JP2005314373A - 酸化反応方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】反応基質を含む液体と酸素を含む気体との気液共存系において、効率的に酸化反応を行う。
【解決手段】内径の相当直径が10〜2000μmの微小管状反応器に、酸化剤である酸素を含む気体と、反応基質及び均一系触媒を含む液体とを流通させて反応基質を酸化する。微小管型反応器を用いることにより、反応器内部の体積に対する気、液相の表面積の割合が大幅に増加し、気液界面積が増加し、液相への酸素の溶解速度及び酸化反応速度が増加すると共に熱交換効率も向上する。
【選択図】図1
【解決手段】内径の相当直径が10〜2000μmの微小管状反応器に、酸化剤である酸素を含む気体と、反応基質及び均一系触媒を含む液体とを流通させて反応基質を酸化する。微小管型反応器を用いることにより、反応器内部の体積に対する気、液相の表面積の割合が大幅に増加し、気液界面積が増加し、液相への酸素の溶解速度及び酸化反応速度が増加すると共に熱交換効率も向上する。
【選択図】図1
Description
本発明は、微小流路を有する管型反応器を用いて効率的にかつ安全に気液混相流での酸化反応を行わせるための方法に関する。
従来、気体と液体が共存する有機合成反応においては、フラスコや金属容器等の大容量の容器に所定の試料を収容し、気体を流通あるいは閉じこめることにより合成反応が行われていた。また、工業的には、気泡塔や、充填塔などの比較的大きなスケールでの反応が行われてきた。
しかし、このような閉じこめ反応やスケールの大きな反応器を用いる方法により、気体である酸素を酸化剤とする酸化反応を気液共存系で実施しようとすると、気相部分から液相部分への酸素の溶解速度が反応の律速となるために、反応速度が低く、生産性が低いものとなる。また、酸素の溶解速度が十分でないことから、液相の酸素濃度が低下し、触媒の安定性が問題となる場合があった。加えて、反応による生成熱が大きいために、反応温度の制御に困難をきたす場合があった。
これに対して、近年ではマイクロリアクタなどの微小な反応流路を用いた化学合成についての研究が行われてきている。例えば、特表2001−521816号公報には、微小流路中にフッ素を含むガスと反応基質の溶液とを流通させることにより、直接フッ素化を実施する方法が開示されている。このような、微小流路を用いた化学合成反応は、反応を効率的に行えると共に、高い除熱効率が達成できるため、発熱反応を伴う合成反応を安全に行える点や、収率が向上する点、更には取り扱いが容易な点から近年特に注目されている。
特表2001−521816号公報
上記特表2001−521816号公報ではフッ素化反応について記載されているが、酸化反応については全く検討されておらず、気体である酸素を酸化剤として用い、気液共存系における酸化反応を効率的に行うための方法の開発が望まれている。
従って、本発明は、反応基質を含む液体と酸素を含む気体との気液共存系において、効率的に酸化反応を行う方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討した結果、酸化反応速度の向上及び酸化反応の安定化のためには、気液界面積を増加させて酸素の溶解速度を向上させる方法が有効であるが、そのためには微小管型反応器を用いることが好適であること、微小管型反応器を用いることにより、反応器内部の体積に対する気、液相の表面積の割合が大幅に増加し、それに伴い、特に気体流量が液体流量よりも多い範囲では、液体は反応器の内面に接触し、気液界面積を増加させ、酸化反応速度が増加すると共に熱交換効率も向上することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明の酸化反応方法は、反応基質を酸化して該反応基質の酸化物を得る酸化反応方法において、内径の相当直径が10〜2000μmの微小管状反応器に、酸化剤である酸素を含む気体と、反応基質及び均一系触媒を含む液体とを流通させることを特徴とする。
なお、本発明において、微小管状反応器の内径の相当直径とは、反応器を反応流体の進行方向に垂直な断面で切断した場合について、4×S(断面積)/L(周の長さ)で定義される値であり、断面が完全な円であった場合には、その直径が相当直径となる。なお、微小管状反応器の相当直径が部分的に変化する場合、本発明に係る相当直径は、その最大径とする。
本発明において、この微小管型反応器の内径の相当直径は100〜1000μmであることが好ましい。また、微小管状反応器に流通する気体の液体に対する標準状態での体積の比率は1以上であることが好ましい。
この反応基質としては、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上、特にβ−ジカルボニル化合物、とりわけβ−ケトエステル化合物が挙げられ、本発明は、β−ケトエステル化合物等のβ−ジカルボニル化合物を酸化してヒドロキシル化合物を得る酸化反応に有効である。
