JPWO2015033920A1 - 造粒体、その製造方法およびガラス物品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、ディスプレイ用ガラス基板には、ガラス基板の内部および表面にディスプレイ表示に影響を及ぼす欠点である泡、脈理、未溶解物、ピット、キズ等が無いこと等の高い品質が求められる。しかし、ディスプレイ基板に用いられる無アルカリガラスは、一般的なソーダライムガラスと比較してガラス組成の均一性が低下しやすい。ガラス組成の均一性が高いガラスを得るためには、ガラス原料を微粒化して未溶融原料を残さないようにすることが有効である。しかし、微粒化したガラス原料を使用する場合は、原料をガラス溶融炉に投入するときに原料が飛散しやすいので、ガラス組成が不安定になることや、ガラス原料の一部が無駄になること等の問題が生じる。
特許文献3には、ガラス原料としてアルミナセメントが用いられること、および、該アルミナセメントの組成として、SiO2が3〜6質量%、Al2O3が49〜57質量%、Fe2O3が0.3〜3質量%、CaOが35〜40質量%、MgOが0〜1質量%が記載されている。この組成を有するアルミナセメントは、主成分としてCaO・Al2O3を含有し、CaO・2Al2O3は含有しない。
最近では各種ディスプレイ用ガラス基板に求められる特性が多様化し、酸化ホウ素(B2O3)をほとんど含有しない無アルカリガラスが求められるようになっている。しかし、酸化ホウ素の含有量が少ないガラスや、酸化ホウ素を含有しないガラスの原料を造粒する場合には、ホウ酸をバインダとして利用できないため、壊れにくい強固な造粒体を得ることが難しい。
また、本発明者らは、アルミナセメントを含むガラス原料を造粒することを試みたが、壊れにくい強固な造粒体を形成することが困難であった。
[1] ガラス原料組成物と水を混合することによる造粒体の製造方法であって、ガラス原料組成物は、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、CaO・2Al2O3、およびケイ素源を必須として含むことを特徴とする無アルカリガラスの製造に用いられる造粒体の製造方法。
[3] ガラス原料組成物は、清澄剤または色調調整剤として、硫酸塩成分および硝酸塩成分の一方または両方を含む[1]または[2]の造粒体の製造方法。
[4] ガラス原料組成物は、CaO・2Al2O3を含有するアルミナセメントを含み、アルミナセメントは、アルミニウム源をアルミナセメント100質量%に対して、Al2O3換算で65質量%以上含む[1]〜[3]の造粒体の製造方法。
[5] 前記アルミナセメントは、当該アルミナセメント中に含まれるカルシウムアルミネート100質量%に対するCaO・2Al2O3とCaO・Al2O3との総量が、80〜100質量%であり、かつ当該アルミナセメント中のCaO・2Al2O3とCaO・Al2O3との量比は、CaO・2Al2O3とCaO・Al2O3の総量100質量%に対してCaO・2Al2O3が、2質量%以上、100質量%以下である[4]の造粒体の製造方法。
[6] ガラス原料組成物は、アルミナセメントの水和物に、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、およびケイ素源を加えて混合することにより造粒される[4]の造粒体の製造方法。
[7] ガラス原料組成物と水を混合する工程において、ガラス原料組成物と水を混合しながら固めた後、800℃以下で造粒体を得る[1]〜[6]の造粒体の製造方法。
[8] ガラス原料組成物は、前記酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの総量がガラス原料組成物100質量%に対して0.1〜10質量%である[1]〜[7]の造粒体の製造方法。
[9] ガラス原料組成物は、酸化ホウ素およびホウ酸を実質的に含まない、または、酸化ホウ素およびホウ酸の一方または両方を含み、かつ酸化ホウ素およびホウ酸の総量が、ガラス原料組成物100質量%に対して0質量%超、3質量%以下である[1]〜[8]の造粒体の製造方法。
[11] [1]〜[10]の方法により造粒体を得て、その造粒体を加熱してガラス溶融物を得て、そのガラス溶融物を成形し徐冷してガラス物品を得るガラス物品の製造方法。
[12] 無アルカリガラスからなるガラス物品の製造に用いる造粒体であって、ケイ素源および3CaO・Al2O3・6H2Oを必須とする造粒体。
[13] 造粒体が、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を40〜85質量%、Al2O3を5〜30質量%、MgOを0〜18質量%。およびCaOを2〜40質量%含む造粒体である[12]の造粒体。
[14] [12]または[13]の造粒体を加熱してガラス溶融物を得て、該ガラス溶融物を成形し徐冷してガラス物品を得るガラス物品の製造方法。
[15] ガラス物品が、ガラス物品100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を40〜85質量%、Al2O3を5〜30質量%、MgOを0〜18質量%、およびCaOを2〜40質量%含むガラス物品である[11]または[14]のガラス物品の製造方法。
本発明の造粒体は、無アルカリガラスの製造に用いることができる。
本発明のガラス物品の製造方法によれば、本発明の造粒体を用いることにより、ガラス組成の均一性が良好な無アルカリガラスのガラス物品が得られる。
本明細書において「ガラス原料」は、ガラスの原料となる成分であり、「ガラス原料組成物」は、ガラス原料となる成分を複数含む組成物である。ガラス原料としては、酸化物や複合酸化物、熱分解により酸化物となりうる化合物が挙げられる。熱分解により酸化物となりうる化合物としては、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物などが挙げられる。
本明細書において「造粒体」は、ガラス原料組成物を造粒したものであって、基本的に1個の造粒体中に、ガラスの製造に必要な全ての成分を含む。造粒体は、例えば1個の造粒体を加熱溶融してガラス化させると、得ようとするガラス組成を有するガラスが得られるものである。
