本開示は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性等に優れていることから、従来より、例えば導光板、各種レンズ、銘板等の成形品に利用されている。
例えば特許文献1には、重量平均分子量と数平均分子量との比が特定範囲に規定された芳香族ポリカーボネート樹脂に、安定剤及び離型剤が配合された導光板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、導光板用の樹脂組成物として、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィン共重合体等の、高い光線透過率及び低い複屈折性を備えた熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、ポリカーボネート樹脂に、ポリスチレン及び1種のリン系酸化防止剤が配合された光学用成形品用ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、特定の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に、2種のフォスファイト系安定剤及び脂肪酸エステルが配合され、一方のフォスファイト系安定剤が、特定構造を有し、かつ他方のフォスファイト系安定剤よりも少量である導光部材用ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、近年、光学用成形品には、光線透過率だけでなく、例えば熱安定性、機械的強度、色相、輝度、押出成形性、耐候性、長期信頼性等の各種特性のうち、その用途に応じた特性の兼備が要求されてきており、特許文献1〜4に開示の樹脂組成物は、かかる要求を充分に満足し得るものではない。
特開2007−204737号公報
特開2007−214001号公報
特開2011−133647号公報
特開2013−234233号公報
本開示は、成形品の用途に応じて優れた特性を付与し得るポリカーボネート樹脂組成物を提供する。また本開示は、該ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、各種用途に適した成形品を提供する。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物は、
ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)と、紫外線吸収剤(D)とを含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、
前記脂肪酸エステル(C)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、
前記紫外線吸収剤(D)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1重量部であり、
前記リン系酸化防止剤(B)が、少なくとも2種の化合物で、該少なくとも2種の化合物のうちの1種が、一般式(1):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物であり、
前記一般式(1)で表される化合物の量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%である
ものである。
本開示における成形品は、
ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)と、紫外線吸収剤(D)とを含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、
前記脂肪酸エステル(C)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、
前記紫外線吸収剤(D)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1重量部であり、
前記リン系酸化防止剤(B)が、少なくとも2種の化合物で、該少なくとも2種の化合物のうちの1種が、一般式(1):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物であり、
前記一般式(1)で表される化合物の量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%であるポリカーボネート樹脂組成物
を成形したものである。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる本開示における成形品は、高い光線透過率だけでなく、優れた熱安定性、高い機械的強度、優れた色相、高い輝度、優れた押出成形性、優れた耐候性等を有するほか、高温高湿条件下に供した後であっても光線透過率の低下が少なく、優れた長期信頼性も有している。
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
(実施の形態1:ポリカーボネート樹脂組成物)
実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)と、紫外線吸収剤(D)とを含有したものである。なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000、さらには12000〜30000であることが好ましい。なお、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
リン系酸化防止剤(B)は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び色相を向上させる成分である。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤(B)として、少なくとも2種の化合物が含有される。少なくとも2種の化合物のうちの1種は、一般式(1):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物である。
前記一般式(1)において、R1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
前記一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(2):
(式中、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R
4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR
7−(ここで、R
7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR
8−(ここで、R
8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(2)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
前記R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R2及びR5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
前記R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR7−中のR7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR8−におけるR8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
さらに一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(3):
(式中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(3)において、R9及びR10は、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
さらに一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(4):
(式中、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]等が挙げられ、例えば、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP−EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(B)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、0.05〜0.09重量部であることが好ましい。リン系酸化防止剤(B)の量が0.04重量部未満の場合は、熱安定性及び色相の向上効果が不充分である。逆にリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超える場合も、熱安定性及び色相の向上効果が不充分となってしまう。
一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば前記一般式(2)〜(4)で表される化合物等の中から、少なくとも1種を適宜選択して用いればよい。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤(B)として、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の化合物とが、併せて少なくとも2種含有されているが、一般式(1)で表される化合物の量は、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%であり、42〜70重量%であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%未満の場合は、特に熱安定性の向上効果が不充分で、高温での成形加工により、黄変が抑制されずに色相が低下してしまう。逆に一般式(1)で表される化合物の量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を超える場合も、特に熱安定性の向上効果が不充分で、高温での成形加工により、黄変が抑制されずに色相が低下してしまう。
脂肪酸エステル(C)は、前記リン系酸化防止剤(B)とともに作用し、得られるポリカーボネート樹脂組成物の黄変を抑制し、色相を向上させる成分である。さらに、脂肪酸エステル(C)は、押出成形によって成形品を製造する際の押出成形性を、ポリカーボネート樹脂組成物に付与する成分である。
脂肪酸エステル(C)としては、通常の脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物を用いることができる。
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。なお、該脂肪族カルボン酸には、脂環式カルボン酸も含まれる。これらの中でも、炭素数6〜36の、モノカルボン酸及びジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
前記脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
前記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられ、これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数30以下の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の、脂肪族飽和一価アルコール及び脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、脂肪族アルコールには、脂環式アルコールも含まれる。
