JPWO2015145825A1 - フェライト系ステンレス鋼とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

このフェライト系ステンレス鋼の一態様は、質量%で、C:0.020%以下、N:0.025%以下、Si:0.08〜0.50%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:13.0〜25.0%、Al:0.005〜0.30%、及びNb:0.01〜0.60%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記の式(1)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%である。Cs≧−0.45Cr+28 (1)Cs=3Sisur+Crsur(A)但し、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。

Description

本発明は、常温の水及び温水中での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼とその製造方法に関する。
本願は、2014年3月26日に出願された国際特許出願PCT/JP2014/058541に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ステンレス鋼は、優れた耐食性や強度の特性を有するため、水やお湯を溜めるタンク用材料として用いられている。特に、オーステナイト系ステンレス鋼に比較して、フェライト系ステンレス鋼は、熱膨張係数が小さいことや、耐応力腐食割れ性に優れる等の特徴を有する。さらに近年、レアメタルであるNi原料の価格の乱高下から回避するために、フェライト系ステンレス鋼の適用が広まってきている。特に溶接後の耐食性に優れる高純度フェライト系ステンレス鋼であるSUS430J1L(18Cr−Cu)やSUS444(19Cr−2Mo)は、フェライト系ステンレス鋼の代表的な鋼種である。
この高純度フェライト系ステンレス鋼は、上記の特性を活かして、各種の水回り環境の機器やタンク用材料として用いられている。特にタンク用材料としては、高純度フェライト系ステンレス鋼は、常温では貯水槽や氷蓄熱槽等に用いられ、温水では電気温水器やエコキュート(登録商標)等の家庭用給湯設備の貯湯タンクとして広く用いられている。このようなステンレス鋼製のタンクのうち、電気温水器やエコキュート(登録商標)等の家庭用給湯設備に設置されるタンクは、一般に水道配管の元圧に耐えられるように、筒状の胴部の上下にお椀状の鏡板部がかぶせられたカプセル型の構造を有する。工業的な量産工程では、一般にこの胴部と鏡板部は重ねて溶接されるため、構造上すきまが形成される。この溶接すきま部では、ステンレス鋼の局部腐食の原因であるすきま腐食が誘発されやすい。前述のSUS444やSUS445J1(22Cr−1.2Mo)等でも、水質の悪い地域で使用される場合や溶接条件やすきま構造が不適な場合には、すきま腐食による水漏れが生じることがある。なお、貯水タンクでは、溶接によるすきまが存在しない構造もあるが、この場合、貯水タンクは、パネル状のステンレス鋼板同士が樹脂パッキンを挟んでボルト止め接合された構造を有する。この場合、ステンレス鋼とパッキンとの間にすきま部が存在し、水質が悪い場合には、この部位も腐食の懸念部位となる。また常温の水を溜める水槽やタンクでも、上記の温水を貯めるタンクと同様の構造を有するものが多いが、水温が低い分だけ腐食環境はマイルドとなる。そのためSUS444よりも、低Cr、省Moの(Cr量が少なく、かつMo量が低減された)高純度フェライト系ステンレス鋼が用いられることもあるが、大型の貯水槽等では耐食性上の懸念からSUS444が用いられることが多い。また、前述のカプセル状のタンクにおける溶接すきま部には、構造上、応力が集中しやすく、給湯・給水時の水道圧の変化により、破壊する懸念がある。このためタンク製造時の試験として、タンク内の水圧を変化させる耐久試験が実施される。溶接構造や溶接条件が不適な場合には、この部分(溶接すきま部)で割れが生じるため、溶接すきま部の強度を上げる必要がある。材料の強度を上げるには、固溶強化元素を加える方法があるが、その中には材料の靭性を低下させるものがある。靭性が低下した場合、製造時において鋼板に割れが生じる等の問題が生じる場合がある。
溶接すきま部の耐食性については、高CrMo鋼(Cr量及びMo量が多い鋼)に、TiとAlを添加することで耐食性を向上させる方法が、特許文献1に開示されている。また、耐すきま腐食性を向上させるには、前述の様にステンレス鋼の主要元素であるCrやMoを添加することが知られる。ただし、これらCr、Moはレアメタルであり、その使用量の削減が世界的にも望まれている。また特にMoは、投機的な価格の乱高下が生じるため、その削減が望まれている。
このような観点から、ステンレス鋼の主要元素であるCr、Moの量を低減しても優れた耐すきま腐食性を発揮させる技術として、表層にSi濃縮層を形成する技術が知られている。例えば、特許文献4には、BA(光輝焼鈍)という水素を用いた還元炉での製造方法を用いて表面にSi濃縮層が形成でき、そのSi濃縮層が耐食性を向上させることを開示している。
また、上述したように、一般に貯湯・貯水タンクでは、水道圧の変化に対して優れた繰り返し疲労強度が必要とされる。ただし、給水時及び止水時に水道圧による強い衝撃が溶接部に加わるため、溶接部の強度は高い方が望ましい。フェライト系ステンレス鋼の溶接部の強度を向上させる方法については、材料自身にSiを添加し、かつNbCを析出させる方法が特許文献2に開示され、さらにNiを添加する方法が特許文献3に開示されている。
しかし、これらの先行技術について、本発明者らが検討を行ったところ、更なる改善が必要であることが分かった。つまり、上述した先行技術においては、何れも多量のSiを鋼に添加するものである。しかし、本発明者らの検討の結果、これらの添加は引張強度を向上させるが、熱延板の靭性を低下させ、製造工程上問題となる可能性が大きいことが分かった。そのため、先行技術において靭性も向上させるためには、これら先行技術が多量に添加する必要があるとしているSi等の成分を抑制する必要があった。
また、表面のSiを除去する電解法については、硫酸と硝酸を組み合わせてデスケール性を向上させる方法が特許文献5に開示されている。また、硝酸に硫酸イオンやナトリウムイオンが混合された溶液中でデスケールする方法が特許文献6に開示されている。
これらは何れも、基本的にSiを含む酸化スケールを表面から除去することを目的としており、本発明の様に、Siのみを積極的に残存させることを目的としていない。
特開平5−70899号公報 特開2008−291303号公報 特開2011−184732号公報 特開平6−279950号公報 特開平11−61500号公報 特開2005−232546号公報
本発明は、貯水タンクおよび貯湯タンクにおけるすきま腐食による水漏れと、給水及び止水時の水圧変動等による溶接部の破壊の両者を抑制できるフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明では、レアメタルとして削減が求められているNiと共にCrとMoの添加量を必要最小限にしつつ、また、溶接部の靭性を低下させるSiやTiを必要量以上に添加しないことにより、上記のすきま腐食による水漏れと、水圧変動等による溶接部の破壊を同時に改善することを目的とする。
本発明者らが、上記課題を解決する方法を鋭意検討した結果、Siを表面にのみ積極的に残存させ、素材(母材)へのSiの添加は必要最小限にとどめれば良いことを突き止めた。また、この表面にのみSiを残存させる方法として、鋼板の製造時の焼鈍酸洗工程において、電解デスケール条件を適正化させることが重要であることを明らかにした。