本明細書において、組成量の全体量に用いる「造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%」とは、ガラスの原料となりうる成分として本発明の造粒体以外の成分を用いない場合に、該造粒体を溶融して得られるガラス溶融物が固化したもの(無アルカリガラス)の全質量を意味する。なお、造粒体を溶融、成形、徐冷(固化)、後加工してガラス物品を製造する一連の工程において、ガラスの原料となりうる成分として本発明の造粒体以外の成分を用いない場合には、各工程の製造物におけるガラス組成(ガラスの原料となりうる成分の組成)は、互いに等しい。ただし、後加工工程での表面処理等によってガラス物品の表面に加工される成分は、ガラス物品の組成(ガラス組成)には含まれないものとする。
本明細書において「平均粒子径」は、特に断りのない限り、積算分率における50%径(D50)である。D50が1mm以下の場合には、レーザー回折法を用いて測定された体積基準の積算分率における50%径をD50とする。D50が1mm超の場合には、篩で分級して平均粒子径を求める方法(篩分け法)で測定された重量累計の50%径をD50とする。レーザー回折法による粒子径測定方法としては、JIS Z8825−1(2001)に記載の方法を用いる。
本明細書において数値範囲を示す「〜」は、特段の定めがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
≪造粒体の製造方法≫
本発明の造粒体の製造方法は、ガラス原料組成物と水を混合することによる造粒体の製造方法である。
混合する水の量は、ガラス原料組成物100質量%に対して、外割で5〜30質量%が好ましく、10〜26質量%がより好ましく、15〜25質量%がさらに好ましい。ガラス原料組成物に対する水の量は、不足すると強固な造粒体が得られ難い。ガラス原料組成物に対する水の量は、過剰であると造粒体が造粒時に例えばミキサーなどの装置の表面に付着しやすくなる。
本発明において、ガラス原料組成物は、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、アルミニウム源、およびケイ素源を必須とし、アルミニウム源は少なくともCaO・2Al2O3を含む。
[酸化カルシウムおよび水酸化カルシウム]
本発明のガラス原料組成物は、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方を含むことを必須とする。
ガラス原料組成物が酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを含有すると、ガラス原料組成物に水を加えたときにゲル状のカルシウム水和物が生じうる。ゲル状のカルシウム水和物は、造粒体のバインダとして作用する。
酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの量は、少なすぎると強固な造粒体が得られ難い。また、所望のガラス組成が得られる範囲を超えて含有させることはできない。よって、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの総量は、ガラス原料組成物100質量%に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜6質量%がより好ましい。
(CaO・2Al2O3)
本発明のガラス原料組成物は、CaO・2Al2O3(以下ではCA2と記載することがある。)を必須成分として含む。CA2は、粉末であることが好ましい。
本発明においては、ガラス原料組成物がCA2を含有することにより、強固な造粒体が得られる。これはCA2が水と接触して硬化する際の硬化速度が、ガラス原料組成物と水を混合して造粒する速度に対して、速すぎず、また遅すぎないためと考えられる。
CA2は、水を加えるとゲル状の水和物を生成しうる。そのゲル状の水和物は、造粒体のバインダとして作用する。本発明においては、ガラス原料組成物がCA2を含有し、かつ酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの少なくとも一方を含有することによって、壊れにくい強固な造粒体が形成される。ガラス原料組成物は、CA2を含有したとしても、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方を含有しない場合は、強固な造粒体が得ることが難しい。また、ガラス原料組成物が酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムを含有しても、CA2を含有しない場合は、強固な造粒体を得ることが難しい。
その理由の一つは、CA2を含むガラス原料組成物中に、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムが存在すると、ガラス原料組成物を水と混合したときにCA2の硬化が予想以上に促進されるためと考えられる。
CaO・Al2O3 …(CA)
12CaO・7Al2O3 …(C12A7)
3CaO・Al2O3 …(C3A)
ガラス原料組成物は、CA2以外のカルシウムアルミネートを含有してもよい。さらにガラス原料組成物は、造粒工程において適度な硬化速度が得られやすい点で、CA2のほかにCAを含んでいることが好ましい。一方、ガラス原料組成物は、C3AおよびC12A7は、含まないか、含んでいても少量であることが好ましい。C3AおよびC12A7は、造粒体が形成される速度に対して硬化速度が速すぎるためである。
また、Al2O3含有量が65質量%以上のアルミナセメントは、通常CAおよびCA2を含み、C3AまたはC12A7は、ほとんど含まない。Al2O3含有量が90質量%超のアルミナセメントは、通常CAを含まず、CaO・6Al2O3(CA6と称することがある)を含む。
アルミナセメント中に含まれるカルシウムアルミネート100質量%に対するCAとCA2の総量は、造粒体を形成するのに適度な硬化速度が得られやすい点で、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましく、100質量%(すなわち、アルミナセメントとしてはCAとCA2からなるアルミナセメントを用いることを意味する。)が最も好ましい。
また、アルミナセメント中のCA2およびCAの量比は、CA2とCAの総量100質量%に対してCA2が、2質量%以上100質量%以下であることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。CA2とCAの量比が前記の範囲であると造粒工程において充分な結着力が得られやすい。
アルミナセメントは、カルシウムアルミネート以外の他の成分として、例えばSiO2、Fe2O3、TiO2、MgO、等の酸化物を含みうる。アルミナセメント100質量%に対する、かかる他の成分の含有量は通常、10質量%以下であり、5質量%以下が好ましい。