前記アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪酸エステル(C)の具体例としては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート等のステアリン酸エステルが好適であり、例えば、理研ビタミン(株)製のリケマールS−100A(商品名)や日油(株)製のユニスターH476DP(「ユニスター」は登録商標)が商業的に入手可能である。
前記脂肪酸エステル(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、0.05〜0.2重量部であることが好ましい。脂肪酸エステル(C)の量が0.03重量部未満の場合は、黄変を抑制し、色相を向上させる効果や、押出成形性を付与する効果が不充分である。逆に脂肪酸エステル(C)の量が0.5重量部を超える場合も、色相を向上させる効果や、押出成形性を付与する効果が不充分となってしまう。
紫外線吸収剤(D)は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる成分であり、ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途に応じて適宜用いることができる。後述するように、例えば成形品を光学レンズとする場合には、該紫外線吸収剤(D)が配合されたポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、太陽光やLED照明等による照射後であっても、成形品の光線透過率が高いままに維持され得る。
紫外線吸収剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、一般式(5):
(式中、R
15及びR
16は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、d及びeは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物等が挙げられる。
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、式(6):
で表される化合物等が挙げられ、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSanduvor VSU等が商業的に入手可能である。
紫外線吸収剤(D)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1重量部であり、0.05〜0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤(D)の量が1重量部を超える場合は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下するおそれがある。なお、紫外線吸収剤(D)の量が0.1重量部以上の場合は特に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が大きく奏される。
さらに、実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本開示における効果を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、リン系酸化防止剤(B)、脂肪酸エステル(C)及び紫外線吸収剤(D)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
(実施の形態2:成形品)
実施の形態2に係る成形品は、前記のごとく得られる実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるものである。
前記成形品の製造方法には特に限定がなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
本開示における成形品としては、光学レンズ、車両ランプ用ライトガイド、導光フィルム、面発光体材料、銘板等が好適に例示される。
特に、成形品を光学レンズとする場合、前記紫外線吸収剤(D)が配合され、より耐候性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、太陽光やLED照明等による照射後であっても、成形品の光線透過率が高いままに維持され得る。
特に、成形品が車両ランプ用ライトガイドである場合、該車両ランプ用ライトガイドは、熱安定性に優れ、高温で成形加工した場合でも高い光線透過率を有し、黄変が充分に抑制されて色相に優れるものであり、その近傍に備えられたLED等の光源を利用して点灯し、高い視認性を発揮する照明具として利用される。よって、該車両ランプ用ライトガイドは、厚さ0.4mm程度の薄型であっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、工業的利用価値が極めて高い。
なお、本開示における車両ランプ用ライトガイド(デイタイムライトガイド)とは、ヘッドランプ等の車両前照灯、フォグランプ等の補助前照灯、デイタイムランニングランプ等の各種車両用灯具近傍に備えられる、昼間点灯用のライトガイドをいう。
特に、成形品が導光フィルムである場合、該導光フィルムは、熱安定性に優れ、高温で成形加工した場合でも高い光線透過率を有し、黄変が充分に抑制されて色相に優れる。よって、該導光フィルムは、600μm程度以下の厚さであっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、輝度、光線透過率及び色相安定性のバランスが良好であるとともに、押出成形性にも優れるため、工業的利用価値が極めて高い。
なお、本開示における導光フィルムとは、例えば、スマートフォン等の携帯型コンピュータの液晶表示装置等の各種表示部に用いられる、好ましくは厚さ600μm以下、さらに好ましくは厚さ400μm以下のフィルムをいう。
本開示における導光フィルムは、前記ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを押出成形等することによって得られる。導光フィルムの製造方法には特に限定がなく、例えば、公知のTダイ押出成形法、カレンダ成形法等の従来の成形法を採用することができる。また、公知の射出成形法、圧縮成形法等により、ポリカーボネート樹脂組成物のシート状成形品を得て、必要に応じて、該シート状成形品から切削加工等によって所望の厚さのフィルムに加工してもよい。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−30
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:18000、以下「PC」という)
2.リン系酸化防止剤(B)
2−1.以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
イルガフォス168
(商品名、BASF社製、以下「B1」という)
2−2.以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン
アデカスタブPEP−36
(商品名、(株)ADEKA製、以下「B2」という)
3.脂肪酸エステル(C)
グリセリンモノステアレート
リケマールS−100A
(商品名、理研ビタミン(株)製、以下「GM」という)
4.紫外線吸収剤(D)
2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
TINUVIN 329
(商品名、BASF社製、以下「UV」という)
(1)第1実施態様
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−2
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度240℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
なお、実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−2で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例1−1 約5.0 約3.9 約2.6
1−2 約5.1 約4.1 約2.4
1−3 約5.1 約4.0 約2.8
比較例1−1 約5.0 約4.0 約2.5
1−2 約5.2 約4.3 約2.9
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表1に示す。
(ア)初期色相
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度280℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この168mm長光路試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について、標準光源D65を用い、10度視野にて測定した。測定した分光透過率に基づき、各々の黄色度を求め、これを168mm長の初期色相YIとした。なお、YIが13以下を良好(表中、○で示す)、13を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(イ)黄変抑制効果
溶融ペレットを前記(ア)初期色相で用いた射出成形機のシリンダ内にて280℃で15分間滞留させた後、前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。
この試験片について、前記(ア)と同様にして168mm長のYIを求め、得られた値から(ア)で求めた値を減じてΔYIを算出した。なお、ΔYIが11以下を良好(表中、○で示す)、11を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(ウ)長期信頼性
前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、試験前積算透過率を求めた。
次に、前記試験片を恒温恒湿槽(ADVANTEC社製、恒温恒湿器AG−327)中に設置し、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間、加水分解試験を行った。試験終了後、前記と同様にして試験片の試験後積算透過率を求め、Δ積算透過率(積算透過率の差=試験前積算透過率−試験後積算透過率)を算出した。Δ積算透過率は、試験前後の積算透過率の変化の程度を表しており、Δ積算透過率が小さいほど、高温高湿条件に供した後であっても光線透過率の低下が少なく、長期信頼性に優れていることを示す。なお、Δ積算透過率が5000未満を良好(表中、○で示す)、5000以上を不良(表中、×で示す)とした。
実施例1−1〜1−3のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、いずれも、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例1−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
比較例1−2のポリカーボネート樹脂組成物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を上回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。
(2)第2実施態様
実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−2