(上記一般式(I)〜(III)において、Z、Z’はO、S、NR1の何れかであり、Z、Z’は同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
W、X、Yはハロゲン、R2、OR3、NR4R5、SR6の何れかであり、X、Y、Wは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、XとWは互いに結合して4〜10員環を形成していてもよく、その場合間に含まれる炭素数は3〜20であり、その中に不飽和結合やヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、R1〜R6は各々独立に、H、炭素数1〜10の有機基、或いは炭素数4〜10の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
W、X、Yはハロゲン、R2、OR3、NR4R5、SR6の何れかであり、X、Y、Wは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、XとWは互いに結合して4〜10員環を形成していてもよく、その場合間に含まれる炭素数は3〜20であり、その中に不飽和結合やヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、R1〜R6は各々独立に、H、炭素数1〜10の有機基、或いは炭素数4〜10の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
反応に用いる触媒としては、均一系触媒が用いられるが、周期律表1,7,9族及びランタノイドから選ばれる金属の少なくとも1種を含有するものであり、その中でもセリウムを含有するものが好ましい。
本発明においては、微小管状反応器内において、酸化反応後の気液混合流体に不活性ガスを混合することが安全性の面で好ましい。
本発明の酸化反応方法によれば、酸素の溶解速度の向上と熱交換効率の向上で酸化反応速度が向上すると共に酸化反応が安定化し、発熱量の大きい酸化反応や反応条件の精密制御が困難な酸化反応を行う場合であっても、効率的にかつ安全に反応を実施することが可能となる。
以下に本発明の酸化反応方法の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
[微小管状反応器]
本発明で使用する微小管状反応器の内径の相当直径の下限は、通常10μm以上、好ましくは100μm以上、更に好ましくは200μm以上、最も好ましくは400μm以上で、上限は通常2000μm以下、好ましくは1000μm以下、最も好ましくは800μm以下である。微小管状反応器の相当直径が2000μmを超えると微小管状反応器を用いることによる気液界面積の確保、及びそれによる酸化反応速度の向上効果を十分に得ることができず、10μm未満では反応流体の流通抵抗が大きくなりすぎ、処理効率が低下する。
本発明で使用する微小管状反応器の内径の相当直径の下限は、通常10μm以上、好ましくは100μm以上、更に好ましくは200μm以上、最も好ましくは400μm以上で、上限は通常2000μm以下、好ましくは1000μm以下、最も好ましくは800μm以下である。微小管状反応器の相当直径が2000μmを超えると微小管状反応器を用いることによる気液界面積の確保、及びそれによる酸化反応速度の向上効果を十分に得ることができず、10μm未満では反応流体の流通抵抗が大きくなりすぎ、処理効率が低下する。
微小管状反応器の断面(反応器を反応流体の進行方向に垂直な方向に切断したときの断面)の形状は、円状、楕円状、正方形、長方形等、その他多角形状等種々の形状のものが使用できる。この微小管状反応器の断面形状及びその相当直径は微小管状反応器の位置によって異なるものであっても良い。
微小管状反応器の長さは、反応が進行するのに十分に長い時間、反応流体が反応器内に滞留するように決定される。滞留時間を長くとる目的から、反応器の長さが長くなる場合には、装置が大型になるのを避けるために、反応器をコイル状にしても良い。
反応器の材質は、反応によって発生する熱を反応器壁面から高効率に除去する目的から、熱伝導率の高い材質が好ましい。更に、反応器内圧に対する強度を確保する目的から、機械的強度に優れた材質が好ましい。具体的には、金属、ガラス、石英、有機高分子が挙げられる。金属としては、単体でも合金でも構わないが、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、ハステロイが使用でき、中でも、ステンレス鋼管が好適に使用される。また、これら材料よりなる反応器の肉厚は特に限定されない。
