JPWO2014192495A1 - ディスクブレーキ - Google Patents

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Abstract

車両の前進時にディスク(1)の回出側となる方向に向けて摩擦パッド(10)を付勢する付勢ばね(15)を、摩擦パッド(10)の耳部(11A)とキャリア(2)のトルク受面(5)との間に配置し、この付勢ばね(15)の先端部をディスク(1)と当接させ磨耗検知を行なうディスクブレーキにおいて、付勢ばね(15)は、基端側から取付部(15A)、第1の延出部(15B)、境界部位(15E)、折曲げ部(15C)、第2の延出部(15D)から大略構成されており、境界部位(15E)を幅狭とすることで剛性を下げ、また、折曲げ部(15C)を幅広とし、さらに、補強部(15C1)を設けることで、剛性を高め、これにより、第2の延出部(15D)の回転方向Kの固有振動数と上下方向Jの固有振動数が近づき、自励振動が発生しやすくなり、これにより十分な検知音を得ることができることを特徴とするディスクブレーキ。

Description

本発明は、例えば自動車等の車両に制動力を付与するディスクブレーキに関する。
一般に、自動車等の車両に設けられるディスクブレーキは、車両の非回転部分に取付けられる取付部材と、該取付部材に支持されキャリパへの液圧供給によりディスクの両面に押圧される一対の摩擦パッドと、該摩擦パッドと前記取付部材との間に設けられ前記摩擦パッドをディスクの前進時の回転方向出口側(周方向)に付勢する付勢ばね(いわゆる、アンチラトルスプリング)等とを備えて構成され、付勢ばねに摩擦パッドの摩耗状態を検知する機能を持たしているものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−331883号公報
ところで、上述した従来技術で採用している付勢ばねを備えたディスクブレーキでは、摩擦パッドの摩耗状態によって発生する検知音が十分に得られないという問題がある。
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、検知音が十分に得られるようにしたディスクブレーキを提供することにある。
上述した課題を解決するため、本発明によるディスクブレーキは、ディスクを跨いで車両に固定されて制動時のトルクを受けるトルク受面が形成され、前記ディスクの両面に対向して設けられる摩擦パッドを前記ディスクに押圧するキャリパが摺動可能に設けられる取付部材を有し、前記摩擦パッドは、前記取付部材にディスクの周方向両側で支持され、前記取付部材のトルク受面と当接する側面部にトルク伝達部が形成された裏板と、該裏板の一面側に固着して前記ディスクに当接して摩擦力を発生する摩擦材と、前記摩擦パッドをディスクの回出側に向けて付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段は、前記裏板に固定して取付けられる取付部と、該取付部に基端側が接続され前記ディスクから離間する方向に延出された第1の延出部と、該第1の延出部の先端側に前記ディスクから離間する方向に向けて弧状に形成され先端が前記ディスク側に向くように折曲げられた折曲げ部と、該折曲げ部の先端側から前記ディスクに近付く方向に延び前記取付部材側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部とを有し、該第2の延出部の先端は、前記摩擦材が所定量摩耗したときに前記ディスクに当接するようになっており、前記折曲げ部は、前記第1の延出部と前記折曲げ部との第1の境界部位よりも剛性が高く設定されてなる
上述の如く、本発明によれば、摩擦パッドの摩耗状態によって発生する検知音が十分に得られるようにしたディスクブレーキを提供することにある。
本発明の実施の形態によるディスクブレーキを上方からみた平面図である。 ディスクブレーキを図1中の矢示II−II方向からみた一部破断の正面図である。 図2に示すディスクブレーキの背面図である。 図1中のキャリパを取外した状態で取付部材、摩擦パッド、パッドスプリングおよび付勢ばね等を示す一部破断の平面図である。 図4中の取付部材、摩擦パッド、パッドスプリングおよび付勢ばね等を前側からみた正面図である。 取付部材、摩擦パッド、パッドスプリングおよび付勢ばね等を図4中の矢示VI−VI方向からみた断面図である。 図6中の摩擦パッドに付勢ばねを取付けた状態を示す正面図である。 図4中の矢示IX部分を拡大して示す要部断面図である。 図8の付勢ばねのみを左側から見た左側面図である。 図8の付勢ばねのみを右側から見た右側面図である。 図8の付勢ばねのみの自然状態を現した図である。 付勢ばねのばね特性を示す特性線図である。 摩擦センサの自励振動の原理図
以下、本発明の実施の形態によるディスクブレーキを、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図中、1は回転するディスクを示し、このディスク1は、例えば車両が前進方向に走行するときに車輪(図示せず)と共に図1中の矢示A方向に回転し、車両が後退するときには矢示B方向に回転するものである。
2は車両の非回転部分に取付けられる取付部材としてのキャリアで、該キャリア2は、図1〜図3に示す如く、ディスク1の回転方向(周方向)に離間してディスク1の外周を跨ぐようにディスク1の軸方向に延びた一対の腕部2A,2Aと、該各腕部2Aの基端側を一体化するように連結して設けられ、ディスク1のインナ側となる位置で前記車両の非回転部分に固定される厚肉の支承部2B等とから構成されている。