前記各原料を、表2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、第1実施態様と同様の方法にてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−2で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例2−1 約5.1 約4.2 約2.7
2−2 約5.1 約4.1 約2.2
2−3 約5.3 約4.2 約2.2
2−4 約5.3 約3.9 約2.5
比較例2−1 約5.3 約4.2 約2.6
2−2 約5.4 約4.3 約2.3
得られたペレットを用い、第1実施態様と同様の方法にて各評価を行った。その結果を表2に示す。
なお(ア)初期色相の評価において、YIが16以下を良好(表中、○で示す)、16を超えると不良(表中、×で示す)とした。また(イ)黄変抑制効果の評価において、射出成形機のシリンダ内での滞留時間を10分間に変更し、ΔYIが18以下を良好(表中、○で示す)、18を超えると不良(表中、×で示す)とした。
実施例2−1〜2−4のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で10分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例2−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する紫外線吸収剤(D)の量が1重量部を超えている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣る。
比較例2−2のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で10分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
(3)第3実施態様
実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−4
前記各原料を、表3に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、第1実施態様と同様の方法にてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−4で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例3−1 約5.0 約3.9 約2.6
3−2 約5.1 約4.1 約2.4
3−3 約5.0 約4.0 約2.5
3−4 約5.2 約4.3 約2.8
比較例3−1 約5.2 約4.3 約2.9
3−2 約5.3 約3.8 約2.8
3−3 約5.0 約3.9 約2.4
3−4 約5.0 約3.9 約2.6
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表3に示す。
(ア)初期色相
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度280℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この168mm長光路試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について、標準光源D65を用い、10度視野にて測定した。測定した分光透過率に基づき、各々の黄色度を求め、これを168mm長の初期色相YIとした。なお、YIが13以下を良好(表中、○で示す)、13を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(イ)黄変抑制効果
溶融ペレットを前記(ア)初期色相で用いた射出成形機のシリンダ内にて280℃で15分間滞留させた後、前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。
この試験片について、前記(ア)と同様にして168mm長のYIを求め、得られた値から(ア)で求めた値を減じてΔYIを算出した。なお、ΔYIが11以下を良好(表中、○で示す)、11を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(ウ)押出成形性
押出シート成形機(田辺プラスチックス機械(株)製、単軸40mmシート押出機)を用い、スクリュウ回転数90rpm、溶融温度260℃の条件にて、得られたペレットから、幅250mm、厚さ0.5mmのシートを成形した。得られたシートの外観及び成形時の揮発成分によるロール表面の汚れを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、評価が優良又は良好であれば、実用上問題がないレベルである。
(評価基準)
優良(表中、◎で示す):
シート表面に筋状のマークが全くなく、ロール表面の汚れもない。
良好(表中、○で示す):
シート表面に筋状のマークが殆どなく、ロール表面の汚れも殆どない。
普通(表中、△で示す):
シート表面に筋状のマークがあり、ロール表面の汚れもある。
不良(表中、×で示す):
シート表面に筋状のマークが多く、ロール表面の汚れも著しい。
(エ)長期信頼性
第1実施態様と同様の方法にて長期信頼性の評価を行った。
実施例3−1−3−4のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、いずれも、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。さらに、これらのポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例3−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
比較例3−2のポリカーボネート樹脂組成物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を上回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。
比較例3−3のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する脂肪酸エステル(C)の量が0.03重量部未満である。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物を280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。さらに、該ポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性にも劣る。
比較例3−4のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する脂肪酸エステル(C)の量が0.5重量部を超える。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣る。さらに、該ポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性にも劣る。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、例えば、光学レンズ、車両ランプ用ライトガイド、導光フィルム、面発光体材料、銘板等の成形品として好適に用いることができる。
本開示は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性等に優れていることから、従来より、例えば導光板、各種レンズ、銘板等の成形品に利用されている。
例えば特許文献1には、重量平均分子量と数平均分子量との比が特定範囲に規定された芳香族ポリカーボネート樹脂に、安定剤及び離型剤が配合された導光板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、導光板用の樹脂組成物として、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィン共重合体等の、高い光線透過率及び低い複屈折性を備えた熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、ポリカーボネート樹脂に、ポリスチレン及び1種のリン系酸化防止剤が配合された光学用成形品用ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、特定の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に、2種のフォスファイト系安定剤及び脂肪酸エステルが配合され、一方のフォスファイト系安定剤が、特定構造を有し、かつ他方のフォスファイト系安定剤よりも少量である導光部材用ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、近年、光学用成形品には、光線透過率だけでなく、例えば熱安定性、機械的強度、色相、輝度、押出成形性、耐候性、長期信頼性等の各種特性のうち、その用途に応じた特性の兼備が要求されてきており、特許文献1〜4に開示の樹脂組成物は、かかる要求を充分に満足し得るものではない。
特開2007−204737号公報
特開2007−214001号公報
特開2011−133647号公報
特開2013−234233号公報
本開示は、成形品の用途に応じて優れた特性を付与し得るポリカーボネート樹脂組成物を提供する。また本開示は、該ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、各種用途に適した成形品を提供する。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物は、
ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)と、紫外線吸収剤(D)とを含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、
前記脂肪酸エステル(C)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、
前記紫外線吸収剤(D)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1重量部であり、
前記リン系酸化防止剤(B)が
、2種の化合物で、該2種の化合物のうちの1種が、一般式(1)
で表される化合物であり、
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
前記リン系酸化防止剤(B)の他の1種が、一般式(2)〜(4)のいずれかで表される化合物であり、
(式中、R 2 、R 3 、R 5 及びR 6 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R 4 は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR 7 −(ここで、R 7 は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR 8 −(ここで、R 8 は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
(式中、R 9 及びR 10 は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
(式中、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す)
前記一般式(1)で表される化合物の量が、リン系酸化防止剤(B)全量の
42〜72重量%である
ものである。