[反応基質及び均一系触媒を含む液体]
<反応基質>
本発明で実施される酸化反応としては、特に制限はなく、
ヒドロキシカルボニル基の有機過酸化物への酸化反応
アルコールのアルデヒド及び/又はケトンへの酸化
アルカンのアルケンへの脱水素反応
アルケンのアルデヒド又は/及びケトンへの酸化
アルケンのケタール及び/又はアセタールへの酸化
アルケンのアルキンへの脱水素反応
アルケンの溶媒付加
アルケンのアルケンオキサイドへの酸化反応
アミンの酸化反応によるニトロ基合成反応
アミンの酸化反応によるN−Oラジカル合成反応
炭化水素結合へのヒドロキシル基導入反応
その他の各種の酸素付加反応
等が挙げられる。これらのうち、本発明は特に、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物の酸化反応に有効である。
(上記一般式(I)〜(III)において、Z、Z’はO、S、NR1の何れかであり、Z、Z’は同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。
W、X、Yはハロゲン、R2、OR3、NR4R5、SR6の何れかであり、X、Y、Wは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、XとWは互いに結合して4〜10員環を形成していてもよく、その場合間に含まれる炭素数は3〜20であり、その中に不飽和結合やヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、R1〜R6は各々独立に、H、炭素数1〜10の有機基、或いは炭素数4〜10の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
<反応基質>
本発明で実施される酸化反応としては、特に制限はなく、
ヒドロキシカルボニル基の有機過酸化物への酸化反応
アルコールのアルデヒド及び/又はケトンへの酸化
アルカンのアルケンへの脱水素反応
アルケンのアルデヒド又は/及びケトンへの酸化
アルケンのケタール及び/又はアセタールへの酸化
アルケンのアルキンへの脱水素反応
アルケンの溶媒付加
アルケンのアルケンオキサイドへの酸化反応
アミンの酸化反応によるニトロ基合成反応
アミンの酸化反応によるN−Oラジカル合成反応
炭化水素結合へのヒドロキシル基導入反応
その他の各種の酸素付加反応
等が挙げられる。これらのうち、本発明は特に、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物の酸化反応に有効である。
W、X、Yはハロゲン、R2、OR3、NR4R5、SR6の何れかであり、X、Y、Wは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、XとWは互いに結合して4〜10員環を形成していてもよく、その場合間に含まれる炭素数は3〜20であり、その中に不飽和結合やヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、R1〜R6は各々独立に、H、炭素数1〜10の有機基、或いは炭素数4〜10の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。)
とりわけ、本発明は、上記一般式(I)で表される化合物であって、Z,Z’がOであるβ−ジカルボニル化合物、このβ−ジカルボニル化合物の中でも、YがOR3であるβ−ケトエステル化合物を酸化してヒドロキシル化合物を得る酸化反応に有効である。
このようなβ−ケトエステル化合物としては、X,WがH又はCR7R8R9(なお、R7〜R9は各々独立にR7〜R9に含まれる炭素数の合計が10以下となるような有機基である。)の何れかであるか、互いに結合して4〜10員環を形成し、YのOR3のR3が炭素数1〜10の有機基、或いは炭素数4〜10の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であるものが好ましく、このようなβ−ケトエステル化合物としては、次のようなものが挙げられる。
<均一系触媒>
触媒としては、均一系触媒が用いられるが、周期律表1,7,9族及びランタノイドから選ばれる金属の少なくとも1種を含有するものが好適に用いられ、好ましくはセシウム、セリウム、マンガン、及びコバルトよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むものが好適に用いられ、特に好ましくはセリウムを含むものが好適に用いられる。触媒はまたハロゲン、リン、窒素、酸素、硫黄元素やこれらを含むイオンを含むもの、及び水和水を含むものであっても良い。