後述の予備的な水和工程を行わない場合は、特に、該アルミナセメントの含有量は、ガラス原料組成物100質量%に対して、5〜15質量%が好ましく、7〜14質量%がより好ましい。
後述の予備的な水和工程を行う場合は、特に、CA2を含むアルミナセメントの含有量は、ガラス原料組成物100質量%に対して、1〜12質量%の範囲内であることが好ましい。
ガラス原料組成物は、カルシウムアルミネートの他に酸化アルミニウム等のアルミニウム源を含有してもよい。
ガラス原料組成物が酸化アルミニウムを含有する場合、ガラス原料組成物中の酸化アルミニウムの含有量は、カルシウムアルミネートやアルミナセメントの組成および配合量を考慮して所望のガラス組成が得られるように調整するのが好ましい。
ケイ素源は、取り扱いやすさの点で粉末状であることが好ましく、シリカであることがより好ましい。シリカ以外のケイ素源としては、灰長石(アノーサイト)等を用いてもよい。シリカは、入手しやすさの点でケイ砂であることが好ましい。ケイ砂以外のシリカとしては、石英、クリストバライト、非晶質シリカ等を用いてもよく、これらの2種以上を適宜混合して用いてもよい。
ガラス原料組成物中のケイ素源の含有量は、ガラス原料組成物100質量%に対してSiO2換算で、40〜85質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。ケイ素源の含有量が前記範囲内であれば、造粒体の形状を保ちやすい。
ガラス原料組成物は、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、マグネシウム源、清澄剤、色調調整剤等が挙げられる。その他の成分は、粉末状であることが好ましい。ガラス原料組成物は、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸およびアンモニア等を含有してもよい。
ガラス原料組成物中のマグネシウム源の量は、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対してMgO換算で0〜18質量%であることが好ましい。
マグネシウム源としては、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムから選択される1種以上を必須とすることがより好ましく、さらに塩化マグネシウムおよび硫酸マグネシウムから選択される1種以上を含有することがさらに好ましい。ガラス原料組成物がこれらのマグネシウム源を含有すると、強固な造粒体が得られやすい。ガラス原料組成物中のマグネシウム源の総量は、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対してMgO換算で、0.1〜18%が好ましく、2〜18%がより好ましい。
ストロンチウム源は、ガラスの製造工程中でSrOとなり得る化合物であり、具体例としては、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
バリウム源は、ガラス製造工程中でBaOとなり得る化合物である。具体例としては、炭酸バリウム、塩化バリウム等が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
清澄剤または色調調整剤となる成分としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム等の塩化物、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム等の硝酸塩、蛍石(CaF2)、弁柄(Fe2O3)等の成分が挙げられる。これらは1種でもよく2種以上を併用してもよい。
清澄剤または色調調整剤となる成分として、硫酸塩成分および硝酸塩成分の一方また両方を用いると、カルシウムアルミネートの硬化が促進される点で好ましい。硫酸塩成分および硝酸塩成分の量は、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して、0.1〜2.0質量%が好ましく、0.5〜1.0質量%がより好ましい。
前記塩化物成分および硫酸塩成分は、粉末であることが好ましい。硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム等の粉末は、水に対する溶解度が大きいため、水と混合することによって溶解または微小化することから、これらの粉末のD50は特に限定されない。
ガラス原料組成物の組成は、ガラス溶融工程で揮散しやすい成分を除き、酸化物換算でほぼ目的とするガラス物品の組成と同じになるように調整される。
本発明の一態様における造粒体から製造されるガラスは、Na2O、Li2O、K2O等のアルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリガラスであることが好ましい。アルカリ金属酸化物を実質的に含有しないとは、アルカリ金属酸化物の総量が、無アルカリガラス100質量%に対して0.1質量%以下であることをいい、0.02質量%以下であることが特に好ましい。
目的とするガラスに酸化ホウ素(B2O3)が含まれる場合には、溶融工程での揮発を考慮して多めにホウ酸等を加えることが好ましい。目的とするガラスにB2O3が含まれない場合でも、ガラス原料にホウ酸が含まれてもよい。
ガラス原料組成物の組成は、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で、CaOを2〜18質量%含み、かつSrOおよびBaOの少なくとも1種を含み、CaOとSrOとBaOの総量が2〜40質量%となるように調製することが好ましい。
ガラス原料組成物の組成は、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を45〜65質量%、Al2O3を10〜25質量%、MgOを2〜18質量%、CaOを2〜18質量%含み、SrOとBaOの総量が2〜15質量%、かつCaOとSrOとBaOの総量が4〜35質量%となるように調製することがより好ましい。
シリカ:40〜60質量%、CA2を含むアルミナセメント:5〜45質量%、酸化アルミニウム:0〜25質量%、酸化カルシウム0.1〜5質量%、水酸化マグネシウム:0〜15質量%、炭酸カルシウム:0〜15質量%、炭酸ストロンチウム:0〜15質量%、炭酸バリウム:0〜15質量%、ドロマイト:0〜15質量%、塩化マグネシウム:0〜5質量%、硫酸マグネシウム:0〜5質量%、その他の原料:0〜5質量%。
