JPWO2016121817A1 - ポリイミド前駆体組成物およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法 - Google Patents

ポリイミド前駆体組成物およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2016121817A1
JPWO2016121817A1 JP2016572103A JP2016572103A JPWO2016121817A1 JP WO2016121817 A1 JPWO2016121817 A1 JP WO2016121817A1 JP 2016572103 A JP2016572103 A JP 2016572103A JP 2016572103 A JP2016572103 A JP 2016572103A JP WO2016121817 A1 JPWO2016121817 A1 JP WO2016121817A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polyimide
precursor composition
polyamic acid
coating layer
polyimide precursor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2016572103A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6760083B2 (ja
Inventor
武史 寺田
武史 寺田
剛成 中山
剛成 中山
圭吾 長尾
圭吾 長尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ube Industries Ltd filed Critical Ube Industries Ltd
Publication of JPWO2016121817A1 publication Critical patent/JPWO2016121817A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6760083B2 publication Critical patent/JP6760083B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08GMACROMOLECULAR COMPOUNDS OBTAINED OTHERWISE THAN BY REACTIONS ONLY INVOLVING UNSATURATED CARBON-TO-CARBON BONDS
    • C08G73/00Macromolecular compounds obtained by reactions forming a linkage containing nitrogen with or without oxygen or carbon in the main chain of the macromolecule, not provided for in groups C08G12/00 - C08G71/00
    • C08G73/06Polycondensates having nitrogen-containing heterocyclic rings in the main chain of the macromolecule
    • C08G73/10Polyimides; Polyester-imides; Polyamide-imides; Polyamide acids or similar polyimide precursors
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08KUse of inorganic or non-macromolecular organic substances as compounding ingredients
    • C08K5/00Use of organic ingredients
    • C08K5/49Phosphorus-containing compounds
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C08ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
    • C08LCOMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
    • C08L79/00Compositions of macromolecular compounds obtained by reactions forming in the main chain of the macromolecule a linkage containing nitrogen with or without oxygen or carbon only, not provided for in groups C08L61/00 - C08L77/00
    • C08L79/04Polycondensates having nitrogen-containing heterocyclic rings in the main chain; Polyhydrazides; Polyamide acids or similar polyimide precursors
    • C08L79/08Polyimides; Polyester-imides; Polyamide-imides; Polyamide acids or similar polyimide precursors
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B17/00Insulators or insulating bodies characterised by their form
    • H01B17/56Insulating bodies
    • H01B17/60Composite insulating bodies
    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01BCABLES; CONDUCTORS; INSULATORS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR CONDUCTIVE, INSULATING OR DIELECTRIC PROPERTIES
    • H01B3/00Insulators or insulating bodies characterised by the insulating materials; Selection of materials for their insulating or dielectric properties
    • H01B3/18Insulators or insulating bodies characterised by the insulating materials; Selection of materials for their insulating or dielectric properties mainly consisting of organic substances
    • H01B3/30Insulators or insulating bodies characterised by the insulating materials; Selection of materials for their insulating or dielectric properties mainly consisting of organic substances plastics; resins; waxes

Abstract

本発明は、特定のポリアミック酸と、特定のリン化合物とを含み、前記ポリアミック酸が、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できるものであることを特徴とする、ポリイミド絶縁被覆層形成用のポリイミド前駆体組成物に関する。