触媒としては、均一系触媒が用いられるが、周期律表1,7,9族及びランタノイドから選ばれる金属の少なくとも1種を含有するものが好適に用いられ、好ましくはセシウム、セリウム、マンガン、及びコバルトよりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含むものが好適に用いられ、特に好ましくはセリウムを含むものが好適に用いられる。触媒はまたハロゲン、リン、窒素、酸素、硫黄元素やこれらを含むイオンを含むもの、及び水和水を含むものであっても良い。
触媒成分としてのセリウムとしては、硝酸セリウム、塩化セリウム、又は硝酸第2アンモニウムセリウムやこれらの水和物が好適である。これらの成分は各々1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
触媒の使用量は特に制限はないが、反応基質に対して有効成分量として0.1ppm以上、特に1ppm以上、10,000,000ppm以下、特に1,000,000ppm以下とすることが好ましい。触媒量がこの範囲より少ないと十分な酸化反応速度を得ることができず、多いと製造コストの面で不利である。
<溶媒>
本発明においては、反応基質を反応させる際に、溶媒を使用しても良いし、反応基質自体を溶媒量使用して反応を行っても良い。溶媒を使用する場合には、反応基質を溶解させて反応器に供給してもよいし、反応基質と別々に供給しても良い。
本発明においては、反応基質を反応させる際に、溶媒を使用しても良いし、反応基質自体を溶媒量使用して反応を行っても良い。溶媒を使用する場合には、反応基質を溶解させて反応器に供給してもよいし、反応基質と別々に供給しても良い。
溶媒としては、水、有機溶媒、イオニックリキッド、液体の無機化合物等の1種又は2種以上が使用可能である。有機溶媒としては、ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ブチルアルデヒドなどのアルデヒド類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエ−テル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジ−n−オクチルフタレ−ト等のエステル類、トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジンなどのアミン類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等のジオール類、アセトニトリル等のニトリル類、トリエチルアミン等のアミン類、ピリジン等の複素芳香族化合物、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン溶媒、酢酸、蟻酸等のカルボン酸類、スルホン酸類が挙げられ、これらの2種以上の任意の割合の混合溶媒を用いることもできる。液体の無機化合物としては、硫酸、リン酸、亜リン酸等のリン酸類、硝酸、過酸化水素水が挙げられる。溶媒としては、中でも、水系溶媒と有機溶媒が好ましく、更に好ましくは炭化水素類やアルコール類が好ましく、特にアルコール類が好適である。
溶媒を用いる場合、その使用量には特に制限はなく、用いる反応基質の種類やその他の反応条件等によって適宜決定されるが、反応基質の濃度が溶媒1リットルに対して通常0.01モル以上、好ましくは0.1モル以上、更に好ましくは1モル以上で、20モル以下、好ましくは10モル以下、更に好ましくは6モル以下となるような量の溶媒を用いるのがよい。溶媒の使用量がこの範囲より多いと生産性が低下して不利であり、少ないと触媒或いは反応基質を溶解させる点で不利である。
[酸素を含む気体]
酸化剤として用いる酸素を含む気体は、純酸素や空気を使用しても良く、またこれらの混合ガス、或いは、酸素ガスと他の気体との混合ガス、更には空気と他の気体との混合ガスを使用しても良い。
酸化剤として用いる酸素を含む気体は、純酸素や空気を使用しても良く、またこれらの混合ガス、或いは、酸素ガスと他の気体との混合ガス、更には空気と他の気体との混合ガスを使用しても良い。
気体中の酸素の濃度は特に制限はないが、0.01〜100%の範囲から選ばれ、好ましくは0.1%以上、より好ましくは5%以上で、特に好ましくは10%以上であり、好ましくは99%以下である。酸素の濃度が上記範囲よりも低いと十分な酸化反応効率を得ることができない。
また、反応基質に対する酸化剤である酸素の存在モル比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、最も好ましくは1以上で、好ましくは1000以下、より好ましくは300以下、特に好ましくは100以下、とりわけ好ましくは10以下、最も好ましくは3以下とするのがよい。酸素量が上記範囲より少ないと十分な酸化反応効率を得ることができず、多いと流体の全体積が増加し、反応器内での滞留時間を十分に確保することができない。