また、キャリア2には、ディスク1のアウタ側となる位置で腕部2A,2Aの先端側を互いに連結する補強ビーム2Cが図2に示す如く弓形状をなして一体に形成されている。これにより、キャリア2の各腕部2A,2Aは、ディスク1のインナ側で支承部2Bにより一体的に連結されるとともに、アウタ側で補強ビーム2Cにより一体的に連結されている。
そして、腕部2Aのディスク1の軸方向の中間部には、図2、図6中に示すようにディスク1の外周(回転軌跡)に沿って弧状に延びるディスクパス部3が形成されている。該ディスクパス部3のディスク1の軸方向両側には、インナ側,アウタ側のパッドガイド4がそれぞれ形成されている。また、各腕部2Aには、図2、図6中に示すようにピン穴2Dがそれぞれ設けられている。これらのピン穴2D内には、後述の摺動ピン7が摺動可能に挿嵌される。
上記パッドガイド4は、図2〜図6に示す如く、後述の摩擦パッド10の耳部11Aの形状にあった矩形形状をなす凹溝として形成され、後述の摩擦パッド10がディスク1の軸方向、すなわち摺動変位する方向に延びている。なお、溝の形状は、完全な矩形である必要はない。
パッドガイド4は、後述する摩擦パッド10の耳部11A,11Bを上,下方向(ディスク径方向)から挟むように、即ち耳部11A,11Bが凹凸嵌合する。これらの耳部11A,11Bを介して摩擦パッド10をディスク軸方向にガイドするものである。パッドガイド4の奥側壁面には、所謂トルク受部としてのトルク受面5が構成されている。このトルク受面5は、ブレーキ操作時に発生する制動トルクを摩擦パッド10が耳部11A,11Bを介して受承するものである。
即ち、図2中に示す左,右のパッドガイド4,4のうち、矢示A方向に回転するディスク1の回転方向出口側(以下、回出側という)に位置する左側のパッドガイド4、特に、底部側のトルク受面5は、ブレーキ操作時に後述の摩擦パッド10がディスク1から受ける制動トルクを裏金11の耳部11Bおよび、後述するパッドスプリング14の案内板部14Aを介して受承する。また、矢示A方向に回転するディスク1の回入側(以下、回入側という)に位置するパッドガイド4の底部側、すなわち、トルク受面5は、ブレーキ操作時に摩擦パッド10の耳部11Aから僅かに離間した状態となるようになっている。
キャリパ6は、キャリア2に摺動可能に設けられている。該キャリパ6は、図1に示す如くディスク1の一側であるインナ側に設けられたインナ脚部6Aと、キャリア2の各腕部2A間でディスク1の外周側を跨ぐようにインナ脚部6Aからディスク1の他側であるアウタ側へと延設されたブリッジ部6Bと、該ブリッジ部6Bの先端側であるアウタ側からディスク1の径方向内向きに延び、先端側が二又状をなしたアウタ脚部6Cとにより構成されている。
そして、キャリパ6のインナ脚部6Aには、ピストンが摺動可能に挿嵌されるシリンダ(いずれも図示せず)が形成されている。また、インナ脚部6Aには、図1、図3中の左,右方向に突出する一対の取付部6D,6Dが設けられている。該各取付部6Dは、キャリパ6全体を後述の摺動ピン7を介してキャリア2の各腕部2Aに摺動可能に支持する。
摺動ピン7は、図1に示す如くキャリパ6の各取付部6Dにそれぞれボルト8を用いて締結されている。各摺動ピン7の先端側は、キャリア2の各腕部2Aのピン穴2Dに向けて延びており、図2中に例示するようにキャリア2の各ピン穴2D内に摺動可能に挿嵌されている。
各腕部2Aと各摺動ピン7との間には、それぞれ保護ブーツ9,9が取付けられ、摺動ピン7と腕部2Aのピン穴2Dとの間に雨水等が浸入するのを防いでいる。
摩擦パッド10は、ディスク1の両面に対向して配置されている。摩擦パッド10は、図1〜図6に示す如く、ディスク1の周方向(回転方向)に略扇形状をなして延びる平板状の裏金11と、該裏金11の表面側に固着して設けられディスク1の表面に摩擦接触する摩擦材としてのライニング12等とにより構成されている。
摩擦パッド10の裏金11には、ディスク1の周方向両側に位置する側面部に嵌合部としての凸形状をなした耳部11A,11Bが設けられている。裏金11の耳部11A,11Bは、車両のブレーキ操作時にディスク1から摩擦パッド10が受ける制動トルクをキャリア2のトルク受面5に当接して伝達するトルク伝達部を構成するものである。
摩擦パッド10(裏金11)の耳部11A,11Bは、例えば図2、図3に示すように左,右対称に形成され、互いに同一の形状をなしている。そして、一方の耳部11Aは、車両の前進時に矢示A方向に回転するディスク1の回入側(回入側)に配置され、他方の耳部11Bは、ディスク1の回転方向出口側(回出側)に配置されるようになっている。
摩擦パッド10のトルク伝達部となる左,右の耳部11A,11Bのうちディスク1の回入側に位置する耳部11Aには、付勢ばね15が設けられている。
摩擦パッド10の裏金11には、その長さ方向両側、すなわち、ディスク1の回入側,回出側に位置する側面部に平坦面部11C,11Dが形成されている。平坦面部11C,11Dは、耳部11A,11Bの突出方向に対してほぼ垂直な方向で、ディスク1の径方向外向きに延びている。
摩擦パッド10の裏金11には、耳部11A,11Bの基端(根元)側寄りに位置してカシメ部11E,11Eが設けられている。カシメ部11Eは、図7、図8に示す如く裏金11のライニング12が設けられる一方の面(以下、表面11Fという)側に突出して設けられている。該各カシメ部11Eのうちディスク1の回入側に位置するカシメ部11Eには、後述の付勢ばね15を摩擦パッド10の裏金11に固定するために、カシメ加工が施されるものである。
裏金11の耳部11Aには、凹溝13が設けられている。該凹溝13は、図7、図8に示すように耳部11Aの先端側(突出側)端面11A1 を部分的にL字状に切欠くことにより形成され、後述する付勢ばね15の一部を収納するための収納溝を構成している。そして、耳部11Aの端面11A1 に対する凹溝13の溝深さhは、図8に示すように後述する付勢ばね15の板厚tに対してほぼ2倍の寸法に設定されている。