Description

本発明は、優れた耐熱性を有するポリイミド絶縁被覆層を効率よく製造することができるポリイミド前駆体組成物、およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法に関する。
ポリイミド樹脂は、非常に耐熱性に優れた樹脂として知られており、様々な分野で広く利用されている。例えば、高い耐熱性に加えて、低誘電率で機械特性にも優れるため、要求特性の高い電線の絶縁層として用いられている。特許文献1には、芯線上に、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4、4’−ジアミノジフェニルエーテルとの反応により得られるポリアミック酸をイミド化した絶縁層が設けられていることを特徴とする絶縁被覆電線が記載されており、このポリイミド絶縁被覆電線は、熱劣化に対する優れた抵抗性を有していることが記載されている。
ポリイミドは、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の組み合わせによって結晶性となることがあり、その結果、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸をイミド化する際の条件に制限が生じることがある。例えば、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いると、結晶性のポリイミド樹脂が得られ易く、イミド化の条件によっては、特に、急速な昇温による短時間の熱処理によりイミド化を行おうとすると、部分的な結晶化を起こし易い。そのため、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリアミック酸をイミド化してポリイミド層を形成する場合、昇温速度を上げて生産性を高めることができない場合があった。
このようなテトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリアミック酸をイミド化してポリイミド絶縁被覆層を形成する方法であって、急速な昇温を行っても、結晶化を起こすことなく、ポリイミド絶縁被覆層を形成できる方法が特許文献2に記載されている。具体的には、基材にポリイミド前駆体組成物を塗布、焼付けする工程を有するポリイミド絶縁被覆層の製造方法であって、ポリイミド前駆体組成物が、テトラカルボン酸成分として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリアミック酸と、イミダゾール類及びアミン化合物からなる群より選択される塩基性化合物とを含み、かつ、焼付け工程において、ポリイミド前駆体組成物を加熱する時間が10〜180秒間であり、100℃から280℃までの平均昇温速度が5℃/s以上であり、最高加熱温度が300〜500℃であることを特徴とする絶縁被覆層の製造方法が特許文献2に記載されている。
特開昭61−273806号公報 国際公開第2014/142173号パンフレット
本発明は、結晶性のポリイミドを与えやすいテトラカルボン酸成分とジアミン成分の組み合わせであるポリアミック酸、特に、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリアミック酸をイミド化してポリイミド絶縁被覆層を形成するポリイミド絶縁被覆層の製造方法において、急速な昇温を行っても欠陥なくポリイミド絶縁被覆層を形成できる方法を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、耐熱性、機械的特性に優れたポリイミド樹脂の絶縁被覆層を、結晶化を起こすことなく、短時間で形成できるポリイミド前駆体組成物(ポリアミック酸組成物)を提供すること、また、それを用いた工業的に有利な絶縁被覆層の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は以下の項に関する。
1. ポリアミック酸と溶媒とリン化合物とを含むポリイミド前駆体組成物であって、
前記ポリアミック酸が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含み、それらの合計含有量が50〜100モル%であるテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸であり、
前記リン化合物が、リン酸エステルおよび下記一般式(1)で表されるリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類であり、
前記ポリアミック酸が、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できるものであることを特徴とする、ポリイミド絶縁被覆層形成用のポリイミド前駆体組成物。
Figure 2016121817
(式中、R1は、炭素数が1〜6のアルキレン基であり、R2はフェニル基又はシクロヘキシル基である。)
2. テトラカルボン酸成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50〜95モル%含む、前記項1に記載のポリイミド絶縁被覆層形成用のポリイミド前駆体組成物。
3. 基材にポリイミド前駆体組成物を塗布、焼付けする工程を有するポリイミド絶縁被覆層の製造方法であって、
ポリイミド前駆体組成物が、ポリアミック酸と溶媒とリン化合物とを含み、
ポリイミド前駆体組成物に含まれるポリアミック酸が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含み、それらの合計含有量が50〜100モル%であるテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸であり、
リン化合物が、リン酸エステルおよび下記一般式(1)で表されるリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類であり、
かつ、前記ポリアミック酸が、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できるものであり、
焼付け工程において、
ポリイミド前駆体組成物を加熱する時間が10〜180秒間であり、
100℃から280℃までの平均昇温速度が5℃/s以上であり、
最高加熱温度が300〜500℃であることを特徴とする絶縁被覆層の製造方法。
Figure 2016121817
(式中、R1は、炭素数が1〜6のアルキレン基であり、R2はフェニル基又はシクロヘキシル基である。)