すなわち、実際のステンレス鋼板の製造工程のうち、電解デスケール工程では、間接通電により鋼板に電流を供給する。これは、電解液中に浸漬された鋼板より離して電極を一対以上設置し、この電極に電流を流すことで実施される。このとき電極のプラス極に対向する鋼板はマイナス極(カソード)となり、電極のマイナス極に対向する鋼板はプラス極(アノード)となり、電解液を介して電極と鋼板は閉回路を形成する。このとき、鋼板のアノード側表面では、酸化反応が促進され、主にCrの酸化物が溶解される。一方、鋼板のカソード側表面では、主にFeの酸化物が溶解される。
Siの酸化物は電解法では除去されにくいことが知られているが、後述するように電解液と電流密度を制御することにより、Siの酸化物が適正に表面に残存することを知見した。この鋼板をアノードとして電解する場合の条件と、鋼板をカソードとして電解する場合の条件を制御することによって、適正なデスケールが実施される。
ここで、マイナス極(鋼板側はアノード)とプラス極(鋼板側はカソード)から供給される総電気量(=電流値×時間)は一定となる。このとき電極の面積が同一であれば、アノードとカソードの電流密度は一定となるが、一方の電極面積が大きくなると、その電解時間が長くなるが、その電流密度は小さくなる。このように電解の時間及び電流値(鋼板の単位面積当たりでは電流密度)を適正に低減することによって、表面におけるCr及びFeを主体とする酸化物は溶解除去される。
種々の実験により、電解の電流密度と時間を制御することで、鋼へのSi添加量が必要最小限の場合であっても、適度なSi酸化物を残存させることが可能となることを知見した。さらに、カソード側では、高電流密度で短時間とした方が、Fe酸化物を主体とする酸化物スケールの還元溶解の効率が向上し、かつ還元による金属析出も抑制できることも明らかにした。そのために電解時のアノード/カソードの電解時間の比率は1.0超とすることが望ましい。これによりSi酸化物が適度に鋼表層を被覆し、母材に含まれるCrとMoの含有量から期待される耐食性以上の耐食性を担保させることが可能となった。この理由は、以下のように考えられる。表層のSi酸化物自体が保護被膜として機能し、耐食性の向上に作用することはもちろんのことである。さらに本実施形態のSi酸化物の被覆率では、鋼板を温水タンクや貯水タンクとして使用中に、水道水に含まれるカルキ成分と呼ばれるAlやCa、Siを表層に析出させやすい。このため、表層に、より安定な酸化物被膜が形成されることで、耐食性がより一層向上することを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、以下の要件を有する。
(1)質量%で、C:0.020%以下、N:0.025%以下、Si:0.08〜0.50%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:13.0〜25.0%、Al:0.005〜0.300%、及びNb:0.01〜0.60%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記の式(1)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%であることを特徴とする常温での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
≧−0.45Cr+28 (1)
=3Sisur+Crsur (A)
但し、式(1)中のCrは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%)を示し、Cは、式(A)から算出される値であり、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
(2)質量%で、C:0.020%以下、N:0.025%以下、Si:0.08〜0.50%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:13.0〜25.0%、Al:0.005〜0.300%、Nb:0.01〜0.60%、及びMo:0.03〜3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記の式(1’)および式(2)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%であることを特徴とする温水中での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
≧−0.45(Cr+3Mo)+34 (1’)
=3Sisur+Crsur (A)
Cr+3Mo:18〜30 (2)
但し、式(1’),式(2)中のCr,Moは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%),Mo含有量(質量%)をそれぞれ示し、Cは、式(A)から算出される値であり、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
(3)さらに、質量%で、Ti:0.03〜0.30%を含み、かつ下記の式(3)を満たすことを特徴とする、前記(1)または(2)に記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
Nb/Ti>1.0 (3)
但し、式(3)中のNb,Tiは、フェライト系ステンレス鋼中のNb含有量(質量%),Ti含有量(質量%)をそれぞれ示す。
(4)さらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Sn:0.5%以下、及びSb:0.5%から選択される一種以上を含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
(5)さらに、質量%で、V:0.50%以下、Zr:0.50%以下、B:0.0050%以下、Ta:0.10%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.0050%以下、Ga:0.010%以下、及びREM:0.100%以下から選択される一種以上を含むことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の化学組成を有する熱処理材に対して、デスケール処理を施す工程を有し、前記デスケール処理において、プラス極とマイナス極の電極で前記熱処理材を間接的に挟み、前記熱処理材及び前記電極を電解液に浸漬して、交番電解を行い、前記電解液として、50〜300g/Lの硫酸ナトリウムと50g/L以上の硝酸イオンを含有する水溶液を用い、前記交番電解におけるアノード/カソードの電解時間の比率を1.0超、6.0以下とすることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
本発明の一態様に係るフェライト系ステンレス鋼では、CrやMo等の高価な元素の含有量が抑制され、かつ溶接部の優れた耐すきま腐食性と優れた靭性とを両立させることができる。そのため、従来存在しなかった貯水および貯湯タンク用として必要な特性を満足するフェライト系ステンレス鋼を、安価に提供することができる。
図1は、45℃の水中でのすきま部の腐食試験の結果について、母材のCr量(質量%)と3Sisur+Crsurの値(原子%)との関係を示す模式図である。 図2は、85℃の水中でのすきま部の腐食試験の結果について、母材のCr+3Moの値(質量%)と3Sisur+Crsurの値(原子%)との関係を示す模式図である。
本発明者らが行った実験及び実験結果から得られた知見を以下に示す。
以下のように供試材を製造した。真空溶解炉によりフェライト系ステンレス鋼を溶解した。表1のNo.1およびNo.18の組成となるように鋼成分を調整し、常温の水に対する腐食試験用の鋼材を得た。表5のNo.21およびNo.38の組成となるように鋼成分を調整し、温水に対する腐食試験用の鋼材を得た。
これら鋼材に対して熱間圧延を施し、厚さ5mmの熱延板を製造した。熱延鋼板に対して、スケール除去、冷間圧延、及び熱処理を施し、厚さ0.8mmの冷延板を製造した。工程の途中における熱延板の一部を、後述する靭性評価に用いた。冷延板に対して、LNG燃焼排ガスを模擬した雰囲気(ガス組成:3%O−12%CO−残部N、露点40℃)中において980℃で1分間の均熱処理(仕上げ焼鈍)を実施し、熱処理材を得た。この熱処理材に対して、以下のデスケール処理(電解処理)を施した。