凹溝13は、耳部11Aの幅方向(ディスクの径方向)の中心位置よりも径方向外側寄りとなる位置に配置されている。なお、ディスク1の回出側に位置する耳部11Bについても、回入側の耳部11Aと同様に凹溝13を形成する構成とするのが好ましい。これにより、摩擦パッド10は、ディスク1のインナ側とアウタ側とで部品の共通化を図ることが可能となり、ディスクブレーキの部品点数を削減して、その製造上の煩雑さを解消することが可能となる。
キャリア2の各腕部2Aには、パッドスプリング14,14が取付けられている。パッドスプリング14,14は、それぞれインナ側,アウタ側の摩擦パッド10を弾性的に支持すると共に、これらの摩擦パッド10の摺動変位を滑らかにするものである。そして、パッドスプリング14は、ばね性を有するステンレス鋼板等を図1〜図6に示すように曲げ加工(プレス成形)することにより形成されている。
パッドスプリング14は、一対の案内板部14Aと、連結板部14Bと、径方向付勢板部14Cとを含んで構成されている。一対の案内板部14Aは、キャリア2の各パッドガイド4内に嵌合するように略コ字状に折曲げて形成され、ディスク1のインナ側とアウタ側とで互いに離間し手形成されている。連結板部14Bは、各案内板部14Aをディスク1のインナ側とアウタ側とで一体的に連結するため、ディスク1の外周側を跨いだ状態で軸方向に延びて形成されている。径方向付勢板部14C,14Cは、前記各案内板部14Aのディスク1の径方向内側部位に一体形成されている。
パッドスプリング14の各案内板部14Aは、図2、図3、図5、図6に示すようにキャリア2の各パッドガイド4内に嵌合して取付けられ、摩擦パッド10の裏金11を凸形状の耳部11A,11Bを介してディスク1の軸方向に案内する機能を有している。また、各径方向付勢板部14Cは、キャリア2の各パッドガイド4内で各摩擦パッド10(裏金11)の耳部11A,11Bに弾性的に当接することにより、各摩擦パッド10の裏金11をディスク1の径方向外側に向けて付勢している。これにより、各摩擦パッド10のガタ付きを抑えるものである。
付勢ばね15は、摩擦パッド10の裏金11の各側面部(耳部11A,11B)のうち車両前進時にディスク回入側となる耳部11A(側面部)と、これに対向するキャリア2のトルク受面5(取付部材の対向面)との間に設けられている。付勢ばね15は、摩擦パッド10をディスク1の回出側に向けて付勢する付勢手段を構成している。
そして、付勢ばね15は、例えば、ばね性を有する厚さがtで一定のステンレス鋼板等を図9から11に示すように曲げ加工(プレス成形)することにより形成されている。そして、付勢ばね15のばね定数k1 は、下記の数1の関係に設定されている。
Figure 2014192495
Figure 2014192495
この場合、数2式によるばね定数kは、ブレーキ鳴きの要因としてキャリパ6を起振源として捉えた場合における、キャリア2(取付部材)に取付けた状態でキャリパ6が剛体として振動するときの固有振動数fと摩擦パッド10の質量mとにより求められる。そして、付勢ばね15のばね定数k1 は、例えば板厚tを適正に調整することにより、数2式によるばね定数kよりも小さく、零よりも大きい値に設定されている。例えば、前記数2式によるばね定数kは、固有振動数fを200Hz、質量mを0.2kgとしたときに、下記の如く求められる。
Figure 2014192495
なお、上記固有振動数fは、キャリパ6を車両及びキャリア2に取り付けた状態で、キャリパ6をハンマー等で加振し、このとき発生する振動を測定器により測定する加振試験を行なうことにより、特定が可能になっている。また、このような加振試験により測定されるキャリパ6の固有振動数は、200Hz〜500Hzの幅を有している。
付勢ばね15は、図7〜図11に示すように、取付部15Aと、第1の延出部15Bと、折曲げ部15Cと、第2の延出部15Dと、境界部位15Eとから大略構成される。取付部15Aは、摩擦パッド10(裏金11)の表面11F側にカシメ部11Eにより固定して取付けられるようになっている。第1の延出部15Bは、取付部15Aより幅狭(図10の左右方向を幅とし、上下方向を長手方向とする)となっており、基端側が取付部15Aと接続(一体形成)され、裏金11の一方の面(表面11F)とは反対側となる他方の面(裏面11G)側に向け、凹溝13を介してディスク1から離間する方向に延出されている。また、第1の延出部15Bの取付部15Aと接続される基端側は、一旦ディスク1に近づく湾曲部15B1を有している。境界部位15Eは、第1の延出部15Bと折曲げ部15Cとの境であり、第1の延出部15Bより幅が狭い幅狭部となっており、折れ方向の剛性が小さくなっている。また、その幅は、第2の延出部15Dと同等かそれ以下となっている。折曲げ部15Cは、該第1の延出部15Bの先端側に一体形成され裏金11の裏面11G側でディスク1から離間する方向に向けて凸となる弧状に折曲げられ、折り返され、先端側はディスク1方向に向いている。この折曲げ部15Cの幅は、該第1の延出部15Bや第2の延出部15Dより幅広になっており、弧状の曲率変化する方向の剛性が強められておる。さらに、幅方向の両側は、長手方向に沿って90度折り曲げられた補強部15C1が形成され、弧状の曲率変化する方向の剛性をより高めている。これにより、折曲げ部15Cは、他の部分に比して剛性が高められている。しかし、必要に応じて補強部15C1をなくしたり、または、幅方向片側に設けたり、補強部15C1の折曲げ角度も90度以上としても以下としても、折り返すことで、折曲げ部15Cの弧状の曲率変化する方向の剛性が高められるので、適宜設定が可能である。第2の延出部15Dは、該折曲げ部15Cの先端側から裏金11の表面11F側へとディスク1に近付く方向に延びキャリア2のトルク受面5にパッドスプリング14の案内板部14Aを介して弾性変形状態で当接(弾接)するようになっている。また、その先端は、ライニング12が磨耗した際にディスク1と接触する当接部15D1となっている。この当接部15D1は、車両の前進回転するA方向に先端が曲げられている。第2の延出部15Dの幅は、折曲げ部15Cより狭く、第1の延出部15Bと同等程度のはばとなっており、その曲げ方向の剛性が高められるようにプレスによって、長手方向に延びるようにリブ15D2が形成されている。