4. テトラカルボン酸成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50〜95モル%含む、前記項3に記載の絶縁被覆層の製造方法。
なお、本明細書において、ポリイミド絶縁被覆層、ポリイミド層、ポリイミド被膜、ポリイミドフィルムは、ポリイミドから主としてなるものを指し、リン等を含有するものも含まれる。
本発明により、耐熱性、機械的特性に優れたポリイミド樹脂の絶縁被覆層を、結晶化を起こすことなく、短時間で形成できるポリイミド前駆体組成物を提供することができる。本発明のポリイミド前駆体組成物を用いることにより、耐熱性、機械的特性に優れたポリイミド樹脂の絶縁被覆層を、結晶化を起こすことなく、短時間で形成することができる。また、本発明のポリイミド前駆体組成物を用いることにより、特に、高温における熱分解が抑制され、また、基材との接着強度に優れた、信頼性の高い絶縁被覆層を形成することができる。本発明のポリイミド前駆体組成物、およびそれを用いた本発明の絶縁被覆層の製造方法は、特に、絶縁電線の製造に好適に適用でき、優れた耐熱性を有するとともに、絶縁被覆層に欠陥がない、信頼性の高い絶縁電線を効率よく製造することができる。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、特定の水蒸気透過係数を有するポリイミドフィルムを与える特定のポリアミック酸を用いること、さらに、特定のリン化合物を添加することを特徴とする。
本発明で用いるポリアミック酸は、テトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸成分にはテトラカルボン酸二無水物も含まれる)とジアミン成分とを溶媒中で、例えば、水又は有機溶媒中で、又は水と有機溶媒の混合溶媒中で反応させることにより得られる。このポリアミック酸は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50〜100モル%含むテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50〜100モル%含むジアミン成分とから得られるものである。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とは複数の異性体を含む総称であり、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、および2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がこの中に含まれる。
また、このポリアミック酸は、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、特には、室温(25℃)から400℃まで30分間かけて昇温し、400℃にて10分間加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造することができるものである。
本発明で用いるテトラカルボン酸成分は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含み、それらの合計含有量が50〜100モル%であることが好ましい。特に、耐熱性や機械的特性の観点から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以上用いるのが好ましい。前述のとおり、通常、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いる場合、急速な昇温による短時間の熱処理によりイミド化を行おうとすると、部分的な結晶化を起こし易いが、本発明によれば、急速な昇温を行っても、結晶化を起こすことなく、ポリイミド層を形成できる。テトラカルボン酸成分中の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量は、より好ましくは50〜95モル%である。
本発明では、テトラカルボン酸成分として、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のビフェニルテトラカルボン酸二無水物である、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50モル%以下の範囲で用いてもよいし、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸成分(テトラカルボン酸二無水物)を50モル%以下の範囲で用いてもよい。本発明でビフェニルテトラカルボン酸二無水物と組み合わせて用いることができるテトラカルボン酸二無水物は、特に限定するものではないが、得られるポリイミドの特性から芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましい。例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、p−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m−ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などを好適に挙げることができる。ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸成分を用いる場合、なかでも、得られるポリイミドの特性から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物またはピロメリット酸二無水物を用いることが特に好ましい。前述のテトラカルボン酸二無水物は一種である必要はなく、複数種の混合物であっても構わない。
本発明で用いるジアミン成分は、前述のとおり、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50〜100モル%含み、さらに、その他のジアミンを50モル%以下の範囲で用いることもできる。その他のジアミンとしては、特に限定するものではないが、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−メチレンビス(2,6−キシリジン)、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族ジアミン、へキサメチレンジアミン、へプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,12−ジアミノオクタデカンなどの脂肪族ジアミンを挙げることができる。前述のジアミンは一種である必要はなく、複数種の混合物であっても構わない。