ガラス原料組成物は、アルカリ金属源を含有しない、または含有したとしても少量であることが好ましい。アルカリ金属源を含有しないとは、アルカリ金属源の量が検出限界以下であることをいう。アルカリ金属源を含有したとしても少量であるとは、ガラス原料組成物中のアルカリ金属源の総量が、造粒体をから得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で0.1質量%以下であることをいい、0.02質量%以下が好ましい。
ガラス原料組成物がアルカリ金属源を前記の量を超えて含有する場合、ガラス原料組成物と水を混合するときにガラス原料組成物からアルカリ金属イオンが溶出してアルカリ溶液を生じるおそれがある。アルカリ溶液が含まれると、造粒体製造時にCA2の硬化速度が速くなりすぎるおそれがある。また、ガラス原料組成物がアルカリ金属源を前記の量を超えて含有する場合には、造粒体を無アルカリガラスの製造に用いることが困難になる。
ガラス原料組成物に含まれるガラス原料は、後の工程において取り扱いがしやすい点で粉末状が好ましい。粉末状のガラス原料は、適切な粒子径を有することが好ましい。
ガラス原料組成物が粉末状のシリカを含有する場合、シリカのD50は、2〜150μmが好ましい。シリカのD50の上限値は、100μmがより好ましく、50μmがさらに好ましく、30μmが特に好ましい。シリカのD50の下限値は、5μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。
シリカのD50が前記上限値以下であると造粒体の強度が高くなりやすい。また造粒体を加熱して溶融する際に溶け残りが生じ難く、均質なガラス溶融物が得られやすい。また、D50が前記下限値以上であると、造粒体を製造するときにガラス原料の凝集や飛散が生じにくい。
ガラス原料組成物が粉末状の酸化カルシウムを含有する場合、酸化カルシウムのD50は、1〜100μmが好ましく、2〜20μmがより好ましい。酸化カルシウムのD50が前記範囲であると、造粒体を製造する際に飛散や凝集が生じ難く、かつ、比較的短時間で造粒体が得られやすい。
ガラス原料組成物が粉末状の水酸化カルシウムを含有する場合、水酸化カルシウムのD50は、1〜100μmが好ましく、2〜20μmがより好ましい。水酸化カルシウムのD50が前記範囲であると造粒体を製造する際に飛散や凝集が生じ難く、かつ、比較的短時間で造粒体が得られやすい。
難水溶性原料のD50が、前記範囲であると均質なガラス溶融物が得られやすく、かつ、造粒体を製造するときにガラス原料の凝集や飛散が生じにくい。
難水溶性原料は、必要に応じて予め微粒子化することが好ましい。または、これらを含むガラス原料組成物と水を混合するときには、ボールミル等を用いてガラス原料を微粒子化することが好ましい。
塩化マグネシウム、塩化カルシウム等は、水に対する溶解度が大きいので、混合前のD50が大きくても水と混合したときに容易に溶解または微粒子化する。したがって、これらのD50は特に限定されない。
例えば、造粒体のD50が3mm以下の場合には、粉末状のガラス原料のD50は、50μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下が特に好ましい。
また粉末状のガラス原料のD50は、造粒体のD50の1/200〜1/10が好ましく、1/100〜1/20がより好ましい。
粉末状のガラス原料のD50と造粒体のD50の比率が前記範囲であっても、ガラス原料組成物を造粒する前に、ガラス原料を微粒子化する工程を行うことが、製造されるガラスの均質性向上の点で好ましい。
ガラス原料組成物を造粒する工程において、ガラス原料組成物と水を混合すると、ガラス原料の表面が水に接する。ガラス原料組成物には、CA2と、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方が含まれており、これらが水と接触することによって、ゲル状の水和物が形成しうる。そのゲル状の水和物は、他のガラス原料を結合するバインダとなる。したがって、ガラス原料組成物と水を混合することで造粒体が得られる。
ガラス原料組成物と水を混合する方法としては、ガラス原料組成物を混合した後に水を加えてさらに混合する方法、およびガラス原料組成物と水の全部を一度に混合せず、分割して混合を繰り返す方法がある。後者の方法において、水溶性のガラス原料は水に溶かした後で、水に不溶性または難溶性のガラス原料と混合することが好ましい。
また、CA2を含むガラス原料は、水との混合の際の初期の段階で水と混合することが好ましい。その理由は、CA2の水和物に酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、およびケイ素源を加えて混合することにより、短時間で均一な造粒体が得られやすいためである。例えば、ガラス原料組成物がCA2を含むアルミナセメントを含有する場合には、アルミナセメントと水を混合して水和物を得(以下、この工程を予備的な水和工程という。)、得られたアルミナセメントの水和物に酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、およびケイ素源を加えて混合する工程を経て造粒体を製造することが好ましい。予備的な水和工程で用いる水の量は、造粒体を製造するために用いる水の一部でもよく、または全部であってよい。
さらに、ガラス原料組成物は、予め撹拌混合して用いると、個々の造粒体における組成のばらつきが小さくなりやすい。
造粒体のD50を15mm超にしたい場合は、ガラス原料組成物を造粒する工程において、ガラス原料組成物と水とを混合した後に圧縮成形し、造粒体とすることが好ましい。以下では、この方法で得られる造粒体をブリケットという。
ガラス原料組成物の混合は、ガラス原料組成物が十分均質になる程度に行うことが好ましい。混合後のガラス原料組成物と水を圧縮成形する方法は、公知の方法を適宜用いることができる。ガラス原料組成物と水を混合した後、圧縮成形するための装置としては、例えば打錠機、押出成形機、ブリケットマシン等を適宜用いることができる。
造粒体のD50を15mm以下にしたい場合は、ガラス原料組成物と水を混合しながら固めて造粒体を得ることが好ましい。ガラス原料組成物と水を混合するための装置としては、ボールミル、ヘンシェルミキサー、押し出し造粒機、撹拌造粒機または転動造粒機等が利用できる。ガラス原料組成物と水とが均一に効率よく混合されやすい点で、転動造粒機を用いる方法(転動造粒法)が好ましい。