付勢ばね15は、取付部15Aが裏金11の耳部11A側に固定されることにより、ブレーキ非操作時や車両前進時におけるブレーキ操作時は図8に示すように摩擦パッド10に片持ち状態で支持されている。そして、車両後進時におけるブレーキ操作時は、摩擦パッド10(裏金11)の耳部11Aがキャリア2のトルク受面5(パッドスプリング14の案内板部14A)に当接して付勢ばね15が大きく撓み変形したとしても、第2の延出部15Dが第1の延出部15Bと一緒に耳部11Aの凹溝13内に収納されて片持ち状態を維持するようになっている。
また、付勢ばね15は、図7にも示すように耳部11Aの幅方向(ディスクの径方向)の中心位置よりも径方向外側寄りとなる位置に配置されている。これにより、付勢ばね15は、耳部11Aの幅方向の中心位置よりも径方向外側寄りとなる位置で摩擦パッド10をディスク回出側に付勢することができ、制動時に偶力抜けが発生するのを抑制できるものである。
本実施の形態によるディスクブレーキは、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
まず、車両のブレーキ操作時には、キャリパ6のインナ脚部6A(シリンダ)にブレーキ液圧を供給することによりピストンをディスク1に向けて摺動変位させ、これによりインナ側の摩擦パッド10をディスク1の一側面に押圧する。そして、このときにはキャリパ6がディスク1からの押圧反力を受けるため、キャリパ6全体がキャリア2の腕部2Aに対してインナ側に摺動変位し、アウタ脚部6Cがアウタ側の摩擦パッド10をディスク1の他側面に押圧する。
これにより、インナ側とアウタ側の摩擦パッド10は、図1〜図3中の矢示A方向(車両の前進時)に回転しているディスク1を、両者の間で軸方向両側から強く挟持することができ、このディスク1に制動力を与えることができる。そして、ブレーキ操作を解除したときには、前記ピストンへの液圧供給が停止されることにより、インナ側とアウタ側の摩擦パッド10がディスク1から離間し、再び非制動状態に復帰する。
また、このようなブレーキ操作時、解除時(非制動時)には、摩擦パッド10の耳部11A,11Bのうちディスク1の回入側に位置する耳部11Aが、付勢ばね15によって図2、図3、図5、図6中の矢示C方向に付勢され、摩擦パッド10は、ディスク1の回出側(図2中の矢示A方向)に弱い力で常時付勢される。そして、ディスク1の回出側に位置する耳部11Bは、このときの付勢力によりパッドスプリング14の案内板部14Aを介してパッドガイド4のトルク受面5に弾性的に押付けられる。
このため、摩擦パッド10が車両走行時の振動等でディスク1の周方向にガタ付いたりするのを、ディスク回入側の耳部11Aとトルク受面5との間に設けた付勢ばね15により規制することができる。そして、車両前進時のブレーキ操作時には、摩擦パッド10がディスク1から受ける制動トルク(矢示A方向の回転トルク)を、回出側の腕部2A(パッドガイド4のトルク受面5)により受承することができる。
これにより、摩擦パッド10のディスク回出側に位置する耳部11Bは、パッドガイド4のトルク受面5に案内板部14Aを介して当接し続ける。しかも、回出側の耳部11Bは、ブレーキ操作前に付勢ばね15の作用により案内板部14Aに当接してクリアランスがない状態となっているので、制動トルクによって摩擦パッド10が移動して異音を発生してしまうようなことがない。
また、摩擦パッド10の耳部11A,11Bは、ディスク1の回入側,回出側に位置するパッドガイド4,4内にパッドスプリング14の案内板部14Aを介して摺動可能に挿嵌され、各径方向付勢板部14Cによってディスク1の径方向外側へと付勢されている。これにより、摩擦パッド10の耳部11A,11Bを案内板部14Aのディスク径方向外側の面(図中上面)側へと弾性的に押付けることができる。
このため、走行時の振動等により摩擦パッド10がディスク1の径方向にガタ付いたりするのを、パッドスプリング14の径方向付勢板部14Cにより規制することができる。そして、ブレーキ操作時には、摩擦パッド10の耳部11A,11Bを案内板部14Aの上面側に摺接させた状態に保持しつつ、インナ側,アウタ側の摩擦パッド10を案内板部14Aに沿ってディスク軸方向へと円滑に案内することができる。
ところで、キャリア2のパッドガイド4内に摩擦パッド10(裏金11)の耳部11A,11Bを摺動可能に挿嵌する型式(所謂入れ子式)のディスクブレーキでは、緩制動時のブレーキ鳴き対策を行うことが要求されている。そして、現状では、例えばキャリア2のトルク受面5にグリスを塗布したり、両面テープを貼付けたりする等の応急処置により、緩制動時のブレーキ鳴きに対処しているだけである。
そこで、本発明者等は、緩制動時でのブレーキ鳴き対策について鋭意研究した結果、ディスク1の回出側に向けて摩擦パッド10を付勢する付勢ばね15は、そのばね定数k1 を前記数1式、数2式を満たす関係に設定することにより、所謂ブレーキ鳴きの発生を抑えることができることを確認した。これは、キャリパ6を起振源として捉えた場合において、キャリア2(取付部材)に取付けた状態でキャリパ6が剛体として振動するときの固有振動数fから、付勢ばね15により発生する摩擦パッド10の共振振動数をずらすことができたためである。