デスケール処理では、一部の熱処理材に対して、ソルト法、中性塩電解法に従って前処理を実施した。
ソルト法による前処理では、NaOHを主成分とした市販のデスケール用アルカリソルトを450℃に保持し、このアルカリソルト中に鋼板を10秒間浸漬した。
中性塩電解法による前処理では、市販の硫酸ナトリウム試薬を用いて濃度150g/Lの硫酸ナトリウム水溶液を作製し、この水溶液を電解液として用いた。試験片を試料極とし、その両側にSUS304ステンレス鋼板二枚を10mmずつ離して平行に設置し対極とした。電流密度および電解時間は、実機の間接通電による交番電解を模擬し、以下のように設定した。鋼板の電流密度−100mA/cm及び+100mA/cmのそれぞれで1秒間通電し、この通電を10回行い、合計20秒間電解を実施した。アノード時間及びカソード時間はそれぞれ1秒間であるため、この場合のアノード/カソード時間比は1.0となる。またこの電気量は10kQ/mとなる。上記電解条件は関数発生器とポテンシオスタットを用いて制御した。
次に熱処理材に対して電解処理を施した。市販の硝酸イオンを含む試薬及びNaSOを用いて表3,7に示す濃度の水溶液を作製し、この水溶液を電解液として用いた。硝酸イオンを含む試薬としては、特級の硝酸水溶液を用いたが、その他の条件を満たせば、硝酸ナトリウムやその他硝酸イオンを含む試薬でも可能である。電解方法は、上述の中性塩電解法による前処理と同様とした。アノード時間とカソード時間の比が1.0〜8.0となるように電解時間を変化させた。その際の総電気量は、上述の中性塩電解法による前処理と同じ10kQ/mで一定とした。なお、実際の単位面積当たりの電気量は、通板速度や電解液中における電解効率(溶液伝導度の影響)等の影響により変化するが、およそ1〜30kQ/mの範囲であれば本実施形態の目的は達成される。
条件によっては、電解後に、熱処理材を硝ふっ酸水溶液に浸漬した。酸の濃度は各々の試薬を用いて、硝酸60g/L、ふっ酸15g/Lに調整した。温度は40℃であり、浸漬時間は10〜20秒とした。
以上により、供試材を製造した。
電解後(一部の例では、電解及び硝ふっ酸処理を施した後)の供試材の評価は、以下のように行った。
デスケール性は、以下のように評価した。目視および10倍のルーペで供試材を観察した。スケールが観察されない場合、またはスケールの数が一視野に1つの場合は、デスケールが完了し、デスケール性が良好(B)であると判断した。一視野に2つ以上のスケールが残存している場合は、デスケールが完了しておらず、デスケール性が悪い(C)と判断した。
表面のSi被覆率は、以下のように測定した。まず、測定位置によるばらつきを低減するために、測定試料から任意に5箇所を選択した。その後、それぞれの箇所について、電界放射型オージェ電子分光装置(FE−AES)を用い、加速電圧が10keVで、ビーム電流値が10nAである条件で、1000倍で観察された視野内における最表層のSiの分布図(マッピング画像)を求めた。5箇所それぞれについて、得られた分布図の画像を二値化してSiが存在する箇所の面積率を求め、その平均値をSi被覆率(表層のSi酸化物の表面被覆率)とした。
表面(表層)のCr濃度(Cr濃度比、原子%):Crsur、および表面(表層)のSi濃度(Si濃度比、原子%):Sisurを以下のように測定した。走査型FEオージェ電子分光装置(FE−SAM)を用い、1000倍で観察された視野について、Arスパッタ速度が15nm/minの条件で深さ方向の濃度プロファイルを測定した。測定する元素はO,Fe,Cr,Si,Alとした。
ここで表層とは、酸素Oの濃度プロファイルにおいて、酸素O濃度がその最大濃度の1/2である位置、いわゆる酸素O濃度が半価値である位置から最表面までの部分であると定義した。この酸素Oは、熱処理により酸化物を生成させるために表面に濃化するため、酸素Oが濃化した部分を表層とした。
次に、その表層におけるCr,Siの最大濃度は以下の様に定義した。すなわち、上記測定元素からOを除いたカチオン元素だけの元素濃度プロファイルにおいて、Crの最大濃度を表層のCr濃度(原子%):Crsur、とし、Siの最大濃度を表層のSi濃度(原子%):Sisurとした。詳細には、測定位置によるばらつきを低減するために任意の5箇所においてCrの最大濃度及びSiの最大濃度を測定し、それぞれの平均値をCrsur及びSisurとした。ここで、成分や熱処理およびデスケール条件によっては、上記元素が表層に濃化せずに、母材中の濃度よりも表層中の濃度が低い場合がある。その場合の最大値は、表層と母材との境界付近での濃度となり、この濃度は母材の分析値とほぼ等しくなる。
腐食試験に供するサンプルは、供試材を用いて以下のように作製した。厚さ0.8mm×幅50mm×長さ300mmの第1の試験板と、第1の試験板と同じ大きさを有し、かつ幅50mmのうち端部から10mmの位置で10°に折り曲げた第2の試験板を用意した。第2の試験板の折り曲げた部分が第1の試験片と10°の角度で接触するように第1,2の試験板を重ねた。10°で接触させるために、第1,2の試験片の距離を約0.28mmで保つ必要があるため、第1,2の試験片の間に、その間隔よりやや薄い板厚0.27mmの別のステンレス鋼板を挟んだ。この二枚の接触部を重ねたままTIG溶接して溶接材を得た。TIG溶接は、裏ビードが形成されるように電流値を100〜150Aの範囲で調整し、50cpmの速度で実施した。溶接の際には、Arガスによるシールドを裏側及び表側の両方で実施し、溶接熱による酸化物の生成を極力抑制した。この溶接材を長手方向に25mmに切断し、幅方向には溶接線中央に沿って切断し、幅30mm×長さ25mmの溶接すきま試験片を得た。なお、全ての切断端面は鏡面研磨仕上げとし、端面形態によって試験結果が影響されないようにした。
腐食試験は、以下のように実施した。
まず常温の水に対する腐食試験(耐食性の評価)では、Cl量が2000ppm、Cu2+量が1ppmとなるように、山口県光市の水道水にNaCl及び硫酸銅の試薬を添加して試験溶液を作製した。水道水は、浄水装置等のフィルターを介さずに採取した。なお、Cu2+は、実環境の電位に近づけ、腐食を加速させるために添加した。試験溶液を大型の蓋付きフラスコに満たし、温度を45℃に保持した。この試験溶液にサンプルを浸漬し、試験溶液に0.1L/minの量の空気を吹き込んだ状態でサンプルを6ヶ月間保持した。1週間毎に試験液の全量を新しい試験液に置換した。試験後にサンプルを取り出し、すきまを開放して腐食の有無と腐食の深さを評価した。腐食深さは、光学顕微鏡を用いた焦点深度法により1ミクロン単位で測定し、サンプルにおいて、最も深い腐食深さを、そのサンプルの腐食深さとして採用した。腐食深さの値が100ミクロン以下の場合を合格とした。詳細には、腐食深さが100ミクロンを超える供試材をC(bad)と評価した。腐食深さが40ミクロン以上100ミクロン以下の供試材をB(good)と評価した。腐食深さが40ミクロン未満の供試材をA(excellent)と評価した。
温水に対する腐食試験(耐食性の評価)では、試験溶液、実験方法、試験期間は前述の常温の水に対する腐食試験と同様にし、液温のみを85℃とした。評価方法も常温の水に対する腐食試験と同様とした。
まず常温での評価試験(常温の水に対する耐すきま腐食性の評価)の結果について述べる。
本発明例のNo.1の鋼材と比較例のNo.13の鋼材を用いた結果を表3,4に示す。
No.1の鋼材に対して本実施形態の電解法を施しても、アノード/カソードの電解時間の比率が1.0以下である場合には、表面のSi被覆率が10%未満となり、腐食試験で100ミクロンを超える腐食深さを示した。
従来の一般的なソルト法や中性塩電解法、および硝ふっ酸浸漬を組み合わせた場合でも、同じ傾向が得られた。
一方、本実施形態の組成を有する電解液を用いて本実施形態の電解条件でデスケール処理(電解処理)を実施した場合(電解材)、表面にSiが10%〜50%の割合で残存し、腐食深さは100ミクロン以下となった。
