置(フリッチュ製P7)を用いて510rpm、60時間、メカニカルミリング処理を行うことで非晶質TiS粉末を得た。
X線回折パターンを図31に示す。顕著な回折パターンが確認されないことから、得られた試料は非晶質であることが確認された。
[実施例7:リチウムチタン硫化物、非晶質ニオブ多硫化物、および非晶質チタン多硫化物の成形体の作製]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、合成例4で得られた粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)500MPaで1分間加圧成形することで、リチウムチタン硫化物(LiTiS)の成形体を得た。得られた成形体の断面SEM写真を図32に示す。
得られた成形体においては、加圧シンタリング現象が確認され、密な成形体が得られていることを確認した。断面写真における空隙の面積は、主として20μm以下であることを確認した。断面写真からは、明るいコントラストのナノ粒子が確認された。
また、元素分析により、合成時に用いたジルコニアボールが一部ナノサイズの不純物としてリチウムチタン硫化物粒子内に練り込まれていることが分かった。このことより、粒子内に酸化物微粒子を含む場合でもリチウムチタン硫化物に覆われる場合、緻密な成形体が得られることを確認した。
同様に、合成例5、6で得られた粉末80mgをそれぞれ直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)500MPaで1分間加圧成形することで非晶質NbSの成形体を得た。得られた成形体の断面SEM写真を図33、図34に示す。
得られた成形体においては、いずれも加圧シンタリング現象が確認され、密な成形体が得られていることを確認した。断面写真における空隙の面積は、いずれも主として20μm以下であることを確認した。また、合成例6の粉末を用いて作製した成形体においては、原料粒子内に1μm以下の硫化ニオブ微粒子が数多く内包されていることが確認された。このことより、結晶性の成分を内包する場合であっても、非晶質ニオブ多硫化物に覆われている場合、緻密な成形体が得られることを確認した。
また、同様に、合成例7で得られた粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)500MPaで1分間加圧成形することで、非晶質TiSの成形体を得た。得られた成形体の断面SEM写真を図35に示す。
得られた成形体においては、加圧シンタリング現象が確認され、密な成形体が得られていることを確認した。断面写真における空隙の面積は、主として20μm以下であることを確認した。
[参考例]
アルゴン雰囲気のグローブボックス中において、市販の硫化リチウム(LiS)粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)500MPaで1分間加圧成形することで、硫化リチウムの成形体の作製を試みたが、得られた成形体は脆く断面作製が困難であった。
同様に、市販の硫黄(S)粉末80mgを直径10mmの錠剤成形器に秤量し、一軸油圧プレス機を用いて、室温(25℃)500MPaで1分間加圧成形することで、硫黄の成形体の作製を試みたが、得られた成形体は脆く断面作製が困難であった。

Claims (14)

  1. 遷移金属及び硫黄を構成元素として含み、硫黄と遷移金属の元素比(硫黄/遷移金属)が3以上6以下の遷移金属多硫化物を含有し、空隙(マクロ孔)を内包し、かつその空隙の直径(細孔径)が5μm以下、又は、平均空隙断面積が20μm2以下であることを特徴とする成形体。
  2. 更に固体電解質を構成要素として含み、前記遷移金属多硫化物の含有量が、70重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
  3. 粒径1μm以下の常温加圧焼結が可能な遷移金属多硫化物粒子を含有する粉末を用いて、成形されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の成形体。
  4. 前記遷移金属多硫化物がさらにアルカリ金属を含有し、アルカリ金属と硫黄の含有比(アルカリ金属/硫黄)が1以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
  5. 前記遷移金属多硫化物が、単独で室温500MPaで加圧成形した際に充填率80%以上になる物質であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体。
  6. 前記遷移金属が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、及びモリブデンから選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形体。
  7. 空隙の直径が2μm以下又は平均空隙断面積が3μm2以下であり、かつ空隙率が20%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形体。
  8. 導電性炭素の混合比率が5重量%以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形体。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形体からなることを特徴とする電池用電極。
  10. 請求項9に記載の電池用電極を有するリチウム2次電池。
  11. 粒径1μm以下の遷移金属多硫化物の微粒子を10体積分率以上含有する金属多硫化物粉末を原料として用い、5℃〜35℃以下の温度で加圧することで焼結させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
  12. 前記遷移金属多硫化物の微粒子が、メカニカルミリング法で合成、粉砕及び/又は造粒された微粒子であることを特徴とする請求項11に記載の成形体の製造方法
  13. 前記遷移金属多硫化物が、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニオブ、及びモリブデンから選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項11又は12に記載の成形体の製造方法。
  14. 前記加圧における圧力が、10〜1000MPaの範囲にあることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の成形体の製造方法。
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