即ち、車両前進方向でのブレーキ操作時には、摩擦パッド10のディスク回出側に位置する耳部11Bは、回入側の耳部11Aに設けた付勢ばね15の作用によりディスク回出側に位置するパッドガイド4のトルク受面5(パッドスプリング14の案内板部14A)に弾性的に押付けられた状態で、ディスク1からの制動トルクをトルク受面5との間で受承する。このため、摩擦パッド10とディスク回出側に位置するキャリア2の腕部2Aとが一つの剛体となるため、腕部2Aの変形をばねとして捉えた場合のばね定数k2 は、例えば図11中に示す特性線16(k2 =2*108N/m)に沿った特性となる。このようなばね定数k2の特性では、摩擦パッド10の共振振動数がキャリパ6の固有振動数fとはかけ離れたものとなるため、加振試験等でブレーキ鳴きの発生を抑えられることが確認されている。
一方、車両後進(後退)方向でのブレーキ操作時には、摩擦パッド10(裏金11)の耳部11Aがキャリア2のトルク受面5(パッドスプリング14の案内板部14A)に当接するまで、付勢ばね15が図9に示す如く片持ち状態でトルク受面5に制動トルクを伝達することになる。そして、付勢ばね15のみで制動トルクが伝達される間は、例えば図12中に示す特性線17(前記数2式、数3式によるばね定数k、例えばk=3.16*105 N/m)よりも、付勢ばね15のばね定数k1 を小さく設定することにより、ブレーキ鳴きに至る摩擦パッド10の共振振動数を避けることができる。なお、図12において、ばね特性での各線の傾き度合いが、ばね定数を表している。また、付勢ばね15には摩擦パッド10をキャリア2に取付けた段階で、初期設定荷重が付加されることになるが、この初期設定荷重の大小は付勢ばね15のばね定数に影響しないようになっている。このため、上記初期設定荷重にかかわらず、各特性線は図12の示された基準点から延びるようになっている。
これにより、本実施の形態では、付勢ばね15のばね定数k1を前記数1式の関係(0<k1<k)を満たすように、図12中の特性線18に沿った特性に設定し、付勢ばね15のみで制動トルクが伝達される間は、例えばk1 =7.2*104N/m程度まで付勢ばね15のばね定数k1を小さくする構成としている。なお、図12中、一点鎖線で示す特性線19は、特許文献1のアンチラトルスプリングのばね定数の特性を示すものである。この特性線19において、変曲点19A以前では片持ち状態のばね特性となっており、このばね定数は、上記ばね定数kよりも大きくなっている。したがって、摩擦パッドが上記固有振動数fで振動するキャリパとの共振を起こしてブレーキ鳴きが発生する可能性を有している。また、上記変曲点19A以降が両持ち状態のばね特性になっており、そのばね定数は、片持ち状態のばね定数よりも大きくなっている。このような両持ち状態のばね特性時のばね定数も上記ばね定数kよりも大きくなっている。したがって、摩擦パッドが上記固有振動数fで振動するキャリパとの共振を起こしてブレーキ鳴きが発生する可能性を有している。
そして、付勢ばね15のばね定数k1は比較的小さく設定されるため、ブレーキ操作後すぐに、摩擦パッド10(裏金11)の耳部11Aがキャリア2のトルク受面5(パッドスプリング14の案内板部14A)に当接してディスク1からの制動トルクをトルク受面5との間で受承する。耳部11Aがトルク受面5に当接して付勢ばね15が図10に示す如く大きく撓み変形しても、付勢ばね15は片持ち支持の状態を維持するようになっている。このため、付勢ばね15の見かけ上のばね定数k1 は、図12中に示す特性線18の特性線部18Aの如く立ち上がり、キャリア2の腕部2Aと付勢ばね15とを合成したばね定数k2 (図12中に示す特性線16)とほぼ平行な特性となる。したがって、付勢ばね15の鳴きに至る共振振動数を避けることができて、緩制動鳴きを含めた所謂ブレーキ鳴きの発生を抑えることができる。特に緩制動鳴きで低周波の音域のブレーキ鳴きは、車両のリアに取り付けられるディスクブレーキに起こりやすく、本実施形態の付勢ばね15をリア側のディスクブレーキに取付けると有効である。また、付勢ばね15のばね定数k1であれば、ブレーキ鳴きの要因としてディスク1を起振源と捉えた場合におけるディスク1の3直径節モードの固有振動数(約2000Hz)に対しても共振振動数を避けてブレーキ鳴きの発生を抑えることができるようになっている。このように、付勢ばね15のばね定数k1をキャリア2(取付部材)に取付けられた状態でキャリパ6が剛体として振動するときの固有振動数fと前記摩擦パッドの質量mとから求められるばね定数kよりも小さくすることで、他の起振源を要因とするブレーキ鳴きをも抑制することが可能となっている。
また、本実施の形態では、付勢ばね15を、ばね性を有する金属板(例えば、ステンレス鋼板)を曲げ加工することにより、上述の如く取付部15A、第1の延出部15B、折曲げ部15Cおよび第2の延出部15Dからなる一体物として形成しているので、付勢ばね15の板厚tを適正に調整することによって、付勢ばね15のばね定数k1 を前記数1式の関係を満たすように設定することができる。
また、付勢ばね15は、図5〜図7にも示すように耳部11Aの幅方向(ディスクの径方向)の中心位置よりも径方向外側寄りとなる位置に配置する構成としている。これにより、付勢ばね15は、耳部11Aの幅方向の中心位置よりも径方向外側寄りとなる位置で、制動トルクに伴うモーメントが正となる方向に摩擦パッド10を付勢することができ、制動時に偶力抜けが発生するのを抑制することができる。
また、付勢ばね15は、摩擦パッド10(裏金11)の耳部11A,11Bのうち車両前進時にディスク回入側となる耳部11Aと、これに対向するキャリア2のトルク受面5との間にコンパクトに配置することができる。そして、付勢ばね15の第2の延出部15Dは、車両後進時に耳部11Aの端面11A1 がトルク受面5(案内板部14A)に当接しても片持ち状態になるように形成しているため、付勢ばね15のばね定数k1 を、前述した数1〜数3式のように小さな値に容易に設定することができ、車両後退方向の制動時におけるブレーキ鳴き等の異音発生を抑制することができる。
