JPWO2015122361A1 - 流通反応器を用いたケトマロン酸化合物の連続製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、本発明者らは、マイクロリアクタを用いたマイクロスケールでの連続反応を試みた。マイクロリアクタでの反応は小規模であり、爆発しても小規模な爆発に止まり比較的安全であるだけでなく、混合性能などで回分式(バッチ式)に優る。そこで、溝径約200マイクロメートルのマイクロリアクタを用いて、前記特許文献6に記載の方法を行ってみたが、転化率は0%であり、好ましい結果は得られなかった。反応温度を100℃以上としても転化率は約1%程度に過ぎなかった。
本発明の他の目的は、工業的に有用なケトマロン酸ジエステル等のケトマロン酸化合物又はその抱水体を、工業的な規模で安全に安定して連続的に製造する方法及びそのための製造装置を提供することにある。
即ち、本発明は、マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を原料化合物として、これらの原料化合物を混合して、これらの混合物を流通反応器に連続的に供給して、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造する方法に関する。
本発明は、前記の流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記連続製造方法に関する。
より詳細には、本発明は、
(A)マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を混合する工程、
(B)混合された混合物を、流通反応器に供給する工程、並びに、
(C)流通反応器で混合物を反応させる工程、
を含有してなる、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造する方法に関する。
本発明は、前記の流通反応器が、1つ又は2つ以上の流通反応器、より詳細には管型流通反応器である、前記連続製造方法に関する。
(D)混合物を反応させる工程で得られた反応混合物を、さらに熟成させる工程、
を包含してなる、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体の連続製造方法に関する。
本発明は、(D)の熟成させる工程が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器で行われる、前記連続製造方法に関する。
また、本発明は、(D)の熟成させる工程が、空冷又は水冷などによる冷却工程である、前記連続製造方法に関する。
(E)反応をクエンチする工程、
を包含してなる、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体の連続製造方法に関する。
本発明は、(E)のクエンチする工程が、T字管などによりクエンチ液を液送されて行われる、前記連続製造方法に関する。
また、本発明は、(E)のクエンチする工程が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器で行われる、前記連続製造方法に関する。
本発明は、(E)のクエンチする工程が、空冷又は水冷などによる冷却工程である、前記連続製造方法に関する。
そして、本発明は、クエンチ液が亜硫酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物の水溶液である、前記連続製造方法に関する。
(F)得られた反応混合物からケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を分離する工程、
を包含してなる、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体の連続製造方法に関する。
本発明は、(F)の分離する工程が、抽出溶媒を用いた抽出操作により行われる、前記連続製造方法に関する。
また、本発明は、(E)の分離する工程が、さらに精製する工程を包含する、前記連続製造方法に関する。
より詳細には、本発明は、前記マロン酸ジエステルが、次の一般式(1)
で表されるマロン酸ジエステルである、前記連続製造方法に関する。
また、本発明は、前記対応するケトマロン酸ジエステルが、次の一般式(2)
で表されるケトマロン酸ジエステルである、前記連続製造方法に関する。
(G)マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を混合するための混合部、
(H)混合された混合物を、昇温させるための昇温部、並びに、
(I)昇温部で昇温された混合物を反応させるための反応部、
を含有してなる、マロン酸ジエステルを原料化合物として対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造するための連続製造装置であって、(H)の昇温部及び(I)の反応部が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器であることを特徴とする連続製造装置に関する。
本発明は、(G)の混合部が、カルボン酸化合物及び亜塩素酸化合物を混合するための混合部、並びに、この混合物にマロン酸ジエステルを混合するための混合部、を含む、前記連続製造装置に関する。
本発明は、(G)の混合部が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物を混合するための混合部、並びに、この混合物に亜塩素酸化合物を混合するための混合部、を含む、前記連続製造装置に関する。
また、本発明は、(G)の混合部が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物の混合物に亜塩素酸化合物を混合するための混合部、を含む、前記連続製造装置に関する。
(J)混合物を反応させる工程で得られた反応混合物を、さらに熟成させるための熟成部、
を含有してなり、当該熟成部が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記連続製造装置に関する。
(K)反応をクエンチするためのクエンチ部、
を含有してなり、当該クエンチ部が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記連続製造装置に関する。
本発明は、(K)のクエンチ部が、T字管などのクエンチ液を液送するための装置を含有している、前記連続製造装置に関する。
(L)得られた反応混合物からケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を分離するための分離部、
を含有してなる、前記連続製造装置に関する。
本発明は、(L)の分離部が、抽出溶媒による抽出操作部を含有している、前記連続製造装置に関する。
また、本発明は、(L)の分離部が、さらに精製部を含有してなる、前記連続製造装置に関する。
また、本発明は、本発明の連続製造装置における前記対応するケトマロン酸ジエステルが、前記の一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルである、前記連続製造装置に関する。
本発明のケトマロン酸ジエステル等のケトマロン酸化合物の製造方法は、マロン酸ジエステルの活性メチレン部分をあらかじめ修飾する必要がなく、マロン酸ジエステルの活性メチレン部位を一段階で直接酸化する方法であり、さらに、特殊で高価な反応剤を必要とせず、高価な触媒や貴金属のような遷移金属を必要とせず、工業的に優れた方法である。
本発明は、比較的細い流通経路内で連続して反応させるために、仮に副生する爆発性の物質による爆発が発生したとしても、その爆発は極めて小規模なものであり、連続操業に支障を与える規模ではなく、安定した操業が可能である。
また、本発明は、比較的細い流通経路内で連続して反応させるために、昇温部を設けて安定して反応が進行するようにされている。これにより、効率よく目的物質を製造することが可能となった。
そして、本発明では、未反応の試薬や副生する物質を無害化するためのクエンチ工程を設けることができ、廃棄物処理が容易で環境にもやさしく、工業的な利用価値が高い。
また、本発明の方法は、連続して操業できることから、回分式(バッチ式)による製造むらが生じることが少なく、製造された物質の品質を一定に保つこともできる。
以上のように、本発明の連続製造方法は工業的な製造方法として極めて有用であるばかりでなく、各種の工業原料として極めて有用なケトマロン酸ジエステル等のケトマロン酸化合物を、安価に安定して大量に供給し得る工業的な製造方法を提供するものである。
[1]マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を原料化合物として、これらの原料化合物を混合して、これらの混合物を流通反応器に連続的に供給して、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造する方法。
[2]原料化合物の混合が、カルボン酸化合物及び亜塩素酸化合物を混合する工程、並びに、この混合物にマロン酸ジエステルを混合する工程により行われる、前記[1]に記載の方法。