また、転動造粒法に用いられる転動造粒機は、例えば、垂直方向に対して傾いた方向を回転軸として回転する容器と、容器内で回転軸を中心として容器と反対方向に回転する回転翼とを備えるものなどが挙げられる。このような転動造粒機としては、例えば、アイリッヒ・インテンシブミキサ(アイリッヒ社製)、レーディゲミキサー(レーディゲ社製)等が挙げられる。
ガラス原料組成物と水を混合しながら造粒する際に、ガラス原料組成物に含まれるCA2等のカルシウムアルミネートと水が接触して水和物が生成すると発熱する。またガラス原料組成物が酸化カルシウムを含む場合には酸化カルシウムと水が接触して水酸化カルシウムが生成すると発熱する。造粒工程におけるガラス原料組成物の温度は、工程を短縮できる点で50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。しかし、ガラス原料組成物の温度が高すぎると、ガラス原料組成物の硬化が局所的に促進され、造粒体ができない場合や、予定する形状や大きさの造粒体が得られない場合がある。
また、ガラス原料組成物は、予めアルミナセメント等のCA2を含有する粉末を水と混合して水和物とする予備的な水和工程を行った後に、ケイ素源等を加えて混合する方法によって調整すると、より固い造粒体を得やすい点で好ましい。
予備的な水和工程で用いる水の量は、造粒工程で用いる水の一部または全部であってよい。水の量は、アルミナセメント等のCA2を含有する粉末100質量%に対して、外割で0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
予備的な水和工程でアルミナセメントと水を混合する際は、全体が均質なスラリーとなる程度に撹拌した後、スラリー状態のまま1〜18時間保持することが好ましい。
造粒工程で得られる造粒体は、水を含んでいるので、乾燥してもよい。造粒体を乾燥する場合の温度は、800℃以下が好ましく、500℃以下がより好ましく、作業効率の点で80〜200℃がより好ましい。得られた造粒体は、必要に応じて、篩分けしてもよい。
本発明の一態様における製造方法により得られる造粒体は、無アルカリガラスの製造に用いられる造粒体である。さらに、本発明の一態様における造粒体は、無アルカリガラスからなるガラス物品の製造に用いる造粒体であることが好ましい。本発明の一態様における造粒体は、ケイ素源および3CaO・Al2O3・6H2Oを必須とする。
造粒体の組成は、これを加熱することにより溶融してガラス化させたときに所望のガラス組成が得られるように調整される。造粒体中のアルカリ金属成分の量は、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で、0.1質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましい。
本発明の一態様における造粒体には、3CaO・Al2O3・6H2Oが含まれる。3CaO・Al2O3・6H2Oは、CA2等のカルシウムアルミネート、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウム等のCaO源の存在下で水と接触して生成される成分である。
さらに造粒体には、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムが水と接触して生成されるゲル状の成分が含まれると考えられる。これらの成分が造粒工程において同時に存在すると、強固な造粒体が得られる。
造粒体の酸化物換算組成は、清澄剤成分と水を除いて造粒体から得られる無アルカリガラスの組成とほぼ等しい。造粒体から得られる無アルカリガラスにB2O3が含まれる場合には、溶融工程での揮発を考慮して、造粒体中のホウ酸等のB2O3換算量を、ガラス組成中のB2O3量より多くすることが好ましい。造粒体から得られる無アルカリガラスにB2O3が含まれない場合でも、溶融工程で揮発すれば、造粒体にホウ酸が含まれてもよい。
造粒体がブリケットである場合、ブリケットの形状は、例えば球体、円筒体、直方体、楕円体などである。ブリケットが球体の場合のD50は、1mm〜50mmが好ましく、5〜30mmがより好ましい。ブリケットが楕円体等の場合は、長径の平均値が5mm〜50mmであることが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。前記範囲の下限値以上であると、一般的なブリケットマシンで容易に成形することができ、上限値以下であると均質なガラスが得られやすい。
後述する普通溶融法でガラス溶融物を製造する方法に用いられる造粒体のD50は、1mm〜50mmが好ましく、1〜15mmがより好ましい。造粒体のD50が前記範囲であると、溶融時の巻き込み泡が少なくなりやすい。
普通溶融法により製造したガラス溶融物を用いてガラス物品を製造する場合は、造粒体が有機物を含有しないことが好ましい。造粒体が有機物を含有する場合には、ガラス物品の色調や外観を損ねることがあるからである。
本発明のガラス物品の製造方法の一の態様は、本発明の造粒体を加熱してガラス溶融物を得て、そのガラス溶融物を成形し徐冷してガラス物品を得る、ガラス物品の製造方法である。本発明のガラス物品の製造方法の他の態様は、本発明の造粒体の製造方法により造粒体を得て、その造粒体を加熱してガラス溶融物を得て、そのガラス溶融物を成形し徐冷してガラス物品を得る、ガラス物品の製造方法である。
<溶融工程>
溶融工程は、造粒体を加熱して溶融する工程である。
溶融工程における造粒体の溶融方法は、ガラス原料を溶融する公知の方法が適用でき、特に限定されない。造粒体の溶融は、シーメンス型やるつぼ型のガラス溶融炉を用いる普通溶融法で行ってもよく、気中溶融法で行ってもよい。
大型の装置を用いて大量のガラスを製造する場合などには、溶融工程において、造粒体とガラス板等を破砕して得られるカレットを混合して溶融してもよい。本発明の一態様における造粒体は、造粒体とカレットとを混合して投入する場合でも壊れにくいので好ましい。カレットは、本発明の一態様における造粒体から得られるガラス溶融物と等しいガラス組成を有するものであることが好ましい。具体的には、本発明の一態様における造粒体を使用して得られるガラス物品のカレットやガラス物品を製造する工程で生じるカレットを使用することが好ましい。
普通溶融法によって造粒体を溶融する場合は、ガラス溶融炉内に造粒体を投入し、加熱して融解を進行させ、徐々にガラス溶融物とする。ガラス溶融炉内にガラス溶融物が存在する場合は、ガラス溶融物の液面上に造粒体を投入し、造粒体が塊(バッチ山、batch pileともいう。)となったものをバーナー等によって加熱して溶融する。