本発明で用いるポリアミック酸は、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、特には、室温(25℃)から400℃まで30分間かけて昇温し、400℃にて10分間加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できることが必要である。特に水蒸気透過係数が1.2g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できることが好ましい。得られるポリイミドフィルムの水蒸気透過係数がこれより小さい値であると、ポリイミド絶縁被覆層の製造において、急速な昇温による短時間の熱処理によりイミド化を行おうとする際に部分的な結晶化を起こし易い。
ここで、イミド化過程における結晶化について説明する。イミド化過程においては、溶媒の蒸発とイミド化反応が平行して起こる。昇温速度が大きいと、イミド化反応の進行に対して溶媒の蒸発量が少なくなり、残存溶媒量が比較的多くなる。ポリアミック酸のイミド化が進行してイミド結合が生成すると、分子鎖の溶媒に対する溶解性が小さくなる。そのため、残存溶媒量が比較的多い状態では、分子鎖が結晶化して析出しやすくなる。一方、昇温速度が小さい場合、イミド化反応の進行に対して溶媒の蒸発量が多くなり、残存溶媒が少ないため、結晶化が起こりにくい。本発明のポリイミド前駆体組成物に用いるポリアミック酸からは気体を透過しやすいポリイミド樹脂が得られるため、溶媒が蒸発し易く、昇温速度が大きい条件における結晶化の問題が起こりにくくなる。
最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより得られるポリイミドフィルムの水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリアミック酸としては、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなるテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるジアミン成分で構成されるポリアミック酸が好ましい。この場合、テトラカルボン酸成分中の3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が95〜50モル%、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の含有量が5〜50モル%であることがさらに好ましい。
本発明で用いるポリアミック酸は、略等モルのテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、溶媒中で、イミド化反応を抑制するために100℃以下、好ましくは80℃以下の比較的低温で反応させることにより、ポリアミック酸溶液として得ることができる。
限定するものではないが、通常、反応温度は25℃〜100℃、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜80℃であり、反応時間は0.1〜24時間程度、好ましくは2〜12時間程度である。反応温度及び反応時間を前記範囲内とすることによって、生産効率よく高分子量のポリアミック酸溶液を容易に得ることができる。
なお、反応は、空気雰囲気下でも行うことができるが、通常は不活性ガス、好ましくは窒素ガス雰囲気下で好適に行われる。
略等モルのテトラカルボン酸二無水物とジアミンとは、具体的には、これらのモル比[テトラカルボン酸二無水物/ジアミン]で0.90〜1.10程度、好ましくは0.95〜1.05程度である。
本発明で用いる溶媒としては、ポリアミック酸を重合可能であればいずれの溶媒でもよく、水溶媒であっても、有機溶媒であってもよい。溶媒は2種以上の混合物であってもよく、2種以上の有機溶媒の混合溶媒、又は水と1種以上の有機溶媒の混合溶媒も好適に用いることができる。
本発明で用いることができる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、テトラヒドロフラン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、m−クレゾール、フェノール、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
なお、この反応に用いた溶媒が、本発明のポリイミド前駆体組成物に含まれる溶媒であることができる。
本発明で用いるポリアミック酸は、限定されないが、温度30℃、濃度0.5g/100mLで測定した対数粘度が0.2以上であることが好適である。対数粘度が前記範囲よりも低い場合には、ポリアミック酸の分子量が低いことから、高い特性のポリイミドを得ることが難しくなることがある。
本発明で用いるポリイミド前駆体組成物は、ポリアミック酸に起因する固形分濃度が、限定されないが、ポリアミック酸と溶媒との合計量に対して、好ましくは5質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜45質量%、より好ましくは10質量%〜45質量%、さらに好ましくは15質量%超〜40質量%であることが好適である。固形分濃度が5質量%より低いと使用時の取り扱いが悪くなることがあり、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。
また、本発明で用いるポリイミド前駆体組成物の30℃における溶液粘度は、限定されないが、好ましくは1000Pa・sec以下、より好ましくは0.5〜500Pa・sec、さらに好ましくは1〜300Pa・sec、特に好ましくは2〜200Pa・secであることが取り扱い上好適である。
本発明のポリイミド前駆体組成物は、ポリアミック酸と溶媒に加え、リン化合物を含有する。リン化合物の添加により、形成されるポリイミド絶縁被覆層の高温における熱分解が抑制され、また、基材との接着強度も向上する。
本発明で用いるリン化合物は、リン酸エステルおよび下記化学式(1)で表されるリン化合物からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
Figure 2016121817
(式中、R1は、炭素数が1〜6のアルキレン基であり、R2はフェニル基又はシクロヘキシル基である。)
化学式(1)のR1としては、炭素数が1〜4のアルキレン基が好ましい。
前記化学式(1)で表されるリン化合物のうち特に好ましいものとして、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,4−ビス(ジシクロへキシルホスフィノ)ブタンが挙げられる。