[3]原料化合物の混合が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物を混合する工程、並びに、この混合物に亜塩素酸化合物を混合する工程により行われる、前記[1]に記載の方法。
[4]原料化合物の混合が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物の混合物に、亜塩素酸化合物を混合する工程により行われる、前記[1]に記載の方法。
[6]亜塩素酸化合物の水溶液における、亜塩素酸化合物の濃度が、5質量%から30質量%である、前記[5]に記載の方法。
[7]カルボン酸化合物が、溶媒と共に供給される、前記[1]から[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8]カルボン酸化合物の溶媒が、水である前記[7]に記載の方法。
[9]マロン酸ジエステル、又はマロン酸ジエステルとカルボン酸化合物との混合物が、溶媒と共に供給される、前記[1]から[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10]溶媒が、極性溶媒である、前記[9]に記載の方法。
[11]極性溶媒が、水、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群の1種又は2種以上から選ばれる、前記[10]に記載の方法。
[12]溶媒が、2種以上の溶媒の混合溶媒である、前記[9]から[11]のいずれか1項に記載の方法。
[13]マロン酸ジエステル、又はマロン酸ジエステルとカルボン酸化合物との混合物が、無溶媒で供給される、前記[1]から[6]のいずれか1項に記載の方法。
[15]管型流通反応器の管の長さが、5m以上である、前記[14]に記載の方法。
[16]管型流通反応器の管の長さが、7m〜30mである、前記[15]に記載の方法。
[17]流通反応器の等価直径が、0.5mm〜50mmである、前記[1]から[16]のいずれか1項に記載の方法。
[18]流通反応器の等価直径が、0.5mm〜10mmである、前記[1]から[16]のいずれか1項に記載の方法。
[19]流通反応器に、温度を制御するための温度制御部が設けられている、前記[1]から[18]のいずれか1項に記載の方法
[20]流通反応器に設けられた温度制御部が、バスである、前記[19]に記載の方法。
[21]流通反応器に設けられた温度制御部の温度が、80℃以上である、前記[19]又は[20]に記載の方法。
[22]流通反応器に設けられた温度制御部の温度が、90℃〜150℃である、前記[19]から[21]のいずれか1項に記載の方法。
[25]第二の流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器で行われる、前記[24]に記載の方法。
[26]第二の流通反応器が、空冷又は水冷などにより冷却されている、前記[24]又は[25]に記載の方法。
[28]第三の流通反応器に供給する前に、T字管などによりクエンチ液が液送されて反応混合物と混合される、前記[27]に記載の方法。
[29]第三の流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記[27]又は[28]に記載の方法。
[30]第三の流通反応器が、空冷又は水冷などにより冷却されている、前記[27]から[29]のいずれか1項に記載の方法。
[31]クエンチ液が、亜硫酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物の水溶液である、前記[27]から[30]のいずれか1項に記載の方法。
[33]反応混合物からの分離が、抽出溶媒を用いた抽出操作により行われる、前記[32]に記載の方法。
[34]分離する工程が、さらに精製する工程を包含する、前記[32]又は[33]に記載の方法。
(B)混合された混合物を、流通反応器に供給する工程、並びに、
(C)流通反応器で混合物を反応させる工程、
を含有してなる、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造する方法。
[36](A)の混合する工程が、カルボン酸化合物及び亜塩素酸化合物を混合する工程、並びに、この混合物にマロン酸ジエステルを混合する工程により行われる、前記[35]に記載の方法。
[37](A)の混合する工程が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物を混合する工程、並びに、この混合物に亜塩素酸化合物を混合する工程により行われる、前記[35]に記載の方法。
[38](A)の混合する工程が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物の混合物に、亜塩素酸化合物を混合する工程により行われる、前記[35]に記載の方法。
[40]亜塩素酸化合物の水溶液における、亜塩素酸化合物の濃度が、5質量%から30質量%である、前記[39]に記載の方法。
[41]カルボン酸化合物が、溶媒と共に供給される、前記[35]から[40]のいずれか1項に記載の方法。
[42]カルボン酸化合物の溶媒が、水である前記[41]に記載の方法。
[43]マロン酸ジエステル、又はマロン酸ジエステルとカルボン酸化合物との混合物が、溶媒と共に供給される、前記[35]から[42]のいずれか1項に記載の方法。
[44]溶媒が、極性溶媒である、前記[43]に記載の方法。
[45]極性溶媒が、水、酢酸、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群の1種又は2種以上から選ばれる、前記[44]に記載の方法。
[46]溶媒が、2種以上の溶媒の混合溶媒である、前記[43]から[45]のいずれか1項に記載の方法。
[47]マロン酸ジエステル、又はマロン酸ジエステルとカルボン酸化合物との混合物が、無溶媒で供給される、前記[35]から[40]のいずれか1項に記載の方法。
[49]管型流通反応器の管の長さが、5m以上である、前記[48]に記載の方法。
[50]管型流通反応器の管の長さが、7m〜30mである、前記[48]に記載の方法。
[51]流通反応器の等価直径が、0.5mm〜50mmである、前記[35]から[50]のいずれか1項に記載の方法。
[52]流通反応器の等価直径が、0.5mm〜10mmである、前記[35]から[50]のいずれか1項に記載の方法。
[53]流通反応器に、温度を制御するための温度制御部が設けられている、前記[35]から[52]のいずれか1項に記載の方法。
[54]流通反応器に設けられた温度制御部が、バスである、前記[53]に記載の方法。
[55]流通反応器に設けられた温度制御部の温度が、80℃以上である、前記[53]又は[54]に記載の方法。
[56]流通反応器に設けられた温度制御部の温度が、90℃〜150℃である、前記[53]から[55]のいずれか1項に記載の方法。
(D)混合物を反応させる工程で得られた反応混合物を、さらに熟成させる工程、
を含有してなる、前記[35]から[56]のいずれか1項に記載の方法。
[58](D)の熟成させる工程が、1つ又は2つ以上の第二の流通反応器で行われる、前記[57]に記載の方法。
[59]第二の流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記[58]に記載の方法。
[60](D)の熟成させる工程が、空冷又は水冷などによる冷却工程である、前記[57]から[59]のいずれか1項に記載の方法。
(E)クエンチ液を混合して、反応をクエンチする工程、
を含有してなる、前記[35]から[60]のいずれか1項に記載の方法。
[62](E)のクエンチする工程が、1つ又は2つ以上の第三の流通反応器で行われる、前記[61]に記載の方法。
[63]第三の流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記[62]に記載の方法。
[64](E)のクエンチする工程が、T字管などによりクエンチ液を液送されて行われる、前記[61]から[63]のいずれか1項に記載の方法。
[65](E)のクエンチする工程が、空冷又は水冷などによる冷却工程である、前記[61]から[64]のいずれか1項に記載の方法。
[66]クエンチ液が、亜硫酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物の水溶液である、前記[61]から[65]のいずれか1項に記載の方法。
(F)得られた反応混合物からケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を分離する工程、
を含有してなる、前記[35]から[66]のいずれか1項に記載の方法。
[68](F)の分離する工程が、抽出溶媒を用いた抽出操作により行われる、前記[67]に記載の方法。
[69](F)の分離する工程が、さらに精製する工程を包含する、前記[67]又は[68]に記載の方法。
で表されるマロン酸ジエステルである、前記[1]から[69]のいずれか1項に記載の方法。
[71]ケトマロン酸ジエステルが、次の一般式(2)、
で表されるケトマロン酸ジエステルである、前記[1]から[70]のいずれか1項に記載の方法。
[72]亜塩素酸化合物が、亜塩素酸塩である、前記[1]から[71]のいずれか1項に記載の方法。
[73]亜塩素酸塩が、亜塩素酸アルカリ金属塩又は亜塩素酸アルカリ土類金属塩である、前記[72]に記載の方法。