本開示における成形品は、上述したポリカーボネート樹脂組成物を成形したものである。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる本開示における成形品は、高い光線透過率だけでなく、優れた熱安定性、高い機械的強度、優れた色相、高い輝度、優れた押出成形性、優れた耐候性等を有するほか、高温高湿条件下に供した後であっても光線透過率の低下が少なく、優れた長期信頼性も有している。
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
(実施の形態1:ポリカーボネート樹脂組成物)
実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)と、紫外線吸収剤(D)とを含有したものである。なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000、さらには12000〜30000であることが好ましい。なお、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
リン系酸化防止剤(B)は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び色相を向上させる成分である。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤(B)として、少なくとも2種の化合物が含有される。少なくとも2種の化合物のうちの1種は、一般式(1):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物である。
前記一般式(1)において、R1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
前記一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(2):
(式中、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R
4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR
7−(ここで、R
7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR
8−(ここで、R
8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(2)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
前記R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R2及びR5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
前記R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR7−中のR7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR8−におけるR8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
さらに一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(3):
(式中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(3)において、R9及びR10は、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「アデカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
さらに一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(4):
(式中、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]等が挙げられ、例えば、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP−EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(B)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、0.05〜0.09重量部であることが好ましい。リン系酸化防止剤(B)の量が0.04重量部未満の場合は、熱安定性及び色相の向上効果が不充分である。逆にリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超える場合も、熱安定性及び色相の向上効果が不充分となってしまう。
一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば前記一般式(2)〜(4)で表される化合物等の中から、少なくとも1種を適宜選択して用いればよい。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤(B)として、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の化合物とが、併せて少なくとも2種含有されているが、一般式(1)で表される化合物の量は、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%であり、42〜70重量%であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%未満の場合は、特に熱安定性の向上効果が不充分で、高温での成形加工により、黄変が抑制されずに色相が低下してしまう。逆に一般式(1)で表される化合物の量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を超える場合も、特に熱安定性の向上効果が不充分で、高温での成形加工により、黄変が抑制されずに色相が低下してしまう。
脂肪酸エステル(C)は、前記リン系酸化防止剤(B)とともに作用し、得られるポリカーボネート樹脂組成物の黄変を抑制し、色相を向上させる成分である。さらに、脂肪酸エステル(C)は、押出成形によって成形品を製造する際の押出成形性を、ポリカーボネート樹脂組成物に付与する成分である。
脂肪酸エステル(C)としては、通常の脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物を用いることができる。
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。なお、該脂肪族カルボン酸には、脂環式カルボン酸も含まれる。これらの中でも、炭素数6〜36の、モノカルボン酸及びジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
前記脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
前記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられ、これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数30以下の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の、脂肪族飽和一価アルコール及び脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、脂肪族アルコールには、脂環式アルコールも含まれる。
前記アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪酸エステル(C)の具体例としては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート等のステアリン酸エステルが好適であり、例えば、理研ビタミン(株)製のリケマールS−100A(商品名)や日油(株)製のユニスターH476DP(「ユニスター」は登録商標)が商業的に入手可能である。
前記脂肪酸エステル(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、0.05〜0.2重量部であることが好ましい。脂肪酸エステル(C)の量が0.03重量部未満の場合は、黄変を抑制し、色相を向上させる効果や、押出成形性を付与する効果が不充分である。逆に脂肪酸エステル(C)の量が0.5重量部を超える場合も、色相を向上させる効果や、押出成形性を付与する効果が不充分となってしまう。
紫外線吸収剤(D)は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる成分であり、ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途に応じて適宜用いることができる。後述するように、例えば成形品を光学レンズとする場合には、該紫外線吸収剤(D)が配合されたポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、太陽光やLED照明等による照射後であっても、成形品の光線透過率が高いままに維持され得る。
紫外線吸収剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、一般式(5):
(式中、R
15及びR
16は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、d及びeは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物等が挙げられる。
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、式(6):
で表される化合物等が挙げられ、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSanduvor VSU等が商業的に入手可能である。
紫外線吸収剤(D)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1重量部であり、0.05〜0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤(D)の量が1重量部を超える場合は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下するおそれがある。なお、紫外線吸収剤(D)の量が0.1重量部以上の場合は特に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が大きく奏される。
さらに、実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本開示における効果を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、リン系酸化防止剤(B)、脂肪酸エステル(C)及び紫外線吸収剤(D)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
(実施の形態2:成形品)
実施の形態2に係る成形品は、前記のごとく得られる実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるものである。
前記成形品の製造方法には特に限定がなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
本開示における成形品としては、光学レンズ、車両ランプ用ライトガイド、導光フィルム、面発光体材料、銘板等が好適に例示される。