気中溶融法は、気相雰囲気中でガラス原料を溶融させて溶融ガラス粒子とし、溶融ガラス粒子を集積してガラス溶融物とする方法である。気中溶融法は、インフライト・メルティング・メソッド(In−flight−melting method)とも呼ばれる。
気中溶融法によって造粒体を溶融する場合は、まず造粒体を気中加熱装置の高温の気相雰囲気中に導入し、気相雰囲気内で溶融して溶融ガラス粒子とする。気中加熱装置は、公知のものを使用できる。本発明の造粒体は、壊れにくいため、搬送時等に、粒子同士や粒子と搬送路内壁等との衝突が生じても微粉の発生が抑えられる。
次いで、気中加熱装置内の溶融ガラス粒子を集積してガラス溶融物を得て、取り出したガラス溶融物を、次の成形工程に供する。溶融ガラス粒子を集積する方法としては、例えば、気相雰囲気中を自重で落下する溶融ガラス粒子を、気相雰囲気下部に設けた耐熱容器に受けて集積する方法が挙げられる。
図1は、本発明のガラス物品の製造方法の一例を示す流れ図である。符号S1はガラス溶融工程である。
まず、ガラス溶融工程S1で得たガラス溶融物を、成形工程S2で目的の形状に成形した後、徐冷工程S3にて徐冷して、ガラス物品G5を得る。その後、必要に応じて後加工工程S4において切断や研磨など、公知の方法で後加工を施してもよい。ここで、後加工工程とは、ガラス物品のガラス組成に影響を及ぼさない前記の後工程以外に、表面処理工程等であってもよい。
ガラス物品が板状の物品である場合、成形工程はフロート法、ダウンドロー法、フュージョン法等の公知の方法で行うことができる。フロート法は、溶融スズ上でガラス溶融物を板状に成形する方法である。徐冷工程S3も公知の方法で行うことができる。ガラス物品の製造において、本発明の造粒体を用いることによりガラス原料の飛散を防止しつつ、良好な品質のガラス物品を得ることができる。
本発明の一態様におけるガラス物品とは、造粒体を溶融工程で溶融した後に、成形して、徐冷し、さらに必要に応じて徐冷した後に切断することにより所望の形状になったものをいう。ガラス物品の形状としては、平板状、曲面状、筒状、容器状等が挙げられる。なお、ガラス物品は、溶融工程の後の工程において、または、ガラス物品とした後において、表面処理を行ったものでもよい。
本発明の一態様の方法で製造されるガラス物品は、無アルカリガラスからなるガラス物品であることが好ましい。ガラス物品は、以下のガラス成分を含有することが好ましい。ただし、以下のようにガラス物品のガラス成分を示す場合のガラス物品100質量%とは、造粒体を溶融して得られるガラス溶融物が固化したものの全質量を表し、後加工工程での表面処理等によってガラス物品の表面に加工される成分の質量を含まないこととする。
ガラス物品は、ガラス物品100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を40〜85質量%、Al2O3を5〜30質量%、MgOを0〜18質量%およびCaOを2〜40質量%含むガラス物品であることが好ましい。ガラス物品は、このほかに非金属酸化物(イオウ酸化物など)、ハロゲンなどを少量含有していてもよい。非金属酸化物とハロゲンの総量は、ガラス物品100質量%に対して0〜5質量%が好ましい。
ガラス物品は、ガラス物品100質量%に対して酸化物換算で、CaOを2〜18質量%含み、かつSrOおよびBaOの少なくとも1種を含み、CaOとSrOとBaOの総量が2〜40質量%であるガラス物品がより好ましい。
ガラス物品は、ガラス物品100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を45〜65質量%、Al2O3を10〜25質量%、MgOを2〜18質量%、CaOを2〜18質量%含み、SrOとBaOの総量が2〜15質量%、CaOとSrOとBaOの総量が4〜35質量%であるガラス物品がさらに好ましい。
本発明の一態様におけるガラス物品は、板状のガラス物品であることが好ましい。板状のガラス物品は、ディスプレイ基板等に用いられる。ガラス物品が板状のガラス物品である場合は、前記ガラス組成においてMgOを0.4質量%以上含有することがより好ましい。そのガラス組成は、フロート法を用いて成形することに適している。
ガラス物品は、B2O3を含有しないか、またはB2O3の含有量が少ないことが好ましい。ガラス物品におけるB2O3の含有量は、ガラス物品100質量%に対して酸化物換算で、0〜3質量%であることが好ましく、0〜1質量%が好ましく、0質量%(0質量%とは、検出限界以下であることをいう)が最も好ましい。B2O3が少ないとガラス物品の歪点が高くなる。
<アルミナセメント(A1)〜(A3)>
アルミナセメント(A1)〜(A3)は、下記のカルシウムアルミネートを含む市販のアルミナセメントを用いた。
アルミナセメント(A1):AGCセラミックス社製、製品名UCA−70N。カルシウムアルミネートとして、CAおよびCA2を含有する。
アルミナセメント(A2):AGCセラミックス社製、製品名HAC。カルシウムアルミネートとして、CAおよびCA2を含有する。
アルミナセメント(A3):AGCセラミックス社製、製品名AC−1。カルシウムアルミネートとしてCAを含有する。
アルミナセメント(A1)〜(A3)の主要な成分の組成(酸化物基準の質量百分率表示)およびCA:CA2の質量比を表1に示す。
アルミナセメント(A1)〜(A3)についてCuKα線を用いた粉末X線回折法で得られたX線回折スペクトルを図2〜4に示す。各図において、○を付したピークはCA2の回折ピークであり、△を付したピークはCAの回折ピークである。図2はアルミナセメント(A1)、図3はアルミナセメント(A2)、図4はアルミナセメント(A3)のX線回折スペクトルである。
アルミナセメント(A4)を以下の方法で調製した。アルミナセメント(A4)に含まれるカルシウムアルミネートは、C3Aであり、CA、CA2のいずれも含まれない。
まず、炭酸カルシウムと酸化アルミニウムとをCaCO3:Al2O3のモル比が3:1となるように秤量し、10分間混合した後、直径が約150mm、高さが約50mmの円筒形の白金容器に詰め込み、1350℃に保たれた電気炉に入れて焼成した。冷却後、D50が50μm程度になるように粉砕してカルシウムアルミネートを含有する粉末(アルミナセメント(A4))を得た。原料組成から算出される、アルミナセメント(A4)の主要な成分の組成(酸化物基準の質量百分率表示)を表1に示す。