なお、本実施形態の電解法においても、アノード/カソードの電解時間の比率が6.0を超えた場合、スケールが十分除去されずにデスケールが完了していなかった。また腐食試験でもその腐食深さが100ミクロンを超えた。
No.1の鋼材に対して光輝焼鈍(bright annealing:BA処理)を施した場合(BA処理材)は、表面にSiは残存するもののSi被覆率が約90%と大きく、腐食試験での腐食深さも100ミクロンを超える結果となった。
腐食試験後に溶接材を取り出し、外観の観察を行った。その結果、腐食のない平面部に関して、BA処理材では、試験前と同様の金属光沢を保っていた。これに対して、本発明例の電解材では、やや薄く曇った様な表面に変質していた。この平面部の表面をGDS(高周波グロー放電分光分析法)で調査すると、BA処理材では、表面に酸素とCrが僅かに濃化していた。これに対して、本発明例の電解材では、酸素の他にAlやSi、Caが表面に濃化していた。また上述した方法でSi被覆率についても評価した。その結果、BA処理材では、Siが表面に一様に存在していた。これに対して、本発明例の電解材では、鋼表面に面積率で10〜50%の割合でSiが存在していることが判った。
この結果より、鋼表面にSi酸化物が10〜50%の量で存在していた場合、常温の水道水に対する長期の耐食性が向上することが明らかとなった。この理由は、前述の通り、水道水中に含まれる一般にカルキ分と呼ばれるAlやSi、Caが表面に析出しやすくなり、これが表面の保護皮膜として機能するためであると推定される。BA処理材の場合は、Si酸化物が表面に平滑に一様に存在していたため、カルキ分が析出し難かったものと思われる。また表3,4の比較例のNo.18の鋼材では、本実施形態の条件で電解処理しても、表面に残存するSi量が少なくSi被覆率は低かった。このため、腐食試験においても腐食深さが100ミクロンを超える結果となった。これは、母材(鋼材)のCr及びMoの量だけではなく、表面のSi量が耐食性に影響することを示している。なお、今回は溶接時に十分なArガスシールドが施された母材のすきま部で評価した。溶接時にガスシールドを省略した場合、熱による酸化スケールが生成するが、この場合、溶接前の表面にSiが濃化していると、熱による酸化スケールも抑制される。またそのスケールもAl,Si、Ca等が析出しやすい組成を有するために、同様の効果を発揮し、優れた耐食性が得られる。
続いて、母材(鋼材)のCr量と、表面のCr及びSiの量との関係を調査した。前述のNo.1の鋼材とNo.18の鋼材と共に、表1のNo.2の鋼材、No.3の鋼材に対して本実施形態の条件でデスケール処理(電解処理)を施し、供試材を製造した。詳細には、アノード/カソードの電解時間の比率を4.0とした。総電気量は、表3の条件と同一の10kQ/mで一定とした。
腐食試験に供するサンプルの形状および腐食試験の条件も、前述の表3,4の試験と同一とした。腐食試験で測定された腐食深さが100ミクロンを超える供試材をC(bad)と評価した。腐食深さが100ミクロン以下40ミクロン以上の供試材をB(good)と評価した。腐食深さが40ミクロン未満の供試材をA(excellent)と評価した。その結果を図1に示す。図1では、Cr量をx軸とし、後述するCの値をy軸として、評価結果をプロットした。詳細には、C(bad)と評価された供試材のデータをバツ印(cross mark)でプロットした。B(good)と評価された供試材のデータを白丸でプロットした。A(excellent)と評価された供試材のデータを二重丸でプロットした。また、図1中に、y=−0.45x+28(C=−0.45Cr+28)で表される線分を引いた。
本実施形態において、Cr+3Mo、C=3Sisur+Crsurを指標として用いる理由について説明する。
一般的に、耐食性を向上させる元素としてCrとMoは知られている。また本発明者等は、表層にSi酸化物を残存させることが、すき間部の耐食性、特に溶接すきま部の耐食性に対して、Cr,Moと同様の効果を有することを知見した。すなわち母材(鋼材)のCr濃度(質量%)と、表面(表層)のCrとSiの濃度から算出される値(原子%);C=3Sisur+Crsurとが以下の式(1)を満たすとき、優れた耐すきま腐食性が得られることが確認された。
≧−0.45Cr+28 (1)
また、C=3Sisur+Crsurの値が高いほど、母材のCr濃度の値が低くても耐食性が向上することが確認された。この係数は、その他の図示していない結果から回帰することで求めた。なお、図には載せていないが、母材のCr濃度が13%未満の場合、C=3Sisur+Crsurの値が高くても、耐食性は悪い結果となった。これは、表面皮膜で耐食性を担保するにも、最低限の量でCrを鋼材に添加する必要があるためであると考えられる。この結果より、母材のCr濃度の下限を13.0%と定めた。一方、Cr濃度が25.0%を超えると、加工性が低下し、かつコストも高騰するため、25.0%をCr濃度の上限とした。Cr濃度は、好ましくは15.0〜24.0%であり、より好ましくは17.0〜23.0%である。
なお、靭性は、前述した供試材の製造過程で得られた厚さ5mmの熱延板を用いて評価した。この熱延板より、切断および研削により厚さ3mm、長さ55mm、幅10mmの試験片を切り出し、この試験片に対して長手方向の中央に2mmのVノッチを加工してシャルピー試験に供した。シャルピー試験は0℃で行い、吸収エネルギーが50J/cm以上であれば合格とした。靭性の評価結果は、実施例において詳述するが、SiやTi、Crの量が本実施形態の範囲よりも多い場合に、割れが発生した。これは、溶接部の結晶粒が粗大化したこと、及びSiやTi、Cr等の靭性を低下させる元素を多量に含んだため、溶接部においてその傾向が顕著になったためと判断される。
次に、温水環境での耐食性(温水に対する耐すきま腐食性)を評価した。
本発明例のNo.21の鋼材と比較例のNo.38の鋼材を用いた結果を表7,8に示す。常温での試験と同様に、No.21の鋼材を本実施形態の条件内で処理した場合には、表面にCrおよびSiが濃化し、かつデスケールも完了していた。また、温水環境での耐食性も良好であった。一方、No.38の鋼材やNo.21の鋼材でも、本実施形態の条件を満たさない場合には、デスケールの不良や温水環境での耐食性に劣る結果となった。
次に、母材のCr及びMoの量と、表面のCr及びSiの量との関係を調査した。前述のNo.21の鋼材とNo.38の鋼材と共に、表5のNo.22の鋼材、No.23の鋼材に対して本実施形態の条件でデスケール処理(電解処理)を施し、供試材を製造した。詳細には、アノード/カソードの電解時間の比率を4.0とした。総電気量は、表3の条件と同一の10kQ/mで一定とした。その他の条件や判定基準は、前述の常温での試験と同様とした。
得られた結果を図2に示す。図2では、Cr+3Moの値をx軸とし、Cの値をy軸として、評価結果をプロットした。図1と同様に、C(bad)と評価された供試材のデータをバツ印(cross mark)でプロットした。B(good)と評価された供試材のデータを白丸でプロットした。A(excellent)と評価された供試材のデータを二重丸でプロットした。また、図2中に、y=−0.45x+34(C=−0.45(Cr+3Mo)+34)で表される線分を引いた。
母材のCr+3Moの値(質量%)と表面(表層)のCrとSiの濃度から算出される値(原子%);C=3Sisur+Crsurとが以下の式(1’)を満たすとき、優れた耐すきま腐食性が得られることが確認された。
≧−0.45(Cr+3Mo)+34 (1’)
またC=3Sisur+Crsurの値が高いほど、母材のCr+3Moの値が低くても、耐食性が向上することが確認された。なお、図には載せていないが、母材のCr+3Moの値が18%未満の場合は、C=3Sisur+Crsurの値が高くても、耐食性は悪い結果となった。この結果より、Cr+3Moの値の下限を18%と定めた。一方、Cr+3Moの値が30%を超えると、加工性が低下し、かつコストも高騰する。このため、30%をCr+3Moの値の上限とした。Cr+3Moの値は、好ましくは、19〜27%であり、より好ましくは20〜26%である。