また、摩擦パッド10の裏金11のうちライニング12が設けられた表面11F側に付勢ばね15を設ける構成としているので、車両スペースの有効活用を図ることができ、付勢ばね15に必要なばね定数、必要荷重(ばね力)の確保が容易となる。また、付勢ばね15を摩擦パッド10の裏金11に固定して設けることにより、付勢ばね15を摩擦パッド10に予め組付けたサブアッシー状態で、これらをキャリア2に取付けることができ、組立時の作業性を向上することができる。
特に、本実施の形態では、付勢ばね15を、裏金11の表面11F側に固定して取付けられる取付部15Aと、該取付部15Aの先端側から裏金11の裏面11G側に向けてディスク1から離間する方向に延出された第1の延出部15Bと、該第1の延出部15Bの先端側に形成され裏金11の裏面11G側でディスク1に近付く方向に向けて弧状に折曲げられた折曲げ部15Cと、該折曲げ部15Cの先端側からディスク1に近付く方向に延びキャリア2のトルク受面5側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部15Dとにより構成している。
このため、付勢ばね15のばね長を、取付部15A、第1の延出部15B、折曲げ部15Cおよび第2の延出部15Dによって十分な長さに設定することができ、付勢ばね15に必要なばね定数(前述した数1式、数2式)を容易に確保できる。そして、付勢ばね15としての必要荷重(ばね力)の確保が容易となり、付勢ばね15を摩擦パッド10に取付けた状態で車両スペースを有効に活用することができる。
そして、例えばステンレス鋼板等を用いて形成した付勢ばね15は、その先端(自由端)側に位置する第2の延出部15Dがキャリア2のトルク受面5にパッドスプリング14の案内板部14Aを介して弾性変形状態で弾接するから、両者の摺動接触を滑らかにすることができ、所謂ジャダー等の発生を良好に抑えることができる。
また、付勢ばね15の折曲げ部15Cは、例えば図9にも示す通り、裏金11の耳部11Aのうち端面11A1 よりもディスク周方向(矢示C方向)の内側となる位置で弧状に折曲げる構成としているので、キャリア2のパッドガイド4により形成される空間を有効に利用して付勢ばね15の折曲げ部15C等を容易に配置することができる。しかも、これにより付勢ばね15のばね長を十分に確保でき、その付勢力(ばね力)を安定させることができる。
さらに、付勢ばね15には、の先端部をディスク1と当接する当接部15D1としたので、単一部品である付勢ばね15によりライニング12の摩耗を検知する磨耗検知センサを兼用することができ、部品点数の低減化を図ることができる。
また、本発明の発明者は、付勢ばね15を磨耗検知センサとした場合の摩擦音を高めることについて、検討した結果、図11の示す回転方向Kの固有振動数ωrと上下方向Jの固有振動数ωtを近づけることで、自励振動が発生しやすくなり、検知音が高められるという知見を得た。
以下、図13に示す2自由度モデルの自励振動モデルを用いて、磨耗検知センサの振動メカニズムを検証した。図13は摩擦面上を進行する剛体棒の運動モデルを示す。これは剛体の単純棒が板上を進行する際の上下方向並振自由度と重心点回りの回転自由度を考慮している。以下に摩擦面上での単純棒の自励振動発生メカニズムを記す。
各記号は、以下を意味する。単純棒の質量:M単純棒の慣性モーメント:D単純棒の並進方向の支持剛性:H単純棒の回転方向の支持剛性:G単純棒と摩擦面との間の接触剛性:kc単純棒と摩擦面との間の摩擦係数:μ摩擦面からの垂直抗力:F重心位置から接触部の上下方向距離:p重心位置から接触部の進行方向距離:q単純棒の傾き:Φ単純棒の上下方向変位:y単純棒の回転角:θ並進方向,回転方向の運動方程式は、以下の通りとなる。
Figure 2014192495
Figure 2014192495
数式5は、以下のように求められる。摩擦面からの反力はフックの法則により接触剛性kcに変位量を掛け算すれば良い。並進について考えると,y変位するのでkc×yが並進運動によるばね力となる。次に回転について考えると,重心位置回りでθ回転したとすると(時計回りが正)単純棒の上昇方向に変位する。つまり線Zの分だけばねを伸ばすことになる。線Zの長さはq×tanθ≒qθとなる。並進では縮み、回転では伸び方向のため変位量はy−aθとなるため垂直抗力(反力)Fが数式5のように定まる。
回転運動の運動方程式(数4式の下段)の右辺は摩擦面からの反力Fおよび摩擦力μFによる重心点回りのモーメントである。
これを整理すると以下の通り。
Figure 2014192495
2自由度系において不安定振動(自励振動)が発生する条件は以下の2つ。(1)並進方向の固有振動数ωtと,回転方向の固有振動数ωrが一致(2)復元項の非対角要素の積が負よって以下の条件を満たした場合,本対象では自励振動が発生する。
Figure 2014192495
Figure 2014192495
つまり、数式7より,単純棒と摩擦面が離れている状態ではkcは零とみなせるため,ωtは√(H/M)となる。単純棒と摩擦面が接触する場合は接触剛性が高くなるにつれてωtは大きくなることがわかる。一方,ωrは単純棒と摩擦面と離れている場合は上記と同様にkcは零であり√(G/D)となる。単純棒と摩擦面が接触する場合は、数式8の条件により接触剛性が高くなるにつれてωrは小さくなることがわかる。つまり,自励振動を発生させるためには,接触(摩擦)前の状態では並進自由度の固有振動数ωtが回転自由度の固有振動数ωrより低く(非接触時:ωt<ωr),かつ,接触後各々の固有振動数が早期に一致するように,離間周波数を近づけておくことが求められる。