[反応条件]
微小管状反応器に供給する酸素を含む気体の体積VGは、反応基質及び均一系触媒を含む液体の総体積VLに対して、標準状態の体積比VG/VL(以下「気液体積比VG/VL」と称す。)で1以上、中でも10以上、特に20以上、とりわけ40以上であることが好ましい。また、この気液体積比VG/VLは10000以下であることが好ましく、特に1000以下あることが好ましい。この気液体積比VG/VLが1未満では、十分な気液の混合効果を得ることができず、10000を超えると反応器内での滞留時間を十分に確保することができない。
微小管状反応器に供給する酸素を含む気体の体積VGは、反応基質及び均一系触媒を含む液体の総体積VLに対して、標準状態の体積比VG/VL(以下「気液体積比VG/VL」と称す。)で1以上、中でも10以上、特に20以上、とりわけ40以上であることが好ましい。また、この気液体積比VG/VLは10000以下であることが好ましく、特に1000以下あることが好ましい。この気液体積比VG/VLが1未満では、十分な気液の混合効果を得ることができず、10000を超えると反応器内での滞留時間を十分に確保することができない。
本発明の酸化反応を行う際の反応条件としては、従来用いられてきた条件が使用でき、反応温度は、通常−80℃以上、好ましくは−40℃以上、更に好ましくは0℃以上、最も好ましくは50℃以上で、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下、最も好ましくは100℃以下の範囲から選ばれる。反応圧力は、通常常圧〜300気圧(30MPa)、好ましくは常圧〜100気圧(10MPa)、特に好ましくは常圧〜30気圧(3MPa)、最も好ましくは常圧〜10気圧(1MPa)の範囲から選ばれる。
[反応方法]
本発明の酸化反応は、気体と液体からなる混相流の酸化反応であり、微小管状反応器内で実施される。代表的には、酸素を含む気体と、反応基質及び均一系触媒を含む液体とを各々導入管より反応器に供給し、合流後、反応器内において反応させる。また、酸素を含む気体と、反応基質を含む液体と、触媒を含む液体とを各々導入管から反応器に供給し、合流後、反応器内において反応させることもでき、この場合の合流の順番は適宜選ばれる。また、気液混相流を導入管より反応器に供給しても良い。反応器に供給する液体及び気体は、それぞれ一回で供給されても良いし、複数回供給されても良い。
本発明の酸化反応は、気体と液体からなる混相流の酸化反応であり、微小管状反応器内で実施される。代表的には、酸素を含む気体と、反応基質及び均一系触媒を含む液体とを各々導入管より反応器に供給し、合流後、反応器内において反応させる。また、酸素を含む気体と、反応基質を含む液体と、触媒を含む液体とを各々導入管から反応器に供給し、合流後、反応器内において反応させることもでき、この場合の合流の順番は適宜選ばれる。また、気液混相流を導入管より反応器に供給しても良い。反応器に供給する液体及び気体は、それぞれ一回で供給されても良いし、複数回供給されても良い。
なお、微小管状反応器内での反応基質と酸素との反応時に、必要に応じて第3成分を存在させても良く、このような第3成分としては、有機塩基、有機酸、及び無機物等が挙げられ、有機塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、ピペリジンなどの含窒素化合物が挙げられ、有機酸としては、安息香酸、トルエンスルホン酸等が挙げられ、無機物としては、モレキュラーシーブ、水酸化ナトリウム、及び塩化水素等が挙げられる。これらは、溶解するものは予め溶解して供給され、溶解しないものは、スラリーとして、或いは、微小管状反応器の壁面に固定化する形で存在させることができる。また、反応器に導入される気体は、溶媒や反応基質、生成物等の他の成分の蒸気を含んでいても良い。
本発明の酸化反応方法は、特に、後述するように、微小管型反応器と、その供給部の上流側の液体供給装置及び気体供給装置とを有する合成反応装置を用いて、酸化剤である酸素を含む気体と、反応基質と均一系触媒を含む液体を微小管状反応器に流通させて実施することが好ましい。これにより、酸化反応の反応速度の増加と、触媒の安定化、反応温度の精緻な制御が図れる。
反応器に加熱及び/又は冷却装置を設けて反応温度を制御する場合、特に反応が高温もしくは低温で行われる場合には、熱交換器を用いて熱回収を図ることが、経済的に有利である。また、反応器の部分によって温度、濃度、圧力等の反応条件を変えてもよく、反応に応じて最適な形式が選択されることが好ましい。