[74]亜塩素酸アルカリ金属塩が、亜塩素酸ナトリウムである、前記[73]に記載の方法。
[75]カルボン酸化合物が、カルボン酸、カルボン酸塩、及びカルボン酸無水物からなる群から選択される1種又は2種以上の酸としてのカルボン酸化合物である、前記[1]から[74]のいずれか1項に記載の方法。
[76]カルボン酸化合物が、カルボン酸及びカルボン酸アルカリ金属塩を、併用するものである、前記[75]に記載の方法。
[77]カルボン酸化合物が、カルボン酸である、前記[75]に記載の方法。
[78]カルボン酸が、酢酸である、前記[75]又は[77]に記載の方法。
(H)混合された混合物を、昇温させるための昇温部、並びに、
(I)昇温部で昇温された混合物を反応させるための反応部、
を含有してなる、マロン酸ジエステルを原料化合物として対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造するための連続製造装置であって、(H)の昇温部及び(I)の反応部が、1つ又は2つ以上の流通反応器であることを特徴とする連続製造装置。
[80]流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記[79]に記載の連続製造装置。
[81](G)の混合部が、カルボン酸化合物及び亜塩素酸化合物を混合するための混合部、並びに、この混合物にマロン酸ジエステルを混合するための混合部、を含む、前記[79]又は[80]に記載の連続製造装置。
[82](G)の混合部が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物を混合するための混合部、並びに、この混合物に亜塩素酸化合物を混合するための混合部、を含む、前記[79]又は[80]に記載の連続製造装置。
[83](G)の混合部が、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物の混合物と、亜塩素酸化合物を混合するための混合部、を含む、前記[79]又は[80]に記載の連続製造装置。
[85]管型流通反応器の等価直径が、0.5mm〜10mmである、前記[80]から[83]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[86]管型流通反応器の管の長さが、5m以上である、前記[80]から[85]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[87]管型流通反応器の管の長さが、7m〜30mである、前記[80]から[85]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[88]昇温部と反応部が、ひとつの管型流通反応器に内在している、前記[80]から[87]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[89]昇温部と反応部が、それぞれ別個の複数の管型流通反応器で形成されている、前記[80]から[87]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[90]流通反応器に、温度を制御するための温度制御部が設けられている、前記[79]から[89]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[91]流通反応器に設けられた温度制御部が、温度を制御するためのバスである、前記[90]に記載の連続製造装置。
(J)混合物を反応させる工程で得られた反応混合物を、さらに熟成させるための熟成部、
を含有している、前記[79]から[91]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[93]当該熟成部が、1つ又は2つ以上の流通反応器である、前記[92]に記載の連続製造装置。
[94]流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記[93]に記載の連続製造装置。
(K)反応をクエンチするためのクエンチ部、
を含有している、前記[79]から[94]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[96]当該クエンチ部が、1つ又は2つ以上の流通反応器である、前記[95]に記載の連続製造装置。
[97]流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、前記[96]に記載の連続製造装置。
[98](K)のクエンチ部が、T字管などのクエンチ液を液送するための装置を含有している、前記[95]から[97]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
(L)得られた反応混合物からケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を分離するための分離部、
を含有してなる、前記[79]から[98]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
[100](L)の分離部が、抽出溶媒による抽出操作部を含有している、前記[99]に記載の連続製造装置。
[101](L)の分離部が、さらに精製部を含有してなる、前記[99]又は[100]に記載の連続製造装置。
[103]ケトマロン酸ジエステルが、前記の一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルである、前記[79]から[102]のいずれか1項に記載の連続製造装置。
本発明の方法の原料化合物として用いられるマロン酸ジエステルは、遊離のマロン酸であってもよいが、入手の容易さや取り扱いの容易さからジエステルが好ましい。特に、工業的な規模での取り扱いにおいてはジエステルが有利であり、本発明の方法においてはマロン酸ジエステルとして表示するが、遊離のマロン酸も包含している。
次に、本発明の方法の原料として用いる、上記した一般式(1)で表されるマロン酸ジエステル(以下、「原料化合物」と記載することがある。)について説明する。
なお、一般式(1)で表されるマロン酸ジエステル(原料化合物)は、単独で又は2種以上のマロン酸ジエステルの任意の割合の混合物として用いることができる。
前記してきたように、本発明の方法の原料化合物として用いられるマロン酸ジエステルは、遊離のマロン酸を排除するものではない。したがって、本発明の方法による生成物である「対応するケトマロン酸ジエステル」も、遊離のマロン酸に対応する生成物としての遊離のケトマロン酸を同様に包含している。
次に、本発明の方法により製造される目的物である一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルについて説明する。
次に、本発明の方法により製造される目的物である一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルの抱水体について説明する。
で表されるケトマロン酸ジエステルの抱水体を形成する。この抱水体は、必要に応じて、例えば加熱処理等の脱水処理を行うことにより、ケト型の一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルとすることができる。このような可逆反応は、抱水クロラールのような抱水体の一般的な性質と同様である。
続いて、本発明の方法に用いる亜塩素酸化合物について説明する。
本発明の方法には、亜塩素酸又は亜塩素酸塩から選択される1種又は2種以上の亜塩素酸化合物が用いられる。
カチオンとしては、金属カチオン又はオニウムカチオンを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
金属カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、又はセシウムイオン等のアルカリ金属イオン;マグネシウムイオン、カルシウムイオン、又はバリウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;アルミニウムイオン等の土類金属イオン;亜鉛イオン等の亜鉛族イオン;銅イオン、銀イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、又は鉄イオン等の遷移金属イオンを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
オニウムカチオンとしては、アンモニウムイオン(NH4 +);テトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、トリメチルブチルアンモニウムイオン、トリメチルオクチルアンモニウムイオン、トリブチルメチルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン等の直鎖若しくは分岐C1〜C8アルキル基又はフェニル基を有する4級アンモニウムイオン;テトラメチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン等の直鎖若しくは分岐C1〜C8アルキル基又はフェニル基を有する4級ホスホニウムイオンを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
