JPWO2014171359A1 - 小麦グルテン分解物 - Google Patents
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Abstract
本発明の目的は水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できる小麦グルテン分解物を提供することである。分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できる。
Description
本発明は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できる小麦グルテン分解物に関する。また、本発明は、当該小麦グルテン分解物の製造方法、及び当該小麦グルテン分解物を利用した飲食品に関する。
カゼインペプチドや大豆ペプチド等のペプチドは、食品産業で幅広く利用されている。特に、これらのペプチドは、水中で泡を形成させる作用を示すため、泡立ちが求められる飲料に泡形成素材として配合することが試みられている。特に近年では、米やコーンスターチ等の麦芽以外の原料を多く使用した発泡酒、麦芽を一切使用しないビール様発泡性アルコール飲料(ビールのような風味を有する発泡性アルコール飲料)、ビールテイストを有する清涼飲料(いわゆる、ノンアルコールビールテイスト飲料)等が開発されており、これらの飲料では、消費者にとって魅力的なものにするために、泡立ち及び泡持ちが良好であることが、重要な外観品質となっている。また、このような飲料の外観品質を向上させる上で、添加されるペプチドには、泡立ち及び泡持ちが良好であることのみならず、水中で高い透明性を呈し、これを維持できることが要求される。
一方、小麦には、貯蔵タンパク質であるグルテンが含まれており、この小麦グルテンを使用した食品素材の開発が試みられている。例えば、特許文献1には、グルテンを酵素的に加水分解した後に、pH4〜5に調整して濾過することによって、グルタミンに富んだグルテン・フリー・ペプチドが得られることが開示されている。また、特許文献2には、小麦タンパク質等を予めpH3.6〜4.0において等電点沈殿処理した後に、生じた沈殿物を除去したポリペプチドを、ビール様発泡性アルコール飲料における泡形成素材として使用できることが開示されている。更に、特許文献3には、小麦タンパク質等の動植物性タンパク質に対して酵素を用いて部分加水分解し、pH2〜6で不溶物を除去した精製タンパク質分解物を気泡剤として、ガス入り飲料に添加できることが開示されている。しかしながら、特許文献1〜3の技術では、得られるペプチドは、水に溶解させた際の透明性が劣る、又は透明性を経時的に損なわれるという欠点がある。
このように、従来報告されている小麦グルテンから得られた食品素材では、水に溶解させた際の「泡立ち及び泡持ち」と「透明性の維持」の双方を満足させることができていない。このような従来技術を背景として、新たな食品素材、特に飲料の泡形成素材として、水に溶解させた際に、優れた泡立ち及び泡持ちと、透明性の維持を両立できる小麦グルテン分解物の開発が切望されている。
本発明者等は、小麦グルテン分解物の試作と評価を繰り返して鋭意検討を行ったところ、優れた泡立ち及び泡持ちを備えるという特性と、透明性を維持させるという特性を両立させることは、非常に困難であるという課題に直面した。これは、優れた泡立ち及び泡持ちを備える小麦グルテン分解物は、比較的分解度の低い、つまり分子量の大きなペプチドである必要があるものの、そのような分子量の大きなペプチドは通常、不溶性成分が多く、仮に濾過により不溶性成分を除去したとしても、その濾液の安定性が悪く、保存すると不溶物を形成するためである。
そこで、本発明は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できる小麦グルテン分解物を提供することを目的とする。更に、本発明は、当該小麦グルテン分解物を利用した飲食品を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できることを見出した。また、小麦グルテンを酵素によって分解した後に所定の熱負荷量となるように加熱処理し、次いで水溶性画分を回収することにより、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できる小麦グルテン分解物が得られることを見出した。更に、当該小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物を併用すると、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちがより一層向上することを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 小麦グルテンを加水分解した小麦グルテン分解物であって、
分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、
且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない、
ことを特徴とする小麦グルテン分解物。
項2. 下記第1工程〜第3工程を経て製造される、項1に記載の小麦グルテン分解物:
小麦グルテンを酵素処理によって加水分解する第1工程。
前記第1工程で得られた加水分解物を、70℃以上の加熱条件で、下記式(1)で算出されるΔF70℃値が7〜250となるように加熱処理する第2工程。
前記第2工程で得られた加熱処理物から、水溶性画分を回収する第3工程。
項3. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物を含む、飲食品。
項4. 更に、大豆タンパク質分解物を含む、項3に記載の飲食品。
項5. 発泡酒、ビール様発泡性アルコール飲料、炭酸アルコール飲料、ビールテイストを有する清涼飲料、又は炭酸飲料である、項3又は4に記載の飲食品。
項6. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物を含む、泡形成用添加剤。
項7. 更に大豆タンパク質分解物を含む、項6に記載の泡形成用添加剤。
項8. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物の、飲食品において泡を形成させるための使用。
項9. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の、飲食品において泡を形成させるための使用。
項10. 下記第1工程〜第3工程を含む、小麦グルテン分解物の製造方法:
小麦グルテンを酵素処理によって加水分解する第1工程。
前記第1工程で得られた加水分解物を、70℃以上の加熱条件で、下記式(1)で算出されるΔF70℃値が7〜250となるように加熱処理する第2工程。
項1. 小麦グルテンを加水分解した小麦グルテン分解物であって、
分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、
且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない、
ことを特徴とする小麦グルテン分解物。
項2. 下記第1工程〜第3工程を経て製造される、項1に記載の小麦グルテン分解物:
小麦グルテンを酵素処理によって加水分解する第1工程。
前記第1工程で得られた加水分解物を、70℃以上の加熱条件で、下記式(1)で算出されるΔF70℃値が7〜250となるように加熱処理する第2工程。
項3. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物を含む、飲食品。
項4. 更に、大豆タンパク質分解物を含む、項3に記載の飲食品。
項5. 発泡酒、ビール様発泡性アルコール飲料、炭酸アルコール飲料、ビールテイストを有する清涼飲料、又は炭酸飲料である、項3又は4に記載の飲食品。
項6. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物を含む、泡形成用添加剤。