リン酸エステルは、リン酸とアルコールから誘導されたものであり、構造に特に制限はない。本発明で用いるリン酸エステルは、モノエステル、ジエステル、トリエステルのいずれでも構わないが、炭素数1〜18の脂肪族または芳香族アルコールから誘導されたものが好ましい。また、モノエステルおよびジエステルはアミン等と塩を形成していてもよい。
リン酸エステルとしては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリフェニル、および下記化学式(2)で表されるリン酸エステル化合物およびその塩が挙げられる。下記化学式(2)で表されるリン酸エステル化合物と塩を形成する化合物として、下記化学式(3)で表されるアミンが挙げられる。
Figure 2016121817
(式中、R3は水素原子または炭素数6〜18のアルキル基またはポリオキシエチレン基であり、R4は炭素数6〜18のアルキル基またはポリオキシエチレン基である。)
Figure 2016121817
(式中、R5、R6、R7は水素原子、ヒドロキシエチル基または炭素数1〜4のアルキル基である。)
また、本発明で用いるリン酸エステルとして下記化学式(4)で表されるリン酸エステル化合物を挙げることもできる。
Figure 2016121817
(式中、R8は、反応性官能基を有する炭素数3〜12の有機基である。)
化学式(4)のR8は反応性官能基、具体的には、炭素−炭素不飽和結合を有する炭素数3〜12の有機基であり、R8としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシエチル基などが挙げられる。
化学式(4)で表されるリン酸エステル化合物として、具体的には、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチル、リン酸ビス(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)が挙げられる。
なお、これらのリン化合物は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。また、その他のリン化合物を併用してもよい。
ポリイミド前駆体組成物中のリン化合物の添加量は、ポリアミック酸の質量に対して、0.1〜10質量%、より好ましくは0.5〜5質量%が好ましい。ポリイミド前駆体組成物中のリン化合物の濃度が少な過ぎると、400℃以上の温度領域において熱分解を抑制する効果を十分に得るのが難しくなる。一方、リン化合物の濃度が多過ぎると、得られるポリイミド絶縁被覆層にリンが多量に残存して、揮発成分(アウトガス)の原因になる場合があるので好ましくない。
リン化合物の添加はポリアミック酸の調製前でも調製後でも構わない。すなわち、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを溶媒中で反応させてポリアミック酸溶液を得た後、これにリン化合物を添加することによって、リン化合物を含む本発明のポリイミド前駆体組成物を得ることができる。また、溶媒にテトラカルボン酸成分とジアミン成分とリン化合物を加え、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを溶媒中、リン化合物の存在下で反応させることによっても、リン化合物を含む本発明のポリイミド前駆体組成物を得ることができる。
ポリイミド前駆体組成物は、加熱処理によって溶媒を除去するとともにイミド化(脱水閉環)することによってポリイミドとなるが、上記のような本発明のポリイミド前駆体組成物を用いることにより、ポリイミド絶縁被覆層の形成のために、短時間で昇温し高温で焼付ける工程を採用することが可能となる。ここで、短時間で昇温して高温で焼付けをするとは、例えば、ポリイミド前駆体組成物を加熱する時間が10〜180秒間であり、且つ、100℃から280℃までの平均昇温速度が5℃/s以上となる条件で昇温し、最高加熱温度が300〜500℃である工程である。
本発明では、公知の方法により上記のようなポリアミック酸と溶媒とリン化合物とを含むポリイミド前駆体組成物を基材に塗布し、加熱(焼付け)することによりポリイミド絶縁被覆層を形成する。この焼付け工程においては、ポリイミド前駆体組成物を加熱する時間(加熱炉で加熱する場合、加熱炉内にある時間)を10〜180秒間とし、100℃から280℃までの平均昇温速度を5℃/s以上とし、最高加熱温度を300〜500℃とすることができる。100℃から280℃までの平均昇温速度の上限は、特に限定されないが、例えば、50℃/s以下が好ましい。
本発明においては、さらに、100℃から300℃までの平均昇温速度を5℃/s以上(すなわち、100℃〜300℃まで40秒以内)としてもよく、100℃から最高加熱温度(300〜500℃)までの平均昇温速度を5℃/s以上としてもよい。100℃までの平均昇温速度も、特に限定されないが、5℃/s以上としてもよい。
本発明においては、100℃から280℃までの平均昇温速度が5℃/s以上(すなわち、100℃〜280℃まで36秒以内)であれば、室温から最高加熱温度までの昇温条件に制限はなく、一定の昇温速度で昇温してもよく、また加熱処理中に昇温速度を変更してもよく、段階的に昇温してもよい。
このイミド化のための加熱処理は、例えば、空気雰囲気下、あるいは不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
なお、上記以外の条件で、本発明のポリイミド前駆体組成物を加熱処理してポリイミド絶縁被覆層を形成することもできる。
なお、基材は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。また、形成するポリイミド絶縁被覆層の厚みも、特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。
本発明により得られるポリイミド絶縁被覆層は、高度の耐電圧性、耐熱性、及び耐湿熱性を有する絶縁部材(被覆層)である。したがって、電気・電子部品関連、自動車分野、航空宇宙分野等に特に好適に使用でき、HV車モーター用コイルや超小型モーターの分野にも使用可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
<絶縁被覆層の状態観察(被覆膜評価)>
得られた被覆層について目視により状態観察を行った。濁りが全くないものを良好、濁りがある領域が10%を越えているものを濁りありとした。「濁りがある」ということは、ポリイミド樹脂が少なくとも一部結晶化していることを示している。