特に、成形品を光学レンズとする場合、前記紫外線吸収剤(D)が配合され、より耐候性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、太陽光やLED照明等による照射後であっても、成形品の光線透過率が高いままに維持され得る。
特に、成形品が車両ランプ用ライトガイドである場合、該車両ランプ用ライトガイドは、熱安定性に優れ、高温で成形加工した場合でも高い光線透過率を有し、黄変が充分に抑制されて色相に優れるものであり、その近傍に備えられたLED等の光源を利用して点灯し、高い視認性を発揮する照明具として利用される。よって、該車両ランプ用ライトガイドは、厚さ0.4mm程度の薄型であっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、工業的利用価値が極めて高い。
なお、本開示における車両ランプ用ライトガイド(デイタイムライトガイド)とは、ヘッドランプ等の車両前照灯、フォグランプ等の補助前照灯、デイタイムランニングランプ等の各種車両用灯具近傍に備えられる、昼間点灯用のライトガイドをいう。
特に、成形品が導光フィルムである場合、該導光フィルムは、熱安定性に優れ、高温で成形加工した場合でも高い光線透過率を有し、黄変が充分に抑制されて色相に優れる。よって、該導光フィルムは、600μm程度以下の厚さであっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、輝度、光線透過率及び色相安定性のバランスが良好であるとともに、押出成形性にも優れるため、工業的利用価値が極めて高い。
なお、本開示における導光フィルムとは、例えば、スマートフォン等の携帯型コンピュータの液晶表示装置等の各種表示部に用いられる、好ましくは厚さ600μm以下、さらに好ましくは厚さ400μm以下のフィルムをいう。
本開示における導光フィルムは、前記ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを押出成形等することによって得られる。導光フィルムの製造方法には特に限定がなく、例えば、公知のTダイ押出成形法、カレンダ成形法等の従来の成形法を採用することができる。また、公知の射出成形法、圧縮成形法等により、ポリカーボネート樹脂組成物のシート状成形品を得て、必要に応じて、該シート状成形品から切削加工等によって所望の厚さのフィルムに加工してもよい。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−30
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:18000、以下「PC」という)
2.リン系酸化防止剤(B)
2−1.以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
イルガフォス168
(商品名、BASF社製、以下「B1」という)
2−2.以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン
アデカスタブPEP−36
(商品名、(株)ADEKA製、以下「B2」という)
3.脂肪酸エステル(C)
グリセリンモノステアレート
リケマールS−100A
(商品名、理研ビタミン(株)製、以下「GM」という)
4.紫外線吸収剤(D)
2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
TINUVIN 329
(商品名、BASF社製、以下「UV」という)
(1)第1実施態様
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−2
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度240℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
なお、実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−2で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例1−1 約5.0 約3.9 約2.6
1−2 約5.1 約4.1 約2.4
1−3 約5.1 約4.0 約2.8
比較例1−1 約5.0 約4.0 約2.5
1−2 約5.2 約4.3 約2.9
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表1に示す。
(ア)初期色相
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度280℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この168mm長光路試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について、標準光源D65を用い、10度視野にて測定した。測定した分光透過率に基づき、各々の黄色度を求め、これを168mm長の初期色相YIとした。なお、YIが13以下を良好(表中、○で示す)、13を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(イ)黄変抑制効果
溶融ペレットを前記(ア)初期色相で用いた射出成形機のシリンダ内にて280℃で15分間滞留させた後、前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。
この試験片について、前記(ア)と同様にして168mm長のYIを求め、得られた値から(ア)で求めた値を減じてΔYIを算出した。なお、ΔYIが11以下を良好(表中、○で示す)、11を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(ウ)長期信頼性
前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、試験前積算透過率を求めた。
次に、前記試験片を恒温恒湿槽(ADVANTEC社製、恒温恒湿器AG−327)中に設置し、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間、加水分解試験を行った。試験終了後、前記と同様にして試験片の試験後積算透過率を求め、Δ積算透過率(積算透過率の差=試験前積算透過率−試験後積算透過率)を算出した。Δ積算透過率は、試験前後の積算透過率の変化の程度を表しており、Δ積算透過率が小さいほど、高温高湿条件に供した後であっても光線透過率の低下が少なく、長期信頼性に優れていることを示す。なお、Δ積算透過率が5000未満を良好(表中、○で示す)、5000以上を不良(表中、×で示す)とした。
実施例1−1〜1−3のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、いずれも、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例1−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
比較例1−2のポリカーボネート樹脂組成物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を上回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。
(2)第2実施態様
実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−2
前記各原料を、表2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、第1実施態様と同様の方法にてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−2で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例2−1 約5.1 約4.2 約2.7
2−2 約5.1 約4.1 約2.2
2−3 約5.3 約4.2 約2.2
2−4 約5.3 約3.9 約2.5
比較例2−1 約5.3 約4.2 約2.6
2−2 約5.4 約4.3 約2.3
得られたペレットを用い、第1実施態様と同様の方法にて各評価を行った。その結果を表2に示す。
なお(ア)初期色相の評価において、YIが16以下を良好(表中、○で示す)、16を超えると不良(表中、×で示す)とした。また(イ)黄変抑制効果の評価において、射出成形機のシリンダ内での滞留時間を10分間に変更し、ΔYIが18以下を良好(表中、○で示す)、18を超えると不良(表中、×で示す)とした。
実施例2−1〜2−4のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で10分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例2−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する紫外線吸収剤(D)の量が1重量部を超えている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣る。
比較例2−2のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で10分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
(3)第3実施態様
実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−4
前記各原料を、表3に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、第1実施態様と同様の方法にてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例3−1〜3−4及び比較例3−1〜3−4で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例3−1 約5.0 約3.9 約2.6
3−2 約5.1 約4.1 約2.4
3−3 約5.0 約4.0 約2.5
3−4 約5.2 約4.3 約2.8
比較例3−1 約5.2 約4.3 約2.9
3−2 約5.3 約3.8 約2.8
3−3 約5.0 約3.9 約2.4
3−4 約5.0 約3.9 約2.6
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表3に示す。
(ア)初期色相
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度280℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この168mm長光路試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について、標準光源D65を用い、10度視野にて測定した。測定した分光透過率に基づき、各々の黄色度を求め、これを168mm長の初期色相YIとした。なお、YIが13以下を良好(表中、○で示す)、13を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(イ)黄変抑制効果
溶融ペレットを前記(ア)初期色相で用いた射出成形機のシリンダ内にて280℃で15分間滞留させた後、前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。
この試験片について、前記(ア)と同様にして168mm長のYIを求め、得られた値から(ア)で求めた値を減じてΔYIを算出した。なお、ΔYIが11以下を良好(表中、○で示す)、11を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(ウ)押出成形性