ここで、裏板に固定して取付けられる取付部と、該取付部に基端側が接続され前記ディスクから離間する方向に向けて弧状に形成され先端が前記ディスク側に向くように折曲げられた折曲げ部と、該折曲げ部の先端側から前記ディスクに近付く方向に延び前記取付部材側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部とからなる一般的な付勢ばねを、板厚一定の金属板からプレスやレーザー等によるカットで平面状に切り出し、塑性変形させて製作した場合、回転方向Kの固有振動数ωrより上下方向Jの固有振動数ωtが低くなるので、回転方向Kの固有振動数ωrを低めるか、または、上下方向Jの固有振動数ωtを高めるかすることで、固有振動を近づけることが可能となる。なお、回転方向Kの固有振動数ωrを低め、上下方向Jの固有振動数ωtを高めてもよい。
よって、上記実施の形態では、回転方向Kの剛性に最も影響を及ぼす境界部位15Eの剛性を低めることで、回転方向Kの固有振動数ωrを低めることとした。そのため、境界部位15Eの幅を狭くすることで、剛性を下げた。なお、製作工数はかかるが、境界部位15Eの板厚を薄くするなどにより剛性を下げてもよい。
また、上記実施の形態では、上下方向Jの剛性に最も影響を及ぼす折曲げ部15Cの剛性を高めることで、回転方向Kの固有振動数ωtを高めることとした。そのため、折曲げ部15Cの幅を広くすることで剛性を高めた。さらに、幅方向の両側は、長手方向に沿って90度折り曲げられた補強部15C1が形成され、弧状の曲率変化する方向の剛性をより高めた。なお、折曲げ部15Cの剛性を高めるには、15D2のようなリブを折曲げ部15Cに設けてもよく、また、肉厚を厚くするなどの方法もある。
なお、上記実施の形態では、付勢ばね15の基端側を裏金11の耳部11Aに固定して設け、付勢ばね15の先端側(延出部15D)をキャリア2のトルク受面5に弾接させる構成としている。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばパッドスプリングに付勢ばね(付勢手段)を一体に設け、その先端側(延出部)を摩擦パッドのトルク伝達部(耳部)側に弾性的に当接させる構成としてもよい。そして、この場合でも、付勢ばねを摩擦パッド10(裏金11)の耳部11Aとキャリア2のトルク受面5との間にコンパクトに配置する構成とすることが可能となる。
また、上記実施の形態では、キャリア2の腕部2Aに凹形状なすパッドガイド4を形成し、裏金11の嵌合部となる耳部11A、11Bを凸形状に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば摩擦パッドの裏金に凹形状をなす嵌合部を設け、取付部材の腕部には凸形状をなすパッドガイドを設ける構成としてもよいものである。
また、上記実施の形態では、コ字形状の凹溝からなるパッドガイド4の奥側壁面によりトルク受部となるトルク受面5を構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばパッドガイドから離間した位置(パッドガイドとは異なる位置)にトルク受けとしてのトルク受面を設ける構成とした型式のディスクブレーキにも適用できるものである。
次に、上記実施の形態に含まれる発明について述べる。付勢手段は、摩擦パッドの各トルク伝達部のうち車両前進時にディスク回入側となるトルク伝達部と取付部材のトルク受面との間に設けられ、前記トルク伝達部とトルク受面のうちいずれか一方に弾接する延出部により前記摩擦パッドをディスクの回出側に向けて付勢する構成としている。
これにより、摩擦パッドの各トルク伝達部のうち車両前進時にディスク回入側となるトルク伝達部と取付部材のトルク受面との間に付勢手段をコンパクトに配置することができ、摩擦パッドをディスクの回出側に向けて付勢する付勢力を安定させることができる。
また、付勢手段の延出部は、車両後進時にトルク伝達部が取付部材のトルク受面に当接するまで片持ち状態が維持されるように形成している。これにより、付勢手段のばね定数をより小さな値に容易に設定することができ、車両後退方向の制動時におけるブレーキ鳴き等の異音発生を低減することができる。
また、付勢手段は摩擦パッドの裏金に固定して設ける構成としている。これにより、付勢手段を摩擦パッドに予め組付けたサブアッシー状態で、取付部材に取付けることができ、組立時の作業性を向上することができる。
また、付勢手段は、摩擦パッドの裏金のうちライニングが設けられた一方の面側に固定して設ける構成としている。これにより、付勢手段に必要なばね定数、必要荷重(ばね力)の確保が容易となり、限られた車両のスペースを有効に活用することができる。
一方、付勢手段は、裏金の一方の面側に固定して取付けられる取付部と、該取付部に基端側が接続され前記裏金の一方の面とは反対側となる他方の面側に向けてディスクから離間する方向に延出された第1の延出部と、該第1の延出部の先端側に形成され前記裏金の他方の面側でディスクに近付く方向に向けて弧状に折曲げられた折曲げ部と、該折曲げ部の先端側からディスクに近付く方向に延び取付部材側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部とを有する構成としている。
これによって、付勢手段のばね長を、第1の延出部、折曲げ部および第2の延出部により十分に確保でき、付勢手段に必要なばね定数を容易に確保できると共に、必要荷重(ばね力)の確保が容易となり、限られた車両のスペースを有効に活用することができる。
また、付勢手段の折曲げ部は、裏金のトルク伝達部のうち取付部材のトルク受面に対向する端面よりもディスク周方向の内側となる位置で弧状に折曲げる構成としている。これにより、付勢手段のばね長を十分な長さに形成することができ、付勢力(ばね力)を安定させることができる上に、限られた車両スペースを有効に活用することができる。