項7. 更に大豆タンパク質分解物を含む、項6に記載の泡形成用添加剤。
項8. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物の、飲食品において泡を形成させるための使用。
項9. 項1又は2に記載の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の、飲食品において泡を形成させるための使用。
項10. 下記第1工程〜第3工程を含む、小麦グルテン分解物の製造方法:
小麦グルテンを酵素処理によって加水分解する第1工程。
前記第1工程で得られた加水分解物を、70℃以上の加熱条件で、下記式(1)で算出されるΔF70℃値が7〜250となるように加熱処理する第2工程。
本発明の小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際の泡立ちが良好で、しかも一旦形成した泡を長期間持続させることができる。また、本発明の小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際に高い透明性を呈し、更にその透明性を安定に維持させることができるので、透明な色調を呈する飲食品に使用しても、当該飲食品の外観色調を安定に維持させることができる。このように、本発明の小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できるので、発泡酒、ビール様発泡性アルコール飲料、ビールテイストを有する清涼飲料等、泡形成と透明性が求められる飲料の泡形成用添加剤として好適に使用できる。
なお、本明細書において、「泡立ち」とは、水に溶解させて振盪した際に泡を形成する性質を指し、「泡持ち」とは一旦形成された泡を持続させる性質を指す。
1.小麦グルテン分解物
本発明の小麦グルテン分解物は、小麦グルテンを加水分解した小麦グルテン分解物であって、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まないことを特徴とする。以下、本発明の小麦グルテン分解物について詳述する。
本発明の小麦グルテン分解物は、小麦グルテンを加水分解した小麦グルテン分解物であって、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まないことを特徴とする。以下、本発明の小麦グルテン分解物について詳述する。
[分子量]
本発明の小麦グルテン分解物は、ペプチドの総量当たり、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含有する。水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちと透明性の維持効果をより一層向上させるという観点から、本発明の小麦グルテン分解物における分子量3,000以上のペプチドの割合として、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上が挙げられる。
本発明の小麦グルテン分解物は、ペプチドの総量当たり、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含有する。水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちと透明性の維持効果をより一層向上させるという観点から、本発明の小麦グルテン分解物における分子量3,000以上のペプチドの割合として、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65重量%以上が挙げられる。
また、本発明の小麦グルテン分解物は、分子量3,000以上のペプチドの割合が、前述する範囲を満たすことを限度として、その分子量分布については特に制限されないが、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちと透明性の維持効果をより一層向上させるという観点から、以下の分子量分布を充足していることが望ましい。
分子量3,000未満のペプチドの割合:通常45重量%以下、好ましくは40%以下、更に好ましくは0〜35%。
分子量3,000以上且つ80,000未満のペプチドの割合:通常55重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65〜100重量%。
分子量3,000以上且つ80,000未満のペプチドの内、分子量3,000以上、10,000以下のペプチドが占める割合(分子量3,000以上、10,000以下のペプチドを100重量%と換算):通常60重量%以上、好ましくは65重量%以上、更に好ましくは70〜100重量%。
分子量3,000未満のペプチドの割合:通常45重量%以下、好ましくは40%以下、更に好ましくは0〜35%。
分子量3,000以上且つ80,000未満のペプチドの割合:通常55重量%以上、好ましくは60重量%以上、更に好ましくは65〜100重量%。
分子量3,000以上且つ80,000未満のペプチドの内、分子量3,000以上、10,000以下のペプチドが占める割合(分子量3,000以上、10,000以下のペプチドを100重量%と換算):通常60重量%以上、好ましくは65重量%以上、更に好ましくは70〜100重量%。
また、本発明の小麦グルテン分解物の平均分子量については、分子量3,000以上のペプチドの割合が前述する範囲を満たすことを限度として、特に制限されない。
なお、本発明において、小麦グルテン分解物の分子量は、ペプチド精製用のゲル濾過クロマトグラフィーにて測定され、分子量12384(Cytochrome C)、分子量6512(Aprotinin)、及び分子量1355(Vitamin B12)を用いた検量線から算出される値である。詳細な設定条件の一例は、実施例の欄に示す通りである。
[熱不溶化成分]
本発明の小麦グルテン分解物は、105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分(「熱不溶化成分」と略記することもある)を実質的に含まないことが組成上の特徴となっている。小麦グルテンを加水分解した分解物において、このように熱不溶化成分を実質的に含まず、分子量3,000以上のペプチドの割合が前記範囲を充足することによって、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持させることが可能になる。
本発明の小麦グルテン分解物は、105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分(「熱不溶化成分」と略記することもある)を実質的に含まないことが組成上の特徴となっている。小麦グルテンを加水分解した分解物において、このように熱不溶化成分を実質的に含まず、分子量3,000以上のペプチドの割合が前記範囲を充足することによって、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持させることが可能になる。
ここで、「105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない」とは、小麦グルテン分解物10gに水90gを加え攪拌して、5℃/分の速度で105℃まで昇温し、105℃で30分間維持した後に、5℃/分の速度で70℃まで降温させ、その後25℃まで速やかに冷却し、撹拌して速やかに測定した濁度(610nmでの吸光度、光路長10mm)が、0.6以下であることを意味する。透明性の維持効果をより一層高めるという観点から、当該濁度が好ましくは0.55以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.45以下が挙げられる。
[酸不溶化成分]
本発明の小麦グルテン分解物の好適な組成の一例として、酸性条件下で不溶化する成分(「酸不溶化成分」と略記することもある)を実質的に含まないことが挙げられる。このように酸不溶化成分を実質的に含まない場合には、水に溶解させた際の透明性の維持効果を更に高めることができる。