酸化反応により得られた気液混相流は、微小反応器内の下流側で酸素含有量の低い不活性ガスと混合することも可能である。このようにして、気液混相流もしくはオフガスを反応器から取り出す前に不活性ガスで希釈し、気相の雰囲気を爆発範囲外とすることで安全性を高めることができる。この場合、希釈用の不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴンもしくは二酸化炭素等、或いはこれらの混合ガスが使用できるが、窒素の使用が経済的に最も好ましい。また、本目的のためには酸素濃度が低い方が有利であり、反応器から排出されるガスの酸素濃度が好ましくは10%、更に好ましくは2%、最も好ましくは1%以下となるように不活性ガスで希釈することが好ましい。
[反応装置]
図1に本発明の酸化反応方法に好適な合成反応装置の一例を示す。
この合成反応装置は、酸素ガス流通用気体送給装置1、原料(反応基質)溶液流通用送液装置2及び触媒液流通用送液装置3から、それぞれ酸素ガス、原料溶液、触媒液が微小管状反応器であるマイクロリアクター4に送給されるように構成されている。
図1に本発明の酸化反応方法に好適な合成反応装置の一例を示す。
この合成反応装置は、酸素ガス流通用気体送給装置1、原料(反応基質)溶液流通用送液装置2及び触媒液流通用送液装置3から、それぞれ酸素ガス、原料溶液、触媒液が微小管状反応器であるマイクロリアクター4に送給されるように構成されている。
原料(反応基質)溶液流通用送液装置2からの原料溶液と触媒液流通用送液装置3からの触媒液は合流点11で合流し、これらの液流は更に酸素ガス流通用気体送給装置1からの酸素ガスと合流点12で合流し、酸素ガス、原料及び触媒を含む気液混相流は、マイクロリアクター4に送給される。このマイクロリアクター4は恒温槽5内に配置され、温度が一定に保持されている。マイクロリアクター4内で酸化反応した後の気液混相流は、マイクロリアクター4から流出し、冷却塔6を流通して冷却された後背圧弁を備える気液分離装置7で気液分離され、液体の酸化反応生成物が貯留槽8に貯留される。9は窒素流通用気体供給装置である。
マイクロリアクター4からの排出側配管は、マイクロリアクター4への気液混相流の導入側配管と熱交換されるように設けられていても良い。また、マイクロリアクター4からの排出側配管には、希釈用の不活性ガスの導入配管が接続されていても良い。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。なお、以下において圧力は絶対圧力を示す。
実施例1
硝酸セリウム6水和物(7.3802g)を142.0mLのイソプロピルアルコールに加え、触媒液を調製した。別に、反応基質であるエチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレート(26.3070g)と、内部標準としてのジブチルエーテル(1.3749g)を混合して、これを反応基質溶液とした。
硝酸セリウム6水和物(7.3802g)を142.0mLのイソプロピルアルコールに加え、触媒液を調製した。別に、反応基質であるエチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレート(26.3070g)と、内部標準としてのジブチルエーテル(1.3749g)を混合して、これを反応基質溶液とした。
以下のようにして、図1に示す構成の合成反応装置を組み立てた。内径(相当直径)0.5mm(500μm)、長さ1mのガラス製チューブ(微小管状反応器)の一方の端に、PEEK製のT字型ユニオンを取り付けた。そのT字型ユニオンの一つの端を、酸素ガスを導入するためにマスフローコントローラーと繋いだ。もう一つの端は、別のT字型ユニオンとチューブで繋いだ。新たに繋いだT字型ユニオンの一つの端は、反応基質溶液を導入するため、プランジャーポンプとチューブで繋ぎ、もう一つの端は、触媒液を導入するため、プランジャーポンプとチューブで繋いだ。ガラス製のチューブはホルダーごと25℃に保たれた恒温槽内に設置した。チューブの他端にはインライン背圧弁を取り付け、内部圧力を一定に保った。
マスフローコントローラーからは7.00SCCMの酸素ガスを流通させ、プランジャーポンプからは、反応基質溶液と触媒液を、それぞれ0.100ml/min、0.200ml/minの量で流通させた。反応中の液相のセリウム濃度は11180ppmであった(標準状態の気液体積比VG/VL=23.3)。
背圧弁を通った混相流は、チューブで、外部より0℃に冷却された容器に導き、気液分離後にガスクロマトグラフィーで分析した。分析結果から以下のようにして反応結果の評価を行い、結果を表1に示した。
ジブチルエーテルとの比率から、原料であるエチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレートの残存量と転化率を求めた。同じくジブチルエーテルとの比率から、目的の生成物である、エチル−1−ヒドロキシ−2−オキソシクロペンタカルボキシレートの生成量と収率を求めた。