一方、付勢手段は、摩擦パッドの裏金のうちライニングとは反対側となる他方の面側に固定して設ける構成としている。これにより、裏金の他方の面側に付勢手段を固定して設けることができ、裏金の一方の面側に設けるライニングの占有面積を大きくすることができる。
また、付勢手段は、取付部材に設けられるパッドスプリングに形成してなる構成としている。これにより、付勢手段をパッドスプリングに一体で形成することができ、部品点数を低減できると共に、取付け時の作業性を向上することができる。
1 ディスク 2 キャリア(取付部材) 2A 腕部 5 トルク受面 6 キャリパ 7 摺動ピン 10 摩擦パッド 11 裏金 12 ライニング(摩擦材) 13 凹溝 14 パッドスプリング 15 付勢ばね(付勢手段) 15A 取付部 15B 第1の延出部 15C 折曲げ部 15D 第2の延出部 15E 境界部位
上述した課題を解決するため、本発明によるディスクブレーキは、ディスクを跨いで車両に固定されて制動時のトルクを受けるトルク受面が形成され、前記ディスクの両面に対向して設けられる摩擦パッドを前記ディスクに押圧するキャリパが摺動可能に設けられる取付部材を有し、前記摩擦パッドは、前記取付部材にディスクの周方向両側で支持され、前記取付部材のトルク受面と当接する側面部にトルク伝達部が形成された裏金と、該裏金の一面側に固着して前記ディスクに当接して摩擦力を発生する摩擦材と、前記摩擦パッドをディスクの回出側に向けて付勢する付勢手段と、を有し、前記付勢手段は、前記裏金に固定して取付けられる取付部と、該取付部に基端側が接続され前記ディスクから離間する方向に延出された第1の延出部と、該第1の延出部の先端側に前記ディスクから離間する方向に向けて弧状に形成され先端が前記ディスク側に向くように折曲げられた折曲げ部と、該折曲げ部の先端側から前記ディスクに近付く方向に延び前記取付部材側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部とを有し、該第2の延出部の先端は、前記摩擦材が所定量摩耗したときに前記ディスクに当接するようになっており、前記折曲げ部は、前記第1の延出部と前記折曲げ部との第1の境界部位よりも剛性が高く設定されてなる
ここで、裏金に固定して取付けられる取付部と、該取付部に基端側が接続され前記ディスクから離間する方向に向けて弧状に形成され先端が前記ディスク側に向くように折曲げられた折曲げ部と、該折曲げ部の先端側から前記ディスクに近付く方向に延び前記取付部材側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部とからなる一般的な付勢ばねを、板厚一定の金属板からプレスやレーザー等によるカットで平面状に切り出し、塑性変形させて製作した場合、回転方向Kの固有振動数ωrより上下方向Jの固有振動数ωtが低くなるので、回転方向Kの固有振動数ωrを低めるか、または、上下方向Jの固有振動数ωtを高めるかすることで、固有振動を近づけることが可能となる。なお、回転方向Kの固有振動数ωrを低め、上下方向Jの固有振動数ωtを高めてもよい。

Claims (5)

  1. ディスクを跨いで車両に固定されて、制動時のトルクを受けるトルク受面が形成され、前記ディスクの両面に対向して設けられる摩擦パッドを前記ディスクに押圧するキャリパが前記ディスクの軸方向に摺動可能に設けられる取付部材を有し、
    前記摩擦パッドは、前記取付部材にディスクの周方向両側で支持され、前記取付部材のトルク受面と当接する側面部にトルク伝達部が形成された裏板と、該裏板の一面側に固着して前記ディスクに当接して摩擦力を発生する摩擦材と、前記摩擦パッドをディスクの回出側に向けて付勢する付勢手段と、を有し、
    前記付勢手段は、
    前記裏板に固定して取付けられる取付部と、
    該取付部に基端側が接続され前記ディスクから離間する方向に延出された第1の延出部と、
    該第1の延出部の先端側に前記ディスクから離間する方向に向けて弧状に形成され先端が前記ディスク側に向くように折曲げられた折曲げ部と、
    該折曲げ部の先端側から前記ディスクに近付く方向に延び前記取付部材側に弾性変形状態で弾接する第2の延出部とを有し、
    該第2の延出部の先端は、前記摩擦材が所定量摩耗したときに前記ディスクに当接するようになっており、
    前記折曲げ部は、前記第1の延出部と前記折曲げ部との境界部位よりも剛性が高く設定されてなることを特徴とするディスクブレーキ。
  2. 前記第1の境界部位は、前記第1の延出部よりも剛性が低く、前記折曲げ部は、前記第1の延出部よりも剛性が高く設定されてなることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ。
  3. 前記付勢手段は、金属板で構成され、
    前記第1の境界部位は、前記第1の延出部よりも幅が狭い幅狭部となっていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ。
  4. 前記付勢手段は、金属板で構成され、
    前記折曲げ部は、前記第1の延出部よりも幅が広い幅広部となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のディスクブレーキ。
  5. 前記付勢手段は、金属板で構成され、
    前記折曲げ部は、幅方向の少なくとも片側が長手方向に沿って折り曲げた補強部を有することを特徴とする請求項4に記載のディスクブレーキ。
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