本発明の小麦グルテン分解物の好適な組成の一例として、酸性条件下で不溶化する成分(「酸不溶化成分」と略記することもある)を実質的に含まないことが挙げられる。このように酸不溶化成分を実質的に含まない場合には、水に溶解させた際の透明性の維持効果を更に高めることができる。
ここで、「酸性条件下で不溶化する成分を実質的に含まない」とは、小麦グルテン分解物10gに水90gを加え、塩酸でpH4に調整した後に、撹拌して速やかに測定した濁度(610nmでの吸光度、光路長10mm)が、0.6以下であることを意味する透明性の維持効果をより一層高めるという観点から、当該濁度が好ましくは0.55以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.45以下が挙げられる。
[泡形成特性]
本発明の小麦グルテン分解物は、前述する分子量や組成を満たすことにより、水に溶解させた際に優れた泡立ち及び泡持ちを示すという泡形成特性を備えている。
本発明の小麦グルテン分解物は、前述する分子量や組成を満たすことにより、水に溶解させた際に優れた泡立ち及び泡持ちを示すという泡形成特性を備えている。
本発明の小麦グルテン分解物が備える泡形成特性としては、具体的には、下記泡形成試験に供した際に、振盪直後に10mL以上の体積の泡が形成され、5分間静置しても10mL以上の体積の泡が維持できる特性が挙げられる。また、本発明の小麦グルテン分解物が備える泡形成特性の好適な一例として、下記泡形成試験に供した際に、振盪直後に泡が形成され、5分間静置しても12mL以上の体積の泡が維持できる特性が挙げられる。
泡形成試験
小麦グルテン分解物を0.5重量%となるように精製水に混合し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備する。当該小麦グルテン分解物の水溶液の液温を25℃にした後に、100mL容のメスシリンダー(底面積28cm2)に25mLを泡立たないように入れる。次いで、メスシリンダーの上部を手で覆った状態で、1秒間で1往復する速度でメスシリンダーを上下に反転させて、合計10秒間、小麦グルテン分解物の水溶液を振盪させる。浸透後に、25℃の温度条件でメスシリンダーを静置する。
泡形成試験
小麦グルテン分解物を0.5重量%となるように精製水に混合し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備する。当該小麦グルテン分解物の水溶液の液温を25℃にした後に、100mL容のメスシリンダー(底面積28cm2)に25mLを泡立たないように入れる。次いで、メスシリンダーの上部を手で覆った状態で、1秒間で1往復する速度でメスシリンダーを上下に反転させて、合計10秒間、小麦グルテン分解物の水溶液を振盪させる。浸透後に、25℃の温度条件でメスシリンダーを静置する。
[透明性]
本発明の小麦グルテン分解物は、前述する分子量や組成を満たすことにより、中性域の水溶液に溶解させた際に、白濁等が生じるのを抑制して高い透明性を備えさせることができ、しかもその高い透明性を長時間維持できるという特性を備えている。
本発明の小麦グルテン分解物は、前述する分子量や組成を満たすことにより、中性域の水溶液に溶解させた際に、白濁等が生じるのを抑制して高い透明性を備えさせることができ、しかもその高い透明性を長時間維持できるという特性を備えている。
本発明の小麦グルテン分解物が備える「透明性」としては、具体的には、下記透明性試験(pH7)に供した際に、調製直後の透過率(%T)と保存後の透過率(%T)が共に90%以上を示す特性が挙げられる。また、本発明の小麦グルテン分解物が備える透明性の好適な一例として、下記透明性試験(pH7)に供した際に、調製直後の透過率(%T)が91%以上であり、且つ保存後の透過率(%T)が90%以上を示す特性が挙げられる。
透明性試験(pH7)
小麦グルテン分解物を8.5重量%となるように精製水に混合し、塩酸にてpHを7に調整し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備する。当該小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定する(調製直後の透過率(%T))。
また、前記小麦グルテン分解物の水溶液を0.45μmフィルターで処理した後、25℃で24時間保存する。保存後に、当該小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定する(保存後の透過率(%T))。
透明性試験(pH7)
小麦グルテン分解物を8.5重量%となるように精製水に混合し、塩酸にてpHを7に調整し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備する。当該小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定する(調製直後の透過率(%T))。
また、前記小麦グルテン分解物の水溶液を0.45μmフィルターで処理した後、25℃で24時間保存する。保存後に、当該小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定する(保存後の透過率(%T))。
更に、本発明の小麦グルテン分解物において、幅広いpH領域の水溶液に対して透明性を維持させることを可能にするために、前記透明性試験(pH7)における透過率を充足することに加え、下記透明性試験(pH4)に供した際に、調製直後の透過率(%T)と保存後の透過率(%T)が共に90%以上を示す特性を備えていることが好ましく、更に記透明性試験(pH4)に供した際に、調製直後の透過率(%T)が91%以上であり、且つ保存後の透過率(%T)が90%以上を示す特性を備えていることが更に好ましい。
透明性試験(pH4)
小麦グルテン分解物を8.5重量%となるように精製水に混合し、塩酸にてpHを4に調整し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備する。当該小麦グルテン分解物の水溶液を使用すること以外は、前記「透明性試験(pH7)」と同様の方法で、調製直後の透過率(%T)及び保存後の透過率(%T)を測定する。
透明性試験(pH4)
小麦グルテン分解物を8.5重量%となるように精製水に混合し、塩酸にてpHを4に調整し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備する。当該小麦グルテン分解物の水溶液を使用すること以外は、前記「透明性試験(pH7)」と同様の方法で、調製直後の透過率(%T)及び保存後の透過率(%T)を測定する。
[用途]
本発明の小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性の維持が可能になっているので、泡形成と透明性が求められる飲食品における泡形成用添加剤として使用できる。
本発明の小麦グルテン分解物は、水に溶解させた際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性の維持が可能になっているので、泡形成と透明性が求められる飲食品における泡形成用添加剤として使用できる。
また、本発明の小麦グルテン分解物は、大豆タンパク質分解物と併用して、泡形成用添加剤として使用すると、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちをより一層向上させることもできる。即ち、本発明の小麦グルテン分解物及び大豆タンパク質分解物の混合物は、前記泡形成用添加剤として好適に使用される。
本発明の小麦グルテン分解物と併用される大豆タンパク質分解物については、大豆タンパク質が含まれている大豆由来原料を分解することによって得ることができる。前記大豆由来原料としては、大豆由来のタンパク質が含まれていることを限度として特に制限されず、精製された大豆タンパク質であってもよく、また大豆タンパク質の濃縮物又は脱脂大豆粉であってもよい。また、大豆由来原料を分解する方法としては、大豆タンパク質を部分的に加水分解分解し得ることを限度として特に制限されず、例えば、熱や圧力による分解、酸やアルカリによる分解、酵素による分解等が挙げられる。