もちろん、温水に対して優れた耐すきま腐食性を有するこれらの材料は、より温度の低い常温の水に対しても十分な耐すきま腐食性を有しており、常温での適用が可能である。
本発明のフェライト系ステンレス鋼は、上記した実験結果から得られた知見に基づいてなされた。以下に実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の元素の含有量の範囲について以下に説明する。なお、元素の含有量を示す単位“%”は、質量%を意味する。
Crは、ステンレス鋼の耐食性を確保する上で最も重要な元素であり、フェライト組織を安定化する。このため、少なくとも13.0%のCrは必要である。Cr量を増加させると、耐食性も向上する。しかし、Crはレアメタルであるため、その使用抑制が望まれているだけでなく、過剰な量のCrの添加は、加工性や、製造時に問題となる靭性も低下させる。このため、Cr量の上限を25.0%とする。Cr量は、望ましくは16.0〜24.0%であり、より望ましくは18.0〜23.0%である。
Siは、脱酸元素として重要な元素であり、耐食性、耐酸化性にも有効である。本実施形態においては、Siは、表面へ濃化して耐食性を高める主要な元素である。ただし、過度な量のSiの添加は、母材の靭性を低下させるだけでなく、強度を向上させすぎる。これにより、加工性、製造性が低下する。そのため母材中のSi量を0.08%〜0.50%とし、表層へのSiの濃縮を促進することで各種特性を向上させる。Si量は、望ましくは0.10〜0.35%であり、より望ましくは0.12〜0.29%である。
Cは、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、その含有量を低減させる必要がある。このため、C量の上限を0.02%以下とする。C量を過度に低減させることは精錬コストを悪化させるため、C量は、より望ましくは0.002〜0.015%である。
Nは、Cと同様に、耐粒界腐食性、加工性を低下させるため、N含有量を低減させる必要がある。このため、N量の上限を0.025%以下とする。ただし、過度にN量を低減させることは精錬コストを悪化させるため、N量は、より望ましくは、0.002〜0.015%である。
Mnは、脱酸元素として重要な元素であるが、過剰量のMnを添加すると、腐食の起点となるMnSを生成しやすくなる。また過剰量のMnはフェライト組織を不安定化させる。このため、Mn含有量を0.01〜1.00%以下とする。Mn量は、より望ましくは、0.05〜0.50%である。
Pは、溶接性、加工性を低下させるだけでなく、粒界腐食を生じやすくもするため、P量を低く抑える必要がある。そのためP量を0.035%以下とする。P量は、より望ましくは0.001〜0.025%である。
Sは、CaSやMnS等の腐食の起点となる水溶性介在物を生成させるため、S量を低減させる必要がある。そのためS量を0.010%以下とする。ただし過度のS量の低減はコストの悪化を招くため、S量は、より望ましくは0.0002〜0.0500%以下である。
Alは脱酸元素として重要であり、また非金属介在物の組成を制御し組織を微細化する効果もある。しかし過剰な量のAlの添加は、非金属介在物の粗大化を招き、製品の疵発生の起点になる恐れもある。そのため、Al量の下限値を0.005%とし、Al量の上限値を0.300%とする。Al量は、望ましくは0.007%〜0.15%であり、より望ましくは0.010〜0.10%である。
Nbは、C、Nを固定し、フェライト系ステンレス鋼において母材や溶接部の粒界腐食を抑制させる上で非常に重要な元素である。ただし過剰な量のNbの添加は、加工性を低下させるため、Nb量の範囲を0.01〜0.60%とする。Nb量は、望ましくは0.05〜0.50%であり、更に望ましくは0.10〜0.40%である。
更に、必要に応じて以下の元素を含有してもよい。
Tiは、Nbと同様に、C、Nを固定し、溶接部の粒界腐食を抑制し、かつ加工性を向上させる上で非常に重要な元素であり、必要により添加される。しかしながら過剰な量のTiの添加は、素材の靭性を低下させる。さらに硬質なTi系非金属介在物が多く生成され、製造時の表面疵の原因となる。このため、Ti量の範囲を0.03〜0.30%とする。Ti量は、望ましくは0.05〜0.27%であり、より望ましくは0.07〜0.20%とする。
なおTiを添加させる際は、C、Nを安定化させ、かつ靭性低下を抑制させるために、Ti量とNb量とのバランスが重要となる。このため、Nb/Tiが1.0を超えるように、Ti,Nbを添加することが必要となる。Nb/Tiは、好ましくは1.2〜6.0であり、さらに好ましくは1.4〜4.0である。
Cuは、腐食が発生した際の活性溶解速度を低下させる効果を有する。しかし過剰な量のCuの添加は、加工性を低下させ、場合によっては、溶出したCuイオンが腐食を加速させる場合がある。このため、Cuを添加する場合は、Cu量の範囲を2.0%以下とする。Cu量は、望ましくは、0.20〜1.5%であり、更に望ましくは0.25〜1.1%である。
Niは、活性溶解速度を抑制させ、また水素過電圧が小さいために再不働態化特性に優れる。ただし過剰な量のNiの添加は、加工性を低下させ、フェライト組織を不安定にするため、Ni量の上限を2.0%とする。Ni量は、望ましくは0.10〜1.2%であり、より望ましくは0.20〜1.1%である。
Snを添加すると、活性溶解速度が低下し耐食性が向上する。特に微量のSnの添加で、その効果が得られる。しかし過剰な量のSnの添加は、加工性を低下させる。このため、Snを添加する場合は、Sn量の範囲を0.50%以下とする。Sn量は、望ましくは、0.01〜0.40%であり、更に望ましくは0.03〜0.30%である。
Sbも、Snと同様の効果を有する。そのためSnを添加する場合には、Sn量の範囲を0.50%以下とする。Sn量は、望ましくは、0.01〜0.40%であり、更に望ましくは0.03〜0.30%である。
VおよびZrは、耐銹性や耐すきま腐食性を改善する効果を有する。Cr、Moの量を抑えて、Vを添加すれば、優れた加工性も担保することができる。ただし過度の量のV、Zrの添加は、加工性を低下させ、かつ耐食性を向上させる効果も飽和する。このため、V量とZr量の下限をそれぞれ0.03%とし、V量とZr量の上限をそれぞれ0.50%とする。V量とZr量のそれぞれは、より望ましくは0.05〜0.30%である。
Bは、二次加工脆性を改善するために有効な粒界強化元素である。しかし、過度の量のBの添加は、フェライトを固溶強化して延性を低下させる原因になる。このためB量の上限を0.0050%とする。B量は、より望ましくは0.0002〜0.0020%である。
Taは、耐食性、特に耐酸性を改善する元素である。ただし過度の量のTaの添加は、加工性を低下させ、かつ耐食性を向上させる効果も飽和する。このため、Taを添加する場合は、Ta量の上限を0.10%とする。Ta量は、より望ましくは0.00010〜0.0050%である。
Caは、脱酸元素として、ステンレス鋼の製造工程に用いられる元素である。ただし過剰な量のCa添加は、Ca系の非金属介在物を多量に生成させ、腐食の起点になる恐れがある。そのためCaを添加する場合は、Ca量を0.010%以下とする。Ca量は、より望ましくは0.0001〜0.0050%とする。
Mgは、溶鋼中でAlとともにMg酸化物を形成し脱酸剤として作用する。またMgは、TiNの晶出核として作用する。TiNは、凝固過程において、フェライト相の凝固核となり、TiNの晶出を促進させる。これにより、凝固時にフェライト相を微細生成させることができる。凝固組織を微細化させることにより、製品のリジングやロ−ピングなどの粗大凝固組織に起因した表面欠陥の発生を防止できる。さらに加工性の向上をもたらす。このため、必要に応じてMgを添加する。Mgを添加する場合は、これら効果を発現するためにMg量を0.0001%以上とする。但し、Mg量が0.0050%を超えると、製造性が劣化するため、Mg量の上限を0.0050%とする。好ましくは、製造性を考慮してMg量を0.0003〜0.0020%とする。