更には、亜塩素酸塩としては、亜塩素酸とアミン類の塩(アミン塩)も例示することができる。
塩を形成するアミン類としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ヒドラジン、メチルヒドラジン、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、キノリン、アニリン、又はN,N−ジエチルアニリン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
これらの亜塩素酸塩は無水物であっても水和物であってもよい。
これらの亜塩素酸塩は単塩であっても複塩であってもよい。
これらの亜塩素酸化合物は公知化合物である。
これらの亜塩素酸化合物は、単独で、又は2種以上を任意の割合で混用してもよい。
これらの亜塩素酸化合物は、亜塩素酸化合物のみの液体若しくは固体、又は水溶液若しくは水以外の溶媒の溶液等、如何なる形態でも使用することができる。水以外の溶媒としては後述する本発明の方法に用いることができる溶媒を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
入手性や取り扱いの簡便さ、及び反応性等の観点からは、亜塩素酸化合物は水溶液として供給するのが好ましい。水溶液とした場合の亜塩素酸化合物の濃度は特に制限はないが、5質量%〜80質量%、5質量%〜60質量%、5質量%〜50質量%、5質量%〜40質量%、5質量%〜30質量%、5質量%〜25質量%、好ましくは、10質量%〜80質量%、10質量%〜60質量%、10質量%〜50質量%、10質量%〜40質量%、10質量%〜30質量%、10質量%〜25質量%、10質量%〜20質量%の範囲を例示できる。
本発明の方法は、カルボン酸化合物の存在下で行うのが好ましい。
続いて、本発明におけるカルボン酸化合物について説明する。
本発明の方法は、酸として、カルボン酸、カルボン酸塩、及びカルボン酸無水物からなる群から選択される1種又は2種以上のカルボン酸化合物の存在下で行われるのが好ましい。
本発明の方法における、特に好ましいカルボン酸化合物としては、カルボン酸が挙げられる。本発明の方法におけるカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、脂環式カルボン酸、芳香族カルボン酸、複素環式カルボン酸などの有機カルボン酸が挙げられる。好ましいカルボン酸としては、次の一般式(4)、
で表されるカルボン酸が挙げられる。
カルボン酸塩を形成するアミン類としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アニリン、又はN,N−ジエチルアニリン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
当該カルボン酸化合物を単独で使用するときは、好ましいものとしてはカルボン酸又はカルボン酸無水物を挙げることができ、より好ましくはカルボン酸を挙げることができ、更に好ましくは酢酸などの脂肪族カルボン酸又は無水酢酸などの脂肪族カルボン酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは酢酸などの脂肪族カルボン酸を挙げることができるが、これらによって限定されるものではない。
当該カルボン酸化合物の異なる2種以上を組み合わせて使用するときは、好ましいカルボン酸化合物の組み合わせとして、カルボン酸とカルボン酸塩の組み合わせを挙げることができ、より好ましい組み合わせとして、カルボン酸とカルボン酸アルカリ金属塩の組み合わせを挙げることができ、さらに好ましくは酢酸と酢酸ナトリウムの組み合わせ、酢酸と酢酸カリウムの組み合わせなどの脂肪族カルボン酸とその塩との組み合わせを挙げることができるが、これらによって限定されるものではない。
本発明の反応におけるカルボン酸化合物の好ましい具体的な例としては、酢酸のみ、プロピオン酸のみ、無水酢酸のみ、酢酸と酢酸ナトリウムの組み合わせ、又は酢酸と酢酸カリウムの組み合わせ、より好ましくは酢酸のみ、酢酸と酢酸ナトリウムの組み合わせ、又は酢酸と酢酸カリウムの組み合わせ、さらに好ましくは酢酸のみ、又は酢酸と酢酸ナトリウムの組み合わせ、特に好ましくは酢酸のみを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法は、無溶媒でも実施できるが、溶媒の存在下に実施することもできる。
本発明の反応に用いる水以外の他の溶媒としては、例えば、カルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸等、好ましくは酢酸);酸無水物類(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸等、好ましくは無水酢酸);ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等、好ましくはアセトニトリル);アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール等、好ましくはメタノール);カルボン酸エステル類(例えば、酢酸エステル類等、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等、好ましくは酢酸エチル);炭酸エステル類(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等);ケトン類(例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソプロルメチルピケトン、イソブチルメチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等、好ましくは、アセトン、イソブチルメチルケトン);アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等、好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド);アルキル尿素類(例えば、テトラメチル尿素、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)等、好ましくはN,N’−ジメチルイミダゾリジノン);リン酸アミド類(例えば、ヘキサメチルホスホリックトリアミド(HMPA)等);スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等);スルホン類(例えば、スルホラン、ジメチルスルホン等);エ−テル類(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル−tert−ブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジグリム(diglyme)等、好ましくはテトラヒドロフラン);芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン等、好ましくは、トルエン、キシレン);ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等、好ましくはクロロベンゼン);脂肪族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチルデカリン、ジメチルデカリン等);ハロゲン化脂肪族炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等、好ましくはジクロロメタン)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で、又は任意の混合割合の混合溶媒として用いることができる。
好ましい極性溶媒としては、水、カルボン酸類、ニトリル類、ケトン類、アルコール類、エステル類、炭酸エステル類、酸無水物類、アミド類、スルホキシド類、スルホン類、又はそれらの混合溶媒を挙げることができる。より好ましくは、水、カルボン酸類、ニトリル類、アミド類、スルホン類、又はそれらの混合溶媒、更に好ましくは、水、カルボン酸類、ニトリル類、アミド類、又はそれらの混合溶媒、更に好ましくは、水、ニトリル類、アミド類、又はそれらの混合溶媒、特に好ましくは、水、アミド類、又はそれらの混合溶媒を挙げることができる。
極性溶媒の具体的な例は、水、酢酸、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、及びジメチルスルホキシドからなる群の1種又は2種以上から選ばれる極性溶媒;好ましくは、水、酢酸、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドンからなる群の1種又は2種以上から選ばれる極性溶媒;より好ましくは、水、酢酸、アセトニトリル、及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる群の1種又は2種以上から選ばれる極性溶媒;さらに好ましくは、水、アセトニトリル、及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる群の1種又は2種以上から選ばれる極性溶媒;さらに好ましくは、水、及びN,N−ジメチルホルムアミドからなる群の1種又は2種から選ばれる極性溶媒;特に好ましくは、水又は水を含有する溶媒系が挙げられる。水は簡便で安価であり好ましい。