押出シート成形機(田辺プラスチックス機械(株)製、単軸40mmシート押出機)を用い、スクリュウ回転数90rpm、溶融温度260℃の条件にて、得られたペレットから、幅250mm、厚さ0.5mmのシートを成形した。得られたシートの外観及び成形時の揮発成分によるロール表面の汚れを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、評価が優良又は良好であれば、実用上問題がないレベルである。
(評価基準)
優良(表中、◎で示す):
シート表面に筋状のマークが全くなく、ロール表面の汚れもない。
良好(表中、○で示す):
シート表面に筋状のマークが殆どなく、ロール表面の汚れも殆どない。
普通(表中、△で示す):
シート表面に筋状のマークがあり、ロール表面の汚れもある。
不良(表中、×で示す):
シート表面に筋状のマークが多く、ロール表面の汚れも著しい。
(エ)長期信頼性
第1実施態様と同様の方法にて長期信頼性の評価を行った。
実施例3−1−3−4のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、いずれも、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。さらに、これらのポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例3−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
比較例3−2のポリカーボネート樹脂組成物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を上回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。
比較例3−3のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する脂肪酸エステル(C)の量が0.03重量部未満である。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物を280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。さらに、該ポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性にも劣る。
比較例3−4のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する脂肪酸エステル(C)の量が0.5重量部を超える。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣る。さらに、該ポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性にも劣る。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、例えば、光学レンズ、車両ランプ用ライトガイド、導光フィルム、面発光体材料、銘板等の成形品として好適に用いることができる。
本開示は、ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性等に優れていることから、従来より、例えば導光板、各種レンズ、銘板等の成形品に利用されている。
例えば特許文献1には、重量平均分子量と数平均分子量との比が特定範囲に規定された芳香族ポリカーボネート樹脂に、安定剤及び離型剤が配合された導光板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、導光板用の樹脂組成物として、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、環状オレフィン共重合体等の、高い光線透過率及び低い複屈折性を備えた熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物が開示されている。
特許文献3には、ポリカーボネート樹脂に、ポリスチレン及び1種のリン系酸化防止剤が配合された光学用成形品用ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
特許文献4には、特定の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂に、2種のフォスファイト系安定剤及び脂肪酸エステルが配合され、一方のフォスファイト系安定剤が、特定構造を有し、かつ他方のフォスファイト系安定剤よりも少量である導光部材用ポリカーボネート樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、近年、光学用成形品には、光線透過率だけでなく、例えば熱安定性、機械的強度、色相、輝度、押出成形性、耐候性、長期信頼性等の各種特性のうち、その用途に応じた特性の兼備が要求されてきており、特許文献1〜4に開示の樹脂組成物は、かかる要求を充分に満足し得るものではない。
特開2007−204737号公報
特開2007−214001号公報
特開2011−133647号公報
特開2013−234233号公報
本開示は、成形品の用途に応じて優れた特性を付与し得るポリカーボネート樹脂組成物を提供する。また本開示は、該ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなり、各種用途に適した成形品を提供する。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物は、
ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)とを含有してなり、
前記リン系酸化防止剤(B)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、
前記脂肪酸エステル(C)の量が、前記ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、
前記リン系酸化防止剤(B)が、2種の化合物で、該2種の化合物のうちの1種が、一般式(1):
(式中、R 1 は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物であり、
前記リン系酸化防止剤(B)の他の1種が、一般式(3)で表される化合物であり、
(式中、R 9 及びR 10 は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
前記一般式(1)で表される化合物の量が、リン系酸化防止剤(B)全量の42〜70重量%であるものである。
本開示における成形品は、上述したポリカーボネート樹脂組成物を成形したものである。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる本開示における成形品は、高い光線透過率だけでなく、優れた熱安定性、高い機械的強度、優れた色相、高い輝度、優れた押出成形性、優れた耐候性等を有するほか、高温高湿条件下に供した後であっても光線透過率の低下が少なく、優れた長期信頼性も有している。
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは、当業者が本開示を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
(実施の形態1:ポリカーボネート樹脂組成物)
実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、リン系酸化防止剤(B)と、脂肪酸エステル(C)とを含有したものである。なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有していてもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000、さらには12000〜30000であることが好ましい。なお、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
リン系酸化防止剤(B)は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性及び色相を向上させる成分である。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤(B)として、少
なくとも2種の化合物が含有される。少なくとも2種の化合物のうちの1種は、一般式(1):
(式中、R
1は、炭素数1〜20のアルキル基を示し、aは、0〜3の整数を示す)
で表される化合物である。
前記一般式(1)において、R1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
前記一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(2):
(式中、R
2、R
3、R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R
4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR
7−(ここで、R
7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR
8−(ここで、R
8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(2)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
前記R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R2及びR5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
前記R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR7−中のR7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
一般式(2)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR8−におけるR8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基が
フォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
一般式(2)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
さらに一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(3):
(式中、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物が挙げられる。
前記一般式(3)において、R9及びR10は、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基であることが好ましい。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン、3,9−ビス(オクタデシロキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられ、例えば、(株)ADEKA製のアデカスタブPEP−36A、アデカスタブPEP−8(「ア
デカスタブ」は登録商標)が商業的に入手可能である。これらの中でも3,9−ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカンが好適である。