本発明の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物を併用する場合、それらの混合比については、特に制限されないが、透明性を維持しつつ、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちを効果的に一層向上させるという観点から、本発明の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の総量を100重量部とした場合に、大豆タンパク質分解物が5〜50重量部、好ましくは10〜50重量部となる混合比が挙げられる。
本発明の小麦グルテン分解物が添加される飲食品としては、特に制限されないが、例えば、ビール、発泡酒(麦芽又は麦を原料の一部とした発泡性アルコール飲料)、ビール様発泡性アルコール飲料(ビールのような風味を有する発泡性アルコール飲料)、ビールテイストを有する清涼飲料(所謂、ノンアルコールビールテイスト飲料)、スパークリングワイン、炭酸飲料(炭酸入りエネルギードリンク、炭酸清涼飲料等)、炭酸アルコール飲料(チューハイ、カクテル等)等の飲料が挙げられる。これらの中でも、発泡酒、ビール様発泡性アルコール飲料、ビールテイストを有する清涼飲料は、ビールに近い外観品質を備えさせるために、泡形成と透明性が強く求められる飲料であり、本発明の小麦グルテン分解物の添加対象として特に好適といえる。更に、炭酸入りエネルギードリンクについても、泡形成と透明性が強く求められる飲料であり、本発明の小麦グルテン分解物の添加対象として特に好適と言える。なお、ここでいう「炭酸入りエネルギー飲料」とは、主に100mlあたり、炭水化物が4g以上、エネルギーが15kcal以上である炭酸を含む飲料であり、更にカフェインを含むこともある。
本発明の小麦グルテン分解物の飲食品への添加量については、飲食品の種類、付与すべき泡立ちや泡持ちの程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01〜20重量%が挙げられる。より具体的には、飲料に本発明の小麦グルテン分解物を添加する場合であれば、その添加量として、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%が挙げられる。
2.小麦グルテン分解物の製造方法
本発明の小麦グルテン分解物の製造方法については、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃、で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない小麦グルテンの加水分解物が得られることを限度として、いかなる製造方法であってもよいが、好適な一例として、下記第1工程〜第3工程を含む製造方法が挙げられる:
第1工程:小麦グルテンを酵素処理によって加水分解する工程。
第2工程:前記第1工程で得られた加水分解物を、70℃以上の加熱条件で、下記式(1)で算出されるΔF70℃値が7〜250となるように加熱処理する第2工程。
第3工程:前記第2工程で得られた加熱処理物から、水溶性画分を回収する工程。
本発明の小麦グルテン分解物の製造方法については、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃、で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない小麦グルテンの加水分解物が得られることを限度として、いかなる製造方法であってもよいが、好適な一例として、下記第1工程〜第3工程を含む製造方法が挙げられる:
第1工程:小麦グルテンを酵素処理によって加水分解する工程。
第2工程:前記第1工程で得られた加水分解物を、70℃以上の加熱条件で、下記式(1)で算出されるΔF70℃値が7〜250となるように加熱処理する第2工程。
以下、前記第1工程〜第3工程を経て本発明の小麦グルテン分解物を製造する方法について、詳細に説明する。
[第1工程]
第1工程では、小麦グルテンに対して酵素処理を行うことによって、小麦グルテンの加水分解物を得る。原料として用いる小麦グルテンは、小麦から調製したものをそのまま直接使用することができ、その組成及び調製法の如何を問わない。また、小麦グルテンは、生グルテンの状態であっても、これを乾燥したものでもよい。更に、小麦グルテンは、予め化学的処理や酵素処理を施したものを使用することもできる。
第1工程では、小麦グルテンに対して酵素処理を行うことによって、小麦グルテンの加水分解物を得る。原料として用いる小麦グルテンは、小麦から調製したものをそのまま直接使用することができ、その組成及び調製法の如何を問わない。また、小麦グルテンは、生グルテンの状態であっても、これを乾燥したものでもよい。更に、小麦グルテンは、予め化学的処理や酵素処理を施したものを使用することもできる。
第1工程において、小麦グルテンの加水分解に使用される酵素としては、特に制限されないが、アルカリプロテアーゼ、中性プロテアーゼ、酸性プロテアーゼのいずれであってもよく、例えば、ペプシン、トリプシン、キモトリシプシン、パパイン、ブロメライン等のプロテアーゼが挙げられる。これらの酵素は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、第1工程における酵素処理では、前記プロテアーゼと共に、アミラーゼを併用してもよい。小麦グルテンにプロテアーゼを作用させる際に、アミラーゼを併用することによって、小麦グルテンに含まれている澱粉質や繊維質等の不純物が分解除去でき、最終的に得られるペプチドの純度が高められることがある。
第1工程において、小麦グルテンに対して酵素処理を行う条件については、使用する酵素の種類や活性等に応じて適宜設定すればよい。具体的には、小麦グルテンが5〜20重量%程度となるように水に分散させて、プロテアーゼをその種類や活性程度に応じて適量添加し、使用する酵素が活性を示すpHに調整して、使用する酵素が活性を示す温度条件で、所定時間インキュベートする方法が挙げられる。
第1工程における酵素処理が進行し過ぎると、最終的に得られる小麦グルテン分解物において分子量3,000以上のペプチドが55重量%未満になり、酵素処理が適度に進行していなければ、最終的に得られる小麦グルテン分解物が水に溶解した際に透明性を維持できなくなる。そのため、第1工程における酵素処理は、使用する酵素の種類や活性等に応じて酵素処理の時間や温度条件を適宜設定し、最終的に得られる小麦グルテン分解物において分子量3,000以上のペプチドが55重量%以上になるように調整することを要する。使用する酵素の種類等に応じて、酵素処理における加水分解の程度を制御することは、当業者であれば適宜設定可能な事項である。
なお、後述する第2工程における加熱処理によって第1工程で使用した酵素は失活するので、第1工程後は、酵素失活のみを目的とした加熱処理は行わなくてもよい。
[第2工程]
第2工程では、前記第1工程で得られた加水分解物を、熱負荷が所定範囲となるように加熱処理する。
第2工程では、前記第1工程で得られた加水分解物を、熱負荷が所定範囲となるように加熱処理する。
第2工程における加熱処理は、前記第1工程で得られた加水分解物が水中に溶解又は懸濁している状態で行われる。
第2工程における加熱処理は、70℃以上の加熱条件で、且つ下記式(1)で算出されるΔ70℃F値が7〜250の範囲となるように設定される。このように70℃以上であり且つ、所定の熱負荷を与えることにより、最終的に得られる小麦グルテン分解物から透明性を損なわせる要因となるペプチドを沈降させつつ、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちを良好にするペプチドを溶解した状態で維持さることができる。ここで、式(1)中、F値(70℃超)とは、70℃超の温度領域における、基準温度を121.1℃として規格化した場合の加熱時間(分)に相当するF値である。また、F値(70℃超内70℃以下相当分)とは、F値(70℃超)の中で、70℃以下の温度によって負荷されているF値相当分である。当該加熱処理の条件は、一般的なペプチドの製造工程では、通常採用されていない特殊な範囲にある。