反応後の後処理の方法を適切に選択することにより、単離される生成物の形態を、前記一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルの形、又は前記一般式(3)で表されるケトマロン酸ジエステルの抱水体の形のいずれか所望の形とできることからも、本発明の反応は、水溶媒存在下で行うことが好ましい。
反応器は、回分式(バッチ式)と連続式に大別され、連続式の反応器とは、原料の供給、反応、反応混合物の回収を連続的に同時に進行させるための反応器である。連続式の反応器として、流通反応器(フローリアクタ)がある。流通反応器は、原料を連続して供給し、連続して反応を行い、反応混合物を連続して回収することができる反応器である。流通反応器は、管型流通反応器(チューブ型流通反応器を含む)と槽型流通反応器に大別されるが、いずれも連続式で反応を行うことができる。
本発明の流通反応器は、流通反応器の温度を制御する温度制御手段が設けられていてもよく、例えば、加熱や冷却のための温度制御部が設けられていてもよい。温度制御部は適切な如何なるものであってもよく、温度制御部の例は、バス及びジャケット等、好ましくはバスを包含する。バスの様式は、適切な如何なる様式であってもよく、例えば、「滞留型」であっても「流動型(循環型)」であってもよく、「開放型」であっても「密閉型」であってもよい。また、流通反応器の材質としては、原料物質、溶媒に侵されないものであれば特に制限はなく、例えば、金属(チタン、ニッケル、ステンレス、ハステロイCなどの各種合金)、樹脂(フッ素樹脂)、ガラス(シリコン、石英)、磁器(コージェライト、セラミックス)等が挙げられる。
また、本発明の管型流通反応器は、必要に応じて、混合器を有していてもよい。混合器は、気体と液体又は液体と液体など2種以上の流体を連続的に混合できる機能を有するものであれば特に制限はなく、例えば、Y字型混合器、T字型混合器、十字型混合器、パイプライン型混合器(スタティックミキサー等を含むラインミキサー)等が挙げられる。本発明の好ましい態様としては、原料化合物の全てを流通反応器に供給する前に混合器で混合した混合物を、流通反応器に供給する方法が挙げられるので、特別な場合の態様を除き、混合器を内包する流通反応器を用いる必要はない。
本発明における「等価直径(De)」とは、次の式で定義される値である。
De = 4・Af/Wp
(式中、Afは流路断面積を示し、Wpは濡れ縁長さを示す。)
例えば、半径rの円管状の管の等価直径は、
De = 4・πr2/2πr
= 2r
となる。
本発明の方法を効率的に行うためには、高温で反応させる必要があるので、そのために昇温させる必要が有り、等価直径が1mm〜6mm又は6mm〜10mm程度の管を用いた場合には、流速との兼ね合いもあるが一般的には5m以上の長さが必要とされる。
本発明の反応装置を説明するために図1〜図5に例示するが、本発明の反応装置はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の反応装置のもっとも典型的な例である。
3種の原料化合物は原料供給口1〜3からそれぞれ供給される。図1〜図5の例では、3種類の原料化合物がそれぞれ別の供給口から供給されるように図示されているが、必ずしも3種類を別々に供給する必要は無く、これらの中の2種を予め混合したものを供給することもできる。
図1の例では、マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を、それぞれ供給口1〜3から混合器11に供給し、これらを混合する。混合する順序は特に制限はなく、カルボン酸化合物及び亜塩素酸化合物を混合し、次いで、この混合物にマロン酸ジエステルを混合してもよいし、また、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物を混合し、次いで、この混合物に亜塩素酸化合物を混合することもできる。より好ましい態様としては、マロン酸ジエステル及びカルボン酸化合物を予め混合しておいて、この混合物を供給口1から供給し、亜塩素酸化合物の水溶液を供給口2から供給して混合することもできる。この場合には、供給口3は使用されない。
マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物は、前記したモル比で混合することができる。例えば、これらのモル比が、1モル:0.01〜50モル:1〜15モルの範囲で選定できる。
この混合工程は以下の図2〜図5においても同様である。
混合器11で混合された混合物は、管型流通反応器12に供給されて反応させられる。反応を終えた反応混合物は、出口4から回収される。
管型流通反応器12は、概念的に、昇温部と反応部に分けて考えられる。昇温部としては、管の等価直径や流速にもよるが、管の長さが、2m以上、好ましくは3m以上、より好ましくは5m以上必要である。なお、管型流通反応器に原料化合物が導入される前に、原料化合物が昇温されている場合は、昇温部は必要ではなくなるであろう。より具体的には、例えば、約2m〜10m、好ましくは3m〜7m、より好ましくは3m〜5m程度が昇温に必要な昇温部の長さである。反応部としては、管の等価直径や流速にもよるが、管の長さが、1m以上、2m以上、3m以上、5m以上、又は10m以上必要である。より具体的には、例えば、約3m〜20m、3m〜15m、3m〜10m、又は約4m〜20m、4m〜15m、4m〜10m程度が反応に必要な反応部の長さである。
管型流通反応器12の管の長さとしては、5m以上、好ましくは5m〜50m、5m〜30m、5m〜20m、好ましくは7m〜50m、7m〜30m、7m〜20m、より好ましくは9m〜50m、9m〜30m、9m〜20mの範囲が挙げられる。
管型流通反応器12の流速としては、5m/分以上であることが好ましく、より好ましくは5m/分〜50m/分、さらに好ましくは10m/分〜40m/分程度が挙げられる。
管型流通反応器12での滞留時間としては、流速や等価直径の大きさにもよるが、通常は、10秒以上、好ましくは10秒〜200秒、10秒〜150秒、10秒〜120秒、より好ましくは15秒〜200秒、15秒〜150秒、15秒〜120秒程度である。
管型流通反応器12には、温度制御部(例えば、温度を制御するためのバス)が設けられており、好ましい温度制御部(例えば、温度を制御するためのバス)の温度としては、60℃〜200℃、80℃〜200℃、90℃〜200℃、より好ましくは80℃〜150℃、90℃〜150℃、さらに好ましくは100℃〜150℃、100℃〜140℃程度が挙げられる。
管型流通反応器12内の混合物の温度としては、例えば、60℃〜250℃、80℃〜250℃、90℃〜250℃、好ましくは60℃〜200℃、80℃〜200℃、90℃〜200℃、さらに好ましくは80℃〜170℃、90℃〜170℃、さらに好ましくは80℃〜160℃、90℃〜160℃、さらに好ましくは80℃〜150℃、90℃〜150℃、100℃〜150℃、特に好ましくは120℃〜150℃、130℃〜150℃の範囲が挙げられるが、これらに限定されるものではない。温度制御の好ましい態様としては、管型流通反応器12内の混合物の温度を測定し、この温度が前記の温度になるように温度制御部の温度を調整する方法が挙げられる。また、反応混合物の温度を管型流通反応器12の流出口付近で測定し、この温度が前記の温度になるように温度制御部の温度を調整する方法も挙げられる。
また、本発明における管型流通反応器12内の平均圧力としては、例えば、0.03MPa〜1.0MPa、0.03MPa〜0.9MPa、好ましくは0.05MPa〜0.8MPa、0.05MPa〜0.7MPa、0.04MPa〜1.0MPa、0.04MPa〜0.9MPa、より好ましくは0.09MPa〜0.3MPa、0.1MPa〜0.3MPa、0.04MPa〜0.8MPa、0.04MPa〜0.7MPaの範囲が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
図1の場合と同様に混合器21で混合された原料化合物の混合物が、最初の流通反応器22に供給され、次いで流通反応器23に供給される。最初の流通反応器22では混合物を反応温度まで昇温する。次いで、昇温された混合物を次の流通反応器23に供給して反応させて、反応混合物を出口4から回収することもできる。
最初の流通反応器22は、昇温部のための流通反応器であり、好ましくは管型流通反応器であり、管の長さは、管の等価直径や流速にもよるが、2m以上、好ましくは3m以上、より好ましくは5m以上必要である。より具体的には、例えば、約2m〜10m、好ましくは3m〜7m、より好ましくは3m〜5m程度である。
次の流通反応器23は、反応部のための流通反応器であり、好ましくは管型流通反応器であり、管の長さは、管の等価直径や流速にもよるが、3m以上、5m以上、又は10m以上必要である。より具体的には、例えば、約3m〜20m、3m〜15m、3m〜10m、又は約4m〜20m、4m〜15m、4m〜10m程度である。
温度条件などの反応条件は、前記の図1の場合と同様である。