さらに一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば、一般式(4):
(式中、R
11、R
12、R
13及びR
14は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す)
で表される化合物が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、[1,1´−ビフェニル]−4,4´−ジイルビス[ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ)フォスフィン]等が挙げられ、例えば、クラリアントジャパン(株)製のサンドスタブP−EPQ(商品名)が商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(B)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.04〜0.1重量部であり、0.05〜0.09重量部であることが好ましい。リン系酸化防止剤(B)の量が0.04重量部未満の場合は、熱安定性及び色相の向上効果が不充分である。逆にリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超える場合も、熱安定性及び色相の向上効果が不充分となってしまう。
一般式(1)で表される化合物以外のリン系酸化防止剤(B)としては、例えば前記一般式(2)〜(4)で表される化合物等の中から、少なくとも1種を適宜選択して用いればよい。
本開示におけるポリカーボネート樹脂組成物には、リン系酸化防止剤(B)として、前記一般式(1)で表される化合物とそれ以外の化合物とが、併せて少なくとも2種含有されているが、一般式(1)で表される化合物の量は、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%であり、42〜70重量%であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物の量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%未満の場合は、特に熱安定性の向上効果が不充分で、高温での成形加工により、黄変が抑制されずに色相が低下してしまう。逆に一般式(1)で表される化合物の量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を超える場合も、特に熱安定性の向上効果が不充分で、高温での成形加工により、黄変が抑制されずに色相が低下してしまう。
脂肪酸エステル(C)は、前記リン系酸化防止剤(B)とともに作用し、得られるポリカーボネート樹脂組成物の黄変を抑制し、色相を向上させる成分である。さらに、脂肪酸エステル(C)は、押出成形によって成形品を製造する際の押出成形性を、ポリカーボネート樹脂組成物に付与する成分である。
脂肪酸エステル(C)としては、通常の脂肪族カルボン酸とアルコールとの縮合化合物を用いることができる。
前記脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等が挙げられる。なお、該脂肪族カルボン酸には、脂環式カルボン酸も含まれる。これらの中でも、炭素数6〜36の、モノカルボン酸及びジカルボン酸が好ましく、炭素数6〜36の飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。
前記脂肪族カルボン酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等が挙げられる。
前記アルコールとしては、飽和又は不飽和の、一価アルコール及び多価アルコールが挙げられ、これらのアルコールは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素数30以下の飽和アルコールが好ましく、炭素数30以下の、脂肪族飽和一価アルコール及び脂肪族飽和多価アルコールがさらに好ましい。なお、脂肪族アルコールには、脂環式アルコールも含まれる。
前記アルコールの具体例としては、例えば、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
脂肪酸エステル(C)の具体例としては、例えば、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート等のステアリン酸エステルが好適であり、例えば、理研ビタミン(株)製のリケマールS−100A(商品名)や日油(株)製のユニスターH476DP(「ユニスター」は登録商標)が商業的に入手可能である。
前記脂肪酸エステル(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.03〜0.5重量部であり、0.05〜0.2重量部であることが好ましい。脂肪酸エステル(C)の量が0.03重量部未満の場合は、黄変を抑制し、色相を向上させる効果や、押出成形性を付与する効果が不充分である。逆に脂肪酸エステル(C)の量が0.5重量部を超える場合も、色相を向上させる効果や、押出成形性を付与する効果が不充分となってしまう。
紫外線吸収剤(D)は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる成分であり、ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られる成形品の用途に応じて適宜用いることができる。後述するように、例えば成形品を光学レンズとする場合には、該紫外線吸収剤(D)が配合されたポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、太陽光やLED照明等による照射後であっても、成形品の光線透過率が高いままに維持され得る。
紫外線吸収剤(D)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物等の、ポリカーボネート樹脂に通常配合される紫外線吸収剤を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、一般式(5):
(式中、R
15及びR
16は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、d及びeは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
で表される化合物等が挙げられる。
一般式(5)で表される化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン等が挙げられ、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、式(6):
で表される化合物等が挙げられ、例えば、クラリアントジャパン(株)製のSanduvor VSU等が商業的に入手可能である。
紫外線吸収剤(D)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0〜1重量部であり、0.05〜0.5重量部であることが好ましい。紫外線吸収剤(D)の量が1重量部を超える場合は、得られるポリカーボネート樹脂組成物の初期の色相が低下するおそれがある。なお、紫外線吸収剤(D)の量が0.1重量部以上の場合は特に、ポリカーボネート樹脂組成物の耐候性をより向上させる効果が大きく奏される。
さらに、実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物には、本開示における効果を損なわない範囲で、例えば、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されて
いてもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、リン系酸化防止剤(B)、脂肪酸エステル(C)及び紫外線吸収剤(D)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。これらの方法により、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
前記のごとく得られるポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
(実施の形態2:成形品)
実施の形態2に係る成形品は、前記のごとく得られる実施の形態1に係るポリカーボネート樹脂組成物を成形して得られるものである。
前記成形品の製造方法には特に限定がなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
本開示における成形品としては、光学レンズ、車両ランプ用ライトガイド、導光フィルム、面発光体材料、銘板等が好適に例示される。
特に、成形品を光学レンズとする場合、前記紫外線吸収剤(D)が配合され、より耐候性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を用いることにより、太陽光やLED照明等による照射後であっても、成形品の光線透過率が高いままに維持され得る。
特に、成形品が車両ランプ用ライトガイドである場合、該車両ランプ用ライトガイドは、熱安定性に優れ、高温で成形加工した場合でも高い光線透過率を有し、黄変が充分に抑制されて色相に優れるものであり、その近傍に備えられたLED等の光源を利用して点灯し、高い視認性を発揮する照明具として利用される。よって、該車両ランプ用ライトガイドは、厚さ0.4mm程度の薄型であっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、工業的利用価値が極めて高い。
なお、本開示における車両ランプ用ライトガイド(デイタイムライトガイド)とは、ヘッドランプ等の車両前照灯、フォグランプ等の補助前照灯、デイタイムランニングランプ等の各種車両用灯具近傍に備えられる、昼間点灯用のライトガイドをいう。
特に、成形品が導光フィルムである場合、該導光フィルムは、熱安定性に優れ、高温で成形加工した場合でも高い光線透過率を有し、黄変が充分に抑制されて色相に優れる。よ
って、該導光フィルムは、600μm程度以下の厚さであっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、輝度、光線透過率及び色相安定性のバランスが良好であるとともに、押出成形性にも優れるため、工業的利用価値が極めて高い。
なお、本開示における導光フィルムとは、例えば、スマートフォン等の携帯型コンピュータの液晶表示装置等の各種表示部に用いられる、好ましくは厚さ600μm以下、さらに好ましくは厚さ400μm以下のフィルムをいう。
本開示における導光フィルムは、前記ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを押出成形等することによって得られる。導光フィルムの製造方法には特に限定がなく、例えば、公知のTダイ押出成形法、カレンダ成形法等の従来の成形法を採用することができる。また、公知の射出成形法、圧縮成形法等により、ポリカーボネート樹脂組成物のシート状成形品を得て、必要に応じて、該シート状成形品から切削加工等によって所望の厚さのフィルムに加工してもよい。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−30
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:18000、以下「PC」という)
2.リン系酸化防止剤(B)
2−1.以下の式で表される、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
イルガフォス168
(商品名、BASF社製、以下「B1」という)