<昇温速度の測定>
被覆層形成工程において、キーエンス株式会社製の計測ユニットNR−TH08と解析ソフトWAVE LOGGERを用いて、サンプル温度が100℃から280℃に変化するまでの所要時間を測定した。
<水蒸気透過係数>
JIS K7129のB法に準拠して、40℃、相対湿度90%で測定を行った。
<490℃加熱時重量変化量(減少量)>
25μm厚みのポリイミド被膜を10cm×10cm角に切り出し、重量を測定した。その後、空気雰囲気中490℃で30分間(0.5時間)熱処理をし、フィルムの重量減少量を測定した。同様に更に490℃で60分間(通算1.5時間)、更に490℃で60分間(通算2.5時間)熱処理した後のフィルムの重量減少量を測定した。なお、熱処理前のフィルムの重量は368mg/100cmであった。
<接着強度>
ポリイミド層と銅箔からなる積層体を10mm幅に切り出し、剥離速度50mm/分の条件で90°剥離試験を行い、3サンプルの平均値を接着強度とした。
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
DPPE:1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン
TEP:リン酸トリエチル
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMP300gを加え、これにODA60.08g(0.3モル)を加え、50℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDA70.61g(0.24モル)、a−BPDA17.65g(0.06モル)、水1.62g(0.09モル)を加え、50℃で3時間撹拌して、固形分濃度30.6質量%、溶液粘度7.0Pa・sのポリイミド前駆体組成物を得た。このポリイミド前駆体組成物にリン化合物としてDPPE3.37g(組成物に対して0.75質量%、ポリアミック酸の質量に対して2.27質量%)を添加しポリイミド前駆体組成物を得た。
このポリイミド前駆体組成物を、膜厚50μmのポリイミドフィルム上に塗工し、350℃に熱したSUS板の上に置いて1分間保持し、絶縁被覆層(ポリイミド被膜)を作成した。その際のサンプル温度が100℃から280℃へ昇温する時間は12秒であった(昇温速度15℃/s)。得られた絶縁被覆層について、状態観察の評価結果を表1に示した。
また、このポリイミド前駆体組成物を、基材のガラス板上に塗布し、室温から400℃まで30分間かけて昇温し、400℃にて10分間加熱処理し、厚み25μmのポリイミド被膜を得た。得られたポリイミド被膜(ポリイミドフィルム)を基材から剥離し、水蒸気透過係数と、490℃加熱時重量変化量を測定した。評価結果を表1に示した。
また、このポリイミド前駆体組成物を、厚み18μmの銅箔(三井金属鉱業製、3EC−VLP)の平滑面上に、得られるポリイミド層の厚みが25μmになるように塗工し、室温から400℃まで30分間かけて昇温し、400℃にて10分間加熱処理し積層体を得た。得られた積層体について、ポリイミド層と銅箔の間の接着強度を測定した。評価結果を表1に示した。
〔実施例2〕
リン化合物としてDPPE6.74g(組成物に対して1.5質量%、ポリアミック酸の質量に対して4.54質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を調製し、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
〔実施例3〕
リン化合物としてJPA―514(城北化学工業製、リン酸2−(メタクリロイルオキシ)エチルとリン酸ビス(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)の混合物)の3.37g(組成物に対して0.75質量%、ポリアミック酸の質量に対して2.27質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を調製し、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
〔実施例4〕
リン化合物としてJPA―514の6.74g(組成物に対して1.5質量%、ポリアミック酸の質量に対して4.54質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を調製し、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
〔実施例5〕
リン化合物としてTEPの3.37g(組成物に対して0.75質量%、ポリアミック酸の質量に対して2.27質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を調製し、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
〔実施例6〕
リン化合物としてTEPの6.74g(組成物に対して1.5質量%、ポリアミック酸の質量に対して4.54質量%)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を調製し、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
〔比較例1〕
リン化合物を添加しない以外は実施例1と同様にしてポリイミド前駆体組成物を調製し、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒としてNMPの396gを加え、これにODAの40.05g(0.2モル)を加え、50℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの58.84g(0.2モル)を加え、50℃で3時間撹拌して、固形分濃度18.5質量%、溶液粘度5.0Pa・sのポリイミド前駆体組成物を得た。このポリイミド前駆体組成物にリン化合物としてTEPの4.50g(組成物に対して1.0質量%、ポリアミック酸の質量に対して4.55質量%)を添加しポリイミド前駆体組成物を得た。
このポリイミド前駆体組成物を用いて、実施例1と同様にして、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造、ポリイミドフィルムの製造、及びポリイミド層と銅箔からなる積層体の製造を行い、状態観察及び特性の測定・評価を行った。なお、ポリイミドフィルム上への絶縁被覆層の製造における100℃から280℃の昇温速度は15℃/sであった。結果を表1に示した。
Figure 2016121817