REM(希土類金属元素)は、熱間加工性や鋼の清浄度を向上させ、本実施形態の耐食性の向上に有効な元素であり、必要に応じて添加してもよい。添加する場合は、それぞれその効果が発現するためにREM量(希土類金属元素の総量)を0.001%以上とする。しかし、過度の量のREMの添加は、合金コストの上昇と製造性の低下に繋がるため、REM量の上限を0.100%とする。好ましくは、効果と経済性および製造性を考慮して、REM量を0.001〜0.050%とする。なお、REMは、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指し、例えば、La、Ce、Ndを例示できる。
Gaは、ステンレス鋼の靱性を向上させる効果を有する元素である。ただし過剰な量のGaの添加は、製造性を悪化させ、かつコストを増大させる。このため、Gaを添加する場合は、Ga量を0.010%以下とする。Ga量は、より望ましくは0.0001〜0.005%である。
次に、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の表層について説明する。
表層のSi酸化物の表面被覆率は、10〜50%であり、好ましくは15〜45%であり、より好ましくは20〜40%である。これにより、水道水中に含まれる一般にカルキ分と呼ばれるAlやSi、Caが表面に析出しやすくなる。表面に析出したカルキ分は表面の保護皮膜として機能する。このため、常温での水道水に対して優れた耐すきま腐食性が長期間得られる。
表層のSi酸化物の表面被覆率は、上述の方法により測定される。
以下の式(1)を満たす。
≧−0.45Cr+28 (1)
式(1)中のCrは、フェライト系ステンレス鋼(母材)中のCr含有量(質量%)を示す。Cは、以下の式(A)から算出される値である。
=3Sisur+Crsur (A)
式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
表層のCr濃度(Cr濃度比、原子%):Crsur、および表層のSi濃度(Si濃度比、原子%):Sisurは上述のように測定される。
図1の結果より、式(1)を満たすことによって、常温(45℃)の水道水に対して優れた耐すきま腐食性が長期間得られる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、常温の水及び温水に対して優れた耐すきま腐食性を有する。
第2の実施形態のフェライト系ステンレス鋼の化学組成は、Mo:0.03〜3.0%を含有する点が、第1の実施形態のフェライト系ステンレス鋼の化学組成と異なる。Mo以外の成分及びその作用効果は、第1の実施形態と同一である。このため、Mo以外の成分に関する説明を省略する。
Moは、不働態皮膜の補修に効果があり、耐食性を向上させるのに非常に有効な元素である。さらにMoとCrとを組み合わせると、耐孔食性を向上させる効果が得られる。Mo量を増加させると、耐食性は向上するが、加工性、靭性が低下し、またコストが高くなる。このため、Mo量の上限を3.0%とする。これら特性を発揮させる場合には、Moは少なくとも0.03%の量で含有させることが必要である。Mo量は、望ましくは、0.30〜2.0%であり、より望ましくは0.45〜2.0%である。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼の表層について説明する。
表層のSi酸化物の表面被覆率は、10〜50%であり、好ましくは15〜45%であり、より好ましくは20〜40%である。表層のSi酸化物の表面被覆率の測定方法や作用効果は、第1の実施形態と同一であるので説明を省略する。
以下の式(1’)を満たす。
≧−0.45(Cr+3Mo)+34 (1’)
式(1’)中のCr,Moは、フェライト系ステンレス鋼(母材)中のCr含有量(質量%),Mo含有量(質量%)をそれぞれ示す。Cは、以下の式(A)から算出される値である。
=3Sisur+Crsur (A)
式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。SisurとCrsurの測定方法は、第1の実施形態と同一である。
更に、以下の式(2)も満たす。
Cr+3Mo:18〜30 (2)
式(2)中のCr,Moは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%),Mo含有量(質量%)をそれぞれ示す。
図2の結果より、式(1’)及び式(2)を満たすことによって、85℃の水道水(温水)に対して優れた耐すきま腐食性が長期間得られる。より温度の低い常温の水に対しても十分な耐すきま腐食性を有している。
式(2)のCr+3Moの値は、好ましくは、19〜27%であり、より好ましくは20〜25%である。
(第3の実施形態)
本実施形態は、第1,2の実施形態のフェライト系ステンレス鋼を製造する方法に係る。
第1,2の実施形態に記載の化学組成を有するように鋼成分を調整して、鋼材を得る。次いで、鋼材に対して、熱間圧延、スケール除去、冷間圧延、及び熱処理を施し、冷延板を製造する。冷延板に対して仕上げ焼鈍を施し、熱処理材を得る。
以上の工程には、公知のフェライト系ステンレス鋼の製造方法の条件が適用される。
熱処理材に対して、以下のデスケール処理(電解処理)を施す。
必要に応じて、ソルト法又は中性塩電解法に従って前処理を実施する。前処理の条件は、特に限定されず、公知の条件が適用される。
次に電解処理を行う。
電解液として、50〜300g/Lの硫酸ナトリウムと50g/L以上の硝酸イオンを含有する水溶液を用いる。硝酸イオンとしては、硝酸や硝酸ナトリウム等の硝酸イオンを含む各種の化合物が挙げられる。電解液中の硝酸の量は、70〜300g/Lが好ましく、80〜150g/Lがより好ましい。電解液中の硫酸ナトリウム(NaSO)の量は、50〜300g/Lであり、70〜200g/Lが好ましく、90〜180g/Lがより好ましい。また、電解液のpHは、特に限定されないが、低い方が好ましく、具体的には、電解液のpHは、−1〜6が好ましく、0超〜3未満がより好ましい。
プラス極とマイナス極の電極で熱処理材を間接的に(熱処理材と接触しない状態で)挟み、熱処理材及び電極を電解液に浸漬する。この状態で熱処理材へ電流を供給し、交番電解を行う。
マイナス極と熱処理材との間で電解が行われる際(アノード電解)には、熱処理材はアノードとなり、熱処理材の表面は酸化溶解される。詳細には、熱処理材の表面から、Crを主体とする酸化物が溶解除去される。
プラス極と熱処理材との間で電解が行われる際(カソード電解)には、熱処理材はカソードとなり、Fe酸化物を主体とする酸化物スケールが還元溶解される。
マイナス極と熱処理材との間で電解を行う時間をアノード電解時間とし、プラス極と熱処理材との間で電解を行う時間をカソード電解時間とする。
アノード/カソードの電解時間の比率を1.0超、6.0以下とする。アノード/カソードの電解時間の比率は、好ましくは1.5〜5.5であり、より好ましくは2.0超〜5.0である。
詳細には、マイナス極と熱処理材との間で電解を行う際には、アノード電解時間を長くして、アノードの電流値(熱処理材の単位面積当たりでは電流密度)を低くする。これにより、熱処理材(鋼板)の表面から、Cr及びFeを主体とする酸化物を溶解除去し、適度な量のSi酸化物を残存させる。
プラス極と熱処理材との間で電解を行う際には、カソード電解時間を短くして、カソードの電流値(熱処理材の単位面積当たりでは電流密度)を大きくする。これにより、Fe酸化物を主体とする酸化物スケールの還元溶解の効率が向上し、かつ還元による金属析出も抑制できる。
これにより、Si酸化物が適度に鋼表層を被覆し、母材の化学組成から期待される耐食性以上の耐食性を得ることができる。
(実施例1)
表1に示す化学組成を有する鋼材を、通常の高純度フェライト系ステンレス鋼の製造方法で製造した。鋼材に対してデスケール処理を施して供試材を製造する方法及び試験に供するサンプルの作製方法は、前述の実施形態と同一である。
詳細には、鋼材に対して圧延、熱処理を施して、厚さ0.8mmの冷延板を製造した。冷延板に対して、LNG燃焼排ガスを模擬した雰囲気(ガス組成:3%O−12%CO−残部N、露点40℃)中で1分間の均熱処理(仕上げ焼鈍)を施し、熱処理材を得た。仕上げ焼鈍の温度は、各材料の再結晶温度に基づき、900〜980℃の範囲で設定した。