前記F値(70℃超)は、70℃超温度域での昇温時に負荷されたF値(70℃超)、70℃超での最高到達温度時に負荷されたF値(70℃超)、及び70℃超温度域での降温時に負荷されたF値(70℃超)の合計値として算出される。
ここで、昇温時に負荷されたF値(70℃超)は、昇温時間を1分毎に分けて、1分間での平均温度に基づいて算出したF値の合計値として求められる。即ち、昇温時間を1分毎に分けて、当該1分間における最小温度と最大温度の平均温度を算出し、当該平均温度を用いて当該1分間で負荷されているF値を[{10(t-121.1)/33}×1;t=平均温度]を求める。この昇温時の1分毎のF値の合計値を昇温時のF値(70℃超)とする。例えば、最高到達温度を100℃、70℃から100℃までの昇温速度を10℃/分と設定した場合には、昇温時のF値(70℃超)は、下記の3つに分けられた各F値(70℃超)の合計値(0.04+0.08+0.16=0.28)となる。
70℃から80℃まで昇温する1分間のF値(70℃超):{10(75-121.1)/33}×1=0.04
80℃から90℃まで昇温する1分間のF値(70℃超):{10(85-121.1)/33}×1=0.08
90℃から100℃まで昇温する1分間のF値(70℃超):{10(95-121.1)/33}×1=0.16
70℃から80℃まで昇温する1分間のF値(70℃超):{10(75-121.1)/33}×1=0.04
80℃から90℃まで昇温する1分間のF値(70℃超):{10(85-121.1)/33}×1=0.08
90℃から100℃まで昇温する1分間のF値(70℃超):{10(95-121.1)/33}×1=0.16
また、最高到達温度時に負荷されたF値(70℃超)は、[{10(t-121.1)/33}×1;t=最高到達温度]から求められる。
また、降温時に負荷されたF値(70℃超)は、前記昇温時に負荷されたF値(70℃超)の場合と同様に、降温時間を1分毎に分けて、1分間での平均温度に基づいて算出したF値の合計値として求められる。
例えば、前記Δ70℃F値は、加熱処理において、最高到達温度を105℃で60分間として、70℃から105℃までの昇温速度を5℃/分、105℃から70℃までの降温速度を5℃/分に設定した場合には、以下のように算出される。
F値(70℃超)=[昇温時(70℃から105℃)に負荷されたF値(70℃超)]+[105℃(最高到達温度)でのF値(70℃超)]+[降温時(105℃から70℃)に負荷されたF値(70℃超)]=0.85+19.5+0.85=21.2
F値(70℃超内70℃以下相当分)={10(70-121.1)/33}×[(105−70)/5+60+(105−70)/5]=2.1
ΔF70℃値=21.2−2.1 =19.1
F値(70℃超)=[昇温時(70℃から105℃)に負荷されたF値(70℃超)]+[105℃(最高到達温度)でのF値(70℃超)]+[降温時(105℃から70℃)に負荷されたF値(70℃超)]=0.85+19.5+0.85=21.2
F値(70℃超内70℃以下相当分)={10(70-121.1)/33}×[(105−70)/5+60+(105−70)/5]=2.1
ΔF70℃値=21.2−2.1 =19.1
水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちと、透明性の維持効果をより一層向上させるという観点から、第2工程における加熱処理の熱負荷条件として、前記ΔF70℃値として好ましくは8〜245、更に好ましくは10〜240となる範囲が挙げられる。
また、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちと、透明性の維持効果を効率的に備えさせるという観点から、第2工程における加熱処理の好適な例として、90℃以上の加熱条件で、且つ下記式(2)で算出されるΔF90℃値が5〜240、好ましくは6〜235、更に好ましくは7〜230となる熱負荷条件が挙げられる。ここで、F値(90℃超)とは、90℃超の温度領域における、基準温度を121.1℃として規格化した場合の加熱時間(分)に相当するF値である。また、F値(90℃超内90℃以下相当分)とは、F値(90℃超)の中で、90℃以下の温度によって負荷されているF値相当分である。ΔF90℃値は、前記ΔF70℃値の場合と同様の手法で算出される。
第2工程で行われる加熱処理は、前記熱負荷条件を満たすように設定される限り、その温度条件や加熱時間については特に制限されないが、例えば、最高到達温度70〜150℃で1分〜2000時間、好ましくは最高到達温度100〜140℃で1〜1200分間、更に好ましくは最高到達温度105〜135℃で1〜840分間が挙げられる。また、前記最高到達温度への昇温速度及び降温速度についても、特に制限されず、最高到達温度とその保持時間を勘案し、最終的に前記熱負荷条件を満たすように適宜設定すればよいが、例えば、昇温速度として80℃/秒〜40℃/時間、好ましくは80℃/秒〜50℃/時間が挙げられ、降温速度として80℃/秒〜40℃/時間、好ましくは80℃/秒〜50℃/時間が挙げられる。
第2工程で行われる加熱処理は、静置型、移送型、攪拌型等の公知の加熱装置を使用して行うことができる。
なお、第2工程に先立って、第2工程に供する加水分解物のpH調整を行ってもよく、また第3工程に先立って、第2工程後の加熱処理物のpH調整を行ってもよい。例えば、第1工程において、酸性プロテアーゼを使用して酸性領域で酵素処理を行った場合には、第2工程に供する加水分解物又は第3工程に供する加熱処理物のpHを6〜8、好ましくは6.5〜7.5に調整しておくことが好ましい。また、例えば、第1工程において、中性プロテアーゼ及び/又はアルカリ性プロテアーゼを使用して中性〜アルカリ性領域で酵素処理を行った場合には、第2工程に供する加水分解物又は第3工程に供する加熱処理物のpHを4〜6、好ましくは4〜5に調整しておくことが好ましい。このように、第2工程に供する加水分解物又は第3工程に供する加熱処理物のpH調整を行うことにより、幅広いpHの水溶液に溶解しても透明性を維持できる小麦グルテン分解物を得ることが可能になる。
[第3工程]
第3工程では、前記第2工程で得られた加熱処理物から、水溶性画分を回収する。斯して水溶性画分を回収することによって、本発明の小麦グルテン分解物が得られる。
第3工程では、前記第2工程で得られた加熱処理物から、水溶性画分を回収する。斯して水溶性画分を回収することによって、本発明の小麦グルテン分解物が得られる。
前記第2工程で得られた加熱処理物から水溶性画分を回収する方法としては、特に制限されないが、例えば、濾過、遠心分離等が挙げられる。これらの回収方法の中でも、濾過は、工業的にも簡便に実施できるため好ましい。
斯して得られた水溶性画分は、必要に応じて、濃縮工程や、凍結乾燥、熱風乾燥、スプレードライ等の乾燥工程に供してもよい。
また、本発明の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物を併用する場合、水に溶解させた際の泡立ち及び泡持ちを効果的に一層向上させるという観点から、前述する第1工程〜第3工程を含む製造方法において、第1工程で小麦グルテンと大豆タンパク質が含まれている大豆由来原料の混合物を酵素処理に供した後に、前述する第2工程及び第3工程に供することにより、本発明の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物を製造することが望ましい。勿論、前述する製造方法によって得られた本発明の小麦グルテン分解物と、別途準備した大豆タンパク質分解物とを混合して使用してもよく、また、前述する製造方法によって得られた本発明の小麦グルテン分解物と、別途準備した大豆タンパク質分解物をそれぞれ別個に飲食品に添加して使用してもよい。
以下に、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
試験例1:泡立ち及び泡持ちの評価