Claims (4)

  1. ポリアミック酸と溶媒とリン化合物とを含むポリイミド前駆体組成物であって、
    前記ポリアミック酸が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含み、それらの合計含有量が50〜100モル%であるテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸であり、
    前記リン化合物が、リン酸エステルおよび下記一般式(1)で表されるリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類であり、
    前記ポリアミック酸が、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できるものであることを特徴とする、ポリイミド絶縁被覆層形成用のポリイミド前駆体組成物。
    Figure 2016121817
    (式中、R1は、炭素数が1〜6のアルキレン基であり、R2はフェニル基又はシクロヘキシル基である。)
  2. テトラカルボン酸成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50〜95モル%含む、請求項1に記載のポリイミド絶縁被覆層形成用のポリイミド前駆体組成物。
  3. 基材にポリイミド前駆体組成物を塗布、焼付けする工程を有するポリイミド絶縁被覆層の製造方法であって、
    ポリイミド前駆体組成物が、ポリアミック酸と溶媒とリン化合物とを含み、
    ポリイミド前駆体組成物に含まれるポリアミック酸が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とを含み、それらの合計含有量が50〜100モル%であるテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを50〜100モル%含むジアミン成分とから得られるポリアミック酸であり、
    リン化合物が、リン酸エステルおよび下記一般式(1)で表されるリン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種類であり、
    かつ、前記ポリアミック酸が、最高加熱温度を300〜500℃とする条件下で加熱処理することにより、水蒸気透過係数が1.0g・mm/(m2・24h)より大きいポリイミドフィルムを製造できるものであり、
    焼付け工程において、
    ポリイミド前駆体組成物を加熱する時間が10〜180秒間であり、
    100℃から280℃までの平均昇温速度が5℃/s以上であり、
    最高加熱温度が300〜500℃であることを特徴とする絶縁被覆層の製造方法。
    Figure 2016121817
    (式中、R1は、炭素数が1〜6のアルキレン基であり、R2はフェニル基又はシクロヘキシル基である。)
  4. テトラカルボン酸成分が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を50〜95モル%含む、請求項3に記載の絶縁被覆層の製造方法。