得られたアルミナセメント(A4)についてCuKα線を用いた粉末X線回折法で得られたX線回折スペクトルを図5に示す。図5において×を付したピークはC3Aの回折ピークである。CA、CA2のピークはいずれも存在しなかった。
以下の造粒体の製造例で用いた各ガラス原料のD50を測定した。表2に結果を示す。ただし、表中に示すガラス原料は、水を加えると容易に溶解する成分または水和する成分(アルミナセメント、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム、および塩化マグネシウム)以外の成分である。測定は、レーザー回折法で行った。硫酸マグネシウムは7水和物、塩化マグネシウムは6水和物を用いた。
前記アルミナセメント(A1)〜(A4)を用い、表4に示す配合で造粒体を製造した。
例3は、CA2を含まないアルミナセメント(A3)を用いた比較例である。例4は、CA、CA2のいずれも含まないアルミナセメント(A4)を用いた比較例である。例1、2は、実施例である。
まず、表4に示す配合(質量百分率表示)でガラス原料組成物3.0kgを秤量した。ガラス原料組成物3.0kgのうち、硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムを所定量の溶解水に溶かして水溶液とし、残りのガラス原料を転動造粒機に投入した。パン回転数42rpm、ロータ回転数900rpm、混合時間30秒間の条件で混合した。
続いて、ロータを止め、パンのみを回転させながら、前記で硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムを溶かした水溶液を投入し、ロータ回転数を3000rpmに上げて18分間造粒を行った。この間に様子を見ながら水を追加した。
次いで、ロータ回転数を900rpmに下げて1分間整粒を行った後、ステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥器中で、80℃、12時間の加熱乾燥を行って造粒体を得た。
造粒機内に設置された温度計により、造粒工程におけるガラス原料組成物の温度を測定した。硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムを溶かした水溶液を投入してから、1分間の整粒を終えるまでの間で最も高い温度は60℃であった。
例1、2では、ガラス原料組成物がガラス原料の粉末よりも大きい粒子状に造粒されたが、例3、4では、ガラス原料組成物がほぼ粉末状のままであり造粒体が形成されなかった。
図6は、例1における造粒工程後の粒子状態を示す写真であり、造粒体が形成されたことがわかる。図7は、例3における造粒工程後の粒子状態を示す写真であり、造粒体が形成されなかったことがわかる。
例1、2で得られた造粒体のD50の平均粒子径は、篩で分級して平均粒子径を求める方法(ふるい分け法)によって測定した。表4に結果を示す。
得られた造粒体が壊れにくく固い場合は、粒子径の分布を測定した場合においてD50の0.5倍からD50の1.5倍にある造粒体の数が多く、粒子径がそろっている。そこで、粒子径分布を測定してD50の0.5倍から1.5倍の範囲の粒子径をもつ造粒体の割合により造粒体の固さを下記のように評価した。表4に結果を示す。
◎:80%以上の粒子径が前記範囲内にあり粒子径がよくそろっている。壊れにくく固い造粒体が得られている。
○:50%〜80%程度の粒子径が前記範囲内にあり、粒子径がある程度そろっている。ある程度固い造粒体が得られている。
△:50%未満の粒子径が前記範囲内にあり、粒子径がそろっていない。粒子状になってはいるが壊れやすい。
×:造粒体が形成されなかった。
一方、CA2を含まないアルミナセメント(A3)、(A4)を用いた例3、4は、造粒体が形成されず、造粒前のガラス原料と同程度の粒子径のまま均一に混合された混合粉末が得られた。
本例では酸化カルシウムを用いず、水酸化カルシウムおよびアルミナセメント(A1)の添加量を変化させて造粒体を製造した。例11〜13は、水酸化カルシウムを添加しない比較例である。例14は、アルミナセメントを用いない比較例である。
例1と同様にして造粒体のD50を測定した。例1と同様にして造粒体の固さを評価した。表5にこれらの結果を示す。
アルミナセメント(A1)を添加しない例14は、水酸化カルシウムの含有量を多くしても造粒体が形成されなかった。
ガラス原料組成物100質量%中に、アルミナセメント(A1)を5質量%以上と、水酸化カルシウム1質量%以上を含有させた例15〜23では造粒体が形成された。特にガラス原料組成物100質量%に対するアルミナセメント(A1)の含有量が8質量%以上、かつ水酸化カルシウムの含有量が1質量%以上の範囲で固い造粒体ができ、アルミナセメント(A1)の含有量が10質量%以上、かつ水酸化カルシウムの含有量が4質量%以上の範囲で一層固い造粒体ができた。
水酸化カルシウムを用いずに、酸化カルシウムおよびアルミナセメント(A1)の添加量を表6に記載する量に変えて造粒体を製造した。例31は酸化カルシウム添加しない比較例である。
例1と同様にして造粒体のD50を測定した。例1と同様にして造粒体の固さを評価した。表6にこれらの結果を示す。
ガラス原料組成物(ガラス原料粉末の合計)100質量%中に、アルミナセメント(A1)7質量%以上と、酸化カルシウム0.1質量%以上を含有させた例32〜39では造粒体が形成された。特にガラス原料におけるアルミナセメント(A1)の含有量が7質量%以上、かつ酸化カルシウムの含有量が0.2質量%以上の範囲で一層固い造粒体ができ、好ましかった。
本例では、予めアルミナセメント(A1)を水と混合して水和させる予備的な水和工程を行った後に、残りのガラス原料を加えて混合する方法を用いて造粒体を製造した。
本例では、表7に示すように、酸化カルシウムを用いず、水酸化カルシウムおよびアルミナセメント(A1)の添加量を変化させて造粒体を製造した。
具体的には、以下の手順で造粒した。
まず、表7に示す配合(質量百分率表示)でガラス原料組成物3kgを秤量した。このうちアルミナセメント(A1)を、予備水和用の水に分散させ室温下に6時間放置して水和させて、スラリー状とした。また硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムを溶解水に溶かし水溶液とした。
例1と同じ転動造粒機を用いて、以下の手順で造粒した。
ガラス原料組成物3.0kgのうち、アルミナセメント(A1)、硫酸マグネシウムおよび塩化マグネシウムは、それぞれを水に溶かしてスラリー状の水溶液とし、これらを除いた残りの粉体原料を転動造粒機に投入した。パン回転数42rpm、ロータ回転数900rpm、混合時間30秒間の条件で混合した。