1.小麦グルテン分解物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、表1に示すプロテアーゼを表1に記載の酵素濃度で添加し、水温を55℃まで加熱し水酸化ナトリウムでpHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。次いで、加水分解反応後の溶液を、最高到達温度105℃で60分間、70℃から105℃までの昇温速度を5℃/分、105℃から70℃までの降温速度を5℃/分に設定して加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、吸引ろ過して不溶物を除去した後に、0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物を得た。
1.小麦グルテン分解物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、表1に示すプロテアーゼを表1に記載の酵素濃度で添加し、水温を55℃まで加熱し水酸化ナトリウムでpHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。次いで、加水分解反応後の溶液を、最高到達温度105℃で60分間、70℃から105℃までの昇温速度を5℃/分、105℃から70℃までの降温速度を5℃/分に設定して加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、吸引ろ過して不溶物を除去した後に、0.45μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物を得た。
2.小麦グルテン分解物の性能評価
得られた小麦グルテン分解物について、下記の方法で、分子量分布と、泡立ち及び泡持ちの評価を行った。
得られた小麦グルテン分解物について、下記の方法で、分子量分布と、泡立ち及び泡持ちの評価を行った。
<分子量分布の測定>
20mMリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて希釈調製した小麦グルテン分解物の水溶液を、0.45μmのフィルターを用いてろ過した。得られたろ液を、Superdex peptide 10/300 GL(GE Healthcare)にロードし、前記リン酸緩衝液を用いて流速0.5mL/分で溶出させた。小麦グルテン分解物の検出は214nmの吸光度を測定することにより行った。また、分子量マーカーとして、分子量12384(Cytochrome C)、分子量6512(Aprotinin)、及び分子量1355(Vitamin B12)を用いて検量線を作成し、当該検量線に基づいて小麦グルテン分解物の分子量を求めた。
20mMリン酸緩衝液(pH7.2)を用いて希釈調製した小麦グルテン分解物の水溶液を、0.45μmのフィルターを用いてろ過した。得られたろ液を、Superdex peptide 10/300 GL(GE Healthcare)にロードし、前記リン酸緩衝液を用いて流速0.5mL/分で溶出させた。小麦グルテン分解物の検出は214nmの吸光度を測定することにより行った。また、分子量マーカーとして、分子量12384(Cytochrome C)、分子量6512(Aprotinin)、及び分子量1355(Vitamin B12)を用いて検量線を作成し、当該検量線に基づいて小麦グルテン分解物の分子量を求めた。
<泡形成試験>
小麦グルテン分解物を0.5重量%となるように精製水に混合し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備した。当該小麦グルテン分解物の水溶液の液温を25℃にした後に、100mL容のメスシリンダー(底面積28cm2)に25mLを泡立たないように入れた。次いで、メスシリンダーの上部を手で覆った状態で、1秒間で1往復する速度でメスシリンダーを上下に反転させて、合計10秒間、小麦グルテン分解物の水溶液を振盪させた。浸透後に、25℃の温度条件でメスシリンダーを静置し、静置5分後の泡の体積を測定した。
小麦グルテン分解物を0.5重量%となるように精製水に混合し、小麦グルテン分解物の水溶液を準備した。当該小麦グルテン分解物の水溶液の液温を25℃にした後に、100mL容のメスシリンダー(底面積28cm2)に25mLを泡立たないように入れた。次いで、メスシリンダーの上部を手で覆った状態で、1秒間で1往復する速度でメスシリンダーを上下に反転させて、合計10秒間、小麦グルテン分解物の水溶液を振盪させた。浸透後に、25℃の温度条件でメスシリンダーを静置し、静置5分後の泡の体積を測定した。
3.結果
得られた結果を表1及び2に示す。この結果から、分子量3,000以上のペプチドの割合が55重量%以上である小麦グルテン分解物は、水に溶解した際に優れた泡立ちと泡持ちを示すことが確認された(実施例1及び2)。一方、分子量3,000以上の割合が55重量%に満たない小麦グルテン分解物では、水に溶解した際の泡立ちと泡持ち不十分であった。
得られた結果を表1及び2に示す。この結果から、分子量3,000以上のペプチドの割合が55重量%以上である小麦グルテン分解物は、水に溶解した際に優れた泡立ちと泡持ちを示すことが確認された(実施例1及び2)。一方、分子量3,000以上の割合が55重量%に満たない小麦グルテン分解物では、水に溶解した際の泡立ちと泡持ち不十分であった。
試験例2:透明性の評価
1.小麦グルテン分解物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を0.04重量%となるように添加した。次いで、水温を55℃まで加熱し、pHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。その後、更にフレーバーザイム(中性プロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を添加し、塩酸でpH7に維持しながら、55℃で1時間加水分解反応を行った。次いで、加水分解反応後の溶液を表3に示す条件で加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、表3に示すpHとなるように塩酸を必要に応じて添加して混合した後に、吸引ろ過して不溶物を除去し、更に0.45μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物を得た。
1.小麦グルテン分解物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を0.04重量%となるように添加した。次いで、水温を55℃まで加熱し、pHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。その後、更にフレーバーザイム(中性プロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を添加し、塩酸でpH7に維持しながら、55℃で1時間加水分解反応を行った。次いで、加水分解反応後の溶液を表3に示す条件で加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、表3に示すpHとなるように塩酸を必要に応じて添加して混合した後に、吸引ろ過して不溶物を除去し、更に0.45μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物を得た。
2.小麦グルテン分解物の性能評価
得られた小麦グルテン分解物について、分子量分布を前記試験例1と同様の方法で行うと共に、下記の方法で透明性の評価を行った。
<透明性試験(pH7)>
小麦グルテン分解物を8.5重量%となるように精製水に混合し、塩酸にてpHを7に調整して、小麦グルテン分解物の水溶液を作成した。当該小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定した。(調製直後の透過率(%T))。また、前記小麦グルテン分解物の水溶液を25℃で24時間保存し、保存後の小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定した(保存後の透過率(%T))。