反応後の液は、均一であり、沈殿等は観察されなかった。
反応後の液は、均一であり、沈殿等は観察されなかった。
転化率は、
転化率=(1−残存する原料モル/反応開始時の原料モル)
の式により求めた。
転化率=(1−残存する原料モル/反応開始時の原料モル)
の式により求めた。
生成物の収率は、
収率=反応液中に含まれる生成物のモル/反応開始時の原料モル
の式により求めた。
収率=反応液中に含まれる生成物のモル/反応開始時の原料モル
の式により求めた。
選択率は、
選択率=収率/転化率
の式により求めた。
選択率=収率/転化率
の式により求めた。
滞留時間は、反応器入口と、出口の滞留時間を求め、その平均値を使用した。滞留時間は、
滞留時間(分)=反応器体積(ml)/流通速度(ml/分)
の式により求め、それぞれ、
流通速度=液体流通速度+酸素ガス流通速度
液体流通速度=供給液流通速度
入口酸素ガス流通速度=標準状態での供給酸素ガス流通速度×{1+(反応温度−
20)/273}×(全圧−その温度での溶液の蒸気圧)/
0.1013
出口酸素ガス流通速度=標準状態での供給酸素ガス流通速度×{1+(反応温度−
20)/273}×(出口全圧−溶液の蒸気圧)/
0.1013×(供給酸素モル/供給基質モル−転化率)
で定義される。
滞留時間(分)=反応器体積(ml)/流通速度(ml/分)
の式により求め、それぞれ、
流通速度=液体流通速度+酸素ガス流通速度
液体流通速度=供給液流通速度
入口酸素ガス流通速度=標準状態での供給酸素ガス流通速度×{1+(反応温度−
20)/273}×(全圧−その温度での溶液の蒸気圧)/
0.1013
出口酸素ガス流通速度=標準状態での供給酸素ガス流通速度×{1+(反応温度−
20)/273}×(出口全圧−溶液の蒸気圧)/
0.1013×(供給酸素モル/供給基質モル−転化率)
で定義される。
反応速度定数は、
反応速度定数=ln(1−転化率)/滞留時間
の式により求めた。
反応速度定数=ln(1−転化率)/滞留時間
の式により求めた。
また、生成速度定数は反応速度定数に目的生成物の選択率を乗じたものである。
実施例2
硝酸セリウム6水和物(4.9433g)を95.0mLのイソプロピルアルコールに加えたものを触媒液とし、エチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレート(33.4267g)とジブチルエーテル(1.4975g)を混合したものを反応基質溶液とし、ガラス製チューブ(微小管状反応器)の長さを1.9mに変更した以外は実施例1と同様に実験を行い、同様に反応を評価して結果を表2に示した。
硝酸セリウム6水和物(4.9433g)を95.0mLのイソプロピルアルコールに加えたものを触媒液とし、エチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレート(33.4267g)とジブチルエーテル(1.4975g)を混合したものを反応基質溶液とし、ガラス製チューブ(微小管状反応器)の長さを1.9mに変更した以外は実施例1と同様に実験を行い、同様に反応を評価して結果を表2に示した。
なお、マスフローコントローラーからは11.54SCCMの酸素ガスを流通させ、プランジャーポンプからは、反応基質溶液と触媒液を、それぞれ0.080ml/min、0.160ml/minの量で流通させた。反応中の液相のセリウム濃度は11940ppmであった(標準状態での気液体積比VG/VL=48.1)。
反応後の液は、均一であり、沈殿等は観察されなかった。
反応後の液は、均一であり、沈殿等は観察されなかった。
比較例1
硝酸セリウム6水和物(0.3647g)を7.0mLのイソプロピルアルコールに加え、触媒液を調製した。別に、エチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレート(3.5482g)とジブチルエーテル(0.1732g)を耐圧容器に入れ、酸素置換後密閉した。これを25℃の恒温槽につけて温度を一定にした後、開放して素早く触媒液を加えた後直ちにインライン排圧弁を繋いで耐圧容器の底から150SCCMの酸素を流通させ、内圧0.7MPaで反応させた。反応中の液層のセリウム濃度は11110ppmであった。以降、マスフローコントローラーにより継続的に150SCCMの酸素を流通させ、耐圧容器内を一定圧に保った。一定時間毎に液を少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析して添加率と選択性を調べ、その変化を表3に示した。
なお、反応後の液は、均一であり、沈殿等は観察されなかった。