この熱処理材に対して、前述の実施形態と同一の条件でデスケール処理を実施した。市販の硝酸試薬を用いて硝酸イオン濃度が80〜150g/Lであり、かつNaSOの濃度が70〜200g/Lの電解液を作製した。試験片を試料極とし、その両側にSUS304ステンレス鋼板二枚を10mmずつ離して設置し対極とした。電流密度および電解時間は、実機の間接通電による交番電解を模擬するため、ポテンシオスタットを用いて制御した。電解時間に関して、一回のアノード時間とカソード時間の合計(1サイクルに係る時間)を5秒間とし、アノード/カソードの電解時間の比率を1.0〜8.0で変化させた。このサイクルを4回繰り返すことで総電解時間を20秒で一定とした。その際の総電気量は、10kQ/mで一定となるように、電解時間にあわせて、アノード電解とカソード電解の各々の電流密度を変化させた。
以上により、供試材を製造した。
電解後のデスケール性、表面のSi被覆率、及び、表面(表層)のCr濃度(Cr濃度比、原子%):Crsur、および表面(表層)のSi濃度(Si濃度比、原子%):Sisurは、何れも実施形態に記載の方法により測定した。
実施形態に記載の方法により、すきま角10°を有する30mm幅×25mm長さの溶接すきま試験片を作製した。
実施形態に記載の方法により、常温での腐食試験(常温の水に対する耐すきま腐食性の評価)を行った。すきま内の腐食深さが100ミクロンを超える供試材をC(bad)と評価した。腐食深さが40ミクロン以上100ミクロン以下の供試材をB(good)と評価した。腐食深さが40ミクロン未満の供試材をA(excellent)と評価した。
実施形態に記載の方法により、靭性を評価した。詳細には、供試材の製造過程で得られた5mm厚の熱延板から、厚さ3mm、長さ55mm、幅10mmのサンプルを切り出した。サンプルの長手方向の中央に2mmのVノッチを加工してシャルピー試験に供した。シャルピー試験は0℃で行い、吸収エネルギーが50J/cm以上の供試材を合格(B)と評価した。吸収エネルギーが50J/cm未満の供試材を不合格(C)と評価した。
得られた結果を表2〜4に示す。
Figure 2015145825
Figure 2015145825
Figure 2015145825
Figure 2015145825
供試材No.1〜16は、第1の実施形態の範囲内の化学組成を有し、かつ第3の実施形態の条件でデスケール処理(電解)が施されて製造された。供試材No.1〜16では、表層のSi被覆率が10〜50%であった。また常温での腐食試験で測定された腐食深さは基準値(100ミクロン)以下であり、優れた耐すきま腐食性を示した。
一方、供試材No.17〜20は、第1の実施形態の範囲を外れる化学組成を有する。このため、第3の実施形態の条件でデスケール処理(電解)が施されていても、表層のSi被覆率が10%未満と低いか、またはSi被覆率が多くデスケールが完了していなかった(Cの評価)。このため、常温での腐食試験で測定された腐食深さは、基準値(100ミクロン)超となった。また、供試材No.19では、Si量が第1の実施形態の範囲よりも多く、熱延板の靭性試験で割れが生じた。
(実施例2)
表5に示す化学組成を有する鋼材を用いた以外は、実施例1と同様の条件で、供試材を製造した。実施例1と同様にして、溶接すきま試験片を作製した。
液温を85℃とする以外は、常温での腐食試験と同様にして、温水環境での腐食試験(温水に対する耐すきま腐食性の評価)を行った。
実施例1と同様にして各種特性の評価を行った。
得られた結果を表5〜8に示す。
Figure 2015145825
Figure 2015145825
Figure 2015145825
Figure 2015145825
供試材No.21〜36は、第2の実施形態の範囲内の化学組成を有し、かつ第3の実施形態の条件でデスケール処理(電解)が施されて製造された。供試材No.21〜36では、表層のSi被覆率が10〜50%であった。温水での腐食試験で測定された腐食深さは基準値(100ミクロン)以下であり、優れた耐食性を示した。
一方、供試材No.37〜40は、第2の実施形態の範囲を外れる化学組成を有する。このため、第3の実施形態の条件でデスケール処理(電解)が施されていても、表層のSi被覆率が10%未満と低いか、またはSi被覆率が多くデスケールが完了していなかった(Cの評価)。このため、温水での腐食試験で測定された腐食深さは基準値(100ミクロン)超となった。また、供試材No.39では、Si量が第2の実施形態の範囲よりも多く、熱延板の靭性試験で割れが生じた。
以上の結果から、第1,2の実施形態の範囲内の化学組成を有し、かつ第3の実施形態の条件でデスケール処理が施されて製造された供試材は、優れた耐すきま腐食性を有し、製造性にも優れることが明らかとなった。
本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は、常温の水や温水に対して優れた耐すきま腐食性を有する。このため、水やお湯をためる各種容器・タンクであればその構造によらず、その優れた効果が発揮される。タンク以外でも、例えば浴槽、厨房機器などのように、水道水を使用する設備においても同様の効果が発揮される。また、その他にも、例えば潜熱回収型ガス給湯器のドレン水の回収器及びその熱交換器などの熱交換機器で凝縮水と接する構造体や、自動車の排気系材料や外装材、各種の電池材料や溶接パイプ等の耐食性が必要となる部位においても、本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は広く適用可能である。また前述の通り、母材のみでなくTIG溶接された状態のままで使用される構造体であり、かつ耐食性が要求される用途においても本実施形態のフェライト系ステンレス鋼は好ましく適用できる。
(1)質量%で、C:0.020%以下、N:0.025%以下、Si:0.08〜0.50%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:13.0〜25.0%、Al:0.005〜0.300%、及びNb:0.01〜0.60%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記の式(1)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%であることを特徴とする常温での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
≧−0.45Cr+28 (1)
=3Sisur+Crsur (A)
但し、式(1)中のCrは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%)を示し、Cは、式(A)から算出される値であり、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
(2)さらに、質量%で、Ti:0.03〜0.30%を含み、かつ下記の式(3)を満たすことを特徴とする、(1)に記載の常温での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
Nb/Ti>1.0 (3)
但し、式(3)中のNb,Tiは、フェライト系ステンレス鋼中のNb含有量(質量%),Ti含有量(質量%)をそれぞれ示す。
(3)さらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Sn:0.50%以下、Sb:0.50%以下、V:0.50%以下、Zr:0.50%以下、B:0.0050%以下、Ta:0.10%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.0050%以下、Ga:0.010%以下、及びREM:0.100%以下から選択される一種以上を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の常温での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