得られた小麦グルテン分解物について、分子量分布を前記試験例1と同様の方法で行うと共に、下記の方法で透明性の評価を行った。
<透明性試験(pH7)>
小麦グルテン分解物を8.5重量%となるように精製水に混合し、塩酸にてpHを7に調整して、小麦グルテン分解物の水溶液を作成した。当該小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定した。(調製直後の透過率(%T))。また、前記小麦グルテン分解物の水溶液を25℃で24時間保存し、保存後の小麦グルテン分解物の水溶液を精製水で5倍希釈した液について、610nmにおける透過率(%T、光路長10mm)を測定した(保存後の透過率(%T))。
<透明性試験(pH4)>
前記小麦グルテン分解物の水溶液のpHを4に調整したこと以外は、前記透明性試験(pH7)の場合と同条件で、調製直後の透過率(%T)と保存後の透過率(%T)を測定した。
前記小麦グルテン分解物の水溶液のpHを4に調整したこと以外は、前記透明性試験(pH7)の場合と同条件で、調製直後の透過率(%T)と保存後の透過率(%T)を測定した。
3.結果
得られた結果を表3及び4に示す。また、原料として小麦グルテンの総重量当たり、回収された小麦グルテン分解物の重量の割合を算出することにより収率(%)を求めた結果についても、表3に示す。この結果から、小麦グルテンを酵素処理した後に、式(1)で算出されるΔF70℃値が7以上、或いは式(2)で算出されるΔF90℃値が5以上になる熱負荷を行う加熱処理を行って得られた小麦グルテン分解物は、中性域の水溶液に溶解させた際に高い透明性の付与と持続が可能になることが確認された(実施例3〜13)。特に、中性からアルカリ性のpH領域で酵素処理された加水分解反応後の溶液を加熱処理した後にpHを4.5に調整してろ過することによって回収された小麦グルテン分解物は、酸性域の水溶液に溶解しても、高い透明性を呈し、それを維持させることができていた(実施例3〜6及び8〜13)。
得られた結果を表3及び4に示す。また、原料として小麦グルテンの総重量当たり、回収された小麦グルテン分解物の重量の割合を算出することにより収率(%)を求めた結果についても、表3に示す。この結果から、小麦グルテンを酵素処理した後に、式(1)で算出されるΔF70℃値が7以上、或いは式(2)で算出されるΔF90℃値が5以上になる熱負荷を行う加熱処理を行って得られた小麦グルテン分解物は、中性域の水溶液に溶解させた際に高い透明性の付与と持続が可能になることが確認された(実施例3〜13)。特に、中性からアルカリ性のpH領域で酵素処理された加水分解反応後の溶液を加熱処理した後にpHを4.5に調整してろ過することによって回収された小麦グルテン分解物は、酸性域の水溶液に溶解しても、高い透明性を呈し、それを維持させることができていた(実施例3〜6及び8〜13)。
これに対して、小麦グルテンを酵素処理した後に、式(1)で算出されるΔF70℃値が7未満になる熱負荷を行う加熱処理を行って得られた小麦グルテン分解物では、中性域の水溶液に溶解させた際に高い透明性の付与と持続ができなかった(比較例3及び4)。
試験例3
実施例3〜7及び比較例3及び4の小麦グルテン分解物について、含有する熱不溶化成分の測定を行った。熱不溶化成分の測定は、各小麦グルテン分解物10gに水100gを加え攪拌し、105℃で30分間の加熱処理を行った。その後、室温にまで冷却した後に、撹拌して速やかに濁度(610nmでの吸光度、光路長10mm)を測定した。
実施例3〜7及び比較例3及び4の小麦グルテン分解物について、含有する熱不溶化成分の測定を行った。熱不溶化成分の測定は、各小麦グルテン分解物10gに水100gを加え攪拌し、105℃で30分間の加熱処理を行った。その後、室温にまで冷却した後に、撹拌して速やかに濁度(610nmでの吸光度、光路長10mm)を測定した。
得られた結果を表5に示す。この結果から、実施例3〜7の小麦グルテン分解物は、前記条件で加熱処理を行っても濁度が0.5未満と非常に低く、105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分は実質的に含まれていないことが確認された。
一方、比較例3及び4の小麦グルテン分解物は、前記条件で加熱処理を行うと濁度が0.5を遥かに超えており、105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分が含まれていることが明らかとなった。
なお、実施例1、2、及び8〜13の小麦グルテン分解物についても、前記条件で加熱処理を行うと、測定される濁度が0.5未満であることが確認できている。
以上の試験例1〜3の結果から、分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない小麦グルテン分解物は、水に溶解した際に泡立ち及び泡持ちが優れ、且つ透明性を維持できることが明らかとなった。
試験例4:小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物の評価
1.小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、更に表6に示す比率となるように脱脂大豆粉(タンパク質含有量60重量%以上)を分散させた後に、アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を0.04重量%となるように添加した。次いで、水温を55℃まで加熱し、pHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。その後、更にフレーバーザイム(中性プロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を添加し、塩酸でpH7に維持しながら、55℃で1時間加水分解反応を行った。次いで、加水分解反応後の溶液を表3に示す実施例3と同条件で加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、表3に示す実施例3と同じpHとなるように塩酸を必要に応じて添加して混合した後に、吸引ろ過して不溶物を除去し、更に0.45μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物を得た。
1.小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、更に表6に示す比率となるように脱脂大豆粉(タンパク質含有量60重量%以上)を分散させた後に、アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を0.04重量%となるように添加した。次いで、水温を55℃まで加熱し、pHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。その後、更にフレーバーザイム(中性プロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を添加し、塩酸でpH7に維持しながら、55℃で1時間加水分解反応を行った。次いで、加水分解反応後の溶液を表3に示す実施例3と同条件で加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、表3に示す実施例3と同じpHとなるように塩酸を必要に応じて添加して混合した後に、吸引ろ過して不溶物を除去し、更に0.45μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物を得た。
2.小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物の性能評価
得られた混合物について、下記の方法で、泡立ち、泡持ち、及び透明性の評価を行った。
<泡形成試験>