図2に示される反応経路の変形として、混合器21と最初の流通反応器22の順序を入れ替えた態様もある。即ち、原料化合物を混合する前に、流通反応器22により、それぞれの原料化合物を昇温し、次いで昇温された原料化合物を混合して、これらを反応させるために昇温された原料化合物の混合物を、流通反応器23に供給する方法もある。しかし、装置が複雑となるだけでなく、亜塩素酸化合物を単独で昇温することになり、好ましい態様ではない。
マロン酸ジエステルと亜塩素酸塩との反応は、2段階又はそれ以上の段階に分かれており、最初の段階の反応は高温に加熱する必要が有るが、最後の段階の反応は必ずしも加熱する必要がないとも推定された。これは、最初の段階の反応が発熱反応であり、この発熱反応が進行した後は、外部から加熱しなくても反応混合物の反応熱で反応温度を保つことができるからであると考えられる。したがって、高温での反応が完了した後、低温で滞留させることにより、熱効率が良く、さらに転化率を向上させることができるとも考えられた。この低温での滞留を行う工程が、熟成工程である。
流通反応器33は、管型流通反応器が好ましい。
管型流通反応器33の管の等価直径は、管型流通反応器32の管の等価直径と同じであってもよいが、それよりも小さい方が好ましく、管型流通反応器32の管の等価直径の半分程度であってもよい。
管型流通反応器33の管の長さとしては、3m〜30m、3m〜15m、3m〜10m程度が好ましい。
管型流通反応器33の流速は、管型流通反応器32の流速とほぼ同じである。
管型流通反応器33は、温度制御部(例えば、温度を制御するためのバス)は特に必要は無いが、冷却のための温度制御部を設けるのが好ましい。好ましい温度制御部はバスであり、より好ましくは水冷バスである。
本明細書において、バスの様式は、適切な如何なる様式であってもよく、例えば「滞留型」であっても「流動型(循環型)」であってもよく、加えて、例えば「開放型」であっても「密閉型」であってもよい。本明細書において、「水冷」とは、例えば、熱媒体に水、不凍液としてのアルコールなどの単一成分からなる液体、またはアルコール水溶液、食塩水、塩化カルシウム水溶液などの不凍液としての混合液体を用いる冷却方法を意味し、ここでアルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等を包含する。
図3に示される装置により、目的の反応は完了しているが、反応混合物は、未反応の原料化合物や副生する爆発性の物質などを含有している。これらの物質を安全に処理するのが、このクエンチ工程である。
即ち、このクエンチ工程では、未反応の亜塩素酸塩及び副生する二酸化塩素を分解する工程である。クエンチ液としてNa2SO3及びNaOHの水溶液を使用した場合の推定される分解反応の化学式を次に例示する。
NaClO2 + 2Na2SO3 → 2Na2SO4 + NaCl
ClO2 + NaOH + 3/2Na2SO3
→ 3/2Na2SO4 + NaCl + 1/2H2O + 1/2O2
このようにして、反応混合物中の未反応の亜塩素酸塩及び発生する二酸化塩素を分解することにより、反応混合物中からの分離精製処理を容易にするだけでなく、排水処理をすることができ、環境への漏出を減少させることができる。
流通反応器44は、管型流通反応器が好ましい。
クエンチ液は、反応混合物中の未反応の亜塩素酸塩及び副生する二酸化塩素を分解することができるものを含有していれば特に制限はないが、好ましいクエンチ液としては、例えば、亜硫酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物の水溶液が挙げられる。
クエンチ液は、例えば、T字管やY字管などにより反応管に液送されて、混合される。混合のためのT字管やY字管などは、管型流通反応器44の前に設けるのが好ましいが、これに限定されるものではない。
管型流通反応器44の管の等価直径は、管型流通反応器42の管の等価直径と同じであってもよいが、それよりも小さい方が好ましく、管型流通反応器42の管の等価直径の半分程度であってもよい。
管型流通反応器44の管の長さとしては、3m〜30m、3m〜15m、3m〜10m程度が好ましい。
管型流通反応器44の流速は、管型流通反応器42の流速とほぼ同じである。
管型流通反応器44は、温度制御部(例えば、温度を制御するためのバス)は特に必要は無いが、冷却のための温度制御部を設けるのが好ましい。好ましい温度制御部はバスであり、より好ましくは水冷バスである。
分離精製装置55による処理は、回分式(バッチ式)で行ってもよいし、槽型流通反応器を用いて行うこともできる。
本発明のマロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を原料化合物として、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を製造する方法を、水溶媒存在下で実施すると生成物は一般式(3)で表されるケトマロン酸ジエステル抱水体の形で得られ、非水条件下で実施すると一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルの形で得られる。
本発明の方法の好ましい態様では、水溶媒存在下での反応であるから、生成物は一般式(3)で表されるケトマロン酸ジエステル抱水体の形で得られることになる。得られたケトマロン酸ジエステル抱水体を、一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルとするためには、ケトマロン酸ジエステル抱水体を、例えばトルエンとの共沸脱水の如き脱水処理を行うことにより抱水体を脱水して、容易に一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルとすることができる。すなわち、本発明方法においては、反応溶媒及び反応後の後処理の方法を適切に選択することにより、単離される生成物の形態を、前記一般式(2)で表されるケトマロン酸ジエステルの形、又は前記一般式(3)で表されるケトマロン酸ジエステル抱水体の形のいずれか所望の形とできることからも、本発明の反応は、水溶媒存在下で行うことが好ましい。
なお、反応混合物から一般式(3)で表されるケトマロン酸ジエステル抱水体を分離する方法としては、酢酸エチルなどの抽出溶媒を用いて、抽出処理する方法などが挙げられる。
本発明の連続反応装置は、原料化合物の混合器、及び連続反応のための流通反応器、好ましくは管型流通反応器を含有してなる連続反応装置であって、マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を原料化合物として、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を製造するための連続反応装置であることを第一の特徴とするものである。
また、本発明の連続反応装置は、ケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を効率的に製造するために、流通反応器、好ましくは管型流通反応器の管の等価直径が比較的大きく0.5mm〜50mmとなっていることを第二の特徴とするものである。
さらに、原料の混合物を短時間で高温にするための昇温部を有していることを第三の特徴とするものである。昇温部は流通反応器の一部であって一つの流通反応器中に昇温部と反応部があってもよいし、昇温部のための流通反応器と反応部のための流通反応器が連続して又は別個に配置されていてもよい。
以下の実施例におけるガスクロマトグラフィー(GC)分析方法、及び流速の測定方法は以下の方法により行われた。
GC分析方法に関しては、必要に応じて、以下の文献を参照することができる。
(a):(社)日本化学会編、「新実験化学講座9 分析化学 II」、第60〜86頁(1977年)、発行者 飯泉新吾、丸善株式会社(例えば、カラムに使用可能な固定相液体に関しては、第66頁を参照できる。)
(b):(社)日本化学会編、「実験化学講座20−1 分析化学」第5版、第121〜129頁(2007年)、発行者 村田誠四郎、丸善株式会社(例えば、中空キャピラリー分離カラムの具体的な使用方法に関しては、第124〜125頁を参照できる。)
転化率は次の方法により、算出した。
転化率の算出方法:
ガスクロマトグラフィー(GC)分析により得られる面積百分率の値から溶媒のピークを差し引いた値を用いて算出した。
GC分析条件:
機器:GC−2010(株式会社島津製作所製)
カラム:DB−1(Aglient J&W)
昇温条件:80℃(0min)→10℃/min→200℃(2min)
インジェクション温度:300℃
検出器温度:320℃
検出方法:FID
分析サンプルの調製方法:
本発明の方法によって得られた反応混合物を少量サンプリングし、そこに適切な量の酢酸エチルを添加した。得られたサンプルを十分に撹拌した後、静置した。上層の有機層を分離して、ガスクロマトグラフィー用分析サンプルとした。
実際の流速を直接計測することが困難なため、流速は次の方法により算出された。
反応操作前後の各原料の重量を天秤等の重量計により計量した。それらの重量差(kg)を各原料の密度(kg/m3)で除することにより体積差(m3)に換算し、操作時間(分)で除することにより、流量(m3/分)を算出した。得られた流量を反応管の平均断面積(m2)で除することにより平均流速(m/分)を算出した。ただし、実際の流速は、反応混合物が気液混合状態であることから変動し、安定した測定値を得ることは困難であった。従って、算出した平均流速は参考値であって、実際の流速とは必ずしも一致するとは限らない。