硝酸セリウム6水和物(0.3647g)を7.0mLのイソプロピルアルコールに加え、触媒液を調製した。別に、エチル−2−オキソシクロペンタカルボキシレート(3.5482g)とジブチルエーテル(0.1732g)を耐圧容器に入れ、酸素置換後密閉した。これを25℃の恒温槽につけて温度を一定にした後、開放して素早く触媒液を加えた後直ちにインライン排圧弁を繋いで耐圧容器の底から150SCCMの酸素を流通させ、内圧0.7MPaで反応させた。反応中の液層のセリウム濃度は11110ppmであった。以降、マスフローコントローラーにより継続的に150SCCMの酸素を流通させ、耐圧容器内を一定圧に保った。一定時間毎に液を少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィーで分析して添加率と選択性を調べ、その変化を表3に示した。
なお、反応後の液は、均一であり、沈殿等は観察されなかった。
比較例1において、反応速度定数を滞留時間とln(1−転化率)のグラフの傾きから求めたところ、0.330(/分)であった。また、この値に選択性の平均値を乗じて、生成速度定数を求めたところ0.317(/分)であった。
上記比較例1と実施例1〜2との対比から、本発明によれば、格段に高い酸化反応効率が達成されることが分かる。
1 酸素ガス流通用気体送給装置
2 原料(反応基質)溶液流通用送液装置
3 触媒液流通用送液装置
4 マイクロリアクター
5 恒温槽
6 冷却塔
7 気液分離装置
8 貯留槽
9 窒素流通用気体供給装置
2 原料(反応基質)溶液流通用送液装置
3 触媒液流通用送液装置
4 マイクロリアクター
5 恒温槽
6 冷却塔
7 気液分離装置
8 貯留槽
9 窒素流通用気体供給装置
Claims (10)
- 反応基質を酸化して該反応基質の酸化物を得る酸化反応方法において、内径の相当直径が10〜2000μmの微小管状反応器に、酸化剤である酸素を含む気体と、反応基質及び均一系触媒を含む液体とを流通させることを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項1において、該微小管型反応器の内径の相当直径が100〜1000μmであることを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項1又は2において、該微小管状反応器に流通する気体の液体に対する標準状態での体積の比率が1以上であることを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該反応基質が、下記一般式(I)〜(III)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする酸化反応方法。
W、X、Yはハロゲン、R2、OR3、NR4R5、SR6の何れかであり、X、Y、Wは同一のものであってもよく、異なるものであってもよい。また、XとWは互いに結合して4〜10員環を形成していてもよく、その場合間に含まれる炭素数は3〜20であり、その中に不飽和結合やヘテロ原子を含んでいてもよい。
なお、R1〜R6は各々独立に、H、炭素数1〜10の有機基、或いは炭素数4〜10の芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表す。) - 請求項4において、該反応基質が、一般式(I)で表され、Z,Z’は酸素であるβ−ジカルボニル化合物であることを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項5において、該反応基質がβ−ケトエステル化合物であることを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項5又は6において、該反応基質のβ−ジカルボニル化合物を酸化してヒドロキシル化合物を得ることを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項1ないし7のいずれか1項において、該触媒が周期律表1,7,9族及びランタノイドの元素から選ばれる少なくとも1種の金属を含有することを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項8において、該触媒がセリウムを含有することを特徴とする酸化反応方法。
- 請求項1ないし9のいずれか1項において、該微小管状反応器内において、酸化反応後の気液混合流体に不活性ガスを混合することを特徴とする酸化反応方法。
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-
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- 2005-03-16 JP JP2005075363A patent/JP2005314373A/ja active Pending
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