JP2016572103A 2015-01-29 2016-01-27 ポリイミド前駆体組成物およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法 Active JP6760083B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015015167 2015-01-29
JP2015015167 2015-01-29
PCT/JP2016/052344 WO2016121817A1 (ja) 2015-01-29 2016-01-27 ポリイミド前駆体組成物およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2016121817A1 true JPWO2016121817A1 (ja) 2017-11-09
JP6760083B2 JP6760083B2 (ja) 2020-09-23

Family

ID=56543427

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016572103A Active JP6760083B2 (ja) 2015-01-29 2016-01-27 ポリイミド前駆体組成物およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP6760083B2 (ja)
TW (1) TWI699387B (ja)
WO (1) WO2016121817A1 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6964412B2 (ja) * 2017-01-18 2021-11-10 住友電気工業株式会社 絶縁電線及びその製造方法
WO2022054765A1 (ja) 2020-09-10 2022-03-17 三菱瓦斯化学株式会社 重合体組成物、ワニス、及びポリイミドフィルム
KR20230066346A (ko) 2020-09-10 2023-05-15 미쯔비시 가스 케미칼 컴파니, 인코포레이티드 중합체 조성물, 바니시, 및 폴리이미드 필름

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08244168A (ja) * 1995-03-09 1996-09-24 Ube Ind Ltd 金属箔積層ポリイミドフィルムの製造法
JP2000043211A (ja) * 1998-07-31 2000-02-15 Ube Ind Ltd 接着性の改良されたポリイミドフィルム、その製法および積層体
JP2006321981A (ja) * 2005-04-20 2006-11-30 Toyobo Co Ltd 接着シート、金属積層シートおよびプリント配線板
JP2014142173A (ja) * 2012-12-27 2014-08-07 Mitsubishi Alum Co Ltd 内面螺旋溝付管およびその製造方法と熱交換器
JP2014210894A (ja) * 2013-04-22 2014-11-13 宇部興産株式会社 ポリアミック酸溶液組成物、及びそれを用いたポリイミド膜の製造方法

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3067127B2 (ja) * 1995-02-28 2000-07-17 宇部興産株式会社 金属箔積層のポリイミドフィルム
JP3444035B2 (ja) * 1995-08-01 2003-09-08 宇部興産株式会社 ポリイミドフィルム

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08244168A (ja) * 1995-03-09 1996-09-24 Ube Ind Ltd 金属箔積層ポリイミドフィルムの製造法
JP2000043211A (ja) * 1998-07-31 2000-02-15 Ube Ind Ltd 接着性の改良されたポリイミドフィルム、その製法および積層体
JP2006321981A (ja) * 2005-04-20 2006-11-30 Toyobo Co Ltd 接着シート、金属積層シートおよびプリント配線板
JP2014142173A (ja) * 2012-12-27 2014-08-07 Mitsubishi Alum Co Ltd 内面螺旋溝付管およびその製造方法と熱交換器
JP2014210894A (ja) * 2013-04-22 2014-11-13 宇部興産株式会社 ポリアミック酸溶液組成物、及びそれを用いたポリイミド膜の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
WO2016121817A1 (ja) 2016-08-04
TWI699387B (zh) 2020-07-21
JP6760083B2 (ja) 2020-09-23
TW201630980A (zh) 2016-09-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5845911B2 (ja) ポリイミド前駆体水溶液組成物、及びポリイミド前駆体水溶液組成物の製造方法
JP2020128522A (ja) 空隙を有するポリイミドフィルム及びその製造方法
JP2023033360A (ja) ポリイミド前駆体組成物、およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法
JP6539965B2 (ja) フレキシブルデバイスの製造方法
CN110461910B (zh) 聚酰亚胺前体溶液和使用其生产的聚酰亚胺膜
JPWO2012173204A1 (ja) ポリイミド積層体の製造方法、およびポリイミド積層体
JP2024040228A (ja) 金属張積層板の製造方法
JP6476469B2 (ja) ポリアミド酸組成物およびポリイミド組成物
JP2009221309A (ja) 含リンエステル基含有テトラカルボン酸またはその二無水物及び含リンポリエステルイミド
JP6245252B2 (ja) 絶縁被覆層の製造方法
JP6760083B2 (ja) ポリイミド前駆体組成物およびそれを用いた絶縁被覆層の製造方法
JP6152688B2 (ja) ポリアミック酸溶液組成物、及びそれを用いたポリイミド膜の製造方法
JP6314707B2 (ja) ポリイミド前駆体組成物、及びそれを用いた絶縁被覆層の製造方法
JP6032202B2 (ja) ポリイミド積層体の製造方法、およびポリイミド積層体
KR20160094551A (ko) 폴리아믹산 조성물 및 폴리이미드 기재
JP2020523427A (ja) 光特性及び位相遅延特性に優れた高透明性のポリイミド前駆体樹脂組成物、これを用いたポリイミド樹脂フィルムの製造方法、及びこれによって製造されたポリイミド樹脂フィルム
KR20150033051A (ko) 폴리이미드 전구체 조성물 및 이를 이용하여 제조된 디스플레이 기판
JP6558067B2 (ja) ポリイミド積層体、及びその製造方法
KR20230066345A (ko) 중합체 조성물, 바니시, 및 폴리이미드 필름
JP5941429B2 (ja) ポリアミド酸およびポリイミド
JP6769102B2 (ja) 絶縁被覆層の製造方法
TW201629121A (zh) 聚合物、絕緣膜以及軟性銅箔基板
WO2022210321A1 (ja) ポリアミド酸組成物、ポリイミド組成物、接着剤および積層体
JP6604003B2 (ja) ポリイミド前駆体溶液組成物及びそれを用いたポリイミド膜の製造方法
JP2023108491A (ja) 絶縁電線

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20180514

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181126

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20191217

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200804

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200817

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6760083

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250