)質量%で、C:0.020%以下、N:0.025%以下、Si:0.08〜0.50%、Mn:0.01〜1.0%、P:0.035%以下、S:0.01%以下、Cr:13.0〜25.0%、Al:0.005〜0.300%、Nb:0.01〜0.60%、及びMo:0.03〜3.0%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなり、下記の式(1’)および式(2)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%であることを特徴とする温水中での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
≧−0.45(Cr+3Mo)+34 (1’)
=3Sisur+Crsur (A)
Cr+3Mo:18〜30 (2)
但し、式(1’),式(2)内のCr,Moは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%),Mo含有量(質量%)をそれぞれ示し、Cは、式(A)から算出される値であり、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
)さらに、質量%で、Ti:0.03〜0.30%を含み、かつ下記の式(3)を満たすことを特徴とする、(4)に記載の温水中での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
Nb/Ti>1.0 (3)
但し、式(3)中のNb,Tiは、フェライト系ステンレス鋼中のNb含有量(質量%),Ti含有量(質量%)をそれぞれ示す。
)さらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Sn:0.50%以下Sb:0.50%以下、V:0.50%以下、Zr:0.50%以下、B:0.0050%以下、Ta:0.10%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.0050%以下、Ga:0.010%以下、及びREM:0.100%以下から選択される一種以上を含むことを特徴とする(4)または(5)に記載の温水中での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
(7)貯水タンク用である(1)〜(3)の何れか1項に記載の常温での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
(8)貯湯タンク用である(4)〜(6)の何れか1項に記載の温水中での耐隙間腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
)(1)〜()のいずれか一項に記載の化学組成を有する熱処理材に対して、デスケール処理を施す工程を有し、前記デスケール処理において、プラス極とマイナス極の電極で前記熱処理材を間接的に挟み、前記熱処理材及び前記電極を電解液に浸漬して、交番電解を行い、前記電解液として、50〜300g/Lの硫酸ナトリウムと50g/L以上の硝酸イオンを含有する水溶液を用い、前記交番電解におけるアノード/カソードの電解時間の比率を1.0超、6.0以下とすることを特徴とする(1)〜()のいずれか一項に記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼の製造方法。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.020%以下、
    N:0.025%以下、
    Si:0.08〜0.50%、
    Mn:0.01〜1.0%、
    P:0.035%以下、
    S:0.01%以下、
    Cr:13.0〜25.0%、
    Al:0.005〜0.300%、及び
    Nb:0.01〜0.60%を含有し、
    残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    下記の式(1)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%であることを特徴とする常温での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
    ≧−0.45Cr+28 (1)
    =3Sisur+Crsur (A)
    但し、式(1)中のCrは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%)を示し、Cは、式(A)から算出される値であり、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
  2. 質量%で、
    C:0.020%以下、
    N:0.025%以下、
    Si:0.08〜0.50%、
    Mn:0.01〜1.0%、
    P:0.035%以下、
    S:0.01%以下、
    Cr:13.0〜25.0%、
    Al:0.005〜0.300%、
    Nb:0.01〜0.60%、及び
    Mo:0.03〜3.0%を含有し、
    残部はFeおよび不可避的不純物からなり、
    下記の式(1’)および式(2)を満たし、かつ表層のSi酸化物の表面被覆率が10〜50%であることを特徴とする温水中での耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
    ≧−0.45(Cr+3Mo)+34 (1’)
    =3Sisur+Crsur (A)
    Cr+3Mo:18〜30 (2)
    但し、式(1’),式(2)中のCr,Moは、フェライト系ステンレス鋼中のCr含有量(質量%),Mo含有量(質量%)をそれぞれ示し、Cは、式(A)から算出される値であり、式(A)中のSisurは、表層におけるSi濃度比(原子%)を示し、Crsurは、表層におけるCr濃度比(原子%)を示す。
  3. さらに、質量%で、Ti:0.03〜0.30%を含み、かつ下記の式(3)を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
    Nb/Ti>1.0 (3)
    但し、式(3)中のNb,Tiは、フェライト系ステンレス鋼中のNb含有量(質量%),Ti含有量(質量%)をそれぞれ示す。
  4. さらに、質量%で、Cu:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Sn:0.50%以下、及びSb:0.50%以下から選択される一種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
  5. さらに、質量%で、V:0.50%以下、Zr:0.50%以下、B:0.0050%以下、Ta:0.10%以下、Ca:0.010%以下、Mg:0.0050%以下、Ga:0.010%以下、及びREM:0.100%以下から選択される一種以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の化学組成を有する熱処理材に対して、デスケール処理を施す工程を有し、
    前記デスケール処理において、プラス極とマイナス極の電極で前記熱処理材を間接的に挟み、前記熱処理材及び前記電極を電解液に浸漬して、交番電解を行い、
    前記電解液として、50〜300g/Lの硫酸ナトリウムと50g/L以上の硝酸イオンを含有する水溶液を用い、
    前記交番電解におけるアノード/カソードの電解時間の比率を1.0超、6.0以下とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の耐すきま腐食性に優れるフェライト系ステンレス鋼の製造方法。
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