2−2.以下の式で表される、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジフォスファスピロ[5,5]ウンデカン
アデカスタブPEP−36
(商品名、(株)ADEKA製、以下「B2」という)
3.脂肪酸エステル(C)
グリセリンモノステアレート
リケマールS−100A
(商品名、理研ビタミン(株)製、以下「GM」という)
(1)第1実施態様
実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−2
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度240℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
なお、実施例1−1〜1−3及び比較例1−1〜1−2で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例1−1 約5.0 約3.9 約2.6
1−2 約5.1 約4.1 約2.4
1−3 約5.1 約4.0 約2.8
比較例1−1 約5.0 約4.0 約2.5
1−2 約5.2 約4.3 約2.9
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表1に示す。
(ア)初期色相
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度280℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この168mm長光路試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光
源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について、標準光源D65を用い、10度視野にて測定した。測定した分光透過率に基づき、各々の黄色度を求め、これを168mm長の初期色相YIとした。なお、YIが13以下を良好(表中、○で示す)、13を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(イ)黄変抑制効果
溶融ペレットを前記(ア)初期色相で用いた射出成形機のシリンダ内にて280℃で15分間滞留させた後、前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。
この試験片について、前記(ア)と同様にして168mm長のYIを求め、得られた値から(ア)で求めた値を減じてΔYIを算出した。なお、ΔYIが11以下を良好(表中、○で示す)、11を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(ウ)長期信頼性
前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、試験前積算透過率を求めた。
次に、前記試験片を恒温恒湿槽(ADVANTEC社製、恒温恒湿器AG−327)中に設置し、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間、加水分解試験を行った。試験終了後、前記と同様にして試験片の試験後積算透過率を求め、Δ積算透過率(積算透過率の差=試験前積算透過率−試験後積算透過率)を算出した。Δ積算透過率は、試験前後の積算透過率の変化の程度を表しており、Δ積算透過率が小さいほど、高温高湿条件に供した後であっても光線透過率の低下が少なく、長期信頼性に優れていることを示す。なお、Δ積算透過率が5000未満を良好(表中、○で示す)、5000以上を不良(表中、×で示す)とした。
実施例1−1〜1−3のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、いずれも、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例1−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
比較例1−2のポリカーボネート樹脂組成物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を上回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。
(2)第2実施態様
実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−4
前記各原料を、表2に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、第1実施態様と同様の方法にてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。なお、実施例2−1〜2−4及び比較例2−1〜2−4で得られたペレットは、いずれも、ほぼ楕円柱状であり、ペレット100個からなる集合体のサイズ(平均値(mm))は、各々以下のとおりである。
長さ 断面楕円の長径 断面楕円の短径
実施例2−1 約5.0 約3.9 約2.6
2−2 約5.1 約4.1 約2.4
2−3 約5.0 約4.0 約2.5
2−4 約5.2 約4.3 約2.8
比較例2−1 約5.2 約4.3 約2.9
2−2 約5.3 約3.8 約2.8
2−3 約5.0 約3.9 約2.4
2−4 約5.0 約3.9 約2.6
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって各評価を行った。その結果を表2に示す。
(ア)初期色相
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度280℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この168mm長光路試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用い、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片の分光透過率を全長方向について、標準光源D65を用い、10度視野にて測定した。測定した分光透過率に基づき、各々の黄色度を求め、これを168mm長の初期色相YIとした。なお、YIが13以下を良好(表中、○で示す)、13を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(イ)黄変抑制効果
溶融ペレットを前記(ア)初期色相で用いた射出成形機のシリンダ内にて280℃で15分間滞留させた後、前記(ア)と同様にして168mm長光路試験片を作製した。
この試験片について、前記(ア)と同様にして168mm長のYIを求め、得られた値から(ア)で求めた値を減じてΔYIを算出した。なお、ΔYIが11以下を良好(表中、○で示す)、11を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(ウ)押出成形性
押出シート成形機(田辺プラスチックス機械(株)製、単軸40mmシート押出機)を用い、スクリュウ回転数90rpm、溶融温度260℃の条件にて、得られたペレットから、幅250mm、厚さ0.5mmのシートを成形した。得られたシートの外観及び成形時の揮発成分によるロール表面の汚れを目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。なお、評価が優良又は良好であれば、実用上問題がないレベルである。
(評価基準)
優良(表中、◎で示す):
シート表面に筋状のマークが全くなく、ロール表面の汚れもない。
良好(表中、○で示す):
シート表面に筋状のマークが殆どなく、ロール表面の汚れも殆どない。
普通(表中、△で示す):
シート表面に筋状のマークがあり、ロール表面の汚れもある。
不良(表中、×で示す):
シート表面に筋状のマークが多く、ロール表面の汚れも著しい。
(エ)長期信頼性
第1実施態様と同様の方法にて長期信頼性の評価を行った。
実施例2−1〜2−4のポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(B)として2種の化合物が配合されているだけでなく、一般式(1)で表される化合物であるトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量が、リン系酸化防止剤(B)
全量の40〜80重量%の範囲内に調整されている。したがって、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、いずれも、黄色度が小さく、初期色相に優れるだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片であっても、黄変が充分に抑制されており、熱安定性に優れる。さらに、これらのポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性に優れる。しかも、これらのポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、温度90℃、相対湿度90%の条件下で500時間に渡って加水分解試験を行った後でも、光線透過率の低下が非常に少なく、長期信頼性にも優れている。
これに対して、比較例2−1のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対するリン系酸化防止剤(B)の量が0.1重量部を超え、かつトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の40重量%を下回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。しかも、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、高温高湿条件下で長時間に渡って加水分解試験を行った後には、光線透過率の低下が著しく、長期信頼性にも劣っている。
比較例2−2のポリカーボネート樹脂組成物は、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトの量がリン系酸化防止剤(B)全量の80重量%を上回っている。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣るだけでなく、280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。
比較例2−3のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する脂肪酸エステル(C)の量が0.03重量部未満である。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物を280℃で15分間滞留させた後に成形された168mm長光路試験片は、黄変が充分に抑制されておらず、熱安定性に劣る。さらに、該ポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性にも劣る。
比較例2−4のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対する脂肪酸エステル(C)の量が0.5重量部を超える。したがって、該ポリカーボネート樹脂組成物から成形された168mm長光路試験片は、黄色度が大きく、初期色相に劣る。さらに、該ポリカーボネート樹脂組成物は、シートに成形する際の押出成形性にも劣る。
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本開示は、例えば、光学レンズ、車両ランプ用ライトガイド、導光フィルム、面発光体材料、銘板等の成形品として好適に用いることができる。