(圧力の測定方法)
圧力は、次の方法により計測した。
反応装置に備え付けた隔膜式圧力計より得られたデータ群より、定常状態(反応安定段階)における圧力の平均値を算出した。
圧力計:隔膜式圧力計PK-1及び/又は隔膜式デジタル圧力計DDIT(いずれも株式会社第一計器製作所製)。
(マイクロリアクタを用いた方法)
マイクロリアクタ(YMC社製、ミキサhelixタイプ)を2台用意し、第一のマイクロリアクタの排出口を、第二のマイクロリアクタの一方の供給口にチューブを用いて接続した。第二のマイクロリアクタの排出口に、直径1.0mm、長さ9mのテフロン(登録商標)製のチューブを接続して、当該テフロン(登録商標)製のチューブを反応管とした。当該9mのテフロン(登録商標)チューブをシリコンオイルバスに浸して加熱可能にした。
第一のマイクロリアクタを80℃に加熱し、シリコンオイルバスを130℃に加熱して、シリンジポンプを用いて第一のマイクロリアクタの2つの供給口から、それぞれ25%亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸を供給し、第二のマイクロリアクタのもう一つの供給口からシリンジポンプを用いてマロン酸ジエチルを無溶媒で供給した。
供給比は、容積比で、マロン酸ジエチル:酢酸:25%亜塩素酸ナトリウム水溶液が、1:3:3となるようにした。
テフロン(登録商標)チューブにおける流速は、0.74m/分であった。テフロン(登録商標)チューブの排出口から出てくる反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、マロン酸ジエチルの転化率は、63.70%であった。
実施例1で使用した装置を用いて、第一及び第二のマイクロリアクタのいずれも加熱せずに室温のままとして、シリコンオイルバスを95℃に加熱して、実施例1と同様に、シリンジポンプを用いて第一のマイクロリアクタの2つの供給口から、それぞれ25%亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸を供給し、第二のマイクロリアクタのもう一つの供給口からシリンジポンプを用いてマロン酸ジエチルを無溶媒で供給した。
供給比は、容積比で、マロン酸ジエチル:酢酸:25%亜塩素酸ナトリウム水溶液が、1:1:10となるようにした。
テフロン(登録商標)チューブにおける流速は、1.27m/分であった。テフロン(登録商標)チューブの排出口から出てくる反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、マロン酸ジエチルの転化率は、86.50%であった。
マイクロリアクタ(YMC社製、ミキサhelixタイプ)を2台用意し、第一のマイクロリアクタの排出口を、第二のマイクロリアクタの一方の供給口にチューブを用いて接続した。実施例1で接続したテフロン(登録商標)チューブは使用しなかった。
第一及び第二のマイクロリアクタを80℃に加熱して、シリンジポンプを用いて第一のマイクロリアクタの2つの供給口から、それぞれ25%亜塩素酸ナトリウム水溶液及び酢酸を供給し、第二のマイクロリアクタのもう一つの供給口からシリンジポンプを用いてマロン酸ジエチルを無溶媒で供給した。
供給比は、容積比で、マロン酸ジエチル:酢酸:25%亜塩素酸ナトリウム水溶液が、1:1:1となるようにした。流速は、0.32m/分であった。
第二のマイクロリアクタの排出口から出てくる反応混合物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、マロン酸ジエチルの転化率は、0.29%に過ぎなかった。
比較例1において、第二のマイクロリアクタを120℃に加熱したこと、及び流速は0.96m/分であったこと以外は、比較例1と同様に処理したところ、マロン酸ジエチルの転化率は、1.42%に過ぎなかった。
また、条件を種々検討した結果、亜塩素酸ナトリウムは、過剰量が必要であることも判明した。
マイクロリアクタを1台とするために、一方の供給口から酢酸とマロン酸ジエチルの、マロン酸ジエチル:酢酸が重量比で5:1とした混合物を予め調製し、この混合物を供給することにした。マイクロリアクタの他の供給口から25%亜塩素酸ナトリウム水溶液を供給した。マイクロリアクタの排出口には、実施例1と同様に直径1mm、長さ9mのチューブを接続し、シリコンオイルバスで加熱できるようにした。
亜塩素酸ナトリウムのマロン酸ジエチルに対するモル比、流速、マイクロリアクタの温度、及びバスの温度を変えて、それぞれの転化率を測定した。
結果を次の表1に示す。
実施例1〜6では市販の25%亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用してきたが、これを薄めて15%亜塩素酸ナトリウム水溶液として使用しても反応が進行するか否かを検討した。
実施例3と同じ装置を使用して、マイクロリアクタの温度を20℃とし、バスの温度を80℃として、マロン酸ジエチル:酢酸:15%亜塩素酸ナトリウム水溶液を容積比で、1:0.2:6.7となるようにして、実施例3と同様に反応させた。平均流速は3.02m/分であった。転化率は99.46%であり、反応混合物から収率85.0%で目的のケトマロン酸ジエチルを得ることができた。
マイクロリアクタを室温のままとした以外は実施例7と同様に反応させた。転化率は92.89%であった。
以上の結果から、マイクロリアクタでは反応は起こっておらず、単に混合のための機能しかなかったので、マイクロリアクタに代えてT字管により混合を行った。ポンプもシリンジポンプに代えてHPLC用のプランジャーポンプを使用した。また、反応管も20mにし、その先に、さらに冷却(放冷)のため10mのチューブを付けた。反応管のバスの温度を80℃にして、亜塩素酸ナトリウムのマロン酸ジエチルに対するモル比を2.0として、T字管に供給した。平均流速は12.01m/分であった。転化率は、97.36%であった。
複数の反応管での反応が可能であるか否かを確認するために、混合された原料混合物をT字管により2系列に分岐させて、実施例9と同様に行った。その結果、それぞれの転化率は、96.34%であった。
このことは、本発明の方法が複数の反応管に分岐させて、それぞれの反応管で同時に反応させることができることを示している。
反応管の長さを10mとし、反応管のバスの温度を110℃として、10%亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用した以外は実施例9と同様にして、反応させた。平均流速は5.01m/分であった。転化率は97.29%であった。反応管の中で小規模の爆発が発生したようであるが、問題がないレベルであり、安全に操作できた。
反応管の先の10mの冷却管を5mと5mに分割し、一方の5m部分を放冷ではなく、水冷とした以外は、実施例11と同様に反応させた。転化率は、99.13%であった。実施例11と同様に多数の小規模の爆発が観察された。
そこで、耐圧性に優れた金属製の管型流通反応器による反応を試みた。
装置の概要を図6に示す。容器1には原料の亜塩素酸ナトリウム水溶液が入れられており、容器2には原料のマロン酸ジエチルと酢酸の重量比で5:1(モル比で1:0.5)の混合物が入れられている。これらの原料はポンプ67及び66を介してそれぞれ供給される。供給された各原料は混合器61により混合される。混合された混合物は、内径3.15mmのチタン製の管でできている管型流通反応器62に導入される。管型流通反応器62はバス64の中に収納されている。管型流通反応器62から排出された反応混合物は、次に同じく内径3.15mmのチタン製の管でできている管型流通反応器63に導入される。管型流通反応器63は、水冷のための水浴65に収納されている。本明細書の実施例において水冷を行うときは、水冷の熱媒体(冷媒)の温度は、特に指定しない限りは25℃に設定された。管型流通反応器63から排出された反応混合物は配管を通して容器4に蓄積される。管型流通反応器62及び管型流通反応器63の管はいずれもコイル状に巻かれている。
この反応装置を用いて、以下の製造実験を行った。
実験の結果を以下の各表に示す。各表中の「モル比」は、マロン酸ジエチルに対する亜塩素酸ナトリウムのモル比であり、「平均流速」は管全体における流速の平均値であり単位はm/分である。「反応管の長さ」は管型流通反応器62における管の長さであり、「伝熱時間(秒)」は管型流通反応器62に滞留している時間(秒)を示し、「冷却管の長さ」は管型流通反応器63における管の長さを示している。
原料として使用する亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度について検討した。亜塩素酸ナトリウム水溶液の濃度が、25%、15%、及び10%のものを用いて反応を行った。
結果を次の表2に示す。
次に管型流通反応器62のバスの温度による影響を検討した。
バスの温度を82℃〜112℃に変えた。結果を次の表3に示す。
また、実施例16〜18は、流速を早くして、管型流通反応器62の管の長さを10mとして、高温で短時間での反応を検討したものである。
次に流速による影響を検討した。
7m/分から40m/分の範囲において検討した。結果を次の表4に示す。