続いて、ロータを止め、パンのみを回転させながら、前記のように水に溶かしたアルミナセメント(A1)の水溶液と硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムを溶かした水溶液を投入し、ロータ回転数を3000rpmに上げて18分間造粒を行った。この間に様子を見ながら水20gを追加した。
次いで、ロータ回転数を900rpmに下げて1分間整粒を行った後、ステンレス製の容器に入れ、熱風乾燥器中で、80℃、12分間の加熱乾燥を行って造粒体を得た。
例1と同様にして、造粒工程におけるガラス原料組成物の温度を測定した。硫酸マグネシウムと塩化マグネシウムを溶かした水溶液を投入してから、1分間整粒を終えるまでの間で最も高い温度は60℃であった。
また、表5の結果と表7の結果との比較において、例えば例21と例54を比べると、アルミナセメント(A1)の含有量および水酸化カルシウムの含有量がそれぞれ同程度である場合には、予備的な水和工程を行うことによって造粒体の固さが向上することがわかる。
例えば、例1、2で得られた造粒体を約1550℃に保たれたガラス溶融炉に投入して溶融することにより、ガラス溶融物が得られる。また、得られたガラス溶融物を成形して、徐冷することによりガラス板等のガラス物品が得られる。
なお、2013年9月5日に出願された日本特許出願2013−184369号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
S2 成形工程
S3 徐冷工程
S4 後加工工程
G5 ガラス物品
Claims (15)
- ガラス原料組成物と水を混合することによる造粒体の製造方法であって、ガラス原料組成物は、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、CaO・2Al2O3、およびケイ素源を必須として含むことを特徴とする無アルカリガラスの製造に用いられる造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物は、CaO・Al2O3を含む請求項1に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物は、清澄剤または色調調整剤として、硫酸塩成分および硝酸塩成分の一方または両方を含む請求項1または2に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物は、CaO・2Al2O3を含有するアルミナセメントを含み、該アルミナセメントは、アルミニウム源をアルミナセメント100質量%に対して、Al2O3換算で65質量%以上含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の造粒体の製造方法。
- 前記アルミナセメントは、当該アルミナセメント中に含まれるカルシウムアルミネート100質量%に対するCaO・2Al2O3とCaO・Al2O3との総量が、80〜100質量%であり、かつ当該アルミナセメント中のCaO・2Al2O3とCaO・Al2O3との量比は、CaO・2Al2O3とCaO・Al2O3の総量100質量%に対してCaO・2Al2O3が、2質量%以上、100質量%以下である請求項4に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物は、前記アルミナセメントの水和物に、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの一方または両方、およびケイ素源を加えて混合することにより造粒される請求項4に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物と水を混合する工程において、前記ガラス原料組成物と水を混合しながら固めた後、800℃以下で造粒体を得る請求項1〜6のいずれか一項に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物は、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの総量がガラス原料組成物100質量%に対して0.1〜10質量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物は、酸化ホウ素およびホウ酸を実質的に含まない、または、酸化ホウ素およびホウ酸の一方または両方を含み、かつ酸化ホウ素およびホウ酸の総量がガラス原料組成物100質量%に対して0質量%超、3質量%以下である請求項1〜8のいずれか一項に記載の造粒体の製造方法。
- 前記ガラス原料組成物が、造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を40〜85質量%、Al2O3を5〜30質量%、MgOを0〜18質量%およびCaOを2〜40質量%含むガラス原料組成物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の造粒体の製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法により造粒体を得て、該造粒体を加熱してガラス溶融物を得て、該ガラス溶融物を成形し徐冷してガラス物品を得るガラス物品の製造方法。
- 無アルカリガラスからなるガラス物品の製造に用いる造粒体であって、ケイ素源および3CaO・Al2O3・6H2Oを必須とする造粒体。
- 前記造粒体が、該造粒体から得られる無アルカリガラス100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を40〜85質量%、Al2O3を5〜30質量%、MgOを0〜18質量%、およびCaOを2〜40質量%含む造粒体である請求項12に記載の造粒体。
- 請求項12または13に記載の造粒体を加熱してガラス溶融物を得て、該ガラス溶融物を成形し徐冷してガラス物品を得るガラス物品の製造方法。
- 前記ガラス物品が、該ガラス物品100質量%に対して酸化物換算で、SiO2を40〜85質量%、Al2O3を5〜30質量%、MgOを0〜18質量%、およびCaOを2〜40質量%含むガラス物品である請求項11または14に記載のガラス物品の製造方法。
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