小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物を0.3重量%(混合物濃度)になるように精製水に混合し、ペプチド溶液を準備した。このペプチド溶液10mLと炭酸水40mLを混合し、50mLの混合溶液を調製した。その混合溶液を、100mL容のメスシリンダーに上から注ぎいれて静置し、静置直後の泡の体積と、3分間静置後の泡の体積を測定した。
<透明性試験>
前記混合溶液の透明性を目視にて評価した。
得られた混合物について、下記の方法で、泡立ち、泡持ち、及び透明性の評価を行った。
<泡形成試験>
小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物を0.3重量%(混合物濃度)になるように精製水に混合し、ペプチド溶液を準備した。このペプチド溶液10mLと炭酸水40mLを混合し、50mLの混合溶液を調製した。その混合溶液を、100mL容のメスシリンダーに上から注ぎいれて静置し、静置直後の泡の体積と、3分間静置後の泡の体積を測定した。
<透明性試験>
前記混合溶液の透明性を目視にて評価した。
3.結果
得られた結果を表6に示す。この結果から、小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物では、優れた透明性を備えることができており、しかも小麦グルテン分解物を単独で使用した場合に比して、3分間静置後の泡の体積が顕著に高く、泡持ちがより一層良好になることが明らかとなった。
得られた結果を表6に示す。この結果から、小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物では、優れた透明性を備えることができており、しかも小麦グルテン分解物を単独で使用した場合に比して、3分間静置後の泡の体積が顕著に高く、泡持ちがより一層良好になることが明らかとなった。
試験例5:小麦グルテン分解物と各種植物由来タンパク質分解物の混合物の評価
1.小麦グルテン分解物と各種植物由来タンパク質分解物の混合物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、更に表7に示す植物タンパク質を含む各種植物素材の粉末が3.3重量%になるように分散させた後に、アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を0.04重量%となるように添加した。次いで、水温を55℃まで加熱し、pHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。その後、更にフレーバーザイム(中性プロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を添加し、塩酸でpH7に維持しながら、55℃で1時間加水分解反応を行った。次いで、加水分解反応後の溶液を表3に示す実施例3と同条件で加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、表3に示す実施例3と同じpHとなるように塩酸を必要に応じて添加して混合した後に、吸引ろ過して不溶物を除去し、更に0.45μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物と植物由来タンパク質分解物の混合物を得た。
1.小麦グルテン分解物と各種植物由来タンパク質分解物の混合物の製造
粉末の小麦グルテンを固形分濃度が10重量%になるように精製水に分散させ、更に表7に示す植物タンパク質を含む各種植物素材の粉末が3.3重量%になるように分散させた後に、アルカラーゼ(アルカリプロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を0.04重量%となるように添加した。次いで、水温を55℃まで加熱し、pHを7.5に維持しながら、加水分解反応を2時間行った。その後、更にフレーバーザイム(中性プロテアーゼ;ノボザイムズ社製)を添加し、塩酸でpH7に維持しながら、55℃で1時間加水分解反応を行った。次いで、加水分解反応後の溶液を表3に示す実施例3と同条件で加熱処理を行った。加熱処理後、室温まで冷却し、表3に示す実施例3と同じpHとなるように塩酸を必要に応じて添加して混合した後に、吸引ろ過して不溶物を除去し、更に0.45μmのフィルターでろ過して、ろ液を回収した。得られたろ液をスプレードライヤーで乾燥し、粉末状の小麦グルテン分解物と植物由来タンパク質分解物の混合物を得た。
2.小麦グルテン分解物と植物由来タンパク質分解物の混合物の性能評価
得られた混合物について、下記の方法で、泡立ち及び泡持ちの評価を行った。
<泡形成試験>
小麦グルテン分解物と植物由来タンパク質分解物の混合物を0.5重量%(混合物の濃度)になるように精製水に混合して、ペプチド溶液を準備した。このペプチド溶液25mLを100mL容のメスシリンダーに入れ、手でふたをして1秒に1回上下するペースで、10回上下に振って静置し、静置直後の泡の体積と、5分間静置後の泡の体積を測定した。
得られた混合物について、下記の方法で、泡立ち及び泡持ちの評価を行った。
<泡形成試験>
小麦グルテン分解物と植物由来タンパク質分解物の混合物を0.5重量%(混合物の濃度)になるように精製水に混合して、ペプチド溶液を準備した。このペプチド溶液25mLを100mL容のメスシリンダーに入れ、手でふたをして1秒に1回上下するペースで、10回上下に振って静置し、静置直後の泡の体積と、5分間静置後の泡の体積を測定した。
3.結果
得られた結果を表7に示す。この結果から、前記試験例4の場合と同様に、小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物では、小麦グルテン分解物を単独で使用した場合に比して、5分間静置後の泡の体積が顕著に高く、泡持ちがより一層良好になることが明らかとなった。一方、トウモロコシタンパク質分解物又はジャガイモタンパク質分解物を、小麦グルテン分解物と混合した場合には、小麦グルテン分解物を単独で使用した場合に比して、5分間静置後の泡の体積が減少していた。即ち、本試験結果から、小麦グルテン分解物と併用する植物由来タンパク質分解物として、大豆タンパク質分解物を選択することによって、小麦グルテン分解物が有する泡立ち及び泡持ちを更に向上させるという特有の効果が奏されることが確認された。
得られた結果を表7に示す。この結果から、前記試験例4の場合と同様に、小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の混合物では、小麦グルテン分解物を単独で使用した場合に比して、5分間静置後の泡の体積が顕著に高く、泡持ちがより一層良好になることが明らかとなった。一方、トウモロコシタンパク質分解物又はジャガイモタンパク質分解物を、小麦グルテン分解物と混合した場合には、小麦グルテン分解物を単独で使用した場合に比して、5分間静置後の泡の体積が減少していた。即ち、本試験結果から、小麦グルテン分解物と併用する植物由来タンパク質分解物として、大豆タンパク質分解物を選択することによって、小麦グルテン分解物が有する泡立ち及び泡持ちを更に向上させるという特有の効果が奏されることが確認された。
Claims (10)
- 小麦グルテンを加水分解した小麦グルテン分解物であって、
分子量3,000以上のペプチドを55重量%以上含み、
且つ105℃で30分間の加熱処理によって不溶化する成分を実質的に含まない、
ことを特徴とする小麦グルテン分解物。 - 請求項1又は2に記載の小麦グルテン分解物を含む、飲食品。
- 更に、大豆タンパク質分解物を含む、請求項3に記載の飲食品。
- 発泡酒、ビール様発泡性アルコール飲料、炭酸アルコール飲料、ビールテイストを有する清涼飲料、又は炭酸飲料である、請求項3又は4に記載の飲食品。
- 請求項1又は2に記載の小麦グルテン分解物を含む、泡形成用添加剤。
- 更に大豆タンパク質分解物を含む、請求項6に記載の泡形成用添加剤。
- 請求項1又は2に記載の小麦グルテン分解物の、飲食品において泡を形成させるための使用。
- 請求項1又は2に記載の小麦グルテン分解物と大豆タンパク質分解物の、飲食品において泡を形成させるための使用。
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