次に、管内の圧力について、管型流通反応器62の管の長さが10mのものを用いて実験を行った。実施例34は、混合器61のミキサに代えて、T字コネクタが使用されている。しかし、この変更による影響が殆ど無いことは既に確認されている。
結果を次の表5に示す。
加えて、本明細書中の全ての実施例を見返すと、管内の平均圧力は、0.044〜0.694MPaが観察された。
次に管型流通反応器62の管の長さについての影響を10mの場合と15mの場合について検討した。結果を次の表6に示す。
次に、亜塩素酸ナトリウムのマロン酸ジエチルに対するモル比の影響について検討した。実施例40〜45はバスの温度が102℃の場合であり、実施例46〜50はバスの温度が112℃の場合である。実施例51及び52は、バスの温度は102℃であるが、流速を遅くしている例である。
結果を次の表7に示す。
次に、管型流通反応器62の管の長さを5mとした実験を行った。実施例53は管の長さが10mの場合であるが、実施例54〜56は同様な条件下で5mとした。ただし、滞留時間を10秒以上とするために流速は少し遅くしている。
結果を次の表8に示す。
回分式(バッチ式)での反応では、この誘導期の存在についての考察は特に必要とはされないが、連続式の場合には非常に重要な問題となることが判明したのである。前記した比較例1及び2で良い結果が得られなかったのも、この誘導期を維持することができなかったからであろうと考えられる。
したがって、これらの実施例の結果から、連続式で反応を行う場合には、この誘導期を維持するための一定の管の長さが必要であると考えられる。本明細書では、この誘導期を維持するための部分を「昇温部」と命名している。このために、管型流通反応器62の管の全長は、この誘導期を維持するために必要な「昇温部」と、誘導期の後の反応が開始される部分の「反応部」に分けて考えることができることになる。
実施例56までの装置では、管型流通反応器63で冷却された反応混合物が直接流出されていた。しかし、この反応混合物は、未反応の亜塩素酸ナトリウムだけでなく、副生した気体状の二酸化塩素も含有しており、同時に排出されることになる。気体状の二酸化塩素が排出されて、高濃度の二酸化塩素が充満すれば爆発の危険性が生じることになる。また、低濃度の二酸化塩素は漂白剤や、殺菌剤及び消毒剤としても有用であるが、高濃度の二酸化塩素の排出は、環境に対しても好ましくないであろう。したがって、これらの亜塩素酸ナトリウム及び二酸化塩素などをクエンチする手段を設けることにした。
この実施例で使用された反応装置を図7に示す。
容器1には原料の亜塩素酸ナトリウム水溶液が入れられており、容器2には原料のマロン酸ジエチルと酢酸の重量比で5:1(モル比で1:0.5)の混合物が入れられている。これらの原料はポンプ79及び78を介してそれぞれ供給される。供給された各原料は混合器71により混合される。混合された混合物は、内径3.15mmのチタン製の管でできている管型流通反応器72に導入される。管型流通反応器72はバス75の中に収納されている。管型流通反応器72から排出された反応混合物は、次に同じく内径3.15mmのチタン製の管でできている管型流通反応器73に導入される。管型流通反応器73は、水冷のための水浴76に収納されている。管型流通反応器73から排出された反応混合物に、T字管により容器5からのクエンチ液が混合されて、管型流通反応器74に導入される。管型流通反応器74は水冷のための水浴77に収納されている。そして、管型流通反応器74において、反応混合物中の未反応の亜塩素酸ナトリウムと副生した二酸化塩素と、クエンチ液の成分が反応して、これらの亜塩素酸ナトリウム及び二酸化塩素などを分解する。管型流通反応器74から排出された処理液は配管を通して容器4に蓄積される。容器4には窒素ガスなどの不活性ガスが配管6から吹き込まれ、容器4の中のガスが配管7から排出されている。管型流通反応器72、管型流通反応器73、及び管型流通反応器74の管はいずれもコイル状に巻かれている。80は安全弁である。
実施例57〜60の操業条件を次の表9に示す。
このように、亜硫酸ナトリウムのみでは必ずしも十分ではないので、実施例59では、クエンチ液として、亜硫酸ナトリウムを亜塩素酸ナトリウムに対してモル比で0.38と、水酸化ナトリウムを亜塩素酸ナトリウムに対してモル比で0.23含有している混合水溶液を使用した。水浴77は、実施例58と同様に、氷冷(5℃)条件としたが、この処理液からは二酸化塩素ガスは検出されなかった。
また、亜硫酸ナトリウムを亜塩素酸ナトリウムに対してモル比で0.51と、水酸化ナトリウムを亜塩素酸ナトリウムに対してモル比で0.31含有している混合水溶液をクエンチ液として使用し、水浴77は水冷(25℃)条件とした実施例60も、実施例59と同様に処理液から二酸化塩素ガスは検出されなかった。
なお、二酸化塩素ガスは、酸化還元滴定により定量し(検出限界54.6ppm)、亜塩素酸ナトリウムは、亜塩素酸ナトリウムパックテスト(共立理化学研究所、形式WAK−NaClO2)を用いて定量した(検出限界5ppm)。
次に、図7に示す反応装置において、管型流通反応器72のチタン製の管として、直径6mmの管を使用して、次の表10に記載の製造実験を行った。クエンチ液としては、20%亜硫酸ナトリウム水溶液と25%水酸化ナトリウム水溶液の1:1混合物を使用した。
結果を表10に示す。
このことは、本発明の連続製造方法において、工業的規模で大量のケトマロン酸ジエステルを製造することが可能であることを示すものである。
Claims (21)
- (A)マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を混合する工程、
(B)混合された混合物を、流通反応器に供給する工程、並びに、
(C)流通反応器で混合物を反応させる工程、
を含有してなる、対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造する方法。 - 亜塩素酸化合物が、亜塩素酸化合物の水溶液として供給される、請求項1に記載の方法。
- マロン酸ジエステル、又はマロン酸ジエステルとカルボン酸化合物との混合物が、無溶媒で供給される、請求項1又は2に記載の方法。
- 流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
- 流通反応器に、温度を制御するための温度制御部が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
- 流通反応器に設けられた温度制御部が、バスであって、当該バスの温度が80℃以上である、請求項5に記載の方法。
- 前記(A)から(C)の工程に、さらに、
(D)混合物を反応させる工程で得られた反応混合物を、さらに熟成させる工程、
を含有してなる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。 - (D)の熟成させる工程が、1つ又は2つ以上の第二の流通反応器で行われる、請求項7に記載の方法。
- 前記(A)から(C)の工程、又は前記(A)から(D)の工程に、さらに、
(E)クエンチ液を混合して、反応をクエンチする工程、
を含有してなる、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。 - (E)のクエンチする工程が、1つ又は2つ以上の第三の流通反応器で行われ、当該第三の流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、請求項9に記載の方法。
- クエンチ液が、亜硫酸塩及び/又はアルカリ金属水酸化物の水溶液である、請求項9又は10に記載の方法。
- (1)マロン酸ジエステル、カルボン酸化合物、及び亜塩素酸化合物を混合するための混合部、
(2)混合された混合物を、昇温させるための昇温部、並びに、
(3)昇温部で昇温された混合物を反応させるための反応部、
を含有してなる、マロン酸ジエステルを原料化合物として対応するケトマロン酸ジエステル又はその抱水体を連続して製造するための連続製造装置であって、(2)の昇温部及び(3)の反応部が、1つ又は2つ以上の流通反応器であることを特徴とする連続製造装置。 - 流通反応器が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、請求項14に記載の連続製造装置。
- 管型流通反応器の等価直径が、0.5mm〜50mmである、請求項15に記載の連続製造装置。
- 昇温部と反応部が、ひとつの管型流通反応器に内在している、請求項14から16のいずれか1項に記載の連続製造装置。
- 前記(1)から(3)の部分に、さらに、
(4)混合物を反応させる工程で得られた反応混合物を、さらに熟成させるための熟成部、
を含有している、請求項14から17のいずれか1項に記載の連続製造装置。 - 当該熟成部が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、請求項18に記載の連続製造装置。
- 前記(1)から(3)の部分、又は前記(1)から(4)の部分に、さらに、
(5)反応をクエンチするためのクエンチ部、
を含有している、請求項14から19のいずれか1項に記載の連続製造装置。 - 当該クエンチ部が、1つ又は2つ以上の管型流通反応器である、請求項20に記載の連続製造装置。
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